説明

共重合体及びそれに用いる組成物

【課題】過電流保護素子として用いられる共重合体の提供。
【解決手段】一般式(1)を0.01〜20モル%と一般式(2)を99.99〜80モル%からなることを共重合体。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温では抵抗値が十分低く導電材料として作用し、温度が上昇すると抵抗値が増大して過電流が回路に流れることを阻止する、過電流保護素子として用いられるチオフェン誘導体からなる共重合体及びそれに用いる組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の過電流保護素子としては、グラファイトや金属(例えば、特許文献1参照)、または、高分子マトリックスポリマー成分及びカーボン粒子といった導電性無機物を主成分とする複合組成物が用いられている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0003】
また、導電性高分子であるポリアニリンを用いた例(例えば、特許文献4及び5参照)、及び、ポリピロールを用いた例がある(例えば、特許文献6及び7参照)。これらでは、カルボン酸基、または、スルホン酸基を有する化合物をドーパントとして添加することで過電流保護素子として使用できることが提案されている。
【0004】
一方、同様な導電性高分子であるポリチオフェン誘導体については、過電流保護素子として作用する化合物は、まだ見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−197660号公報
【特許文献2】米国特許第4413301号公報
【特許文献3】特開2008−41724号公報
【特許文献4】特開平5−82012号公報
【特許文献5】特開平8−250016号公報
【特許文献6】特開平6−261447号公報
【特許文献7】特開2006−24863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、良好な導電性材料であるポリチオフェン誘導体に関して、過電流保護素子として作用する共重合体及びそれに用いる組成物については報告されていない。
【0007】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、室温では抵抗値が十分低く導電材料として作用し、温度が上昇すると抵抗値が増大して、過電流が回路に流れることを阻止する過電流保護素子として用いられるポリチオフェン誘導体を含む共重合体及びそれに用いる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下に示すとおり、3,4−エチレンジオキシチオフェンとチオフェン誘導体の組成物の共重合体を合成することで、室温では抵抗値が十分低く導電材料として作用し、温度が上昇すると抵抗値が増大して、過電流が回路に流れることを阻止する過電流保護素子として用いられるポリチオフェン誘導体を含む共重合体及びそれに用いる組成物に関する。
【0010】
[1] 一般式(1)で表されるポリチオフェン誘導体残基単位0.01〜20モル%と一般式(2)で表されるるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)残基単位99.99〜80モル%からなることを特徴とする共重合体。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素数1〜8のアルコキシ基、マロン酸基を表す。)
[2] 一般式(3)で表されるチオフェン誘導体0.01〜20モル%と一般式(4)で表される3,4−エチレンジオキシチオフェン99.99〜80モル%を成分とを含むことを特徴とする組成物。
【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
(式中、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素数1〜8のアルコキシ基、マロン酸基を表す。)
[3] 上記[1]に記載の共重合体からなることを特徴とする過電流保護素子。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、3,4−エチレンジオキシチオフェンとチオフェン誘導体の組成物の共重合体を合成することで、室温では抵抗値が十分低く導電材料として作用し、温度が上昇すると抵抗値が増大して、過電流が回路に流れることを阻止する過電流保護素子として用いられるポリチオフェン誘導体を含む共重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
<共重合体>
本発明の共重合体は、一般式(1)で表されるポリチオフェン誘導体残基単位0.01〜20モル%と一般式(2)で表されるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)残基単位99.99〜80モル%からなることを特徴とする共重合である。
【0020】
一般式(1)において、式中、R、Rは各々独立して、水素原子又は炭素数1〜8のアルコキシ基、マロン酸基を表し、炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブチルオキシ基、n−オクチルオキシ基等を挙げることができ、R、Rとしてはそのなかでも特に、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、マロン酸基が好ましい。
【0021】
具体的な一般式(1)で表されるポリチオフェン誘導体残基単位としては、例えば、ポリ(3−メトキシチオフェン)残基単位、ポリ(3−エトキシチオフェン)残基単位、ポリ(3−プロポキシチオフェン)残基単位、ポリ(3−ブチルオキシチオフェン)残基単位、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)残基単位、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)残基単位、ポリ(3−メトキシ−4−エトキシチオフェン)残基単位、ポリ(3−メトキシ−4−プロポキシチオフェン)残基単位、ポリ(3−メトキシ−4−ブチルオキシチオフェン)残基単位、ポリ(3−メトキシ−4−オクチルオキシチオフェン)残基単位、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)残基単位、ポリ(3−エトキシ−4−プロポキシチオフェン)残基単位、ポリ(3−エトキシ−4−ブチルオキシチオフェン)残基単位、ポリ(3−エトキシ−4−オクチルオキシチオフェン)残基単位、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)残基単位、ポリ(3−プロポキシ−4−ブチルオキシチオフェン)残基単位、ポリ(3−プロポキシ−4−オクチルオキシチオフェン)残基単位、ポリ(3,4−ジブチルオキシチオフェン)残基単位、ポリ(3−ブチルオキシ−4−オクチルオキシチオフェン)残基単位、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)残基単位、ポリ(3−チオフェンマロン酸)残基単位、ポリ(3,4−チオフェンジマロン酸)残基単位が挙げられ、これらは単一又は混合体であってもよい。これらのうち、効果と工業的な入手可能性からポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)残基単位、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)残基単位、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)残基単位、ポリ(3−チオフェンマロン酸)残基単位が好ましい。
【0022】
そして、具体的な本発明の共重合体としては、例えば、3−メトキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3−エトキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3−プロポキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3−ブチルオキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3−オクチルオキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3,4−ジメトキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3−メトキシ−4−エトキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3−メトキシ−4−プロポキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3−メトキシ−4−ブチルオキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3−メトキシ−4−オクチルオキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3,4−ジエトキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3−エトキシ−4−プロポキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3−エトキシ−4−ブチルオキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3−エトキシ−4−オクチルオキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3,4−ジプロポキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3−プロポキシ−4−ブチルオキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3−プロポキシ−4−オクチルオキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3,4−ジブチルオキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3−ブチルオキシ−4−オクチルオキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3,4−ジオクチルオキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3−チオフェンマロン酸及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体、3,4−ジマロン酸チオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェンの共重合体等が挙げられる。
<共重合に用いる組成物>
一般式(1)で表されるポリチオフェン誘導体残基単位0.01〜20モル%と一般式(2)で表されるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)残基単位99.99〜80モル%からなる共重合体に用いる組成物としては、一般式(3)で表されるチオフェン誘導体0.01〜20モル%と一般式(4)で表される3,4−エチレンジオキシチオフェンと99.99〜80モル%を含む組成物である。
【0023】
一般式(3)において、式中、R、Rは各々独立して、水素原子又は炭素数1〜8のアルコキシ基、マロン酸基を表し、炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブチルオキシ基、n−オクチルオキシ基等を挙げることができ、R、Rとしてはそのなかでも特に、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、マロン酸基が好ましい。
【0024】
具体的な一般式(3)で表されるチオフェン誘導体としては、例えば、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−プロポキシチオフェン、3−ブチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3−メトキシ−4−エトキシチオフェン、3−メトキシ−4−プロポキシチオフェン、3−メトキシ−4−ブチルオキシチオフェン、3−メトキシ−4−オクチルオキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3−エトキシ−4−プロポキシチオフェン、3−エトキシ−4−ブチルオキシチオフェン、3−エトキシ−4−オクチルオキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3−プロポキシ−4−ブチルオキシチオフェン、3−プロポキシ−4−オクチルオキシチオフェン、3,4−ジブチルオキシチオフェン、3−ブチルオキシ−4−オクチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3−チオフェンマロン酸、3,4−ジマロン酸チオフェンが挙げられ、これらは単一又は混合で使用してもよい。これらのうち、効果と工業的な入手可能性から3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3−チオフェンマロン酸が好ましい。
【0025】
本発明の組成物の配合割合は、一般式(3)で表されるチオフェン誘導体0.01〜20モル%と一般式(4)で表される3,4−エチレンジオキシチオフェン99.99〜80モル%であり、一般式(3)で表されるチオフェン誘導体は、好ましくは0.1〜10モル%、特に好ましくは1.0〜5.0モル%であり、0.01モル%よりも少ないと加熱時での抵抗値の増大が小さくなって効果がなくなり、20モル%を超えると室温での導電性が下がる可能性がある。
<共重合体の製造方法:酸化重合法>
一般式(1)で表されるポリチオフェン誘導体残基単位と一般式(2)で表されるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)残基単位からなる共重合体の製造方法としては、一般式(3)で表されるチオフェン誘導体と一般式(4)で表される3,4−エチレンジオキシチオフェンとを含む組成物を用い、酸化重合することが好ましい。
【0026】
本発明での酸化重合反応に用いる酸化剤としては、例えば過硫酸塩及び第二鉄塩などの一般的なものを用いることができる。過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどが用いられ、また、第二鉄塩としては、例えば、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、トルエンスルホン酸第二鉄などが用いられ、酸化剤とドーパントを兼ねたトルエンスルホン酸第二鉄が特に好ましい。
【0027】
酸化重合触媒の使用量は一般式(3)で表されるチオフェン誘導体1モルに対し、1.0〜5.0倍モルの範囲が好ましく、2.0〜4.0倍モルの範囲が特に好ましい。
【0028】
酸化重合反応に用いられる溶剤は、アルコール類、又は水系溶媒が好ましく、特に好ましくは、炭素数1〜4のアルキルアルコールである。
【0029】
具体的な炭素数1〜4のアルキルアルコールとして、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノールが挙げられ、これらは単一又は水との混合で使用してもよい。
【0030】
酸化重合法において反応温度は、アルコール溶媒を取り扱うことが可能な反応温度であれば特に限定するものではなく、0〜50℃が好ましく、濃度変化をさせずに反応を進行させるため、特に好ましくは0〜30℃である。
<導電性被覆物>
本発明の共重合体は、導電性被覆物とすることができる。過剰量の酸化剤を溶剤に溶かし、一般式(3)で表されるチオフェン誘導体、及び一般式(4)で表される3,4−エチレンジオキシチオフェンとを混合した組成物を用い、基材表面に塗布及び乾燥することで一般式(1)で表されるポリチオフェン誘導体残基単位と一般式(2)で表されるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)残基単位からなる共重合体よりなる導電性被覆物を得ることができる。
【0031】
用いる基材としては、特に限定されるものではなく、例えばプラスチックシート、プラスチックフィルム、不織布、ガラス板等が挙げられる。
【0032】
また、塗布方法は、特に限定されるものではなく、例えばスピンコート、ワイヤーコート、バーコート、ロールコート、ブレートコート、カーテンコート、スクリーン印刷などが挙げられる。
【0033】
乾燥させる際の加熱条件としては、特に限定されるものではなく、熱劣化の影響を受けない50〜60℃が好ましい。
【0034】
得られた一般式(1)で表されるポリチオフェン誘導体残基単位と一般式(2)で表されるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)残基単位からなる共重合体よりなる導電性被覆物は、室温では抵抗値が十分低く導電材料として作用し、温度が上昇すると抵抗値が増大して過電流が回路に流れることを阻止する、過電流保護素子として好適である。
【実施例】
【0035】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。なお、本実施例における生成物の収率は、ガスクロマトグラフィーで確認した。
【0036】
ガスクロマトグラフィー:(島津製作所製 GC−17A、測定条件 キャピラリーカラム(J&WScience社製 NB−5)、昇温、検出器FID)。
【0037】
また、化合物のH−NMR及び13C−NMRの測定には、Varian社製Gemini−200を使用した。
【0038】
表面抵抗率の測定は、低抵抗率計(三菱化学社製ロレススターGP、MCP−T600)を使用し、四探針法で測定した。
【0039】
スピンコーターは、MIKASA製SPINNER 1H−D2を使用し、オーブンは、柴田化学製ベルジャー型バキュームオーブンBV−001型を用いた。
【0040】
尚、ガラス基板は、松浪硝子製S1127を使用した。
【0041】
また、3,4−ジメトキシチオフェン(Aldrich社製、純度97.0%)、及び、3−チオフェンマロン酸(Aldrich社製、純度97.0%)は、試薬をそのまま使用した。
【0042】
合成例1 (3,4−ジプロポキシチオフェン(一般式(5)で示されるチオフェン誘導体)の合成例1)
【0043】
【化5】

【0044】
500mlのセパラブル四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、60%の油状水素化ナトリウム16.0g(400mmol)を仕込み、1−プロパノール400mlを、冷浴中で25℃以下を保ちながら2時間かけて滴下し、更に25℃で1時間撹拌して、ナトリウムプロポキシドを調製した。次いで、500mlのセパラブル四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、3,4−ジブロモチオフェン(Aldrich社製、試薬)16.5g(68.2mmol)、臭化第二銅(和光純薬製、試薬特級)3.8g(17.1mmol)、及び、先に調製したナトリウムプロポキシドのn−プロパノール溶液341.0ml(341.0mmol)を仕込んだ。その後、窒素雰囲気下、温度を130℃まで昇温し、還流条件で18時間熟成した。反応終了後にこの反応混合物を25℃まで冷却した後、酢酸エチル400mlと水50mlを添加し振とうして有機層に有機物を抽出し、分液して水層を除いた。更に、有機層を水200mlで水洗し、無水硫酸マグネシウム(関東化学製、試薬鹿特級)10.0gを加えて脱水後、60℃/20mmHg以下で濃縮したところ、21.3gの褐色粘調物を得た。得られた粘調物はシリカゲルカラム(和光純薬製、C100、250.0g充填)でn−へキサン:酢酸エチル(40:1)混液を用いて展開し、淡黄色のオイル9.6g(収率68.8%)を得た。得られたオイルはガスクロマトグラフィー分析で純度97.7%であり、H−NMR及び13C−NMRを測定したところ、3,4−ジプロポキシチオフェンであることを確認した。
【0045】
H−NMR(200MHz,CDCl)1.02(6H,t,J=7.2Hz)、1.84(4H,sixtet,J=7.2Hz)、3.94(4H,t,J=6.6Hz)、6.12(2H,s)
13C−NMR(50MHz,CDCl)10.57、22.50、72.08、96.93、147.51。
【0046】
合成例2 (3,4−ジエトキシチオフェン(一般式(6)で示されるチオフェン誘導体)の合成例2)
【0047】
【化6】

【0048】
300mlの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下に25℃で、3,4−ジブロモチオフェン(Aldrich社製、試薬)14.5g(59.9mmol)、臭化銅(和光純薬製、試薬特級)2.2g(15.0mmol)、及び、21%ナトリウムエトキシドのエタノール溶液(Aldrich社製)111.0ml(297.3mmol)を仕込んだ。その後、窒素雰囲気下、温度を130℃まで昇温し、還流条件で13時間熟成した。反応終了後にこの反応混合物を25℃まで冷却した後、酢酸エチル400mlと水50mlを添加し振とうして有機物を抽出し、分液して水層を除いた。更に、有機層を水200mlで水洗し、無水硫酸マグネシウム(関東化学製、試薬鹿特級)10.0gを加えて脱水後、60℃/20mmHg以下で濃縮したところ、11.8gの褐色粘調物を得た。得られた粘調物はシリカゲルカラム(和光純薬製、C100、250.0g充填)でn−へキサン:酢酸エチル(40:1)混液を用いて展開し、淡黄色のオイル5.5g(収率53.4%)を得た。得られたオイルはガスクロマトグラフィー分析で純度99.9%であり、H−NMR及び13C−NMRを測定したところ、3,4−ジエトキシチオフェンであることを確認した。
【0049】
H−NMR(200MHz,CDCl)1.45(6H,t,J=7.0Hz)、4.07(4H,q,J=7.2Hz)、6.16(2H,s)
13C−NMR(50MHz,CDCl)14.79、66.00、96.69、147.12。
【0050】
実施例1 (3,4−エチレンジオキシチオフェンと3,4−ジプロポキシチオフェン1mol%共重合体の製造例1)
合成例1で得た3,4−ジプロポキシチオフェン0.3g(1.4mmol)を3,4−エチレンジオキシチオフェン(ハイケム社製、99.9%以上)19.7g(138.7mmol)に添加し、3,4−ジプロポキシチオフェン1mol%含有の3,4−エチレンジオキシチオフェン液を得た。
【0051】
次いで、p−トルエンスルホン酸第二鉄・6水和物(Aldrich社製)の40%n−ブタノール溶液2.5g(1.5mmol)に3,4−ジプロポキシチオフェン1mol%含有の3,4−エチレンジオキシチオフェン58.2mgを添加し酸化重合を行った。塗布方法は、硝子基板(26mm×25mm切片)に反応液を約1.8g載せ、スピンコートで塗布した(1000rpm、60秒)。次いで塗布基板を50℃で30分乾燥し
一般式(1)で表されるポリチオフェン誘導体残基単位1モル%と一般式(2)で表されるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)残基単位99モル%からなる共重合体よりなる被覆物を得た。
【0052】
実施例2 (3,4−エチレンジオキシチオフェンと3,4−ジプロポキシチオフェン5mol%共重合体の製造例1)
合成例1で得た3,4−ジプロポキシチオフェン1.3g(6.6mmol)を3,4−エチレンジオキシチオフェン(ハイケム社製、99.9%以上)18.7g(131.4mmol)に添加し、3,4−ジプロポキシチオフェン5mol%含有の3,4−エチレンジオキシチオフェン液を得た。
【0053】
次いで、p−トルエンスルホン酸第二鉄・6水和物(Aldrich社製)の40%n−ブタノール溶液2.5g(1.5mmol)に3,4−ジプロポキシチオフェン5mol%含有の3,4−エチレンジオキシチオフェン54.8mgを添加し酸化重合を行った。塗布方法は、硝子基板(26mm×25mm切片)に反応液を約0.1g載せ、スピンコートで塗布した(1000rpm、60秒)。次いで塗布基板を50℃で30分乾燥し一般式(1)で表されるポリチオフェン誘導体残基単位5モル%と一般式(2)で表されるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)残基単位95モル%からなる共重合体よりなる被覆物を得た。
実施例3 (3,4−エチレンジオキシチオフェンと3,4−ジメトキシチオフェン1mol%共重合体の製造例1)
試薬の3,4−ジメトキシチオフェン148.0mg(1.0mmol)を3,4−エチレンジオキシチオフェン(ハイケム社製、99.9%以上)14.2g(100.0mmol)に添加し、3,4−ジメトキシチオフェン1mol%含有の3,4−エチレンジオキシチオフェン液を得た。
【0054】
次いで、p−トルエンスルホン酸第二鉄・6水和物(Aldrich社製)の40%n−ブタノール溶液2.5g(1.5mmol)に3,4−ジメトキシチオフェン1mol%含有の3,4−エチレンジオキシチオフェン54.7mgを添加し酸化重合を行った。塗布方法は、硝子基板(26mm×25mm切片)に反応液を約1.8g載せ、スピンコートで塗布した(1000rpm、60秒)。次いで塗布基板を50℃で30分乾燥し一般式(1)で表されるポリチオフェン誘導体残基単位1モル%と一般式(2)で表されるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)残基単位99モル%からなる共重合体よりなる被覆物を得た。
【0055】
実施例4 (3,4−エチレンジオキシチオフェンと3,4−ジエトキシチオフェン1mol%共重合体の製造例1)
合成例2で得られた3,4−ジエトキシチオフェン172.3mg(1.0mmol)を3,4−エチレンジオキシチオフェン(ハイケム社製、99.9%以上)14.2g(100.0mmol)に添加し、3,4−ジエトキシチオフェン1mol%含有の3,4−エチレンジオキシチオフェン液を得た。
【0056】
次いで、p−トルエンスルホン酸第二鉄・6水和物(Aldrich社製)の40%n−ブタノール溶液2.5g(1.5mmol)に3,4−ジエトキシチオフェン5mol%含有の3,4−エチレンジオキシチオフェン52.9mgを添加し酸化重合を行った。塗布方法は、硝子基板(26mm×25mm切片)に反応液を約0.1g載せ、スピンコートで塗布した(1000rpm、60秒)。次いで塗布基板を50℃で30分乾燥し一般式(1)で表されるポリチオフェン誘導体残基単位1モル%と一般式(2)で表されるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)残基単位99モル%からなる共重合体よりなる被覆物を得た。
【0057】
実施例5 (3,4−エチレンジオキシチオフェンと3−チオフェンマロン酸1mol%共重合体の製造例1)
試薬の3−チオフェンマロン酸186.4mg(1.0mmol)を3,4−エチレンジオキシチオフェン(ハイケム社製、99.9%以上)14.2g(100.0mmol)に添加し、3−チオフェンマロン酸1mol%含有の3,4−エチレンジオキシチオフェン液を得た。
【0058】
次いで、p−トルエンスルホン酸第二鉄・6水和物(Aldrich社製)の40%n−ブタノール溶液2.5g(1.5mmol)に3−チオフェンマロン酸1mol%含有の3,4−エチレンジオキシチオフェン53.2mgを添加し酸化重合を行った。塗布方法は、硝子基板(26mm×25mm切片)に反応液を約0.1g載せ、スピンコートで塗布した(1000rpm、60秒)。次いで塗布基板を50℃で30分乾燥し一般式(1)で表されるポリチオフェン誘導体残基単位1モル%と一般式(2)で表されるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)残基単位99モル%からなる共重合体よりなる被覆物を得た。
【0059】
比較例1 (3,4−エチレンジオキシチオフェン重合体の製造例1)
p−トルエンスルホン酸第二鉄・6水和物(Aldrich社製)の40%n−ブタノール溶液2.5g(1.5mmol)に3,4−エチレンジオキシチオフェン(ハイケム社製、99.9%以上)53.6mgを添加し酸化重合を行った。塗布方法は、硝子基板(26mm×25mm切片)に反応液を約0.1g載せ、スピンコートで塗布した(1000rpm、60秒)。次いで塗布基板を50℃で30分乾燥し3,4−エチレンジオキシチオフェン重合体からなる被覆物を得た。
【0060】
得られた被覆物を空気中、150℃で加熱試験を行い、表面抵抗率の変化を低抵抗率計で測定した。その結果、24時間後と48時間後で、3,4−エチレンジオキシチオフェン表面抵抗値は、25℃の時に比べて高い抵抗値を示した。詳細な結果を、まとめて表1に示した。
【0061】
実施例6 (3,4−ジプロポキシチオフェン1mol%含有した3,4−エチレンジオキシチオフェン共重合体の熱安定性試験)
実施例1で得られた被覆物を空気中、150℃で加熱試験を行い、表面抵抗率の変化を低抵抗率計で測定した。その結果、24時間後と48時間後で、3,4−ジプロポキシチオフェン1mol%含有の3,4−エチレンジオキシチオフェン表面抵抗値は、比較例1での3,4−エチレンジオキシチオフェン単独の値に比べて、3倍以上の高い抵抗値を示した。詳細な結果を、まとめて表1に示した。
【0062】
実施例7 (3,4−ジプロポキシチオフェン5mol%含有した3,4−エチレンジオキシチオフェン共重合体の熱安定性試験)
実施例2で得られた被覆物を空気中、150℃で加熱試験を行い、表面抵抗率の変化を低抵抗率計で測定した。その結果、24時間後と48時間後で、3,4−ジプロポキシチオフェン5mol%含有の3,4−エチレンジオキシチオフェン表面抵抗値は、比較例2での3,4−エチレンジオキシチオフェン単独の値に比べて、6倍以上の高い抵抗値を示した。詳細な結果を、まとめて表1に示した。
【0063】
比較例2 (3,4−エチレンジオキシチオフェンの130℃での熱安定性試験)
比較例1で得られた目的の組成物からなる被覆物を空気中、130℃で加熱試験を行い、表面抵抗率の変化を低抵抗率計で測定した。その結果、8時間後で、3,4−エチレンジオキシチオフェン表面抵抗値は、25℃の時に比べて高い抵抗値を示した。詳細な結果を、まとめて表2に示した。
【0064】
実施例8 (3,4−ジメトキシチオフェン1mol%含有した3,4−エチレンジオキシチオフェン共重合体の熱安定性試験)
実施例3で得られた被覆物を空気中、130℃で8時間の加熱試験を行い、表面抵抗率を低抵抗率計で測定し、比較した。その結果、3,4−ジメトキシチオフェンの表面抵抗値は、3,4−エチレンジオキシチオフェン単独で8時間加熱した場合に比べて、高い抵抗値を示した。詳細な結果を、まとめて表2に示した。
【0065】
実施例9 (3,4−ジエトキシチオフェン1mol%含有した3,4−エチレンジオキシチオフェン共重合体の熱安定性試験)
実施例4で得られた被覆物を空気中、130℃で8時間の加熱試験を行い、表面抵抗率を低抵抗率計で測定し、比較した。その結果、3,4−ジエトキシチオフェンの表面抵抗値は、3,4−エチレンジオキシチオフェン単独で8時間加熱した場合に比べて、高い抵抗値を示した。詳細な結果を、まとめて表2に示した。
【0066】
実施例10 (3,4−ジプロポキシチオフェン1mol%含有した3,4−エチレンジオキシチオフェン共重合体の熱安定性試験)
実施例1で得られた被覆物を空気中、130℃で8時間の加熱試験を行い、表面抵抗率を低抵抗率計で測定し、比較した。その結果、3,4−ジプロポキシチオフェンの表面抵抗値は、3,4−エチレンジオキシチオフェン単独で8時間加熱した場合に比べて、高い抵抗値を示した。詳細な結果を、まとめて表2に示した。
【0067】
実施例11 (3,4−ジプロポキシチオフェン5mol%含有した3,4−エチレンジオキシチオフェン共重合体の熱安定性試験)
実施例2で得られた被覆物を空気中、130℃で8時間の加熱試験を行い、表面抵抗率を低抵抗率計で測定し、比較した。その結果、3,4−ジプロポキシチオフェンの表面抵抗値は、3,4−エチレンジオキシチオフェン単独で8時間加熱した場合に比べて、高い抵抗値を示した。詳細な結果を、まとめて表2に示した。
【0068】
実施例12 (3−チオフェンマロン酸1mol%含有した3,4−エチレンジオキシチオフェン共重合体の熱安定性試験)
実施例5で得られた被覆物を空気中、130℃で8時間の加熱試験を行い、表面抵抗率を低抵抗率計で測定し、比較した。その結果、3−チオフェンマロン酸の表面抵抗値は、3,4−エチレンジオキシチオフェン単独で8時間加熱した場合に比べて、高い抵抗値を示した。詳細な結果を、まとめて表2に示した。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、3,4−エチレンジオキシチオフェンとチオフェン誘導体の組成物の共重合体を合成することで、室温では抵抗値が十分低く導電材料として作用し、温度が上昇すると抵抗値が増大して、過電流が回路に流れることを阻止する過電流保護素子として用いられるポリチオフェン誘導体からなる共重合体を提供できる。
【0070】
この新規な共重合体を用いれば、簡便な過電流保護素子への利用が期待される。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるポリチオフェン誘導体残基単位0.01〜20モル%と一般式(2)で表されるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)残基単位99.99〜80モル%からなることを特徴とする共重合体。
【化1】

【化2】

(式中、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素数1〜8のアルコキシ基、マロン酸基を表す。)
【請求項2】
一般式(3)で表されるチオフェン誘導体0.01〜20モル%と一般式(4)で表される3,4−エチレンジオキシチオフェンを成分とを99.99〜80モル%とを含むことを特徴とする組成物。
【化3】

【化4】

(式中、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素数1〜8のアルコキシ基、マロン酸基を表す。)
【請求項3】
請求項1に記載の共重合体からなることを特徴とする過電流保護素子。