説明

共重合芳香族ポリエステル

【課題】本発明の解決する課題は、耐熱性や酸素バリア性、さらには耐沸水性や表面硬度に優れた新規な共重合ポリエチレンナフタレートを提供することにある。
【解決手段】下記式(I)で示されるビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン成分を共重合してなるポリエチレンナフタレートであって、固有粘度が0.50〜0.55dL/gかつガラス転移温度が140℃以上、かつ酸素バリア性や耐沸水性さらには表面硬度に優れた共重合ポリエチレンナフタレートによって上記課題を解決することができる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエチレンナフタレート樹脂を用いた溶融重合によって耐熱性や酸素バリア性、さらには耐沸水性や表面硬度に優れたポリエステル重合体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食品包装材料や医療用材料などにプラスチックを用いる研究開発が精力的に行われており、食品包装材料や医療用材料においては成形品の耐熱性やガスバリア性、さらには耐沸水性や表面硬度が要求される。医療用材料には非晶性の環状ポリオレフィンが、食品容器材料にはポリカーボネートや芳香族ポリエステルなどが使用されている。しかし、環状ポリオレフィンは耐熱性や透明性に優れるものの、酸素バリア性が低いことに問題がある(例えば特許文献1、2参照。)。芳香族ポリエステルにおいては、酸素バリア性は優れているものの、吸水性、耐熱性、透明性不足である(例えば、特許文献3参照。)。さらに、共重合ポリエチレンナフタレートでも耐熱性不足といった問題がある(例えば特許文献4、5、6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−186632号公報
【特許文献2】特開2008−208237号公報
【特許文献3】特開平02−189347号公報
【特許文献4】特開平10−245433号公報
【特許文献5】特開平10−017661号公報
【特許文献6】特開平11−293005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、耐熱性や酸素バリア性、さらには耐沸水性や表面硬度に優れた新規な共重合芳香族ポリエステルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有するジオールを共重合したポリエステル樹脂が耐熱性や酸素バリア性、さらには耐沸水性に優れることを見出し、本発明を解決した。
【0006】
すなわち、本発明は下記式(I)で示されるビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン成分を共重合してなるポリエチレンナフタレートであって、固有粘度が0.50〜0.55dL/gかつガラス転移温度が140℃以上である共重合芳香族ポリエステルである。当該共重合芳香族ポリエステルにより、共重合ポリエチレンナフタレート樹脂のガラス転移温度が140℃以上とすることができ、成形品の酸素バリア度や耐沸水性が良好であることを特徴とする共重合ポリエチレンナフタレート樹脂を提供することができる。
【0007】
【化1】

【0008】
また同時に当該共重合芳香族ポリエステルは、上記式(I)で表されるビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンを2,6−ナフタレンジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体、さらにはエチレングリコールとをチタン化合物のみを使用して重縮合せしめて得られることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明で得られた共重合ポリエチレンナフタレート重合体は、耐熱性、酸素バリア度や耐沸水性が良好であるため、食器や食品包装材料に用いることができる。また、人体に悪影響を及ぼす物質(特に内分泌かく乱作用)を使用していないため、食品容器材料(特に給食食器など)や医療用材料に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いられるジカルボン酸成分としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸を主成分とするが、他の1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸等2つのカルボキシル基の位置が異なるナフタレンジカルボン酸の構造異性体が共重合されていても良い。また、原料としてこれらのナフタレンジカルボン酸を用いる際には、これらのナフタレンジカルボン酸のエステル形成誘導体を用いても良い。本発明の共重合ポリエチレンナフタレートの特性を損なわない範囲で他のジカルボン酸を併用することができる。例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸(カルボキシル基の位置が4,4’−に限定されず、カルボキシル基の位置が異なる各構造異性体を含む)、ジフェニルエーテルジカルボン酸(同前)、ジフェノキシエタンジカルボン酸(同前)、ジフェニルスルホンジカルボン酸(同前)、ジフェニルケトンジカルボン酸(同前)、フランジカルボン酸(同前)等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸(カルボキシル基の位置が異なる各構造異性体を含む)、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。本発明の共重合ポリエチレンナフタレートの特性を損なわない範囲とは、全酸成分に対して30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
【0011】
本発明に用いられるジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジブチルエステルもしくはジフェニルエステルまたは2,7−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジブチルエステルもしくはジフェニルエステルを主成分とする。しかし、本発明の共重合ポリエチレンナフタレートの特性を損なわない範囲で他のジカルボン酸のエステル形成性誘導体を併用することができる。例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸の低級アルキルエステル、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸の低級アルキルエステル等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。低級アルキルエステルとは上述のようにジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジブチルエステル、ジフェニルエステルを表す。本発明の共重合ポリエチレンナフタレートの特性を損なわない範囲とは、全ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分に対して30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
【0012】
本発明に用いられるジカルボン酸の低級アルキルエステルとしてはメチルエステルが主成分であるが、本発明の共重合ポリエチレンナフタレート(以下、ポリエチレンナフタレートをPENと称することがある。)の特性を損なわない範囲でエチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等の1種もしくは2種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。本発明の共重合ポリエチレンナフタレートの特性を損なわない範囲とは、全ジカルボン酸の低級アルキルエステル形成性誘導体成分に対して30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。また、少量のトリメリット酸のような三官能性以上のカルボン酸成分を用いてもよく、無水トリメリット酸のような酸無水物を少量用いてもよい。また、乳酸、グリコール酸のようなヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル等を少量用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。
【0013】
また、本発明においては、下記式(I)で示されるビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン成分を共重合されていることを特徴とする。
【0014】
【化2】

【0015】
本発明に用いられるグリコール成分としてはエチレングリコールを主成分とするが、本発明の共重合ポリエチレンナフタレートの特性を損なわない範囲で他のグリコール成分を併用することができる。例えば、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール(トリメチレングリコール)、ブタンジオール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール(1,6−ヘキサンジオール)、1,9−ノナンジオール、デカメチレングリコール、2−メチル−1,3プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチルオクタンジオールなどの直鎖または分岐鎖のある脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、2−メチル−1,1−シクロヘキサンジオール、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−2,2−プロパン、2,2−ノルボルナンジメタノール、3−メチル−2,2−ノルボルナンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、2,6−ノルボルナンジメタノール、パーヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,3−ジメタノール、アダマンタンジメタノール、1,3−ジメチル−5,7−アダマンタンジメタノール、1,3−アダマンタンジオール、1,3−ジメチル−5,7−アダマンタンジオールなどの脂環式ジオール;ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシフェナンスロリン、キシリレンジオール[ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン]、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールS(ビス[4−ヒドロキシフェニル]スルホン)、ビスフェノールSのエチレンオキシド付加物(ビス[4−ヒドロキシエトキシフェニル]スルホン等)またはプロピレンオキシド付加物などの芳香族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(オキシ)エチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリメチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテル酸素を有するグリコールなどが挙げられる。上記ジオール成分は1種または2種以上混合して目的によって任意に使用できる。さらに少量のグリセリン、ペンタエリスリトールのような多価アルコール成分を用いてもよい。また少量のエポキシ化合物を用いてもよい。本発明の共重合ポリエチレンナフタレートの特性を損なわない範囲とは、全グリコール成分に対して30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。本発明の共重合ポリエステルの製造時におけるかかるグリコール成分の使用量は、前記ジカルボン酸もしくはジカルボン酸のエステル形成性誘導体に対して1.5モル倍以上2.0モル倍以下であることが好ましい。グリコール成分の使用量が1.5モル倍に満たない場合にはエステル化あるいはエステル交換反応が十分に進行せず好ましくない。また、2.0モル倍以上を超える場合にも、理由は定かではないが反応速度が遅くなり、過剰のグリコール成分からの副生成物(たとえばジエチレングリコール)量が大となり好ましくない。
【0016】
本発明の共重合芳香族ポリエステルは、従来公知のポリエチレンナフタレートの製造方法を用いて製造すればよい。例えば、芳香族ジカルボン酸または芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル若しくは低級アリールエステルとグリコールを用いて、エステル化反応またはエステル交換反応を行い、得られた反応生成物を更に高温、高真空、溶融下で重縮合を進める製造方法である。より好ましい態様であるPENの場合には以下の通りである。すなわち、ナフタレンジカルボン酸およびエチレングリコールを用いてエステル化反応を行い、またはナフタレンジカルボン酸の低級アルキルエステル(例えばジメチルエステル)およびエチレングリコールを用いてエステル交換反応を行って、得られた反応生成物を更に重縮合反応させることによって製造できる。ビスフェニルスルホン化合物はエステル化反応開始時またはエステル交換反応開始時から重縮合反応を開始するまでに、共重合芳香族ポリエステルを製造する反応槽内に添加することが好ましい。また、溶融重縮合工程で得られたポリエチレンナフタレートはペレット化されたのち、必要に応じて、さらなる分子量増加あるいは、アセトアルデヒドやオリゴマー類等不純物の低減の為、固相重合工程で重縮合されていてもよい、固相重合の実施方法に関しては、公知のいずれの方法を採用してもよい。一例としてその際の固相重合温度は180℃〜230℃が好ましく、190℃〜220℃がより好ましい。固相重合温度が180℃未満では固相重合速度が遅く、固相重合性に劣ることがある。また、230℃を超える場合には固相重合性は向上するが、固相重合後のPENの色調が低下する恐れがあるので好ましくない。もちろんPENに限定されず、他の芳香族ポリエステルの場合であっても必要に応じて固相重合を行っても良い。
【0017】
本発明において重合触媒成分として用いられるチタン化合物としては、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的にはテトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネートなどが挙げられ、これらの混合チタネートとして用いても良い。これらのチタン化合物のうち、特にテトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートが好ましく、最も好ましいのはテトラ−n−ブチルチタネートである。更にこれらのチタン化合物とフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸もしくはピロメリット酸等の多価カルボン酸との反応生成物、炭素数1〜10のモノアルキルホスフェートもしくは炭素数6〜18のモノアリールホスフェートとの反応生成物を用いることも好ましく採用することができる。
【0018】
チタン化合物の添加量は生成共重合ポリエチレンナフタレート中のチタン原子含有量として、60ppm以下であることが好ましく、より好ましくは40ppm以下である。生成共重合ポリエチレンナフタレート中のチタン原子量が60ppmを超える場合は共重合ポリエステルの色調、透明性、および熱安定性が低下するために好ましくない。
【0019】
重縮合反応において重合触媒としてさらに通常用いられている触媒を併用することも可能であるが、前記チタン化合物をエステル化あるいはエステル交換反応および重縮合反応の共通触媒として用いることが好ましい。他の触媒を併用するとPENの着色が大となり好ましくない。また、重縮合反応速度も併用しない場合と比較して大差が無く、併用効果が得られない。
【0020】
また、本発明の共重合ポリエチレンナフタレートの特性を損なわない範囲において、例えば、オクタアルキルトリチタネートもしくはヘキサアルキルジチタネートなどのテトラアルキルチタネート以外のアルキルチタネート、酢酸チタンやシュウ酸チタンなどのチタンの弱酸塩、酸化チタンなどのチタン酸化物、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイドなどの有機スズ化合物、塩化カリウム、カリウムミョウバン、ギ酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸二水素カリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸カリウム、酪酸カリウム、シュウ酸二カリウム、シュウ酸水素カリウム、ステアリン酸カリウム、フタル酸カリウム、フタル酸水素カリウム、メタリン酸カリウム、リンゴ酸カリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、亜硝酸カリウム、安息香酸カリウム、酒石酸水素カリウム、重蓚酸カリウム、重フタル酸カリウム、重酒石酸カリウム、重硫酸カリウム、硝酸カリウム、酢酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸水素カリウム、乳酸カリウム、硫酸カリウム硫酸水素カリウム、塩化ナトリウム、ギ酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、シュウ三二ナトリウム、シュウ酸水素ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸水素ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酒石酸水素ナトリウム、重シュウ酸ナトリウム、重フタル酸ナトリウム、重酒石酸ナトリウム、、重硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、塩化リチウム、ギ酸リチウム、クエン酸三リチウム、クエン酸水素二リチウム、クエン酸二水素リチウム、グルコン酸リチウム、コハク酸リチウム、酪酸リチウム、シュウ酸二リチウム、シュウ酸水素リチウム、ステアリン酸リチウム、フタル酸リチウム、フタル酸水素リチウム、メタリン酸リチウム、リンゴ酸リチウム、リン酸三リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸二水素リチウム、亜硝酸リチウム、安息香酸リチウム、酒石酸水素リチウム、重シュウ酸リチウム、重フタル酸リチウム、重酒石酸リチウム、重硫酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、乳酸リチウム、硫酸リチウム、硫酸水素リチウムなどのアルカリ金属塩、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、コハク酸カルシウム、酪酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、酪酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩の1種もしくは2種以上をチタン化合物と組み合わせても良い。
【0021】
本発明により得られる共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度は機械的強度、成形性の点から0.50dL/g以上であることが必要であり、0.50〜0.55dL/gが好ましい。固有粘度が0.50dL/g未満では機械的強度に劣る。一方で、0.55dL/gを超える場合には流動性が低下して成形加工性に劣るので好ましくないことがある。なお固有粘度をこの値の範囲にするためには、共重合芳香族ポリエステルの製造の際に、予め設定したビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン化合物の共重合比率から差し引いて計算されるエチレングリコール量に対して、過剰量のエチレングリコールを用いることが重要となる。またガラス転移温度は140℃以上であることが好ましく、より好ましくは90℃以上である。上記の十分な固有粘度値とビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン化合物の共重合率によって、このガラス転移温度の値の範囲を達成することができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、得られた共重合ポリエチレンナフタレートの諸物性の測定は以下の方法により実施した。
【0023】
1)固有粘度(IV)測定
常法に従って、溶媒であるオルトクロロフェノール中、35℃で測定した。
2)ガラス転移温度測定
25℃で24時間減圧乾燥した共重合ポリエチレンナフタレートを示差走査型熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分で昇温しながら測定した。測定試料はアルミニウム製パン(TA Instruments社製)に約10mg計量し、窒素雰囲気下で測定した。
3)酸素透過度測定
本発明により得られた共重合ポリエチレンナフタレートをシート状に延伸し、そのシートの気体透過度をJIS K7126−1により測定した。 試験温度は23℃とした。本測定において、酸素透過度が10.0cm/m・24h・atm以下であれば酸素バリア性良好と判断し○と、酸素透過度が10.0cm/m・24h・atm以上であれば酸素バリア性不良と判断し×とした。
4)耐沸水性試験
本発明により得られた共重合ポリエチレンナフタレートを単軸の押出機(成形温度295℃)により3センチ角の平板を成形し、これを100℃の沸水に1時間浸漬させた。1時間後の平板が変形および白化しなければ耐沸水性良好と判断し○と、変形および白化すれば耐沸水性不良と判断し×とした。
5)表面硬度(鉛筆硬度)測定
本発明により得られた共重合ポリエチレンナフタレートを5cm角の平板(厚み3mm)とし、これをJIS K5401により測定した。その鉛筆硬度がH以上を○とし、H以下を×とした。
【0024】
[実施例1]
2価ジカルボン酸として、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを22.5kg、2価ジオールとしてエチレングリコールを8.6kg、さらには共重合成分として、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンを18.9kg、重合触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートを2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として5ミリモル%加え、反応温度が210℃以上となるように昇温しながら180分間エステル交換反応を行った。ついで得られた反応生成物を重縮合反応槽移して重縮合反応を開始した。
重縮合反応は常圧から0.133kPa(1Torr)まで50分掛けて徐々に減圧し、同時に所定の反応温度295まで昇温し、以降は所定の重合温度、0.133kPa(1Torr)の状態を維持して30分間重縮合反応を行った。
重縮合反応開始から180分間が経過した時点で重縮合反応を終了して共重合ポリエチレンナフタレートを抜き出し、固有粘度、ガラス転移温度、酸素透過度を測定し、さらには耐沸水性試験を行い、その結果を表1に示した。
【0025】
[実施例2]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを20.5kg、エチレングリコールを6.8kg、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンを22.4kgに変更した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエチレンナフタレートを得た。得られた共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度、ガラス転移温度、酸素透過度を測定し、さらには耐沸水性試験を行い、その結果を表1に示した。
【0026】
[比較例1]
2価ジカルボン酸として、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを35.0kg、2価ジオールとしてエチレングリコールを17.8kg、重合触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートを2価ジカルボン酸のモル数に対して総量として5ミリモル%加え、反応温度が218℃以上となるように昇温しながら180分間エステル交換反応を行った。ついで得られた反応生成物を重縮合反応槽移して重縮合反応を開始した。
重縮合反応は常圧から1Torrまで50分掛けて徐々に減圧し、同時に所定の反応温度295まで昇温し、以降は所定の重合温度、0.133kPa(1Torr)の状態を維持して30分間重縮合反応を行った。
重縮合反応開始から180分間が経過した時点で重縮合反応を終了して共重合ポリエチレンナフタレートを抜き出し、固有粘度、ガラス転移温度、酸素透過度を測定し、さらには耐沸水性試験を行い、その結果を表1に示した。
【0027】
[比較例2]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを22.5kg、エチレングリコールを9.2kg、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンを15.7kgに変更した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエチレンナフタレートを得た。得られた共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度、ガラス転移温度、酸素透過度を測定し、さらには耐沸水性試験を行い、その結果を表1に示した。
【0028】
[比較例3]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを22.5kg、エチレングリコールを9.8kg、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンを12.6kgに変更した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエチレンナフタレートを得た。得られた共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度、ガラス転移温度、酸素透過度を測定し、さらには耐沸水性試験を行い、その結果を表1に示した。
【0029】
[比較例4]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを22.5kg、エチレングリコールを10.4kg、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンを9.4kgに変更した以外は実施例1と同様にして共重合ポリエチレンナフタレートを得た。得られた共重合ポリエチレンナフタレートの固有粘度、ガラス転移温度、酸素透過度を測定し、さらには耐沸水性試験を行い、その結果を表1に示した。
【0030】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明で得られた共重合ポリエチレンナフタレート重合体は、耐熱性、酸素バリア度や耐沸水性が良好であるため、食器や食品包装材料に用いることができる。また、人体に悪影響を及ぼす物質(特に内分泌かく乱作用)を使用していないため、食品容器材料(特に給食食器など)や医療用材料に好適に用いることができる。これらの分野・用途における有用な材料を提供することができるという観点から、本発明の工業的な意義は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で示されるビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン成分を共重合してなるポリエチレンナフタレートであって、固有粘度が0.50dL/g以上かつガラス転移温度が140℃以上である共重合芳香族ポリエステル。
【化1】

【請求項2】
固有粘度が0.50〜0.55dL/gである請求項1記載の共重合芳香族ポリエステル。

【公開番号】特開2012−162648(P2012−162648A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23967(P2011−23967)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】