説明

共鳴コイル、送電装置、受電装置および電力送電システム

【課題】位置ずれしても送電効率または受電効率の低減を抑制することができると共に、薄型化が図られた共鳴コイルを提供する。
【解決手段】共鳴コイルは、電流が流れることで形成される磁界の向きが同じ向きとされた複数の単位コイル1,2,3,4を含む共鳴コイルであって、複数の単位コイル1,2,3,4は、コイル中心線Oの周囲に配置され、共鳴コイルをコイル中心線O上から見ると、共鳴コイルを形成するコイル線5は互いに重ならないように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共鳴コイル、送電装置、受電装置および電力送電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮からバッテリなどの電力を用いて駆動輪を駆動させるハイブリッド車両や電気自動車などが着目されている。
【0003】
特に近年は、上記のようなバッテリを搭載した電動車両において、プラグなどを用いずに非接触でバッテリを充電可能なワイヤレス充電が着目されている。そして、最近では非接触の充電方式においても各種の充電方式が提案されており、特に、共鳴現象を利用することで非接触で電力を伝送する技術が脚光を浴びている。
【0004】
たとえば、特開2010−73976号公報に記載された車両および給電装置は、それぞれ通信コイルを備える。車両に搭載された通信コイルは、共鳴コイルと、受電コイルとを含み、給電装置に搭載された通信コイルは、共鳴コイルと給電コイルとを含む。そして、給電装置に搭載された共鳴コイルと、車両に搭載された共鳴コイルとの間で、共鳴現象を利用して電力の非接触伝送がなされている。
【0005】
下記の「電磁界共鳴型電力伝送システムのアンテナ形状に関する一検討」には、送電用の共鳴コイルと、受電用の共鳴コイルとが位置ずれしたとしても、送電効率の低減を抑制することに着目した共鳴コイルが提案されている。
【0006】
なお、特開2003−79597号公報に記載されているように、従来から核磁気共鳴現象を利用して体内の断面を画像化するMRI(Magnetic Resonance Imaging:核磁気共鳴撮像法)などの撮像装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−73976号公報
【特許文献2】特開2003−79597号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】門井優文、菊間信良、平山裕、榊原久二男、「電磁界共鳴型電力伝送システムのアンテナ形状に関する一検討」、2010年電子情報通信学会ソサイエティ大会、通信公演論文集1第11頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開2010−73976号公報に記載された共鳴コイルにおいては、車両側に搭載された共鳴コイルと、設備側の共鳴コイルとが位置ずれすると、電力の送電効率が著しく低下する。
【0010】
「電磁界共鳴型電力伝送システムのアンテナ形状に関する一検討」に記載された共鳴コイルにおいては、共鳴コイルを形成するコイル線は高さ方向に重なる部分がある。当該コイル線の重なり部分においては、コイル線間の絶縁性を確保するために、各コイル線同士を高さ方向に所定の距離を開ける必要がある。この結果、共鳴コイルが高さ方向に厚くなる。
【0011】
なお、特開2003−79597号公報に記載された撮像装置が利用する核磁気共鳴現象とは、簡単に説明すると、水の水素原子に磁気を当てると、共鳴して信号を発生する現象のことである。身体の部位および臓器によって水分量(水素原子の量)が異なるため、MRIは、人に身体に磁気を照射し、上記核磁気共鳴現象によって発せられた信号を適宜受信し、受信した信号に基づいて身体の断面画像を作成している。
【0012】
このように、MRIなどが利用する核磁気共鳴現象と、電力の送電や受電で利用される電磁界共振結合とは異なる現象を利用するものであり、その構造も全く異なる。
【0013】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、位置ずれしても送電効率または受電効率の低減を抑制することができると共に、薄型化が図られた共鳴コイルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る共鳴コイルは、電流が流れることで形成される磁界の向きが同じ向きとされた複数の単位コイルを含む共鳴コイルである。上記複数の単位コイルは、コイル中心線の周囲に配置される。上記共鳴コイルをコイル中心線上から見ると、共鳴コイルを形成するコイル線は互いに重ならないように形成される。
【0015】
好ましくは、共鳴コイルは、上記コイル中心線の周囲を取り囲むように延びるコイル線によって形成されると共に、第1接続端部および第2接続端部を含む外側導線部と、一端が第1接続端部に接続されて他端が第2接続端部に接続されると共に、外側導線部によって囲まれる領域内に配置され、コイル線によって形成された内側導線部とを備える。上記外側導線部によって囲まれる第1領域内には、内側導線部と外側導線部とによって囲まれた複数の第2領域が形成される。上記第2領域を囲む外側導線部および内側導線部によって単位コイルが形成される。
【0016】
好ましくは、上記外側導線部は、コイル線を曲げて形成され、内側導線部は、第1接続端部および第2接続端部からコイル線を曲げて形成される。好ましくは、上記第1接続端部と第2接続端部と内側導線部とによって囲まれる第3領域の面積よりも、複数の第2領域が占める面積の方が広い。
【0017】
好ましくは、上記内側導線部は、外側導線部からコイル中心線側に向かう方向に延びる幹部と、幹部から分岐するよう延び、コイル線によって形成された枝部とを含む。
【0018】
好ましくは、上記外側導線部は、第1接続端部および第2接続端部が形成された第1辺部と、一端が第1辺部の一端に接続された第2辺部と、一端が第1辺部の他端に接続された第3辺部と、第2辺部の他端および第3辺部の他端を接続する第4辺部とを含む。上記幹部は、第1辺部から第4辺部に向けて延び、内側導線部は、幹部から第2辺部に向けて延びる第1枝部と、幹部から第3辺部に向けて延びる第2枝部とを含む。
【0019】
好ましくは、共鳴コイルは、コイル中心線の周囲を取り囲むように延びるコイル線によって形成されると共に、第1接続端部および第2接続端部を含む外側導線部と、一端が第1接続端部に接続されて他端が第2接続端部に接続されると共に、外側導線部によって囲まれる領域内に配置され、コイル線によって形成された内側導線部とを備える。上記外側導線部によって囲まれる第1領域内には、内側導線部と外側導線部とによって囲まれた複数の第2領域と、第1接続端部と第2接続端部と内側導線部とによって囲まれる第3領域と、第3領域以外の領域であって、内側導線部によって囲まれた複数の第4領域とが形成される。上記単位コイルは、第2領域を囲む内側導線部および外側導線部と、第4領域を形成する内側導線部とによって形成される。
【0020】
好ましくは、上記複数の第2領域と複数の第4領域とが占める領域の面積は、第3領域が占める領域の面積よりも広い。
【0021】
好ましくは、上記内側導線部は、外側導線部からコイル中心線側に向かう方向に延る幹部と、幹部から分岐するように形成された枝部と、枝部の長さ方向の中間部から突出するように形成された突出部とを含む。
【0022】
好ましくは、上記内側導線部は、外側導線部の延在方向に間隔をあけて複数形成される。本発明に係る送電装置は、上記コイル線が仮想平面上に位置するように形成される。好ましくは、受電装置に設けられた受電用共鳴コイルと電磁界共振結合する送電用共鳴コイルと、外部電源から電力が供給され、電磁誘導によって送電用共鳴コイルに電力を供給する第1コイルとを備える。上記送電用共鳴コイルは、請求項1から請求項11のいずれかに記載の共鳴コイルである。
【0023】
本発明に係る受電装置は、送電装置に設けられた送電用共鳴コイルと電磁界共振結合する受電用共鳴コイルと、電磁誘導によって受電用共鳴コイルから電力を受け取る第2コイルとを備える。上記受電用共鳴コイルは、請求項1から請求項11のいずれかに記載の共鳴コイルである。本発明に係る電力送電システムは、上記送電装置と、上記受電装置とを備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る共鳴コイルによれば、位置ずれしたとしても送電または受電効率の低減を抑制することができ、さらに、共鳴コイルの薄型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態1の形態に係る電動車両100と、電動車両100に電力を給電する外部給電装置200とを模式的に示す模式図である。
【図2】共鳴法による送電および受電の原理を説明するための模式図である。
【図3】電流源(磁流源)からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。
【図4】設備側コイルユニット201から車両側コイルユニット101に電力を送電するときにおける車両側共鳴コイル110と、設備側共鳴コイル240と模式的に示す斜視図である。
【図5】車両側共鳴コイル110を示す平面図である。
【図6】車両側共鳴コイル110に電流が流れたときの様子を示す平面図である。
【図7】受電時における車両側共鳴コイル110の様子を示す平面図である。
【図8】設備側共鳴コイル240と車両側共鳴コイル110との間で電力の送電および受電がなされているときにおいて、設備側共鳴コイル240と、車両側共鳴コイル110とが水平方向に位置ずれした状態を示す平面図である。
【図9】本実施の形態2に係る車両側共鳴コイル110を示す平面図である。
【図10】車両側共鳴コイル110に電流が流れたときの様子を示す平面図である。
【図11】本実施の形態に係る設備側共鳴コイル240を示す平面図である。
【図12】車両側共鳴コイル110の第1変形例を示す平面図である。
【図13】車両側共鳴コイル110の第2変形例を示す平面図である。
【図14】車両側共鳴コイル110の第3変形例を示す平面図である。
【図15】第1比較例としての共鳴コイルモデル110Aを示す斜視図である。
【図16】図15に示す共鳴コイルモデル110Aを用いて電力を送電・受電したときの送電・受電効率を示すグラフである。
【図17】第2比較例としての共鳴コイル110Bを示す斜視図である。
【図18】図17に示す共鳴コイル110Bをモデル化した共鳴コイルモデル110Cの斜視図である。
【図19】図18に示す共鳴コイルモデル110Cを用いて電力を送電・受電したときの送電・受電効率を示すグラフである。
【図20】第3比較例としての共鳴コイル110Eを示す斜視図である。
【図21】図20に示す共鳴コイル110Eをモデル化した共鳴コイルモデル110Fを示す斜視図である。
【図22】2つの共鳴コイルモデル110Fの間で送電・受電をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図23】本実施の形態1に係る車両側共鳴コイル110をモデル化したときの共鳴コイルモデル110Gを示す斜視図である。
【図24】図23に示す共鳴コイルモデル110Gを用いて電力を送電・受電したときの送電・受電効率を示すグラフである。
【図25】図9に示す車両側共鳴コイル110をモデル化した共鳴コイルモデル110Hを示す斜視図である。
【図26】図25に示す共鳴コイルモデル110Hを用いて電力を送電・受電したときの送電・受電効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態1)
図1から図8を用いて、本発明の実施1の形態に係る車両および外部給電装置について説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態1の形態に係る電動車両100と、電動車両100に電力を給電する外部給電装置200とを含む送電・受電システムを模式的に示す模式図である。
【0028】
電動車両100は、外部給電装置200が設けられた駐車スペース202の所定位置に停車して、主に、外部給電装置200から電力を受電する。なお、電動車両100は、外部給電装置200に電力を供給することもできる。
【0029】
駐車スペース202には、電動車両100を所定の位置に停車するように、輪止やラインが設けられている。
【0030】
外部給電装置200は、交流電源210に接続された高周波電力ドライバ220と、この高周波電力ドライバ220に接続された設備側コイルユニット201とを含む。設備側コイルユニット201は、主に、非接触電力送電装置として機能し、設備側コイルユニット201は、設備側共鳴コイル240と、設備側共鳴コイル240に接続された設備側キャパシタ250と、設備側共鳴コイル240と電気的に接続される設備側電磁誘導コイル230とを含む。
【0031】
交流電源210は、車両外部の電源であり、たとえば、系統電源である。高周波電力ドライバ220は、交流電源210から受け取る電力を高周波の電力に変換し、その変換した高周波電力を設備側電磁誘導コイル230に供給する。なお、高周波電力ドライバ220が生成する高周波電力の周波数は、たとえば1M〜数十MHzである。
【0032】
設備側電磁誘導コイル230は、上記の高周波電力が供給されることで、設備側電磁誘導コイル230から発生する磁束量が経時的に変化する。
【0033】
設備側共鳴コイル240は、設備側電磁誘導コイル230と電磁誘導結合しており、設備側共鳴コイル240からの磁束量が変化することで、電磁誘導により設備側共鳴コイル240にも高周波の電流が流れる。
【0034】
この際、設備側共鳴コイル240に流れる高周波電流の周波数と、設備側電磁誘導コイル230のリラクタンスおよび設備側キャパシタ250の容量Cによって決まる共振周波数とが実質的に一致するように、設備側電磁誘導コイル230に電流が供給される。設備側共鳴コイル240および設備側キャパシタ250は、LC共振器として機能する。
【0035】
そして、設備側共鳴コイル240の周囲に当該共振周波数と実質的に同じ周波数の電界および磁界が形成される。このようにして、設備側共鳴コイル240の周囲には、所定周波数の電磁場(電磁界)が形成される。
【0036】
そして、電動車両100は、設備側共鳴コイル240および設備側キャパシタ250によって形成されたLC共振器と同じ共振周波数を持つLC共振器を備えており、当該LC共振器と、設備側共鳴コイル240および設備側キャパシタ250によって形成されたLC共振器とが電磁界共振結合することで、外部給電装置200から電動車両100に電力が送電される。
【0037】
なお、電動車両100と外部給電装置200とは、設備側共鳴コイル240および設備側キャパシタ250によって形成される電磁場のうち、近接場(エバネッセント場)を主に利用して、外部給電装置200側から電動車両100に電力を供給している。当該電磁共鳴法を利用したワイヤレス送電・受電方法の詳細については、後述する。
【0038】
電動車両100は、主に非接触電力受電装置として機能する車両側コイルユニット101と、車両側コイルユニット101に接続された整流器130と、整流器130に接続されたDC/DCコンバータ140と、このDC/DCコンバータ140に接続されたバッテリ150と、パワーコントロールユニット(PCU(Power Control Unit))160と、このパワーコントロールユニット160に接続されたモータユニット170と、DC/DCコンバータ140やパワーコントロールユニット160などの駆動を制御する車両ECU(Electronic Control Unit)180とを備える。
【0039】
なお、本実施の形態に係る電動車両100は、図示しないエンジンを備えたハイブリッド車両であるが、モータにより駆動される車両であれば、電気自動車や燃料電池車両も含む。
【0040】
車両側コイルユニット101は、車両側共鳴コイル110と、この車両側共鳴コイル110に接続された車両側キャパシタ111と、車両側共鳴コイル110と電磁誘導により結合する車両側電磁誘導コイル120とを含む。なお、車両側コイルユニット101の詳細な構成については後述する。
【0041】
車両側共鳴コイル110と車両側キャパシタ111は、LC共振器を構成しており、車両側共鳴コイル110および車両側キャパシタ111によって形成されたLC共振器の共振周波数と、設備側共鳴コイル240および設備側キャパシタ250によって形成されたLC共振器の共振周波数とは実質的に一致している。
【0042】
ここで設備側共鳴コイル240に、当該LC共振器の共振周波数と同じ周波数の高周波電流が供給されると、周波数が当該共振周波数の電磁場(電磁界)が発生する。
【0043】
そして、設備側共鳴コイル240から、たとえば、数m以内程度の範囲内に、車両側共鳴コイル110が配置されると、車両側共鳴コイル110および車両側キャパシタ111によって形成されるLC共振器が共鳴して、車両側共鳴コイル110に電流が流れる。このように、車両側共鳴コイル110と、設備側共鳴コイル240とは、電磁界共振結合する。
【0044】
車両側電磁誘導コイル120は、車両側共鳴コイル110と電磁誘導結合して、車両側共鳴コイル110が受電した電力を取り出す。車両側電磁誘導コイル120が車両側共鳴コイル110から順次電力を取り出すことで、電磁場を介して車両側共鳴コイル110に設備側共鳴コイル240から順次電力が供給される。このように、車両側コイルユニット101と、設備側コイルユニット201とは、所謂、電磁共鳴方式のワイヤレス送電・受電方式が採用されている。
【0045】
整流器130は、車両側電磁誘導コイル120に接続されており、車両側電磁誘導コイル120から供給される交流電流を直流電流に変換して、DC/DCコンバータ140に供給する。
【0046】
DC/DCコンバータ140は、整流器130から供給された直流電流の電圧を調整して、バッテリ150に供給する。
【0047】
パワーコントロールユニット160は、バッテリ150に接続されたコンバータと、このコンバータに接続されたインバータとを含み、コンバータは、バッテリ150から供給される直流電流を調整(昇圧)して、インバータに供給する。インバータは、コンバータから供給される直流電流を交流電流に変換して、モータユニット170に供給する。
【0048】
モータユニット170は、たとえば、三相交流モータなどが採用されており、パワーコントロールユニット160のインバータから供給される交流電流によって駆動する。
【0049】
なお、バッテリ150に蓄積された電力を交流電源210に供給する際には、たとえば、DC/DCコンバータ140がバッテリ150からの電流を昇圧して、整流器130に供給する。整流器130は、DC/DCコンバータ140からの直流電流を高周波電流に変換する。この高周波電流の周波数は、上記の共振周波数とされている。
【0050】
整流器130は、この高周波電流を車両側電磁誘導コイル120に供給する。車両側共鳴コイル110は、電磁誘導によって車両側電磁誘導コイル120から高周波電流を受け取る。この高周波電流の周波数は、共振周波数と実質的に一致しており、車両側共鳴コイル110および車両側キャパシタ111によって形成されたLC共振器が共振する。そして、車両側共鳴コイル110の周囲に周波数が上記共振周波数とされた電磁場(電磁界)が形成される。
【0051】
そして、車両側共鳴コイル110から、たとえば、数m程度の範囲内に設備側共鳴コイル240が配置されることで、設備側共鳴コイル240および設備側キャパシタ250によって形成されるLC共振器が共鳴する。そして、設備側共鳴コイル240に供給された電力は、電磁誘導によって設備側電磁誘導コイル230に引き出される。設備側共鳴コイル240に引き出された電力は、高周波電力ドライバ220を通って、交流電源210に供給される。
【0052】
なお、電動車両100がハイブリッド車両の場合には、電動車両100は、エンジン、動力分割機構とをさらに備え、モータユニット170は、発電機として主に機能するモータジェネレータと、電動機として主に機能するモータジェネレータとを含む。
【0053】
上記のように本実施の形態1に係る車両側コイルユニット101と設備側コイルユニット201との間は、ワイヤレス送電・受電方式であって、電磁場を利用した共鳴法が採用されている。
【0054】
図2は、共鳴法による送電および受電の原理を説明するための模式図であって、この図2を用いて、共鳴法による送電および受電の原理を説明する。
【0055】
図2を参照して、この共鳴法では、2つの音叉が共鳴するのと同様に、同じ固有振動数を有する2つのLC共振コイルが電磁場(近接場)において共鳴することによって、一方のコイルから他方のコイルへ電磁場を介して電力が伝送される。
【0056】
具体的には、高周波電源310に一次コイル320を接続し、電磁誘導により一次コイル320と磁気的に結合される一次自己共振コイル330へ、1Mから数十MHzの高周波電力を給電する。一次自己共振コイル330は、コイル自身のインダクタンスと浮遊容量(コイルにコンデンサが接続される場合には、コンデンサの容量を含む)とによるLC共振器であり、一次自己共振コイル330と同じ共振周波数を有する二次自己共振コイル340と電磁場(近接場)を介して共鳴する。そうすると、一次自己共振コイル330から二次自己共振コイル340へ電磁場を介してエネルギー(電力)が移動する。二次自己共振コイル340へ移動したエネルギー(電力)は、電磁誘導により二次自己共振コイル340と磁気的に結合される二次コイル350によって取出され、負荷360へ供給される。なお、共鳴法による送電は、一次自己共振コイル330と二次自己共振コイル340との共鳴強度を示すQ値がたとえば100よりも大きいときに実現される。
【0057】
なお、図2の構成と図1の構成の対応関係を示すと、図1に示す交流電源210および高周波電力ドライバ220は、図2の高周波電源310に相当する。また、図1に示す設備側電磁誘導コイル230は、図2の一次コイル320に相当する。さらに、図1に示す設備側共鳴コイル240および設備側キャパシタ250は、図3の一次自己共振コイル330および一次自己共振コイル330の浮遊容量に相当する。
【0058】
図1に示す車両側共鳴コイル110および車両側キャパシタ111は、図2に示す二次自己共振コイル340および二次自己共振コイル340の浮遊容量とに相当する。
【0059】
図1に示す車両側電磁誘導コイル120は、図2の二次コイル350に相当する。そして、図1に示す整流器130、DC/DCコンバータ140およびバッテリ150は、図2に示す負荷360に相当する。
【0060】
さらに、本実施の形態1に係るワイヤレス送電・受電方式は、電磁界の「静電界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用することで、送電および受電効率の向上が図られている。
【0061】
図3は、電流源(磁流源)からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。図3を参照して、電磁界は3つの成分から成る。曲線k1は、波源からの距離に反比例した成分であり、「輻射電界」と称される。曲線k2は、波源からの距離の2乗に反比例した成分であり、「誘導電界」と称される。また、曲線k3は、波源からの距離の3乗に反比例した成分であり、「静電界」と称される。
【0062】
「静電界」は、波源からの距離とともに急激に電磁波の強度が減少する領域であり、共鳴法では、この「静電界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用してエネルギー(電力)の伝送が行なわれる。すなわち、「静電界」が支配的な近接場において、同じ固有振動数を有する一対の共鳴器(たとえば一対のLC共振コイル)を共鳴させることにより、一方の共鳴器(一次自己共振コイル)から他方の共鳴器(二次自己共振コイル)へエネルギー(電力)を伝送する。この「静電界」は遠方にエネルギーを伝播しないので、遠方までエネルギーを伝播する「輻射電界」によってエネルギー(電力)を伝送する電磁波に比べて、共鳴法は、より少ないエネルギー損失で送電することができる。
【0063】
このように、本実施の形態1に係る電動車両100と、外部給電装置200とは、電磁場の近接場の共鳴を利用して、電動車両100の車両側コイルユニット101と、外部給電装置200の設備側コイルユニット201との間で電力の送電や受電を行っている。
【0064】
なお、図4は、設備側コイルユニット201から車両側コイルユニット101に電力を送電するときにおける車両側共鳴コイル110と、設備側共鳴コイル240と模式的に示す斜視図である。
【0065】
このように、電力送電を行う際には、車両側共鳴コイル110と設備側共鳴コイル240とは互いに対向するように配置される。
【0066】
この図4からも明らかなように、車両側共鳴コイル110と設備側共鳴コイル240とは、実質的に同一構造とされている。
【0067】
図5は、車両側共鳴コイル110を示す平面図である。この図5を参照して、車両側共鳴コイル110は、コイル線5を曲げて形成されており、このコイル線5は巻回中心線Oの周囲を延びるように形成されている。
【0068】
車両側共鳴コイル110は、巻回中心線Oの周囲を取り囲むようにコイル線5を曲げて形成された外側導線部10と、この外側導線部10に接続されると共に、外側導線部10によって囲まれる領域内に配置され、コイル線5によって形成された内側導線部11とを含む。
【0069】
本実施の形態においては、外側導線部10は、方形形状とされているが、外側導線部10の形状としては円形、多角形形状、楕円形など様々な形状を採用することができることはいうまでもない。
【0070】
外側導線部10は、辺部12と、一端が辺部12の一端に接続された辺部13と、一端が辺部12の他端に接続された辺部15と、辺部13の他端および辺部15の他端を接続する辺部14とを含む。各辺部12〜15の長さは、たとえば、1m程度とされている。
【0071】
辺部12には接続端部16および接続端部17が形成されている。内側導線部11の一端は、接続端部16に接続され、内側導線部11の他端は接続端部17に接続されている。
【0072】
内側導線部11は、外側導線部10から巻回中心線Oに向かう方向に延びる幹部20と、この幹部20から分岐するように形成された枝部21,22とを含む。
【0073】
幹部20は、辺部12から辺部14に向けて延びており、巻回中心線Oを超えて、辺部14の近傍にまで達している。
【0074】
幹部20は、互いに略平行に配置された幹線部23および幹線部24を含む。幹線部23は、接続端部16に接続され、接続端部16から辺部14の近傍に達するように延びている。幹線部24は、接続端部17に接続され、接続端部17から辺部14の近傍に達するように形成されている。幹線部23および幹線部24の先端部には、車両側キャパシタ111が接続されている。
【0075】
なお、この図5に示す例においては、外側導線部10および内側導線部11は、1本のコイル線5を曲げて形成されており、外側導線部10と内側導線部11とは一体的に接続されている。
【0076】
幹線部23の長さ方向中央部には、接続端部25,26が形成されており、幹線部24の長さ方向の中央部には、接続端部27,28が形成されている。
【0077】
接続端部25,26には、枝部22が接続されており、接続端部27,28には、枝部21が接続されている。
【0078】
枝部22の一端は、接続端部25に接続され、枝部22の他端は接続端部26に接続されている。枝部22は、幹部20から分岐するように形成されており、枝部22は、コイル線5を曲げて形成されている。
【0079】
具体的には、枝部22は、接続端部25からコイル線5を曲げて形成された分岐導線部30と、分岐導線部30の先端部からコイル線5を曲げて形成された分岐導線部31と、分岐導線部31の先端部でコイル線5を曲げて形成された分岐導線部32とを含み、分岐導線部32の先端部が接続端部26に接続されている。
【0080】
枝部21は、接続端部27からコイル線5を曲げて分岐導線部33と、分岐導線部33の先端部でコイル線5を曲げて形成された分岐導線部34と、この分岐導線部34の先端部でコイル線5を曲げて形成された分岐導線部35とを含み、分岐導線部35の先端部が接続端部28に接続されている。
【0081】
幹線部23および幹線部24の間隔と、分岐導線部30および分岐導線部32の間隔と、分岐導線部35および分岐導線部33の間隔は、いずれも、5cm程度とされている。そして、分岐導線部31および辺部13の間隔と、分岐導線部34および辺部15の間隔とは、たとえば、5cm程度とされている。このように、近接するコイル線間の距離は、絶縁性が確保できる程度の距離とされている。
【0082】
外側導線部10によって囲まれる領域内には、内側導線部11と外側導線部10とによって囲まれる複数の領域R1〜R4が形成されている。
【0083】
辺部13の一部と、辺部12の一部と、幹線部23と、分岐導線部30とによって、領域R1が囲まれている。そして、領域R1を形成する辺部13の一部と、辺部12の一部と、幹線部23と、分岐導線部30とによって単位コイル1が形成されている。
【0084】
同様に、辺部14の一部と、辺部13の一部と、分岐導線部32と、幹線部23の一部とによって領域R2が囲まれており、この領域R2を形成するコイル線によって単位コイル2が形成されている。
【0085】
幹線部24の一部と、分岐導線部35と、辺部15の一部と、辺部14の一部とによって領域R3が囲まれており、分岐導線部35と、辺部15の一部と、辺部14の一部とによって単位コイル3が形成されている。分岐導線部33と、幹線部24の一部と、辺部12の一部と、辺部15の一部とによって領域R4が囲まれており、分岐導線部33と、幹線部24の一部と、辺部12の一部と、辺部15の一部とによって単位コイル4が形成されている。
【0086】
このように、外側導線部10によって囲まれる領域内には、外側導線部10と内側導線部11とによって囲まれた複数の領域R1〜R4が形成されている。そして、外側導線部10および内側導線部11のうち、領域R1〜R4を形成する部分に各々単位コイルが形成されている。
【0087】
ここで、図からも明らかなように、複数の単位コイル1〜5を含む車両側共鳴コイル110において、車両側共鳴コイル110を巻回中心線O上から車両側共鳴コイル110を見たときに、車両側共鳴コイル110を形成するコイル線5が重なる部分がない。このため、車両側共鳴コイル110が高さ方向に厚くなる部分がなく、車両側共鳴コイル110の薄型化が図られている。
【0088】
そして、車両側共鳴コイル110は、コイル線5を同一仮想平面上でコイル線5を曲げることで形成されており、車両側共鳴コイル110の厚さは、実質的にコイル線5の厚さと一致する。この仮想平面は、巻回中心線Oと垂直な仮想平面である。
【0089】
なお、図4などからも明らかなように、設備側共鳴コイル240も、車両側共鳴コイル110と同様に構成されており、設備側共鳴コイル240も車両側共鳴コイル110と同様に薄型化が図られている。
【0090】
図5において、接続端部16、幹線部23、分岐導線部30、分岐導線部31、分岐導線部32、幹線部24、分岐導線部35、分岐導線部34、分岐導線部33、および接続端部17によって囲まれる領域を領域R5とする。領域R1と領域R2と領域R3と領域R4とが占める領域の合計は、領域R5が占める領域よりも大きい。
【0091】
図6は、車両側共鳴コイル110に電流が流れたときの様子を示す平面図である。この図6に示すように、各単位コイル1〜4に流れる電流方向は一致しているため、単位コイル1〜4が形成する磁界の向きは、いずれも一致している。
【0092】
図7は、受電時における車両側共鳴コイル110の様子を示す平面図である。
受電時には、車両側共鳴コイル110には、周波数が共振周波数とされた交流電流が流れ、車両側共鳴コイル110の周囲には、電磁界(近接場)が形成される。この図7においては、形成された電磁界のうち、強度の高い電磁界の領域である強電界領域R6を破線で示し、強電界領域R6は、車両側共鳴コイル110のコイル線5の周囲に形成される。ここで、外側導線部10によって囲まれた領域のうち、大部分を単位コイル1〜4が占めるため、広い領域で強電界領域R6が形成されている。
【0093】
なお、設備側共鳴コイル240も、車両側共鳴コイル110と同様に形成されており、設備側共鳴コイル240と車両側共鳴コイル110との間で電力の送電および受電が行われているときには、設備側共鳴コイル240を形成するコイル線の周囲にも、強電界領域が形成される。
【0094】
ここで、図4に示すように、車両側共鳴コイル110と、設備側共鳴コイル240とが互いに高さ方向に配列しているときには、車両側共鳴コイル110と設備側共鳴コイル240との電気的な結合度が高くなり、設備側共鳴コイル240から車両側共鳴コイル110に良好に電力が送電される。
【0095】
図8は、設備側共鳴コイル240と車両側共鳴コイル110との間で電力の送電および受電がなされているときにおいて、設備側共鳴コイル240と、車両側共鳴コイル110とが水平方向に位置ずれした状態を示す平面図である。
【0096】
この図8において、設備側共鳴コイル240は、車両側共鳴コイル110と同様に、外側導線部40と、外側導線部40の内側に配置された内側導線部41とを含む。そして、設備側共鳴コイル240には、周波数が共振周波数とされた交流電流がながれ、設備側共鳴コイル240の周囲には、強電界領域R7が形成されている。
【0097】
この図8に示す状態では、車両側共鳴コイル110は、設備側共鳴コイル240に対して水平方向に位置ずれしている。
【0098】
設備側共鳴コイル240には内側導線部41が形成され、車両側共鳴コイル110には内側導線部11が形成されているため、車両側共鳴コイル110は、強電界領域R7と多くの位置で重なり合うことがわかる。
【0099】
このように、複数の部分で車両側共鳴コイル110が強電界領域R7と重なり合うことで、車両側共鳴コイル110と設備側共鳴コイル240との電気的な結合が維持され、車両側共鳴コイル110は設備側共鳴コイル240から良好に電力を受け取ることができる。
【0100】
この結果、車両側共鳴コイル110が設備側共鳴コイル240に対して位置ずれしたとしても、送電および受電効率の低下を抑制することができる。
【0101】
(実施の形態2)
図9から図14および適宜図1〜8を用いて、本実施の形態に係る車両側共鳴コイル110について説明する。なお、図8に示す構成のうち、上記図1から図8に示す構成と同一または相当する構成については、その説明を省略する場合がある。
【0102】
図9は、本実施の形態2に係る車両側共鳴コイル110を示す平面図である。この図9に示すように、車両側共鳴コイル110は、巻回中心線Oの周囲を取り囲むように形成された外側導線部10と、外側導線部10に接続されると共に、外側導線部10によって囲まれた領域内に配置された内側導線部11とを含む。
【0103】
車両側共鳴コイル110は、1本のコイル線5を曲げて形成されており、さらに、巻回中心線O上から車両側共鳴コイル110を見たときに、コイル線5に重なり部分がない。このため、本実施の形態2に係る車両側共鳴コイル110においても、高さ方向(巻回中心線Oの延在方向)の薄型化が図られている。
【0104】
内側導線部11の一端は、接続端部16に接続され、内側導線部11の他端は、接続端部17に接続されている。
【0105】
内側導線部11は、幹線部23および幹線部24を含む幹部20と、幹線部23から分岐するように形成された、枝部50,51,52と、幹部20の幹線部24から分岐するように形成された枝部53,54,55とを含む。
【0106】
枝部50,51,52は、幹線部23から張り出すようコイル線5を曲げることで形成されている。枝部50,51,52は、接続端部16から幹線部23の先端部に向けて順次配列するように形成されている。
【0107】
枝部50には、枝部50の長さ方向の中間部から突出する突出部56,57が形成されている。枝部52にも、枝部52の長さ方向の中間部から突出する突出部58,59が形成されている。枝部55には、枝部55の長さ方向の中間部から突出する突出部62,63が形成されている。枝部53には、枝部53の長さ方向の中間部から突出する突出部60,61が形成されている。
【0108】
なお、突出部56,57,58,59,60,61,62,63は、枝部50,52,53,55から張り出すようにコイル線5を曲げることで形成されており、コイル線5が高さ方向に重なり合う部分は形成されていない。
【0109】
外側導線部10によって囲まれた領域内には、接続端部16と、内側導線部11と、接続端部17とによって囲まれた領域R5が形成されている。
【0110】
そして、外側導線部10によって囲まれた領域内であって、領域R5以外の部分には、外側導線部10および内側導線部11によって囲まれた複数の領域R10,R11,R13,R15,R16,R17,R18,R19,R21,R23,R24,R25と、内側導線部11によって囲まれた領域R12,R14,R20,R22とが形成されている。
【0111】
具体的には、領域R10は、辺部12の一部と、幹線部23の一部と、枝部50の一部と、突出部56の一部とによって取り囲まれている。領域R11は、辺部13の一部と、辺部12の一部と、突出部56の一部と、枝部50の一部とによって囲まれている。領域R12は、幹線部23の一部と、枝部50の一部と、突出部57の一部と、枝部51の一部とによって囲まれている。領域R13は、辺部13の一部と、突出部57の一部と、枝部50の一部と、枝部51の一部とによって囲まれている。
【0112】
領域R14は、枝部51の一部と、幹線部23の一部と、枝部52の一部と、突出部58の一部とによって取り囲まれている。領域R15は、辺部13の一部と、枝部51の一部と、突出部58の一部と、枝部52の一部とによって囲まれている。
【0113】
領域R16は、幹線部23の一部と、枝部52の一部と、突出部59の一部と、辺部14の一部とによって囲まれている。領域R17は、辺部13の一部と、突出部59の一部と、枝部52の一部と、辺部14の一部とによって囲まれている。
【0114】
領域R18は、辺部14の一部と、幹線部24の一部と、枝部53の一部と、突出部60の一部とによって取り囲まれている。領域R19は、辺部14の一部と、辺部15の一部と、突出部60の一部と、枝部53の一部とによって囲まれている。領域R20は、幹線部24の一部と、枝部53の一部と、突出部61の一部と、枝部54の一部とによって囲まれている。領域R21は、辺部15の一部と、突出部61の一部と、枝部53の一部と、枝部54の一部とによって囲まれている。
【0115】
領域R22は、枝部54の一部と、幹線部24の一部と、枝部55の一部と、突出部62の一部とによって取り囲まれている。領域R23は、枝部54の一部と、辺部15の一部と、突出部62の一部と、枝部55の一部とによって囲まれている。領域R24は、幹線部24の一部と、枝部55の一部と、突出部63の一部と、辺部12の一部とによって囲まれている。領域R25は、枝部55の一部と、突出部63の一部と、辺部12の一部と、辺部15の一部とによって囲まれている。
【0116】
図10は、車両側共鳴コイル110に電流が流れたときの様子を示す平面図である。この図10および図11において、車両側共鳴コイル110には、複数の単位コイル70〜85が形成されている。
【0117】
ここで、単位コイル70,71,73,75,76,77,78,79,81,83,84,85は、外側導線部10および内側導線部11のうち、領域R10,R11,R13,R15,R17,R16,R18,R19,R21,R23,R24,R25を囲む部分によって形成されている。
【0118】
単位コイル72,74,80,82は、内側導線部11のうち、領域R12,R14,R20,R22を囲む部分によって形成されている。
【0119】
なお、図10からも明らかなように、車両側共鳴コイル110に電流が流れた際に、各単位コイル70〜85が形成する磁界の方向は一致していることがわかる。
【0120】
図11は、本実施の形態に係る設備側共鳴コイル240を示す平面図であり、この図11に示すように、本実施の形態2の設備側共鳴コイル240は、図9などに示す車両側共鳴コイル110と実質的に同じ形状とされている。
【0121】
このように形成された車両側共鳴コイル110および設備側共鳴コイル240によれば、車両側共鳴コイル110と設備側共鳴コイル240とが位置ずれしたとしても、車両側共鳴コイル110と設備側共鳴コイル240との重なり部分が多く、送電および受電効率の低減を図ることができる。
【0122】
なお、本実施の形態1,2においては、内側導線部11は1つとされているが、内側導線部11を複数形成してもよい。
【0123】
図12は、車両側共鳴コイル110の第1変形例を示す平面図である。この図12に示すように、外側導線部10の周方向に間隔をあけて複数の内側導線部11A〜11Dを形成してもよい。さらに、各内側導線部11A〜11Dには、枝部や突出部を形成してもよい。
【0124】
なお、上記実施の形態2に係る車両側共鳴コイル110においては、各単位コイル70〜85の大きさが実質的に一致するように形成されているが、位置によって単位コイル70〜85の大きさを異ならせてもよい。
【0125】
図13は、車両側共鳴コイル110の第2変形例を示す平面図である。この図13に示す例においては、単位コイル74,76,78,81の大きさが他の単位コイルよりも大きくなるように形成されている。
【0126】
なお、図5などに示す上記実施の形態1に係る車両側共鳴コイル110においては、幹部20の長さ方向の中央部から幹部20に垂直な方向に延びる枝部21,22が形成されているが、さらに複数の枝部を形成してもよい。
【0127】
図14は、車両側共鳴コイル110の第3変形例を示す平面図であり、この図14に示すように放射状に複数の枝部21A〜21C,22A〜22Cを形成してもよい。
【0128】
図15から図26を用いて、本実施の形態1,2に係る車両側共鳴コイル110および設備側共鳴コイル240を用いて、送電および受電を行ったときの送電・受電効率と、比較例の車両側自己共振コイルおよび設備側自己共振コイルを用いて送電および受電を行ったときの送電・受電効率について説明する。
【0129】
図15は、第1比較例としての共鳴コイルモデル110Aを示す斜視図である。共鳴コイルモデル110Aの形状は、一辺が1mの正方形形状とされている。2つの共鳴コイルモデル110Aを用いて、一方の共鳴コイルモデル110Aから他方の共鳴コイルモデル110Aに電力を送電したときにおける送電・受電効率をシミュレーションソフトした結果を図16に示す。なお、シミュレーションソフトとしては、FEKO((3次元電磁界解析シミュレータ):EMSS社製)を採用した。
【0130】
図16は、図15に示す共鳴コイルモデル110Aを2つ用いて電力を送電・受電したときの送電・受電効率を示すグラフである。
【0131】
図16において、横軸は、共鳴コイルモデル110Aと設備側共鳴コイル240Aとの水平方向の相対的な位置ずれ量dx(m)を示し、縦軸は、鉛直方向の相対的な位置ずれ量dz(m)を示す。なお、図16において、(0,0)は共鳴コイルモデル110Aと設備側共鳴コイル240Aとが一致していることを示す。
【0132】
さらに、図16に示す効率領域E1〜効率領域E7は、各位置における送電・受電効率を示すものである。効率領域E1が最も送電・受電効率の高い領域を示し、効率領域E1から効率領域E2,効率領域E3,効率領域E4,効率領域E5,効率領域E6,効率領域E7となるにつれて、送電・受電効率が低下する。そして、効率領域E7が最も送電・受電効率が低い領域を示す。
【0133】
図17は、第2比較例としての共鳴コイル110Bを示す斜視図である。共鳴コイル110Bは、複数の小コイル112A,112B,112C,112Dを含み、小コイル112A〜112Dは、巻回中心線Oの周囲に環状に配置されている。
【0134】
共鳴コイル110Bは、小コイル112A〜112Dのうち、互いに隣り合う小コイル112A〜112D同士を接続する接続線113A〜113Dと、接続線113Bに接続されたキャパシタ111Aとを含む。各接続線113A〜113Dは、小コイル112A〜112Dよりも、巻回中心線Oの近傍に配置されている。なお、接続線113Aは、接続線113Bの上方をとおり、接続線113Bは、接続線113Cの上方を通る。接続線113Cは、接続線113Dの上方をとおり、接続線113Dは、接続線113Aの上方を通る。
【0135】
図18は、図17に示す共鳴コイル110Bをモデル化した共鳴コイルモデル110Cの斜視図である。なお、共鳴コイルモデル110Cの一辺の長さは、1mである。
【0136】
2つの共鳴コイルモデル110Cを用いて、一方の共鳴コイルモデル110Cと、他方の共鳴コイルモデル110Cとの間で電力の送電・受電をシミュレーションした結果を図19に示す。
【0137】
なお、この図19に示すグラフにおいても、横軸は、共鳴コイルモデル110C同士の水平方向の相対的な位置ずれ量dx(m)を示し、縦軸は、鉛直方向の相対的な位置ずれ量dz(m)を示す。なお、図19に示す効率領域E1〜効率領域E7は、図16に示す効率領域E1〜効率領域E7に対応している。
【0138】
図20は、第3比較例としての共鳴コイル110Eを示す斜視図である。この共鳴コイル110Eは、巻回中心線Oの周囲に配置された複数の小コイル112A〜小コイル112Dと、小コイル112A〜112Dの外周側に配置された外側コイル114と、複数の接続部115A,115B,115C,115Dを含む。
【0139】
接続部115Aは、外側コイル114と小コイル112Aとを接続し、接続部115Bは、外側コイル114と小コイル112Bとを接続する。接続部115Cは、外側コイル114と、小コイル112Cとを接続し、接続部115Dは、外側コイル114と小コイル112Dとを接続する。接続部115A,115B,115C,115Dは、小コイル112A,112B,112C,112Dまたは外側コイル114を跨ぐように形成されており、上方に向けて湾曲するように形成されている。
【0140】
図21は、図20に示す共鳴コイル110Eをモデル化した共鳴コイルモデル110Fを示す斜視図である。なお、共鳴コイルモデル110Fの外側コイルの直径は、1mであり、この共鳴コイルモデル110Fには、キャパシタ111Fが設けられている。
【0141】
2つの共鳴コイルモデル110Fを用いて、一方の共鳴コイルモデル110Fと他方の共鳴コイルモデル110Fとの間で電力の送電・受電を行ったときの送電・受電効率をシミュレーションした結果を、図22に示す。図22は、2つの共鳴コイルモデル110Fの間で送電・受電をシミュレーションした結果を示すグラフである。なお、この図22に示す効率領域E1〜E7も、上記図16、図19に示す効率領域E1〜E7に対応する。
【0142】
図23は、本実施の形態1に係る車両側共鳴コイル110をモデル化したときの共鳴コイルモデル110Gを示す斜視図である。
【0143】
この図23において、共鳴コイルモデル110Gの一辺の長さは、1mである。2つの共鳴コイルモデル110Gを用いて、一方の共鳴コイルモデル110Gと他方の共鳴コイルモデル110Gとの間で電力の送電・受電を行ったときの送電・受電効率を図24に示す。なお、この図24に示す効率領域E1〜E7も、上記図16、図19および図22に示す効率領域E1〜E7に対応する。
【0144】
図25は、図9に示す車両側共鳴コイル110をモデル化した共鳴コイルモデル110Hを示す斜視図である。2つの共鳴コイルモデル110Hを用いて、一方の共鳴コイルモデル110Hと他方の共鳴コイルモデル110Hとの間で電力の送電・受電を行ったときの電力の送電・受電効率を図26に示す。
【0145】
ここで、図16、図19、図22、図24および図26に示すシミュレーション結果を比べると、共鳴コイルモデル110Aよりも、共鳴コイルモデル110C,110F,110G,110Hの方が送電・受電効率が高いことがわかる。
【0146】
さらに、共鳴コイルモデル110F,110G,110Hは、共鳴コイルモデル110Cよりも送電・受電効率が高いことがわかる。
【0147】
そして、共鳴コイルモデル110Gの送電・受電効率と、共鳴コイルモデル110Fの送電・受電効率とは、同程度であることがわかる。さらに、共鳴コイルモデル110Hの送電・受電効率が最も高いことがわかる。
【0148】
このように、本実施の形態1,2に係る車両側共鳴コイル110および設備側共鳴コイル240によれば、高い送電・受電効率を得ることができることがわかる。また、上記のように、本実施の形態1,2に係る車両側共鳴コイル110および設備側共鳴コイル240によれば、巻回中心線O方向の薄型化を図ることができる。
【0149】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。さらに、各実施の形態に記載された構成を組み合わせることは、出願当初から予定されている。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、共鳴コイル、送電装置、受電装置および電力送電システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0151】
1,2,3,4,70,71,72,73,75,76,77,78,79,80,81,83,84,85 単位コイル、5 コイル線、10,40 外側導線部、11,41 内側導線部、12,13,14,15 辺部、16,17,25,26,27,28 接続端部、20 幹部、21,22,50,51,52,53,54,55 枝部、23,24 幹線部、30,31,32,33,34,35 分岐導線部、56,57,58,59,60,61,62,63 突出部、100 電動車両、101 車両側コイルユニット、110 車両側共鳴コイル、110A,110C,110F,110G,110H 共鳴コイルモデル、111 車両側キャパシタ、111A,111F キャパシタ、112A,112B,112C,112D 小コイル、114 外側コイル、120 車両側電磁誘導コイル、130 整流器、140 コンバータ、150 バッテリ、160 パワーコントロールユニット、170 モータユニット、200 外部給電装置、201 設備側コイルユニット、202 駐車スペース、210 交流電源、220 高周波電力ドライバ、230 設備側電磁誘導コイル、240 設備側共鳴コイル、250 設備側キャパシタ、310 高周波電源、320 一次コイル、330 一次自己共振コイル、340 二次自己共振コイル、350 二次コイル、360 負荷、E1,E2,E3,E4,E5,E6,E7 効率領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流が流れることで形成される磁界の向きが同じ向きとされた複数の単位コイルを含む共鳴コイルであって、
前記複数の単位コイルは、コイル中心線の周囲に配置され、
前記共鳴コイルを前記コイル中心線上から見ると、前記共鳴コイルを形成するコイル線は互いに重ならないように形成された、共鳴コイル。
【請求項2】
前記コイル中心線の周囲を取り囲むように延びる前記コイル線によって形成されると共に、第1接続端部および第2接続端部を含む外側導線部と、
一端が前記第1接続端部に接続されて他端が前記第2接続端部に接続されると共に、前記外側導線部によって囲まれる領域内に配置され、前記コイル線によって形成された内側導線部と、
を備え、
前記外側導線部によって囲まれる第1領域内には、前記内側導線部と前記外側導線部とによって囲まれた複数の第2領域が形成され、
前記第2領域を囲む前記外側導線部および前記内側導線部によって前記単位コイルが形成された、請求項1に記載の共鳴コイル。
【請求項3】
前記外側導線部は、前記コイル線を曲げて形成され、
前記内側導線部は、前記第1接続端部および前記第2接続端部から前記コイル線を曲げて形成された、請求項2に記載の共鳴コイル。
【請求項4】
前記第1接続端部と前記第2接続端部と前記内側導線部とによって囲まれる第3領域の面積よりも、前記複数の第2領域が占める面積の方が広い、請求項2または請求項3に記載の共鳴コイル。
【請求項5】
前記内側導線部は、前記外側導線部から前記コイル中心線側に向かう方向に延びる幹部と、前記幹部から分岐するよう延び、前記コイル線によって形成された枝部とを含む、請求項2から請求項4のいずれかに記載の共鳴コイル。
【請求項6】
前記外側導線部は、前記第1接続端部および前記第2接続端部が形成された第1辺部と、一端が前記第1辺部の一端に接続された第2辺部と、一端が前記第1辺部の他端に接続された第3辺部と、前記第2辺部の他端および前記第3辺部の他端を接続する第4辺部とを含み、
前記幹部は、前記第1辺部から前記第4辺部に向けて延び、
前記内側導線部は、前記幹部から前記第2辺部に向けて延びる第1枝部と、前記幹部から前記第3辺部に向けて延びる第2枝部とを含む、請求項5に記載の共鳴コイル。
【請求項7】
前記コイル中心線の周囲を取り囲むように延びる前記コイル線によって形成されると共に、第1接続端部および第2接続端部を含む外側導線部と、
一端が前記第1接続端部に接続されて他端が前記第2接続端部に接続されると共に、前記外側導線部によって囲まれる領域内に配置され、前記コイル線によって形成された内側導線部と、
を備え、
前記外側導線部によって囲まれる第1領域内には、前記内側導線部と前記外側導線部とによって囲まれた複数の第2領域と、前記第1接続端部と前記第2接続端部と前記内側導線部とによって囲まれる第3領域と、前記第3領域以外の領域であって、前記内側導線部によって囲まれた複数の第4領域とが形成され、
前記単位コイルは、前記第2領域を囲む前記内側導線部および前記外側導線部と、前記第4領域を形成する前記内側導線部とによって形成された、請求項1に記載の共鳴コイル。
【請求項8】
前記複数の第2領域と前記複数の第4領域とが占める領域の面積は、前記第3領域が占める領域の面積よりも広い、請求項7に記載の共鳴コイル。
【請求項9】
前記内側導線部は、前記外側導線部から前記コイル中心線側に向かう方向に延る幹部と、前記幹部から分岐するように形成された枝部と、前記枝部の長さ方向の中間部から突出するように形成された突出部と、
を含む、請求項7または請求項8に記載の共鳴コイル。
【請求項10】
前記内側導線部は、前記外側導線部の延在方向に間隔をあけて複数形成された、請求項2から請求項9のいずれかに記載の共鳴コイル。
【請求項11】
前記コイル線が仮想平面上に位置するように形成された、請求項1から請求項10のいずれかに記載の共鳴コイル。
【請求項12】
受電装置に設けられた受電用共鳴コイルと電磁界共振結合する送電用共鳴コイルと、
外部電源から電力が供給され、電磁誘導によって前記送電用共鳴コイルに電力を供給する第1コイルと、
を備え、
前記送電用共鳴コイルは、請求項1から請求項11のいずれかに記載の共鳴コイルである、送電装置。
【請求項13】
送電装置に設けられた送電用共鳴コイルと電磁界共振結合する受電用共鳴コイルと、
電磁誘導によって前記受電用共鳴コイルから電力を受け取る第2コイルと、
を備え、
前記受電用共鳴コイルは、請求項1から請求項11のいずれかに記載の共鳴コイルである、受電装置。
【請求項14】
請求項12に記載の送電装置と、
請求項13に記載の受電装置と、
を備えた、電力送電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−178417(P2012−178417A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39923(P2011−39923)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)