説明

共鳴コイル及びそれを有する非接触電力伝送装置

【課題】コイル導線間での絶縁破壊のない小型で安価な共鳴コイル及びそれを備える非接触電力伝送装置を提供する。
【解決手段】共鳴コイル50は、共鳴現象によって相手方コイルに電力を送信し又は前記相手方コイルから送信された電力を受信するのに用いられ、複数回巻回されたコイル導線51と、コイル導線51を内包するモールド部材52と、を有している。そして、コイル導線51の一の巻回部55[k]と当該一の巻回部55[k]に隣接する他の巻回部55[k+1]との間には、これら一の巻回部55[k]と他の巻回部55[k+1]との間に生じる電位差に応じた大きさの導線間ギャップGが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共鳴現象によって相手方コイルに電力を送信し又は相手方コイルから送信された電力を受信する共鳴コイル、及び、その共鳴コイルを有する非接触電力伝送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、電気自動車等が備える二次電池(以下、単に「バッテリ」という)の充電などにおいて、充電作業を容易にするために、プラグ接続等の物理的接続を必要としないワイヤレス(非接触)での電力伝送技術が用いられている。
【0003】
このようなワイヤレス電力伝送技術として、電磁誘導現象を利用した電磁誘導方式、電磁波を利用した電磁波送信方式、共鳴現象を利用した共鳴方式などが知られている。中でも、共鳴方式は、送信共鳴コイルに交流電力を供給して、電磁場を介して送信共鳴コイルと当該送信共鳴コイルに対向配置された受信共鳴コイルとを共鳴させて、電力を伝送する技術であり、数kWの大電力を比較的離れた場所間で伝送することが可能である。
【0004】
しかしながら、このような共鳴方式のワイヤレス電力伝送技術を、例えば、電気自動車のバッテリ充電システムなどの数kWから数十kWの大電力が伝送されるシステムに適用した場合、図7に示すように、共鳴状態になると共鳴コイルが有する管状に巻回されたコイル導線の端部あるいは端部近傍において高電圧が生じ、当該共鳴コイルを収容する、アースされたケースなどとの間で絶縁破壊が起きて火花放電が発生してしまうなどの問題があった。そして、このような問題を解決する技術が、例えば、特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1に開示されている共鳴コイル901は、図8に示すように、コイル導線910と絶縁性の樹脂920とを備えている。コイル導線910は、管状に複数回巻回されている。そして、この絶縁性の樹脂920が、コイル導線910の長手方向の端部910aに近いほど厚みが増すようにコイル導線910に被覆加工されているので、コイル導線910の端部910aにおける絶縁耐力を高めて火花放電を防止することができた。また、この共鳴コイル901のコイル導線910には、コイル導線910の巻回部間には一定の導線間ギャップが設けられており、コイル導線910の巻回部間での絶縁破壊による火花放電を防いでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−73885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、電気自動車のバッテリの充電システムなどでは、燃費向上、車内スペース確保、及び、充電エリアの有効利用等のために共鳴コイルの小型化が求められている。しかしながら、上述した構成の共鳴コイルにおいて、図7から判るようにコイル導線の各巻回部間に生じる電位差がコイル導線の箇所によって異なるにもかかわらず、コイル導線の導線間ギャップの大きさが、最も大きい電位差に合わせて一定にされているので、これより電位差が低い箇所においては、導線間ギャップが必要以上の大きさとなって過剰となり、そのため、無駄な部分が生じて小型化できないという問題があった。または、共鳴コイルを小型化するとコイル導線の巻回部間の導線間ギャップが小さくなるので、コイル導線の巻回部間での絶縁破壊を防ぐために、コイル導線の被覆に絶縁性能の高い樹脂を用いたり、樹脂の厚みを増したりするなどの対策が必要となり、製造コストが増加してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に係る問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、コイル導線間での絶縁破壊のない小型で安価な共鳴コイル及びそれを備える非接触電力伝送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、共鳴コイルの小型化と低コストとを両立すべく、共鳴コイルの構成について検討を重ねた結果、コイル導線の各巻回部間には異なる電位差が生じており、この各巻回部間における電位差に応じて適切な大きさの導線間ギャップを設けることで、小型形状でありながら低コストを実現できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、共鳴現象によって相手方コイルに電力を送信し又は前記相手方コイルから送信された電力を受信する共鳴コイルであって、複数回巻回されたコイル導線を有し、そして、前記コイル導線の一の巻回部と当該一の巻回部に隣接する他の巻回部との間には、前記一の巻回部と前記他の巻回部との間に生じる電位差に応じた大きさの導線間ギャップが設けられていることを特徴とする共鳴コイルである。
【0011】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記コイル導線が、管状に複数回巻回されており、前記コイル導線の軸方向中央部における前記導線間ギャップの大きさが、前記コイル導線の軸方向両端部における前記導線間ギャップの大きさより大きいことを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記コイル導線には、その表面を覆う絶縁被覆部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載された発明において、前記導線間ギャップに充填されて前記コイル導線を内包するように設けられた絶縁部材を有していることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に記載された発明は、上記目的を達成するために、共鳴現象によって電力を送信する送信共鳴コイルと、前記送信共鳴コイルから送信された電力を受信する受信共鳴コイルと、を有する非接触電力伝送装置において、前記送信共鳴コイル及び前記受信共鳴コイルの少なくとも一方が、請求項1〜4のいずれか一項に記載された共鳴コイルであることを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された発明によれば、複数回巻回されたコイル導線を有し、そして、このコイル導線の一の巻回部と当該一の巻回部に隣接する他の巻回部との間には、これら一の巻回部と他の巻回部との間に生じる電位差に応じた大きさの導線間ギャップが設けられているので、例えば、上述した特許文献1の共鳴コイルのように、コイル導線間に生じる最も大きい電位差に応じた大きさの一定の導線間ギャップが設けられた構成では、電位差が小さい箇所では過剰な大きさの導線間ギャップとなって共鳴コイルが小型化できないところ、本発明では、コイル導線の各巻回部間に生じる電位差に合わせた大きさの導線間ギャップを設けることで、導線間ギャップを適切な大きさとして過剰な大きさの導線間ギャップをなくすことができ、コイル導線間の絶縁破壊のない小型で安価な共鳴コイルを提供できる。
【0016】
請求項2に記載された発明によれば、コイル導線が、管状に複数回巻回されており、このコイル導線の軸方向中央部における導線間ギャップの大きさが、コイル導線の軸方向両端部における導線間ギャップの大きさより大きいので、コイル導線の各巻回部間に生じる電位差が、管状のコイル導線の軸方向中央部で大きく、両端部で小さくなる特性を有する共鳴コイルにおいて、コイル導線間の絶縁破壊のない小型で安価な共鳴コイルを提供できる。
【0017】
請求項3に記載された発明によれば、コイル導線には、その表面を覆う絶縁被覆部材が設けられているので、各巻回部間の絶縁耐力が向上して導線間ギャップの大きさをより小さくすることができ、共鳴コイルをさらに小型化できる。
【0018】
請求項4に記載された発明によれば、導線間ギャップに充填されてコイル導線を内包するように設けられた絶縁部材を有しているので、各巻回部間の絶縁耐力が向上して導線間ギャップの大きさをより小さくすることができ、共鳴コイルをさらに小型化できる。
【0019】
請求項5に記載された発明によれば、送信共鳴コイル及び受信共鳴コイルの少なくとも一方が、請求項1〜4のいずれか一項に記載された共鳴コイルであるので、小型で安価な共鳴コイルを用いることにより、小型で安価な非接触電力伝送装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の共鳴コイルの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の共鳴コイルが有するコイル導線の側面図である。
【図3】図1の共鳴コイルの変形例の構成を示す図であって、(a)は、丸型平面コイルの正面図であり、(b)は、角形平面コイルの正面図である。
【図4】本発明の非接触電力伝送装置の一実施形態に係るワイヤレス電力伝送装置の構成を示す説明図である。
【図5】図4のワイヤレス電力伝送装置のブロック図である。
【図6】共鳴型電力伝送方式の原理を示す説明図である。
【図7】コイル導線における、共鳴状態での電圧分布を模式的に示す図である。
【図8】従来の共鳴コイルの構成を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(共鳴コイルの一実施形態)
以下、本発明の共鳴コイルの一実施形態について、図1、図2を参照して説明する。
【0022】
共鳴コイルは、共鳴現象を利用して、対向配置された相手方コイルに電力を送信し又は前記相手方コイルから送信された電力を受信するのに用いられる。
【0023】
各図に示す本発明に係る共鳴コイル(図中、符号50で示す)は、コイル導線51と、絶縁部材としてのモールド部材52と、を有している。
【0024】
コイル導線51は、各図に示すように、例えば、直径5mmの銅線を管状(ソレノイド)に複数回(n回)巻回した、直径Dが600mm、長さLが200mmの空心のらせんコイルである。このコイル導線51には、複数の円形部分(1ターン)である巻回部55[1]〜55[n]が設けられている。コイル導線51の一の巻回部55[k]とそれに隣接する他の巻回部55[k+1](k:1〜n−1)との間(以下、単に巻回部55間という)には、これら巻回部55間の電位差に応じて、つまり、この電位差が生じた場合でもこれら巻回部55間で絶縁破壊が起きないようにするために必要な最小限の大きさの導線間ギャップGが設けられている。この導線間ギャップGの大きさは、共振状態におけるコイル導線51の電圧分布に応じて定められる。
【0025】
共振状態におけるコイル導線51の電圧分布を図7に示す。そして、この図7から明らかなように、コイル導線51における単位距離間の電位差(即ち、グラフの傾き)は、コイル導線51の長手方向中央部(即ち、グラフの原点)ほど大きく、長手方向両端部に近づくにしたがって小さくなる。つまり、管状に巻回されたコイル導線51は、箇所によって巻回部55間の電位差が異なり、具体的には、その軸方向(即ち、長さL方向)中央部ほど巻回部55間の電位差が大きく、軸方向両端部に近づくにしたがって巻回部55間の電位差が小さくなる。
【0026】
このことから、管状に巻回されたコイル導線51の導線間ギャップGの大きさは、各図に示すように、コイル導線51の軸方向中央部から軸方向両端部に向かうにしたがって、徐々に小さくなるように設けられている。換言すると、コイル導線51の軸方向中央部における導線間ギャップGの大きさが、軸方向両端部における導線間ギャップGの大きさより大きくなるように設けられている。
【0027】
モールド部材52は、例えば、PI(ポリイミド)やPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアリキルビニルエーテル共重合体)などの高耐圧の絶縁性を有する合成樹脂で構成されており、例えば、コイル導線51の全体が収容された直方体枠型に溶融状態で流し込まれたのち凝固されることにより、導線間ギャップGに充填されてコイル導線51を内包するように設けられている。モールド部材52の絶縁破壊電圧(AC)は、PIで15〜20[kV/mm]程度であり、PFAで150[kV/mm]程度であり、その一方で、空気の絶縁破壊電圧(AC)は、3[kV/mm]程度であるので、このようなモールド部材52を設けることにより、導線間ギャップGの大きさをより小さくすることができる。
【0028】
本実施形態においては、コイル導線51の各巻回部間に生じる電位差に合わせた適切な大きさの導線間ギャップGを設けている。その一方で、従来の構成の場合、例えば、導線間ギャップGの大きさを全て同一にした場合、その大きさは、コイル導線51の軸方向中央部における巻回部55間の電位差、即ち、最も大きい電位差に合わせて定められるので、コイル導線51の軸方向両端部においては、導線間ギャップGの大きさが過剰となって、無駄な部分が生じてしまう。
【0029】
そして、本実施形態によれば、導線間ギャップGについて、巻回部55間の電位差が比較的低いコイル導線51の軸方向両端部では、導線間ギャップGの大きさを小さくし、巻回部55間の電位差が比較的高いコイル導線51の軸方向中央部では、導線間ギャップGの大きさを大きくすることにより、巻回部55間の電位差に応じた大きさの導線間ギャップG設けて、小型化を実現している。
【0030】
以上より、本発明によれば、複数回巻回されたコイル導線51を有し、そして、このコイル導線51の一の巻回部55[k]と当該一の巻回部55[k]に隣接する他の巻回部55[k+1]との間には、これら一の巻回部55[k]と他の巻回部55[k+1]との間に生じる電位差に応じた大きさの導線間ギャップGが設けられているので、例えば、上述した特許文献1の共鳴コイルのように、コイル導線間に生じる最も大きい電位差に応じた大きさの一定の導線間ギャップが設けられた構成では、電位差が小さい箇所では過剰な大きさの導線間ギャップとなって共鳴コイルが小型化できないところ、本発明では、コイル導線51の各巻回部55間に生じる電位差に合わせた大きさの導線間ギャップGを設けることで、このような過剰な大きさの導線間ギャップをなくすことができ、コイル導線51間の絶縁破壊のない小型で安価な共鳴コイル50を実現できる。
【0031】
また、コイル導線51が、管状に複数回巻回されており、このコイル導線51の軸方向中央部における導線間ギャップGの大きさが、コイル導線51の軸方向両端部における導線間ギャップGの大きさより大きいので、コイル導線51の各巻回部55間に生じる電位差が、管状のコイル導線51の軸方向中央部で大きく、軸方向両端部で小さくなる特性を有する共鳴コイル50において、コイル導線51間の絶縁破壊のない小型で安価な共鳴コイルを実現できる。
【0032】
また、導線間ギャップGに充填されてコイル導線51を内包するように設けられた、絶縁体からなるモールド部材52を有しているので、コイル導線51間の絶縁破壊耐性(絶縁耐力)が向上して導線間ギャップGの大きさをより小さくすることができ、共鳴コイルをさらに小型化できる。
【0033】
本実施形態では、コイル導線51が銅線のみで構成されているものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、コイル導線51には、例えば、PIやPFAなどからなる、コイル導線51の表面を覆う絶縁被覆部材が設けられていてもよい。このようにすることで、コイル導線51の絶縁耐力が向上して導線間ギャップGの大きさをより小さくすることができ、共鳴コイルをさらに小型化できる。また、本実施形態では、モールド部材52を有するものであったが、これに限定されるものではなく、モールド部材52を有しない構成でも良い。
【0034】
また、本実施形態のコイル導線51は、管状に複数回巻回され、導線間ギャップGは、コイル導線51の軸方向中央部から軸方向両端部に向かうにしたがって、徐々に小さくなるように設けられているものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、図3(a)、(b)に示すような、導線間ギャップGが半径方向(中心から放射状に広がる方向)中央部から内縁部及び外縁部に向かうにしたがって徐々に小さくなるように、コイル導線51が平板状に複数回巻回されている平型らせんコイルなどであってもよく、本発明の目的に反しない限り、コイル導線51の各巻回部55間に生じる電位差に応じた大きさの導線間ギャップGが設けられているものであればよい。
【0035】
(非接触電力伝送装置の一実施形態)
次に、上述した共鳴コイルを備えた、本発明の非接触電力伝送装置の一実施形態に係るワイヤレス電力伝送装置ついて、図4〜図6を参照して説明する。
【0036】
図4は、本発明の実施形態に係るワイヤレス電力伝送装置の構成を示す説明図である。同図に示すように、本実施形態に係るワイヤレス電力伝送装置10は、電気自動車5に設けられる受電装置12と、該受電装置12に交流電力を供給する給電装置11と、を備えており、給電装置11より出力される交流電力を非接触(ワイヤレス)で受電装置12に送信する。給電装置11は、電力送信用の通信コイル24を備えており、該通信コイル24に交流電力が供給されると、この交流電力は、受電装置12に設けられている電力受信用の通信コイル31に伝達される。
【0037】
電気自動車5に設けられる受電装置12は、充電時に電気自動車5を給電装置11の所定位置に置いたときに、電力送信用の通信コイル24と接近する電力受信用の通信コイル31と、整流器33と、を備えている。更に、直流電力が充電されるバッテリ35と、該バッテリ35の電圧を降圧してサブバッテリ41に供給するDC/DCコンバータ42と、バッテリ35の出力電力を交流電力に変換するインバータ43と、該インバータ43より出力される交流電力により駆動するモータ44を備えている。
【0038】
図5は、本発明の実施形態に係るワイヤレス電力伝送装置10のブロック図であり、給電装置11、及び電気自動車5に搭載される受電装置12を備えている。
【0039】
給電装置11は、電力伝送用のキャリア信号を出力するキャリア発振器21と、該キャリア発振器21より出力されるキャリア信号(即ち、交流電力)を増幅する電力増幅器23、及び電力増幅器23で増幅された交流電力を出力する通信コイル24を備えている。通信コイル24は、後述するように給電コイル(一次コイル)L1と送信共鳴コイルX1から構成されている。そして、この送信共鳴コイルX1として、上述した共鳴コイル50を用いている。
【0040】
キャリア発振器21は、電力伝送用の交流信号として例えば周波数1〜100[MHz]の交流電力を出力する。
【0041】
電力増幅器23は、キャリア発信器21より出力された交流電力を増幅する。そして、増幅した交流電力を通信コイル24に出力する。通信コイル24は、受電装置12に設けられる通信コイル31と連携し、共鳴型電力伝送方式によりワイヤレスで交流電力を通信コイル31に伝送する。共鳴型電力伝送方式(即ち、共鳴方式)については後述する。
【0042】
また、受電装置12は、電力送信用の通信コイル24より送信される交流電力を受信する電力受信用の通信コイル31と、この通信コイル31で受信された交流電力を整流して、直流電圧を生成する整流器33と、を備える。また、車両駆動用のモータ44(図4参照)に電力を供給するバッテリ35を備え、該バッテリ35は、整流器33より出力される直流電力により充電される。
【0043】
通信コイル31は、後述するように受電コイル(一次コイル)L2と受信共鳴コイルX2から構成されている。そして、この受信共鳴コイルX2として、上述した共鳴コイル50を用いている。
【0044】
次に、共鳴型電力伝送方式について説明する。図6は、共鳴型電力伝送方式の原理を示す説明図である。図示のように、給電装置11には、給電コイルL1、及び該給電コイルL1と同心円状に且つ近接して配置された送信共鳴コイルX1(即ち、共鳴コイル50)が設けられている。なお、給電コイルL1と送信共鳴コイルX1により図4、図5に示す通信コイル24が構成される。また、受電装置12には、受電コイルL2、及び該受電コイルL2と同心円状に且つ近接して配置された受信共鳴コイルX2(即ち、共鳴コイル50)が設けられている。なお、受電コイルL2と受信共鳴コイルX2により図4、図5に示す通信コイル31が構成される。
【0045】
そして、給電コイルL1に1次電流を流すと、電磁誘導により送信共鳴コイルX1に誘導電流が流れ、更に、該送信共鳴コイルX1のインダクタンスLs、及び浮遊容量Csにより、該送信共鳴コイルX1が共鳴周波数ωs(=1/√Ls・Cs)で共鳴する。すると、この送信共鳴コイルX1に近接して設けられた、受電装置12側の受信共鳴コイルX2が共鳴周波数ωsで共鳴し、受信共鳴コイルX2に2次電流が流れる。更に、電磁誘導により受信共鳴コイルX2に近接した受電コイルL2に2次電流が流れる。
【0046】
上記の動作により、給電装置11から受電装置12に、ワイヤレスで電力を送信することができることとなる。
【0047】
次に、図4、図5に示した本発明のワイヤレス電力伝送装置の動作について説明する。図4に示すように、電気自動車5が給電装置11の所定位置に置かれ、給電装置11に設けられる通信コイル24と、電気自動車5の受電装置12に設けられる通信コイル31が対向する位置となると、バッテリ35への充電を行うことができる。
【0048】
充電が開始されると、図5に示すキャリア発振器21より、周波数1〜100[MHz]程度の交流電力が出力される。
【0049】
そして、キャリア発信器21より出力された交流電力は、電力増幅器23にて増幅される。増幅された交流電力は、通信コイル24,31を介して、前述した共鳴型電力伝送の原理により、受電装置12に伝送されることになる。
【0050】
受電装置12に伝送された交流電力は、通信コイル31から整流器33に出力される。
【0051】
そして、整流器33では、交流電力を整流して所定電圧の直流電力に変換し、この電力をバッテリ35に供給して、該バッテリ35を充電する。これにより、バッテリ35を充電することができる。
【0052】
以上より、本発明によれば、送信共鳴コイルX1及び受信共鳴コイルX2として、上述した共鳴コイル50を用いているので、この共鳴コイル50のコイル導線51の一の巻回部55[k]とそれに隣接する他の巻回部55[k+1]との間には、それら一の巻回部55[k]と他の巻回部55[k+1]との間に生じる電位差に応じた大きさの導線間ギャップGが設けられており、そのため、過剰な大きさの導線間ギャップをなくすことができ、送信共鳴コイルX1及び受信共鳴コイルX2を低コストで小型化でき、したがって、小型で安価な非接触電力伝送装置を提供できる。
【0053】
本実施形態においては、送信共鳴コイルX1及び受信共鳴コイルX2の両方とも上述した共鳴コイル50を用いていたが、これに限定されるものではなく、送信共鳴コイルX1及び受信共鳴コイルX2のうち少なくとも一方に共鳴コイル50を用いるものであればよい。
【0054】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
5 電気自動車
10 ワイヤレス電力伝送装置(非接触電力伝送装置)
50 共鳴コイル
51 コイル導線
52 モールド部材(絶縁部材)
55 巻回部
X1 送信共鳴コイル(共鳴コイル)
X2 受信共鳴コイル(共鳴コイル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共鳴現象によって相手方コイルに電力を送信し又は前記相手方コイルから送信された電力を受信する共鳴コイルであって、
複数回巻回されたコイル導線を有し、そして、
前記コイル導線の一の巻回部と当該一の巻回部に隣接する他の巻回部との間には、前記一の巻回部と前記他の巻回部との間に生じる電位差に応じた大きさの導線間ギャップが設けられている
ことを特徴とする共鳴コイル。
【請求項2】
前記コイル導線が、管状に複数回巻回されており、
前記コイル導線の軸方向中央部における前記導線間ギャップの大きさが、前記コイル導線の軸方向両端部における前記導線間ギャップの大きさより大きいことを特徴とする請求項1に記載の共鳴コイル。
【請求項3】
前記コイル導線には、その表面を覆う絶縁被覆部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の共鳴コイル。
【請求項4】
前記導線間ギャップに充填されて前記コイル導線を内包するように設けられた絶縁部材を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の共鳴コイル。
【請求項5】
共鳴現象によって電力を送信する送信共鳴コイルと、前記送信共鳴コイルから送信された電力を受信する受信共鳴コイルと、を有する非接触電力伝送装置において、
前記送信共鳴コイル及び前記受信共鳴コイルの少なくとも一方が、請求項1〜4のいずれか一項に記載された共鳴コイルである
ことを特徴とする非接触電力伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−134248(P2012−134248A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283664(P2010−283664)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】