説明

共鳴励起イオン移動を提供するために質量分析計を動作する方法

ロッドセットを有する質量分析計を動作する方法が提供される。該ロッドセットは、第1端部と、該第1端部の反対側の第2端部と、該第1端部および該第2端部との間に延在する長手方向軸とを有する。該方法は、a)ロッドセットにイオンを導入するステップと、b)該ロッドセット内のイオンのうちの少なくとも一部を、i)第1バリア場を生成すること、ii)第2バリア場を生成すること、およびiii)集合場を提供することにより捕捉するステップと、c)上記イオンにおける第1群のイオンの第1の選択された質量対電荷比を選択するステップと、d)該第1群のイオンに対する集合場の選択された特性の第1励起レベルを決定するステップと、e)該第1群のイオンを共鳴励起して、上記集合場の選択された特性を上記第1励起レベルまで調整するステップと、f)励起時間間隔の間、上記集合場の選択された特性を上記第1励起レベルに維持するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、質量分析に関し、より具体的には、共鳴励起イオン移動を提供するために質量分析計を動作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、線形イオントラップは、細長いロッドセットのロッドに印加される半径方向のRF場と、ロッドセットの入口端および出口端に印加される軸方向直流(DC)場との組み合わせを用いてイオン群を保存する。特許文献1に記載のように、線形イオントラップ内に捕捉されたイオンは、ロッドセットから軸方向に、また出口レンズに印加されるDC場を通って質量依存的に走査することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,177,668号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態の一側面によれば、ロッドセットを有する質量分析計を動作する方法であって、該ロッドセットは、第1端部と、該第1端部の反対側の第2端部と、該第1端部と該第2端部との間に延在する長手方向軸とを有する、方法が提供される。該方法は、a)ロッドセットにイオンを導入するステップと、b)該ロッドセット内のイオンのうちの少なくとも一部を、i)該ロッドセットの第1端部に隣接する第1端部部材に第1バリア場を生成し、ii)該ロッドセットの第2端部に隣接する第2端部部材に第2バリア場を生成し、およびiii)該ロッドセットのロッド間にRF場を備える集合場を提供することにより捕捉するステップと、c)上記イオンにおける第1群のイオンの第1の選択された質量対電荷比を選択するステップと、d)該第1群のイオンに対する集合場の選択された特性の第1励起レベルを決定するステップと、e)該第1群のイオンを共鳴励起して、バリア場を通り上記ロッドセットから軸方向に質量選択的に該第1群のイオンを排出するために、上記集合場の選択された特性を上記第1励起レベルまで調整するステップと、f)励起時間間隔の間、上記集合場の選択された特性を上記第1励起レベルに維持するステップであって、該励起時間間隔は少なくとも1ミリ秒であるステップと、を含む。
【0005】
本発明の実施形態のさらに他の側面によれば、上述の方法は、(e)において、第1群のイオンを共鳴励起して、バリア場を通りロッドから半径方向に質量選択的に第1群のイオンを排出するために、集合場の選択された特性が第1の励起レベルまで調整されるという点で修正される。すなわち、イオンは、任意選択で軸方向のかわりに半径方向に排出されてもよい。
【0006】
出願者の教示するこれらおよびその他の特性を本明細書に説明する。
【0007】
当業者は、以下に示される図画が例図目的のみであることを理解するであろう。図画は、いかなる理由であっても出願者の教示の範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1a】図1aは、Q−トラップQ−q−Q線形イオントラップ質量分析計を示す概略図である。
【図1b】図1bは、Q−トラップQ−q−Q線形イオントラップ質量分析計の代替変形例を示す概略図である。
【図1c】図1cは、飛行時間型(ToF)質量分析計を備える線形イオントラップ質量分析計を示す概略図である。
【図1d】図1dは、線形イオントラップ質量分析計システムのさらなる変形例を示す概略図である。
【図1e】図1eは、Q−トラップQ−q−Q線形イオントラップ質量分析計のさらなる代替変形例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態の一側面による、4000QTRAPのQ3線形イオントラップからの共鳴励起イオン移動を示すグラフである。
【図3】図3は、図2の共鳴励起移動プロセスの関連した「分解能」を示すグラフである。
【図4】図4および5は、加圧衝突セルが使用される、QTRAPおよびQSTAR機器それぞれのQ1線形イオントラップからのイオン共鳴移動を示すグラフである。
【図5】図4および5は、加圧衝突セルが使用される、QTRAPおよびQSTAR機器それぞれのQ1線形イオントラップからのイオン共鳴移動を示すグラフである。
【図6】図6aおよび6bは、共鳴励起イオン移動によるQTRAPのQ1線形イオントラップの質量選択能力の例を、異なる縮尺のY軸で示したグラフである。
【図7】図7および8は、測定間に冷却期間を設けた場合と設けなかった場合の調整および励起時間間隔を示すグラフである。
【図8】図7および8は、測定間に冷却期間を設けた場合と設けなかった場合の調整および励起時間間隔を示すグラフである。
【図9】図9は、共鳴励起移動により生じた共鳴およびやや非共鳴のイオン両方の時間差および時間的プロファイルを示すグラフである。
【図10】図10aは、本発明の一側面による方法の初期段階を示す図であり、m/zが393および508のイオンがQSTARのQ1に捕捉されている。図10bは、図10aの方法の後続段階の間の質量分析を示す図であり、m/zが393のイオンが共鳴され、Q2に排出されている。図10cは、図10bのステップの後の図10aの方法内のステップの質量分析を示す図であり、m/zが508のイオンが共鳴され、Q2に排出されている。
【図11】図11は、線形イオントラップ質量分析計システムのさらなる変形例を示す概略図である。
【図12】図12は、線形イオントラップ質量分析計システムのさらなる変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1a、1b、および1eを参照すると、第US6,504,148号、ならびにHagerおよびLeBlancによりRapid Communications of Mass Spectrometry,2003,17,1056−1064にそれぞれ記載されているような、Q−トラップQ−q−Q線形イオントラップ質量分析計の異なる変形例の概略図が示されている。質量分析計の動作中、イオンはオリフィス板14およびスキマー16を通って真空チャンバ12内に導入される。例えばMALDI、ナノスプレー、またはESI等の任意のイオン源11も使用可能である。線形イオントラップ10は、4つの細長いロッドセットQ0、Q1、Q2およびQ3を備え、ロッドセットQ0の後にはオリフィス板IQ1が、Q1とQ2との間にはIQ2が、Q2とQ3との間にはIQ3がある。追加的な短いロッドのセットQ1aがオリフィス板IQ1と細長いロッドセットQ1との間に設けられる。
【0010】
ある場合には、隣り合うロッドセットの対の間の漏れ電場がイオンの流れを歪める可能性がある。短いロッドQ1aは、イオンの流れを細長いロッドセットQ1に集束するためにオリフィス板IQ1と細長いロッドセットQ1との間に設けられる。
【0011】
イオンは、約8x10−3トルの圧力に維持することができるQ0において衝突冷却される。図1aでは、Q1は線形イオントラップとして動作し、Q3は従来の透過RF/DC四極子質量分析計として動作する。図1bでは、Q1とQ3の構成は逆であり、Q1は従来の透過RF/DC四極子質量分析計として動作し、Q3は線形イオントラップとして動作するようになっている。図1eでは、Q1とQ3の両方が線形イオントラップとして動作する。図1a、1b、および1eでは、Q2は、イオンが衝突ガスと衝突してより小さい質量の生成物にフラグメント化する衝突セルである。ある場合には、Q2は、イオン−ニュートラル反応またはイオン間反応が生じて他の種類のフラグメントまたは付加体を発生する反応セルとして使用することができる。図1aの変形例におけるQ1および図1bの変形例におけるQ3は、幅広い質量数のイオンを捕捉するよう動作可能であるだけでなく、参照することにより本明細書に援用される、LondryおよびHagerによるJournal of the American Association of Mass Spectrometry,2003,14,1130−1147および米国特許第6,177,688号において説明されるように、質量選択的な軸方向の排出を備えた線形イオントラップとして動作可能である。
【0012】
典型的には、イオンは、四極子ロッドに印加される半径方向のRF電圧、および端部開口レンズに印加されるDC電圧を使用して、それぞれ図1aおよび1bの線形イオントラップQ1およびQ3(または、図1eの場合にはQ1もしくはQ3)内に捕捉され得る。Q1内の空間電荷は、例えば、MALDIレーザパルス数を制御することにより、またはESI源におけるイオンビームを、上流のレンズ素子(図1のスキマー16等)からパルス放出を行うことによって抑制することにより、制御することができる。端部開口レンズとロッドセットとの間のDC電圧差は、バリア場を提供するために使用することができる。当然ながら、DC電圧差を提供するためにオフセット電圧がQ1またはQ3に印加される限り、端部レンズ自体には実際の電圧を提供する必要はない。あるいは、ACまたはRF場等の時間変化バリアが端部開口レンズに提供されてもよい。イオンを捕捉するために、図1aおよび1bの線形イオントラップQ1またはQ3の各端部でそれぞれDC電圧が使用される場合、両端部に提供される電圧差は、同じであっても異なっていてもよい。多くの実施形態において、異なる線形イオントラップが1x10−5トルから5x10−5トルの圧力範囲で動作可能であるが、他の実施形態では、圧力は1x10−3トルの高さとなることができる。高圧質量分析計は、線形イオントラップの動作圧力の少なくとも2倍の圧力において動作する。多くの実施形態において、高圧質量分析計は、線形イオントラップの動作圧力の10倍を超える圧力において動作することができる。
【0013】
図1cを参照すると、線形イオントラップ質量分析計システムのさらなる変形例が示されている。図1cの線形イオントラップ質量分析計システムは、図1cでは四極子質量分析計Q3が飛行時間型(ToF)質量分析計に置き換えられていることを除き、図1aのものと同じである。簡潔さのため、図1aの記述は図1cにおいて繰り返されない。明確性のため、図1aの線形イオントラップ質量分析計システムと、図1cの線形イオントラップ質量分析計システムとの間で類似した要素は、同じ参照番号で示されている。
【0014】
本発明の実施形態の異なる側面は、後述のように、図1a、1bおよび1cの線形イオントラップ質量分析計システムのいずれかを使用して実装することができる。例えば、図1aおよび1cの線形イオントラップ質量分析計システムでは、線形イオントラップQ1の動作条件は、特定の質量対電荷比(m/z)のイオンを励起するために急速に変更またはジャンプされ得る。同様に、図1bの線形イオントラップ質量分析計システムのQ3の動作条件は、質量選択的な軸方向排出の効率を改善するために急速に変更またはジャンプされ得る。
【0015】
上述のように、イオンはQ0および短いロッドQ1aを介してQ1に導入される。図1aおよび1c、ならびに1eの線形イオントラップ質量分析計システムでは、ロッドセットQ1は、Q0を介して受けたイオンを捕捉するために使用可能な線形イオントラップである。上述のように、これらのイオンは、ロッドセットQ1の各端部でバリア場を発生することにより、またQ1のロッド間にRF場を提供することにより捕捉することができる。次いで、選択された質量対電荷比を有する第1群のイオンを軸方向の排出に選択することができる。次に、この第1群のイオンを共鳴励起するために必要なQ1の動作条件の急速なシフトまたはジャンプが決定される。この急速なシフトまたはジャンプは、(i)RF場の振幅、および/または(ii)RF場の周波数に対し行うことができる。あるいは、Q1のロッド間に印加されるRF場だけでなく、励起AC場をも含む集合場を印加することができ、この場合励起AC場の周波数は、第1の選択された群のイオンを共鳴させるために急速にシフトまたはジャンプされ得る。この励起AC場は、Q1ロッドに直接、またはQ1に含まれる補助電極のセットを介して提供される、双極子励起場または四極子励起場であってもよい。あるいは、励起場を提供するためにAC電圧がレンズに印加されてもよい。
【0016】
本発明の実施形態のいくつかの側面において、RF場の振幅は励起レベルまでジャンプされる。その時点で、RF電圧の大きさが第1の励起レベルとなった後、補助励起AC場が開始され、選択されたイオンを共鳴励起する。本発明のこの実施形態の他の側面において、AC励起場は、RF場の振幅の急速シフトまたはジャンプの間も印加されたままである。
【0017】
集合場の選択された特性(これは、上述のように、RF場の振幅、RF場の周波数、または励起AC場の周波数であってもよい)が、第1群のイオンを共鳴励起するための第1の励起レベルにジャンプされるかまたは急速にシフトされると、この集合場の選択された特性は、少なくとも1ミリ秒となり得る励起時間間隔の間励起レベルが維持される。この励起時間間隔の間、選択された特性は実質的に一定に保持され得る。あるいは、この励起時間間隔の間、集合場の異なる特性が調整された場合でも、第1群のイオンを共鳴励起して、バリア場を通りロッドセットから軸方向に第1群のイオンを質量選択的に排出する、全体的な場の特性を維持するように調整可能である。例えば、RF場の周波数が励起時間間隔の間に変化する場合を考える。このとき、RF場の周波数の変動を相殺するためにRF場の振幅が同時に変化されれば、第1群のイオンはまだこの励起間隔の間継続的に共鳴励起され得る。
【0018】
上述の様式で、異なる選択された質量対電荷比の、異なる群のイオンは、順に共鳴励起され、Q1(または図1bの場合ではQ3)から軸方向に排出されることが可能である。例えば、上述の第1励起時間間隔の間に第1群のイオンが共鳴励起され軸方向に排出された後、図1a、1cおよび1eにおけるQ1ならびに図1bにおけるQ3から、バリア場を通り軸方向に質量選択的に第2群のイオンを排出するために、集合場の選択された特性を第2の励起レベルに調整することができる。第2の選択された質量対電荷比のこの第2群のイオンは、事前に選択されていてもよく、第2群のイオンに対する集合場の選択された特性の第2の励起レベルは、事前に決定されていてもよい。次いで、集合場の選択された特性は、第2励起時間間隔の間第2の励起レベルに維持される。第2の励起時間間隔は、少なくとも1ミリ秒であってもよい。上述のように、集合場の選択された特性は、RF場の振幅、RF場の周波数、または励起AC場の周波数であってもよい。
【0019】
本発明のいくつかの側面によれば、集合場の選択された特性を第1の励起レベルから第2の励起レベルに調整するステップは、第1群のイオンが共鳴励起される第1励起時間間隔と、第2群のイオンが共鳴励起される第2励起時間間隔との間の調整時間間隔が1ミリ秒未満となり得るように、非常に速やかに実行される。さらに、m/z比の異なるイオンを順次共鳴励起させるために場の特性が走査される時に典型的に支配している状況とは異なり、これらの場の条件が突然シフトされ、次いでより長い期間一定に保持されると、1つの特定の質量値から1amuより大きく異なる他の質量値へジャンプまたはステップすることにより、不連続的な質量値が排出され得る。典型的には、これは走査モードでは行われない。走査モードでは、m/zの順で決められた質量範囲内全てのイオンが順次排出される。本発明の側面によれば、2つの選択されたイオン群の間のm/z値を有するイオンは、それらがRF場において安定である場合は、トラップ内に維持され得る。
【0020】
再び図1bを参照すると、第1群のイオンおよび第2群のイオンは、出口レンズ18を通って検出器30に軸方向に排出され検出されることが可能である。あるいは、図1aまたは1cの線形質量分析計を使用して、第1群のイオンは、Q1からQ2に軸方向に排出されることが可能であり、そこでこの第1群のイオンがフラグメント化される。次いで、図1aの線形イオントラップ質量分析計システム10において、第1群のイオンは、透過四極子型質量分析計Q3に排出されることが可能で、そこで対象となる特定のフラグメントイオンが選択され、出口レンズ18を通って検出器30に送られ検出される。あるいは、図1cの線形イオントラップ質量分析計を使用して、Q2からのフラグメントは、対象となる特定のフラグメントのm/zを測定するためにドリフト時間を使用する飛行時間型質量分析計に送られることが可能である。あるいは、第1群のイオンのフラグメントは、図1eに示されるように、第2の線形イオントラップに軸方向に排出されてもよく、その第2の線形イオントラップに提供される集合場の選択された特性は、上記と類似した様式で、対象となるフラグメントイオン群を共鳴励起して、バリア場を通りロッドセットから軸方向に質量選択的にこのフラグメントイオン群を排出するために、急速にシフトまたはジャンプされてもよい。
【0021】
サンプルを節約しイオンをより効率的に使用するために、LIT内(Q1でもQ3でも)のイオンが処理され排出される間、イオンをQ0内に保存することができる。これは、Q0とQ1の間のレンズ、またはIQ1を反発に設定することにより達成することができる。あるいは、サンプル材料を節約するために、イオン源を起動してLITを満たした後、イオンが処理されLITから移動される間オフにすることができる。MALDI源は、1回以上パルス放出されてトラップを満たした後にオフにされてもよい。ナノスプレー源は、起動されてトラップを十分なイオンで満たした後にオフにされてもよい。充填時間は、空間電荷効果を最小限とするために最適なイオン数を選択するように選ぶことができる。
【0022】
例えば、一実施形態において2x10−3トルから10−2トルの高圧力範囲で動作している高圧質量分析計内にサンプルイオンが保存される場合、第1バッチのイオンはQ0からQ1に送られる。この第1バッチのイオンがQ0からQ1に送られている間、Q0とQ1との間のIQ1等のバリア発生部材、あるいはレンズ(図示せず)は、この第1バッチのイオンの移動を促進するために誘引モードとなることができる。次いで、第1バッチのイオンがQ1内に入ったら、上述のIQ1もしくはレンズ、または他のいくつかの適した部材にかかわらず、Q0とQ1との間のバリア発生部材は、Q0内の残りのサンプルの維持およびQ1内のイオンからのこれらのイオンの分離を促進するために反発モードに切り替えられることが可能である。この第1バッチのイオンが図1aから1eのいずれかの線形イオントラップ質量分析計10を通して処理された後、Q0とQ1との間のバリア発生部材は、Q0からQ1への第2バッチのイオンの移動を促進するために再び誘引モードに切り替えられることが可能である。このように、第2バッチおよび後続のバッチのイオンを別個に処理することができ、イオンサンプルをより効率的に使用することができるようになる。
【0023】
任意選択で、本発明の側面は、図1dに示されるようなより単純な線形イオントラップシステムを使用して適用することができる。明確性のため、図1aの線形イオントラップ質量分析計システムと、図1dの線形イオントラップ質量分析計システムの類似した要素は、同じ参照番号で示されている。簡潔さのため、図1aおよび1bの記述は図1dに関して繰り返されない。図1dの線形イオントラップシステムに実装される場合、第1群のイオンは、共鳴励起されて、Q1から出口レンズ18を通って検出器30に軸方向に排出され検出されることが可能である。
【0024】
(実験結果)
全てMDS Sciex,71 Four Valley Drive,Concord,Ontario,Canada,L4K 2V8から入手可能な、QTRAP、4000QTRAPおよびQSTAR XLの3つの異なるプラットフォームにおいて実験的測定を行った。QTRAP機器に対しては、Q1およびQ3線形イオントラップの両方が双極子共鳴励起で構成された。4000QTRAP機器に対しては、Q3が双極子励起で構成された。QSTAR XL Q1線形イオントラップでは、四極子の様式で共鳴励起が可能であった。
【0025】
(Q3線形イオントラップからの移動)
本発明の実施形態の一側面による、4000QTRAPのQ3線形イオントラップからの共鳴励起イオン移動を図2に示す。Q3線形イオントラップには、事前にAgilent 922イオンの主同位体のみを充填した。この場合の922排出の時間プロファイルは約400usecである。
【0026】
図2の共鳴励起移動プロセスの関連した選択性を図3に示すが、これは励起m/zに対する排出イオン信号を描写している。図3の見かけの質量分解能は、約0.8amuである。質量分解能はまた、励起振幅の関数でもある。補助電圧振幅を増加させると、分解能がより低下する。
【0027】
共鳴励起条件において場の特性を分析イオンのm/zにジャンプさせることにより得られる、質量選択的移動効率は、RF電圧を走査する従来の方法に有利に匹敵することができる。つまり、例えば、1000amu/secでの走査により約18%の励起効率が得られるが、一方共鳴励起の結果、図6aに示されるように、約38%の排出効率を得ることができる。
【0028】
(Q1線形イオントラップからの移動)
Q1線形イオントラップからの共鳴移動を試験するために、QTRAPおよびQSTAR機器の両方においても実験を行った。両方の場合で、源からのイオンはQ1線形イオントラップに捕捉され、冷却され、次いで排出されて加圧衝突セルを通して移動され、さらに下流で質量分析される。加圧衝突セルの存在により、図4および5に示されるように、両方の機器で時間プロファイルが広がる。Q2におけるCADガス圧力を増加させると、時間プロファイルがさらに広がる結果となる。QTRAP機器はQ2において比較的小さな軸方向場が付加された傾斜ロッドLINAC(米国特許第6,111,250号)で構成可能であることに留意されたい。
【0029】
より強い軸方向場を発生するために衝突セル内で補助電極を使用するLINACで構成されたQSTAR XLにおいて追加の測定を行った。得られた時間プロファイルを図5に示す。
【0030】
図6aおよび6bを参照すると、共鳴励起イオン移動によるQTRAPのQ1線形イオントラップの質量選択能力の例が示されている。図6aおよび6bは、同じデータをプロットしたものであるが、Y軸に沿った縮尺が異なっている。図6aおよび6bは、QTRAP機器のQ1線形イオントラップからの共鳴励起イオン移動プロセスの質量選択性がほぼ「ユニット」となり得ることを示している。
【0031】
上述の様式で線形イオントラップを動作することにより、比較的高い効率および狭い時間特性を達成することができ、それにより機器の感度を改善することができる。また、より狭い時間特性は、典型的な走査を使用して達成可能な場合より短い期間で、異なる質量対電荷比のイオンを排出する能力の向上を示唆し得る。次いで、これは、必要に応じた、非常に高い負荷サイクルのために、さらなるイオン処理のための選択されたイオンの改善された除去能力を提供することができる。これは、線形イオントラップが一度満たされ、次いで選択されたイオンが必要に応じてさらなる処理のために順次排出される、多重化動作の促進に非常に有用となり得る。そのような多重化は、処理の時点で前駆イオンを1つしか許容できず、他の前駆体がこの処理時間中無駄となる現行の方法と比較して、限定されたイオン信号のより効率的な使用を提供することができ、したがってより良好な信号対雑音比を提供することができる。
【0032】
例えば、30msの期間、エレクトロスプレー源からのイオンがQSTARのQ1に捕捉された。質量393のイオンがQ2を通して排出され、次いで飛行時間型質量分析器に排出された。この排出ステップが行われている間、約m/z 305よりも大きな質量の他の全てのイオンは、Q1トラップ内に残る。約50msの共鳴励起しているm/z 393の後、Q1へのRF電圧は、m/z 508が共鳴しQ2に排出されるように、新たな値にステップすることができる。したがって、Q1を源からのイオンで満たし、次いで再充填することなく1つのRF電圧から他の電圧にステップすることにより、2つの異なるm/zのイオンをQ1から順次排出することができる。図10は、この実験から得られたスペクトルを示す。図10aには、源からの全てのイオンのスペクトルが表示されており、m/zが異なる多くの前駆イオンの存在を示している。図10bは、ただm/z 393をQTRAPからQ2を通しTOFに排出することにより得られるTOFスペクトルを示す。図10cは、次いでただm/z 508をTOFに排出することによる結果を示す。両方の場合において、対象となるイオンのみがTOFスペクトル中に観察される。この実験では、原理を例証するため、前駆イオンがQ2内でフラグメント化しないように衝突エネルギーは低い値に維持された。衝突エネルギーを増加させることにより、2つのイオンのそれぞれのMSMSスペクトルを記録することができ、フラグメント化の程度を最適化するために、それぞれの前駆イオンに対して異なる衝突エネルギーを選択することができる。このプロセスは、いくつかの異なる前駆イオンからのスペクトルを記録するために拡張することができる。各サイクルの後、QTRAPは源からのイオンで再び充填することができる。
【0033】
(RFおよび補助電圧におけるジャンプの例)
図7および8を参照すると、RFおよび補助電圧におけるジャンプにより開始されるような排出プロセスの例がグラフとして示されている。両方の場合において、調整時間間隔または場調整時間は400usecであり、測定期間は3msである。図7のグラフでは、測定間に冷却期間は設けられておらず、図8のグラフでは、測定間に冷却期間が設けられている。すなわち、図8のグラフにおいて、補助AC電圧は、測定期間の間に約10msだけオフにされている。
【0034】
図7および8両方のグラフにおいて、補助AC電圧は、調整期間の間オフにされているように示されている。しかし、上述のように、補助AC電圧はこれらの励起時間間隔の間に連続的に提供されてもよいため、そうである必要はない。
【0035】
(時間差)
動作中、調整時間間隔の後、トラップからイオンが射出されない1−2msの期間があってもよい。第1のイオンがトラップから射出されるのを待つ正確な時間は、概して、補助AC振幅により決定される。検出器が線形イオントラップの直後に設置されている場合、これに続いて、200usecまで狭くなり得るが、より典型的には600usecである、イオン電流における鋭いピークが生じる。その後、やや非共鳴であるが、より長い期間励起場に曝されているために励起されるイオンのイオン電流への寄与がある。したがって、排出された共鳴イオンは、単に観測窓をより短い期間に調整することにより、やや非共鳴のイオンから区別され得る。図9に示されるように、時間ピーク(図9では2つのピークのみ)のシーケンスが、排出されたイオンを検出することにより、励起時間間隔にわたり発生し得る。第1の(およびより高い)時間ピークは、共鳴イオンまたは選択されたイオンを表し、第2の時間ピークは、非共鳴イオンまたは選択されていないイオンを表す。
【0036】
図9を参照すると、共鳴イオンおよびやや非共鳴のイオンの異なる時間プロファイルが示されている。示されるように、非共鳴のピークは、共鳴イオンのピークのやや後に生じる。したがって、観測窓を適切に選択することにより、共鳴時間プロファイルの大部分を維持しながら、非共鳴時間プロファイルをほとんど除去することができる。
【0037】
(共鳴排出)
類似的に、本方法はまた、軸方向排出のかわりに半径方向排出による線形イオントラップに拡張することができる。半径方向排出線形イオントラップは、以前に米国特許第5,420,425号に開示されている。半径方向排出線形イオントラップは、イオン排出の間に漏れ電場効果が最小化されるように端部電極に比較的高いDC電圧を使用することができ、イオンが捕捉電極に機械加工されたスロットを通して、または、適切に励起された場合に捕捉電極間を通して射出され得る。著しい軸方向捕捉電位のために、捕捉されたイオンは、半径方向に印加された集合場により励起され、捕捉電極を通して、またはその間を、イオン検出器に向け射出されるか、あるいは、衝突セルおよび/または飛行時間型質量分析計に射出される。
【0038】
図11は、そのような半径方向移動線形イオントラップの単純型を示す。ここで、上述のように不連続的に集合場の特性を適切に変化させることにより、第1群の捕捉されたイオンと第2群の捕捉されたイオンが、捕捉電極を通して1対のイオン検出器に排出される。
【0039】
図11を参照すると、半径方向移動線形イオントラップ質量分析計システム110の比較的単純な変形例が概略図として示されている。線形イオントラップ質量分析計システム110は、ロッドセットQ0の後に2つの細長いロッドのセットQ0およびQ1を備える。追加的な短いロッドのセットQ1AおよびQ2Aが、細長いロッドセットQ1のいずれかの端部に設けられている。
【0040】
線形イオントラップ質量分析計システム110は、図1aに関連して上述されたのと同様に動作し、簡潔さのためこの説明は繰り返さない。明確性のため、図1aの線形イオントラップ質量分析計システム10の対応する要素と類似した、図11の線形イオントラップ質量分析計システム110の構成要素を指定するために、同じ参照番号に100を加えたものを使用している。
【0041】
線形イオントラップ質量分析計システム110は、半径方向排出用に構成されている。したがって、Q1内に捕捉されたイオンは、共鳴励起され、次いでQ1の捕捉電極を通してQ1の外の一対のイオン検出器130に半径方向に移動されることが可能である。これは、軸方向移動に関連して上述したプロセスと類似して、不連続的に集合場の特性を適切に変化させることにより行うことができる。
【0042】
図12は、衝突セルを通して飛行時間型質量分析計に半径方向に選ばれたイオン群を移動することによりイオン群の高効率MS/MSを得るために使用可能な装置の概略図を示す。不連続的に集合場を変化させた後に半径方向に移動されたイオン群は、ガスで加圧された衝突セルに向けて加速されることが可能であり、その中でフラグメントが形成される。フラグメントおよび残留前駆イオンは、次いで飛行時間型質量分析計に通過され、質量分析されることが可能である。
【0043】
より具体的には、図12の線形イオントラップ質量分析計システム210は、Q1が軸方向移動とは対照的に半径方向移動用に構成されていることを除き、図1cの質量分析計システム10と同様である。簡潔さのため、図12の線形イオントラップ質量分析計システム210に関し、図1cの線形イオントラップ質量分析計システム10の説明は繰り返さない。明確性のため、図1cの線形イオントラップ質量分析計システム10の構成要素と類似した、図12の線形イオントラップ質量分析計システム210の構成要素を指定するために、同じ参照番号に200を加えたものを使用している。
【0044】
図12の質量分析計システム210において、イオンはQ0および短いロッドQ1Aを介してQ1内に放出される。Q1は線形イオントラップである。次いで、Q1内で、選択された質量対電荷比を有する第1群のイオンを半径方向の排出に選択することができる。次に、この第1群のイオンを共鳴励起するために必要なQ1の動作条件の急速なシフトまたはジャンプが提供される。この急速なシフトまたはジャンプは、RF捕捉場の振幅または周波数に対し行うことができる。
【0045】
第1群のイオンのこの共鳴励起は、少なくとも1ミリ秒となり得る励起時間間隔の間維持することができ、結果的にQ1からQ2への第1群のイオンの共鳴排出が得られる。Q2内において、この第1群のイオンは次いでフラグメント化され、続いて下流側の飛行時間型(ToF)質量分析計に軸方向に排出され検出されることが可能である。あるいは、Q1からの第1群のイオンが単に飛行時間型質量分析計にフラグメント化することなく送られるように、Q2は単に透過型質量分析計として使用することができる。
【0046】
本発明の別の変形例および修正も可能である。例えば、特定の線形イオントラップシステム構成に実装される本発明の実施形態の異なる側面の説明は、例示のみを目的としており、本発明の側面はまた、他の線形イオントラップに対しても適用され得る。全ての修正および変形例は請求項で定義されている本発明の分野および範囲内であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドセットを有する質量分析計を動作する方法であって、該ロッドセットは、第1端部と、該第1端部の反対側の第2端部と、該第1端部と該第2端部との間に延在する長手方向軸とを有し、該方法は、
a)該ロッドセットにイオンを導入するステップと、
b)該ロッドセット内の該イオンのうちの少なくとも一部を、i)該ロッドセットの第1端部に隣接する第1端部部材に第1バリア場を生成すること、ii)該ロッドセットの第2端部に隣接する第2端部部材に第2バリア場を生成すること、およびiii)該ロッドセットのロッド間にRF場を備える集合場を提供することと、によって捕捉するステップと、
c)該イオンにおける第1群のイオンの第1の選択された質量対電荷比を選択するステップと、
d)該第1群のイオンに対する該集合場の選択された特性の第1励起レベルを決定するステップと、
e)該第1群のイオンを共鳴励起して、該バリア場を通り該ロッドセットから軸方向に質量選択的に該第1群のイオンを排出するために、該集合場の選択された特性を該第1励起レベルまで調整するステップと、
f)励起時間間隔の間、該集合場の選択された特性を該第1励起レベルに維持するステップであって、該励起時間間隔は少なくとも1ミリ秒である、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記選択された特性は、RF場の振幅および周波数のうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記集合場は、励起AC場を備え、前記選択された特性は、該励起AC場の周波数であり、該励起AC場は、双極子励起電圧および四極子励起電圧のうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記質量分析計は、一組の補助電極をさらに備え、前記励起AC場は、該一組の補助電極により提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第2の選択された質量対電荷比の第2群のイオンを前記イオンから選択するステップと、
該第2群のイオンに対する前記集合場の選択された特性の第2励起レベルを決定するステップと、
ステップf)の後に、該第2群のイオンを共鳴励起して、前記バリア場を通り前記ロッドセットから軸方向に質量選択的に該第2群のイオンを排出するために、該集合場の選択された特性を該第2励起レベルまで調整するステップと、次いで
第2励起時間間隔の間、該集合場の選択された特性を該第2励起レベルに維持するステップであって、該第2励起時間間隔は少なくとも1ミリ秒である、ステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記集合場の選択された特性を前記第2励起レベルまで調整するステップは、前記第1励起レベルから該第2励起レベルに前記集合場の選択された特性を1ミリ秒未満で調整するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1群のイオンは、前記第2群のイオンから1amuより大きく異なる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記選択された特性は、前記励起時間間隔および前記第2励起時間間隔にわたって実質的に一定である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)は、i)前記第1バリア場を提供するために、前記第1端部部材と前記ロッドセットとの間に第1DC電圧差を提供するステップと、ii)前記第2バリア場を提供するために、前記第2端部部材と該ロッドセットとの間に第2DC電圧差を提供するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1DC電圧差および前記第2DC電圧差は等しい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップb)は、i)前記第1バリア場を提供するために、前記第1端部部材と前記ロッドセットとの間に第1AC電圧差を提供するステップと、ii)前記第2バリア場を提供するために、前記第2端部部材と該ロッドセットとの間に第2AC電圧差を提供するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1AC電圧差および前記第2AC電圧差は等しい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップe)は、前記第1群のイオンを検出器に軸方向に排出するステップをさらに含み、
前記方法は、該軸方向に排出された第1群のイオンの少なくとも一部を検出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ステップe)は、前記第1群のイオンを下流側のイオントラップに軸方向に排出するステップをさらに含み、
前記方法は、g)該下流側のイオントラップ内の該第1群のイオンをさらに処理するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ステップe)は、前記第1群のイオンを下流側の衝突セルに軸方向に排出するステップをさらに含み、
前記方法は、該衝突セル内の該第1群のイオンをフラグメント化するステップと、次いで質量分析のために、該第1群のイオンを下流側の質量分析計に軸方向に排出するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記下流側の質量分析計は、線形イオントラップ質量分析計であり、前記方法は、前記第1群のイオンを該線形イオントラップ質量分析計内に保存するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記下流側の質量分析計は、飛行時間型質量分析計である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1励起間隔および前記第2励起間隔のうちの少なくとも1つは、少なくとも5ミリ秒である、請求項5に記載の方法。
【請求項19】
前記第1励起間隔および前記第2励起間隔のうちの少なくとも1つは、少なくとも20ミリ秒である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ロッドセットの上流側のイオンのサンプルを保存するステップをさらに含み、ステップa)は、該サンプルイオンからの第1バッチのイオンを該ロッドセットに導入するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記サンプルイオンは、前記ロッドセットの動作圧力の2倍を超える圧力において動作する高圧質量分析計内に保存され、
前記方法は、ステップa)の間に、該高圧質量分析計から該ロッドセットへの該第1バッチのイオンの移動を促進するために、該高圧質量分析計と該ロッドセットとの間のバリア発生部材を誘引モードに切り替え、ステップb)からf)の間に、該高圧質量分析計内の第1バッチのイオン以外のサンプルイオンの維持を促進するために、反発モードに切り替えるステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記高圧質量分析計は、前記ロッドセットの動作圧力の10倍を超える圧力において動作する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記サンプルイオンは、MALDI源に保存され、ステップa)は、前記ロッドセットを満たすために必要な回数だけ該MALDI源をパルス放出するステップを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記サンプルイオンは、ナノスプレー源に保存され、ステップa)は、前記第1バッチのイオンを前記ロッドセットに導入するために該ナノスプレー源を起動するステップと、次いで該ナノスプレー源をオフにするステップとを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記サンプルイオンは、前記ロッドセットの上流側のイオン源に保存され、ステップa)は、前記第1バッチのイオンを該ロッドセットに導入するために該イオン源を起動するステップと、次いで該イオン源をオフにするステップとを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
ステップa)からf)の後に、前記高圧質量分析計内に保存されたサンプルイオンからの第2バッチのイオンを前記ロッドセットに導入するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記ロッドセットから排出された前記第1群のイオンを含むイオンを検出するステップと、
前記励起時間間隔にわたる時間ピークのシーケンスを発生するステップと、
該時間ピークのシーケンスにおける第1時間ピークを、該第1群のイオンに対応するものとして選択するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記時間ピークのシーケンスにおける後続の時間ピークを、前記第1群のイオンとは異なる非共鳴群のイオンに対応するものとして選択するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ロッドセットを有する質量分析計を動作する方法であって、該ロッドセットは、第1端部と、該第1端部の反対側の第2端部と、該第1端部と該第2端部との間に延在する長手方向軸とを有し、該方法は、
a)該ロッドセットにイオンを導入するステップと、
b)該ロッドセット内の該イオンの少なくとも一部を、i)該ロッドセットの該第1端部に隣接する第1端部部材に第1バリア場を生成すること、ii)該ロッドセットの該第2端部に隣接する第2端部部材に第2バリア場を生成すること、およびiii)該ロッドセットのロッド間にRF場を備える集合場を提供すること、により捕捉するステップと、
c)該イオンにおける第1群のイオンの第1の選択された質量対電荷比を選択するステップと、
d)該第1群のイオンに対する該集合場の選択された特性の第1励起レベルを決定するステップと、
e)該第1群のイオンを共鳴励起して、該バリア場を通り該ロッドセットから半径方向に質量選択的に該第1群のイオンを排出するために、該集合場の選択された特性を該第1励起レベルまで調整するステップと、
f)励起時間間隔の間、該集合場の選択された特性を該第1励起レベルに維持するステップであって、該励起時間間隔は少なくとも1ミリ秒である、ステップと
を含む、方法。
【請求項30】
ステップe)は、前記第1群のイオンを下流側の衝突セルに半径方向に排出するステップをさらに含み、
前記方法は、該衝突セル内の第1群のイオンをフラグメント化するステップと、次いで質量分析のために、該第1群のイオンを下流側の質量分析計に排出するステップとをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記下流側の質量分析計は、飛行時間型質量分析計である、請求項30に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−544122(P2009−544122A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519762(P2009−519762)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001256
【国際公開番号】WO2008/009108
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(508153855)エムディーエス アナリティカル テクノロジーズ, ア ビジネス ユニット オブ エムディーエス インコーポレイテッド, ドゥーイング ビジネス スルー イッツ サイエックス ディビジョン (17)
【出願人】(508298514)アプライド バイオシステムズ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】