説明

内側に炭層を有する塩化ビニルパイプと金属パイプ

【課題】導水管や通気管として使用する塩化ビニルパイプや金属パイプには、液相や気相を浄化活性する働きがなかった。
【解決手段】塩化ビニルパイプや金属パイプの内側を0.05mm〜2mm厚みの炭層で覆ったものであり、パイプ内を移動する液相や気相は、炭の層の中を移動するのと同様となり浄化活性される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液相や気相を浄化活性する商品に関する。
【背景技術】
【0002】
木炭には強い触媒作用があり、液相や気相を浄化活性することが最近判明されてきている。
【0003】
一方、発明者は低コストで木炭や活性炭を液化して、様々な物に塗布して炭含有率が60%以上の炭層を得ることができる技術を開発し有している。本発明でいう炭や炭層は、木炭と活性炭の双方またはいずれかであり、木炭は植物原料の炭化物であり、活性炭は液相用、気相用のものである。
【0004】
そこで発明者は従来の材料が利用できて、液相や気相を浄化活性できるよう、塩化ビニルパイプや金属パイプの内側を炭で覆った、塩化ビニルパイプや金属パイプを発明した。本発明でいう金属パイプはステンレスパイプと鉄パイプである。
【先行技術文献】
【特許文献1】
【0005】
特許出願2000−346562のように、アルミナセメントと活性シリカを主成分とするセメント成分に、竹炭を1〜45重量%の割合で混合して水で混練して炭入りコンクリートとして、吹付塗布して炭入りコンクリート層を河川堤体ブロック表面に塗布して形成した、河川の水を浄化するものはある。
【特許文献2】
【0006】
特許出願2000−357171のように、生分解性樹脂で作られた網状包容体に、植物の破砕物及び植物の炭化物を充填してなることを特徴とする、動植物の生育育成を図って水の浄化を促進し、水辺の景観を回復保全する水辺景観回復保全資材はある。
【特許文献3】
【0007】
特許出願平6−130045のように木炭層ユニットを作りこれを移動することによって、湖水などを浄化するものもある。
【特許文献4】
【0008】
特許出願2003−120029に筒状の外側面と、外側面と隙間を開けて内方に設けられた筒状の内側面と、外側面と内側面の両端側にそれぞれ設けられ、外側面と内側面との隙間を塞ぐ2つの端面とを有し、外側面と内側面と両端面で画されるリング状断面の空間を収容部とする筒状容器に、粒状の活性炭や触媒を充填して、それぞれ活性炭フィルター、触媒フィルターとした、空気浄化装置はある。
【特許文献5】
【0009】
特許出願2008−62444に優れた浄化効率を確保しつつ、省スペース化を実現することができ、さらには、維持管理が容易で、維持コストも抑制できる吸湿性、オイル吸着性及び親水性ガス吸着性を有する無機多孔質フィルターと、疎水性ガス吸着性を有する脱臭フィルターから成る厨房用空気浄化装置はある。
【0010】
水や空気を浄化するためには、フィルターなど余分な工程を設けるのが一般的である。そして、活性炭や木炭は環境阻害する有機物質を吸着させるためなどに、主に消耗品として使用されていた。
【0011】
このように内側が木炭層、活性炭層、木炭と活性炭混合層のいずれか、すなわち炭層で覆われていて、液相や気相を主に触媒効果によって、浄化活性する機能を持つ導水管や通気管はなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
液相や気相を浄化するためには、様々な処理工程を経る必要があり、消耗品に係るコストやエネルギーに係るコストを要し環境に負担を与える問題がある。
【0013】
導水管や通気管の多くは耐久性やコスト面から塩化ビニルパイプや金属パイプを使用している。これらのパイプ中を移動するだけで、液相や気相が浄化活性できれば従来のように浄化工程を設ける必要はなく、低コストで空気や給排水を浄化活性できる。
【0014】
従来、活性炭は有害物を吸着するという概念から吸着限界としての飽和があるため、例えば浄水器は浄水部である活性炭層を定期的に取り換える仕組みである。しかし、近年では触媒としての機能が判明して、少量の有害物であれば分解して飽和がないと考えられている。浄水器などには水を活性するために活性炭が広く使用されているが、導水管内に活性炭層を設ければ、浄水器を凌駕する大きな面積を持つ活性炭層ができるため浄水器は不要である。
【0015】
また、空気浄化フィルターなどは通気を阻害するが、通気管内に炭層があれば、通気を阻害することなく浄化することができる。
【課題を解決する手段】
【0016】
液相や気相を浄化活性するための材料の1として活性炭や木炭がある。活性炭は触媒および触媒担体として広く用いられているが、それは活性炭に存在するラジカルや表面官能基の存在および活性炭自体の電子移動触媒としての働きがその機能発現に寄与していると考えられる。活性炭自体が持つ触媒機能としては、酸化還元、ハロゲン化、脱ハロゲン化、脱水素、分解、異性化、重合などあり、担体としても多くの例が報告されている。このような作用は木炭にも存在すると予想される。また、選択吸着性あるいは触媒作用は極めて強い温度依存性を示す。
【0017】
木材を600℃で炭化した木炭はNOxを85〜98%の窒素(N2)と2〜15%の一酸化窒素(NO)に変化して無害化する働きがあることが、最近解明された。流速100ml/分、100〜600ppmの二酸化窒素(NO2)を0.5gのスギ木炭粉中を通過させることにより、炭化温度600℃の木炭によって85〜98%の窒素(N2)への変化と2〜15%の−酸化窒素(NO)へのそれに加えて少量の一酸化炭素(CO)および酸化二窒素(N2O)を生成し、顕著なNOxの無害化機能の存在がある。
【0018】
NO2が木炭の細孔に接触凝縮し、高活性化することにより、二量化され、直ちに木炭の強い還元作用によって還元されて、二量化NOに変換され、これが更に還元されてN2への変換とCOの生成と放出があり、同時に未還元NOも放出するものと予測される。この機能は800〜1500℃炭化木炭では1/3〜1/5にまで低下する。
【0019】
炭化過程における表面の化学構造と細孔構造の変化は、気相環境浄化、制御にも相乗的に作用するものと予想される。例えばホルムアルデヒド類、ケトン類やアルコール類を吸着する木炭の性能は、炭化温度が高いほど向上し、1000〜1200℃では選択的な高い吸着挙動が認められる。
【0020】
この性能は市販3種類の活性炭のそれより優れており、0.5gの1000℃木炭粉末中を500〜900ppmのホルムアルデヒドを100ml/分で通過させるとホルムアルデヒドの流出はなく、メチルアルコール、一酸化炭素が検出される。
【0021】
これはホルムアルデヒドの分解の可能性もあり、単なる吸着だけではなく、木炭表層の化学作用または触媒作用の影響が予想される。
【0022】
触媒機能は表面の化学構造と細孔構造によって発現すると推測されている。このような触媒機能を広く利用するために、塩化ビニルパイプの内部表面を炭化温度の異なる木炭混合物または、混合した活性炭、またはこれらの混合物で覆えば、パイプ内部を移動する過程で液相や気相が効率よく浄化活性される。
【0023】
このように、木炭は炭化温度によって多様な機能を現わすため、炭化温度の違った、数種類を混合して使用すると幅広い浄化活性機能を有するものになる。また、活性炭を混合したものでもよく、活性炭単独使用でもよい。
【0024】
水は流動によって活性する性質をもっていて、流れが滞ると一定時間後に汚濁する。一般的においしい水といわれているのは、火成岩の中を流動している水であり、遠赤外線を放射する火成岩の影響を受け分子レベルの変化が起こるためと推測できる。
【0025】
木炭は火成岩、例えばバクハン石やブラックシリカ以上に遠赤外線放射特性に優れている。
【0026】
また木炭の多孔質性は微生物の住家に適していて、処理したい物質に適応した微生物叢ができ排水の浄化処理に適している。特に杉材や松材など成長が早い樹木の木炭は細孔が大きく、微生物の生息には適している。
【0027】
木炭はクヌギ、コナラ等の落葉樹、アラガシ、ウバメガシなどの照葉樹、杉、松、檜などの針葉樹、竹類など、樹木の種類とそれらの炭化温度によって細孔の分布が違うが、本発明での木炭は竹を含むすべての植物原料の木炭を指す。
【0028】
従来、例えば木炭による調湿作用は、木炭の体積や重量に比例すると考えられていた。しかし、当社の実験結果からは、例えば、水の蒸発促進作用は、木炭の使用重量には関わりなく表面積に比例することが判明している。このように触媒作用など多くの現象は木炭の表面積の大きさに関わると推測される。
【0029】
導水管や通気管内側を炭層で覆えば、大きな表面積を有する炭層ができ、大量の空気や水の浄化活性が可能になる。
【0030】
導水管や通気管内を移動する水や空気は常に炭層と接触しているため、炭の吸着作用や触媒作用によって有害物質の吸着分解がなされ、浄化されると伴に活性しておいしい水や清浄な空気に変わる。また、吸着分解できない汚染物質は木炭中に生息する微生物に寄って分解浄化される。
【発明の効果】
【0031】
本発明は既存のイプ内部の広大な空間を、液相や気相の浄化活性に有効に利用するものであり、塩化ビニルパイプや金属パイプ内側に炭層を設けただけのもので、低コストである。また、従来の工法や工程を変更する必要がないため、施工に関わるコスト増はない。そして、パイプ内を移動した液相や気相は膨大な炭の層を移動したのと同様に浄化活性される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】は本発明の、内側全面に木炭層を有する塩化ビニルパイプの断面図である。
【0033】
【図2】は本発明の、内側全面に木炭層を有する塩化ビニルパイプの概略斜視図である。
【0034】
【図3】は本発明の、端部の一部を除いた内側に木炭層を有する塩化ビニルパイプの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図面を使って、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の内側に木炭層を有する塩化ビニルパイプの断面図である。内側が木炭層で覆われていて、移動する液相や気相は常に木炭層と接触するため、木炭の触媒作用などの影響を受けて浄化活性される。
【0036】
炭層を設ける方法は、塩化ビニルパイプや金属パイプ内に液化炭を流し込みながらパイプを回転させて、内側全体に均等で望ましい厚さに液化炭を塗布した後、自然乾燥または送風や熱風や電磁波による強制乾燥によって実施される。この時、炭層の厚みは、回転速度や液化炭の粘度で調整できる。また、テープなどを貼っておいて塗布後に剥がせば、炭層がない部分を容易に設けることができる。
【0037】
このように通常は内側全体を炭層で覆うが、炭層がない部分を設けることもできる。
【実施例】
【0038】
次に、本発明における内側に炭層を有する塩化ビニルパイプの製造方法と構造を具体的に説明する。
【実施例1】
【0039】
杉材を650℃で炭化し、粒径0.1mmに加工して粉末木炭を得る。この粉末木炭とエチレン酢酸ビニル接着剤と水を1:1:0.2の重量比で混合して液化木炭1を得る。
【0040】
この液化木炭1を塩化ビニルパイプ内側に流しこみ、塩化ビニルパイプを回転させながら、0.5mmの厚さに塗布した後、回転を継続しながら自然乾燥させる。30分間〜1時間で表面が乾燥して液化木炭は移動しなくなる。乾燥後は、塩化ビニルパイプ内側全体に0.45±0.03mm厚みで、木炭比率約67%の木炭層ができる。木炭層は塩化ビニルパイプと強固に接着して剥がれることなく汚れない。
【0041】
本実施例では粉末木炭原料に杉材を使用したが、クヌギ材や松材や樫材や竹材など植物原料であればよい。また、炭化温度が異なる木炭を混合した粉末炭を使用するのが望ましい。
【0042】
液化木炭1に使用した接着剤は、エチレン酢酸ビニル接着剤であり、望ましい接着剤であるが、アクリル樹脂系接着剤、シリコンゴム系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤でもよく、無機質系の接着剤を使用してもよい。また、粉末木炭とエチレン酢酸ビニル接着剤と水の混合比率を変更してもよいが、木炭比率を低下させないことが望ましい。また、液化木炭1に活性炭の他、ゼオライトや鉱物粉などを混合して使用してもよい。
【実施例2】
【0043】
クラレケミカル製液相用活性炭KWを粒径0.05mmに加工して得た活性炭とエチレン酢酸ビニル接着剤と水を1:0.9:0.1の重量比で混合して液化活性炭1を得る。
【0044】
この液化活性炭1を塩化ビニルパイプ内側に流しこみ、パイプを回転させながら、0.3mmの厚さに塗布した後乾燥させる。乾燥後は0.25±0.03mm厚みで活性炭比率約69%の活性炭層ができ、内側全体に活性炭層を有する塩化ビニルパイプができる。
【0045】
使用する活性炭は液相用活性炭、気相用活性炭、粉末活性炭など、どのような種類の活性炭でもよく、混合したものでもよい。また、液化活性炭1に使用した接着剤は、エチレン酢酸ビニル接着剤であり、望ましい接着剤であるが、アクリル樹脂系接着剤、シリコンゴム系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤でもよく、無機質系の接着剤を使用してもよい。また、活性炭とエチレン酢酸ビニル接着剤と水の混合比率を変更してもよいが、活性炭比率を低下させないことが望ましい。また、液化活性炭1に木炭の他、ゼオライトや鉱物粉などを混合して使用してもよい。
【実施例3】
【0046】
650℃で炭化した杉材の木炭と、600℃で炭化したクヌギの木炭とクラレケミカル製液相用活性炭GWGを重量比1:1:1で混合して得た粒径0.1mmの混合粉末炭とエチレン酢酸ビニル接着剤と水を1:1:0.2の重量比で混合して液化混合炭1を得る。
【0047】
この液化混合炭1を塩化ビニルパイプ内に流しこみ、塩化ビニルパイプを回転させながら、0.5mmの厚さに塗布した後乾燥させる。乾燥後には塩化ビニルパイプ内側全体に0.45±0.03mm厚みで混合炭比率約67%の混合炭層ができる。
【0048】
液化混合炭1に使用した接着剤は、エチレン酢酸ビニル接着剤であり、望ましい接着剤であるが、アクリル樹脂系接着剤、シリコンゴム系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤でもよく、無機質系の接着剤を使用してもよい。また、液化混合炭1とエチレン酢酸ビニル接着剤と水の混合比率を変更してもよいが、混合炭比率を低下させないことが望ましい。また、液化混合炭1にゼオライトや鉱物粉などを混合して使用してもよい。
【0049】
本実施例では粉末木炭原料に杉材とクヌギ材を使用したが、松材や樫材や竹材など植物原料であればよく、炭化温度は自由電子の多い600〜800℃近傍が望ましいが、400〜1200℃の範囲であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
給水の浄化活性や空気の浄化活性は余分な設備を要さず可能である。また、流動しないお堀の水のような溜め水や産業排水はパイプ内を循環させるだけで浄化活性できるため、低コストできれいな水を得ることができる。また汚染した排気や大気も同様に浄化活性できる。
【符号の説明】
1. 塩化ビニルパイプ
2. 木炭層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニルパイプや金属パイプの内側を0.05mm〜2mm厚みの、木炭層、活性炭層、木炭と活性炭混合層のいずれかで覆ったものであり、気相と液相の浄化活性機能を有するパイプである。
【請求項2】
請求項1の塩化ビニルパイプや金属パイプの内側を木炭層、活性炭層、木炭と活性炭混合層のいずれかで覆う方法は、パイプ内に液化木炭、液化活性炭、液化混合炭のいずれかを流し込みながら、パイプを回転させて、内側全体に0.05mm〜2mm厚みの範囲で、均等な厚さに塗布した後、自然乾燥または送風や熱風や電磁波の組み合わせによる強制乾燥によって実施される。
この時、炭層の厚みは、回転速度と液化木炭の粘度で調整する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−35249(P2012−35249A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190064(P2010−190064)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(598095042)株式会社森林研究所 (24)
【Fターム(参考)】