内分泌処置予測因子としてのANLNタンパク質
本発明は、乳癌予後および処置予測のための方法、使用および手段を提供する。乳癌被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;前記サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;サンプル値と対照値とを比較する工程;および前記サンプル値が前記対照値より高い場合、被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性がないか、または前記被験体の予後は、対照値に関連する対照予後より不良であると結論付ける工程を含んでなる方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳癌の領域に関する。特に、本発明は、当該領域内の予後、処置および処置予測に関する。
【背景技術】
【0002】
癌
癌は、西洋における最も多い疾患および死亡の原因の1つである。一般に、罹患率は、ほとんどの形態の癌について、年齢と共に増加する。一般的健康状態の上昇によりヒト集団の寿命が続伸しているため、癌が影響を及ぼし得る個体数が増加している。最も多い癌タイプの原因はなお、大部分が不明であるが、環境因子(食事、喫煙、UV照射など)および遺伝的因子(p53、APC、BRCA1、XPなどなどの「癌遺伝子」における生殖細胞系列変異)と癌の発達の危険性との間の関連を提供する知識体系が増大している。
【0003】
癌は、本質的に細胞の疾患であり、そして正味の細胞増殖および秩序に反する(anti−social)挙動を伴う形質転換された細胞集団として定義されているという事実にもかかわらず、細胞生物学的観点から見ると、癌の定義は、完全には満足できるものではない。悪性形質転換は、不可逆的な遺伝的変更に基づく悪性表現型への転移を表す。このことは正式には証明されていないが、悪性形質転換は、1個の細胞から生じ、その細胞を起源として、その後、腫瘍が発達する(「癌の形成」ドグマ)と考えられている。発癌は、癌が発生するプロセスであり、究極的に悪性腫瘍の増殖をもたらす多数の事象を含むことが一般的に認められている。この多段階プロセスは、変異の付加およびおそらくはまたエピジネティックな事象のようないくらかの律速段階を含み、前癌増殖のステージ後に癌の形成をもたらす。段階的変化は、細胞分裂、秩序的な(asocial)挙動および細胞死を決定する生命の規則的経路におけるエラー(変異)の累積に関係する。これらの変化のそれぞれは、周囲の細胞と比較して、選択的なダーウィン(Darwinian)増殖の利点を提供し得、腫瘍細胞集団の正味の増殖を生じる。悪性腫瘍は、必ずしも形質転換された腫瘍細胞自体のみではなく、また、支持間質として作用する周囲の正常細胞からもなる。この補充された癌間質は、結合組織、血管および他の様々な正常細胞、例えば、形質転換された腫瘍細胞に、腫瘍増殖の継続に必要なシグナルを供給するために共同で作用する炎症細胞からなる。
【0004】
最も多い癌の形態は、体細胞において生じ、そして主に、上皮、例えば、前立腺上皮、乳房上皮、結腸上皮、尿路上皮および皮膚上皮由来であり、その次に多い形態として、造血系統を起源とする癌、例えば、白血病およびリンパ腫、神経外胚葉、例えば、悪性神経膠腫、ならびに軟部組織腫瘍、例えば、肉腫が続く。
【0005】
癌診断および予後
腫瘍から採取した組織切片の顕微鏡的評価は、依然として、癌の診断を決定するための絶対的基準のままである。例えば、顕微鏡的診断では、疑わしい腫瘍由来の生検材料を回収し、そして顕微鏡下で調べる。確定診断を得るためには、腫瘍組織をホルマリン中で固定し、組織学的に処理(histo−processed)し、そしてパラフィン包埋する。得られるパラフィンブロックから、組織切片を生成し、そして組織化学的、即ち、ヘマトキシリン−エオシン染色、および免疫組織化学的方法の両方を使用して、染色する。次いで、外科的標本を、目視および顕微鏡分析を含む病理学的技術により評価する。この分析は、しばしば、特異的診断、即ち、腫瘍タイプを分類し、そして腫瘍の悪性度をグレーディングするための基礎を形成する。
【0006】
悪性腫瘍は、各癌タイプに特異的な分類スキームに従って、いくらかのステージに分類することができる。固形腫瘍の最も一般的な分類システムは、腫瘍−リンパ節−転移(TNM)分類である。Tの分類は、原発腫瘍の局所進展度、即ち、腫瘍がどれだけ広範に周囲の正常組織に浸潤し、そして増殖したかについて説明する一方、Nの分類およびMの分類は、腫瘍がどれくらいの転移に進展しているかを説明しており、Nの分類は、腫瘍のリンパ節への拡大を説明し、そしてMの分類は、他の離れた器官における腫瘍の増殖について説明している。初期のステージとして:T0〜1、N0、M0が挙げられ、リンパ節転移陰性の局在性の腫瘍を表す。より進行期のステージとして:より広範な増殖を伴う局在性の腫瘍を表すT2〜4、N0、M0が挙げられ、そしてリンパ節に転移した腫瘍を表すT1〜4、N1〜3、M0が挙げられ、そして離れた器官において転移が検出された腫瘍を表すT1〜4、N1〜3、M1が挙げられる。腫瘍の分類は、しばしば、外科的、放射線学的および病理組織学的分析を含むいくらかの形態の検査に基づく。分類に加えて、ほとんどの腫瘍タイプの悪性度のレベルをグレーディングするための分類システムも存在する。グレーディングシステムは、腫瘍組織サンプルの形態学的評価に依存し、そして所与の腫瘍において見出される顕微鏡的特徴に基づく。これらのグレーディングシステムは、腫瘍細胞の分化、増殖および異形の程度に基づき得る。一般的に用いられるグレーディングシステムの例として、前立腺癌をグレーディングするGleasonおよび乳癌をグレーディングするNottingham Histological Grade(NHG)が挙げられる。
【0007】
的確な分類およびグレーディングは、正確な診断に極めて重要であり、そして予後を予測するための道具を提供し得る。続いて、特定の腫瘍の診断および予後情報は、所与の癌患者の適切な処置ストラテジーを決定する。組織切片の組織化学染色に加えて、腫瘍に関する更なる情報を得るための一般に用いられる方法は、免疫組織化学染色である。IHCは、特異的抗体を使用する組織および細胞におけるタンパク質発現パターンの検出を可能にする。臨床診断においてIHCを使用すると、組織化学的に染色した腫瘍組織切片から評価される組織構造および細胞形態学に関する情報に加えて、異なる細胞集団における免疫反応性を検出することが可能になる。IHCは、原発腫瘍の分類およびグレーディングを含む的確な診断を支持すること、ならびに起源が不明な転移の診断に関係し得る。今日の臨床診療において最も一般に使用される抗体として、細胞タイプ「特異的」タンパク質、例えば、PSA(前立腺)、MelanA(メラノサイト)およびサイログロブリン(甲状腺)に対する抗体、ならびに中間径フィラメント(上皮細胞、間葉細胞、グリア細胞)、白血球分化(CD)抗原(造血(hematopoetic)細胞、リンパ系(lympoid)細胞の下位分類)および悪性能のマーカー、例えば、Ki67(増殖)、p53(通例、変異した腫瘍抑制因子遺伝子)およびHER−2(増殖因子受容体)を認識する抗体が挙げられる。
【0008】
IHCの他に、遺伝子増幅を検出するためのインサイチュハイブリダイゼーションおよび変異分析の遺伝子配列決定の使用も、癌診断内の発展している技術である。加えて、転写物、タンパク質または代謝物の網羅的分析もすべて、関連の情報を追加する。しかし、これらの分析のほとんどはなお、基礎研究を想定しており、そして臨床医学における使用のための評価および標準化は未だ行われていない。
【0009】
医師が、できるだけ早期に正しいタイプの処置を癌患者に施すために、癌患者の異なる危険度カテゴリーへのより的確な層化を可能にする新たな分子マーカーを供給することは興味深い。要約すると、癌の予後および分類を進歩させるための新たな手段が必要とされている。
【0010】
乳癌
乳癌は、世界中で2番目に多い形態の癌であり、そして女性のはるかに頻度の高い癌である。Parkinらによって提示されたGLOBOCAN2002データベースのデータから、2002年では115万人の新たな症例および同じ期間中に41万人の死亡例が示された(非特許文献1)。早期のステージにおいて検出される場合、先進国に住む患者の予後は比較的良好であり、一般的な5年生存率は、後進国の57%と比較して、73%である。発症率は緩徐に増加しており、そして先進国の女性の9名中約1名が、生涯に乳癌に罹患すると考えられている。外因性ホルモンへの暴露を含む女性のステロイドホルモンに関連するライフスタイルの変化は、乳癌の発達の危険性に影響を及ぼすが、これらの要因は、病因のほんの一部を占めるに過ぎず、予防措置の利益は低いと考えられる。死亡率の減少は、主に、マンモグラフィースクリーニングによる早期検出および現代のアジュバント全身処置の使用による。
【0011】
乳癌の処置
70年代後半における導入以来、腫瘍の根治的切除術を良好な美容的結果と組み合わせることができる乳房温存手術と術後放射線療法とを組み合わせた乳房温存療法が、女性の主な選択処置になっている。乳房切除術はなお、特定の患者、即ち、乳房部が小さい、腫瘍が大きい(>4cm)または多病巣性/多中心性疾患を伴う女性において好適である。
【0012】
腋窩リンパ節郭清は、主に、診断目的のために実施されており、そして少なくとも10個のリンパ節を取り出すことにより、97〜98%の感度を伴う良好な分類指針が得られる(非特許文献2;非特許文献3)。しかし、原発性癌の処置における小範囲手術への次の段階は、高い合併症率を伴う腋窩リンパ節郭清の代わりに腋窩リンパ節のマッピングによるセンチネルリンパ節生検技術の導入である。この技術は、乳房から腋窩へのほとんどのリンパドレナージが、はじめに1個(もしくは数個)のリンパ節(センチネルリンパ節)を通過するという、このリンパ節の分析が、腋窩リンパ節の状態の十分な指標であり得ることを支持する知識の結果として導入された(非特許文献4)。
【0013】
全身性疾患としての乳癌、即ち、診断時に微小転移の存在が散見され、これにより局所領域療法後の処置の失敗を説明し得るという概念から、1970年代に、内分泌療法および化学療法を含むアジュバントの無作為化治験への道が開かれた。アジュバント多剤併用化学療法は、リンパ節の状態に関係なく、再発の危険性が高いホルモン受容体陰性患者に対する標準的な処置である。全生存率および無再発生存率の両方に対する有益な効果が、特に、閉経期前の患者において実証されている(非特許文献5)。ホルモン応答性疾患、即ち、エストロゲン受容体(ER)および/またはプロゲステロン受容体(PR)陽性疾患を伴う患者には、アジュバント多剤併用化学療法が、連続的な化学−内分泌療法として内分泌療法との併用で行われている。また、アジュバント化学療法は、一般的に、無月経を誘発し、細胞障害性に加えて、派生的な内分泌上の影響を及ぼす(非特許文献6)。
【0014】
内分泌療法は、年齢、ステージおよび閉経期状態に関係なく、ホルモン受容体陽性腫瘍を有する患者に推奨されている。
【0015】
閉経期前のホルモン応答性の患者において、手術もしくは放射線照射による卵巣機能停止、またはLHRHアゴニストによる卵巣機能抑制は、有効なアジュバント処置モダリティーである(非特許文献7)。閉経期後の患者では、エストロゲンの主な供給源は、卵巣での合成からではなく、乳房を含む末梢組織におけるアンドロステンジオンからエストロンおよびエストラジオールへの変換からであるため、卵巣機能停止は有効ではない。
【0016】
タモキシフェンは、ERに対してアゴニスト効果を有する選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)であるため、これは、閉経期前および閉経期後の女性の両方における進行性乳癌に対する適切な処置である。研究により、最初の手術後のアジュバント処置としてタモキシフェンを5年間用いると、リンパ節の状態に関係なく、ER陽性(ER+)腫瘍を有する患者の乳癌による死亡率が減少することが示されている(非特許文献8)。タモキシフェンは、循環器系疾患に対する保護効果を有する一方、子宮内膜のERに対するアゴニスト効果により、子宮内膜癌を発達させる危険性が増加する(非特許文献9)。
【0017】
アロマターゼ阻害剤(AI)は、アロマターゼ、アンドロゲンをエストロゲンに変換する酵素を阻害することによって、機能する。AIは、卵巣を刺激して、視床下部および下垂体を介するアンドロゲン産生の増加をもたらすため、AIは、閉経前の女性の処置に適切ではない。AIは、閉経期後の女性に対するアジュバント処置として、単独かまたはタモキシフェン処置後のいずれかに投与することができ、そしてそれらは、死亡率を有意に減少することが示されているが、おそらく、単独で投与するとなお減少するであろう(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。しかし、この療法は比較的新しく、そして長期の副作用については未だ十分には知られていない(非特許文献13)が、最も重要なのは、循環器系の合併症および骨粗鬆症である。
【0018】
ERを完全に遮断するフルベストラントなどの新たに開発された純粋な抗エストロゲンは、現在、進行性乳癌にのみ使用されており、アジュバントセッティングには使用されない(非特許文献14)。
【0019】
アジュバント内分泌療法は、ホルモン受容体陰性乳癌では有効でないと考えられているが、いくつかの研究では、いくつかのER陰性、即ち、ERα陰性(ERα−)の腫瘍が、タモキシフェン処置に応答することが示されている(非特許文献15)。
【0020】
HER2/neu遺伝子は、すべての乳癌の約20%、および低分化性の乳癌の70%までにおいて過剰発現する(非特許文献16;非特許文献17)。HER2を過剰発現する腫瘍を有する患者は、モノクローナル抗体トラスツズマブによる処置から利益を得ることができる。実験データは、HER2過剰発現と内分泌処置に対する耐性との間の関係を支持している(非特許文献18)が、臨床データの方は一貫していない(非特許文献19、非特許文献20、非特許文献21)。
【0021】
乳癌の診断
形態学的基準はなお、一般的に、乳癌の診断、上皮内(in situ)および浸潤性の癌の両方の確定において重要であると考えられている。浸潤性乳癌のうち、浸潤性乳管癌は、最も多い腫瘍タイプ(約80%)であり、そして小葉癌は、2番目に多く存在する(約10〜15%)。管状癌および髄葉癌は、より有病率が低い異なるタイプである(非特許文献22)。
【0022】
乳癌の予後および処置予測因子
髄様癌などの所定の亜型は、一般に、より好適な予後を有するため、腫瘍タイプの正確な組織学的分類は、予後に関連する事柄である。それにもかかわらず、Nottingham Histological Grade(NHG)システムを使用する組織学的グレーディングの評価はなお、予後のツールである(非特許文献23;非特許文献24)。
【0023】
乳癌の大部分は、ホルモン受容体応答性であり、即ち、ERおよび/またはPRを発現する。エストロゲンの作用は、2つの受容体ERαおよびERβによって仲介される。ERαおよびPRは、内分泌療法のための患者を選択するために、日常的に評価され、そして>10%の核陽性(nuclear positivity)を有する腫瘍を陽性とみなす。ERαは、今日、タモキシフェン応答の予測因子と考えられている。しかし、PR陽性はなお、ERαより強力なタモキシフェン応答の予測因子であり得ることを示す研究がある。タモキシフェンによって無作為に処置された閉経期前の患者の研究では、高い(>75%核画分)PRのレベルは、ERαの状態に関係なく、無再発生存率および全生存率の増加に有意に相関することが示された。より低いPRレベル、<75%では、ポジティブな効果は観察されなかった(非特許文献25)。Yuらは、最近、アジュバント内分泌療法のPRの予測値について研究し、そしてERα+/PR+腫瘍を有するより高齢の患者(≧60歳)は、タモキシフェンで処置した場合、アジュバント処置を行わなかった患者より有意に長い無病生存期間を有することを見出した。より若年の患者(<60歳)では、有意な効果は観察されなかった(非特許文献26)。興味深いことに、ATAC治験(アリミデックス、タモキシフェンまたは併用で処置した閉経期後の女性)の報告では、タモキシフェンで処置した患者と比較して、6年間の追跡期間の間、ERα+/PR−腫瘍を有する アナストロゾール処置患者では、再発率が半減したことが示された(非特許文献27)。
【0024】
乳癌におけるERβの役割については、未だ十分に明らかにされていないが、最近の研究では、ERβ−発現は、より良好なタモキシフェン応答に関連し得(非特許文献28)、特に、ERα−腫瘍において関連し得る(非特許文献29)ことが示唆されている。しかし、ERβを決定することは、今日、一般的に、臨床的関連性はないと考えられている。
【0025】
今日の主な問題は、ERα陽性(ERα+)患者の30〜40%がタモキシフェン処置に応答せず(非特許文献30、非特許文献29)、不必要な処置になることである。加えて、一部のERα−患者は、タモキシフェン処置に応答するが、その理由は、現在のところ不明である。Gruvberger−Saalは、ERβ発現が、ERα−患者におけるタモキシフェン応答の陽性予測因子であることを示唆している(非特許文献29)。
【0026】
HER2状態はまた、主に、IHCによって日常的に評価され、中等度の発現の場合、遺伝子増幅状態は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)分析によって決定される。HER2陽性腫瘍を有する患者は、トラスツズマブで処置してもよい。
【0027】
乳癌は、真正の異種疾患であり、そしてその性質についての理解が深まっているにもかかわらず、利用可能な予後および処置予測マーカーについての蓄積はなお十分ではなく、従って、不必要な処置を受けている患者もいる一方、他の患者は、不十分またはなお有効ではない処置を受けている可能性がある。乳癌の異なるサブグループをより良好に定義し、そして適合した療法の選択肢を増加させるために、さらなる分子マーカーが必要である。
【0028】
エンドポイント分析
エンドポイント分析は、患者が所定の療法にどのように応答するかの情報を提供するため、これを使用して、癌に対するアジュバント処置による治験が評価される。全生存率(OS)は、標準的な主要エンドポイントと考えられている。OSは、原因、例えば、死亡が癌によるか否かに関係なく、死亡までの時間を考慮する。追跡不能例を削除し、そして領域再発、2次原発性乳癌、および他の2次原発性癌は無視する。
【0029】
現在まで、多くのタイプの癌において利用可能な有効な処置の数が増加しており、アジュバント処置の効果のより良好な評価を可能にするための代替エンドポイントの必要性が生じた。それ故、アジュバント処置がOSを改善することを実証するのに必要なかなり長期の追跡に、しばしば、処置がどれだけ成功しているかをより早期に示す他の臨床エンドポイントが補足される。
【0030】
エンドポイント分析はまた、潜在的なバイオマーカーの研究に有用であり得る。本開示物では、本発明者らは、特定のタンパク質(提唱されるバイオマーカー)の発現のレベルが予後と有意に相関することを示す。これらの観察のために、主に2つの代替エンドポイント、即ち、無再発生存率(RFS)および乳癌特異的生存率(BCSS)が使用される。RFSの分析は、同じ癌に関連する任意の事象までの時間を含み、即ち、すべての癌再発および同じ癌による死亡が事象となる。また、遠隔、局所および領域転移ならびに乳癌特異的死亡が考慮される。これに対し、2次原発性の同じ癌および他の原発性癌、ならびに対側乳癌は無視する。他の癌による死亡、癌に関連しない死亡、処置に関連する死亡、および追跡不能例は、削除された観察である。乳癌特異的生存率(BCSS)は、本来の腫瘍による乳癌によって引き起こされる死亡までの時間を含む。類似性または差異は、異なる腫瘍生物学的挙動に反映し得るため、両方のエンドポイントが関連する。局所での侵攻性の挙動に関連するバイオマーカーは、例えば、BCSSよりもRFSに対して影響を及ぼし得る一方、遠位への転移の発達に関連するバイオマーカーは、RFSおよびBCSSの両方に反映され得る。
【0031】
ANLN
アクチン結合タンパク質、アニリン(ANLN)は、マイクロフィラメントのサブユニット、細胞骨格の主要成分のうちの1つである。それは、大部分の真核細胞において発現され、そして筋肉の収縮、細胞運動、小胞およびオルガネラ移動、細胞分裂、細胞質分裂およびシグナル伝達などの基本的な細胞の機能において役割を果たす。
【0032】
特許文献1は、124例の患者由来の約22000の遺伝子の相対的RNA発現の測定について開示している。これらの遺伝子のうち7090の遺伝子が、それらの発現パターンに基づいて選択されている。階層的クラスタリングによって、67の遺伝子のクラスターが得られ、そしてさらに、67のすべての遺伝子を過小発現する患者グループは、67のすべての遺伝子を過剰発現する患者グループより良好な生存に関連する。アニリン遺伝子は、67の遺伝子のうちの1つとして述べられているが、個々に研究されてはいない。他の4つの遺伝子(DEEPEST、RACGAP1、ZNF145およびMS4A7)は、「個々に強力な予後因子」として同定されている。タンパク質発現については、測定もまたは分析もされていない。
【0033】
特許文献2は、乳腫瘍のグレーディングに関連し、そしてマイクロアレイ実験および統計分析による包括的な遺伝子発現解析を開示している。264段階のグレーディングの関連する遺伝子のリストが開示されており、アニリン遺伝子はその中の1つである。「組織学的グレーディングの遺伝的本質は、強力な予後との関与を伴う僅か5つの遺伝子の発現パターンに絞り込むことができる」と結論付けられる。しかし、いずれの個々の遺伝子の予後関連性については示されていない。さらに、タンパク質発現については、測定もまたは分析もされていない。
【0034】
Hallら(非特許文献31)による雑誌論文では、セプチン結合タンパク質、アニリンが、多様なヒト腫瘍において過剰発現されることが記載されている。7579のヒト組織サンプルおよび細胞系統におけるアニリン発現が、DNAマイクロアレイ分析によって、評価された。アニリンmRNA発現は、中枢神経系を除く正常組織より腫瘍において高く、ここで、アニリンmRNAレベルは、腫瘍においてより低かったことが示されている。さらに、アニリンとKi67mRNA発現との間に有意な直線関係が見出されている。また、正常から良性、悪性、転移性疾患へのアニリンmRNA発現の漸進的な増加が、異なる多くの癌由来の組織サンプルにおいて示されている。最終的に、アニリンは、癌および疾患進行のバイオマーカーであると判明し得ることが仮定されている。しかし、この仮定については、論文において試験されていない。さらに、この論文は、処置予測および予後については全く触れていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】国際公開第2005/001138号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008/048193号パンフレット
【特許文献3】国際公開第01/04144号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/05808号パンフレット
【非特許文献】
【0036】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
簡単な説明
本開示物のいくつかの態様の目的は、乳癌を有する哺乳動物被験体の予後の確立に有用な手段および方法を提供することである。他の態様の目的は、そのような被験体に関する処置予測において有用な手段および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本開示物は、以下の工程を含んでなる、乳癌を有する哺乳動物被験体が、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかを決定するための方法を提供する:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
サンプル値が対照値より高い場合、
d1)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性がないと結論付ける工程、および/またはサンプル値が対照値以下である場合、
d2)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性があると結論付ける工程。
【0039】
本開示物はまた、処置を必要とする被験体の処置の方法、乳癌を有する哺乳動物被験体の予後が対照予後より不良であるかどうかを決定するための方法、処置を必要とする被験体の処置のもう1つの方法、乳癌を有する被験体の非処置ストラテジー方法、キット、ANLNタンパク質、内分泌処置の指標または予後マーカーとしてのANLNタンパク質の使用、ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンド、予後因子および内分泌処置製品としてのそのような親和性リガンドの使用を提供し、以下にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、コホートIにおいて乳癌と診断された467例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価した。図1aは、すべての患者における無再発生存率(RFS)を示し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。図1bは、すべての患者におけるRFSを示し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。図1cは、すべての患者におけるRFSを示し、ここで、nf>25%を高いと見なし、そしてnf≦25%を低いと見なした。
【図2】図2は、コホートIにおいて乳癌と診断された467例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。図2aは、467例のすべての患者におけるRFSを示す。図2bは、ERについて陽性の400例の患者におけるRFSを示す。
【図3】図3は、コホートIにおいて乳癌と診断された467例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。図3aは、467例のすべての患者におけるBCSSを示す。図3bは、ERについて陽性の400例の患者におけるBCSSを示す。
【図4】図4は、コホートIにおいて乳癌と診断された467例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。図4aは、467例のすべての患者におけるOSを示す。図4bは、ERについて陽性の400例の患者におけるOSを示す。
【図5】図5は、高いANLNタンパク質レベルを伴う被験体と比較した低いANLNタンパク質を伴う被験体における転移の頻度を示し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。
【図6】図6は、コホートIにおいて乳癌と診断された128例のER+被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づくRFSを示す。すべての患者に、アジュバントタモキシフェン処置を施した。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。
【図7】図7は、コホートIIにおいて乳癌と診断された357例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価した。図7aは、すべての患者における無再発生存率(RFS)を示し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。図7bは、すべての患者におけるRFSを示し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。図7cは、すべての患者におけるRFSを示し、ここで、nf>25%を高いと見なし、そしてnf≦25%を低いと見なした。
【図8】図8は、コホートIIにおいて乳癌と診断された173例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。すべての患者は、2年間、アジュバントタモキシフェンを受けていた。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価した。図8aは、すべての患者における無再発生存率(RFS)を示し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。図8bは、すべての患者におけるRFSを示し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。
【図9】図9は、コホートIIにおいて乳癌と診断された173例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。すべての患者は、2年間、アジュバントタモキシフェンを受けていた。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価した。図9aは、すべての患者における乳癌特異的生存率(BCSS)を示し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。図9bは、すべての患者におけるBCSSを示し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。
【図10】図10は、コホートIIにおいて乳癌と診断された173例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。すべての患者は、2年間、アジュバントタモキシフェンを受けていた。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価した。図10aは、すべての患者における全生存率(OS)を示し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。図10bは、すべての患者におけるOSを示し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。
【図11】図11は、コホートIIにおいて乳癌と診断された173例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図11aは、低いANLNタンパク質レベルを伴うすべての患者におけるRFSを示す。図11bは、高いANLNタンパク質レベルを伴うすべての患者におけるRFSを示す。
【図12】図12は、コホートIIにおいて乳癌と診断された173例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間、投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図12aは、低いANLNタンパク質レベルを伴うすべての患者におけるBCSSを示す。図12bは、高いANLNタンパク質レベルを伴うすべての患者におけるBCSSを示す。
【図13】図13は、コホートIIにおいて乳癌と診断された173例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間、投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図13aは、低いANLNタンパク質レベルを伴うすべての患者におけるOSを示す。図13bは、高いANLNタンパク質レベルを伴うすべての患者におけるOSを示す。
【図14】図14は、コホートIIにおいて乳癌と診断された233例のER+被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間、投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図14aは、低いANLNタンパク質レベルを伴う191例の患者におけるRFSを示す。図14bは、高いANLNタンパク質レベルを伴う42例の患者におけるRFSを示す。
【図15】図15は、コホートIIにおいて乳癌と診断された233例のER+被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間、投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図15aは、低いANLNタンパク質レベルを伴う191例の患者におけるBCSSを示す。図15bは、高いANLNタンパク質レベルを伴う42例の患者におけるBCSSを示す。
【図16】図16は、コホートIIにおいて乳癌と診断された233例のER+被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間、投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図16aは、低いANLNタンパク質レベルを伴う191例の患者におけるOSを示す。図16bは、高いANLNタンパク質レベルを伴う42例の患者におけるOSを示す。
【図17】図17は、コホートIIにおいて浸潤性乳管癌と診断された202例のER+被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果から誘導される。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間、投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図17aは、高いANLNタンパク質レベルを伴う38例の患者におけるRFSを示す。図17bは、高いANLNタンパク質レベルを伴う38例の患者におけるBCSSを示す。図17cは、高いANLNタンパク質レベルを伴う38例の患者におけるOSを示す。
【図18】図18は、コホートIIにおいて乳癌と診断された227例のPR+被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間、投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図18aは、低いANLNタンパク質レベルを伴う188例の患者におけるRFSを示す。図18bは、高いANLNタンパク質レベルを伴う39例の患者におけるRFSを示す。
【図19】図19は、コホートIIにおいて乳管癌と診断された300例の被験体の生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。
【図20】図20は、コホートIIにおいて乳管癌と診断された300例のすべての患者の無再発生存率(RFS)を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間、投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図20aは、低いANLNタンパク質レベルを伴う210例の患者におけるRFSを示す。図20bは、高いANLNタンパク質レベルを伴う90例の患者におけるRFSを示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
本開示物の第1の態様として、以下の工程を含んでなる、乳癌を有する哺乳動物被験体が、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかを決定するための方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
サンプル値が対照値より高い場合、
d1)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性がないと結論付ける工程、および/またはサンプル値が対照値以下である場合、
d2)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性があると結論付ける工程。
【0042】
本開示物に関して、「内分泌処置から利益を得る可能性がある」は、内分泌処置を経験しない場合より、内分泌処置を経験する場合により高い確率の生存率または回復率を有することを指す。これに関して、「回復率」は、乳癌状態から乳癌を有さない状態に復帰することを指す。「生存率」は、無再発生存率であってもまたは乳癌特異的生存率であってもよい。さらに、「回復率」は、無再発回復率であってもよい。また、「より高い確率」は、5年間、10年間または15年間における少なくとも5%、例えば、少なくとも10%の確率上の利益であり得る。
【0043】
しかし、同じ概念に密接に関連および包含される第1の態様のd1)およびd2)は、2つの別の結論への選択肢を提供する。従って、第1の態様の方法は、乳癌を有する被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかという問題、または乳癌を有する被験体は内分泌処置から利益を得る可能性がないかどうかという問題に回答し得る。それ故、第1の態様の方法は、適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d1)、および適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d2)の両方を含んでもよいが、必ずしも含む必要はない。
【0044】
本開示物のこの第1の態様は、乳癌を有する被験体からより早期に得られるサンプルにおけるANLNタンパク質の発現が、被験体の内分泌処置に対する応答の指標としての役割を果たし得るというこれまでに認識されていない事実に基づく。より詳細には、本発明は、乳癌を患っている患者において、一方におけるANLNタンパク質の値と他方における内分泌処置後の生存の確率との間の相関を同定する。典型的に、高いANLNタンパク質値は、本明細書において、内分泌処置に対する応答性と相関することが示されている。乳癌処置の指標としてのANLNタンパク質発現に基づくこの態様は、いくらかの利益を有し得る。第1に、それは、被験体が内分泌処置に応答する可能性があるかどうかを予測するためのツールを提供し得る。第2に、それは、より以前の考えとは対照的に、内分泌処置に応答しないと思われる乳癌被験体のサブグループを同定するために使用され得る。結果的に、この態様は、これまで処置されなかったグループの的確な処置を提供することができる。しかし、この態様は、実施例としてのみであって、上記の利益の達成を限定するものと考えるべきではない。
【0045】
本開示物の第1の態様の第2の別の構成として、以下の工程を含んでなる、乳癌を有する哺乳動物被験体が内分泌処置を経験すべきかどうかを決定するための方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;ならびに
サンプル値が対照値より高い場合、
d1)被験体は、内分泌処置を経験すべきではないと結論付ける工程、および/またはサンプル値が対照値以下である場合、
被験体は、内分泌処置を経験すべきであると結論付ける工程。
【0046】
しかし、同じ概念に密接に関連および包含される第1の態様の第1の構成のd1)およびd2)は、2つの別の結論への選択肢を提供する。従って、方法は、被験体は内分泌処置を経験すべきであるかという問題、または被験体は内分泌処置を経験すべきではないかどうかという問題に回答し得る。それ故、第1の態様の方法は、適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d1)、および適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d2)の両方を含んでもよいが、必ずしも含む必要はない。
【0047】
本開示物の第1の態様の第2の構成として、以下の工程を含む、乳癌を有する哺乳動物被験体から早期に得られるサンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量に対応するサンプル値が、内分泌処置を被験体に施す決定に好適かどうかを決定するための方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;ならびに
サンプル値が対照値より高い場合、
d1)サンプル値が、内分泌処置による被験体の処置を中断する決定に好適であると結論付ける工程、および/またはサンプル値が対照値以下である場合、
d2)サンプル値が、内分泌処置で被験体を処置する決定に好適であると結論付ける工程。
【0048】
しかし、同じ概念に密接に関連および包含される第1の態様の第2の構成のd1)およびd2)は、2つの別の結論への選択肢を提供する。従って、方法は、サンプル値が、内分泌処置による被験体の処置を中断する決定に好適であるかどうかという問題、またはサンプル値が、内分泌処置で被験体を処置する決定に好適であるかどうかという問題に回答し得る。それ故、第1の態様の方法は、適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d1)、および適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d2)の両方を含んでもよいが、必ずしも含む必要はない。
【0049】
乳癌患者のための適切な処置レジメンを決定する場合、処置を担当する医師は、免疫組織化学的評価の結果、患者の年齢、閉経の状態、ホルモン受容体の状態、全身状態および既往歴、例えば、乳癌の既往歴などのいくらかのパラメータを考慮することができる。そのような決定において指針とするために、医師は、上記の構成に従って、ANLNタンパク質試験を実施するか、またはANLNタンパク質試験の実施を指令することができる。
【0050】
第1の態様の第3の構成として、以下の工程を含んでなる、乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置の予後が対照予後より不良であるかどうかを決定するための方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および、サンプル値が対照値より高い場合、
d)被験体の内分泌処置の予後が対照予後より不良であると結論付ける工程。
【0051】
予後が対照予後より不良であるかどうかを決定するための方法の様々な実施形態を、本開示物の第2の態様に関連して以下に説明する。
【0052】
乳癌を患う被験体の処置を担当する医師は、被験体の内分泌処置の予後を理解した上で、被験体に内分泌処置を施すかどうかを決定することができる。
【0053】
本開示物の第2の態様として、処置を必要とする被験体の処置の方法が提供され、ここで、被験体は乳癌を有し、方法は、以下の工程を含んでなる:
a)被験体由来のサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;ならびにサンプル値が対照値より高い場合、
d1)非内分泌乳癌処置レジメンにより被験体を処置する工程、および/またはサンプル値が対照値以下である場合、
d2)内分泌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程。
【0054】
しかし、同じ概念に密接に関連および包含される第2の態様のd1)およびd2)は、2つの別の処置の選択肢を提供する。それ故、第2の態様の方法は、適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d1)、および適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d2)の両方を含んでもよいが、必ずしも含む必要はない。
【0055】
従来、内分泌処置は、主に、ホルモン受容体陽性、例えば、ER陽性またはPR陽性の乳癌被験体に行われてきた。結果的に、上記の方法は、特に、このサブグループの被験体に関連する。また、このサブグループにおけるANLNタンパク質の処置推定の役割を、図14〜18に示す。それ故、本開示物の第1または第2の態様の実施形態では、乳癌は、ホルモン受容体陽性乳癌、例えば、ER陽性および/またはPR陽性乳癌であり得る。
【0056】
当該技術分野内において、ERの状態は、しばしば、内分泌処置、例えば、タモキシフェン処置に対する応答性の最も重要な指標と考えられてきた。ER陽性被験体のサブグループにおけるANLNタンパク質の処置推定の役割を、図14〜17に示す。それ故、本開示物の第1または第2の態様の実施形態では、乳癌は、ER陽性であってもよい。
【0057】
他で述べない限り、本開示物では、「ER」は「ERα」を指す。
【0058】
当業者は、患者のERおよび/またはPR状態を得る仕方について知っている。例えば、そのような情報は、市販のER/PRpharmDXキット(DakoCytomation)を使用する試験の結果から得ることができる。もう1つの例として、Allredら(非特許文献32)によって開示された方法を使用して、全スコア(Allredスコア)を得てもよく、そしてERおよびPRの両方について、2より高いAllredスコアは陽性とみなされ、そして2以下のAllredスコアは陰性とみなされる。あるいは、ERまたはPRについて、サンプルを陽性もしくは陰性であると分類する場合、当該分野内において認識された限界値である10%陽性細胞のカットオフを使用してもよい。
【0059】
例えば、本開示物の第2の態様の非内分泌処置は、化学療法、放射線療法またはそれらの組み合わせであってもよい。化学療法は、CMF(シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル)、FEC(フルオロウラシル、エピルビシン、シクロホスファミド)および/またはタキサン系薬剤による処置などの1剤もしくは多剤併用化学療法であってもよい。また、乳癌がHER2陽性(HER2+)である場合、非内分泌処置は、抗HER2抗体、例えば、トラスツズマブによる処置などの抗HER2処置であってもよい。
【0060】
本開示物の第3の態様として、以下の工程を含んでなる、乳癌を有する哺乳動物被験体の予後が対照予後より不良であるかどうかを決定するための方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照予後に関連する対照値とを比較する工程;および
d)サンプル値が対照値より高い場合、被験体の予後が対照予後より不良であると結論付ける工程。
【0061】
実施形態では、第3の態様の方法は、以下のさらなる工程を含んでなり得る:e)サンプル値が対照値以下である場合、被験体の予後が対照予後以下であると結論付ける工程。
【0062】
本開示物のこの第3の態様は、乳癌を有する被験体からより早期に得られるサンプルに存在するANLNタンパク質の量が、被験体における疾患状態の指標としての役割を果たし得るというこれまでに認識されていない事実に基づく。より詳細には、本発明者らは、乳癌を患っている被験体において、一方におけるANLNタンパク質の量と他方における生存の予後との間の相関を認識している。典型的に、高いANLNタンパク質値は、本明細書において、これらの被験体における不良な予後と相関することが示されている。癌状態の指標としてのANLNタンパク質発現に基づく本発明は、多くの利益を提供する。一般に、乳癌の侵攻性を早期に同定することは、医師が適切な処置ストラテジーを選択することに役立つため、極めて重要である。例えば、早期のステージにおいてそれはど侵攻性ではない形態を同定することによって、過度の処置を回避することができる。さらなる例として、所定のレベルの発現が所定のパターンの疾患の進行と相関するマーカーとしてのANLNタンパク質は、例えば、原発腫瘍の鑑別診断の一団において、大きな可能性を有し得る。しかし、この態様は、実施例としてのみであって、上記の利益の達成を限定するものと考えるべきではない。
【0063】
それ故、この第3の態様は、一般的に、第1の概念:ANLNタンパク質レベルと乳癌疾患の結果の予測との間の相関と同じ概念に関する。さらに、第3および第1の態様の両方とも、同じ実際的工程、即ち、サンプルの供給、ANLNタンパク質量の評価およびサンプル値の決定、ならびに最終的に、対照値との比較を含んでなる。
【0064】
本開示物では、様々な予後に対応する異なるANLNタンパク質の値(サンプル値)を提示する。典型的に、高いサンプル値は、低いサンプル値より不良な予後に関連する。第3の態様に従う方法では、サンプル値を対照値と比較し、そしてサンプル値が対照値より高い場合、被験体の予後は対照値に関連する予後より不良であると結論付けられる。
【0065】
結果的に、上記の態様の方法を、所与の対照値に適応することができる。そのような場合、所定の環境下で関連すると考えられる所与のサンプル値から開始して、そのサンプル値に等しいか、またはそれより低い対照値を選択することができる。続いて、その対照値に関連する対照予後を確立することができる。本開示物を指針として、当業者は、所与の対照値に対応する対照予後を確立する仕方について理解すべきである。例えば、サンプル値と乳癌患者のグループにおける生存率のデータとの間の関係を、下記の実施例、セクション4におけるように調べてもよく、そして本明細書に記載の手順を、所与の対照値に適応してもよく、次いで、所与の対照値に対応する予後を、対照予後として選択してもよい。
【0066】
また、上記の態様の方法を、所与の対照予後に適応することができる。そのような場合、所定の環境下で関連すると考えられる所与の対照予後から開始して、例えば、適切な処置ストラテジーを選択するために、対応する対照値を確立することができる。本開示物を指針として、当業者は、所与の対照予後に対応する対照値を確立する仕方について理解すべきである。例えば、サンプル値と癌患者のグループにおける生存率のデータとの間の関係を、下記の実施例、セクション4におけるように調べてもよいが、但し、本明細書に記載の手順を適用して、所与の対照予後に対応する対照値を確立する。例えば、所与の対照予後と相関する対照値が見出されるまで、異なる対照値を試験してもよい。例えば、本開示物は、適切な開始値を提示して、試験の必要量を減少することができるため、当業者は、過度の負担を伴わずに、そのような試験を行うことができる。
【0067】
従って、上記の態様の方法の実施形態では、対照予後は、例えば、同じ被験体または被験体の集団の検査によって得られる予め確立された予後に基づき得る。さらに、対照予後は、一般集団におけるバックグランドの危険率、統計的予後/危険率または被験体の検査に基づく仮定に適応することができる。そのような試験は、被験体の年齢、全身状態、性別、人種および/または医学的状態および既往歴、例えば、癌の既往歴または乳癌の状態を含んでなり得る。例えば、医師は、対照予後を、被験体の乳癌の既往歴、腫瘍の分類、ホルモン受容体の状態、腫瘍の形態学、腫瘍の位置、転移の存在および広がりならびに/あるいはさらなる癌の特徴に適応することができる。
【0068】
結果的に、対照予後は、その方法の被験体と同じ分類、例えば、同じTNM分類の癌を有する予め検査した被験体に基づき得る。
【0069】
ホルモン受容体の状態の例は、ER状態およびPR状態である。例えば、ER陽性は、一般的に、当該技術分野内において比較的良好な予後に関連する。例えば、図2b、3b、4bおよび6において認められ得るように、ANLNタンパク質発現のレベルは、ER陽性被験体の予後的に関連するサブグループを提供する。
【0070】
それ故、第3の態様の実施形態では、乳癌は、ER+および/またはPR+などのホルモン受容体陽性であってもよい。
【0071】
図6および8〜10に示すように、ANLNタンパク質の予後的役割は、内分泌処置であるタモキシフェンで処置される被験体において、特に際立っている。それ故、第3の態様の実施形態では、被験体は、内分泌処置を経験した、内分泌処置を経験している、および/または内分泌処置を予定されている状態でもよい。上記で説明したように、内分泌処置を経験しているほとんどの被験体は、ホルモン受容体陽性乳癌を有する。
【0072】
本開示物に関して、「内分泌処置」は、抗エストロゲン効果を有する全身処置を指す。さらに、「抗エストロゲン効果」は、エストロゲン産生の抑制または身体におけるエストロゲン効果の阻害を指す。当該分野において、内分泌処置は、時々、抗ホルモン処置と称される。
【0073】
上記の態様の方法の実施形態では、内分泌処置は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)処置、アロマターゼ阻害剤処置、およびステロイド性エストロゲン受容体アンタゴニスト処置からなる群から選択することができる。SERM処置は、例えば、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、アルゾキシフェンまたはタモキシフェンによる処置であってもよい。アロマターゼ阻害剤処置は、例えば、アナストロゾール、レトロゾールおよびエキセメスタンによる処置であってもよい。さらに、ステロイド性エストロゲン受容体アンタゴニスト処置は、フルベストラントによる処置であってもよい。
【0074】
SERMは、標的組織に依存して、アゴニスト効果またはアンタゴニスト効果のいずれを有してもよい。例えば、SERMは、乳房においてアンタゴニストとしておよび子宮においてアゴニストとして作用することができる。
【0075】
上記の態様の方法の実施形態では、内分泌処置は、SERM治療、例えば、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、アルゾキシフェンまたはタモキシフェンによる処置から選択されるSERM治療であってもよい。例えば、内分泌処置は、タモキシフェン処置であってもよい。
【0076】
本開示物の第3の態様の第1の別の構成として、以下の工程を含んでなる、乳癌を有する哺乳動物被験体の予備的予後を改正するための方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
サンプル値が対照値より高い場合、
d)予備的予後を低減して、改正された予後を得る工程。
【0077】
第3の態様の第2の別の構成として、乳癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するための方法が提供される:
a)被験体由来のサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)のサンプル値を、被験体の予後に相関させる工程。
【0078】
本開示物に関して、「予後を確立すること」とは、特定の予後または予後の期間を確立することを指す。
【0079】
上記の方法の実施形態では、サンプルは、早期に得られるサンプルであってもよい。
【0080】
工程c)の相関させる工程は、被験体の予後を確立するように、生存率のデータを、得られたサンプル値に関連付ける任意の方法を指す。
【0081】
第3の態様の第3の別の構成として、以下の工程を含んでなる、哺乳動物被験体が、第1のグループに属する乳癌を有するか、または第2のグループに属する乳癌を有するかを決定するための方法であって、ここで、前記第1のグループの被験体の予後は、前記第2のグループの被験体の予後より良好である方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルの少なくとも一部におけるANLNタンパク質の量を評価し、そして評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
b)前記サンプル値と予め決定された対照値とを比較する工程;ならびに
前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
c1)前記被験体は、前記第2のグループに属すると結論付ける工程;および前記サンプル値が前記対照値以下である場合、
c2)前記被験体は、前記第1のグループに属すると結論付ける工程。
【0082】
方法では、乳癌被験体が第1のグループに属するかまたは第2のグループに属するかが決定され、ここで、第1のグループの被験体は、一般的に、第2のグループの被験体より良好な予後を有する。乳癌被験体を2つのグループに分けることは、被験体由来のサンプル値と対照値とを比較することによって決定される。本開示物では、様々な対照値を用いて、一般的に比較的長い期間生存する被験体(より上方の曲線によって表される)と一般的に比較的短い期間生存する被験体(より下方の曲線によって表される)とを区別することができることが示される。それ故、対照値は、それぞれのグループのサイズの決定因子であり;対照値が高いほど、第1のグループの被験体は少なく、そして試験した被験体が第1のグループに属する可能性がより低い。本開示物を指針として、当業者は、過度の負担を伴わずに、関連する対照値を選択することができる。
【0083】
上記の方法の実施形態では、第1および第2のグループの被験体の癌の分類または進行のレベルは、その方法の被験体の癌の分類または進行のレベルと同じである。分類は、例えば、TNM分類であってもよい。
【0084】
ANLNタンパク質レベルと乳癌の特徴との間の同定される相関はまた、様々な処置レジメを適用するための基礎を形成することができる。
【0085】
本開示物の第4の態様として、以下を含んでなる、処置を必要とする被験体の処置の方法が提供され、ここで、被験体は乳癌を有している:
a)被験体由来のサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
d)サンプル値が対照値より高い場合、被験体をアジュバント乳癌処置レジメンで処置する工程。
【0086】
第4の態様の一実施形態では、方法は、以下のさらなる工程を含んでなり得る:
e)サンプル値が対照値以下である場合、被験体のアジュバント乳癌処置レジメンによる処置を中断する工程。
【0087】
第4の態様の実施形態では、工程c)の対照値は対照予後に関連し得、そして工程d)の乳癌処置レジメンは、対照予後より不良である被験体の予後に適応され得る。実施形態では、第3の態様の方法は、次のさらなる工程を含んでなり得る:e)およびサンプル値が対照値以下である場合、被験体を、対照予後より良好であるかまたはそれに等しい予後に適応される処置レジメンで処置する工程。
【0088】
好ましくは、第4の態様の乳癌処置レジメンは、非内分泌処置を含んでなる。例えば、それは、侵攻型の乳癌に適用してもよい。侵攻型の癌に適応される処置は、例えば、そのような処置の副作用のため、サンプル値が対照値より高くなかった場合には考慮されていなかった処置であってもよい。
【0089】
第4の態様の実施形態では、工程d)の乳癌処置レジメンは、化学療法、術前アジュバント療法およびそれらの組み合わせから選択してもよい。例えば、術前アジュバント療法は、放射線療法を含んでなり得る。
【0090】
第4の態様の実施形態では、乳癌は、ER陽性および/またはPR陽性などのホルモン受容体陽性であってもよい。上記で説明したように、ホルモン受容体陽性被験体は、従来、タモキシフェンなどの内分泌処置を受けてきた。しかし、本開示物の観点から、そのような被験体に別のまたは少なくとも補足的な処置を施すことは、より合理的であるようである。それ故、第4の態様の実施形態では、工程d)のアジュバント乳癌処置レジメンは、タモキシフェンなどの単独のSERM治療ではない。
【0091】
また、本開示物の観点から、いくつかの被験体の内分泌処置を回避することが合理的であり得る。
【0092】
それ故、本開示物の第5の態様として、以下の工程を含んでなる乳癌を有する被験体のための非処置ストラテジー方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;およびサンプル値が対照値より高い場合、
d)内分泌処置による被験体の処置を中断する工程。
【0093】
上記から明白な理由により、工程d)の内分泌処置は、タモキシフェン処置などのSERM治療であってもよい。また、第5の態様の乳癌は、ER陽性および/またはPR陽性などのホルモン受容体陽性であってもよい。
【0094】
例えば、工程d)の中断は、工程a)〜c)の終了から少なくとも1週間、例えば、工程a)〜c)の終了から少なくとも1箇月間、例えば、工程a)〜c)の終了から少なくとも3箇月間、例えば、工程a)〜c)の終了から少なくとも6箇月間、例えば、工程a)〜c)の終了から少なくとも1年間、例えば、工程a)〜c)の終了から少なくとも2年間の中断であり得る。
【0095】
あるいは、工程d)の中断は、方法が実施される次の時点までか、または乳癌腫瘍の再発までの中断であってもよい。
【0096】
一般に、乳癌を有する患者に適切な処置ストラテジーを決定する場合、処置を担当する医師は、免疫組織化学的評価の結果、患者の年齢、ホルモン受容体の状態、全身状態、既往歴、例えば、乳癌の既往歴および遺伝形質、例えば、被験体の家族に乳癌の既往歴が認められるかどうかなどのいくらかのパラメータを考慮することができる。そのような決定において指針とするために、医師は、上記で提示した方法態様のうちの1つの実施形態に従って、ANLNタンパク質試験を実施するか、またはANLNタンパク質試験の実施を指令することができる。
【0097】
本開示物に関して、「乳癌を有する哺乳動物被験体」は、原発性もしくは続発性乳腫瘍を有する哺乳動物被験体、あるいは乳房から腫瘍が摘出されている哺乳動物被験体を指し、ここで、腫瘍の摘出は、任意のタイプの手術または治療によって腫瘍を死滅もしくは摘出することを指す。後者の場合、腫瘍は、例えば、1年未満前に摘出されていてもよい。例えば、手術によって乳腫瘍が摘出され、そして補助療法を受けようとしている被験体は、本開示物では、「乳癌を有する」とみなされる。「乳腫瘍」は、非浸潤性乳管癌(DCIS)を含む。本開示物の方法および使用態様では、「乳癌を有する哺乳動物被験体」はまた、哺乳動物被験体が、使用または方法の実施時に乳癌を有することが疑われており、そして後に乳癌診断が確定される場合を含む。
【0098】
本開示物の方法態様に関して、「早期に得られる」は、方法が実施される前に得られることを指す。結果的に、被験体から早期に得られるサンプルが、ある方法で提供される場合、方法は、サンプルを被験体から得る工程を必要としない、即ち、サンプルは、方法とは個別の工程で被験体から予め得られた。
【0099】
従って、本開示物のすべての方法および使用は、全体的にインビトロで実施することができる。
【0100】
上記の態様の方法の工程b)は、サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして対応するサンプル値を決定することを必要とする。「サンプルの少なくとも一部」は、予後を確立するか、または適切な処置に関する結論を導き出すためのサンプルの単数もしくは複数の関連する部分を指す。当業者は、方法を実施する場合に存在する状況下で関連する単数もしくは複数の部分について理解している。例えば、サンプルが腫瘍および非腫瘍細胞を含んでなる場合、当業者は、サンプルの腫瘍細胞のみ、および腫瘍細胞の核のみを考慮すればよい。
【0101】
さらに、工程b)では、量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する。結果的に、サンプル値を得るために、ANLNタンパク質の量の正確な測定値は必要ではない。例えば、ANLNタンパク質の量は、染色された組織サンプルの目視検査によって評価してもよく、次いで、サンプル値は、評価された量に基づいて、例えば、高いまたは低いに分類してもよい。当業者は、そのような評価および決定を実施するための仕方を理解している。
【0102】
例えば、評価および決定は、「サンプルにおけるANLNタンパク質発現の定量化」に関連して以下に記載の通りに実施することができる。
【0103】
上記の態様に従う方法の工程b)に関して、ANLNタンパク質の量が増加すると、典型的に、サンプル値も増加する。しかし、いくつかの実施形態では、評価された量は、予め決定した数の個別のサンプル値のいずれかに対応し得る。そのような実施形態では、第1の量および第2の増加した量は、同じサンプル値に対応し得る。いずれにせよ、本開示物に関して、ANLNタンパク質の量が増加しても、サンプル値は減少しない。
【0104】
しかし、不便ではあるが、等価な様式では、工程c)とd)との間の定量化が「サンプル値が対照値より低い場合」に行われる場合、評価される量は、サンプル値に反比例するかもしれない。
【0105】
なおさらに、本開示物に関して、「対照値」は、予後に関して、決定を行うこと、もしくは結論を導き出すこと、または被験体に対して処置予測を行うことに関連する予め決定された値を指す。
【0106】
また、本開示物に関して、対照値に「関連」する対照予後は、エンピリカルデータおよび/または臨床的に意味のある仮定に基づいて対照予後に割り当てられている対照値を指す。例えば、第3の態様の方法の工程c)、および第4の態様の所定の実施形態を参照のこと。対照値は、対照値を示す被験体のグループの予後データから直接誘導される対照予後に割り当てる必要はない。対照予後は、例えば、対照値以下の値を示す被験体の予後に対応してもよい。即ち、対照値が0〜3の尺度で1である場合、対照予後は、0または1の値を示す被験体の予後であってもよい。結果的に、対照予後はまた、入手可能なデータの性質に適応することができる。上記でさらに考察したように、対照予後は、他のパラメータにも適用することができる。
【0107】
上記の態様の方法の実施形態では、被験体は、浸潤性乳管癌を有し得る(また、図17を参照のこと)。
【0108】
本開示物のデータは、ヒト女性のグループに基づく。それ故、上記の態様の方法の実施形態では、被験体は、ヒトであってもよい。また、上記の態様の方法の実施形態では、被験体は、閉経期前または閉経期後の女性などの女性であってもよい。例えば、内分泌処置は、閉経期前および閉経期後の両方の被験体に行われている。いくつかの実施形態、特に、タモキシフェンが内分泌処置として選択される実施形態では、閉経期前のヒト女性被験体は、特に関連するグループであり得る。
【0109】
上記の態様の方法の実施形態では、サンプルは、血液、血漿、血清、脳脊髄液、リンパ、尿または滲出物のサンプルなどの体液サンプルであってもよい。好ましくは、体液サンプルは、血液、血漿、血清またはリンパのサンプルである。あるいは、サンプルは、細胞学的サンプルであってもよく、または糞便サンプルであってもよい。体液、細胞学的または糞便サンプルは、例えば、腫瘍細胞などの細胞を含んでなり得る。
【0110】
上記の態様の方法のさらなる実施形態では、サンプルは、腫瘍組織サンプルなどの組織サンプルであってもよい。例として、組織サンプルは、上皮内(in situ)もしくは浸潤性癌などの原発性乳房腫瘍から誘導してもよく、または被験体由来の続発性腫瘍(転移)から誘導してもよい。
【0111】
ANLNタンパク質発現は、細胞の膜、細胞質および核において観察されている。それ故、上記の態様の方法の実施形態では、工程b)の評価を、サンプルの腫瘍細胞などの細胞の核、細胞質および/または膜に限定することができる。評価を核に限定する場合、核のANLNタンパク質発現などの特徴のみが、評価において考慮される。そのような評価は、例えば、免疫組織化学染色によって援助され得る。最も強力な染色が核において観察されている。さらに、本発明者らは、ANLNタンパク質の核での発現が、処置予測および予後に関連し得ることを見出した。結果的に、上記の態様の方法の実施形態では、工程b)の評価を、サンプルの腫瘍細胞などの細胞の核に限定することができる。
【0112】
図5に示すように、転移は、ANLNタンパク質低被験体のグループよりANLNタンパク質高被験体のグループにおいてより多く認められることが示された。
【0113】
それ故、第3の態様の方法の実施形態では、予後は、転移を有する確率であり得、対照予後は、転移を有する対照確率であり得、そして工程d)は、確率が対照確率より高いと結論付けることを含んでなり得る。
【0114】
また、そのような実施形態の別の構成では、予後は、転移を生じる確率であり得、対照予後は、転移を生じる対照確率であり得、そして工程d)は、確率が対照確率より高いと結論付けることを含んでなり得る。
【0115】
例えば、転移は、遠隔転移であってもよい。
【0116】
転移を有するまたは生じる確率の結論付けに続いて、可能な転移を見出すことを目的とする転移の検査が行われ得る。そのような転移検査は、例えば、(骨格の)シンチグラフィー、肺のX線検査および/またはCTスキャンであってもよい。
【0117】
結果的に、以下の工程を含んでなる、被験体の乳癌が転移しているかどうかを決定するための方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
サンプル値が対照値より高い場合、
d)転移検査を実施して、前記被験体において可能な転移を見出す工程。
【0118】
本開示物に関して、「予後」は、疾患の経過もしくは結果の予測およびその処置または疾患を患う被験体の生存率を指す。例えば、予後は、疾患からの生存または回復の可能性の決定、ならびに被験体の予想される生存期間の予測を指し得る。それはまた、疾患の再発、例えば、局部、局所または遠位での事象の可能性でもあり得る。さらに、予後は、3年間、5年間、10年間、15年間または他の任意の期間などの将来に至るある期間中の被験体の生存の可能性を確立することに関与し得る。結果的に、被験体の予後は、例えば、生存の確率であってもよく、そしていくらかの認識された生存測定値が存在する。乳癌に関連して通常使用される異なる3つの「生存測定値」、即ち、無再発生存率、乳癌特異的生存率および全生存率が、上記で考察されている。
【0119】
予後および対照予後に関与する上記の態様では、これらの2つの予後は、同じタイプの予後である。例として、対照予後が全生存率の対照確率である場合、結論は、対照確率全生存率に関係する被験体の全生存の確率であると言える。
【0120】
それ故、第3および第4の態様の方法の実施形態では、予後は、生存の確率であってもよく、これは、被験体の予後が生存の確率であり、そして対照予後が生存の確率であることを伴う。例えば、生存の確率は、5年生存、10年生存または15年生存の確率であってもよい。さらに、生存の確率は、例えば、全生存の確率、無再発生存の確率および乳癌特異的生存の確率からなる群から選択され得る。
【0121】
添付の図面に示すように、無再発生存率(RFS)について分析する場合、高いANLNタンパク質レベルと不良な予後との間の相関が、特に際立ち得る。結果的に、上記の態様の方法の実施形態では、予後は、無再発生存の確率であってもよい。
【0122】
対照値より高いANLNタンパク質のサンプル値、またはそのようなサンプル値が得られる被験体を、時々、本明細書において「ANLNタンパク質高」と称する。さらに、対照値以下のANLNタンパク質のサンプル値、またはそのようなサンプル値が得られる被験体を、時々、本明細書において「ANLNタンパク質低」と称する。
【0123】
本開示物に関して、用語「サンプル値」および「対照値」は、広範に解釈すべきである。これらの値を得るためのANLNタンパク質の定量化は、自動化手段を介するか、サンプルの目視もしくは顕微鏡検査に基づく評価システムを介するか、またはそれらの組み合わせを介して行うことができる。しかしまた、組織病理学の当業者などの熟練者は、例えば、ANLNタンパク質発現に対して染色されている組織スライドの検査だけで、サンプルおよび対照値を決定することが可能である。それ故、対照値より高いサンプル値の決定は、目視または顕微鏡検査時に、サンプル組織スライドが、より濃染され、および/または対照組織スライドの場合より大きな画分の染色細胞を示すという決定に対応し得る。サンプル値はまた、文言で記載された対照値などの文字の対照によって示された対照値と比較してもよい。結果的に、サンプルおよび/または対照値は、検査および比較時に当業者が決定する心証に基づく値として考えられ得る。
【0124】
例えば、当業者は、サンプルをANLNタンパク質高または低であるとして分類してもよく、ここで、サンプルが、先に検査した対照サンプルより多くのANLNタンパク質を含有する場合、サンプルは高いに分類され、そしてサンプルが対照サンプル以下である場合、低いに分類される。そのような評価は、サンプル、および必要であれば、対照サンプルを、例えば、ANLNタンパク質に選択的な抗体を含んでなる染色溶液で染色することによって、補助され得る。
【0125】
乳癌を有する被験体の予後の供給のため、または被験体由来のサンプル値との比較として使用するためのそのような被験体に関する処置の決定を行うために関連することが見出されている対照値は、様々な方法で提供することができる。当業者は、本開示物の教示内容の知識を用いて、過度の負担を伴うことなく、上記の態様の方法を実施するための関連する対照値を提供することができる。
【0126】
上記の態様の方法を実施するものは、例えば、対照値を所望の予後情報に適応してもよい。例えば、対照値を適応して、最も有意な予後情報、例えば、ANLNタンパク質高の生存率曲線とANLNタンパク質低の生存率曲線との間の最も大きな隔たりを得ることができる(例えば、図1または8を参照のこと)。大きな隔たりを生じ得る対照値の例は、1%または10%の核画分である。
【0127】
あるいは、対照値を適用して、予め決定された予後を有する被験体のグループ、例えば、85%より低い5年無再発生存の確率を有する被験体のグループを同定してもよい。
【0128】
上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、方法の被験体の健康な乳房または間質組織などの健康な組織におけるANLNタンパク質発現の量に対応し得る。もう1つの例として、対照値は、もう1つの比較可能な被験体由来の正常組織の標準的なサンプルにおいて測定されるANLNタンパク質発現の量によって提供され得る。もう1つの例として、対照値は、腫瘍組織、例えば、乳癌組織の対照サンプルなどの腫瘍細胞を含んでなる対照サンプルにおいて測定されるANLNタンパク質発現の量によって提供され得る。対照サンプルのタンパク質発現の量は、好ましくは、予め確立され得る。結果的に、対照値は、予め決定された量のANLNタンパク質を発現する細胞を含んでなる対照サンプルにおいて測定されるANLNタンパク質の量によって提供され得る。
【0129】
さらに、対照値は、例えば、予め決定されたか、または制御された量のANLNタンパク質を発現する癌細胞系統などの細胞系統を含んでなる対照サンプルにおいて測定されるANLNタンパク質発現の量によって提供され得る。当業者は、例えば、非特許文献33の開示内容を指針として、そのような細胞系統を提供する仕方について理解している。
【0130】
結果的に、上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、対照サンプルにおけるANLNタンパク質発現の量に対応する予め決定された値であってもよい。
【0131】
しかし、さらに以下において考察されるように、対照サンプル中のANLNタンパク質の量は、必ずしも対照値に直接対応する必要はない。対照サンプルはまた、様々な対照値を評価する方法を実施する者を援助するANLNタンパク質の量を提供し得る。例えば、対照サンプルは、「陽性」(高)および/または「陰性」(低)を提供することによって、対照値の心的イメージを作成するのに役立ち得る。
【0132】
本発明者らは、本明細書において、乳癌を患い、そしてANLNタンパク質発現を本質的に有さない被験体は、一般的に、比較的良好な予後を有することを示している。それ故、上記の態様の方法の実施形態では、工程b)のサンプル値は、サンプルにおいて検出可能なANLNタンパク質が認められることに対応する1、またはサンプルにおいて検出可能なANLNタンパク質が認められないことに対応する0のいずれかであり得る。結果的に、そのような実施形態では、サンプルの評価はデジタルである:ANLNタンパク質は、存在するかまたは存在しないかのいずれかとみなされる。本開示物に関して、「検出可能なANLNタンパク質が認められない」は、通常の操作状況中に上記の態様のいずれか1つに従って方法を操作する人または装置によって検出可能ではないほどに少ないANLNタンパク質の量を指す。「通常の操作状況」とは、当業者が本発明を実施するのに適切であることを見出す検査方法および技術を指す。
【0133】
従って、上記の態様の方法の実施形態では、工程c)の対照値は、0であってもよい。そして、上記の態様の方法のさらなる実施形態では、当然、工程c)の対照値は、検出可能なANLNタンパク質が認められない対照サンプルに対応し得ることになる。これは、対照値が、ANLNタンパク質を含まない対照サンプルの分析によって得ることができることを意味する。
【0134】
被験体からより早期に得られるサンプルまたは対照サンプルなどのサンプルにおけるANLNタンパク質発現の定量化のための1つの別法は、所定のレベルを超えるANLNタンパク質発現を示すサンプルにおける細胞の画分の決定である。画分は、例えば、次のものであり得る:細胞全体のANLNタンパク質発現を考慮する「細胞画分」;細胞の細胞質のみのANLNタンパク質発現を考慮する「細胞質画分」;または細胞の核のみのANLNタンパク質発現を考慮する「核画分」。核画分は、例えば、関連する細胞集団の≦1%、2〜25%、26〜75%または>75%の免疫反応性細胞として分類することができる。あるいは、核画分は、≦10%もしくは>10〜100%、または≦1%もしくは>1〜100%として分類することができる。この決定は、例えば、「核画分」を参考にして、実施例、セクション4において下記に記載のように実施することができる。「核画分」は、核において陽性染色を示すサンプル中の関連する細胞の百分率に対応し、ここで、核における中等度のまたは明瞭かつ強力な免疫反応性は陽性とみなされ、そして核における認められないまたは軽度の免疫反応性は陰性とみなされる。病理学の当業者は、方法を実施する場合に存在する条件下でどの細胞が関連するを理解しており、そして当業者の一般的知識および本開示物の教示内容に基づく核画分を決定することができる。関連する細胞は、例えば、腫瘍細胞であってもよい。さらに、当業者は、「細胞画分」または「細胞質画分」を用いて対応する測定を実施する仕方について理解している。
【0135】
被験体からより早期に得られるサンプルまたは対照サンプルなどのサンプルにおけるANLNタンパク質発現の定量化のためのもう1つの別法は、サンプルの全体的染色強度を決定することである。強度は、例えば、次のものであり得る:細胞全体のANLNタンパク質発現を考慮する「細胞強度」;細胞の細胞質のみのANLNタンパク質発現を考慮する「細胞質強度」;または細胞の核のみのANLNタンパク質発現を考慮する「核強度」。核強度は、臨床病理組織学的診断において使用される基準に従って、主観的に評価される。核強度決定の結果は、次のように分類することができる:不在=サンプルの関連する細胞の核において全体的な免疫反応性が認められない、弱=サンプルの関連する細胞の核において全体的な免疫反応性が軽度である、中=サンプルの関連する細胞の核において全体的な免疫反応性が中等度である、または強=サンプルの関連する細胞の核において全体的な免疫反応性が明瞭かつ強力である。病理学の当業者は、方法を実施する場合に存在する条件下でどの細胞が関連するかを理解しており、そして当業者の一般的知識および本開示物の教示内容に基づく核強度を決定することができる。関連する細胞は、例えば、腫瘍細胞であってもよい。さらに、当業者は、「細胞強度」または「細胞質強度」を用いて対応する測定を実施する仕方について理解している。
【0136】
本発明者らは、ANLNタンパク質の核発現が、予後を確立するのに特に関連することを見出した。それ故、上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、核画分、核強度またはそれらの組み合わせであってもよい。従って、サンプル値は、核画分、核強度またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0137】
好ましくは、サンプル値および対照値は、両方とも、同じタイプの値である。従って、上記の態様の方法の実施形態では、サンプル値および対照値は、それぞれ、核画分、核強度またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0138】
上記の態様の方法の実施形態では、工程d)における結論のための基準は、ANLNタンパク質陽性細胞の核画分のためのサンプル値、即ち、0.5%、例えば、1%より高い、例えば、2%より高い、例えば、5%より高い、例えば、10%より高い、例えば、15%より高い、例えば、20%より高い、例えば、25%より高い、例えば、30%より高い、例えば、35%より高い、例えば、40%より高い、例えば、50%より高い、例えば、55%より高い、例えば、60%より高い、例えば、65%より高い、例えば、70%より高い、例えば、75%より高い、例えば、80%より高い、例えば、85%より高い、例えば、90%より高い、例えば、95%より高い「核画分」であってもよい。
【0139】
上記の態様の方法の代替的または相補的な実施形態では、工程c)の対照値は、95%以下、例えば、90%以下、例えば、85%以下、例えば、80%以下、例えば、75%以下、例えば、70%以下、例えば、65%以下、例えば、60%以下、例えば、55%以下、例えば、50%以下、例えば、45%以下、例えば、40%以下、例えば、35%以下、例えば、30%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、例えば、2%以下、例えば、1%以下の核画分である。
【0140】
添付の図面、特に、図1および8に示すように、1%、10%または25%のnfのカットオフ値は、関連する予後または処置予測情報を提供する。10%のnfは、特に有望なカットオフ値であるようである。
【0141】
それ故、好適な実施形態では、工程c)の対照値は、35%以下、例えば、30%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、例えば、2%以下、例えば、1%以下の核画分であってもよい。
【0142】
他の好適な実施形態では、工程c)の対照値は、0.5〜30%、例えば、1〜25%、例えば、5〜15%、例えば、8〜12%、例えば、10%の核画分であってもよい。
【0143】
さらに、上記の態様の方法の実施形態では、工程d)における結論の基準は、サンプル、即ち、核強度の不在より高い、例えば、弱い核強度より高い、例えば、中等度の核強度より高い核強度の染色強度のためのサンプル値であってもよい。上記の態様の方法の代替的または相補的な実施形態では、工程c)の対照値は、中等度の核強度以下のANLNタンパク質発現であってもよく、例えば、弱い核強度以下のANLNタンパク質発現であってもよく、例えば、ANLNタンパク質発現の核強度が不在であってもよい。
【0144】
さらに、上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、2つの値から構成され得、ここで、工程d)における結論の基準は、これらの2つの値より高いサンプル値である。
【0145】
あるいは、上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、画分値と強度値、例えば、核画分値と核強度値との組み合わせであってもよい。
【0146】
また、上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、核画分値および核強度値の関数であってもよい。例えば、そのような関数は、染色スコアであり得る。「染色スコア」は、以下の実施例、セクション3および表1に記載のように計算される。例えば、対照値は、0、1または2の染色スコアであってもよい。
【0147】
当業者は、強度値または画分値である他の対照値もまた、本発明の範囲内に当てはまることを理解している。同様に、当業者は、画分と強度との他の組み合わせもまた、本発明の範囲内に当てはまることを理解している。結果的に、対照値は、2つ、そしておそらくはなおそれを超える基準に関係し得る。
【0148】
一般に、対照値としての核強度値および/または核画分値の選択は、染色手順、例えば、用いられる抗ANLNタンパク質抗体および染色試薬に依存し得る。
【0149】
本開示物を指針として、当業者、例えば、病理学者は、細胞、細胞質もしくは核画分などの画分、または細胞、細胞質もしくは核強度などの強度をもたらす評価を実施する仕方について理解している。例えば、当業者は、所定の画分または強度の出現を確立するための予め決定された量のANLNタンパク質を含んでなる対照サンプルを使用することができる。
【0150】
しかし、対照サンプルは、実際の対照値を供給するためだけではなく、対照値に対応する量より高いANLNタンパク質の量を伴うサンプルの例を供給するために使用することができる。例として、免疫組織化学染色などの組織化学染色では、当業者は、高量のANLNタンパク質を有する染色されたサンプル、例えば、陽性対照の出現を確立するための対照サンプルを使用することができる。続いて、当業者は、対照値に対応する量のANLNタンパク質を伴うサンプルの出現などのより低量のANLNタンパク質を有するサンプルの出現を評価することができる。言い換えれば、当業者は、対照サンプルを使用して、対照サンプルより低いANLNタンパク質の量に対応する対照値の心的イメージを作成することができる。代替的に、または相補物として、そのような評価では、当業者は、例えば、「陰性対照」としてのそのようなサンプルの出現を確立するための低量のANLNタンパク質を有するか、またはANLNタンパク質を本質的に含まないもう1つの対照サンプルを使用することができる。
【0151】
例えば、10%の核画分の対照値を使用する場合、キットは、検出可能なANLNタンパク質が認められず、それ故、0の核画分に対応する、対照値より低い第1の対照サンプル;および75%以上の核画分に対応するANLNタンパク質の量を有する、対照値より高い第2の対照サンプルを含んでなり得る。
【0152】
結果的に、評価では、当業者は、高量のANLNタンパク質を伴うサンプルの出現を確立するための対照サンプルを使用することができる。そのような対照サンプルは、高量のANLNタンパク質を発現する組織を含んでなるサンプル、例えば、予め確立された高発現のANLNタンパク質を有する乳房腫瘍組織を含んでなるサンプルであってもよい。
【0153】
従って、対照サンプルは、強い核強度(ni)の例を提供し得る。次いで、強いniを伴うサンプルの出現の知識を用いて、当業者は、サンプルを次のniカテゴリー、例えば、上記の不在、弱、中および強に分割することができる。この分割は、検出可能なANLNタンパク質(陰性対照)を含まない対照サンプル、即ち、核強度が不在である対照サンプルによって、さらに援助され得る。また、対照サンプルは、75%以上の核画分(nf)を伴うサンプルの例を提供し得る。次いで、75%を超える陽性細胞を伴うサンプルの出現の知識を用いて、当業者は、例えば、より低い百分率の陽性細胞を有する他のサンプルの核画分を評価することができる。この分割は、ANLNタンパク質を本質的に含まない対照サンプル(陰性対照)、即ち、低いnf(例えば、<2%)、または0のnfを提供する対照サンプルによって、さらに援助され得る。
【0154】
上記のように、制御された量のANLNタンパク質を発現する細胞系統は、対照、特に、陽性対照として使用することができる。
【0155】
上記で考察したように、第3および第4の態様の方法を、選択された対照値、例えば、上記で提示した対照値のうちの1つに適応してもよく、そしてそのような場合、対照予後は、選択された対照値の結果である。非制限的例として、1%の核画分(nf=1%)を対照値として使用する場合、関連する対照予後は、「低い」曲線(実線)を見ることによって、図1a(分析したRFS)から誘導することができる。診断からの所与の時間において、「低い」曲線に対応する累積生存率を、図から読み取ることができ、例えば、5年(60箇月)後の92%は、92%の5年無再発生存の確率である対照予後を生じる。結果的に、nf=1%の対照値より高いサンプル値を有する同じグループの被験体は、92%より低い5年無再発生存の確率を有する。同じ理論を使用して、関連する対照予後は、対照値として10%の核画分を使用する場合、84%未満の5年無再発生存の確率であり得る(図1B)。
【0156】
10%の核画分を対照値として使用する後者の例では、対照予後は、0〜10%のnfを示す被験体に基づき、即ち、対照予後は、正確な対照値を示す被験体のグループから直接誘導されない。しかし、そのような対照値より高いサンプル値を有する被験体が、そのような対照予後より不良な予後を有する結論は、なお正しい。
【0157】
結果的に、上記の態様の方法の実施形態では、対照予後は、対照値nf=1%を使用する場合、82〜100%、例えば、87〜97%の5年無再発生存率の可能性であり得る。さらに、上記の態様の方法の実施形態では、対照予後は、対照値nf=10%を使用する場合、74〜94%、例えば、79〜89%の5年無再発生存率の可能性であり得る。
【0158】
また、上記の態様の方法の実施形態では、対照予後は、対照値nf=1%が使用される場合、72%以上の5年無再発生存率(図1a、「高い」曲線から誘導可能である)、対照値nf=10%を使用する場合、62%以上の5年無再発生存率(図1b、「高い」曲線から誘導可能である)、または対照値nf=25%が使用される場合、60%以上の5年無再発生存率(図1c、「高い」曲線から誘導可能である)であってもよい。
【0159】
さらに、上記の態様の方法の実施形態では、対照予後は、対照値nf=1%を使用する場合、85%以上の5年乳癌特異的生存率(図3a、「高い」曲線から誘導可能である)または対照値nf=1%を使用する場合、70%以上の5年全生存率(図4a、「高い」曲線から誘導可能である)であってもよい。
【0160】
しかし、上記の対照予後は、例示的な例としてのみ提供するものであって、そして当業者は、上記の態様に従う方法の有用性が、任意の特定の対照予後または予後の測定値に限定されるわけではないことを理解している。
【0161】
さらに、当業者は、タンパク質が関連遺伝子によってコードされ、そして関連する発現パターンを示す限り、上記の態様に従う方法の有用性が、問題の被験体に存在するANLNタンパク質の任意の特定の変異体の定量化に限定されないことを認識すべきである。非制限的例として、ANLNタンパク質は、以下から選択される配列を含んでなるアミノ酸配列を有する:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列。
【0162】
いくつかの実施形態では、上記の配列ii)は、配列番号1に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0163】
もう1つの非制限的例として、ANLNタンパク質は、以下から選択される配列を含んでなるアミノ酸配列を有する:
i)配列番号2;および
ii)配列番号2に少なくとも85%同一である配列。
【0164】
いくつかの実施形態では、上記の配列ii)は、配列番号2に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0165】
本開示物に関して使用される用語「%同一」は、次のとおりに計算される。CLUSTAL Wアルゴリズム(非特許文献34)を使用して、問い合わせ配列を標的配列に対してアラインする。各位置におけるアミノ酸残基を比較し、そして標的配列において同一の応答を有する問い合わせ配列における位置の百分率を同一%として報告する。また、標的配列は、比較する位置の数を決定する。結果的に、本開示物に関して、標的配列より短い問い合わせ配列は、標的配列に対して、決して100%同一になり得ない。例えば、85アミノ酸の問い合わせ配列は、100アミノ酸の標的配列に対して、最大で85%同一であり得る。
【0166】
上記の態様の方法の実施形態では、ANLNタンパク質は、ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能である検出可能および/または定量可能な親和性リガンドのサンプルへの適用を介して、検出および/または定量することができる。親和性リガンドの適用は、サンプル中の任意のANLNタンパク質への親和性リガンドの結合を可能にする条件下で実施される。
【0167】
具体化するために、上記の態様の方法の実施形態では、工程b)は、以下を含んでなり得る:
b1)サンプルに、評価しようとするANLNタンパク質との選択的相互作用が可能である定量可能な親和性リガンドを適用する工程であって、適用は、サンプルに存在する任意のANLNタンパク質への親和性リガンドの結合を可能にする条件下で実施される;
b2)非結合親和性リガンドを取り出す工程;および
b3)サンプルとの会合において残留する任意の親和性リガンドを定量して、量を評価する工程。
【0168】
「サンプル」との会合において残留する親和性リガンド」は、工程b2)において取り出されなかった親和性リガンド、例えば、サンプルに結合した親和性リガンドを指す。ここで、結合は、例えば、抗体と抗原との間の相互作用であってもよい。
【0169】
一旦、本開示物の教示内容を介して、乳癌についてのANLNタンパク質と予後もしくは処置予測との間の関連が公知になれば、適切な親和性リガンドを選択または製造し、そして検出および/または定量化のための適切な形式および条件を選択することは、当業者の能力の範囲内であることが認識される。それでも敢えて、有用性を証明し得る親和性リガンドの例、ならびに検出および/または定量化の形式および条件の例を、例示目的のために以下に示すことにする。
【0170】
それ故、上記の態様の方法のいくつかの実施形態では、抗体、そのフラグメントおよびその誘導体からなる群から選択される親和性リガンド、即ち、免疫グロブリン足場に基づく親和性リガンドを使用することができる。例えば、抗体は、単離されたおよび/または単一特異的であり得る。例えば、抗体は、マウス、ウサギ、ヒトおよび他の抗体を含む任意の起源のモノクローナルおよびポリクローナル抗体、ならびに部分的にヒト化された抗体、例えば、部分的にヒト化されたマウス抗体などの異なる種由来の配列を含んでなるキメラ抗体を含んでなる。ポリクローナル抗体は、好適な抗原による動物の免疫化によって産生される。定義された特異性を有するモノクローナル抗体は、KoehlerおよびMilstein(非特許文献35)によって開発されたハイブリドーマ技術を使用して、産生させることができる。本開示物の抗体フラグメントおよび誘導体は、抗体(それらはそのフラグメントまたは誘導体である)と同じ抗原(例えば、ANLNタンパク質)との選択的相互作用が可能である。抗体フラグメントおよび誘導体は、無傷(intact)な免疫グロブリンタンパク質の重鎖(CH1)の第1の定常ドメイン、軽鎖(CL)の定常ドメイン、重鎖(VH)の可変ドメインおよび軽鎖(VL)の可変ドメインからなるFabフラグメント;2つの可変抗体ドメインVHおよびVLからなるFvフラグメント(非特許文献36);可撓性ペプチドリンカーによって共に連結された2つのVHおよびVLドメインからなる一本鎖Fvフラグメント(scFv)(非特許文献37;Bence Jonesダイマー(非特許文献38);Bence Jonesダイマー(非特許文献38);ラクダ科重鎖ダイマー(非特許文献39)および単一可変ドメイン(非特許文献40;非特許文献41)、ならびに例えば、コモリザメ由来のNew Antigen Receptor(NAR)などの単一ドメイン足場(非特許文献42)および可変重鎖ドメインに基づくミニボディ(非特許文献36)を含んでなる。上記の態様の方法の実施形態では、定量可能な親和性リガンド、例えば、抗体またはそのフラグメントは、アミノ酸配列が配列番号1の配列を含んでなるタンパク質、好ましくは、配列番号1の配列からなるタンパク質で動物を免役する工程を含んでなるプロセスによって入手可能であり得る。
【0171】
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ならびにそれらのフラグメントおよび誘導体は、上記の方法態様に従うANLNタンパク質の検出および/または定量化におけるような選択的生体分子認識を必要とするアプリケーションにおいて、親和性リガンドを従来どおり選択する。しかし、当業者は、選択的結合リガンドのハイスループット作製および低コスト生産システムの需要が増加しているため、新たな生体分子多様性技術が、最近10年間の間に開発されてきたことを知っている。これは、生体分子認識アプリケーションにおいて結合リガンドとして有用であることが同様に証明されており、そして免疫グロブリンの代わりに、または免疫グロブリンと共に使用することができる免疫グロブリンならびに非免疫グロブリン起源の両方の新規のタイプの親和性リガンドの作製を可能にした。
【0172】
親和性リガンドの選択に必要な生体分子多様性は、複数の可能な足場分子のうちの1つのコンビナトリアル操作によって作製することができ、次いで、特異的および/または選択的親和性リガンドが、適切な選択プラットホームを使用して、選択される。足場分子は、免疫グロブリンタンパク質由来(非特許文献43)、非免疫グロブリンタンパク質由来(非特許文献44)、またはオリゴヌクレオチド由来(非特許文献45)であってもよい。
【0173】
多数の非免疫グロブリンタンパク質足場が、新規の結合タンパク質の開発において支持構造として使用されている。本開示物に従って使用するためのHMGCRタンパク質に対する親和性リガンドを作製するのに有用なそのような構造の非制限的例には、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメインならびにこれらのドメインの誘導体、例えば、プロテインZ(非特許文献46);リポカリン(非特許文献47);アンキリンリピートドメイン(非特許文献48);セルロース結合ドメイン(CBD)(非特許文献49;非特許文献50);γクリスタリン(Fiedler UおよびRudolph R、特許文献3);緑色蛍光タンパク質(GFP)(非特許文献51);ヒト細胞障害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA−4)(非特許文献52;非特許文献53);プロテアーゼ阻害剤、例えば、Knottinタンパク質(非特許文献54;非特許文献55)およびKunitzドメイン(非特許文献56;非特許文献57);PDZドメイン(非特許文献58);ペプチドアプタマー、例えば、チオレドキシン(非特許文献59;非特許文献60);スタフィロコッカルヌクレアーゼ(非特許文献61);テンダミスタット(非特許文献62;非特許文献63);フィブロネクチンIII型ドメインに基づくトリネクチン(非特許文献64;非特許文献65);ならびにジンクフィンガー(非特許文献66;非特許文献67;非特許文献68)がある。
【0174】
非免疫グロブリンタンパク質足場の上記の例として、新規の結合特異性の作製に使用される単一の無作為化ループを提示する足場タンパク質、堅牢な2次構造を伴うタンパク質足場が挙げられ、ここで、タンパク質表面から突出している側鎖が、新規の結合特異性の作製、および新規の結合特異性の作製に使用される非連続的超可変ループ領域を示す足場のために無作為化される。
【0175】
非免疫グロブリンタンパク質に加えて、オリゴヌクレオチドもまた、親和性リガンドとして使用してもよい。一本鎖核酸は、アプタマーまたはデコイと呼ばれ、良好に定義された3次元構造に折り畳まれ、そして高い親和性および特異性でそれらの標的に結合する。(非特許文献69;非特許文献70;非特許文献71)。オリゴヌクレオチドリガンドは、RNAまたはDNAのいずれかであり得、そして広範な標的分子クラスに結合することができる。
【0176】
上記の足場構造のいずれかの変異体のプールから定義された親和性リガンドを選択するために、多くの選択プラットホームが、好適な標的タンパク質に対する新規の特異的なリガンドの単離に利用可能である。選択プラットホームとして、ファージディスプレイ(非特許文献72)、リボソームディスプレイ(非特許文献73)、酵母ツーハイブリッドシステム(非特許文献74)、酵母ディスプレイ(非特許文献75)、mRNAディスプレイ(非特許文献76)、細菌ディスプレイ(非特許文献77、非特許文献78、非特許文献79)、マイクロビーズディスプレイ(非特許文献80、特許文献4)、SELEX(指数関数的濃縮によるリガンドの系統的発生)(非特許文献81)およびタンパク質フラグメント相補性アッセイ(PCA)(非特許文献82)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
それ故、上記の態様の方法の実施形態では、上記で列挙したタンパク質足場のうちのいずれかから誘導された非免疫グロブリン親和性リガンド、またはオリゴヌクレオチド分子である親和性リガンドを使用することができる。
【0178】
ANLNタンパク質の配列番号1は、他のヒトタンパク質と低い相同性を有する独特な配列からなり、そして作製されたアフィニティー試薬の交差反応性を最小限にするように設計された。結果的に、上記の態様の方法の実施形態では、定量可能な親和性リガンドは、配列番号1の配列からなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能であり得る。
【0179】
上記の態様の方法のいくつかの実施形態では、ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンドは、検出可能および/または定量可能である。そのような親和性リガンドの検出および/または定量化は、生物学的相互作用に基づくアッセイにおいて結合試薬の検出および/または定量化について当業者に公知の任意の方法で達成することができる。それ故、上記の任意の親和性リガンドを、定量的または定性的に使用して、ANLNタンパク質の存在を検出することができる。これらの「1次」親和性リガンドは、それら自体が、様々なマーカーによって標識され得、あるいは次いで、2次標識親和性リガンドによって検出されて、検出、可視化および/または定量化を可能にし得る。これは、当業者に公知であり、そして過度の実験に関係しない多数の技術のいずれか1つ以上を使用して、ANLNタンパク質との相互作用が可能な親和性リガンドまたは任意の2次親和性リガンドにコンジュゲートすることができる多数の標識のいずれか1つ以上を使用して、達成することができる。
【0180】
1次および/または2次親和性リガンドにコンジュゲートすることができる標識の非制限的例として、蛍光染料または金属(例えば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、フルオレスカミン)、発色団染料(例えば、ロドプシン)、化学発光化合物(例えば、ルミナール、イミダゾール)および生物発光タンパク質(例えば、ルシフェリン、ルシフェラーゼ)、ハプテン(例えば、ビオチン)が挙げられる。多様な他の有用な蛍光物質および発色団については、非特許文献83および非特許文献84に記載されている。親和性リガンドは、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ラクタマーゼ)、放射性同位元素(例えば、3H、14C、32P、35Sまたは125I)および粒子(例えば、金)で標識することができる。本開示物に関して、「粒子」は、分子を標識するのに適切な粒子、例えば、金属粒子を指す。さらに、親和性リガンドはまた、蛍光半導体ナノ結晶(量子ドット)で標識することができる。量子ドットは、より優れた量子収量を有し、そして有機蛍光団と比較してより光安定性であり、従って、より容易に検出される(非特許文献85)。様々な化学、例えば、アミン反応またはチオール反応を使用して、異なるタイプの標識を、親和性リガンドにコンジュゲートすることができる。しかし、アミンおよびチオール以外の他の反応基、例えば、アルデヒド、カルボン酸およびグルタミンを使用することもできる。
【0181】
上記の方法態様は、いくらかの既知の形式および設定のいずれかで利用することができ、その非制限的選択について以下で考察する。
【0182】
組織学に基づく設定では、そのANLNタンパク質標的に結合した標識親和性リガンドの検出、局在および/または定量化は、可視化技術、例えば、光学顕微鏡または免疫蛍光(immunofluoresence)顕微鏡に関係し得る。他の方法は、フローサイトメトリーまたはルミノメトリーを介する検出に関係し得る。
【0183】
例えば、被験体から摘出した乳腺組織由来の腫瘍組織サンプル(生検)などの生物学的サンプルは、ANLNタンパク質の検出および/または定量化に使用することができる。生検などの生物学的サンプルは、早期に得られるサンプルであってもよい。ある方法において早期に得られるサンプルを使用する場合、ヒトまたは動物身体に対して実践される方法の工程はない。親和性リガンドを、ANLNタンパク質の検出および/または定量化のために、生物学的サンプルに適用してもよい。この手順は、ANLNタンパク質の検出を可能にするではなく、加えて、その発現の分布および相対的レベルを示すことができる。
【0184】
親和性リガンド上の標識の可視化の方法として、フルオロメトリー、ルミノメトリーおよび/または酵素的技術を挙げることができるが、これらに限定されない。蛍光は、蛍光標識を特定の波長の光に暴露し、その後、特定の波長領域において放射された光を検出および/または定量することによって、検出および/または定量される。発光タグ化親和性リガンドの存在は、化学反応中に発生する発光によって、検出および/または定量することができる。酵素反応の検出は、化学反応から生じるサンプルの色のシフトによるものである。当業者は、適切な検出および/または定量化のために、異なる多様なプロトコルを改変することができることを知っている。
【0185】
上記の態様の方法の実施形態では、生物学的サンプルを、ニトロセルロースもしくは適用される生物学的サンプルに存在するANLNタンパク質を固定化することが可能な他の任意の固相支持体マトリックスなどの固相支持体またはキャリアに固定化することができる。本発明において有用ないくつかの周知の固体状態支持材料として、ガラス、炭水化物(例えば、Sepharose)、ナイロン、プラスチック、ウール、ポリスチレン、ポリエテン(polyethene)、ポリプロピレン、デキストラン、アミラーゼ、フィルム、樹脂、セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、アルミナ、ガブロおよびマグネタイトが挙げられる。生物学的サンプルの固定化後、ANLNタンパク質に特異的な1次親和性リガンドは、例えば、本開示物の実施例、セクション3または6に記載のように適用することができる。1次親和性リガンドがそれ自体で標識されない場合、支持マトリックスを、当該分野において公知の1つ以上の適切な緩衝液で洗浄することができ、続いて、2次標識親和性リガンドに暴露し、もう1回、緩衝液で洗浄して、結合していない親和性リガンドを取り出すことができる。その後、従来の方法で、選択的親和性リガンドを検出および/または定量することができる。親和性リガンドの結合特性は、固体状態支持体によって変動し得るが、当業者は、日常的な実験によって、それぞれの決定のための作動および至適アッセイ条件を決定することが可能であるべきである。
【0186】
結果的に、上記の態様の方法の実施形態では、b1)の定量可能な親和性リガンドは、定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドを使用して、検出することができる。それ故、b3)の定量化は、定量可能な親和性リガンドに対して親和性を有する2次親和性リガンドによって、行うことができる。例として、2次親和性リガンドは、抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体であり得る。
【0187】
例として、ANLNタンパク質の検出および/または定量化の1つの利用可能な方法は、後に酵素イムノアッセイ(例えば、EIAもしくはELISA)で検出および/または定量することができる酵素に親和性リガンドを連結させることによる。そのような技術は、良好に確立されており、そしてそれらは、当業者にとって過度の困難を伴わずに実現される。そのような方法では、生物学的サンプルは、固体材料、またはANLNタンパク質に対する親和性リガンドにコンジュゲートされた固体材料と接触され、次いで、酵素標識された2次親和性リガンドで検出および/または定量される。この後、適切な基質を酵素標識を伴う適切な緩衝液と反応させて、例えば、分光光度計、蛍光光度計、発光測定装置を使用して、または目視手段によって、検出および/または定量される化学部分を生成させる。
【0188】
上記で述べたように、1次および2次親和性リガンドは、検出および/または定量化を可能にする放射性同位元素で標識することができる。本開示物における適切な放射性標識の非制限的例は、3H、14C、32P、35Sまたは125Iである。標識された親和性リガンドの比活性は、放射性標識の半減期、同位体の純度、および標識がどのようにして親和性リガンドに組み入れられたかに依存する。親和性リガンドは、好ましくは、周知の技術(非特許文献86)を使用して、標識される。そのような放射性標識された親和性リガンドを使用して、インビボまたはインビトロでの放射能の検出により、ANLNタンパク質を可視化することができる。例えば、γカメラ、磁気共鳴分光法または放射トモグラフィーによる放射性核種スキャニングは、インビボおよびインビトロでの検出に機能する一方、γ/βカウンター、シンチレーションカウンターおよびラジオグラフィーもまた、インビトロで使用される。
【0189】
本開示物の第3の態様として、以下を含んでなる、上記の態様に従って、方法を実施するためのキットが提供される:
a)ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;および
b)親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬。
【0190】
第6の態様に従うキットの様々な成分は、本開示物の方法態様に関連して上記のように選択および指定することができる。
【0191】
それ故、本開示物に従うキットは、ANLNタンパク質に対する親和性リガンド、ならびにそれが特異的および/または選択的にANLNタンパク質に結合した後、特異的および/または選択的親和性リガンドを定量するのに役立つ他の手段を含んでなる。例えば、キットは、ANLNタンパク質、およびANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンドによって形成される複合体を検出および/または定量するための2次親和性リガンドを含有することができる。キットはまた、キットを容易かつ効率的に使用することを可能にするための親和性リガンド以外の様々な補助物質を含有することができる。補助物質の例として、キットの凍結乾燥タンパク質成分を溶解または再構成するための溶媒、洗浄緩衝液、酵素を標識として使用する場合、酵素活性を測定するための基質、パラフィンまたはホルマリン固定された組織サンプルを使用する場合、抗原へのアクセス可能性を増大するための抗原賦活液(target retrieval solution)、および反応抑止剤(reaction arrester)などの物質、例えば、イムノアッセイ試薬キットにおいて一般に使用されるバックグランド染色を減少するための内因性酵素ブロック溶液および/または染色の対比を増加するための対比染色溶液が挙げられる。
【0192】
それ故、キット態様の実施形態では、定量可能な親和性リガンドは、抗体、そのフラグメントおよびその誘導体からなる群から選択される。例として、そのような定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が、配列番号1の配列または配列番号1に少なくとも85%同一である配列、好ましくは、配列番号1の配列を含んでなるタンパク質でウサギなどの動物を免役する工程を含んでなる入手可能なプロセスであり得る。また、定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1の配列からなるタンパク質でウサギなどの動物を免疫する工程を含んでなる入手可能なプロセスであり得る。そのような免疫化は、例えば、以下の実施例、セクション2に記載のように実施することができる。また、抗体、そのフラグメントおよび誘導体は、例えば、単離されたおよび/または単一特異的であり得る。調製のプロセスを含む単離されたおよび単一特異的ポリクローナル抗体の例を、実施例、セクション2において下記に示す。
【0193】
あるいは、定量可能な親和性リガンドは、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメイン、リポカリン、アンキリンリピートドメイン、セルロース結合ドメイン、γクリスタリン、緑色蛍光タンパク質、ヒト細胞障害性Tリンパ球関連抗原4、プロテアーゼ阻害剤、PDZドメイン、ペプチドアプタマー、スタフィロコッカルヌクレアーゼ、テンダミスタット、フィブロネクチンIII型ドメインおよびジンクフィンガーからなる群から選択される足場から誘導されるタンパク質リガンドである。さらなる別法として、定量可能な親和性リガンドは、オリゴヌクレオチド分子である。
【0194】
キット態様の実施形態では、定量可能な親和性リガンドは、以下から選択される配列を含んでなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能であり得る:
i)配列番号2;および
ii)配列番号2に少なくとも85%同一である配列。
【0195】
いくつかの実施形態では、上記の配列ii)は、配列番号2に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0196】
上記においてさらに考察したように、配列番号1の配列は、本開示物の親和性リガンドによって認識されるために、特に適切な抗原に設計されている。結果的に、キット態様の実施形態では、定量可能な親和性リガンドは、以下から選択される配列を含んでなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能であり得る:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列。
【0197】
いくつかの実施形態では、上記の配列ii)は、配列番号1に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0198】
さらに、定量可能な親和性リガンドは選択的相互作用が可能であり得るANLNタンパク質は、200アミノ酸残基以下、例えば、190アミノ酸残基以下、例えば、180アミノ酸残基以下、例えば、170アミノ酸残基以下、例えば、160アミノ酸残基以下、例えば、150アミノ酸残基以下、例えば、140アミノ酸残基以下、例えば、136アミノ酸からなり得る。
【0199】
配列番号1は、136アミノ酸からなる。
【0200】
キット態様の実施形態では、定量可能な親和性リガンドは、配列番号1の配列からなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能であり得る。
【0201】
さらに、キット態様の実施形態では、検出可能な親和性リガンドは、蛍光染料または金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含んでなり得る。あるいは、親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬は、定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドを含んでなる。例として、定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドは、蛍光染料または金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含んでなる。
【0202】
キット態様に従うキットはまた、サンプル値との比較のために使用すべき対照値の供給または産出のための対照サンプルを有利に含んでなり得る。例えば、対照サンプル(reference may sample)は、予め決定された量のANLNタンパク質を含んでなり得る。そのような対照サンプルは、例えば、予め決定された量のANLNタンパク質を有する組織サンプルによって構成され得る。次いで、組織対照サンプルは、対照組織サンプルおよび被験体サンプルにおける発現レベルの、目視検査などの手動、または自動化された比較によって、研究しているサンプル中のANLN発現状態の決定において当業者によって使用され得る。もう1つの例として、対照サンプルは、予め決定された、または制御された量のANLNタンパク質を発現する癌細胞系統などの細胞系統を含んでなり得る。当業者は、例えば、非特許文献33の開示内容を指針として、そのような細胞系統を提供する仕方について理解している。例として、細胞系統は、ホルマリン固定化してもよい。また、そのようなホルマリン固定化細胞系統を、パラフィン包埋してもよい。
【0203】
語句「対照値の供給のための対照サンプル」は、本開示物に関して、広範に解釈すべきである。対照サンプルは、実際に対照値に対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得るが、それはまた、対照値より高い値に対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得る。後者の場合、「高い」値は、例えば、「高い」値より低い対照値の出現を評価するための上位対照(陽性対照)として方法を実施する者によって、使用され得る。免疫組織化学の当業者は、そのような評価をする仕方について理解している。さらに、代替的または相補的な例として、当業者は、例えば、陰性対照として、そのような評価における「低い」値の供給のための低い量のANLNタンパク質を含んでなるもう1つの対照サンプルを使用することができる。これについては、さらに、方法態様に関連して上記で考察している。
【0204】
結果的に、キット態様の実施形態では、対照サンプルは、対照値に対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得る。例として、対照サンプルは、95%以下、例えば、90%以下、例えば、85%以下、例えば、80%以下、例えば、75%以下、例えば、70%以下、例えば、65%以下、例えば、60%以下、例えば、55%以下、例えば、50%以下、例えば、45%以下、例えば、40%以下、例えば、35%以下、例えば、30%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、例えば、2%以下、例えば、1%以下の核画分に対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得る。
【0205】
添付の図面、特に、図1および8に示すように、1%、10%または25%のnfのカットオフ値は、関連する予後または処置予測情報を提供する。1%または10%、特に、10%のnfは、特に有望なカットオフ値であるようである。
【0206】
それ故、好適な実施形態では、対照サンプルは、35%以下、例えば、30%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、例えば、2%以下、例えば、1%以下の核画分に対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得る。
【0207】
他の好適な実施形態では、対照サンプルは、0.5〜30%、例えば、1〜25%、例えば、5〜15%、例えば、8〜12%、例えば、10%の核画分に対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得る。
【0208】
代替的に、または相補物として、対照サンプルは、中等度の核強度以下のANLNタンパク質発現、例えば、弱い核強度以下のANLNタンパク質発現、例えば核強度が不在のANLNタンパク質発現に対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得る。
【0209】
さらに、対照サンプルは、0、1、2または3の染色スコアに対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得る。
【0210】
細胞質画分値または細胞質強度値の供給については、方法態様に関連して上記で考察している。
【0211】
さらに、キット態様の代替的または相補的な実施形態では、キットは、対照値より高い値に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる対照サンプルを含んでなり得る。これらの実施形態では、対照サンプルは、例えば、75%以上の核画分および/または核発現の強い細胞質強度に対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得る。
【0212】
キット態様の他の代替的または相補的な実施形態では、キットは、対照値より低い値、例えば、核強度の不在および/または≦1%ANLNタンパク質陽性細胞、例えば、0%ANLNタンパク質陽性細胞の核画分に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる対照サンプルを含んでなり得る。
【0213】
また、キット態様の他の代替的または相補的な実施形態では、キットは、さらに、以下を含んでなり得る:予め決定された対照値に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる対照サンプル;予め決定された対照値より高い値に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる対照サンプル;および/または予め決定された対照値より低い値に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる対照サンプル。
【0214】
結果的に、キットの実施形態は、次を含んでなり得る:予め決定された対照値より高いANLNタンパク質の量を含んでなる第1の対照サンプル;および予め決定された対照値より低いANLNタンパク質の量を含んでなる第2の対照サンプル。
【0215】
キット態様の実施形態では、対照サンプルは、組織サンプル、例えば、肉眼または顕微鏡的評価に適応される組織サンプルであってもよい。例として、組織対照サンプルは、パラフィンもしくは緩衝ホルマリン中に固定化され得る、および/または顕微鏡ガラススライド上にマウントされるμm薄切片に組織処理され得る。組織対照サンプルは、さらに、ANLNタンパク質に対する抗体などの親和性リガンドによる染色に適応され得る。
【0216】
結果的に、キット態様の実施形態では、対照サンプルは、上記で考察した対照値のいずれか1つなどの任意の関連する対照値を直接的または間接的に提供するように適用され得る。
【0217】
従って、さらに、キット態様の対照サンプルの実施形態については、方法態様の対照値および対照サンプルに関連して上記で考察している。
【0218】
さらに、上記で考察したように、ANLNタンパク質発現のレベルとホルモン受容体状態との組み合わせは、乳癌被験体の処置予測または予後に関する結論を導き出すことに関連する情報を提供し得る。
【0219】
それ故、キットはまた、被験体のホルモン受容体状態を確立するための手段を含み得る。
【0220】
結果的に、キット態様の実施形態では、キットは、さらに、以下を含んでなり得る:
a’)エストロゲン受容体との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;およびb’)そのような親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬;ならびに/あるいは
a’’)プロゲステロン受容体との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;およびb’’)そのような親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬。
【0221】
a’)およびa’’)の定量可能な親和性リガンドは、それぞれ、ER状態およびPR状態の決定のために提供される。
【0222】
b)、b’)およびb’’)の試薬は、同じであっても、または異なっていてもよい。
【0223】
工程a’)およびa’’)に適切な定量可能な親和性リガンドは、それぞれ当業者に周知であり、そして市販されている。
【0224】
結果的に、キットは、上記の方法態様のいくつかの実施形態に従って結論を導き出すのに必要なホルモン状態の情報を供給するための手段を含み得る。
【0225】
ANLNタンパク質は、乳癌の予後または処置予測に関する多くのアプリケーションを有し得る。例えば、ANLNタンパク質は、予後因子もしくは内分泌処置の予測因子の産生、選択または精製に使用してもよい。
【0226】
本開示物に関して、「予後因子」は、予後の確立において価値のある少なくとも1つの特性を指す。例えば、「予後因子」は、予後マーカーとの選択的相互作用が可能であり得る。それ故、予後因子は、乳癌を有する患者の予後を確立するためのものである。
【0227】
本開示物に関して、「予後マーカー」は、存在することで予後の確立において価値を有する何らかの材料を指す。
【0228】
さらに、本開示物に関して、「内分泌処置予測因子」は、乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置についての処置予測の確立において価値のある少なくとも1つの特性を有する因子を指す。例えば、「内分泌処置予測因子」は、内分泌処置の指標との選択的相互作用が可能であり得る。
【0229】
本開示物に関して、「内分泌処置の指標」は、内分泌処置に対する応答などの内分泌処置の適性を示す何らかの材料を指す。例として、「乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置指標」は、ヒトなどの被験体が、内分泌処置を経験すべきかどうか、もしくは内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかについての情報または指針を付与し得る。
【0230】
また、本明細書に記載のように、ANLNタンパク質の存在は、乳癌の予後および乳癌処置の選択に関連し得る。
【0231】
さらに、1つ以上の上記の使用を適合するために、136アミノ酸のANLNタンパク質(配列番号1)を、他のヒトタンパク質に対して低い配列類似性を有する独特な配列からなり、作製されたアフィニティー試薬の所望されない交差反応性を最小限にし、そしてなお、コンフォメーショナルエピトープの形成を可能にし、そして細菌系における効率的な発現を可能にするのに適切なサイズであるように設計した。
【0232】
それ故、本開示物の第7の態様として、以下から選択される200アミノ酸残基以下からなるANLNタンパク質が提供される:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列。
【0233】
いくつかの実施形態では、上記の配列ii)は、配列番号1に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0234】
第7の態様の実施形態では、ANLNタンパク質は、190アミノ酸残基以下、例えば、180アミノ酸残基以下、例えば、170アミノ酸残基以下、例えば、160アミノ酸残基以下、例えば、150アミノ酸残基以下、例えば、140アミノ酸残基以下、例えば、138アミノ酸残基以下、例えば、136アミノ酸からなる。
【0235】
第7の態様の実施形態では、ANLNタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列からなる。
【0236】
さらに、本開示物の第8の態様として、内分泌処置指標または予後マーカーとしてのANLNタンパク質の使用が提供される。
【0237】
従来、タモキシフェン処置などの内分泌処置は、ER+および/またはPR+などのホルモン受容体陽性の乳癌を有する被験体に施されており、そして結果的に、処置予測は、特に、このグループに関連する。
【0238】
それ故、内分泌処置指標は、例えば、ER陽性乳癌を有する哺乳動物被験体のためのものであり得る。
【0239】
さらに、予後マーカーは、例えば、乳癌などの癌の予後マーカーであり得る。
【0240】
さらに、予後マーカーは、例えば、遠隔転移などの乳癌転移を有する確率の指標であってもよい。
【0241】
本発明者らが見出したANLNタンパク質の予後および処置予測の関連性は、様々なアッセイまたは他の検査設定におけるANLNタンパク質の適用を伴う。
【0242】
第8の態様の構成として、乳癌を有する患者の予後を確立するための予後因子または内分泌処置予測因子の産生、選択もしくは精製のためのANLNタンパク質、またはその抗原活性なフラグメントの使用が提供される。
【0243】
本開示物に関して、ANLNタンパク質の「抗原活性なフラグメント」は、親和性リガンド、例えば、フラグメントを含んでなるANLNタンパク質と相互作用すべき抗体の作製に有用であるのに十分なサイズのフラグメントである。
【0244】
例えば、予後因子、または内分泌処置予測因子は、ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンドであってもよい。例えば、親和性リガンドは、好ましくは、配列番号1の配列からなるタンパク質との選択的相互作用が可能であり得る。また、親和性リガンドは、好ましくは、抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体であり得る。さらに、抗体は、単離されたおよび/または単一特異的であり得る。
【0245】
本開示物の教示内容を指針として、当業者は、予後因子の産生、選択または精製においてANLNタンパク質を使用する仕方について理解している。例えば、第8の態様の構成に従う使用は、ANLNタンパク質が固定化されている固相支持体上でのアフィニティー精製を含んでなり得る。固相支持体は、例えば、カラムにおいて配置されていてもよい。さらに、使用は、ポリペプチドが固定化されている固相支持体を使用する、ANLNタンパク質に対して特異性を有する親和性リガンドの選択を含んでなり得る。そのような固相支持体は、96ウェルプレート、磁気ビーズ、アガロースビーズまたはセファロースビーズであってもよい。さらに、使用は、例えば、デキストランマトリックスを使用する可溶性マトリックス上の親和性リガンドの分析、またはBiacoreTM装置などの表面プラズモン共鳴装置における使用を含んでなり得、ここで、分析は、例えば、多くの潜在的な親和性リガンドの固定化されたANLNタンパク質に対する親和性をモニターすることを含んでなり得る。
【0246】
また、予後因子または処置予測因子の産生のために、ANLNタンパク質を、動物の免疫化において使用することができる。このことについては、さらに上記で考察している。
【0247】
そのような使用は、以下の工程を含んでなる方法に関係し得る:
i)ANLNタンパク質を抗原として使用して、動物を免疫する工程;
ii)免疫動物から予後因子を含んでなる血清を入手する工程;および場合により、
iii)血清から予後因子を単離する工程。
【0248】
あるいは、第1の工程後の工程は、以下のとおりであり得る:
ii’)免疫動物から細胞を入手する工程であって、細胞は、予後因子をコードするDNAを含んでなる、
iii’)細胞と骨髄腫細胞とを融合させて、少なくとも1つのクローンを入手する工程、および
iv’)クローンによって発現される予後因子を入手する工程。
【0249】
第8の態様の実施形態では、ANLNタンパク質のアミノ酸配列は、以下から選択される配列を含んでなり得る:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列。
【0250】
いくつかの実施形態では、配列ii)は、配列番号1に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0251】
さらに、第8の態様の実施形態では、ANLNタンパク質のアミノ酸配列は、以下から選択される配列を含んでなり得る:
i)配列番号2;および
ii)配列番号2に少なくとも85%同一である配列。
【0252】
いくつかの実施形態では、配列ii)は、配列番号2に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0253】
また、第8の態様の実施形態では、ANLNタンパク質は、第7の態様に従ういずれのANLNタンパク質であってもよい。
【0254】
本発明者らは、ANLNタンパク質が、乳癌の予後および処置の推定に利用され得ることを見出した。さらに、ANLNタンパク質に対して親和性を有する親和性リガンドを開発した。しかし、本発明の範囲は、単一のタイプの親和性リガンドに限定されるのではなく、そして本発明の概念は、ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な任意のタイプの親和性リガンドを使用して、実践することができる。
【0255】
それ故、本開示物の第9の態様として、ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンドが提供される。
【0256】
ANLNタンパク質の配列番号1は、他のヒトタンパク質と低い相同性を有する独特な配列からなり、そして作製されたアフィニティー試薬の交差反応性を最小限にするように設計された。それ故、第9の態様の実施形態では、親和性リガンドは、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなる、好ましくは、配列番号1からなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能であり得る。
【0257】
第9の態様の実施形態では、親和性リガンドは、抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体であってもよい。例えば、抗体およびそのフラグメントまたは誘導体は、単離されたおよび/または単一特異的であり得る。
【0258】
配列番号1はまた、特に、免疫化のために設計された、例えば、成熟タンパク質から切断除去されるため、大腸菌(E.coli)における効率的な発現を確実にするために膜貫通領域を含まず、そしていずれのシグナルペプチドも含まないように設計された。結果的に、抗体またはそのフラグメントもしくはその誘導体は、例えば、アミノ酸配列が配列番号1を含んでなる、好ましくは、配列番号1からなるタンパク質でウサギなどの動物を免疫化する工程を含んでなるプロセスによって入手可能であるものであり得る。例えば、免疫化プロセスは、フロイント完全アジュバント中のタンパク質による1次免疫を含んでなり得る。また、免疫化プロセスは、少なくとも2回、2〜6週間の間隔で、フロイント不完全アジュバント中のタンパク質によりブーストすることをさらに含んでなり得る。当該技術分野において公知である所与の標的に対する抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体の産生のためのプロセスは、本開示物のこの態様に関連して適用され得る。もちろん、上記で考察したANLNタンパク質(例えば、配列番号2)またはその抗原活性なフラグメント(例えば、配列番号1)のそれらの変異体のいずれも、抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体を作製するためのそのようなプロセスに使用することができる。
【0259】
親和性リガンドはまた、インビボでの画像などのインビボ診断に使用され得る。
【0260】
それ故、第9の態様の実施形態では、親和性リガンドは、乳癌を有する哺乳動物被験体の予後またはER陽性乳癌などの乳癌を有する哺乳動物被験体のタモキシフェン処置などの内分泌処置の結果の予測を確立するためのインビボでの方法に使用するためのものである。被験体の内分泌処置の結果の予測の確立は、例えば、被験体が、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかを決定することであり得る。そのような実施形態では、親和性リガンドは、例えば、即ち、検出可能な標識で標識された画像を可能にするために標識され得る。抗体などの親和性リガンドを標識するための適切な標識は、当業者に周知である。乳癌を有する哺乳動物被験体の予後または処置予測を確立するためのインビボ方法は、例えば、インビボでの腫瘍におけるANLNタンパク質発現を示し得、次いで、処置決定の基礎を形成し得る。この実施形態に関して使用することができる様々なインビボ方法、標識および検出技術については、さらに、上記で考察している。
【0261】
さらに、第9の態様の実施形態では、乳癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するためのものであり得る。例えば、予後は、転移を有する確率であってもよい。
【0262】
また、第9の態様の実施形態では、親和性リガンドは、乳癌を有する被験体由来のサンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価するためのものであり得る。
【0263】
本開示物の第10の態様として、予後因子として第9の態様に従う親和性リガンドの使用が提供される。
【0264】
第10の態様の実施形態では、使用は、乳癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するためのものである。例えば、予後は、転移を有する確率であってもよい。転移との関係については、さらに上記で考察している。さらに、
【0265】
本開示物の第10の態様の構成として、内分泌処置予測因子として第9の態様に従う親和性リガンドの使用が提供される。
【0266】
従って、実施形態では、乳癌、例えば、ER陽性乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置、例えば、タモキシフェン処置の結果の予測を確立するための使用が提供される。
【0267】
また、乳癌の予後のための予後因子または内分泌処置予測因子の製造における第9の態様に従う親和性リガンドの使用が提供される。
【0268】
本開示物の観点から、内分泌処置、特に、タモキシフェン処置は、主に、ホルモン受容体陽性かつANLNタンパク質陰性である被験体に利益をもたらすようである。従来、すべてのER陽性被験体は、タモキシフェンなどの内分泌処置を受けてきた。しかし、図14〜16において、そのような処置は、特に、ホルモン受容体陽性(例えば、ER陽性)およびANLNタンパク質陰性被験体に有益である一方、処置は、ホルモン受容体陽性かつANLNタンパク質陰性被験体の生存率を制限するか、または影響を及ぼさないことが示される。結果的に、新たなサブグループの被験体が提供される。
【0269】
それ故、本開示物の第11の態様として、乳癌を有するヒトなどの哺乳動物被験体の処置に使用するための内分泌処置製品が提供され、ここで、被験体は、ホルモン受容体陽性かつANLNタンパク質陰性である。
【0270】
その関連する態様として、乳癌を有するヒトなどの哺乳動物被験体の処置のための医薬品の製造における内分泌処置製品の使用が提供され、ここで、被験体は、ホルモン受容体陽性かつANLNタンパク質陰性である。
【0271】
「ホルモン受容体陽性」である被験体は、ERまたはPR、好ましくは、ERなどのホルモン受容体に対して陽性であることが見出されている被験体由来の乳癌を指す。当業者は、乳癌が、ホルモン受容体に対して陽性であるかどうかを決定するための仕方を知っている。例えば、ERまたはPR状態を決定するための市販のキットを、決定のために使用することができる。市販のキットは、例えば、ER/PRpharmDX(DakoCytomation)であってもよく、そして当業者は、製造者の指示に従って、キットを使用することができる。
【0272】
さらに、ERまたはPR診断を確立するために、当業者は、非特許文献87に転向してもよい。Allredは、全スコア(Allredスコア)を提示しており、そしてERおよびPRの両方について、2より高いAllredスコアは陽性とみなされ、そして2以下のAllredスコアは陰性とみなされる。
【0273】
あるいは、サンプルをホルモン受容体陽性または陰性、例えば、ER+またはER−であると分類する場合、当業者は、当該技術分野内において認識される限界値である10%陽性細胞をカットオフとして使用してもよい。
【0274】
内分泌処置製品の態様の実施形態では、ホルモン受容体陽性の乳癌は、ER+またはPR+の乳癌、例えば、ER+の乳癌、PR+の乳癌、もしくはER+かつPR+の乳癌であってもよい。
【0275】
「ANLNタンパク質陰性」である被験体は、被験体の腫瘍がANLNに対して陰性であることが見出されていることを指す。例えば、被験体から誘導される任意のANLNタンパク質パラメータが、被験体が内分泌処置から利益を得る可能性があることを示す場合、被験体は、「ANLNタンパク質陰性」であるとみなしてよい。さらに、被験体由来の関連する生物学的サンプルが、関連する対照値以下のサンプル値に対応するANLNタンパク質の量を含有することが見出されている場合、被験体は、ANLNタンパク質陰性とみなしてよい。関連するサンプルおよび対照値については、方法態様に関連して上記で考察している。非制限的例として、被験体由来の関連サンプル、例えば、原発性または続発性腫瘍サンプルが、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、例えば、1%以下、例えば、<1%.の核画分に対応する量のANLNタンパク質を含んでなる場合、乳癌被験体は、ANLNタンパク質陰性とみなしてよい。
【0276】
上記の定義から、「被験体はANLNタンパク質陰性である」および「被験体の癌はANLNタンパク質陰性である」という表現は、交換可能に使用してもよいと言える。
【0277】
内分泌処置製品の態様の実施形態では、内分泌処置製品は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、アロマターゼ、およびステロイド性エストロゲン受容体アンタゴニストから選択することができる。SERMは、例えば、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、アルゾキシフェンまたはタモキシフェンによる処置であってもよい。アロマターゼ阻害剤は、例えば、アナストロゾール、レトロゾールまたは(och)エキセメスタンであってもよい。さらに、ステロイド性エストロゲン受容体アンタゴニストは、フルベストラントであってもよい。好ましくは、内分泌処置製品は、SERM、例えば、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、アルゾキシフェンまたはタモキシフェンから選択されるSERMであってもよい。例えば、内分泌処置製品の態様の実施形態では、内分泌処置はタモキシフェンであってもよい。
【0278】
内分泌処置に関与する上記のすべての態様のすべての実施形態では、内分泌処置は、例えば、ER陽性および/またはPR陽性などのホルモン受容体陽性の乳癌を有する哺乳動物被験体のタモキシフェン処置などのSERM治療であってもよい。
【0279】
本開示物に関して、例えば、親和性リガンドとその標的もしくは抗原との「特異的」または「選択的」相互作用は、特異的相互作用と非特異的相互作用との間、または選択的相互作用と非選択的相互作用との間の区別に意義が生じるような相互作用を意味する。2つのタンパク質間の相互作用は、時々、解離定数によって測定される。解離定数は、2つの分子間の結合の強さ(または親和性)を説明する。典型的に、抗体とその抗原との間の解離定数は、10−7〜10−11Mである。しかし、高い特異性には、必ずしも高い親和性が必要であるわけではない。対応物に対する(モル範囲で)低い親和性を有する分子は、かなり高い親和性を有する分子と同じ程度に特異的であることが示されている。本開示物の場合、特異的または選択的相互作用は、特定の方法を使用して、天然に存在するかまたは処理された生物学的液体の組織サンプルもしくは液体サンプルにおいて他のタンパク質が存在する所与の条件下で、特異的タンパク質、標的タンパク質またはそのフラグメントの存在ならびに/あるいは量を決定することができる程度を指す。言い換えれば、特異性または選択性は、関連するタンパク質を区別する能力である。特異的および選択的は、時々、本明細書において交換可能に使用される。例えば、抗体の特異性または選択性は、以下の実施例、セクション2におけるように決定され得、ここで、分析は、タンパク質アレイ設定およびウエスタンブロットを使用して、実施された。特異性および選択性の決定はまた、非特許文献88にも記載されている。
【0280】
本開示物に関して、「単一特異的抗体」は、それ自体の抗原に対してアフィニティー精製されているポリクローナル抗体の集団の1つであり、それによって、他の抗血清タンパク質および非特異的抗体からそのような単一特異的抗体を分離している。このアフィニティー精製は、その抗原に選択的に結合する抗体を生じる。本発明の場合、ポリクローナル抗血清は、標的タンパク質に選択的な単一特異的抗体を得るための2工程の免疫アフィニティーに基づくプロトコルによって、精製される。捕捉因子として固定化されたタグタンパク質を使用する1次枯渇工程において、抗原フラグメントの包括的親和性タグに対する抗体を取り出す。第1の枯渇工程後、抗原に特異的な抗体を富化するために、捕捉因子として抗原を伴う第2のアフィニティーカラム上で、血清を単離する(また、非特許文献88も参照のこと)。
【実施例】
【0281】
ANLNタンパク質に対する単一特異的抗体の作製ならびに正常および癌サンプルにおいてANLNタンパク質を検出するためのそれらの使用
1.抗原の作製
a)材料および方法
テンプレートとしてヒトゲノム配列を有するバイオインフォマティクスツールを使用して、EnsEMBL Gene ID ENSG00000011426によってコードされる標的タンパク質の適切なフラグメントを選択した(非特許文献89)。ANLNタンパク質(配列番号2;EnsEMBL登録番号ENSP00000265748)のアミノ酸333〜468(配列番号1)に対応する136アミノ酸長フラグメントの産生のためのテンプレートとして、フラグメントを使用した。タンパク質フラグメントを、他のヒトタンパク質と低い配列類似性を有する独特な配列からなり、作製されるアフィニティー試薬の所望されない交差反応性を最小限にし、そしてなおコンフォメーショナルエピトープの形成を可能にし、そして細菌系における効率的な発現を可能にするのに適切なサイズであるように設計した。
【0282】
EnsEMBL登録番号ENST00000265748(配列番号3)のヌクレオチド1201〜1608を含有するANLN遺伝子転写物のフラグメントを、Platinum(登録商標)Taq(Invitrogen)を有するSuperscriptTMOne−Step RT−PCR増幅キットおよびテンプレートとしてのヒト全RNAプールパネル(Human Total RNA Panel IV,BD Biosciences Clontech)によって単離した。フランキング制限部位NotIおよびAscIを、PCR増幅プライマーを介してフラグメントに導入して、発現ベクターへのインフレームクローニングを可能にした(順方向プライマー:ATTGTGAAGTCAACTTTATCCC(配列番号4)、逆方向プライマー:GTGAGTTTCCTGTTTGGTTTC(配列番号5))。得られるビオチン化PCR産物を、DynabeadsM280ストレプトアビジン(Dynal Biotech)(非特許文献90)に固定化し、そしてNotI−AscI消化によって、固相支持体上でのNotI−AscI消化(New England Biolabs)に供し、固定化金属イオンクロマトグラフィー(IMAC)精製のためのヘキサヒスチジルタグおよび連鎖球菌プロテインG由来の免疫増強アルブミン結合タンパク質(ABP)からなるN−末端二重親和性タグ(非特許文献91;非特許文献92)を伴うフレーム内のpAff8cベクター(非特許文献90)にライゲートし、そして大腸菌(E.coli)BL21(DE3)細胞(Novagen)に形質転換した。クローンの配列を、製造者の推奨に従って、TempliPhiDNA配列決定増幅キット(GE Healthcare,Uppsala,Sweden)を使用して増幅したプラスミドDNAのダイターミネーターサイクルシーケンスによって、確認した。
【0283】
発現ベクターを所有するBL21(DE3)細胞を、同じ培養培地の1mlの1晩培養物の添加によって、5g/l酵母抽出物(Merck KGaA)および50mg/lカナマイシン(Sigma−Aldrich)を補充した100mlの30g/lトリプティックソイブロス(Merck KGaA)に播種した。細胞培養物を、1リットル振盪フラスコ中37℃および150rpmで、600nmでの光学密度が0.5〜1.5に到達するまでインキュベートした。次いで、1mMの最終濃度へのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(Apollo Scientific)の添加によって、タンパク質発現を誘導し、そしてインキュベーションを、1晩、25℃および150rpmで継続した。2400gでの遠心分離によって、細胞を回収し、そしてペレットを、5ml溶解緩衝液(7M塩酸グアニジン、47mMのNa2HPO4、2.65mMのNaH2PO4、10mMのTris−HCl、100mMのNaCl、20mMのβ−メルカプトエタノール;pH=8.0)に再懸濁し、そして2時間、37℃および150rpmでインキュベートした。35300gでの遠心分離後、変性および可溶化したタンパク質を含有する上清を回収した。
【0284】
His6−タグ化融合タンパク質を、ASPEC XL4TM(Gilson)上の自動化タンパク質精製手順(非特許文献93)を使用する1mlのTalon(登録商標)金属(Co2+)アフィニティー樹脂(BD Biosciences Clontech)を伴うカラム上での固定化金属イオン親和性クロマトグラフィー(IMAC)によって、精製した。樹脂を、20mlの変性洗浄緩衝液(6M塩酸グアニジン、46.6mMのNa2HPO4、3.4mMのNaH2PO4、300mMのNaCl、pH8.0〜8.2)で平衡化した。次いで、澄明にした細胞溶解物を、カラムに添加した。その後、2.5ml溶出緩衝液(6M尿素、50mMのNaH2PO4、100mMのNaCl、30mM酢酸、70mM酢酸Na、pH5.0)への溶出前に、樹脂を、最低でも31.5mlの洗浄緩衝液で洗浄した。溶出した材料を、3つのプール500、700および1300μlに分画した。抗原を含有する700μl画分、ならびにプールした500および1300μl画分を、さらなる使用のために貯蔵した。
【0285】
抗原画分を、リン酸緩衝食塩水(PBS;1.9mMのNaH2PO4、8.1mMのNa2HPO4、154mMのNaCl)で1M尿素の最終濃度に希釈し、続いて、7500Daでの分子量カットオフを伴うVivapore10/20ml濃縮装置(Vivascience AG)を使用して、タンパク質濃度を増加するための濃縮工程を行った。製造者の推奨に従って、ウシ血清アルブミン標準を伴うビシンコニン酸(BCA)マイクロアッセイプロトコル(Pierce)を使用して、タンパク質濃度を決定した。タンパク質の品質を、Protein50もしくは200アッセイ(Agilent Technologies)を使用するBioanalyzer装置上で分析した。
【0286】
b)結果
ANLN遺伝子の長い転写物(配列番号3)のヌクレオチド1201〜1608に対応し、そして標的タンパク質ANLN(配列番号2)のアミノ酸333〜468からなるペプチド(配列番号1)をコードする遺伝子フラグメントを、タンパク質フラグメントに特異的なプライマーを使用するヒトRNAプールからのRT−PCRによって、首尾よく単離した。標的タンパク質(配列番号2)の136アミノ酸フラグメント(配列番号1)は、成熟タンパク質において切断除去されるため、膜貫通領域を含まず、大腸菌(E.coli)における効率的な発現を確実にし、そしていずれのシグナルペプチドも含まないように設計した。加えて、タンパク質フラグメントを、他のヒトタンパク質と低い相同性を有する独特な配列からなり、作製されるアフィニティー試薬の交差反応性を最小限にし、そしてコンフォメーショナルエピトープの形成を可能にし、そしてなお細菌系における効率的なクローニングおよび発現を可能にするのに適切なサイズであるように設計した。
【0287】
正確なアミノ酸配列をコードするクローンを同定し、そして大腸菌(E.coli)での発現時、正確なサイズの単一のタンパク質を産生させ、続いて、固定化金属イオンクロマトグラフィーを使用して、精製した。溶出したサンプルを1M尿素の最終濃度に希釈し、そしてサンプルを1mlに濃縮した後、タンパク質フラグメントの濃度を、5.1mg/mlに決定し、そして純度分析に従って、100%純度を得た。
【0288】
2.抗体の作製
a)材料および方法
上記で得られた精製したANLNタンパク質フラグメントを抗原として使用して、国のガイドライン(Swedish許可番号A84−02)に従って、ウサギを免疫した。ウサギの筋肉内に、1次免疫化としてフロイント完全アジュバント中200μgの抗原を免疫し、そして4週間間隔で、フロイント不完全アジュバント中100μg抗原で3回ブーストした。
【0289】
免疫動物由来の抗血清を、3工程の免疫アフィニティーに基づくプロトコル(非特許文献94;非特許文献88)によって精製した。第1の工程では、7mlの全抗血清を、10×PBSで緩衝化して、1×PBS(1.9mMのNaH2PO4、8.1mMのNa2HPO4、154mMのNaCl)の最終濃度とし、0.45μmポアサイズフィルター(Acrodisc(登録商標)、Life Science)を使用してろ過し、そしてpAff8cベクターから発現され、そして抗原タンパク質フラグメントについて上記と同じ方法で精製した二重親和性タグタンパク質His6−ABP(ヘキサヒスチジルタグおよびアルブミン結合タンパク質タグ)に結合させた5mlのN−ヒドロキシスクシンイミド−活性化SepharoseTM4Fast Flow(GE Healthcare)を含有するアフィニティーカラムに適用した。第2の工程では、二重親和性タグHis6−ABPに対する抗体を枯渇させたフロースルーを、免疫化のために抗原として使用したANLNタンパク質フラグメント(配列番号1)に結合させた1mlのHi−Trap NHS−活性化HPカラム(GE Healthcare)上、0.5ml/minの流速で充填させた。His6−ABPタンパク質およびタンパク質フラグメント抗原を、製造者によって推奨されるように、NHS活性化マトリックスに結合させた。非結合材料を、1×PBST(1×PBS、0.1%Tween20、pH7.25)で洗浄除去し、そして捕捉された抗体を、低pHグリシン緩衝液(0.2Mグリシン、1mMのEGTA、pH2.5)を使用して、溶出させた。溶出した抗体画分を自動的に回収し、そして第3の工程における効率的な緩衝液交換のために直列に接続した2つの5mlのHiTrapTM脱塩カラム(GE Healthcare)上に充填した。第2および第3の精製工程を、AEKTAxpressTMプラットホーム(GE Healthcare)上で稼動させた。抗原選択的(単一特異的)抗体(msAb)を、−20℃での長期間貯蔵のために、それぞれ、40%および0.02%の最終濃度でグリセロールおよびNaN3を補充したPBS緩衝液で溶出させた(非特許文献88)。
【0290】
アフィニティー精製した抗体画分の特異性および選択性を、抗原自体および他のタンパク質アレイ設定(非特許文献88)における他の383ヒトタンパク質フラグメントに対する結合分析によって、分析した。タンパク質フラグメントを、0.1M尿素および1×PBS(pH7.4)中40μg/mlに希釈し、そしてそれぞれの50μlを、96ウェルスポッティングプレートのウェルに移した。ピン・アンド・リング(pin−and−ring)のアレイヤー(Affymetrix427)を使用して、タンパク質フラグメントを2回測定でスポットし、そしてエポキシスライド(SuperEpoxy,TeleChem)上に固定化した。スライドを1×PBSで洗浄(5分間)し、次いで、表面を30分間ブロックした(SuperBlock(登録商標)、Pierce)。接着性の16ウェルシリコーンマスク(Schleicher&Schuell)を、単一特異的抗体を添加する(1×PBST中で1:2000に希釈して約50ng/mlにした)前にガラス適用し、そして振盪器上で60分間インキュベートした。各スポットのタンパク質の量を定量するため、親和性タグ特異的IgY抗体を単一特異的抗体と共にインキュベートした。スライドを1×PBSTおよび1×PBSでそれぞれ2回、10分間、洗浄した。第二抗体(Alexa647とコンジュゲートされたヤギ抗ウサギ抗体およびAlexa555とコンジュゲートされたヤギ抗ニワトリ抗体、Molecular Probes)を1×PBST中で1:60000に希釈して30ng/mlとし、そして60分間インキュベートした。第1のインキュベーションについて同じ洗浄手順を行った後、スライドをスピンして乾燥し、そして走査し(G2565BAアレイスキャナー、Agilent)、その後、画像を、画像分析ソフトウェア(GenePix5.1,Axon Instruments)を使用して、定量した。
【0291】
加えて、アフィニティー精製された抗体の特異性および選択性を、ウエスタンブロットによって分析した。ウエスタンブロットを、還元条件下でのプレキャスト10〜20%SDS−PAGE勾配ゲル(Bio−Rad Laboratories)上での選択されたヒト細胞系統由来の全タンパク質抽出物の分離、それに続く、製造者の推奨に従うPVDF膜(Bio−Rad Laboratories)へのエレクトロトランスファーによって、実施した。膜を、1時間、室温でブロック(5%粉乳、1×TBST;0.1MのTris−HCl、0.5MのNaCl、0.1%Tween20)し、第一のアフィニティー精製された抗体(ブロッキング緩衝液中で1:500希釈された)と共にインキュベートし、そしてTBST中で洗浄した。第二のHRPコンジュゲートされた抗体(ブタ抗ウサギ免疫グロブリン/HRP、DakoCytomation)を、1:3000でブロッキング緩衝液に希釈し、そして製造者のプロトコルに従い、ChemidocTMCCDカメラ(Bio−Rad Laboratories)およびSuperSignal(登録商標) West Dura Extended Duration substrate(Pierce)を使用して、化学発光検出を行った。
【0292】
b)結果
ポリクローナル抗体製剤の品質は、抗体精製におけるストリンジェンシーの程度に依存することが証明され、そして標的タンパク質に由来するものではないエピトープに対する抗体の枯渇が、他のタンパク質との交差反応性およびバックグランド結合を回避するのに必要であることがすでに証明されている(非特許文献94)。それ故、タンパク質マイクロアレイ分析を実施して、特異性が高い単一特異的ポリクローナル抗体が、His6−タグに対する抗体ならびにABP−タグに対する抗体の枯渇によって作製されたことを確実にした。
【0293】
タンパク質アレイの各スポットにおけるタンパク質の量を定量するため、第1抗体と第二抗体との組み合わせで、2色の染料標識システムを使用した。ニワトリにおいて作製されたタグ特異的IgY抗体を、Alexa555蛍光染料で標識した第二ヤギ抗ニワトリ抗体で検出した。ウサギmsAbとアレイ上のその抗原との特異的結合を、蛍光的にAlexa647標識ヤギ抗ウサギ抗体で検出した。タンパク質アレイ分析は、ANLNタンパク質に対するアフィニティー精製された単一特異的抗体が、正確なタンパク質フラグメントに対して高選択的であり、そしてアレイ上で分析した他のすべてのタンパク質フラグメントに対するバックグランドが極めて低いことを示した。
【0294】
ウエスタンブロット分析の結果は、抗体が、神経幹細胞系統RT−4およびヒト神経膠芽腫U−251MG細胞系統において約124kDaの単一の結合を特異的に検出することを示す。しかし、ヒト血漿、肝臓および扁桃抽出物は、ANLNタンパク質を発現しなかった。ANLNタンパク質の理論的な分子量は、124kDa(配列番号2のANLNタンパク質アミノ酸配列から計算される)であり、得られた結果に良好に対応する。
【0295】
3.免疫組織化学による組織プロファイリング
a)材料および方法
ヒト組織を含有する全部で576のパラフィンコアを、実施例、セクション2で得た単一特異的抗体サンプルを使用して分析した。組織マイクロアレイ(TMA)の生成のためのドナーブロックとして使用する全組織を、地方倫理委員会(local ethical committee)からの認可に従う、Department of Pathology,University Hospital,Uppsalaのアーカイブから選択した。TMA分析に使用するすべての組織切片を調べて、診断を決定し、そしてドナーブロックの代表的領域を選択した。正常組織を、顕微鏡的に正常(非腫瘍性)と定義し、外科的に摘出された腫瘍周辺から回収した標本から選択することが最も多かった。癌組織を診断および分類のために精査した。診断目的で、全組織をホルマリン固定し、パラフィン包埋し、そして切片化した。
【0296】
TMAの生成を、本質的に、先に記載のように実施した(非特許文献95;非特許文献96)。簡単に説明すると、レシピエントのTMAブロック内に孔を作製し、そしてドナーブロックから円筒状のコア組織サンプルを取得し、レシピエントのTMAブロック内に配置した。これをBeecher Instrument製の自動化組織アレイヤー(ATA−27,Beecher Instruments,Sun Prairie,CA,USA)内で完全なTMAのデザインが生成されるまで反復した。TMAのレシピエントブロックを、切片化の2時間前に42℃でベーキングした。
【0297】
TMAの:sの設計では、広範囲の代表的な正常組織由来のサンプルを得て、代表的な癌組織を含めることに重点を置いた。このことは、非特許文献97において既に詳述されている。簡単に述べると、48の正常組織由来のサンプルおよび20のヒトに作用する最も一般的な癌タイプ由来のサンプルを選択した。合計で、TMAブロックの8つの異なるデザイン(各々が1mmの直径を有する72の組織コアを含有する)を生成した。TMA:sのうちの2つは正常組織を表し、異なる個体由来の3回測定の48の異なる正常組織に対応するものであった。残りの6つのTMA:sは20の異なる癌タイプ由来の癌組織を表すものであった。癌タイプの20のうちの17については、12の個別に異なる腫瘍を採取し、そして残りの3つの癌タイプについては4つの個別に異なる腫瘍を採取した(すべてを同じ腫瘍から2回測定で)。IHC分析のため、TMAブロックをウォーターフォール・ミクロトーム(waterfall microtome)(Leica)を用いて4μmの厚みで切片化し、SuperFrost(登録商標)(Roche Applied Science)のガラススライド上に置いた。
【0298】
自動化されたIHCを、既に記載のとおりに実施した(非特許文献97)。簡単に述べると、ガラススライドを、60℃で45分間インキュベートし、キシレン中で脱パラフィン処理し(2×15分間)、等級化されたアルコールに水和した。抗原賦活化のために、スライドをTRS(Target Retrieval Solution,pH6.0,DakoCytomation)中に浸漬し、そしてDecloakingチャンバ(登録商標)(Biocare Medical)内、125℃で4分間沸騰させた。スライドを、Autostainer(登録商標)(DakoCytomation)内に置き、そして内因性ペルオキシダーゼを、最初に、H2O2(DakoCytomation)でブロックした。スライドを、実施例、セクション2で得た第一抗体と共に30分間、室温でインキュベートし、続いて、30分間、室温で、ヤギ抗ウサギペルオキシダーゼコンジュゲートEnvision(登録商標)と共にインキュベーションした。すべての工程の間、スライドを、洗浄緩衝液(DakoCytomation)中で濯いだ。最後に、ジアミノベンジジン(DakoCytomation)を色素原として使用し、そしてHarrisヘマトキシリン(Sigma−Aldrich)を対比染色に使用した。スライドを、Pertex(登録商標)(Histolab)でマウントした。
【0299】
8つの異なるTMA:s由来のすべての免疫組織化学的に染色した切片を、ScanScopeT2自動化スライド走査システム(Aperio Technologies)を使用して、走査した。8つのTMA:sのすべての内容物を表すために、576のデジタル画像を作成した。走査を20倍の倍率で実施した。元のデータを保存するため、デジタル画像を個別のタグ画像ファイル形式(TIFF)ファイルとして分離および抽出した。ウェブベースのアノテーションシステム内での画像処理を可能にするため、個々の画像をTIFF形式からJPEG形式に圧縮した。免疫組織化学的に染色した組織の全画像を、顕微鏡下で手動で評価し、そして認定された病理専門医または専門教育を受けた人員(その後、病理学者が検証した)によりアノテートした。
【0300】
異なる各正常組織および癌組織のアノテーションを、IHC結果の分類のための簡素化されたスキームを使用して、実施した。各組織における代表性(representativity)および免疫反応性について検査した。各正常組織タイプ内に含まれる異なる組織特異的な細胞タイプを、アノテートした。各癌においては、腫瘍細胞および間質をアノテートした。基本的なアノテーションパラメータは、i)細胞内局在化(核および/または細胞質/膜)、ii)染色強度(SI)およびiii)染色細胞の画分(FSC)の評価を含んだ。染色強度は、臨床組織病理学的診断で使用される基準に従って、主観的に評価し、そして結果を次のように分類する:不在=免疫反応性なし、弱い=僅かな免疫反応性、中等度=中等度の免疫反応性、または強い=明瞭かつ強い免疫反応性。染色細胞の画分を評価し、そして関連する細胞集団の≦1%、2〜25%、26〜75%または>75%の免疫反応性細胞として分類した。免疫反応性細胞の強度および画分の両方に基づき、各組織サンプルついて、「染色スコア」を次のとおりに与えた:0=陰性、1=弱い、2=中等度、および3=強い。N.R.は、代表的な組織が存在しなかったことを意味する。詳細には、次の基準に従って、染色スコアを与えた:SI=不在または弱いかつFSC≦25%である場合、0とした;SI=弱いかつFSC>25%である場合またはSI=中等度かつFSC≦25%である場合、1とした;SI=中等度かつFSC>25%である場合またはSI=強いかつFSC≦25%である場合、2とした、および最後に、SI=強いかつFSC>25%である場合、3とした(表1を参照のこと)。当業者は、この手順がAllredスコアの計算に類似することを理解すべきである(例えば、非特許文献32を参照のこと)。
【0301】
【表1】
【0302】
b)結果
実施例、セクション2において得られたヒト標的タンパク質HMGCRの組み換えタンパク質フラグメントに対して作製された単一特異的抗体による組織プロファイリングの結果は、いくらかの正常組織において特定の免疫反応性を示した。表2は、正常ヒト組織におけるANLNタンパク質発現パターンを示す。IHCおよびTMA技術を使用して、48の異なるタイプの正常組織を表す144のスポット(直径1mm)を、ANLNタンパク質の発現についてスクリーニングした。免疫反応性が、分析した組織サンプルの大多数において観察された。強力な発現が核において検出されたが、ほとんどのサンプルは、さらなるより弱い細胞質および/または膜染色を示した。3の染色スコアが、いくらかの組織において見出された。若干の症例では、代表的な組織が観察されなかった(N.R.)。
【0303】
【表2】
【0304】
【表3】
【0305】
【表4】
【0306】
ANLNタンパク質発現を、様々な癌タイプ由来の組織サンプルにおいてさらに評価した。表3は、12の異なる乳癌組織サンプルにおけるANLNタンパク質発現のレベルを示す。これらのサンプルのうちの11が代表的な組織を示し、そしてこれらのうちすべてが、陽性、即ち、0より高い染色スコアを示した。ANLNタンパク質発現が、核および細胞質の両方において観察され、核において最も強力な発現が認められた。
【0307】
【表5】
【0308】
4.連続コホートTMA(コホートI)
a)材料および方法
1988年〜1992年の間に原発性乳癌と診断された498例の患者由来のアーカイブホルマリン固定パラフィン包埋組織を、Department of Pathology,Malmoe University Hospital,Swedenから回収した。患者の中央年齢は、65(27〜96の範囲)歳であり、そして追跡期間中央値は、128箇月(0〜207)であった。死亡の日付に関する情報は、すべての患者について地域死因登録から入手した。倫理的許可は、Lund Universityの地方倫理委員会(Local Ethics Committees)から得た。
【0309】
すべての498例の乳癌を、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色したスライド上で、組織病理学的に再評価した。TMA:sを、手動のアレイデバイス(ATA−27,Beecher Inc.,Sun Prairie,Wl,USA)を使用して、浸潤性癌の代表的領域から1症例あたり2×1.0mmのコアを採取することによって、構築した。TMA:sを調製し、そして自動化IHCを、上記のセクション2において記載のように調製したANLNタンパク質抗体を使用して、上記のセクション3に記載のように実施した。ERのIHC染色については、予め実施しておいた。現在の臨床的実践に沿って、10%陽性の核におけるカットオフを使用して、ホルモン受容体の陽性を定義した。
【0310】
統計分析のために、上記の実施例、セクション3の記載に沿って、核画分(nf)レベルを評価した。核画分を、臨床病理学的診断における基準に従って、主観的に評価し、そして結果を、≦1%、2〜25%、26〜75%または>75%として分類した。異なるすべての層に対する生存率の傾向に基づいて、さらなる統計分析のために、二分類の変数を構築した。この目的のために、2〜25%のグループを、2つのグループ、即ち、2〜10%および>10〜25%に分けた。続いて、「高い」または「低い」を示すグループを、ANLNタンパク質発現に基づいて確立した。第1の分析では、「高い」グループは、>1%の核画分(nf)を示し、そして「低い」グループは、≦1%の核画分を示した。第2の分析では、「高い」グループは、>10%の核画分(nf)を示し、そして「低い」グループは、≦10%の核画分を示した。第3の分析では、「高い」グループは、>25%の核画分(nf)を示し、そして「低い」グループは、≦25%の核画分を示した。サンプルのこの分類を、Kaplan−Meier推定量に従って、OS、RFSおよびBCSS分析に使用し、そしてログランク検定を使用して、異なる層における生存率を比較した。すべての統計的検定は、両側検定であり、そして<0.05のp値を有意とみなした。すべての計算は、統計パッケージSPSS 12.0(SPSS Inc.Illinois,USA)により行った。
【0311】
b)結果
ANLNタンパク質発現の免疫組織化学分析は、498腫瘍サンプルのうち467において実施することができ、そしてこれらのうち400が、ER陽性として同定された。残りのコアは、浸潤性癌を含有しないか、または組織処理中に失われたかのいずれかであった。ANLNタンパク質の高対低の最適カットオフ値を定義するための初期生存分析を行った(図1)。この分析は、有意差が、1%(P=0.000)、10%(p=0.001)ならびに25%(p=0.015)において得られたことを示した。最も有意な結果が得られたため、さらなる統計分析のために、1%のカットオフ値を選択した。図2、3および4は、1%のカットオフレベルを使用して、高いおよび低いANLNタンパク質レベルに基づく生存分析を示す。図2aは、すべての被験体のRFSが、ANLNタンパク質高患者よりもANLNタンパク質低患者について有意に良好であることを示す。図2bでは、ER陽性被験体を2aと同じ方法で分析したが、これもまた、ANLNタンパク質低患者で有意に良好な生存率が観察された。BCSSおよびOSもまた、類似の有意な結果を示したが、これは、図3および4において認められ得る。
【0312】
総合すると、これは、ある範囲のカットオフ値、特に、25%以下の核画分カットオフ値を超えるANLNタンパク質発現の予後関連性を示す。さらに、図は、異なる生存率測定を使用する分析により、予後関連性の結果を生じることを示す。RFSは特に有望であるようである。
【0313】
ANLNタンパク質レベルが、転移活性と相関することを見出した。図5は、高いANLNタンパク質レベルを有する被験体において、低いANLNタンパク質レベルを有する被験体と比較して、より高い頻度の転移が認められることを示す。これは、高いANLNタンパク質発現であれば、転移を有する確率が高いことを示す。
【0314】
さらに、タモキシフェンで処置したANLNタンパク質低被験体の無再発生存率の確率は、ANLNタンパク質高患者より有意に良好であることが見出され(図6、p=0.018)、タモキシフェンで処置した乳癌患者のANLNタンパク質発現の予後関連性を示す。さらに、これは、ANLNタンパク質の処置予測の役割を示唆する。
【0315】
5.無作為化閉経期前のコホートTMA(コホートII)
a)材料および方法
免疫組織化学分析を、ステージII(pT2 NO MO、pT1 N1 MOまたはpT2 N1 MO)原発性乳癌腫の無作為化比較タモキシフェン治験に登録された564例の閉経前の患者由来の500の腫瘍を示すTMAに対して実施した。患者は、ホルモン受容体の状態にかかわらず、1986年〜1991年の間の治験に含まれ、そして276例の患者が、2年間のアジュバントタモキシフェンに割り当てられ、そして288例がコントロールに割り当てられた。診断時の年齢の中央値は、45(25〜57)歳であった。追跡中央値は13.9年であり、そして2%未満の患者がアジュバント化学療法を受けた。研究デザインについては、他で詳述されている(非特許文献98)。倫理的許可は、Local Ethics Committees at Lund and Linkoping Universitiesの地方倫理委員会(Local Ethics Committees)から得た。
【0316】
すべての症例を、ヘマトキシリンおよびエオシン染色スライドについて、組織病理学的に再評価した。TMA:sを、自動化アレイデバイス(ATA−27,Beecher Inc.,Sun Prairie,Wl,USA)を使用して、浸潤性癌の代表的領域から1症例あたり2×0.6mmのコアを採取することによって、構築した。TMA:sを調製し、そして自動化IHCを、上記のセクション2において記載のように調製したANLNタンパク質抗体を使用して、上記のセクション3に記載のように実施した。ERのIHC染色については、予め実施しておいた。現在の臨床的実践に沿って、10%陽性の核におけるカットオフを使用して、ホルモン受容体の陽性を定義した。
【0317】
統計分析では、カテゴリーは、核画分(nf)に基づいた。nfを、上記の実施例、セクション4におけるように評価した。上記の実施例、セクション3の「染色細胞の画分」に関して、nfを、≦1%、2〜25%、26〜75%または>75%に分類した。この目的のために、2〜25%のグループを、2つのグループ、即ち、2〜10%および>10〜25%に分けた。異なるすべての層に対する生存率の傾向に基づいて、さらなる統計分析のために、二分類の変数を構築した。この目的のために、2〜25%のグループを、2つのグループ、即ち、2〜10%および>10〜25%に分けた。続いて、「高い」または「低い」を示すグループを、ANLNタンパク質発現に基づいて確立した。第1の分析では、「高い」グループは、>1%の核画分(nf)を示し、そして「低い」グループは、≦1%の核画分を示した。第2の分析では、「高い」グループは、>10%の核画分(nf)を示し、そして「低い」グループは、≦10%の核画分を示した。第3の分析では、「高い」グループは、26%の核画分(nf)を示し、そして「低い」グループは、≦25%の核画分を示した。サンプルのこの分類を、Kaplan−Meier推定量に従って、OS、RFSおよびBCSS分析に使用し、そしてログランク検定を使用して、異なる層における生存率を比較した。すべての統計的検定は、両側検定であり、そして<0.05%のp値を有意とみなした。すべての計算は、統計パッケージSPSS16.0(SPSS Inc.Illinois,USA)により行った。
【0318】
b)結果
ANLNタンパク質発現の免疫組織化学分析を、500の腫瘍サンプルのうち357に対して実施することができた。残りのコアは、浸潤性癌を含有しないか、または組織処理中に失われたかのいずれかであった。ANLNタンパク質の高対低の最適カットオフ値を定義するための初期生存分析を行った(図7)。この分析は、10%のカットオフ値において有意差が観察された(p=0.001)ことを示した。1%および25%におけるカットオフ値は、類似の傾向を示した。
【0319】
この無作為化コホート由来のより臨床的に興味深いグループの分析は、タモキシフェン処置および非処置患者を個別のグループに分けることによって、容易に得られる。図8は、タモキシフェンで処置したANLNタンパク質低患者のRFSが、そのようなANLNタンパク質高被験体より有意に良好であることを示す。1%および10%の両方におけるカットオフ値は有意なp値を生じたが、25%におけるカットオフ値は、傾向を示したのみであった。図9および10に示すように、BCSSおよびOSを分析した場合、同様の結果が得られた。さらに、10%におけるカットオフ値は有意であったが、1%において傾向が観察された。
【0320】
パラメータが変更され、そしてRFS分析がANLNタンパク質レベルに基づいた場合、結果は、高いANLNタンパク質レベルを有する被験体におけるタモキシフェン処置は、結果に対してポジティブな影響を及ぼさないことを示した(図11)。BCSSおよびOS分析についてもまた、同様の結果が観察された(図12および13)。なおより興味深いことに、高いANLNタンパク質レベルを有するER陽性患者、日常的に、タモキシフェンが処方されている患者のグループでも同様の結果が観察された(図14b、15bおよび16b)。さらに、浸潤性乳管癌、主な浸潤性乳癌の1つを有するER陽性患者のグループの生存分析(RFS、BCSSおよびOS)も同様の結果を示す(図17a〜c)。他方のER陽性ANLNタンパク質低患者は、タモキシフェン処置から少なくとも僅かに利益を得ると思われる(図14a、15aおよび16a)。結果的に、高いレベルのANLNタンパク質を有する患者には、アジュバントタモキシフェン処置を推奨すべきではないこと、およびこのグループの患者には、別の処置ストラテジーを考慮すべきであることが、結論付けられ得る。ANLNタンパク質高患者は、ANLNタンパク質低被験体と比べて、全体的に低い生存確率を有する。ER陽性患者は、一般的に、比較的良好な予後およびむしろ明白な処置ストラテジーを有するグループと考えられるため、これは重要な情報である。特に、ER陽性かつANLNタンパク質高患者では、このストラテジーを認識する必要があり得る。
【0321】
さらに、図18では、ER陽性サブグループに関する所見もまた、PR陽性被験体のサブグループに当てはまることが示されている。
【0322】
乳管癌と診断された患者は、コホートIIにおけるサンプルの大部分、即ち、84%を構成する。乳管癌の腫瘍サンプルの無再発生存率分析は、ANLNが、このサブグループの患者の生存率に影響を及ぼす、即ち、高いANLNレベルは、より低い確率の全生存率を示すことを示した(図19)。さらに、無再発生存率の分析を、ANLNタンパク質レベルに基づいて乳管癌と診断されたER+患者に対して実施した。結果は、高いANLNタンパク質レベルを有するこのサブグループの被験体におけるタモキシフェン処置が、結果に対してポジティブな影響を及ぼさなかった(図20b)一方、処置は、ANLNタンパク質低被験体において有効であるようである(図20a)ことを示した。
【0323】
乳癌患者に対する予後の確立
6.非制限的例
乳癌患者は、明白なしこり/腫瘍、乳頭からの分泌物または皮膚変形などの症状または徴候を呈し得る。一般的に症状を伴わない乳癌の割合はまた、マンモグラフィーをスクリーニングすることによっても検出される。
【0324】
患者における乳癌診断の確立後、腫瘍組織サンプルが入手される。腫瘍組織サンプルは、癌の診断中早期に、または腫瘍の早期の外科的切除からの標本から実施された生検(疑わしい腫瘍からの組織の選択された物理的片の摘出)から入手することができる。さらに、「陰性対照」の供給では、サンプルは、検出可能なANLNタンパク質発現を含まない組織を含んでなるアーカイブ材料から採取される。そのようなアーカイブ組織は、例えば、予め確立された低いANLNタンパク質発現レベルを有する乳癌組織または表2において0の染色スコアを有する適切な組織であってもよい。さらに、「陽性対照」の供給では、サンプルは、予め確立された高いANLNタンパク質発現レベルを有する乳癌組織または表2において3の染色スコアを有する適切な組織などの高いANLNタンパク質発現を有する組織を含んでなるアーカイブ材料から採取される。
【0325】
サンプル材料の薄切片(4μm)を得るために、サンプル材料を緩衝ホルマリン中で固定化し、そして組織処理を行った。
【0326】
免疫組織化学は、実施例、セクション3に記載のように実施される。各サンプル由来の1つ以上のサンプル切片をガラススライド上にマウントし、これを、45分間、60℃でインキュベートし、キシレン中で脱パラフィン処理し(2×15分間)、そして等級化されたアルコールに水和する。抗原賦活化のために、スライドをTRS(Target Retrieval Solution,pH6.0,DakoCytomation)中に浸漬し、そしてDecloakingチャンバ(登録商標)(Biocare Medical)内、125℃で4分間沸騰させる。スライドを、Autostainer(登録商標)(DakoCytomation)内に置き、そして内因性ペルオキシダーゼを、最初に、H2O2(DakoCytomation)でブロックする。複数のサンプル切片をマウントする理由は、結果の確度を増加することができるからである。
【0327】
第一のANLNタンパク質特異的抗体をスライドに添加し、そして30分間、室温でインキュベートする。第一のANLNタンパク質特異的抗体は、実施例、セクション2におけるように入手してもよい。第一のANLNタンパク質特異的抗体のインキュベーションに続いて、標識された第二抗体;例えば、ヤギ−抗−ウサギペルオキシダーゼコンジュゲートEnvision(登録商標)と共に、室温で30分間、インキュベーションする。第二抗体を検出するために、ジアミノベンジジン(DakoCytomation)を色素原として使用し、Harrisヘマトキシリン(Sigma−Aldrich)対比染色で対比させる。すべての工程の間、スライドを、洗浄緩衝液(DakoCytomation)中で濯いだ。次いで、スライドを、Pertex(登録商標)(Histolab)でマウントする。
【0328】
染色手順を確認するためのツールとして、次の2つのコントロール細胞系統を使用してもよい;例えば、ANLNタンパク質を発現する細胞(陽性細胞系統)を有する1つのスライドおよびANLNタンパク質発現が認められない細胞(陰性細胞系統)を有する1つのスライド。当業者は、例えば、非特許文献33の開示内容を指針として、そのような細胞系統を提供する仕方について理解している。コントロール細胞系統のスライドは、乳癌スライドと同じ手順で同時に染色され得、即ち、同じ第一および第二抗体と共にインキュベートされる。
【0329】
デジタル画像を得るために、乳癌腫瘍スライド、対照スライド、および場合により、コントロール細胞系統を有するスライドを、例えば、ScanScopeT2自動化スライド走査システム(Aperio Technologies)を×20倍率で使用して、光学顕微鏡下で走査してもよい。しかし、この走査工程は、必ずしも必要ではないが、例えば、スライドの調製および染色、ならびに細胞質強度の評価(以下を参照のこと)が、異なる局在においてかまたは異なるヒトによって実施される場合、手順をより容易にすることができる。
【0330】
コントロール細胞系統を使用する場合、染色手順を確認するために、これらについて調べる。細胞系統が許容できる基準外の染色結果、例えば、当業者によって認識される染色人工物を示す場合、生検サンプルの染色は脆弱であるとみなされ、そして染色手順全体が、新たなスライドで反復される。陽性細胞系統および陰性細胞系統が、それぞれ、強い染色強度、および不明瞭に弱いかまたは認められない染色強度を示す場合、染色は確認されたものとみなされる。
【0331】
腫瘍組織生検由来の染色されたサンプルスライドは、手動で目視検査により評価され、そして乳癌スライドの核画分(nf)は、実施例、セクション3に記載のように、グレーディングされる。
【0332】
即ち、核において陽性染色を示すサンプル中の関連細胞の百分率に対応する「核画分」(nf)は、臨床組織病理学的診断において使用される標準に従って、主観的に評価される。核において中等度または明白かつ強力な免疫反応性は陽性とみなされ、そして核において認められないまたは弱い免疫反応性は陰性とみなされる。
【0333】
例えば、nf=10%の対照値は、その予後関連性のため、選択することができ、そしてそのような場合、腫瘍組織生検由来の染色されたサンプルスライドのnfは、≦10%または>10%として分類される。評価を実施し、そしてグレーディングする者は、染色された対照スライドの目視検査によって援助される:多量のANLNタンパク質を有する対照スライドは「陽性対照」を提供し、そして検出可能なANLNタンパク質発現を有さない対照スライドは、「陰性対照」を提供する。例えば、陽性および陰性対照は、nf10%の対照値の外観を査定し、それ故、≦10%または>10%として腫瘍組織生検由来の染色されたサンプルスライドを分類する評価を実施する者を援助する。
【0334】
腫瘍組織生検由来の染色されたサンプルスライドが、nf>10%に分類される場合、それらは、nf=10%の選択された対照値より高く、予後が対照値と関連する対照予後より不良であるという結論が導き出せる。例えば、図1bを見る場合、nf=10%の対照値は、85%以上の5年無再発生存率の確率と関連する。結果的に、そのような場合、試験した被験体の予後は、85%の5年無再発生存率より不良であるという結論であり得る。
【0335】
乳癌被験体の内分泌処置の処置予測の確率
7.非制限的例
本実施例は、結論が導き出せ得るまで、実施例、セクション6におけるように実施され得る。乳癌を有する患者の内分泌処置の処置予測を確立する場合、従来、ER陽性の乳癌を有する患者のみに内分泌処置が施されるため、エストロゲン受容体の状態を入手する価値があり得る。また、この処置予測では、nf=10%の対照値を使用することができる。
【0336】
結果的に、結論を導き出す前に、患者のER状態が入手される。得られたER状態は、ANLNタンパク質発現レベルの決定の前または後に、決定され得る。例えば、ER状態は、癌の診断中に予め決定され得るおよび/または乳癌腫瘍の早期外科的切除由来の標本から決定され得る。当業者は、乳癌が、ERに対して陽性であるかまたは陰性であるかどうかを決定するための仕方を知っている。例えば、市販のキットER/PRpharmDX(DakoCytomation)を、決定のために使用することができる。もう1つの例として、Allredら(非特許文献32)によって開示された方法を使用して、全スコア(Allredスコア)を得てもよく、そしてERおよびPRの両方について、2より高いAllredスコアは陽性とみなされ、そして2以下のAllredスコアは陰性とみなされる。あるいは、ERについて、サンプルを陽性もしくは陰性として分類する場合、当該分野内において認識された限界値である10%陽性細胞をカットオフ値として使用してもよい。
【0337】
乳癌がER陽性であり、そして腫瘍組織生検由来の染色されたサンプルスライドが、nf=10%の選択された対照値より高いnf>10%として分類される場合、患者は、内分泌処置から利益を得られない可能性があるという結論が導き出せる。これは、例えば、図14〜16によって指示される。
【0338】
結果的に、「高」値のANLNタンパク質は、タモキシフェン処置などの内分泌処置に対する非応答性を示す。内分泌処置を適用するかどうかの最終決定は、いくらかのパラメータに依存し得る。しかし、たとえ患者がER陽性であっても、患者がANLNタンパク質「高」であるという結論は、内分泌処置、特に、タモキシフェン処置による患者の処置を中断するという決定に好適である。
【0339】
刊行物、DNAまたはタンパク質データの入力、および特許を含むが、これらに限定されない本出願において言及した引用したすべての材料は、本明細書において、参考として援用される。
【0340】
本発明を上記のように説明してきたが、本発明は、多くの方法で改変することができることは明らかであろう。そのような改変は、本発明の趣旨および範囲から逸脱するものと認識されるべきではなく、そのようなすべての変更は、以下の特許請求の範囲内に含まれることが、当業者には明らかであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳癌の領域に関する。特に、本発明は、当該領域内の予後、処置および処置予測に関する。
【背景技術】
【0002】
癌
癌は、西洋における最も多い疾患および死亡の原因の1つである。一般に、罹患率は、ほとんどの形態の癌について、年齢と共に増加する。一般的健康状態の上昇によりヒト集団の寿命が続伸しているため、癌が影響を及ぼし得る個体数が増加している。最も多い癌タイプの原因はなお、大部分が不明であるが、環境因子(食事、喫煙、UV照射など)および遺伝的因子(p53、APC、BRCA1、XPなどなどの「癌遺伝子」における生殖細胞系列変異)と癌の発達の危険性との間の関連を提供する知識体系が増大している。
【0003】
癌は、本質的に細胞の疾患であり、そして正味の細胞増殖および秩序に反する(anti−social)挙動を伴う形質転換された細胞集団として定義されているという事実にもかかわらず、細胞生物学的観点から見ると、癌の定義は、完全には満足できるものではない。悪性形質転換は、不可逆的な遺伝的変更に基づく悪性表現型への転移を表す。このことは正式には証明されていないが、悪性形質転換は、1個の細胞から生じ、その細胞を起源として、その後、腫瘍が発達する(「癌の形成」ドグマ)と考えられている。発癌は、癌が発生するプロセスであり、究極的に悪性腫瘍の増殖をもたらす多数の事象を含むことが一般的に認められている。この多段階プロセスは、変異の付加およびおそらくはまたエピジネティックな事象のようないくらかの律速段階を含み、前癌増殖のステージ後に癌の形成をもたらす。段階的変化は、細胞分裂、秩序的な(asocial)挙動および細胞死を決定する生命の規則的経路におけるエラー(変異)の累積に関係する。これらの変化のそれぞれは、周囲の細胞と比較して、選択的なダーウィン(Darwinian)増殖の利点を提供し得、腫瘍細胞集団の正味の増殖を生じる。悪性腫瘍は、必ずしも形質転換された腫瘍細胞自体のみではなく、また、支持間質として作用する周囲の正常細胞からもなる。この補充された癌間質は、結合組織、血管および他の様々な正常細胞、例えば、形質転換された腫瘍細胞に、腫瘍増殖の継続に必要なシグナルを供給するために共同で作用する炎症細胞からなる。
【0004】
最も多い癌の形態は、体細胞において生じ、そして主に、上皮、例えば、前立腺上皮、乳房上皮、結腸上皮、尿路上皮および皮膚上皮由来であり、その次に多い形態として、造血系統を起源とする癌、例えば、白血病およびリンパ腫、神経外胚葉、例えば、悪性神経膠腫、ならびに軟部組織腫瘍、例えば、肉腫が続く。
【0005】
癌診断および予後
腫瘍から採取した組織切片の顕微鏡的評価は、依然として、癌の診断を決定するための絶対的基準のままである。例えば、顕微鏡的診断では、疑わしい腫瘍由来の生検材料を回収し、そして顕微鏡下で調べる。確定診断を得るためには、腫瘍組織をホルマリン中で固定し、組織学的に処理(histo−processed)し、そしてパラフィン包埋する。得られるパラフィンブロックから、組織切片を生成し、そして組織化学的、即ち、ヘマトキシリン−エオシン染色、および免疫組織化学的方法の両方を使用して、染色する。次いで、外科的標本を、目視および顕微鏡分析を含む病理学的技術により評価する。この分析は、しばしば、特異的診断、即ち、腫瘍タイプを分類し、そして腫瘍の悪性度をグレーディングするための基礎を形成する。
【0006】
悪性腫瘍は、各癌タイプに特異的な分類スキームに従って、いくらかのステージに分類することができる。固形腫瘍の最も一般的な分類システムは、腫瘍−リンパ節−転移(TNM)分類である。Tの分類は、原発腫瘍の局所進展度、即ち、腫瘍がどれだけ広範に周囲の正常組織に浸潤し、そして増殖したかについて説明する一方、Nの分類およびMの分類は、腫瘍がどれくらいの転移に進展しているかを説明しており、Nの分類は、腫瘍のリンパ節への拡大を説明し、そしてMの分類は、他の離れた器官における腫瘍の増殖について説明している。初期のステージとして:T0〜1、N0、M0が挙げられ、リンパ節転移陰性の局在性の腫瘍を表す。より進行期のステージとして:より広範な増殖を伴う局在性の腫瘍を表すT2〜4、N0、M0が挙げられ、そしてリンパ節に転移した腫瘍を表すT1〜4、N1〜3、M0が挙げられ、そして離れた器官において転移が検出された腫瘍を表すT1〜4、N1〜3、M1が挙げられる。腫瘍の分類は、しばしば、外科的、放射線学的および病理組織学的分析を含むいくらかの形態の検査に基づく。分類に加えて、ほとんどの腫瘍タイプの悪性度のレベルをグレーディングするための分類システムも存在する。グレーディングシステムは、腫瘍組織サンプルの形態学的評価に依存し、そして所与の腫瘍において見出される顕微鏡的特徴に基づく。これらのグレーディングシステムは、腫瘍細胞の分化、増殖および異形の程度に基づき得る。一般的に用いられるグレーディングシステムの例として、前立腺癌をグレーディングするGleasonおよび乳癌をグレーディングするNottingham Histological Grade(NHG)が挙げられる。
【0007】
的確な分類およびグレーディングは、正確な診断に極めて重要であり、そして予後を予測するための道具を提供し得る。続いて、特定の腫瘍の診断および予後情報は、所与の癌患者の適切な処置ストラテジーを決定する。組織切片の組織化学染色に加えて、腫瘍に関する更なる情報を得るための一般に用いられる方法は、免疫組織化学染色である。IHCは、特異的抗体を使用する組織および細胞におけるタンパク質発現パターンの検出を可能にする。臨床診断においてIHCを使用すると、組織化学的に染色した腫瘍組織切片から評価される組織構造および細胞形態学に関する情報に加えて、異なる細胞集団における免疫反応性を検出することが可能になる。IHCは、原発腫瘍の分類およびグレーディングを含む的確な診断を支持すること、ならびに起源が不明な転移の診断に関係し得る。今日の臨床診療において最も一般に使用される抗体として、細胞タイプ「特異的」タンパク質、例えば、PSA(前立腺)、MelanA(メラノサイト)およびサイログロブリン(甲状腺)に対する抗体、ならびに中間径フィラメント(上皮細胞、間葉細胞、グリア細胞)、白血球分化(CD)抗原(造血(hematopoetic)細胞、リンパ系(lympoid)細胞の下位分類)および悪性能のマーカー、例えば、Ki67(増殖)、p53(通例、変異した腫瘍抑制因子遺伝子)およびHER−2(増殖因子受容体)を認識する抗体が挙げられる。
【0008】
IHCの他に、遺伝子増幅を検出するためのインサイチュハイブリダイゼーションおよび変異分析の遺伝子配列決定の使用も、癌診断内の発展している技術である。加えて、転写物、タンパク質または代謝物の網羅的分析もすべて、関連の情報を追加する。しかし、これらの分析のほとんどはなお、基礎研究を想定しており、そして臨床医学における使用のための評価および標準化は未だ行われていない。
【0009】
医師が、できるだけ早期に正しいタイプの処置を癌患者に施すために、癌患者の異なる危険度カテゴリーへのより的確な層化を可能にする新たな分子マーカーを供給することは興味深い。要約すると、癌の予後および分類を進歩させるための新たな手段が必要とされている。
【0010】
乳癌
乳癌は、世界中で2番目に多い形態の癌であり、そして女性のはるかに頻度の高い癌である。Parkinらによって提示されたGLOBOCAN2002データベースのデータから、2002年では115万人の新たな症例および同じ期間中に41万人の死亡例が示された(非特許文献1)。早期のステージにおいて検出される場合、先進国に住む患者の予後は比較的良好であり、一般的な5年生存率は、後進国の57%と比較して、73%である。発症率は緩徐に増加しており、そして先進国の女性の9名中約1名が、生涯に乳癌に罹患すると考えられている。外因性ホルモンへの暴露を含む女性のステロイドホルモンに関連するライフスタイルの変化は、乳癌の発達の危険性に影響を及ぼすが、これらの要因は、病因のほんの一部を占めるに過ぎず、予防措置の利益は低いと考えられる。死亡率の減少は、主に、マンモグラフィースクリーニングによる早期検出および現代のアジュバント全身処置の使用による。
【0011】
乳癌の処置
70年代後半における導入以来、腫瘍の根治的切除術を良好な美容的結果と組み合わせることができる乳房温存手術と術後放射線療法とを組み合わせた乳房温存療法が、女性の主な選択処置になっている。乳房切除術はなお、特定の患者、即ち、乳房部が小さい、腫瘍が大きい(>4cm)または多病巣性/多中心性疾患を伴う女性において好適である。
【0012】
腋窩リンパ節郭清は、主に、診断目的のために実施されており、そして少なくとも10個のリンパ節を取り出すことにより、97〜98%の感度を伴う良好な分類指針が得られる(非特許文献2;非特許文献3)。しかし、原発性癌の処置における小範囲手術への次の段階は、高い合併症率を伴う腋窩リンパ節郭清の代わりに腋窩リンパ節のマッピングによるセンチネルリンパ節生検技術の導入である。この技術は、乳房から腋窩へのほとんどのリンパドレナージが、はじめに1個(もしくは数個)のリンパ節(センチネルリンパ節)を通過するという、このリンパ節の分析が、腋窩リンパ節の状態の十分な指標であり得ることを支持する知識の結果として導入された(非特許文献4)。
【0013】
全身性疾患としての乳癌、即ち、診断時に微小転移の存在が散見され、これにより局所領域療法後の処置の失敗を説明し得るという概念から、1970年代に、内分泌療法および化学療法を含むアジュバントの無作為化治験への道が開かれた。アジュバント多剤併用化学療法は、リンパ節の状態に関係なく、再発の危険性が高いホルモン受容体陰性患者に対する標準的な処置である。全生存率および無再発生存率の両方に対する有益な効果が、特に、閉経期前の患者において実証されている(非特許文献5)。ホルモン応答性疾患、即ち、エストロゲン受容体(ER)および/またはプロゲステロン受容体(PR)陽性疾患を伴う患者には、アジュバント多剤併用化学療法が、連続的な化学−内分泌療法として内分泌療法との併用で行われている。また、アジュバント化学療法は、一般的に、無月経を誘発し、細胞障害性に加えて、派生的な内分泌上の影響を及ぼす(非特許文献6)。
【0014】
内分泌療法は、年齢、ステージおよび閉経期状態に関係なく、ホルモン受容体陽性腫瘍を有する患者に推奨されている。
【0015】
閉経期前のホルモン応答性の患者において、手術もしくは放射線照射による卵巣機能停止、またはLHRHアゴニストによる卵巣機能抑制は、有効なアジュバント処置モダリティーである(非特許文献7)。閉経期後の患者では、エストロゲンの主な供給源は、卵巣での合成からではなく、乳房を含む末梢組織におけるアンドロステンジオンからエストロンおよびエストラジオールへの変換からであるため、卵巣機能停止は有効ではない。
【0016】
タモキシフェンは、ERに対してアゴニスト効果を有する選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)であるため、これは、閉経期前および閉経期後の女性の両方における進行性乳癌に対する適切な処置である。研究により、最初の手術後のアジュバント処置としてタモキシフェンを5年間用いると、リンパ節の状態に関係なく、ER陽性(ER+)腫瘍を有する患者の乳癌による死亡率が減少することが示されている(非特許文献8)。タモキシフェンは、循環器系疾患に対する保護効果を有する一方、子宮内膜のERに対するアゴニスト効果により、子宮内膜癌を発達させる危険性が増加する(非特許文献9)。
【0017】
アロマターゼ阻害剤(AI)は、アロマターゼ、アンドロゲンをエストロゲンに変換する酵素を阻害することによって、機能する。AIは、卵巣を刺激して、視床下部および下垂体を介するアンドロゲン産生の増加をもたらすため、AIは、閉経前の女性の処置に適切ではない。AIは、閉経期後の女性に対するアジュバント処置として、単独かまたはタモキシフェン処置後のいずれかに投与することができ、そしてそれらは、死亡率を有意に減少することが示されているが、おそらく、単独で投与するとなお減少するであろう(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。しかし、この療法は比較的新しく、そして長期の副作用については未だ十分には知られていない(非特許文献13)が、最も重要なのは、循環器系の合併症および骨粗鬆症である。
【0018】
ERを完全に遮断するフルベストラントなどの新たに開発された純粋な抗エストロゲンは、現在、進行性乳癌にのみ使用されており、アジュバントセッティングには使用されない(非特許文献14)。
【0019】
アジュバント内分泌療法は、ホルモン受容体陰性乳癌では有効でないと考えられているが、いくつかの研究では、いくつかのER陰性、即ち、ERα陰性(ERα−)の腫瘍が、タモキシフェン処置に応答することが示されている(非特許文献15)。
【0020】
HER2/neu遺伝子は、すべての乳癌の約20%、および低分化性の乳癌の70%までにおいて過剰発現する(非特許文献16;非特許文献17)。HER2を過剰発現する腫瘍を有する患者は、モノクローナル抗体トラスツズマブによる処置から利益を得ることができる。実験データは、HER2過剰発現と内分泌処置に対する耐性との間の関係を支持している(非特許文献18)が、臨床データの方は一貫していない(非特許文献19、非特許文献20、非特許文献21)。
【0021】
乳癌の診断
形態学的基準はなお、一般的に、乳癌の診断、上皮内(in situ)および浸潤性の癌の両方の確定において重要であると考えられている。浸潤性乳癌のうち、浸潤性乳管癌は、最も多い腫瘍タイプ(約80%)であり、そして小葉癌は、2番目に多く存在する(約10〜15%)。管状癌および髄葉癌は、より有病率が低い異なるタイプである(非特許文献22)。
【0022】
乳癌の予後および処置予測因子
髄様癌などの所定の亜型は、一般に、より好適な予後を有するため、腫瘍タイプの正確な組織学的分類は、予後に関連する事柄である。それにもかかわらず、Nottingham Histological Grade(NHG)システムを使用する組織学的グレーディングの評価はなお、予後のツールである(非特許文献23;非特許文献24)。
【0023】
乳癌の大部分は、ホルモン受容体応答性であり、即ち、ERおよび/またはPRを発現する。エストロゲンの作用は、2つの受容体ERαおよびERβによって仲介される。ERαおよびPRは、内分泌療法のための患者を選択するために、日常的に評価され、そして>10%の核陽性(nuclear positivity)を有する腫瘍を陽性とみなす。ERαは、今日、タモキシフェン応答の予測因子と考えられている。しかし、PR陽性はなお、ERαより強力なタモキシフェン応答の予測因子であり得ることを示す研究がある。タモキシフェンによって無作為に処置された閉経期前の患者の研究では、高い(>75%核画分)PRのレベルは、ERαの状態に関係なく、無再発生存率および全生存率の増加に有意に相関することが示された。より低いPRレベル、<75%では、ポジティブな効果は観察されなかった(非特許文献25)。Yuらは、最近、アジュバント内分泌療法のPRの予測値について研究し、そしてERα+/PR+腫瘍を有するより高齢の患者(≧60歳)は、タモキシフェンで処置した場合、アジュバント処置を行わなかった患者より有意に長い無病生存期間を有することを見出した。より若年の患者(<60歳)では、有意な効果は観察されなかった(非特許文献26)。興味深いことに、ATAC治験(アリミデックス、タモキシフェンまたは併用で処置した閉経期後の女性)の報告では、タモキシフェンで処置した患者と比較して、6年間の追跡期間の間、ERα+/PR−腫瘍を有する アナストロゾール処置患者では、再発率が半減したことが示された(非特許文献27)。
【0024】
乳癌におけるERβの役割については、未だ十分に明らかにされていないが、最近の研究では、ERβ−発現は、より良好なタモキシフェン応答に関連し得(非特許文献28)、特に、ERα−腫瘍において関連し得る(非特許文献29)ことが示唆されている。しかし、ERβを決定することは、今日、一般的に、臨床的関連性はないと考えられている。
【0025】
今日の主な問題は、ERα陽性(ERα+)患者の30〜40%がタモキシフェン処置に応答せず(非特許文献30、非特許文献29)、不必要な処置になることである。加えて、一部のERα−患者は、タモキシフェン処置に応答するが、その理由は、現在のところ不明である。Gruvberger−Saalは、ERβ発現が、ERα−患者におけるタモキシフェン応答の陽性予測因子であることを示唆している(非特許文献29)。
【0026】
HER2状態はまた、主に、IHCによって日常的に評価され、中等度の発現の場合、遺伝子増幅状態は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)分析によって決定される。HER2陽性腫瘍を有する患者は、トラスツズマブで処置してもよい。
【0027】
乳癌は、真正の異種疾患であり、そしてその性質についての理解が深まっているにもかかわらず、利用可能な予後および処置予測マーカーについての蓄積はなお十分ではなく、従って、不必要な処置を受けている患者もいる一方、他の患者は、不十分またはなお有効ではない処置を受けている可能性がある。乳癌の異なるサブグループをより良好に定義し、そして適合した療法の選択肢を増加させるために、さらなる分子マーカーが必要である。
【0028】
エンドポイント分析
エンドポイント分析は、患者が所定の療法にどのように応答するかの情報を提供するため、これを使用して、癌に対するアジュバント処置による治験が評価される。全生存率(OS)は、標準的な主要エンドポイントと考えられている。OSは、原因、例えば、死亡が癌によるか否かに関係なく、死亡までの時間を考慮する。追跡不能例を削除し、そして領域再発、2次原発性乳癌、および他の2次原発性癌は無視する。
【0029】
現在まで、多くのタイプの癌において利用可能な有効な処置の数が増加しており、アジュバント処置の効果のより良好な評価を可能にするための代替エンドポイントの必要性が生じた。それ故、アジュバント処置がOSを改善することを実証するのに必要なかなり長期の追跡に、しばしば、処置がどれだけ成功しているかをより早期に示す他の臨床エンドポイントが補足される。
【0030】
エンドポイント分析はまた、潜在的なバイオマーカーの研究に有用であり得る。本開示物では、本発明者らは、特定のタンパク質(提唱されるバイオマーカー)の発現のレベルが予後と有意に相関することを示す。これらの観察のために、主に2つの代替エンドポイント、即ち、無再発生存率(RFS)および乳癌特異的生存率(BCSS)が使用される。RFSの分析は、同じ癌に関連する任意の事象までの時間を含み、即ち、すべての癌再発および同じ癌による死亡が事象となる。また、遠隔、局所および領域転移ならびに乳癌特異的死亡が考慮される。これに対し、2次原発性の同じ癌および他の原発性癌、ならびに対側乳癌は無視する。他の癌による死亡、癌に関連しない死亡、処置に関連する死亡、および追跡不能例は、削除された観察である。乳癌特異的生存率(BCSS)は、本来の腫瘍による乳癌によって引き起こされる死亡までの時間を含む。類似性または差異は、異なる腫瘍生物学的挙動に反映し得るため、両方のエンドポイントが関連する。局所での侵攻性の挙動に関連するバイオマーカーは、例えば、BCSSよりもRFSに対して影響を及ぼし得る一方、遠位への転移の発達に関連するバイオマーカーは、RFSおよびBCSSの両方に反映され得る。
【0031】
ANLN
アクチン結合タンパク質、アニリン(ANLN)は、マイクロフィラメントのサブユニット、細胞骨格の主要成分のうちの1つである。それは、大部分の真核細胞において発現され、そして筋肉の収縮、細胞運動、小胞およびオルガネラ移動、細胞分裂、細胞質分裂およびシグナル伝達などの基本的な細胞の機能において役割を果たす。
【0032】
特許文献1は、124例の患者由来の約22000の遺伝子の相対的RNA発現の測定について開示している。これらの遺伝子のうち7090の遺伝子が、それらの発現パターンに基づいて選択されている。階層的クラスタリングによって、67の遺伝子のクラスターが得られ、そしてさらに、67のすべての遺伝子を過小発現する患者グループは、67のすべての遺伝子を過剰発現する患者グループより良好な生存に関連する。アニリン遺伝子は、67の遺伝子のうちの1つとして述べられているが、個々に研究されてはいない。他の4つの遺伝子(DEEPEST、RACGAP1、ZNF145およびMS4A7)は、「個々に強力な予後因子」として同定されている。タンパク質発現については、測定もまたは分析もされていない。
【0033】
特許文献2は、乳腫瘍のグレーディングに関連し、そしてマイクロアレイ実験および統計分析による包括的な遺伝子発現解析を開示している。264段階のグレーディングの関連する遺伝子のリストが開示されており、アニリン遺伝子はその中の1つである。「組織学的グレーディングの遺伝的本質は、強力な予後との関与を伴う僅か5つの遺伝子の発現パターンに絞り込むことができる」と結論付けられる。しかし、いずれの個々の遺伝子の予後関連性については示されていない。さらに、タンパク質発現については、測定もまたは分析もされていない。
【0034】
Hallら(非特許文献31)による雑誌論文では、セプチン結合タンパク質、アニリンが、多様なヒト腫瘍において過剰発現されることが記載されている。7579のヒト組織サンプルおよび細胞系統におけるアニリン発現が、DNAマイクロアレイ分析によって、評価された。アニリンmRNA発現は、中枢神経系を除く正常組織より腫瘍において高く、ここで、アニリンmRNAレベルは、腫瘍においてより低かったことが示されている。さらに、アニリンとKi67mRNA発現との間に有意な直線関係が見出されている。また、正常から良性、悪性、転移性疾患へのアニリンmRNA発現の漸進的な増加が、異なる多くの癌由来の組織サンプルにおいて示されている。最終的に、アニリンは、癌および疾患進行のバイオマーカーであると判明し得ることが仮定されている。しかし、この仮定については、論文において試験されていない。さらに、この論文は、処置予測および予後については全く触れていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】国際公開第2005/001138号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008/048193号パンフレット
【特許文献3】国際公開第01/04144号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/05808号パンフレット
【非特許文献】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
簡単な説明
本開示物のいくつかの態様の目的は、乳癌を有する哺乳動物被験体の予後の確立に有用な手段および方法を提供することである。他の態様の目的は、そのような被験体に関する処置予測において有用な手段および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本開示物は、以下の工程を含んでなる、乳癌を有する哺乳動物被験体が、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかを決定するための方法を提供する:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
サンプル値が対照値より高い場合、
d1)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性がないと結論付ける工程、および/またはサンプル値が対照値以下である場合、
d2)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性があると結論付ける工程。
【0039】
本開示物はまた、処置を必要とする被験体の処置の方法、乳癌を有する哺乳動物被験体の予後が対照予後より不良であるかどうかを決定するための方法、処置を必要とする被験体の処置のもう1つの方法、乳癌を有する被験体の非処置ストラテジー方法、キット、ANLNタンパク質、内分泌処置の指標または予後マーカーとしてのANLNタンパク質の使用、ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンド、予後因子および内分泌処置製品としてのそのような親和性リガンドの使用を提供し、以下にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、コホートIにおいて乳癌と診断された467例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価した。図1aは、すべての患者における無再発生存率(RFS)を示し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。図1bは、すべての患者におけるRFSを示し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。図1cは、すべての患者におけるRFSを示し、ここで、nf>25%を高いと見なし、そしてnf≦25%を低いと見なした。
【図2】図2は、コホートIにおいて乳癌と診断された467例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。図2aは、467例のすべての患者におけるRFSを示す。図2bは、ERについて陽性の400例の患者におけるRFSを示す。
【図3】図3は、コホートIにおいて乳癌と診断された467例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。図3aは、467例のすべての患者におけるBCSSを示す。図3bは、ERについて陽性の400例の患者におけるBCSSを示す。
【図4】図4は、コホートIにおいて乳癌と診断された467例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。図4aは、467例のすべての患者におけるOSを示す。図4bは、ERについて陽性の400例の患者におけるOSを示す。
【図5】図5は、高いANLNタンパク質レベルを伴う被験体と比較した低いANLNタンパク質を伴う被験体における転移の頻度を示し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。
【図6】図6は、コホートIにおいて乳癌と診断された128例のER+被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づくRFSを示す。すべての患者に、アジュバントタモキシフェン処置を施した。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。
【図7】図7は、コホートIIにおいて乳癌と診断された357例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価した。図7aは、すべての患者における無再発生存率(RFS)を示し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。図7bは、すべての患者におけるRFSを示し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。図7cは、すべての患者におけるRFSを示し、ここで、nf>25%を高いと見なし、そしてnf≦25%を低いと見なした。
【図8】図8は、コホートIIにおいて乳癌と診断された173例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。すべての患者は、2年間、アジュバントタモキシフェンを受けていた。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価した。図8aは、すべての患者における無再発生存率(RFS)を示し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。図8bは、すべての患者におけるRFSを示し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。
【図9】図9は、コホートIIにおいて乳癌と診断された173例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。すべての患者は、2年間、アジュバントタモキシフェンを受けていた。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価した。図9aは、すべての患者における乳癌特異的生存率(BCSS)を示し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。図9bは、すべての患者におけるBCSSを示し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。
【図10】図10は、コホートIIにおいて乳癌と診断された173例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。すべての患者は、2年間、アジュバントタモキシフェンを受けていた。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価した。図10aは、すべての患者における全生存率(OS)を示し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。図10bは、すべての患者におけるOSを示し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。
【図11】図11は、コホートIIにおいて乳癌と診断された173例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図11aは、低いANLNタンパク質レベルを伴うすべての患者におけるRFSを示す。図11bは、高いANLNタンパク質レベルを伴うすべての患者におけるRFSを示す。
【図12】図12は、コホートIIにおいて乳癌と診断された173例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間、投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図12aは、低いANLNタンパク質レベルを伴うすべての患者におけるBCSSを示す。図12bは、高いANLNタンパク質レベルを伴うすべての患者におけるBCSSを示す。
【図13】図13は、コホートIIにおいて乳癌と診断された173例の被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間、投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図13aは、低いANLNタンパク質レベルを伴うすべての患者におけるOSを示す。図13bは、高いANLNタンパク質レベルを伴うすべての患者におけるOSを示す。
【図14】図14は、コホートIIにおいて乳癌と診断された233例のER+被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間、投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図14aは、低いANLNタンパク質レベルを伴う191例の患者におけるRFSを示す。図14bは、高いANLNタンパク質レベルを伴う42例の患者におけるRFSを示す。
【図15】図15は、コホートIIにおいて乳癌と診断された233例のER+被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間、投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図15aは、低いANLNタンパク質レベルを伴う191例の患者におけるBCSSを示す。図15bは、高いANLNタンパク質レベルを伴う42例の患者におけるBCSSを示す。
【図16】図16は、コホートIIにおいて乳癌と診断された233例のER+被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間、投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図16aは、低いANLNタンパク質レベルを伴う191例の患者におけるOSを示す。図16bは、高いANLNタンパク質レベルを伴う42例の患者におけるOSを示す。
【図17】図17は、コホートIIにおいて浸潤性乳管癌と診断された202例のER+被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果から誘導される。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>1%を高いと見なし、そしてnf≦1%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間、投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図17aは、高いANLNタンパク質レベルを伴う38例の患者におけるRFSを示す。図17bは、高いANLNタンパク質レベルを伴う38例の患者におけるBCSSを示す。図17cは、高いANLNタンパク質レベルを伴う38例の患者におけるOSを示す。
【図18】図18は、コホートIIにおいて乳癌と診断された227例のPR+被験体の免疫組織化学(IHC)染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間、投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図18aは、低いANLNタンパク質レベルを伴う188例の患者におけるRFSを示す。図18bは、高いANLNタンパク質レベルを伴う39例の患者におけるRFSを示す。
【図19】図19は、コホートIIにおいて乳管癌と診断された300例の被験体の生存分析の結果を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。
【図20】図20は、コホートIIにおいて乳管癌と診断された300例のすべての患者の無再発生存率(RFS)を示す。組織コアを、高いまたは低いANLNタンパク質レベルについてスコア評価し、ここで、nf>10%を高いと見なし、そしてnf≦10%を低いと見なした。さらに、TAMは、アジュバントタモキシフェンを2年間、投与した被験体のグループを表し、そしてctrlは、タモキシフェン与えなかったコントロールグループを表す。図20aは、低いANLNタンパク質レベルを伴う210例の患者におけるRFSを示す。図20bは、高いANLNタンパク質レベルを伴う90例の患者におけるRFSを示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
本開示物の第1の態様として、以下の工程を含んでなる、乳癌を有する哺乳動物被験体が、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかを決定するための方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
サンプル値が対照値より高い場合、
d1)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性がないと結論付ける工程、および/またはサンプル値が対照値以下である場合、
d2)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性があると結論付ける工程。
【0042】
本開示物に関して、「内分泌処置から利益を得る可能性がある」は、内分泌処置を経験しない場合より、内分泌処置を経験する場合により高い確率の生存率または回復率を有することを指す。これに関して、「回復率」は、乳癌状態から乳癌を有さない状態に復帰することを指す。「生存率」は、無再発生存率であってもまたは乳癌特異的生存率であってもよい。さらに、「回復率」は、無再発回復率であってもよい。また、「より高い確率」は、5年間、10年間または15年間における少なくとも5%、例えば、少なくとも10%の確率上の利益であり得る。
【0043】
しかし、同じ概念に密接に関連および包含される第1の態様のd1)およびd2)は、2つの別の結論への選択肢を提供する。従って、第1の態様の方法は、乳癌を有する被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかという問題、または乳癌を有する被験体は内分泌処置から利益を得る可能性がないかどうかという問題に回答し得る。それ故、第1の態様の方法は、適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d1)、および適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d2)の両方を含んでもよいが、必ずしも含む必要はない。
【0044】
本開示物のこの第1の態様は、乳癌を有する被験体からより早期に得られるサンプルにおけるANLNタンパク質の発現が、被験体の内分泌処置に対する応答の指標としての役割を果たし得るというこれまでに認識されていない事実に基づく。より詳細には、本発明は、乳癌を患っている患者において、一方におけるANLNタンパク質の値と他方における内分泌処置後の生存の確率との間の相関を同定する。典型的に、高いANLNタンパク質値は、本明細書において、内分泌処置に対する応答性と相関することが示されている。乳癌処置の指標としてのANLNタンパク質発現に基づくこの態様は、いくらかの利益を有し得る。第1に、それは、被験体が内分泌処置に応答する可能性があるかどうかを予測するためのツールを提供し得る。第2に、それは、より以前の考えとは対照的に、内分泌処置に応答しないと思われる乳癌被験体のサブグループを同定するために使用され得る。結果的に、この態様は、これまで処置されなかったグループの的確な処置を提供することができる。しかし、この態様は、実施例としてのみであって、上記の利益の達成を限定するものと考えるべきではない。
【0045】
本開示物の第1の態様の第2の別の構成として、以下の工程を含んでなる、乳癌を有する哺乳動物被験体が内分泌処置を経験すべきかどうかを決定するための方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;ならびに
サンプル値が対照値より高い場合、
d1)被験体は、内分泌処置を経験すべきではないと結論付ける工程、および/またはサンプル値が対照値以下である場合、
被験体は、内分泌処置を経験すべきであると結論付ける工程。
【0046】
しかし、同じ概念に密接に関連および包含される第1の態様の第1の構成のd1)およびd2)は、2つの別の結論への選択肢を提供する。従って、方法は、被験体は内分泌処置を経験すべきであるかという問題、または被験体は内分泌処置を経験すべきではないかどうかという問題に回答し得る。それ故、第1の態様の方法は、適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d1)、および適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d2)の両方を含んでもよいが、必ずしも含む必要はない。
【0047】
本開示物の第1の態様の第2の構成として、以下の工程を含む、乳癌を有する哺乳動物被験体から早期に得られるサンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量に対応するサンプル値が、内分泌処置を被験体に施す決定に好適かどうかを決定するための方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;ならびに
サンプル値が対照値より高い場合、
d1)サンプル値が、内分泌処置による被験体の処置を中断する決定に好適であると結論付ける工程、および/またはサンプル値が対照値以下である場合、
d2)サンプル値が、内分泌処置で被験体を処置する決定に好適であると結論付ける工程。
【0048】
しかし、同じ概念に密接に関連および包含される第1の態様の第2の構成のd1)およびd2)は、2つの別の結論への選択肢を提供する。従って、方法は、サンプル値が、内分泌処置による被験体の処置を中断する決定に好適であるかどうかという問題、またはサンプル値が、内分泌処置で被験体を処置する決定に好適であるかどうかという問題に回答し得る。それ故、第1の態様の方法は、適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d1)、および適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d2)の両方を含んでもよいが、必ずしも含む必要はない。
【0049】
乳癌患者のための適切な処置レジメンを決定する場合、処置を担当する医師は、免疫組織化学的評価の結果、患者の年齢、閉経の状態、ホルモン受容体の状態、全身状態および既往歴、例えば、乳癌の既往歴などのいくらかのパラメータを考慮することができる。そのような決定において指針とするために、医師は、上記の構成に従って、ANLNタンパク質試験を実施するか、またはANLNタンパク質試験の実施を指令することができる。
【0050】
第1の態様の第3の構成として、以下の工程を含んでなる、乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置の予後が対照予後より不良であるかどうかを決定するための方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および、サンプル値が対照値より高い場合、
d)被験体の内分泌処置の予後が対照予後より不良であると結論付ける工程。
【0051】
予後が対照予後より不良であるかどうかを決定するための方法の様々な実施形態を、本開示物の第2の態様に関連して以下に説明する。
【0052】
乳癌を患う被験体の処置を担当する医師は、被験体の内分泌処置の予後を理解した上で、被験体に内分泌処置を施すかどうかを決定することができる。
【0053】
本開示物の第2の態様として、処置を必要とする被験体の処置の方法が提供され、ここで、被験体は乳癌を有し、方法は、以下の工程を含んでなる:
a)被験体由来のサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;ならびにサンプル値が対照値より高い場合、
d1)非内分泌乳癌処置レジメンにより被験体を処置する工程、および/またはサンプル値が対照値以下である場合、
d2)内分泌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程。
【0054】
しかし、同じ概念に密接に関連および包含される第2の態様のd1)およびd2)は、2つの別の処置の選択肢を提供する。それ故、第2の態様の方法は、適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d1)、および適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d2)の両方を含んでもよいが、必ずしも含む必要はない。
【0055】
従来、内分泌処置は、主に、ホルモン受容体陽性、例えば、ER陽性またはPR陽性の乳癌被験体に行われてきた。結果的に、上記の方法は、特に、このサブグループの被験体に関連する。また、このサブグループにおけるANLNタンパク質の処置推定の役割を、図14〜18に示す。それ故、本開示物の第1または第2の態様の実施形態では、乳癌は、ホルモン受容体陽性乳癌、例えば、ER陽性および/またはPR陽性乳癌であり得る。
【0056】
当該技術分野内において、ERの状態は、しばしば、内分泌処置、例えば、タモキシフェン処置に対する応答性の最も重要な指標と考えられてきた。ER陽性被験体のサブグループにおけるANLNタンパク質の処置推定の役割を、図14〜17に示す。それ故、本開示物の第1または第2の態様の実施形態では、乳癌は、ER陽性であってもよい。
【0057】
他で述べない限り、本開示物では、「ER」は「ERα」を指す。
【0058】
当業者は、患者のERおよび/またはPR状態を得る仕方について知っている。例えば、そのような情報は、市販のER/PRpharmDXキット(DakoCytomation)を使用する試験の結果から得ることができる。もう1つの例として、Allredら(非特許文献32)によって開示された方法を使用して、全スコア(Allredスコア)を得てもよく、そしてERおよびPRの両方について、2より高いAllredスコアは陽性とみなされ、そして2以下のAllredスコアは陰性とみなされる。あるいは、ERまたはPRについて、サンプルを陽性もしくは陰性であると分類する場合、当該分野内において認識された限界値である10%陽性細胞のカットオフを使用してもよい。
【0059】
例えば、本開示物の第2の態様の非内分泌処置は、化学療法、放射線療法またはそれらの組み合わせであってもよい。化学療法は、CMF(シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル)、FEC(フルオロウラシル、エピルビシン、シクロホスファミド)および/またはタキサン系薬剤による処置などの1剤もしくは多剤併用化学療法であってもよい。また、乳癌がHER2陽性(HER2+)である場合、非内分泌処置は、抗HER2抗体、例えば、トラスツズマブによる処置などの抗HER2処置であってもよい。
【0060】
本開示物の第3の態様として、以下の工程を含んでなる、乳癌を有する哺乳動物被験体の予後が対照予後より不良であるかどうかを決定するための方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照予後に関連する対照値とを比較する工程;および
d)サンプル値が対照値より高い場合、被験体の予後が対照予後より不良であると結論付ける工程。
【0061】
実施形態では、第3の態様の方法は、以下のさらなる工程を含んでなり得る:e)サンプル値が対照値以下である場合、被験体の予後が対照予後以下であると結論付ける工程。
【0062】
本開示物のこの第3の態様は、乳癌を有する被験体からより早期に得られるサンプルに存在するANLNタンパク質の量が、被験体における疾患状態の指標としての役割を果たし得るというこれまでに認識されていない事実に基づく。より詳細には、本発明者らは、乳癌を患っている被験体において、一方におけるANLNタンパク質の量と他方における生存の予後との間の相関を認識している。典型的に、高いANLNタンパク質値は、本明細書において、これらの被験体における不良な予後と相関することが示されている。癌状態の指標としてのANLNタンパク質発現に基づく本発明は、多くの利益を提供する。一般に、乳癌の侵攻性を早期に同定することは、医師が適切な処置ストラテジーを選択することに役立つため、極めて重要である。例えば、早期のステージにおいてそれはど侵攻性ではない形態を同定することによって、過度の処置を回避することができる。さらなる例として、所定のレベルの発現が所定のパターンの疾患の進行と相関するマーカーとしてのANLNタンパク質は、例えば、原発腫瘍の鑑別診断の一団において、大きな可能性を有し得る。しかし、この態様は、実施例としてのみであって、上記の利益の達成を限定するものと考えるべきではない。
【0063】
それ故、この第3の態様は、一般的に、第1の概念:ANLNタンパク質レベルと乳癌疾患の結果の予測との間の相関と同じ概念に関する。さらに、第3および第1の態様の両方とも、同じ実際的工程、即ち、サンプルの供給、ANLNタンパク質量の評価およびサンプル値の決定、ならびに最終的に、対照値との比較を含んでなる。
【0064】
本開示物では、様々な予後に対応する異なるANLNタンパク質の値(サンプル値)を提示する。典型的に、高いサンプル値は、低いサンプル値より不良な予後に関連する。第3の態様に従う方法では、サンプル値を対照値と比較し、そしてサンプル値が対照値より高い場合、被験体の予後は対照値に関連する予後より不良であると結論付けられる。
【0065】
結果的に、上記の態様の方法を、所与の対照値に適応することができる。そのような場合、所定の環境下で関連すると考えられる所与のサンプル値から開始して、そのサンプル値に等しいか、またはそれより低い対照値を選択することができる。続いて、その対照値に関連する対照予後を確立することができる。本開示物を指針として、当業者は、所与の対照値に対応する対照予後を確立する仕方について理解すべきである。例えば、サンプル値と乳癌患者のグループにおける生存率のデータとの間の関係を、下記の実施例、セクション4におけるように調べてもよく、そして本明細書に記載の手順を、所与の対照値に適応してもよく、次いで、所与の対照値に対応する予後を、対照予後として選択してもよい。
【0066】
また、上記の態様の方法を、所与の対照予後に適応することができる。そのような場合、所定の環境下で関連すると考えられる所与の対照予後から開始して、例えば、適切な処置ストラテジーを選択するために、対応する対照値を確立することができる。本開示物を指針として、当業者は、所与の対照予後に対応する対照値を確立する仕方について理解すべきである。例えば、サンプル値と癌患者のグループにおける生存率のデータとの間の関係を、下記の実施例、セクション4におけるように調べてもよいが、但し、本明細書に記載の手順を適用して、所与の対照予後に対応する対照値を確立する。例えば、所与の対照予後と相関する対照値が見出されるまで、異なる対照値を試験してもよい。例えば、本開示物は、適切な開始値を提示して、試験の必要量を減少することができるため、当業者は、過度の負担を伴わずに、そのような試験を行うことができる。
【0067】
従って、上記の態様の方法の実施形態では、対照予後は、例えば、同じ被験体または被験体の集団の検査によって得られる予め確立された予後に基づき得る。さらに、対照予後は、一般集団におけるバックグランドの危険率、統計的予後/危険率または被験体の検査に基づく仮定に適応することができる。そのような試験は、被験体の年齢、全身状態、性別、人種および/または医学的状態および既往歴、例えば、癌の既往歴または乳癌の状態を含んでなり得る。例えば、医師は、対照予後を、被験体の乳癌の既往歴、腫瘍の分類、ホルモン受容体の状態、腫瘍の形態学、腫瘍の位置、転移の存在および広がりならびに/あるいはさらなる癌の特徴に適応することができる。
【0068】
結果的に、対照予後は、その方法の被験体と同じ分類、例えば、同じTNM分類の癌を有する予め検査した被験体に基づき得る。
【0069】
ホルモン受容体の状態の例は、ER状態およびPR状態である。例えば、ER陽性は、一般的に、当該技術分野内において比較的良好な予後に関連する。例えば、図2b、3b、4bおよび6において認められ得るように、ANLNタンパク質発現のレベルは、ER陽性被験体の予後的に関連するサブグループを提供する。
【0070】
それ故、第3の態様の実施形態では、乳癌は、ER+および/またはPR+などのホルモン受容体陽性であってもよい。
【0071】
図6および8〜10に示すように、ANLNタンパク質の予後的役割は、内分泌処置であるタモキシフェンで処置される被験体において、特に際立っている。それ故、第3の態様の実施形態では、被験体は、内分泌処置を経験した、内分泌処置を経験している、および/または内分泌処置を予定されている状態でもよい。上記で説明したように、内分泌処置を経験しているほとんどの被験体は、ホルモン受容体陽性乳癌を有する。
【0072】
本開示物に関して、「内分泌処置」は、抗エストロゲン効果を有する全身処置を指す。さらに、「抗エストロゲン効果」は、エストロゲン産生の抑制または身体におけるエストロゲン効果の阻害を指す。当該分野において、内分泌処置は、時々、抗ホルモン処置と称される。
【0073】
上記の態様の方法の実施形態では、内分泌処置は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)処置、アロマターゼ阻害剤処置、およびステロイド性エストロゲン受容体アンタゴニスト処置からなる群から選択することができる。SERM処置は、例えば、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、アルゾキシフェンまたはタモキシフェンによる処置であってもよい。アロマターゼ阻害剤処置は、例えば、アナストロゾール、レトロゾールおよびエキセメスタンによる処置であってもよい。さらに、ステロイド性エストロゲン受容体アンタゴニスト処置は、フルベストラントによる処置であってもよい。
【0074】
SERMは、標的組織に依存して、アゴニスト効果またはアンタゴニスト効果のいずれを有してもよい。例えば、SERMは、乳房においてアンタゴニストとしておよび子宮においてアゴニストとして作用することができる。
【0075】
上記の態様の方法の実施形態では、内分泌処置は、SERM治療、例えば、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、アルゾキシフェンまたはタモキシフェンによる処置から選択されるSERM治療であってもよい。例えば、内分泌処置は、タモキシフェン処置であってもよい。
【0076】
本開示物の第3の態様の第1の別の構成として、以下の工程を含んでなる、乳癌を有する哺乳動物被験体の予備的予後を改正するための方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
サンプル値が対照値より高い場合、
d)予備的予後を低減して、改正された予後を得る工程。
【0077】
第3の態様の第2の別の構成として、乳癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するための方法が提供される:
a)被験体由来のサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)のサンプル値を、被験体の予後に相関させる工程。
【0078】
本開示物に関して、「予後を確立すること」とは、特定の予後または予後の期間を確立することを指す。
【0079】
上記の方法の実施形態では、サンプルは、早期に得られるサンプルであってもよい。
【0080】
工程c)の相関させる工程は、被験体の予後を確立するように、生存率のデータを、得られたサンプル値に関連付ける任意の方法を指す。
【0081】
第3の態様の第3の別の構成として、以下の工程を含んでなる、哺乳動物被験体が、第1のグループに属する乳癌を有するか、または第2のグループに属する乳癌を有するかを決定するための方法であって、ここで、前記第1のグループの被験体の予後は、前記第2のグループの被験体の予後より良好である方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルの少なくとも一部におけるANLNタンパク質の量を評価し、そして評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
b)前記サンプル値と予め決定された対照値とを比較する工程;ならびに
前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
c1)前記被験体は、前記第2のグループに属すると結論付ける工程;および前記サンプル値が前記対照値以下である場合、
c2)前記被験体は、前記第1のグループに属すると結論付ける工程。
【0082】
方法では、乳癌被験体が第1のグループに属するかまたは第2のグループに属するかが決定され、ここで、第1のグループの被験体は、一般的に、第2のグループの被験体より良好な予後を有する。乳癌被験体を2つのグループに分けることは、被験体由来のサンプル値と対照値とを比較することによって決定される。本開示物では、様々な対照値を用いて、一般的に比較的長い期間生存する被験体(より上方の曲線によって表される)と一般的に比較的短い期間生存する被験体(より下方の曲線によって表される)とを区別することができることが示される。それ故、対照値は、それぞれのグループのサイズの決定因子であり;対照値が高いほど、第1のグループの被験体は少なく、そして試験した被験体が第1のグループに属する可能性がより低い。本開示物を指針として、当業者は、過度の負担を伴わずに、関連する対照値を選択することができる。
【0083】
上記の方法の実施形態では、第1および第2のグループの被験体の癌の分類または進行のレベルは、その方法の被験体の癌の分類または進行のレベルと同じである。分類は、例えば、TNM分類であってもよい。
【0084】
ANLNタンパク質レベルと乳癌の特徴との間の同定される相関はまた、様々な処置レジメを適用するための基礎を形成することができる。
【0085】
本開示物の第4の態様として、以下を含んでなる、処置を必要とする被験体の処置の方法が提供され、ここで、被験体は乳癌を有している:
a)被験体由来のサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
d)サンプル値が対照値より高い場合、被験体をアジュバント乳癌処置レジメンで処置する工程。
【0086】
第4の態様の一実施形態では、方法は、以下のさらなる工程を含んでなり得る:
e)サンプル値が対照値以下である場合、被験体のアジュバント乳癌処置レジメンによる処置を中断する工程。
【0087】
第4の態様の実施形態では、工程c)の対照値は対照予後に関連し得、そして工程d)の乳癌処置レジメンは、対照予後より不良である被験体の予後に適応され得る。実施形態では、第3の態様の方法は、次のさらなる工程を含んでなり得る:e)およびサンプル値が対照値以下である場合、被験体を、対照予後より良好であるかまたはそれに等しい予後に適応される処置レジメンで処置する工程。
【0088】
好ましくは、第4の態様の乳癌処置レジメンは、非内分泌処置を含んでなる。例えば、それは、侵攻型の乳癌に適用してもよい。侵攻型の癌に適応される処置は、例えば、そのような処置の副作用のため、サンプル値が対照値より高くなかった場合には考慮されていなかった処置であってもよい。
【0089】
第4の態様の実施形態では、工程d)の乳癌処置レジメンは、化学療法、術前アジュバント療法およびそれらの組み合わせから選択してもよい。例えば、術前アジュバント療法は、放射線療法を含んでなり得る。
【0090】
第4の態様の実施形態では、乳癌は、ER陽性および/またはPR陽性などのホルモン受容体陽性であってもよい。上記で説明したように、ホルモン受容体陽性被験体は、従来、タモキシフェンなどの内分泌処置を受けてきた。しかし、本開示物の観点から、そのような被験体に別のまたは少なくとも補足的な処置を施すことは、より合理的であるようである。それ故、第4の態様の実施形態では、工程d)のアジュバント乳癌処置レジメンは、タモキシフェンなどの単独のSERM治療ではない。
【0091】
また、本開示物の観点から、いくつかの被験体の内分泌処置を回避することが合理的であり得る。
【0092】
それ故、本開示物の第5の態様として、以下の工程を含んでなる乳癌を有する被験体のための非処置ストラテジー方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;およびサンプル値が対照値より高い場合、
d)内分泌処置による被験体の処置を中断する工程。
【0093】
上記から明白な理由により、工程d)の内分泌処置は、タモキシフェン処置などのSERM治療であってもよい。また、第5の態様の乳癌は、ER陽性および/またはPR陽性などのホルモン受容体陽性であってもよい。
【0094】
例えば、工程d)の中断は、工程a)〜c)の終了から少なくとも1週間、例えば、工程a)〜c)の終了から少なくとも1箇月間、例えば、工程a)〜c)の終了から少なくとも3箇月間、例えば、工程a)〜c)の終了から少なくとも6箇月間、例えば、工程a)〜c)の終了から少なくとも1年間、例えば、工程a)〜c)の終了から少なくとも2年間の中断であり得る。
【0095】
あるいは、工程d)の中断は、方法が実施される次の時点までか、または乳癌腫瘍の再発までの中断であってもよい。
【0096】
一般に、乳癌を有する患者に適切な処置ストラテジーを決定する場合、処置を担当する医師は、免疫組織化学的評価の結果、患者の年齢、ホルモン受容体の状態、全身状態、既往歴、例えば、乳癌の既往歴および遺伝形質、例えば、被験体の家族に乳癌の既往歴が認められるかどうかなどのいくらかのパラメータを考慮することができる。そのような決定において指針とするために、医師は、上記で提示した方法態様のうちの1つの実施形態に従って、ANLNタンパク質試験を実施するか、またはANLNタンパク質試験の実施を指令することができる。
【0097】
本開示物に関して、「乳癌を有する哺乳動物被験体」は、原発性もしくは続発性乳腫瘍を有する哺乳動物被験体、あるいは乳房から腫瘍が摘出されている哺乳動物被験体を指し、ここで、腫瘍の摘出は、任意のタイプの手術または治療によって腫瘍を死滅もしくは摘出することを指す。後者の場合、腫瘍は、例えば、1年未満前に摘出されていてもよい。例えば、手術によって乳腫瘍が摘出され、そして補助療法を受けようとしている被験体は、本開示物では、「乳癌を有する」とみなされる。「乳腫瘍」は、非浸潤性乳管癌(DCIS)を含む。本開示物の方法および使用態様では、「乳癌を有する哺乳動物被験体」はまた、哺乳動物被験体が、使用または方法の実施時に乳癌を有することが疑われており、そして後に乳癌診断が確定される場合を含む。
【0098】
本開示物の方法態様に関して、「早期に得られる」は、方法が実施される前に得られることを指す。結果的に、被験体から早期に得られるサンプルが、ある方法で提供される場合、方法は、サンプルを被験体から得る工程を必要としない、即ち、サンプルは、方法とは個別の工程で被験体から予め得られた。
【0099】
従って、本開示物のすべての方法および使用は、全体的にインビトロで実施することができる。
【0100】
上記の態様の方法の工程b)は、サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして対応するサンプル値を決定することを必要とする。「サンプルの少なくとも一部」は、予後を確立するか、または適切な処置に関する結論を導き出すためのサンプルの単数もしくは複数の関連する部分を指す。当業者は、方法を実施する場合に存在する状況下で関連する単数もしくは複数の部分について理解している。例えば、サンプルが腫瘍および非腫瘍細胞を含んでなる場合、当業者は、サンプルの腫瘍細胞のみ、および腫瘍細胞の核のみを考慮すればよい。
【0101】
さらに、工程b)では、量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する。結果的に、サンプル値を得るために、ANLNタンパク質の量の正確な測定値は必要ではない。例えば、ANLNタンパク質の量は、染色された組織サンプルの目視検査によって評価してもよく、次いで、サンプル値は、評価された量に基づいて、例えば、高いまたは低いに分類してもよい。当業者は、そのような評価および決定を実施するための仕方を理解している。
【0102】
例えば、評価および決定は、「サンプルにおけるANLNタンパク質発現の定量化」に関連して以下に記載の通りに実施することができる。
【0103】
上記の態様に従う方法の工程b)に関して、ANLNタンパク質の量が増加すると、典型的に、サンプル値も増加する。しかし、いくつかの実施形態では、評価された量は、予め決定した数の個別のサンプル値のいずれかに対応し得る。そのような実施形態では、第1の量および第2の増加した量は、同じサンプル値に対応し得る。いずれにせよ、本開示物に関して、ANLNタンパク質の量が増加しても、サンプル値は減少しない。
【0104】
しかし、不便ではあるが、等価な様式では、工程c)とd)との間の定量化が「サンプル値が対照値より低い場合」に行われる場合、評価される量は、サンプル値に反比例するかもしれない。
【0105】
なおさらに、本開示物に関して、「対照値」は、予後に関して、決定を行うこと、もしくは結論を導き出すこと、または被験体に対して処置予測を行うことに関連する予め決定された値を指す。
【0106】
また、本開示物に関して、対照値に「関連」する対照予後は、エンピリカルデータおよび/または臨床的に意味のある仮定に基づいて対照予後に割り当てられている対照値を指す。例えば、第3の態様の方法の工程c)、および第4の態様の所定の実施形態を参照のこと。対照値は、対照値を示す被験体のグループの予後データから直接誘導される対照予後に割り当てる必要はない。対照予後は、例えば、対照値以下の値を示す被験体の予後に対応してもよい。即ち、対照値が0〜3の尺度で1である場合、対照予後は、0または1の値を示す被験体の予後であってもよい。結果的に、対照予後はまた、入手可能なデータの性質に適応することができる。上記でさらに考察したように、対照予後は、他のパラメータにも適用することができる。
【0107】
上記の態様の方法の実施形態では、被験体は、浸潤性乳管癌を有し得る(また、図17を参照のこと)。
【0108】
本開示物のデータは、ヒト女性のグループに基づく。それ故、上記の態様の方法の実施形態では、被験体は、ヒトであってもよい。また、上記の態様の方法の実施形態では、被験体は、閉経期前または閉経期後の女性などの女性であってもよい。例えば、内分泌処置は、閉経期前および閉経期後の両方の被験体に行われている。いくつかの実施形態、特に、タモキシフェンが内分泌処置として選択される実施形態では、閉経期前のヒト女性被験体は、特に関連するグループであり得る。
【0109】
上記の態様の方法の実施形態では、サンプルは、血液、血漿、血清、脳脊髄液、リンパ、尿または滲出物のサンプルなどの体液サンプルであってもよい。好ましくは、体液サンプルは、血液、血漿、血清またはリンパのサンプルである。あるいは、サンプルは、細胞学的サンプルであってもよく、または糞便サンプルであってもよい。体液、細胞学的または糞便サンプルは、例えば、腫瘍細胞などの細胞を含んでなり得る。
【0110】
上記の態様の方法のさらなる実施形態では、サンプルは、腫瘍組織サンプルなどの組織サンプルであってもよい。例として、組織サンプルは、上皮内(in situ)もしくは浸潤性癌などの原発性乳房腫瘍から誘導してもよく、または被験体由来の続発性腫瘍(転移)から誘導してもよい。
【0111】
ANLNタンパク質発現は、細胞の膜、細胞質および核において観察されている。それ故、上記の態様の方法の実施形態では、工程b)の評価を、サンプルの腫瘍細胞などの細胞の核、細胞質および/または膜に限定することができる。評価を核に限定する場合、核のANLNタンパク質発現などの特徴のみが、評価において考慮される。そのような評価は、例えば、免疫組織化学染色によって援助され得る。最も強力な染色が核において観察されている。さらに、本発明者らは、ANLNタンパク質の核での発現が、処置予測および予後に関連し得ることを見出した。結果的に、上記の態様の方法の実施形態では、工程b)の評価を、サンプルの腫瘍細胞などの細胞の核に限定することができる。
【0112】
図5に示すように、転移は、ANLNタンパク質低被験体のグループよりANLNタンパク質高被験体のグループにおいてより多く認められることが示された。
【0113】
それ故、第3の態様の方法の実施形態では、予後は、転移を有する確率であり得、対照予後は、転移を有する対照確率であり得、そして工程d)は、確率が対照確率より高いと結論付けることを含んでなり得る。
【0114】
また、そのような実施形態の別の構成では、予後は、転移を生じる確率であり得、対照予後は、転移を生じる対照確率であり得、そして工程d)は、確率が対照確率より高いと結論付けることを含んでなり得る。
【0115】
例えば、転移は、遠隔転移であってもよい。
【0116】
転移を有するまたは生じる確率の結論付けに続いて、可能な転移を見出すことを目的とする転移の検査が行われ得る。そのような転移検査は、例えば、(骨格の)シンチグラフィー、肺のX線検査および/またはCTスキャンであってもよい。
【0117】
結果的に、以下の工程を含んでなる、被験体の乳癌が転移しているかどうかを決定するための方法が提供される:
a)被験体からより早期に得られるサンプルを提供する工程;
b)サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られるサンプル値と対照値とを比較する工程;および
サンプル値が対照値より高い場合、
d)転移検査を実施して、前記被験体において可能な転移を見出す工程。
【0118】
本開示物に関して、「予後」は、疾患の経過もしくは結果の予測およびその処置または疾患を患う被験体の生存率を指す。例えば、予後は、疾患からの生存または回復の可能性の決定、ならびに被験体の予想される生存期間の予測を指し得る。それはまた、疾患の再発、例えば、局部、局所または遠位での事象の可能性でもあり得る。さらに、予後は、3年間、5年間、10年間、15年間または他の任意の期間などの将来に至るある期間中の被験体の生存の可能性を確立することに関与し得る。結果的に、被験体の予後は、例えば、生存の確率であってもよく、そしていくらかの認識された生存測定値が存在する。乳癌に関連して通常使用される異なる3つの「生存測定値」、即ち、無再発生存率、乳癌特異的生存率および全生存率が、上記で考察されている。
【0119】
予後および対照予後に関与する上記の態様では、これらの2つの予後は、同じタイプの予後である。例として、対照予後が全生存率の対照確率である場合、結論は、対照確率全生存率に関係する被験体の全生存の確率であると言える。
【0120】
それ故、第3および第4の態様の方法の実施形態では、予後は、生存の確率であってもよく、これは、被験体の予後が生存の確率であり、そして対照予後が生存の確率であることを伴う。例えば、生存の確率は、5年生存、10年生存または15年生存の確率であってもよい。さらに、生存の確率は、例えば、全生存の確率、無再発生存の確率および乳癌特異的生存の確率からなる群から選択され得る。
【0121】
添付の図面に示すように、無再発生存率(RFS)について分析する場合、高いANLNタンパク質レベルと不良な予後との間の相関が、特に際立ち得る。結果的に、上記の態様の方法の実施形態では、予後は、無再発生存の確率であってもよい。
【0122】
対照値より高いANLNタンパク質のサンプル値、またはそのようなサンプル値が得られる被験体を、時々、本明細書において「ANLNタンパク質高」と称する。さらに、対照値以下のANLNタンパク質のサンプル値、またはそのようなサンプル値が得られる被験体を、時々、本明細書において「ANLNタンパク質低」と称する。
【0123】
本開示物に関して、用語「サンプル値」および「対照値」は、広範に解釈すべきである。これらの値を得るためのANLNタンパク質の定量化は、自動化手段を介するか、サンプルの目視もしくは顕微鏡検査に基づく評価システムを介するか、またはそれらの組み合わせを介して行うことができる。しかしまた、組織病理学の当業者などの熟練者は、例えば、ANLNタンパク質発現に対して染色されている組織スライドの検査だけで、サンプルおよび対照値を決定することが可能である。それ故、対照値より高いサンプル値の決定は、目視または顕微鏡検査時に、サンプル組織スライドが、より濃染され、および/または対照組織スライドの場合より大きな画分の染色細胞を示すという決定に対応し得る。サンプル値はまた、文言で記載された対照値などの文字の対照によって示された対照値と比較してもよい。結果的に、サンプルおよび/または対照値は、検査および比較時に当業者が決定する心証に基づく値として考えられ得る。
【0124】
例えば、当業者は、サンプルをANLNタンパク質高または低であるとして分類してもよく、ここで、サンプルが、先に検査した対照サンプルより多くのANLNタンパク質を含有する場合、サンプルは高いに分類され、そしてサンプルが対照サンプル以下である場合、低いに分類される。そのような評価は、サンプル、および必要であれば、対照サンプルを、例えば、ANLNタンパク質に選択的な抗体を含んでなる染色溶液で染色することによって、補助され得る。
【0125】
乳癌を有する被験体の予後の供給のため、または被験体由来のサンプル値との比較として使用するためのそのような被験体に関する処置の決定を行うために関連することが見出されている対照値は、様々な方法で提供することができる。当業者は、本開示物の教示内容の知識を用いて、過度の負担を伴うことなく、上記の態様の方法を実施するための関連する対照値を提供することができる。
【0126】
上記の態様の方法を実施するものは、例えば、対照値を所望の予後情報に適応してもよい。例えば、対照値を適応して、最も有意な予後情報、例えば、ANLNタンパク質高の生存率曲線とANLNタンパク質低の生存率曲線との間の最も大きな隔たりを得ることができる(例えば、図1または8を参照のこと)。大きな隔たりを生じ得る対照値の例は、1%または10%の核画分である。
【0127】
あるいは、対照値を適用して、予め決定された予後を有する被験体のグループ、例えば、85%より低い5年無再発生存の確率を有する被験体のグループを同定してもよい。
【0128】
上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、方法の被験体の健康な乳房または間質組織などの健康な組織におけるANLNタンパク質発現の量に対応し得る。もう1つの例として、対照値は、もう1つの比較可能な被験体由来の正常組織の標準的なサンプルにおいて測定されるANLNタンパク質発現の量によって提供され得る。もう1つの例として、対照値は、腫瘍組織、例えば、乳癌組織の対照サンプルなどの腫瘍細胞を含んでなる対照サンプルにおいて測定されるANLNタンパク質発現の量によって提供され得る。対照サンプルのタンパク質発現の量は、好ましくは、予め確立され得る。結果的に、対照値は、予め決定された量のANLNタンパク質を発現する細胞を含んでなる対照サンプルにおいて測定されるANLNタンパク質の量によって提供され得る。
【0129】
さらに、対照値は、例えば、予め決定されたか、または制御された量のANLNタンパク質を発現する癌細胞系統などの細胞系統を含んでなる対照サンプルにおいて測定されるANLNタンパク質発現の量によって提供され得る。当業者は、例えば、非特許文献33の開示内容を指針として、そのような細胞系統を提供する仕方について理解している。
【0130】
結果的に、上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、対照サンプルにおけるANLNタンパク質発現の量に対応する予め決定された値であってもよい。
【0131】
しかし、さらに以下において考察されるように、対照サンプル中のANLNタンパク質の量は、必ずしも対照値に直接対応する必要はない。対照サンプルはまた、様々な対照値を評価する方法を実施する者を援助するANLNタンパク質の量を提供し得る。例えば、対照サンプルは、「陽性」(高)および/または「陰性」(低)を提供することによって、対照値の心的イメージを作成するのに役立ち得る。
【0132】
本発明者らは、本明細書において、乳癌を患い、そしてANLNタンパク質発現を本質的に有さない被験体は、一般的に、比較的良好な予後を有することを示している。それ故、上記の態様の方法の実施形態では、工程b)のサンプル値は、サンプルにおいて検出可能なANLNタンパク質が認められることに対応する1、またはサンプルにおいて検出可能なANLNタンパク質が認められないことに対応する0のいずれかであり得る。結果的に、そのような実施形態では、サンプルの評価はデジタルである:ANLNタンパク質は、存在するかまたは存在しないかのいずれかとみなされる。本開示物に関して、「検出可能なANLNタンパク質が認められない」は、通常の操作状況中に上記の態様のいずれか1つに従って方法を操作する人または装置によって検出可能ではないほどに少ないANLNタンパク質の量を指す。「通常の操作状況」とは、当業者が本発明を実施するのに適切であることを見出す検査方法および技術を指す。
【0133】
従って、上記の態様の方法の実施形態では、工程c)の対照値は、0であってもよい。そして、上記の態様の方法のさらなる実施形態では、当然、工程c)の対照値は、検出可能なANLNタンパク質が認められない対照サンプルに対応し得ることになる。これは、対照値が、ANLNタンパク質を含まない対照サンプルの分析によって得ることができることを意味する。
【0134】
被験体からより早期に得られるサンプルまたは対照サンプルなどのサンプルにおけるANLNタンパク質発現の定量化のための1つの別法は、所定のレベルを超えるANLNタンパク質発現を示すサンプルにおける細胞の画分の決定である。画分は、例えば、次のものであり得る:細胞全体のANLNタンパク質発現を考慮する「細胞画分」;細胞の細胞質のみのANLNタンパク質発現を考慮する「細胞質画分」;または細胞の核のみのANLNタンパク質発現を考慮する「核画分」。核画分は、例えば、関連する細胞集団の≦1%、2〜25%、26〜75%または>75%の免疫反応性細胞として分類することができる。あるいは、核画分は、≦10%もしくは>10〜100%、または≦1%もしくは>1〜100%として分類することができる。この決定は、例えば、「核画分」を参考にして、実施例、セクション4において下記に記載のように実施することができる。「核画分」は、核において陽性染色を示すサンプル中の関連する細胞の百分率に対応し、ここで、核における中等度のまたは明瞭かつ強力な免疫反応性は陽性とみなされ、そして核における認められないまたは軽度の免疫反応性は陰性とみなされる。病理学の当業者は、方法を実施する場合に存在する条件下でどの細胞が関連するを理解しており、そして当業者の一般的知識および本開示物の教示内容に基づく核画分を決定することができる。関連する細胞は、例えば、腫瘍細胞であってもよい。さらに、当業者は、「細胞画分」または「細胞質画分」を用いて対応する測定を実施する仕方について理解している。
【0135】
被験体からより早期に得られるサンプルまたは対照サンプルなどのサンプルにおけるANLNタンパク質発現の定量化のためのもう1つの別法は、サンプルの全体的染色強度を決定することである。強度は、例えば、次のものであり得る:細胞全体のANLNタンパク質発現を考慮する「細胞強度」;細胞の細胞質のみのANLNタンパク質発現を考慮する「細胞質強度」;または細胞の核のみのANLNタンパク質発現を考慮する「核強度」。核強度は、臨床病理組織学的診断において使用される基準に従って、主観的に評価される。核強度決定の結果は、次のように分類することができる:不在=サンプルの関連する細胞の核において全体的な免疫反応性が認められない、弱=サンプルの関連する細胞の核において全体的な免疫反応性が軽度である、中=サンプルの関連する細胞の核において全体的な免疫反応性が中等度である、または強=サンプルの関連する細胞の核において全体的な免疫反応性が明瞭かつ強力である。病理学の当業者は、方法を実施する場合に存在する条件下でどの細胞が関連するかを理解しており、そして当業者の一般的知識および本開示物の教示内容に基づく核強度を決定することができる。関連する細胞は、例えば、腫瘍細胞であってもよい。さらに、当業者は、「細胞強度」または「細胞質強度」を用いて対応する測定を実施する仕方について理解している。
【0136】
本発明者らは、ANLNタンパク質の核発現が、予後を確立するのに特に関連することを見出した。それ故、上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、核画分、核強度またはそれらの組み合わせであってもよい。従って、サンプル値は、核画分、核強度またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0137】
好ましくは、サンプル値および対照値は、両方とも、同じタイプの値である。従って、上記の態様の方法の実施形態では、サンプル値および対照値は、それぞれ、核画分、核強度またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0138】
上記の態様の方法の実施形態では、工程d)における結論のための基準は、ANLNタンパク質陽性細胞の核画分のためのサンプル値、即ち、0.5%、例えば、1%より高い、例えば、2%より高い、例えば、5%より高い、例えば、10%より高い、例えば、15%より高い、例えば、20%より高い、例えば、25%より高い、例えば、30%より高い、例えば、35%より高い、例えば、40%より高い、例えば、50%より高い、例えば、55%より高い、例えば、60%より高い、例えば、65%より高い、例えば、70%より高い、例えば、75%より高い、例えば、80%より高い、例えば、85%より高い、例えば、90%より高い、例えば、95%より高い「核画分」であってもよい。
【0139】
上記の態様の方法の代替的または相補的な実施形態では、工程c)の対照値は、95%以下、例えば、90%以下、例えば、85%以下、例えば、80%以下、例えば、75%以下、例えば、70%以下、例えば、65%以下、例えば、60%以下、例えば、55%以下、例えば、50%以下、例えば、45%以下、例えば、40%以下、例えば、35%以下、例えば、30%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、例えば、2%以下、例えば、1%以下の核画分である。
【0140】
添付の図面、特に、図1および8に示すように、1%、10%または25%のnfのカットオフ値は、関連する予後または処置予測情報を提供する。10%のnfは、特に有望なカットオフ値であるようである。
【0141】
それ故、好適な実施形態では、工程c)の対照値は、35%以下、例えば、30%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、例えば、2%以下、例えば、1%以下の核画分であってもよい。
【0142】
他の好適な実施形態では、工程c)の対照値は、0.5〜30%、例えば、1〜25%、例えば、5〜15%、例えば、8〜12%、例えば、10%の核画分であってもよい。
【0143】
さらに、上記の態様の方法の実施形態では、工程d)における結論の基準は、サンプル、即ち、核強度の不在より高い、例えば、弱い核強度より高い、例えば、中等度の核強度より高い核強度の染色強度のためのサンプル値であってもよい。上記の態様の方法の代替的または相補的な実施形態では、工程c)の対照値は、中等度の核強度以下のANLNタンパク質発現であってもよく、例えば、弱い核強度以下のANLNタンパク質発現であってもよく、例えば、ANLNタンパク質発現の核強度が不在であってもよい。
【0144】
さらに、上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、2つの値から構成され得、ここで、工程d)における結論の基準は、これらの2つの値より高いサンプル値である。
【0145】
あるいは、上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、画分値と強度値、例えば、核画分値と核強度値との組み合わせであってもよい。
【0146】
また、上記の態様の方法の実施形態では、対照値は、核画分値および核強度値の関数であってもよい。例えば、そのような関数は、染色スコアであり得る。「染色スコア」は、以下の実施例、セクション3および表1に記載のように計算される。例えば、対照値は、0、1または2の染色スコアであってもよい。
【0147】
当業者は、強度値または画分値である他の対照値もまた、本発明の範囲内に当てはまることを理解している。同様に、当業者は、画分と強度との他の組み合わせもまた、本発明の範囲内に当てはまることを理解している。結果的に、対照値は、2つ、そしておそらくはなおそれを超える基準に関係し得る。
【0148】
一般に、対照値としての核強度値および/または核画分値の選択は、染色手順、例えば、用いられる抗ANLNタンパク質抗体および染色試薬に依存し得る。
【0149】
本開示物を指針として、当業者、例えば、病理学者は、細胞、細胞質もしくは核画分などの画分、または細胞、細胞質もしくは核強度などの強度をもたらす評価を実施する仕方について理解している。例えば、当業者は、所定の画分または強度の出現を確立するための予め決定された量のANLNタンパク質を含んでなる対照サンプルを使用することができる。
【0150】
しかし、対照サンプルは、実際の対照値を供給するためだけではなく、対照値に対応する量より高いANLNタンパク質の量を伴うサンプルの例を供給するために使用することができる。例として、免疫組織化学染色などの組織化学染色では、当業者は、高量のANLNタンパク質を有する染色されたサンプル、例えば、陽性対照の出現を確立するための対照サンプルを使用することができる。続いて、当業者は、対照値に対応する量のANLNタンパク質を伴うサンプルの出現などのより低量のANLNタンパク質を有するサンプルの出現を評価することができる。言い換えれば、当業者は、対照サンプルを使用して、対照サンプルより低いANLNタンパク質の量に対応する対照値の心的イメージを作成することができる。代替的に、または相補物として、そのような評価では、当業者は、例えば、「陰性対照」としてのそのようなサンプルの出現を確立するための低量のANLNタンパク質を有するか、またはANLNタンパク質を本質的に含まないもう1つの対照サンプルを使用することができる。
【0151】
例えば、10%の核画分の対照値を使用する場合、キットは、検出可能なANLNタンパク質が認められず、それ故、0の核画分に対応する、対照値より低い第1の対照サンプル;および75%以上の核画分に対応するANLNタンパク質の量を有する、対照値より高い第2の対照サンプルを含んでなり得る。
【0152】
結果的に、評価では、当業者は、高量のANLNタンパク質を伴うサンプルの出現を確立するための対照サンプルを使用することができる。そのような対照サンプルは、高量のANLNタンパク質を発現する組織を含んでなるサンプル、例えば、予め確立された高発現のANLNタンパク質を有する乳房腫瘍組織を含んでなるサンプルであってもよい。
【0153】
従って、対照サンプルは、強い核強度(ni)の例を提供し得る。次いで、強いniを伴うサンプルの出現の知識を用いて、当業者は、サンプルを次のniカテゴリー、例えば、上記の不在、弱、中および強に分割することができる。この分割は、検出可能なANLNタンパク質(陰性対照)を含まない対照サンプル、即ち、核強度が不在である対照サンプルによって、さらに援助され得る。また、対照サンプルは、75%以上の核画分(nf)を伴うサンプルの例を提供し得る。次いで、75%を超える陽性細胞を伴うサンプルの出現の知識を用いて、当業者は、例えば、より低い百分率の陽性細胞を有する他のサンプルの核画分を評価することができる。この分割は、ANLNタンパク質を本質的に含まない対照サンプル(陰性対照)、即ち、低いnf(例えば、<2%)、または0のnfを提供する対照サンプルによって、さらに援助され得る。
【0154】
上記のように、制御された量のANLNタンパク質を発現する細胞系統は、対照、特に、陽性対照として使用することができる。
【0155】
上記で考察したように、第3および第4の態様の方法を、選択された対照値、例えば、上記で提示した対照値のうちの1つに適応してもよく、そしてそのような場合、対照予後は、選択された対照値の結果である。非制限的例として、1%の核画分(nf=1%)を対照値として使用する場合、関連する対照予後は、「低い」曲線(実線)を見ることによって、図1a(分析したRFS)から誘導することができる。診断からの所与の時間において、「低い」曲線に対応する累積生存率を、図から読み取ることができ、例えば、5年(60箇月)後の92%は、92%の5年無再発生存の確率である対照予後を生じる。結果的に、nf=1%の対照値より高いサンプル値を有する同じグループの被験体は、92%より低い5年無再発生存の確率を有する。同じ理論を使用して、関連する対照予後は、対照値として10%の核画分を使用する場合、84%未満の5年無再発生存の確率であり得る(図1B)。
【0156】
10%の核画分を対照値として使用する後者の例では、対照予後は、0〜10%のnfを示す被験体に基づき、即ち、対照予後は、正確な対照値を示す被験体のグループから直接誘導されない。しかし、そのような対照値より高いサンプル値を有する被験体が、そのような対照予後より不良な予後を有する結論は、なお正しい。
【0157】
結果的に、上記の態様の方法の実施形態では、対照予後は、対照値nf=1%を使用する場合、82〜100%、例えば、87〜97%の5年無再発生存率の可能性であり得る。さらに、上記の態様の方法の実施形態では、対照予後は、対照値nf=10%を使用する場合、74〜94%、例えば、79〜89%の5年無再発生存率の可能性であり得る。
【0158】
また、上記の態様の方法の実施形態では、対照予後は、対照値nf=1%が使用される場合、72%以上の5年無再発生存率(図1a、「高い」曲線から誘導可能である)、対照値nf=10%を使用する場合、62%以上の5年無再発生存率(図1b、「高い」曲線から誘導可能である)、または対照値nf=25%が使用される場合、60%以上の5年無再発生存率(図1c、「高い」曲線から誘導可能である)であってもよい。
【0159】
さらに、上記の態様の方法の実施形態では、対照予後は、対照値nf=1%を使用する場合、85%以上の5年乳癌特異的生存率(図3a、「高い」曲線から誘導可能である)または対照値nf=1%を使用する場合、70%以上の5年全生存率(図4a、「高い」曲線から誘導可能である)であってもよい。
【0160】
しかし、上記の対照予後は、例示的な例としてのみ提供するものであって、そして当業者は、上記の態様に従う方法の有用性が、任意の特定の対照予後または予後の測定値に限定されるわけではないことを理解している。
【0161】
さらに、当業者は、タンパク質が関連遺伝子によってコードされ、そして関連する発現パターンを示す限り、上記の態様に従う方法の有用性が、問題の被験体に存在するANLNタンパク質の任意の特定の変異体の定量化に限定されないことを認識すべきである。非制限的例として、ANLNタンパク質は、以下から選択される配列を含んでなるアミノ酸配列を有する:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列。
【0162】
いくつかの実施形態では、上記の配列ii)は、配列番号1に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0163】
もう1つの非制限的例として、ANLNタンパク質は、以下から選択される配列を含んでなるアミノ酸配列を有する:
i)配列番号2;および
ii)配列番号2に少なくとも85%同一である配列。
【0164】
いくつかの実施形態では、上記の配列ii)は、配列番号2に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0165】
本開示物に関して使用される用語「%同一」は、次のとおりに計算される。CLUSTAL Wアルゴリズム(非特許文献34)を使用して、問い合わせ配列を標的配列に対してアラインする。各位置におけるアミノ酸残基を比較し、そして標的配列において同一の応答を有する問い合わせ配列における位置の百分率を同一%として報告する。また、標的配列は、比較する位置の数を決定する。結果的に、本開示物に関して、標的配列より短い問い合わせ配列は、標的配列に対して、決して100%同一になり得ない。例えば、85アミノ酸の問い合わせ配列は、100アミノ酸の標的配列に対して、最大で85%同一であり得る。
【0166】
上記の態様の方法の実施形態では、ANLNタンパク質は、ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能である検出可能および/または定量可能な親和性リガンドのサンプルへの適用を介して、検出および/または定量することができる。親和性リガンドの適用は、サンプル中の任意のANLNタンパク質への親和性リガンドの結合を可能にする条件下で実施される。
【0167】
具体化するために、上記の態様の方法の実施形態では、工程b)は、以下を含んでなり得る:
b1)サンプルに、評価しようとするANLNタンパク質との選択的相互作用が可能である定量可能な親和性リガンドを適用する工程であって、適用は、サンプルに存在する任意のANLNタンパク質への親和性リガンドの結合を可能にする条件下で実施される;
b2)非結合親和性リガンドを取り出す工程;および
b3)サンプルとの会合において残留する任意の親和性リガンドを定量して、量を評価する工程。
【0168】
「サンプル」との会合において残留する親和性リガンド」は、工程b2)において取り出されなかった親和性リガンド、例えば、サンプルに結合した親和性リガンドを指す。ここで、結合は、例えば、抗体と抗原との間の相互作用であってもよい。
【0169】
一旦、本開示物の教示内容を介して、乳癌についてのANLNタンパク質と予後もしくは処置予測との間の関連が公知になれば、適切な親和性リガンドを選択または製造し、そして検出および/または定量化のための適切な形式および条件を選択することは、当業者の能力の範囲内であることが認識される。それでも敢えて、有用性を証明し得る親和性リガンドの例、ならびに検出および/または定量化の形式および条件の例を、例示目的のために以下に示すことにする。
【0170】
それ故、上記の態様の方法のいくつかの実施形態では、抗体、そのフラグメントおよびその誘導体からなる群から選択される親和性リガンド、即ち、免疫グロブリン足場に基づく親和性リガンドを使用することができる。例えば、抗体は、単離されたおよび/または単一特異的であり得る。例えば、抗体は、マウス、ウサギ、ヒトおよび他の抗体を含む任意の起源のモノクローナルおよびポリクローナル抗体、ならびに部分的にヒト化された抗体、例えば、部分的にヒト化されたマウス抗体などの異なる種由来の配列を含んでなるキメラ抗体を含んでなる。ポリクローナル抗体は、好適な抗原による動物の免疫化によって産生される。定義された特異性を有するモノクローナル抗体は、KoehlerおよびMilstein(非特許文献35)によって開発されたハイブリドーマ技術を使用して、産生させることができる。本開示物の抗体フラグメントおよび誘導体は、抗体(それらはそのフラグメントまたは誘導体である)と同じ抗原(例えば、ANLNタンパク質)との選択的相互作用が可能である。抗体フラグメントおよび誘導体は、無傷(intact)な免疫グロブリンタンパク質の重鎖(CH1)の第1の定常ドメイン、軽鎖(CL)の定常ドメイン、重鎖(VH)の可変ドメインおよび軽鎖(VL)の可変ドメインからなるFabフラグメント;2つの可変抗体ドメインVHおよびVLからなるFvフラグメント(非特許文献36);可撓性ペプチドリンカーによって共に連結された2つのVHおよびVLドメインからなる一本鎖Fvフラグメント(scFv)(非特許文献37;Bence Jonesダイマー(非特許文献38);Bence Jonesダイマー(非特許文献38);ラクダ科重鎖ダイマー(非特許文献39)および単一可変ドメイン(非特許文献40;非特許文献41)、ならびに例えば、コモリザメ由来のNew Antigen Receptor(NAR)などの単一ドメイン足場(非特許文献42)および可変重鎖ドメインに基づくミニボディ(非特許文献36)を含んでなる。上記の態様の方法の実施形態では、定量可能な親和性リガンド、例えば、抗体またはそのフラグメントは、アミノ酸配列が配列番号1の配列を含んでなるタンパク質、好ましくは、配列番号1の配列からなるタンパク質で動物を免役する工程を含んでなるプロセスによって入手可能であり得る。
【0171】
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ならびにそれらのフラグメントおよび誘導体は、上記の方法態様に従うANLNタンパク質の検出および/または定量化におけるような選択的生体分子認識を必要とするアプリケーションにおいて、親和性リガンドを従来どおり選択する。しかし、当業者は、選択的結合リガンドのハイスループット作製および低コスト生産システムの需要が増加しているため、新たな生体分子多様性技術が、最近10年間の間に開発されてきたことを知っている。これは、生体分子認識アプリケーションにおいて結合リガンドとして有用であることが同様に証明されており、そして免疫グロブリンの代わりに、または免疫グロブリンと共に使用することができる免疫グロブリンならびに非免疫グロブリン起源の両方の新規のタイプの親和性リガンドの作製を可能にした。
【0172】
親和性リガンドの選択に必要な生体分子多様性は、複数の可能な足場分子のうちの1つのコンビナトリアル操作によって作製することができ、次いで、特異的および/または選択的親和性リガンドが、適切な選択プラットホームを使用して、選択される。足場分子は、免疫グロブリンタンパク質由来(非特許文献43)、非免疫グロブリンタンパク質由来(非特許文献44)、またはオリゴヌクレオチド由来(非特許文献45)であってもよい。
【0173】
多数の非免疫グロブリンタンパク質足場が、新規の結合タンパク質の開発において支持構造として使用されている。本開示物に従って使用するためのHMGCRタンパク質に対する親和性リガンドを作製するのに有用なそのような構造の非制限的例には、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメインならびにこれらのドメインの誘導体、例えば、プロテインZ(非特許文献46);リポカリン(非特許文献47);アンキリンリピートドメイン(非特許文献48);セルロース結合ドメイン(CBD)(非特許文献49;非特許文献50);γクリスタリン(Fiedler UおよびRudolph R、特許文献3);緑色蛍光タンパク質(GFP)(非特許文献51);ヒト細胞障害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA−4)(非特許文献52;非特許文献53);プロテアーゼ阻害剤、例えば、Knottinタンパク質(非特許文献54;非特許文献55)およびKunitzドメイン(非特許文献56;非特許文献57);PDZドメイン(非特許文献58);ペプチドアプタマー、例えば、チオレドキシン(非特許文献59;非特許文献60);スタフィロコッカルヌクレアーゼ(非特許文献61);テンダミスタット(非特許文献62;非特許文献63);フィブロネクチンIII型ドメインに基づくトリネクチン(非特許文献64;非特許文献65);ならびにジンクフィンガー(非特許文献66;非特許文献67;非特許文献68)がある。
【0174】
非免疫グロブリンタンパク質足場の上記の例として、新規の結合特異性の作製に使用される単一の無作為化ループを提示する足場タンパク質、堅牢な2次構造を伴うタンパク質足場が挙げられ、ここで、タンパク質表面から突出している側鎖が、新規の結合特異性の作製、および新規の結合特異性の作製に使用される非連続的超可変ループ領域を示す足場のために無作為化される。
【0175】
非免疫グロブリンタンパク質に加えて、オリゴヌクレオチドもまた、親和性リガンドとして使用してもよい。一本鎖核酸は、アプタマーまたはデコイと呼ばれ、良好に定義された3次元構造に折り畳まれ、そして高い親和性および特異性でそれらの標的に結合する。(非特許文献69;非特許文献70;非特許文献71)。オリゴヌクレオチドリガンドは、RNAまたはDNAのいずれかであり得、そして広範な標的分子クラスに結合することができる。
【0176】
上記の足場構造のいずれかの変異体のプールから定義された親和性リガンドを選択するために、多くの選択プラットホームが、好適な標的タンパク質に対する新規の特異的なリガンドの単離に利用可能である。選択プラットホームとして、ファージディスプレイ(非特許文献72)、リボソームディスプレイ(非特許文献73)、酵母ツーハイブリッドシステム(非特許文献74)、酵母ディスプレイ(非特許文献75)、mRNAディスプレイ(非特許文献76)、細菌ディスプレイ(非特許文献77、非特許文献78、非特許文献79)、マイクロビーズディスプレイ(非特許文献80、特許文献4)、SELEX(指数関数的濃縮によるリガンドの系統的発生)(非特許文献81)およびタンパク質フラグメント相補性アッセイ(PCA)(非特許文献82)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
それ故、上記の態様の方法の実施形態では、上記で列挙したタンパク質足場のうちのいずれかから誘導された非免疫グロブリン親和性リガンド、またはオリゴヌクレオチド分子である親和性リガンドを使用することができる。
【0178】
ANLNタンパク質の配列番号1は、他のヒトタンパク質と低い相同性を有する独特な配列からなり、そして作製されたアフィニティー試薬の交差反応性を最小限にするように設計された。結果的に、上記の態様の方法の実施形態では、定量可能な親和性リガンドは、配列番号1の配列からなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能であり得る。
【0179】
上記の態様の方法のいくつかの実施形態では、ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンドは、検出可能および/または定量可能である。そのような親和性リガンドの検出および/または定量化は、生物学的相互作用に基づくアッセイにおいて結合試薬の検出および/または定量化について当業者に公知の任意の方法で達成することができる。それ故、上記の任意の親和性リガンドを、定量的または定性的に使用して、ANLNタンパク質の存在を検出することができる。これらの「1次」親和性リガンドは、それら自体が、様々なマーカーによって標識され得、あるいは次いで、2次標識親和性リガンドによって検出されて、検出、可視化および/または定量化を可能にし得る。これは、当業者に公知であり、そして過度の実験に関係しない多数の技術のいずれか1つ以上を使用して、ANLNタンパク質との相互作用が可能な親和性リガンドまたは任意の2次親和性リガンドにコンジュゲートすることができる多数の標識のいずれか1つ以上を使用して、達成することができる。
【0180】
1次および/または2次親和性リガンドにコンジュゲートすることができる標識の非制限的例として、蛍光染料または金属(例えば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、フルオレスカミン)、発色団染料(例えば、ロドプシン)、化学発光化合物(例えば、ルミナール、イミダゾール)および生物発光タンパク質(例えば、ルシフェリン、ルシフェラーゼ)、ハプテン(例えば、ビオチン)が挙げられる。多様な他の有用な蛍光物質および発色団については、非特許文献83および非特許文献84に記載されている。親和性リガンドは、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ラクタマーゼ)、放射性同位元素(例えば、3H、14C、32P、35Sまたは125I)および粒子(例えば、金)で標識することができる。本開示物に関して、「粒子」は、分子を標識するのに適切な粒子、例えば、金属粒子を指す。さらに、親和性リガンドはまた、蛍光半導体ナノ結晶(量子ドット)で標識することができる。量子ドットは、より優れた量子収量を有し、そして有機蛍光団と比較してより光安定性であり、従って、より容易に検出される(非特許文献85)。様々な化学、例えば、アミン反応またはチオール反応を使用して、異なるタイプの標識を、親和性リガンドにコンジュゲートすることができる。しかし、アミンおよびチオール以外の他の反応基、例えば、アルデヒド、カルボン酸およびグルタミンを使用することもできる。
【0181】
上記の方法態様は、いくらかの既知の形式および設定のいずれかで利用することができ、その非制限的選択について以下で考察する。
【0182】
組織学に基づく設定では、そのANLNタンパク質標的に結合した標識親和性リガンドの検出、局在および/または定量化は、可視化技術、例えば、光学顕微鏡または免疫蛍光(immunofluoresence)顕微鏡に関係し得る。他の方法は、フローサイトメトリーまたはルミノメトリーを介する検出に関係し得る。
【0183】
例えば、被験体から摘出した乳腺組織由来の腫瘍組織サンプル(生検)などの生物学的サンプルは、ANLNタンパク質の検出および/または定量化に使用することができる。生検などの生物学的サンプルは、早期に得られるサンプルであってもよい。ある方法において早期に得られるサンプルを使用する場合、ヒトまたは動物身体に対して実践される方法の工程はない。親和性リガンドを、ANLNタンパク質の検出および/または定量化のために、生物学的サンプルに適用してもよい。この手順は、ANLNタンパク質の検出を可能にするではなく、加えて、その発現の分布および相対的レベルを示すことができる。
【0184】
親和性リガンド上の標識の可視化の方法として、フルオロメトリー、ルミノメトリーおよび/または酵素的技術を挙げることができるが、これらに限定されない。蛍光は、蛍光標識を特定の波長の光に暴露し、その後、特定の波長領域において放射された光を検出および/または定量することによって、検出および/または定量される。発光タグ化親和性リガンドの存在は、化学反応中に発生する発光によって、検出および/または定量することができる。酵素反応の検出は、化学反応から生じるサンプルの色のシフトによるものである。当業者は、適切な検出および/または定量化のために、異なる多様なプロトコルを改変することができることを知っている。
【0185】
上記の態様の方法の実施形態では、生物学的サンプルを、ニトロセルロースもしくは適用される生物学的サンプルに存在するANLNタンパク質を固定化することが可能な他の任意の固相支持体マトリックスなどの固相支持体またはキャリアに固定化することができる。本発明において有用ないくつかの周知の固体状態支持材料として、ガラス、炭水化物(例えば、Sepharose)、ナイロン、プラスチック、ウール、ポリスチレン、ポリエテン(polyethene)、ポリプロピレン、デキストラン、アミラーゼ、フィルム、樹脂、セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、アルミナ、ガブロおよびマグネタイトが挙げられる。生物学的サンプルの固定化後、ANLNタンパク質に特異的な1次親和性リガンドは、例えば、本開示物の実施例、セクション3または6に記載のように適用することができる。1次親和性リガンドがそれ自体で標識されない場合、支持マトリックスを、当該分野において公知の1つ以上の適切な緩衝液で洗浄することができ、続いて、2次標識親和性リガンドに暴露し、もう1回、緩衝液で洗浄して、結合していない親和性リガンドを取り出すことができる。その後、従来の方法で、選択的親和性リガンドを検出および/または定量することができる。親和性リガンドの結合特性は、固体状態支持体によって変動し得るが、当業者は、日常的な実験によって、それぞれの決定のための作動および至適アッセイ条件を決定することが可能であるべきである。
【0186】
結果的に、上記の態様の方法の実施形態では、b1)の定量可能な親和性リガンドは、定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドを使用して、検出することができる。それ故、b3)の定量化は、定量可能な親和性リガンドに対して親和性を有する2次親和性リガンドによって、行うことができる。例として、2次親和性リガンドは、抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体であり得る。
【0187】
例として、ANLNタンパク質の検出および/または定量化の1つの利用可能な方法は、後に酵素イムノアッセイ(例えば、EIAもしくはELISA)で検出および/または定量することができる酵素に親和性リガンドを連結させることによる。そのような技術は、良好に確立されており、そしてそれらは、当業者にとって過度の困難を伴わずに実現される。そのような方法では、生物学的サンプルは、固体材料、またはANLNタンパク質に対する親和性リガンドにコンジュゲートされた固体材料と接触され、次いで、酵素標識された2次親和性リガンドで検出および/または定量される。この後、適切な基質を酵素標識を伴う適切な緩衝液と反応させて、例えば、分光光度計、蛍光光度計、発光測定装置を使用して、または目視手段によって、検出および/または定量される化学部分を生成させる。
【0188】
上記で述べたように、1次および2次親和性リガンドは、検出および/または定量化を可能にする放射性同位元素で標識することができる。本開示物における適切な放射性標識の非制限的例は、3H、14C、32P、35Sまたは125Iである。標識された親和性リガンドの比活性は、放射性標識の半減期、同位体の純度、および標識がどのようにして親和性リガンドに組み入れられたかに依存する。親和性リガンドは、好ましくは、周知の技術(非特許文献86)を使用して、標識される。そのような放射性標識された親和性リガンドを使用して、インビボまたはインビトロでの放射能の検出により、ANLNタンパク質を可視化することができる。例えば、γカメラ、磁気共鳴分光法または放射トモグラフィーによる放射性核種スキャニングは、インビボおよびインビトロでの検出に機能する一方、γ/βカウンター、シンチレーションカウンターおよびラジオグラフィーもまた、インビトロで使用される。
【0189】
本開示物の第3の態様として、以下を含んでなる、上記の態様に従って、方法を実施するためのキットが提供される:
a)ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;および
b)親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬。
【0190】
第6の態様に従うキットの様々な成分は、本開示物の方法態様に関連して上記のように選択および指定することができる。
【0191】
それ故、本開示物に従うキットは、ANLNタンパク質に対する親和性リガンド、ならびにそれが特異的および/または選択的にANLNタンパク質に結合した後、特異的および/または選択的親和性リガンドを定量するのに役立つ他の手段を含んでなる。例えば、キットは、ANLNタンパク質、およびANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンドによって形成される複合体を検出および/または定量するための2次親和性リガンドを含有することができる。キットはまた、キットを容易かつ効率的に使用することを可能にするための親和性リガンド以外の様々な補助物質を含有することができる。補助物質の例として、キットの凍結乾燥タンパク質成分を溶解または再構成するための溶媒、洗浄緩衝液、酵素を標識として使用する場合、酵素活性を測定するための基質、パラフィンまたはホルマリン固定された組織サンプルを使用する場合、抗原へのアクセス可能性を増大するための抗原賦活液(target retrieval solution)、および反応抑止剤(reaction arrester)などの物質、例えば、イムノアッセイ試薬キットにおいて一般に使用されるバックグランド染色を減少するための内因性酵素ブロック溶液および/または染色の対比を増加するための対比染色溶液が挙げられる。
【0192】
それ故、キット態様の実施形態では、定量可能な親和性リガンドは、抗体、そのフラグメントおよびその誘導体からなる群から選択される。例として、そのような定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が、配列番号1の配列または配列番号1に少なくとも85%同一である配列、好ましくは、配列番号1の配列を含んでなるタンパク質でウサギなどの動物を免役する工程を含んでなる入手可能なプロセスであり得る。また、定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1の配列からなるタンパク質でウサギなどの動物を免疫する工程を含んでなる入手可能なプロセスであり得る。そのような免疫化は、例えば、以下の実施例、セクション2に記載のように実施することができる。また、抗体、そのフラグメントおよび誘導体は、例えば、単離されたおよび/または単一特異的であり得る。調製のプロセスを含む単離されたおよび単一特異的ポリクローナル抗体の例を、実施例、セクション2において下記に示す。
【0193】
あるいは、定量可能な親和性リガンドは、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメイン、リポカリン、アンキリンリピートドメイン、セルロース結合ドメイン、γクリスタリン、緑色蛍光タンパク質、ヒト細胞障害性Tリンパ球関連抗原4、プロテアーゼ阻害剤、PDZドメイン、ペプチドアプタマー、スタフィロコッカルヌクレアーゼ、テンダミスタット、フィブロネクチンIII型ドメインおよびジンクフィンガーからなる群から選択される足場から誘導されるタンパク質リガンドである。さらなる別法として、定量可能な親和性リガンドは、オリゴヌクレオチド分子である。
【0194】
キット態様の実施形態では、定量可能な親和性リガンドは、以下から選択される配列を含んでなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能であり得る:
i)配列番号2;および
ii)配列番号2に少なくとも85%同一である配列。
【0195】
いくつかの実施形態では、上記の配列ii)は、配列番号2に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0196】
上記においてさらに考察したように、配列番号1の配列は、本開示物の親和性リガンドによって認識されるために、特に適切な抗原に設計されている。結果的に、キット態様の実施形態では、定量可能な親和性リガンドは、以下から選択される配列を含んでなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能であり得る:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列。
【0197】
いくつかの実施形態では、上記の配列ii)は、配列番号1に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0198】
さらに、定量可能な親和性リガンドは選択的相互作用が可能であり得るANLNタンパク質は、200アミノ酸残基以下、例えば、190アミノ酸残基以下、例えば、180アミノ酸残基以下、例えば、170アミノ酸残基以下、例えば、160アミノ酸残基以下、例えば、150アミノ酸残基以下、例えば、140アミノ酸残基以下、例えば、136アミノ酸からなり得る。
【0199】
配列番号1は、136アミノ酸からなる。
【0200】
キット態様の実施形態では、定量可能な親和性リガンドは、配列番号1の配列からなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能であり得る。
【0201】
さらに、キット態様の実施形態では、検出可能な親和性リガンドは、蛍光染料または金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含んでなり得る。あるいは、親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬は、定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドを含んでなる。例として、定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドは、蛍光染料または金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含んでなる。
【0202】
キット態様に従うキットはまた、サンプル値との比較のために使用すべき対照値の供給または産出のための対照サンプルを有利に含んでなり得る。例えば、対照サンプル(reference may sample)は、予め決定された量のANLNタンパク質を含んでなり得る。そのような対照サンプルは、例えば、予め決定された量のANLNタンパク質を有する組織サンプルによって構成され得る。次いで、組織対照サンプルは、対照組織サンプルおよび被験体サンプルにおける発現レベルの、目視検査などの手動、または自動化された比較によって、研究しているサンプル中のANLN発現状態の決定において当業者によって使用され得る。もう1つの例として、対照サンプルは、予め決定された、または制御された量のANLNタンパク質を発現する癌細胞系統などの細胞系統を含んでなり得る。当業者は、例えば、非特許文献33の開示内容を指針として、そのような細胞系統を提供する仕方について理解している。例として、細胞系統は、ホルマリン固定化してもよい。また、そのようなホルマリン固定化細胞系統を、パラフィン包埋してもよい。
【0203】
語句「対照値の供給のための対照サンプル」は、本開示物に関して、広範に解釈すべきである。対照サンプルは、実際に対照値に対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得るが、それはまた、対照値より高い値に対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得る。後者の場合、「高い」値は、例えば、「高い」値より低い対照値の出現を評価するための上位対照(陽性対照)として方法を実施する者によって、使用され得る。免疫組織化学の当業者は、そのような評価をする仕方について理解している。さらに、代替的または相補的な例として、当業者は、例えば、陰性対照として、そのような評価における「低い」値の供給のための低い量のANLNタンパク質を含んでなるもう1つの対照サンプルを使用することができる。これについては、さらに、方法態様に関連して上記で考察している。
【0204】
結果的に、キット態様の実施形態では、対照サンプルは、対照値に対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得る。例として、対照サンプルは、95%以下、例えば、90%以下、例えば、85%以下、例えば、80%以下、例えば、75%以下、例えば、70%以下、例えば、65%以下、例えば、60%以下、例えば、55%以下、例えば、50%以下、例えば、45%以下、例えば、40%以下、例えば、35%以下、例えば、30%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、例えば、2%以下、例えば、1%以下の核画分に対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得る。
【0205】
添付の図面、特に、図1および8に示すように、1%、10%または25%のnfのカットオフ値は、関連する予後または処置予測情報を提供する。1%または10%、特に、10%のnfは、特に有望なカットオフ値であるようである。
【0206】
それ故、好適な実施形態では、対照サンプルは、35%以下、例えば、30%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、例えば、2%以下、例えば、1%以下の核画分に対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得る。
【0207】
他の好適な実施形態では、対照サンプルは、0.5〜30%、例えば、1〜25%、例えば、5〜15%、例えば、8〜12%、例えば、10%の核画分に対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得る。
【0208】
代替的に、または相補物として、対照サンプルは、中等度の核強度以下のANLNタンパク質発現、例えば、弱い核強度以下のANLNタンパク質発現、例えば核強度が不在のANLNタンパク質発現に対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得る。
【0209】
さらに、対照サンプルは、0、1、2または3の染色スコアに対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得る。
【0210】
細胞質画分値または細胞質強度値の供給については、方法態様に関連して上記で考察している。
【0211】
さらに、キット態様の代替的または相補的な実施形態では、キットは、対照値より高い値に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる対照サンプルを含んでなり得る。これらの実施形態では、対照サンプルは、例えば、75%以上の核画分および/または核発現の強い細胞質強度に対応するANLNタンパク質の量を含んでなり得る。
【0212】
キット態様の他の代替的または相補的な実施形態では、キットは、対照値より低い値、例えば、核強度の不在および/または≦1%ANLNタンパク質陽性細胞、例えば、0%ANLNタンパク質陽性細胞の核画分に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる対照サンプルを含んでなり得る。
【0213】
また、キット態様の他の代替的または相補的な実施形態では、キットは、さらに、以下を含んでなり得る:予め決定された対照値に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる対照サンプル;予め決定された対照値より高い値に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる対照サンプル;および/または予め決定された対照値より低い値に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる対照サンプル。
【0214】
結果的に、キットの実施形態は、次を含んでなり得る:予め決定された対照値より高いANLNタンパク質の量を含んでなる第1の対照サンプル;および予め決定された対照値より低いANLNタンパク質の量を含んでなる第2の対照サンプル。
【0215】
キット態様の実施形態では、対照サンプルは、組織サンプル、例えば、肉眼または顕微鏡的評価に適応される組織サンプルであってもよい。例として、組織対照サンプルは、パラフィンもしくは緩衝ホルマリン中に固定化され得る、および/または顕微鏡ガラススライド上にマウントされるμm薄切片に組織処理され得る。組織対照サンプルは、さらに、ANLNタンパク質に対する抗体などの親和性リガンドによる染色に適応され得る。
【0216】
結果的に、キット態様の実施形態では、対照サンプルは、上記で考察した対照値のいずれか1つなどの任意の関連する対照値を直接的または間接的に提供するように適用され得る。
【0217】
従って、さらに、キット態様の対照サンプルの実施形態については、方法態様の対照値および対照サンプルに関連して上記で考察している。
【0218】
さらに、上記で考察したように、ANLNタンパク質発現のレベルとホルモン受容体状態との組み合わせは、乳癌被験体の処置予測または予後に関する結論を導き出すことに関連する情報を提供し得る。
【0219】
それ故、キットはまた、被験体のホルモン受容体状態を確立するための手段を含み得る。
【0220】
結果的に、キット態様の実施形態では、キットは、さらに、以下を含んでなり得る:
a’)エストロゲン受容体との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;およびb’)そのような親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬;ならびに/あるいは
a’’)プロゲステロン受容体との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;およびb’’)そのような親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬。
【0221】
a’)およびa’’)の定量可能な親和性リガンドは、それぞれ、ER状態およびPR状態の決定のために提供される。
【0222】
b)、b’)およびb’’)の試薬は、同じであっても、または異なっていてもよい。
【0223】
工程a’)およびa’’)に適切な定量可能な親和性リガンドは、それぞれ当業者に周知であり、そして市販されている。
【0224】
結果的に、キットは、上記の方法態様のいくつかの実施形態に従って結論を導き出すのに必要なホルモン状態の情報を供給するための手段を含み得る。
【0225】
ANLNタンパク質は、乳癌の予後または処置予測に関する多くのアプリケーションを有し得る。例えば、ANLNタンパク質は、予後因子もしくは内分泌処置の予測因子の産生、選択または精製に使用してもよい。
【0226】
本開示物に関して、「予後因子」は、予後の確立において価値のある少なくとも1つの特性を指す。例えば、「予後因子」は、予後マーカーとの選択的相互作用が可能であり得る。それ故、予後因子は、乳癌を有する患者の予後を確立するためのものである。
【0227】
本開示物に関して、「予後マーカー」は、存在することで予後の確立において価値を有する何らかの材料を指す。
【0228】
さらに、本開示物に関して、「内分泌処置予測因子」は、乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置についての処置予測の確立において価値のある少なくとも1つの特性を有する因子を指す。例えば、「内分泌処置予測因子」は、内分泌処置の指標との選択的相互作用が可能であり得る。
【0229】
本開示物に関して、「内分泌処置の指標」は、内分泌処置に対する応答などの内分泌処置の適性を示す何らかの材料を指す。例として、「乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置指標」は、ヒトなどの被験体が、内分泌処置を経験すべきかどうか、もしくは内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかについての情報または指針を付与し得る。
【0230】
また、本明細書に記載のように、ANLNタンパク質の存在は、乳癌の予後および乳癌処置の選択に関連し得る。
【0231】
さらに、1つ以上の上記の使用を適合するために、136アミノ酸のANLNタンパク質(配列番号1)を、他のヒトタンパク質に対して低い配列類似性を有する独特な配列からなり、作製されたアフィニティー試薬の所望されない交差反応性を最小限にし、そしてなお、コンフォメーショナルエピトープの形成を可能にし、そして細菌系における効率的な発現を可能にするのに適切なサイズであるように設計した。
【0232】
それ故、本開示物の第7の態様として、以下から選択される200アミノ酸残基以下からなるANLNタンパク質が提供される:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列。
【0233】
いくつかの実施形態では、上記の配列ii)は、配列番号1に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0234】
第7の態様の実施形態では、ANLNタンパク質は、190アミノ酸残基以下、例えば、180アミノ酸残基以下、例えば、170アミノ酸残基以下、例えば、160アミノ酸残基以下、例えば、150アミノ酸残基以下、例えば、140アミノ酸残基以下、例えば、138アミノ酸残基以下、例えば、136アミノ酸からなる。
【0235】
第7の態様の実施形態では、ANLNタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列からなる。
【0236】
さらに、本開示物の第8の態様として、内分泌処置指標または予後マーカーとしてのANLNタンパク質の使用が提供される。
【0237】
従来、タモキシフェン処置などの内分泌処置は、ER+および/またはPR+などのホルモン受容体陽性の乳癌を有する被験体に施されており、そして結果的に、処置予測は、特に、このグループに関連する。
【0238】
それ故、内分泌処置指標は、例えば、ER陽性乳癌を有する哺乳動物被験体のためのものであり得る。
【0239】
さらに、予後マーカーは、例えば、乳癌などの癌の予後マーカーであり得る。
【0240】
さらに、予後マーカーは、例えば、遠隔転移などの乳癌転移を有する確率の指標であってもよい。
【0241】
本発明者らが見出したANLNタンパク質の予後および処置予測の関連性は、様々なアッセイまたは他の検査設定におけるANLNタンパク質の適用を伴う。
【0242】
第8の態様の構成として、乳癌を有する患者の予後を確立するための予後因子または内分泌処置予測因子の産生、選択もしくは精製のためのANLNタンパク質、またはその抗原活性なフラグメントの使用が提供される。
【0243】
本開示物に関して、ANLNタンパク質の「抗原活性なフラグメント」は、親和性リガンド、例えば、フラグメントを含んでなるANLNタンパク質と相互作用すべき抗体の作製に有用であるのに十分なサイズのフラグメントである。
【0244】
例えば、予後因子、または内分泌処置予測因子は、ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンドであってもよい。例えば、親和性リガンドは、好ましくは、配列番号1の配列からなるタンパク質との選択的相互作用が可能であり得る。また、親和性リガンドは、好ましくは、抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体であり得る。さらに、抗体は、単離されたおよび/または単一特異的であり得る。
【0245】
本開示物の教示内容を指針として、当業者は、予後因子の産生、選択または精製においてANLNタンパク質を使用する仕方について理解している。例えば、第8の態様の構成に従う使用は、ANLNタンパク質が固定化されている固相支持体上でのアフィニティー精製を含んでなり得る。固相支持体は、例えば、カラムにおいて配置されていてもよい。さらに、使用は、ポリペプチドが固定化されている固相支持体を使用する、ANLNタンパク質に対して特異性を有する親和性リガンドの選択を含んでなり得る。そのような固相支持体は、96ウェルプレート、磁気ビーズ、アガロースビーズまたはセファロースビーズであってもよい。さらに、使用は、例えば、デキストランマトリックスを使用する可溶性マトリックス上の親和性リガンドの分析、またはBiacoreTM装置などの表面プラズモン共鳴装置における使用を含んでなり得、ここで、分析は、例えば、多くの潜在的な親和性リガンドの固定化されたANLNタンパク質に対する親和性をモニターすることを含んでなり得る。
【0246】
また、予後因子または処置予測因子の産生のために、ANLNタンパク質を、動物の免疫化において使用することができる。このことについては、さらに上記で考察している。
【0247】
そのような使用は、以下の工程を含んでなる方法に関係し得る:
i)ANLNタンパク質を抗原として使用して、動物を免疫する工程;
ii)免疫動物から予後因子を含んでなる血清を入手する工程;および場合により、
iii)血清から予後因子を単離する工程。
【0248】
あるいは、第1の工程後の工程は、以下のとおりであり得る:
ii’)免疫動物から細胞を入手する工程であって、細胞は、予後因子をコードするDNAを含んでなる、
iii’)細胞と骨髄腫細胞とを融合させて、少なくとも1つのクローンを入手する工程、および
iv’)クローンによって発現される予後因子を入手する工程。
【0249】
第8の態様の実施形態では、ANLNタンパク質のアミノ酸配列は、以下から選択される配列を含んでなり得る:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列。
【0250】
いくつかの実施形態では、配列ii)は、配列番号1に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0251】
さらに、第8の態様の実施形態では、ANLNタンパク質のアミノ酸配列は、以下から選択される配列を含んでなり得る:
i)配列番号2;および
ii)配列番号2に少なくとも85%同一である配列。
【0252】
いくつかの実施形態では、配列ii)は、配列番号2に少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一または少なくとも99%同一である。
【0253】
また、第8の態様の実施形態では、ANLNタンパク質は、第7の態様に従ういずれのANLNタンパク質であってもよい。
【0254】
本発明者らは、ANLNタンパク質が、乳癌の予後および処置の推定に利用され得ることを見出した。さらに、ANLNタンパク質に対して親和性を有する親和性リガンドを開発した。しかし、本発明の範囲は、単一のタイプの親和性リガンドに限定されるのではなく、そして本発明の概念は、ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な任意のタイプの親和性リガンドを使用して、実践することができる。
【0255】
それ故、本開示物の第9の態様として、ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンドが提供される。
【0256】
ANLNタンパク質の配列番号1は、他のヒトタンパク質と低い相同性を有する独特な配列からなり、そして作製されたアフィニティー試薬の交差反応性を最小限にするように設計された。それ故、第9の態様の実施形態では、親和性リガンドは、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなる、好ましくは、配列番号1からなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能であり得る。
【0257】
第9の態様の実施形態では、親和性リガンドは、抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体であってもよい。例えば、抗体およびそのフラグメントまたは誘導体は、単離されたおよび/または単一特異的であり得る。
【0258】
配列番号1はまた、特に、免疫化のために設計された、例えば、成熟タンパク質から切断除去されるため、大腸菌(E.coli)における効率的な発現を確実にするために膜貫通領域を含まず、そしていずれのシグナルペプチドも含まないように設計された。結果的に、抗体またはそのフラグメントもしくはその誘導体は、例えば、アミノ酸配列が配列番号1を含んでなる、好ましくは、配列番号1からなるタンパク質でウサギなどの動物を免疫化する工程を含んでなるプロセスによって入手可能であるものであり得る。例えば、免疫化プロセスは、フロイント完全アジュバント中のタンパク質による1次免疫を含んでなり得る。また、免疫化プロセスは、少なくとも2回、2〜6週間の間隔で、フロイント不完全アジュバント中のタンパク質によりブーストすることをさらに含んでなり得る。当該技術分野において公知である所与の標的に対する抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体の産生のためのプロセスは、本開示物のこの態様に関連して適用され得る。もちろん、上記で考察したANLNタンパク質(例えば、配列番号2)またはその抗原活性なフラグメント(例えば、配列番号1)のそれらの変異体のいずれも、抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体を作製するためのそのようなプロセスに使用することができる。
【0259】
親和性リガンドはまた、インビボでの画像などのインビボ診断に使用され得る。
【0260】
それ故、第9の態様の実施形態では、親和性リガンドは、乳癌を有する哺乳動物被験体の予後またはER陽性乳癌などの乳癌を有する哺乳動物被験体のタモキシフェン処置などの内分泌処置の結果の予測を確立するためのインビボでの方法に使用するためのものである。被験体の内分泌処置の結果の予測の確立は、例えば、被験体が、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかを決定することであり得る。そのような実施形態では、親和性リガンドは、例えば、即ち、検出可能な標識で標識された画像を可能にするために標識され得る。抗体などの親和性リガンドを標識するための適切な標識は、当業者に周知である。乳癌を有する哺乳動物被験体の予後または処置予測を確立するためのインビボ方法は、例えば、インビボでの腫瘍におけるANLNタンパク質発現を示し得、次いで、処置決定の基礎を形成し得る。この実施形態に関して使用することができる様々なインビボ方法、標識および検出技術については、さらに、上記で考察している。
【0261】
さらに、第9の態様の実施形態では、乳癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するためのものであり得る。例えば、予後は、転移を有する確率であってもよい。
【0262】
また、第9の態様の実施形態では、親和性リガンドは、乳癌を有する被験体由来のサンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価するためのものであり得る。
【0263】
本開示物の第10の態様として、予後因子として第9の態様に従う親和性リガンドの使用が提供される。
【0264】
第10の態様の実施形態では、使用は、乳癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するためのものである。例えば、予後は、転移を有する確率であってもよい。転移との関係については、さらに上記で考察している。さらに、
【0265】
本開示物の第10の態様の構成として、内分泌処置予測因子として第9の態様に従う親和性リガンドの使用が提供される。
【0266】
従って、実施形態では、乳癌、例えば、ER陽性乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置、例えば、タモキシフェン処置の結果の予測を確立するための使用が提供される。
【0267】
また、乳癌の予後のための予後因子または内分泌処置予測因子の製造における第9の態様に従う親和性リガンドの使用が提供される。
【0268】
本開示物の観点から、内分泌処置、特に、タモキシフェン処置は、主に、ホルモン受容体陽性かつANLNタンパク質陰性である被験体に利益をもたらすようである。従来、すべてのER陽性被験体は、タモキシフェンなどの内分泌処置を受けてきた。しかし、図14〜16において、そのような処置は、特に、ホルモン受容体陽性(例えば、ER陽性)およびANLNタンパク質陰性被験体に有益である一方、処置は、ホルモン受容体陽性かつANLNタンパク質陰性被験体の生存率を制限するか、または影響を及ぼさないことが示される。結果的に、新たなサブグループの被験体が提供される。
【0269】
それ故、本開示物の第11の態様として、乳癌を有するヒトなどの哺乳動物被験体の処置に使用するための内分泌処置製品が提供され、ここで、被験体は、ホルモン受容体陽性かつANLNタンパク質陰性である。
【0270】
その関連する態様として、乳癌を有するヒトなどの哺乳動物被験体の処置のための医薬品の製造における内分泌処置製品の使用が提供され、ここで、被験体は、ホルモン受容体陽性かつANLNタンパク質陰性である。
【0271】
「ホルモン受容体陽性」である被験体は、ERまたはPR、好ましくは、ERなどのホルモン受容体に対して陽性であることが見出されている被験体由来の乳癌を指す。当業者は、乳癌が、ホルモン受容体に対して陽性であるかどうかを決定するための仕方を知っている。例えば、ERまたはPR状態を決定するための市販のキットを、決定のために使用することができる。市販のキットは、例えば、ER/PRpharmDX(DakoCytomation)であってもよく、そして当業者は、製造者の指示に従って、キットを使用することができる。
【0272】
さらに、ERまたはPR診断を確立するために、当業者は、非特許文献87に転向してもよい。Allredは、全スコア(Allredスコア)を提示しており、そしてERおよびPRの両方について、2より高いAllredスコアは陽性とみなされ、そして2以下のAllredスコアは陰性とみなされる。
【0273】
あるいは、サンプルをホルモン受容体陽性または陰性、例えば、ER+またはER−であると分類する場合、当業者は、当該技術分野内において認識される限界値である10%陽性細胞をカットオフとして使用してもよい。
【0274】
内分泌処置製品の態様の実施形態では、ホルモン受容体陽性の乳癌は、ER+またはPR+の乳癌、例えば、ER+の乳癌、PR+の乳癌、もしくはER+かつPR+の乳癌であってもよい。
【0275】
「ANLNタンパク質陰性」である被験体は、被験体の腫瘍がANLNに対して陰性であることが見出されていることを指す。例えば、被験体から誘導される任意のANLNタンパク質パラメータが、被験体が内分泌処置から利益を得る可能性があることを示す場合、被験体は、「ANLNタンパク質陰性」であるとみなしてよい。さらに、被験体由来の関連する生物学的サンプルが、関連する対照値以下のサンプル値に対応するANLNタンパク質の量を含有することが見出されている場合、被験体は、ANLNタンパク質陰性とみなしてよい。関連するサンプルおよび対照値については、方法態様に関連して上記で考察している。非制限的例として、被験体由来の関連サンプル、例えば、原発性または続発性腫瘍サンプルが、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、例えば、1%以下、例えば、<1%.の核画分に対応する量のANLNタンパク質を含んでなる場合、乳癌被験体は、ANLNタンパク質陰性とみなしてよい。
【0276】
上記の定義から、「被験体はANLNタンパク質陰性である」および「被験体の癌はANLNタンパク質陰性である」という表現は、交換可能に使用してもよいと言える。
【0277】
内分泌処置製品の態様の実施形態では、内分泌処置製品は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、アロマターゼ、およびステロイド性エストロゲン受容体アンタゴニストから選択することができる。SERMは、例えば、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、アルゾキシフェンまたはタモキシフェンによる処置であってもよい。アロマターゼ阻害剤は、例えば、アナストロゾール、レトロゾールまたは(och)エキセメスタンであってもよい。さらに、ステロイド性エストロゲン受容体アンタゴニストは、フルベストラントであってもよい。好ましくは、内分泌処置製品は、SERM、例えば、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、アルゾキシフェンまたはタモキシフェンから選択されるSERMであってもよい。例えば、内分泌処置製品の態様の実施形態では、内分泌処置はタモキシフェンであってもよい。
【0278】
内分泌処置に関与する上記のすべての態様のすべての実施形態では、内分泌処置は、例えば、ER陽性および/またはPR陽性などのホルモン受容体陽性の乳癌を有する哺乳動物被験体のタモキシフェン処置などのSERM治療であってもよい。
【0279】
本開示物に関して、例えば、親和性リガンドとその標的もしくは抗原との「特異的」または「選択的」相互作用は、特異的相互作用と非特異的相互作用との間、または選択的相互作用と非選択的相互作用との間の区別に意義が生じるような相互作用を意味する。2つのタンパク質間の相互作用は、時々、解離定数によって測定される。解離定数は、2つの分子間の結合の強さ(または親和性)を説明する。典型的に、抗体とその抗原との間の解離定数は、10−7〜10−11Mである。しかし、高い特異性には、必ずしも高い親和性が必要であるわけではない。対応物に対する(モル範囲で)低い親和性を有する分子は、かなり高い親和性を有する分子と同じ程度に特異的であることが示されている。本開示物の場合、特異的または選択的相互作用は、特定の方法を使用して、天然に存在するかまたは処理された生物学的液体の組織サンプルもしくは液体サンプルにおいて他のタンパク質が存在する所与の条件下で、特異的タンパク質、標的タンパク質またはそのフラグメントの存在ならびに/あるいは量を決定することができる程度を指す。言い換えれば、特異性または選択性は、関連するタンパク質を区別する能力である。特異的および選択的は、時々、本明細書において交換可能に使用される。例えば、抗体の特異性または選択性は、以下の実施例、セクション2におけるように決定され得、ここで、分析は、タンパク質アレイ設定およびウエスタンブロットを使用して、実施された。特異性および選択性の決定はまた、非特許文献88にも記載されている。
【0280】
本開示物に関して、「単一特異的抗体」は、それ自体の抗原に対してアフィニティー精製されているポリクローナル抗体の集団の1つであり、それによって、他の抗血清タンパク質および非特異的抗体からそのような単一特異的抗体を分離している。このアフィニティー精製は、その抗原に選択的に結合する抗体を生じる。本発明の場合、ポリクローナル抗血清は、標的タンパク質に選択的な単一特異的抗体を得るための2工程の免疫アフィニティーに基づくプロトコルによって、精製される。捕捉因子として固定化されたタグタンパク質を使用する1次枯渇工程において、抗原フラグメントの包括的親和性タグに対する抗体を取り出す。第1の枯渇工程後、抗原に特異的な抗体を富化するために、捕捉因子として抗原を伴う第2のアフィニティーカラム上で、血清を単離する(また、非特許文献88も参照のこと)。
【実施例】
【0281】
ANLNタンパク質に対する単一特異的抗体の作製ならびに正常および癌サンプルにおいてANLNタンパク質を検出するためのそれらの使用
1.抗原の作製
a)材料および方法
テンプレートとしてヒトゲノム配列を有するバイオインフォマティクスツールを使用して、EnsEMBL Gene ID ENSG00000011426によってコードされる標的タンパク質の適切なフラグメントを選択した(非特許文献89)。ANLNタンパク質(配列番号2;EnsEMBL登録番号ENSP00000265748)のアミノ酸333〜468(配列番号1)に対応する136アミノ酸長フラグメントの産生のためのテンプレートとして、フラグメントを使用した。タンパク質フラグメントを、他のヒトタンパク質と低い配列類似性を有する独特な配列からなり、作製されるアフィニティー試薬の所望されない交差反応性を最小限にし、そしてなおコンフォメーショナルエピトープの形成を可能にし、そして細菌系における効率的な発現を可能にするのに適切なサイズであるように設計した。
【0282】
EnsEMBL登録番号ENST00000265748(配列番号3)のヌクレオチド1201〜1608を含有するANLN遺伝子転写物のフラグメントを、Platinum(登録商標)Taq(Invitrogen)を有するSuperscriptTMOne−Step RT−PCR増幅キットおよびテンプレートとしてのヒト全RNAプールパネル(Human Total RNA Panel IV,BD Biosciences Clontech)によって単離した。フランキング制限部位NotIおよびAscIを、PCR増幅プライマーを介してフラグメントに導入して、発現ベクターへのインフレームクローニングを可能にした(順方向プライマー:ATTGTGAAGTCAACTTTATCCC(配列番号4)、逆方向プライマー:GTGAGTTTCCTGTTTGGTTTC(配列番号5))。得られるビオチン化PCR産物を、DynabeadsM280ストレプトアビジン(Dynal Biotech)(非特許文献90)に固定化し、そしてNotI−AscI消化によって、固相支持体上でのNotI−AscI消化(New England Biolabs)に供し、固定化金属イオンクロマトグラフィー(IMAC)精製のためのヘキサヒスチジルタグおよび連鎖球菌プロテインG由来の免疫増強アルブミン結合タンパク質(ABP)からなるN−末端二重親和性タグ(非特許文献91;非特許文献92)を伴うフレーム内のpAff8cベクター(非特許文献90)にライゲートし、そして大腸菌(E.coli)BL21(DE3)細胞(Novagen)に形質転換した。クローンの配列を、製造者の推奨に従って、TempliPhiDNA配列決定増幅キット(GE Healthcare,Uppsala,Sweden)を使用して増幅したプラスミドDNAのダイターミネーターサイクルシーケンスによって、確認した。
【0283】
発現ベクターを所有するBL21(DE3)細胞を、同じ培養培地の1mlの1晩培養物の添加によって、5g/l酵母抽出物(Merck KGaA)および50mg/lカナマイシン(Sigma−Aldrich)を補充した100mlの30g/lトリプティックソイブロス(Merck KGaA)に播種した。細胞培養物を、1リットル振盪フラスコ中37℃および150rpmで、600nmでの光学密度が0.5〜1.5に到達するまでインキュベートした。次いで、1mMの最終濃度へのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(Apollo Scientific)の添加によって、タンパク質発現を誘導し、そしてインキュベーションを、1晩、25℃および150rpmで継続した。2400gでの遠心分離によって、細胞を回収し、そしてペレットを、5ml溶解緩衝液(7M塩酸グアニジン、47mMのNa2HPO4、2.65mMのNaH2PO4、10mMのTris−HCl、100mMのNaCl、20mMのβ−メルカプトエタノール;pH=8.0)に再懸濁し、そして2時間、37℃および150rpmでインキュベートした。35300gでの遠心分離後、変性および可溶化したタンパク質を含有する上清を回収した。
【0284】
His6−タグ化融合タンパク質を、ASPEC XL4TM(Gilson)上の自動化タンパク質精製手順(非特許文献93)を使用する1mlのTalon(登録商標)金属(Co2+)アフィニティー樹脂(BD Biosciences Clontech)を伴うカラム上での固定化金属イオン親和性クロマトグラフィー(IMAC)によって、精製した。樹脂を、20mlの変性洗浄緩衝液(6M塩酸グアニジン、46.6mMのNa2HPO4、3.4mMのNaH2PO4、300mMのNaCl、pH8.0〜8.2)で平衡化した。次いで、澄明にした細胞溶解物を、カラムに添加した。その後、2.5ml溶出緩衝液(6M尿素、50mMのNaH2PO4、100mMのNaCl、30mM酢酸、70mM酢酸Na、pH5.0)への溶出前に、樹脂を、最低でも31.5mlの洗浄緩衝液で洗浄した。溶出した材料を、3つのプール500、700および1300μlに分画した。抗原を含有する700μl画分、ならびにプールした500および1300μl画分を、さらなる使用のために貯蔵した。
【0285】
抗原画分を、リン酸緩衝食塩水(PBS;1.9mMのNaH2PO4、8.1mMのNa2HPO4、154mMのNaCl)で1M尿素の最終濃度に希釈し、続いて、7500Daでの分子量カットオフを伴うVivapore10/20ml濃縮装置(Vivascience AG)を使用して、タンパク質濃度を増加するための濃縮工程を行った。製造者の推奨に従って、ウシ血清アルブミン標準を伴うビシンコニン酸(BCA)マイクロアッセイプロトコル(Pierce)を使用して、タンパク質濃度を決定した。タンパク質の品質を、Protein50もしくは200アッセイ(Agilent Technologies)を使用するBioanalyzer装置上で分析した。
【0286】
b)結果
ANLN遺伝子の長い転写物(配列番号3)のヌクレオチド1201〜1608に対応し、そして標的タンパク質ANLN(配列番号2)のアミノ酸333〜468からなるペプチド(配列番号1)をコードする遺伝子フラグメントを、タンパク質フラグメントに特異的なプライマーを使用するヒトRNAプールからのRT−PCRによって、首尾よく単離した。標的タンパク質(配列番号2)の136アミノ酸フラグメント(配列番号1)は、成熟タンパク質において切断除去されるため、膜貫通領域を含まず、大腸菌(E.coli)における効率的な発現を確実にし、そしていずれのシグナルペプチドも含まないように設計した。加えて、タンパク質フラグメントを、他のヒトタンパク質と低い相同性を有する独特な配列からなり、作製されるアフィニティー試薬の交差反応性を最小限にし、そしてコンフォメーショナルエピトープの形成を可能にし、そしてなお細菌系における効率的なクローニングおよび発現を可能にするのに適切なサイズであるように設計した。
【0287】
正確なアミノ酸配列をコードするクローンを同定し、そして大腸菌(E.coli)での発現時、正確なサイズの単一のタンパク質を産生させ、続いて、固定化金属イオンクロマトグラフィーを使用して、精製した。溶出したサンプルを1M尿素の最終濃度に希釈し、そしてサンプルを1mlに濃縮した後、タンパク質フラグメントの濃度を、5.1mg/mlに決定し、そして純度分析に従って、100%純度を得た。
【0288】
2.抗体の作製
a)材料および方法
上記で得られた精製したANLNタンパク質フラグメントを抗原として使用して、国のガイドライン(Swedish許可番号A84−02)に従って、ウサギを免疫した。ウサギの筋肉内に、1次免疫化としてフロイント完全アジュバント中200μgの抗原を免疫し、そして4週間間隔で、フロイント不完全アジュバント中100μg抗原で3回ブーストした。
【0289】
免疫動物由来の抗血清を、3工程の免疫アフィニティーに基づくプロトコル(非特許文献94;非特許文献88)によって精製した。第1の工程では、7mlの全抗血清を、10×PBSで緩衝化して、1×PBS(1.9mMのNaH2PO4、8.1mMのNa2HPO4、154mMのNaCl)の最終濃度とし、0.45μmポアサイズフィルター(Acrodisc(登録商標)、Life Science)を使用してろ過し、そしてpAff8cベクターから発現され、そして抗原タンパク質フラグメントについて上記と同じ方法で精製した二重親和性タグタンパク質His6−ABP(ヘキサヒスチジルタグおよびアルブミン結合タンパク質タグ)に結合させた5mlのN−ヒドロキシスクシンイミド−活性化SepharoseTM4Fast Flow(GE Healthcare)を含有するアフィニティーカラムに適用した。第2の工程では、二重親和性タグHis6−ABPに対する抗体を枯渇させたフロースルーを、免疫化のために抗原として使用したANLNタンパク質フラグメント(配列番号1)に結合させた1mlのHi−Trap NHS−活性化HPカラム(GE Healthcare)上、0.5ml/minの流速で充填させた。His6−ABPタンパク質およびタンパク質フラグメント抗原を、製造者によって推奨されるように、NHS活性化マトリックスに結合させた。非結合材料を、1×PBST(1×PBS、0.1%Tween20、pH7.25)で洗浄除去し、そして捕捉された抗体を、低pHグリシン緩衝液(0.2Mグリシン、1mMのEGTA、pH2.5)を使用して、溶出させた。溶出した抗体画分を自動的に回収し、そして第3の工程における効率的な緩衝液交換のために直列に接続した2つの5mlのHiTrapTM脱塩カラム(GE Healthcare)上に充填した。第2および第3の精製工程を、AEKTAxpressTMプラットホーム(GE Healthcare)上で稼動させた。抗原選択的(単一特異的)抗体(msAb)を、−20℃での長期間貯蔵のために、それぞれ、40%および0.02%の最終濃度でグリセロールおよびNaN3を補充したPBS緩衝液で溶出させた(非特許文献88)。
【0290】
アフィニティー精製した抗体画分の特異性および選択性を、抗原自体および他のタンパク質アレイ設定(非特許文献88)における他の383ヒトタンパク質フラグメントに対する結合分析によって、分析した。タンパク質フラグメントを、0.1M尿素および1×PBS(pH7.4)中40μg/mlに希釈し、そしてそれぞれの50μlを、96ウェルスポッティングプレートのウェルに移した。ピン・アンド・リング(pin−and−ring)のアレイヤー(Affymetrix427)を使用して、タンパク質フラグメントを2回測定でスポットし、そしてエポキシスライド(SuperEpoxy,TeleChem)上に固定化した。スライドを1×PBSで洗浄(5分間)し、次いで、表面を30分間ブロックした(SuperBlock(登録商標)、Pierce)。接着性の16ウェルシリコーンマスク(Schleicher&Schuell)を、単一特異的抗体を添加する(1×PBST中で1:2000に希釈して約50ng/mlにした)前にガラス適用し、そして振盪器上で60分間インキュベートした。各スポットのタンパク質の量を定量するため、親和性タグ特異的IgY抗体を単一特異的抗体と共にインキュベートした。スライドを1×PBSTおよび1×PBSでそれぞれ2回、10分間、洗浄した。第二抗体(Alexa647とコンジュゲートされたヤギ抗ウサギ抗体およびAlexa555とコンジュゲートされたヤギ抗ニワトリ抗体、Molecular Probes)を1×PBST中で1:60000に希釈して30ng/mlとし、そして60分間インキュベートした。第1のインキュベーションについて同じ洗浄手順を行った後、スライドをスピンして乾燥し、そして走査し(G2565BAアレイスキャナー、Agilent)、その後、画像を、画像分析ソフトウェア(GenePix5.1,Axon Instruments)を使用して、定量した。
【0291】
加えて、アフィニティー精製された抗体の特異性および選択性を、ウエスタンブロットによって分析した。ウエスタンブロットを、還元条件下でのプレキャスト10〜20%SDS−PAGE勾配ゲル(Bio−Rad Laboratories)上での選択されたヒト細胞系統由来の全タンパク質抽出物の分離、それに続く、製造者の推奨に従うPVDF膜(Bio−Rad Laboratories)へのエレクトロトランスファーによって、実施した。膜を、1時間、室温でブロック(5%粉乳、1×TBST;0.1MのTris−HCl、0.5MのNaCl、0.1%Tween20)し、第一のアフィニティー精製された抗体(ブロッキング緩衝液中で1:500希釈された)と共にインキュベートし、そしてTBST中で洗浄した。第二のHRPコンジュゲートされた抗体(ブタ抗ウサギ免疫グロブリン/HRP、DakoCytomation)を、1:3000でブロッキング緩衝液に希釈し、そして製造者のプロトコルに従い、ChemidocTMCCDカメラ(Bio−Rad Laboratories)およびSuperSignal(登録商標) West Dura Extended Duration substrate(Pierce)を使用して、化学発光検出を行った。
【0292】
b)結果
ポリクローナル抗体製剤の品質は、抗体精製におけるストリンジェンシーの程度に依存することが証明され、そして標的タンパク質に由来するものではないエピトープに対する抗体の枯渇が、他のタンパク質との交差反応性およびバックグランド結合を回避するのに必要であることがすでに証明されている(非特許文献94)。それ故、タンパク質マイクロアレイ分析を実施して、特異性が高い単一特異的ポリクローナル抗体が、His6−タグに対する抗体ならびにABP−タグに対する抗体の枯渇によって作製されたことを確実にした。
【0293】
タンパク質アレイの各スポットにおけるタンパク質の量を定量するため、第1抗体と第二抗体との組み合わせで、2色の染料標識システムを使用した。ニワトリにおいて作製されたタグ特異的IgY抗体を、Alexa555蛍光染料で標識した第二ヤギ抗ニワトリ抗体で検出した。ウサギmsAbとアレイ上のその抗原との特異的結合を、蛍光的にAlexa647標識ヤギ抗ウサギ抗体で検出した。タンパク質アレイ分析は、ANLNタンパク質に対するアフィニティー精製された単一特異的抗体が、正確なタンパク質フラグメントに対して高選択的であり、そしてアレイ上で分析した他のすべてのタンパク質フラグメントに対するバックグランドが極めて低いことを示した。
【0294】
ウエスタンブロット分析の結果は、抗体が、神経幹細胞系統RT−4およびヒト神経膠芽腫U−251MG細胞系統において約124kDaの単一の結合を特異的に検出することを示す。しかし、ヒト血漿、肝臓および扁桃抽出物は、ANLNタンパク質を発現しなかった。ANLNタンパク質の理論的な分子量は、124kDa(配列番号2のANLNタンパク質アミノ酸配列から計算される)であり、得られた結果に良好に対応する。
【0295】
3.免疫組織化学による組織プロファイリング
a)材料および方法
ヒト組織を含有する全部で576のパラフィンコアを、実施例、セクション2で得た単一特異的抗体サンプルを使用して分析した。組織マイクロアレイ(TMA)の生成のためのドナーブロックとして使用する全組織を、地方倫理委員会(local ethical committee)からの認可に従う、Department of Pathology,University Hospital,Uppsalaのアーカイブから選択した。TMA分析に使用するすべての組織切片を調べて、診断を決定し、そしてドナーブロックの代表的領域を選択した。正常組織を、顕微鏡的に正常(非腫瘍性)と定義し、外科的に摘出された腫瘍周辺から回収した標本から選択することが最も多かった。癌組織を診断および分類のために精査した。診断目的で、全組織をホルマリン固定し、パラフィン包埋し、そして切片化した。
【0296】
TMAの生成を、本質的に、先に記載のように実施した(非特許文献95;非特許文献96)。簡単に説明すると、レシピエントのTMAブロック内に孔を作製し、そしてドナーブロックから円筒状のコア組織サンプルを取得し、レシピエントのTMAブロック内に配置した。これをBeecher Instrument製の自動化組織アレイヤー(ATA−27,Beecher Instruments,Sun Prairie,CA,USA)内で完全なTMAのデザインが生成されるまで反復した。TMAのレシピエントブロックを、切片化の2時間前に42℃でベーキングした。
【0297】
TMAの:sの設計では、広範囲の代表的な正常組織由来のサンプルを得て、代表的な癌組織を含めることに重点を置いた。このことは、非特許文献97において既に詳述されている。簡単に述べると、48の正常組織由来のサンプルおよび20のヒトに作用する最も一般的な癌タイプ由来のサンプルを選択した。合計で、TMAブロックの8つの異なるデザイン(各々が1mmの直径を有する72の組織コアを含有する)を生成した。TMA:sのうちの2つは正常組織を表し、異なる個体由来の3回測定の48の異なる正常組織に対応するものであった。残りの6つのTMA:sは20の異なる癌タイプ由来の癌組織を表すものであった。癌タイプの20のうちの17については、12の個別に異なる腫瘍を採取し、そして残りの3つの癌タイプについては4つの個別に異なる腫瘍を採取した(すべてを同じ腫瘍から2回測定で)。IHC分析のため、TMAブロックをウォーターフォール・ミクロトーム(waterfall microtome)(Leica)を用いて4μmの厚みで切片化し、SuperFrost(登録商標)(Roche Applied Science)のガラススライド上に置いた。
【0298】
自動化されたIHCを、既に記載のとおりに実施した(非特許文献97)。簡単に述べると、ガラススライドを、60℃で45分間インキュベートし、キシレン中で脱パラフィン処理し(2×15分間)、等級化されたアルコールに水和した。抗原賦活化のために、スライドをTRS(Target Retrieval Solution,pH6.0,DakoCytomation)中に浸漬し、そしてDecloakingチャンバ(登録商標)(Biocare Medical)内、125℃で4分間沸騰させた。スライドを、Autostainer(登録商標)(DakoCytomation)内に置き、そして内因性ペルオキシダーゼを、最初に、H2O2(DakoCytomation)でブロックした。スライドを、実施例、セクション2で得た第一抗体と共に30分間、室温でインキュベートし、続いて、30分間、室温で、ヤギ抗ウサギペルオキシダーゼコンジュゲートEnvision(登録商標)と共にインキュベーションした。すべての工程の間、スライドを、洗浄緩衝液(DakoCytomation)中で濯いだ。最後に、ジアミノベンジジン(DakoCytomation)を色素原として使用し、そしてHarrisヘマトキシリン(Sigma−Aldrich)を対比染色に使用した。スライドを、Pertex(登録商標)(Histolab)でマウントした。
【0299】
8つの異なるTMA:s由来のすべての免疫組織化学的に染色した切片を、ScanScopeT2自動化スライド走査システム(Aperio Technologies)を使用して、走査した。8つのTMA:sのすべての内容物を表すために、576のデジタル画像を作成した。走査を20倍の倍率で実施した。元のデータを保存するため、デジタル画像を個別のタグ画像ファイル形式(TIFF)ファイルとして分離および抽出した。ウェブベースのアノテーションシステム内での画像処理を可能にするため、個々の画像をTIFF形式からJPEG形式に圧縮した。免疫組織化学的に染色した組織の全画像を、顕微鏡下で手動で評価し、そして認定された病理専門医または専門教育を受けた人員(その後、病理学者が検証した)によりアノテートした。
【0300】
異なる各正常組織および癌組織のアノテーションを、IHC結果の分類のための簡素化されたスキームを使用して、実施した。各組織における代表性(representativity)および免疫反応性について検査した。各正常組織タイプ内に含まれる異なる組織特異的な細胞タイプを、アノテートした。各癌においては、腫瘍細胞および間質をアノテートした。基本的なアノテーションパラメータは、i)細胞内局在化(核および/または細胞質/膜)、ii)染色強度(SI)およびiii)染色細胞の画分(FSC)の評価を含んだ。染色強度は、臨床組織病理学的診断で使用される基準に従って、主観的に評価し、そして結果を次のように分類する:不在=免疫反応性なし、弱い=僅かな免疫反応性、中等度=中等度の免疫反応性、または強い=明瞭かつ強い免疫反応性。染色細胞の画分を評価し、そして関連する細胞集団の≦1%、2〜25%、26〜75%または>75%の免疫反応性細胞として分類した。免疫反応性細胞の強度および画分の両方に基づき、各組織サンプルついて、「染色スコア」を次のとおりに与えた:0=陰性、1=弱い、2=中等度、および3=強い。N.R.は、代表的な組織が存在しなかったことを意味する。詳細には、次の基準に従って、染色スコアを与えた:SI=不在または弱いかつFSC≦25%である場合、0とした;SI=弱いかつFSC>25%である場合またはSI=中等度かつFSC≦25%である場合、1とした;SI=中等度かつFSC>25%である場合またはSI=強いかつFSC≦25%である場合、2とした、および最後に、SI=強いかつFSC>25%である場合、3とした(表1を参照のこと)。当業者は、この手順がAllredスコアの計算に類似することを理解すべきである(例えば、非特許文献32を参照のこと)。
【0301】
【表1】
【0302】
b)結果
実施例、セクション2において得られたヒト標的タンパク質HMGCRの組み換えタンパク質フラグメントに対して作製された単一特異的抗体による組織プロファイリングの結果は、いくらかの正常組織において特定の免疫反応性を示した。表2は、正常ヒト組織におけるANLNタンパク質発現パターンを示す。IHCおよびTMA技術を使用して、48の異なるタイプの正常組織を表す144のスポット(直径1mm)を、ANLNタンパク質の発現についてスクリーニングした。免疫反応性が、分析した組織サンプルの大多数において観察された。強力な発現が核において検出されたが、ほとんどのサンプルは、さらなるより弱い細胞質および/または膜染色を示した。3の染色スコアが、いくらかの組織において見出された。若干の症例では、代表的な組織が観察されなかった(N.R.)。
【0303】
【表2】
【0304】
【表3】
【0305】
【表4】
【0306】
ANLNタンパク質発現を、様々な癌タイプ由来の組織サンプルにおいてさらに評価した。表3は、12の異なる乳癌組織サンプルにおけるANLNタンパク質発現のレベルを示す。これらのサンプルのうちの11が代表的な組織を示し、そしてこれらのうちすべてが、陽性、即ち、0より高い染色スコアを示した。ANLNタンパク質発現が、核および細胞質の両方において観察され、核において最も強力な発現が認められた。
【0307】
【表5】
【0308】
4.連続コホートTMA(コホートI)
a)材料および方法
1988年〜1992年の間に原発性乳癌と診断された498例の患者由来のアーカイブホルマリン固定パラフィン包埋組織を、Department of Pathology,Malmoe University Hospital,Swedenから回収した。患者の中央年齢は、65(27〜96の範囲)歳であり、そして追跡期間中央値は、128箇月(0〜207)であった。死亡の日付に関する情報は、すべての患者について地域死因登録から入手した。倫理的許可は、Lund Universityの地方倫理委員会(Local Ethics Committees)から得た。
【0309】
すべての498例の乳癌を、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色したスライド上で、組織病理学的に再評価した。TMA:sを、手動のアレイデバイス(ATA−27,Beecher Inc.,Sun Prairie,Wl,USA)を使用して、浸潤性癌の代表的領域から1症例あたり2×1.0mmのコアを採取することによって、構築した。TMA:sを調製し、そして自動化IHCを、上記のセクション2において記載のように調製したANLNタンパク質抗体を使用して、上記のセクション3に記載のように実施した。ERのIHC染色については、予め実施しておいた。現在の臨床的実践に沿って、10%陽性の核におけるカットオフを使用して、ホルモン受容体の陽性を定義した。
【0310】
統計分析のために、上記の実施例、セクション3の記載に沿って、核画分(nf)レベルを評価した。核画分を、臨床病理学的診断における基準に従って、主観的に評価し、そして結果を、≦1%、2〜25%、26〜75%または>75%として分類した。異なるすべての層に対する生存率の傾向に基づいて、さらなる統計分析のために、二分類の変数を構築した。この目的のために、2〜25%のグループを、2つのグループ、即ち、2〜10%および>10〜25%に分けた。続いて、「高い」または「低い」を示すグループを、ANLNタンパク質発現に基づいて確立した。第1の分析では、「高い」グループは、>1%の核画分(nf)を示し、そして「低い」グループは、≦1%の核画分を示した。第2の分析では、「高い」グループは、>10%の核画分(nf)を示し、そして「低い」グループは、≦10%の核画分を示した。第3の分析では、「高い」グループは、>25%の核画分(nf)を示し、そして「低い」グループは、≦25%の核画分を示した。サンプルのこの分類を、Kaplan−Meier推定量に従って、OS、RFSおよびBCSS分析に使用し、そしてログランク検定を使用して、異なる層における生存率を比較した。すべての統計的検定は、両側検定であり、そして<0.05のp値を有意とみなした。すべての計算は、統計パッケージSPSS 12.0(SPSS Inc.Illinois,USA)により行った。
【0311】
b)結果
ANLNタンパク質発現の免疫組織化学分析は、498腫瘍サンプルのうち467において実施することができ、そしてこれらのうち400が、ER陽性として同定された。残りのコアは、浸潤性癌を含有しないか、または組織処理中に失われたかのいずれかであった。ANLNタンパク質の高対低の最適カットオフ値を定義するための初期生存分析を行った(図1)。この分析は、有意差が、1%(P=0.000)、10%(p=0.001)ならびに25%(p=0.015)において得られたことを示した。最も有意な結果が得られたため、さらなる統計分析のために、1%のカットオフ値を選択した。図2、3および4は、1%のカットオフレベルを使用して、高いおよび低いANLNタンパク質レベルに基づく生存分析を示す。図2aは、すべての被験体のRFSが、ANLNタンパク質高患者よりもANLNタンパク質低患者について有意に良好であることを示す。図2bでは、ER陽性被験体を2aと同じ方法で分析したが、これもまた、ANLNタンパク質低患者で有意に良好な生存率が観察された。BCSSおよびOSもまた、類似の有意な結果を示したが、これは、図3および4において認められ得る。
【0312】
総合すると、これは、ある範囲のカットオフ値、特に、25%以下の核画分カットオフ値を超えるANLNタンパク質発現の予後関連性を示す。さらに、図は、異なる生存率測定を使用する分析により、予後関連性の結果を生じることを示す。RFSは特に有望であるようである。
【0313】
ANLNタンパク質レベルが、転移活性と相関することを見出した。図5は、高いANLNタンパク質レベルを有する被験体において、低いANLNタンパク質レベルを有する被験体と比較して、より高い頻度の転移が認められることを示す。これは、高いANLNタンパク質発現であれば、転移を有する確率が高いことを示す。
【0314】
さらに、タモキシフェンで処置したANLNタンパク質低被験体の無再発生存率の確率は、ANLNタンパク質高患者より有意に良好であることが見出され(図6、p=0.018)、タモキシフェンで処置した乳癌患者のANLNタンパク質発現の予後関連性を示す。さらに、これは、ANLNタンパク質の処置予測の役割を示唆する。
【0315】
5.無作為化閉経期前のコホートTMA(コホートII)
a)材料および方法
免疫組織化学分析を、ステージII(pT2 NO MO、pT1 N1 MOまたはpT2 N1 MO)原発性乳癌腫の無作為化比較タモキシフェン治験に登録された564例の閉経前の患者由来の500の腫瘍を示すTMAに対して実施した。患者は、ホルモン受容体の状態にかかわらず、1986年〜1991年の間の治験に含まれ、そして276例の患者が、2年間のアジュバントタモキシフェンに割り当てられ、そして288例がコントロールに割り当てられた。診断時の年齢の中央値は、45(25〜57)歳であった。追跡中央値は13.9年であり、そして2%未満の患者がアジュバント化学療法を受けた。研究デザインについては、他で詳述されている(非特許文献98)。倫理的許可は、Local Ethics Committees at Lund and Linkoping Universitiesの地方倫理委員会(Local Ethics Committees)から得た。
【0316】
すべての症例を、ヘマトキシリンおよびエオシン染色スライドについて、組織病理学的に再評価した。TMA:sを、自動化アレイデバイス(ATA−27,Beecher Inc.,Sun Prairie,Wl,USA)を使用して、浸潤性癌の代表的領域から1症例あたり2×0.6mmのコアを採取することによって、構築した。TMA:sを調製し、そして自動化IHCを、上記のセクション2において記載のように調製したANLNタンパク質抗体を使用して、上記のセクション3に記載のように実施した。ERのIHC染色については、予め実施しておいた。現在の臨床的実践に沿って、10%陽性の核におけるカットオフを使用して、ホルモン受容体の陽性を定義した。
【0317】
統計分析では、カテゴリーは、核画分(nf)に基づいた。nfを、上記の実施例、セクション4におけるように評価した。上記の実施例、セクション3の「染色細胞の画分」に関して、nfを、≦1%、2〜25%、26〜75%または>75%に分類した。この目的のために、2〜25%のグループを、2つのグループ、即ち、2〜10%および>10〜25%に分けた。異なるすべての層に対する生存率の傾向に基づいて、さらなる統計分析のために、二分類の変数を構築した。この目的のために、2〜25%のグループを、2つのグループ、即ち、2〜10%および>10〜25%に分けた。続いて、「高い」または「低い」を示すグループを、ANLNタンパク質発現に基づいて確立した。第1の分析では、「高い」グループは、>1%の核画分(nf)を示し、そして「低い」グループは、≦1%の核画分を示した。第2の分析では、「高い」グループは、>10%の核画分(nf)を示し、そして「低い」グループは、≦10%の核画分を示した。第3の分析では、「高い」グループは、26%の核画分(nf)を示し、そして「低い」グループは、≦25%の核画分を示した。サンプルのこの分類を、Kaplan−Meier推定量に従って、OS、RFSおよびBCSS分析に使用し、そしてログランク検定を使用して、異なる層における生存率を比較した。すべての統計的検定は、両側検定であり、そして<0.05%のp値を有意とみなした。すべての計算は、統計パッケージSPSS16.0(SPSS Inc.Illinois,USA)により行った。
【0318】
b)結果
ANLNタンパク質発現の免疫組織化学分析を、500の腫瘍サンプルのうち357に対して実施することができた。残りのコアは、浸潤性癌を含有しないか、または組織処理中に失われたかのいずれかであった。ANLNタンパク質の高対低の最適カットオフ値を定義するための初期生存分析を行った(図7)。この分析は、10%のカットオフ値において有意差が観察された(p=0.001)ことを示した。1%および25%におけるカットオフ値は、類似の傾向を示した。
【0319】
この無作為化コホート由来のより臨床的に興味深いグループの分析は、タモキシフェン処置および非処置患者を個別のグループに分けることによって、容易に得られる。図8は、タモキシフェンで処置したANLNタンパク質低患者のRFSが、そのようなANLNタンパク質高被験体より有意に良好であることを示す。1%および10%の両方におけるカットオフ値は有意なp値を生じたが、25%におけるカットオフ値は、傾向を示したのみであった。図9および10に示すように、BCSSおよびOSを分析した場合、同様の結果が得られた。さらに、10%におけるカットオフ値は有意であったが、1%において傾向が観察された。
【0320】
パラメータが変更され、そしてRFS分析がANLNタンパク質レベルに基づいた場合、結果は、高いANLNタンパク質レベルを有する被験体におけるタモキシフェン処置は、結果に対してポジティブな影響を及ぼさないことを示した(図11)。BCSSおよびOS分析についてもまた、同様の結果が観察された(図12および13)。なおより興味深いことに、高いANLNタンパク質レベルを有するER陽性患者、日常的に、タモキシフェンが処方されている患者のグループでも同様の結果が観察された(図14b、15bおよび16b)。さらに、浸潤性乳管癌、主な浸潤性乳癌の1つを有するER陽性患者のグループの生存分析(RFS、BCSSおよびOS)も同様の結果を示す(図17a〜c)。他方のER陽性ANLNタンパク質低患者は、タモキシフェン処置から少なくとも僅かに利益を得ると思われる(図14a、15aおよび16a)。結果的に、高いレベルのANLNタンパク質を有する患者には、アジュバントタモキシフェン処置を推奨すべきではないこと、およびこのグループの患者には、別の処置ストラテジーを考慮すべきであることが、結論付けられ得る。ANLNタンパク質高患者は、ANLNタンパク質低被験体と比べて、全体的に低い生存確率を有する。ER陽性患者は、一般的に、比較的良好な予後およびむしろ明白な処置ストラテジーを有するグループと考えられるため、これは重要な情報である。特に、ER陽性かつANLNタンパク質高患者では、このストラテジーを認識する必要があり得る。
【0321】
さらに、図18では、ER陽性サブグループに関する所見もまた、PR陽性被験体のサブグループに当てはまることが示されている。
【0322】
乳管癌と診断された患者は、コホートIIにおけるサンプルの大部分、即ち、84%を構成する。乳管癌の腫瘍サンプルの無再発生存率分析は、ANLNが、このサブグループの患者の生存率に影響を及ぼす、即ち、高いANLNレベルは、より低い確率の全生存率を示すことを示した(図19)。さらに、無再発生存率の分析を、ANLNタンパク質レベルに基づいて乳管癌と診断されたER+患者に対して実施した。結果は、高いANLNタンパク質レベルを有するこのサブグループの被験体におけるタモキシフェン処置が、結果に対してポジティブな影響を及ぼさなかった(図20b)一方、処置は、ANLNタンパク質低被験体において有効であるようである(図20a)ことを示した。
【0323】
乳癌患者に対する予後の確立
6.非制限的例
乳癌患者は、明白なしこり/腫瘍、乳頭からの分泌物または皮膚変形などの症状または徴候を呈し得る。一般的に症状を伴わない乳癌の割合はまた、マンモグラフィーをスクリーニングすることによっても検出される。
【0324】
患者における乳癌診断の確立後、腫瘍組織サンプルが入手される。腫瘍組織サンプルは、癌の診断中早期に、または腫瘍の早期の外科的切除からの標本から実施された生検(疑わしい腫瘍からの組織の選択された物理的片の摘出)から入手することができる。さらに、「陰性対照」の供給では、サンプルは、検出可能なANLNタンパク質発現を含まない組織を含んでなるアーカイブ材料から採取される。そのようなアーカイブ組織は、例えば、予め確立された低いANLNタンパク質発現レベルを有する乳癌組織または表2において0の染色スコアを有する適切な組織であってもよい。さらに、「陽性対照」の供給では、サンプルは、予め確立された高いANLNタンパク質発現レベルを有する乳癌組織または表2において3の染色スコアを有する適切な組織などの高いANLNタンパク質発現を有する組織を含んでなるアーカイブ材料から採取される。
【0325】
サンプル材料の薄切片(4μm)を得るために、サンプル材料を緩衝ホルマリン中で固定化し、そして組織処理を行った。
【0326】
免疫組織化学は、実施例、セクション3に記載のように実施される。各サンプル由来の1つ以上のサンプル切片をガラススライド上にマウントし、これを、45分間、60℃でインキュベートし、キシレン中で脱パラフィン処理し(2×15分間)、そして等級化されたアルコールに水和する。抗原賦活化のために、スライドをTRS(Target Retrieval Solution,pH6.0,DakoCytomation)中に浸漬し、そしてDecloakingチャンバ(登録商標)(Biocare Medical)内、125℃で4分間沸騰させる。スライドを、Autostainer(登録商標)(DakoCytomation)内に置き、そして内因性ペルオキシダーゼを、最初に、H2O2(DakoCytomation)でブロックする。複数のサンプル切片をマウントする理由は、結果の確度を増加することができるからである。
【0327】
第一のANLNタンパク質特異的抗体をスライドに添加し、そして30分間、室温でインキュベートする。第一のANLNタンパク質特異的抗体は、実施例、セクション2におけるように入手してもよい。第一のANLNタンパク質特異的抗体のインキュベーションに続いて、標識された第二抗体;例えば、ヤギ−抗−ウサギペルオキシダーゼコンジュゲートEnvision(登録商標)と共に、室温で30分間、インキュベーションする。第二抗体を検出するために、ジアミノベンジジン(DakoCytomation)を色素原として使用し、Harrisヘマトキシリン(Sigma−Aldrich)対比染色で対比させる。すべての工程の間、スライドを、洗浄緩衝液(DakoCytomation)中で濯いだ。次いで、スライドを、Pertex(登録商標)(Histolab)でマウントする。
【0328】
染色手順を確認するためのツールとして、次の2つのコントロール細胞系統を使用してもよい;例えば、ANLNタンパク質を発現する細胞(陽性細胞系統)を有する1つのスライドおよびANLNタンパク質発現が認められない細胞(陰性細胞系統)を有する1つのスライド。当業者は、例えば、非特許文献33の開示内容を指針として、そのような細胞系統を提供する仕方について理解している。コントロール細胞系統のスライドは、乳癌スライドと同じ手順で同時に染色され得、即ち、同じ第一および第二抗体と共にインキュベートされる。
【0329】
デジタル画像を得るために、乳癌腫瘍スライド、対照スライド、および場合により、コントロール細胞系統を有するスライドを、例えば、ScanScopeT2自動化スライド走査システム(Aperio Technologies)を×20倍率で使用して、光学顕微鏡下で走査してもよい。しかし、この走査工程は、必ずしも必要ではないが、例えば、スライドの調製および染色、ならびに細胞質強度の評価(以下を参照のこと)が、異なる局在においてかまたは異なるヒトによって実施される場合、手順をより容易にすることができる。
【0330】
コントロール細胞系統を使用する場合、染色手順を確認するために、これらについて調べる。細胞系統が許容できる基準外の染色結果、例えば、当業者によって認識される染色人工物を示す場合、生検サンプルの染色は脆弱であるとみなされ、そして染色手順全体が、新たなスライドで反復される。陽性細胞系統および陰性細胞系統が、それぞれ、強い染色強度、および不明瞭に弱いかまたは認められない染色強度を示す場合、染色は確認されたものとみなされる。
【0331】
腫瘍組織生検由来の染色されたサンプルスライドは、手動で目視検査により評価され、そして乳癌スライドの核画分(nf)は、実施例、セクション3に記載のように、グレーディングされる。
【0332】
即ち、核において陽性染色を示すサンプル中の関連細胞の百分率に対応する「核画分」(nf)は、臨床組織病理学的診断において使用される標準に従って、主観的に評価される。核において中等度または明白かつ強力な免疫反応性は陽性とみなされ、そして核において認められないまたは弱い免疫反応性は陰性とみなされる。
【0333】
例えば、nf=10%の対照値は、その予後関連性のため、選択することができ、そしてそのような場合、腫瘍組織生検由来の染色されたサンプルスライドのnfは、≦10%または>10%として分類される。評価を実施し、そしてグレーディングする者は、染色された対照スライドの目視検査によって援助される:多量のANLNタンパク質を有する対照スライドは「陽性対照」を提供し、そして検出可能なANLNタンパク質発現を有さない対照スライドは、「陰性対照」を提供する。例えば、陽性および陰性対照は、nf10%の対照値の外観を査定し、それ故、≦10%または>10%として腫瘍組織生検由来の染色されたサンプルスライドを分類する評価を実施する者を援助する。
【0334】
腫瘍組織生検由来の染色されたサンプルスライドが、nf>10%に分類される場合、それらは、nf=10%の選択された対照値より高く、予後が対照値と関連する対照予後より不良であるという結論が導き出せる。例えば、図1bを見る場合、nf=10%の対照値は、85%以上の5年無再発生存率の確率と関連する。結果的に、そのような場合、試験した被験体の予後は、85%の5年無再発生存率より不良であるという結論であり得る。
【0335】
乳癌被験体の内分泌処置の処置予測の確率
7.非制限的例
本実施例は、結論が導き出せ得るまで、実施例、セクション6におけるように実施され得る。乳癌を有する患者の内分泌処置の処置予測を確立する場合、従来、ER陽性の乳癌を有する患者のみに内分泌処置が施されるため、エストロゲン受容体の状態を入手する価値があり得る。また、この処置予測では、nf=10%の対照値を使用することができる。
【0336】
結果的に、結論を導き出す前に、患者のER状態が入手される。得られたER状態は、ANLNタンパク質発現レベルの決定の前または後に、決定され得る。例えば、ER状態は、癌の診断中に予め決定され得るおよび/または乳癌腫瘍の早期外科的切除由来の標本から決定され得る。当業者は、乳癌が、ERに対して陽性であるかまたは陰性であるかどうかを決定するための仕方を知っている。例えば、市販のキットER/PRpharmDX(DakoCytomation)を、決定のために使用することができる。もう1つの例として、Allredら(非特許文献32)によって開示された方法を使用して、全スコア(Allredスコア)を得てもよく、そしてERおよびPRの両方について、2より高いAllredスコアは陽性とみなされ、そして2以下のAllredスコアは陰性とみなされる。あるいは、ERについて、サンプルを陽性もしくは陰性として分類する場合、当該分野内において認識された限界値である10%陽性細胞をカットオフ値として使用してもよい。
【0337】
乳癌がER陽性であり、そして腫瘍組織生検由来の染色されたサンプルスライドが、nf=10%の選択された対照値より高いnf>10%として分類される場合、患者は、内分泌処置から利益を得られない可能性があるという結論が導き出せる。これは、例えば、図14〜16によって指示される。
【0338】
結果的に、「高」値のANLNタンパク質は、タモキシフェン処置などの内分泌処置に対する非応答性を示す。内分泌処置を適用するかどうかの最終決定は、いくらかのパラメータに依存し得る。しかし、たとえ患者がER陽性であっても、患者がANLNタンパク質「高」であるという結論は、内分泌処置、特に、タモキシフェン処置による患者の処置を中断するという決定に好適である。
【0339】
刊行物、DNAまたはタンパク質データの入力、および特許を含むが、これらに限定されない本出願において言及した引用したすべての材料は、本明細書において、参考として援用される。
【0340】
本発明を上記のように説明してきたが、本発明は、多くの方法で改変することができることは明らかであろう。そのような改変は、本発明の趣旨および範囲から逸脱するものと認識されるべきではなく、そのようなすべての変更は、以下の特許請求の範囲内に含まれることが、当業者には明らかであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳癌を有する哺乳動物被験体が、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかを決定するための方法であって、以下の工程:
a)前記被験体からより早期に得られるサンプルであって、腫瘍細胞を含んでなるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するアニリン(ANLN)タンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られる前記サンプル値と対照値とを比較する工程;および
前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d1)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性がないと結論付ける工程、または前記サンプル値が前記対照値以下である場合、
d2)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性があると結論付ける工程
を含んでなる、方法。
【請求項2】
乳癌を有する被験体のための非処置ストラテジー方法であって:
a)前記被験体からより早期に得られるサンプルであって、腫瘍細胞を含んでなるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして前記評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られる前記サンプル値と対照値とを比較する工程;
および、前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d)内分泌処置による前記被験体の処置を中断する工程
を含んでなる、非処置ストラテジー方法。
【請求項3】
処置を必要とする被験体の処置の方法であって、ここで、前記被験体は乳癌を有し、以下の工程:
a)前記被験体由来のサンプルであって、腫瘍細胞を含んでなるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られる前記サンプル値と対照値とを比較する工程;および
前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d1)非内分泌乳癌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程、または前記サンプル値が前記対照値以下である場合、
d2)内分泌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程
を含んでなる、方法。
【請求項4】
前記非内分泌乳癌処置レジメは、化学療法および/または放射線療法である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
乳癌を有する哺乳動物被験体が、第1のグループに属するか、または第2のグループに属するかを決定するための方法であって、ここで、前記第1のグループの被験体の予後は、前記第2のグループの被験体の予後より良好であり、以下の工程:
a)前記被験体由来のサンプルであって、腫瘍細胞を含んでなるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)前記サンプル値と予め決定された対照値とを比較する工程;ならびに
前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d1)前記被験体は、前記第2のグループに属すると結論付ける工程;および前記サンプル値が前記対照値以下である場合、
d2)前記被験体は、前記第1のグループに属すると結論付ける工程
を含んでなる、方法。
【請求項6】
前記被験体は、内分泌処置を経験した、内分泌処置を経験しているおよび/または内分泌処置を予定されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記内分泌処置は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)処置、アロマターゼ阻害剤処置、およびステロイド性エストロゲン受容体アンタゴニスト処置から選択される、請求項1〜4および6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記内分泌処置はSERM処置であり、そして前記SERMは、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、アルゾキシフェンおよびタモキシフェンから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記内分泌処置はタモキシフェン処置である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
処置を必要とする被験体の処置の方法であって、ここで、前記被験体は乳癌を有し、以下の工程:
a)前記被験体由来のサンプルであって、腫瘍細胞を含んでなるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして前記評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られる前記サンプル値と対照値とを比較する工程;および
前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d)アジュバント乳癌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程
を含んでなる、方法。
【請求項11】
工程c)の前記対照値は対照予後に関連し、そして工程d)の前記乳癌処置レジメンは、前記対照予後より不良である前記被験体の予後に適応される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記乳癌処置レジメンは、化学療法、術前アジュバント療法およびそれらの組み合わせから選択される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記処置レジメンは術前アジュバント療法である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記術前アジュバント療法は、i)放射線療法のみおよびii)化学療法と組み合わせた放射線療法からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記予後は、転移を有する確率であり、前記対照予後は、転移を有する対照確率であり、そして工程d)は、前記確率が前記対照確率より高いと結論付けることを含んでなる、請求項5〜9および11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記転移は遠隔転移である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記予後は、全生存率、無再発生存率または乳癌特異的生存率などの生存の確率であり、そして前記対照予後は、全生存率、無再発生存率または乳癌特異的生存率などの生存の対照確率であって、ここで、両方の生存率とも同じタイプの生存率である、請求項5〜9および11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記生存の確率は、全生存率の確率であり、そして前記生存の対照確率は、全生存率の対照確率である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記生存の確率は、無再発生存率の確率であり、そして前記生存の対照確率は、無再発生存率の対照確率である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記生存の確率は、乳癌特異的生存率の確率であり、そして前記生存の対照確率は、乳癌特異的生存率の対照確率である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記生存の確率は、5年、10年または15年生存の確率である、請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記乳癌は、エストロゲン受容体(ER)陽性および/またはプロゲステロン受容体(PR)陽性などのホルモン受容体陽性である、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記乳癌はER陽性である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記被験体は浸潤性乳管癌を有する、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記被験体はヒトである、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記被験体は女性である、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記被験体は閉経前または閉経後のヒト女性である、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記被験体は閉経前のヒト女性である、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記サンプルは体液サンプルである、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記体液は、血液、リンパ、血漿、血清、脳脊髄液、尿、精液および滲出物からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記サンプルは細胞学的サンプルである、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記サンプルは糞便サンプルである、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記サンプルは組織サンプルである、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記組織サンプルは乳房組織サンプルである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記乳房組織サンプルは乳癌組織サンプルである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
工程b)の前記評価は、前記サンプルの細胞の核、細胞質および/または細胞の膜に限定される、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
工程b)の前記評価は、前記サンプルの細胞の核に限定される、請求項1〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記サンプルの前記細胞は、前記サンプルの腫瘍細胞である、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記対照値は、対照サンプル中のANLNタンパク質の量に対応する値である、請求項1〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
工程b)の前記サンプル値は、前記サンプルにおいて検出可能なANLNタンパク質が認められることに対応する1、または前記サンプルにおいて検出可能なANLNタンパク質が認められないことに対応する0のいずれかとして決定される、請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
工程c)の前記対照値は、検出可能なANLNタンパク質が認められない対照サンプルに対応する、請求項1〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
工程c)の前記対照値は0である、請求項1〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記対照値は、細胞質画分、細胞質強度、細胞質画分および細胞質強度の関数、核画分、核強度ならびに核画分および核強度の関数からなる群から選択される、請求項1〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記対照値は、核画分、核強度ならびに核画分および核強度の関数からなる群から選択される、請求項1〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記対照値は核画分である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記対照値は、30%以下のANLN陽性細胞の核画分である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記対照値は、0.5〜30%のANLN陽性細胞の核画分である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記対照値は、15%以下のANLN陽性細胞の核画分である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記対照値は、10%以下のANLN陽性細胞の核画分である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記対照値は、1〜10%のANLN陽性細胞の核画分である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記対照値は、1%以下のANLN陽性細胞の核画分である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記対照値は核強度である、請求項44に記載の方法。
【請求項53】
前記対照値は、弱以下の核強度のANLNタンパク質発現である、請求項55に記載の方法。
【請求項54】
前記対照値は、核強度が認められないANLNタンパク質発現である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記ANLNタンパク質のアミノ酸配列は:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含んでなる、請求項1〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記ANLNタンパク質のアミノ酸配列は:
i)配列番号2;および
ii)配列番号2に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含んでなる、請求項1〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
工程b)は:
b1)前記サンプルに、評価しようとする前記ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能である定量可能な親和性リガンドを適用する工程であって、前記適用は、前記サンプルに存在する任意のANLNタンパク質への前記親和性リガンドの結合を可能にする条件下で実施される工程;
b2)非結合親和性リガンドを取り出す工程;および
b3)前記サンプルとの会合において残留する親和性リガンドを定量して、前記量を評価する工程
を含んでなる、請求項1〜56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記定量可能な親和性リガンドは、抗体、そのフラグメントおよびその誘導体からなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1の配列を含んでなるタンパク質で動物を免疫する工程を含んでなるプロセスによって入手可能である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質で動物を免疫する工程を含んでなるプロセスによって入手可能である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記定量可能な親和性リガンドは、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメイン、リポカリン、アンキリンリピートドメイン、セルロース結合ドメイン、γクリスタリン、緑色蛍光タンパク質、ヒト細胞障害性Tリンパ球関連抗原4、プロテアーゼ阻害剤、PDZドメイン、ペプチドアプタマー、スタフィロコッカルヌクレアーゼ、テンダミスタット、フィブロネクチンIII型ドメインおよびジンクフィンガーからなる群から選択される足場から誘導されるタンパク質リガンドである、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記定量可能な親和性リガンドはオリゴヌクレオチド分子である、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1の配列からなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能である、請求項57〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記定量可能な親和性リガンドは、蛍光染料および金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含んでなる、請求項57〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記定量可能な親和性リガンドは、前記定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドを使用して、検出される、請求項57〜64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記2次親和性リガンドは、蛍光染料および金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含んでなる前記定量可能な親和性リガンドを認識することが可能である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記サンプル値が前記対照値以下である場合、以下の工程:
e)前記被験体の前記予後は、前記対照予後以上に良好であると結論付ける工程
をさらに含んでなる、請求項4〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
a)ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;および
b)前記定量可能な親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬
を含んでなる、請求項1〜67のいずれか一項に記載の方法を行うためのキット。
【請求項69】
前記定量可能な親和性リガンドは、抗体、そのフラグメントおよびその誘導体からなる群から選択される、請求項68に記載のキット。
【請求項70】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1の配列を含んでなるタンパク質で動物を免疫する工程を含んでなるプロセスによって入手可能である、請求項69に記載のキット。
【請求項71】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1の配列からなるタンパク質で動物を免疫する工程を含んでなるプロセスによって入手可能である、請求項70に記載のキット。
【請求項72】
前記定量可能な親和性リガンドは、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメイン、リポカリン、アンキリンリピートドメイン、セルロース結合ドメイン、γクリスタリン、緑色蛍光タンパク質、ヒト細胞障害性Tリンパ球関連抗原4、プロテアーゼ阻害剤、PDZ、ドメイン、ペプチドアプタマー、スタフィロコッカルヌクレアーゼ、テンダミスタット、フィブロネクチンIII型ドメインおよびジンクフィンガーからなる群から選択される足場から誘導されるタンパク質リガンドである、請求項68のいずれか一項に記載のキット。
【請求項73】
前記定量可能な親和性リガンドはオリゴヌクレオチド分子である、請求項68のいずれか一項に記載のキット。
【請求項74】
前記定量可能な親和性リガンドは:
i)配列番号2;および
配列番号2に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含んでなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能である、請求項68〜73のいずれか一項に記載のキット。
【請求項75】
前記定量可能な親和性リガンドは:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含んでなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能である、請求項68〜74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記ANLNタンパク質は、200以下のアミノ酸、例えば、150以下のアミノ酸を含んでなる、請求項68〜74のいずれか一項に記載のキット。
【請求項77】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1の配列からなるポリペプチドとの選択的相互作用が可能である、請求項68〜74のいずれか一項に記載のキット。
【請求項78】
前記定量可能な親和性リガンドは、蛍光染料および金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含んでなる、請求項68〜77のいずれか一項に記載のキット。
【請求項79】
前記定量可能な親和性リガンドの前記量を定量するのに必要な前記試薬は、前記定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドを含んでなる、請求項68〜78のいずれか一項に記載のキット。
【請求項80】
前記定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な前記2次親和性リガンドは、蛍光染料または金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含んでなる、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
対照値の供給のための少なくとも1つの対照サンプルをさらに含んでなる、請求項68〜80のいずれか一項に記載のキット。
【請求項82】
少なくとも1つの対照サンプルは、検出可能なANLNタンパク質を含まない組織サンプルである、請求項81に記載のキット。
【請求項83】
少なくとも1つの対照サンプルはANLNタンパク質を含んでなる、請求項81または82に記載のキット。
【請求項84】
少なくとも1つの対照サンプルは、0.5〜30%の核画分に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる、請求項81〜83のいずれか一項に記載のキット。
【請求項85】
少なくとも1つの対照サンプルは、1〜10%の核画分に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる、請求項84に記載のキット。
【請求項86】
少なくとも1つの対照サンプルは、1%以下のANLN陽性細胞の核画分に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる、請求項81〜83のいずれか一項に記載のキット。
【請求項87】
少なくとも1つの対照サンプルは、中等度以下の核強度のANLNタンパク質発現に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる、請求項81〜83のいずれか一項に記載のキット。
【請求項88】
少なくとも1つの対照サンプルは、核強度が認められないANLNタンパク質発現に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる、請求項87に記載のキット。
【請求項89】
少なくとも1つの対照サンプルは、前記対照値より高い値に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる、請求項81〜98のいずれか一項に記載のキット。
【請求項90】
少なくとも1つの対照サンプルは、強い核強度に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる、請求項89に記載のキット。
【請求項91】
少なくとも1つの対照サンプルは、75%以上の核画分に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる、請求項89に記載のキット。
【請求項92】
対照値より高い値(陽性対照値)に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる第1の対照サンプル;および
前記対照値より低い値(陰性対照値)に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる第2の対照サンプル
を含んでなる、請求項81〜91のいずれか一項に記載のキット。
【請求項93】
前記対照サンプルは組織サンプルである、請求項81〜92のいずれか一項に記載のキット。
【請求項94】
a’)エストロゲン受容体との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;および
b’)a’)の定量可能な親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬
をさらに含んでなる、請求項68〜93のいずれか一項に記載のキット。
【請求項95】
a’’)プロゲステロン受容体との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;およびb’’)a’’)の定量可能な親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬
をさらに含んでなる、請求項68〜94のいずれか一項に記載のキット。
【請求項96】
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含んでなる200以下のアミノ酸残基からなるANLNタンパク質。
【請求項97】
150以下のアミノ酸残基からなる、請求項96に記載のANLNタンパク質。
【請求項98】
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも95%同一である配列
から選択される配列を含んでなる、請求項96または97に記載のANLNタンパク質。
【請求項99】
配列番号1のアミノ酸配列からなる、請求項96に記載のANLNタンパク質。
【請求項100】
内分泌処置の指標としてのANLNタンパク質のインビトロでの使用。
【請求項101】
ER陽性乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置の指標としての請求項100に記載の使用。
【請求項102】
予後マーカーとしてのANLNタンパク質のインビトロでの使用。
【請求項103】
癌の予後マーカーとしての請求項102に記載の使用。
【請求項104】
前記癌は乳癌である、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記予後マーカーは、遠隔転移などの乳癌転移を有する確率の指標である、請求項102〜104のいずれか一項に記載の使用。
【請求項106】
予後因子または内分泌処置予測因子の産生、選択もしくは精製のためのANLNタンパク質、あるいはその抗原活性なフラグメントのインビトロでの使用。
【請求項107】
前記予後因子または内分泌処置予測因子は、前記ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンドである、請求項106に記載の使用。
【請求項108】
前記親和性リガンドは、配列番号1の配列からなるタンパク質との選択的相互作用が可能である、請求項107に記載の使用。
【請求項109】
前記予後因子は、遠隔転移などの乳癌転移を有する確率を確立するためのものである、請求項106〜108のいずれか一項に記載の使用。
【請求項110】
前記ANLNタンパク質のアミノ酸配列は:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含んでなる、請求項100〜109のいずれか一項に記載の使用。
【請求項111】
前記ANLNタンパク質のアミノ酸配列は:
i)配列番号2;および
ii)配列番号2に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含んでなる、請求項100〜110のいずれか一項に記載の使用。
【請求項112】
ANLNタンパク質は、請求項98〜101のいずれか一項に記載のANLNタンパク質である、請求項100〜111のいずれか一項に記載の使用。
【請求項113】
ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンド。
【請求項114】
アミノ酸配列が配列番号1の配列を含んでなるタンパク質で動物を免疫する工程を含んでなるプロセスによって入手可能である、請求項113に記載の親和性リガンド。
【請求項115】
アミノ酸配列が配列番号1の配列からなるタンパク質で動物を免疫する工程を含んでなるプロセスによって入手可能である、請求項114に記載の親和性リガンド。
【請求項116】
アミノ酸配列が配列番号1のアミノ酸配列からなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能である、請求項113〜115のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項117】
乳癌を有する哺乳動物被験体の予後またはER陽性乳癌などの乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置の結果の予測を確立するためのインビボでの方法に使用するための請求項113〜116のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項118】
ER+乳癌などの乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置の処置予測を確立するための、請求項113〜116のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項119】
乳癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するための、請求項113〜116のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項120】
前記予後は、転移を有する確率である、請求項119に記載の親和性リガンド。
【請求項121】
乳癌を有する被験体由来のサンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価するための、請求項113〜120のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項122】
内分泌処置予測因子としての請求項113〜121のいずれか一項に記載の親和性リガンドのインビトロでの使用。
【請求項123】
前記内分泌処置予測因子は、ER陽性乳癌などの乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置の結果の予測のためのものである、請求項122に記載の使用。
【請求項124】
予後因子としての請求項113〜121のいずれか一項に記載の親和性リガンドのインビトロでの使用。
【請求項125】
前記予後因子は、乳癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するためのものである、請求項124に記載の使用。
【請求項126】
前記予後は、転移を有する確率である、請求項125に記載の使用。
【請求項127】
乳癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するための予後因子の製造における請求項115〜123のいずれか一項に記載の親和性リガンドの使用。
【請求項128】
ER+乳癌などの乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置のための内分泌処置予測因子の製造における請求項115〜123のいずれか一項に記載の親和性リガンドの使用。
【請求項129】
乳癌を有する哺乳動物被験体の処置に使用するための内分泌処置製品であって、ここで、前記乳癌は、ER陽性および/またはPR陽性などのホルモン受容体陽性、ならびにANLNタンパク質陰性である、内分泌処置製品。
【請求項130】
乳癌を有する哺乳動物被験体の処置のための医薬品の製造における内分泌処置製品の使用であって、ここで、前記乳癌は、ER陽性および/またはPR陽性などのホルモン受容体陽性、ならびにANLNタンパク質陰性である、使用。
【請求項1】
乳癌を有する哺乳動物被験体が、内分泌処置から利益を得る可能性があるかどうかを決定するための方法であって、以下の工程:
a)前記被験体からより早期に得られるサンプルであって、腫瘍細胞を含んでなるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するアニリン(ANLN)タンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られる前記サンプル値と対照値とを比較する工程;および
前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d1)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性がないと結論付ける工程、または前記サンプル値が前記対照値以下である場合、
d2)被験体は、内分泌処置から利益を得る可能性があると結論付ける工程
を含んでなる、方法。
【請求項2】
乳癌を有する被験体のための非処置ストラテジー方法であって:
a)前記被験体からより早期に得られるサンプルであって、腫瘍細胞を含んでなるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして前記評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られる前記サンプル値と対照値とを比較する工程;
および、前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d)内分泌処置による前記被験体の処置を中断する工程
を含んでなる、非処置ストラテジー方法。
【請求項3】
処置を必要とする被験体の処置の方法であって、ここで、前記被験体は乳癌を有し、以下の工程:
a)前記被験体由来のサンプルであって、腫瘍細胞を含んでなるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られる前記サンプル値と対照値とを比較する工程;および
前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d1)非内分泌乳癌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程、または前記サンプル値が前記対照値以下である場合、
d2)内分泌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程
を含んでなる、方法。
【請求項4】
前記非内分泌乳癌処置レジメは、化学療法および/または放射線療法である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
乳癌を有する哺乳動物被験体が、第1のグループに属するか、または第2のグループに属するかを決定するための方法であって、ここで、前記第1のグループの被験体の予後は、前記第2のグループの被験体の予後より良好であり、以下の工程:
a)前記被験体由来のサンプルであって、腫瘍細胞を含んでなるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして前記量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)前記サンプル値と予め決定された対照値とを比較する工程;ならびに
前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d1)前記被験体は、前記第2のグループに属すると結論付ける工程;および前記サンプル値が前記対照値以下である場合、
d2)前記被験体は、前記第1のグループに属すると結論付ける工程
を含んでなる、方法。
【請求項6】
前記被験体は、内分泌処置を経験した、内分泌処置を経験しているおよび/または内分泌処置を予定されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記内分泌処置は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)処置、アロマターゼ阻害剤処置、およびステロイド性エストロゲン受容体アンタゴニスト処置から選択される、請求項1〜4および6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記内分泌処置はSERM処置であり、そして前記SERMは、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、アルゾキシフェンおよびタモキシフェンから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記内分泌処置はタモキシフェン処置である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
処置を必要とする被験体の処置の方法であって、ここで、前記被験体は乳癌を有し、以下の工程:
a)前記被験体由来のサンプルであって、腫瘍細胞を含んでなるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価し、そして前記評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られる前記サンプル値と対照値とを比較する工程;および
前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d)アジュバント乳癌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程
を含んでなる、方法。
【請求項11】
工程c)の前記対照値は対照予後に関連し、そして工程d)の前記乳癌処置レジメンは、前記対照予後より不良である前記被験体の予後に適応される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記乳癌処置レジメンは、化学療法、術前アジュバント療法およびそれらの組み合わせから選択される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記処置レジメンは術前アジュバント療法である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記術前アジュバント療法は、i)放射線療法のみおよびii)化学療法と組み合わせた放射線療法からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記予後は、転移を有する確率であり、前記対照予後は、転移を有する対照確率であり、そして工程d)は、前記確率が前記対照確率より高いと結論付けることを含んでなる、請求項5〜9および11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記転移は遠隔転移である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記予後は、全生存率、無再発生存率または乳癌特異的生存率などの生存の確率であり、そして前記対照予後は、全生存率、無再発生存率または乳癌特異的生存率などの生存の対照確率であって、ここで、両方の生存率とも同じタイプの生存率である、請求項5〜9および11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記生存の確率は、全生存率の確率であり、そして前記生存の対照確率は、全生存率の対照確率である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記生存の確率は、無再発生存率の確率であり、そして前記生存の対照確率は、無再発生存率の対照確率である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記生存の確率は、乳癌特異的生存率の確率であり、そして前記生存の対照確率は、乳癌特異的生存率の対照確率である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記生存の確率は、5年、10年または15年生存の確率である、請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記乳癌は、エストロゲン受容体(ER)陽性および/またはプロゲステロン受容体(PR)陽性などのホルモン受容体陽性である、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記乳癌はER陽性である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記被験体は浸潤性乳管癌を有する、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記被験体はヒトである、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記被験体は女性である、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記被験体は閉経前または閉経後のヒト女性である、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記被験体は閉経前のヒト女性である、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記サンプルは体液サンプルである、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記体液は、血液、リンパ、血漿、血清、脳脊髄液、尿、精液および滲出物からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記サンプルは細胞学的サンプルである、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記サンプルは糞便サンプルである、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記サンプルは組織サンプルである、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記組織サンプルは乳房組織サンプルである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記乳房組織サンプルは乳癌組織サンプルである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
工程b)の前記評価は、前記サンプルの細胞の核、細胞質および/または細胞の膜に限定される、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
工程b)の前記評価は、前記サンプルの細胞の核に限定される、請求項1〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記サンプルの前記細胞は、前記サンプルの腫瘍細胞である、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記対照値は、対照サンプル中のANLNタンパク質の量に対応する値である、請求項1〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
工程b)の前記サンプル値は、前記サンプルにおいて検出可能なANLNタンパク質が認められることに対応する1、または前記サンプルにおいて検出可能なANLNタンパク質が認められないことに対応する0のいずれかとして決定される、請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
工程c)の前記対照値は、検出可能なANLNタンパク質が認められない対照サンプルに対応する、請求項1〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
工程c)の前記対照値は0である、請求項1〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記対照値は、細胞質画分、細胞質強度、細胞質画分および細胞質強度の関数、核画分、核強度ならびに核画分および核強度の関数からなる群から選択される、請求項1〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記対照値は、核画分、核強度ならびに核画分および核強度の関数からなる群から選択される、請求項1〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記対照値は核画分である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記対照値は、30%以下のANLN陽性細胞の核画分である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記対照値は、0.5〜30%のANLN陽性細胞の核画分である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記対照値は、15%以下のANLN陽性細胞の核画分である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記対照値は、10%以下のANLN陽性細胞の核画分である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記対照値は、1〜10%のANLN陽性細胞の核画分である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記対照値は、1%以下のANLN陽性細胞の核画分である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記対照値は核強度である、請求項44に記載の方法。
【請求項53】
前記対照値は、弱以下の核強度のANLNタンパク質発現である、請求項55に記載の方法。
【請求項54】
前記対照値は、核強度が認められないANLNタンパク質発現である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記ANLNタンパク質のアミノ酸配列は:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含んでなる、請求項1〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記ANLNタンパク質のアミノ酸配列は:
i)配列番号2;および
ii)配列番号2に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含んでなる、請求項1〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
工程b)は:
b1)前記サンプルに、評価しようとする前記ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能である定量可能な親和性リガンドを適用する工程であって、前記適用は、前記サンプルに存在する任意のANLNタンパク質への前記親和性リガンドの結合を可能にする条件下で実施される工程;
b2)非結合親和性リガンドを取り出す工程;および
b3)前記サンプルとの会合において残留する親和性リガンドを定量して、前記量を評価する工程
を含んでなる、請求項1〜56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記定量可能な親和性リガンドは、抗体、そのフラグメントおよびその誘導体からなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1の配列を含んでなるタンパク質で動物を免疫する工程を含んでなるプロセスによって入手可能である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質で動物を免疫する工程を含んでなるプロセスによって入手可能である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記定量可能な親和性リガンドは、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメイン、リポカリン、アンキリンリピートドメイン、セルロース結合ドメイン、γクリスタリン、緑色蛍光タンパク質、ヒト細胞障害性Tリンパ球関連抗原4、プロテアーゼ阻害剤、PDZドメイン、ペプチドアプタマー、スタフィロコッカルヌクレアーゼ、テンダミスタット、フィブロネクチンIII型ドメインおよびジンクフィンガーからなる群から選択される足場から誘導されるタンパク質リガンドである、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記定量可能な親和性リガンドはオリゴヌクレオチド分子である、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1の配列からなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能である、請求項57〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記定量可能な親和性リガンドは、蛍光染料および金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含んでなる、請求項57〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記定量可能な親和性リガンドは、前記定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドを使用して、検出される、請求項57〜64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記2次親和性リガンドは、蛍光染料および金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含んでなる前記定量可能な親和性リガンドを認識することが可能である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記サンプル値が前記対照値以下である場合、以下の工程:
e)前記被験体の前記予後は、前記対照予後以上に良好であると結論付ける工程
をさらに含んでなる、請求項4〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
a)ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;および
b)前記定量可能な親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬
を含んでなる、請求項1〜67のいずれか一項に記載の方法を行うためのキット。
【請求項69】
前記定量可能な親和性リガンドは、抗体、そのフラグメントおよびその誘導体からなる群から選択される、請求項68に記載のキット。
【請求項70】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1の配列を含んでなるタンパク質で動物を免疫する工程を含んでなるプロセスによって入手可能である、請求項69に記載のキット。
【請求項71】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1の配列からなるタンパク質で動物を免疫する工程を含んでなるプロセスによって入手可能である、請求項70に記載のキット。
【請求項72】
前記定量可能な親和性リガンドは、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメイン、リポカリン、アンキリンリピートドメイン、セルロース結合ドメイン、γクリスタリン、緑色蛍光タンパク質、ヒト細胞障害性Tリンパ球関連抗原4、プロテアーゼ阻害剤、PDZ、ドメイン、ペプチドアプタマー、スタフィロコッカルヌクレアーゼ、テンダミスタット、フィブロネクチンIII型ドメインおよびジンクフィンガーからなる群から選択される足場から誘導されるタンパク質リガンドである、請求項68のいずれか一項に記載のキット。
【請求項73】
前記定量可能な親和性リガンドはオリゴヌクレオチド分子である、請求項68のいずれか一項に記載のキット。
【請求項74】
前記定量可能な親和性リガンドは:
i)配列番号2;および
配列番号2に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含んでなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能である、請求項68〜73のいずれか一項に記載のキット。
【請求項75】
前記定量可能な親和性リガンドは:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含んでなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能である、請求項68〜74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記ANLNタンパク質は、200以下のアミノ酸、例えば、150以下のアミノ酸を含んでなる、請求項68〜74のいずれか一項に記載のキット。
【請求項77】
前記定量可能な親和性リガンドは、アミノ酸配列が配列番号1の配列からなるポリペプチドとの選択的相互作用が可能である、請求項68〜74のいずれか一項に記載のキット。
【請求項78】
前記定量可能な親和性リガンドは、蛍光染料および金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含んでなる、請求項68〜77のいずれか一項に記載のキット。
【請求項79】
前記定量可能な親和性リガンドの前記量を定量するのに必要な前記試薬は、前記定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドを含んでなる、請求項68〜78のいずれか一項に記載のキット。
【請求項80】
前記定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な前記2次親和性リガンドは、蛍光染料または金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含んでなる、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
対照値の供給のための少なくとも1つの対照サンプルをさらに含んでなる、請求項68〜80のいずれか一項に記載のキット。
【請求項82】
少なくとも1つの対照サンプルは、検出可能なANLNタンパク質を含まない組織サンプルである、請求項81に記載のキット。
【請求項83】
少なくとも1つの対照サンプルはANLNタンパク質を含んでなる、請求項81または82に記載のキット。
【請求項84】
少なくとも1つの対照サンプルは、0.5〜30%の核画分に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる、請求項81〜83のいずれか一項に記載のキット。
【請求項85】
少なくとも1つの対照サンプルは、1〜10%の核画分に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる、請求項84に記載のキット。
【請求項86】
少なくとも1つの対照サンプルは、1%以下のANLN陽性細胞の核画分に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる、請求項81〜83のいずれか一項に記載のキット。
【請求項87】
少なくとも1つの対照サンプルは、中等度以下の核強度のANLNタンパク質発現に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる、請求項81〜83のいずれか一項に記載のキット。
【請求項88】
少なくとも1つの対照サンプルは、核強度が認められないANLNタンパク質発現に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる、請求項87に記載のキット。
【請求項89】
少なくとも1つの対照サンプルは、前記対照値より高い値に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる、請求項81〜98のいずれか一項に記載のキット。
【請求項90】
少なくとも1つの対照サンプルは、強い核強度に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる、請求項89に記載のキット。
【請求項91】
少なくとも1つの対照サンプルは、75%以上の核画分に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる、請求項89に記載のキット。
【請求項92】
対照値より高い値(陽性対照値)に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる第1の対照サンプル;および
前記対照値より低い値(陰性対照値)に対応するANLNタンパク質の量を含んでなる第2の対照サンプル
を含んでなる、請求項81〜91のいずれか一項に記載のキット。
【請求項93】
前記対照サンプルは組織サンプルである、請求項81〜92のいずれか一項に記載のキット。
【請求項94】
a’)エストロゲン受容体との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;および
b’)a’)の定量可能な親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬
をさらに含んでなる、請求項68〜93のいずれか一項に記載のキット。
【請求項95】
a’’)プロゲステロン受容体との選択的相互作用が可能な定量可能な親和性リガンド;およびb’’)a’’)の定量可能な親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬
をさらに含んでなる、請求項68〜94のいずれか一項に記載のキット。
【請求項96】
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含んでなる200以下のアミノ酸残基からなるANLNタンパク質。
【請求項97】
150以下のアミノ酸残基からなる、請求項96に記載のANLNタンパク質。
【請求項98】
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも95%同一である配列
から選択される配列を含んでなる、請求項96または97に記載のANLNタンパク質。
【請求項99】
配列番号1のアミノ酸配列からなる、請求項96に記載のANLNタンパク質。
【請求項100】
内分泌処置の指標としてのANLNタンパク質のインビトロでの使用。
【請求項101】
ER陽性乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置の指標としての請求項100に記載の使用。
【請求項102】
予後マーカーとしてのANLNタンパク質のインビトロでの使用。
【請求項103】
癌の予後マーカーとしての請求項102に記載の使用。
【請求項104】
前記癌は乳癌である、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記予後マーカーは、遠隔転移などの乳癌転移を有する確率の指標である、請求項102〜104のいずれか一項に記載の使用。
【請求項106】
予後因子または内分泌処置予測因子の産生、選択もしくは精製のためのANLNタンパク質、あるいはその抗原活性なフラグメントのインビトロでの使用。
【請求項107】
前記予後因子または内分泌処置予測因子は、前記ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンドである、請求項106に記載の使用。
【請求項108】
前記親和性リガンドは、配列番号1の配列からなるタンパク質との選択的相互作用が可能である、請求項107に記載の使用。
【請求項109】
前記予後因子は、遠隔転移などの乳癌転移を有する確率を確立するためのものである、請求項106〜108のいずれか一項に記載の使用。
【請求項110】
前記ANLNタンパク質のアミノ酸配列は:
i)配列番号1;および
ii)配列番号1に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含んでなる、請求項100〜109のいずれか一項に記載の使用。
【請求項111】
前記ANLNタンパク質のアミノ酸配列は:
i)配列番号2;および
ii)配列番号2に少なくとも85%同一である配列
から選択される配列を含んでなる、請求項100〜110のいずれか一項に記載の使用。
【請求項112】
ANLNタンパク質は、請求項98〜101のいずれか一項に記載のANLNタンパク質である、請求項100〜111のいずれか一項に記載の使用。
【請求項113】
ANLNタンパク質との選択的相互作用が可能な親和性リガンド。
【請求項114】
アミノ酸配列が配列番号1の配列を含んでなるタンパク質で動物を免疫する工程を含んでなるプロセスによって入手可能である、請求項113に記載の親和性リガンド。
【請求項115】
アミノ酸配列が配列番号1の配列からなるタンパク質で動物を免疫する工程を含んでなるプロセスによって入手可能である、請求項114に記載の親和性リガンド。
【請求項116】
アミノ酸配列が配列番号1のアミノ酸配列からなるANLNタンパク質との選択的相互作用が可能である、請求項113〜115のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項117】
乳癌を有する哺乳動物被験体の予後またはER陽性乳癌などの乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置の結果の予測を確立するためのインビボでの方法に使用するための請求項113〜116のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項118】
ER+乳癌などの乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置の処置予測を確立するための、請求項113〜116のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項119】
乳癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するための、請求項113〜116のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項120】
前記予後は、転移を有する確率である、請求項119に記載の親和性リガンド。
【請求項121】
乳癌を有する被験体由来のサンプルの少なくとも一部に存在するANLNタンパク質の量を評価するための、請求項113〜120のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項122】
内分泌処置予測因子としての請求項113〜121のいずれか一項に記載の親和性リガンドのインビトロでの使用。
【請求項123】
前記内分泌処置予測因子は、ER陽性乳癌などの乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置の結果の予測のためのものである、請求項122に記載の使用。
【請求項124】
予後因子としての請求項113〜121のいずれか一項に記載の親和性リガンドのインビトロでの使用。
【請求項125】
前記予後因子は、乳癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するためのものである、請求項124に記載の使用。
【請求項126】
前記予後は、転移を有する確率である、請求項125に記載の使用。
【請求項127】
乳癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するための予後因子の製造における請求項115〜123のいずれか一項に記載の親和性リガンドの使用。
【請求項128】
ER+乳癌などの乳癌を有する哺乳動物被験体の内分泌処置のための内分泌処置予測因子の製造における請求項115〜123のいずれか一項に記載の親和性リガンドの使用。
【請求項129】
乳癌を有する哺乳動物被験体の処置に使用するための内分泌処置製品であって、ここで、前記乳癌は、ER陽性および/またはPR陽性などのホルモン受容体陽性、ならびにANLNタンパク質陰性である、内分泌処置製品。
【請求項130】
乳癌を有する哺乳動物被験体の処置のための医薬品の製造における内分泌処置製品の使用であって、ここで、前記乳癌は、ER陽性および/またはPR陽性などのホルモン受容体陽性、ならびにANLNタンパク質陰性である、使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2012−501440(P2012−501440A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524945(P2011−524945)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050989
【国際公開番号】WO2010/024776
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(508178490)アトラス・アンティボディーズ・アクチボラゲット (11)
【氏名又は名称原語表記】Atlas Antibodies AB
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050989
【国際公開番号】WO2010/024776
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(508178490)アトラス・アンティボディーズ・アクチボラゲット (11)
【氏名又は名称原語表記】Atlas Antibodies AB
【Fターム(参考)】
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