内分泌系に作用するストレス応答緩和剤、内分泌系に作用するストレス応答に起因する諸症状を緩和あるいは抑制する緩和剤あるいは抑制剤
【課題】内分泌系(HPA軸)のストレス応答の結果、ACTHやコルチゾールの分泌をブロックして、このACTHやコルチゾールの分泌をもたらすストレス応答やそれにともなう諸症状を手軽に緩和あるいは抑制する緩和剤あるいは抑制剤を提供する。
【解決手段】バニリン、エチルバニリン、バニリンとエチルバニリンとの混合物、バニリン、エチルバニリンまたはバニリンとエチルバニリンとの混合物、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、から選択されてなるいずれか一つからなる、下垂体前葉におけるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌を抑制する抑制剤等の内分泌系に作用するストレス応答緩和剤。
【解決手段】バニリン、エチルバニリン、バニリンとエチルバニリンとの混合物、バニリン、エチルバニリンまたはバニリンとエチルバニリンとの混合物、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、から選択されてなるいずれか一つからなる、下垂体前葉におけるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌を抑制する抑制剤等の内分泌系に作用するストレス応答緩和剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嗅ぐことにより、内分泌系(HPA軸)に作用するストレス応答及び内分泌系に作用するストレス応答に起因する諸症状を緩和あるいは抑制する緩和剤あるいは抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会においては、家庭や地域社会の中での人間関係が希薄化するとともに、長期間にわたって厳しい経済情勢が続く中で、企業における雇用管理も大きく変化してきている。このような環境の下で、人々は精神的なストレスを蓄積しやすくなっていると考えられ、ストレスが発病に大きく影響するといわれている心の病が広がってきている。また、心の病は成人のみならず、青少年にとっても大きな問題となっており、例えば摂食障害等の増加という形でも現れている。心の健康の重要性はあらゆる年齢層で高まっている。また、ストレスは心のだけの問題ではなく、いわゆる生活習慣病といわれる諸疾患やストレス起因による腰痛などを発現させる事が明らかとなっている。現代社会では、大抵の人が、何らかのストレスにさらされており、日常的にストレスを軽減する必要を感じている。特許文献1のように、ストレスの緩和に有効な成分を薬として摂取することも考えられる。特許文献1では、ローズオイルを抗ストレス剤として経口摂取するものが示されている。
【0003】
しかしながら、ストレスを感ずることは誰しも経験するごく日常的なことなので、抗ストレス薬を薬剤として飲用摂取するのではなく、手軽にストレスを解消し、また、安眠を得ることができるものが求められている。
【0004】
一方、ストレス応答には自律神経系に作用してノルアドレナリンやアドレナリンの分泌を促進させる経路と、内分泌系に作用して副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)や、コルチゾールの分泌を促進させる経路とがあり、後者に関しては、手軽で有効な対策が見つからないのが現状である。
【0005】
例えば、コルチゾールの過剰な分泌は高血圧、糖尿病、肥満をもたらしたり、海馬の縮小によるうつ病、睡眠障害、学習機能低下、記憶機能低下、ひいては痴呆症をもたらしたりするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−68969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記観点に鑑みなされたもので、内分泌系に作用するストレス応答によるACTHやコルチゾールの分泌をブロックして、このACTHやコルチゾールの分泌をもたらす、内分泌系に作用するストレス応答による、高血圧、糖尿病、肥満、免疫力低下、脳の海馬損傷、うつ病、睡眠障害の発症及び症状、学習機能、記憶機能低下、痴呆症の発症及び症状、などの諸症状やこれらの諸症状をもたらす、内分泌系に作用するストレス応答を手軽に緩和あるいは抑制し、これにより、その諸症状を未然に防ぐ、緩和剤あるいは抑制剤を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、下垂体前葉におけるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌を抑制する抑制剤であることにある。
【0009】
また、本発明の要旨とするところは、視床下部室傍核における、ストレス応答を抑制させる前記抑制剤であることにある。
【0010】
また、本発明の要旨とするところは、扁桃体内側核における、視床下部室傍核へのGABA性神経活動を増加させ、ストレス応答を抑制させる前記抑制剤であることにある。
【0011】
また、本発明の要旨とするところは、前頭前皮質おける神経活動を抑制し、その情報が視床下部室傍核に伝達することで、ストレス応答を抑制させる前記抑制剤であることにある。
【0012】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答を緩和するストレス応答緩和剤であることにある。
【0013】
また、本発明の要旨とするところは、視床下部室傍核における、ストレス応答を抑制させる前記抑制剤であることにある。
【0014】
また、本発明の要旨とするところは、扁桃体内側核における、視床下部室傍核へのGABA性神経活動を増加させ、ストレス応答を抑制させる前記抑制剤であることにある。
【0015】
また、本発明の要旨とするところは、前頭前皮質おける神経活動を抑制し、その情報が視床下部室傍核に伝達することで、ストレス応答を抑制させる前記抑制剤であることにある。
【0016】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する高血圧の発症及び症状を緩和する緩和剤であることにある。
【0017】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する糖尿病の発症及び症状を緩和する緩和剤であることにある。
【0018】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する肥満抑制剤であることにある。
【0019】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する免疫力低下抑制剤であることにある。
【0020】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するコルチゾールによる脳の海馬損傷を抑制する抑制剤であることにある。
【0021】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するうつ病の発症及び症状を緩和する緩和剤であることにある。
【0022】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する睡眠障害の発症及び症状を緩和する緩和剤であることにある。
【0023】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する学習機能、記憶機能低下抑制剤であることにある。
【0024】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する痴呆症の発症及び症状を緩和する緩和剤であることにある。
【0025】
また、本発明の要旨とするところは、
前記副腎皮質におけるACTHの分泌を抑制する抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、下垂体前葉におけるACTHの分泌を抑制する抑制剤担持物であることにある。
【0026】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答を緩和するストレス応答緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答を緩和するストレス応答緩和剤担持物であることにある。
【0027】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する高血圧の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する高血圧の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物であることにある。
【0028】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する糖尿病の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する糖尿病の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物であることにある。
【0029】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する肥満抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する肥満抑制剤担持物であることにある。
【0030】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する免疫力低下抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する免疫力低下抑制剤担持物であることにある。
【0031】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するコルチゾールによる脳の海馬損傷を抑制する抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するコルチゾールによる脳の海馬損傷を抑制する抑制剤担持物であることにある。
【0032】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するうつ病の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するうつ病の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物であることにある。
【0033】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する睡眠障害の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する睡眠障害の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物であることにある。
【0034】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する学習機能、記憶機能低下抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する学習機能、記憶機能低下抑制剤担持物であることにある。
【0035】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する痴呆症の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する痴呆症の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物であることにある。
【発明の効果】
【0036】
本発明によると、内分泌系に作用するストレス応答によるACTHやコルチゾールの分泌をブロックして、このACTHやコルチゾールの分泌をもたらす、内分泌系に作用するストレス応答による、高血圧、糖尿病、肥満、免疫力低下、脳の海馬損傷、うつ病の発症及び症状、睡眠障害の発症及び症状、学習機能、記憶機能低下、痴呆症の発症及び症状、などの諸症状を手軽に緩和し、これにより、その諸症状を未然に防ぐ、緩和剤あるいは抑制剤あるいはそれらを担持した担持物が提供される。
【0037】
また、これらの諸症状をもたらす、内分泌系に作用するストレス応答を手軽に緩和し、これにより、その諸症状を未然に防ぐ、緩和剤あるいは抑制剤あるいはそれらを担持した担持物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ラットに各種のミルクの香り成分を嗅がせたときの血液中の血漿ACHT濃度の測定結果を示すグラフである。
【図2(a)】ラットに各種のミルクの香り成分を嗅がせたときの血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示すグラフである。
【図2(b)】ラットに各種のミルクの香り成分を嗅がせたときの血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示すグラフである。
【図2(c)】ラットに各種のミルクの香り成分を嗅がせたときの血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示すグラフである。
【図3】ラットにミルク香料の各種の成分を嗅がせたときの、血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示すグラフである。
【図4】ラットにバニリンを濃度を変えて嗅がせたときの、血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示すグラフである。
【図5】ラットにエチルバニリンを濃度を変えて嗅がせたときの、血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示すグラフである。
【図6】ラットに天然バニラエキストラクトを濃度を変えて嗅がせたときの、血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示すグラフである。
【図7】モリス水迷路に用いられるプールの構成を説明する上面模式図である。
【図8】プール中のラットの動きの軌跡を説明する説明図である。
【図9】トライアルテストにおける逃避潜時の推移を示すグラフである。
【図10】ラットにストレス負荷を与えバニリンを嗅がせたときの、モリス水迷路におけるプールのNE領域での述べ滞在時間とSW領域での述べ滞在時間を示すグラフである。
【図11】ラットにストレス負荷を与えバニリンを嗅がせたときの、視床下部室傍核におけるFos陽性神経細胞数の変化を示す写真である。
【図12】図11に対応する、視床下部室傍核におけるFos陽性神経細胞数の変化を示すグラフである。
【図13】ラットにストレス負荷を与えバニリンを嗅がせたときの、扁桃体中心核におけるFos陽性神経細胞数の変化を示す写真である。
【図14】図13に対応する、扁桃体中心核におけるFos陽性神経細胞数の変化を示すグラフである。
【図15】ラットにストレス負荷を与えバニリンを嗅がせたときの、扁桃体内側核におけるFos陽性神経細胞数の変化を示す写真である。
【図16】図15に対応する、扁桃体内側核におけるFos陽性神経細胞数の変化を示すグラフである。
【図17】ラットにストレス負荷を与えバニリンを嗅がせたときの、前頭前皮質におけるFos陽性神経細胞数の変化を示す写真である。
【図18】図17に対応する、前頭前皮質におけるFos陽性神経細胞数の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ヒトがある種のストレスを受けると、副腎皮質に作用し、下垂体前葉からのACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌が促進される。このストレスを受けているあいだはACTHの発生量が増大する。ACTHは、副腎皮質に作用し、糖質コルチコイド(グルココルチコイド)などの副腎皮質ホルモンの分泌を促進する。グルココルチコイドとしては、コルチゾールやコルチコレステロン(CORT)が知られている。
【0040】
コルチゾールは、糖質コルチコイドの活性の約95%を占め、分泌される量によっては、血圧や血糖レベルを高め、免疫機能の低下や不妊をもたらすことが知られている。また、このホルモンは過剰な、内分泌系に作用するストレス応答により多量に分泌された場合、脳の海馬を萎縮させることが知られている。
【0041】
コルチコレステロンは、ストレス負荷時に分泌量が増加することが知られている。
【0042】
本発明は、内分泌系に作用するストレス応答(以下内分泌系に作用するストレス応答あるいは単にストレス応答と称する)によるACTHやコルチゾールの分泌をブロックして、このACTHやコルチゾールの分泌をもたらすストレス応答による、高血圧、糖尿病、肥満、免疫力低下、脳の海馬損傷、うつ病の発症及び症状、睡眠障害、学習機能、記憶機能低下、痴呆症の発症及び症状、などの諸症状(以下ストレス応答による諸症状とも称する)を手軽に緩和あるいは抑制し、これにより、その諸症状を未然に防ぐ緩和剤あるいは抑制剤(以下「剤」とも称する)に関するものである。
【0043】
また、本発明は、これらの諸症状をもたらすストレス応答を手軽に緩和あるいは抑制し、これにより、その諸症状を未然に防ぐ緩和剤あるいは抑制剤(以下「剤」とも称する)に関するものである。
【0044】
すなわち、本発明の剤は、
下垂体前葉におけるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌を抑制する抑制剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答を緩和するストレス応答緩和剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する高血圧の発症及び症状を緩和する緩和剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する糖尿病の発症及び症状を緩和する緩和剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する肥満抑制剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する免疫力低下抑制剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するコルチゾールによる脳の海馬損傷を抑制する抑制剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するうつ病の発症及び症状を緩和する緩和剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する睡眠障害の発症及び症状を緩和する緩和剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する学習機能、記憶機能低下抑制剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する痴呆症の発症及び症状を緩和する緩和剤、
の総称である。
【0045】
本発明の剤は嗅ぐことにより前記ストレス応答の緩和やストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和の効果が得られるものであり、バニリン(3-メトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド)あるいはエチルバニリン(3-エトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド)からなるものである。
【0046】
本発明の剤はバニリンとエチルバニリンが任意の割合で混合されたものを有効成分とするものであってもよい。
【0047】
バニリンやエチルバニリンは、合成物であってもよいが、天然バニラから得られる天然バニラエキストラクトから精製されたものであってもよい。また天然バニラエキストラクトからストレス応答緩和効果を阻害するバニリンの他の揮発性成分を除去したものであってもよい。
【0048】
本発明の剤は補助的な機能を付与するための助剤が添加されて用いられてもよい。また、バニリン、エチルバニリンあるいは両者の混合物の他に希釈剤や溶剤等の薬理学的に許容される担体を含んでなるものであってもよい。溶剤としてはエタノールが例示される。
【0049】
本発明の剤は有効成分が担体と混合又は希釈されたり、カプセル、あるいは他の容器状に形成された担体内に揮発可能に封入されて担体を含む組成物として用いられてもよい。担体が希釈剤として作用する場合、それは有効成分の賦形剤、補形剤、又は媒質として作用するような固体、半固体、または液体物質であっても良い。すなわち、この組成物は、錠剤、丸薬、粉末、サシェ、エリキシル、懸濁液、エマルション、溶液、シロップ、エアロゾル、軟質及び硬質ゼラチンカプセルなどの形態であってもよい。
【0050】
担体としては、脱脂綿やガーゼや不織布のような、バニリン、エチルバニリンあるいは両者の混合物、またはこれらの溶液を含ませるものであってもよい。
【0051】
担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、スターチ、アラビアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、メチルヒドロキシベンゾエート類、プロピルヒドロキシベンゾエート類、水、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、デキストリンのような包接材、が例示される。
【0052】
このように、担体としては、溶剤のようにバニリン、エチルバニリンあるいは両者の混合物とともに嗅がれる成分からなるものもあるが、脱脂綿やガーゼや不織布や包接材のように単にバニリン、エチルバニリンあるいは両者の混合物を担持する機能のみを有するものもある。
【0053】
また、この組成物は付加的に増量剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香味剤、乳化剤、防腐剤などを有することができる。これらの付加物は、ストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果を薬理学的に阻害しない成分であることが必要である。
【0054】
本発明の剤は、連続的にあるいは間欠的に所定時間意識的あるいは無意識に嗅ぐことにより、前記ストレス応答に起因するACTHやコルチゾールの分泌がブロックされる。
【0055】
すなわち、本発明の剤を嗅ぐことにより、その成分であるバニリンあるいはエチルバニリンが嗅覚細胞から脳に作用してコルチゾールの分泌がブロックされる。これにより、このようなストレス応答が緩和される。
【0056】
詳しくは、例えば、生体がストレスを受けると扇桃体、内側前頭前皮質、などの領域から視床下部室傍核へ情報が送られ、室傍核の副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH) 含有神経の活動が上昇し、下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が血液中へ放出され、その結果副腎からコルチコイドが分泌され、全身のストレスが発現するとされている。本発明のストレス応答緩和剤はこのようなストレス応答を軽減し、このストレス応答が引き起こす諸症状の抑制あるいは緩和するものである。
【0057】
この嗅ぐ時間は、5分以上であることが内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果のうえで好ましい。2〜10時間であることが効果及び実行の容易さのうえでさらに好ましい。間欠的に嗅ぐ場合は実際に嗅ぐ時間の累計が5分以上であることが好ましい。嗅ぐ時間の累計が2〜10時間であることがさらに好ましい。
【0058】
本発明の剤は上記成分からなるものであってもよいが、上記成分がエタノール等の溶媒に溶解されてなる溶液であってもよい。上記成分が吸着性の基材物質に吸着されてなる錠剤であってもよい。上記成分がデキストリンのような包接物質に包接されてなるものであってもよい。
【0059】
本発明の剤はじかに鼻を近づけて嗅いでもよいが、担体に担持させたものを鼻の近くに位置させることにより上記成分の香気を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだしてもよい。
【0060】
さらには、例えば、飲食物を担体として、その飲食物に本発明の剤を攪拌混合等により混合し、その飲食物を喫食あるいは飲用する過程で上記の香気成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。
【0061】
本発明の剤を含有させた飲食物は、天然のバニリン含有植物から溶剤に溶解する成分を溶解させることにより抽出する抽出法で抽出された、天然バニラエキストラクトあるいは天然のバニラなどの抽出物、が含有されているものであってはならない。このような抽出物は数百種類の化合物から成る非常に複雑な混合物であり、薬理学的に、内分泌系に作用するストレス応答緩和効果を阻害するバニリンの他の揮発性成分が、おそらくは内分泌系に作用するストレス応答緩和効果を高める揮発性成分とともに、存在すると推定され、天然のバニリン含有植物から溶剤に溶解する成分を溶解させることにより抽出する抽出法で抽出された、天然バニラエキストラクトあるいは天然のバニラなどの抽出物、が含有されている飲食物は内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られない。
【0062】
なお、本明細書においては、「天然バニラ」とは、ラン目ラン科バニラ属の果実であるバニラビーンズそのもの、もしくはバニラビーンズに物理的、化学的、生物学的加工(キュアリングも含む)を単回行ったもの、又は各工程を組み合わせたもの、又は各工程を単独で、もしくは組み合わせて複数回行ったもの、またバニラビーンズそのもの及びバニラビーンズを前述の方法で加工したものに対し、抽出加工を行い、その結果出てくる残渣物、さらには得られた抽出物を再加工した結果出てくる残渣物をいう。また、「天然バニラエキストラクト」は、キュアリング処理を施したバニラビーンズに、各種溶剤を抽出溶媒として作用させ、抽出した抽出液あるいはキュアリング処理を施したバニラビーンズから圧搾抽出した抽出液をいう。
【0063】
本発明の剤を含有させる飲食物としてはとくに限定されないが、パン類、ハム、ソーセージ類、カップ麺などのインスタント食品、レトルト食品、固形食品、粉状食品、菓子類、飲料、冷菓、デザート、酒類等が例示される。
【0064】
この菓子類としては、特に限定されないが、和菓子、洋菓子、中華菓子、ガム類、氷菓子、冷菓子、が例示される。和菓子としては、代表的なものとしては、餅使用の菓子、餡類使用の菓子、求肥使用の菓子、団子類、桜餅、柏餅、おはぎ類、水無月、ういろう、饅頭、最中、せんべい・おかき類、かりんとう、揚げ物、包み・挟み系の菓子、きんつば類、今川焼きやたい焼き類、松風・村雨、わらびもち等のゲル感触系の菓子、餡蜜、寒天菓子、ゼリー類、干菓子、羊羹、ぜんざい・しるこ類、麩まんじゅう、洲濱・きな粉・類似のものの菓子 、豆菓子、昆布菓子、飴・砂糖菓子、おこし・奉天・五家宝類、カステラ、菓子パン類、駄菓子類などが例示される。洋菓子としては、アップルパイ、ウエハース、エクレア、乾パン、キャラメル、クラッカー、クリスマスケーキ、クレープ、コロンビエ、サバラン、サントノーレ、シュークリーム、シュツルーテル、ショートケーキ、ゼリー、タルト、デコレーションケーキ、デニッシュペーストリー、トルテ、ドロップ、ヌガー、バウムクーヘン、パウンドケーキ、バターケーキ、ババ、ババロア、パルフェグラッセ、パンケーキ、ビスケット、プリン、フラン、フルーツケーキ、ブレッツエル、ボンボン、ミルフィーユ、ムース、ロールケーキ、ワッフル、ドーナツ、ピザパイ、スポンジケーキ、ミートパイ、バターケーキ、発酵菓子類、チーズケーキ、砂糖漬け類、チョコレート類、スナック類(ポテト系、コーン系、小麦粉系など)、が例示される。
【0065】
この飲料としては、缶コーヒー、リキッドコーヒー、PETボトルコーヒー、紅茶、ウーロン茶、麦茶、日本茶、ブレンドティ、その他ティドリンク、機能型ティドリンク、ココアドリンク、冬期型飲料(スープ・甘酒・おしるこ)等の嗜好飲料;果汁飲料、果汁入清涼飲料、低果汁入清涼飲料、果粒含有果実飲料、果肉飲料、野菜系飲料(トマト飲料・野菜飲料・野菜入混合果汁飲料)等の果実・野菜飲料;コーラフレーバー飲料、透明炭酸飲料、果実着色炭酸飲料、乳類入炭酸飲料、ジンジャーエール、果汁含有炭酸飲料(果汁入炭酸飲料・低果汁入炭酸飲料)等の炭酸飲料;飲用牛乳、乳飲料(白物乳飲料・コーヒー系乳飲料・色物乳飲料・カップ乳飲料)、乳製品乳酸菌飲料、乳酸菌飲料、乳類入清涼飲料、殺菌乳製品乳酸菌飲料(ストレート)、ドリンクヨーグルト等の乳性飲料; ミネラルウォーター、酸素強化水等のミネラルウォーター類; 食系ドリンク、健康サポート飲料、機能性清涼飲料、スポーツドリンク等の機能性飲料; 乳類・大豆飲料(豆乳類・大豆飲料)、ビネガードリンク等の飲料、が例示される。
【0066】
飲食物に本発明の剤を含有させる場合、飲食物に対して上記成分が0.0005〜10重量%含有されることが内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果のうえで好ましい。上記成分が0.0005重量%以上であれば内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られるが0.0005重量%未満であると、このストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果が顕著には得られない。上記成分が10重量%を超えると、飲食物に違和感を生ずる場合がある。
【0067】
また、飲食物に本発明の剤を含有させる場合、飲食物に対して上記成分が0.01〜10重量%含有されることが内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果のうえでさらに好ましい。
【0068】
本発明の本発明の剤を含有させた飲食物は、少なくとも100gを少なくとも1週間毎日喫食あるいは飲用することによりこのストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。あるいは、1か月(30日)のあいだに少なくとも2週間喫食あるいは飲用することによりこのストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。
【0069】
さらには、例えば、茶葉のような嗜好品を担体として、その嗜好品に本発明の剤を攪拌混合等により混合し、例えば茶葉であれば本発明の剤が混合されたその茶葉を煎じて飲用するなどして服用する過程で上記の香気成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。茶葉としては、紅茶,緑茶,ウーロン茶、麦茶、ハト麦茶、ジャスミン茶、プアール茶、ルイボス茶、ハーブ茶、甜茶葉、エゾウコギ茶、蕎麦茶、明日葉茶、グァバ茶、ユーカリ茶、枇杷の葉茶、アロエ茶、ゲンノショウコ、センブリ、ウコン、スギナ茶、河原決明、ウラジロガシ茶、ドクダミ茶、ハブ茶、菊花茶、シソ茶、アマチャズル茶、オオバコ、桜、甘茶、柿の葉茶、カモミール、しょうが、紅花、サフラン、コンフリー茶、しいたけ茶、杜仲茶、ギムネマ茶、ヨモギ茶、銀杏葉茶、玄米茶、麦茶、ウラジロガシ茶、カキオドシ茶、カミツレ茶、カリン茶、桑の葉茶、ゴボウ茶、セキショウ茶、タラノキ茶、タンポポの根茶、ナタマメ茶、ニワトコ茶、ネズミモチ茶、メグスリノキ茶、羅漢果茶、鉄観音茶、野草茶、各種漢方茶、人参茶、などが例示される。
【0070】
この嗜好品としては、茶葉のほかに、コーヒー(豆、粉)、昆布茶の粉、ココアの粉、その他の嗜好性飲料の粉、のり、等が例示される。
【0071】
嗜好品に剤を含有させる場合、嗜好品に対して上記成分が0.0005〜10重量%含有されることが内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果のうえで好ましい。上記成分が0.0005重量%以上であればこのストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られるが0.0005重量%未満であると、このストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果が顕著には得られない。上記成分が10重量%を超えると、嗜好品に違和感を生ずる場合がある。
【0072】
嗜好品に剤を含有させる場合、嗜好品に対して上記成分が0.01〜10重量%含有されることが内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果のうえでさらに好ましい。
【0073】
本発明の剤は揮発性があるので、飲食物や嗜好品へ本発明の剤を混合あるいは含有させる手段として、成分を例えばシクロデキストリン等の包接材に包接させて粉末形態として飲食物や嗜好品やその原材料に加えてもよい。
【0074】
また、本発明の剤は、化粧品を担体として、その化粧品に本発明の剤を混合し、この剤が混合されたその化粧品の使用時に上記の成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。
【0075】
化粧品としては、フレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品などが例示される。フレグランス製品としては、香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン、など;基礎化粧品としては、洗顔クリーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、コールドクリーム、マッサージクリーム、乳液、化粧水、美容液、など;仕上げ化粧品としては、ファンデーション、粉おしろい、固形おしろい、タルカムパウダー、口紅、リップクリーム、頬紅、など;頭髪化粧品としては、ポマード、ブリランチン、セットローション、ヘアーステック、ヘアーソリッド、ヘアーオイル、ヘアートリートメント、ヘアークリーム、ヘアートニック、ヘアーリキッド、ヘアースプレー、バンドリン、養毛剤、染毛剤、など;日焼け化粧品としては、サンタン製品、サンスクリーン製品、など;薬用化粧品としては、制汗剤、アフターシェービングローション及びジェル、パーマネントウェーブ剤、薬用皮膚化粧料、浴用剤などを挙げることができる。
【0076】
化粧品を担体とする場合、化粧品総量に対する上記成分の含有割合が0.0005〜50重量%であることが内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果のうえで好ましい。香気成分が0.0005重量%以上であればこのストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られるが、0.003重量%未満であると、このストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果は、香気成分が0.003〜50重量%の場合に比べて顕著ではない。上記成分が50重量%を超えると、化粧品としての本来の香りに違和感を生ずる場合がある。
【0077】
化粧品を担体とする場合、化粧品総量に対する上記成分の含有割合が0.01〜50重量%であることが内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果のうえでさらに好ましい。
【0078】
さらに、本発明の剤は、イヤリングやネッカチーフやバンダナやブローチや、胸元のハンカチや帽子やヘッドバンドやハンドバッグや匂い袋のようなアクセサリーや衣料品を担体として、そのアクセサリーや衣料品に本発明の剤を担持させ、この剤が担持されたそのアクセサリーや衣料品を使用することにより上記成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。このアクセサリーや衣料品は顔(鼻)に近い位置に装着されるものであることが好ましい。
【0079】
この衣料品としては、肌着、セーター、ジャケット、浴衣、白衣、スラックス、マフラー、靴下、手袋、ストッキング、エプロン、マスク、サポーター、帽子、などが例示されるが身に付けたり着るものであればとくに限定されない。
【0080】
またさらに、本発明の剤は、寝装用品に担持されて就寝時に上記成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。寝装用品としては、枕、枕カバー、掛け布団、敷き布団、布団カバー、毛布、シーツ、ベッド、ベッドカバー等のほか、浴衣、パジャマ、肌着等就寝用に使用する衣料、及びナイトキャップ、ヘアバンド、マスク、アイマスク、タオル等就寝用に使用する小物、さらには寝所に配置するソファー類やそのカバーが挙げられる。また、就寝用に身辺またはその近傍に配されて使用するものであればこれらに限定されない。
【0081】
本発明の剤は鼻から約20cm以内の距離に位置されて所定の時間嗅がれることが内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果のうえで好ましい。
【0082】
あるいは、本発明の剤を用いて、風や空気の自然対流やファン等で積極的に室内にその香気成分を拡散させて上記成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態が作りだされてもよい。
【0083】
さらに、本発明の剤は、トイレタリー用品に担持されてトイレ使用時に上記の香気成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、内分泌系に作用するストレスの緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。トイレタリー用品としては、スリッパ、ペーパーホルダーカバー、フタカバー、トイレマット、ペーパーホルダー、置物、が挙げられる。また、トイレまたはその近傍に配されて使用するものであればこれらに限定されない。
【0084】
さらに、本発明の剤は、家電用品(家電製品)に担持されてその用品の使用時またはその用品の近傍に居るときに上記の香気成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。家電用品としては、エアコン、エアコンカバー、エアコンのフィルター、テレビ、テレビ台、冷蔵庫、洗濯機、パーソナルコンピュータ、AV機器、電子レンジ、フードプロセッサー、オーブン、電気コンロ、調理用ヒーター、食器洗浄器、暖房用ヒーター、扇風機、身体揉み器、空気清浄機、炊飯器、等が挙げられるが、電気を利用する家庭用器機であればこれらに限定されない。
【0085】
また、本発明の剤は、家庭用品やインテリア用品に担持されてその用品の使用時またはその用品の近傍に居るときに上記の香気成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。
【0086】
インテリア用品としては、椅子、机、キャビネット、鏡台、カーテン、障子、襖、壁紙、テーブルクロス、スリッパ、間仕切り、等の家具類や、絵画、置物、縫いぐるみ、造花、鉢植えもの、タペストリー、クラフト製品、等の装飾品、絨緞等の敷物類、クッション、床材、壁材、天井材、扉などの内装材、玩具、が例示されるが室に用いられるものであればこれらに限定されない。
【0087】
家庭用品としては、芳香剤、消臭スプレー、殺虫剤、虫忌避剤などが例示される。
【0088】
これら、アクセサリー、衣料品、家庭用品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、から選択される用品に本発明の剤を担持させる手段としては、例えば、香気成分をコロイド状にして単独に又はバインダーと共に用品を構成する繊維や樹脂へ練り込むことが考えられる。或いは、上記成分を徐放性のマイクロカプセルに封入し、マイクロカプセルをバインダーにより用品の構成部材にスプレーで噴霧するなどして付着させてもよい。あるいは用品の一部分に本発明の剤を収納する収納部を設けてその収納部に本発明の剤を収納してもよい。
【0089】
また、本発明の剤は、ペットフードに混合して犬、猫のようなペットに与えると、喫食時にペットが上記の香気成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、ペットの内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和する効果が得られる。ペットフードに本発明のストレス応答緩和剤を含有させてなるペットフードは、上記成分がペットフードに対して0.0005〜10重量%含まれていることが好ましい。上記成分が0.0005重量%以上であれば内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和する効果が得られるが0.0005重量%未満であると、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和する効果が顕著には得られない。上記成分が10重量%を超えると、喫食量が減少する場合がある。
【0090】
さらに、本発明のストレス応答緩和剤は、ペット用品に担持されてペットが使用時にペット用品の近傍に居るときにペットが上記の成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、ペットの内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和する効果が得られる。ペット用品としては、レインコート、首輪、胴輪、犬舎、ペット用各種玩具、ボーン、デンタルケア、食器、つめみがき等が例示される。
【0091】
このように、本発明の剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、から選択される用品、ペット用品、ペットフード
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、担持物を用いることにより、本発明の剤の効果、すなわち、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果を有効かつ手軽に発揮させることができる。
【0092】
本発明の剤は、マイクロカプセルやシクロデキストリンのような包接剤に包接されて上記各種の担体に担持されてもよい。マイクロカプセルに包まれて上記各種の担体に担持されてもよい。
【0093】
本発明の剤は内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和を目的とする薬剤としても使用できる。
【0094】
本発明の効果は以下の実験例により確認される。なお、以下の実験例において、濃度や割合に関する%表示はことわりのない限り重量%である。また以下の実験に用いたラットはことわりのない限り7〜9週齢のwister系ラット(オス)である。
【0095】
一般にストレス負荷時に血液中のACTH濃度やコルチコステロン(corticosterone(CORT))濃度量が増加することが知られている。そこで実験例1〜8では、ラットにストレス負荷をかけると同時に、試薬溶液を含ませた脱脂綿サンプルをラットの鼻先に一定時間提示し、しばらく後にそのラットの血液中のACTH濃度あるいはCORT濃度を測定することで、内分泌系に作用するストレス応答がどの程度緩和されるのかを見積もった。
【0096】
[実験例1]
まず、各種のミルクの香り成分を用いてそれぞれの、内分泌系に作用するストレス応答抑制効果を検証した。
ストレス負荷:拘束負荷
試薬(ミルクの香り成分):
1.牛乳エッセンス(サンアロマ社製);(図中milkと表示)
2.アルデヒド・ケトンエッセンス(サンアロマ社製);(図中aldehyde(/) ketoneと表示)
3.ラクトンエッセンス(サンアロマ社製);(図中lactoneと表示)
脱脂綿サンプルの調整:各試薬をエタノールで1000倍希釈(0.1%)し、これを500μL脱脂綿に含ませ実験に供した。
実験対象群(n=4) :
1.ストレス負荷を与えるが脱脂綿サンプルの提示は行わないラット群 ・・・IM(図1中cont(IM)のみ)と表示)
2.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示(脱脂綿サンプルをラットの鼻先2cmに提示)の両方を行うラット群1・・・PR
実験タイムスケジュール:
0min(10:00):拘束負荷開始
60min(11:00):脱脂綿サンプル提示開始
90min(11:30):脱脂綿サンプル提示終了
120min(12:00):拘束負荷終了及び採血
【0097】
表1〜表3に実験例1で使用された試薬(ミルクの香り成分)の組成と試薬中の香気成分の成分比率を示す。
【0098】
【表1−1】
【0099】
【表1−2】
【0100】
【表2−1】
【0101】
【表2−2】
【0102】
【表3−1】
【0103】
【表3−2】
【0104】
[実験例1の結果]
図1に採血された血液中の血漿ACHT濃度の測定結果を示す。図1より、脱脂綿サンプルを提示したPR 群において、アルデヒド・ケトンエッセンスを含有している脱脂綿サンプルは IM と比較して有意にACTH濃度が低くなっていた。このように、アルデヒド・ケトンエッセンスにおいて内分泌系に作用するストレス応答緩和効果が認められた。
【0105】
[実験例2]
実験例1と同様の3種のミルクの香り成分を、異なる3種類のタイムスケジュールでストレス下にあるラットに与えてそれぞれの、内分泌系に作用するストレス応答抑制効果を調べた。
ストレス負荷:拘束負荷
脱脂綿サンプルの調整:各試薬をエタノールで1000倍希釈(0.1%)し、これを500μL脱脂綿に含ませ実験に供した。
実験対象群(n=4) :
1.ストレス負荷を与えるが脱脂綿サンプルの提示は行わないラット群 ・・・IM
2.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示(脱脂綿サンプルをラットの鼻先2cmに提示)
の両方を行うラット群1・・・PR
実験タイムスケジュール:
タイムスケジュール−1
0〜60min(9:00〜10:00):通常飼育(負荷なし)
0〜30min(9:00〜9:30):脱脂綿サンプル提示
60min(10:00):拘束負荷開始
180min(12:00):拘束負荷終了及び採血
タイムスケジュール−2
0〜60min(9:00〜10:00):通常飼育(負荷なし)
60min(10:00):拘束負荷開始
60〜90min(10:00〜10:30):脱脂綿サンプル提示
180min(12:00):拘束負荷終了及び採血
タイムスケジュール−3
0〜60min(9:00〜10:00):通常飼育(負荷なし)
60min(10:00):拘束負荷開始
120〜150min(11:00)〜11:30):脱脂綿サンプル提示
180min(12:00):拘束負荷終了及び採血
【0106】
[実験例2の結果]
図2に、各タイムスケジュールにつき、採血された血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示す。図2においてグラフの上方に表示の時間帯は脱脂綿サンプル提示の時間帯である。図2より、脱脂綿サンプルを提示したPR 群において、アルデヒド・ケトンエッセンスを含有している脱脂綿サンプルが、ラットにストレスの負荷をかけると同時に脱脂綿サンプル提示を行うと血漿CORT濃度が減少した結果が得られ、内分泌系に作用するストレス応答が最も緩和されることが認められた。
【0107】
[実験例3]
実験例1、実験例2で用いたアルデヒド・ケトンエッセンスの揮発成分をそれぞれ単独で用い、どの成分が内分泌系に作用するストレス応答の緩和に寄与しているかを調べた。
ストレス負荷:拘束負荷
実験対象群(n=4) :
1.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示の両方を行わないラット群 ・・・NS
2.ストレス負荷を与えるが脱脂綿サンプルの提示は行わないラット群 ・・・IM
3.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示(脱脂綿サンプルをラットの鼻先2cmに提示)
の両方を行うラット群1・・・PR
試薬:
バニリン
エチルバニリン
エチルマルトール
メチルノニケトン
アセトイン
インドール
脱脂綿サンプルの調整:各試薬をエタノールで1000倍希釈(0.1%)し、これを500μL脱脂綿に含ませ実験に供した。
実験タイムスケジュール:
0min(10:00):拘束負荷開始
0〜30min(10:00〜10:30):脱脂綿サンプル提示
180min(12:00):拘束負荷終了及び採血
【0108】
[実験例3の結果]
図3に、ミルク香料の各成分を嗅がせたときの、採血された血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示す。図3より脱脂綿サンプルを提示したPR 群において、血漿CORT濃度が減少した結果が得られ、バニリンとエチルバニリンに内分泌系に作用するストレス応答緩和効果があることがわかった。
[実験例4]
バニリン、エチルバニリンの等重量部混合液につき内分泌系に作用するストレス応答緩和効果を調べた。
ストレス負荷:拘束負荷
脱脂綿サンプルの調整:バニリン、エチルバニリンの等重量部混合液を99%エタノールで希釈溶解し、0.1%濃度にした。これを500μL脱脂綿に含ませ実験に供した。
実験対象群(n=6) :
1.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示の両方を行わないラット群 ・・・NS
2.ストレス負荷を与えるが脱脂綿サンプルの提示は行わないラット群 ・・・IM
3.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示(脱脂綿サンプルをラットの鼻先2cmに提示)の両方を行うラット群1・・・PR
実験タイムスケジュール:
0min(10:00):拘束負荷開始
0〜30min(10:00〜10:30):脱脂綿サンプル提示
180min(12:00):拘束負荷終了及び採血
【0109】
[実験例4の結果]
脱脂綿サンプルを提示したPR 群において、実験例3におけるバニリンあるいはエチルバニリンにおけると同程度の、内分泌系に作用するストレス応答緩和効果があることがわかった。
【0110】
[実験例5]
実験例3で内分泌系に作用するストレス応答緩和効果があるとされたバニリンにつき内分泌系に作用するストレス応答緩和効果が最大になる濃度を調べた。
ストレス負荷:拘束負荷
脱脂綿サンプルの調整:バニリンを99%エタノールで希釈溶解し、0%(99%エタノールのみ)(vehicle)、0.01%、0.02%、0.05%、0.1%、0.2%、0.5%、1.0%濃度にした。これを500μL脱脂綿に含ませ実験に供した。すなわち、濃度毎(8グループ)に分けて実験対象群を設定した。
実験対象群(n=6) :
1.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示の両方を行わないラット群 ・・・NS
2.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示(脱脂綿サンプルをラットの鼻先2cmに提示)の両方を行うラット群1・・・PR
(但し、脱脂綿サンプルの提示濃度毎に8グループに分かれる)
実験タイムスケジュール:
0min(10:00):拘束負荷開始
0〜30min(10:00〜10:30):脱脂綿サンプル提示
180min(12:00):拘束負荷終了及び採血
【0111】
[実験例5の結果]
図4に、各条件での、採血された血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示す。図4より脱脂綿サンプルを提示したPR 群において、内分泌系に作用するストレス応答を緩和、軽減するバニリンの最適濃度は0.1〜0.2%であることがわかった。
【0112】
[実験例6]
実験例3で内分泌系に作用するストレス応答緩和効果があるとされたエチルバニリンにつき内分泌系に作用するストレス応答緩和効果が最大になる濃度を調べた。
ストレス負荷:拘束負荷
脱脂綿サンプルの調整:エチルバニリンを99%エタノールで希釈溶解し、0%(99%エタノールのみ)(vehicle)、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1.0%濃度にした。これを500μL脱脂綿に含ませ実験に供した。すなわち、濃度毎(6グループ)に分けて実験対象群を設定した。
実験対象群(n=6) :
1.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示の両方を行わないラット群 ・・・NS(cont)
2.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示(脱脂綿サンプルをラットの鼻先2cmに提示)の両方を行うラット群1・・・PR
(但し、脱脂綿サンプルの提示濃度毎に6グループに分かれる)
実験タイムスケジュール:
0min(10:00):拘束負荷開始
0〜30min(10:00〜10:30):脱脂綿サンプル提示
180min(12:00):拘束負荷終了及び採血
【0113】
[実験例6の結果]
図5に、各条件での、採血された血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示す。図5より脱脂綿サンプルを提示したPR 群において、内分泌系に作用するストレス応答を緩和、軽減するエチルバニリンの最適濃度は約0.1%であることがわかった。エチルバニリンはバニリンと似たような化学構造を有していることから、ほぼ同程度の、内分泌系に作用するストレス応答緩和効果が期待できると推測される。
【0114】
[実験例7]
天然バニラエキストラクトにつき内分泌系に作用するストレス応答緩和効果を調べた。今回実験に供した天然バニラエキストラクトはバニラビーンズをエタノールまたは含水エタノールで香味成分を抽出した液状の製剤である。天然のバニラエキストラクトは数百種類の化合物から成る非常に複雑な混合物である。
ストレス負荷:拘束負荷
脱脂綿サンプルの調整:天然バニラエキストラクトを99%エタノールで希釈溶解し、0%(99%エタノールのみ)(vehicle)、天然バニラエキストラクトに含有されているバニリン含有量が0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1.0%濃度になるように濃度調整した。これを500μL脱脂綿に含ませ実験に供した。
実験対象群(n=6) :
1.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示の両方を行わないラット群 ・・・NS(cont)
2.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示の両方を行うラット群・・・PR
実験タイムスケジュール:
0min(10:00):拘束負荷開始
0〜30min(10:00〜10:30):脱脂綿サンプル提示
180min(12:00):拘束負荷終了及び採血
【0115】
[実験例7の結果]
図6に、各条件での、採血された血液中の血漿ACHT濃度の測定結果を示す。図6より、バニリンの場合と同様に、天然バニラエキストラクトに含有されているバニリンの濃度が濃度0.1%付近で、内分泌系に作用するストレス応答緩和効果のカーブが最大になるという傾向が得られたが、コントロール(濃度0%)とあまりかわらないCORT濃度であったことから、天然バニラエキストラクトにはバニリンの含有は確認されているが、ストレス応答緩和効果は確認できなかった。その理由は、天然バニラエキストラクトには薬理学的に、内分泌系に作用するストレス応答緩和効果を阻害するバニリンの他の揮発性成分が、おそらくは内分泌系に作用するストレス応答緩和効果を高める揮発性成分とともに、存在することが疑われることである。その阻害成分を天然バニラエキストラクトから取り除いてやることで、嗜好性が高く内分泌系に作用するストレス応答緩和効果のある天然バニラエキストラクトが得られる可能性があると思われる。
【0116】
[実験例8]
モリス水迷路による学習・記憶能力低下抑制の確認
本発明の学習機能、記憶機能低下抑制剤を嗅ぐことにより、その成分であるバニリンあるいはエチルバニリンが嗅覚細胞から脳に作用してコルチゾールの分泌がブロックされ内分泌系に作用するストレス応答が緩和される。前述のように、生体がストレスを受けると扇桃体、内側前頭前皮質、などの領域から視床下部室傍核へ情報が送られ、室傍核の副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH) 含有神経の活動が上昇し、下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が血液中へ放出され、その結果副腎からコルチコイドが分泌され、全身のストレスが発現するとされている。本発明の学習機能、記憶機能低下抑制剤がこのような、内分泌系に作用するストレス応答が引き起こす学習機能低下、記憶機能低下を抑制する効果をモリス水迷路による実験で確認する。
【0117】
モリス水迷路とは、空間認識の記憶学習を測定することが可能な実験装置であり、円形プールに水を満たし、避難場所として水面下に隠れた台を置いたものである。マウスをモリス水迷路に入れると、最初は、水槽の中を泳ぎ回った結果、台を見つける。これを何回も繰り返すと、ラットは台のある場所を覚え、台に到着するまでの時間が短縮する。ラットの水泳パターン(台付近に滞在する時間)や台に到着するまでの時間を測定することにより学習能力を知ることができる。
【0118】
実験材料:Sprague−Dawley rat(7週齢のオス)
実験装置:モリス水迷路
実験グループ:
a.ストレス負荷を与えないで脱脂綿サンプルも嗅がせないグループ(control)
b.ストレッサーにより30分間の拘束によるストレス負荷を与え、99%エタノールを500μL脱脂綿に含ませた脱脂綿サンプルを嗅がせるグループ(vehicle)
c.ストレッサーにより30分間の拘束によるストレス負荷を与え、バニリンを99%エタノールで希釈溶解し0.1%濃度にしたものを500μL脱脂綿に含ませた脱脂綿サンプルを嗅がせるグループ(vanilin(0.1%))
d.ストレス負荷を与えないで、バニリンを99%エタノールで希釈溶解し0.1%濃度にしたものを500μL脱脂綿に含ませた脱脂綿サンプルを嗅がせるグループ
ストレッサー:
拘束によりストレス負荷を与える機器。脱脂綿サンプルはこの拘束中に嗅がせる。
トレーニング:
水泳能力の確認とテスト時に受ける新規ストレス応答の軽減のため、直径1mの円形プール中を自由に30分間泳がせる。
トライアルテスト:
空間的学習能力の評価を目的とし、プール中のランダムな位置からラットを放し、プラットホーム(PF:隠れた踏み台)に上がるまでの時間を測定する。30秒間のインターバルを挟んで、合計6回のトライアルを行う。
ストレス:
Immobirization(拘束)を30分行う。この間、脱脂綿サンプルを含ませた脱脂綿を鼻先2cmの位置に固定しておく。
プローブテスト:
空間的想起能力の評価を目的とし、プラットホームを取り除き、プール中でラットを30秒間泳がせる。そのとき、トライアルテスト時にプラットホームのあった領域をNE領域、その反対側の領域をSW領域とし、各領域に滞在した時間を測定する。
【0119】
図7にプール2の上面図とNE領域、SW領域を示す。図8にプール2中のラットの動きの軌跡4を示す。図8における(a)はトライアルテスト中にNE領域に長く滞在した場合の軌跡の一例であり、(b)はトライアルテスト中にNE領域に滞在した述べ時間と、SW領域に滞在した述べ時間とに有意の差がなかった場合の軌跡の一例である。
【0120】
図8における(a´)は、図8における(a)に対応した、ラットがトライアルテスト中に各領域に滞在した述べ時間であり、(b´)は(b)に対応した、ラットがトライアルテスト中に各領域に滞在した述べ時間である。各グラフの左がNE領域に滞在した述べ時間、右がSW領域に滞在した述べ時間である。
タイムスケジュール:
第1日目・・・9:30〜11:30の間、トレーニングを行わせる。
第2日目・・・9:30〜11:30の間、トライアルテストを行う。
第3日目・・・9:30〜11:30の間、トライアルテストを行い、その後、グループb、cについては11:30〜12:00の間ストレス負荷を与え脱脂綿サンプルを嗅がせる。
第4日目・・・12:00〜12:30の間、プローブテストを行う。
【0121】
[実験例8の結果]
トライアルテスト
図9より、トライアルテスト(第2日目、第3日目)における、a〜cの各グループの逃避潜時(SW領域に滞在した述べ時間)に有意差がなかった。また、この各グループとも、第2日目(Day2)のトライアルと第3日目(Day3)のトライアルとでは逃避潜時に有意差(p<0.001)があった。グループとトライアルの相互作用に有意差はなかった。なお、図9の横軸は、第2日目の6回のトライアルと第3日目の6回のトライアルを通しての、トライアルのはじめからの順番を表す付番である。
プローブテスト
図10より、b.ストレッサーにより30分間の拘束によるストレス負荷を与えバニリンを嗅がせないグループ(vehicle)は、NE領域での述べ滞在時間とSW領域での述べ滞在時間との間に有意差が認められず、想起能力が低下したことがわかる。これに対して、ストレス負荷を与えないグループ(control)と、ストレス負荷を与えバニリンを嗅がせたグループ(vanilin(0.1%))は、NE領域での述べ滞在時間がSW領域での述べ滞在時間より有意に大(p<0.05)であり、バニリンを嗅がせることにより想起能力の低下が抑制されたことがわかる。なお、図10における*印を付したかけ橋ラインは有意差の比較対象となる値の組を示す。
【0122】
さらに、本発明の効果は実験例9によっても確認される。また実験例9の実験に用いたラットはことわりのない限り7〜9週齢のwister系ラット(オス)である。
【0123】
実験例9では、バニリンによるストレス応答軽減の脳内機構を解明する目的で、脳内部位の神経活動を、c−Fos発現を指標に解析した。
【0124】
[実験例9]
【0125】
[方法]
観察した脳内部位
・ 扁桃体(扁桃体中心核(CoA)、 扁桃体内側核( MeA )
・ 視床下部室傍核(PVN)
・ 前頭前皮質(PFC )
【0126】
実験タイムスケジュール:
(9:00): 実験開始
0〜1時間目(9:00〜10:00)拘束負荷なし
1時間目(10:00)contを除いて拘束負荷開始
1〜1.5時間目(10:00〜10:30)拘束負荷に加え、バニリンによる喚覚刺激も同時に与える
1〜3時間目(10:00〜12;00)拘束負荷
3時間目(12;00)脳摘出
【0127】
実験水準
L−1 non stress(ストレス(拘束負荷)なし:cont)
L−2 stress+vehicle
(拘束負荷を与えた状態で99%エタノール500μlを脱脂綿に吸わせ、拘束中のラットの鼻先3cmに置く。拘束負荷は3時間目まで継続するが、エタノールの提示は1〜1.5時間目までで終了する。)
L−3 stress+vanilln(拘束負荷開始時にバニリンによる喚覚刺激を開始する。拘束負荷は3時間目まで継続するが、バニリンの提示は1〜1.5時間目までで終了する。)
【0128】
ストレスの与え方
ラットの四肢をプレート上にテープで貼りつけた。
バニリンの与え方
0.1%バニリン溶液、及びその溶媒(99%エタノール)500μlを脱脂綿に吸わせ、拘束中のラットの鼻先3cmに置くことにより喚覚刺激とした。
【0129】
免疫組織化学
<切片作成>
1.3時間目(拘束負荷終了直後)、速やかに脳を摘出。
2.4%PFAで[48時間、4℃ ]の条件下にて固定。
3. 冷PBSで洗浄後、PBSに溶かした30%スクロース溶液で[48時間、4℃ ]の条件下でスクロース置換
4.スクロースを取り除き、O.C.T.compoundに埋め込む。
5.15〜20分間凍結後、クライオスタット(−17℃)で60分間放置。
6.切片を切り、PBSの入った24wellプレートに溶かし込む。
【0130】
免疫組織化学法
1.0.1%H2O2で20分間処理し、PBSで洗浄。
2.20mM glycine PBSで20分間処理し、PBSで洗浄。
3.0.3%T−PBSで希釈した1%NGSを用い、室温で60分間ブロッキング。
4.1%NGSを含む0.3%T−PBSで希釈した1次抗体中(1:2000)に[48時間、4℃ ]置く。
5.T−PBSで余分な1次抗体を洗浄。
6.0.3%T−PBSで200倍に希釈したビオチン化抗ウサギIgG抗体で室温にて2時間処理。
7.T−PBS洗浄し、ABC反応。(2時間)
8.PBS洗浄後続けて50mM Tris−HCl(pH7.4)で洗浄。
9.DAB基質とのインキュベーション。(5〜10分間)
10.DAB基質、H2O2との反応。
11.発色度合いを観察しながら反応を停止。反応液を抜き、Tris−HClに置き換える。
12.プレパラートを作成し、撮影。
【0131】
結果と考察
PHAaxisの制御機構には2種類のメカニズムが存在する。1つ目はCORTによるネガティブフィードバック系である。PVN、ACTH分泌細胞、海馬にはCORT受容体が豊富に存在しており、これらの受容体にCORTが作用することによりCRTとACTHの分泌を抑制する。
【0132】
2つ目は、抑制性神経伝達物質であるγ−aminobutyric acid(GABA)による制御である。PVNニューロンの半数近くが辺縁系などからGABA性神経入力を受けており、GABA−A受容体アンタゴニストであるムシモールを、ストレス前にPVNへ投与すると、ストレスによる血漿CORT上昇が抑制されることから、PVNニューロンは、扁桃体などの辺縁系からGABA性入力を受け、神経活動を低下させ、その結果PHAaxisのストレス応答が抑制される。
【0133】
1.視床下部室傍核(PVN)の観察結果
視床下部室傍核(PVN)はPHAaxisの起始核であり、ストレス応答の中心となる核である。ストレスを負荷したラットのPVNはコントロールグループと比較して、Fos陽性神経細胞数が有意に増加し、ストレスにより、PVNの神経活動が上昇していることを示している(図11、図12 )。また、ストレス負荷直後にバニリンを提示したグループ は溶媒を提示したグループと比較して、ストレスによるFos陽性神経細胞数の増加が有意に減少した。この結果は、バニリンのストレス応答緩和作用を中枢レベルで証明するものである。ストレスによるFos陽性神経細胞数の増加が有意に減少した結果、ACTHの分泌が抑制されたと考えられる。
【0134】
2.扁桃体(扁桃体中心核(CeA)、扁桃体内側核(MeA))
扁挑体は情動刺激に対する応答の中心的な役割を担う。これまでの研究により、扁桃体中心核(CeA)は広範囲の視床下部、中脳、延髄といった恐怖反応に関係する部位に出力しており、扁桃体内側核(MeA)はPVNに出力していることが知られている。CeAでは、ストレスによりFos陽性神経細胞数が有意に増加しているが、バニリンを提示してもFos陽性神経細胞数に有意差が見られなかったが(図13、図14)、MeAでは、バニリンを提示することで溶媒を提示したグループと比較して、Fos陽性神経細胞数が有意に増加した(図15、図16)。MeAにはGABA性神経細胞が豊富に存在し、PVNへ投射している。よって、バニリンはMeAからPVNへのGABA性神経活動を増加させることにより、PVNの神経活動やPHAaxisによるストレス応答を抑制していることが考えられる。
【0135】
3.前頭前皮質(PFC)
PFCは認知、情動に関した情報処理に重要な役割を果たしており、ストレス刺激の種類により異なる反応を示すとされている。本願発明で、ストレスを負荷したグループのPFCはコントロールグループと比較して、Fos陽性神経細胞数が有意に増加した(図17、図18)。つまり、拘束ストレスによるPFCの神経活動上昇がPHAaxisにおけるストレス応答活性化に関与していることが示唆された。バニリンは有意差は見られなかったが、ストレス負荷によるPFCの神経活動を抑制する傾向が見られた。PFCからMeA への強い抑制性の投射は報告されていないので、PFCからPVNへは扁挑体を経由せずに情報が送られていると考えられる。
【符号の説明】
【0136】
2:プール
4:ラットの動きの軌跡
【技術分野】
【0001】
本発明は、嗅ぐことにより、内分泌系(HPA軸)に作用するストレス応答及び内分泌系に作用するストレス応答に起因する諸症状を緩和あるいは抑制する緩和剤あるいは抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会においては、家庭や地域社会の中での人間関係が希薄化するとともに、長期間にわたって厳しい経済情勢が続く中で、企業における雇用管理も大きく変化してきている。このような環境の下で、人々は精神的なストレスを蓄積しやすくなっていると考えられ、ストレスが発病に大きく影響するといわれている心の病が広がってきている。また、心の病は成人のみならず、青少年にとっても大きな問題となっており、例えば摂食障害等の増加という形でも現れている。心の健康の重要性はあらゆる年齢層で高まっている。また、ストレスは心のだけの問題ではなく、いわゆる生活習慣病といわれる諸疾患やストレス起因による腰痛などを発現させる事が明らかとなっている。現代社会では、大抵の人が、何らかのストレスにさらされており、日常的にストレスを軽減する必要を感じている。特許文献1のように、ストレスの緩和に有効な成分を薬として摂取することも考えられる。特許文献1では、ローズオイルを抗ストレス剤として経口摂取するものが示されている。
【0003】
しかしながら、ストレスを感ずることは誰しも経験するごく日常的なことなので、抗ストレス薬を薬剤として飲用摂取するのではなく、手軽にストレスを解消し、また、安眠を得ることができるものが求められている。
【0004】
一方、ストレス応答には自律神経系に作用してノルアドレナリンやアドレナリンの分泌を促進させる経路と、内分泌系に作用して副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)や、コルチゾールの分泌を促進させる経路とがあり、後者に関しては、手軽で有効な対策が見つからないのが現状である。
【0005】
例えば、コルチゾールの過剰な分泌は高血圧、糖尿病、肥満をもたらしたり、海馬の縮小によるうつ病、睡眠障害、学習機能低下、記憶機能低下、ひいては痴呆症をもたらしたりするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−68969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記観点に鑑みなされたもので、内分泌系に作用するストレス応答によるACTHやコルチゾールの分泌をブロックして、このACTHやコルチゾールの分泌をもたらす、内分泌系に作用するストレス応答による、高血圧、糖尿病、肥満、免疫力低下、脳の海馬損傷、うつ病、睡眠障害の発症及び症状、学習機能、記憶機能低下、痴呆症の発症及び症状、などの諸症状やこれらの諸症状をもたらす、内分泌系に作用するストレス応答を手軽に緩和あるいは抑制し、これにより、その諸症状を未然に防ぐ、緩和剤あるいは抑制剤を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、下垂体前葉におけるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌を抑制する抑制剤であることにある。
【0009】
また、本発明の要旨とするところは、視床下部室傍核における、ストレス応答を抑制させる前記抑制剤であることにある。
【0010】
また、本発明の要旨とするところは、扁桃体内側核における、視床下部室傍核へのGABA性神経活動を増加させ、ストレス応答を抑制させる前記抑制剤であることにある。
【0011】
また、本発明の要旨とするところは、前頭前皮質おける神経活動を抑制し、その情報が視床下部室傍核に伝達することで、ストレス応答を抑制させる前記抑制剤であることにある。
【0012】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答を緩和するストレス応答緩和剤であることにある。
【0013】
また、本発明の要旨とするところは、視床下部室傍核における、ストレス応答を抑制させる前記抑制剤であることにある。
【0014】
また、本発明の要旨とするところは、扁桃体内側核における、視床下部室傍核へのGABA性神経活動を増加させ、ストレス応答を抑制させる前記抑制剤であることにある。
【0015】
また、本発明の要旨とするところは、前頭前皮質おける神経活動を抑制し、その情報が視床下部室傍核に伝達することで、ストレス応答を抑制させる前記抑制剤であることにある。
【0016】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する高血圧の発症及び症状を緩和する緩和剤であることにある。
【0017】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する糖尿病の発症及び症状を緩和する緩和剤であることにある。
【0018】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する肥満抑制剤であることにある。
【0019】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する免疫力低下抑制剤であることにある。
【0020】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するコルチゾールによる脳の海馬損傷を抑制する抑制剤であることにある。
【0021】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するうつ病の発症及び症状を緩和する緩和剤であることにある。
【0022】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する睡眠障害の発症及び症状を緩和する緩和剤であることにある。
【0023】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する学習機能、記憶機能低下抑制剤であることにある。
【0024】
また、本発明の要旨とするところは、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する痴呆症の発症及び症状を緩和する緩和剤であることにある。
【0025】
また、本発明の要旨とするところは、
前記副腎皮質におけるACTHの分泌を抑制する抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、下垂体前葉におけるACTHの分泌を抑制する抑制剤担持物であることにある。
【0026】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答を緩和するストレス応答緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答を緩和するストレス応答緩和剤担持物であることにある。
【0027】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する高血圧の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する高血圧の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物であることにある。
【0028】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する糖尿病の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する糖尿病の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物であることにある。
【0029】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する肥満抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する肥満抑制剤担持物であることにある。
【0030】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する免疫力低下抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する免疫力低下抑制剤担持物であることにある。
【0031】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するコルチゾールによる脳の海馬損傷を抑制する抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するコルチゾールによる脳の海馬損傷を抑制する抑制剤担持物であることにある。
【0032】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するうつ病の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するうつ病の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物であることにある。
【0033】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する睡眠障害の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する睡眠障害の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物であることにある。
【0034】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する学習機能、記憶機能低下抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する学習機能、記憶機能低下抑制剤担持物であることにある。
【0035】
また、本発明の要旨とするところは、
前記ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する痴呆症の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する痴呆症の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物であることにある。
【発明の効果】
【0036】
本発明によると、内分泌系に作用するストレス応答によるACTHやコルチゾールの分泌をブロックして、このACTHやコルチゾールの分泌をもたらす、内分泌系に作用するストレス応答による、高血圧、糖尿病、肥満、免疫力低下、脳の海馬損傷、うつ病の発症及び症状、睡眠障害の発症及び症状、学習機能、記憶機能低下、痴呆症の発症及び症状、などの諸症状を手軽に緩和し、これにより、その諸症状を未然に防ぐ、緩和剤あるいは抑制剤あるいはそれらを担持した担持物が提供される。
【0037】
また、これらの諸症状をもたらす、内分泌系に作用するストレス応答を手軽に緩和し、これにより、その諸症状を未然に防ぐ、緩和剤あるいは抑制剤あるいはそれらを担持した担持物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ラットに各種のミルクの香り成分を嗅がせたときの血液中の血漿ACHT濃度の測定結果を示すグラフである。
【図2(a)】ラットに各種のミルクの香り成分を嗅がせたときの血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示すグラフである。
【図2(b)】ラットに各種のミルクの香り成分を嗅がせたときの血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示すグラフである。
【図2(c)】ラットに各種のミルクの香り成分を嗅がせたときの血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示すグラフである。
【図3】ラットにミルク香料の各種の成分を嗅がせたときの、血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示すグラフである。
【図4】ラットにバニリンを濃度を変えて嗅がせたときの、血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示すグラフである。
【図5】ラットにエチルバニリンを濃度を変えて嗅がせたときの、血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示すグラフである。
【図6】ラットに天然バニラエキストラクトを濃度を変えて嗅がせたときの、血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示すグラフである。
【図7】モリス水迷路に用いられるプールの構成を説明する上面模式図である。
【図8】プール中のラットの動きの軌跡を説明する説明図である。
【図9】トライアルテストにおける逃避潜時の推移を示すグラフである。
【図10】ラットにストレス負荷を与えバニリンを嗅がせたときの、モリス水迷路におけるプールのNE領域での述べ滞在時間とSW領域での述べ滞在時間を示すグラフである。
【図11】ラットにストレス負荷を与えバニリンを嗅がせたときの、視床下部室傍核におけるFos陽性神経細胞数の変化を示す写真である。
【図12】図11に対応する、視床下部室傍核におけるFos陽性神経細胞数の変化を示すグラフである。
【図13】ラットにストレス負荷を与えバニリンを嗅がせたときの、扁桃体中心核におけるFos陽性神経細胞数の変化を示す写真である。
【図14】図13に対応する、扁桃体中心核におけるFos陽性神経細胞数の変化を示すグラフである。
【図15】ラットにストレス負荷を与えバニリンを嗅がせたときの、扁桃体内側核におけるFos陽性神経細胞数の変化を示す写真である。
【図16】図15に対応する、扁桃体内側核におけるFos陽性神経細胞数の変化を示すグラフである。
【図17】ラットにストレス負荷を与えバニリンを嗅がせたときの、前頭前皮質におけるFos陽性神経細胞数の変化を示す写真である。
【図18】図17に対応する、前頭前皮質におけるFos陽性神経細胞数の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ヒトがある種のストレスを受けると、副腎皮質に作用し、下垂体前葉からのACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌が促進される。このストレスを受けているあいだはACTHの発生量が増大する。ACTHは、副腎皮質に作用し、糖質コルチコイド(グルココルチコイド)などの副腎皮質ホルモンの分泌を促進する。グルココルチコイドとしては、コルチゾールやコルチコレステロン(CORT)が知られている。
【0040】
コルチゾールは、糖質コルチコイドの活性の約95%を占め、分泌される量によっては、血圧や血糖レベルを高め、免疫機能の低下や不妊をもたらすことが知られている。また、このホルモンは過剰な、内分泌系に作用するストレス応答により多量に分泌された場合、脳の海馬を萎縮させることが知られている。
【0041】
コルチコレステロンは、ストレス負荷時に分泌量が増加することが知られている。
【0042】
本発明は、内分泌系に作用するストレス応答(以下内分泌系に作用するストレス応答あるいは単にストレス応答と称する)によるACTHやコルチゾールの分泌をブロックして、このACTHやコルチゾールの分泌をもたらすストレス応答による、高血圧、糖尿病、肥満、免疫力低下、脳の海馬損傷、うつ病の発症及び症状、睡眠障害、学習機能、記憶機能低下、痴呆症の発症及び症状、などの諸症状(以下ストレス応答による諸症状とも称する)を手軽に緩和あるいは抑制し、これにより、その諸症状を未然に防ぐ緩和剤あるいは抑制剤(以下「剤」とも称する)に関するものである。
【0043】
また、本発明は、これらの諸症状をもたらすストレス応答を手軽に緩和あるいは抑制し、これにより、その諸症状を未然に防ぐ緩和剤あるいは抑制剤(以下「剤」とも称する)に関するものである。
【0044】
すなわち、本発明の剤は、
下垂体前葉におけるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌を抑制する抑制剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答を緩和するストレス応答緩和剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する高血圧の発症及び症状を緩和する緩和剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する糖尿病の発症及び症状を緩和する緩和剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する肥満抑制剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する免疫力低下抑制剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するコルチゾールによる脳の海馬損傷を抑制する抑制剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するうつ病の発症及び症状を緩和する緩和剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する睡眠障害の発症及び症状を緩和する緩和剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する学習機能、記憶機能低下抑制剤、
ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する痴呆症の発症及び症状を緩和する緩和剤、
の総称である。
【0045】
本発明の剤は嗅ぐことにより前記ストレス応答の緩和やストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和の効果が得られるものであり、バニリン(3-メトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド)あるいはエチルバニリン(3-エトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド)からなるものである。
【0046】
本発明の剤はバニリンとエチルバニリンが任意の割合で混合されたものを有効成分とするものであってもよい。
【0047】
バニリンやエチルバニリンは、合成物であってもよいが、天然バニラから得られる天然バニラエキストラクトから精製されたものであってもよい。また天然バニラエキストラクトからストレス応答緩和効果を阻害するバニリンの他の揮発性成分を除去したものであってもよい。
【0048】
本発明の剤は補助的な機能を付与するための助剤が添加されて用いられてもよい。また、バニリン、エチルバニリンあるいは両者の混合物の他に希釈剤や溶剤等の薬理学的に許容される担体を含んでなるものであってもよい。溶剤としてはエタノールが例示される。
【0049】
本発明の剤は有効成分が担体と混合又は希釈されたり、カプセル、あるいは他の容器状に形成された担体内に揮発可能に封入されて担体を含む組成物として用いられてもよい。担体が希釈剤として作用する場合、それは有効成分の賦形剤、補形剤、又は媒質として作用するような固体、半固体、または液体物質であっても良い。すなわち、この組成物は、錠剤、丸薬、粉末、サシェ、エリキシル、懸濁液、エマルション、溶液、シロップ、エアロゾル、軟質及び硬質ゼラチンカプセルなどの形態であってもよい。
【0050】
担体としては、脱脂綿やガーゼや不織布のような、バニリン、エチルバニリンあるいは両者の混合物、またはこれらの溶液を含ませるものであってもよい。
【0051】
担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、スターチ、アラビアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、メチルヒドロキシベンゾエート類、プロピルヒドロキシベンゾエート類、水、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、デキストリンのような包接材、が例示される。
【0052】
このように、担体としては、溶剤のようにバニリン、エチルバニリンあるいは両者の混合物とともに嗅がれる成分からなるものもあるが、脱脂綿やガーゼや不織布や包接材のように単にバニリン、エチルバニリンあるいは両者の混合物を担持する機能のみを有するものもある。
【0053】
また、この組成物は付加的に増量剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香味剤、乳化剤、防腐剤などを有することができる。これらの付加物は、ストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果を薬理学的に阻害しない成分であることが必要である。
【0054】
本発明の剤は、連続的にあるいは間欠的に所定時間意識的あるいは無意識に嗅ぐことにより、前記ストレス応答に起因するACTHやコルチゾールの分泌がブロックされる。
【0055】
すなわち、本発明の剤を嗅ぐことにより、その成分であるバニリンあるいはエチルバニリンが嗅覚細胞から脳に作用してコルチゾールの分泌がブロックされる。これにより、このようなストレス応答が緩和される。
【0056】
詳しくは、例えば、生体がストレスを受けると扇桃体、内側前頭前皮質、などの領域から視床下部室傍核へ情報が送られ、室傍核の副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH) 含有神経の活動が上昇し、下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が血液中へ放出され、その結果副腎からコルチコイドが分泌され、全身のストレスが発現するとされている。本発明のストレス応答緩和剤はこのようなストレス応答を軽減し、このストレス応答が引き起こす諸症状の抑制あるいは緩和するものである。
【0057】
この嗅ぐ時間は、5分以上であることが内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果のうえで好ましい。2〜10時間であることが効果及び実行の容易さのうえでさらに好ましい。間欠的に嗅ぐ場合は実際に嗅ぐ時間の累計が5分以上であることが好ましい。嗅ぐ時間の累計が2〜10時間であることがさらに好ましい。
【0058】
本発明の剤は上記成分からなるものであってもよいが、上記成分がエタノール等の溶媒に溶解されてなる溶液であってもよい。上記成分が吸着性の基材物質に吸着されてなる錠剤であってもよい。上記成分がデキストリンのような包接物質に包接されてなるものであってもよい。
【0059】
本発明の剤はじかに鼻を近づけて嗅いでもよいが、担体に担持させたものを鼻の近くに位置させることにより上記成分の香気を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだしてもよい。
【0060】
さらには、例えば、飲食物を担体として、その飲食物に本発明の剤を攪拌混合等により混合し、その飲食物を喫食あるいは飲用する過程で上記の香気成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。
【0061】
本発明の剤を含有させた飲食物は、天然のバニリン含有植物から溶剤に溶解する成分を溶解させることにより抽出する抽出法で抽出された、天然バニラエキストラクトあるいは天然のバニラなどの抽出物、が含有されているものであってはならない。このような抽出物は数百種類の化合物から成る非常に複雑な混合物であり、薬理学的に、内分泌系に作用するストレス応答緩和効果を阻害するバニリンの他の揮発性成分が、おそらくは内分泌系に作用するストレス応答緩和効果を高める揮発性成分とともに、存在すると推定され、天然のバニリン含有植物から溶剤に溶解する成分を溶解させることにより抽出する抽出法で抽出された、天然バニラエキストラクトあるいは天然のバニラなどの抽出物、が含有されている飲食物は内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られない。
【0062】
なお、本明細書においては、「天然バニラ」とは、ラン目ラン科バニラ属の果実であるバニラビーンズそのもの、もしくはバニラビーンズに物理的、化学的、生物学的加工(キュアリングも含む)を単回行ったもの、又は各工程を組み合わせたもの、又は各工程を単独で、もしくは組み合わせて複数回行ったもの、またバニラビーンズそのもの及びバニラビーンズを前述の方法で加工したものに対し、抽出加工を行い、その結果出てくる残渣物、さらには得られた抽出物を再加工した結果出てくる残渣物をいう。また、「天然バニラエキストラクト」は、キュアリング処理を施したバニラビーンズに、各種溶剤を抽出溶媒として作用させ、抽出した抽出液あるいはキュアリング処理を施したバニラビーンズから圧搾抽出した抽出液をいう。
【0063】
本発明の剤を含有させる飲食物としてはとくに限定されないが、パン類、ハム、ソーセージ類、カップ麺などのインスタント食品、レトルト食品、固形食品、粉状食品、菓子類、飲料、冷菓、デザート、酒類等が例示される。
【0064】
この菓子類としては、特に限定されないが、和菓子、洋菓子、中華菓子、ガム類、氷菓子、冷菓子、が例示される。和菓子としては、代表的なものとしては、餅使用の菓子、餡類使用の菓子、求肥使用の菓子、団子類、桜餅、柏餅、おはぎ類、水無月、ういろう、饅頭、最中、せんべい・おかき類、かりんとう、揚げ物、包み・挟み系の菓子、きんつば類、今川焼きやたい焼き類、松風・村雨、わらびもち等のゲル感触系の菓子、餡蜜、寒天菓子、ゼリー類、干菓子、羊羹、ぜんざい・しるこ類、麩まんじゅう、洲濱・きな粉・類似のものの菓子 、豆菓子、昆布菓子、飴・砂糖菓子、おこし・奉天・五家宝類、カステラ、菓子パン類、駄菓子類などが例示される。洋菓子としては、アップルパイ、ウエハース、エクレア、乾パン、キャラメル、クラッカー、クリスマスケーキ、クレープ、コロンビエ、サバラン、サントノーレ、シュークリーム、シュツルーテル、ショートケーキ、ゼリー、タルト、デコレーションケーキ、デニッシュペーストリー、トルテ、ドロップ、ヌガー、バウムクーヘン、パウンドケーキ、バターケーキ、ババ、ババロア、パルフェグラッセ、パンケーキ、ビスケット、プリン、フラン、フルーツケーキ、ブレッツエル、ボンボン、ミルフィーユ、ムース、ロールケーキ、ワッフル、ドーナツ、ピザパイ、スポンジケーキ、ミートパイ、バターケーキ、発酵菓子類、チーズケーキ、砂糖漬け類、チョコレート類、スナック類(ポテト系、コーン系、小麦粉系など)、が例示される。
【0065】
この飲料としては、缶コーヒー、リキッドコーヒー、PETボトルコーヒー、紅茶、ウーロン茶、麦茶、日本茶、ブレンドティ、その他ティドリンク、機能型ティドリンク、ココアドリンク、冬期型飲料(スープ・甘酒・おしるこ)等の嗜好飲料;果汁飲料、果汁入清涼飲料、低果汁入清涼飲料、果粒含有果実飲料、果肉飲料、野菜系飲料(トマト飲料・野菜飲料・野菜入混合果汁飲料)等の果実・野菜飲料;コーラフレーバー飲料、透明炭酸飲料、果実着色炭酸飲料、乳類入炭酸飲料、ジンジャーエール、果汁含有炭酸飲料(果汁入炭酸飲料・低果汁入炭酸飲料)等の炭酸飲料;飲用牛乳、乳飲料(白物乳飲料・コーヒー系乳飲料・色物乳飲料・カップ乳飲料)、乳製品乳酸菌飲料、乳酸菌飲料、乳類入清涼飲料、殺菌乳製品乳酸菌飲料(ストレート)、ドリンクヨーグルト等の乳性飲料; ミネラルウォーター、酸素強化水等のミネラルウォーター類; 食系ドリンク、健康サポート飲料、機能性清涼飲料、スポーツドリンク等の機能性飲料; 乳類・大豆飲料(豆乳類・大豆飲料)、ビネガードリンク等の飲料、が例示される。
【0066】
飲食物に本発明の剤を含有させる場合、飲食物に対して上記成分が0.0005〜10重量%含有されることが内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果のうえで好ましい。上記成分が0.0005重量%以上であれば内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られるが0.0005重量%未満であると、このストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果が顕著には得られない。上記成分が10重量%を超えると、飲食物に違和感を生ずる場合がある。
【0067】
また、飲食物に本発明の剤を含有させる場合、飲食物に対して上記成分が0.01〜10重量%含有されることが内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果のうえでさらに好ましい。
【0068】
本発明の本発明の剤を含有させた飲食物は、少なくとも100gを少なくとも1週間毎日喫食あるいは飲用することによりこのストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。あるいは、1か月(30日)のあいだに少なくとも2週間喫食あるいは飲用することによりこのストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。
【0069】
さらには、例えば、茶葉のような嗜好品を担体として、その嗜好品に本発明の剤を攪拌混合等により混合し、例えば茶葉であれば本発明の剤が混合されたその茶葉を煎じて飲用するなどして服用する過程で上記の香気成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。茶葉としては、紅茶,緑茶,ウーロン茶、麦茶、ハト麦茶、ジャスミン茶、プアール茶、ルイボス茶、ハーブ茶、甜茶葉、エゾウコギ茶、蕎麦茶、明日葉茶、グァバ茶、ユーカリ茶、枇杷の葉茶、アロエ茶、ゲンノショウコ、センブリ、ウコン、スギナ茶、河原決明、ウラジロガシ茶、ドクダミ茶、ハブ茶、菊花茶、シソ茶、アマチャズル茶、オオバコ、桜、甘茶、柿の葉茶、カモミール、しょうが、紅花、サフラン、コンフリー茶、しいたけ茶、杜仲茶、ギムネマ茶、ヨモギ茶、銀杏葉茶、玄米茶、麦茶、ウラジロガシ茶、カキオドシ茶、カミツレ茶、カリン茶、桑の葉茶、ゴボウ茶、セキショウ茶、タラノキ茶、タンポポの根茶、ナタマメ茶、ニワトコ茶、ネズミモチ茶、メグスリノキ茶、羅漢果茶、鉄観音茶、野草茶、各種漢方茶、人参茶、などが例示される。
【0070】
この嗜好品としては、茶葉のほかに、コーヒー(豆、粉)、昆布茶の粉、ココアの粉、その他の嗜好性飲料の粉、のり、等が例示される。
【0071】
嗜好品に剤を含有させる場合、嗜好品に対して上記成分が0.0005〜10重量%含有されることが内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果のうえで好ましい。上記成分が0.0005重量%以上であればこのストレス応答の緩和やこのストレス応答に起因する諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られるが0.0005重量%未満であると、このストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果が顕著には得られない。上記成分が10重量%を超えると、嗜好品に違和感を生ずる場合がある。
【0072】
嗜好品に剤を含有させる場合、嗜好品に対して上記成分が0.01〜10重量%含有されることが内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果のうえでさらに好ましい。
【0073】
本発明の剤は揮発性があるので、飲食物や嗜好品へ本発明の剤を混合あるいは含有させる手段として、成分を例えばシクロデキストリン等の包接材に包接させて粉末形態として飲食物や嗜好品やその原材料に加えてもよい。
【0074】
また、本発明の剤は、化粧品を担体として、その化粧品に本発明の剤を混合し、この剤が混合されたその化粧品の使用時に上記の成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。
【0075】
化粧品としては、フレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品などが例示される。フレグランス製品としては、香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン、など;基礎化粧品としては、洗顔クリーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、コールドクリーム、マッサージクリーム、乳液、化粧水、美容液、など;仕上げ化粧品としては、ファンデーション、粉おしろい、固形おしろい、タルカムパウダー、口紅、リップクリーム、頬紅、など;頭髪化粧品としては、ポマード、ブリランチン、セットローション、ヘアーステック、ヘアーソリッド、ヘアーオイル、ヘアートリートメント、ヘアークリーム、ヘアートニック、ヘアーリキッド、ヘアースプレー、バンドリン、養毛剤、染毛剤、など;日焼け化粧品としては、サンタン製品、サンスクリーン製品、など;薬用化粧品としては、制汗剤、アフターシェービングローション及びジェル、パーマネントウェーブ剤、薬用皮膚化粧料、浴用剤などを挙げることができる。
【0076】
化粧品を担体とする場合、化粧品総量に対する上記成分の含有割合が0.0005〜50重量%であることが内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果のうえで好ましい。香気成分が0.0005重量%以上であればこのストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られるが、0.003重量%未満であると、このストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果は、香気成分が0.003〜50重量%の場合に比べて顕著ではない。上記成分が50重量%を超えると、化粧品としての本来の香りに違和感を生ずる場合がある。
【0077】
化粧品を担体とする場合、化粧品総量に対する上記成分の含有割合が0.01〜50重量%であることが内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果のうえでさらに好ましい。
【0078】
さらに、本発明の剤は、イヤリングやネッカチーフやバンダナやブローチや、胸元のハンカチや帽子やヘッドバンドやハンドバッグや匂い袋のようなアクセサリーや衣料品を担体として、そのアクセサリーや衣料品に本発明の剤を担持させ、この剤が担持されたそのアクセサリーや衣料品を使用することにより上記成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。このアクセサリーや衣料品は顔(鼻)に近い位置に装着されるものであることが好ましい。
【0079】
この衣料品としては、肌着、セーター、ジャケット、浴衣、白衣、スラックス、マフラー、靴下、手袋、ストッキング、エプロン、マスク、サポーター、帽子、などが例示されるが身に付けたり着るものであればとくに限定されない。
【0080】
またさらに、本発明の剤は、寝装用品に担持されて就寝時に上記成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。寝装用品としては、枕、枕カバー、掛け布団、敷き布団、布団カバー、毛布、シーツ、ベッド、ベッドカバー等のほか、浴衣、パジャマ、肌着等就寝用に使用する衣料、及びナイトキャップ、ヘアバンド、マスク、アイマスク、タオル等就寝用に使用する小物、さらには寝所に配置するソファー類やそのカバーが挙げられる。また、就寝用に身辺またはその近傍に配されて使用するものであればこれらに限定されない。
【0081】
本発明の剤は鼻から約20cm以内の距離に位置されて所定の時間嗅がれることが内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果のうえで好ましい。
【0082】
あるいは、本発明の剤を用いて、風や空気の自然対流やファン等で積極的に室内にその香気成分を拡散させて上記成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態が作りだされてもよい。
【0083】
さらに、本発明の剤は、トイレタリー用品に担持されてトイレ使用時に上記の香気成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、内分泌系に作用するストレスの緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。トイレタリー用品としては、スリッパ、ペーパーホルダーカバー、フタカバー、トイレマット、ペーパーホルダー、置物、が挙げられる。また、トイレまたはその近傍に配されて使用するものであればこれらに限定されない。
【0084】
さらに、本発明の剤は、家電用品(家電製品)に担持されてその用品の使用時またはその用品の近傍に居るときに上記の香気成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。家電用品としては、エアコン、エアコンカバー、エアコンのフィルター、テレビ、テレビ台、冷蔵庫、洗濯機、パーソナルコンピュータ、AV機器、電子レンジ、フードプロセッサー、オーブン、電気コンロ、調理用ヒーター、食器洗浄器、暖房用ヒーター、扇風機、身体揉み器、空気清浄機、炊飯器、等が挙げられるが、電気を利用する家庭用器機であればこれらに限定されない。
【0085】
また、本発明の剤は、家庭用品やインテリア用品に担持されてその用品の使用時またはその用品の近傍に居るときに上記の香気成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果が得られる。
【0086】
インテリア用品としては、椅子、机、キャビネット、鏡台、カーテン、障子、襖、壁紙、テーブルクロス、スリッパ、間仕切り、等の家具類や、絵画、置物、縫いぐるみ、造花、鉢植えもの、タペストリー、クラフト製品、等の装飾品、絨緞等の敷物類、クッション、床材、壁材、天井材、扉などの内装材、玩具、が例示されるが室に用いられるものであればこれらに限定されない。
【0087】
家庭用品としては、芳香剤、消臭スプレー、殺虫剤、虫忌避剤などが例示される。
【0088】
これら、アクセサリー、衣料品、家庭用品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、から選択される用品に本発明の剤を担持させる手段としては、例えば、香気成分をコロイド状にして単独に又はバインダーと共に用品を構成する繊維や樹脂へ練り込むことが考えられる。或いは、上記成分を徐放性のマイクロカプセルに封入し、マイクロカプセルをバインダーにより用品の構成部材にスプレーで噴霧するなどして付着させてもよい。あるいは用品の一部分に本発明の剤を収納する収納部を設けてその収納部に本発明の剤を収納してもよい。
【0089】
また、本発明の剤は、ペットフードに混合して犬、猫のようなペットに与えると、喫食時にペットが上記の香気成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、ペットの内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和する効果が得られる。ペットフードに本発明のストレス応答緩和剤を含有させてなるペットフードは、上記成分がペットフードに対して0.0005〜10重量%含まれていることが好ましい。上記成分が0.0005重量%以上であれば内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和する効果が得られるが0.0005重量%未満であると、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和する効果が顕著には得られない。上記成分が10重量%を超えると、喫食量が減少する場合がある。
【0090】
さらに、本発明のストレス応答緩和剤は、ペット用品に担持されてペットが使用時にペット用品の近傍に居るときにペットが上記の成分を意識的あるいは無意識に嗅ぐ状態を作りだすことにより、ペットの内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和する効果が得られる。ペット用品としては、レインコート、首輪、胴輪、犬舎、ペット用各種玩具、ボーン、デンタルケア、食器、つめみがき等が例示される。
【0091】
このように、本発明の剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、から選択される用品、ペット用品、ペットフード
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、担持物を用いることにより、本発明の剤の効果、すなわち、内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和効果を有効かつ手軽に発揮させることができる。
【0092】
本発明の剤は、マイクロカプセルやシクロデキストリンのような包接剤に包接されて上記各種の担体に担持されてもよい。マイクロカプセルに包まれて上記各種の担体に担持されてもよい。
【0093】
本発明の剤は内分泌系に作用するストレス応答の緩和やこのストレス応答による諸症状の抑制あるいは緩和を目的とする薬剤としても使用できる。
【0094】
本発明の効果は以下の実験例により確認される。なお、以下の実験例において、濃度や割合に関する%表示はことわりのない限り重量%である。また以下の実験に用いたラットはことわりのない限り7〜9週齢のwister系ラット(オス)である。
【0095】
一般にストレス負荷時に血液中のACTH濃度やコルチコステロン(corticosterone(CORT))濃度量が増加することが知られている。そこで実験例1〜8では、ラットにストレス負荷をかけると同時に、試薬溶液を含ませた脱脂綿サンプルをラットの鼻先に一定時間提示し、しばらく後にそのラットの血液中のACTH濃度あるいはCORT濃度を測定することで、内分泌系に作用するストレス応答がどの程度緩和されるのかを見積もった。
【0096】
[実験例1]
まず、各種のミルクの香り成分を用いてそれぞれの、内分泌系に作用するストレス応答抑制効果を検証した。
ストレス負荷:拘束負荷
試薬(ミルクの香り成分):
1.牛乳エッセンス(サンアロマ社製);(図中milkと表示)
2.アルデヒド・ケトンエッセンス(サンアロマ社製);(図中aldehyde(/) ketoneと表示)
3.ラクトンエッセンス(サンアロマ社製);(図中lactoneと表示)
脱脂綿サンプルの調整:各試薬をエタノールで1000倍希釈(0.1%)し、これを500μL脱脂綿に含ませ実験に供した。
実験対象群(n=4) :
1.ストレス負荷を与えるが脱脂綿サンプルの提示は行わないラット群 ・・・IM(図1中cont(IM)のみ)と表示)
2.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示(脱脂綿サンプルをラットの鼻先2cmに提示)の両方を行うラット群1・・・PR
実験タイムスケジュール:
0min(10:00):拘束負荷開始
60min(11:00):脱脂綿サンプル提示開始
90min(11:30):脱脂綿サンプル提示終了
120min(12:00):拘束負荷終了及び採血
【0097】
表1〜表3に実験例1で使用された試薬(ミルクの香り成分)の組成と試薬中の香気成分の成分比率を示す。
【0098】
【表1−1】
【0099】
【表1−2】
【0100】
【表2−1】
【0101】
【表2−2】
【0102】
【表3−1】
【0103】
【表3−2】
【0104】
[実験例1の結果]
図1に採血された血液中の血漿ACHT濃度の測定結果を示す。図1より、脱脂綿サンプルを提示したPR 群において、アルデヒド・ケトンエッセンスを含有している脱脂綿サンプルは IM と比較して有意にACTH濃度が低くなっていた。このように、アルデヒド・ケトンエッセンスにおいて内分泌系に作用するストレス応答緩和効果が認められた。
【0105】
[実験例2]
実験例1と同様の3種のミルクの香り成分を、異なる3種類のタイムスケジュールでストレス下にあるラットに与えてそれぞれの、内分泌系に作用するストレス応答抑制効果を調べた。
ストレス負荷:拘束負荷
脱脂綿サンプルの調整:各試薬をエタノールで1000倍希釈(0.1%)し、これを500μL脱脂綿に含ませ実験に供した。
実験対象群(n=4) :
1.ストレス負荷を与えるが脱脂綿サンプルの提示は行わないラット群 ・・・IM
2.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示(脱脂綿サンプルをラットの鼻先2cmに提示)
の両方を行うラット群1・・・PR
実験タイムスケジュール:
タイムスケジュール−1
0〜60min(9:00〜10:00):通常飼育(負荷なし)
0〜30min(9:00〜9:30):脱脂綿サンプル提示
60min(10:00):拘束負荷開始
180min(12:00):拘束負荷終了及び採血
タイムスケジュール−2
0〜60min(9:00〜10:00):通常飼育(負荷なし)
60min(10:00):拘束負荷開始
60〜90min(10:00〜10:30):脱脂綿サンプル提示
180min(12:00):拘束負荷終了及び採血
タイムスケジュール−3
0〜60min(9:00〜10:00):通常飼育(負荷なし)
60min(10:00):拘束負荷開始
120〜150min(11:00)〜11:30):脱脂綿サンプル提示
180min(12:00):拘束負荷終了及び採血
【0106】
[実験例2の結果]
図2に、各タイムスケジュールにつき、採血された血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示す。図2においてグラフの上方に表示の時間帯は脱脂綿サンプル提示の時間帯である。図2より、脱脂綿サンプルを提示したPR 群において、アルデヒド・ケトンエッセンスを含有している脱脂綿サンプルが、ラットにストレスの負荷をかけると同時に脱脂綿サンプル提示を行うと血漿CORT濃度が減少した結果が得られ、内分泌系に作用するストレス応答が最も緩和されることが認められた。
【0107】
[実験例3]
実験例1、実験例2で用いたアルデヒド・ケトンエッセンスの揮発成分をそれぞれ単独で用い、どの成分が内分泌系に作用するストレス応答の緩和に寄与しているかを調べた。
ストレス負荷:拘束負荷
実験対象群(n=4) :
1.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示の両方を行わないラット群 ・・・NS
2.ストレス負荷を与えるが脱脂綿サンプルの提示は行わないラット群 ・・・IM
3.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示(脱脂綿サンプルをラットの鼻先2cmに提示)
の両方を行うラット群1・・・PR
試薬:
バニリン
エチルバニリン
エチルマルトール
メチルノニケトン
アセトイン
インドール
脱脂綿サンプルの調整:各試薬をエタノールで1000倍希釈(0.1%)し、これを500μL脱脂綿に含ませ実験に供した。
実験タイムスケジュール:
0min(10:00):拘束負荷開始
0〜30min(10:00〜10:30):脱脂綿サンプル提示
180min(12:00):拘束負荷終了及び採血
【0108】
[実験例3の結果]
図3に、ミルク香料の各成分を嗅がせたときの、採血された血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示す。図3より脱脂綿サンプルを提示したPR 群において、血漿CORT濃度が減少した結果が得られ、バニリンとエチルバニリンに内分泌系に作用するストレス応答緩和効果があることがわかった。
[実験例4]
バニリン、エチルバニリンの等重量部混合液につき内分泌系に作用するストレス応答緩和効果を調べた。
ストレス負荷:拘束負荷
脱脂綿サンプルの調整:バニリン、エチルバニリンの等重量部混合液を99%エタノールで希釈溶解し、0.1%濃度にした。これを500μL脱脂綿に含ませ実験に供した。
実験対象群(n=6) :
1.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示の両方を行わないラット群 ・・・NS
2.ストレス負荷を与えるが脱脂綿サンプルの提示は行わないラット群 ・・・IM
3.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示(脱脂綿サンプルをラットの鼻先2cmに提示)の両方を行うラット群1・・・PR
実験タイムスケジュール:
0min(10:00):拘束負荷開始
0〜30min(10:00〜10:30):脱脂綿サンプル提示
180min(12:00):拘束負荷終了及び採血
【0109】
[実験例4の結果]
脱脂綿サンプルを提示したPR 群において、実験例3におけるバニリンあるいはエチルバニリンにおけると同程度の、内分泌系に作用するストレス応答緩和効果があることがわかった。
【0110】
[実験例5]
実験例3で内分泌系に作用するストレス応答緩和効果があるとされたバニリンにつき内分泌系に作用するストレス応答緩和効果が最大になる濃度を調べた。
ストレス負荷:拘束負荷
脱脂綿サンプルの調整:バニリンを99%エタノールで希釈溶解し、0%(99%エタノールのみ)(vehicle)、0.01%、0.02%、0.05%、0.1%、0.2%、0.5%、1.0%濃度にした。これを500μL脱脂綿に含ませ実験に供した。すなわち、濃度毎(8グループ)に分けて実験対象群を設定した。
実験対象群(n=6) :
1.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示の両方を行わないラット群 ・・・NS
2.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示(脱脂綿サンプルをラットの鼻先2cmに提示)の両方を行うラット群1・・・PR
(但し、脱脂綿サンプルの提示濃度毎に8グループに分かれる)
実験タイムスケジュール:
0min(10:00):拘束負荷開始
0〜30min(10:00〜10:30):脱脂綿サンプル提示
180min(12:00):拘束負荷終了及び採血
【0111】
[実験例5の結果]
図4に、各条件での、採血された血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示す。図4より脱脂綿サンプルを提示したPR 群において、内分泌系に作用するストレス応答を緩和、軽減するバニリンの最適濃度は0.1〜0.2%であることがわかった。
【0112】
[実験例6]
実験例3で内分泌系に作用するストレス応答緩和効果があるとされたエチルバニリンにつき内分泌系に作用するストレス応答緩和効果が最大になる濃度を調べた。
ストレス負荷:拘束負荷
脱脂綿サンプルの調整:エチルバニリンを99%エタノールで希釈溶解し、0%(99%エタノールのみ)(vehicle)、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1.0%濃度にした。これを500μL脱脂綿に含ませ実験に供した。すなわち、濃度毎(6グループ)に分けて実験対象群を設定した。
実験対象群(n=6) :
1.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示の両方を行わないラット群 ・・・NS(cont)
2.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示(脱脂綿サンプルをラットの鼻先2cmに提示)の両方を行うラット群1・・・PR
(但し、脱脂綿サンプルの提示濃度毎に6グループに分かれる)
実験タイムスケジュール:
0min(10:00):拘束負荷開始
0〜30min(10:00〜10:30):脱脂綿サンプル提示
180min(12:00):拘束負荷終了及び採血
【0113】
[実験例6の結果]
図5に、各条件での、採血された血液中の血漿CORT濃度の測定結果を示す。図5より脱脂綿サンプルを提示したPR 群において、内分泌系に作用するストレス応答を緩和、軽減するエチルバニリンの最適濃度は約0.1%であることがわかった。エチルバニリンはバニリンと似たような化学構造を有していることから、ほぼ同程度の、内分泌系に作用するストレス応答緩和効果が期待できると推測される。
【0114】
[実験例7]
天然バニラエキストラクトにつき内分泌系に作用するストレス応答緩和効果を調べた。今回実験に供した天然バニラエキストラクトはバニラビーンズをエタノールまたは含水エタノールで香味成分を抽出した液状の製剤である。天然のバニラエキストラクトは数百種類の化合物から成る非常に複雑な混合物である。
ストレス負荷:拘束負荷
脱脂綿サンプルの調整:天然バニラエキストラクトを99%エタノールで希釈溶解し、0%(99%エタノールのみ)(vehicle)、天然バニラエキストラクトに含有されているバニリン含有量が0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1.0%濃度になるように濃度調整した。これを500μL脱脂綿に含ませ実験に供した。
実験対象群(n=6) :
1.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示の両方を行わないラット群 ・・・NS(cont)
2.ストレス負荷及び脱脂綿サンプル提示の両方を行うラット群・・・PR
実験タイムスケジュール:
0min(10:00):拘束負荷開始
0〜30min(10:00〜10:30):脱脂綿サンプル提示
180min(12:00):拘束負荷終了及び採血
【0115】
[実験例7の結果]
図6に、各条件での、採血された血液中の血漿ACHT濃度の測定結果を示す。図6より、バニリンの場合と同様に、天然バニラエキストラクトに含有されているバニリンの濃度が濃度0.1%付近で、内分泌系に作用するストレス応答緩和効果のカーブが最大になるという傾向が得られたが、コントロール(濃度0%)とあまりかわらないCORT濃度であったことから、天然バニラエキストラクトにはバニリンの含有は確認されているが、ストレス応答緩和効果は確認できなかった。その理由は、天然バニラエキストラクトには薬理学的に、内分泌系に作用するストレス応答緩和効果を阻害するバニリンの他の揮発性成分が、おそらくは内分泌系に作用するストレス応答緩和効果を高める揮発性成分とともに、存在することが疑われることである。その阻害成分を天然バニラエキストラクトから取り除いてやることで、嗜好性が高く内分泌系に作用するストレス応答緩和効果のある天然バニラエキストラクトが得られる可能性があると思われる。
【0116】
[実験例8]
モリス水迷路による学習・記憶能力低下抑制の確認
本発明の学習機能、記憶機能低下抑制剤を嗅ぐことにより、その成分であるバニリンあるいはエチルバニリンが嗅覚細胞から脳に作用してコルチゾールの分泌がブロックされ内分泌系に作用するストレス応答が緩和される。前述のように、生体がストレスを受けると扇桃体、内側前頭前皮質、などの領域から視床下部室傍核へ情報が送られ、室傍核の副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH) 含有神経の活動が上昇し、下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が血液中へ放出され、その結果副腎からコルチコイドが分泌され、全身のストレスが発現するとされている。本発明の学習機能、記憶機能低下抑制剤がこのような、内分泌系に作用するストレス応答が引き起こす学習機能低下、記憶機能低下を抑制する効果をモリス水迷路による実験で確認する。
【0117】
モリス水迷路とは、空間認識の記憶学習を測定することが可能な実験装置であり、円形プールに水を満たし、避難場所として水面下に隠れた台を置いたものである。マウスをモリス水迷路に入れると、最初は、水槽の中を泳ぎ回った結果、台を見つける。これを何回も繰り返すと、ラットは台のある場所を覚え、台に到着するまでの時間が短縮する。ラットの水泳パターン(台付近に滞在する時間)や台に到着するまでの時間を測定することにより学習能力を知ることができる。
【0118】
実験材料:Sprague−Dawley rat(7週齢のオス)
実験装置:モリス水迷路
実験グループ:
a.ストレス負荷を与えないで脱脂綿サンプルも嗅がせないグループ(control)
b.ストレッサーにより30分間の拘束によるストレス負荷を与え、99%エタノールを500μL脱脂綿に含ませた脱脂綿サンプルを嗅がせるグループ(vehicle)
c.ストレッサーにより30分間の拘束によるストレス負荷を与え、バニリンを99%エタノールで希釈溶解し0.1%濃度にしたものを500μL脱脂綿に含ませた脱脂綿サンプルを嗅がせるグループ(vanilin(0.1%))
d.ストレス負荷を与えないで、バニリンを99%エタノールで希釈溶解し0.1%濃度にしたものを500μL脱脂綿に含ませた脱脂綿サンプルを嗅がせるグループ
ストレッサー:
拘束によりストレス負荷を与える機器。脱脂綿サンプルはこの拘束中に嗅がせる。
トレーニング:
水泳能力の確認とテスト時に受ける新規ストレス応答の軽減のため、直径1mの円形プール中を自由に30分間泳がせる。
トライアルテスト:
空間的学習能力の評価を目的とし、プール中のランダムな位置からラットを放し、プラットホーム(PF:隠れた踏み台)に上がるまでの時間を測定する。30秒間のインターバルを挟んで、合計6回のトライアルを行う。
ストレス:
Immobirization(拘束)を30分行う。この間、脱脂綿サンプルを含ませた脱脂綿を鼻先2cmの位置に固定しておく。
プローブテスト:
空間的想起能力の評価を目的とし、プラットホームを取り除き、プール中でラットを30秒間泳がせる。そのとき、トライアルテスト時にプラットホームのあった領域をNE領域、その反対側の領域をSW領域とし、各領域に滞在した時間を測定する。
【0119】
図7にプール2の上面図とNE領域、SW領域を示す。図8にプール2中のラットの動きの軌跡4を示す。図8における(a)はトライアルテスト中にNE領域に長く滞在した場合の軌跡の一例であり、(b)はトライアルテスト中にNE領域に滞在した述べ時間と、SW領域に滞在した述べ時間とに有意の差がなかった場合の軌跡の一例である。
【0120】
図8における(a´)は、図8における(a)に対応した、ラットがトライアルテスト中に各領域に滞在した述べ時間であり、(b´)は(b)に対応した、ラットがトライアルテスト中に各領域に滞在した述べ時間である。各グラフの左がNE領域に滞在した述べ時間、右がSW領域に滞在した述べ時間である。
タイムスケジュール:
第1日目・・・9:30〜11:30の間、トレーニングを行わせる。
第2日目・・・9:30〜11:30の間、トライアルテストを行う。
第3日目・・・9:30〜11:30の間、トライアルテストを行い、その後、グループb、cについては11:30〜12:00の間ストレス負荷を与え脱脂綿サンプルを嗅がせる。
第4日目・・・12:00〜12:30の間、プローブテストを行う。
【0121】
[実験例8の結果]
トライアルテスト
図9より、トライアルテスト(第2日目、第3日目)における、a〜cの各グループの逃避潜時(SW領域に滞在した述べ時間)に有意差がなかった。また、この各グループとも、第2日目(Day2)のトライアルと第3日目(Day3)のトライアルとでは逃避潜時に有意差(p<0.001)があった。グループとトライアルの相互作用に有意差はなかった。なお、図9の横軸は、第2日目の6回のトライアルと第3日目の6回のトライアルを通しての、トライアルのはじめからの順番を表す付番である。
プローブテスト
図10より、b.ストレッサーにより30分間の拘束によるストレス負荷を与えバニリンを嗅がせないグループ(vehicle)は、NE領域での述べ滞在時間とSW領域での述べ滞在時間との間に有意差が認められず、想起能力が低下したことがわかる。これに対して、ストレス負荷を与えないグループ(control)と、ストレス負荷を与えバニリンを嗅がせたグループ(vanilin(0.1%))は、NE領域での述べ滞在時間がSW領域での述べ滞在時間より有意に大(p<0.05)であり、バニリンを嗅がせることにより想起能力の低下が抑制されたことがわかる。なお、図10における*印を付したかけ橋ラインは有意差の比較対象となる値の組を示す。
【0122】
さらに、本発明の効果は実験例9によっても確認される。また実験例9の実験に用いたラットはことわりのない限り7〜9週齢のwister系ラット(オス)である。
【0123】
実験例9では、バニリンによるストレス応答軽減の脳内機構を解明する目的で、脳内部位の神経活動を、c−Fos発現を指標に解析した。
【0124】
[実験例9]
【0125】
[方法]
観察した脳内部位
・ 扁桃体(扁桃体中心核(CoA)、 扁桃体内側核( MeA )
・ 視床下部室傍核(PVN)
・ 前頭前皮質(PFC )
【0126】
実験タイムスケジュール:
(9:00): 実験開始
0〜1時間目(9:00〜10:00)拘束負荷なし
1時間目(10:00)contを除いて拘束負荷開始
1〜1.5時間目(10:00〜10:30)拘束負荷に加え、バニリンによる喚覚刺激も同時に与える
1〜3時間目(10:00〜12;00)拘束負荷
3時間目(12;00)脳摘出
【0127】
実験水準
L−1 non stress(ストレス(拘束負荷)なし:cont)
L−2 stress+vehicle
(拘束負荷を与えた状態で99%エタノール500μlを脱脂綿に吸わせ、拘束中のラットの鼻先3cmに置く。拘束負荷は3時間目まで継続するが、エタノールの提示は1〜1.5時間目までで終了する。)
L−3 stress+vanilln(拘束負荷開始時にバニリンによる喚覚刺激を開始する。拘束負荷は3時間目まで継続するが、バニリンの提示は1〜1.5時間目までで終了する。)
【0128】
ストレスの与え方
ラットの四肢をプレート上にテープで貼りつけた。
バニリンの与え方
0.1%バニリン溶液、及びその溶媒(99%エタノール)500μlを脱脂綿に吸わせ、拘束中のラットの鼻先3cmに置くことにより喚覚刺激とした。
【0129】
免疫組織化学
<切片作成>
1.3時間目(拘束負荷終了直後)、速やかに脳を摘出。
2.4%PFAで[48時間、4℃ ]の条件下にて固定。
3. 冷PBSで洗浄後、PBSに溶かした30%スクロース溶液で[48時間、4℃ ]の条件下でスクロース置換
4.スクロースを取り除き、O.C.T.compoundに埋め込む。
5.15〜20分間凍結後、クライオスタット(−17℃)で60分間放置。
6.切片を切り、PBSの入った24wellプレートに溶かし込む。
【0130】
免疫組織化学法
1.0.1%H2O2で20分間処理し、PBSで洗浄。
2.20mM glycine PBSで20分間処理し、PBSで洗浄。
3.0.3%T−PBSで希釈した1%NGSを用い、室温で60分間ブロッキング。
4.1%NGSを含む0.3%T−PBSで希釈した1次抗体中(1:2000)に[48時間、4℃ ]置く。
5.T−PBSで余分な1次抗体を洗浄。
6.0.3%T−PBSで200倍に希釈したビオチン化抗ウサギIgG抗体で室温にて2時間処理。
7.T−PBS洗浄し、ABC反応。(2時間)
8.PBS洗浄後続けて50mM Tris−HCl(pH7.4)で洗浄。
9.DAB基質とのインキュベーション。(5〜10分間)
10.DAB基質、H2O2との反応。
11.発色度合いを観察しながら反応を停止。反応液を抜き、Tris−HClに置き換える。
12.プレパラートを作成し、撮影。
【0131】
結果と考察
PHAaxisの制御機構には2種類のメカニズムが存在する。1つ目はCORTによるネガティブフィードバック系である。PVN、ACTH分泌細胞、海馬にはCORT受容体が豊富に存在しており、これらの受容体にCORTが作用することによりCRTとACTHの分泌を抑制する。
【0132】
2つ目は、抑制性神経伝達物質であるγ−aminobutyric acid(GABA)による制御である。PVNニューロンの半数近くが辺縁系などからGABA性神経入力を受けており、GABA−A受容体アンタゴニストであるムシモールを、ストレス前にPVNへ投与すると、ストレスによる血漿CORT上昇が抑制されることから、PVNニューロンは、扁桃体などの辺縁系からGABA性入力を受け、神経活動を低下させ、その結果PHAaxisのストレス応答が抑制される。
【0133】
1.視床下部室傍核(PVN)の観察結果
視床下部室傍核(PVN)はPHAaxisの起始核であり、ストレス応答の中心となる核である。ストレスを負荷したラットのPVNはコントロールグループと比較して、Fos陽性神経細胞数が有意に増加し、ストレスにより、PVNの神経活動が上昇していることを示している(図11、図12 )。また、ストレス負荷直後にバニリンを提示したグループ は溶媒を提示したグループと比較して、ストレスによるFos陽性神経細胞数の増加が有意に減少した。この結果は、バニリンのストレス応答緩和作用を中枢レベルで証明するものである。ストレスによるFos陽性神経細胞数の増加が有意に減少した結果、ACTHの分泌が抑制されたと考えられる。
【0134】
2.扁桃体(扁桃体中心核(CeA)、扁桃体内側核(MeA))
扁挑体は情動刺激に対する応答の中心的な役割を担う。これまでの研究により、扁桃体中心核(CeA)は広範囲の視床下部、中脳、延髄といった恐怖反応に関係する部位に出力しており、扁桃体内側核(MeA)はPVNに出力していることが知られている。CeAでは、ストレスによりFos陽性神経細胞数が有意に増加しているが、バニリンを提示してもFos陽性神経細胞数に有意差が見られなかったが(図13、図14)、MeAでは、バニリンを提示することで溶媒を提示したグループと比較して、Fos陽性神経細胞数が有意に増加した(図15、図16)。MeAにはGABA性神経細胞が豊富に存在し、PVNへ投射している。よって、バニリンはMeAからPVNへのGABA性神経活動を増加させることにより、PVNの神経活動やPHAaxisによるストレス応答を抑制していることが考えられる。
【0135】
3.前頭前皮質(PFC)
PFCは認知、情動に関した情報処理に重要な役割を果たしており、ストレス刺激の種類により異なる反応を示すとされている。本願発明で、ストレスを負荷したグループのPFCはコントロールグループと比較して、Fos陽性神経細胞数が有意に増加した(図17、図18)。つまり、拘束ストレスによるPFCの神経活動上昇がPHAaxisにおけるストレス応答活性化に関与していることが示唆された。バニリンは有意差は見られなかったが、ストレス負荷によるPFCの神経活動を抑制する傾向が見られた。PFCからMeA への強い抑制性の投射は報告されていないので、PFCからPVNへは扁挑体を経由せずに情報が送られていると考えられる。
【符号の説明】
【0136】
2:プール
4:ラットの動きの軌跡
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、下垂体前葉におけるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌を抑制する抑制剤。
【請求項2】
視床下部室傍核における、ストレス応答を抑制させる請求項1に記載の抑制剤。
【請求項3】
扁桃体内側核における、視床下部室傍核へのGABA性神経活動を増加させ、ストレス応答を抑制させる請求項1に記載の抑制剤。
【請求項4】
前頭前皮質おける神経活動を抑制し、その情報が視床下部室傍核に伝達することで、ストレス応答を抑制させる請求項1に記載の抑制剤。
【請求項5】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答を緩和するストレス応答緩和剤。
【請求項6】
視床下部室傍核における、ストレス応答を抑制させる請求項5に記載のストレス応答緩和剤。
【請求項7】
扁桃体内側核における、視床下部室傍核へのGABA性神経活動を増加させ、ストレス応答を抑制させる請求項5に記載のストレス応答緩和剤。
【請求項8】
前頭前皮質おける神経活動を抑制し、その情報が視床下部室傍核に伝達することで、ストレス応答を抑制させる請求項5に記載のストレス応答緩和剤。
【請求項9】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する高血圧の発症及び症状を緩和する緩和剤。
【請求項10】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する糖尿病の発症及び症状を緩和する緩和剤。
【請求項11】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する肥満抑制剤。
【請求項12】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する免疫力低下抑制剤。
【請求項13】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するコルチゾールによる脳の海馬損傷を抑制する抑制剤。
【請求項14】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するうつ病の発症及び症状を緩和する緩和剤。
【請求項15】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する睡眠障害の発症及び症状を緩和する緩和剤。
【請求項16】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する学習機能、記憶機能低下抑制剤。
【請求項17】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する痴呆症の発症及び症状を緩和する緩和剤。
【請求項18】
請求項1に記載の副腎皮質におけるACTHの分泌を抑制する抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、下垂体前葉におけるACTHの分泌を抑制する抑制剤担持物。
【請求項19】
請求項5に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答を緩和するストレス応答緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答を緩和するストレス応答緩和剤担持物。
【請求項20】
請求項9に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する高血圧の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する高血圧の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物。
【請求項21】
請求項10に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する糖尿病の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する糖尿病の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物。
【請求項22】
請求項11に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する肥満抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する肥満抑制剤担持物。
【請求項23】
請求項12に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する免疫力低下抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する免疫力低下抑制剤担持物。
【請求項24】
請求項13に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するコルチゾールによる脳の海馬損傷を抑制する抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するコルチゾールによる脳の海馬損傷を抑制する抑制剤担持物。
【請求項25】
請求項14に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するうつ病の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するうつ病の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物。
【請求項26】
請求項15に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する睡眠障害の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するうつ病の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物。
【請求項27】
請求項16に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する学習機能、記憶機能低下抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する学習機能、記憶機能低下抑制剤担持物。
【請求項28】
請求項17に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する痴呆症の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する痴呆症の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物。
【請求項1】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、下垂体前葉におけるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌を抑制する抑制剤。
【請求項2】
視床下部室傍核における、ストレス応答を抑制させる請求項1に記載の抑制剤。
【請求項3】
扁桃体内側核における、視床下部室傍核へのGABA性神経活動を増加させ、ストレス応答を抑制させる請求項1に記載の抑制剤。
【請求項4】
前頭前皮質おける神経活動を抑制し、その情報が視床下部室傍核に伝達することで、ストレス応答を抑制させる請求項1に記載の抑制剤。
【請求項5】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答を緩和するストレス応答緩和剤。
【請求項6】
視床下部室傍核における、ストレス応答を抑制させる請求項5に記載のストレス応答緩和剤。
【請求項7】
扁桃体内側核における、視床下部室傍核へのGABA性神経活動を増加させ、ストレス応答を抑制させる請求項5に記載のストレス応答緩和剤。
【請求項8】
前頭前皮質おける神経活動を抑制し、その情報が視床下部室傍核に伝達することで、ストレス応答を抑制させる請求項5に記載のストレス応答緩和剤。
【請求項9】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する高血圧の発症及び症状を緩和する緩和剤。
【請求項10】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する糖尿病の発症及び症状を緩和する緩和剤。
【請求項11】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する肥満抑制剤。
【請求項12】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する免疫力低下抑制剤。
【請求項13】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するコルチゾールによる脳の海馬損傷を抑制する抑制剤。
【請求項14】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するうつ病の発症及び症状を緩和する緩和剤。
【請求項15】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する睡眠障害の発症及び症状を緩和する緩和剤。
【請求項16】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する学習機能、記憶機能低下抑制剤。
【請求項17】
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、
バニリン、エチルバニリンのいずれかまたは両方、及び薬理学的に許容される担体からなる組成物、
から選択されてなるいずれか一つからなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する痴呆症の発症及び症状を緩和する緩和剤。
【請求項18】
請求項1に記載の副腎皮質におけるACTHの分泌を抑制する抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、下垂体前葉におけるACTHの分泌を抑制する抑制剤担持物。
【請求項19】
請求項5に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答を緩和するストレス応答緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答を緩和するストレス応答緩和剤担持物。
【請求項20】
請求項9に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する高血圧の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する高血圧の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物。
【請求項21】
請求項10に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する糖尿病の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する糖尿病の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物。
【請求項22】
請求項11に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する肥満抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する肥満抑制剤担持物。
【請求項23】
請求項12に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する免疫力低下抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する免疫力低下抑制剤担持物。
【請求項24】
請求項13に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するコルチゾールによる脳の海馬損傷を抑制する抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するコルチゾールによる脳の海馬損傷を抑制する抑制剤担持物。
【請求項25】
請求項14に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するうつ病の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するうつ病の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物。
【請求項26】
請求項15に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する睡眠障害の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因するうつ病の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物。
【請求項27】
請求項16に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する学習機能、記憶機能低下抑制剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する学習機能、記憶機能低下抑制剤担持物。
【請求項28】
請求項17に記載のACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する痴呆症の発症及び症状を緩和する緩和剤が、
飲食物、
嗜好品、
化粧品、
アクセサリー、衣料品、トイレタリー用品、家電用品、インテリア用品、家庭用品、寝装用品、ペット用品、から選択される用品、
ペットフード、
から選択されてなるいずれか一つからなる担持媒体に担持されてなる、ACTHの分泌を伴うストレス応答に起因する痴呆症の発症及び症状を緩和する緩和剤担持物。
【図1】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図2(c)】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図2(c)】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−149042(P2012−149042A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−276662(P2011−276662)
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【出願人】(592247724)株式会社サンアロマ (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【出願人】(592247724)株式会社サンアロマ (6)
【Fターム(参考)】
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