説明

内因性のmRNAタンパク質(mRNP)複合体の単離および特徴付けの方法

【課題】RNA−タンパク質相互作用または全体的な系のレベルに対してそれらの機能的な関連を理解するために、インビボにおいてメッセンジャーRNP複合体をモニターするための信頼性のある方法を提供すること。
【解決手段】細胞性mRNAタンパク質(mRNP)複合体は、生物学的サンプルをmRNP複合体の少なくとも1つの成分を結合する少なくとも1つのリガンドと接触させることによってインビボにおいて区別される。適切な生物学的サンプルは、少なくとも1つのmRNAタンパク質(mRNP)複合体を含み、そして細胞培養物、細胞抽出物、および組織全体(腫瘍組織を含む)を含む。リガンドは、mRNP複合体に存在するRNA結合タンパク質またはRNA会合タンパク質を特異的に結合する抗体を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、米国仮出願第60/173,338号(1999年12月28日出願)(これは、その全体が本明細書によって援用される)の利益を主張する。
【0002】
(連邦政府の支援の陳述)
本発明は、国立衛生研究所からの助成金番号RO1 CA79907の下での連邦政府の支援によってなされた。米国政府は、本発明に特定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、概して、転写後調節および遺伝子発現のプロファイリング方法に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
多くの疾患が、遺伝学的に基づき、そして各個々の遺伝背景は、男性または女性の疾患に対する感受性に深い影響を有し得る。比較的新しい機能的ゲノムの分野によって、研究者らは、タンパク質をコードする遺伝子の知識に基づいてタンパク質の機能を決定する能力を得た。機能的ゲノムの主な目的は、薬物探索の適切な標的である遺伝子産物を同定することである。このような知識は、目的の標的が疾患において本質的な機能を有することが示される場合に、標的を確認するための基礎を導き得る。従って、成長および発達に関するゲノムの因果関係を理解するために細胞および組織の遺伝子発現状態のプロファリングを可能にする方法を開発する必要性ある。
【0005】
総細胞レベルでの包括的な遺伝子発現の理解には、転写、プレmRNAプロセシング、mRNA代謝回転および翻訳の寄与を詳細に理解することが必要である。各細胞におけるこれら調節プロセスの総数はその特有の発現プロフィールの原因であるが、ほとんどの方法は、独立して、各プロセスをひとまとめにして評価することには利用可能ではない。
【0006】
複雑な組織または腫瘍における遺伝子の発現状態は、一般的に、サンプル(例えば、全組織)からメッセンジャーRNAを抽出し、そしてcDNAライブラリー、マイクロアレイ、もしくは遺伝子発現の連続分析(SAGE)方法論を用いて発現された遺伝子を分析することによって決定される。例えば、Dugganら(1999)Nature Genetics 21,10−14.;Gerholdら(1999)Trends in Biochemical Sciences 24,168−173;Brownら(1999)Nature Genetics 21,38−41;Velculescuら(1995)Science 270,484−487 Velculescuら(1997)Cell 88,243−251を参照のこと。組織もしくは腫瘍内の任意の単一細胞型の遺伝子発現プロフィールを決定するためか、またはこれらのメッセンジャーRNAを回収するために、組織はまず、微小に解剖されなければならない。少量の細胞物質のみが回収され、そしてこの細胞物質の純度および品質は損なわれるので、これは非常に困難である。
【0007】
転写後事象は、転写事象と同じように有意にタンパク質発現の結果に影響を及ぼす。転写および転写後の調節は、一般的に関連している。転写活性化因子または転写抑制因子の発現を変えることは、細胞の発生に重要な意義を有する。従って、特定のmRNAの転写活性化に続くフィードバックループは、増殖シグナルまたは分化シグナルに応答して転写のプログラムを変更し得る。DNAアレイは、mRNAの安定状態レベル(すなわち、総mRNAまたは「トランスクリプトーム(transcriptome)」)を包括的にプロファイリングするのに非常に適している。しかし、転写後事象はmRNAの安定性および翻訳に影響を与えるので、多くの細胞タンパク質の発現レベルは、mRNAの安定状態レベルと直接相関しない(Gygiら(1999)Mol.Cell Biol.19,1720−1730;Futcherら(1999)Mol.Cell Biol.19,7357−7368)。
【0008】
多くのmRNAは、その転写後発現および局在を調節する配列を含む(Richter(1996)Translational Control,編,J.W.B Hersheyら,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,481−504頁)。これらの調節エレメントは、プレ−mRNAのイントロンおよびエキソンの両方に存在し、同様に成熟転写物のコード領域および非コード領域の両方に存在する(JacobsonおよびPeltz(1996)Annu.Rev.Biochem.65,693−739;Wickensら(1997)Curr.Opin.Genet.Dev.7,220−232)。配列特異的調節モチーフの1つの例は、初期応答遺伝子(ERG)mRNAの3’非翻訳領域(UTR)に存在するAUリッチの不安定エレメント(ARE)であり、これらの多くは、増殖および分化に必須なタンパク質をコードする(Caputら(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83,1670−1674;ShawおよびKamen(1986)Cell 46,659−667;Schiaviら(1992)Biochim.Biophys.Acta 1114,95−106;ChenおよびShyu(1995)Trends Biochem.Sci.20,465−470)。AREを介した調節は、ほとんど理解されていないが、哺乳動物ELAV/Huタンパク質は、インビトロでARE配列エレメントに結合し、インビボで転写後mRNA安定性および翻訳に影響を与えることが示されている(Jainら(1997)Mol.Cell Biol.17,954−962;Levyら(1998)J.Biol.Chem.273,6417−6423;FanおよびSteitz(1998)EMBO J.17,3448−3460;Pengら(1998)EMBO J.17,3461−3470;Keene(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,5−7)。
【0009】
細胞性配列に基づくインビトロRNA選択方法が、Gaoら,Proc.Natl.Acad.Sci USA 90,11207−11211(1994)および米国特許第5,773,246号、同第5,525,495号、および同第5,444,149号(全てKeeneら)(これらの開示は、その全体が本明細書中に援用される)に報告される。一般的に、これらの方法は、メッセンジャーRNP(mRNP)複合体中に存在する多数のmRNAを同定することが意図され、そして天然に存在するmRNAの大きなプール由来のmRNA配列のインビトロ結合および増幅を利用した。これらの研究は、細胞性mRNAの非翻訳領域に存在するAUリッチ配列エレメントに結合することが既知のタンパク質(ELAVまたはHuタンパク質と称される)を使用した。これらの実験によって、構造的もしくは機能的に関連するmRNAが複数標的化RNA結合タンパク質(すなわち、1つより多くの標的に特異的に結合するRNA結合タンパク質)を使用して明らかにされ得ることが、発見された。Levineら(1994)Molecular and Cellular Biology 13,3494−3504;ならびにKingら(1993)Journal of Neuroscience 14,1943−1952を参照し;AnticおよびKeene(1997)American Journal of Human Genetics 61,273−278ならびにKeene(1999)Proceedings of the National Academy of Sciences(USA)96,5−7に概説される。しかし、これらの報告は、インビトロ適用に限定され、RNA結合タンパク質を用いてRNAを構造的サブセットまたは機能的サブセットに配分するためのインビボ方法は記載していない。インビトロ方法はタンパク質−RNA相互作用を決定するために使用されているが、これらの使用は特定の制限を有する。生化学方法が、注意深く制御される場合、一般的に確実であるが、RNA結合は、問題が多くあり得る。なぜなら、多くの相互作用は、低い親和性、低い特異性あるいは人為的産物の相互作用であり得るからである。RNA−タンパク質相互作用または全体的な系のレベルに対してそれらの機能的な関連を理解するために、インビボにおいてメッセンジャーRNP複合体をモニターするための信頼性のある方法を見出す必要がある。
【0010】
エピトープタグ化されたELAV/Huタンパク質(これは、前ニューロン細胞にトランスフェクトされている)の好首尾な免疫沈降が、報告されている。Anticら,Genes and Development 13,449−461(1999)を参照のこと。この免疫沈降には、神経フィラメントMタンパク質(NF−M)をコードするメッセンジャーRNAの同定を可能にする核酸増幅が続く。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、メッセンジャーRNAのクラスターまたはサブセットを通した遺伝情報の流れを利用する、遺伝子発現を決定するための新規のインビボ手段に関する。近年、複数の高分子事象を、これらの情報をコンピューター化で組織化する目標とともに、同時かつ並行に調べることは、呼称「−ome」が採られている。従って、ゲノムは、細胞の遺伝子全てを同定し、一方、トランスクリプトームは、ゲノムのメッセンジャーRNA相補体として規定され、そしてプロテオーム(proteome)は、ゲノムのタンパク質相補体として規定される(図1を参照のこと)。本発明者らは、トランスクリプトームのいくつかの物理的に組織化されたサブセットを規定し、そしてこれらを「リボノーム(ribonome)」の動的単位として規定する。本明細書中に記載されるように、リボノームは、RNA結合タンパク質(例えば、調節RNA結合タンパク質)との会合に起因して、細胞中でクラスター化しているメッセンジャーRNA(mRNA)の多数の異なるサブセットからなる。細胞性リボノームのmRNA成分を同定することによって、細胞性トランスクリプトームは、細胞または組織の遺伝子発現状態を規定するために一緒に使用され得る一連のサブプロフィールに破壊され得る(図2を参照のこと)。例えば、高スループット手段と組み合わせ、そしてRNAプロセシングアレイと多重化することによって、本発明の方法は、複数の遺伝子転写物中で生じる変化を同時に決定する能力を提供する。
【0012】
従って、本明細書中の1つの局面は、内因性の細胞性mRNA結合タンパク質(mRNP)複合体を区別するインビボ方法である。1つの実施形態において、この方法は、少なくとも1つ以上のmRNP複合体を含む生物学的サンプルを、このmRNP複合体の成分に特異的に結合するリガンドと接触させる工程を包含する。生物学的サンプルは、例えば、組織サンプル、全組織、全器官、細胞培養物、または細胞抽出物もしくは溶解物であり得る。mRNP複合体の成分は、RNA結合タンパク質、RNA会合タンパク質、mRNA自身を含むmRNP複合体と会合する核酸、またはmRNP複合体と会合する別の分子もしくは化合物(例えば、炭水化物、脂質、ビタミンなど)であり得る。リガンドは、例えば、この成分に特異的に結合する抗体、この成分に結合する核酸(例えば、アンチセンス分子、この成分に結合するRNA分子)、またはこの複合体の成分に結合する任意の他の化合物もしくは分子であり得る。次いで、mRNP複合体は、リガンドを(ここではmRNP複合体に結合する)、このリガンドを結合する結合分子に結合させることによって分離される。結合分子は、リガンドに直接的に結合しても(すなわち、リガンドに対して特異的な抗体であり得る)、リガンドに間接的に結合してもよい(すなわち、リガンド上のタグに対する抗体または結合パートナーであり得る)。結合分子は、当該分野で公知のように、固体支持体(例えば、ビーズまたはプレートまたはカラム)に付着される。従って、mRNP複合体は、リガンドおよび結合分子を介して固体支持体に付着される。次いで、mRNP複合体は、この複合体を固体支持体から取り外すことによって収集される(すなわち、この複合体は、適切な条件および溶媒を用いて固体支持体から洗浄して取り外される)。
【0013】
次いで、mRNP複合体内に結合したmRNAの同一性が、例えば、mRNAをこの複合体から分離し、このmRNAをcDNAに逆転写し、そしてこのcDNAを配列決定することによって、決定され得る。
【0014】
従って、本発明の実施形態において、mRNP複合体は、エピトープタグの有りまたは無しで、mRNP複合体の直接的な免疫沈降によって単離され得るか、または他の生化学的な区別方法によって単離され得る。例えば、mRNP複合体に結合するかまたはmRNP複合体と会合している他のタンパク質は、mRNP複合体それに続いてこの複合体内の結合したmRNAを収集するために、免疫沈降され得る。当業者は、本発明の方法の実施形態が、同時に(すなわち共に)、連続して、またはバッチ式の様式で、多数のmRNA複合体の同定を可能にすることを理解する。あるいは、この方法は、1つの生物学的サンプル(またはその一部)に対して多数回実行され得、この方法の工程は、異なるリガンドを利用する方法を各々反復することによって、連続様式で実施される。任意の記載された実施形態において、例えば、cDNAまたはゲノムマイクロアレイのグリッドが、本発明の方法によって単離されたmRNAをひとまとめに同定するために使用され得る。
【0015】
mRNAの「サブセット」は、mRNP複合体を特異的に結合するかまたはmRNP複合体と特異的に会合する、複数のmRNA転写物またはメッセージとして規定される。言い換えると、サブセットは、特定のmRNP複合体内に結合するかまたは特定のmRNP複合体に結合するその能力によって規定される。サブセットは、好ましくは、細胞の総mRNA集団の定量的画分または定性的画分である。さらに、mRNAサブセット内のサブセットは、本発明を用いて同定され得る。任意の特定の細胞または組織サンプルのmRNAサブセットの収集は、発現プロフィールであり、本明細書中において、この細胞または組織に関して「リボノームプロフィール(ribonomic profile)」とも称される。発現プロフィールが、サンプル中の細胞型(例えば、細胞が何の種または組織型であるか)、細胞の分化状態、細胞の病原性(すなわち、この細胞が感染されているか否か、または細胞が有害な遺伝子(例えば、癌遺伝子)を発現しているか否か、またはこの細胞が特定の遺伝子を欠くか否か)、mRNP複合体を単離するために使用される特定のリガンドなどに依存して、細胞サンプル間で異なることが理解される。従って、細胞の発現プロフィールは、細胞の同定因子として使用され得、当業者が異なる細胞のプロフィールを比較し、識別することを可能にする。
【0016】
他に示されない限り、リボノームプロフィールは、細胞の全体的なmRNAプロフィールのパターン認識サブセットを提供する。細胞の増殖状態が変化する(すなわち、腫瘍化)場合か、または細胞が病原体によって混乱された(すなわち、ウイルス感染)場合、このプロフィールは変化し、そしてリボノームの混乱が、検出され得る。細胞が化合物(すなわち、薬物)で処理される場合、リボノームパターンは、所望の変化または所望されない変化を示す。従って、この新規方法は、多数の因子の細胞に対する影響(毒性、加齢、アポトーシス、病原および細胞分化を含む)を評価するための方法を提供する。
【0017】
新規である本発明は、RNAを区別する以前の方法よりもいくつかの利点を有する。第1に、mRNP複合体の区別は、インビボで実行され得、一方、以前の方法は、インビトロ適用に制限されていた。この新規方法は、十分に確固としており、その結果、一旦目的のcDNAが単離されたmRNAサブセットから逆転写されると、この目的のcDNAを同定するために増幅(例えば、PCRによるか、または代替的に、Anticら(1999)Genes Dev.13,449−461の方法に従う)をする必要はない。本発明は、Gaoら(前出)に示されるような反復工程の使用を必要としない。最後に、例えば、ハイブリダイゼーションが細胞の発現プロフィールを分析するために(例えば、マクロアレイアッセイまたはRNAse保護アッセイ(RPA)において)使用される場合、定量的な決定が本発明において可能である。
【0018】
従って、特定の実施形態において、本発明は、当業者が、成熟遺伝子転写物の局在、活性、安定性、および生細胞のタンパク質成分への翻訳を決定するためにひとまとめにこの成熟遺伝子転写物を同定、モニター、および定量することを、好都合に可能にする。本明細書中に記載される方法は、内因性メッセンジャーRNA結合タンパク質を単離する方法、およびmRNP複合体中に含まれる細胞性mRNAのサブセットを同定する方法を、マイクロアレイまたは他の公知の手順を用いて提供することによって、機能的ゲノムに新規の手段を好都合に提供する。好ましい実施形態において、本発明の方法は、mRNA結合タンパク質およびmRNAサブセットを規定するための他のmRNP会合因子を用いることによって、増殖および分化のサイクルの間の機能的mRNAネットワークを研究しそしてこれらを決定する基礎を提供する。
【0019】
mRNAサブセットのパターン(すなわち、発現プロフィール)は、特定の化合物(すなわち、薬物)の存在下、または種々の疾患状態下で変更され得ることが、理解される。従って、特定の実施形態において、本発明の方法は、治療的用途がある化合物であり得る化合物をスクリーニングするため、およびこの化合物に対する適切な遺伝子標的を見出すために有用である。他の実施形態において、本発明の方法は、細胞の疾患状態を決定するのに有用であり、従って、疾患(例えば、癌)の存在または疾患の素因を分類または診断するための手段が提供される。
【0020】
遺伝子発現プロフィールはまた、複雑な組織(例えば、腫瘍)に存在する異なる細胞型間で異なる。いくつかのmRNA結合タンパク質は、特定の腫瘍細胞においてのみ存在し、そして腫瘍は、1より多い細胞型を含み得る。腫瘍または組織内の各細胞型についての遺伝子発現プロファイリングは、その組織の抽出物を作製し、そしてmRNP複合体の細胞特異的成分(例えば、mRNAに付着しているRNA結合タンパク質)をその抽出物から直接的に(すなわち、インビボで)免疫沈降することによって行われ得る。これらの免疫沈降したペレットは、その結合または会合した成分を含む、その同じ細胞中にのみ存在するmRNAを含む。従って、特定の実施形態において、本発明の方法は、複数の細胞型の遺伝子発現プロフィール(どの細胞型が、その同じ複雑な組織中に共存し得るか)を特徴付けそして区別するために使用され得る。これは、例えば、腫瘍細胞周辺の非腫瘍間質細胞および血液細胞におけるmRNAを分析する必要なく、これらの腫瘍細胞を腫瘍抽出物全体においてプロフィールするのを可能にし得る。このような特徴付けの結果は、例えば、処置の選択が、腫瘍に存在する組織の種類(例えば、内皮血管組織)に依存する場合の、腫瘍に罹患している患者の適切な処置の過程の決定において有用であり得る。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、mRNP複合体と結合または会合するタンパク質を単離および必要に応じて同定するための方法を提供する。
【0022】
あるいは、および別の実施形態において、本発明の方法は、細胞における遺伝子発現を調節する能力について、試験化合物をスクリーニングするために使用され得る。このような方法は、遺伝子発現における異常に関連する障害(癌を含むがこれらに限定されない)の処置および/または予防において使用され得る、推定の薬物をスクリーニングするのに有用である。
本発明は例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)内因性の細胞性mRNAタンパク質(mRNP)複合体を区別する方法であって、ここで、該方法が、以下:
mRNAタンパク質(mRNP)複合体を含む生物学的サンプルを該mRNP複合体の少なくとも1つの成分を特異的に結合する少なくとも1つのリガンドと接触させる工程;
該リガンドに対して特異的な結合分子を用いて該リガンドを結合することによって該mRNP複合体を分離する工程であって、ここで該結合分子が固体支持体に付着される、工程;および次いで、
該固体支持体から該mRNP複合体を取り外すことによって該mRNP複合体を収集する工程、
を包含する、方法。
(項目2)前記生物学的サンプルが細胞培養物または細胞抽出物を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)前記生物学的サンプルが組織全体を含む、項目1に記載の方法。
(項目4)前記生物学的サンプルが器官体全体を含む、項目1に記載の方法。
(項目5)前記生物学的サンプルが腫瘍を含む、項目1に記載の方法。
(項目6)前記生物学的サンプルが腫瘍細胞または腫瘍細胞抽出物を含む、項目1に記載の方法。
(項目7)前記生物学的サンプルがニューロンの集団を含む、項目1に記載の方法。
(項目8)前記リガンドが抗体である、項目1に記載の方法。
(項目9)前記リガンドが癌を有する被験体の血清を使用して単離された抗体である、項目1に記載の方法。
(項目10)前記リガンドが自己免疫障害を有する被験体の血清を使用して単離された抗体である、項目1に記載の方法。
(項目11)前記結合分子が抗体である、項目1に記載の方法。
(項目12)前記結合分子がプロテインA、プロテインG、およびストレプトアビジンからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目13)前記mRNP複合体の成分が核酸である、項目1に記載の方法。
(項目14)前記mRNP複合体の成分がRNAである、項目1に記載の方法。
(項目15)前記mRNP複合体の成分がmRNAである、項目1に記載の方法。
(項目16)前記mRNP複合体の成分が成熟mRNAである、項目1に記載の方法。
(項目17)前記mRNP複合体の成分がRNA結合タンパク質である、項目1に記載の方法。
(項目18)前記mRNP複合体の成分がRNA会合タンパク質である、項目1に記載の方法。
(項目19)前記RNA会合タンパク質が前記mRNP複合体と約10−6〜約10−9のKdで会合する、項目18に記載の方法。
(項目20)前記RNA会合タンパク質が前記mRNP複合体と約10−7〜約10−9のKdで会合する、項目18に記載の方法。
(項目21)前記RNA会合タンパク質が前記mRNP複合体と約10−8〜約10−9のKdで会合する、項目18に記載の方法。
(項目22)前記mRNP複合体の成分が炭水化物、脂質、およびビタミンからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目23)前記mRNP複合体から前記mRNAを分離することによって該mRNP内に結合される該mRNAを同定する工程、該mRNAのcDNAを得る工程、次いで該cDNAを配列決定する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目24)前記同定する工程が、cDNAマイクロアレイ上で実施される、項目23に記載の方法。
(項目25)前記リガンドが、HuA、HuB、HuCおよびHuDからなる群より選択されるELAV/Huタンパク質である、項目1に記載の方法。
(項目26)前記リガンドが、前記mRNP複合体の少なくとも1つの成分に対して特異的な抗体であり、該mRNP複合体が免疫沈降によって分離される、項目1に記載の方法。
(項目27)多数のリガンドが前記生物学的サンプルと接触され、多数のmRNP複合体を単離する、項目1に記載の方法。
(項目28)前記mRNP複合体を前記リガンドと接触させる前に、該mRNP複合体を架橋させる工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目29)前記mRNP複合体を前記リガンドと接触させた後に、該リガンドを該mRNP複合体と架橋させる工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目30)mRNP複合体を結合するか、またはmRNP複合体に会合するタンパク質を単離する方法であって、ここで該方法が、以下:
目的のRNAからcDNAを得る工程;
タグ化DNAが細胞において発現される場合、リガンドに対する結合パートナーをコードする該タグ化DNAに、該cDNAを連結する工程;
細胞において該cDNAおよび該タグ化DNAを発現させ、該リガンドに対する該結合パートナーを含むRNA融合分子を生成する工程;
該細胞の溶解物を該リガンドと接触させる工程であって、ここで該リガンドが固体支持体に付着され、そして該結合パートナーを結合し、それによって該RNA融合分子を該支持体に付着する、工程;
該支持体から該RNA融合分子を分離することによって該RNA融合分子を収集する工程;そして次いで、
目的の該RNAを結合するかまたは該RNAに会合する任意のタンパク質を分離する工程、
を包含する、方法。
(項目31)目的の前記RNAを結合しているかまたは該RNAに会合している前記タンパク質を同定する工程をさらに包含する、項目30に記載の方法。
(項目32)インビボにおける細胞の遺伝子発現プロフィールを作製する方法であって、ここで該方法が以下:
項目1に記載の細胞から多数のmRNP複合体を区別する工程;
該mRNP複合体を単離する工程であって、ここで各mRNPに結合されるmRNAが該細胞の該mRNAのサブセットを含む、工程;ならびに次いで、
該mRNAの各サブセットを同定する工程であって、それによって該細胞の該遺伝子発現プロフィールがmRNAの各サブセットの存在およびmRNAの各サブセットの同一性を含む、工程、
を包含する、方法。
(項目33)細胞において遺伝子発現を調節する試験化合物の能力について該試験化合物をスクリーニングする方法であって、該方法が以下:
項目32に記載の方法に従って細胞の第1の遺伝子発現プロフィールを作製する工程であって、ここで該細胞は試験化合物と接触している、工程;
項目32に記載の方法に従って細胞の第2の遺伝子発現プロフィールを作製する工程であって、ここで、該細胞は該試験化合物と接触している、工程;および次いで、
該第1の遺伝子発現プロフィールと該第2の遺伝子発現プロフィールとの間の差異を、存在する場合、観察する工程であって、該第1の遺伝子発現プロフィールと該第2の遺伝子発現プロフィールとの間の差異の存在が、該試験化合物が該細胞において遺伝子発現を調節し得ること示す、工程
を包含する、方法。
本発明の前述および他の局面は、以下に示す本明細書中において詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、ゲノムからプロテオームへの遺伝情報の流れ、ならびにリボノームおよびトランスクリプトームによって表される中間体レベルの略図である。トランスクリプトームは、ゲノムの総mRNA相補体を表すが、必ずしもタンパク質産生に直接的に相関しない。mRNAのプロセシング、輸送および翻訳は、リボノームで起こり、ここでは、動的な調節工程が、そのプロテオームの結果を決定する。
【図2】図2は、mRNP複合体内にて結合されリボノームの一部を形成するmRNAとの、総細胞mRNA(トランスクリプトーム)の比較を図示する。トランスクリプトームに対して比較する場合、mRNP複合体を表すマイクロアレイは、別個でかつより限定されたmRNAのサブセットを含む。
【図3】図3Aおよび3Bは、mRNP複合体に会合するmRNAの、マルチプローブRNase保護分析を示す。細胞溶解物由来のメッセンジャーRNP複合体を免疫沈降し、そしてそのペレット化されたRNAを抽出し、そしてRNase保護によって定量する。図3Aおよび3Bは、それぞれ、mMycおよびmCyc−1のマルチプローブテンプレートセットの例を示す。レーン:(1)未消化リボプローブ(リボプローブプラスミドテンプレートに起因するRNase消化された産物よりもわずかに大きい);(2)総細胞RNA;(3)ウサギ採血前血清コントロール;(4)HuB mRNPから抽出したmRNA;(5)PABP mRNPから抽出したmRNA。アスタリスク()は、総RNA中に検出されなかった種のmRNAを示す。
【図4】図4は、DNAアレイを使用するRNAサブセットのリボノームプロファイリングを示す。RNA−タンパク質複合体は、2つの個体、種、細胞型、処置、発生段階などの細胞由来であり得る。mRNA−タンパク質複合体を分離し、複合体の免疫沈降を行い、プローブを、RNAテンプレートから逆転写し、そして遺伝子のDNAアレイを、RNP由来のプローブの各プールでプローブして、遺伝子発現のサブプロフィール(10)を作成する。次いで、サブプロフィールを、差し引きまたは相加によって比較して、遺伝子発現の全体画像(20)を作成する。この図は、マイクロアレイを使用して、異なるmRNPを単離し、そしてそれらに会合するmRNAを同定する、リボノームの概念を示す。総細胞プロフィールのサブプロフィール(mRNP1、mRNP2、....mRNPn)は、相加物として示される。スタックされたmRNPサブプロフィールは、各々、単一の細胞型内の個々のmRNPを表し得るか、または各々、複雑な組織内または腫瘍内の個々の細胞のトランスクリプトームを表し得る。
【図5】図5は、例示的な実施例4(前出)の結果を示し、そしてcDNAアレイを使用して、mRNP複合体に会合するmRNAを示す。パネル:(A)採血前;(B)HuB mRNP複合体;(C)elF−4E mRNP複合体;(D)PABP mRNP複合体;(E)総細胞RNA。この手順の特異性の例は、これらのmRNPプロフィール間のβ−アクチンおよびリボソームタンパク質S29をコードするmRNA(それぞれ、矢印aおよびb)の差次的な量によって示される。このような特異性の他の例は、他のmRNAで容易に観察可能である(データは示さず)。
【図6】図6は、例示的な実施例5(前出)の結果を示し、そしてレチノイン酸(RA)での処置前後のHuB mRNP由来のmRNAプロフィールの比較を示す。パネル:(A)未処理細胞から免疫沈降したHuB mRNPから抽出したmRNA;(B)RA処理した細胞からから免疫沈降したHuB mRNPから抽出したmRNA;(C)パネルAおよびBのコンピューターによる比較;(D)未処理細胞から免疫沈降したHuA(HuR) mRNPから抽出したmRNA;(E)RA処理した細胞から免疫沈降したHuA mRNPから抽出したmRNA;(F)パネルDおよびEのコンピューターによる比較;(G)未処理の細胞溶解物から抽出したmRNAの総相補体;(H)RA処理した細胞溶解物から抽出したmRNAの総相補体;および(I)パネルGおよびHのコンピューターによる比較。パネルC、FおよびIについて:緑色のバーは、ほぼ等しい量のmRNAを示す;赤色のバーは、RA処理後に4倍以上で検出可能であったHuB mRNPからのmRNAを表す;青色のバーは、RA処理前に4倍以上で検出可能であったHuB mRNPからのmRNAを表す。
【図7】図7は、リボノームプロファイリングの図である。
【図8】図8は、新規のRNA結合タンパク質の同定のためのストラテジーを概略する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
ここで、本発明を、添付の図面(ここでは、本発明の好ましい実施形態が示される)を参照してより十分に説明する。しかし、本発明は、異なる形態において具体化され得、そして本明細書中に示される実施形態に限定されるとみなされない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に十分伝えるように提供される。
【0025】
本明細書中の本発明の説明において使用される用語は、特定の実施形態を記載することのみを目的とし、本発明を限定することを意図されない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形態「a」、「an」および「the」とは、他に明らかに示されない限り、複数形態もまた同様に含むことが意図される。他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の文献は、それらの全体が参考として援用される。
【0026】
他に示されなければ、標準的な方法が、本発明に従って、クローニングした遺伝子、発現カセット、ベクターならびに形質転換された細胞および植物の産生に使用され得る。このような方法は、当業者に公知である。例えば、J.Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual Second Edition(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,1989);F.M.Ausubelら、Current Protocols In Molecular Biology(Green Publishing Associates,Inc.and Wiley−Interscience,New York,1991)を参照のこと。
【0027】
ヌクレオチドおよびアミノ酸は、37C.F.R.§1.822および確立された使用法に従って、IUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される様式で、または(アミノ酸について)三文字コードで本明細書中に示される。例えば、PatentIn User Manual,99−102(Nov.1990)(米国特許商標局)を参照のこと。
【0028】
ヌクレオチド配列は、5’から3’の方向に(左から右へ)一本鎖のみによって本明細書中に示される。本明細書中で使用される場合「核酸配列」とは、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、およびそれらのフラグメントをいい、そしてゲノム起源または合成起源のDNAまたはRNA(これらは、一本鎖または二本鎖であり得、そしてセンス鎖またはアンチセンス鎖を表し得る)をいう。用語「核酸」とは、一本鎖形態または二本鎖形態にある、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドならびにそれらのポリマーをいう。特に限定されない限り、この用語は、その参照核酸と同様の結合特性を有しそして天然に存在するヌクレオチドと同様の様式で代謝される、天然のヌクレオチドの公知のアナログを含む核酸を包含する。他に示されない限り、特定の核酸配列にはまた、それらの保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換)および相補的配列が暗に包含され、そして同様に、その配列も明らかに示される。2つの核酸は、その2以上の核酸の各々由来の配列が、子孫核酸において合わせられている場合に、「組換え」られている。
【0029】
用語「核酸」または「核酸配列」はまた、遺伝子、cDNAおよび遺伝子にコードされるmRNAに関して使用され得る。用語「遺伝子」は、生物学的機能に関連する、DNAの任意のセグメントを言及するために広く使用される。従って、遺伝子は、コード配列および/またはそれらの発現に必要とされる調節配列を含む。遺伝子はまた、発現されないDNAセグメント(例えば、他のタンパク質の認識配列を形成する)を含む。遺伝子は、種々の供給源(目的の供給源からのクローニングあるいは既知または推定の配列情報からの合成を含む)から得られ得る。
【0030】
本明細書中で使用される場合、核酸分子は、RNA(用語「RNA」は、全てのリボ核酸(プレmRNA、mRNA、rRNA、hnRNA、snRNAおよびtRNAを含むがこれらに限定されない)を包含する);DNA;ペプチド核酸(PNA)(例えば、Nielsenらに対する米国特許第5,539,082号、およびArlinghausらに対する米国特許第5,821,060号に記載されるような);ならびにそれらのアナログおよび改変形態であり得る。好ましくは、核酸は、RNAであり、そしてより好ましくは、核酸分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)である。本発明の核酸分子は、線状または環状、遺伝子全体またはそのフラグメント、全長またはフラグメント化/消化されたもの、「キメラ」(そのセンス鎖において1種より多い核酸を含む)であり得、そして一本鎖または二本鎖であり得る。任意の供給源由来の核酸が、本発明において使用され得る;つまり、本発明の核酸としては、ゲノム核酸、合成核酸、プラスミドから得られた核酸、cDNA、組換え核酸、ならびに公知の化学的方法によって改変された核酸(本明細書中にさらに記載されるような)が挙げられるが、これらに限定されない。核酸はまた、インビトロ選択実験の産物(アプタマーとも呼ばれる)および他のリガンドに結合するかまたは結合される能力について有用な他の核酸分子であり得る。D.Kenan,TIBS 19,57−64(1994);L.Goldら、Annu.Rev.Biochem.64,763−798(1995);S.E.OsborneおよびA.D.Ellington,Chem.Rev.97,349−370(1997)を参照のこと。
【0031】
本発明の核酸は、細菌、ウイルス、真菌、植物および動物を含むが、これらに限定されない、任意の生物から得られ得、ここで、動物の核酸が好ましく、哺乳動物の核酸がより好ましく、そしてヒト核酸が最も好ましい。所望の場合、核酸は、当該分野で周知の、既知の核酸増幅方法のいずれか(例えば、PCR、RT−PCR、QC−PCR、SDAなど)に従って増幅され得る。本発明の核酸は、当該分野で公知の方法に従って精製され得、そして好ましくは、当該分野で公知の方法に従って精製される。
【0032】
上記に要約されるように、本発明は、細胞からmRNP複合体を区分化(patitioning)するためのインビボ方法に関する。本発明のmRNP複合体は、好ましくは、生物学的サンプル(例えば、組織サンプル、組織全体、器官全体(例えば、脳、肝臓、腎臓全体など)、体液サンプル、細胞培養物、細胞溶解物、細胞抽出物など)由来であり得る。好ましい実施形態において、この生物学的サンプルは、細胞の集団を含むかまたは細胞の集団から得られる。本明細書中で「細胞の集団」によって、少なくとも2つの細胞を意味され、ここで、少なくとも約10が好ましく、少なくとも約10が特に好ましく、そして少なくとも約10〜10がとりわけ好ましい。この集団またはサンプルは、一次または二次培養物あるいは複合組織(例えば、腫瘍)のいずれか由来の異なる細胞型の混合物を含み得るか、あるいは単一の細胞型のみを含み得る。好ましい実施形態において、増殖している細胞が使用される。あるいは、増殖していない細胞が使用され得る。
【0033】
本発明の使用に好ましい細胞型としては、哺乳動物細胞(動物(げっ歯類、ウマ、ウシ、イヌ、ネコおよび霊長類)細胞およびヒト細胞を含む)が挙げられるが、これらに限定されず、ここで、ヒト細胞が、好ましい。非哺乳動物(例えば、鳥類、魚類、爬虫類)由来および植物由来の細胞もまた、本発明の実施において使用され得る。細胞は、任意の型の腫瘍(乳房、皮膚、肺、頸部、結腸直腸および脳/CNSの腫瘍など)由来の腫瘍細胞であり得る。さらに、任意の器官の非癌性細胞(肝臓細胞、ニューロン、筋肉細胞などを含む)が、使用され得る。
【0034】
mRNAとは、「メッセージ」または「転写物」として、本明細書中で交換可能に称される。mRNAの「サブセット」は、特定のmRNA結合タンパク質複合体(mRNP複合体)内に特異的に結合する、複数のmRNAとして定義される。従って、サブセットは、特定のmRNP内または特定のmRNPに結合する、それらの能力によって規定される。mRNAサブセットは、好ましくは、この細胞の総RNA集団のうちのわずかなものであり得る。
【0035】
上記で要約されるように、本発明の1つの局面は、内因性細胞mRNA結合タンパク質(mRNP)複合体を区分かするインビボ方法である。「内因性」とは、このmRNP複合体が細胞中(すなわち、インビボまたはインサイチュ)で形成することを意味するものとして、本明細書中で使用される。このmRNP複合体は、その細胞において天然に形成し得、すなわち、このmRNP複合体の成分が、その細胞中に存在し、そしてこのmRNP複合体を形成する。あるいは、この複合体の1以上の成分が、例えば、感染または形質転換によって細胞内に導入されても、このmRNP複合体は、その細胞中で形成する。例えば、このmRNP複合体の成分であるRNP結合タンパク質が、(例えば)このタンパク質をコードする核酸を保持する発現ベクターを細胞に形質転換するかまたは感染させることによってこの細胞中に異所的に発現され、そしてそのタンパク質が結合するmRNP複合体が形成される場合に、mRNP複合体は、細胞中で内因的に形成する。
【0036】
1つの実施形態において、この方法は、少なくとも1つのmRNP複合体を含む生物学的サンプルに、そのmRNP複合体の成分を特異的に結合するリガンドを接触させる工程を包含する。このmRNP複合体の成分は、RNA結合タンパク質、RNA会合タンパク質、このmRNA自体を含むmRNP複合体と会合する核酸、あるいはこのmRNP複合体と会合する別の分子または化合物(例えば、炭水化物、脂質、ビタミンなど)であり得る。成分は、約10−6〜約10−9のKdでこのmRNP複合体に結合するかまたは付着する場合に、mRNP複合体と「会合する(associate)」。好ましい実施形態において、この成分は、約10−7〜約10−9のKdでこの複合体に会合する。より好ましい実施形態において、この成分は、約10−8〜約10−9のKdでこの複合体に会合する。
【0037】
このリガンドは、このmRNP複合体の成分を特異的に結合する任意の分子であり得る。例えば、リガンドは、この成分を特異的に結合する抗体、この成分を結合する核酸(例えば、アンチセンス分子、この成分を結合するRNA分子)、あるいはこの複合体のこの成分を特異的に結合する任意の他の化合物または分子であり得る。特定の実施形態において、リガンドは、mRNP複合体特異的抗体またはタンパク質の産生に関連することが公知の障害を有する被験体(すなわち、ヒトまたは動物被験体)の血清を使用して、得られ得る。これらの障害の例としては、自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス(「狼瘡」またはSLE))および多くの癌が挙げられる。特定の実施形態において、リガンドは、このリガンドの分離、観察または検出を容易にするための別の化合物または分子で、「タグ化」され得る。本発明の1つの実施形態において、リガンドは、当該分野で公知のように、「エピトープタグ化」される。適切なタグは、当該分野で公知であり、そしてこれらには、ビオチン、MS2タンパク質結合部位配列、U1snRNA 70k結合部位配列、U1snRNA A結合部位配列、g10結合部位配列(Novagen,Inc.,Madison,Wisconsin,USAから市販される)、およびFLAG−TAG(登録商標)(Sigma Chemical,St.Louis,Missouri,USA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
次いで、このmRNP複合体を、そのリガンドを特異的に結合する結合分子に、そのリガンド(ここでは、mRNP複合体に結合されている)を結合させることによって分離する。この結合分子は、リガンドを直接結合し得るか(すなわち、リガンドに特異的な抗体またはタンパク質であり得る)、またはリガンドに間接的に結合し得る(すなわち、リガンド上のタグに対する抗体または結合パートナーであり得る)。適切な結合分子としては、プロテインA、プロテインG、ストレプトアビジンが挙げられるが、これらに限定されない。結合分子はまた、例えば、自己免疫障害または癌に罹患している被験体の血清を使用して得られ得る。特定の実施形態において、このリガンドは、そのFab領域を介してそのmRNP複合体の成分を結合する抗体であり、そして次いで、この結合分子は、この抗体のFc領域を結合する。結合分子は、当該分野で公知のような固体支持体(例えば、ビーズ、ウェル、ピン、プレートまたはカラム)に付着されている。従って、このmRNP複合体は、リガンドおよび結合分子を介して個体支持体に付着される。
【0039】
次いで、mRNP複合体を、固体支持体からmRNP複合体を取り出すことによって回収する(すなわち、適切なストリンジェンシー条件下で、当業者によって決定され得る適切な溶媒を使用して、固体支持体から複合体を洗い流す)。
【0040】
本発明の特定の実施形態では、mRNP複合体にリガンドを結合させる前に、mRNP複合体を、架橋によって安定化させ得る。本明細書中で使用される場合、架橋は、共有結合(例えば、mRNP複合体の成分を共に共有結合すること)を意味する。架橋は、一般的に非共有結合であるリガンド−標的結合または結合分子−リガンド結合とは対照的であり得る。架橋は、物理的手段(例えば、熱または紫外線照射による)、または化学的手段(例えば、複合体を、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドまたは他の公知の架橋剤と接触させることによる)によって実施され得る。この手段は、当業者に公知であるかまたは当業者によって決定可能である。他の実施形態では、リガンドは、mRNP複合体を結合した後に、mRNP複合体に架橋され得る。さらなる実施形態では、結合分子は、リガンドに結合した後に、このリガンドに架橋され得る。さらに他の実施形態では、結合分子は、固体支持体に架橋され得る。
【0041】
当業者は、本発明の方法が、同時に(例えば、「ひとまとめに」)複数のmRNP複合体を同定することを可能にすることを理解する。例えば、生物学的サンプルを、異なるmRNP複合体成分に特異的な複数のリガンドと接触させ得る。サンプル由来の複数のmRNP複合体は、種々のリガンドを結合する。次いで、この複数のmRNP複合体を、適切な結合分子を使用して分離し得、このようにして、この複数のmRNP複合体を単離する。次いで、この複合体中に含まれるmRNP複合体とmRNAとを、本明細書中に記載される方法および当該分野において公知の方法によって特徴付け得、および/または同定し得る。あるいは、この方法は、多数の時間に1つのサンプルに対して実施され得、本発明の工程は、連続的な様式で実施され、各反復工程で異なるリガンドを利用する。
【0042】
上記に示したように、mRNAのサブセットは、このサンプル中のRNAの構造的または機能的ネットワークに特徴的なパターン認識プロフィールを同定する。任意の特定の細胞または組織のサンプルに関するmRNAサブセットの収集物は、この細胞または組織についての遺伝子発現プロフィール、そしてより詳細には、リボノミック(ribonomic)遺伝子発現プロフィールを構成する。リボノミック発現プロフィールは、サンプル中の細胞型(例えば、その細胞がどの種または組織型であるか)、細胞の分化状態、細胞の生存能力(すなわち、細胞が感染されているか否か、または細胞が有害な遺伝子(例えば、オンコジーン)を発現しているか否か、または細胞が特定の遺伝子を欠いているかもしくは特定の遺伝子を発現させていないか否か)、mRNP複合体を単離するために使用された特定のリガンドなどに依存して、細胞ごとに異なり得ることが理解される。従って、細胞のリボノミック発現プロフィールは、細胞についての識別子として使用され得、当業者が、異なる細胞のプロフィールまたはサブプロフィールを比較および識別することを可能にする。各リボノミックパターンにおいて存在するRNAによって同定される遺伝子は、特定の細胞周期、分化段階、アポトーシスもしくはストレス誘導、ウイルス感染、または癌と関連付けられ得る、異なるサブセットとを形成する。
【0043】
cDNAを使用して、mRNP複合体の成分に特異的なリガンド(1つまたは複数)で区切られたmRNP複合体を同定し得る。例えば、cDNAマイクロアレイ格子を使用して、ひとまとめに、mRNAサブセットを同定し得る。マクロアレイは、正確に整列された格子であり、ここにおいて、各標的核酸(例えば、遺伝子)は、注意深くスポットされたcDNAのマトリクスに位置を有する。Gerholdら(前出)、Dugganら(前出)、およびBrownら(前出)を参照のこと。あるいは、ゲノムマイクロアレイ(例えば、標的核酸がイントロンおよびエキソンを含み得るマイクロアレイ)を使用し得る。従って、マイクロアレイにおいて試験される各遺伝子または標的核酸は、位置づけられ得る正確な所在(address)を有し、そしてその結合が定量され得る。ナイロンまたはニトロセルロース上におけるシリコンチップまたはcDNAブロットに基づくものの形態のマイクロアレイは市販されている。ガラススライドもまた、相補的RNA配列の検出のために、オリゴヌクレオチドまたはDNAでカスタマイズされ得る。これらのすべての場合において、ハイブリダイゼーションプラットフォームは、結合および洗浄のストリンジェンシーに基づいて、サンプル中のmRNAの同定を可能にする。これは、「ハイブリダイゼーションによる配列決定」と言及されている。マイクロアレイ技術は、分析の一方法であるが、これは、mRNAサブセット中のmRNAを同定および/または配列決定するための1つの方法にすぎない。代替的なアプローチとしては、ディファレンシャルディスプレイ、ファージディスプレイ/分析、SAGE、または単純に、mRNA調製物からのcDNAライブラリーの調製およびこのライブラリーのすべてのメンバーの配列決定が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
当該分野において周知でありかつ一般的に利用可能なDNA配列決定方法を使用して、本発明の任意の実施形態を実施し得る。この方法は、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、SEQUENASE(登録商標)(US Biochemical Corp,Cleveland,Ohio)、Taqポリメラーゼ(Perkin Elmer),熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham,Chicago,lll),またはポリメラーゼとプルーフリーディングエキソヌクレアーゼ(例えば、Gibco/BRL(Gaithersburg,Md.)によって販売されるELONGASE Amplification Systemにおいて見られるもの)との組み合わせのような酵素を使用し得る。好ましくは、このプロセスは、Hamilton Micro Lab 2200(Hamilton,Reno,Nev.),Peltier Thermal Cycler(PTC200;MJ Research,Watertown,Mass.)およびABI Catalystならびに373および377 DNA配列決定装置(Perkin Elmer)のような機器を用いて自動化される。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明に従って単離されたmRNAおよび/またはこのmRNAから得られたcDNAの増幅は、核酸の同定の間に実施されず、そして本発明によって必要も要求もされない。しかし、当業者は、好みにより、便宜のために同定についての被験体である核酸(例えば、マイクロアレイ分析および/または配列決定を介して同定された核酸)を増幅するため、および/または特定の市販のマイクロアレイまたはマイクロアレイ分析システムの仕様書/説明書に従うために選択し得る。従って、所望される場合、核酸は、当該分野において周知である多数の公知の任意の核酸増幅方法(例えば、PCR,RT−PCR,QC−PCR,SDAなど)に従って増幅され得る。
【0046】
本発明の方法は、実施者および本発明を実施する目的の必要に応じて、いくつかの様式で実施され得る。例えば、1つの実施形態では、目的の細胞型に固有のmRNA−結合タンパク質複合体を同定する。このような実施形態の例では、mRNP複合体に特異的な抗体を使用して、この複合体をその会合のmRNAで免疫沈降し得る。次いで、RNAを同定して、その細胞型のリボノミック発現プロフィールを形成し得るか、あるいは(例として)薬物スクリーニングのために単離し得る。転写後調節についてのmRNA候補を、細胞周期または発達事象の間のmRNA安定性における変化について、サブセットとしてひとまとめに分析し得る。特定の実施形態では、この方法は、発達または細胞周期の変化を受けている細胞から核を単離する工程、公知技術に従って核流出アッセイを実施して転写したmRNAを得る工程、次いで、cDNAマイクロアレイを使用して、同一細胞中の全体的なmRNAレベルと転写したmRNAとを比較する工程によって実施され得る。従って、これらの方法は、ひとまとめに、定常状態のmRNAレベルに対する転写後効果から転写効果を識別する能力を提供する。
【0047】
別の実施形態では、培養物中の細胞を、RNA−結合タンパク質(RBP)または目的の細胞型のみにおける特定のmRNAと会合するRNA会合タンパク質(RAP)を発現させるように形質転換する。RBPまたはRAPをコードするDNAは、組換えベクター(例えば、プラスミド、ウイルスベクター)によって保持され得、そして公知の手段によって細胞に形質転換され得、その後、RBPまたはRAPは、細胞において発現される。任意のRBPまたはRAPが、本明細書中にさらに記載されるように、使用され得る。タンパク質は、そのネイティブな形態であり得るか、またはタンパク質は、細胞からの容易な回収のためにタグ化(例えば、エピトープタグ化)され得る。RBPまたはRAPと結合するかまたは会合する複数のRNA標的のインビボでの検出は、必要に応じて、アクセス可能なエピトープを使用することによって実施され得るが、好ましくは、タグを伴わずに実施される。RBPまたはRAPにおけるエピトープが、アクセス不能または不明である場合、異所的に発現された組換えタンパク質におけるエピトープタグが使用され得る。形質転換された細胞は、他の細胞型と混合され得るか、または動物もしくはヒト被験体中に移植され得る。タンパク質に特異的なリガンド(例えば、抗体)を使用して、形質転換細胞を含む組織の抽出物から、そのタンパク質を、その会合したメッセンジャーRNAにより免疫沈降し得る。次いで、mRNA複合体およびその会合RNAは、その細胞型の発現プロフィールを形成するために同定され得るか、さもなくば分析される(例えば、薬物開発のため)。
【0048】
なお別の実施形態では、動物における特定の細胞型を、1以上の細胞型特異的遺伝子プロモーターで操作して、目的の細胞型においてRBPまたはRAPを発現させる。上述のように、遺伝子プロモーターおよびRBPまたはRAPは、1以上のベクター上に保持され得、そして細胞に形質転換され得、この細胞において、RBPまたはRAPが発現される。1つの実施形態では、このタンパク質に特異的なリガンド(例えば、抗体)を使用して、目的の細胞型を含む組織の抽出物から、このタンパク質を、その付着または会合メッセンジャーRNAで免疫沈降し得る。次いで、RNAを同定して、その細胞型の発現プロフィールを形成するか、または例えば、薬物開発のために単離する。
【0049】
本発明の実施において有用なRNA結合タンパク質(RBP)およびRNA会合タンパク質(RAP)は当該分野において公知であるか、あるいは、本明細書中に記載の方法によって同定および発見され得る。RNA結合タンパク質は、現在では、細胞の種々の調節および発達プロセス(例えば、RNAプロセシングおよび区画化、RNA安定化、mRNA翻訳ならびにウイルス遺伝子発現)の制御に関与していると考えられている。RNA結合タンパク質としては、ポリA結合タンパク質(「RABP」、これは、総mRNA集団とは量的に異なる総mRNA集団のサブセットを生じる)および他の一般的なRNA結合タンパク質、ならびに特定の細胞型においてわずか1つかまたは少数のメッセンジャーRNAに付着したRNA結合タンパク質が挙げられる。他の有用なタンパク質は、RNAおよびRNA結合タンパク質と反応性の自己抗体である。
【0050】
有用なRNA結合タンパク質の例としては、Drosophila ELAV RNA−結合タンパク質の4つのELAV/Hu哺乳動物ホモログ(Good(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92,4557−4561;AnticおよびKeene,前出)が挙げられる。HuA(HuR)は、偏在的に発現されるが、HuB,HuCおよびHuD(および、それらの個々の選択的にスプライシングされたアイソフォーム)は、ニューロン組織において優勢に見出されるが、これはまたいくつかの小細胞癌腫、神経芽腫および髄芽腫において腫瘍細胞特異的抗原として発現され得る(Keene(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,5−7において概説される)。すべてのHuタンパク質が、3つのRNA認識モチーフ(RRM)を含み、これはAREに対するその結合特異性を付与する(AnticおよびKeene,前出;Kenanら(1991)Trends Biochem.Sci.16,214−220;BurdおよびDreyfuss(1994)Science 265,615−621)。Huタンパク質によるARE結合の証拠は、組換えHuBによってスクリーニングされた無作為化コンビナトリアルRNAライブラリーからのAU富化結合コンセンサス配列の同定から始まった(Levineら(1993)Mol.Cell Biol.13,3494−3504;Gaoら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,11207−11211)。これらのおよび他の研究によって、Huタンパク質が、インビトロにおいて、いくつかのARE含有ERG mRNA(c−myc,c−fos,GM−CSFおよびGAP−43を含む)に結合することが実証された(Levineら(1993)Mol.Cell Biol.13,3494−3504;Gaoら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,11207−11211;Kingら(1994)J.Neurosci.14,1943−1952;Liuら(1995)Neurology 45,544−550;Maら(1996)J.Biol.Chem.271,8144−8151;Abeら(1996)Nucleic Acids Res.24,2011−2016;Chungら(1997)J.Biol.Chem.272,6593−6598;FanおよびSteitz(1998)EMBO J.17,3448−3460;Anticら(1999)Genes Dev.13,449−461)。
【0051】
ARE含有mRNAへのHuタンパク質の結合は、mRNA転写物の安定化および翻訳可能性の増加を生じ得る(Jainら(1997)Mol.Cell Biol.17,954−962;Levyら(1998)J.Biol.Chem.273,6417−6423;FanおよびSteitz(1998)EMBO J.17,3448−3460;Pengら(1998)EMBO J.17,3461−3470)。ニューロン特異的Huタンパク質は、ニューロンの分化を誘導するためのレチノイン酸(RA)処理後に、奇形癌細胞において生成される最も初期のニューロンマーカーの1つである(Anticら,前出;GaoおよびKeene(1996)J.Cell Sci.109,579−589)。
【0052】
1つの実施形態では、本発明を実施するために使用されるリガンドは、プレメッセンジャーRNAプロセシングに関与する細胞性タンパク質のRNA認識モチーフ(RRM)ファミリーから選択されるRNA結合タンパク質である。このようなタンパク質の1つの例が、U1A snRNPタンパク質である。RRMスーパーファミリーの200を超えるメンバーが、現在までに報告されており、この大半が、偏在的に発現され、そして系統発生的に保存されている(Queryら,Cell(1989)57:89−101;Kenanら,Trends Biochem.Sci.(1991)16:214−220)。大半が、ポリアデニル化mRNAまたは核内低分子リボ核酸(例えば、U1、U2など)転移RNA、5S RNAまたは7S RNAに対して結合特異性を有することが公知である。これらとしては、hnRNPタンパク質(A,B,C,D,E,F,G,H,I,K,L),RRMタンパク質CArG,DT−7,PTB,K1,K2,K3,HuD,HUC,rbp9,eIF4B,sxl,tra−2,AUBF,AUF,32KDタンパク質,ASF/SF2,U2AF,SC35,および他のhnRNPタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。RRMファミリーの組織特異的なメンバーは、さほど共通しておらず、これには、IMP,Bruno,AZP−RRMI,X16(これは、プレB細胞(pre−B cell)において発現される),Bj6(これは、パフ特異的なDrosophilaタンパク質である)およびELAV/Hu(これは、ニューロン特異的である)が挙げられる。
【0053】
本発明の実施において有用なRNA結合タンパク質およびRNA会合タンパク質としては、自己免疫患者および癌患者の血清を使用して単離されるタンパク質が挙げられる。本発明の実施において有用なRNA結合タンパク質およびRNA会合タンパク質の非包括的なリストを、表1において以下に示す。
【0054】
【表1】

新たな(すなわち、新規な、以前に知られていない)RNA結合タンパク質(RBP)およびRNA会合タンパク質の同定が、本発明の別の局面である。従って、本発明の1つの実施形態では、目的のRNA(「RNA Y」として図8に示される)は、新たなRBPまたはRAPを捕捉するための「餌(bait)」として使用される。好ましい実施形態では、RNA Yは、標準的な分子生物学的技術を使用して、最初にcDNAへと変換され、そして引き続き、本発明のリガンド(図8において、タンパク質「X」として図示されたリガンド)を結合する配列(例えば、RNA)をコードするDNAの別のフラグメント(本明細書中では、「タグ化DNA」と言及される)に対して3’末端または5’末端で連結される。換言すると、タグ化DNAは、リガンドの結合パートナーをコードする。有用なリガンドは、いくつかの実施形態では、mRNP複合体特異的抗体またはタンパク質の産生に関連していることが公知の障害(自己免疫障害および癌を含む)を有している被験体(すなわち、ヒトまたは動物被験体)の血清から(すなわち、血清を使用することによって)獲得され得る。有用な結合パートナーとしては、リガンドに対する抗体が挙げられる。
【0055】
得られたDNAキメラを、発現ベクター(例えば、プラスミド)中においてプロモーターに融合し、そして生細胞(例えば、細胞培養物中)において発現させて、RNA融合分子を生成する。代替的な実施形態では、発現ベクターを、ウイルス(好ましくは、組換えウイルス)によって、細胞中に感染させる。この培養物からの無細胞抽出物を調製し、そして固体支持体に固定されたリガンド(例えば、タンパク質X)と接触させる。インキュベーション期間の後、このリガンドおよび付着/会合したRNA融合分子、ならびにその会合RBPまたはRAPを洗浄して、残留した細胞性物質を除去する。洗浄工程後、RBPまたはRAPを、RNA−タンパク質複合体から取り出し、そして分析する(例えば、微小配列決定の標準的な方法を使用して配列決定する)。
【0056】
一旦、部分的なタンパク質配列が得られれば、対応する遺伝子は、cDNAおよびゲノム配列を含む公知のデータベースから同定され得る。好ましくは、遺伝子が単離され、タンパク質が発現され、そして抗体が、公知の技術を用いて組換えタンパク質に対して作製される。次いでこの抗体を用いて、内因性のRBPまたはRAPを回収し、そして同一性を確認する。続いて、この抗体をリボノミック(ribonomic)分析(以下の実施例を参照のこと)のために使用し、RNA Yとクラスター化している(すなわち結合している)細胞RNAのサブセットを決定し得る。さらに、RBPまたはRAPは、RNA Yによりコードされるタンパク質の翻訳を調節する能力について試験され得、そして薬物標的としてのバリデーションについて試験され得る。さらに、RNA Yとクラスター化した細胞RNAによりコードされるタンパク質は、本明細書中にさらに記載されるように、薬物標的としてのバリデーションについて試験され得る。
【0057】
したがって、mRNP複合体と特異的に結合する抗体は、本発明の1つの局面である。mRNP複合体に対する抗体は、当該分野で周知の方法を用いて作製され得る。このような抗体として、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単鎖、Fabフラグメント、およびFab発現ライブラリーにより生成されるフラグメントが挙げられ得るが、これらに限定されない。抗体およびこれらのフラグメントはまた、抗体ファージ発現提示技術(antibody phage expression display techniques)を用いて生成され得る。これは、当該分野において公知である。
【0058】
抗体の生成のために、ヒツジ、ウサギ、ラット、マウス、ヒト、およびその他を含む種々の宿主が、mRNP複合体もしくは免疫原性の特性を有するこれらの任意のフラグメントまたは構成成分の注射により免疫され得る。宿主の種に基づき、種々のアジュバンドが、免疫応答を増大させるために用いられ得る。このようなアジュバンドとして、Freund’s、無機質ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、および表面活性物質(例えば、リゾレシチン、pluronicポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油、エマルジョン、キーホールリンペットヘモシニアン、およびジニトロフェノール)が挙げられるがこれらに限定されない。ヒトにおいて使用されるアジュバンドの中では、BCG(Bacilli Calmette−Guerin)およびCorynebacterium parvumが特に好ましい。
【0059】
mRNP複合体の構成成分に対するモノクローナル抗体は、培養物中の継続的な細胞系により抗体分子の生成を提供する任意の技術を用いて調整され得る。これらとしては、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBVハイブリドーマ技術が挙げられるがこれらに限定されない(Kohler,G.ら(1975)Nature 256:495−497;Kozbor,D.ら(1985)J.Immunol.Methods 81:31−42;Cote,R.J.ら(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.80:2026−2030;Cole,S.P.ら(1984)Mol.Cell.Biol.62:109−120)。詳細には、この手順は次のようなものである:動物を、mRNP複合体もしくはこれらの免疫原性フラグメントまたは接合体を用いて免疫する。次いで、リンパ細胞(例えば、脾臓リンパ球)を、免疫された動物から獲得し、そして不死化細胞(例えば、ミエローマまたはヘテロミエローマ)と融合してハイブリッド細胞を生成する。このハイブリッド細胞をスクリーニングして、所望の抗体を産生する細胞を同定する。
【0060】
抗体はまた、文献に開示されるように、リンパ球集団におけるインビボでの産生を誘導することによるか、もしくは免疫グロブリンライブラリーまたは高い特異性の結合剤のパネルをスクリーニングすることにより生成され得る(Orlandi,R.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.86,3833−3837(1989);Winter,G.ら,(1991)Nature 349,293−299(1991))。
【0061】
mRNP複合体に対する特異的な結合部位を含む抗体フラグメントもまた作製され得る。例えば、このようなフラグメントとして、抗体分子のペプシン消化により生成され得るF(ab’)フラグメントおよびF(ab’)フラグメントのジスルフィド架橋の還元により生成され得るFabフラグメントが挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、Fab発現ライブラリーが構築されて、所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速で容易な同定が可能にされ得る(Huse,W.D.ら(1989)Science 254:1275−1281)。
【0062】
種々の免疫アッセイが、mRNPに対する所望の特異性を有する抗体を同定するためのスクリーニングに用いられ得る。確立された特異性を有するポリクローナル抗体かまたはモノクローナル抗体のいずれかを用いる競合結合アッセイまたは免疫放射線アッセイのための多くのプロトコルは、当該分野で周知である。代表的にこのような免疫アッセイは、mRNP複合体の構成成分とそれに特異的な抗体との間の複合体形成の測定に関する。2つの非干渉性のエピトープに反応するモノクローナル抗体を用いる2つの部位の、モノクローナルベースの免疫アッセイは好ましいが、競合結合アッセイもまた用いられ得る。
【0063】
キット、もしくは種々のmRNP複合体に対する抗体またはこれらの構成成分(例えば、RNA結合タンパク質に対する抗体)がその中に固定されているカラムを含むデバイス(例えば、流体デバイス)は、本発明の別の局面である。この抗体は、公知の技術(例えば、沈降)に基づき、診断アッセイに適切な個体支持体(例えば、ラテックスまたはポリスチレンのような物質から作られたビーズ、プレート、スライド、またはウェル)に結合され得る。同様に抗体は、公知の技術に基づき、検出可能な基(例えば、放射性標識(例えば、35S、125I、131I)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)および蛍光標識(例えば、フルオレセイン)に結合され得る。好ましくは本発明のデバイスは、mRNA結合タンパク質に対する抗体とそのタンパク質自体との間の結合を検出する特異性を有する少なくとも1つの試薬を含む。この試薬はまた、補助的な試薬(例えば、緩衝試薬およびタンパク質安定化試薬(例えば、多糖類)など)を含み得る。このデバイスはさらに、必要な場合は、試験におけるバックグラウンドの干渉を減少させる試薬、制御する試薬、試験を実施するための装置などを含み得る。このデバイスは、試験を実施するための印刷された説明書をともに、単一の容器中に、代表的には多くのエレメントを含み、任意の適切な様式でパッケージされ得る。
【0064】
本発明の特定の実施形態は、細胞または組織サンプルのリボノミックプロフィールに対する化合物の効果に基づき、治療、診断、または薬学的使用のための試験化合物をスクリーニングする方法に関する。このような実施形態の例として、細胞が試験化合物と接触しない(すなわち、この細胞は処理されない)条件下で細胞を増殖させる。次いでこの細胞型のリボノミックプロフィールが生成され、そしてmRNAサブセットが同定される。次いで未処理細胞のリボノミックプロフィールを、試験化合物で処理された同じ細胞型のリボノミックプロフィールと比較する。2つのプロフィールの間の任意の相違は、試験化合物が、細胞の特定の遺伝子の発現に対して(直接的にかまたは間接的に)効果を有することの指標であり、そして試験化合物が治療または診断使用のための候補であることの指標であり得る。あるいは、遺伝子発現をもたらす化合物の能力は、その遺伝子をさらなる試験の標的として同定し得る。プロフィールにおける「相違」とは、2つのプロフィールの間の発現における任意の改変または変化をいう。「改変」とは、発現における増加、発現における減少、存在する発現のタイプまたは種類における変化、完全な発現の停止(すなわち、発現の欠失)、または発現の誘因について言及し得る。用いられ得る適切な化合物として、タンパク質、核酸、低分子、ホルモン、抗体、ペプチド、抗原、サイトカイン、成長因子、(化学療法に関する)薬理学的薬剤、発癌性物質、または他の細胞(すなわち、細胞−細胞の接触)、が挙げられるがこれらに限定されない。細胞はまた、正常な遺伝子発現に対する環境的または生理的な因子(例えば、放射線、活動電位、など)の効果についてスクリーニングされ得る。
【0065】
本発明の別の実施形態において、mRNP構成成分自体、その触媒性もしくは免疫原性フラグメントまたはそれらのオリゴペプチドは、種々の薬物スクリーニング技術のいずれかによって、化合物のライブラリーをスクリーニングするために用いられ得る。このようなスクリーニングに用いられるフラグメントは、溶液中で遊離しているか、個体支持体に添加されているか、細胞表面に保有されているか、または細胞内に位置し得る。mRNP複合体と試験される化合物との間の結合が測定され得る。
【0066】
使用され得る薬物スクリーニングのための別の技術は、目的のタンパク質に対する適切な結合親和性を有する化合物の高スループットのスクリーニングを提供する。これについては、公開されたPCT出願WO84/03564に記載される。1つの実施形態において、mRNP複合体に適用されるように、複数の異なる試験化合物が個体基質(例えば、プラスチックピンまたは他のいくつかの表面)上で合成されるか、または個体基質に添付される。この試験化合物は、mRNP複合体もしくはこれらのフラグメントおよび/または構成成分と反応し、そして洗浄される。次いで、結合したmRNP複合体またはこれらの構成成分は、当該分野で周知の方法で検出される。
【0067】
要約すると、本発明は、細胞のリボノミックプロフィールを決定し、そして同一のものにおける変化を検出するための強力なインビボでの方法を提供する。本発明は多くの用途を有する。腫瘍の発達、成長の状態または発達の状態、生物システムの摂動(例えば、疾患)、薬物または毒素処置、および細胞加齢または死の状態のモニタリングが挙げられるが、これらに限定されない。本発明はまた、生物(例えば、植物、真菌、細菌、ウイルス、原生動物、または動物種)間のリボノミックプロフィールの識別における使用を見出す。
【0068】
本発明は、転写および遺伝子発現に対する翻訳後の寄与とを識別し、RNP複合体を通じたRNAの動き(RNP複合体におけるRNAとタンパク質の組み合わせの相互作用を含む)を追跡するために用いられ得る。したがって、本発明は、RNAの安定性の調節を研究するために用いられ得る。本発明は、活性ポリゾームへの漸増mRNAを追跡することにより、mRNAの一連の、秩序だてられた発現を測定することにより、および複数のmRNAの同時の、協調的な発現を測定することにより、単一または複数の種でのmRNAの翻訳の活性を研究するために用いられ得る。本発明はまた、他の細胞成分と接触したときのRNA自体のトランス作用性機能を決定するために用いられ得る。これらおよび多くの他の用途は、本発明の明細書および請求の範囲の研究により、当業者に明らかにされる。
【0069】
次の実施例は、本発明を説明するために示されるのであって、これらの限定と解釈されるべきではない。
【実施例】
【0070】
(実施例1)
(マルチプローブシステムにおけるRNase保護:物質および方法)
g10エピトープタグを用いるHuB(Hel−N1)の免疫沈降は、mRNAの同時免疫沈降を引き起こし、そしてこのmRNAをRT−PCRにより増殖し、そして配列決定してNF−Mタンパク質をコードすることを見出したことが以前に報告されている(Antic,1999,前出)。この実施例において、同じアプローチを拡張し、マルチプローブRNase保護アッセイに用いて、異なるmRNA結合タンパク質を含む種々の内因性mRNAタンパク質(mRNP)複合体の免疫沈降を迅速に最適化する。このマルチプローブシステムにおいて、mRNPペレット由来の多くのmRNAは、ポリアクリルアミドゲルの単一のレーンでアッセイされ得る。
【0071】
(細胞培養および形質転換)
マウスP19胚癌細胞をATCCから獲得し、そしてフェノールレッド(Gibco−BRL 41061−029)を含まない、7.5%子ウシ血清、2.5%胎仔血清(Hyclone)および100Uペニシリン/ストレプトマイシンを補充したα−MEMを用いる単層培養で維持した。細胞を組織培養フラスコまたはプレート(0.1%ゼラチン(Sigma Chemicals)でプレコートし、使用前に除去した)で培養した。単層細胞培養物を37℃、5%COで維持した。
【0072】
P19細胞を、SV40プロモーター駆動のpAlpha2−gene10−HuBプラスミドを用いて安定にトランスフェクトした。このプラスミドは、Hel−N2と命名された、gene10タグ付加された神経特異的HuBタンパク質を異所的に発現する(Gaoら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91,11207−11211)。トランスフェクトしたプラスミドを、0.2mg/ml G418(Sigma Chemicals)を加えた培地を補充することにより維持した。これは、Hel−N1のRNA認識モチーフ(RRM)2および3と連結するヒンジ領域から13のアミノ酸を欠損しているが、RRMは同一であり、そしてインビトロでの結合実験は、Hel−N1およびHel−N2のAUリッチのRNA結合特性における差異を示さなかった(Gaoら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,11207−11211;Abeら(1996)Nucleic Acids Res.24,2011−2016;公開していない結果)。
【0073】
(抗体)
モノクローナル抗体−gene10(g10)抗体を、以前に記載されたように生成した(Gaoら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,11207−11211;Anticら(1999)Genes Dev.13,449−461)。HuAと反応性のポリクローナル血清を、以前に記載されたように生成した(Levineら(1993)Mol.Cell.Biol.13,3494−3504;Atasoyら(1998)J.Cell Sci.111,3145−3156)。ポリA結合タンパク質(PABP)に反応性の抗体を、親切にもMcGill University(カナダ)のDr.N.Sonenbergに提供していだだいた。
【0074】
(無細胞抽出物の調製)
細胞を、ラバースクレイパーを用いて組織培養プレートから回収し、そして冷PBSで洗浄した。この細胞を、およそ2ペレット容量のポリゾーム溶解緩衝液(PLB;100mM KCl、5mM MgCl、10mM HEPES(pH7.0)、および0.5% NP−40、1mM DTT、100U/mL PNase OUT(GIBCO−BRL)、0.2%バナジルリボヌクレオシド複合体(VRC)(GIBCO−BRL)、0.2mM PMSF、1mg/mL ペプスタチンA、5mg/mL ベスタチン、および20mg/mL ロイペプチン(使用時に新鮮なものを添加した)を含む)に懸濁した。次いで、溶解した細胞を凍結して、−100℃で保存した。使用時に、細胞溶解物を解凍し、そして卓上微量遠心管で12,000rpm、4℃で10分間遠心分離した。上清を回収し、そして卓上微量遠心管で16,000rpm、4℃で5分間、二度遠心分離してから氷上で保存するかまたは−100℃で凍結させた。このmRNP細胞溶解物は、およそ30〜50mg/mlの総タンパク質を含んでいた。
【0075】
(免疫沈降)
免疫沈降のために、プロテインAセファロースビーズ(Sigma Biochemicals)を、5%ウシ血清アルブミンを補充したNT2緩衝液(50mM Tris(pH7.4)、150mM NaCl、1mM MgClおよび0.05% NP−40)中で1.5v/vに膨張させた。1.5v/vの予め膨張させたプロテインAビーズのスラリーのアリコート300μLを、免疫沈降反応ごとに用い、そして過剰な免疫沈降抗体(代表的には5〜20μL、試薬に基く)と4℃で一晩インキュベートした。抗体でコーティングされたプロテインAビーズを、氷冷NT2緩衝液で5回洗浄し、そして100U/mL RNase OUT、0.2% VRC、1mM DTT、および20mM EDTAを補充したNT2緩衝液900μLに再懸濁した。このビーズを穏やかにボルテックスし、そして100μLのmRNP細胞溶解物を加えた。このビーズを直ちに遠心分離し、そして100μLの上清を回収し、総mRNP細胞溶解物とした(本質的には、mRNP免疫沈降に用いられた溶解物の量の1/10である)。免疫沈降反応および総mRNP溶解物を表わすために回収されたアリコートを、0から2時間までの間、室温でタンブルした。インキュベーション後、プロテインAビーズを、氷冷NT2緩衝液で4回洗浄した後に、1M 尿素を補充したNT2緩衝液で2回洗浄した。洗浄されたビーズを、0.1%SDSおよび30μg プロテイナーゼKを補充した100μLのNT2緩衝液に再懸濁し、そして55℃の水槽で30分間インキュベートした。プロテイナーゼK消化後、免疫沈降したRNAを、2回のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出およびエタノール沈殿で単離した。
【0076】
(RNase保護アッセイ)
mRNP複合体を細胞溶解物およびRNA結合抽出物から免疫沈降した後、PharMingen Riboquantアッセイ(San Diego,CA)を用い、製造者の説明書に従って、RNase保護によりアッセイした(45014K)。詳細には、抽出されたRNAを、L32、GAPDH、種々のマウスMyc関連タンパク質(テンプレートセット45356P)およびサイクリン(テンプレートセット45620P)をコードするmRNAに特異的なテンプレートから生成された過剰な32P−標識リボプローブとハイブリダイズさせた。非二重鎖RNAを、RNaseA+T1で処理することにより消化した。生じたフラグメントを、変性ポリアクリルアミド/尿素ゲル電気泳動により分離した。各mRNA種に対するリボプローブの長さは固有の大きさなので、サンプル中のすべての検出可能なmRNA種を単一のゲルレーンで分離し得た。保護されたリボプローブフラグメントを、24時間の露光後にホスホイメージングスクリーン(Molecular Dynamics)で可視化した。ホスホイメージを、Molecular Dynamics STORM860 Systemを用いて100ミクロンの解像度でスキャンし、Molecular Dynamics ImageQuant Software(V1.1)を用いて分析した。
【0077】
(実施例2)
(多重プローブ系におけるRNase保護:実験結果)
図3は、g10−HuB cDNAで安定してトランスフェクトしたマウスP19細胞の抽出物由来のHuBとポリA結合タンパク質(PABP)−mRNP複合体との免疫沈降を示す。ポリクローナルの予め出血させたウサギ血清を用いて(図3Aおよび3B、レーン3)か、またはこのアッセイで試験された多数の他のウサギ、マウス、および正常なヒト血清を用いて(データは示されていない)、免疫沈降したペレットにおいて、mRNAは検出されなかった。HuB mRNP複合体と会合したmRNAのプロフィールは、n−myc、1−myc、b−myc、maxおよびcylins A2、B1、C、D1、およびD2を含むが、sin3、cyclin D3、cyclin B2、L32またはGAPDH mPNAを含まない(図3Aおよび3B、レーン4)。対照的に、PABP−mRNP複合体から抽出されたmRNAのプロフィールは、総RNAのプロフィールに類似するが、濃縮したレベルのL32およびGAPDHを示し、減少したレベルのsin3 mRNAを示した(図3Aおよび3B、レーン5)。これらの細胞性RNA結合タンパク質と反応性の抗体は、mRNP複合体を免疫沈降し、そしてそれらが特異的に会合しているmRNAを回収するために使用され得ると結論付けられた。これらの結果は、細胞増殖および分化の間に転写後の遺伝子発現を調節する際のHuタンパク質の仮定の役割と一貫している(Jainら(1997)Mol.Cell.Biol.17,954−962;Levyら、(1998)J.Biol.Chem.273,6417−6423;FnaおよびSteitz(1998)EMBO J.17,3448−3460;Pengら、(1998)EMBO J.17,3461−3470;AnticおよびKeene(1997)Am.J.Hum.Genet.61,273−278;Levineら、(1993)Mol.Cell Biol.13,3494−3504;Gaoら、(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,11207−11211;Kingら(1994)J.Neurosci.14,1943−1952;Liuら、(1995)Nurology 45,544−550;Maら、(1996)J.Biol.Chem.271、8144−8151;Abeら、(1996)Nucl.Acids Res.24,2011−2016;Anticら、(1999)Genes Dev.13,449−461;Chungら、(1997)J.Biol.Chem.272,6593−6598;Akamatsuら、(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,9884−9890;Sachsら、(1997)Cell 89,831−838;Aranda−Abreuら、(1999)J.Neurosci.19,6907−6917)。
【0078】
(実施例3)
(cDNAアレイを使用するRNA結合タンパク質と一緒に会合したmRNAサブセットの同定:材料および方法)
内因性mRNP複合体で会合したmRNAを同定するための能力をさらに拡大するために、この実施例は、増幅または反復性選択なしでmRNAサブセットを検出するための高度に特異的および感受性の方法としてのcDNAアレイフィルターの使用を記載する(図4)。
【0079】
抗体。モノクローナル抗遺伝子10(g10)抗体を以前に記載されるように産生した(例えば、D.Tsaiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,8864−8868(1992);Gaoら、(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,11207−11211;Anticら、(1999)Genes Dev.13,449−461)。Huタンパク質と反応性のポリクローナル血清を以前に記載されるように産生した(Levineら、(1993)Mol.Cell.Biol.13,3494−3504;Atasoyら、(1998)J.Cell Sci.111,3145−3156)。5’キャップ結合タンパク質(elF−4E)に対する抗体をTransduction Laboratiries(San Diego,CA)から獲得した。ポリA結合タンパク質(PABP)と反応性の抗体は、McGill University(カナダ)のN.Sonenberg博士から親切に提供して下さった。
【0080】
細胞培養物および分化。トランスジェニック細胞の調製を実施例1に記載のようであった。レチノイン酸(RA)での化学処理を使用して、GaoおよびKeene(1996)において記載されるように、0.5μM RA(Sigma Chemicals,St.Louis,MO,USA,Number R2625)とともに、60mmのペトリ皿に静置して(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA,USA、Number 8−757−13A)、5×10P19細胞を処理することによって、ニューロンの分化を誘導した。2日後、凝集塊を形成した細胞の25%を除去し、新しいペトリ皿に配置し、そして、新鮮な培地およびRAで補充した。さらに2日後、細胞凝集をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で1度洗浄し、そしてトリプシン処理した。次いで、細胞を2つの100mmのゼラチンコート組織培養プレートに配置した。さらに4日後、細胞を回収した。RA処理したHuB(Hel−N2)で安定してトランスフェクトしたP19細胞は、神経突起を成長し、そして、特徴的なニューロンマーカーおよび形態を示したが、終末分化せず、そして、有糸分裂インヒビターを有する死滅に感受性のままであった。無細胞抽出物および免疫沈降を実施例1に記載のようであった。
【0081】
cDNAアレイ分析。 cDNAアレイ分析を、ナイロン膜上に並んで2連にスポットした全597cDNAセグメントを含むAtlasTM Mouse Arrays(Clontech,Inc.,Palo Alto,CA)を使用して行なった。cDNAアレイのプロービングをClontech AtlasTM cDNA Expression Arrays User Manual(PT3140−1)に記載されるように行なった。手短に言うと、HuBで安定してトランスフェクトしたP19胚性癌細胞からRNAを抽出し、そして、逆転写プローブを生成するために使用した。アレイ上に示された遺伝子に相補的な、プールしたセットのプライマーを、逆転写プローブ合成のために使用し、これを、32Pα−dATPで放射線標識した。放射線標識プローブをCHROMA SPINTM−200カラム(Clontech,Inc.,Palo Alto,CA)を通過させることによって精製し、ExpressHybTMハイブリダイゼーション溶液(Chontech、Inc.、Palo Alto,CA)を使用してアレイ膜と一晩インキュベートした。ハイブリダイゼーション後、アレイ膜を洗浄し、そして、ホスホイメージング(phosphorimaging)スクリーン(Molecular Dynamics,Sunnyvale,California,USA)上で可視化した。
【0082】
ホスホイメージをMolecular Dynamics STORM 860 Systemを使用して100ミクロンの解像度で走査し、そして、ファイルとして保管した。イメージをAtlasImageTM 1.0および1.01ソフトウェア(Clontech,Inc.Palo Alto,CA)を使用して分析した。任意の所定の遺伝子についてのシグナルは、2つの2連のcDNAスポットからシグナルの平均として計算した。AtlasImageTM 1.0 ソフトウェアマニュアル(Clontech,Inc.,Palo Alto,CA)において記載されるように、デフォールト外部バックグラウンド設定を、バックグラウンドベースのシグナル閾値と組み合わせて使用して、遺伝子シグナルの有意性を決定した。遺伝子についてのシグナルは、その調節された強度(全シグナル−バックグラウンド)がそのときのバックグラウンドシグナルの2倍を超える場合、バックグラウンドを有意に超えると考えられた。多重cDNAアレイイメージの比較を、アレイ(全体的な正規化(global normalization))上のすべての遺伝子シグナルの平均を使用して行ない、アレイ間のシグナル強度を正規化した。レチノイン酸に応答するHuB mRNP複合体のmRNAプロフィールにおける変化は、それらが4倍を超える場合(遺伝子発現変化の有意性を確立するために代表的に使用されるストリンジェンシーの2倍)、有意であると考えられる。cDNAアレイ画像およびオーバーレイをAdobe Photoshop(登録商標)5.0.2(San Jose,California,USA)を使用して調製した。
【0083】
(実施例4)
(cDNAアレイを使用するRNA結合タンパク質と一緒に会合したmRNAサブセットの同定:実験結果)
結果。 HubでトランスフェクトしたP19細胞(トランスクリプトーム(transcriptome))の全体の遺伝子発現プロフィールを評価した後、HuBおよびPABPmRNA複合体、ならびにelf−4E mRNP複合体を別々に免疫沈降し、そして、捕獲されたmRNAをcDNAアレイ上で同定した。これらのアレイの最初のアライメントをアレイ膜の底の6つのDNAスポットにハイブリダイズする放射線標識したλファージマーカーとのハイブリダイゼーション反応を加えることによって容易にした。一旦アライメントレジスタが確立されると、引き続くブロットは、配向についての与えられたλマーカーの使用を必要としない。
【0084】
ウサギの予め出血させた血清での免疫沈降から作製されたアレイを、アレイの底部で観察された与えられたλマーカーを除き、基本的に盲検であった(図5A)。免疫沈降したHuB mRNPおよびelf−4E mRNP複合体は各々、総細胞RNAにおいて検出される10%をわずかに超えるmRNAを含んだが、お互いにかなり異なっていた(図5B、5C、および5E)。
【0085】
HuBおよびelF−4Eのように、PABPは、mRNA安定化および翻訳を容易にすることに関与する(Ross(1995)Microbiol.Rev.59,423−450;Ross(1996)Trends Genet.12,171−175;Wickensら、(1996)Translational control,Hershey編、J.W.B,Mthews,M.B.&Sonenberg、N.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,411−450頁;Sachsら、(1997)Cell 89,831−838)。驚くことではないが、PABP mRNPは、HuBまたはelF−4E mRNPについて観察されるよりも多数のmRNAを含んでいた(図5D)。予想されるように、これらの細胞由来のPABP mRNP中のmRNAのプロフィールは、トランスクリプトームのプロフィールと密接に類似していた。しかし、HuBおよびelF−4E mRNPにおいて観察されるように、いくつかのmRNAは、総RNAと比較してPABP−mRNPにおいて濃縮または枯渇されている(図5Dおよび5E)。これらのmRNP複合体において検出されるmRNAのプロフィールおよび相対量は、高度に再現可能であるが、ホスホイメージ上で検出可能なmRNA種の絶対数は、プローブの特定の活性における差異の結果として時折変化する。
【0086】
総RNAを使用することに由来するcDNAアレイは、mRNP免疫沈降について使用される溶解物の量の10分の1を使用して作製されるので、総RNAにおいて観察されるmRNP複合体において検出された各mRNAの絶対量の比較は行なわれない。より正確な結果が、各マイクロアレイ内のお互いに対して各mRNA種の相対量を比較することによって獲得された。例えば、β−アクチンおよびリボソーマルタンパク質S29(図5、それぞれ、矢印aおよびb)をコードするmRNAの相対量は総細胞性RNAにおよそ等しいが、mRNP複合体の各々の間で劇的に変化する。この特徴の多数の他の例は、図4において容易に明らかである。これらの発見は、HuB、elF−4E、およびPABP mRNP複合体において検出されるmRNAプロフィールが、お互いに別個でありトランスクリプトームのそれとは、離れていることを示す。
【0087】
(実施例5)
(レチノイン酸(RA)に応答するmRNP複合体における変更)
Hubは主に、ニューロンの分化を調節する際に役割を果たすと考えられているニューロンタンパク質であり、HuB mRNP複合体において検出されるmRNA集団がRA(ニューロンの分化のインデューサー)に応答して変化するか否かを調査するために研究が行なわれた。HuBでトランスフェクトしたP19細胞をRAで処理し、ニューロン分化の開始を誘導し、HuB mRNP複合体を免疫沈降し、次いで、会合したmRNAをcDNAアレイ上に同定した。RA処理の前および後にHuB mRNPから抽出されたmRNAプロフィールの比較は、18のmRNAが、RA処理されたHuB mRNPにおいて排他的に存在するか、または非常に濃縮されている(4倍以上)かのいずれかであるであることを明らかにする(図6A、6B、および6C、赤い棒)。さらに、3つのmRNA(T−リンパ球活性化タンパク質、DNA結合タンパク質SATB1、およびHSP84)は、RA処理に応答して、4倍量以上減少する(図6C、青い棒)。HuB mRNA複合体のmRNAプロフィールにおいて観察される変化が独特であるか否かを決定するために、遍在的に発現されたELAVファミリーメンバーHuA(HuR)を、これらの処理細胞から免疫沈降させた。RAでの処理後にHuA mRNPプロフィールに対する少数の変化が存在するが、それらは、HuBと比較して大して重要でない。
【0088】
RA処理に応答するHuB−会合mRNAプロフィールにおける変化は、単に総細胞性mRNAにおける変化を反映するのではない(図6G、6H、および6I)。HuB mRNP複合体において検出された差次的に濃縮されたかまたは枯渇したmRNAの多数のサンプルが、図6Cおよび6Iを比較して明らかである。比較の目的のために、これは、代表的なスポットの再アライメントおよび拡大によって、図7において記載される。例えば、IGF−2 mRNAは、RA処理細胞由来の総RNAおよびHuB mRNP複合体のみで検出可能である(図7)。しかし、他のHuB mRNP結合mRNA(例えば、インテグリンβ、サイクリンD2、およびHsp84)は、RA処理後、総RNAプロフィールにおけるそれらの変化に不釣合いな量で、増加するかまたは減少する(図7)。総RNAおよびHuB mRNPのmRNAプロフィールにおける変化間の不同性は、RA処理に応答するmRNP複合体を通って動的に流動するmRNAの区画化における変化からおそらく生じる。これらのmRNP複合体に由来するmRNAプロフィールが、動的であり、そして成長の状態、ならびに、レチノイン酸のような生物学的インデューサーに応答する細胞性環境における変化を反映し得る。
【0089】
(実施例6)
(RNA−結合タンパク質についての優先度インビボ標的配列優先度)
GenBankおよびESTデータベースを使用して、RA処理したHuB−mRNP複合体において濃縮されたmRNAから、3’UTR配列を同定した(表2)。
【0090】
(表2)
【0091】
【表2】

その3’UTR配列が利用可能なmRNAの多数は、インビトロでHuタンパク質に結合することが以前に見出されているような同様のウリジレートリッチ(uridylate−rich)モチーフを含む(Levineら、(1993)Mol.Cell Biol.13,3494−3504;Gaoら、(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,11207−11211:Kingら、(1994)J.Neurosci.14,1943−1952;Liuら、(1995)Neurology 45,544−550;Maら、(1997)Nucleic Acids Res.25,3564−3569;Fanら、(1997)Genes Dev.11,2557−2568)。さらに、これらのmRNAの大部分は、ニューロン組織において発現されるか、またはRAで誘導したニューロン分化後に上方制御されることが公知である(Beckら、(1995)Neuron 14,717−730;Colon and Rossant(1992)Development 116,357−368;Grahamら、(1991)Development 112、255−264;Hirschら、(1994)Dev.Dyn.201、108−120;Huntら、(1991)Development 112,43−50;Janssen−Timmenら、(1989)Gene 80、325−336;Kondoら、(1992)Nucleic Acids Res.20,5729−5735;Konishiら、(1994)Brain Res.649,53−61;Neumanら、(1993)Eur.J.Neurosci.5,311−318;Okudaら、(1995)Genomics 29,623−630;Soosaarら、(1994)Bran Res.Mol.Brain Res.25,176−180;Takechiら、(1992)Eur.J.Biochem.206,323−329;Telfordら、(1990)Mol.Reprod.Dev.27,81−92;Zwartkriusら、(1993)Exp.Cell Res.205、422−425;Tomaselliら、(1988)Neuron 1、33−43;Redies(1995)Exp.Cell Res.220,243−256;Rossら(1996)J.Neurosci.16.210−219)。表3に示される配列アライメントは、HuBについてのコンセンサスRNA結合配列を誘導するためにインビトロ選択を使用するLevineら、((1993)Mol.Cell Biol.13,2494−3504)およびGaoら、((1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91、11207−11211)の以前の結果と一致している。本明細書中に記載の方法を使用して、他のRNA結合配列についてのインビボ標的配列優先度を区別することが可能である。
【0092】
(実施例7)
(cDNAアレイ分析を使用する、内因性mRNP複合体を精製するためのそして一緒に会合したmRNAを同定するためのmRNA結合タンパク質の使用)
ハイスループット方法を使用してHubタンパク質のmRNA標的を同定するための初期の試みは、RT−PCR増幅およびインビトロ反復性選択およびニューロン組織由来の同定されたいくつかの構造的に関連したERG mRNAを必要とする(Gaoら、(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,11207−11211;AndrewsおよびKeene(1999)Methods Mol.Biol.118,233−244)。これらのmRNAの大部分は、それらの3’UTRにARE様配列を含み、これは、ERG mRNAに特徴的である(Keene(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,5−7;Levineら、(1993)Mol.Cell Biol.13,3494−3504;Gaoら、(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91、11207−11211;Kingら、(1994)J.Neurosci.14,1943−1952)。Huタンパク質は、ERG mRNAを結合し得、そして、それらの安定性および/または翻訳活性化に影響し得ることが実証されている(Jainら、(1997)Mol.Cell Biol.17、854−962;Levyら、(1998)J.Biol.Chem.273,6417−6423;FanおよびSteitz(1998)EMBO J.17、3448−3460;Pengら、(1998)EMBO J.17,3461−3470;Keene(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,5−7;Levineら、(1993)Mol.Cel Biol.13,3494−3504;Gaoら、(1994)Pro.Natl.Acad.Sci.USA 91,11207−11211;Kingら、(1994)J.Neurosci.14、1943−1952;Liuら、(1995)Neurology 45,544−550;Chungら、(1997)J.Biol.Chem.272、6593−6598;Anticら、(1999)Genes Dev.13,449−461;Maら、(1997)Nucleic Acids Res.25,3564−3569;Aranda−Abreuら、(1999)J.Neurosci.19,6907−6917)。Gaoら((1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,11207−11211)のインビトロアプローチは、ERG配列特徴を有するヒト脳および髄芽腫から別個のmRNAサブセットを生じた。このより直接的なインビボアプローチは、インビトロ結合およびPCR増幅についての必要性を取り除く。さらに、この新しいアプローチは、連鎖した構造的および機能的性質を有するmRNA転写の同定を可能とするが、それらの多数は、インビトロ技術を使用して検出されない(そして検出され得ない)。さらに、認識可能なHuBタンパク質−RNA結合配列は、インビボで捕獲されたmRNAサブセット内に同定される(表2)。
【0093】
前述の実施例は、本発明を例示するものであって、それを制限するものとして解釈されるべきではない。本発明は、上記の特許請求の範囲によって記載され、特許請求の範囲の等価物は、そこに含まれるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−137838(P2011−137838A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−86809(P2011−86809)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【分割の表示】特願2001−549077(P2001−549077)の分割
【原出願日】平成12年12月28日(2000.12.28)
【出願人】(502338236)リボノミックス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】