説明

内因性ペプチドおよびその活性サブフラグメント

本発明は、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域を含む、実質的に純粋で生物活性のある連続した抗血管新生ポリペプチドに関する。このポリペプチドは、成熟タンパク質と同様の抗血管新生活性を含む、ヒトHRGPの潜在的内因性天然サブフラグメントを含むことが示される。本発明はまた、そのような中央領域に由来する、ヒトHRGPの生物活性のある1つまたは複数の新たなサブフラグメントに関する。このようなサブフラグメントはすべて、抗血管新生活性を有することを特徴とする。活性サブフラグメントの1つをPep2と称する。本発明の範囲内にはPep2に由来する抗血管新生サブフラグメントもまた含まれ、そのうちの1つは新たに同定された現時点で最小の機能的実体を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は血管新生の分野に関し、より具体的には、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域、およびいずれも抗血管新生活性を有することを特徴とするそのような中央領域に由来するサブフラグメントを含む、生物活性のある実質的に純粋な連続ポリペプチドの使用に関する。ヒトHRGPの中央領域は、本発明者らによって、人体内に天然に存在する、ヒトHRGPの独立した内因性断片を含むことが示される。
【0002】
以下では、ヒトHRGPの中央領域の好ましいサブフラグメントの1つをPep2と称する。さらに、Pep2に由来する現時点で最小の活性実体が同定された。また、ヒトHRGPの中央領域に由来する様々な長さの他の同様に好ましいサブフラグメントも同定され、本発明に包含される。
【背景技術】
【0003】
背景
血管新生(angiogenesis)とは、既存の血管からの新たな毛細血管の形成であり、創傷治癒および月経周期など、血管新生(vascularisation)の増加を必要とする発生過程および生理学的状態において必須の進行手順である。静止している脈管構造は、血管新生促進因子と抗血管新生因子とのバランスによって厳重に制御されている。このバランスは多くの病的過程によって妨げられ、結果として、虚血状態に見られるような不十分な血管新生、または関節リウマチ、糖尿病性網膜症、および腫瘍増殖に見られるような過度の血管新生が生じる。多くの種類の腫瘍が、増殖および転移のために、新たな毛細血管の浸潤を促進する必要があることが、最近になって十分に定着した。したがって、血管新生促進物質および抗血管新生物質に基づいた多くの興味深い新規治療法が、現在、病院で試験段階にある(Risau et al (1997)、Carmeliet et al (2000)、Folkman et al (1995, 2000)、Hanahan et al (2000)、Kerbel et al (2000))。
【0004】
ヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)は、1972年にHeimburgerらによって同定された。このタンパク質は肝臓で合成され、Pro残基およびHis残基の含有量が異常に高い。これらの残基は主にタンパク質の中央のHis/Pro領域に位置しており、このタンパク質の機能にとって非常に重要なようである。しかし最近まで、HRGPの生理的役割についてはほとんどわかっていなかった。総説に関しては、Heimburger et al (1972)、Koide et al (1986)を参照されたい。
【0005】
HRGPは、約100μg/mlという非常に高いと考えられる濃度でヒト血漿中に存在する。マウス、ラット、ウサギ、およびヒトHRGPのアミノ酸配列が決定されており、タンパク質はこれらの脊椎動物種間で十分に保存されているようである(Drasin et al (1996)、Hulett et al (2000)、Borza et al (1996)、Koide et al (1986))。Genbankアクセッション番号NM000412のヒトHRGPのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を参照されたい。
【0006】
成熟HRGPは、18アミノ酸長のシグナルペプチドからタンパク質分解によって切断された後、3つの主要な領域:N末端領域、His/Pro領域、およびC末端領域に分割することができ、これらはすべて異なる特性を示す。さらに、3つの領域は異なるリガンドとの結合に関与すると示唆されている。N末端領域は2つのシステインプロテアーゼインヒビター(シスタチン)様ストレッチ(図1A)を含み、そのため、HRGPはα2HS糖タンパク質、シスタチン、およびキニノーゲンと共にシスタチンスーパーファミリーのメンバーとして分類される。一方、His/Pro領域はプロリン残基およびヒスチジン残基に非常に富んでおり、例えばヒト型では、ペンタペプチドHHPHGの保存されたタンデム反復をおよそ12回含む。血漿中では、His/Pro領域およびC末端領域は、N末端領域内のシスタチン様ストレッチとジスルフィド結合している(Borza et al (1996))。
【0007】
高分子キニノーゲン(HK)はHRGPと構造的に関連しているが、これは、HKとHRGPの遺伝子が染色体3q上で近接して位置していることから、おそらくは遺伝子重複によるものである。HKは、HRGPのHis/Proリッチ領域と類似した配列を有するタンパク質の一部を介して、内皮細胞機能を妨げることが示されている(Zhang et al (2000))。
【0008】
一般に、HRGPは様々なリガンドと結合し、そのリガンドは3つの主要な群に分類され得る:凝固/線溶系に属するリガンド(例えば、ヘパリン、プラスミノーゲン、フィブリノーゲン)、小リガンド(例えば、ヘムおよび遷移金属イオン)、および細胞(例えば、T細胞、単球/マクロファージ)(Lamb-Wharton et al (1993)、Olsen HM et al (1996))。
【0009】
さらにHRGPは、トロンボスポンジン-1(TSP-1)およびビトロネクチンなどの細胞外基質成分と結合する。TSP-1に結合することから、HRGPは以前、血管新生促進性であることが示唆された(Lijnen et al (1985))。
【0010】
Juarezら(2002)は、血漿から精製されたウサギHRGPのHis/Proリッチドメインが、内皮細胞の増殖およびマトリゲルプラグの血管新生を抑制することを報告した。組み換えHRGPを用いることで、データはさらに拡張されて、腫瘍血管新生に対するインビボ効果の証拠が提供された。以前の論文において、HRGPはまた、特定の状況下で、血管新生を促進すること、および2つのタンパク質間の複合体形成によってTSP-1の抗血管新生効果を減弱させることが示唆された(Simantov et al (2001))。Juarezらは、この報告された効果が、血管新生およびTSP-1に間接的に影響し得るプラスミノーゲンのHRGP調製物への混入によると示唆した。
【0011】
HRGPについて示唆された機能の他の例は、線維形成の調節(Kluszynski et al, 1997)、不溶性免疫複合体形成の阻害(Gorgani, 1997)、および最近になって示唆された、マクロファージによるアポトーシス細胞の摂取の増強(Gorgani et al (2002))である。
【0012】
WO 02/076486において、本発明者らが初めて、血管新生を抑制するためのHRGPポリペプチドまたはその中央領域の使用について記載している。この出願はさらに、そのようなポリペプチドを哺乳動物に投与することにより、血管新生を抑制する方法を示している。さらに、HRGPポリペプチド、HRGPポリペプチドに結合する抗体および受容体、HRGPポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞を含む薬学的組成物ならびに製造品が開示されている。
【0013】
しばらくしてWO 02/064621が、抗血管新生性であるものとして、HRGPポリペプチドまたはそのサブフラグメントの選択、より詳細には、本発明によって定義するようなHRGPのヒスチジン/プロリンリッチドメインに由来する特異的なH/Pリッチ反復ペンタペプチドの選択を開示している。このサブフラグメントは血管新生のインヒビターであるとされ、血管新生が病原である疾患または病態の治療に用いられ得る。この化合物は抗腫瘍活性を有すると予測され、原発腫瘍または転移の増殖を抑制する方法において役立つと提案されている。また、HRGPのHis-Proリッチドメインに特異的な抗体が、関連する疾患状態において新血管新生を促進するための血管新生促進因子とみなされている。
【0014】
しかし、以前の知見はどれも、実際の活性領域もHRGPの最小の機能的実体も正確に特定しておらず、いずれも本発明が初めて開示した。初めに、本発明者らは、成熟ヒトHRGPのアミノ酸領域240〜390(配列番号:2に見られるような)として定義されるヒトHRGPの中央領域が、人体内で内因性天然ポリペプチドとして存在するらしいことを示し得る。これは、例えば抗血管新生活性といった成熟タンパク質と同様の特徴を含む、ヒトHRGPの天然に存在するより小さなタンパク質サブフラグメントの初めての同定である。次いで、このサブフラグメントの同定後に、天然断片と同様の抗血管新生活性をなお有する、タンパク質の最小の活性実体の同定を目的としたさらなる試みを行い、これに成功した。これらの試みによって、ヒトHRGPの中央領域に由来する5アミノ酸を含む、現時点で最小の活性実体が得られ、また同様に抗血管新生活性を含む、ヒトHRGPの中央領域の他のサブフラグメントが選択された。
【0015】
このように1つまたは複数の最小の機能的実体が得られたことで、上記の最小の活性実体のような実質的により短いペプチド、または本発明によって開示される任意の他のHRGPポリペプチド/サブフラグメントを薬剤として使用することができる。HRGPの短いサブフラグメントを使用することの利点は多く、例えば、長いペプチドの投与は不安定さから困難を伴う場合が多い。また、長いペプチドの合成は厄介な場合が多いのに対して、短いペプチドは合成がより簡便である。さらには、短いペプチドは特異性が高いために毒性が低いことが多く、ひいては実習において起こる副作用が少なくなる。
【発明の開示】
【0016】
発明の概要
本発明は、成熟ヒトHRGPのアミノ酸領域240〜390に含まれる151アミノ酸というアミノ酸長を有するヒトHRGPの中央領域(配列番号:2)を含む、実質的に純粋で生物活性のある連続した抗血管新生ポリペプチドに関する。本発明において、このポリペプチドは、おそらく天然のタンパク質分解事象によって全長ヒトHRGPから生成される、天然内因性ペプチドを含むことが示される。この内因性ペプチドは、抗血管新生活性を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明はまた、すべて抗血管新生活性を有することを特徴とし、したがって生物活性があると考えられる、ヒトHRGPの中央領域に由来する1つまたは複数の実質的に純粋で生物活性のある連続した抗血管新生サブフラグメントに関する。
【0018】
本発明の好ましい態様において、HRGPの中央領域(配列番号:2)のそのような実質的に純粋で連続した抗血管新生サブフラグメントは、成熟ヒトHRGPタンパク質(配列番号:3)の配列番号330〜364(配列番号:1)に相当するアミノ酸領域内に含まれる。
【0019】
本発明の別の同様に好ましい態様では、配列番号:2に相当する中央領域全体を含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチドを包含する。
【0020】
本発明の別の態様では、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチドは、配列番号:1に相当する中央領域のサブフラグメントを含む。
【0021】
本発明のさらに別の態様では、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチドは、配列番号:18に相当する中央領域のサブフラグメントを含む。
【0022】
本発明には、配列番号:17に記載する約25アミノ酸を含む中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチドもまた包含される。このサブフラグメントは、ヒトHRGPに由来する25の連続したアミノ酸(配列番号:17)に加えて、C末端に任意のさらなるG残基(残基26)を含み得り(全長配列を配列番号:16に開示する)、このG残基はサブフラグメントにさらなる安定性を提供する。
【0023】
さらに本発明は、配列番号:22に記載する約15アミノ酸を含む中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチドについても記載する。このサブフラグメントは、サブフラグメントの安定性を提供するために、タンパク質のC末端および/またはN末端の一方/または両方において任意にアセチル化および/またはアミド化され得る(配列番号:21に開示)。
【0024】
本発明の別の態様は、配列番号:24に記載する約10アミノ酸を含む中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチドである。このサブフラグメントは、サブフラグメントの安定性を提供するために、タンパク質のC末端および/またはN末端の一方/または両方において任意にアセチル化および/またはアミド化され得る(配列番号:23に開示)。
【0025】
本発明のさらに別の態様では、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチドは、配列番号:26および配列番号:28に記載する約5アミノ酸を含む中央領域のサブフラグメントを含む。そのようなサブフラグメントは、サブフラグメントの安定性を提供するために、タンパク質のC末端および/またはN末端の一方/または両方において任意にアセチル化および/またはアミド化され得る(それぞれ、配列番号:25および配列番号:27に開示)。
【0026】
本出願において本発明者らは、ヒトHRGPがタンパク質分解によってプロセシングされることを示す。その確かな結果から、本発明者らは、ヒトHRGPが天然で細胞/組織/器官特異的にタンパク質分解によってプロセシングを受けて、別の生物学的機能を有する内因性の生物活性のあるサブフラグメントを生じることを示唆する。
【0027】
本明細書において初めて証明されたように、成熟ヒトHRGPのアミノ酸領域240〜390内に含まれるヒトHRGPの中央領域は、HRGPの抗血管新生活性領域を含む、成熟HRGPの天然に存在する連続サブフラグメントに相当する。その上、中央領域はさらにプロセシングを受けると切断されて、同様に抗血管新生活性のあるHRGPの領域に相当するさらなる生物活性サブフラグメント、Pep2を生じ得る。さらに、Pep2はそれ自体、血管新生のインヒビターである、HRGPの補助的な最小の機能的実体を同定するための出発点である。
【0028】
上記したように、抗血管新生活性を含み、HRGPの最小の機能的実体として作用し得るPep2のサブフラグメントが本発明において同定された。このような最小の機能的実体は、例えば、Pep2に由来する5アミノ酸を含み得る(例えば、配列番号:15B)。
【0029】
結果として本発明は、成熟HRGPと同様の抗血管新生活性をなお有することを特徴とする、少なくともPep2の一部に相当するPep2のサブフラグメントを含む、Pep10(配列番号:18)のような、ヒトHRGPの中央領域のより短い実質的に純粋な連続サブフラグメントを特色とする。または、HRGPの中央領域、またはPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントは、当然のことながら、N末端側またはC末端側に伸長されて、Pep2またはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域の少なくとも一部を含み、なお抗血管新生活性を有する、より長い連続サブフラグメントを生じ得る。
【0030】
ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、またはPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチドは、ヒトHRGPから単離され得る。
【0031】
この関連において、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または血管新生のインヒビターであるPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドは、組み換え、合成により作製され得るか、または血漿から精製および/もしくは単離され得る。
【0032】
この状況において、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、またはPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチドは、トロンボスポンジンに結合することも、血管新生を促進することもないことを特徴とすることが重視されるべきである。
【0033】
さらに、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または血管新生のインヒビターであるPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドは、本発明の好ましい態様において薬学的組成物中に含めることができる。薬学的組成物は、以下の成分のいずれかまたはすべてを任意に含み得る:抗血管新生薬、抗腫瘍薬、抗炎症薬、および/または有効量の亜鉛。また、薬学的組成物は、哺乳動物への投与に許容される薬学的担体をさらに含み得る。
【0034】
本発明は1つの態様において、薬剤として使用するための、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、またはPep2(配列番号:1)もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのようなヒトHRGPの中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド、または本発明に記載する薬学的組成物を含む。
【0035】
別の態様において本発明は、哺乳動物の血管新生を抑制する薬剤を製造するための、ヒトHRGPの中央領域、またはPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド、または本発明に記載する薬学的組成物の使用に関する。
【0036】
薬剤は典型的に、例えば、哺乳動物の癌を治療および/または予防するため(例えば、哺乳動物の腫瘍増殖を抑制するため)、ならびに/または哺乳動物の心筋血管新生、糖尿病性網膜症、糖尿病性血管新生、不適切な創傷治癒、もしくは炎症性疾患を治療および/または抑制するために用いられる。
【0037】
上記の態様のいずれかにおける哺乳動物は、マウス、ラット、またはヒトであってよい。
【0038】
さらに別の態様において、本発明は、哺乳動物の血管新生を抑制する方法であって、ヒトHRGPの中央領域、またはPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントなどの、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド、または本発明に記載する薬学的組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与する段階を含む方法に関する。
【0039】
現時点で好ましい態様では、ヒトHRGPの中央領域(配列番号:2)のサブフラグメントを含む実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチドは、配列番号:1または配列番号:1と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列に相当する。または、血管新生のインヒビターであるHRGPのそのようなサブフラグメントは、配列番号:1と少なくとも75%相同であるアミノ酸に相当する。本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような配列番号:1のサブフラグメント、またはそのようなサブフラグメントと少なくとも70%同一であるアミノ酸配列、血管新生のインヒビターであり、そのようなサブフラグメントと少なくとも75%相同であるアミノ酸に相当するアミノ酸配列もまた含まれる。
【0040】
さらに、単量体が、ヒトHRGPの中央領域、または血管新生のインヒビターであるPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチドに相当する場合の多量体も想定する。そのような多量体は抗血管新生活性を示す。
【0041】
同様にこの状況において関連するのは、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または血管新生のインヒビターであるPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチドをコードする核酸配列、およびそのような核酸配列を含むベクター、ならびにそのようなベクターを含む宿主細胞である。
【0042】
そのようなベクターは任意に、真核生物または原核生物宿主細胞においてそのような核酸配列の発現を制御するプロモーターおよび/またはさらなる制御配列に機能的に連結することができる。
【0043】
宿主細胞は、ヒト、マウス、またはラット細胞などの哺乳動物細胞、および細菌、酵母、または昆虫細胞を含む群より選択され得る。
【0044】
したがって本発明はまた、哺乳動物の血管新生を抑制する方法であって、単離された核酸、宿主細胞、および/またはベクターを、それを必要とする哺乳動物に投与する段階を含む方法を含む。
【0045】
本発明を以下の項目においてさらに詳述する。
【0046】
発明の詳細な説明
本発明は、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)(配列番号:3)の中央領域、または抗血管新生活性を含むPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、単離されたかまたは合成によって作製された実質的に純粋な連続ポリペプチドを含む。ヒトHRGPの中央領域を含むそのようなポリペプチドは、本発明者らにより、成熟タンパク質からタンパク質分解によって切断されて、成熟タンパク質と同様の抗血管新生活性によって特徴づけられる独立した自己機能的タンパク質となる内因性ポリペプチドを含むことが示される。
【0047】
ヒトHRGPの中央領域の実質的に純粋な連続した抗血管新生サブフラグメントは、最も好ましい態様において、Pep2(配列番号:1)と称する成熟ヒトHRGPのアミノ酸330〜364に相当する領域に由来する。このサブフラグメントは、抗血管新生活性を有すること、およびアミノ酸長が5〜35アミノ酸であることを特徴とする。
【0048】
同様に好ましいそのようなポリペプチドは、Pep10(配列番号:18)のようなヒトHRGPの中央領域のサブフラグメントを含み得る。
【0049】
HRGPの生理的機能は、最近までよくわかっていなかった。本発明者らが抗血管新生におけるHRGPの関与を初めて示唆したが(WO 02/076486)、その活性の詳細はまだ不明であった。本発明において本発明者らは、ヒト血漿から精製された、または組み換えもしくは合成で作製されたHRGPが、血管新生の強力なインヒビターであることをインビトロおよびインビボの両方において示す。
【0050】
実験4に示すように、線維肉腫を有するマウスをHRGPで処置すると、腫瘍の血管新生が減少し、対照処置マウスと比較して腫瘍容積が60%を超えて縮小した。HRGP処置動物の腫瘍容積が小さいことは、例えばTSP-1およびアンジオスタチンといった他の血管新生インヒビターに関する研究から報告されたものとは異なり、腫瘍細胞のアポトーシスの増加によるものではなかった。代わりに、HRGP処置動物では増殖している腫瘍細胞の比率が有意に減少しており、他の抗血管新生化合物と比較して新規な作用機序が示された。増殖が減少したことは、対照処置動物と比較して脈管構造が乏しいことにより、腫瘍細胞に対する酸素および栄養素の供給が制限されることを示している可能性が最も高い(Auerbach et al 1991、Hawighorst et al (2002)、O'Reilly et al (1996))。
【0051】
HRGPの血漿濃度は、処置前でも既に100μg/mlと比較的高い。腫瘍研究において使用した用量は、処置マウスにおいてHRGP量の100%増加を毎日表し、それが蓄積して、通常よりも実質的に高い濃度に到達し得た。この論拠は、血漿半減期が3日でありHRGPの代謝回転が遅いらしいという事実によって支持される(Lijnen et al., 1981)。この状況において、腫瘍組織ではHRGPの蓄積が認められなかったことは注目に値する(データは示さず)。
【0052】
本発明を限定することを所望するものではないが、血漿中に100μg/mlに達する濃度のHRGPが必要であることの1つのもっともらしい理論は、このタンパク質が全体としては活性がなく、サブフラグメントにプロセシングされる必要があり、そのうちのいくつかのみが抗血管新生性であるというものである。このことは、本発明が提供する結果によっても示される。
【0053】
本知見の確証として、HRGPはタンパク質分解による切断を受けやすく、精製画分中にタンパク質の分解産物が存在する場合が多く、ポリアクリルアミドゲルで分離した場合に、より小さなバンドの特徴的なパターンを生じる(Kluszynski et al (1997))。また、当技術分野において周知のように、HRGPは種々の内因性物質と結合し、そのうちの1つはヘパリンである。おそらくドメインの間で機能が多様であるために、個々のドメインは異なるリガンドと相互作用する(Drasin et al (1996)、Hulett et al (2000)、Borza et al (1996)、Koide et al (1986)、Heimburger et al (1972))。
【0054】
これに応じて、図12に示すように、本発明者らは、ヒトHRGPの中央領域を含むポリペプチドが腫瘍血管の基底膜中に存在することを示し得る。このポリペプチドは、成熟タンパク質からタンパク質分解によって切断される可能性が最も高い。さらに、実験6Bにおいて、ヒトHRGPの中央領域もまた走化性を抑制することが示される(結果を図5Aに示す)。
【0055】
Juarezら(2002)による出版物において記載されているように、HRGPは以前、トロンボスポンジン-1(TSP-1)と結合することから、TSP-1の抗血管新生特性を減弱させると考えられ、血管新生促進特性を含むと示唆された。しかし本出願において本発明者らは、少なくともこればかりがHRGPの機能ではないことを示す。さらに現在、個々のドメインが異なる生物活性に関与することが示され、その1つは抗血管新生活性であり、もう1つは血管新生促進活性である。その上、個々のドメインは、血管新生と関連のない他の活性にも関与している可能性がある(Juarez et al (2002)。Simantov et al (2001))。
【0056】
続いて、HRGPは本明細書において、特定の生理的状況において異なる特性を獲得することが示される。例えば、HRGPのヘパリン結合親和性は、例えば低酸素腫瘍において共通の環境であるZn2+の存在下および低pHにおいて調節を受け、増加する。したがってZn2+は、血管新生の抑制において、HRGP、またはPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのようなHRGPの任意のサブフラグメントの重要な補助因子であることが示唆される。このことは、Zn2+-含有量が減少すると腫瘍増殖に及ぼすHRGPの抑制効果が減弱されるという事実によってさらに証明される(データは示さず)。
【0057】
したがって、本発明者らの提供する結果と一致して、特定の環境において生じ、正常/健常な環境下では哺乳動物の血漿中に存在しない、ヒトHRGPの中央領域、またはPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントなどのHRGPのサブフラグメントが、観察される抗血管新生効果に関与することが明らかに考えられる。このサブフラグメントは、例えば、腫瘍において生成されるおよび/または腫瘍から分泌されるタンパク質分解活性によって、例えば血管新生が増加した条件下で全長タンパク質からタンパク質分解によって切断され得る。結果として、抗血管新生サブフラグメントは当然のことながら、タンパク質の精製過程において特異的に濃縮され得る。そのような抗血管新生サブフラグメントは、本発明者らによって、成熟タンパク質のアミノ酸領域240〜390に含まれるヒトHRGPの中央領域を含むことが実証される。
【0058】
本出願において、HRGPの中央領域(His/Pro領域)(配列番号:2に記載)は、HRGPの抗血管新生特性に関与する領域であることが実証される。実験6Bに示すように、ヒトHRGPの単離された中央領域(His/Proリッチドメイン)は、成熟タンパク質と同程度に強力に走化性を抑制した。ウサギHRGPの対応するサブフラグメントが、プラスミノーゲンによる全長HRGPのタンパク質分解プロセシングによって生成され得るため、本発明者らは、中央領域に対する抗体による全長ヒトHRGPの精製画分の免疫ブロッティングが組み換えによって作製された中央領域の大きさに相当するサブフラグメントを認識することから考えて、上記のことがヒトHRGPにもあてはまると推定する。驚いたことに、切断型His4(実験6B、図5Aに示す)は完全な中央領域を包含するにもかかわらず、内皮細胞走化性を抑制しなかった。この理由は、タンパク質の不適切な折りたたみによって、中央領域の活性部位が正しく提示されないためである可能性が最も高い。
【0059】
さらに、実験9に示すように、Pep2と直接連続して位置し、成熟ヒトHRGPのアミノ酸365〜389(配列番号:4)に相当する中央領域の25アミノ酸長サブフラグメントが、血管新生の抑制する活性がないことが明らかに実証された。このことから、中央領域の全部分に相当するのではなく、Pep2または本発明によって開示されるそのサブフラグメントのようなより短い断片に相当する、HRGPの最小の機能的実体の仮説がさらに強化される。このことはまた、実験の項目において本発明者らによってさらに示される。
【0060】
さらに本発明者らは、ヒトHRGPの中央領域のより小さなサブフラグメントが、走化性アッセイにおいて抗血管新生活性を含むことを示し得る。行った実験の結果を表2に示す。
【0061】
したがって本発明者らは、中央領域がヒトHRGPの活性部分を含むこと、および例えば血管新生、炎症の過程、または/または腫瘍の近傍での全長タンパク質の細胞、組織、または器官特異的タンパク質分解切断が、中央領域のそれまで隠れていた活性部位/領域の露出を促進することによるか、または同じもしくは別の活性部位/領域を有する1つもしくは複数の最小の活性断片を放出することにより、HRGPの抗血管新生特性の少なくとも1つを活性化する可能性が最も高いことを納得できるように示し得る。
【0062】
ヒトHRGPの中央領域(配列番号:2)、またはPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチドが、おそらく腫瘍血管新生の減少を介して腫瘍増殖に及ぼす強力な効果は、さらなる研究の興味深い標的を提供する。また、例えば関節リウマチといった炎症性疾患を治療するための臨床的戦略として、抗血管新生のためのそのようなポリペプチドまたはサブフラグメントを使用することは、多くの点で興味深い。
【0063】
抗血管新生療法は活発な血管新生に関与している脈管構造を直接標的とするため、望ましくない副作用の危険性は低く、例えば血管新生促進特性を含むより長いペプチドの潜在的副作用を排除することによって、危険性はさらに低減される。また、天然に存在する小タンパク質に基づく療法を用いた場合、一般毒性に関連する問題は最小限に抑えられる。最終的に、例えば腫瘍細胞の特異的な特徴、すなわち病気の哺乳動物においてHRGPをタンパク質分解によりプロセシングして活性のあるサブフラグメントを生じるプロテアーゼの天然での発現および/または分泌に対する身体自体の応答を利用することは、その療法が外来の因子を導入する代わりに宿主の天然の防御力を模倣し増強するため、それ自体、毒性が低く、望ましくない副作用による障害の低い疾患の治療アプローチを保証する。
【0064】
結果として、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、またはPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチドは、特異性が高いことから毒性の可能性は低く、副作用を誘導する可能性が低いため、血管新生に依存する疾患状態の薬剤として使用するための非常に好ましいペプチドである。
【0065】
本発明者らは、実験10に示すように、動物モデルにおけるPep2の抗血管新生活性の実証に成功し、次に、実験番号8に示した、Pep2の飽和効果に関して示すインビトロ結果を確認する用量応答研究を行い、投与の好ましい用量を示唆した。
【0066】
上記したように、本発明者らはまた、5アミノ酸のみを含むアミノ酸サブフラグメントのような、ヒトHRGPの中央領域のより小さなサブフラグメントの抗血管新生効果を示し得る(表2に示す)。
【0067】
この関連において「HRGP」という用語は、約507アミノ酸残基を含み、配列番号:3に相当する成熟ヒトHRGPペプチドを指す。成熟ヒトHRGPは、配列番号:14(NM000412も参照のこと)に記載の525アミノ酸長の全長HRGP内に含まれ、成熟ペプチドにおいて切断される18アミノ酸長のシグナルペプチドを含む。
【0068】
「サブフラグメント」とは、血管新生特性を含み、血管新生のインヒビターであるPep2またはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような、典型的にヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)に由来する様々な大きさのサブフラグメントを指す。
【0069】
「Pep2」とは、ヒトHRGPの中央領域(配列番号:2)に由来し、配列番号:1に相当する、35アミノ酸(配列番号:1)のアミノ酸サブフラグメントを指す。
【0070】
「Pep3」とは、HRGPの中央領域に由来し、WO02/064621にさらに記載されている、配列番号:4に相当する25アミノ酸残基ののアミノ酸サブフラグメントを指す。
【0071】
「Hisペプチド」とは、1つの態様において配列番号:5に相当する、約25のヒスチジン残基を含むアミノ酸断片である。さらに「His2」は配列番号:6に相当し、「His3」は配列番号:7に相当し、「His4」は配列番号:8に相当し、最後に「His5」は配列番号:9に相当する。これらの切断型HRGPが走化性を誘導する能力を示す結果を実験番号7において示し、さらに考察する。
【0072】
さらに配列番号:10〜13にはPep4〜Pep7が含まれ、これらはすべて図5Aに示す。これらのペプチドはすべて、ヒトHRGPの中央領域の外側のアミノ酸領域に由来する。
【0073】
「Pep8」とは、配列番号:15に開示される、ヒトHRGPの中央領域に由来するアミノ酸配列を指す。Pep8は16アミノ酸を含む。Pep8は、走化性アッセイにおいて効果的ではないことが判明した(表2)。
【0074】
「Pep9 AおよびB」とは、配列番号:16および17に開示される、ヒトHRGPの中央領域に由来するアミノ酸配列を指す。この配列は任意に、ポリペプチドの安定性を提供するために、C末端においてさらなるグリシン(G)アミノ酸残基によって修飾され得る(配列番号:16)。本発明では純粋なヒトHRGP配列もまた関連し、これを配列番号:17に開示する。修飾された配列は26アミノ酸を含む。非修飾配列は25アミノ酸を含む。
【0075】
「Pep10」とは、配列番号:18に開示される、ヒトHRGPの中央領域に由来するアミノ酸配列を指す。Pep10は16アミノ酸を含む。
【0076】
「Pep11 AおよびB」とは、配列番号:19および20に開示される、ヒトHRGPの中央領域に由来する非連続アミノ酸配列を指す。この配列は任意に、C末端においてさらなるグリシン(G)アミノ酸残基によって修飾され得る(配列番号:20)。この配列は、走化性アッセイにおいて効果的ではないことが判明した(表2)。
【0077】
「Pep12 AおよびB」とは、配列番号:21および22に開示される、ヒトHRGPの中央領域に由来するアミノ酸配列を指す。この配列は任意に、ポリペプチドに安定性を提供するため、C末端および/またはN末端の一方または両方において、それぞれアセチル化および/またはアミド化修飾され得る。修飾された配列を配列番号:21に開示する。純粋なヒトHRGP配列を配列番号:22に開示する。修飾配列および非修飾配列のいずれも、本発明によって本明細書の範囲内に収められる。
【0078】
「Pep13 AおよびB」とは、配列番号:23および24に開示される、ヒトHRGPの中央領域に由来するアミノ酸配列を指す。この配列は任意に、ポリペプチドに安定性を提供するため、C末端および/またはN末端の一方または両方において、それぞれアセチル化および/またはアミド化修飾され得る。修飾された配列を配列番号:23に開示する。純粋なヒトHRGP配列を配列番号:24に開示する。修飾配列および非修飾配列のいずれも、本発明によって本明細書の範囲内に収められる。
【0079】
「Pep14 AおよびB」とは、配列番号:25および26に開示される、ヒトHRGPの中央領域に由来するアミノ酸配列を指す。この配列は任意に、ポリペプチドに安定性を提供するため、C末端および/またはN末端の一方または両方において、それぞれアセチル化および/またはアミド化修飾され得る。修飾された配列を配列番号:25に開示する。純粋なヒトHRGP配列を配列番号:26に開示する。修飾配列および非修飾配列のいずれも、本発明によって本明細書の範囲内に収められる。
【0080】
「Pep15 AおよびB」とは、配列番号:27および28に開示される、ヒトHRGPの中央領域に由来するアミノ酸配列を指す。この配列は任意に、ポリペプチドに安定性を提供するため、C末端および/またはN末端に一方または両方において、それぞれアセチル化および/またはアミド化修飾され得る。修飾された配列を配列番号:27に開示する。純粋なヒトHRGP配列を配列番号:28に開示する。修飾配列および非修飾配列のいずれも、本発明によって本明細書の範囲内に収められる。
【0081】
本発明の一般的局面において、抗血管新生活性を有することを特徴とする、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)の連続サブフラグメントは、好ましくは25〜151アミノ酸残基長ペプチド、例えば25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、146、147、148、149、150、または151アミノ酸残基長ペプチドから選択される。しかし、中央領域の連続サブフラグメントを含むそのようなペプチドは、25〜151の任意の量のアミノ酸残基を含み得ることが理解されるべきである。そのような連続サブフラグメントは、Pep3(配列番号:4)にも、5アミノ酸またはそれよりも長いPep3に由来するサブフラグメントにも相当しない。
【0082】
本発明の別の局面において、抗血管新生活性を有することを特徴とする、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)の連続サブフラグメントは、好ましくは3〜25アミノ酸残基長ペプチド、例えば3、4、5、6、78、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または25アミノ酸残基から選択される。しかし、中央領域の連続サブフラグメントを含むそのようなペプチドは、3〜25の任意の量のアミノ酸残基を含み得ることが理解されるべきである。そのような連続サブフラグメントは、Pep3(配列番号:4)にも、5アミノ酸またはそれよりも長いPep3に由来するサブフラグメントにも相当しない。本発明の別の局面において、中央領域の連続サブフラグメントを含むそのようなペプチドはまた、3つ未満のアミノ酸を含み得る。
【0083】
現時点で最も好ましい態様において、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)の実質的に純粋な連続サブフラグメントは、成熟ヒトHRGPのアミノ酸領域330〜364(配列番号:1)を含むサブフラグメント、またはそのような領域に由来するサブフラグメントを含む。そのようなサブフラグメントは、抗血管新生活性を有すること、およびアミノ酸長が3〜35アミノ酸であること、例えば3〜5、3〜8、3〜10、3〜15、3〜20、3〜25、10〜25、10〜30、20〜35、または25〜35アミノ酸であることを特徴とする。そのようなサブフラグメントは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、または35の連続したアミノ酸を含み得る。しかし、中央領域の連続サブフラグメントを含むそのようなペプチドは、3〜35の任意の量のアミノ酸残基を含み得ることが理解されるべきである。本発明の別の局面において、中央領域の連続サブフラグメントを含むそのようなペプチドはまた、3つ未満のアミノ酸を含み得る。
【0084】
本発明の他の典型的な態様は、配列番号10〜13(Pep4〜Pep7)として添付の配列に記載されるアミノ酸配列の1つに相当する、ペプチドまたはペプチドのサブフラグメントである。
【0085】
本発明の現時点で好ましい他の態様は、配列番号:16〜18または21〜28に記載されるペプチドまたは断片である。
【0086】
このような状況における連続アミノ酸断片は、それが関連する元のアミノ酸配列に連続してかつ中断されずに由来するアミノ酸の配列と関連する。特にPep2は、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)の天然に存在する連続したアミノ酸、すなわちアミノ酸配列番号:1に記載される全長ヒトHRGPのアミノ酸330〜364に相当する。
【0087】
さらに、血管新生のインヒビターであるPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような、抗血管新生活性を有することを特徴とする、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)の実質的に純粋な連続サブフラグメントの配列の任意の保存的変種は、そのようなサブフラグメントとの機能的関連性に基づいて、本発明の範囲内であると見なされる。
【0088】
配列の保存的変種はこの関連において、異なる種間で同じアミノ酸配列の変種を比較した場合に、少なくとも70%、例えば75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%保存されているアミノ酸配列と定義される。変種の保存の程度は、当技術分野において周知であるように、PAM(Dayhoff, Schwarz, and Orcutt (1978)を参照のこと)の導出に従って、またはHenikoff and Henikoff (1992)の記載通りにBlocksデータベースによる配列のブロックの比較に基づいて算出し得る。
【0089】
保存的置換は、例えば以下の表1に従って行ってもよい。第2列の同一ブロック内、好ましくは第3列の同一行内のアミノ酸は、互いに置換することが可能である。
【0090】
【表1】

【0091】
そのような置換は、以下を含む非天然アミノ酸によって行うことも可能である;α*およびα-二置換*アミノ酸、N-アルキルアミノ酸*、乳酸*、天然アミノ酸のハロゲン化物誘導体(例えば、トリフルオロチロシン*、p-Cl-フェニルアラニン*、p-Br-フェニルアラニン*、p-I-フェニルアラニン*など)、L-アリル-グリシン*、β-アラニン*、L-a-アミノ酪酸*、L-g-アミノ酪酸*、L-a-アミノイソ酪酸*、L-e-アミノカプロン酸#、7-アミノヘプタン酸*、L-メチオニンスルホン#*、L-ノルロイシン*、L-ノルバリン*、p-ニトロ-L-フェニルアラニン*、L-ヒドロキシプロリン#、L-チオプロリン*、フェニルアラニン(Phe)のメチル誘導体(例えば、4-メチル-Phe*、ペンタメチル-Phe*など)、L-Phe(4-アミノ)#、L-Tyr(メチル)*、L-Phe(4-イソプロピル)*、L-Tic(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸)*、L-ジアミノプロピオン酸#、およびL-Phe(4-ベンジル)*。表記*は誘導体の疎水性を示すために使用し、#は誘導体の親水性を示すために使用し、#*は両親媒性特性を表す。
【0092】
変種アミノ酸配列は、グリシン残基またはb-アラニン残基などのアミノ酸スペーサーに加えて、メチル基、エチル基、またはプロピル基などのアルキル基を含む、配列の任意の2アミノ酸残基間に挿入し得る適切なスペーサー基を含んでもよい。変種のさらなる形態には、1つまたは複数のアミノ酸残基のペプトイド型での存在が関与し、これは当業者によって十分に理解されると考えられる。誤解を避けるために述べると、「ペプトイド型」は、α-炭素置換基がα-炭素ではなく残基の窒素原子上にある変種アミノ酸残基を表すために用いられる。ペプトイド型ペプチドの調製方法は当技術分野において周知であり、例えばSimon RJ et al, (1992)およびHorwell DC et al (1995)を参照されたい。
【0093】
本発明のポリペプチドおよび/またはサブフラグメントは、実質的に単離された形態であってよい。ポリペプチド/アミノ酸配列は、ペプチド/アミノ酸配列の本来の目的を妨げることのない担体または希釈剤と混合することができ、それでもなお実質的に単離されていると見なされ得ることが理解されよう。
【0094】
「実質的に純粋な」という用語は、この関連において、実質的に純粋な形態である本発明のポリペプチド/アミノ酸配列について述べるために用いられ、この場合、そのようなポリペプチド/アミノ酸配列は一般に、調製物中の90%を超えるタンパク質、例えば調製物中のタンパク質の95%、98%、または99%が本発明のペプチドである調製物中にこのペプチド/アミノ酸配列またはその断片を含むことになる。
【0095】
さらに、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または抗血管新生活性を有することを特徴とするPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも70%同一である、例えば少なくとも72%、75%、77%、80%、82%、85%、87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である任意のアミノ酸配列も、本発明の範囲内であると見なされる。
【0096】
参照アミノ酸配列と少なくとも例えば95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドとは、アミノ酸配列が参照アミノ酸配列のそれぞれ100アミノ酸当たり最大で5つの点変異を含み得る以外は、ポリペプチドのアミノ酸配列が参照配列と同一であることを表す。すなわち、参照アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るためには、参照配列中のアミノ酸の最大5%を欠失させるかもしくは別のアミノ酸で置換することができ、または参照配列中の全アミノ酸の最大で5%のアミノ酸数を参照配列内に挿入することができる。参照配列のこれらの変異は、参照アミノ酸配列のアミノ末端もしくはカルボキシ末端の位置において、またはそれらの末端位置の間の任意の位置で、参照配列中のアミノ酸の間で個々に分散して、もしくは参照配列内で1つもしくは複数の連続した群として分散して起こり得る。
【0097】
本発明においては、同一性を決定するのに局所アルゴリズムプログラムが最も適している。(Smith-Waterman)などの局所アルゴリズムプログラムは、1つの配列中のサブ配列を第2配列中のサブ配列と比較し、最も高い全体的類似スコアをもたらすサブ配列の組み合わせ、およびそれらのサブ配列のアライメントを見い出す。可能であれば、内部ギャップにペナルティーを科す。局所アルゴリズムは、単一のドメインまたは共通の結合部位のみを有する2つの多ドメインタンパク質の比較に関してうまく機能する。
【0098】
同一性および類似性を決定する方法は、公的に利用できるプログラムに集成されている。2つの配列間の同一性および類似性を決定する好ましいコンピュータプログラム法には、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J et al (1994))、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul, S.F. et al. (1990))が含まれるが、これらに限定されるわけではない。BLASTXプログラムは、NCBIおよびその他の供給源より公的に利用することができる(BLAST Manual, Altschul, S.F. et al, Altschul, S.F. et al (1990))。配列解析プログラムはそれぞれ、初期設定スコアリング行列および初期設定ギャップペナルティーを有する。一般に、分子生物学者は、使用するソフトウェアプログラムによって確立された初期設定を用いると考えられる。
【0099】
Pep2またはPep2に由来するサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような、HRGPのより小さなサブフラグメントを、血管新生関連疾患の治療に用いることの利点は、当業者には明白である。例えば、より小さなペプチドサブフラグメントは、医薬の開発がより簡便である。長いペプチドは、不安定であって、体内に分配した場合に容易に分解される場合が多いことから、取り扱いが困難であると考えられる。さらにまた、短いペプチドは、長いペプチドよりも他の生物活性物質と相互多用する可能性が低いため、副作用が少ないと考えられる。
【0100】
本明細書において用いる「血管新生促進活性」または「血管新生促進特性」とは、血管新生を促進する活性と定義される。血管新生促進活性を有するアミノ酸配列は、血管新生を生じる過程に関与する他の因子と相互作用することにより、またはこれに限定されないが走化性などの、血管新生過程の特定のサブプロセスに直接作用することにより、血管新生を促進する。さらに血管新生促進活性は、胚発生、創傷治癒などの天然の生理的過程、および関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、動脈硬化、および癌などの病的過程において、血管新生を促進することを特徴とする。血管新生促進因子の例は、線維芽細胞増殖因子、フォリスタチン、G-CSF、IL-8、TGF-α、TGF-βなどである。
【0101】
本明細書において用いる「抗血管新生活性」または「抗血管新生特性」を示すアミノ酸配列/ペプチドとは、血管新生を抑制する活性を示すことと定義される。抗血管新生アミノ酸配列/ペプチドは、血管新生を生じる過程に関与する他の因子と相互作用することにより、またはこれに限定されないが走化性などの、血管新生過程の特定のサブプロセスに直接作用することにより、血管新生を抑制する。さらに抗血管新生活性は、胚発生、創傷治癒などの天然の生理的過程、および関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、動脈硬化、および癌などの病的過程において、血管新生を抑制するおよび減少させることを特徴とする。抗血管新生因子の例は、アンジオスタチン、アンジオアレスチン(Angioarrestin)、エンドスタチン、フィブロネクチンサブフラグメント、軟骨由来インヒビターなどである。
【0102】
本明細書に記載するように、Pep2およびPep2に由来するサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのようなHRGPポリペプチド/サブフラグメントは、ポリペプチドが内因性酵素(例えばプロテアーゼ)によって切断されて、そのうちのいくつかが血管新生過程に関与するような生物活性を示すサブフラグメントを生じることを特徴とする「天然のタンパク質分解事象」によって生成されて、天然環境に存在する。本発明の1つの態様において、サブフラグメントは抗血管新生特性を含み得る;別の態様において、サブフラグメントは血管新生促進特性を含み得る。さらに、他のサブフラグメントは、血管新生の過程に影響しない特性を含み得る。
【0103】
したがって上記したように、ヒトHRGPの天然ポリペプチド/サブフラグメントは、異なる生物学的機能を含むことが示唆される。例えば以前の出版物において、HRGPがトロンボスポンジン-1(TSP-1)と相互作用することが示唆された。同じ出版物において、TSP-1とHRGPとの相互作用によってTSP-1の抗血管新生特性が減弱されることがさらに示唆され、それによってHRGPの血管新生促進的役割が提唱された(Juarez et al (2002))。これに反して本発明は、HRGPの血管新生インヒビターとしての重要性を支持する確かな結果を示す。これらの矛盾する結果から、HRGPの異なるサブフラグメント/ポリペプチドが異なる生理学的性質を含むという仮説が強化される。本発明において、天然環境にあるHRGPは、サブフラグメント化されたタンパク質として存在する頻度が最も高いことがさらに示される。したがって、HRGPに由来する、好ましくはこのタンパク質の中央領域に由来する、さらに好ましくはPep2に由来するサブフラグメントのいくつかが、プロセシングを受けていない成熟ペプチドでは封じられているHRGPの抗血管新生活性を含むことが示唆される。
【0104】
この関連における「生物活性サブフラグメント」とは、天然環境から取り出した場合に生物活性を維持することを特徴とする、生物環境において活性のあるサブフラグメントを指す。生物活性サブフラグメントはさらに、機能するためにいかなる他の促進剤にも補助因子にも依存することなく、それ自体で活性があることを特徴とする。しかし、HRGPの生物活性断片は、Zn2+の存在および特定pHなどの生理的環境に依存して、異なった挙動をする可能性があることに留意されたい。
【0105】
本発明の別の局面は、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または抗血管新生活性を有することを特徴とするPep2もしくはPep2に由来するサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド配列を含む。このようなポリヌクレオチドには、mRNA、cDNA、およびゲノムDNA、ならびにそれらの診断上または治療上有用な断片が含まれるが、これらに限定されるわけではない。ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または抗血管新生活性を有することを特徴とするPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む実質的に純粋な連続ポリペプチドの断片、誘導体、または類似体をコードする、そのようなポリヌクレオチドの変種もまた含まれる。
【0106】
本発明の単離された核酸分子は、標準的な技法によって生成することができる。本明細書で使用する「単離された」とは、HRGPポリペプチドをコードする遺伝子の一部またはすべてに相当し、天然ゲノムにおいて野生型遺伝子の一方または両側に通常隣接している配列を含まない配列を指す。非天然配列は天然には認められず、天然ゲノム中で直接隣接する配列を有さないため、本明細書において核酸に関して使用する「単離された」という用語は、任意の非天然核酸配列もまた含む。
【0107】
単離された核酸は、例えばDNA分子であってよく、ただし、天然ゲノムにおいてそのDNA分子に直接隣接していることが通常認められる核酸配列の1つが除去されているかまたは存在しない場合である。したがって、単離された核酸には非限定的に、他の配列から独立して別の分子として存在するDNA分子(例えば、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理によって生成されたcDNAまたはゲノムDNA断片)、およびベクター、自己複製プラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれた組み換えDNAが含まれる。さらに、単離された核酸は、ハイブリッド核酸または融合核酸の一部である組み換えDNA分子のような、操作された核酸を含み得る。例えば、cDNAライブラリーもしくはゲノムライブラリー、または制限消化されたゲノムDNAを含むゲル切片中で、数百から数百万という他の核酸と共に存在する核酸は、単離された核酸と見なすべきではない。
【0108】
本発明の範囲内にある単離された核酸は、通常の分子クローニング技法および化学的核酸合成技法を含むが、これらに限定されない任意の方法を用いて得ることができる。例えば、PCR技法を用いて、当技術分野で既知のHRGP配列と同一性を共有する核酸配列を含む単離された核酸を得ることができる。
【0109】
PCRとは、標的核酸配列を増幅させる手順または技法を指す。増幅する鋳型の逆鎖と配列が同一であるオリゴヌクレオチドプライマーを設計するためには、典型的に、関心対象の領域の末端またはその領域より先の配列情報を使用する。PCRを用いて、全ゲノムDNAまたは全細胞RNAの配列を含めたDNAおよびRNAの特定配列を増幅することができる。プライマーは典型的に14〜40ヌクレオチド長であるが、10ヌクレオチド〜数百ヌクレオチド長であってもよい。一般的なPCR技法は、例えば「PCR Primer: A Laboratory Manual」、Dieffenbach et al (1995)に記載されている。鋳型の供給源としてRNAを使用する場合には、逆転写酵素を用いて相補DNA(cDNA)鎖を合成することができる。
【0110】
本発明の単離された核酸は、単一の核酸分子として、または一連のオリゴヌクレオチドとして化学合成することもできる。例えば、所望する配列を含む一対または複数対の長いオリゴヌクレオチド(例えば、>100ヌクレオチド)を合成することができ、この場合、各対は、オリゴヌクレオチド対がアニーリングした際に二本鎖が形成されるように短い相補的な部分(例えば、約15ヌクレオチド)を含む。DNAポリメラーゼを使用してオリゴヌクレオチドを伸長させると、オリゴヌクレオチド対ごとに二本鎖核酸分子が生じ、その後これをベクターに連結することができる。
【0111】
本発明の単離された核酸は、突然変異誘発によっても得ることができる。例えば、当技術分野で既知のHRGP配列と同一性を共有する単離された核酸を、通常の分子クローニング技法(例えば、部位特異的突然変異誘発)を使用して変異させることができる。考えられる変異には、欠失、挿入、および置換、ならびに欠失、挿入、および置換の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
さらに、核酸およびアミノ酸のデータベース(例えばGenBank(登録商標))を使用して、本発明の範囲内にある単離されたポリヌクレオチドを得ることができる。例えば、当技術分野で既知のHRGPサブフラグメントをコードする核酸配列と相同性を有する配列、または当分野で既知のHRGPサブフラグメントアミノ酸配列と相同性を有するアミノ酸配列をクエリーとして使用し、GenBank(登録商標)を検索することができる。既知のHRGPポリペプチドをコードする核酸の例には、以下のGenBank(登録商標)アクセッション番号が含まれる:NM000412(ヒト);AF194028(マウス);AF194029(ラット);U32189(ウサギ)。
【0113】
さらに、核酸ハイブリダイゼーション技法を使用して、本発明の範囲内にある単離された核酸を得ることができる。簡潔に述べると、HRGPポリペプチド/サブフラグメントをコードする核酸配列をプローブとして使用し、中程度から高いストリンジェンシーの条件下でのハイブリダイゼーションにより、類似の核酸を同定することができる。中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、25mM KPO4(pH 7.4)、5×SSC、5×デンハルト溶液、50μg/mL変性超音波処理サケ精子DNA、50%ホルムアミド、10%デキストラン硫酸、および1ng/mL〜15 ng/mLプローブ(約5×107 cpm/μg)を含むハイブリダイゼーション溶液中での約42℃でのハイブリダイゼーション、ならびに2×SSCおよび0.1% SDSを含む洗浄液を用いた約50℃での洗浄段階を含む。高いストリンジェンシーには、同一のハイブリダイゼーション条件を使用できるが、洗浄は、0.2×SSCおよび0.1% SDSを含む洗浄液を用いて約65℃で行う。
【0114】
核酸が同定されたならば、次いでこの核酸を精製し、配列決定し、解析して、この核酸が本明細書に記載の本発明の範囲内にあるかどうかを決定することができる。
【0115】
サザン解析またはノーザン解析によりハイブリダイゼーションを行い、それぞれプローブにハイブリダイズするDNAまたはDNA配列を同定することができる。プローブは、ビオチン、ジゴキシゲニン、酵素、または32Pおよび35Sなどの放射性同位元素で標識することができる。解析するDNAまたはRNAをアガロースゲルまたはポリアクリルアミドゲル上で電気泳動により分離し、ニトロセルロース、ナイロン、または他の適切な膜に転写し、当技術分野において周知の標準的な技法によりプローブとハイブリダイズさせることができる。例えば、Sambrook et al (1989)の第7.39項〜第7.52項を参照されたい。
【0116】
本発明はまた、ヒトHRGPの中央領域、またはPep2もしくはPep2に由来するサブフラグメントといった本出願によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントをコードする単離されたポリヌクレオチドを含むベクター、およびこれらのベクターを含む宿主細胞を含む。本発明のベクターには、例えばプラスミド、組み換えウイルス、クローニングベクター、または発現ベクターが含まれ得る。宿主細胞は、本発明のベクターを用いて遺伝子操作(形質導入、形質転換、または形質移入)され得る。操作される宿主細胞は、植物細胞、または真核細胞(哺乳動物、昆虫、または酵母細胞など)、または原核細胞(細菌細胞など)などの幅広い種類から選択することができる。そのような宿主細胞は、プロモーターの活性化、形質転換体の選択、または本発明の25遺伝子の増幅のために必要に応じて改変した従来の栄養培地中で培養することができる。温度、pHなどの培養条件は、発現用に選択された宿主細胞で以前に用いられた条件であり、これは当業者には明らかであると考えられる。
【0117】
本明細書で使用する「発現ベクター」または「発現カセット」という用語は、そのような配列と適合する宿主においてタンパク質コード配列の発現を生じさせ得るヌクレオチド配列を指す。発現カセットは、ポリペプチドコード配列;および任意に他の配列、例えば転写終結シグナルと機能的に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む。また、例えばエンハンサーといった、発現の達成に必要なまたは役立つさらなる因子も含まれ得る。
【0118】
「機能的に連結された」とは、コード配列が、コード配列の発現が可能となる方法で制御配列に連結されることを意味する。適切な宿主細胞において所望のタンパク質の発現を駆動させるには、既知の制御配列が選択される。したがって「制御配列」という用語には、プロモーター、エンハンサー、および他の発現調節エレメントが含まれる。そのような制御配列は、例えばGoeddel, (1990)に記載されている。
【0119】
したがって発現カセットには、プラスミド、組み換えウイルス、任意の形態の「裸のDNA」組み換えベクターなどが含まれる。「ベクター」は、細胞に感染、形質移入、一過的にまたは永続的に形質導入し得る核酸を含む。ベクターは、裸の核酸、またはタンパク質もしくは脂質と複合体化した核酸であってよいことが理解されよう。ベクターは任意に、ウイルスまたは細菌の核酸および/またはタンパク質、および/または膜(例えば、細胞膜、ウイルス脂質エンベロープなど)を含む。ベクターには、DNA断片を結合させ、複製させることができるレプリコン(例えば、RNAレプリコン、バクテリオファージ)が含まれるが、これに限定されない。したがって、ベクターには、RNA、自律的に自己複製する環状またはは線状のDNAまたはRNA、例えばプラスミド、ウイルスなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
上記したようなHRGPの実質的に純粋なポリペプチド/サブフラグメントを得るために用い得る多種多様な方法が、当業者には周知である。例えば、Kluszynski et al (1997)、Rylatt et al (1981)の手順に従って、プロテイナーゼ阻害剤の存在下でホスホセルロースにてクロマトグラフィーを行うことにより、新たに採取したヒト血漿から、原型のまたはサブフラグメント化したHRGPを精製することができる。
【0121】
実験2に示すように、得られたタンパク質は、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)から推定して約99%純粋である。実質的に純粋なポリペプチドを得るための供給源として、多くの材料を使用することができ、例えば、関心対象の特定のポリペプチドを発現する組織培養細胞を用いて、実質的に純粋なポリペプチドを得ることができる。さらに、求めるポリペプチドを生成するためには、アフィニティークロマトグラフィーおよびHPLCなどのポリペプチド精製技法に加えて、他のポリペプチド合成技法も当然のことながら用いることができる。
【0122】
ヒトHRGPの中央領域、またはPep2もしくはPep2に由来するサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域に由来するサブフラグメントを含む、実質的に純粋なポリペプチドはまた、組み換え方法によって生成することも可能である。ウサギ(Borza et al. (1996))、ラット、マウス(Hulett et al. (2000))、およびヒト(Koide et al. (1986))HRGPのcDNA配列は、当技術分野において周知である。cDNAクローンからタンパク質産物を発現させる方法も周知である。例えば、Maniatis et al. (1989)を参照されたい。生成されるHRGPポリペプチド/サブフラグメントは、Pep2または任意の他のサブフラグメントのような本発明によって開示されるポリペプチド/サブフラグメントのいずれかであってよい。適切な発現系には、組み換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、もしくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換した、細菌(例えば、大腸菌(E. coli)および枯草菌(B. subtilis))などの微生物;組み換え酵母菌発現ベクターで形質転換した酵母(例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)およびピキア(Pichia));組み換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;融合タンパク質ヌクレオチド配列を含む組み換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)およびタバコモザイクウイルス(TMV))を感染させた、もしくは融合タンパク質ヌクレオチド配列を含む組み換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;または哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)、もしくは哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーターおよびワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む発現構築物で形質転換した哺乳動物細胞系(例えば、HEK、COS、CHO、BHK、293、VERO、HeLa、MDCK、W138、およびNIH 3T3細胞)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。また、プラスミドベクターで形質転換した、またはウイルスベクター(例えば、とりわけヘルペスウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、弱毒化ワクシニアウイルス、カナリア痘ウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、およびヘルペスウイルス)を感染させた、哺乳動物から直接得られた初代細胞または二次細胞も宿主細胞として有用である。
【0123】
さらに、HRGPポリペプチド/サブフラグメントの合成による生成は、化学的手順において、アミノ酸が互いに結合されてポリペプチド/タンパク質が作製される事象と定義される。これは、標準的なタンパク質合成手順に従って行うことができる。
【0124】
診断上の用途のために、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または抗血管新生活性を有することを特徴とするPep2もしくはPep2に由来するサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドを、検出可能な成分で標識することができる。この検出可能な成分は、検出可能なシグナルを直接または間接的に生じ得る。例えば、検出可能な成分は、放射性同位元素(H3、C14、P32、S35、またはI125など);蛍光もしくは化学発光化合物(フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、またはルシフェリン);または酵素(アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)であってよい。ポリペプチドを検出可能な成分に結合する、当技術分野において周知の任意の方法を用いることができる。例えば、Hunter et al. (1962);David et al. (1974)、;Pain et al. (1981);およびNygren et al. (1982)を参照されたい。
【0125】
ヒトHRGPの中央領域、または抗血管新生活性を有することを特徴とするPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドはまた、新血管新生の領域を画像化するために、インビボ画像化に有用な検出可能な成分と結合させてもよい。HRGPポリペプチド/サブフラグメントを、放射線不透過性薬剤または放射性同位元素などの検出可能な成分で標識し、宿主の好ましくは血流中に投与することができ、標識HRGPポリペプチド/サブフラグメントの存在および位置についてアッセイがなされる。HRGPポリペプチド/サブフラグメントは、核磁気共鳴、放射化学、または当技術分野で周知の他の検出手段によって宿主内で検出可能な任意の成分で標識することができる。放射性同位元素は、例えば

であってよい。
【0126】
毒素に結合させた、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または抗血管新生活性を有することを特徴とするPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドはまた、受容体を標的するための治療薬として用いることができる。そのようなポリペプチド/サブフラグメントは、当技術分野で周知の手順により、細胞の細胞質内で細胞毒性効果を媒介する任意の毒素ポリペプチドに結合させることができる。好ましい毒素ポリペプチドには、リボソーム不活性化タンパク質、例えばA鎖毒素(例えばリシンA鎖)、サポリン、ブリオジン(bryodin)、ゲロニン(gelonin)、アブリン、もしくはヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)などの植物性毒素、α-サルシン、アスペルギリン(aspergillin)、もしくはレストリクトシン(restrictocin)などの真菌性毒素、ジフテリア毒素(DT)もしくは緑膿菌外毒素Aなどの細菌性毒素、または胎盤リボヌクレアーゼもしくはアンジオゲニンなどのリボヌクレアーゼが含まれる。他の有用な毒素ポリペプチドは、例えばBax、Bad、Bak、Bim、Bik、Bok、またはHrkのようなアポトーシス促進ポリペプチドである。さらに、1つまたは複数の(例えば、2、3、4、または6)の毒素の2つ以上の機能的断片(例えば、2、3、4、6、8、10、15、または20)を、HRGPのポリペプチド/サブフラグメントに結合させることができる。反復して含める場合には、それらを互いに直接隣接させる、1つもしくは複数の標的断片によって分離する、または上記のリンカーペプチドによって分離することができる。本発明はまた、HRGPポリペプチド/サブフラグメントに結合させたこれらのポリペプチドのいずれかの機能的断片を含む。
【0127】
本発明はさらに、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または抗血管新生活性を有することを特徴とするPep2もしくはPep2に由来するサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドに対して、特異的な結合親和性を含む抗体を開示する。そのようなポリペプチド/サブフラグメントに対する特異的結合親和性を有する抗体は、
標準的な方法により作製することができる。本発明書において使用する「抗体」という用語は、そのようなHRGPポリペプチドまたはそのサブフラグメント内のエピトープ決定基と結合し得る原型の分子およびその断片を含む。「エピトープ」という用語は、抗体のパラトープが結合する抗原上の抗原決定基を指す。エピトープ決定基は通常、アミノ酸または糖側鎖のような化学的に活性のある表面の分子集団からなり、典型的に、特異的な3次元構造特性および特異的な電荷特性を有する。エピトープは通常、少なくとも5つの連続したアミノ酸を有する。
【0128】
「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体、一本鎖Fv抗体断片、Fab断片、およびF(ab)2断片が含まれる。モノクローナル抗体が特に有用である。
【0129】
一般に、抗血管新生活性を含むPep2またはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような、抗血管新生活性を有することを特徴とする、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)を含む実質的に純粋な連続ポリペプチドは、組み換えによって、化学合成によって、または天然タンパク質の精製によって生成され、次いで動物を免疫化するために用いられる。例えばウサギ、ニワトリ、マウス、モルモット、およびラットを含む種々の宿主動物を、関心対象のサブフラグメントを注射することによって免疫化することができる。宿主の種に応じて免疫応答を増加させるためにアジュバントを使用することができ、これにはフロイントアジュバント(完全および不完全)、鉱物ゲル(水酸化アルミニウムなど)、界面活性剤(リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、およびジニトロフェノールなど)が含まれる。ポリクローナル抗体は、特定の抗原に特異的な抗体分子の不均一な集合であり、免疫化した動物の血清中に含まれる。モノクローナル抗体は、抗原内に含まれる特定のエピトープに対する抗体の均一な集合であり、標準的なハイブリドーマ技法を用いて調製することができる。Kohler et al. (1975)を参照されたい。特に、モノクローナル抗体は、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kosbor et al. (1983)およびCole et al. (1983)を参照のこと)またはEBVハイブリドーマ技法(Cole et al. (1983)を参照のこと)などの、培養下の連続継代細胞系によって抗体分子の産生をもたらす任意の技法によって得ることができる。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含む任意の免疫グロブリンクラス、およびその任意のサブクラスのものであってよい。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養することができる。
【0130】
キメラ抗体とは、マウスモノクローナル抗体に由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子のような、異なる部分が異なる動物種に由来する分子である。キメラ抗体は、標準的な技法により作製することができる。
【0131】
当技術分野で周知の方法により、マウス抗体の相補性決定領域をヒトフレームワークドメインに置換挿入することによって、ヒト化型のマウス抗体を作製することができる。また、選択されたマウスフレームワーク残基を、ヒトレシピエント免疫グロブリンに置換挿入することも可能である。所望する結合特異性を有するモノクローナル抗体は、商業的にヒト化され得る(Scotgene、スコットランド;Oxford Molecular、パロアルト、カリフォルニア州)。トランスジェニック動物内で発現されるような完全なヒト抗体もまた、本発明の特徴である。例えば、Green et al. (1994)、米国特許第5,545,806号、および米国特許第5,569,825号を参照されたい。
【0132】
ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または抗血管新生活性を有することを特徴とするPep2もしくはPep2に由来するサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドに対して、特異的な結合親和性を有する抗体断片を、周知の技法によって作製することができる。例えば、このような断片には、抗体分子のペプシン消化によって生成され得るF(ab')2断片、およびF(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することによって生成され得るFab断片が含まれるが、これらに限定されない。
【0133】
または、Fab発現ライブラリーを構築することができる。例えば、Huse et al(1989)を参照されたい。一本鎖Fv抗体断片は、アミノ酸架橋(例えば、15〜18アミノ酸)を介してFv領域の重鎖断片と軽鎖断片を結合し、一本鎖ポリペプチドを生じさせることによって形成される。一本鎖Fv抗体断片は、標準的な技法により作製し得る。例えば、米国特許第4,946,778号を参照されたい。
【0134】
ひとたび作製されたならば、例えばELISA技法またはRIAを含む標準的な免疫測定法により、抗体またはその断片をHRGPポリペプチド/サブフラグメントの認識に関して試験する。Short Protocols in Molecular Biology (1992)を参照されたい。適切な抗体は、好ましくは組み換えタンパク質と天然タンパク質に対して同等の結合親和性を有する。
【0135】
HRGPの中央領域、またはPep2もしくはPep2に由来するサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドを用いて作製された本発明の抗体を、本明細書に記載の少なくとも1つのHRGPポリペプチド/サブフラグメント特異的抗体を含む診断キット中に包装することができ、このキットを都合よく用いて、研究または診断目的で試料中のHRGPポリペプチド/サブフラグメントを検出することができる。
【0136】
ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または抗血管新生活性を有することを特徴とするPep2などの本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域に由来するサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドに対する抗体は、競合結合アッセイ、直接および間接的サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイなどの、任意の周知のアッセイ法において使用することができる。Zola、Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques (1987)を参照されたい。
【0137】
競合結合アッセイは、標識標準物質(HRGPポリペプチド/サブフラグメント、またはその免疫学的に反応性のある部分であってよい)が、限られた量の抗体との結合に関して試験試料分析物(HRGP)と競合する能力に依存する。試験試料中のHRGPポリペプチド/サブフラグメント量は、抗体に結合する標準物質の量に反比例する。結合する標準物質の量の決定を容易にするため、抗体と結合している標準物質および分析物が、結合していない標準物質および分析物から簡便に分離され得るように、抗体は通常、競合前または競合後に不溶化される。
【0138】
本発明のHRGP抗体は、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または実験番号9においてアッセイされる抗血管新生活性を有することを特徴とする、Pep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドの抗血管新生活性のような、HRGPポリペプチド/サブフラグメントの生物活性を実質的に抑制または除去し得る中和抗体であってよい。本発明のHRGP抗体はまた、血管新生に作用性または拮抗性であってよい。
【0139】
本発明はさらに、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または抗血管新生活性を有することを特徴とするPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域に由来するサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドに特異的な受容体を同定する方法、ならびに同定された受容体分子および単離された受容体分子を包含する。当技術分野で周知の技法により、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域、またはPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域に由来するサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドを用いて、細胞溶解液から受容体を単離するためのアフィニティーカラムを作製することができる。受容体の単離に続いて、アミノ酸配列決定を行う。このアミノ酸配列情報から、受容体をコードするポリヌクレオチド配列のクローニングに使用するための、ポリRヌクレオチドプローブを作製することができる。
【0140】
ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または抗血管新生活性を有することを特徴とするPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドは、胚の着床に必要な子宮の血管新生を減少させるまたは妨げることによって、避妊薬として使用することができる。このような避妊方法では、胚の着床を妨げるのに十分な量のHRGPポリペプチド/サブフラグメントを雌の哺乳動物に投与する。この避妊方法の1つの態様では、性交および受精が行われる前または行われた後に、胚の着床を阻止するのに十分な量のHRGPポリペプチド/サブフラグメントを投与して、効果的な避妊方法、おそらくは「事後」方法を提供する。投与方法には、錠剤、注射(静脈内、皮下、筋肉内)、坐剤、膣内スポンジ、膣内タンポン、および子宮内装置が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0141】
ヒトHRGPの中央領域、またはPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含むポリペプチドを除去した血漿は、本発明によって開示されるサブフラグメント/ポリペプチドのいずれかを用いて調製した抗Pep2抗体または任意の他の抗サブフラグメント/ポリペプチド抗体のような、抗サブフラグメント/ポリペプチドHRGP抗体を用いて、当技術分野において周知の様々な免疫沈降技法により調製することができる。このような技法には、免疫沈降、免疫親和性ビーズ精製、および免疫親和性カラムクロマトグラフィーが含まれるが、これらに限定されるわけではない。HRGPポリペプチド/サブフラグメント除去血漿はまた、当技術分野で周知の方法により、Ni-NTAアガロース樹脂を用いて調製したNiカラム(Qiagen Inc.、チャッツワース、米国)に血漿を通すことによって調製することもできる。
【0142】
本発明の典型的な組成物は、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または抗血管新生活性を有することを特徴とするPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドを含む。さらに、本発明のいくつかの態様では、組成物はまた抗血管新生薬および/または抗腫瘍薬を含む。いくつかの態様では、組成物はまた薬学的担体も含み得る。
【0143】
抗血管新生薬は、例えば、これらに限定されないが、インターフェロン誘導タンパク質10、ならびにインターフェロン誘導タンパク質10のサブフラグメントおよび類似体、TGF-β、トロンボスポンジン、IL-1(インターロイキン)、IFN-γ(インターフェロン)、IFN-α、メタロプロテアーゼ組織インヒビター-1(TIMP-1)、血小板因子4(PF4)、プロタミン、フマギリン、アンジオスタチンなどから選択され得る。
【0144】
さらに、抗腫瘍薬を組成物中に含めることができる。そのような抗腫瘍薬は、腫瘍細胞に対して毒性がある化学療法薬であってよい。そのようなものの例としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然物、ホルモンおよび拮抗剤、生物学的応答調節物質(例えば、インターフェロンおよび造血成長因子)、酪酸誘導体などの分化誘導薬、腫瘍抗原に対する抗体、ならびにその他の種々の薬剤がある。他の例としては、タキソール、シクロホスファミド、カルボプラチン、シスプラチン(cisplatinum)、シスプラチン(cisplatin)、ガンシクロビル、カンプトセシン、パクリタキセル、ヒドロキシ尿素、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシシチジン、スラミン、レチノイドなどが挙げられる。
【0145】
さらに、抗血管新生活性を有することを特徴とするヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、またはPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドとの併用療法は、抗血管新生薬または抗腫瘍薬に限定されず、これには、プレドニゾン、cox-2阻害薬などの抗炎症薬を用いた併用療法もまた含まれ得る。適切な炎症薬には、イブプロフェンおよびアスピリンもまた含まれ得る。
【0146】
ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または抗血管新生活性を有することを特徴とするPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドを含む薬学的組成物は、静脈注射によって投与することができ、または皮下、筋肉内、腹腔内、直腸内、膣内、鼻腔内、胃内、気管内、肺内、腫瘍内、もしくは病巣内に注入することができる。
【0147】
投与量は、年齢、体重、患者の疾病の性質、患者の性別などの生理的要因に依存する。投与量はさらに、投与経路、製剤の性質、投与中の他の薬剤、および主治医の判断に依存する。
【0148】
患者は、ヒト、類人猿、イヌ、またはウサギなどの哺乳動物を含む群より選択される。
【0149】
薬学的に許容される担体は、例えば、哺乳動物対象への投与に適した生体適合性賦形剤である。このような薬学的に許容される組成物は典型的に、薬学的に許容される担体中に、本発明の治療薬を約0.1重量%〜90重量%(例えば、1%〜20%または1%〜10%)含む。
【0150】
この組成物の注射製剤は、植物油、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)のような様々な担体を含み得る。
【0151】
静脈注射するには、水溶性型の化合物を点滴法によって投与することができ、これによりHRGPポリペプチド/サブフラグメントおよび薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的製剤が注入される。生理学的に許容される担体には、これらに限定されるわけではないが、5%ブドウ糖、0.9%生理食塩水、リンゲル液、または任意の他適切な担体が含まれる。
【0152】
さらに、筋肉内調製物を、0.9%生理食塩水または5%グルコース溶液などの薬学的賦形剤に溶解して、投与することができる。
【0153】
局所投与の場合、半固形軟膏製剤は典型的に、薬学的クリーム基剤などの担体中に、約1%〜20%、例えば5%〜10%の活性成分製剤を含む。局所用途の製剤には、これらに限定されないが、活性成分ならびに種々の支持剤および賦形剤を含むクリーム、溶液、チンキ、液滴、ローション、および軟膏が含まれる。各薬学的製剤中の治療薬の最適な割合は、製剤自体、ならびに特定の病態および関連する治療計画において所望される治療効果に応じて異なる。このような製剤を作製する方法は、「Remingtons Pharmaceutical Sciences」中に見い出すことができる。
【0154】
不溶性型の化合物は、水性基剤、または長鎖脂肪酸のエステル(例えばオレイン酸エチル)のような薬学的に許容される油性基剤中で懸濁液として調製し、投与することができる。
【0155】
治療した哺乳動物(例えばヒト)に医学的効果をもたらすのに望ましい医薬の量を、「治療有効量」と称する。したがって、任意の患者に対する投与量は、患者の年齢、性別、体表面積、投与する具体的な化合物、患者の一般的健康状態、投与経路、および同時に投与している他の薬剤を含む多くの要因に依存する。好ましい投与は、静脈内投与である可能性が最も高い。
【0156】
1つの態様では、血管新生を抑制することが望ましい病態を患っている患者に、ヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域(配列番号:2)、または抗血管新生活性を有することを特徴とするPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドが投与される。別の態様では、血管新生を促進することが望ましい病態を患っている患者に、その血管新生促進サブフラグメントが投与され得る。
【0157】
適切な治療対象には、これらに限定されないが、血管新生関連病態、例えば抗血管新生薬による治療が好ましい血管新生関連癌、横紋筋肉腫、多形性膠芽腫、平滑筋肉腫、前立腺癌、乳癌、肺癌、黒色腫、膀胱癌、膵臓癌、および腎臓癌などを患っている患者が含まれる。
【0158】
さらに、これらに限定されないが、糖尿病性網膜症、糖尿病性血管新生、水晶体後線維増殖症、トラコーマ、血管新生緑内障、乾癬、血管繊維腫、免疫性または非免液性炎症、アテローム性動脈硬化プラーク内の毛細血管形成、心筋血管新生、血管腫、過剰な創傷修復、種々の炎症性疾患、ならびに過剰なおよび/または調節解除された血管新生によって特徴づけられる任意の他の疾患などの、血管新生関連病態を患っている患者は、ヒトHRGPの中央領域(配列番号:2)、または抗血管新生活性を有することを特徴とするPep2もしくはPep2のサブフラグメントといった本発明によって開示されるサブフラグメントのいずれかのような中央領域のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続ポリペプチドによる治療から恩恵を受ける可能性がある。
【0159】
実験
実験1:組織培養
方法
FGF受容体-1(FGFR-1)を過剰発現するブタ大動脈内皮(PAE)細胞株(Wennstrom et al 1992)は、ハムF12/10%ウシ胎仔血清(FCS)で培養し、NIH 3T3マウス線維芽細胞は、ダルベッコ改変培地(DMEM)/10%新生仔ウシ血清(NCS)で培養した。F12、DMEM、および血清は、Life Technologieから購入した。初代ウシ副腎皮質毛細血管内皮(BCE)細胞は、ゼラチンコートしたディッシュ上で、DMEM/10% NCSおよび2 ng/ml FGF-2(Boehringer Mannheim)で培養した。走化性アッセイを行う場合、PAE細胞およびNIH 3T3細胞は0.1% BSA中で、BCE細胞は0.5% NCS中で一晩血清飢餓にした。ヒト胚腎臓(HEK)293-EBNA細胞は、DMEM/10%FCSで培養した。この細胞にはおよそ2ヶ月ごとに0.25 mg/ml G418(Calbiochem)を添加し、EBNA-1発現細胞の陽性選択を確実にした。
【0160】
実験2:HRGP発現ベクター、トランスフェクション、およびタンパク質の精製
この研究では、3つの異なる供給源によるHRGPを用いた;ヒト血漿から精製したHRGP(pHRGP)、HEK-293-EBNA細胞で産生させた、およびHisタグを含むまたは含まない組み換えHRGP(それぞれ、His-HRGPおよびrHRGP)。
【0161】
方法
シグナル配列(アミノ酸残基1〜18)を含むヒトHRGPをコードする全長cDNAを、pCEP-Pu2(Vernersson et al 2002)発現ベクターにクローニングした。同じベクターを用いて、Hisタグ化HRGP変種の発現ベクターも構築した。タンパク質のより短い部分をPCR増幅することにより、切断物を作製した。精製できるように、HRGPコード領域のN末端にHisタグ(6ヒスチジン残基)を付加した。HisタグとHRGPコード領域の間にエンテロキナーゼ切断部位を導入し、Hisタグの除去を可能にした。これらにベクターでは、HRGPシグナル配列を除去し、代わりにPCR産物をpCEP-Pu2中でBM40シグナル配列とインフレームで連結した。
【0162】
HEK 293-EBNA細胞を用いて、組み換えHRGPを産生させた。この細胞は、トランスフェクションしたプラスミドDNAの染色体への組み込みを効率的に妨げるために、EBNA-1遺伝子で安定にトランスフェクションされており(これはpCEP-Pu2ベクターによっても発現される)、その結果、個々のクローンを特徴づける必要なしに、全体として組み換えタンパク質の高収率をもたらす。Lipofectamine(商標)(Invitrogen)を用いてHRGP発現ベクターを293-EBNA細胞株にトランスフェクションし、2.5 mg/mlピューロマイシン(Sigma)で選択した。馴化培地へのウシHRGPの混入を避けるため、FCSの代わりに、組成が明らかな血清代替培地、TCM(商標)(ICN Biomedicals)を用いた。
【0163】
プロテアーゼ阻害剤の存在下でホスホセルロースにてクロマトグラフィーを行い(Kluszinsky et al 1997、Rylatt et al 1981)、新たに採取したヒト血漿からHRGP(pHRGP)を、または馴化培地から組み換え非タグ化HRGP(rHRGP)を精製した。Hisタグ化HRGPは、Ni-NTAアガロース(Qiagen)を用いて製造業者の手順に従って精製した。タンパク質を含む画分をプールし、PBS pH 7.4に対して透析を行った。
【0164】
結果
組み換え非タグ化HRGPは、おそらくはグリコシル化レベルの違いを反映して、SDS-PAGEにおいて、血漿から精製されたHRGPよりも小さい見かけの分子量を有して移動する(図1B)。内因性タンパク質と組み換えタンパク質との移動率のこの相違は、His-HRGPへの10個のさらなるアミノ酸残基の付加(タグを除去できるように、Hisタグおよびエンテロキナーゼ切断部位を提供する)のために、pHRGPとHis-HRGPを比較した場合には明白ではない(図1B)。HRGP特異的抗体を用いたウェスタンブロッティングにより、3つの精製画分のすべてにおいて、全長タンパク質とは別に、多くの小さなサブフラグメントが示された(図1B)。質量分析法による解析で混入ペプチドが認められないことから、これらのサブフラグメントはHRGPの分解産物である可能性が最も高い。
【0165】
実験3:HRGPによるCAM血管新生の抑制
ニワトリ漿尿膜(CAM)アッセイにおいて、血管新生に及ぼすHRGPの効果を試験した。
【0166】
方法
漿尿膜(CAM)アッセイの条件は、本質的に以前に記載された手順(Friedlander et al (1995)、Dixelius et al (2000))に従った。FGF-2(Boehringer Mannheim)およびVEGF-A(Peprotech)はフィルター当たり0.2 mg使用し、精製pHRGPおよび精製rHRGPはフィルター当たり3 mg使用した。処置したCAMを光学顕微鏡で検鏡し、血管分岐点の数に基づき0(低)〜3(高)にスコアリングした。胚5〜6個についての平均値を記録した。
【0167】
結果
HRGPを含むもしくは含まない媒体または増殖因子中に浸したフィルターディスクを大きな血管の近傍のCAM上に置き、3日間インキュベートした。FGF-2などの増殖因子でCAMを処置すると、血管新生が促進された(図1C;表1)。CAMにpHRGPと共にFGF-2またはVEGF-Aを添加すると、すでに確立された血管はこの条件において影響を受けないのに対し、新たに形成される血管の効率的な抑制がもたらされる。rHRGPを用いた場合にも、同様の結果が得られた(データは示さず)。
【0168】
実験4:動物実験:HRGPによる増殖の減少に起因するマウスの腫瘍増殖の抑制。
血管新生は悪性腫瘍の増殖において重要な役割を果たすため、pHRGP(図2A)およびHis-HRGP(図2B)を用いて、マウスの線維肉腫に及ぼすHRGPの効果を試験した。HRGP処置が腫瘍増殖を減少させる機構を決定するため、2つの処置群の腫瘍組織におけるアポトーシス細胞と増殖細胞の比率をさらに定量した。
【0169】
方法
動物試験は地元の動物施設で行ったが、ウプサラ大学動物実験委員会の承認を受け、したがって実験腫瘍における動物の福祉に関するUKCCCR指針に従って実施した(Workman et al (1988))。すべての操作において、マウスはイソフルラン(Forene;Abbott)で麻酔した。5週齢の雌C57BL6/Jマウス(Mollegard/Bomhultgard、デンマーク)の左側腹部に、0.5×106 T241線維肉腫細胞を皮下注射(s.c.)した。明白な腫瘍を有する動物を無作為に選択し(n = 7〜10動物/処置群)、媒体(PBS)、4 mg/kg/日のpHRGP、または5 mg/kg/日のヒトIgGもしくはHis-HRGPを右側腹部に毎日皮下注射した。ノギスを用いて毎日1回、盲検法で腫瘍を測定し、式P/6×幅2×長さによって体積を算出した。腫瘍が上限の2 cm3に達した時点で、マウスを屠殺した。各群において3匹の動物を、PBS pH 7.4に溶解した4%パラホルムアルデヒドで灌流した。標準的な組織学的手順に従って腫瘍をパラフィンに包埋し、4 mm厚の切片を作製した。
【0170】
結果
C57/bl6マウスの左側腹部にT241線維肉腫細胞を皮下注射し、腫瘍が明白になった時点で(4〜6日後)、HRGPまたは対照(PBS;図2AまたはヒトIgG;図2B)により毎日の処置を開始した。比較のために、一方の実験にエンドスタチンを含めた(図2B)。対照の腫瘍の大きさが上限の2 cm3に達するまで(11日;図2A、14日;図2B)、右側腹部への皮下注射として処置を行った。pHRGP(4 mg/kg/日)およびHis-HRGP(5 mg/kg/日)の注射により、腫瘍増殖の大幅な減少が起こり、屠殺下時点で、腫瘍の大きさは、対照処置動物と比較してそれぞれ67%(図2A)および61%(図2B)減少していた。エンドスタチン処置(25 mg/kg/日)では、このモデルにおいて、腫瘍増殖に及ぼす有意な抑制効果は認められなかった(32%減少)。
【0171】
TUNEL染色により、アポトーシス細胞を可視化した。2つの群の間で腫瘍アポトーシスの相違は認められず(図3A)、いずれの群においても腫瘍中のアポトーシス細胞の割合は一般的に低かった(1%未満)。Ki67抗原についての免疫組織化学的染色により、増殖細胞の比率を決定した。図3Bに示すように、対照処置動物の腫瘍中の増殖細胞と比較して、HRGP処置マウスの腫瘍中の増殖細胞は有意に低かった;それぞれ43%および29%。
【0172】
実験5:HRGP処置マウスの腫瘍における血管新生の減少
HRGPで処置したマウスは、腫瘍のパラフィン切片の免疫染色で示されるように、腫瘍において血管新生パターンの減少を示す。
【0173】
方法
標準的な免疫学的(IHC)手順に従って、対照処置動物またはHRGP処置動物の腫瘍のパラフィン切片を、1:500に希釈したヤギ抗マウスCD31抗体(1506;Santa Cruz)を用いて+4℃で一晩インキュベートし、また1:50に希釈したラット抗マウスKi67抗体(TEC-3/M7249;DAKO)を用いて室温で30分インキュベートし、CD31およびKi67について免疫組織化学的に(IHC)染色した。TUNEL技法によるアポトーシス細胞の検出は、ApopTag(商標)(Intergen Company)を用いて製造業者の手順に従って行った。Weibei et al (1979)およびGundersen et al (1988)によって以前に記載された通りに、血管パラメータの立体解析学的定量を行った。各処置群の3つの腫瘍において、腫瘍切片当たり約3000個の細胞から、Tunel陽性細胞およびKi67陽性細胞の相対数の定量を算出した。スチューデントのt検定により、P < 0.05のレベルでの有意性を算出した。
【0174】
結果
対照(IgG)処置マウスまたはHRGP処置マウスのパラフィン包埋腫瘍の切片を、CD31発現に関して免疫組織学的に染色して、血管を可視化した。目視検査により、対照と比較して処置腫瘍の血管新生の程度に明らかな違いがあること、特にHRGP処置に応答して血管径が減少していることが明らかになった(図2C)。Weibei et al (1979)およびGundersen et al (1988)によって以前に記載された通りに、血管パラメータの立体解析学的定量を行った。腫瘍血管新生を定量するこの方法は、腫瘍体積に対する血管の長さ、体積、および表面積が関連する。結果から、決定された6つの血管パラメータは、HRGP処置マウスの腫瘍で減少していたことが示される(図2D)。
【0175】
実験6A:HRGPによる初代内皮細胞の走化性の抑制
HRGPは、抗血管新生分子の共通した特性である内皮細胞の走化性の抑制を介して作用する。
【0176】
方法
100μg/mlの1型コラーゲン溶液(Vitrogen 100、Collagen Corp)でコーティングした微小孔ポリカーボネートフィルター(8μm厚、8μm孔)を使用し、以前に記載されている通りに(Auerbach et al., 1991)、改変ボイデンチャンバーにて遊走アッセイを行った。BCE細胞、PAE/FGFR-1細胞、またはNIH 3T3細胞を、HRGP(100 ng/ml)と共に30分間プレインキュベートするかまたはせず、トリプシン処理し、0.25% BSAおよび1000 KIEのTrasylolを含むダルベッコ改変基本培地(Invitrogen)中、7.5×105細胞/mlの濃度で再懸濁した。FGF-2およびVEGF-Aは5 ng/mlで使用し、HRGPおよびプロテインCインヒビター(PCI)は100 ng/mlで使用し、BSAは0.25%で使用した。37℃で5時間後、遊走した細胞をギムザで染色し、Tenko Optik AB、スウェーデンの画像解析ソフトウェア(Easy Image Analysis)を用いて計数した。試料はすべて、各処置について同時に行った少なくとも6個のウェルで解析した。
【0177】
ペプチドの調製およびZn2+-負荷
ペプチドはInnovagen AB, 22 370 Lund、スウェーデンから購入し、ガラスバイアル中、乾燥状態で納品された。ペプチドを秤量し、1 mg/mlになるようにリン酸緩衝食塩水に溶解した。蒸留H2Oに溶解した10 mM ZnCl2溶液を調製した。ペプチドを10倍モル過剰のペプチドと共に30分インキュベートするか、または最終濃度5 mMのZnCl2を細胞懸濁液中に含めて、これを上記のようにボイデンチャンバーアッセイの両方のウェルに添加した。
【0178】
結果
今日までに記載されている抗血管新生分子の共通した特徴は、インビトロで内皮細胞の走化性を抑制する能力である。これと一致して、100 ng/mlのrHRGPを含めると、図4Aに示すようにBCE細胞のFGF-2誘導性走化性が完全に阻止された。同じ濃度のrHRGPもまた、VEGF-A誘導性走化性を減弱させた(図4B)。しかし、FCSによって誘導される走化性はrHRGPによって抑制されなかった(図4C)。特異性を実証するため、HRGPとほぼ同じ質量の別の血漿タンパク質、プロテインCインヒビター(PCI)を比較のために含めた。PCIは、FGF-2誘導性走化性に影響を及ぼさなかった(図4D)。NIH-3T3マウス線維芽細胞のFGF-2誘導性走化性が、rHRGPの存在によって影響を受けなかったという事実から、内皮細胞に対するHRGPの特異性が示唆された(図4E)。
【0179】
実験6B:HRGPの中央領域(His/Proリッチドメイン)による走化性の抑制
方法/結果
HRCPのどの部分が抗血管新生活性に関与するのかを決定するため、切断型の組み換えタンパク質を作製した(図5A)。HRGPのC末端部分を含み、原型のN末端を欠く切断型は、おそらく不安定性の理由から作製することができなかった。試験した4つの切断型タンパク質(His 2〜5)のうち、His/Proリッチドメイン(His 5)のみがFGF-2に向かう内皮細胞の走化性を抑制した(図5A中の+/-表示を参照のこと)。
【0180】
実験7:HRGPの天然分解産物としての中央領域(His/Proリッチドメイン)
HRGPは血漿から精製した際に、全長タンパク質からタンパク質分解によって切断されて、より小さなサブフラグメントになる。His/Pro領域に由来する1つのサブフラグメントは、このタンパク質の完全な活性を含むことが示唆され(最小の機能的実体)、これは天然に存在するサブフラグメントである可能性がある。
【0181】
方法
精製HRGPを10% SDS-PAGE(pHRGP、rHRGP、およびHis-HRGP)または12.5% SDS-PAGE(His 5)で分離した。モノクローナルマウス抗ヒトHRGP抗体MO37(Takara)は0.05 mg/mlで使用し、ウサギポリクローナルペプチド抗体0115、0116、および0119は1:5000希釈で使用した。Hisタグ化タンパク質の検出には、HRPに直接結合した抗ペンタHis抗体(34460;Qiagen)を1:5000希釈で使用した。
【0182】
結果
3つの異なるペプチド;0115、0116、および0119をウサギに免疫化して、HRGPに対するドメイン特異的抗体を作製した。HRGPタンパク質におけるこれらのペプチドの位置を図5Aに示す。3つのペプチド抗体を用いた全長HRGPのウェスタンブロットから、全長タンパク質とは別に、より小さなHRGP由来サブフラグメントと反応性のある特定パターンが明らかになった(図5C)。興味深いことに、His/Proリッチサブフラグメント(His 5)の30 kDaという見かけの分子量は、HRGPのHis/Proリッチドメインに対して作製された抗体0119によって認識される天然HRGPサブフラグメントの見かけの分子量と等しい(図5C)。このことから、ヒトHRGP中のHis/Proリッチドメインが、インビボにおいて全長タンパク質からタンパク質分解によって放出される可能性が示唆される。
【0183】
実験8:用量反応試験 Pep2
100μg/mlの1型コラーゲン溶液(Vitrogen 100、Collagen Corp)でコーティングした微小孔ポリカーボネートフィルター(8μm厚、8μm孔)を使用し、以前に記載されている通りに(Auerbach et al., 1991)、改変ボイデンチャンバーにて遊走アッセイを行った。BCE細胞をトリプシン処理し、0.25% BSAおよび1000 KIEのTrasylolを含むダルベッコ改変基本培地(Invitrogen)中、7.5×105細胞/mlで再懸濁した。細胞懸濁液を上のチャンバーに添加し、0.25% BSAを含む培地に溶解したFGF-2(10 ng/ml)および/またはペプチド2(20、50または1000 ng/mL)を下のチャンバーに添加した。ペプチドは、10倍モル過剰の(Zn:ペプチド)Zn2+酢酸を含むPBS中に溶解した。37℃で5時間後、フィルターを通過して遊走した細胞をギムザで染色し、Easy Image Analysisソフトウェアを用いて計数した。試料はすべて、いくつかの別の機会において、各処置について少なくとも6個のウェルで解析した。試験の結果を図6に示す。
【0184】
実験9:比較試験 pep2/pep3:走化性
初代内皮細胞を、0.5%標準ウシ血清中で一晩飢餓状態にした。100μg/mlの1型コラーゲン溶液(Vitrogen 100、Collagen Corp)でコーティングした微小孔ポリカーボネートフィルター(8μm厚、8μm孔)を使用し、以前に記載されている通りに(Auerbach et al., 1991)、改変ボイデンチャンバーにて遊走アッセイを行った。細胞をトリプシン処理し、0.25% BSAおよび1000 KIEのTrasylolを含むダルベッコ改変基本培地(Invitrogen)中、7.5×105細胞/mlで再懸濁した。細胞懸濁液を上のチャンバーに添加し、0.25% BSAを含む培地に溶解したFGF-2(10 ng/ml)、HRGP(100 ng/ml)、ペプチド2または3(50 ng/ml)を下のチャンバーに添加した。ペプチドは、10倍モル過剰の(Zn:ペプチド)Zn2+酢酸を含むPBS中に溶解した。37℃で5時間後、フィルターを通過して遊走した細胞をギムザで染色し、Easy Image Analysisソフトウェアを用いて計数した。試料はすべて、各処置について少なくとも6個のウェルで解析した。試験の結果を図7に示す。
【0185】
実験10:動物試験 Pep2
方法
腫瘍試験:5週齢の雌C57BL6/Jマウス(Mollegard/Bomhultgard、デンマーク)の左側腹部に、0.5×106 T241線維肉腫細胞を皮下注射(s.c.)した。明白な腫瘍を有する動物を無作為に選択し(n = 5〜10動物/処置群)、100マイクロリットル量の媒体(NaClに溶解したZn酢酸)、5 mg/kg/日のHIS1(= 全長HRGP)またはPep2を右側腹部に毎日皮下注射した。ノギスを用いて毎日1回、盲検法で腫瘍を測定し、式n/6×幅2×長さによって体積を算出した。腫瘍が上限の2 cm3に達した時点で、マウスを屠殺した。すべての操作において、動物はイソフルラン(Forene;Abbott)で麻酔した。結果を図8に示す。
【0186】
実験11:接着:
BCE細胞を非酵素性の「細胞解離溶液」(Sigma)を用いて剥離し、洗浄してDMEM/0.1% BSAおよびFGF-2(2 ng/ml)に再懸濁した。それぞれBSA、コラーゲンI、コラーゲンIV、ラミニン-1、またはビトロネクチンであらかじめコーティングしたウェル(CytoMatrix ECM 205キット、Chemicon)に、HRGP(100 ng/ml)を含むまたは含まない無血清培地で細胞を播種した。細胞を45分間(コラーゲンI、コラーゲンIV、およびビトロネクチン)または60分間(ラミニン-1)インキュベートし、PBSで3回洗浄し、Hoechst 33342(1 μg/ml;Molecular Probes)で染色した。2×対物レンズを用いて細胞の顕微鏡写真を撮影し、接着細胞の数を「Easy Image Analysis」ソフトウェア(Tekno Optik)を用いて計数した。ANOVA検定およびテューキーの実際の有意差(HSD)検定により、統計解析を行った。標準偏差は合併分散に基づいた。結果を図9に示す。
【0187】
実験12:0119抗体を産生させるためのウサギの免疫化
以下の配列:CRHSHNNNSSDLHPHKHHSHEQHPHを有する25アミノ酸残基ペプチド(0119ペプチドと示される)でウサギを免疫化して、0119抗血清を作製した。残基2〜25は、ヒトHRGPのアミノ酸残基321〜344に相当する。N末端のシステイン残基は、安定性を増すためおよびカップリングを可能にするためにペプチドに付加した。
【0188】
実験13:ヒト血漿中の0119反応性タンパク質のアフィニティー精製
a) 0119抗体のアフィニティー精製:
製造業者の手順に従って、0119ペプチドをSulfolink(Pierce)にカップリングした。0119を免疫化したウサギの血清を、ペプチドをカップリングしたSulfolinkと共に4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、ビーズをカラム(Polyprep、Biorad)に充填し、PBSで洗浄した。4.6 M MgCl2を用いて、結合した物質の溶出を行った;次いで、溶出液をPBSに対して透析した。透析した物質を、pH 7の飽和硫酸アンモニウム溶液を用いて4℃で一晩沈殿させた。沈殿した物質を低速遠心によりペレット化し、このペレットをPBSに溶解した。溶液をPBSに対して透析した。280での吸光度を測定し、タンパク質濃度を概算した。
【0189】
b) 精製0119抗体のセファロースカラムへのカップリングおよび血漿からの精製
製造業者の手順に従って、精製した0119抗体をHiTrap NHS活性化セファロースカラム(Amersham Pharmacia Biotech)にカップリングした。ヒト血漿を0.2 M NaHCO3、0.5 M NaCl、pH 8.3で1:10希釈し、カラムに供した。同じ緩衝液で洗浄した後、100 mMグリシン pH 2.7を用いて、結合した物質を0.5 ml画分中に溶出し、溶出された物質のpHをTris-HCl、pH 8.5を用いてpH 7に調整した。タンパク質含有画分をSDS-PAGEで分離し、銀染色および0119抗血清を用いた免疫ブロッティングによりタンパク質を可視化した。
【0190】
結果を図11に示す。
【0191】
実験14:合成ペプチド
方法
合成ペプチドは、Multiple Peptide Systems、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国が作製し、これを1 mg/mlの保存濃度で1 mM ZnCl2/0.5×PBSに溶解した。ペプチドの配列は以下の通りであった:

いくつかのペプチドは、カルボキシ末端をアミド化し、かつアミノ末端をアセチル化して合成した;

【0192】
100μg/mlの1型コラーゲン溶液(Vitrogen 100、Collagen Corp)でコーティングした微小孔ポリカーボネートフィルター(8μm厚、8μm孔)を使用し、以前に記載されている通りに(Auerbach et al., 1991)、改変ボイデンチャンバーにて遊走アッセイを行った。初代ウシ副腎皮質毛細血管内皮(BCE)細胞をトリプシン処理し、0.25% BSAおよび1000 KIEのTrasylolを含むダルベッコ改変基本培地(Invitrogen)中、7.5×105細胞/mlの濃度で再懸濁した。上のチャンバーに細胞懸濁液を添加した。フィルターの下側のチャンバーには、0.25%BSA、および表示した場合には10 ng/ml線維芽細胞増殖因子(FGF-2;Peprotech)を含めた培地を添加した。293細胞で産生させた組み換えHRGPまたは合成ペプチドをすべて最終濃度100 ng/mlで(または表示の通りに)、単独でまたはFGF-2と組み合わせて、両方のチャンバーに添加した。37℃で5時間後、培地を除去し、フィルターに固着している細胞を純粋メタノールで固定し、ギムザ染色液で染色した。フィルターの下面上の細胞数を、TeknoOptic、スウェーデンの画像解析ソフトウェア(Easy Image Analysis)を用いて計数した。試料はすべて、各処置について同時に行った一連の少なくとも6個のウェルで解析した。
【0193】
結果
上記の項に記載した走化性アッセイの結果を、以下の表2に示す。
【0194】
【表2】

表2に示すように、Pep9A、Pep10、Pep12A、Pep13A、およびPep15Aはすべて、Pep8およびPep11Aと比較して走化性を抑制した。
【0195】
実験16:SDS-PAGEおよび免疫ブロッティング
試料(図10、実験13、および図11を参照のこと)をSDS-PAGEで分離し、Hybond-C extra(Amersham Pharmacia Biotech)に転写した。0119抗体を用いて、免疫ブロッティングを行った。化学発光検出系(Amersham Biosciences)によりタンパク質を可視化した。
【0196】
実験17:ヒト腎臓の免疫蛍光染色
ウプサラ大学病院のバイオバンクからヒトの正常腎臓組織を入手し、ウプサラ大学倫理委員会の承認を受けてこれを使用した。簡潔に説明すると、6μmの凍結切片を氷冷メタノール中で15分間固定し、PBS中で5分間再水和させ、次いで3%ウシ血清アルブミン中で室温にて1時間ブロッキングした。その後、切片をアフィニティー精製した0119抗体と共に2時間インキュベートし、PBS中で15分間洗浄し、抗ウサギFab2-Alexa 568(1:1000希釈:Invitrogen)およびFITC結合Ulex Europeusアグルチニン-1(UEA-1;1:200希釈;Vector Laboratories)と共に室温で1時間インキュベートし、その後PBSで十分に洗浄した。最後に、切片をFluoromount-G(Southern Biotechnology Associates)中に封入し、LSM 510 META共焦点顕微鏡(Carl Zeiss)により解析した。結果を図12に示す。
【0197】
参考文献:



【図面の簡単な説明】
【0198】
(図1)ヒトHRGPによるCAM血管新生の抑制。
A. HRGPは構造的に、以下の3つの主要なドメインに分割することができる;2つのシスタチン様ストレッチを有するN末端、ヒスチジン-プロリンリッチ(His/Proリッチ)中央ドメイン、およびC末端。His/Proリッチ中央ドメインおよびC末端はいずれも、タンパク質のN末端部分とジスルフィド結合している。
B. 3つの異なる供給源からHRGPが得られた;ヒト血漿から精製されたHRGP(pHRGP)、または組み換えによって作製された、Hisタグを含むもしくは含まないHRGP(それぞれ、His-HRGPおよびrHRGP)。クマシー染色およびHRGP特異的抗体を用いたウェスタンブロット(WB)により、約75 kDaの全長タンパク質の他に、多くのより小さなサブフラグメントが示された。
C. ニワトリCAMにおけるFGF誘導性血管新生は、HRGPの存在下で効果的に抑制された。
(図2)HRGPによる腫瘍増殖および血管新生の抑制。
明白な線維肉腫腫瘍を有するマウスに、pHRGPもしくはPBS(A)またはHis-HRGP、ヒトIgG(B)を毎日皮下注射し、ノギスを用いて腫瘍体積を毎日測定した。比較のため、一方の試験にエンドスタチン(ES)を含めた(B)。C. IgG(ctrl)またはHRGPで処置したマウスの腫瘍のパラフィン切片におけるCD31に関する染色。矢印は血管を示す。D. IgG処置マウス(ctrl)またはHRGP処置マウスの3つの腫瘍における血管パラメータの立体解析学的定量。各腫瘍による個々の値を丸で示す。
(図3)HRGP処置マウスの腫瘍における増殖の減少。
HRGP処置マウスまたはIgG処置マウス(ctrl)の腫瘍のパラフィン切片を、A. アポトーシス(TUNEL陽性)細胞およびB. 増殖(Ki67陽性)細胞について染色した。計数した細胞の総数当たりの陽性染色細胞の数として比率を表す。*はP < 0.05を示す。
(図4)HRGPによる初代内皮細胞の走化性の抑制。
A. FGF-2(F)によって誘導される初代BCE細胞の走化性は、100 ng/ml HRGP(H)の存在下において完全に抑制された。
B. 同じ濃度のHRGPは、VEGF-A(V)誘導性走化性もまた抑制した。
C. しかし、BCE細胞のFCS誘導性走化性は、HRGPに存在下で抑制されなかった。
D. PCI(P)は、BCE細胞のFGF-2誘導性走化性に影響を及ぼさなかった。
E. NIH 3T3マウス線維芽細胞のFGF-2誘導性走化性は、HRGPによって抑制されなかった。
(図5)HRGPのHis/Proリッチドメインによる走化性の抑制。
A. HRGPおよび切断型(His 2〜5)の概略図。内皮細胞のFGF-2誘導性走化性を抑制する能力を+/-によって示す。
B. 内皮細胞のFGF-2誘導性走化性に及ぼすHis 5の抑制効果の定量化。
C. ペプチド抗体0115、0116、および0119を用いた成熟HRGPのウェスタンブロット(WB)により、異なる免疫反応性パターンが得られる(10% SDS-PAGE)。
D. 抗体0119を用いたサブフラグメントHis 5のウェスタンブロットにより、約30 kDaで移動する1つのペプチドとの免疫反応性が示される(12.5% SDS-PAGE)。
(図6)Pep2の用量反応
FGF-2によって誘導される初代BCE細胞の走化性は、Pep2によって用量依存的に抑制された。
(図7)比較試験 Pep2/Pep3
FGF-2によって誘導される初代BCE細胞の走化性は、HRGP(100 ng/ml)およびPep2(50 ng/ml)により抑制されたが、Pep 3(50 ng/ml)では抑制されなかった。
(図8)Pep2による腫瘍増殖の抑制
明白な線維肉腫腫瘍を有するマウスに、媒体(NaClに溶解したZn酢酸)、5 mg/kg/日のPep 2、または5 mg/kg/日の全長HRGPを毎日皮下注射し、ノギスを用いて腫瘍体積を毎日測定した。
(図9)HRGPによる、ビトロネクチン、コラーゲンI、およびコラーゲンIVに対する内皮細胞の接着の減少。
HRGP(100 ng/ml)を含むまたは含まない無血清培地でBCE細胞を播種し、コラーゲンI(Co I)、コラーゲンIV(Co IV)、ラミニン-1(Ln-1)、およびビトロネクチン(VN)でコーティングしたウェルに接着させた。洗浄して非接着細胞を除去し、残った細胞を計数した。エラーバーは標準偏差を示す。
(図10)HRGPから放出された場合にのみ活性を有する中央領域(His/Proドメイン)。
His4がHRGPのHis/Proドメインを含むにもかかわらず、内皮細胞の走化性を抑制できないことを、精製タンパク質のSDS-PAGEおよび免疫ブロッティングにより解析した。His/Proドメインを認識する0119ウサギ抗血清を用いたブロッティングにより、His/ProドメインはHis1、全長タンパク質から放出されるが、His4からは放出されないことが示された。本発明者らは、His/Proドメインは、内皮細胞の走化性を抑制し得るためにはHRGPから放出される必要があると結論づけた。
(図11)HRGPの中央領域(His/Proドメイン)の血清中循環断片としての存在。
新鮮な血清を採取し、セファロースに固定化した精製0119抗体でのアフィニティークロマトグラフィーによりこれを精製した。溶出された物質を画分中に回収し、SDS-PAGEおよびHis/Proドメインに対する0119抗血清を用いた免疫ブロッティングにより解析した。矢印は、免疫反応性の遊離His/Proドメイン含有断片を示す。
(図12)HRGPまたはHRGPの中央領域の血管基底膜中への沈着。
ヒトの正常腎臓の切片を作製し、Ulex Europeusアグルチニン(UEA)と組み合わせて精製0119抗体を使用して免疫染色を行った。0119抗体によって媒介される免疫反応性は赤色で、またUEA反応性は緑色で示される(白黒写真では、それぞれ灰色および薄い灰色)。右側のパネルは、反応性の重複を示すための重ね合わせ写真を示す。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図3】

【図4】

【図5A】

【図5B】

【図5C】

【図5D】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:2に相当するヒトヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRGP)の中央領域を含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項2】
成熟ヒトHRGPの領域330〜364(配列番号:1)に相当する、ヒトHRGPの中央領域(配列番号:2)のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項3】
サブフラグメントが3〜35アミノ酸のアミノ酸長を有する、請求項2記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項4】
3〜25アミノ酸、3〜20アミノ酸、3〜15アミノ酸、3〜10アミノ酸、および3〜8アミノ酸からなる群より選択されるアミノ酸長を有する、請求項3記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項5】
配列番号:18に相当するヒトHRGPの中央領域(配列番号:2)のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項6】
配列番号:17に相当するヒトHRGPの中央領域(配列番号:2)のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項7】
ポリペプチドのC末端にさならるグリシン(G)残基(残基26)を含み、配列番号:16に相当する、請求項6記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項8】
配列番号:22に相当するヒトHRGPの中央領域(配列番号:2)のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項9】
N末端および/またはC末端においてアセチル化および/またはアミド化により修飾され、配列番号:21に相当する、請求項8記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項10】
配列番号:24に相当するヒトHRGPの中央領域(配列番号:2)のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項11】
N末端および/またはC末端においてアセチル化および/またはアミド化により修飾され、配列番号:23に相当する、請求項10記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項12】
配列番号:26に相当するヒトHRGPの中央領域(配列番号:2)のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項13】
N末端および/またはC末端においてアセチル化および/またはアミド化により修飾され、配列番号:25に相当する、請求項12記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項14】
配列番号:28に相当するヒトHRGPの中央領域(配列番号:2)のサブフラグメントを含む、実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項15】
N末端および/またはC末端においてアセチル化および/またはアミド化により修飾され、配列番号:27に相当する、請求項14記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項16】
ヒトHRGPから単離された、前記請求項のいずれか一項記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項17】
血漿から精製された、タンパク質分解によってプロセシングされたヒトHRGPから単離された、前記請求項のいずれか一項記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項18】
組み換えによって作製された、および/または組み換えによって作製されたヒトHRGPから単離された、請求項1〜15のいずれか一項記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項19】
合成によって作製された、請求項1〜15のいずれか一項記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項20】
トロンボスポンジンと結合しないことを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項21】
血管新生を促進しないことを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド。
【請求項22】
前記請求項のいずれか一項記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチドの有効量を含む、抗血管新生薬学的組成物。
【請求項23】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項22記載の抗血管新生薬学的組成物。
【請求項24】
抗血管新生薬をさらに含む、請求項22〜23のいずれか一項記載の抗血管新生薬学的組成物。
【請求項25】
抗血管新生薬が、アンジオスタチン、トロンボスタチン(thrombostatin)、エンドスタチン、インターフェロン-α、インターフェロン誘導因子10、および血小板因子4からなる群より選択される、請求項24記載の抗血管新生薬学的組成物。
【請求項26】
抗腫瘍薬をさらに含む、請求項22〜25のいずれか一項記載の抗血管新生薬学的組成物。
【請求項27】
抗腫瘍薬が、タキソール、シクロホスファミド、カルボプラチン、シスプラチン(cisplatinum)、シスプラチン(cisplatin)、ガンシクロビル、カンプトセシン、パクリタキセル、ヒドロキシ尿素、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシシチジン、およびスラミンからなる群より選択される、請求項26記載の抗血管新生薬学的組成物。
【請求項28】
抗炎症薬をさらに含む、請求項22〜27のいずれか一項記載の抗血管新生薬学的組成物。
【請求項29】
抗炎症薬が、プレドニゾン、cox-2阻害薬、イブプロフェン、およびアスピリンからなる群より選択される、請求項28記載の抗血管新生薬学的組成物。
【請求項30】
有効量のZn2+をさらに含む、請求項22〜29のいずれか一項記載の抗血管新生薬学的組成物。
【請求項31】
薬剤として使用するための、請求項1〜21のいずれか一項記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド、および/または請求項22〜30のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項32】
哺乳動物の血管新生を抑制する薬剤を製造するための、請求項1〜21のいずれか一項記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド、および/または請求項22〜30のいずれか一項記載の薬学的組成物の使用。
【請求項33】
哺乳動物の癌を治療および/または予防する薬剤を製造するための、請求項1〜21のいずれか一項記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド、および/または請求項22〜30のいずれか一項記載の薬学的組成物の使用。
【請求項34】
哺乳動物の腫瘍増殖を抑制する薬剤を製造するための、請求項1〜21のいずれか一項記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド、および/または請求項22〜30のいずれか一項記載の薬学的組成物の使用。
【請求項35】
哺乳動物の心筋血管新生、糖尿病性網膜症、糖尿病性血管新生、不適切な創傷治癒、または炎症性疾患を治療および/または抑制する薬剤を製造するための、請求項1〜21のいずれか一項記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド、および/または請求項22〜30のいずれか一項記載の薬学的組成物の使用。
【請求項36】
哺乳動物がマウスである、請求項32〜35のいずれか一項記載の使用。
【請求項37】
哺乳動物がラットである、請求項32〜35のいずれか一項記載の使用。
【請求項38】
哺乳動物がヒトである、請求項32〜35のいずれか一項記載の使用。
【請求項39】
哺乳動物の血管新生を抑制する方法であって、請求項1〜21のいずれか一項記載の実質的に純粋な連続した抗血管新生ポリペプチド、および/または請求項22〜30のいずれか一項記載の薬学的組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与する段階を含む方法。
【請求項40】
請求項1〜21のいずれか一項記載の連続サブフラグメントをコードする、単離された核酸配列。
【請求項41】
任意に、真核生物または原核生物宿主細胞において核酸配列の発現を制御するプロモーターおよび/またはさらなる制御配列に機能的に連結された、請求項40記載の核酸配列を含む発現ベクター。
【請求項42】
請求項41記載の発現ベクターで形質転換したおよび/または該ベクターを形質移入した宿主細胞。
【請求項43】
ヒト、マウス、またはラット細胞などの哺乳動物細胞、ならびに細菌、酵母、および昆虫細胞からなる群より選択される、請求項42記載の宿主細胞。
【請求項44】
哺乳動物の血管新生を抑制する方法であって、請求項40記載の単離された核酸、請求項42もしくは43のいずれか一項記載の宿主細胞、および/または請求項41記載のベクターを、それを必要とする哺乳動物に投与する段階を含む方法。

【公表番号】特表2007−528710(P2007−528710A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518589(P2006−518589)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001091
【国際公開番号】WO2005/003162
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505000321)イノベンタス プロジェクト アーベー (3)
【Fターム(参考)】