説明

内壁面の検査装置

【課題】動圧軸受けモータにより10000rpm以上の回転ができるため、高速で検査することができるとともに、動圧軸受けは振動も少なく像の歪みによる分解能の差がなく、低騒音で高精度の内壁面の検査装置を提供する。
【解決手段】ケース体と、このケース体の一面のほぼ中央部より突出するように端部が固定されたスリーブ、このスリーブ内に気体空間を介して配置された光を軸心方向に通すことができるシャフト、このシャフトに固定された回転部材とを備える動圧軸受けモータとシャフトの両端部に位置するように取付けられたビームスプリッターとケース体内に設置された一方のビームスプリッターを介してシャフトに光を通し他方のビームスプリッターより測定する内壁面へ光を照射する発光素子と測定する内壁面からの反射光を他方のビームスプリッター、シャフト、一方のビームスプリッターを介して受光する高速の受光素子とで内壁面の検査装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧シリンダー、シリンダーボア等の円筒の内壁面の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内壁面の検査装置としては撮像カメラの前に円錐ミラーを配置し、この円錐ミラーでの反射光を受光して得られる内壁面全周の画像を取り込んで検査している。
また、ファイバーセンサを回転させる方法がある。
【0003】
前者の円錐ミラーを用いる内壁面の検査装置では得られる像が歪み、画面の場所により分解能が異なってしまい、そのため場所によっては欠陥を見逃す恐れがあるという欠点があった。
また、後者のファイバーセンサを用いる内壁面の検査装置では、回転数が2000rpm程度で、高速化の点で問題があった。
【特許文献1】特開平6−241760
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、動圧軸受けモータを使用するので、10000rpm以上の回転数で回すことができるため、高速で検査することができるとともに、動圧軸受けは振動も少なく像の歪みによる分解能の差がなく、低騒音で高精度で内壁面の検査を行なうことができる内壁面の検査装置を提供することを目的としている。
【0005】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明はケース体と、このケース体の一面のほぼ中央部より突出するように端部が固定された光を軸心方向に通すことができるシャフト、このシャフト外周部に気体空間を介して回転可能に配置されたスリーブ、このスリーブに固定された回転部材とを備える動圧軸受けモータと、前記ケース体に取付けられた測定する内壁面へ光を照射する照明装置と、この照明装置で測定する内壁面へ照射された光の反射光を前記シャフトへ導くことができるように取付けられた反射ミラーと、この反射ミラーからの光を受光する、前記ケース体内に設置した高速の受光素子とで内壁面の検査装置を構成している。
【発明の効果】
【0007】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
【0008】
(1)ケース体と、このケース体の一面のほぼ中央部より突出するように端部が固定された光を軸心方向に通すことができるシャフト、このシャフト外周部に気体空間を介して回転可能に配置されたスリーブ、このスリーブに固定された回転部材とを備える動圧軸受けモータと、前記ケース体に取付けられた測定する内壁面へ光を照射する照明装置と、この照明装置で測定する内壁面へ照射された光の反射光を前記シャフトへ導くことができるように取付けられた反射ミラーと、この反射ミラーからの光を受光する、前記ケース体内に設置した高速の受光素子とで構成されているので、反射ミラーや高速の受光素子を動圧軸受けで、低騒音で高速で回転させることができる。
したがって、高速で内壁面の検査を行なうことができる。
【0009】
(2)前記(1)によって、動圧軸受けは振動も少ないため、反射ミラーや高速の受光素子の振動も少ないので、像の歪みによる分解能の差がなく、高精度に内壁面の検査を行なうことができる。
【0010】
(3)請求項2も前記(1)、(2)と同様な効果が得られるとともに、送り機構で検査する内壁面内へスムーズに送って、内壁面の検査を行なうことができる。
【0011】
(4)請求項3も前記(1)、(2)と同様な効果が得られるとともに、カバーによって回転部分を保護して、回転部分の故障を効率よく防止することができる。
【0012】
(5)請求項4も前記(1)、(2)と同様な作用効果が得られるとともに、シャフトが確実に気体動圧を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に示す本発明を実施するための最良の形態により、本発明を詳細に説明する。
【0014】
図1ないし図5に示す本発明を実施するための最良の第1の形態において、1は油圧シリンダー、シリンダーボア等の円筒2の内壁面2aを検査する本発明の内壁面の検査装置で、この内壁面の検査装置1はケース体3と、このケース体3の一面のほぼ中央部より突出するように端部が固定された光を軸心方向に通すことができる光通過用の透孔6が形成されたシャフト7、このシャフト7の外周部に気体空間5を介して回転可能に配置されたスリーブ4、このスリーブ4に固定された永久磁石8およびバックヨーク9を支持する回転部材としてのハブ10、この永久磁石8とバックヨーク9の間に位置するように、前記ケース体3に端部が固定されたコアレス波形連続コイル等のコイル11とからなる動圧軸受けモータ12と、前記ケース体3内に固定状態で取付けられた前記動圧軸受けモータ12のシャフト7の一方の端部を覆う一方のビームスプリッター13と、この一方のビームスプリッター13を介して前記シャフト7の透孔6内へ光を通すことができるように、前記ケース体3内に取付けられた照明装置としての発光素子14と、前記シャフト7の他方の端部に位置する前記ハブ10に固定されたバランサー15を備えるプリズム型の反射ミラー16と、前記ビームスプリッター13からの反射光を受光することができるように前記ケース体3内に取付けられた高速の受光素子17と、前記発光素子14からの光を集光して前記ビームスプリッター13へ照射できるように取付けられた集光レンズ18と、前記反射ミラー16から反射される光を集光して測定する円筒2の内壁面2aへ照射させるように、該反射ミラー16に取付けられた集光レンズ19と、前記ビームスプリッター13からの反射光を集光して前記受光素子17へ照射させる集光レンズ20と、前記ケース体3を前記動圧軸受けモータ12のシャフト7の軸心方向と同方向にスライド移動させる送り機構21と、前記ケース体3に取付けられた前記動圧軸受けモータ12の回転部材の外周部を覆う光透過性の材質で形成されたカバー22と、前記送り機構21のケース23に取付けられた内壁面を検査する円筒2を支持する支持台24と、前記受光素子17で受光される反射光を解析するパソコン等の解析装置25とで構成されている。
【0015】
前記動圧軸受けモータ12のシャフト7は図5に示すように、中心部に透孔6が形成されたシャフト本体26と、このシャフト本体26の両端部に透孔6が中央部に位置するように形成された凹部27、27に挿入され、密封されたガラス栓28、28とで構成されている。
【0016】
前記送り装置21はケース23より前記ケース体3に先端部が取付けられた軸29が出没させるもので、該軸29の出没動作は油圧シリンダー、エアーシリンダー、電動モータ等を用いた、従来から一般に出没移動させる装置30であればどんな装置であってもよい。
【0017】
上記構成の内壁面の検査装置1は支持台24に内壁面を検査する円筒2を支持させ、動圧軸受けモータ12を駆動させるとともに、発光素子14を発光させながら送り装置21で円筒2内を移動させると、発光素子14からの光は集光レンズ18、ビームスプリッター13、シャフト7の透孔6、反射ミラー16、集光レンズ19を通過して円筒2の内壁面2aへ照射され、該内壁面2aからの反射光は集光レンズ19、反射ミラー16、シャフト7の透孔6、ビームスプリッター13、集光レンズ20を通過して受光素子17で受光される。
このため、円筒2の内壁面2aに発光素子14からの光を照射しながら高速回転しながら反射光を受光素子17で受光し、解析装置25で解析する作業が円筒2の円周方向および軸心方向で行なうことができる。
しかも、その速度は動圧軸受けモータ12の高速回転で行なうことができる。
[発明を実施するための異なる形態]
【0018】
次に、図6ないし図11に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0019】
図6ないし図8に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と主に異なる点は、ケース体3の外周部に
測定する円筒2の内壁面2aの全周部を照明することができるように光を照射する複数個の照明ライト14aを備えた照明装置14Aと、ケース体3内にシャフト7の透孔6からの光を受光する高速の受光素子17とを備え、前記照明装置14Aで測定する円筒2の内壁面2aに照射された、該内壁面2aが鏡面でなく光が乱反射した乱反射光を集光レンズ19、反射ミラー16、シャフト7の透孔6を通過させて光は高速の受光素子17で受光されるようにした点で、このように構成した内壁面の検査装置1Aにしても、測定する円筒2の内壁面2aが鏡面でない部分での乱反射光を高速の受光素子17で受光でき、該部分の面状態が悪いという測定ができる。
【0020】
図9ないし図11に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と主に異なる点は、測定する円筒2内を貫通する長さのカバー22Aを送り装置21のケース23に取付けた点で、このように構成した内壁面の検査装置1Bにしても、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0021】
なお、前記本発明を実施するための各形態ではバランサー15を備えるプリズム型の反射ミラー16により、ハブ10の透孔を塞いだものについて説明したが、本発明はこれに限らず、反射ミラー16とバランサー15とを一体とせず、バランサー15を回転部材であるハブ10の任意の箇所に固定状態で取付けられることは勿論、ハブ10の透孔を板状のガラス部材により塞ぐことも、そのまま開放しておくこともできる。
さらに光が透過する材質にすることにより、シャフトやハブの透孔を不用とすることもできる。
この場合、バランサー15はいわゆる重量を有する接着剤などのバランスウェトが用いられるが、回転部材の外周部に設ければ、その分バランサーを小さくできる。
また、シャフトの上端面と、ハブ中央の透孔を塞ぐことにより、シャフト上端面とハブ中央底面とが対向する箇所が、スリーブ上方の内側面により、ほぼ密閉された空間となるため、回転部材のスラスト方向の位置が安定するという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は内壁面の検査装置を製造する産業で利用される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を実施するための最良の第1の形態の正面図。
【図2】本発明を実施するための最良の第1の形態の平面図。
【図3】図1の3−3線に沿う断面図。
【図4】本発明を実施するための最良の第1の形態の要部拡大断面図。
【図5】本発明を実施するための最良の第1の形態のシャフトの説明図。
【図6】本発明を実施するための第2の形態の縦断面図。
【図7】本発明を実施するための第2の形態の要部拡大断面図。
【図8】図6の8−8線に沿う断面図。
【図9】本発明を実施するための第3の形態の正面図。
【図10】図9の10−10線に沿う断面図。
【図11】本発明を実施するための第3の形態の動作説明図。
【符号の説明】
【0024】
1、1A、1B:内壁面の検査装置、
2:円筒、 3:ケース体、
4:スリーブ、 5:気体空間、
6:透孔、 7:シャフト、
8:永久磁石、 9:バックヨーク、
10:ハブ、 11:コイル、
12:動圧軸受モータ、 13:ビームスプリッター、
14:発光素子、 15:バランサー、
16:反射ミラー、 17:受光素子、
18:集光レンズ、 19:集光レンズ、
20:集光レンズ、 21:送り機構、
22、22A:カバー、 23:ケース、
24:支持台、 25:解析装置、
26:シャフト本体、 27:凹部、
28:ガラス栓、 29:軸、
30:出没移動させる装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース体と、このケース体の一面のほぼ中央部より突出するように端部が固定された光を軸心方向に通すことができるシャフト、このシャフト外周部に気体空間を介して回転可能に配置されたスリーブ、このスリーブに固定された回転部材とを備える動圧軸受けモータと、前記ケース体に取付けられた測定する内壁面へ光を照射する照明装置と、この照明装置で測定する内壁面へ照射された光の反射光を前記シャフトへ導くことができるように取付けられた反射ミラーと、この反射ミラーからの光を受光する、前記ケース体内に設置した高速の受光素子とからなることを特徴とする内壁面の検査装置。
【請求項2】
ケース体は動圧軸受けモータのシャフトの軸心方向と同方向へ移動させる送り機構に取付けられていることを特徴とする請求項1記載の内壁面の検査装置。
【請求項3】
動圧軸受けモータの回転部材の外周部は光透過性の材質で形成されたカバーで覆われていることを特徴とする請求項1、2いずれかに記載の内壁面の検査装置。
【請求項4】
動圧軸受けモータのシャフトと、回転部材のハブは中心部に軸心方向の透孔が形成され、気体動圧を使用するため、シャフトと、回転部材のハブ
の透孔が光透過性の材質で密閉されていることを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載の内壁面の検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−337171(P2006−337171A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162110(P2005−162110)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000105659)日本電産コパル電子株式会社 (85)
【Fターム(参考)】