説明

内引き出し付きキャビネット

【課題】内引き出しをキャビネットから外さずに、容易に高さを変更できるとともに、高さ変更操作中に使用されてもキャビネットから脱落する危険もない、安全な高さ可変内引き出し付キャビネットを提供する。
【解決手段】前面が開口したキャビネットと、格納時キャビネット前面の開口部を塞ぐ外引き出しと、前記外引き出しの収納空間上方で、スライド手段によりキャビネットと前後方向にスライド可能に連結した内引き出し300とを有した内引き出し付きキャビネットにおいて、前記内引き出し300は、前記スライド手段と連結した側板301と、底板304と、該底板304を前記側板301に対し複数の高さ位置に固定できる高さ可変機構310とを備え、前記高さ可変機構310は、前記側板301と前記底板304とを上下方向に移動可能に連結させ、複数の所定位置で互いに嵌合連結する内引き出し付きキャビネット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面が開口したキャビネットに開口部から出し入れ可能に形成された引き出し付きキャビネットに関し、特に引き出し収納空間内上部に備え付けられた内引き出しに好適なキャビネットの発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、外引き出し収納空間の上部の狭い空間に内引き出しを形成したものが知られている。この内引き出しは、その収納空間の高さが制約され、薄い収納物しか収納することができなかった。そのため、背丈の高い収納物が入れられず、高さのポジションが出し入れに好適な位置にあるにもかかわらず収納物が制限され有効に活用されないケースが多い。
引き出しに収納される物品は、一般的にその大きさや形状が異なる。限られた収納空間にできるだけ多くの物品を収納するためには、収納物の使用頻度、大きさ、形状などに合わせて収納空間を変更できることが望ましい。また収納物の使用頻度、大きさ、形状などは利用者によって、さらには同じ利用者でもライフスタイルの変化によって異なるため、利用者が収納空間の高さを個人の使い勝手にあわせて調整できることが望ましい。
【0003】
そこで、外引き出しの内側に内引き出しを設け、その内引き出しの高さを変更可能としたものが提案されている。(例えば、特許文献1参照。
この提案では、内引き出しをスライドさせるためにキャビネット側板に取り付けられたスライドレール受けの取り付け高さを変更することで、内引き出し上方空間の高さを変更可能としている。
【0004】
しかしこの提案の場合、高さを変更するために、内引き出し側板に固定したスライドレールをキャビネット側板に装着したスライドレール受けから分離しなければならず、内引き出しを一旦キャビネットから外さなければならない。さらに内引き出しを手前に引き抜いて外す場合には、外引き出しの前扉が邪魔をするため、外引き出しまで外さなければならない。その後、キャビネット側板に取り付けられたスライドレール受けの位置を変え、再度内引き出しのスライドレールをキャビネットのスライドレール受けに係合させ、外した外引き出しを再度納める必要がある。よって、高さを変更するために、重い外引き出しや内引き出しを外さなければならず、さらに、外引き出し上方の空間にもぐりこんでキャビネットのスライドレール受けの固定位置をずらす作業をしなければならない。よって、ユーザーが作業するには非常に面倒であり、その結果本来の目的である高さを変更することに作業的な負荷が多く十分なその機能の活用に至らないケースが多い。
また、高さ変更作業後、スライドレールの固定が十分でない場合に引き出しが脱落し、危険であるという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−164348号公報(第8頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、内引き出しの高さを変更する操作において、内引き出しをスライド手段から外すことなく、肉体的な負荷が少なく容易に高さを変更でき、さらに高さ変更操作中、または高さを変更する操作が完全に行われずに使用されても内引き出しが脱落することが無く、安全な内引き出し付きキャビネットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、前面が開口したキャビネット本体と、上面が開口し、キャビネットへの格納時キャビネット前面の開口部を塞ぐ前扉を有した外引き出しと、前記外引き出しの収納空間上方で、上面が開口し、スライド手段によりキャビネット本体と前後方向にスライド可能に連結した内引き出しと、を有した内引き出し付きキャビネットにおいて、前記内引き出しは、前記スライド手段と連結した中間部材と、収納物を戴置する底板と、該底板を前記中間部材に対し複数の高さ位置に固定できる高さ可変手段とを備え、前記高さ可変手段は、前記中間部材と前記底板とを離脱不能で上下方向に移動可能に連結させ、複数の所定位置で互いに嵌合連結することを特徴とする内引き出し付きキャビネットが提供される。
これにより、中間部材は、一定の高さを維持しつつ、キャビネットに対して前後にスライドでき、内引き出しの底板は、中間部材から離脱することなく上下方向に移動し、所定高さで中間部材と連結することができる。これにより、内引き出しの高さ方向の収納空間を変更することができる。
【0008】
よって、内引き出しの高さを変更するために外引き出しや内引き出しをわざわざキャビネットから外して離脱させることなく、容易に高さ変更が可能となり、高さ変更操作中、または高さを変更する操作が完全に行われずに使用されても内引き出しがキャビネットから外れて落下することがない
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内引き出しの高さを変えるためにわざわざ外引き出し、内引き出しをキャビネットから外す必要がなく容易に高さを変更できるとともに、高さ変更操作中、または高さを変更する操作が完全に行われずに使用されてもキャビネットから脱落する危険もない、安全な高さ可変内引き出し付キャビネットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の構造を示す透明斜視図である。
【図2】本発明の内引き出しの構造を示す斜視図である。
【図3】図2A部詳細分解図である。
【図4】図3のピン連結部材を示す外観図である。
【図5】本発明の別の実施例を示す内引き出し斜視図である。
【図6】図5のB部を拡大した詳細図である。
【図7】図6のC切断面を示す断面図である。
【図8】図7のD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図を用いて説明する。
図1は本発明の内引き出し付きキャビネットの構造を示す透明斜視図である。
内引き出し付きキャビネットは、前面が開口したキャビネット100と、その開口部を塞ぐ前板を備えた上段引き出し200および外引き出し400と、外引き出し400の上方空間に位置する内引き出し300と、上段引き出し200と外引き出し400をキャビネット100に対し前後方向スライド自在にするスライドレール(図では省略)と、内引き出し300をキャビネット100に対し前後方向スライド自在にするスライドレール305と、で構成される。
下段引き出し400を手前側に引き、外下段引き出し400を開放することにより内引き出し300を利用することが可能となる。
【0012】
キャビネット100は、2枚のキャビネット側板101と、キャビネット裏板102と、天板(透視図のため図示せず)と、キャビネット底板104で形成され、前方が開口している。
【0013】
内引き出し300の構造を図2に示す。内引き出し300は、2枚の側板301と、前板302と、背板303と、底板304と、高さ可変機構310と、詳細を後述するL字アングル306と、で構成さる。前板302と背板303と底板304は一体的に構成されている。なお、側板301には、スライドレール305のスライド部材305aが取り付けられており、これがキャビネット側板101に取り付けたスライドレールの受けレール305bと係合することで、内引き出し300はキャビネット100にスライド自在に取り付けられる。
本実施例では内引き出し300の側板301に中間部材の機能を持たせ、構造の簡略化を図っているが、側板301とは別体に中間部材を設けてもよい。
【0014】
高さ可変機構310の詳細構造は、図2のA部の詳細分解図である図3で説明する。
前板302および背板303の両端面の側板301への当接部に、その当接部を覆うように取り付け金属ベース311が取り付けられる。さらに該取り付け金属ベース311には、先端が膨径したピン312が前板302または背板303の当接部面から垂直方向に突出するように取り付けられている。
一方、内引き出し300の側板301には、前板302および背板303の前記当接部と当接する面に、ピン312が嵌合する図4の形状のピン連結部材313が備え付けられる。
ビン連結部材313は、ピン312が嵌合したまま上下方向にスライド移動可能となる縦溝314と、ピン312が自重により所定位置で留まる複数の袋小路溝315が形成されている。つまり、ピン312が自重によってピン連結部材313の袋小路溝315に納まることで、ピン312の下方への移動が抑制され、ひいてはピン312が固定された前板302、背板303、底板304の下方への移動が抑制される。なお、ピン312は、一旦上方後部に移動しない限り縦溝314に移動することはない。
【0015】
図2に示すように、前板302および背板303の両端の四隅には、L字アングル306の一面が固定されている。また、側板301には、複数の穴が形成され、このうちの一つが、L字アングル306の他の一面に開口した貫通穴と合致している。この貫通穴を利用してL字アングル306と側板301を固定することによって、側板301と、前板302および背板303とが連結固定され、前板302および背板303が、側板301との相対的な前後上下の移動を抑制することができる。これにより側板301に装着されたピン連結部材313の袋小路溝315に納まったピン312(前板302および背板303に固定)は、スライド移動可能な縦溝314に移動することがないため、確実にその高さ位置を保持でき、引き出しが上下方向にずれたり、落下することもなく安全に使用可能となる。
【0016】
次にこの内引き出し付きキャビネットの高さ変更の操作方法について説明する。
内引き出し300の高さを変更する場合は、事前に図1のように外引き出し400を全開にし、内引き出し300を以下に記述する操作がしやすい位置まで引き出す。
操作手順は、まず前板302および背板303のコーナー四箇所に固定されているL字アングル固定ピン(図示せず)をL字アングル306から抜く。次いで一体となっている前板302、背板303、底板304を上方に持ち上げると、図3または図4に示す袋小路溝315にあったピン312は上方に移動し、上下スライド可能となる縦溝314に移行する。そこでピン連結部材313の所望高さにある別の袋小路溝315にピン312を納める。なおピン312は前板302の左右、および背板303の左右の合計4箇所にあるので、内引き出し300が軽い場合は4箇所同時に、内引き出しが重い場合は、はじめに左の2箇所、次いで右の2箇所といったように左右交互に移動させる。最後に再度4箇所のL字アングル306をL字アングル固定ピン(図示せず)で固定して高さ変更が完了する。
【0017】
内引き出しの高さ変更の操作中で、ピン312が縦溝314内を移動中に、何らかの理由により、前板302および背板303および底板304から手を離した場合でも、ピン312がピン連結部材313の一番低い位置の袋小路溝315におさまり、またピン312の傍径部によって、ピン312はピン連結部材313の縦溝314および袋小路溝315から抜けることはないため、前板302および背板303および底板304が、キャビネットから落下することはない。また、L字アングル306を装着し忘れて高さ変更操作を終了したとしても、同様にピン312が縦溝314および袋小路溝315から抜けることはなく、少なくとも一番低い位置の袋小路溝315におさまるので、前板302および背板303および底板304が、キャビネットから落下することはない。
【0018】
このようにして、外引き出しや内引き出しをキャビネットから外すことなく、容易に内引き出しの高さを変更することができる。つまり、引き出しに収納する物品の使用頻度、形状、大きさに合わせて使用者が引き出し高さを容易に変更でき、物品を効率的に収納することができる。また、高さ変更操作中および操作が完全に行われなかった場合でも、内引き出しはキャビネットから落下することはなく安全である。
【0019】
本発明の別の実施例を図5に示す。図5は図2のように内引き出しだけを表したものである。
内引き出し500は、2枚の側板501と、前板502と、背板503と、底板504と、高さ可変機構510と、スライド部材305aが取り付けられた中間部材509と、で構成される。なお、第一の実施例と同様に、スライド部材305aとキャビネット側板に取り付けたスライドレールの受けレールとが係合することで、内引き出し500はキャビネットにスライド自在に取り付けられる。
【0020】
側板501は薄板を折り曲げて形成されており、前板502と、背板503と、底板504に連結固定され一体的に構成されるとともに、上面が開口した箱状に形成されている。
【0021】
高さ可変機構510の詳細は、図5のB部の詳細斜視図である図6およびその断面である図7で説明する。
図6に示すように、側板501の上端面は、水平になるように内引き出し500の外側に向って折り曲げ加工がなされている。その水平面525には角柱体520が2枚の側板501の前方、後方に計4箇所垂下される。角柱体520には、側板501に対し垂直方向に貫通している角柱体貫通穴522が複数個上下方向に並んで形成される。
また、図7に示すように、中間部材509は、中空状に形成され、角柱体520が上下方向に移動するように上下に貫通する空間が形成される。さらに、中間部材509の側面であって、角柱貫通穴522と合致する中間部材貫通穴521が形成され、角柱体520の高さ位置により中間部材貫通穴521と角柱体貫通穴522の一つとが合致するように構成される。また、合致した2つの穴を拘束するようにピン体523を中間部材貫通穴521および、角柱体貫通穴522に通している。
また、角柱体520が中間部材509から離脱しないように、角柱体520の下端には、離脱防止ピン526が取り付けられている。
【0022】
図8は、図7の角柱体貫通穴522と中間部材貫通穴521が合致してピン体523を通した構造の詳細D視断面図を示した図である。ピン体523は角柱体貫通穴522と中間部材貫通穴521を同時に通るピン部523aとその位置に保持するために中間部材に設けられた保持穴524に係合するように形成された保持部523bで構成される。
このピン体523を合致した角柱体貫通穴522と中間部材貫通穴521に通すことにより内引き出し500の本体と中間部材509が固定され、所定高さが維持されることになる。
【0023】
次にこの内引き出し付きキャビネットの高さ変更の操作方法について説明する。
まず、図7に示すような所定高さを維持している状態から、ピン体523を角柱体貫通穴522および中間部材貫通穴521より抜き、角柱体520およびこれと一体的に上下する側板501および底板504などを上下移動可能な状態とする。なお、ピン体523を抜くと、角柱体520の上下方向の移動が自由になるため、側板501や底板504などを手で保持して、自重によって落下しないようにさせておく必要がある。
次に、底板504または側板501などを上下に移動させて、角柱体520に形成された複数個の角柱体貫通穴522と中間部材貫通穴521が合致する高さ位置に合わせ、再びピン体523を上記2つの貫通穴に通すことにより中間部材509と角柱体520を連結し、上下移動を拘束する。
なお、ピン体523を抜き、角柱体520を上下に移動させる操作は、2箇所もしくは4箇所同時に行う必要があり、例えば、2箇所同時に行う場合は、図5の右側の側板501の前後2箇所を同時に行い、次いで左側の前後2箇所を同時に行うようにする。
以上のようにして内引き出し500の底板504を含む部材の高さを変更できる。
【0024】
内引き出し500の高さ変更の操作中、側板501または底板504などを手で保持しない状態で、誤って図7に示すようにピン体523を抜いた場合、角柱体520と中間部材509の上下の拘束が解け、角柱体520が重力によって下方に移動する。しかし、図7に示すように側板501の上端面の水平部525が中間部材509の上面に引っかかることで、それ以上落下することがなく、側板501や底板504などもこの高さ以下に落下することもく、ひいては内引き出し500がキャビネットから落下することはない。また、通常どおり内引き出しとして利用している際に、何らかの理由によりピン体523が抜けた場合でも、前述と同様に側板501の上端面の水平部525が中間部材509の上面にひっかかり、内引き出し500がキャビネットから落下することはない。また、高さ変更操作中に、誤って側板501および底板504などを上方に持ち上げすぎた場合には、角柱体520の下端に取り付けられた離脱防止部材526が、中間部材509の下端に接触し、それ以上に持ち上げられないので、角柱体520が中間部材509から離脱することもない。
【0025】
このようにして、外引き出しや内引き出しをキャビネットから外すことなく、容易に内引き出しの高さを変更することができる。つまり、引き出しに収納する物品の使用頻度、形状、大きさに合わせて使用者が引き出し高さを容易に変更でき、物品を効率的に収納することができる。また、高さ変更操作中および操作が完全に行われなかった場合でも、内引き出しはキャビネットから落下することはなく安全である。
【0026】
本発明は上記の実施例に限られるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、自由に適宜変更することが可能である。
本発明の第一の実施例では、スライド手段は内引き出しの側板、第二の実施例では、スライド手段は中間部材に備え付けられているが、キャビネットに挿入された内引き出しを前後方向に移動するスライド手段に対し、内引き出しを構成する底板が上下方向に高さ変更できるように形成され、かつその高さを保持できれば同様の効果を得られる。
【符号の説明】
【0027】
100…キャビネット
101…キャビネット側板
102…キャビネット裏板
104…キャビネット底板
200…上段引き出し
300…内引き出し
301…側板
302…前板
303…背板
304…底板
305…スライドレール
305a…スライド部材
305b…受けレール
306…L字アングル
310…高さ可変機構
311…金属ベース
312…ピン
313…ピン連結部材
314…縦溝
315…袋小路溝
400…外引き出し
500…内引き出し
501…側板
502…前板
503…背板
504…底板
505…スリット
509…中間部材
510…高さ可変機構
520…角柱体
521…角柱体貫通穴
522…中間部材貫通穴
523…ピン体
523a…ピン部
523b…保持部
524…保持穴
525…水平部
526…離脱防止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が開口したキャビネット本体と、
上面が開口し、キャビネットへの格納時キャビネット前面の開口部を塞ぐ前扉を有した外引き出しと、
前記外引き出しの収納空間上方で、上面が開口し、スライド手段によりキャビネット本体と前後方向にスライド可能に連結した内引き出しと、を有した内引き出し付きキャビネットにおいて、
前記内引き出しは、前記スライド手段と連結した中間部材と、収納物を戴置する底板と、該底板を前記中間部材に対し複数の高さ位置に固定できる高さ可変手段とを備え、
前記高さ可変手段は、前記中間部材と前記底板とを離脱不能で上下方向に移動可能に連結され、複数の所定位置で互いに嵌合連結することを特徴とする内引き出し付きキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−30714(P2011−30714A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178908(P2009−178908)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】