説明

内径計測方法およびその装置および内径計測装置用リング光照射器

【課題】本発明は、高精度でありながら、構造が簡単で、低価格な内径計測方法およびその装置および内径計測装置用リング光照射器を目的とする。
【解決手段】干渉性の高い光ビームを発散球面波にして該発散球面波から同心円状多光束干渉縞を得て、その一つをリング光として計測対象孔内に照射し、その反射リング光を撮影して得たリング像に基づいて計測対象孔の内径を計測する内径計測方法と、光源2と、発散球面波を得るレンズ3、ピンホール4と、同心円状多光束干渉縞を得るエタロン5と、一つのリング光を得るマスク6とを備えたリング光照射器1と、計測対象孔内の反射リング光を撮影する撮像器8と、撮影リング像から内径を算出する演算器10とからなる内径計測装置と、光源2と、発散球面波を得るレンズ3、ピンホール4と、同心円状多光束干渉縞を得るエタロン5と、一つのリング光を得るマスク6とからなる内径計測装置用リング光照射器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は計測対象孔の内径を計測する内径計測方法およびその装置および内径計測装置用リング光照射器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内径測定装置としては、計測対象孔を有する筒状の測定物を支持する支持具と、光源からの光束をレンズを用いることなく順次拡径する所定幅のリング状光束あるいは少なくとも3本の光束に形成して、前記支持具で支持された測定物内で反射するように出射する光誘導器と、前記測定物内で反射されたリング状光束あるいは少なくとも3本の光束を検知し、該リング状光束あるいは少なくとも3本の光束の直径等から計測対象の内径を演算処理する受光部を備える演算処理装置とからなるものがある。また、前記内径測定装置に用いられる内径測定装置用光誘導器は、順次拡径する外周部で光を反射することができるほぼ円錐形状のスペーサと、このスペーサの外周部とリング状の隙間を介して、該スペーサの外周部を覆うように支持するカバー体と、このカバー体と前記スペーサとの間のリング状の隙間へ光を出射する、該カバー体に支持された光源とからなるものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、前記内径測定装置や内径測定装置用光誘導器では、円錐形状のスペーサとこれを覆う円錐形状の孔を有するカバー体とを組み合わせて厳密な寸法精度をもつ隙間を形成し、所定幅のリング状光束または3本の光束を形成するため、光束の幅が広いため検出画素数が増え演算処理の負荷が増すうえに、隙間からの透過光を光束とするため透過中における光束の減衰が大きく輝度の低下により測定精度が低下する問題が生じるうえに、測定物の孔が深いと測定可能な光束が受光器まで到達せず測定不能となる問題もあった。しかも、スペーサおよびカバー体の加工寸法精度を極めて高いものとしなければ精度の高い光束が形成できないうえに、カバー体にスペーサを組み立てる際にも高い組み付け精度を要求されるため製作が極めて困難で、たとえ製作できたとしても高価なものとなる問題があった。また、光誘導器と受光部とを対向させたものとしているため貫通孔を有する測定物しか測定できないうえに、光誘導器と受光部とを対向させたものとしているため測定物が長くなると光誘導器と受光部との間隔も拡がり装置が大型化するうえに、光誘導器と受光部との距離が長くなると輝度の低下が大きく測定精度の低下や測定不能を起こすという問題があった。
【特許文献1】特開2006-30104
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記のような従来の問題点を克服して、貫通孔でなくても計測できるうえに、計測対象孔が深くても明確なリング像が得られて高精度の計測が可能なうえ、極めて輝度の高いリング光が得られるので高精度の計測ができる構造が簡単で低価格な内径計測方法およびその装置および内径計測装置用リング光照射器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は、干渉性の高い光ビームを発散球面波に変えたうえ該発散球面波を多重干渉させて同心円状多光束干渉縞を生成したうえ、該同心円状多光束干渉縞の一つをリング光として計測対象孔の内面に照射し、照射された反射リング光を撮影し、該撮影したリング像に基づいて計測対象孔の内径を計測することを特徴とする内径計測方法と、干渉性の高い光ビームを発生する光源と、前記光ビームを発散球面波に変えるレンズおよびピンホールと、前記発散球面波を多重干渉させて同心円状多光束干渉縞を生成するエタロンと、前記同心円状多光束干渉縞の一つを選択してリング光を照射するマスクとを備えたリング光照射器と、前記リング光照射器から計測対象孔の内面に照射されて反射した反射リング光を撮影してリング像を得る撮像器と、前記リング像に基づいて内径を算出する演算器とからなることを特徴とする内径計測装置と、干渉性の高い光ビームを発生する光源と、前記光ビームを発散球面波に変えるレンズおよびピンホールと、前記発散球面波を多重干渉させて同心円状多光束干渉縞を生成するエタロンと、前記同心円状多光束干渉縞の一つを選択してリング光を照射するマスクとからなることを特徴とする内径計測装置用リング光照射器であり、前記した内径計測装置において、撮影方向がリング光照射方向と同方向となるように撮像器を配置させてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の内径計測方法は、干渉性の高い光ビームを発散球面波に変えたうえ該発散球面波を多重干渉させて同心円状多光束干渉縞を生成したうえ、該同心円状多光束干渉縞の一つをリング光として計測対象孔の内面に照射し、照射された反射リング光を撮影し、該撮影したリング像に基づいて計測対象孔の内径を計測するものであるから、減衰のない高精度で輝度の高いリング光を用いることにより、計測対象孔内に明確なリング像を形成できるので内径を高精度で計測することができる。
【0007】
また、内径計測装置は、干渉性の高い光ビームを発生する光源と、前記光ビームを発散球面波に変えるレンズおよびピンホールと、前記発散球面波を多重干渉させて同心円状多光束干渉縞を生成するエタロンと、前記同心円状多光束干渉縞の一つを選択してリング光を照射するマスクとを備えたリング光照射器と、前記リング光照射器から計測対象孔の内面に照射されて反射した反射リング光を撮影してリング像を得る撮像器と、前記リング像に基づいて内径を算出する演算器とからなるので、新規部品を設計製作することなく市販品を組み合わせているから製作コストを低減できるうえに、組み立てが容易で生産性の高いものとなる。また、エタロンは輝度が高く精度の高いリング光を生成できるので精度の高い内径計測ができるものとなる。
【0008】
また、撮影方向がリング光照射方向と同方向となるように撮像器を配置させることにより、計測対象孔に照射されるリング光と撮像器との距離は径が同一なら計測対象孔が深くなっても変動しないので、撮像器をリング光照射器と向かい合わせて配置させた場合のように計測対象孔が深くなると両者の距離が拡がってリング光の減衰が大きくなり計測が困難になったり、計測精度が低下したりすることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は内径計測装置を示すもので、1はリング光照射器であり、該リング光照射器1は、レーザー光などの干渉性(コヒーレンス)の高い光源2と、光源から発生する光ビームを発散球面波とするレンズ3とピンホール4と、両面が高反射率の平行平面ガラス板であるエタロン(ファブリーペロー干渉系)5と、同心円状多光束干渉縞の一つを選択通過させるリング状の開口を形成したマスク6とからなるものである。
【0010】
リング光照射器1は、レーザー等の干渉性の高い光源2からの光ビームを屈折率の強い顕微鏡用対物レンズ等のレンズ3とピンホール4により発散球面としたうえエタロン5に入射させて極めて真円度が高くて線幅が狭く輝度の高い同心円状多光束干渉縞を発生させる。そして、マスク6により同心円状多光束干渉縞から一つだけのリング光を選択して通過させて計測対象孔7の内面にリング光を照射するものである。
【0011】
同心円状多光束干渉縞から選択される一つのリング光は計測対象孔7までの距離や孔径に基づいて最適なものが選択するものとしている。また、エタロン5は高反射率の平行平面ガラス板よりなるもので、発散球面波を平行平面ガラス板により多重反射させる多光束干渉により、発散球面波の入射光と平行平面ガラス板内の反射光とが重なり合って強められた干渉光が一方の平行平面ガラス板から透過されることにより高精度で輝度の高い同心円状多光束干渉縞が生成されるものである。
【0012】
8はリング光照射器1内の先方部に撮影方向がリング光照射方向と同方向となるように配置される小型CCDカメラなどの撮像器であり、該撮像器8は計測対象孔7に照射されて反射した反射リング光9を撮像するものである。撮像器8は図1においてリング光の光軸中心位置に配置されているが、計測対象孔7の径が小さくリング光の照射角度も小さくて光軸中心に配置できない場合は、光軸に対して90度傾けた反射鏡をマスク6にブラケットを介して取り付け、リング光の光路外から反射鏡に写る反射リング光9を撮像器8により撮影することによってリング光の欠けを防止する。なお、好ましい実施の形態で撮像器8はリング光照射器1内に配置されたものとしているが、撮影方向がリング光照射方向と同方向に配置されるものなら、リング光照射器1外に配置してもよいことはいうまでもない。
【0013】
10は撮像器8により撮像されたリング像に基づいて計測対象孔7の内径を演算するコンピュータなどの演算器である。演算器10による内径の演算は図2に示されるように、撮像器8の1/2画角Bとリング光照射器1のリング光1/2照射角度と撮像器8のレンズ位置とレンズ3位置間の距離Lに基づいて次式で内径H(半径)を算出するものである。
H=L×TanB×TanA/(TanB−TanA)
【0014】
このように構成されたものは、まず、図2に示されように、撮像器校正板11を用いてリング光照射器1から照射されるリング光の照射角度Aを予め調べるとともに、撮像器8の画角と該画角における画素数との関係を予め求めておく。このような前処理を行ったうえリング光照射器1の先端を計測する計測対象孔7の開口に臨ませるとともに、リング光照射器1と撮像器8の光軸を計測対象孔7の中心軸に合わせる。
【0015】
そして、光源2の干渉性の高いビーム光をレンズ3、ピンホール4を通過させて発散球面波としたうえエタロン5に照射する。エタロン5に照射された発散球面波はエタロン5の平行平面ガラス板間での多光束干渉により、特定の波長のみが強められて平行平面ガラス板を通過するため、極めて真円度が高くて線幅が狭く輝度の高い同心円状多光束干渉縞を生成することとなる。そして、生成された同心円状多光束干渉縞のうち一つのリング光がマスク6のリング状の開口を通過して計測対象孔7の内面に照射されることとなる。そして、計測対象孔7の内面に照射されて反射した反射リング光9は計測対象孔7の内面形状に倣うものとなる。
【0016】
この計測対象孔7の内面形状に倣う反射リング光9をリング光照射器1内に設けた撮像器8により撮影し、撮影したリング像に基づいて計測対象孔7の内径を前記した演算式に基づいて演算器10が演算して算出する。また、計測対象孔7内の別部位の内径を計測する際には、装置全体を前後に移動させることにより、計測対象孔7内の所要部の内径を計測することができる。さらに、計測対象孔7の内径が大きい場合には、同心円多光束干渉縞のうちの大きな円を利用できるようリング状開口が大きなマスク6に交換したりするものとする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態を示す斜視図である。
【図2】同じく説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1 リング光照射器
2 光源
3 レンズ
4 ピンホール
5 エタロン
6 同心円状多光束干渉縞選択用のマスク
7 計測対象孔
8 撮像器
9 計測対象孔内に現れる反射リング光
10 演算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉性の高い光ビームを発散球面波に変えたうえ該発散球面波を多重干渉させて同心円状多光束干渉縞を生成したうえ、該同心円状多光束干渉縞の一つをリング光として計測対象孔の内面に照射し、照射された反射リング光を撮影し、該撮影したリング像に基づいて計測対象孔の内径を計測することを特徴とする内径計測方法。
【請求項2】
干渉性の高い光ビームを発生する光源と、前記光ビームを発散球面波に変えるレンズおよびピンホールと、前記発散球面波を多重干渉させて同心円状多光束干渉縞を生成するエタロンと、前記同心円状多光束干渉縞の一つを選択してリング光を照射するマスクとを備えたリング光照射器と、前記リング光照射器から計測対象孔の内面に照射されて反射した反射リング光を撮影してリング像を得る撮像器と、前記リング像に基づいて内径を算出する演算器とからなることを特徴とする内径計測装置。
【請求項3】
撮影方向がリング光照射方向と同方向となるように撮像器を配置させたことを特徴とする請求項2に記載の内径計測装置。
【請求項4】
干渉性の高い光ビームを発生する光源と、前記光ビームを発散球面波に変えるレンズおよびピンホールと、前記発散球面波を多重干渉させて同心円状多光束干渉縞を生成するエタロンと、前記同心円状多光束干渉縞の一つを選択してリング光を照射するマスクとからなることを特徴とする内径計測装置用リング光照射器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−215821(P2008−215821A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49226(P2007−49226)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【Fターム(参考)】