説明

内服液剤

【課題】
ロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩と酸を配合した内服液剤の不快味を抑えて、服用性良好なロキソプロフェン含有内服液剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
a)ロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩、b)酸、及びc)β−シクロデキストリン若しくはその誘導体、又はγ−シクロデキストリンを含有することを特徴とする内服液剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩を含有する内服液剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ロキソプロフェンは優れた解熱鎮痛作用を有する化合物であり、服用の容易性からロキソプロフェン含有液剤の提供が望まれているが、不快味を有するという問題がある。
【0003】
これまでにロキソプロフェンを含有するシロップ製剤が特許文献で報告されている(特許文献1,2参照)が、ロキソプロフェン含有液剤の不快味を解決したことについての記載は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−268621
【特許文献2】特開2005−139165
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、ロキソプロフェンナトリウムを含有する内服液剤を製造するに際し、pH調節や風味の観点から酸を添加したところ、添加する酸によってはロキソプロフェンナトリウムに起因する不快味が増すということを見出した。
【0006】
従って、本発明は、ロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩と酸を配合した内服液剤の不快味を抑えて、服用性良好なロキソプロフェン含有内服液剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩と酸を含有する内服液剤に、β−シクロデキストリン若しくはその誘導体、又はγ−シクロデキストリンを配合することによりロキソプロフェン含有内服液剤の不快味を抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、
(1)a)ロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩、b)酸、及びc)β−シクロデキストリン若しくはその誘導体、又はγ−シクロデキストリンを含有することを特徴とする内服液剤、
(2)ロキソプロフェンの薬理上許容される塩が、ロキソプロフェンのナトリウム塩である(1)に記載の内服液剤、
(3)β−シクロデキストリン若しくはその誘導体が、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ポリ−β−シクロデキストリン、6−O−α−D−グルコシル−β−シクロデキストリン、6−O−α−マルトシル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、及びグルクロニルグルコシル−β−シクロデキストリンから選ばれる少なくとも一種である(1)に記載の内服液剤、
(4)酸が、クエン酸、リンゴ酸、及び酒石酸、並びにそれらの薬理上許容される塩から選ばれる少なくとも一種である(1)に記載の内服液剤、
(5)pHが2.5〜7.0である(1)〜(4)のいずれか1項に記載の内服液剤、
(6)ロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩、及び酸を含有する内服液剤の不快味をβ−シクロデキストリン若しくはその誘導体、又はγ−シクロデキストリンを配合することにより抑制する方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩を含有した内服液剤の不快味を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ロキソプロフェンとは、2−[4−(2−オキソシクロペンタン−1−イルメチル)フェニル]プロピオン酸のことであり、その薬理上許容される塩とはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩等の金属塩、アンモニウム塩等の無機塩、t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N−ベンジル−フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩等の有機塩等のアミン塩を挙げることができる。好ましくはナトリウム塩である。
【0011】
本発明におけるロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩の配合量は目的に応じ適宜選択し使用できる。例えば1日当たり10〜180mg(フリー体・無水物に換算)配合することが好ましい。
【0012】
本発明において酸とは、例えばクエン酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、アジピン酸、乳酸、コハク酸、酢酸などの有機酸又はそれらの塩類、塩酸、リン酸などの無機酸など内服することのできる酸のことである。これらは単独で配合してもよく、また2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0013】
シクロデキストリンとは、D−グルコース単位がα−1,4−グルコシド結合で環状に結合した王冠状の化合物であり、澱粉及び/又は澱粉の加水分解物にシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ等の酵素を作用させて製造することができる。本発明では、構成するグルコースの数が7(β型)、8(γ型)のシクロデキストリンを用いることができ、さらにその誘導体も使用することができる。本発明においてシクロデキストリンの誘導体とは、例えばシクロデキストリンの構成グルコースの6位にグルコース、マルトース、マルトトリオース等が付加した分岐鎖シクロデキストリン、メチル化シクロデキストリン、ポリマー化シクロデキストリン、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン、アルキルスルホン酸化シクロデキストリンなどの部分的に置換基が導入されたシクロデキストリン等を示す。本発明では、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ポリ−β−シクロデキストリン、6−O−α−D−グルコシル−β−シクロデキストリン、6−O−α−マルトシル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、グルクロニルグルコシル−β−シクロデキストリンが好ましく使用できる。また、3A−アミノ−3A−デオキシ−(2AS,3AS)−γ−シクロデキストリン、モノ−2−O−(p−トルエンスルホニル)−γ−シクロデキストリン、モノ−6−O−(p−トルエンスルホニル)−γ−シクロデキストリン、モノ−6−O−メチレンスルホニル−γ−シクロデキストリンを用いても良い。
【0014】
本発明の内服液剤において、ロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩と酸の配合比は、ロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩1重量部に対して通常0.006〜200重量部であり、好ましくは0.028〜66.7重量部であり、より好ましくは0.05〜16.7重量部である。
【0015】
本発明の内服液剤において、ロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩とシクロデキストリン類の配合比は、ロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩1重量部に対して通常0.06〜500重量部であり、好ましくは0.056〜133重量部であり、より好ましくは0.28〜16.7重量部であり、よりさらに好ましくは1.1〜4.4重量部である。
【0016】
本発明にかかる内服液剤のpHは、2.5〜7.0であり、好ましくは3.0〜7.0であり、よりこの好ましくは3.0〜5.0である。pH2.5未満の酸性域ではロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩の溶解性の点で好ましくなく、pHが7.0を越える塩基性域では、風味の点で好ましくないからである。また、pHを酸性領域とすることで、内服液剤の防腐効果が得られることからも、上記範囲が好ましい。したがって、本発明の内服液剤のpHを上記範囲に保つために、本願発明では酸を配合しており、さらに必要に応じて水酸化ナトリウム等の無機塩基やクエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム等の有機塩基を配合しても良い。
【0017】
本発明の内服液剤にはその他の成分として、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸又はその塩類、生薬、生薬抽出物、カフェイン、ローヤルゼリーなどを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0018】
さらに必要に応じて、抗酸化剤、着色剤、香料、矯味剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、甘味料などの添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0019】
本発明の内服液剤は、常法により調製することができ、その方法は特に限定されるものではない。通常、各成分をとり適量の精製水で溶解した後、pHを調整し、残りの精製水を加えて容量調製し、必要に応じてろ過、滅菌処理することにより得られる。
【0020】
本発明の内服液剤は、例えばシロップ剤、ドリンク剤などの医薬品や医薬部外品などに適用することができる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。以下で「CD」とはシクロデキストリンを意味する。
【0022】
実施例1
ロキソプロフェンナトリウム68.1mg、クエン酸63mg、塩化カリウム22.4mg、酒石酸1.35mg、及びβ−CD150mgを精製水に溶解し、塩酸、及び水酸化ナトリウムを用いてpHを5.0に調整し、精製水を加えて全量を30mLとし、ガラス瓶に充填しキャップを施して内服液剤を得た。
【0023】
以下の実施例2−22、及び比較例1−15も実施例1と同様に調製した。それぞれの処方を表2−6に示す。表2−6中の各配合成分の値の単位は「mg」である。
【0024】
試験例
25〜40歳までの4人をパネルとして、試験液約20mLを服用し、調製直後のロキソプロフェンの不快味について評価した。なお、一つのサンプルを評価した後は、温湯で口中をすすぎ、十分経過してから次の試験液の評価を行った。評価は表1に示す通りの7段階の評価で行った。結果を表2−6に評価点として示した。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
表2、及び3からクエン酸、及びリンゴ酸を配合した場合にロキソプロフェンナトリウムに起因する不快味が特に増すことが明らかになった。本発明では、クエン酸、及びリンゴ酸を配合した場合に加え、その他の酸を配合した場合にも、β−CDの配合により、不快味マスキングの効果が得られた。
【0029】
【表4】

【0030】
表4の結果から、β−CDの誘導体、及びγ−CDでも不快味のマスキング効果が得られるが、α−CDではマスキング効果が得られないことがわかった。
【0031】
【表5】

【0032】
表5の通り、各pHにおいて、β−CDの不快味マスキング効果が得られた。
【0033】
【表6】

【0034】
表6の通り、ロキソプロフェンナトリウムの配合濃度を変化させても、不快味マスキング効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、服用性良好なロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩を含有した内服液剤の製造に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩、b)酸、及びc)β−シクロデキストリン若しくはその誘導体、又はγ−シクロデキストリンを含有することを特徴とする内服液剤。
【請求項2】
ロキソプロフェンの薬理上許容される塩が、ロキソプロフェンのナトリウム塩である請求項1に記載の内服液剤。
【請求項3】
β−シクロデキストリン若しくはその誘導体が、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ポリ−β−シクロデキストリン、6−O−α−D−グルコシル−β−シクロデキストリン、6−O−α−マルトシル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、及びグルクロニルグルコシル−β−シクロデキストリンから選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の内服液剤。
【請求項4】
酸が、クエン酸、リンゴ酸、及び酒石酸、並びにそれらの薬理上許容される塩から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の内服液剤。
【請求項5】
pHが2.5〜7.0である請求項1〜4のいずれか1項に記載の内服液剤。
【請求項6】
ロキソプロフェン又はその薬理上許容される塩、及び酸を含有する内服液剤の不快味をβ−シクロデキストリン若しくはその誘導体、又はγ−シクロデキストリンを配合することにより抑制する方法。

【公開番号】特開2012−25738(P2012−25738A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134399(P2011−134399)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】