内服製剤

【課題】
ドンペリドンを配合した内服製剤の提供にあたり、ドンペリドンの溶解性が高く、これを安定に配合しうる内服製剤の提供を試みた。しかしながら、特にドンペリドンが溶解しやすい酸性域では、ドンペリドンに起因する不快味が増強され、服用性の悪化を招来するという知見を得た。従って、本発明は、ドンペリドンを配合した際に生じる不快味を減殺し、服用性の良好なドンペリドン含有内服製剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
a)ドンペリドン及びb)鉄を含有することを特徴とする内服液剤。a)ドンペリドン及びb)鉄を含有することを特徴とするドライシロップ剤。ドンペリドンを含有する内服製剤において、鉄を配合することにより、ドンペリドンに基因する不快味を抑制する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドンペリドンを含有する内服製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ドンペリドンは優れた制吐作用を有する化合物であり、既に錠剤及び細粒剤が上市されている。これまでにドンペリドンを含有する製剤が特許文献で報告されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)が、内服製剤中でのドンペリドンの不快味について検討された報告はない。
【0003】
一方、内服液剤やドライシロップ剤は、嚥下能力が劣った老人、小児なども容易に服用することができる優れた剤型であり、生活者に広く求められている。
【0004】
なお、ドンペリドンは塩基性薬物であるため、pHが低い酸性域の方が溶解しやすいことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−7561号公報
【特許文献2】特表2009-530244号公報
【特許文献3】特開2002−284704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らは、ドンペリドンを配合した内服製剤の提供にあたり、ドンペリドンの溶解性が高く、これを安定に配合しうる内服製剤の提供を試みた。
【0007】
しかしながら、特にドンペリドンが溶解しやすい酸性域では、ドンペリドンに起因する不快味が増強され、服用性の悪化を招来するという知見を得た。
【0008】
従って、本発明は、ドンペリドンを配合した際に生じる不快味を減殺し、服用性の良好なドンペリドン含有内服製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ドンペリドン含有内服製剤に、鉄を配合することによりドンペリドンの不快味を抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、
(1)a)ドンペリドン及びb)鉄を含有することを特徴とする内服製剤、
(2)鉄が、クエン酸鉄アンモニウム、フマル酸第一鉄、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄、グルコン酸第一鉄ナトリウム、グルコン酸第一鉄及び硫酸第一鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の内服製剤、
(3)内服製剤がpH2.5〜7.0の内服液剤である、(1)又は(2)に記載の内服製剤、
(4)内服製剤がドライシロップ剤である、(1)又は(2)に記載の内服製剤、
(5)ドンペリドンを含有する内服製剤において、鉄を配合することにより、ドンペリドンに基因する不快味を抑制する方法、
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、主に酸性域におけるドンペリドンの不快味を抑制することができ、服用性良好なドンペリドン含有内服製剤を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の有効成分として用いられるドンペリドンは、化学名が5−クロロ−1−[1−[3−(2−オキソ−1−ベンズイミダゾリニル)プロピル]−4−ピペリジル]−2−ベンズイミダゾリノンで表される化合物である。
【0013】
本発明におけるドンペリドンの配合量は目的に応じ適宜選択し使用できるが、例えば1日当たり1〜30mg服用することが好ましい。内服製剤中に0.0002〜1質量%配合することが好ましい。
【0014】
本発明の鉄は、クエン酸鉄アンモニウム、フマル酸第一鉄、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄、グルコン酸第一鉄ナトリウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄、ピロリン酸鉄、硫酸第一鉄、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、黒酸化鉄又は三二酸化鉄が好ましい。
【0015】
本発明における「内服製剤」とは、好ましくは内服液剤とドライシロップ剤である。内服液剤は、内服することができる液体であれば特に制限はない。また、ドライシロップ剤は、用時に溶解または懸濁して服用する製剤である。
【0016】
本発明の内服製剤において、ドンペリドンと鉄の配合比は、ドンペリドン1質量部に対して通常0.01〜100質量部であり、好ましくは0.06〜80質量部であり、より好ましくは14〜80質量部である。
【0017】
本発明にかかる内服液剤のpHは、ドンペリドン基因の不快味を抑制するという点から、7.0以下であり、2.5〜7.0が好ましく、2.5〜4.5がより好ましく、2.5〜4.0がさらに好ましい。pHが4.5以下になるとドンペリドンの不快味は強くなるが、ドンペリドンの溶解性が向上するため、pH2.5〜4.5の範囲で本発明を実施する意義は大きい。また、pH2.5〜4.0の範囲では、内服液剤の防腐効果も大きく、もっとも好ましいといえる。
【0018】
本発明の内服液剤のpHを上記範囲に保つため、またドライシロップ剤においては水等に溶解または懸濁した際の液体のpHを上記範囲に保つために、pH調整剤を配合しても良い。pH調整剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、乳酸、乳酸カルシウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、グルコン酸、酢酸、アジピン酸、フマル酸一ナトリウム、グリシン、リン酸、リン酸二水素カルシウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは炭酸水素ナトリウムが好ましい。ただし、ドライシロップ剤においては、ドライシロップ剤を溶解または懸濁させる液体そのものが上記pH範囲内に該当する場合は、pH調製剤を配合しなくてもよい。
【0019】
本発明の内服製剤にはその他の成分としてビタミン類、ミネラル類、アミノ酸又はその塩類、生薬、生薬抽出物、カフェイン、ローヤルゼリーなどを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0020】
さらに必要に応じて、抗酸化剤、着色剤、香料、矯味剤、界面活性剤、溶解補助剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、コーティング剤、懸濁化剤、乳化剤、保存剤、甘味料、酸味料などの添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0021】
本発明の内服製剤は、常法により調製することができ、その方法は特に限定されるものではない。内服液剤の場合、通常、各成分をとり適量の精製水で溶解した後、pHを所望の範囲に調整し、さらに精製水を加えて容量調製し、必要に応じてろ過、殺菌処理を施すことにより得られる。また、ドライシロップ剤の場合、通常、各成分をとり適切な造粒装置にて造粒、成形することにより得られる。
【0022】
本発明の内服製剤は、シロップ剤やドリンク剤を始めとする内服液剤や、ドライシロップ剤を始めとする固形製剤などの医薬品や医薬部外品として提供することができる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。
【0024】
実施例1
ドンペリドン5mg、クエン酸鉄アンモニウム200mg、塩化カリウム14.9mg、酒石酸0.9mg、クエン酸140mgを精製水に溶解し、塩酸及び水酸化ナトリウムを用いてpHを3.0に調整し、精製水を加えて全量を20mLとし、ガラス瓶に充填しキャップを施して内服液剤を得た。
【0025】
以下の実施例2〜11及び比較例1も実施例1と同様に調製した。それぞれの処方を表1、2に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
実施例12
ドンペリドン5mg、クエン酸鉄アンモニウム200mg、クエン酸140mgをデンプン355mgと混合し造粒、成形を施してドライシロップ剤を得た。
【0029】
以下の比較例2も実施例12と同様に調製した。それぞれの処方を表3に示す。
【0030】
【表3】

【0031】
試験例1
専門パネル2名で、表1、2に示す実施例および比較例の内服液剤を約5mL服用し、調製直後のドンペリドンの不快味についてブラインドで評価した。なお、1つのサンプルを評価した後は、水で口中をすすぎ、十分経過してから次の試験液の評価を行った。評価は鉄化合物を配合していない比較例1(コントロール)との比較を行い、「比較例1(コントロール)に比べて非常に弱く不快味を感じる」を−3、「比較例1(コントロール)に比べて弱く不快味を感じる」を−2、「比較例1(コントロール)に比べてやや弱く不快味を感じる」を−1、「比較例1(コントロール)と同等に不快味を感じる」を0、「比較例1(コントロール)に比べてやや強く不快味を感じる」を1として5段階の評価で行った。専門パネル2名の評価結果の平均値を表4に評価点として示した。
【0032】
【表4】

【0033】
試験例2
表3に示す実施例および比較例のドライシロップ剤を20mLの精製水に懸濁した。専門パネル2名でこの液剤を約5mL服用し、調製直後のドンペリドンの不快味についてブラインドで評価した。なお、1つのサンプルを評価した後は、水で口中をすすぎ、十分経過してから次の試験液の評価を行った。評価は鉄化合物を配合していない比較例2(コントロール)との比較を行い、「比較例2(コントロール)に比べて非常に弱く不快味を感じる」を−3、「比較例2(コントロール)に比べて弱く不快味を感じる」を−2、「比較例2(コントロール)に比べてやや弱く不快味を感じる」を−1、「比較例2(コントロール)と同等に不快味を感じる」を0、「比較例2(コントロール)に比べてやや強く不快味を感じる」を1として5段階の評価で行った。専門パネル2名の評価結果の平均値を表5に評価点として示した。
【0034】
【表5】

【0035】
表4及び表5から明らかなように、クエン酸鉄アンモニウム、フマル酸第一鉄、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄、グルコン酸第一鉄ナトリウム、グルコン酸第一鉄及び硫酸第一鉄のいずれかを含有するとドンペリドンを配合した際に生じる不快味が抑えられた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明により、服用性良好なドンペリドン含有内服製剤の提供を通じて、患者の服薬コンプライアンスを改善し、健全な医薬品産業の発達に寄与することが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ドンペリドン及びb)鉄を含有することを特徴とする内服製剤。
【請求項2】
鉄が、クエン酸鉄アンモニウム、フマル酸第一鉄、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄、グルコン酸第一鉄ナトリウム、グルコン酸第一鉄及び硫酸第一鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の内服製剤。
【請求項3】
内服製剤がpH2.5〜7.0の内服液剤である、請求項1又は2に記載の内服製剤。
【請求項4】
内服製剤がドライシロップ剤である、請求項1又は2に記載の内服製剤。
【請求項5】
ドンペリドンを含有する内服製剤において、鉄を配合することにより、ドンペリドンに基因する不快味を抑制する方法。

【公開番号】特開2013−53134(P2013−53134A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166599(P2012−166599)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】