説明

内燃エンジンの燃焼プロセスを最適化するための方法及びシステム

【課題】海上運航されている船の内燃エンジンの燃焼プロセスを最適化するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】高速調整ループ内で、内燃エンジン1の気筒内の燃焼プロセスに関係している作動事象の実行を制御する段階と、低速調整ループ20内で、内燃エンジン1の燃焼プロセスに関係している値を捕捉する段階と、高速調整ループ内で使用される燃焼制御パラメータを計算する段階とを備えており、海上運航されている船の複数の独立作動内燃エンジン1の捕捉値が遠隔の制御局10に連絡され、複数の独立作動内燃エンジン1の捕捉値に基づいて、高速調整ループ内で使用される制御パラメータが計算される、システム及び方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上運航されている船の内燃エンジンの燃焼プロセスを最適化するための方法において、高速調整ループ内で、エンジンの気筒内の燃焼プロセスに関係している作動事象の実行を制御する段階と、低速調整ループ内で、内燃エンジンの燃焼プロセスに関係している値を捕捉する段階と、高速調整ループ内で使用される燃焼制御パラメータを計算する段階と、を備えている方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船の内燃エンジンの性能最適化は、周期的な業務として船舶技師によって手動で行われているものであって、エンジンが推奨負荷制限内で安全に稼働し且つそれぞれの気筒内の燃焼圧力が均衡になるようにエンジンを調律するのに数時間が取られてしまうことを余儀なくされてきた。例えば、平均最大燃焼圧力(pmax)が相対的に少し減少しただけでも、燃料油消費率の著しい増加、即ち発生出力kWh当たりの消費燃料が増える結果になることが知られている。複合システムの手動による最適化手続きでは、例えば、疲労や、燃料油の特質が燃料庫品質によって変化することが原因で、作動条件が経時的に変化してゆくにつれ、当然ながら更なる性能最適化の余地が出てくることから、最良性能を目指したエンジンの連続的性能最適化は、性能をなおいっそう向上させ且つ作業員の手間を軽減するべく自動的に行われるようになってきた。
【0003】
図1に示されている、その様な既知の自動化されたエンジン最適化は、低速調整ループ内での燃焼測定ユニットを用いたエンジン気筒内燃焼圧力の連続測定に基づいている。エンジンの作動中に測定された燃焼圧力を使用して、高速調整ループ内で使用される燃焼制御パラメータが計算され、高速調整ループ内ではエンジン制御ユニットが燃料噴射や弁タイミングの様な作動事象のタイミングを、計算された燃焼制御パラメータに基づいて調節する。確実に内燃エンジンが所望の最高圧力で稼働するようにする低速調整ループは、周期的に起動されるのが典型的である。しかしながら、エンジン性能の自動最適化は、実装されてはみたものの、比較的静的なセットアップであって、熟練した職員の知識や、職員がなす数基のエンジンの最適化からの経験、及び異なった気象条件での航海や特性がばらつく燃料の使用の様な特定の作動条件下でのエンジンの作動、を斟酌するのが困難である。また、燃料消費量及び排出燃焼ガスの削減による確かな恩恵以外にも、調節され均衡化されたエンジンなら、保守費用の大幅な節約をもたらし、エンジンが損傷する危険性を低減することが見込まれる。
【0004】
米国特許出願第2005/0188745号は、インターネットを通じて中央サーバに接続されている、配電網接続型発電機を監視及び制御するためのシステムを開示している。発電機の燃焼プロセスは、排ガスのサンプルを分析すること、及び発電機の分当たり回転数やエンジン温度やエンジン油圧力などの作動条件についての情報を収集することにより、監視されている。これにより、排出レベルを当局に報告すること、個々の発電機の発電を、実際の電気消費量及び発電機の地理的所在地に基づいて最適化することが実現可能である。
【0005】
日本特開第2004−110843号は、船のエンジンの部品に関係しているデータが、船位置の地理的情報と併せて、機載コンピュータにローディングされる方法及びシステムを開示されている。データは、衛星によって、エンジンの制御及び点検・保守の計画のために地上拠点の中央サーバに連絡される。同様の解決策は、日本特開第2002−221076号から知られており、これも同様に、点検・保守を計画することを目的とする地上拠点のコンピュータによるデータ収集に関している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第2005/0188745号
【特許文献2】日本特開第2004−110843号
【特許文献3】日本特開第2002−221076号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上に鑑み、本発明の目的は、海上で運転されている内燃エンジンの燃焼プロセスをいっそう高度に最適化するための方法及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これを目的として、本発明の第1の態様による方法は、海上運航されている船の複数の独立作動エンジンの捕捉値を遠隔の制御局へ連絡すること、及び複数の独立作動エンジンの捕捉値に基づいて、高速調整ループ内で使用される燃焼制御パラメータを計算することを特徴とする。
【0009】
これはエンジンの燃焼プロセスの最適化をより向上させるものであり、というのも、エンジンの高速調整ループ内で使用される燃焼制御パラメータの計算が、複数の独立作動エンジンの燃焼プロセスに関係している値に基づいているからであり、即ち、エンジンの燃焼プロセスを最適化するための燃焼制御パラメータの計算は、複数のエンジンの作動及び最適化からの経験にも基づいており、従って結果的により最適化の進んだ燃焼プロセスがもたらされることになるからである。高速調整ループ内で使用される燃焼制御パラメータの計算が数基のエンジンの作動を基にすることは好都合であり、なぜなら、遂行される最適化は非線形多変数システムと見ることができ、その様な非線形多変数システムでは、幾つかのパラメータが調節され、それらの相関は露わにされないので、最適作動は最適制御パラメータの単純計算では確定され得ないからである。捕捉値が遠隔の制御局に収集されると、エンジン設計者は捕捉値を使用することによってエンジンの最適化に関与することができる。これは、エンジンの制御が、高速調整ループ内での時間重視の事象である現地制御型作動と、低速調整ループの一部を形成している遠隔の制御局側で一部が実施される、非時間重視のエンジン制御及び調整とに分けることができるということを認識することによって実現されている。複数の独立作動エンジン、即ち、エンジンは、エンジン負荷や推進力やエンジン速度などの様なエンジンの作動がそれぞれのエンジンについて独立に選択されているという意味で独立作動である、その様な複数の独立作動エンジンの燃焼プロセスに関係している捕捉値を受信することの他に、遠隔の制御局は、更に、当該遠隔制御局へ捕捉値を連絡している2隻以上の船の低速調整ループの一部を形成している。更には、船は、より簡単に且つ職員の訓練を軽減して運航させることができるようになる。
【0010】
本発明の第2の態様は、海上運航されている船の内燃エンジンの燃焼プロセスを最適化するためのシステムにおいて、内燃エンジンの気筒内の燃焼プロセスに関係している作動事象の実行を制御するエンジン制御ユニットを備える高速調整ループと、内燃エンジンの燃焼プロセスに関係している値を捕捉する燃焼測定ユニットを備えていて、高速調整ループ内で使用される燃焼制御パラメータを計算する低速調整ループと、を備えており、海上運航されている船の複数の独立作動内燃エンジンは、遠隔の制御局と通信していて、当該遠隔の制御局は、海上運航されている船の複数の独立作動内燃エンジンからの捕捉値を受信し、且つ遠隔の制御局は、燃焼制御パラメータを、複数の独立作動内燃エンジンの捕捉値に基づいて計算するための手段を備えている、システムに関する。
【0011】
これは、上述の本発明の第1の態様による方法及び相応する利点を実装しているシステムを単純なやり方で提供している。
本発明の実践的に好適な或る実施形態によれば、捕捉値は気筒内の燃焼圧力を備えており、好適には、捕捉値は排ガス中の窒素酸化物レベルを備えている。これにより、燃焼プロセスを、燃料消費量の削減に関しても、また危険な排ガスのレベルに関しても、最適化することが可能になる。
【0012】
本発明の或る実施形態によれば、遠隔の制御局に連絡された捕捉値は、燃焼制御パラメータを計算するためのアルゴリズムを確定するのに使用される。
これにより、遠隔の制御局に配備されているアルゴリズムを更新することによって、燃焼制御パラメータの計算を改善することが可能になる。その結果、改善されたアルゴリズムが確定されたときに遠隔の制御局を更新しさえすればよく、燃焼プロセスの最適化はどんなときも最新のアルゴリズムに基づくことが確約されるため、保守費用を大幅に削減できる。更には、改善されたアルゴリズムは、遠隔の制御局と通信する能力のない先行技術によるシステムに配備させることもできるし、又は改善されたアルゴリズムを、船上に配備して、バックアップ機能として働かせることもでき、そうすれば高速調整ループ内で使用される燃焼制御パラメータの計算は、どんなときにも、たとえ遠隔の制御局への通信リンクが利用不可であるときでさえ、実施できるようになる。改善されたアルゴリズムは、遠隔の制御局から船に連絡され、以降の使用に備えて配備させることができる。
【0013】
複数の燃焼エンジンからの値の集合を更に活用している或る実施形態では、内燃エンジンの特定の作動条件について最適化させたアルゴリズムが確定される。これにより、エンジンを、例えば船の操作者の要求により、特定の地理的航路での運航、非常に高速での運航、又は高温や低温などの異なった気象条件下での運航について最適化させることができる。よって、船は、新しい作動条件の下で最適に運航されるよう簡単に調節される。
【0014】
本発明の或る実施形態では、複数の内燃エンジンのうちの特定の型式のエンジンのための制御パラメータを計算するためのアルゴリズムが確定される。これにより、燃焼制御パラメータを計算するためのアルゴリズムを、特定のエンジンについて微調律できるようになり、その結果、エンジンの燃焼プロセスのなおいっそう良好な最適化がもたらされることになる。更には、燃焼制御パラメータの計算を、船が実際に運航される前であっても実施することができるため、容易に新しい船を最適化された作動条件で運航させることができる。
【0015】
本発明の或る好適な実施形態によれば、捕捉値は、遠隔の制御局へ、衛星リンクを用いて連絡されている。このことは、衛星リンクによって提供されている帯域幅は捕捉値を遠隔の制御局に連絡するのに十分であり、即ち0.5Mbit/sから2Mbit/sの範囲の帯域幅なら低速調整ループの捕捉値及び計算された燃焼制御パラメータの連絡に十分であることが示されているため、現行の通信機器及びインフラが利用できることから好都合である。
【0016】
続いて、本発明の例示的な実施例及び実施形態を、模式的な図面に描かれている好適な実施形態に関連付けて更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】先行技術による、多気筒船舶用ディーゼルエンジンのための最適化システムの全体図である。
【図2】本発明の或る実施形態による最適化システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、エンジン制御システム2と燃焼測定システム3を備えた6気筒船舶用ディーゼルエンジン1が示されている。エンジン制御システム2は、高速調整ループ30内で、エンジンのクランクシャフトの角度位置を表す離散瞬時パラメータ値が、2つの典型的には光電式のセンサー配列それぞれの多数の検出器部材によって検出、捕捉され、それらパラメータが、少なくとも1つの中央エンジン制御ユニット4に連絡され、更に6つの気筒に関連付けられている多数の気筒制御ユニット5に連絡されて、それぞれの気筒内の燃焼プロセスのタイミングと制御がセンサー配列から受信されたパラメータ値に従ってなされるようにする、という方式で作動している。従って、高速調整ループ30は、内燃エンジン1のそれぞれの燃焼サイクル中の様々な作動事象の極めて重要なタイミング及び制御を扱っている。エンジン制御ユニット4及び気筒制御ユニットは、燃焼制御パラメータに基づき、例えば、個々の気筒に噴射される燃料の量及び速度、燃料噴射の瞬間、排気弁アクチュエータのタイミングなど、を調節することができる。エンジン制御システム2は、エンジンを正しく動かすためにはタイミングと制御がミリ秒の範囲内で精密でなくてはならないことから、高速調整ループ30として働くものと見なされている。
【0019】
燃焼測定ユニット3は、低速調整ループ20内で作動するものであって、エンジン性能を監視しており、気筒内圧力を測定することによって、即ち全気筒内の固定センサー6を使用してエンジン1の作動中の気筒内の燃焼圧力を測定することにより、負荷均衡化とタイミングを調節している。測定された燃焼圧力は、枠7で表されている様に、エンジン操作者に表示される。測定値は燃焼圧力測定ユニット3からエンジン制御システム2へ提供され、すると、エンジン制御システム2は、最適燃焼制御パラメータを計算し、これらのパラメータは枠8で表わされている様にエンジン操作者に表示される。高速調整ループ30によって、即ち少なくともエンジン制御ユニット4と気筒制御ユニット5とによって扱われる制御とタイミングは、その結果、エンジン制御システム2によって計算された最適化済みの燃焼制御パラメータに基づくものとなる。エンジン制御システム2は、燃焼圧力の捕捉値に基づき、それ自体は知られているやり方で燃焼制御パラメータを計算しており、それらのパラメータにより、例えば、エンジンの燃焼プロセスを最適化することを目的に、表示平均値とそれぞれの気筒の最大圧力が調節されることになる。典型的に、エンジンの最適化は、エンジン製造元によって規定されている理論上実現できる燃焼圧力に関してなされている。
【0020】
燃焼制御パラメータの計算は、エンジンの作動中若しくはエンジンの特定の作動条件の期間中に自動的に実施されてもよいし、又は値捕捉のプロセスの開始と終了及び燃焼制御パラメータの計算を手動で行うことによる半自動式であってもよい。燃焼制御パラメータの連続的且つ時宜にかなった精密な計算は、エンジンを作動させることにとって必要条件というわけではないことから、燃焼測定ユニット3は低速調整ループ20内にあるものと見なされており、これは、燃焼特質や疲労や現在の特定の作動条件を加味することによってエンジン1の最適作動をもたらす燃焼制御パラメータの連続計算がなくても、エンジン1は、最適化された条件の下ではないにしろともかく作動することはできるからである。
【0021】
図1に示されている先行技術によるシステムに比較して、本発明の制御方法及びシステムは、燃焼プロセスに関係している値を、燃焼制御パラメータの計算を扱う遠隔の制御局10に連絡することによって、ひいては燃焼制御パラメータを計算する改善されたやり方が確定されたときにそれぞれの船を更新する手間を省くことによって、エンジン服務の著しい簡素化を実現することができ、そして当該計算が複数の独立作動エンジンから収集された値を活用できることにより、内燃エンジンのなおいっそう高度に最適化された燃焼プロセスを実現することができるという認識に基づいている。
【0022】
図2は、本発明によるシステムを示しており、本システムでは、燃焼プロセスに関係している値、例えば燃焼圧力測定ユニット3によって捕捉される気筒内の燃焼圧力が、船から遠隔の制御局10に連絡されており、海上で独立に運航されている複数の船から受信された値は、個々のエンジンで使用される燃焼制御パラメータを計算するのに使用されている。複数の独立に運航されている船のそれぞれで捕捉された値は、遠隔の制御局に、当該遠隔の制御局10と船との間の通信も提供している衛星通信リンク11を用いて連絡される。従って、遠隔の制御局10は、燃焼圧力測定ユニット3から捕捉値を受信し、燃焼制御パラメータを計算し、それらを低速調整ループ20で使用するためにエンジン制御システム2に連絡する、ということによって、低速調整ループ20の一部を形成している。遠隔の制御局に連絡される値は、エンジンのクランクシャフトの回転速度や位置の様な、エンジンの作動に関係する何らか値とされることは明らかであろう。
【0023】
遠隔の制御局10は、地上を拠点としていて、エンジン製造元又は使用者に属しているのが好適である。複数の独立に運航している船から受信された捕捉値は、次に、最適燃焼制御パラメータを計算するためのアルゴリズムを確定するのに使用することができる。複数の独立作動エンジンの作動からの捕捉値を使用することにより、燃焼プロセスのなおいっそう良好な最適化を可能にするとともに他のエンジンの作動及び最適化からの経験を加味したアルゴリズムを確定することができる。改善されたアルゴリズムが手札となったとき、アルゴリズムは、数基の独立作動エンジンの益になるように、遠隔の制御局のソフトウェアを更新することによって配備される。燃焼制御パラメータを計算するための改善されたアルゴリズムは、遠隔の制御局との必要な通信リンク11を設けていない船の燃焼測定制御ユニット3に配備させることもできるし、又は通信リンク11が万一失陥した場合のバックアップとして配備させることもできることは明らかであろう。その場合、燃焼測定制御ユニット3は、測定された燃焼圧力を、点線9で表わされている様にエンジン制御システム2へ直接提供することになろう。
【0024】
燃焼圧力を測定することに加え、燃焼測定ユニット4は、窒素酸化物、一酸化炭素、二酸化炭素の様な、排ガスのレベルを測定するためのセンサー配列を備えており、例えばその様な排ガスのレベルを制限するべくエンジンの燃焼プロセスが最適化されるように狙うこともできる。
【0025】
エンジン1の燃焼プロセスの最適化は、エンジンの作動中に常時実施される必要はなく、手動であれ自動であれ、現在の作動条件が原因で燃焼プロセスの最適化が要求されたときに、燃焼圧力測定ユニット3が、符号7で示されている様に、それぞれの気筒内の燃焼圧力の捕捉を開始して、捕捉値を遠隔の制御局10に連絡するものであり、値は制御局で以降の使用に備えて格納されてもよい。更に、捕捉値は、エンジン1の作動を最適化する燃焼制御パラメータを計算するのに使用される。計算された燃焼制御パラメータは、船に連絡され、高速調整ループ30で使用するためにエンジン制御システム2へローディングされる。計算された燃焼制御パラメータ又はエンジン制御システム2で現在使用されている燃焼制御パラメータの必要とされる調節のグラフィック表現8が、船の操作者に提示される。燃焼圧力の新たな測定が行われ、捕捉値が遠隔の制御局に連絡されて、所望の結果が得られたかどうかがチェックされており、当該プロセスは、エンジンの作動が所望された通りに最適化されるまで繰り返される。遠隔の制御局が、異なった運航条件下に海上運航されている船の複数のエンジンから、燃焼圧力の捕捉値を受信している場合は、対応する多数の値を分析して、複数のエンジンの作動及び最適化からの経験を活用することができる。従って、結果的になおいっそう高度に最適化されたエンジンをもたらす燃焼制御パラメータ計算のための改善されたアルゴリズムが確定され、そして改善されたアルゴリズムは、遠隔の制御局10のソフトウェアを更新するだけで実装することができる。
【0026】
本発明によれば、エンジンの制御を、時間重視の事象である現地制御型作動に係る高速調整ループと、複数のエンジンに接続されている遠隔制御局が関与する非時間重視の低速調整ループとに分けて、遠隔の制御局が、高速調整ループで使用される燃焼制御パラメータを複数の独立作動エンジンからの捕捉値に基づいて計算するようにしたことにより、エンジンの燃焼プロセスは、なおいっそう高度に最適化され得るものと認識している。
【符号の説明】
【0027】
1 内燃エンジン
2 エンジン制御システム
3 燃焼測定システム(先行技術)、燃焼圧力測定ユニット又は燃焼測定制御ユニット(本発明)
4 エンジン制御ユニット
5 気筒制御ユニット
6 気筒内の固定センサー
7 測定燃焼圧力表示
8 パラメータのグラフィック表現
9 バックアップ時の連絡経路
10 制御局
11 通信リンク
20 低速調整ループ
30 高速調整ループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上運航されている船の内燃エンジン(1)の燃焼プロセスを最適化するための方法であって、
高速調整ループ(30)内で、前記内燃エンジン(1)の気筒内の前記燃焼プロセスに関係している作動事象の実行を制御する段階と、
低速調整ループ(20)内で、前記内燃エンジン(1)の前記燃焼プロセスに関係している値を捕捉する段階と、
前記高速調整ループ(30)内で使用される燃焼制御パラメータを計算する段階と、を備えている方法において、
海上運航されている船の複数の独立作動内燃エンジン(1)の前記捕捉値を、遠隔の制御局(10)に連絡すること、及び
前記複数の独立作動内燃エンジン(1)の前記捕捉値に基づいて、前記高速調整ループ(30)で使用される前記制御パラメータを計算すること、を特徴とする方法。
【請求項2】
前記捕捉値は、前記気筒内の前記燃焼圧力を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記捕捉値は、排ガス中の窒素酸化物レベルを備えている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記遠隔の制御局(10)に連絡された前記捕捉値は、前記燃焼制御パラメータを計算するためのアルゴリズムを確定するのに使用される、請求項1から3に記載の方法。
【請求項5】
内燃エンジン(1)の特定の作動条件について最適化されたアルゴリズムが確定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の内燃エンジン(1)のうちの特定の型式の内燃エンジン(1)のための前記燃焼制御パラメータを計算するためのアルゴリズムが確定される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記捕捉値は、前記遠隔の制御局(10)に、衛星通信リンク(11)を用いて連絡される、請求項1から6に記載の方法。
【請求項8】
海上運航されている船の内燃エンジン(1)の燃焼プロセスを最適化するためのシステムであって、
前記内燃エンジン(1)の気筒内の燃焼プロセスに関係している作動事象の実行を制御するエンジン制御ユニット(4)を備える高速調整ループ(30)と、
前記内燃エンジン(1)の前記燃焼プロセスに関係している値を捕捉する燃焼測定ユニット(3)を備えていて、高速調整ループ(30)内で使用される燃焼制御パラメータを計算する低速調整ループ(20)と、を備えているシステムにおいて、
海上運航されている船の複数の独立作動内燃エンジン(1)は、遠隔の制御局(10)と通信していて、当該遠隔の制御局(10)は、前記海上運航されている船の前記複数の独立作動内燃エンジン(1)からの捕捉値を受信すること、及び
前記遠隔の制御局(10)は、前記燃焼制御パラメータを、前記複数の独立作動内燃エンジン(1)の捕捉値に基づいて計算するための手段を備えていること、を特徴とするシステム。
【請求項9】
前記捕捉値は、前記気筒内の前記燃焼圧力を備えている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記捕捉値は、排ガス中の窒素酸化物レベルを備えている、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
前記遠隔の制御局(10)に連絡された前記捕捉値は、前記燃焼制御パラメータを計算するためのアルゴリズムを確定するのに使用される、請求項8から10に記載のシステム。
【請求項12】
内燃エンジン(1)の特定の作動条件について最適化されたアルゴリズムが確定される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数の内燃エンジン(1)のうちの特定の型式の内燃エンジン(1)のための前記燃焼制御パラメータを計算するためのアルゴリズムが確定される、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記海上運航されている船の前記複数の独立作動内燃エンジン(1)と前記遠隔の制御局(10)の間の前記通信リンクは、衛星通信リンク(11)である、請求項8から13に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−7374(P2013−7374A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−274748(P2011−274748)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(594140904)マン・ディーゼル・アンド・ターボ,フィリアル・アフ・マン・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー,ティスクランド (22)
【住所又は居所原語表記】Center Syd,161 Stamholmen,DK−2650 HVIDOVRE,Denmark
【Fターム(参考)】