説明

内燃機関の停止制御装置

【課題】 内燃機関の自動停止に伴い、エアコンの冷房運転中および暖房運転中のいずれにおいても、車室内の快適性を確保するとともに、燃費を向上させることができる内燃機関の停止制御装置を提供する。
【解決手段】 本発明の内燃機関3の停止制御装置1では、内燃機関3が自動的に停止したときに、エアコン10から車両の車室R内に吹き出される空気の温度の目標値である目標吹出し温度TAOを設定する(図5)とともに、エアコン10のファン18の風量を表すファン電圧VFANを取得する。また、目標吹出し温度TAOおよびファン電圧VFANに基づいて、停止許容時間TADMSTPを算出するとともに、内燃機関3の停止時間(停止タイマ値TMSTP)が停止許容時間TADMSTPに達したときに、内燃機関3を再始動させる(図4のステップ14〜16)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された内燃機関を、自動的に停止および再始動させる内燃機関の停止制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の内燃機関の停止制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この内燃機関は、燃費の向上を図るために、車両の停止中、所定の停止条件(アイドルストップ条件)が成立したときに、自動的に停止される。また、内燃機関は、エアコンの圧縮機の駆動源として用いられている。このため、エアコンの冷房運転中に内燃機関が停止されると、次のような不具合が発生し得る。
【0003】
内燃機関の停止後、電動のブロワによる車室内への送風は継続されるものの、圧縮機の停止に伴い、冷媒の循環が停止する結果、蒸発器の温度が上昇し始める。車室内には蒸発器を通過した空気が吹き出されるので、その空気の温度は、蒸発器の温度上昇に伴って次第に高くなる。その結果、エアコンの十分な冷房能力が維持できなくなる。
【0004】
このため、特許文献1の停止制御装置では、内燃機関が自動的に停止された後、所定の停止時間が経過したときに、内燃機関を再始動させる。この停止時間の設定は、以下のようにして行われる。すなわち、まず、エアコンの設定状態および外部の環境に応じて、車室内の快適性を維持することが可能なエアコンの蒸発器の上限の温度(以下「許容上限温度」という)を算出する。次いで、算出された許容上限温度と内燃機関の停止直前に検出された蒸発器の温度との差に基づいて、車室内の快適性を維持できる時間(以下「室温上昇許容時間」という)を算出し、さらに、算出された室温上昇許容時間に基づいて、停止時間が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4475437号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、内燃機関の冷却水は、エアコンのヒータの熱源として用いられている。エアコンの暖房運転中に内燃機関が停止されると、それに伴い、内燃機関の冷却水が低下し始める。これにより、ヒータの温度が低下する結果、ヒータを介して車室内に吹き出される空気の温度は次第に低くなり、ひいては、エアコンの十分な暖房能力が維持できなくなる。
【0007】
これに対し、上述した従来の停止制御装置では、エアコンの冷房運転中における車室内の快適性を維持するために、内燃機関の再始動の開始タイミングを規定する停止時間を設定するものの、この停止時間の設定は、蒸発器の温度に基づいて行われるにすぎず、ヒータの温度状態とは無関係である。このため、ヒータの温度が大きく低下しているにもかかわらず、内燃機関が再始動されない場合があり、その場合には、車室内に吹き出される空気の温度を高い温度に維持できず、ひいては、暖房運転による車室内の快適性が低下してしまう。逆に、ヒータの温度がそれほど低下していないにもかかわらず、内燃機関が早く再始動される場合があり、その場合には、燃費が悪化してしまう。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、内燃機関の自動停止に伴い、エアコンの冷房運転中および暖房運転中のいずれにおいても、車室内の快適性を確保するとともに、燃費を向上させることができる内燃機関の停止制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、車両に搭載され、エアコン10の冷媒を圧縮して蒸発器15に供給する圧縮機11の駆動源およびエアコン10のヒータ(実施形態における(以下、本項において同じ)ヒータコア71)の熱源として用いられる内燃機関3を、所定の停止条件が成立したときに停止させるとともに、所定の再始動条件が成立したときに再始動させる内燃機関3の停止制御装置1であって、内燃機関3が停止したときに、エアコン10から車両の車室R内に吹き出される空気の温度の目標値である目標吹出し温度TAOを設定する目標吹出し温度設定手段(ECU2、図5)と、内燃機関3が停止したときに、エアコン10のファン18の風量を表す風量パラメータ(ファン電圧VFAN)を取得する風量パラメータ取得手段(ファン電圧センサ29)と、設定された目標吹出し温度TAOおよび取得された風量パラメータに基づいて、停止許容時間TADMSTPを算出するとともに、内燃機関3の停止時間(停止タイマ値TMSTP)が停止許容時間TADMSTPに達したときに、内燃機関3を再始動させる再始動手段(ECU2、図4のステップ14〜16)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この内燃機関は、車両に搭載されており、エアコンの圧縮機の駆動源およびエアコンのヒータの熱源として用いられている。内燃機関の運転時、エアコンの冷房運転中のときには、内燃機関によって駆動された圧縮機で圧縮された冷媒が蒸発器に供給され、蒸発器での熱交換により冷却された空気が車室内に吹き出されることによって、車室の冷房が行われる。また、内燃機関の運転時、エアコンの暖房運転中のときには、ヒータが作動し、ヒータとの熱交換によって暖められた空気が車室内に吹き出されることによって、車室の暖房が行われる。
【0011】
また、上述した停止制御装置によれば、エアコンから車両の車室内に吹き出される空気の温度(以下「吹出し温度」という)の目標値である目標吹出し温度が、目標吹出し温度設定手段によって設定されるとともに、エアコンのファンの風量を表す風量パラメータが、風量パラメータ取得手段によって取得される。さらに、再始動手段により、設定された目標吹出し温度および取得された風量パラメータに基づいて、停止許容時間が算出される。そして、内燃機関の停止時間が停止許容時間に達したときに、内燃機関が再始動される。これにより、エアコンの圧縮機またはヒータが駆動されることによって、車室の冷房または暖房が再開される。
【0012】
内燃機関の停止中におけるエアコンのファンの風量が大きいほど、冷房運転中のときには、蒸発器での熱交換が促進されることで、内燃機関の運転中に蒸発器に蓄積されていた熱(冷却用の熱)がより短時間で用い尽くされるため、車室への吹出し温度がより早く上昇し、また、暖房運転中のときには、ヒータでの熱交換が促進されることで、ヒータに蓄積されていた熱(加温用の熱)がより短時間で用い尽くされるため、車室への吹出し温度がより早く低下する。
【0013】
上述したように、本発明によれば、エアコンから車室内への空気の吹出し温度の目標値である目標吹出し温度に加え、ファンの風量を表す風量パラメータに応じて、内燃機関の再始動の開始タイミングを規定する停止許容時間を算出する。したがって、内燃機関の停止中、目標吹出し温度に見合う吹出し温度を確保し、車室内の温度を維持しながら、内燃機関の再始動を適切なタイミングで開始することができる。これにより、エアコンの冷房運転中および暖房運転中のいずれにおいても、車室内の快適性を確保できるとともに、燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態による停止制御装置を適用した内燃機関を概略的に示す図である。
【図2】停止制御装置を示すブロック図である。
【図3】アイドルストップ条件の判定処理を示すフローチャートである。
【図4】再始動条件の判定処理を示すフローチャートである。
【図5】目標吹出し温度の算出処理を示すフローチャートである。
【図6】停止許容時間を算出するためのマップである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態による停止制御装置1を、これを適用した内燃機関(以下「エンジン」という)3とともに概略的に示している。エンジン3は、車両(図示せず)に搭載されたガソリンエンジンである。
【0016】
また、車両には、車室Rを冷房および暖房するためのエアコンディショナ(以下「エアコン」という)10が搭載されている。このエアコン10の冷凍サイクルは、コンプレッサ(圧縮機)11、コンデンサ12、レシーバ13、膨張弁14およびエバポレータ(蒸発器)15などで構成されている。
【0017】
コンプレッサ11は、電磁式のエアコンクラッチ17、プーリ51、ベルト52およびプーリ53を介して、エンジン3のクランクシャフト3aに連結されている。エアコンクラッチ17が接続された状態では、コンプレッサ11は、クランクシャフト3aによって駆動され、低温低圧の気体状の冷媒を圧縮し、高温高圧の気体状の冷媒として、冷媒管16を介してコンデンサ12に送る。
【0018】
コンプレッサ11は、可変容量タイプのものであり、その容量を変更するための電磁制御弁(図示せず)を有する。コンプレッサ11の容量は、ECU2から電磁制御弁に出力される駆動信号によって制御される。
【0019】
上記のエアコンクラッチ17の接続/遮断は、車室Rの運転席に設けられたエアコンスイッチ41の操作状態などに応じ、ECU2からの制御信号によって制御される。具体的には、エアコンスイッチ41がオフ状態のときには、エアコンクラッチ17が遮断され、それにより、エアコン10の冷房運転が停止される。一方、エアコンスイッチ41がオン状態のときには、後述するようにして設定された目標吹出し温度TAOに応じて、エアコンクラッチ17が制御される。
【0020】
コンデンサ12は、コンプレッサ11から送られた高温高圧の気体状の冷媒を冷却し、液化させる。液化した冷媒は、冷媒管16を介してレシーバ13に送られる。レシーバ13は、冷媒を一時的に蓄えるためのものであり、レシーバ13から流出した冷媒は、ドライヤ(図示せず)で水分を除去された後、膨張弁14に送られる。膨張弁14は、冷媒を霧化した状態で膨張させ、冷媒管16を介してエバポレータ15に送る。
【0021】
エバポレータ15は、車室Rに連通するエアコンケース61内に設けられている。膨張弁14からエバポレータ15に送られた霧状の冷媒は、エアコンケース61内の空気との熱交換によって昇温され、蒸発(気化)する。気化した冷媒は、冷媒管16を介してコンプレッサ11に戻される。
【0022】
エアコンケース61内の空気は、エバポレータ15内の冷媒との熱交換によって冷却された後、エアコンケース61の入口に設けられたファン18による送風によって、吹出し口63a〜63cから車室R内に吹き出され、それにより、車室Rが冷房される。また、エアコンケース61内の空気は、エバポレータ15による冷却によって結露し、それにより、乾燥した空気が車室R内に送られることで、車室R内が除湿される。
【0023】
上記のファン18は、電動式のモータ18aを有しており、モータ18aの駆動電圧(以下「ファン電圧」という)VFANをECU22からの制御信号で変更することによって、ファン18の風量が制御される。また、吹出し口63a〜63cには、それらを開閉する回動自在のデフドア64a、ベントドア64bおよびフロアドア64cがそれぞれ設けられている。デフドア64aの開度は、運転席に設けられた吹出し切換えスイッチ(図示せず)によって変更され、ベントドア64bおよびフロアドア64cの開度は、ECU2からの制御信号によって制御される。
【0024】
また、エアコンケース61内のエバポレータ15よりも下流側には、ヒータコア71が設けられている。このヒータコア71には、ウォーターポンプ72によって、エンジン3を冷却した後の高温の冷却水が、循環通路73を介して供給され、それにより、ヒータコア71が昇温される。ウォーターポンプ72は、プーリ54,ベルト55およびプーリ56を介して、クランクシャフト3aに連結されており、エンジン3の運転時、クランクシャフト3aによって常時、駆動される。エアコンケース61内の空気は、ヒータコア71で加温された後、ファン18によって吹出し口63a〜63cから車室R内に吹き出され、それにより、車室Rが暖房される。
【0025】
また、エアコンケース61内のヒータコア71のすぐ上流側には、回動自在のエアミックスドア74が設けられている。エアミックスドア74の開度は、ECU2からの制御信号によって制御される。それにより、エバポレータ15からの冷却された空気の量と、ヒーターコア74に導かれ、加温される空気の量との割合が変更されることによって、吹出し口63a〜63cから車室Rに吹き出される空気の温度(以下「吹出し温度」という)が調整される。
【0026】
また、エアコンケース61の入口には、回動自在のインテークドア62が設けられている。このインテークドア62は、エアコンケース61内に車室R内の空気を導入する内気導入と、外気を導入する外気導入との切換えを行うためのものであり、その切換えは、運転席に設けられた切換えレバー(図示せず)によって行われる。さらに、運転席には、運転者が車室R内の温度を設定するための室温設定スイッチ44(図2参照)が設けられている。
【0027】
エンジン3のクランクシャフト3aには、クランク角センサ21が設けられている。クランク角センサ21は、クランクシャフト3aの回転に伴い、所定のクランク角(例えば30゜)ごとに、パルス信号であるCRK信号をECU2に出力する。ECU2は、CRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。
【0028】
また、ECU2には、車速センサ22から、車両Vの速度である車速VPを表す検出信号が、アクセル開度センサ23から、アクセルペダル(図示せず)の開度(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が、シフトポジションセンサ24から、シフトレバー(図示せず)のシフトポジション(L,2,D,N,R,P)を表す検出信号が、それぞれ出力される。
【0029】
また、ECU2には、室内温度センサ25から、車室R内の温度(以下「室内温度」という)TRを表す検出信号が、外気温度センサ26から、外気の温度(以下「外気温度」という)TAMを表す検出信号が、日射量センサ27から、日射量GSOLを表す検出信号が、それぞれ出力される。
【0030】
さらに、ECU2には、電流電圧センサ28から、スタータ4の電源であるバッテリ5に入出力される電流・電圧を表す検出信号が出力される。ECU2は、この検出信号に基づいて、バッテリ5の充電残量(以下「バッテリ残量」という)SOCを算出する。また、ECU2には、ファン電圧センサ29から、ファン電圧VFANを表す検出信号が出力される。
【0031】
また、ECU2には、イグニッションスイッチ42から、そのオン/オフ状態を表す検出信号が検出される。なお、エンジン3の停止時にイグニッションスイッチ42がオンされると、クランクシャフト3aに連結されたスタータ4が作動することによって、エンジン3がクランキングされ、始動される。また、エンジン3の運転時にイグニッションスイッチ42がオフされると、エンジン3が停止される。
【0032】
さらに、ECU2には、ブレーキスイッチ43から、ブレーキペダル(図示せず)のオン/オフ状態を表す検出信号が、室温設定スイッチ44から、設定されている設定室温TSETを表す検出信号が、それぞれ出力される。
【0033】
ECU2は、CPU、RAM、ROMおよび入力インターフェース(いずれも図示せず)などから成るマイクロコンピュータ(図示せず)で構成されている。ECU2は、上述したセンサ21〜29およびスイッチ41〜44の検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムなどに基づいて、各種の演算処理を実行する。なお、本実施形態では、ECU2は、目標吹出し温度設定手段および再始動手段に相当する。
【0034】
次に、図3〜図6を参照しながら、ECU2によって実行されるエンジン3の停止制御処理について説明する。なお、以下に説明する各種の処理は、所定時間ごとに実行される。
【0035】
図3は、アイドルストップ条件の判定処理を示す。本処理では、ステップ1〜7において、以下の条件(a)〜(g)が成立しているか否かをそれぞれ判別する。
(a)イグニッションスイッチ(SW)42がオン状態であること
(b)エンジン回転数NEが所定値NEISTP以上であること
(c)車速VPが所定値VPREF以下であること
(d)アクセル開度APが所定値APREF以下であること
(e)シフトポジション(SP)がP、R、N以外であること
(f)ブレーキスイッチ(SW)43がオン状態であること
(g)バッテリ残量SOCが所定値SOCISTP以上であること
【0036】
これらの条件(a)〜(g)がすべて成立しているときには、アイドルストップ条件が成立していると判定し、そのことを表すために、ステップ8において、アイドルストップフラグF_IDLSTPを「1」にセットし、本処理を終了する。エンジン3の運転中にアイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」にセットされると、エンジン3を自動的に停止させるアイドルストップが実行される。
【0037】
一方、ステップ1〜7の答のいずれかがNOで、条件(a)〜(g)のいずれかが成立していないときには、アイドルストップ条件が成立していないと判定し、そのことを表すために、ステップ9において、アイドルストップフラグF_IDLSTPを「0」にセットし、本処理を終了する。アイドルストップ中にアイドルストップフラグF_IDLSTPが「0」にセットされると、アイドルストップが終了し、エンジン3が再始動される。
【0038】
図4は、本発明に係る再始動条件の判定処理を示す。本処理は、アイドルストップ中の車室Rへの吹出し温度の状態に応じて、エンジン3を再始動させる再始動条件が成立しているか否かを判定するものである。
【0039】
本処理では、まずステップ11において、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、アイドルストップ中でないときには、アイドルストップによるエンジン3の停止時間を自動的に計時するアップカウント式の停止タイマの値(以下「停止タイマ値」という)TMSTPを0にリセットし(ステップ12)、本処理を終了する。
【0040】
前記ステップ11の答がYESで、アイドルストップ中のときには、アイドルストップフラグの前回値F_IDLSTPZが「1」であるか否かを判別する(ステップ13)。この答がNOのとき、すなわち、今回がアイドルストップの開始直後に相当するときには、そのときの目標吹出し温度TAOおよびファン電圧VFANに応じ、図6のマップを検索することによって、アイドルストップの許容時間である停止許容時間TADMSTPを算出し(ステップ14)、後述するステップ15に進む。
【0041】
上記の目標吹出し温度TAOは、車室Rへの吹出し温度の目標値になるものであり、図5に示すように、設定温度TSET、室内温度TR、外気温度TAMおよび日射量GSOLに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出され、設定される(ステップ21)。そのように設定された目標吹出し温度TAOに応じ、エアコンクラッチ17の接続/遮断、ファン18の風量と、ベントドア64b、フロアドア64cおよびエアミックスドア74の各開度が、ECU2により設定され、制御されることによって、吹出し温度が目標吹出しTAOに制御される。
【0042】
図6のマップでは、目標吹出し温度TAOのm個の所定値(TAO1〜TAOm)とファン電圧VFANのn個の所定値(VFAN1〜VFANn)との組み合わせに対して、m×n個の停止許容時間TADMSTPがそれぞれ設定されている。目標吹出し温度TAOおよび/またはファン電圧VFANがそれぞれのいずれの所定値とも一致しない場合には、停止許容時間TADMSTPは補間計算によって算出される。
【0043】
また、このマップでは、停止許容時間TADMSTPは、目標吹出し温度TAOがエアコン10の通常の使用温度に相当する所定の基準温度(例えば25℃)から離れるほど、より小さな値に設定されている。これは、基準温度からの目標吹出し温度TAOの隔たりが大きいほど、運転者からの冷房または暖房の要求度合が高いと推定されるためである。
【0044】
さらに、停止許容時間TADMSTPは、ファン電圧VFANが高いほど、より小さな値に設定されている。これは、ファン電圧VFANが高いほど、ファン18の風量が大きく、冷房運転中のときには、エンジン3が停止するまでにエバポレータ15に蓄積されていた熱量がより短時間で用い尽くされることで、車室Rへの吹出し温度がより早く上昇し、また、暖房運転中のときには、ヒータコア71に蓄積されていた熱量がより短時間で用い尽くされることで、車室Rへの吹出し温度がより早く低下するためである。
【0045】
また、前記ステップ13の答がYESで、今回がアイドルストップの開始直後でないときには、前記ステップ14をスキップして、ステップ15に進む。このステップ15では、前記ステップ12でリセットした停止タイマ値TMSTPが停止許容時間TADMSTP以上であるか否かを判別する。
【0046】
このステップ15の答がNOで、エンジン3の停止時間が停止許容時間TADMSTPに達していないときには、エンジン3の再始動条件が成立していないとして、そのまま本処理を終了し、アイドルストップを継続する。
【0047】
一方、前記ステップ15の答がYESで、エンジン3の停止時間が停止許容時間TADMSTPに達したときには、エンジン3の再始動条件が成立しているとして、エンジン3を再始動させるために、アイドルストップフラグF_IDLSTPを「0」にセットし(ステップ16)、本処理を終了する。
【0048】
以上のように、本実施形態によれば、アイドルストップの開始直後に、車室Rへの吹出し温度の目標値である目標吹出し温度TAOと、ファン18の風量を表す風量パラメータであるファン電圧VFANに応じて、停止許容時間TADMSTPを算出するとともに、エンジン3の停止時間(停止タイマ値TMSTP)が停止許容時間TADMSTPに達したときに、エンジン3を再始動させる。したがって、エンジン3のアイドルストップ中、目標吹出し温度TAOに見合う吹出し温度を確保し、車室温度TRを維持しながら、エンジン3の再始動を適切なタイミングで開始することができる。これにより、エアコン10の冷房運転中および暖房運転中のいずれにおいても、車室R内の快適性を確保できるとともに、燃費を向上させることができる。
【0049】
また、停止許容時間TADMSTPを、目標吹出し温度TAOがエアコン10の通常の使用温度に相当する所定の基準温度から離れるほど、より小さな値に設定するので、運転者からの冷房または暖房の要求度合に応じて、停止許容時間TADMSTP適切に設定し、エンジン3の再始動をより適切なタイミングで開始することができる。
【0050】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、停止許容時間TADMSTPを算出するための風量パラメータとして、ファン電圧VFANを用いているが、これに限らず、ファン18の風量を表す他の適当なパラメータを用いてもよく、例えばファン18の風量をエアフローセンサなどで直接、検出してもよい。
【0051】
また、実施形態は、設定温度TSETや車室R内外の温度環境などに応じて、エアコンクラッチ17の接続/遮断、ファン18の風量およびエアミックスドア74の開度などを自動的に制御するタイプのエアコンに、本発明を適用した例であるが、本発明は、これに限らず、上記の制御パラメータを運転者が設定する手動タイプのエアコンに適用してもよいことは、もちろんである。
【0052】
さらに、実施形態は、本発明を車両に搭載されたガソリンエンジンに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、ディーゼルエンジンなどの各種のエンジンに適用してもよく、また、車両用以外のエンジン、例えば、クランク軸を鉛直に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジンにも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 停止制御装置
2 ECU(目標吹出し温度設定手段、再始動手段)
3 エンジン(内燃機関)
10 エアコン
11 コンプレッサ(圧縮機)
15 エバポレータ(蒸発器)
18 ファン
29 ファン電圧センサ(風量パラメータ取得手段)
71 ヒータコア(ヒータ)
R 車室
TAO 目標吹出し温度
VFAN ファン電圧(風量パラメータ)
TMSTP 停止タイマ値(内燃機関の停止時間)
TADMSTP 停止許容時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、エアコンの冷媒を圧縮して蒸発器に供給する圧縮機の駆動源および当該エアコンのヒータの熱源として用いられる内燃機関を、所定の停止条件が成立したときに停止させるとともに、所定の再始動条件が成立したときに再始動させる内燃機関の停止制御装置であって、
前記内燃機関が停止したときに、前記エアコンから前記車両の車室内に吹き出される空気の温度の目標値である目標吹出し温度を設定する目標吹出し温度設定手段と、
前記内燃機関が停止したときに、前記エアコンのファンの風量を表す風量パラメータを取得する風量パラメータ取得手段と、
前記設定された目標吹出し温度および前記取得された風量パラメータに基づいて、停止許容時間を算出するとともに、前記内燃機関の停止時間が前記停止許容時間に達したときに、前記内燃機関を再始動させる再始動手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の停止制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219693(P2012−219693A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85430(P2011−85430)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】