説明

内燃機関の停止制御装置

【課題】自動的に停止された内燃機関を最適なタイミングで再始動させることができ、それにより、窓ガラスの曇りの発生を確実に防止できるとともに、燃費を向上させることができる内燃機関の停止制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン3は、エアコン10のコンプレッサ11に連結されている。停止制御装置1によれば、アイドルストップ中に、窓ガラス温度TGを算出し、算出された窓ガラス温度TGに応じて、窓ガラスWに曇りが発生しないような限界湿度DPを設定する。そして、判定用の室内湿度RHJUDが限界湿度DP以上になったときに、アイドルストップを終了し、エンジン3を再始動させる。また、雨または雪のときには、判定用の室内湿度RHJUDを補正し、室内温度TRが第1所定温度TRH以上のときには、ガラス温度TGを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された内燃機関を、自動的に停止および再始動させる内燃機関の停止制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の内燃機関の停止制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この内燃機関は、車両の停止時に、所定の停止条件(アイドルストップ条件)が成立したときに自動的に停止される。また、内燃機関は、クランクシャフトを介してエアコンの圧縮機に連結されており、その駆動源として用いられている。このため、エアコンの冷房運転中に内燃機関が停止されると、次のような不具合が発生し得る。
【0003】
内燃機関の停止後、電動のファンによる車室内への送風は継続されるものの、圧縮機の停止に伴い、冷媒の循環が停止する結果、蒸発器の温度が上昇し始める。車室内には蒸発器を通過した空気が吹き出されるので、その空気の温度は、蒸発器の温度上昇に伴って次第に高くなる。また、内燃機関が停止されると、除湿が行われなくなるため、車室内の湿度が上昇し始める。そして、車室内の湿度が所定値以上になると、車室の窓ガラスに曇りが発生する。
【0004】
このため、特許文献1の停止制御装置では、内燃機関が自動的に停止された後、所定の停止時間が経過したときに、内燃機関を再始動させる。この停止時間の設定は、以下のようにして行われる。まず、エアコンの設定状態および外部の環境に応じて、車室内の快適性を維持することが可能なエアコンの蒸発器の上限の温度(許容上限温度)を算出し、算出された許容上限温度と内燃機関が停止する直前に検出された蒸発器の温度との差に応じて、車室内の快適性を維持できる時間(室温上昇許容時間)を算出する。次に、エアコンの設定状態、車室内の温度および外部の環境などに応じて、窓ガラスに曇りが発生しない限界の湿度(曇り判定湿度)を算出し、算出された曇り判定湿度と内燃機関が停止する直前に検出された車室内の湿度との差に応じて、窓ガラスに曇りが発生するまでの曇り発生推定時間を算出する。そして、算出された室温上昇許容時間および曇り発生推定時間のうちの小さい方を、停止時間として設定する。そして、内燃機関の自動停止時から、設定された停止時間が経過したときに、内燃機関を再始動させることによって、車室内の快適性の低下および窓ガラスの曇りの発生の両方を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4475437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献1の停止制御装置では、エアコンの設定状態および外部の環境に応じて、曇り発生推定時間を算出し、曇り発生推定時間が経過する前に内燃機関が再始動される。しかし、窓ガラスに曇りが発生する状況は、上記のパラメータだけで定まるものではなく、実際に曇りが生じる部位である窓ガラスの温度に応じて変化する。また、そのときの窓ガラスの温度が同じであっても、それまでに窓ガラスが置かれた環境によっても、窓ガラスに曇りが発生する状況は異なる。
【0007】
これに対し、従来の停止制御装置では、曇り発生推定時間の算出を、エアコンの設定状態および外部の環境に応じて行うにすぎないので、曇り発生推定時間を精度良く算出することができない。このため、曇り発生推定時間が実際の曇り発生時間に対して長めに算出された場合には、内燃機関の再始動が遅れることで、窓ガラスに曇りが発生してしまう。逆に、曇り発生推定時間が短めに算出された場合には、窓ガラスに曇りが発生するおそれがない状態で、内燃機関が早く再始動されることで、燃費が悪化してしまう。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、自動的に停止された内燃機関を最適なタイミングで再始動させることができ、それにより、窓ガラスの曇りの発生を確実に防止できるとともに、燃費を向上させることができる内燃機関の停止制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、車両に搭載され、エアコン10の圧縮機(実施形態における(以下、本項において同じ)コンプレッサ11)に連結された内燃機関3を、所定の停止条件が成立したときに停止させるとともに、所定の再始動条件が成立したときに再始動させる内燃機関の停止制御装置1であって、内燃機関3が停止した状態での車両の車室R内の湿度(室内湿度RH)を検出する車室内湿度検出手段(湿度センサ26)と、内燃機関3が停止した状態での車室Rの窓ガラスWの温度を取得する窓ガラス温度取得手段(ECU2、車速センサ22、外気温度センサ28、日射量センサ29)と、取得された窓ガラス温度TGに応じて、窓ガラスWに曇りが発生しないような限界の車室内湿度を、限界湿度DPとして設定する限界湿度設定手段(ECU2、図4のステップ22、図5)と、検出された車室内湿度が限界湿度DP以上になったときに、内燃機関3を再始動させる再始動手段(ECU2、スタータ4、図4のステップ28)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この内燃機関は、車両に搭載されており、所定の停止条件が成立したときに停止されるとともに、所定の再始動条件が成立したときに再始動される、いわゆるアイドルストップが行われるものである。また、この内燃機関は、エアコンの圧縮機に連結されており、その駆動源として用いられている。この内燃機関の停止制御装置によれば、内燃機関が停止した状態において、車室内の湿度を検出するとともに、車室の窓ガラスの温度を取得する。また、取得された窓ガラス温度に応じて、窓ガラスに曇りが発生しないような限界の車室内湿度を、限界湿度として設定する。そして、車室内湿度が限界湿度以上になったときに、内燃機関を再始動させる。
【0011】
前述したように、窓ガラスに曇りが発生する状況は、窓ガラス温度に応じて大きく変化する。したがって、上述した限界湿度を窓ガラス温度に応じて設定することによって、窓ガラスの曇りの実際の発生状況に応じた最適なタイミングで、内燃機関を再始動させることができる。その結果、窓ガラスの曇りの発生を適切に防止できるとともに、内燃機関の停止期間を最大限、確保でき、それにより、燃費を向上させることができる。以上のように、窓ガラスの曇りの発生の防止と燃費の向上を両立させることができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関の停止制御装置1において、車室R外の天候が雨または雪であるか否かを判定する天候判定手段(ワイパスイッチ44)と、判定された天候が雨または雪のときに、車室内湿度および限界湿度DPの一方を補正する補正手段(ECU2、図4のステップ25,27)と、をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、車室外の天候が雨または雪であると判定されたときに、内燃機関の再始動のタイミングを決定するために比較される車室内湿度および限界湿度の一方を補正する。天候が雨または雪のときには、運転者の衣服に付着した水分や、雨具に付着した水分が車室内で蒸発するため、車室内湿度が上昇しやすく、それに伴って窓ガラスが曇りやすくなる。したがって、雨または雪のときに、上述した補正を行うことによって、雨または雪のために窓ガラスが曇りやすい状態においても、内燃機関を最適なタイミングで再始動させることができ、窓ガラスの曇りの発生をより適切に防止することができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の内燃機関の停止制御装置1において、車室R内の温度(室内温度TR)を検出する車室内温度検出手段(室内温度センサ27)と、内燃機関3が停止する前の車両の速度(車速最大値VPMAX)を検出する車両速度検出手段(車速センサ22)と、車室外の外気の温度を検出する外気温度検出手段(外気温度センサ28)と、検出された車室内温度が所定温度(第1所定温度TRH)以上のときに、検出された車両速度および外気温度TAMに応じて、限界湿度DPの設定に用いる窓ガラス温度TGを補正する窓ガラス温度補正手段(ECU2、図5のステップ47〜49)と、をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、車室内温度、車両速度および外気温度を検出し、検出された車室内温度が所定温度以上のときに、検出された車両速度および外気温度に応じて、限界湿度の設定に用いる窓ガラス温度を補正する。車室内温度が所定温度以上の状態では、車室内温度に対して外気温度が相対的に低くなるため、窓ガラスに曇りが発生しやすくなるので、限界湿度をより精度良く算出する必要がある。
【0016】
ここで、内燃機関が停止された後、再始動されるまでの間における窓ガラス温度の変化度合は、車両速度および外気温度に応じて変化する。例えば、内燃機関が停止されるまでの車両速度が高いほど、走行風によって窓ガラスが冷却される度合いがより高いことで、窓ガラスがより深部まで冷却されるため、その表面温度が同じであっても、その後の窓ガラスの温度の上昇度合は小さい。また、外気温度が高いほど、窓ガラスが外気から受ける熱量がより大きいため、窓ガラス温度の上昇度合いは大きい。したがって、車両速度および外気温度に応じて窓ガラス温度を補正することにより、それらを良好に反映した正確な窓ガラス温度を得ることができ、そのように補正された窓ガラス温度を用いて、限界湿度をより適切に設定し、内燃機関の再始動のタイミングをさらに適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態による停止制御装置を適用した内燃機関を概略的に示す図である。
【図2】停止制御装置のブロック図である。
【図3】アイドルストップ条件の判定処理を示すフローチャートである。
【図4】再始動条件の判定処理を示すフローチャートである。
【図5】限界湿度の算出処理を示すフローチャートである。
【図6】日射量補正項を算出するためのマップである。
【図7】走行状態補正項を算出するためのマップである。
【図8】限界湿度を算出するためのマップである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態による停止制御装置1を、これを適用した内燃機関(以下「エンジン」という)3とともに概略的に示している。エンジン3は、車両(図示せず)に搭載されたガソリンエンジンである。
【0019】
また、車両には、車室Rを冷房および暖房するためのエアコンディショナ(以下「エアコン」という)10が搭載されている。このエアコン10の冷凍サイクルは、コンプレッサ(圧縮機)11、コンデンサ12、レシーバ13、膨張弁14およびエバポレータ15などで構成されている。
【0020】
コンプレッサ11は、電磁式のエアコンクラッチ17、プーリ51、ベルト52およびプーリ53を介して、エンジン3のクランクシャフト3aに連結されている。エアコンクラッチ17が接続された状態では、コンプレッサ11は、クランクシャフト3aによって駆動され、低温低圧の気体状の冷媒を圧縮し、高温高圧の気体状の冷媒として、冷媒管16を介してコンデンサ12に送る。
【0021】
コンプレッサ11は、可変容量タイプのものであり、その容量を変更するための電磁制御弁(図示せず)を有する。コンプレッサ11の容量は、ECU2から電磁制御弁に出力される駆動信号によって制御される。
【0022】
上記のエアコンクラッチ17の接続/遮断は、車室Rの運転席に設けられたエアコンスイッチ41の操作状態などに応じ、ECU2によって制御される。具体的には、エアコンスイッチ41がオフ状態のときには、エアコンクラッチ17は遮断され、それにより、エアコン10の冷房運転が停止される。一方、エアコンスイッチ41がオン状態のときには、車室R内の温度(以下「室内温度」という)TRが目標温度になるように、エアコンクラッチ17の接続/遮断が制御される。
【0023】
コンデンサ12は、コンプレッサ11から送られた高温高圧の気体状の冷媒を冷却し、液化させる。液化した冷媒は、冷媒管16を介して、レシーバ13に送られる。レシーバ13は、冷媒を一時的に蓄えるためのものであり、レシーバ13から流出した冷媒は、ドライヤ(図示せず)で水分を除去された後、膨張弁14に送られる。膨張弁14は、冷媒を霧化した状態で膨張させ、冷媒管16を介してエバポレータ15に送る。
【0024】
エバポレータ15は、車室Rに連通するエアコンケース61内に設けられている。膨張弁14からエバポレータ15に送られた霧状の冷媒は、エアコンケース61内の空気との熱交換によって昇温され、蒸発(気化)する。気化した冷媒は、冷媒管16を介してコンプレッサ11に戻される。
【0025】
エアコンケース61内の空気は、エバポレータ15内の冷媒との熱交換によって冷却された後、エアコンケース61の入口に設けられたファン18による送風によって、吹出し口63a〜63cから車室R内に吹き出され、それにより、車室Rが冷房される。また、エアコンケース61内の空気は、エバポレータ15による冷却によって結露し、乾燥した空気が車室R内に送られることによって、車室R内が除湿される。
【0026】
上記のファン18は、エアコンスイッチ41のオン/オフに応じて作動/停止する。また、吹出し口63a〜63cには、それらを開閉する回動自在のデフドア64a、ベントドア64bおよびフロアドア64cがそれぞれ設けられており、それらの開閉は、運転席に設けられた吹出し切換えスイッチ(図示せず)によって行われる。
【0027】
また、エアコンケース61内のエバポレータ15よりも下流側には、ヒータコア71が設けられている。このヒータコア71には、ウォーターポンプ72によって、エンジン3を冷却した後の高温の冷却水が、循環通路73を介して供給され、それにより、ヒータコア71が昇温される。ウォーターポンプ72は、プーリ54,ベルト55およびプーリ56を介してクランクシャフト3aに連結されており、エンジン3の運転時、クランクシャフト3aによって常時、駆動される。エアコンケース61内の空気は、ヒータコア71で加温された後、ファン18によって吹出し口63a〜63cから車室R内に吹き出され、それにより、車室Rが暖房される。
【0028】
また、エアコンケース61内のヒータコア71のすぐ上流側には、回動自在のエアミックスドア74が設けられている。エアミックスドア74の開度は、アクチュエータ(図示せず)によって変更される。それにより、エバポレータ15からの冷却された空気の量と、ヒーターコア71に導かれ、加温される空気の量との割合が変更されることによって、車室Rに吹き出される空気の温度が調整される。
【0029】
また、エアコンケース61の入口には、回動自在のインテークドア62が設けられている。このインテークドア62は、エアコンケース61内に車室R内の空気を導入する内気導入と、外気を導入する外気導入との切換えを行うためのものであり、その切換えは、運転席に設けられた切換えレバー(図示せず)によって行われる。
【0030】
エンジン3のクランクシャフト3aには、クランク角センサ21が設けられている。クランク角センサ21は、クランクシャフト3aの回転に伴い、所定のクランク角(例えば30゜)ごとに、パルス信号であるCRK信号をECU2に出力する。ECU2は、CRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。
【0031】
また、ECU2には、車速センサ22から、車両の速度である車速VPを表す検出信号が、アクセル開度センサ23から、アクセルペダル(図示せず)の開度(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が、シフトポジションセンサ24から、シフトレバー(図示せず)のシフトポジション(L,2,D,N,R,P)を表す検出信号が、それぞれ出力される。
【0032】
また、ECU2には、湿度センサ26から車室R内の湿度(以下「室内湿度」という)RHを表す検出信号が、室内温度センサ27から室内温度TRを表す検出信号が、外気温度センサ28から外気の温度(以下「外気温度」という)TAMを表す検出信号が、日射量センサ29から窓ガラスWへの日射量GSOLを表す検出信号が、それぞれ出力される。
【0033】
さらに、ECU2には、電流電圧センサ25から、スタータ4の電源であるバッテリ5に入出力される電流・電圧を表す検出信号が出力される。ECU2は、この検出信号に基づいて、バッテリ5の充電残量(以下「バッテリ残量」という)SOCを算出する。
【0034】
また、ECU2には、イグニッションスイッチ42から、そのオン/オフ状態を表す検出信号が検出される。なお、エンジン3の停止時にイグニッションスイッチ42がオンされると、クランクシャフト3aに連結されたスタータ4が作動することによって、エンジン3がクランキングされ、始動される。また、エンジン3の運転時にイグニッションスイッチ42がオフされると、エンジン3が停止される。
【0035】
さらに、ECU2には、ブレーキスイッチ43から、ブレーキペダル(図示せず)のオン/オフ状態を表す検出信号が、ワイパスイッチ44から、ワイパ(図示せず)のオン/オフ状態を表す検出信号が、それぞれ出力される。
【0036】
また、ECU2は、CPU、RAM、ROMおよび入力インターフェース(いずれも図示せず)などから成るマイクロコンピュータ(図示せず)で構成されている。ECU2は、上述したセンサ21〜29およびスイッチ41〜44の検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムなどに基づいて、各種の演算処理を実行する。なお、本実施形態では、ECU2は、窓ガラス温度取得手段、限界湿度設定手段、再始動手段、補正手段、および窓ガラス温度補正手段に相当する。
【0037】
次に、図3〜図8を参照しながら、本発明の実施形態によるエンジン3の停止制御処理について説明する。なお、以下に説明する各種の処理は、所定時間ごとに実行される。
【0038】
図3は、アイドルストップ条件の判定処理を示す。本処理ではまず、ステップ1〜8において、以下の条件(a)〜(h)が成立しているか否かをそれぞれ判別する。
(a)イグニッションスイッチ(SW)42がオン状態であること
(b)エンジン回転数NEが所定値NEISTP以上であること
(c)車速VPが所定値VPREF以下であること
(d)アクセル開度APが所定値APREF以下であること
(e)シフトポジション(SP)がP,R,N以外であること
(f)ブレーキスイッチ(SW)43がオン状態であること
(g)バッテリ残量SOCが所定値SOCISTP以上であること
(h)外気温度TAMが所定温度TAMREF以上であること
【0039】
これらの条件(a)〜(h)がすべて成立しているときには、アイドルストップ条件が成立していると判定し、そのことを表すために、ステップ9において、アイドルストップフラグF_IDLSTPを「1」にセットし、本処理を終了する。エンジン3の運転中にアイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」にセットされると、エンジン3を自動停止させるアイドルストップが開始される。
【0040】
一方、ステップ1〜8の答のいずれかがNOで、条件(a)〜(h)のいずれかが成立していないときには、アイドルストップ条件が成立していないと判定し、そのことを表すために、ステップ10において、アイドルストップフラグF_IDLSTPを「0」にセットし、本処理を終了する。エンジン3のアイドルストップ中にアイドルストップフラグF_IDLSTPが「0」にセットされると、アイドルストップが終了し、エンジン3が再始動される。
【0041】
図4は、エンジン3の再始動条件の判定処理を示す。本処理は、上述したアイドルストップ条件が不成立になったこと以外に、アイドルストップ中の窓ガラスWの曇りを防止するために、エンジン3を再始動させる条件を判定するものである。本処理ではまず、ステップ21において、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、アイドルストップ中でないときには、そのまま本処理を終了する。一方、上記ステップ21の答がYESで、アイドルストップ中のときには、ステップ22において、限界湿度DPを算出する。この限界湿度DPは、窓ガラスWに曇りが発生しないような限界の車内湿度である。
【0042】
図5はそのサブルーチンを表す。本処理ではまず、ステップ41において、検出された日射量GSOLに応じ、図6に示すマップを検索することによって、日射量補正項βを算出する。このマップでは、日射量補正項βは、日射量GSOLが多いほど、より大きな値に設定されている。これは、日射量GSOLが多いほど、窓ガラスWが受ける熱量がより大きく、アイドルストップ中の窓ガラス温度TGがより高くなるからである。次に、ステップ42において、算出された日射量補正項βを外気温度TAMに加算することによって、窓ガラス温度の基本値TGbaseを算出する。
【0043】
次に、ステップ43において、検出された室内温度TRが第1所定温度TRH以上であるか否かを判別する。この第1所定温度TRHは、常温よりも高い温度(例えば25℃)に設定されている。この答がYESのときには、ステップ44において、室内温度フラグF_TRHを「1」にセットし、後述するステップ47に進む。
【0044】
一方、上記ステップ43の答がNOで、TR<TRHのときには、ステップ45において、室内温度TRが第1所定温度TRHよりも低い第2所定温度TRL(例えば15℃)以下であるか否かを判別する。この答がYESのときには、ステップ46において、室内温度フラグF_TRHを「0」にセットし、ステップ47に進む。一方、上記ステップ45の答がNOで、TRL<TR<TRHのときには、ステップ47に直接、進む。すなわち、TRL<TR<TRHのときには、室内温度フラグF_TRHは、前回の値に維持される。
【0045】
前記ステップ44〜46のいずれかに続くステップ47では、室内温度フラグF_TRHが「1」であるか否かを判別する。この答がNOのときには、ステップ50において、前記ステップ42で算出した基本値TGbaseをガラス温度TGとして設定し、後述するステップ51に進む。
【0046】
一方、上記ステップ47の答がYESで、室内温度フラグF_TRH=1のときには、ステップ48において、車速最大値VPMAXおよび外気温度TAMに応じ、図7に示すマップを検索することによって、走行状態補正項αを算出する。この車速最大値VPMAXは、今回のアイドルストップまでの車両の走行時における車速VPの最大値であり、本処理とは別個の所定の処理(図示せず)によって算出される。
【0047】
図7のマップでは、走行状態補正項αは、3つの所定の外気温度TAM1〜TAM3(TAM1<TAM2<TAM3)に対し、外気温度TAMが低いほど、より大きな値に設定されている。これは、外気温度TAMが低いほど、窓ガラスWが受ける熱量がより小さく、アイドルストップ中の窓ガラス温度TGがより低くなるからである。また、走行状態補正項αは、各外気温度TMに対して、車速最大値VPMAXが高いほど、より大きな値に設定されている。これは、車速VPが高いほど、走行風によって窓ガラスWが冷却される度合いがより高いことで、窓ガラスWがより深部まで冷却され、そのときの表面温度が同じであっても、その後の窓ガラスWの温度の上昇度合はより小さいからである。なお、外気温度TAMが上記の3つの値TAM1〜TAM3に一致しないときには、走行状態補正項αは補間計算によって算出される。
【0048】
次に、ステップ49において、基本値TGbaseから走行状態補正項αを減算した値(=TGbase−α)を、ガラス温度TGとして設定し、ステップ51に進む。
【0049】
前記ステップ49または50に続くステップ51では、ガラス温度TGに応じ、図8に示すマップを検索することによって、限界湿度DPを算出し、本処理を終了する。このマップでは、限界湿度DPは、ガラス温度TGが高いほど、より大きな値に設定されている。これは、ガラス温度TGが高いほど、窓ガラスWの露点温度がより高く、窓ガラスWへの曇りが発生しにくいからである。
【0050】
図4に戻り、前記ステップ22に続くステップ23では、エアコンスイッチ(SW)41がオン状態であるか否かを判別する。この答がNOで、エアコンスイッチ41がオフ状態のときには、エンジン3を再始動させても除湿が行われず、窓ガラスWへの曇りの発生が防止できないため、そのまま本処理を終了する。
【0051】
一方、上記ステップ23の答がYESで、エアコンスイッチ41がオン状態のときには、ステップ24において、ワイパスイッチ(SW)44がオン状態であるか否かを判別する。この答がNOのときには、車室R外の天候が雨および雪のいずれでもないと判定し、ステップ25において、検出された室内湿度RHを判定用の室内湿度RHJUDとして設定する。一方、上記ステップ24の答がYESのときには、車室R外の天候が雨または雪であると判定し、ステップ26において、室内湿度RHに所定値DREF(>0)を加算することによって補正した値(=RH+DREF)を、判定用の室内湿度RHJUDとして設定する。
【0052】
上記ステップ25または26に続くステップ27では、判定用の室内湿度RHJUDが前記ステップ22で算出された限界湿度DP以上であるか否かを判別する。この答がNOで、RHJUD<DPのときには、室内湿度が窓ガラスに曇りが発生する限界の状態にないため、そのまま本処理を終了し、アイドルストップを継続する。
【0053】
一方、上記ステップ27の答がYESで、RHJUD≧DPのときには、室内湿度RHが窓ガラスWに曇りが発生する限界の状態にあるとして、ステップ28において、アイドルストップフラグF_IDLSTPを「0」にセットし、本処理を終了する。前述したように、アイドルストップフラグF_IDLSTPが「0」にセットされると、エンジン3が再始動され、それに伴い、エアコン10による除湿が再開されることによって、窓ガラスWの曇りの発生が防止される。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、アイドルストップ中に、限界湿度DPを窓ガラス温度TGに応じて設定するとともに、判定用の室内湿度RHJUDが限界湿度DP以上になったときに、アイドルストップを終了し、エンジン3を再始動させる。したがって、窓ガラスWの曇りの実際の発生状況に応じた最適なタイミングで、エンジン3を再始動させることができる。その結果、窓ガラスWの曇りの発生を適切に防止できるとともに、エンジン3の停止期間を最大限、確保でき、燃費を向上させることができる。以上のように、窓ガラスWの曇りの発生の防止と燃費の向上を両立させることができる。
【0055】
また、雨または雪のときには、室内湿度RHに所定値DREFを加算することによって補正した値を、判定用の室内湿度RHJUDとして用いるので、雨または雪のために窓ガラスが曇りやすい状態においても、エンジン3を最適なタイミングで再始動させることができ、窓ガラスWの曇りの発生をより適切に防止することができる。
【0056】
さらに、室内温度TRが第1所定温度TRH以上のときに、車速最大値VPMAXおよび日射量GSOLに応じて走行状態補正項αを算出し、算出された走行状態補正項αを用いてガラス温度TGを算出するので、車速最大値VPMAXおよび日射量GSOLを良好に反映した正確な窓ガラス温度TGを得ることができる。そして、そのように算出された窓ガラス温度TGを用いて、限界湿度DPをより適切に設定し、エンジン3の再始動のタイミングをさらに適切に設定することができる。
【0057】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、窓ガラス温度TGを、外気温度TGに応じて算出しているが、これに代えて、窓ガラス温度TGを直接、検出してもよい。
【0058】
また、実施形態では、天候が雨または雪であるときに、室内湿度RHを補正しているが、これに代えて、限界湿度DRを補正してもよい。また、実施形態では、天候が雨または雪であるか否かの判定を、ワイパスイッチ44のオン/オフ状態に応じて行っているが、これに代えて、車室R外の湿度あるいは窓ガラスWに付着した水滴の量を検出し、その検出結果に応じて行ってもよい。
【0059】
また、実施形態では、窓ガラス温度TGを補正する走行状態補正項αを算出するための車速として、アイドルストップまでの車速最大値VPMAXを用いているが、これに代えて、例えば車速VPの平均値を用いてもよい。
【0060】
また、実施形態は、本発明を車両に搭載されたガソリンエンジンに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、ガソリンエンジン以外のディーゼルエンジンなどの各種のエンジンに適用してもよく、また、車両用以外のエンジン、例えば、クランク軸を鉛直に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジンにも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 停止制御装置
2 ECU(窓ガラス温度取得手段、限界湿度設定手段、再始動手段、補正手段、
窓ガラス温度補正手段)
3 エンジン(内燃機関)
4 スタータ(再始動手段)
10 エアコン
11 コンプレッサ(圧縮機)
22 車速センサ(窓ガラス温度取得手段、車両速度検出手段)
26 湿度センサ(車室内湿度検出手段)
27 室内温度センサ(車室内温度検出手段)
28 外気温度センサ(窓ガラス温度取得手段、外気温度検出手段)
29 日射量センサ(窓ガラス温度取得手段)
44 ワイパスイッチ(天候判定手段)
R 車室
W 窓ガラス
RH 室内湿度(車室内湿度)
TG 窓ガラス温度
DP 限界湿度
TAM 外気温度
VPMAX 車速最大値(内燃機関が停止する前の車両の速度)
TRH 第1所定温度(所定温度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、エアコンの圧縮機に連結された内燃機関を、所定の停止条件が成立したときに停止させるとともに、所定の再始動条件が成立したときに再始動させる内燃機関の停止制御装置であって、
前記内燃機関が停止した状態での前記車両の車室内の湿度を検出する車室内湿度検出手段と、
前記内燃機関が停止した状態での前記車室の窓ガラスの温度を取得する窓ガラス温度取得手段と、
当該取得された窓ガラス温度に応じて、前記窓ガラスに曇りが発生しないような限界の車室内湿度を、限界湿度として設定する限界湿度設定手段と、
前記検出された車室内湿度が前記限界湿度以上になったときに、前記内燃機関を再始動させる再始動手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の停止制御装置。
【請求項2】
前記車室外の天候が雨または雪であるか否かを判定する天候判定手段と、
前記判定された天候が雨または雪のときに、前記車室内湿度および前記限界湿度の一方を補正する補正手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の停止制御装置。
【請求項3】
前記車室内の温度を検出する車室内温度検出手段と、
前記内燃機関が停止する前の前記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、
前記車室外の外気の温度を検出する外気温度検出手段と、
前記検出された車室内温度が所定温度以上のときに、前記検出された車両速度および外気温度に応じて、前記限界湿度の設定に用いる前記窓ガラス温度を補正する窓ガラス温度補正手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の停止制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−219694(P2012−219694A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85431(P2011−85431)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】