説明

内燃機関の制御装置

【課題】エンジン10の機差等に起因して、エンジン10の再始動が指示されてから完了するまでの時間(始動時間)が長くなったり、ばらついたりすることで、ドライバビリティが低下すること。
【解決手段】始動時間がその目標値(目標始動時間)以上になると判断された場合、始動時間と目標始動時間との偏差に応じてエンジン10の次回の再始動時における燃料噴射量を増量補正する。一方、始動時間が目標始動時間を下回って且つ、エンジン10が再始動される期間におけるエンジン回転速度の上昇速度の最大値が規定速度以上になると判断された場合、上記上昇速度の最大値と規定速度との偏差に応じてエンジン10の次回の再始動時における燃料噴射量を減量補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼制御のためのアクチュエータを備える内燃機関の燃焼制御システムに適用され、前記内燃機関を自動停止させる処理及び再始動させる処理を行う内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1に見られるように、内燃機関の運転中に所定の停止条件が成立すると内燃機関を自動停止させる処理を行い、その後、所定の再始動条件が成立すると内燃機関を再始動させる処理を行う、いわゆるアイドルストップ制御が知られている。アイドルストップ制御によれば、内燃機関の燃費低減効果を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−263047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記再始動させる処理によって内燃機関の再始動が開始されてから、内燃機関の再始動が完了するまでの時間(始動時間)が、内燃機関の機差等に起因して長くなったり、ばらついたりすることがある。この場合、車両を迅速に発進させることができなくなったり、ドライバに違和感を与えたりする等、ドライバビリティが低下するおそれがある。特に、内燃機関の自動停止及び再始動が頻繁に繰り返される状況下においては、ドライバビリティの低下が顕著となるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ドライバビリティの低下を好適に抑制することのできる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、内燃機関の燃焼制御のためのアクチュエータを備える内燃機関の燃焼制御システムに適用され、前記内燃機関を自動停止させる処理及び再始動させる処理を行う内燃機関の制御装置において、前記内燃機関の再始動が開始されてから完了するまでの時間である始動時間をフィードバック制御すべく前記アクチュエータを操作する操作手段を備えることを特徴とする。
【0008】
上記アクチュエータの操作量を変更すると、内燃機関の燃焼状態が変化し、始動時間が変化する。この点に鑑み、上記発明では、始動時間をフィードバック制御すべく上記アクチュエータを操作する。これにより、始動時間が長くなったり、ばらついたりする事態の発生を抑制することができ、ひいてはドライバビリティの低下を好適に抑制することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記操作手段は、前記始動時間がその目標値を上回ることに基づき、前記内燃機関の生成トルクが増大する側に前記アクチュエータを操作するものであることを特徴とする。
【0010】
内燃機関の生成トルクが大きくなると、機関回転速度の上昇速度が高くなるため、始動時間が短くなる。この点に鑑み、上記発明では、始動時間が目標値を上回ることに基づき上記増大する側に上記アクチュエータを操作することで、始動時間を目標値にフィードバック制御する。これにより、始動時間が長くなる事態の発生を適切に抑制することができ、ひいてはドライバビリティの低下をより好適に抑制することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記アクチュエータは、前記内燃機関の燃焼室に燃料を供給する燃料噴射弁を含むものであり、前記増大する側に前記アクチュエータを操作するとは、前記内燃機関の再始動が開始されてから完了するまでの期間において、前記燃料噴射弁からの燃料噴射量を増量すべく、該燃料噴射弁を操作することであることを特徴とする。
【0012】
上記発明では、内燃機関の再始動が開始されてから完了するまでの期間(再始動期間)において燃料噴射量を増量することで、始動時間が長くなる事態の発生を好適に抑制することができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記操作手段は、前記始動時間がその目標値を下回ることに基づき、前記内燃機関の生成トルクが減少する側に前記アクチュエータを操作するものであることを特徴とする。
【0014】
内燃機関の生成トルクが減少する側に上記アクチュエータの操作量を変更すると、機関回転速度の上昇速度が低下し、始動時間が長くなる。この点に鑑み、上記発明では、始動時間が目標値を下回ることに基づき、上記減少する側に上記アクチュエータを操作する。これにより、始動時間がばらつく事態の発生を抑制することができ、ひいてはドライバビリティの低下をより好適に抑制することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記再始動が開始されてから完了するまでの期間における機関回転速度の上昇速度を算出する算出手段を更に備え、前記操作手段は、前記算出された上昇速度が規定速度以上となることに基づき、前記減少する側に前記アクチュエータを操作するものであることを特徴とする。
【0016】
上記発明では、機関回転速度の上昇速度を参照することで、内燃機関の燃焼室に過剰な燃料が供給されているか否かを的確に判断することができる。そして、過剰な燃料が供給されていると判断される場合に上記減少する側に上記アクチュエータを操作することができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載の発明において、前記アクチュエータは、前記内燃機関の燃焼室に燃料を供給する燃料噴射弁を含むものであり、前記減少する側に前記アクチュエータを操作するとは、前記内燃機関の再始動が開始されてから完了するまでの期間において、前記燃料噴射弁からの燃料噴射量を減量すべく、該燃料噴射弁を操作することであることを特徴とする。
【0018】
上記発明では、内燃機関の再始動期間において燃料噴射量を減量することで、始動時間がばらつく事態を好適に抑制するとともに、内燃機関の再始動に要する燃料量を減少させることができる。更に、上記燃料量を減少させることで、内燃機関の再始動に起因するエミッションの増大を抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる始動時間FB制御処理の概要を示す図。
【図3】同実施形態にかかる始動時間FB制御処理を示すフローチャート。
【図4】同実施形態にかかる始動時間FB制御処理(増量補正)を示すタイムチャート。
【図5】同実施形態にかかる始動時間FB制御処理(減量補正)を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる内燃機関の制御装置を車載エンジンシステムに適用した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1に本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0022】
図示されるエンジン10は、圧縮着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)である。エンジン10の吸気通路12は、吸気バルブ14の開動作によって、シリンダブロック16及びピストン18にて区画される燃焼室20と連通される。燃焼室20には、燃料噴射弁22の先端部が突出して配置されている。これにより、燃焼室20に燃料を直接噴射供給することが可能となっている。
【0023】
燃焼室20に噴射供給された燃料は、燃焼室20の圧縮により自己着火し、燃焼に供される。燃料の燃焼によって発生するエネルギは、ピストン18を介して、エンジン10の出力軸(クランク軸24)の回転エネルギとして取り出される。なお、燃焼に供された気体は、排気バルブ26の開動作によって、排気通路28に排気として排出される。
【0024】
上記クランク軸24には、スタータ30が接続されている。スタータ30は、図示しないスタータスイッチのオンによって始動し、エンジン10を始動させるべくクランク軸24に初期回転を付与する(クランキングを行う)。
【0025】
エンジン10には、クランク軸24近傍でクランク軸24の回転角度を検出するクランク角度センサ32や、エンジン10を冷却する冷却水の温度(冷却水温)を検出する水温センサ34等が設けられている。これらの各種センサや、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキセンサ36、車両の走行速度を検出する車速センサ38等の出力信号は、電子制御装置(以下、ECU40)に入力される。
【0026】
ECU40は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。ECU40は、上記各センサからの入力信号に基づき、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、燃料噴射弁22による燃料噴射制御等のエンジン10の燃焼制御や、スタータ30による始動制御等を行う。
【0027】
特にECU40は、所定の停止条件が成立する場合に、燃料噴射弁22からの燃料噴射を停止させることでエンジン10を自動停止させる処理(自動停止処理)を行い、その後、所定の再始動条件が成立する場合に、スタータ30を始動させることでクランキングを行うとともに燃料噴射弁22からの燃料噴射を開始させることで、自動停止しているエンジン10を再始動させる処理(再始動処理)を行ういわゆるアイドルストップ制御を行う。これにより、エンジン10の燃費低減効果を得ることが可能となる。ここで本実施形態では、上記停止条件を、ブレーキ操作がなされているとの条件と、車両の走行速度が0になるとの条件の論理積が真であるとの条件とする。一方、上記再始動条件をブレーキ操作がなされていないとの条件とする。ここでブレーキ操作がなされているか否かは、ブレーキセンサ36の出力値に基づき判断すればよい。また、車両の走行速度は、車速センサ38の出力値に基づき算出すればよい。
【0028】
また、ECU40は、上記再始動条件の成立によって再始動処理が開始(エンジン10の再始動が指示)されてから再始動が完了するまでの期間(再始動期間)における燃料噴射制御を、エンジン10の再始動が指示される直前のエンジン10の自動停止中における冷却水温に基づき始動時噴射量の初期値を算出することで行う。詳しくは、始動時噴射量の初期値となるように燃料噴射弁22を操作した後、エンジン10の再始動が完了するまでの都度(所定時間又は所定クランク角度毎)検出されるエンジン回転速度の上昇に応じて上記初期値を徐々に減少させる。なお、冷却水温は、水温センサ34の出力値に基づき算出すればよい。また、エンジン回転速度は、クランク角度センサ32の出力値に基づき算出すればよい。
【0029】
ところで、エンジン10の再始動が指示されてからエンジン10の再始動が完了するまでの時間(始動時間)が長くなったり、ばらついたりすることで、ドライバビリティが低下するおそれがある。ここで、始動時間のばらつきは、エンジン10の各部品(例えばクランク軸24やピストン18)の寸法公差等に起因するエンジン10の機差や、エンジンオイルの粘度の相違等によって、クランク軸24の回転を妨げる側の力が相違すること等によって生じるものである。そして例えば、クランク軸24の回転を妨げる側の力が大きくなる場合、スタータ30に作用する負荷が大きくなることに起因してスタータ30の回転速度の上昇速度が低下し、ひいては始動時間が長くなる。またクランク軸24の回転を妨げる側の力が大きくなる場合、エンジン10によってトルクが生成された後におけるエンジン回転速度の上昇速度も低下し、始動時間が長くなる。そしてエンジン10の始動時間が長くなったり、ばらついたりする場合には、車両を迅速に発進させることができなかったり、ドライバに違和感を与えたりする等、ドライバビリティが低下するおそれがある。特に、エンジン10の自動停止及び再始動が頻繁に繰り返される状況下においては、ドライバビリティの低下が顕著となるおそれがある。
【0030】
そこで本実施形態では、始動時間の目標値(目標始動時間Ttgt)を設定し、始動時間を目標始動時間Ttgtにフィードバック制御すべく、始動時間と、目標始動時間Ttgtとに基づき、次回の始動時噴射量を増量又は減量補正する処理(始動時間FB制御処理)を行うことで、ドライバビリティの低下の抑制を図る。以下、図2を用いて、始動時間FB制御処理について詳述する。
【0031】
図2に、始動時間FB制御処理の概要を示す。なお、本実施形態では、エンジン回転速度NEが所定の閾値Njudge以上となる時点をエンジン10の再始動が完了する時点としている。
【0032】
本実施形態では、図中点線にて示すように始動時間(時刻t1〜t4)が目標始動時間Ttgt(時刻t1〜t3)以上となる場合、始動時間と目標始動時間Ttgtとの偏差に応じて、次回の始動時噴射量を増量補正する。これは、始動時間が長くなる事態の発生を抑制するためのものである。つまり、燃料噴射量の増量によってエンジン10の生成トルクが増大することで、エンジン回転速度NEの上昇速度(回転上昇速度ΔNE=ΔN/Δt)が高くなり、始動時間が短くなる。ここで始動時噴射量の増量補正は、具体的には、次回の始動時噴射量に上記偏差に応じた所定の係数(増量補正係数β≧1)を乗算することで行う。なお、増量補正係数βは、例えば上記偏差の絶対値が大きいほど大きい値とすればよい。
【0033】
一方、図中実線にて示すように始動時間(時刻t1〜t2)が目標始動時間Ttgtを下回って且つ、回転上昇速度ΔNEが規定速度α以上となる場合、回転上昇速度ΔNEと上記規定速度αとの偏差(速度偏差)に応じて、次回の始動時噴射量を減量補正する。これは、始動時間のばらつきを抑制するためのものである。つまり、燃料噴射量を増量すると回転上昇速度ΔNEが高くなることに鑑み、回転上昇速度ΔNEを始動時噴射量が過剰となる度合いを的確に把握するためのパラメータとして用いる。このため、回転上昇速度ΔNEに基づく上記減量補正によって始動時間のばらつきを抑制する。本実施形態では、上記減量補正に用いる回転上昇速度ΔNEを、エンジン10の再始動期間における回転上昇速度ΔNEの最大値とする。ここで始動時噴射量の減量補正は、具体的には、次回の始動時噴射量に上記速度偏差に応じた所定の係数(減量補正係数γ、0<γ<1)を乗算することで行う。なお、減量補正係数γは、例えば上記速度偏差の絶対値が大きいほど小さい値とすればよい。また、上記規定速度αは、始動時間を目標始動時間Ttgt以下とするうえで過剰な燃料噴射量によって実現される速度に設定される。
【0034】
図3に、本実施形態にかかる始動時間FB制御処理の手順を示す。この処理は、エンジン10の自動停止中にECU40によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0035】
この一連の処理では、まずステップS10において、エンジン10の再始動が指示されるか否かを判断する。ここで再始動が指示されるか否かは、エンジン10の再始動条件が成立しているか否かで判断すればよい。
【0036】
ステップS10においてエンジン10の再始動が指示されたと判断された場合には、ステップS12において再始動が指示されたと判断されてからの時間を計時する処理(始動時間カウント処理)を開始する。この処理は、始動時間を計時するための処理である。
【0037】
続くステップS14では、始動時噴射量Qを算出するとともに、再始動処理を開始する。そしてステップS16では、回転上昇速度ΔNEを算出する。なお、回転上昇速度ΔNEは、エンジン回転速度の微分演算値として算出すればよい。
【0038】
続くステップS18では、エンジン回転速度NEが上記所定の閾値Njudge以上になるか否かを判断する。この処理は、エンジン10の再始動が完了したか否かを判断するための処理である。
【0039】
ステップS18においてエンジン10の再始動が完了していないと判断された場合には、上記ステップS14に戻り、再始動処理を継続する。一方、上記ステップS18においてエンジン10の再始動が完了したと判断された場合には、ステップS20に進み、始動時間カウント処理及び再始動処理を終了する。
【0040】
ステップS20の処理の完了後、ステップS22において始動時間カウント処理によって計時された始動時間が目標始動時間Ttgt以上であるか否かを判断する。
【0041】
ステップS22において始動時間が目標始動時間Ttgt以上であると判断された場合には、ステップS24に進み、始動時間と目標始動時間Ttgtとの偏差に応じて次回の始動時噴射量Qの増量補正量(増量補正係数β)を算出する。
【0042】
一方、上記ステップS22において否定判断された場合には、ステップS26に進み、エンジン10の再始動期間における回転上昇速度ΔNEの最大値が上記規定速度α以上であるか否かを判断する。
【0043】
ステップS26において肯定判断された場合には、ステップS28に進み、回転上昇速度ΔNEの最大値と規定速度αとの速度偏差に応じて次回の始動時噴射量Qの減量補正量(減量補正係数γ)を算出する。
【0044】
ステップS24、S28の処理が完了する場合、ステップS30に進み、増量補正係数β又は減量補正係数γをECU40のメモリ内に記憶する。これにより、エンジン10の次回の再始動時において上記ステップS14の処理で算出される始動時噴射量Qに、メモリに記憶された上記増量補正係数β又は減量補正係数γを乗算することで、始動時噴射量Qを増量補正又は減量補正することが可能となる。ここで燃料噴射弁22からの燃料噴射量を多くするには、燃料噴射弁22の燃料噴射時間を長くしたり、燃料噴射弁22の噴射率や燃料噴射弁22に供給される燃料の圧力を高くしたりすればよい。
【0045】
なお、上記ステップS10、S26で否定判断された場合や、ステップS30の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0046】
図4及び図5に、本実施形態における始動時間FB制御処理の一例を示す。
【0047】
まず、図4を用いて、始動時噴射量Qの増量補正態様を示す。詳しくは、図4(a)に、エンジン回転速度NEの推移を示し、図4(b)に、回転上昇速度ΔNEの推移を示し、図4(c)に、始動時噴射量Qの推移を示し、図4(d)に、エンジン10の始動指示信号の推移を示し、図4(e)に、始動時間カウント処理の実行の有無の推移を示す。なお、図4では、エンジン10の再始動が指示されてから実際にエンジン回転速度NEが上昇を開始するまでの応答遅れ時間を省略している。
【0048】
図に点線にて示す例では、時刻t1において、上記再始動条件の成立によって始動指示信号がLoからHiに切り替えられることをトリガとしてエンジン10の再始動が指示されたと判断され、エンジン回転速度NEが上昇を開始する。その後、時刻t3においてエンジン回転速度NEが所定の閾値Njudge以上となることでエンジン10の再始動が完了したと判断される。ここで始動時間(時刻t1〜t3)が目標始動時間Ttgt以上になると判断されるため、図中実線にて示すように、次回の始動時噴射量Qが増量補正される。これにより、次回の始動時間(時刻t1〜t2)を目標始動時間Ttgtよりも短くすることが可能となる。
【0049】
次に、図5を用いて、始動時噴射量Qの減量補正態様を示す。詳しくは、図5(a)〜図5(e)は、図4(a)〜図4(e)に対応している。
【0050】
図に点線にて示す例では、始動時間(時刻t1〜t2)が目標始動時間Ttgtよりも短くなって且つ、再始動期間(時刻t1〜t2)における回転上昇速度ΔNEの最大値が規定速度α以上になると判断される。このため、図中実線にて示すように、次回の始動時噴射量Qが減量補正される。これにより、次回の始動時間(時刻t1〜t3)を目標始動時間Ttgtに近づけることが可能となる。
【0051】
このように、本実施形態では、始動時間FB制御処理を行うことで、始動時間が長くなったり、ばらついたりする事態の発生を好適に抑制することができ、始動時間を極力均一とすることができる。
【0052】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0053】
(1)始動時間が目標始動時間Ttgt以上になると判断された場合、始動時間と目標始動時間Ttgtとの偏差に応じて次回の始動時噴射量Qを増量補正した。これにより、始動時間が長くなる事態の発生を好適に抑制することができ、ひいてはドライバビリティの低下を好適に抑制することができる。
【0054】
(2)始動時間が目標始動時間Ttgtを下回って且つ、再始動期間における回転上昇速度ΔNEの最大値が規定速度α以上になると判断された場合、回転上昇速度ΔNEの最大値と規定速度αとの速度偏差に応じて次回の始動時噴射量Qを減量補正した。これにより、始動時間のばらつきが生じる事態の発生を好適に抑制するとともにエンジン10の再始動に要する燃料量を減少させることができ、ひいてはドライバビリティの低下を好適に抑制するとともに燃費低減効果を向上させることができる。更に、上記燃料量を減少させることで、エンジン10の再始動に起因するエミッションの増大を抑制することもできる。
【0055】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0056】
・始動時噴射量Qを減量補正する手法としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、始動時間が目標始動時間Ttgtを下回ると判断された場合、回転上昇速度ΔNEにかかわらず次回の始動時噴射量Qを減量補正してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、始動時噴射量Qに増量補正係数β又は減量補正係数γを乗算することで、次回の始動時噴射量Qを増量又は減量補正したがこれに限らない。例えば、始動時間と目標始動時間Ttgtとの偏差に応じた所定の補正量を次回の始動時噴射量Qに加算することで増量補正したり、回転上昇速度ΔNEと規定速度αとの速度偏差に応じた所定の補正量を次回の始動時噴射量Qから減算することで減量補正したりしてもよい。
【0058】
・減量補正に用いる回転上昇速度ΔNEは、エンジン10の再始動期間における回転上昇速度ΔNEの最大値に限らず、例えば上記再始動期間において予め定められた時点(例えば再始動が指示されてから所定時間経過する時点)における回転上昇速度ΔNEとしてもよい。
【0059】
・上記実施形態では、始動時間の起算点を、エンジン10の再始動が指示された時点としたがこれに限らない。例えば、エンジン10が実際に始動を開始する時点(エンジン回転速度が0を上回る時点)としてもよい。
【0060】
・始動時間FB制御処理としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、エンジン10の再始動毎に上記始動時間カウント処理(計時手段)によって計時される始動時間と、この始動時間が計時される状況下における冷却水温(例えば計時開始時の冷却水温)とを関連付けて記憶させるメモリ(記憶手段)とを備え、メモリから今回の再始動時における冷却水温に対応する始動時間を読み込み、読み込まれた始動時間と目標始動時間Ttgtとの偏差に応じて今回の始動時噴射量Qを補正する処理としてもよい。これにより、エンジン10の再始動毎に冷却水温が相違することに起因する始動時噴射量Qの補正精度の低下を回避することができる。
【0061】
・上記実施形態では、始動時間を目標始動時間Ttgtにフィードバック制御したがこれに限らない。例えば始動時間を目標始動時間Ttgt以下となるようにフィードバック制御してもよい。この場合、例えば、先の図3のステップS26、S28の処理を無くせばよい。
【0062】
・上記実施形態において、エンジン10の自動停止時にクランク軸24の回転停止位置を予め定められた位置(目標停止位置)に制御する手段を更に備えてもよい。これは、クランク軸24の回転停止位置の相違に起因する始動時間のばらつきを抑制することで、始動時噴射量Qの補正精度の低下を抑制するためである。つまり、上記回転停止位置が相違すると、ピストン18の停止位置が相違し得る。この場合、クランキングに伴い駆動されるピストン18による圧縮仕事が相違することに起因してクランキング時にスタータ30に作用する負荷が相違し、始動時間がばらつく。また、上記回転停止位置の制御をしない代わりに、エンジン10の再始動毎に上記始動時間カウント処理によって計時される始動時間と、この始動時間が計時される状況下におけるクランク軸24の回転停止位置とを関連付けて記憶させるメモリとを備え、メモリから今回の再始動時における回転停止位置に対応する始動時間を読み込み、読み込まれた始動時間と目標始動時間Ttgtとの偏差に応じて今回の始動時噴射量Qを補正する処理としてもよい。これにより、再始動処理毎にクランク軸24の回転停止位置がばらつくことに起因して、始動時間がばらつくことを好適に抑制することができる。
【0063】
・始動時間を目標始動時間Ttgtにフィードバック制御すべく操作される内燃機関の燃焼制御のためのアクチュエータとしては、燃料噴射弁22に限らない。例えば、エンジン10の自動停止中に燃料噴射弁22に供給される燃料の圧力(燃圧)を高くすることで噴射燃料の霧化の促進によってエンジン10の生成トルクを増大させることができるならば、上記燃圧を調節可能な手段(例えば電動式の燃料ポンプ)であってもよい。この場合、例えば、始動時間が目標始動時間Ttgt以上となることに基づき、始動時間と目標始動時間Ttgtとの偏差に応じて燃圧を高くすればよい。ここでは、燃料噴射時間を短くして燃料噴射量を変更しないようにしてもよい。
【0064】
・内燃機関としては、ディーゼルエンジンのような圧縮着火式内燃機関に限らない。例えば、ガソリンエンジン等の火花点火式内燃機関であってもよい。この場合、燃料噴射弁22としては、燃焼室20に突出して配置されるものに限らず、例えばエンジン10の各気筒の吸気ポート近傍に燃料を噴射供給すべく吸気マニホールドに設けられるものであってもよい。
【0065】
・始動時間を目標始動時間Ttgtにフィードバック制御するための操作量としては、燃料噴射量に限らない。例えば、エンジン10が火花点火式内燃機関である場合、上記操作量として燃焼室20に供給される吸気と燃料との混合気の空燃比を用いてもよい。この場合、例えば、始動時間が目標始動時間Ttgt以上となることに基づき、始動時間と目標始動時間Ttgtとの偏差に応じて空燃比をリッチ側とするように燃料噴射弁22や吸気絞り弁を操作すればよい。
【符号の説明】
【0066】
10…エンジン、22…燃料噴射弁、30…スタータ、32…クランク角度センサ、40…ECU(内燃機関の制御装置の一実施形態)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼制御のためのアクチュエータを備える内燃機関の燃焼制御システムに適用され、前記内燃機関を自動停止させる処理及び再始動させる処理を行う内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関の再始動が開始されてから完了するまでの時間である始動時間をフィードバック制御すべく前記アクチュエータを操作する操作手段を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記操作手段は、前記始動時間がその目標値を上回ることに基づき、前記内燃機関の生成トルクが増大する側に前記アクチュエータを操作するものであることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記内燃機関の燃焼室に燃料を供給する燃料噴射弁を含むものであり、
前記増大する側に前記アクチュエータを操作するとは、前記内燃機関の再始動が開始されてから完了するまでの期間において、前記燃料噴射弁からの燃料噴射量を増量すべく、該燃料噴射弁を操作することであることを特徴とする請求項2記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記操作手段は、前記始動時間がその目標値を下回ることに基づき、前記内燃機関の生成トルクが減少する側に前記アクチュエータを操作するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記再始動が開始されてから完了するまでの期間における機関回転速度の上昇速度を算出する算出手段を更に備え、
前記操作手段は、前記算出された上昇速度が規定速度以上となることに基づき、前記減少する側に前記アクチュエータを操作するものであることを特徴とする請求項4記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記内燃機関の燃焼室に燃料を供給する燃料噴射弁を含むものであり、
前記減少する側に前記アクチュエータを操作するとは、前記内燃機関の再始動が開始されてから完了するまでの期間において、前記燃料噴射弁からの燃料噴射量を減量すべく、該燃料噴射弁を操作することであることを特徴とする請求項4又は5記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−117388(P2011−117388A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276655(P2009−276655)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】