説明

内燃機関の制御装置

【課題】本発明は、検出されないシステム異常にも対処できる出力制御を提供すること、退避走行可能な出力制御を行うこと、うっかりミスなどの誤作動に配慮した高精度な判断を行う出力制御を提供すること、信頼性を高めることを目的としている。
【解決手段】このため、運転条件に応じて内燃機関に設けたスロットルバルブを目標開度になるようアクチュエータを駆動する電子スロットルシステムを備えた内燃機関の制御装置であって、運転条件に異常を検知した際にスロットル開度をリンプホーム開度として車両の退避走行を可能とする内燃機関の制御装置において、ブレーキ操作を検知するブレーキ操作検知手段を設け、制御装置は、異常検知の有無に関わらず、アクセルペダルの操作中に後からブレーキ操作が加わった場合、操作順序の成立に基づいて目標開度をリンプホーム開度とし、スロットル開度をリンプホーム開度にアクチュエータを駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載される内燃機関の出力制御装置に関する。
特に、電子スロットルシステムを備えた内燃機関において、人為的に操作されるアクセルペダルやブレーキペダルの条件に基づいて内燃機関の出力を制御する制御装置の出力制御機能に関する。
【背景技術】
【0002】
電子スロットルシステムの制御装置は、アクセルセンサ(「アクセル開度センサ」ともいう。)で検知したアクセル開度を入力として取り込んで、アクセル開度に基づいて、あるいは他の条件との組合せに基づいて、目標とするスロットル開度を制御出力として求めるよう演算している。
そして、スロットルは、モータによって目標とするスロットル開度に一致(「収束」とも換言できる。)するように開閉駆動制御される。実際にモータを駆動する制御量は、直前のスロットル開度位置から目標とするスロットル開度位置までの差分を提供することになる。
実際のスロットル開度が目標とするスロットル開度に一致(「収束」)したか否かをスロットルセンサで検知して、一致(「収束」)するようにフィードバック制御をしている。
また、従来技術として開示した以下の特許文献1〜6のように、システムの故障時や異常時に、スロットル開度をリンプホーム(「リンプホーム開度」ともいう。)とする技術がある。
更に、特許文献1〜6の中には、ブレーキ操作に応じて制御するものがあるが、ブレーキをアクセルの代替入力手段としたり、ブレーキを機能停止のトリガ入力としたりするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3464918号公報
【特許文献2】特許第3547619号公報
【特許文献3】特許第3820643号公報
【特許文献4】特開1999−343909号公報
【特許文献5】特開2002−235595号公報
【特許文献6】特開2007−198159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の内燃機関の制御装置においては、フロアマットにアクセルペダルが噛み込んだ場合などを考慮し、暴走を避けて、アクセルとブレーキとの両方を踏んだときは制御用のアクセル開度を、
IDL開度 ≒ 全閉
に固定する。
従来の制御では、アクセルペダルの踏み込みが直らないと、IDL開度に固定したまま、制動となるため、そのままでは退避走行ができないという不都合がある。
このとき、ブレーキペダルの踏み込みを解放すれば、速度を上げることはできるが、踏み込んだアクセル開度に応じた高いエンジン出力となるため、2つの両極端な状態を切り替えて速度を調節することは極めて困難となるという不都合がある。
また、図7に示す如く、ブレーキの判定がブレーキスイッチのみの判定であり、ブレーキスイッチが故障するだけで制御が作動せず、確実性のための制御としてはブレーキスイッチだけの判定には不安が残るという不都合がある。
【0005】
また、上述した特許文献1〜6の技術は、いずれも故障時(故障判定後)や異常時(異常判定後)に適用されるものであり、何らかの不具合の原因(特定装置)が明確に判定されなければ作動しないという不都合がある。
すなわち、電子スロットルシステムのシステム構成部品だけでは、人為的な操作によるペダル操作量なのか、マットへの引っ掛かりといった不測の外的要因に基づくペダル操作量なのかを判別することは難しい。不測の外的要因を検知する目的だけのために、通常走行に寄与しないシステム構成部品を付加して電子スロットルシステムのシステム構成部品を増大かつ複雑化するのは、好ましくない。
そしてまた、ブレーキ操作に応じて制御する技術にしても、意図的な両足操作を伴う走行状態、異常状態のフェールセーフ(「退避走行状態」ともいう。)、無意識などの踏み誤り(アクセルとブレーキの両操作)全ての成立を図れるものではない。
【0006】
この発明は、検出されないシステム異常にも対処できる出力制御を提供すること、退避走行可能な出力制御を行うこと、うっかりミスなどの誤作動に配慮した高精度な判断を行う出力制御を提供すること、信頼性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、アクセルペダルの操作量を含む複数の運転条件に応じて内燃機関に設けたスロットルバルブを目標開度になるようアクチュエータを駆動する電子スロットルシステムを備えた内燃機関の制御装置であって、何らかの運転条件に異常を検知した際にはスロットル開度をリンプホーム開度として車両の退避走行を可能とする内燃機関の制御装置において、人為的なブレーキ操作を検知するブレーキ操作検知手段を設け、前記制御装置は、異常検知の有無に関わらず、前記アクセルペダルの操作中に後からブレーキ操作が加わった場合、その操作順序の成立に基づいて目標開度をリンプホーム開度とし、スロットル開度をリンプホーム開度とするよう前記アクチュエータを駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上詳細に説明した如くこの発明によれば、アクセルペダルの操作量を含む複数の運転条件に応じて内燃機関に設けたスロットルバルブを目標開度になるようアクチュエータを駆動する電子スロットルシステムを備えた内燃機関の制御装置であって、何らかの運転条件に異常を検知した際にはスロットル開度をリンプホーム開度として車両の退避走行を可能とする内燃機関の制御装置において、人為的なブレーキ操作を検知するブレーキ操作検知手段を設け、制御装置は、異常検知の有無に関わらず、前記アクセルペダルの操作中に後からブレーキ操作が加わった場合、その操作順序の成立に基づいて目標開度をリンプホーム開度とし、スロットル開度をリンプホーム開度とするようアクチュエータを駆動する。
従って、システムに何らの異常の検知がなくても、リンプホーム開度に収束させることができ、車両を減速させるだけでなく、退避走行が可能な程度の出力を確保できる。
また、アクセル操作中にブレーキ操作を行った操作順序だけに限定されるので、坂道発進などで出力制御を行うことがなく、運転操作性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1はこの発明の第1実施例を示す内燃機関の制御装置の制御用フローチャートである。(実施例1)
【図2】図2は内燃機関の制御装置のシステム図である。(実施例1)
【図3】図3は電子スロットルシステムの概略構成図である。(実施例1)
【図4】図4は電子スロットルシステムの制御用フローチャートである。(実施例1)
【図5】図5は内燃機関の制御装置のタイムチャートである。(実施例1)
【図6】図6はこの発明の第2実施例を示す内燃機関の制御装置の制御用フローチャートである。(実施例2)
【図7】図7はこの発明の従来技術を示す内燃機関の制御装置のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1〜図5はこの発明の第1実施例を示すものである。
図2において、1は内燃機関2の制御装置である。
この制御装置1は、図2に示す如く、内燃機関2の吸気系に吸気通路3を接続するとともに、内燃機関2の排気系に排気通路4を接続している。
そして、前記内燃機関2の吸気通路3には、上流側からエアクリーナ5と、エアフローメータ(「AFM」とも記載する。)6及び吸気温センサ(「THAセンサ」とも記載する。)7と、スロットル開度(「TA」ともいう。)を検出する電動スロットルシステム8と、インジェクタ9とを順次配設している。
このとき、前記電動スロットルシステム8には、アクセルペダル10のアクセル開度(「AP」ともいう。)(「踏み込み量」とも換言できる。)を検出するアクセル開度センサ11を接続する。
また、前記内燃機関2には、点火コイル12を配設している。
更に、前記内燃機関2の排気通路4には、上流側から触媒13とマフラ14とを配設している。
そして、前記制御装置1は、CPU演算を行う制御手段(「ECM」ともいう。)15を備えている。
この制御手段15の入力側には、前記エアフローメータ6や吸気温センサ7、電動スロットルシステム8、アクセル開度センサ11を接続する一方、前記内燃機関2も接続されており、内燃機関2からエンジン水温(「THW」ともいう。)やクランク信号(「CRK」ともいう。)、カム信号(「CAM」ともいう。)などを入力している。
更に、前記制御手段15の入力側には、図示しないブレーキペダルに設けられるブレーキスイッチ16や変速機コントローラ17、BCM(「Body Control Module」または「ボディ・コントロール・モジュール」、「車体電子制御ユニット」ともいう。)18、制動制御機能を備える制御装置である電子的安定制御装置(「ESP」ともいう。)19、この電子的安定制御装置19に接続され、前記ブレーキペダルに付随して設けられるブレーキシリンダ(図示せず)に充填されるフルードの圧力をブレーキシリンダ圧として検知するシリンダ圧検知手段20、メータ21等を接続している。
また、前記制御手段15の出力側には、前記電動スロットルシステム8やインジェクタ9、点火コイル12を接続している。
【0012】
前記電動スロットルシステム8について説明する。
この電動スロットルシステム8は、アクセルペダル10の操作量を含む複数の運転条件に応じて内燃機関2に設けたスロットルバルブ22を目標開度になるようアクチュエータ(「モータ」ともいう。)23を駆動するものである。
つまり、電子スロットルシステム8において、この電子スロットルシステム8に接続する前記制御手段15は、図3に示す如く、演算部であるCPU24と、スロットルモータ駆動回路25とを備え、CPU24とスロットルモータ駆動回路25とにスロットルモータリレー26を接続し、アクセルペダル10の踏み込み量をアクセル開度センサ11により検出している。
そして、前記制御手段15は、検出したアクセル開度とエンジン運転状態により最適なスロットル開度を決定し、スロットルボディ27に内蔵されたアクチュエータ23を駆動してスロットルバルブ22を開閉する。
なお、スロットルバルブ22の開度情報は、電子スロットルシステム8のスロットルボディ27に配設したスロットルセンサ28により検出し、前記制御手段15にフィードバックされる。
また、アイドル回転速度制御を電子スロットルで行う。
更に、スロットルセンサ28及びアクセル開度センサ11のシステム異常に対する監視を2系統(メイン、サブ)とし、信頼性の向上を図っている。
そして、異常を検出した場合には、前記スロットルモータリレー26をOFFし、スロットルバルブ22はリターンスプリング29により全閉状態から約7°の開度(車両やエンジンによって多少増減する)、つまりリンプホーム開度(「デフォルト開度」ともいう。)に固定される。
なお、前記制御手段15や前記スロットルボディ27、アクセルペダル10のアクセルペダルアッシ30を交換した際、または、バッテリ(図示せず)からマイナスケーブルを外した場合などは、電子スロットル学習を行う必要がある。
つまり、前記内燃機関2の制御装置1を、何らかの運転条件に異常を検知した際に、スロットル開度をリンプホーム開度として車両の退避走行を可能とする構成とする。
そして、人為的なブレーキ操作を検知するブレーキ操作検知手段31を設け、前記制御装置1は、異常検知の有無に関わらず、前記アクセルペダル10の操作中に後からブレーキ操作が加わった場合、その操作順序の成立に基づいて目標開度をリンプホーム開度とし、スロットル開度をリンプホーム開度とするよう前記アクチュエータ23を駆動する構成とする。
詳述すれば、前記制御装置1は、図5に示す如く、異常検知の有無に関わらず、前記アクセルペダル10の操作中に後からブレーキ操作が加わった場合に、その操作順序の成立に基づいて目標開度をリンプホーム開度として設定し、実際のスロットル開度をリンプホーム開度とするように、スロットル開度のフィードバック制御によって前記アクチュエータ23を駆動するものである。
そして、この操作順序の成立に基づいて目標開度をリンプホーム開度とする時に、異常検知は発生していない。
また、異常検知があった場合は、異常フラグを設定し、スロットル開度をリンプホーム開度とする。
従い、スロットル開度をリンプホーム開度とする制御は、異常検知の有無に関わらないと言える。
従って、システムに何らの異常の検知がなくても、リンプホーム開度に収束させることができ、車両を減速させるだけでなく、退避走行が可能な程度の出力を確保できる。
また、アクセル操作中にブレーキ操作を行った操作順序だけに限定されるので、坂道発進などで出力制御を行うことがなく、運転操作性を確保できる。
【0013】
前記ブレーキ操作検知手段31は、前記ブレーキペダルに設けた前記ブレーキスイッチ16と、前記ブレーキペダルに付随して設けられるブレーキシリンダに充填されるフルードの圧力をブレーキシリンダ圧として検知する前記シリンダ圧検知手段20とを備え、ブレーキ操作が加わったとの判定を、ブレーキペダルに設けたブレーキスイッチ17のON出力信号と、ブレーキシリンダ圧を予め設定したブレーキ操作判定閾値と大小比較した判定結果がブレーキ操作判定閾値を超えている判定とのいずれかの成立によって構成する。
つまり、前記ブレーキスイッチ16は、ブレーキペダルの踏み込み操作を検知するものである。このブレーキペダルには小さな遊びがあるため、軽い踏み込み操作によって実際の制動力を発生していない状態でも、操作があれば検知する。
また、ブレーキシリンダ圧力は、前記シリンダ圧検知手段20が、ブレーキペダルに付随して設けられるブレーキシリンダに充填されるフルードの圧力をブレーキシリンダ圧として検知するものである。踏み込み操作をある程度行って、実際の制動力を発生している状態で成立するものであるので、その圧力の判断、つまり、
ブレーキシリンダ圧 > ブレーキ操作判定閾値B
は、実際のある程度の制動状態を検知することになる。このとき、ブレーキ操作判定閾値Bは「ブレーキシリンダ圧力条件」とも換言できる。なお、ブレーキシリンダ圧力信号は、制動制御機能を備える制御装置である前記電子的安定制御装置19や図示しないアンチロックブレーキシステム(「ABS」ともいう。)等に利用する情報を使えば良い。
従って、ブレーキ操作検知手段31を二重系としたので、フォールトトレラントなシステムとすることができる。
また、異常を検知した場合でも、異常と検知できないトラブルがあった場合でも、いずれもスロットル開度をリンプホーム開度とすることができ、運転者に対して特別な操作を必要としないシステムとすることができる。
【0014】
なお、ブレーキ操作が加わったとの判定において、ブレーキペダルに設けたブレーキスイッチ17のON出力信号と、ブレーキシリンダ圧を予め設定したブレーキ操作判定閾値Bと大小比較した判定結果がブレーキ操作判定閾値Bを超えている判定とのいずれかの成立によって構成する際に、ブレーキスイッチ17とブレーキシリンダ圧が、それぞれ、成立、不成立となるタイミングは両者の間に微妙に異なることになる。
通常、ブレーキスイッチ17の方が成立時間が長くなる。
しかし、ブレーキ操作判定閾値Bの値を低く設定することによって、ブレーキスイッチ17の信号にブレーキシリンダ圧力の信号に基づく判定を近付けることはできる。
【0015】
一方、ブレーキ操作が先に行われていて、後から前記アクセルペダル10を踏み込んで、同時に2つのペダル操作を行うケースとして、例えば、坂道発進を行うような場合には、同時操作のフラグが立たないため、スロットル開度がリンプホーム開度に向かって制限されることはなく、操作通りの出力を得ることができ、良好な操作性が確保できる。
【0016】
また、ブレーキシリンダ圧力は、それだけでも、ブレーキの実動作を検知することができる。
しかし、それをせずに、減速度を監視しているのは、信頼性の確保と制御精度の確保とを重視しているためである。
【0017】
リンプホーム開度にする制御の解除条件は、
(1)前記アクセルペダル10のアクセル開度とアクセル開度条件Aとの関係が、
アクセル開度 > アクセル開度条件A
のアクセル開度条件、
(2)前記ブレーキスイッチ17のON条件、
(3)ブレーキシリンダ圧とブレーキ操作判定閾値Bとの関係が、
ブレーキシリンダ圧 > ブレーキ操作判定閾値B
のブレーキシリンダ圧力条件、
の3つの条件うち、いずれかが不成立となった時に成立し、アクセル開度に基づくスロットル制御に復帰する。
【0018】
また、リンプホーム開度にする制御の実行条件成立時には、アクセル開度に基づくスロットル制御によるスロットル開度からリンプホーム開度になるよう所定の勾配でスロットル開度を漸減させる。
逆に、リンプホーム開度にする制御の解除条件成立(「実行条件不成立」ともいう。)時には、リンプホーム開度からアクセル開度に基づくスロットル制御によるスロットル開度となるよう所定の勾配でスロットル開度を漸増させる。
これらの漸減または漸増を行う際の勾配が、従来の全閉する場合と同じであれば、当然目的の開度に収束する(漸減または漸増が完了する)までの所要時間は短縮される。
【0019】
なお、上記した第1実施例の構成においては、1つのアクチュエータ23の例としてモータを用いる構成を開示したが、リンプホーム開度に強制的に収束させる別な機械的駆動手段を用いる構成としても良い。
その場合、目標開度をリンプホーム開度にすることは必須ではなく、目標開度を保留状態として、強制的にリンプホーム開度とすれば良い。
異常検知信号(「異常検知情報」ともいう。)に代わる運転条件として、それに類するリンプホーム開度用信号を設定しても良い。
【0020】
先ず、図4の前記電子スロットルシステム8の制御用フローチャートに沿って作用を説明する。
【0021】
この電子スロットルシステム8の制御用プログラムがスタート(101)すると、アクセル開度及びエンジン運転状態に関する情報取込の処理(102)に移行する。
そして、この情報取込の処理(102)の後に、スロットル開度演算の処理(103)に移行する。
このとき、この第1実施例の結果は、上述の情報取込の処理(102)とスロットル開度演算の処理(103)とのいずれか一方に反映される。
また、参考までに記載すると、後述する第2実施例の結果は、スロットル開度演算の処理(103)に反映される。
また、スロットル開度演算の処理(103)の後は、スロットルモータであるアクチュエータ23駆動の処理(104)に移行し、その後にスロットル開度に関する情報取込の処理(105)に移行する。
そして、スロットル開度に関する情報取込の処理(105)の後には、スロットル開度が目標開度と等しい、つまり
スロットル開度 = 目標開度
であるか否かの判断(106)に移行する。
この判断(106)がNOの場合には、上述したスロットルモータであるアクチュエータ23駆動の処理(104)に戻り、判断(106)がYESの場合には、前記電子スロットルシステム8の制御用プログラムのエンド(107)に移行する。
【0022】
次に、図1の前記内燃機関2の制御装置1の制御用フローチャートに沿って作用を説明する。
【0023】
この内燃機関2の制御装置1の制御用プログラムがスタート(201)すると、前記アクセルペダル10のアクセル開度とアクセル開度条件Aとの関係が、
アクセル開度 > アクセル開度条件A
であるか否かの判断(202)に移行する。
この判断(202)がNOの場合には、スタート(201)に戻って、判断(202)がYESとなるまで、判断(202)を繰り返し行う。
また、判断(202)がYESの場合には、前記ブレーキスイッチ17のON条件、あるいは、ブレーキシリンダ圧とブレーキ操作判定閾値Bとの関係が、
ブレーキシリンダ圧 > ブレーキ操作判定閾値B
のいずれかが成立するか否かの判断(203)に移行する。
そして、判断(203)がNOの場合には、スタート(201)に戻って、判断(202)を行う。
つまり、アクセル操作の後にブレーキ操作の順で加わったときにだけ作動し、順序が入れ替わって、ブレーキ操作の後にアクセル操作が加わっても作動しない。
更に、アクセル操作の後にブレーキ操作の順で加わって作動し、判断(203)がYESの場合には、制御用の目標開度(「制御用アクセル開度」ともいう。)をリンプホーム開度とし、スロットル開度をリンプホーム開度とするよう前記アクチュエータ23を駆動する処理(204)に移行し、その後に、前記内燃機関2の制御装置1の制御用プログラムのエンド(205)に移行する。
【実施例2】
【0024】
図6はこの発明の第2実施例を示すものである。
この第2実施例において、上述第1実施例のものと同一機能を果たす箇所には、同一符号を付して説明する。
【0025】
この第2実施例の特徴とするところは、前記制御装置に、アクセルペダルの操作中に後からブレーキ操作が加わった際に車両の減速度を監視するとともに、予め設定した範囲の減速状態が所定時間以上継続した場合にスロットル開度をリンプホーム開度とする機能を付加した構成とした点にある。
【0026】
すなわち、前記制御装置1は、アクセルペダルの操作中に後からブレーキ操作が加わった際に、車両の減速度を監視する。そして、予め設定した範囲の減速状態が所定時間D以上継続した場合に、スロットル開度をリンプホーム開度とするよう前記アクチュエータを駆動する構成を有している。
このとき、減速度は、車両の走行速度の微分によって算出する負の値である(なお、正の値は加速)。予め設定した範囲の減速状態とは、
0 > 減速度 > C
となる所望の減速状態であることを判断する。Cは任意に設定する減速状態の判断値である。そのため、逆にCを小さな負の値として、このCを越える大きな減速度ではスロットル開度をリンプホーム開度に制限しないように設定することも可能である。
減速状態が判断されてからの継続時間を測り、継続時間が所定時間D以上となるか否かを判断する。これによって、スロットル開度をリンプホーム開度に制限する動作にディレイ時間を与えている。このディレイ時間の中に、操作ミス、あるいは、速度の微調整や車両姿勢変化のきっかけづくりといった運転手法を含めることができ、運転性を向上できる。
従って、短時間のブレーキ操作や軽い触れ程度の操作では、リンプホーム開度とする動作を起こさないので、2つの動作を使い分けることができる。
また、この使い分けの中に、操作ミスなどを含めることができ、利便性が上がり、運転操作性が向上する。
【0027】
次に、図6の前記内燃機関の制御装置の制御用フローチャートに沿って作用を説明する。
【0028】
この内燃機関の制御装置の制御用プログラムがスタート(301)すると、前記アクセルペダルのアクセル開度とアクセル開度条件Aとの関係が、
アクセル開度 > アクセル開度条件A
であるか否かの判断(302)に移行する。
この判断(302)がNOの場合には、スタート(301)に戻って、判断(302)がYESとなるまで、判断(302)を繰り返し行う。
また、判断(302)がYESの場合には、前記ブレーキスイッチのON条件、あるいは、ブレーキシリンダ圧とブレーキ操作判定閾値Bとの関係が、
ブレーキシリンダ圧 > ブレーキ操作判定閾値B
のいずれかが成立するか否かの判断(303)に移行する。
そして、判断(303)がNOの場合には、スタート(301)に戻って、判断(302)を行う。
つまり、アクセル操作の後にブレーキ操作の順で加わったときにだけ作動し、順序が入れ替わって、ブレーキ操作の後にアクセル操作が加わっても作動しない。
更に、アクセル操作の後にブレーキ操作の順で加わって作動し、判断(303)がYESの場合には、予め設定した以下の範囲の減速状態が、
0 > 減速度 > C
所定時間D以上継続しているか否かの判断(304)に移行する。
この判断(304)がNOの場合には、スタート(301)に戻って、判断(302)を行う。
また、判断(304)がYESの場合には、減速度条件と減速度条件ディレイとが成立したため、スロットル開度をリンプホーム開度とするよう前記アクチュエータを駆動する処理(305)に移行し、その後に、前記内燃機関の制御装置の制御用プログラムのエンド(306)に移行する。
【符号の説明】
【0029】
1 制御装置
2 内燃機関
3 吸気通路
4 排気通路
8 電動スロットルシステム
10 アクセルペダル
11 アクセル開度センサ
15 制御手段(「ECM」ともいう。)
16 ブレーキスイッチ
17 変速機コントローラ
19 電子的安定制御装置(「ESP」ともいう。)
20 シリンダ圧検知手段
22 スロットルバルブ
23 アクチュエータ(「モータ」ともいう。)
24 CPU
25 スロットルモータ駆動回路
28 スロットルセンサ
31 ブレーキ操作検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルペダルの操作量を含む複数の運転条件に応じて内燃機関に設けたスロットルバルブを目標開度になるようアクチュエータを駆動する電子スロットルシステムを備えた内燃機関の制御装置であって、何らかの運転条件に異常を検知した際にはスロットル開度をリンプホーム開度として車両の退避走行を可能とする内燃機関の制御装置において、人為的なブレーキ操作を検知するブレーキ操作検知手段を設け、前記制御装置は、異常検知の有無に関わらず、前記アクセルペダルの操作中に後からブレーキ操作が加わった場合、その操作順序の成立に基づいて目標開度をリンプホーム開度とし、スロットル開度をリンプホーム開度とするよう前記アクチュエータを駆動することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、アクセルペダルの操作中に後からブレーキ操作が加わった際に、車両の減速度を監視するとともに、予め設定した範囲の減速状態が所定時間以上継続した場合に、スロットル開度をリンプホーム開度とすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記ブレーキ操作検知手段は、前記ブレーキペダルに設けたブレーキスイッチと、前記ブレーキペダルに付随して設けられるブレーキシリンダに充填されるフルードの圧力をブレーキシリンダ圧として検知するシリンダ圧検知手段とを備え、ブレーキ操作が加わったとの判定を、ブレーキペダルに設けたブレーキスイッチのON出力信号と、ブレーキシリンダ圧を予め設定したブレーキ操作判定閾値と大小比較した判定結果がブレーキ操作判定閾値を超えている判定とのいずれかの成立によって構成することを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−144726(P2011−144726A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5121(P2010−5121)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】