説明

内燃機関の制御装置

【課題】ノッキングの発生を抑制しつつ内燃機関の冷却損失の低減を図ることができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関10の制御装置120は、シリンダライナの冷却を確保しつつシリンダヘッドにおける冷却損失の発生を抑制可能な構造を有する火花点火式の内燃機関のクランク軸の回転速度を加速状態と減速状態との間で変更可能な回転速度変更手段30を制御する制御部124を備え、制御部は、内燃機関に対して要求される出力に応じて、膨張行程にあるシリンダ11に配置されたピストンのクランク角が所定の角度のときにクランク軸の回転速度が加速状態または減速状態になるように回転速度変更手段を制御し、所定の角度は、燃焼室に占めるシリンダライナの表面積の割合がシリンダヘッドの表面積の割合よりも大きい角度であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置、特に火花点火式の内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火花点火式の内燃機関の正味仕事に用いられない損失として、ポンプ損失、排気損失、冷却損失、機械損失等がある。これらの損失のうち冷却損失は大きなウエイトを占めることから、内燃機関の冷却損失を低減させるための技術が考案されている。例えば特許文献1には、内燃機関のピストン冠面の最外径部に断熱部材を配置することで、燃焼室とシリンダライナとの断熱を図り、以って冷却損失の低減を図る技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−30458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る技術では、断熱部材によって燃焼室内の混合気の温度が上昇し易くなる。その結果、ノッキングが発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、ノッキングの発生を抑制しつつ内燃機関の冷却損失の低減を図ることができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る内燃機関の制御装置は、一つ以上のシリンダを有し且つシリンダライナの冷却を確保しつつシリンダヘッドにおける冷却損失の発生を抑制可能な構造を有する火花点火式の内燃機関のクランク軸の回転速度を加速状態と減速状態との間で変更可能な回転速度変更手段を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記内燃機関に対して要求される出力に応じて、膨張行程にある前記シリンダに配置されたピストンのクランク角が所定の角度のときに前記クランク軸の前記回転速度が前記加速状態または前記減速状態になるように前記回転速度変更手段を制御し、前記所定の角度は、前記シリンダに形成された燃焼室に占めるシリンダライナの表面積の割合が前記燃焼室に占める前記シリンダヘッドの表面積の割合よりも大きい角度であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、内燃機関はシリンダライナの冷却を確保しつつシリンダヘッドにおける冷却損失の発生を抑制可能な構造を有している。この場合、シリンダライナの冷却が確保されていることによってシリンダライナの温度上昇が抑制されている。それにより、ノッキングの発生を抑制することができる。
【0008】
また本発明に係る制御装置によれば、制御部は内燃機関に対して要求される出力に応じて、膨張行程にあるシリンダに配置されたピストンのクランク角が所定の角度のときにクランク軸の回転速度が加速状態または減速状態になるように回転速度変更手段を制御している。この構成によれば、クランク軸の回転速度が加速状態になるように制御された場合、燃焼室からシリンダライナへ伝わる熱量を減少させることができる。それにより、シリンダライナにおける冷却損失の低減を図ることができる。一方、クランク軸の回転速度が減速状態になるように制御された場合、燃焼室からシリンダライナへ伝わる熱量を上昇させることができる。それにより、燃焼室からシリンダヘッドへ伝わる熱量が減少することから、シリンダヘッドの温度上昇を抑制できる。その結果、シリンダヘッドにおける冷却損失を低減することができる。したがって本発明に係る制御装置によれば、ノッキングの発生を抑制しつつ内燃機関の冷却損失の低減を図ることができる。
【0009】
上記構成において、前記制御部は、前記出力が所定出力以下の場合に前記膨張行程にある前記シリンダに配置された前記ピストンの前記クランク角が前記所定の角度のときに前記クランク軸の前記回転速度が前記加速状態になるように前記回転速度変更手段を制御し、前記出力が前記所定出力より大きい場合に前記膨張行程にある前記シリンダに配置された前記ピストンの前記クランク角が前記所定の角度のときに前記クランク軸の前記回転速度が前記減速状態になるように前記回転速度変更手段を制御してもよい。
【0010】
この構成によれば、内燃機関に対して要求される出力が所定出力以下の場合に膨張行程にあるシリンダに配置されたピストンのクランク角が所定の角度のときにクランク軸の回転速度が加速状態になることで、燃焼室からシリンダライナへ伝わる熱量を減少させることができる。それにより、シリンダライナにおける冷却損失の低減を図ることができる。また、シリンダヘッドにおける冷却損失の発生が抑制された内燃機関では、内燃機関に対して要求される出力が所定出力より大きい場合にはシリンダヘッドが高温になり過ぎるおそれがあるところ、上記構成によれば、この場合において膨張行程にあるシリンダに配置されたピストンのクランク角が所定の角度のときにクランク軸の回転速度が減速状態になる。それにより、燃焼室からシリンダライナへ伝わる熱量を上昇させて、燃焼室からシリンダヘッドへ伝わる熱量を減少させることができる。その結果、シリンダヘッドが高温になり過ぎることを抑制することができる。
【0011】
上記構成において、前記制御部は、前記膨張行程にある前記シリンダに配置された前記ピストンの前記クランク軸の前記回転速度が前記加速状態になるように前記回転速度変更手段を制御した後に、さらに一つ以上の前記シリンダのうちいずれかの前記シリンダに配置された前記ピストンが圧縮上死点にある場合に前記クランク軸の前記回転速度が前記減速状態になるように前記回転速度変更手段を制御してもよい。この構成によれば、クランク軸の回転速度の平均値を一定にすることができる。
【0012】
上記構成において、前記制御部は、前記膨張行程にある前記シリンダに配置された前記ピストンの前記クランク軸の前記回転速度が前記減速状態になるように前記回転速度変更手段を制御した後に、さらに一つ以上の前記シリンダのうちいずれかの前記シリンダに配置された前記ピストンが前記圧縮上死点にある場合に前記クランク軸の前記回転速度が前記加速状態になるように前記回転速度変更手段を制御してもよい。この構成によれば、クランク軸の回転速度の平均値を一定にすることができる。
【0013】
上記構成において、前記内燃機関は、前記クランク軸に動力分割機構を介して接続されたモータを備えるハイブリッド車両に搭載され、前記回転速度変更手段は前記モータである構成としてもよい。
【0014】
上記構成において、前記内燃機関は、吸気行程、圧縮行程、前記膨張行程および排気行程をこの順に行う4サイクル機関であり、前記吸気行程の開始の前記クランク角を−360°とし、前記排気行程の終了の前記クランク角を360°とした場合、前記所定の角度は45°〜135°である構成としてもよい。
【0015】
上記構成において、前記シリンダライナの冷却を確保しつつ前記シリンダヘッドにおける前記冷却損失の発生を抑制可能な前記構造は、前記シリンダヘッドを冷却する冷却媒体が流通する冷却媒体通路における該冷却媒体の流量を、前記シリンダライナを冷却する冷却媒体が流通する冷却媒体通路における該冷却媒体の流量よりも小さくする構造としてもよい。
【0016】
この構成によれば、冷却媒体によってシリンダライナの冷却を確保することができる。また、シリンダヘッドを冷却する冷却媒体が流通する冷却媒体通路における冷却媒体の流量が、シリンダライナを冷却する冷却媒体が流通する冷却媒体通路における冷却媒体の流量よりも小さくなる構成を有することから、シリンダヘッドにおける冷却損失の発生が抑制されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ノッキングの発生を抑制しつつ内燃機関の冷却損失の低減を図ることができる内燃機関の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1(a)は実施例1に係る制御装置および内燃機関が搭載された車両の一例を示す模式図である。図1(b)は制御装置の機能ブロック図である。
【図2】図2は実施例1に係る内燃機関の模式的断面図である。
【図3】図3は実施例1に係る冷却構造を説明するための模式図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、シリンダライナの冷却を確保しつつシリンダヘッドにおける冷却損失の発生を抑制可能な構造による効果を説明するための図である。
【図5】図5(a)〜図5(d)は制御部による制御で用いられる所定の角度を説明するための図である。
【図6】図6は内燃機関に対して要求される出力が所定出力以下の場合に制御部が行う制御の内容を詳細に説明するための図である。
【図7】図7は内燃機関に対して要求される出力が所定出力より大きい場合に制御部が行う制御の内容を詳細に説明するための図である。
【図8】図8は制御部のフローチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明の実施例1に係る内燃機関の制御装置(以下、制御装置と略称する)について説明する。制御装置は、内燃機関に用いられる制御装置である。図1(a)は、本実施例に係る制御装置および内燃機関が搭載された車両5の一例を示す模式図である。車両5の種類は特に限定されるものではないが、本実施例においてはハイブリッド車両である。この場合、車両5は、内燃機関10、モータ30、インバータ40、発電機50、バッテリ60、動力分割機構70、減速機80、駆動輪90、アクセル100、各種センサ(クランク角センサ110、電圧検出センサ111、アクセル開度センサ112)および制御装置120を備えている。
【0021】
内燃機関10は一つ以上のシリンダ11を備えている。本実施例に係る内燃機関10は、一例として#1〜#4の4つのシリンダ11を備えている。これら4つのシリンダ11は、内燃機関10のクランク軸の軸線方向に沿って列状に配置されている。内燃機関10の詳細な構成は後述する。
【0022】
モータ30は交流モータである。インバータ40は電力を直流と交流との間で変換するための装置である。バッテリ60から出力される電力は直流である。バッテリ60から出力される直流の電力はインバータ40によって交流に変換されてモータ30に供給される。
【0023】
内燃機関10、モータ30、発電機50および減速機80は、動力分割機構70に接続されている。動力分割機構70は、制御装置120によって制御されて内燃機関10およびモータ30の接続状態を切替えることで、内燃機関10およびモータ30の動力の伝達先を切り替える機構である。動力分割機構70としては、例えば遊星歯車機構等を用いることができる。
【0024】
動力分割機構70を介して減速機80に伝達された動力は、駆動輪90を駆動することに用いられる。動力分割機構70を介して発電機50に伝達された動力は、発電機50を駆動することに用いられる。発電機50は、駆動することで電力を発生させる。発電機50で発生した電力の一部は、インバータ40によって直流に変換されてバッテリ60に充電される。また発電機50で発生した電力の残りは、モータ30を駆動するための電力として使用される。
【0025】
クランク角センサ110は内燃機関10のクランク軸の角度(以下、クランク角と称する)を検出し、検出結果を制御装置120に伝える。電圧検出センサ111はバッテリ60の電圧を検出し、検出結果を制御装置120に伝える。制御装置120は、電圧検出センサ111の検出結果に基づいてバッテリ60の残量を取得する。すなわち、本実施例において電圧検出センサ111はバッテリ60の残量を検出する検出手段としての機能を有している。但し、制御装置120がバッテリ60の残量を取得できる指標であれば、バッテリ60の電圧以外の指標を用いてもよい。
【0026】
アクセル開度センサ112はアクセル100の開度(アクセル開度)を検出し、検出結果を制御装置120に伝える。制御装置120はアクセル開度センサ112の検出結果に基づいて、内燃機関10に対して要求される出力を取得する。すなわち、本実施例においてアクセル開度センサ112は内燃機関10に対して要求される出力を検出する検出手段としての機能を有している。但し、制御装置120が内燃機関10に対して要求される出力を取得できる指標であれば、アクセル開度以外の指標を用いてもよい。例えば制御装置120は、内燃機関10に対して要求される出力と相関を有する指標である内燃機関10の負荷(例えばアクセル開度、吸入空気量、内燃機関10の回転速度、燃料噴射量等)を取得することで、内燃機関10に要求される出力を取得してもよい。
【0027】
制御装置120は、CPU(Central Processing Unit)121、ROM(Read Only Memory)122およびRAM(Random Access Memory)123を備える電子制御装置(Electronic Control Unit)である。
【0028】
図1(b)は制御装置120の機能ブロック図である。制御装置120の機能は、制御部124および記憶部125によって実現することができる。制御部124は、各種センサの検出結果を受けて内燃機関10、モータ30および動力分割機構70を制御する機能を有している。記憶部125は、制御部124の制御に必要なデータ等を記憶する機能を有している。制御部124の機能はCPU121によって実行され、記憶部125の機能はROM122およびRAM123によって実行される。
【0029】
本実施例に係る車両5によれば、モータ30によって内燃機関10の運転状態にかかわらず内燃機関10のクランク軸の回転速度を変更することできる。例えば制御部124がモータ30の出力軸とクランク軸とが接続されるように動力分割機構70を制御し、モータ30が電動機として機能するようにモータ30を制御することで、クランク軸の回転速度を上昇させることができる。また、制御部124がモータ30の出力軸とクランク軸とが接続されるように動力分割機構70を制御し、モータ30が発電機として機能するようにモータ30を制御することで、クランク軸の回転速度を減少させることができる。
【0030】
このように本実施例に係るモータ30は、クランク軸の回転速度を加速状態(回転速度が上昇している状態)と減速状態(回転速度が減少している状態)との間で変更可能な回転速度変更手段としての機能を有している。なお、回転速度変更手段は、制御部124に制御されることでクランク軸の回転速度を加速状態と減速状態との間で変更可能な装置であれば、モータ30に限定されるものではない。
【0031】
続いて内燃機関10の詳細について説明する。図2は内燃機関10の模式的断面図である。具体的には図2は、内燃機関10の複数のシリンダ11のうち一つのシリンダ11を模式的に断面図示したものである。本実施例に係る内燃機関10は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程がこの順に行われる4サイクル機関である。
【0032】
内燃機関10は、シリンダ11の周囲に配置されたシリンダライナ12と、シリンダライナ12の上部に配置されたシリンダヘッド13と、シリンダ11内に配置されたピストン14と、クランク軸15と、ピストン14とクランク軸15とを接続するコンロッド16と、を備えている。シリンダ11におけるシリンダライナ12とシリンダヘッド13とピストン14とによって囲まれた領域に、燃焼室17が形成されている。すなわち燃焼室17は、シリンダ11に形成されている。シリンダヘッド13には、燃焼室17に吸気を導くための吸気通路18と燃焼室17から排気を排出するための排気通路19とが形成されている。
【0033】
また内燃機関10は、吸気通路18を開閉する吸気弁20と、排気通路19を開閉する排気弁21と、燃焼室17の混合気に火花を点火するための点火プラグ22と、を備えている。すなわち、本実施例に係る内燃機関10は、火花点火式の内燃機関である。本実施例に係る点火プラグ22は、燃焼室17の天井部における吸気通路18と排気通路19との間の部分に配置されている。但し、点火プラグ22の配置箇所は、これに限定されるものではない。
【0034】
内燃機関10は、シリンダライナ12の冷却を確保しつつシリンダヘッド13における冷却損失の発生を抑制可能な構造を有している。この構造の一例として、本実施例に係る内燃機関10は、シリンダヘッド13を冷却する冷却媒体が流通する冷却媒体通路における冷却媒体の流量をシリンダライナ12を冷却する冷却媒体が流通する冷却媒体通路における冷却媒体の流量よりも小さくする構造(以下、冷却構造130と称する)を備えている。
【0035】
図3は、冷却構造130を説明するための模式図である。本実施例に係る冷却構造130は、一例として、冷却媒体供給装置131と、ヘッド用冷却媒体通路132と、ライナ用冷却媒体通路133と、第1冷却媒体循環通路134と、第2冷却媒体循環通路135と、流量調整弁136と、を備えている。
【0036】
冷却媒体供給装置131は、冷却媒体を内燃機関10に供給するための装置である。冷却媒体供給装置131として、例えばポンプ等を用いることができる。ヘッド用冷却媒体通路132は、シリンダヘッド13の内部に形成された冷却媒体通路である。ヘッド用冷却媒体通路132を冷却媒体が通過することで、シリンダヘッド13は冷却媒体によって冷却される。すなわち、ヘッド用冷却媒体通路132は、シリンダヘッド13を冷却する冷却媒体が流通するための冷却媒体通路である。ライナ用冷却媒体通路133は、シリンダライナ12の周囲に形成された冷却媒体通路である。ライナ用冷却媒体通路133を冷却媒体が通過することで、シリンダライナ12は冷却媒体によって冷却される。すなわち、ライナ用冷却媒体通路133は、シリンダライナ12を冷却する冷却媒体が流通する冷却媒体通路である。
【0037】
第1冷却媒体循環通路134は、冷却媒体が冷却媒体供給装置131とヘッド用冷却媒体通路132との間を循環するための循環通路である。第2冷却媒体循環通路135は、冷却媒体が冷却媒体供給装置131とライナ用冷却媒体通路133との間を循環するための循環通路である。
【0038】
なお、図3において第1冷却媒体循環通路134におけるヘッド用冷却媒体通路132の冷却媒体用出口(OUT)と冷却媒体供給装置131との間の部分と、第2冷却媒体循環通路135におけるライナ用冷却媒体通路133の冷却媒体用出口(OUT)と冷却媒体供給装置131との間の部分と、は合流している。但し、第1冷却媒体循環通路134および第2冷却媒体循環通路135の構造は、これに限定されるものではない。第1冷却媒体循環通路134におけるヘッド用冷却媒体通路132の冷却媒体用出口(OUT)と冷却媒体供給装置131との間の部分と、第2冷却媒体循環通路135におけるライナ用冷却媒体通路133の冷却媒体用出口(OUT)と冷却媒体供給装置131との間の部分と、は互いに分離していてもよい。
【0039】
流量調整弁136は、制御部124に制御されて、第1冷却媒体循環通路134における流量を調整するための弁である。本実施例において流量調整弁136は、第1冷却媒体循環通路134におけるヘッド用冷却媒体通路132の冷却媒体用入口(IN)と冷却媒体供給装置131との間の部分に配置されている。但し、流量調整弁136の配置箇所はこれに限定されるものではない。例えば流量調整弁136は、第1冷却媒体循環通路134におけるヘッド用冷却媒体通路132の冷却媒体用出口(OUT)と冷却媒体供給装置131との間の部分(図3においては、さらに第1冷却媒体循環通路134と第2冷却媒体循環通路135とが合流していない部分)に配置されていてもよい。
【0040】
制御部124は、例えば内燃機関10の負荷に応じて流量調整弁136を制御することで、第1冷却媒体循環通路134の流量を第2冷却媒体循環通路135の流量よりも小さく制御する。この場合、ヘッド用冷却媒体通路132における冷却媒体の流量もライナ用冷却媒体通路133における冷却媒体の流量よりも小さく制御される。
【0041】
冷却構造130によれば、ライナ用冷却媒体通路133を流通する冷却媒体によってシリンダライナ12の冷却を確保することができる。また、ヘッド用冷却媒体通路132を流通する冷却媒体の流量が、ライナ用冷却媒体通路133を流通する冷却媒体の流量よりも小さく制御されることから、このような冷却構造130を有さない場合に比較して、シリンダヘッド13における冷却媒体の冷却損失の発生が低く抑えられている。また、シリンダライナ12における冷却媒体の冷却損失に比較して、シリンダヘッド13における冷却媒体の冷却損失が低く抑えられている。すなわち、シリンダヘッド13における冷却損失の発生が抑制されている。以上のように冷却構造130は、シリンダライナ12の冷却を確保しつつシリンダヘッド13における冷却損失の発生を抑制可能な構造となっている。
【0042】
なお内燃機関10は、冷却構造130に代えてまたは冷却構造130とともに、断熱部材を有する構造を備えていてもよい。具体的には、内燃機関10は、シリンダヘッド13を燃焼室17から断熱する断熱部材を備えた構造を有していてもよい。この構造の一例として、シリンダヘッド13の燃焼室17に露出した部分に断熱部材を配置する構造を用いることができる。断熱部材としては、例えば、シリンダヘッド13を構成する材料である金属よりも熱伝導率の小さい部材を用いることができる。この場合、断熱部材によって燃焼室17からシリンダヘッド13への熱伝導を抑制することができる。それにより、シリンダヘッド13の冷却を確保しつつシリンダヘッド13が燃焼室17から断熱された構造が得られる。この場合においても、シリンダヘッド13が燃焼室17から断熱されることで、シリンダヘッド13における冷却損失の発生が抑制されている。
【0043】
あるいは内燃機関10は、上記断熱部材を有する構造に代えてまたは上記断熱部材を有する構造とともに、シリンダヘッド13をシリンダライナ12から断熱する断熱部材を備える構造を有していてもよい。この構造として、例えばシリンダヘッド13のシリンダライナ12側の界面に断熱部材を配置する構造を用いることができる。この場合、シリンダライナ12からシリンダヘッド13への熱伝導が抑制されることで、シリンダヘッド13がシリンダライナ12から断熱された構造が得られる。この場合においても、シリンダヘッド13がシリンダライナ12から断熱されることで、シリンダヘッド13における冷却損失の発生が抑制されている。
【0044】
上述したように内燃機関10がシリンダライナ12の冷却を確保しつつシリンダヘッド13における冷却損失の発生を抑制可能な構造を有することで、以下の効果が得られる。図4(a)〜(c)は、シリンダライナ12の冷却を確保しつつシリンダヘッド13における冷却損失の発生を抑制可能な構造による効果を説明するための図である。まず、図4(a)に示すように、内燃機関10の正味仕事に用いられない損失として、ポンプ損失、排気損失、冷却損失、機械損失がある。これらの損失のうち冷却損失が占めるウエイトは大きい。そのため、冷却損失の低減は内燃機関10の燃費改善に効果的である。
【0045】
図4(c)に示すように、冷却損失の低減のためには、空気を断熱することが効果的である。しかしながら、例えばシリンダライナ12の燃焼室17側の壁面に断熱部材を配置する、ピストン14の冠面とシリンダライナ12との間に断熱部材を配置する等の方法でシリンダライナ12が燃焼室17から断熱された場合、図4(b)に示すように、シリンダライナ12の温度が上昇して燃焼室17内の混合気が加熱されてしまい、ノッキングが生じる可能性が高くなる。
【0046】
これに対して本実施例のようにシリンダライナ12の冷却を確保しつつシリンダヘッド13における冷却損失の発生を抑制可能な構造の場合、シリンダライナ12の冷却が確保されていることから、シリンダライナ12の温度の上昇が抑制されている。それにより、燃焼室17内の混合気の加熱が抑制され、ノッキングの発生を抑制することができる。
【0047】
このように内燃機関10がシリンダライナ12の冷却を確保しつつシリンダヘッド13における冷却損失の発生を抑制可能な構造を有することで、シリンダヘッド13における冷却損失の発生を抑制しつつノッキングの発生を抑制することができる。しかしながら、燃費向上のためにはさらなる内燃機関10の冷却損失の低減を図ることが好ましい。そこで、本実施例に係る制御装置120は、以下に説明する制御を行うことで、内燃機関10の冷却損失のさらなる低減を図っている。
【0048】
続いて制御装置120の制御の詳細を説明する。本実施例に係る制御装置120の制御部124は、内燃機関10に対して要求される出力に応じて、膨張行程にあるシリンダ11に配置されたピストン14のクランク角が所定の角度のときにクランク軸15の回転速度が加速状態または減速状態になるようにモータ30を制御している。
【0049】
図5(a)〜図5(d)は、制御部124による制御で用いられる所定の角度を説明するための図である。図5(c)および図5(d)において横軸は、膨張行程におけるクランク角である。図5(c)において縦軸は、膨張行程において燃焼室17に占めるシリンダヘッド13、ピストン14およびシリンダライナ12の表面積の割合を示している。図5(d)において縦軸は温度を示している。図5(a)は図5(d)においてクランク角がA°のときにおける内燃機関10の状態を示す断面図である。図5(b)は図5(d)においてクランク角がB°のときにおける内燃機関10の状態を示す断面図である。
【0050】
図5(c)から分るように、膨張行程において燃焼室17に占めるシリンダヘッド13、ピストン14およびシリンダライナ12の表面積の割合はクランク角の変化とともに変化する。これは、膨張行程においてクランク角の変化とともにピストン14の位置が変化することに起因している。特に膨張行程の後半においてシリンダライナ12の燃焼室17に占める表面積の割合は、燃焼室17に占めるシリンダヘッド13の表面積の割合よりも大きくなっている。
【0051】
本実施例において、制御部124の制御で用いられるクランク角の所定の角度とは、燃焼室17に占めるシリンダライナ12の表面積の割合が燃焼室17に占めるシリンダヘッド13の表面積の割合よりも大きい角度をいう。この所定の角度の一例として、本実施例においては、シリンダ11の吸気行程の開始のクランク角を−360°とし、排気行程の開始のクランク角を360°とした場合、45°〜135°を用いる。
【0052】
なお、図5(d)から分るように膨張行程において、燃焼室17内の混合気の温度(Tgas)は、クランク角A°までは上昇し、A°を超えたときに減少に転じている。シリンダライナ12の温度(Twall)は、一定である。図5(d)から、膨張行程においてシリンダライナ12の温度は、混合気の温度よりも低温になっていることがわかる。これは、本実施例に係る内燃機関10においてシリンダライナ12の冷却が確保されていることによるものである。
【0053】
制御部124は、内燃機関10に対して要求される出力に応じて、膨張行程にあるシリンダ11に配置されたピストン14のクランク角が所定の角度、すなわち燃焼室17に占めるシリンダライナ12の表面積の割合が燃焼室17に占めるシリンダヘッド13の表面積の割合よりも大きい角度のときに、クランク軸15の回転速度が加速状態または減速状態になるようにモータ30を制御する。
【0054】
このモータ30の制御が行われることで、膨張行程にあるシリンダ11に配置されたピストン14のクランク角が所定の角度のときにクランク軸15の回転速度が加速状態になるように制御された場合、燃焼室17からシリンダライナ12へ伝わる熱量を減少させることができる。それにより、シリンダライナ12における冷却損失の低減を図ることができる。一方、膨張行程にあるシリンダ11に配置されたピストン14のクランク角が所定の角度のときにクランク軸15の回転速度が減速状態になるように制御された場合、燃焼室17からシリンダライナ12へ伝わる熱量を上昇させることができる。その結果、燃焼室17からシリンダヘッド13へ伝わる熱量は減少する。それにより、シリンダヘッド13の温度上昇が抑制されることから、シリンダヘッド13における冷却損失を低減することができる。以上のように、制御部124が内燃機関10に対して要求される出力に応じて上記制御を行うことで、内燃機関10の冷却損失を低減することができる。
【0055】
なお、本実施例に係る制御部124は、上述したクランク軸15の回転速度の加速状態および減速状態を、内燃機関10に対して要求される出力が所定出力以下か否かによって選択的に行っている。具体的には、制御部124は、内燃機関10に対して要求される出力が所定出力以下の場合に膨張行程にあるシリンダ11に配置されたピストン14のクランク角が所定の角度のときにクランク軸15の回転速度が加速状態になるようにモータ30を制御する。また、制御部124は、内燃機関10に対して要求される出力が所定出力より大きい場合に膨張行程にあるシリンダ11に配置されたピストン14のクランク角が所定の角度のときにクランク軸15の回転速度が減速状態になるようにモータ30を制御する。
【0056】
さらに制御部124は、内燃機関10に対して要求される出力が所定出力以下の場合において、膨張行程にあるシリンダ11に配置されたピストン14のクランク軸15の回転速度が加速状態になるようにモータ30を制御した後に、さらに一つ以上のシリンダ11のうちいずれかのシリンダ11に配置されたピストン14が圧縮上死点にある場合に、クランク軸15の回転速度が減速状態になるようにモータ30を制御する。この制御により、内燃機関10に対して要求される出力が所定出力以下の場合においてクランク軸15の回転速度の平均値を一定にすることができる。
【0057】
さらに、制御部124は、内燃機関10に対して要求される出力が所定出力より大きい場合において、膨張行程にあるシリンダ11に配置されたピストン14のクランク軸15の回転速度が減速状態になるようにモータ30を制御した後に、一つ以上のシリンダ11のうちいずれかのシリンダ11に配置されたピストン14が圧縮上死点にある場合に、クランク軸15の回転速度が加速状態になるようにモータ30を制御する。この制御により、内燃機関10に対して要求される出力が所定出力より大きい場合においてクランク軸15の回転速度の平均値を一定にすることができる。
【0058】
図6は、内燃機関10に対して要求される出力が所定出力以下の場合に制御部124が行う制御の内容を詳細に説明するための図である。図6のグラフにおいて横軸はクランク角を示し、縦軸はクランク軸15の回転速度を示している。基準線より上側が加速状態を示し、基準線より下側が減速状態を示している。#1〜#4のシリンダ11は、それぞれ吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程をこの順に行っている。
【0059】
なお、#1のシリンダ11が吸気行程のとき、#2のシリンダ11は圧縮行程であり、#3のシリンダ11は排気行程であり、#4のシリンダ11は膨張行程である。また、#1のシリンダ11に配置されたピストン14の圧縮上死点(TDC)は0°であり、#2のシリンダ11に配置されたピストン14の圧縮上死点は−180°であり、#3のシリンダ11に配置されたピストン14の圧縮上死点は180°であり、#4のシリンダ11に配置されたピストン14の圧縮上死点は360°である。
【0060】
本実施例において、#1のシリンダ11におけるクランク角の所定の角度(燃焼室17に占めるシリンダライナ12の表面積の割合が燃焼室17に占めるシリンダヘッド13の表面積の割合よりも大きい角度)は、45°〜135°である。#2のシリンダ11における所定の角度は、−135°〜−45°である。#3のシリンダ11における所定の角度は、225°〜315°である。#4のシリンダ11における所定の角度は、−315°〜−225°である。
【0061】
制御装置120の記憶部125は、これら所定の角度を記憶しておく。また記憶部125は圧縮上死点も記憶しておく。制御部124は、内燃機関10に対して要求される出力が所定出力以下の場合、クランク角センサ110の検出結果に基づいて記憶部125に記憶された所定の角度および圧縮上死点を参照することで、膨張行程にあるシリンダ11に配置されたピストン14のクランク角が所定の角度のときにクランク軸15の回転速度が加速状態になるようにモータ30を制御し、且つクランク軸15の回転速度が加速状態になるようにモータ30を制御した後に複数のシリンダ11のうちいずれかのシリンダ11に配置されたピストン14が圧縮上死点にある場合に、クランク軸15の回転速度が減速状態になるようにモータ30を制御している(以下、この内燃機関10に要求される出力が所定出力以下の場合に行われる制御を「第1の制御」と称する)。
【0062】
第1の制御が行われることで、本実施例に係る内燃機関10においては、図6のグラフのように、クランク角が所定の角度(45°〜135°、225°〜315°、−315°〜−225°および−135°〜−45°)のとき、クランク軸15の回転速度は加速状態になり、クランク角が所定の角度以外の角度のとき、クランク軸15の回転速度は減速状態になっている。
【0063】
図7は、内燃機関10に対して要求される出力が所定出力より大きい場合に制御部124が行う制御の内容を詳細に説明するための図である。図7のグラフにおいて横軸はクランク角を示し、縦軸はクランク軸15の回転速度を示している。基準線より上側が加速状態を示し、基準線より下側が減速状態を示している。
【0064】
制御部124は、内燃機関10に対して要求される出力が所定出力より大きい場合、クランク角センサ110の検出結果に基づいて記憶部125に記憶された所定の角度および圧縮上死点を参照することで、膨張行程にあるシリンダ11に配置されたピストン14のクランク角が所定の角度にあるときにクランク軸15の回転速度が減速状態になるようにモータ30を制御し、且つクランク軸15の回転速度が減速状態になるようにモータ30を制御した後に複数のシリンダ11のうちいずれかのシリンダ11に配置されたピストン14が圧縮上死点にある場合に、クランク軸15の回転速度が加速状態になるようにモータ30を制御している(以下、この内燃機関10に要求される出力が所定出力より大きい場合に行われる制御を「第2の制御」と称する)。
【0065】
第2の制御が行われることで、本実施例に係る内燃機関10においては、図7のグラフのように、クランク角が所定の角度(45°〜135°、225°〜315°、−315°〜−225°および−135°〜−45°)のとき、クランク軸15の回転速度は減速状態になり、クランク角が所定の角度以外の角度のとき、クランク軸15の回転速度は加速状態になっている。
【0066】
図8は制御部124のフローチャートの一例を示す図である。制御部124は図8のフローチャートを所定の周期で繰り返し実行する。まず制御部124は、電圧検出センサ111の検出結果に基づいてバッテリ60の残量が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS10)。本実施例においては、バッテリ60の残量が閾値以上の場合に第1の制御または第2の制御が行われる。そのため閾値としては、モータ30が第1の制御および第2の制御を行うのに必要な量の電圧をバッテリ60が供給できると判定できるバッテリ60の残量を用いることができる。この閾値は記憶部125が記憶しておく。ステップS10においてバッテリ60の残量が閾値以上であると判定されなかった場合、制御部124はフローチャートの実行を終了する。
【0067】
ステップS10においてバッテリ60の残量が閾値以上であると判定された場合、制御部124は、内燃機関10に対して要求される出力(出力要求)が所定出力以下であるか否かを判定する(ステップS20)。本実施例に係る制御部124は、一例として、アクセル開度センサ112の検出結果に基づいて内燃機関10に対して要求される出力が所定出力以下であるか否かを判定する。制御部124は、アクセル開度センサ112によって検出されたアクセル開度に基づいて、アクセル開度の単位時間当たりの変化率を取得し、この変化率が所定値以上の場合に、内燃機関10に要求される出力が所定出力以下であると判定する。ステップS20の判定規準となる所定値は、記憶部125が記憶しておく。
【0068】
ステップS20において内燃機関10に対して要求される出力が所定出力以下であると判定された場合、制御部124は第1の制御を実行する(ステップS30)。次いで制御部124はフローチャートの実行を終了する。
【0069】
ステップS20において内燃機関10に対して要求される出力が所定出力以下であると判定されなかった場合、制御部124は第2の制御を実行する(ステップS40)。次いで制御部124はフローチャートの実行を終了する。
【0070】
以上のように、本実施例に係る内燃機関10の制御装置120によれば、内燃機関10がシリンダライナ12の冷却を確保しつつシリンダヘッド13における冷却損失の発生が抑制可能な構造を有していることから、ノッキングの発生が抑制されている。さらに制御装置120によれば、制御部124が内燃機関10に対して要求される出力に応じて、膨張行程にあるシリンダ11に配置されたピストン14のクランク角が所定の角度(燃焼室17に占めるシリンダライナ12の表面積の割合が燃焼室17に占めるシリンダヘッド13の表面積の割合よりも大きい角度)のときにクランク軸15の回転速度が加速状態または減速状態になるようにモータ30を制御していることから、内燃機関10の冷却損失を低減させることができる。したがって、本実施例に係る制御装置120によれば、ノッキングの発生を抑制しつつ内燃機関10の冷却損失の低減を図ることができる。
【0071】
また制御装置120によれば、内燃機関10に対して要求される出力が所定出力以下の場合に第1の制御が行われることで、クランク軸15の回転速度の平均値を一定にしつつ、シリンダライナ12における冷却損失の低減を図ることができる。また、内燃機関10に対して要求される出力が所定出力より大きい場合に第2の制御が行われることで、クランク軸15の回転速度の平均値を一定にしつつ、シリンダヘッド13の温度上昇を抑制してシリンダヘッド13における冷却損失を低減することができる。
【0072】
仮に、シリンダヘッド13における冷却損失の発生が抑制されているにもかかわらず内燃機関10に対して要求される出力が所定出力より大きい場合に第2の制御が行われない場合には、シリンダヘッド13が高温になり過ぎるおそれがある。これに対して本実施例に係る制御装置120によれば、シリンダヘッド13における冷却損失の発生が抑制されている内燃機関10において、内燃機関10に対して要求される出力が所定出力より大きい場合に第2の制御が行われることから、燃焼室17からシリンダライナ12へ伝わる熱量を上昇させて、燃焼室17からシリンダヘッド13へ伝わる熱量を減少させることができる。それにより、シリンダヘッド13が高温になり過ぎることが抑制されている。
【0073】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
5 車両
10 内燃機関
11 シリンダ
12 シリンダライナ
13 シリンダヘッド
14 ピストン
15 クランク軸
17 燃焼室
30 モータ
110 クランク角センサ
111 電圧検出センサ
112 アクセル開度センサ
120 制御装置
124 制御部
125 記憶部
130 冷却構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上のシリンダを有し且つシリンダライナの冷却を確保しつつシリンダヘッドにおける冷却損失の発生を抑制可能な構造を有する火花点火式の内燃機関のクランク軸の回転速度を加速状態と減速状態との間で変更可能な回転速度変更手段を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記内燃機関に対して要求される出力に応じて、膨張行程にある前記シリンダに配置されたピストンのクランク角が所定の角度のときに前記クランク軸の前記回転速度が前記加速状態または前記減速状態になるように前記回転速度変更手段を制御し、
前記所定の角度は、前記シリンダに形成された燃焼室に占めるシリンダライナの表面積の割合が前記燃焼室に占める前記シリンダヘッドの表面積の割合よりも大きい角度であることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記出力が所定出力以下の場合に前記膨張行程にある前記シリンダに配置された前記ピストンの前記クランク角が前記所定の角度のときに前記クランク軸の前記回転速度が前記加速状態になるように前記回転速度変更手段を制御し、前記出力が前記所定出力より大きい場合に前記膨張行程にある前記シリンダに配置された前記ピストンの前記クランク角が前記所定の角度のときに前記クランク軸の前記回転速度が前記減速状態になるように前記回転速度変更手段を制御する請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記膨張行程にある前記シリンダに配置された前記ピストンの前記クランク軸の前記回転速度が前記加速状態になるように前記回転速度変更手段を制御した後に、さらに一つ以上の前記シリンダのうちいずれかの前記シリンダに配置された前記ピストンが圧縮上死点にある場合に前記クランク軸の前記回転速度が前記減速状態になるように前記回転速度変更手段を制御する請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記膨張行程にある前記シリンダに配置された前記ピストンの前記クランク軸の前記回転速度が前記減速状態になるように前記回転速度変更手段を制御した後に、さらに一つ以上の前記シリンダのうちいずれかの前記シリンダに配置された前記ピストンが前記圧縮上死点にある場合に前記クランク軸の前記回転速度が前記加速状態になるように前記回転速度変更手段を制御する請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関は、前記クランク軸に動力分割機構を介して接続されたモータを備えるハイブリッド車両に搭載され、
前記回転速度変更手段は前記モータである請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記内燃機関は、吸気行程、圧縮行程、前記膨張行程および排気行程をこの順に行う4サイクル機関であり、
前記吸気行程の開始の前記クランク角を−360°とし、前記排気行程の終了の前記クランク角を360°とした場合、前記所定の角度は45°〜135°である請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記シリンダライナの冷却を確保しつつ前記シリンダヘッドにおける前記冷却損失の発生を抑制可能な前記構造は、前記シリンダヘッドを冷却する冷却媒体が流通する冷却媒体通路における該冷却媒体の流量を、前記シリンダライナを冷却する冷却媒体が流通する冷却媒体通路における該冷却媒体の流量よりも小さくする構造である請求項1〜6のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−210838(P2012−210838A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76578(P2011−76578)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】