内燃機関の制御装置
【課題】触媒の硫黄被毒状態を解除するために電気加熱手段に供給する電力の量をより適切に制御することによって、燃費の悪化及び/又はバッテリ残量の低下を回避し得る内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】触媒43の硫黄被毒状態を解除するべき状態となったとき、電気加熱ヒータ44に通電することによって触媒の温度を第1温度TempLo以上に制御する。触媒の温度が第1温度TempLo以上である場合、排ガスの空燃比がリーン空燃比であれば(触媒流入ガスに酸素が含まれていれば)、触媒の貴金属に吸着された硫黄成分は貴金属から脱離する。このような制御(硫黄脱離促進制御)を実行しているとき、機関10がフューエルカット運転状態になると、触媒に大量の酸素が流入するので、硫黄被毒状態は解消する。従って、制御装置は電気加熱ヒータ44への通電を停止することにより、硫黄脱離促進制御を終了する。
【解決手段】触媒43の硫黄被毒状態を解除するべき状態となったとき、電気加熱ヒータ44に通電することによって触媒の温度を第1温度TempLo以上に制御する。触媒の温度が第1温度TempLo以上である場合、排ガスの空燃比がリーン空燃比であれば(触媒流入ガスに酸素が含まれていれば)、触媒の貴金属に吸着された硫黄成分は貴金属から脱離する。このような制御(硫黄脱離促進制御)を実行しているとき、機関10がフューエルカット運転状態になると、触媒に大量の酸素が流入するので、硫黄被毒状態は解消する。従って、制御装置は電気加熱ヒータ44への通電を停止することにより、硫黄脱離促進制御を終了する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気通路に触媒を備える内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関の排気通路に配設された触媒(三元触媒)が担持する貴金属に燃料に含まれる硫黄(S)成分が付着し、触媒の機能が低下することが知られている。硫黄成分の貴金属への付着により触媒の機能が低下した状態は「硫黄被毒状態」とも称呼される。硫黄被毒状態が発生すると触媒の浄化能力が低下するので、エミッションが悪化する場合がある。
【0003】
そこで、従来の装置の一つは、電気加熱手段に通電して触媒の温度を所定温度以上にまで上昇させ、以って、触媒の硫黄被毒状態を解除(触媒の貴金属に付着した硫黄成分を除去)するようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2785707号明細書
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、上記従来技術は、触媒が硫黄被毒状態にある場合に電気加熱手段に通電を行うにあたり、触媒の温度をどのような温度にするのか、或いは、どのような場合に通電を停止してよいのか、について詳細に検討していない。従って、電気加熱手段に供給する電力が無駄に消費される場合が生じ、そのために、燃費が悪化したり或いはバッテリ残量が過度に低下したりする問題がある。
【0006】
本発明は上記課題に対処するために為されたものであって、その目的の一つは、触媒の硫黄被毒状態を解除するために電気加熱手段に供給する電力の量をより適切に制御することによって、「燃費の悪化及び/又はバッテリ残量の低下」を回避し得る内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0007】
本発明は、次に述べる知見(推定)の少なくとも一つを利用している。なお、以下において、理論空燃比よりもリッチな空燃比(理論空燃比よりも小さい空燃比)を単に「リッチ空燃比」とも称呼し、理論空燃比よりもリーンな空燃比(理論空燃比よりも大きい空燃比)を単に「リーン空燃比」とも称呼する。更に、触媒に流入する排ガスを「触媒流入ガス」とも称呼し、触媒から流出する排ガスを「触媒流出ガス」とも称呼する。
【0008】
「知見1」
触媒の温度(触媒床温)が比較的低温の第1温度(例えば、500℃)以下であるとき、硫黄Sは硫黄酸化物SOx(例えば、SO4)となって触媒に吸着する。硫黄(硫黄酸化物)は、触媒の貴金属にも吸着されるが、面積の大きい「触媒の貴金属を担持している担体又は担体のコート材(以下、「担体」と総称する。)」に多く吸着される。
【0009】
「知見2」
触媒の温度が第1温度よりも若干上昇した場合(例えば、触媒の温度が600℃程度である場合)、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比であると、担体に吸着されているSOxは担体から脱離し、その一部が触媒の貴金属に吸着される。
【0010】
「知見3」
触媒の貴金属に付着したSOxは、第1温度よりも僅かに高い温度領域において、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比である場合、硫黄Sに変化して貴金属に蓄積される。
【0011】
「知見4」
触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sは、触媒の温度が第1温度(例えば、500℃)以上である場合、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比であるときに二酸化硫黄SO2へと変化して貴金属から脱離する。このとき、リーン空燃比が「よりリーン側の空燃比(より大きい空燃比)」であるほど、即ち、排ガス中に「より多くの酸素(酸化剤)」が含まれているほど、硫黄は「より短い時間」にて貴金属から脱離する。
【0012】
「知見5」
触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sは、触媒の温度が「第1温度よりも高い第2温度(例えば、700℃)」以上である場合、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比であるときに硫化水素H2Sへと変化して貴金属から脱離する。このとき、リッチ空燃比が「よりリッチ側の空燃比(より小さい空燃比)」であるほど、即ち、排ガス中に「より多くの還元剤」が含まれているほど、硫黄は「より短い時間」にて貴金属から脱離する。なお、「知見4」にて述べたように、触媒の温度が第2温度以上であれば、触媒の温度は第1温度以上であるから、触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sは触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比であるときに二酸化硫黄SO2へと変化して貴金属から脱離する。即ち、触媒の温度が第2温度以上である場合、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比であるかリッチ空燃比であるかに関わらず、触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sは貴金属から脱離する。
【0013】
本発明による内燃機関の制御装置(以下、単に「本発明装置」とも称呼する。)は、内燃機関の排気通路に配設された触媒と、前記触媒を電気的に加熱する電気加熱手段と、前記機関に燃料を供給する燃料供給手段と、所定のフューエルカット条件が成立しているとき前記燃料の供給を停止するフューエルカット手段と、要求発生手段と、電力制御手段と、を備える。
【0014】
前記要求発生手段は、前記触媒の硫黄被毒状態を解除するべき状態となったときに硫黄被毒解除要求を発生するようになっている。即ち、前記要求発生手段は、機関の運転パラメータに基いて前記触媒の貴金属に硫黄が所定量以上蓄積したか否かを判定し、前記触媒の貴金属に硫黄が所定量以上蓄積したと判定したとき前記硫黄被毒解除要求を発生する。換言すると、前記要求発生手段は、前記触媒に蓄積される硫黄の量が大きいほど大きくなるパラメータを推定するとともに前記推定されたパラメータが所定の閾値以上となったときに硫黄被毒解除要求を発生するように構成されることができる。例えば、前記要求発生手段は、上記「知見1」に基き、触媒の温度が第1温度以下である状態における「機関の吸入空気量の積算値又は機関の運転時間の総和」を前記パラメータとして算出し、そのパラメータが閾値よりも大きくなった場合に前記触媒の硫黄被毒状態を解除するべき状態となったと判定し、前記硫黄被毒解除要求を発生するように構成され得る。
【0015】
前記電力制御手段は、前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記触媒の温度が第1温度以上となるように、前記電気加熱手段に電力を供給する。前記第1温度は、「前記触媒に流入する排ガスの空燃比(触媒流入ガスの空燃比)が理論空燃比よりもリーンな空燃比(リーン空燃比)であるときに前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度のうちの最小値」である。
【0016】
上記構成によれば、硫黄被毒解除要求が発生した場合、電気加熱手段により触媒の温度が第1温度以上にまで上昇させられる。従って、上記「知見4」に記載したように、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比であるとき、触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sは貴金属から脱離する。更に、触媒の温度が第2温度以上にまで上昇していれば、上記「知見5」に記載したように、触媒流入ガスの空燃比に関わらず、触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sは貴金属から脱離する。
【0017】
ところで、フューエルカット手段による燃料供給の停止状態(フューエルカット運転中)は、空燃比が非常に大きい排ガスが触媒に流入している状態であると言うことができる。換言すると、フューエルカット運転中においては、多量の酸素が触媒に供給される。従って、上記「知見4」に記載したように、電気加熱手段により触媒の温度が第1温度以上にまで上昇させられているときにフューエルカット手段によって前記燃料の供給が停止されると、触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sは極めて短時間にて貴金属から脱離し、硫黄被毒状態は解除される(消滅する)。
【0018】
そこで、前記電力制御手段は、前記電気加熱手段への前記電力の供給中に前記フューエルカット手段によって前記燃料の供給が停止された場合、前記電気加熱手段への電力の供給を停止する。
【0019】
これによれば、燃料の供給停止(フューエルカット)により触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sが貴金属から除去された後の期間において、電気加熱手段に無駄な電力が供給され続けることを回避することができる。この結果、「燃費の悪化及び/又はバッテリ残量の低下」を回避することができる。
【0020】
本発明装置の一態様において、
前記電力制御手段は、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記触媒の温度が、前記第2温度(前記触媒に流入する排ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度であって且つ前記第1温度よりも高い温度)以上となるように前記電気加熱手段に電力を供給するように構成される。
【0021】
これによれば、上記「知見5」に記載したように、触媒流入ガスの空燃比に関わらず、触媒の硫黄被毒状態を解除することができるので、触媒流入ガスの空燃比をエミッションを良好にするために適切な空燃比に制御しながら、且つ、短時間にて、触媒の硫黄被毒状態を解除することができる。更に、触媒の温度を第2温度以上に維持するためには、電気加熱手段に大きい電力を供給しなければならないので、フューエルカット手段により燃料供給が停止された場合に電気加熱手段への電力供給を停止する本発明装置は、無駄な電力の消費を一層効果的に回避することができる。
【0022】
ところで、上記「知見4」に記載したように、触媒の温度が第1温度以上であり且つ第2温度以下である場合、触媒流入ガスの空燃比が「よりリーン側の空燃比」であるほど、硫黄は「より短い時間」にて貴金属から脱離する。しかしながら、燃焼ガス(排ガス)の空燃比がリーン空燃比であるとしても、その空燃比の大きさは「エミッション上問題とならない空燃比」であり且つ「機関に失火が生じない範囲の空燃比」である。
【0023】
従って、機関に供給される混合気の空燃比をできるだけリーン側の空燃比(大きい空燃比)に設定したとしても、燃焼ガスである排ガスに含まれる酸素の濃度は、燃料供給の停止時に触媒流入ガスに含まれる酸素の濃度に比較した場合、「硫黄を極めて短時間にて貴金属から脱離させることが可能な大きさ」にはなり難い。従って、燃料供給が停止されていない場合において、「排ガスの空燃比がリッチ空燃比となっている時間」に比較して「排ガスの空燃比がリーン空燃比となっている時間」を「エミッションを悪化させない範囲において」長くした方が、触媒の硫黄被毒状態を解除するのに必要な時間(即ち、触媒の温度を第1温度以上に維持しなければならない時間)を結果的に短くすることができ、その結果、電気加熱手段に供給される電力を有効に使用することができる。
【0024】
そこで、本発明装置の他の態様において、
前記電力制御手段は、
前記触媒の温度が、前記第1温度と、前記触媒に流入する排ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度であって且つ前記第1温度よりも高い温度である第2温度と、の間の温度となるように前記電力の供給を行い、
前記燃料供給手段は、
前記硫黄被毒解除要求が発生していない場合、前記排ガスの空燃比を、理論空燃比よりも第1値だけ大きいリーンな空燃比と、理論空燃比よりも第2値だけ小さいリッチな空燃比と、に時間的に交互に変更させることにより、前記排ガスの空燃比の平均が触媒43のウインドウの範囲内の所定の空燃比(例えば、理論空燃比)となるように前記機関に供給される燃料の量を制御し、且つ、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記排ガスの空燃比を、理論空燃比よりも「前記第1値よりも小さい第3値」だけ大きいリーンな空燃比と、理論空燃比よりも「前記第2値以上である第4値」だけ小さいリッチな空燃比と、に時間的に交互に変更させることにより、前記排ガスの空燃比の平均が前記触媒のウインドウの範囲内の所定の空燃比となるように前記機関に供給される燃料の量を制御する、
ように構成される。
【0025】
これによれば、硫黄被毒解除要求が発生して触媒の温度を第1温度以上で且つ第2温度未満に維持する場合、排ガスの空燃比がリーン空燃比である時間を「エミッションが極端に悪化しない範囲において」相対的に長くすることができる。従って、触媒の硫黄被毒状態を解除するために「触媒の温度を第1温度以上で且つ第2温度未満に維持しておく時間」を結果的に短くすることができるので、電気加熱手段に供給する電力の総量を低減することができる。
【0026】
同様な理由から、本発明装置の他の態様は、
前記触媒の下流の排気通路に配設された下流側空燃比センサを備え、
前記電力制御手段は、
前記触媒の温度が、前記第1温度と、前記触媒に流入する排ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度であって且つ前記第1温度よりも高い温度である第2温度と、の間の温度となるように前記電力の供給を行い、
前記燃料供給手段は、
前記硫黄被毒解除要求が発生していない場合、「前記下流側空燃比センサの出力値」と「第1下流側目標値(例えば、理論空燃比に相当する値)」との偏差をゼロにするための比例積分制御に従って前記下流側空燃比センサの出力値が前記第1下流側目標値に一致するように前記機関に供給される燃料の量をフィードバック制御し、且つ、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、「前記下流側空燃比センサの出力値」と「前記第1下流側目標値に対応する空燃比よりもリッチ側の空燃比に対応する第2下流側目標値」との偏差をゼロにするための比例積分制御に従って前記下流側空燃比センサの出力値が前記第2下流側目標値に一致するように前記機関に供給される燃料の量をフィードバック制御する、
ように構成される。
【0027】
なお、一般には、下流側空燃比センサは起電力式の酸素濃度センサであり、リッチ空燃比に対する下流側空燃比センサの出力値はリーン空燃比に対する下流側空燃比センサの出力値よりも大きいので、前記第2下流側目標値は前記第1下流側目標値よりも大きい値に設定される。
【0028】
これによれば、硫黄被毒解除要求が発生した場合、下流側空燃比センサの出力値を第2下流側目標値に維持しながら、「排ガスの空燃比がリーン空燃比に維持されている時間」を「排ガスの空燃比がリッチ空燃比に維持されている時間」よりも長くすることができる。換言すると、排ガスの空燃比がリーン空燃比である時間を「エミッションが極端に悪化しない範囲において」相対的に長くすることができる。従って、触媒の硫黄被毒状態を解除するために「触媒の温度を第1温度以上で且つ第2温度以下に維持しておく時間」を結果的に短くすることができるので、電気加熱手段に供給する電力の総量を低減することができる。なお、本明細書において、比例積分制御(PI制御)は比例積分微分制御(PID制御)を含む概念として使用される。
【0029】
ところで、機関が所謂「ハイブリッド車両(機関が電動モータと共に車両駆動力を発生するように構成された車両)」に搭載された場合、例えば、その車両の走行状態が「定常走行状態及び減速状態等」である期間、機関の運転は停止される。このとき、一般に、機関は回転しない。従って、このような運転状態においては、機関はポンピング動作を行わないので、機関から大気が排出されない。従って、大気が触媒に流入しないので、触媒の温度が第1温度以上であっても、触媒の硫黄被毒状態は解除され難い。
【0030】
そこで、前記機関が前記ハイブリッド車両に搭載されている場合、本発明装置の一態様は、前記硫黄被毒解除要求が発生している場合であって前記機関が前記車両駆動力の一部又は全部を発生する必要がない運転状態において、前記燃料供給手段による前記燃料の供給を停止させるとともに前記電動モータにより前記機関を強制的に回転させることにより前記触媒に前記機関を通して空気を供給する空気供給制御手段を備える。
【0031】
これによれば、硫黄被毒解除要求が発生している場合、触媒の温度が第1温度以上に維持され、且つ、触媒には「モータにより強制回転駆動された機関」から大気が送りこまれる。その結果、機関のみを動力源として備える通常の車両に同機関が搭載されている場合のフューエルカット運転時(燃料供給停止時)と同様、触媒の硫黄被毒状態を極めて短時間にて解除することができる。その結果、「触媒の温度を第1温度以上に維持しておく時間」を結果的に短くすることができるので、電気加熱手段に供給する電力の総量を低減することができる。
【0032】
この場合、前記電力制御手段は、前記空気供給制御手段により前記触媒に前記機関を通して前記空気が所定時間供給された場合に前記電気加熱手段への電力の供給を停止するように構成されることが好適である。
【0033】
前記空気供給制御手段により前記触媒に空気が供給された場合、硫黄被毒状態は短時間にて解除(消滅、解消)される。従って、上記構成によれば、前記空気供給制御手段により前記触媒に空気が供給されることにより触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sが貴金属から除去された後の期間において、電気加熱手段に無駄な電力が供給され続けることを回避することができる。この結果、「燃費の悪化及び/又はバッテリ残量の低下」を回避することができる。
【0034】
本発明装置の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明装置の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明の各実施形態に係る制御装置が適用される内燃機関の概略図である。
【図2】図2は、排ガスの空燃比と図1に示した上流側空燃比センサの出力値との関係を示したグラフである。
【図3】図3は、排ガスの空燃比と図1に示した下流側空燃比センサの出力値との関係を示したグラフである。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態に係る制御装置(第1制御装置)のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図5】図5は、第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図6】図6は、第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図7】図7は、第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図8】図8は、第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図9】図9は、第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図10】図10は、第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図11】図11は、第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図12】図12は、本発明の第2実施形態に係る制御装置(第2制御装置)のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図13】図13は、第2制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図14】図14は、第2制御装置の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図15】図15は、第2制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図16】図16は、本発明の第3実施形態に係る内燃機関の制御装置(第3制御装置)が適用される機関を搭載したハイブリッド車両の概略図である。
【図17】図17は、第3制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図18】図18は、第3制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図19】図19は、第3制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の各実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、単に「制御装置」とも称呼する。)について図面を参照しながら説明する。この制御装置は、内燃機関に供給される混合気の空燃比(機関の空燃比)を制御する空燃比制御装置(燃料噴射量制御装置)の一部でもあり、触媒の温度を調整する触媒温度制御装置、或いは、触媒の温度を調整するための電力量を制御する電力制御装置でもある。また、制御装置は、結果的にエミッションを良好にすることを目的とする装置であるので、内燃機関の排気浄化装置でもある。
【0037】
<第1実施形態>
(構成)
図1は、第1実施形態に係る制御装置(以下、「第1制御装置」とも称呼する。)を、4サイクル・火花点火式・多気筒(直列4気筒)・内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。
【0038】
内燃機関10は、機関本体部20と、吸気系統30と、排気系統40と、を含む。
【0039】
機関本体部20は、シリンダブロック部及びシリンダヘッド部を含む。機関本体部20は、複数の気筒(燃焼室)21を備えている。各気筒は、図示しない「吸気ポート及び排気ポート」と連通している。吸気ポートと燃焼室21との連通部は図示しない吸気弁により開閉される。排気ポートと燃焼室21との連通部は図示しない排気弁により開閉される。各燃焼室21には図示しない点火プラグが配設されている。点火プラグは、図示しない「イグナイタ及びイグニッションコイル」と接続されている。
【0040】
吸気系統30は、インテークマニホールド31、吸気管32、複数の燃料噴射弁33、及び、スロットル弁34を備えている。
【0041】
インテークマニホールド31は、複数の枝部31aとサージタンク31bとを備えている。複数の枝部31aのそれぞれの一端は、複数の吸気ポートのそれぞれに接続されている。複数の枝部31aの他端はサージタンク31bに接続されている。
【0042】
吸気管32の一端はサージタンク31bに接続されている。吸気管32の他端には図示しないエアフィルタが配設されている。
【0043】
燃料噴射弁33は、一つの気筒(燃焼室)21に対して一つずつ配設されている。燃料噴射弁33は吸気ポートに設けられている。即ち、複数の気筒のそれぞれは、他の気筒とは独立して燃料供給を行う燃料噴射弁33を備えている。燃料噴射弁33は、噴射指示信号に応答し、正常である場合に「その噴射指示信号に含まれる指示燃料噴射量の燃料」を吸気ポート(従って、燃料噴射弁33に対応する気筒)内に噴射するようになっている。
【0044】
より具体的に述べると、燃料噴射弁33は、指示燃料噴射量に応じた時間だけ開弁する。燃料噴射弁33に供給されている燃料の圧力は、その燃料の圧力と吸気ポート内の圧力との差圧が一定になるように図示しないプレッシャレギュレータにより制御されている。従って、燃料噴射弁33は指示燃料噴射量と等量の燃料を噴射する。
【0045】
スロットル弁34は、吸気管32内に回動可能に配設されている。スロットル弁34は、吸気通路の開口断面積を可変とするようになっている。スロットル弁34は、図示しないスロットル弁アクチュエータにより吸気管32内で回転駆動されるようになっている。
【0046】
排気系統40は、エキゾーストマニホールド41、エキゾーストパイプ42、エキゾーストパイプ42に配設された上流側触媒43、電気加熱ヒータ44、及び、上流側触媒43よりも下流においてエキゾーストパイプ42に配設された「図示しない下流側触媒」を備えている。
【0047】
エキゾーストマニホールド41は、複数の枝部41aと集合部41bとを備えている。複数の枝部41aのそれぞれの一端は、複数の排気ポートのそれぞれに接続されている。複数の枝部41aのそれぞれの他端は集合部41bに集合している。この集合部41bは、複数(2以上であり、本例では4つ)の気筒から排出された排ガスが集合する部分であるから、排気集合部HKとも称呼される。
【0048】
エキゾーストパイプ42は集合部41bに接続されている。排気ポート、エキゾーストマニホールド41及びエキゾーストパイプ42は、排気通路を構成している。
【0049】
上流側触媒43は、セラミックの一種であるコージェライトからなり且つアルミナのコート層によりコーティングされた担持体を備え、その担持体に「白金、ロジウム及びパラジウム等」の貴金属(触媒物質)からなる活性成分を担持する三元触媒装置(排気浄化用の触媒)である。各触媒は、各触媒に流入するガスの空燃比が「三元触媒のウインドウ内の空燃比(例えば、理論空燃比)」であるとき、HC,CO,H2などの未燃成分を酸化するとともに窒素酸化物(NOx)を還元する機能を有する。この機能は触媒機能とも称呼される。更に、各触媒は、酸素を吸蔵(貯蔵)する酸素吸蔵機能を有する。各触媒は、酸素吸蔵機能により空燃比が理論空燃比から偏移したとしても未燃成分及び窒素酸化物を浄化することができる。つまり、酸素吸蔵機能により、ウインドウの幅が拡大する。酸素吸蔵機能は、担持体に担持されているセリア(CeO2)等の酸素吸蔵材によってもたらされる。
【0050】
電気加熱ヒータ44は、電気加熱手段を構成する。電気加熱ヒータは通電されることにより(電力が供給されることにより)発熱し、上流側触媒43の温度(上流側触媒43の触媒床温)を上昇させるようになっている。以下、上流側触媒43の温度を単に「触媒の温度」とも称呼する。電気加熱ヒータ44の発熱量は、電気加熱ヒータ44に供給される電力(実際には電流)により制御されるようになっている。電気制御装置70は、電気加熱ヒータ44に供給される電力を調整・制御することにより、触媒43の温度を調整するようになっている。
【0051】
図示しない下流側触媒は、上流側触媒43と同様の三元触媒装置である。なお、本明細書において、「触媒」は特に断りのない限り上流側触媒43を指す。
【0052】
このシステムは、熱線式エアフローメータ51、スロットルポジションセンサ52、水温センサ53、クランクポジションセンサ54、インテークカムポジションセンサ55、上流側空燃比センサ56、下流側空燃比センサ57、アクセル開度センサ58、及び、バッテリ残量センサ59を備えている。
【0053】
エアフローメータ51は、吸気管32内を流れる吸入空気の質量流量(吸入空気流量)Gaに応じた信号を出力するようになっている。即ち、吸入空気量Gaは、単位時間あたりに機関10に吸入される吸入空気量を表す。
【0054】
スロットルポジションセンサ52は、スロットル弁34の開度(スロットル弁開度)を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
【0055】
水温センサ53は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。冷却水温THWは、機関10の暖機状態(機関10の温度)を表すパラメータである。
【0056】
クランクポジションセンサ54は、クランク軸が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに同クランク軸が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、後述する電気制御装置70によって機関回転速度NEに変換される。
【0057】
インテークカムポジションセンサ55は、インテークカムシャフトが所定角度から90度、次いで90度、更に180度回転する毎に一つのパルスを出力するようになっている。後述する電気制御装置70は、クランクポジションセンサ54及びインテークカムポジションセンサ55からの信号に基づいて、基準気筒(例えば第1気筒)の圧縮上死点を基準とした絶対クランク角度CAを取得するようになっている。この絶対クランク角度CAは、基準気筒の圧縮上死点において「0°クランク角度」に設定され、クランク軸の回転角度に応じて720°クランク角度まで増大し、その時点にて再び0°クランク角度に設定される。
【0058】
上流側空燃比センサ56は、エキゾーストマニホールド41の集合部41b(排気集合部HK)と上流側触媒43との間の位置において「エキゾーストマニホールド41及びエキゾーストパイプ42の何れか」に配設されている。上流側空燃比センサ56は、単に「空燃比センサ」とも称呼される。
【0059】
上流側空燃比センサ56は、例えば、特開平11−72473号公報、特開2000−65782号公報及び特開2004−69547号公報等に開示された「拡散抵抗層を備える限界電流式広域空燃比センサ」である。
【0060】
上流側空燃比センサ56は、図2に示したように、上流側空燃比センサ56の配設位置を流れる排ガスの空燃比(上流側空燃比abyfs)に応じた出力値Vabyfsを「空燃比センサ出力」として出力する。この出力値Vabyfsは、上流側空燃比センサ56に到達している排ガスの空燃比が大きくなるほど(リーンとなるほど)増大する。出力値Vabyfsは、上流側空燃比センサ56に到達している排ガスの空燃比が理論空燃比であるとき、理論空燃比相当値Vstoichに一致する。
【0061】
後述する電気制御装置70は、図2に示された関係を「空燃比変換テーブルMapabyfs(Vabyfs)」としてROM内に格納していて、実際の出力値Vabyfsを空燃比変換テーブルMapabyfs(Vabyfs)に適用することにより上流側空燃比abyfs(検出空燃比abyfs)を取得するようになっている。
【0062】
再び、図1を参照すると、下流側空燃比センサ57は、エキゾーストパイプ42内に配設されている。下流側空燃比センサ57の配設位置は、上流側触媒43よりも下流側であり、且つ、下流側触媒よりも上流側(即ち、上流側触媒43と下流側触媒との間の排気通路)である。下流側空燃比センサ57は、周知の起電力式の酸素濃度センサ(安定化ジルコニア等の固体電解質を用いた濃淡電池型の酸素濃度センサ)である。下流側空燃比センサ57は、排気通路であって下流側空燃比センサ57が配設されている部位を通過するガスである被検出ガスの空燃比(下流側空燃比)に応じた出力値Voxsを発生するようになっている。換言すると、出力値Voxsは、上流側触媒43から流出し且つ下流側触媒に流入するガスの空燃比(下流側空燃比afdown)に応じた値である。
【0063】
この出力値Voxsは、図3に示したように、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチのとき最大出力値max(例えば、約0.9V〜1.0V)となる。出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンのとき最小出力値min(例えば、約0.1V〜0V)となる。更に、出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比であるとき最大出力値maxと最小出力値minの略中間の電圧Vst(中間電圧Vst、理論空燃比相当電圧Vst、例えば、約0.5V)となる。出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比からリーンな空燃比へと変化する際に最大出力値maxから最小出力値minへと急変する。同様に、出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比からリッチな空燃比へと変化する際に最小出力値minから最大出力値maxへと急変する。
【0064】
図1に示したアクセル開度センサ58は、運転者によって操作されるアクセルペダルAPの操作量Accp(アクセルペダル操作量、アクセルペダルAPの開度)を表す信号を出力するようになっている。アクセルペダル操作量Accpは、アクセルペダルAPの操作量が大きくなるとともに大きくなる。
【0065】
バッテリ残量センサ59は、図示しない車両に搭載されたバッテリの残量を検出するようになっている。このバッテリから電気加熱ヒータ44に電力が供給される。バッテリ残量センサ59は、バッテリの電解液濃度を検出するセンサであってもよく、バッテリ電圧を検出するセンサであってもよい。
【0066】
電気制御装置70は、「CPU、CPUが実行するプログラム、ルックアップテーブル(マップ)、関数及び定数等を予め記憶したROM、CPUが必要に応じてデータを一時的に格納するRAM、バックアップRAM、並びに、ADコンバータを含むインターフェース等」からなる周知のマイクロコンピュータである。
【0067】
バックアップRAMは、機関10を搭載した車両の図示しないイグニッション・キー・スイッチの位置(オフ位置、始動位置及びオン位置等の何れか)に関わらず、車両に搭載されたバッテリから電力の供給を受けるようになっている。バックアップRAMは、バッテリから電力の供給を受けている場合、CPUの指示に応じてデータを格納する(データが書き込まれる)とともに、そのデータを読み出し可能となるように保持(記憶)する。従って、バックアップRAMは、機関10の運転停止中においてもデータを保持することができる。
【0068】
バックアップRAMは、バッテリが車両から取り外される等によりバッテリからの電力供給が遮断されると、データを保持することができない。そこで、CPUは、バックアップRAMへの電力供給が再開されたとき、バックアップRAMに保持されるべきデータを初期化(デフォルト値に設定)するようになっている。なお、バックアップRAMは、EEPROM等の読み書き可能な不揮発性メモリであってもよい。
【0069】
電気制御装置70は、上述したセンサ等と接続され、CPUにそれらのセンサからの信号を供給するようになっている。更に、電気制御装置70は、CPUの指示に応じて、各気筒に対応して設けられた点火プラグ(実際にはイグナイタ)、各気筒に対応して設けられた燃料噴射弁33、電気加熱ヒータ44、及び、スロットル弁アクチュエータ等に駆動信号(指示信号)を送出するようになっている。
【0070】
なお、電気制御装置70は、取得されたアクセルペダルの操作量Accpが大きくなるほどスロットル弁開度TAが大きくなるように、スロットル弁アクチュエータに指示信号を送出するようになっている。即ち、電気制御装置70は、運転者により変更される機関10の加速操作量(アクセルペダル操作量Accp)に応じて「機関10の吸気通路に配設されたスロットル弁34」の開度を変更するスロットル弁駆動手段を備えている。
【0071】
(第1制御装置による制御の概要)
第1制御装置は、先ず、上記「知見1」及び「知見2」に基づいて、触媒の温度が第1温度以下であるときの機関10の吸入空気量の積算値を求め、その積算値が閾値以上であるか否かを判定することにより、触媒が硫黄被毒状態に陥っているか否かを判定する。そして、第1制御装置は、触媒が硫黄被毒状態にあると判定すると、硫黄被毒解除要求(要求信号)を発生する。
【0072】
第1制御装置は、硫黄被毒解除要求が発生すると、「知見5」に基いて電気加熱ヒータ44に通電し(電気加熱ヒータ44に電力を供給し)、触媒の温度を「第2温度(例えば700℃)」以上にまで上昇させる。これにより、触媒流入ガスの空燃比に関わらず、触媒の貴金属に吸着している硫黄(硫黄成分)が貴金属から脱離する。このような制御(触媒の温度を第2温度以上に維持することにより硫黄を触媒の貴金属から脱離させる制御)を、便宜上「高温脱離促進制御」とも称呼する。第1制御装置は、高温脱離促進制御を第1の所定時間T1だけ継続すると硫黄被毒状態が解除されたと判断し、電気加熱ヒータ44への通電を停止する。
【0073】
但し、第1制御装置は、高温脱離促進制御中にフューエルカット運転状態(燃料供給・燃料噴射が停止される状態)になった場合、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min近傍になっている状態が第2の所定時間T2継続したとき、電気加熱ヒータ44への通電を停止する(即ち、高温脱離促進制御を停止する。)。第2の所定時間T2は第1の所定時間T1に比べて極めて短い時間である。なお、第1制御装置は、フューエルカット運転状態が「第1の所定時間T1よりも極めて短い第3の所定時間T3」だけ継続したとき、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min近傍になっていることを確認することなく、高温脱離促進制御を停止してもよい。
【0074】
(実際の作動)
次に、第1制御装置の実際の作動について説明する。
【0075】
<燃料噴射制御>
第1制御装置のCPUは、図4に示した燃料噴射制御ルーチンを、任意の気筒のクランク角度が吸気上死点前の所定クランク角度に一致する毎に、その気筒に対して繰り返し実行するようになっている。前記所定クランク角度は、例えば、BTDC90°CA(吸気上死点前90°クランク角度)である。クランク角度が前記所定クランク角度に一致した気筒は「燃料噴射気筒」とも称呼される。CPUは、この燃料噴射制御ルーチンにより、指示燃料噴射量Fiの計算及び燃料噴射の指示を行う。
【0076】
任意の気筒のクランク角度が吸気上死点前の所定クランク角度と一致すると、CPUはステップ400から処理を開始し、ステップ410にてフューエルカットフラグXFCが「0」であるか否かを判定する。フューエルカットフラグXFCの値は、イニシャルルーチンにおいて「0」に設定される。更に、フューエルカットフラグXFCの値は、フューエルカット条件が成立したときに「1」に設定され、フューエルカットフラグXFCの値が「1」である場合にフューエルカット条件が不成立となったとき「0」に設定される。なお、イニシャルルーチンは、機関10が搭載された車両のイグニッション・キー・スイッチがオフからオンに変更されたときにCPUにより実行されるルーチンである。
【0077】
フューエルカット条件は、例えば、フューエルカットフラグXFCの値が「0」である場合(フューエルカット条件が不成立と判定されている場合)において、スロットル弁開度TAが「0」(スロットル弁34が全閉)であり、且つ、機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEth以上であるとき成立する。
【0078】
フューエルカット条件は、例えば、フューエルカットフラグXFCの値が「1」である場合(フューエルカット条件が成立していると判定されている場合)において、スロットル弁開度TAが「0」(スロットル弁34が全閉)でなくなるか、又は、機関回転速度NEがフューエルカット復帰回転速度NErth未満となると不成立となる。フューエルカット復帰回転速度NErthは、フューエルカット回転速度NEthよりも正の所定回転速度だけ小さい回転速度である。
【0079】
いま、フューエルカットフラグXFCの値が「0」であると仮定する。この場合、CPUは、ステップ410にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ420乃至ステップ460の処理を順に行い、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0080】
ステップ420:CPUは、理論空燃比stoichからサブフィードバック量KSFBを減じた値を目標空燃比abyfrに設定する。サブフィードバック量KSFBは、後述する図6に示したルーチンにより別途求められている。
【0081】
ステップ430:CPUは、「エアフローメータ51により計測された吸入空気量Ga、クランクポジションセンサ54の信号に基いて取得された機関回転速度NE、及び、ルックアップテーブルMapMc」に基いて「燃料噴射気筒の1回の吸気行程において、その燃料噴射気筒に吸入される空気量」である「筒内吸入空気量Mc(k)」を取得する。筒内吸入空気量Mc(k)は、各吸気行程に対応されながらRAM内に記憶される。筒内吸入空気量Mc(k)は、周知の空気量推定モデル(吸気通路における空気の挙動を模した物理法則に従って構築されたモデル)により算出されてもよい。
【0082】
ステップ440:CPUは、筒内吸入空気量Mc(k)を目標空燃比abyfrで除することにより基本燃料噴射量Fbaseを求める。従って、基本燃料噴射量Fbaseは、機関の空燃比(従って、上流側触媒43に流入する排ガスの空燃比)を目標空燃比abyfrに一致させるために計算上必要な燃料噴射量のフィードフォワード量である。このステップ440は、機関に供給される混合気の空燃比を目標空燃比abyfrに一致させるためのフィードフォワード制御手段(基本燃料噴射量算出手段)を構成している。
【0083】
ステップ450:CPUは、基本燃料噴射量Fbaseをメインフィードバック量DFiにより補正する。より具体的には、CPUは、基本燃料噴射量Fbaseにメインフィードバック量DFiを加えることにより、指示燃料噴射量(最終燃料噴射量)Fiを算出する。メインフィードバック量DFiは、機関の空燃比(従って、上流側触媒43に流入する排ガスの空燃比)を目標空燃比abyfrに一致させるための空燃比フィードバック量であり、空燃比センサ56の出力値Vabyfsに基いて求められる。メインフィードバック量DFiの算出方法については後述する。
【0084】
ステップ460:CPUは、「指示燃料噴射量Fiの燃料」を「燃料噴射気筒に対応して設けられている燃料噴射弁33」から噴射させるための噴射指示信号を、その燃料噴射弁33に送出する。
【0085】
この結果、機関の空燃比を目標空燃比abyfrに一致させるために計算上必要な量(必要と推定される量)の燃料が燃料噴射気筒の燃料噴射弁33から噴射させられる。即ち、ステップ420乃至ステップ460は、機関10に供給される混合気の空燃比が目標空燃比abyfrとなるように指示燃料噴射量Fiを制御する指示燃料噴射量制御手段を構成している。
【0086】
一方、CPUがステップ410の処理を実行する時点において、フューエルカットフラグXFCの値が「1」に設定されていると、CPUはそのステップ410にて「No」と判定し、ステップ495に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、ステップ460の処理による燃料噴射が実行されないので、燃料の供給(燃料噴射)が停止される運転、即ち、フューエルカット運転が実行される。
【0087】
<メインフィードバック量の算出>
CPUは図5にフローチャートにより示した「メインフィードバック量算出ルーチン」を所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ500から処理を開始し、ステップ505に進んで「メインフィードバック制御条件(上流側空燃比フィードバック制御条件)」が成立しているか否かを判定する。
【0088】
メインフィードバック制御条件は以下の総ての条件が成立したときに成立する。
(A1)空燃比センサ56が活性化している。
(A2)機関の負荷KLが閾値KLth以下である。
(A3)フューエルカット運転中でない(フューエルカットフラグXFCが「0」である。)。
【0089】
なお、負荷KLは、ここでは下記の(1)式により求められる負荷率である。この負荷KLに代え、アクセルペダル操作量Accpが用いられても良い。(1)式において、Mcは筒内吸入空気量であり、ρは空気密度(単位は(g/l))、Lは機関10の排気量(単位は(l))、「4」は機関10の気筒数である。
KL=(Mc/(ρ・L/4))・100% …(1)
【0090】
いま、メインフィードバック制御条件が成立しているものとして説明を続ける。この場合、CPUはステップ505にて「Yes」と判定して以下に述べるステップ510乃至ステップ540の処理を順に行い、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0091】
ステップ510:CPUは、図4のステップ420にて算出され且つRAMに格納されている「Nサイクル前の目標空燃比abyfr(k−N)」を読み込む。
【0092】
ステップ515:CPUは、下記(2)式に示したように、空燃比センサ56の出力値Vabyfsを図2に示したテーブルMapabyfsに適用することにより、検出空燃比abyfsを得る。
abyfs=Mapabyfs(Vabyfs) …(2)
【0093】
ステップ520:CPUは、下記(3)式に従って、「現時点よりもNサイクル前の時点において燃焼室21に実際に供給された燃料の量」である「筒内燃料供給量Fc(k−N)」を求める。即ち、CPUは、「現時点よりもNサイクル(即ち、N・720°クランク角度)前の時点における筒内吸入空気量Mc(k−N)」を「検出空燃比abyfs」により除すことにより、筒内燃料供給量Fc(k−N)を求める。
Fc(k−N)=Mc(k−N)/abyfs …(3)
【0094】
このように、筒内燃料供給量Fc(k−N)を求めるために、現時点からNサイクル前の筒内吸入空気量Mc(k−N)を検出空燃比abyfsで除すのは、「燃焼室21内での混合気の燃焼により生成された排ガス」が空燃比センサ56に到達するまでに「Nサイクルに相当する時間」を要しているからである。
【0095】
ステップ525:CPUは、下記(4)式に従って、「現時点よりもNサイクル前の時点において燃焼室21に供給されるべきであった燃料の量」である「目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)」を求める。即ち、CPUは、現時点からNサイクル前の筒内吸入空気量Mc(k−N)を現時点からNサイクル前の目標空燃比abyfr(k−N)で除すことにより、目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)を求める。
Fcr(k−N)=Mc(k−N)/abyfr(k−N) …(4)
【0096】
ステップ530:CPUは、下記(5)式に従って、筒内燃料供給量偏差DFcを取得する。即ち、CPUは、目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)から筒内燃料供給量Fc(k−N)を減じることにより、筒内燃料供給量偏差DFcを求める。この筒内燃料供給量偏差DFcは、Nストローク前の時点で筒内に供給された燃料の過不足分を表す量となる。
DFc=Fcr(k−N)−Fc(k−N) …(5)
【0097】
ステップ535:CPUは、下記(6)式に従って、メインフィードバック量DFiを求める。この(6)式において、Gpは予め設定された比例ゲイン、Giは予め設定された積分ゲインである。更に、(6)式の「値SDFc」は「筒内燃料供給量偏差DFcの積分値」である。つまり、CPUは、検出空燃比abyfsを目標空燃比abyfrに一致させるための比例積分制御により「メインフィードバック量DFi」を算出する。
DFi=Gp・DFc+Gi・SDFc …(6)
【0098】
ステップ540:CPUは、その時点における筒内燃料供給量偏差DFcの積分値SDFcに上記ステップ530にて求められた筒内燃料供給量偏差DFcを加えることにより、新たな筒内燃料供給量偏差の積分値SDFcを取得する。
【0099】
以上により、メインフィードバック量DFiが比例積分制御により算出され、このメインフィードバック量DFiが前述した図4のステップ450の処理により指示燃料噴射量Fiに反映される。
【0100】
一方、図5のステップ505の判定時において、メインフィードバック制御条件が不成立であると、CPUはそのステップ505にて「No」と判定してステップ545に進み、メインフィードバック量DFiの値を「0」に設定する。次いで、CPUは、ステップ550にて筒内燃料供給量偏差の積分値SDFcに「0」を格納する。その後、CPUは、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。このように、メインフィードバック制御条件が不成立であるとき、メインフィードバック量DFiは「0」に設定される。従って、基本燃料噴射量Fbaseのメインフィードバック量DFiによる補正は行われない。
【0101】
<サブフィードバック量KSFB及びサブFB学習値KSFBgの算出>
CPUは図6にフローチャートにより示した「サブフィードバック量KSFB及びサブFB学習値KSFBgの算出ルーチン」を所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ600から処理を開始してステップ605に進み、サブフィードバック制御条件が成立しているか否かを判定する。
【0102】
サブフィードバック制御条件は以下の総ての条件が成立したときに成立する。
(B1)メインフィードバック制御条件が成立している。
(B2)下流側空燃比センサ57が活性化している。
【0103】
いま、サブフィードバック制御条件が成立していると仮定して説明を続ける。この場合、CPUはステップ605にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ610乃至ステップ630の処理(サブフィードバック量算出処理)を実行し、その後、ステップ635に進む。
【0104】
ステップ610:CPUは、下記(7)式に従って、「下流側目標値Voxsref」と「下流側空燃比センサ57の出力値Voxs」との差である「出力偏差量DVoxs」を取得する。下流側目標値Voxsrefは理論空燃比相当電圧Vst(三元触媒43のウインドウ内の基準空燃比abyfr0に対応した値)に設定されている。即ち、CPUは、「下流側目標値Voxsref」から「現時点の下流側空燃比センサ57の出力値Voxs」を減じることにより「出力偏差量DVoxs」を求める。
DVoxs=Voxsref−Voxs …(7)
【0105】
ステップ615:CPUは、下記(8)式に従って、「その時点における出力偏差量の積分値SDVoxs(=SDVoxs(n−1))」に「上記ステップ610にて求めた出力偏差量DVoxsとゲインKとの積」を加えることにより、新たな出力偏差量の積分値SDVoxs(=SDVoxs(n))を求める。なお、ゲインKはここでは「1」に設定されている。積分値SDVoxsは「時間積分値SDVoxs又は積分処理値SDVoxs」とも称呼される。
SDVoxs(n)=SDVoxs(n−1)+K・DVoxs …(8)
【0106】
ステップ620:CPUは、「上記ステップ610にて算出した出力偏差量DVoxs」から「本ルーチンを前回実行した際に算出された出力偏差量である前回出力偏差量DVoxsold」を減じることにより、新たな出力偏差量の微分値DDVoxsを求める。
【0107】
ステップ625:CPUは、下記(9)式に従って、サブフィードバック量KSFBを求める。この(9)式において、Kpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Kiは予め設定された積分ゲイン(積分定数)、Kdは予め設定された微分ゲイン(微分定数)である。即ち、Kp・DVoxsは比例項、Ki・SDVoxsは積分項、Kd・DDVoxsは微分項である。積分項Ki・SDVoxsは、サブフィードバック量KSFBの定常成分でもある。
KSFB=Kp・DVoxs+Ki・SDVoxs+Kd・DDVoxs …(9)
【0108】
ステップ630:CPUは、「上記ステップ610にて算出した出力偏差量DVoxs」を「前回出力偏差量DVoxsold」として格納する。
【0109】
このように、CPUは、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsを下流側目標値Voxsrefに一致させるための比例・積分・微分(PID)制御により「サブフィードバック量KSFB」を算出する。このサブフィードバック量KSFBは、前述したように、目標空燃比abyfrを算出するために使用される(abyfr=stoich−KSFB)。
【0110】
即ち、出力値Voxsが下流側目標値Voxsrefよりも小さいとき(リーンであるとき)、サブフィードバック量KSFBは次第に大きくなる。サブフィードバック量KSFBが大きくなるほど目標空燃比abyfrは小さくなる(リッチ側の空燃比になる)ように修正される。その結果、機関10の真の平均空燃比は小さくなる(リッチ側の空燃比になる)ので、出力値Voxsが下流側目標値Voxsrefに一致するように増大する。
【0111】
逆に、出力値Voxsが下流側目標値Voxsrefよりも大きいとき(リッチであるとき)、サブフィードバック量KSFBは次第に小さくなる(負の値を含む。)。サブフィードバック量KSFBが小さくなるほど目標空燃比abyfrは大きくなる(リーン側の空燃比となる)ように修正される。その結果、機関10の真の平均空燃比は大きくなる(リーン側の空燃比になる)ので、出力値Voxsが下流側目標値Voxsrefに一致するように減少する。
【0112】
CPUは、ステップ635に進むと、前回のサブフィードバック量の学習値(サブFB学習値)KSFBgの更新時点から学習間隔時間Tthが経過しているか否かを判定する。このとき、前回のサブFB学習値KSFBgの更新時点から学習間隔時間Tthが経過していなければ、CPUはステップ635にて「No」と判定し、ステップ695に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0113】
これに対し、CPUがステップ635の処理を実行する時点において、前回のサブFB学習値KSFBgの更新時点から学習間隔時間Tthが経過していると、CPUはステップ635にて「Yes」と判定してステップ640に進み、その時点の積分処理値SDVoxsと積分ゲインKiとの積(Ki・SDVoxs)をサブFB学習値KSFBgとしてバックアップRAMに格納する。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0114】
このように、CPUは、サブフィードバック量KSFBが更新される期間よりも長い期間(学習間隔時間Tth)が経過した時点におけるサブフィードバック量KSFBの積分項Ki・SDVoxs(サブフィードバック量KSFBの定常成分)を、サブFB学習値KSFBgとして取り込む。
【0115】
一方、CPUがステップ605の処理を実行する時点においてサブフィードバック制御条件が成立していない場合、CPUはステップ605にて「No」と判定し、ステップ645に進んでサブFB学習値KSFBgをサブフィードバック量KSFBとして設定する。即ち、CPUは、サブフィードバック量KSFBの更新を停止する。次いで、CPUはステップ650に進み、サブFB学習値KSFBgを積分ゲインKiで除した値(サブFB学習値KSFBg/積分ゲインKi)を、時間積分値SDVoxsとしてバックアップRAMに格納する。その後、CPUはステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0116】
なお、第1制御装置は、サブフィードバック量を用いたサブフィードバック制御を実行しない態様であってもよい。この場合、図6のルーチンは省略される。更に、他のルーチンにおいて使用されるサブフィードバック量KSFBには「0」が代入される。
【0117】
<硫黄被毒状態判定解除制御>
CPUは図7にフローチャートにより示した高温脱離促進制御開始ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ700から処理を開始し、ステップ710に進んで硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」であるか否かを判定する。硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定され、CPUが「触媒が硫黄被毒状態にある」と判定したときに「1」に設定される(後述する図10を参照。)。即ち、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」であることは、硫黄被毒解除要求(要求信号)が発生していることを意味する。
【0118】
硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「0」であると、CPUはステップ710にて「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」であると、CPUはステップ710にて「Yes」と判定してステップ720に進み、高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「0」であるか否かを判定する。
【0119】
高温脱離促進制御実行フラグXAの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定され、高温脱離促進制御が実行されているときに「1」に設定される(後述するステップ750を参照。)。高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」であると(即ち、現時点において高温脱離促進制御が実行されていると)、CPUはステップ720にて「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「0」であると(即ち、現時点において高温脱離促進制御が実行されていないと)、CPUはステップ720にて「Yes」と判定してステップ730に進み、触媒の温度(触媒床温)Tempccroが前記第2温度TempHiよりも小さいか否かを判定する。
【0120】
触媒温度Tempccroは、負荷KL及び機関回転速度NEに基づいて推定される。即ち、CPUはルックアップテーブルMapTex(KL,NE)に実際の「負荷KL及び機関回転速度NE」を適用することにより排ガス温度Texを推定する。その後、CPUは、下記の(10)式に従って触媒温度Tempccroを推定する。(10)式の値pは「0」より大きく「1」より小さい定数である。(10)式の左辺のTempccroが新たに更新された触媒温度Tempccroであり、(10)式の右辺のTempccropは更新前の触媒温度Tempccroである。
Tempccro=p・Tempccro+(1−p)・Tex ・・・(10)
【0121】
なお、上流側触媒43内に触媒温度センサを配設し、その触媒温度センサの出力値に基づいて触媒温度Tempccroを取得してもよい。
【0122】
CPUがステップ730の処理を行う時点において、触媒温度Tempccroが第2温度TempHiよりも高い場合、CPUはステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、CPUがステップ730の処理を行う時点において、触媒温度Tempccroが第2温度TempHiよりも低い場合、CPUはステップ730にて「Yes」と判定してステップ740に進み、電気加熱ヒータ44への通電を開始するとともに、実際の触媒温度が「第2温度TempHiに0以上のマージン温度(所定温度)αを加えた温度」に一致するように、電気加熱ヒータ44に供給する電力(実際には、電気加熱ヒータ44のヒータを流れる電流)を制御する。電気加熱ヒータ44が通電されているときの触媒温度は、電気加熱ヒータ44の抵抗値及び電流から推定することができる。もちろん、触媒温度センサを備える場合、CPUは触媒温度センサの出力値に基づいて電気加熱ヒータ44が通電されているときの触媒温度を取得してもよい。
【0123】
次に、CPUはステップ750に進み、高温脱離促進制御実行フラグXAの値を「1」に設定する。その後、CPUはステップ795に進み、本ルーチンを一旦終了する。このように、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」となったとき、高温脱離促進制御が実行される。その結果、上記「知見5」に記載したように、触媒流入ガスの空燃比に関わらず、触媒の貴金属に吸着している硫黄(硫黄成分)が貴金属から脱離する。
【0124】
<高温脱離促進制御の停止(1)>
CPUは図8にフローチャートにより示した高温脱離促進制御停止(その1)のルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ800から処理を開始し、ステップ810に進んで高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」であるか否かを判定する。
【0125】
このとき、高温脱離促進制御が実行されておらず、従って、高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「0」であると、CPUはステップ810にて「No」と判定してステップ895に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、高温脱離促進制御が実行されていて、従って、高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」であると、CPUはステップ810にて「Yes」と判定し、ステップ820に進んで「高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」である継続時間」が「第1の所定時間T1」以上であるか否かを判定する。
【0126】
このとき、「高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」である継続時間」が第1の所定時間T1未満であると、CPUはステップ820にて「No」と判定してステップ895に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、「高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」である継続時間」が「第1の所定時間T1」以上であると、CPUはステップ820にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ830乃至ステップ860の処理を順に行い、その後、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0127】
ステップ830:CPUは電気加熱ヒータ44への通電を停止する。即ち、電気加熱ヒータ44のヒータ電流を「0」に設定することにより、電気加熱ヒータ44への電力の供給を停止する。この結果、高温脱離促進制御が停止される。
【0128】
ステップ840:CPUは、高温脱離促進制御実行フラグXAの値を「0」に設定する。
ステップ850:CPUは、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値を「0」に設定する。
ステップ860:CPUは、積算吸入空気量SGaの値を「0」に設定する。積算吸入空気量SGaは、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvを「1」に設定するか否かを判定する際に用いられるパラメータである(後述する図10のルーチンを参照。)。
【0129】
以上、説明したように、高温脱離促進制御は、第1の所定時間T1だけ継続して実行されたときに停止される。換言すると、第1の所定時間T1は、高温脱離促進制御を第1の所定時間T1だけ継続することにより触媒の貴金属から硫黄成分が実質的に全て脱離し、硫黄被毒解除が完了するような時間に設定されている。なお、触媒流入ガスの空燃比は、メインフィードバック制御及びサブフィードバック制御により、所定のリッチ空燃比及び所定のリーン空燃比に交互に設定されるようにフィードバック制御されている。
【0130】
<高温脱離促進制御の停止(2)>
CPUは図9にフローチャートにより示した高温脱離促進制御停止(その2)のルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。図9において、既に説明したステップと同じ処理を行うステップには、既に説明したステップと同じ符号が付されている。以下において、そのようなステップの詳細な説明は適宜省略される。
【0131】
所定のタイミングになると、CPUはステップ900から処理を開始し、ステップ810に進んで高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」であるか否かを判定する。
【0132】
このとき、高温脱離促進制御が実行されておらず、従って、高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「0」であると、CPUはステップ810にて「No」と判定してステップ995に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、高温脱離促進制御が実行されていて、従って、高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」であると、CPUはステップ810にて「Yes」と判定し、ステップ910に進んでフューエルカットフラグXFCの値が「1」であるかを判定する。即ち、CPUはステップ910にて、現時点においてフューエルカット運転が実行されているか否かを判定する。
【0133】
このとき、フューエルカット運転が実行されておらず、従って、フューエルカットフラグXFCの値が「0」であると、CPUはステップ910にて「No」と判定してステップ995に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、フューエルカット運転が実行されていて、従って、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であると、CPUはステップ910にて「Yes」と判定してステップ920に進み、フューエルカットフラグXFCの値が「0」から「1」へと変化した時点以降において、「下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min(例えば、約0.1V)以下となっている状態」が第2の所定時間T2だけ継続しているか否かを判定する。
【0134】
このとき、「下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となっている状態」が第2の所定時間T2だけ継続していなければ、CPUはステップ920にて「No」と判定してステップ995に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、「下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となっている状態」が第2の所定時間T2だけ継続していると、CPUはステップ920にて「Yes」と判定し、上述した「ステップ830乃至ステップ860の処理」を行う。これにより、電気加熱ヒータ44への通電が停止されることによって電気加熱ヒータ44への電力の供給が停止される(高温脱離促進制御が停止される)とともに、高温脱離促進制御実行フラグXA、硫黄被毒解除要求フラグXSrmv、及び、積算吸入空気量SGaの各値が「0」に設定される。その後、CPUは、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0135】
このように、高温脱離促進制御は、高温脱離促進制御が実行されている場合にフューエルカット運転が実行され且つ下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となっている状態が第2の所定時間T2に到達すると、その時点にて停止させられる。なお、第2の所定時間T2は極めて短い時間であってもよい。換言すると、フューエルカット運転が実行された後に、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となったとき、高温脱離促進制御が停止されてもよい。
【0136】
<硫黄被毒解除要求フラグの設定>
次に、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvを「1」に設定する際のCPUの作動について説明する。CPUは図10にフローチャートにより示した硫黄被毒解除要求フラグ設定ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUは図10のステップ1000から処理を開始し、以下に述べるステップ1010及びステップ1070の処理を順に行う。
【0137】
ステップ1010:CPUは、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「0」であるか否かを判定する。CPUは、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「0」である場合にはステップ1020に進み、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」である場合にはステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0138】
ステップ1020:CPUは、冷却水温THWが閾値冷却水温THWth以上であるか否かを判定する。CPUは、冷却水温THWが閾値冷却水温THWth以上である場合にはステップ1030に進み、冷却水温THWが閾値冷却水温THWth未満である場合にはステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。なお、ステップ1020は省略され得る。
【0139】
ステップ1030:CPUは、触媒温度Tempccroが「上述した第1温度TempLo」よりも小さいか否かを判定する。上記「知見1」に記載したように、触媒温度Tempccroが第1温度TempLoよりも低い場合、硫黄成分が触媒(特に、担体)に多く吸着される。CPUは、触媒温度Tempccroが第1温度TempLoよりも小さい場合にはステップ1040に進み、触媒温度Tempccroが第1温度TempLo以上である場合にはステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0140】
ステップ1040:CPUは、吸入空気量Gaの積算値である積算吸入空気量SGaを更新する。即ち、CPUは、その時点の積算吸入空気量SGaに吸入空気量Gaを加えた値を新たな積算吸入空気量SGaとして算出する。その後、CPUはステップ1050に進む。この結果、積算吸入空気量SGaは、硫黄成分が触媒に多く吸着される運転状態における吸入空気量Gaの積分値となる。従って、積算吸入空気量SGaは、触媒に蓄積された硫黄成分の量が大きくなるほど大きくなる値となる。積算吸入空気量SGaはバックアップRAMに格納される。
【0141】
ステップ1050:CPUは、積算吸入空気量SGaが積算吸入空気量閾値(硫黄被毒状態発生判定閾値)SGathよりも大きいか否かを判定する。CPUは、積算吸入空気量SGaが積算吸入空気量閾値SGathよりも大きい場合にはステップ1060に進み、積算吸入空気量SGaが積算吸入空気量閾値SGath以下である場合にはステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0142】
ステップ1060:CPUは、バッテリ残量センサ59の出力値に基いて、バッテリ残量が所定残量よりも大きいか否かを判定する。CPUは、バッテリ残量が所定残量よりも大きい場合にはステップ1070に進み、バッテリ残量が所定残量以下の場合にはステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。なお、ステップ1060は省略され得る。
【0143】
ステップ1070:CPUは、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値を「1」に設定する。その後、CPUはステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。このように、触媒に吸着される硫黄成分が大きいほど大きくなる積算吸入空気量SGaが積算吸入空気量閾値SGathよりも大きく、且つ、バッテリ残量が所定残量よりも大きい場合、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」に設定される。即ち、硫黄被毒解除要求が発生させられる。
【0144】
<硫黄被毒解除要求フラグの解除>
次に、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvを「0」に設定する(硫黄被毒解除要求フラグXSrmvを解除する)際のCPUの作動について説明する。CPUは図11にフローチャートにより示した硫黄被毒解除要求フラグ解除ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUは図11のステップ1100から処理を開始し、以下に述べるステップ1110及びステップ1150の処理を順に行う。
【0145】
ステップ1110:CPUは、触媒温度Tempccroが「上述した第1温度TempLo」以上であるか否かを判定する。触媒温度Tempccroは、電気加熱ヒータ44に通電しない場合であっても、例えば、機関10の負荷が比較的大きい状態にて運転され続けたとき第1温度TempLo以上になることがある。CPUは、触媒温度Tempccroが第1温度TempLo以上である場合にはステップ1120に進み、触媒温度Tempccroが第1温度TempLo未満である場合にはステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0146】
ステップ1120:CPUは、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であるか否(即ち、フューエルカット運転が実行されているか否か)かを判定する。CPUは、フューエルカットフラグXFCの値が「1」である場合にはステップ1130に進み、フューエルカットフラグXFCの値が「0」である場合にはステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0147】
ステップ1130:CPUは、フューエルカットフラグXFCの値が「0」から「1」へと変化した時点以降において、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min(例えば、約0.1V)以下となっている状態が第2の所定時間T2だけ継続しているか否かを判定する。このステップは、図9のステップ920と同じ処理を行うステップである。CPUは、ステップ1130の条件が成立している場合にはステップ1140に進み、ステップ1130の条件が成立していない場合にはステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0148】
ステップ1140:CPUは、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値を「0」に設定する。即ち、硫黄被毒解除要求を解除する。
ステップ1150:CPUは、積算吸入空気量SGaの値を「0」に設定する。
【0149】
このように、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値は、上述した「知見4」に基き、触媒温度Tempccroが第1温度TempLo以上であるときにフューエルカット運転が実行され且つ下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となっている状態が第2の所定時間T2に到達したとき、触媒の硫黄被毒状態が解消されると考えられるので、「0」に設定される。なお、第2の所定時間T2は極めて短い時間であってもよい。換言すると、フューエルカット運転が実行された後に、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となったとき、高温脱離促進制御が停止されてもよい。
【0150】
以上、説明したように、第1制御装置は、
触媒43と、
前記触媒43を電気的に加熱する電気加熱手段(電気加熱ヒータ44)と、
機関10に燃料を供給する燃料供給手段(燃料噴射弁33及び図4のステップ420乃至ステップ460等)と、
所定のフューエルカット条件が成立しているとき前記燃料の供給を停止するフューエルカット手段(図4のステップ410での「No」との判定を参照。)と、
前記触媒43の硫黄被毒状態を解除するべき状態となったときに硫黄被毒解除要求を発生する要求発生手段(図10のルーチンを参照。)と、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記触媒の温度が、「前記触媒に流入する排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比であるときに前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる所定の第1温度TempLo」以上となるように前記電気加熱手段(電気加熱ヒータ44)に電力を供給する(実際には、前記触媒の温度が、触媒流入ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる第2温度TempHi以上となるように電気加熱ヒータ44に電力を供給する高温脱離促進制御を実行する)とともに(図7のステップ710乃至ステップ740を参照。)、前記電力の供給中(高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」であるとき)に前記フューエルカット手段によって前記燃料の供給が停止された場合(フューエルカットフラグXFCの値が「1」であるとき)、硫黄被毒状態が解消したと判断して硫黄被毒解除要求を消滅させる(硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値を「0」に戻す)とともに(図8のステップ810、ステップ820及びステップ850を参照。)、電気加熱手段(電気加熱ヒータ44)への電力の供給を停止する(図8のステップ810乃至ステップ830を参照。)、電力制御手段と、
を備えている。
【0151】
更に、前記電力制御手段は、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記触媒の温度が、第2温度TempHi以上となるように前記電気加熱手段(電気加熱ヒータ44)に電力を供給するように構成されている(図7のステップ740)。第2温度TempHiは、触媒43に流入する排ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度であって且つ第1温度TempLoよりも高い温度である。
【0152】
従って、上記「知見4及び知見5」に記載したように、硫黄被毒解除要求が発生したときに高温脱離促進制御が実行されるので、触媒43の貴金属に蓄積された硫黄Sは貴金属から脱離し、硫黄被毒状態は解除される(消滅する)。更に、高温脱離促進制御の実行中に「多量の酸素が触媒43に供給されるフューエルカット運転」が実行された場合、触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sは極めて短時間にて貴金属から脱離するので、その時点にて高温脱離促進制御が停止される。これにより、燃料の供給停止(フューエルカット)により硫黄被毒状態が解消された後の期間において、電気加熱ヒータ44に無駄な電力が供給され続けることを回避することができる。この結果、「燃費の悪化及び/又はバッテリ残量の低下」を回避することができる。
【0153】
なお、第1制御装置は、上述した「知見5」に基づいて、触媒温度を第2温度TempHi以上の温度に上昇させることにより、硫黄被毒状態を解除していた。これに対し、第1制御装置は、上述した「知見4」に基づいて、触媒温度を第1温度TempLo以上であって且つ第2温度TempHi未満の温度に維持することにより、硫黄被毒状態を解除してもよい。この場合、高温脱離促進制御実行フラグXAは、低温脱離促進制御実行フラグXBに置換される。更に、この場合、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比であるときにのみ硫黄成分が触媒の貴金属から脱離するので、図8のステップ820は、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」である継続時間が「第1の所定時間T1よりも長い所定時間」以上であるか否かを判定するステップに置換される。或いは、図8のステップ820は、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」であるときの「触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比である時間の合計」が所定時間以上であるか否かを判定するステップに置換される。
【0154】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、単に「第2制御装置」と称呼する。)について説明する。第2制御装置は、上述した「知見4」に基いて構成された装置である。
【0155】
即ち、第2制御装置は、硫黄被毒解除要求が発生した場合、電気加熱ヒータ44を用いて、触媒の温度を「第1温度TempLo以上であり且つ第2温度TempHi未満」の温度(第1温度TempLoよりも僅かに高い温度)に制御する。
【0156】
ところで、上記「知見4」に記載したように、触媒の温度が第1温度TempLo以上であり且つ第2温度TempHi未満である場合、触媒流入ガスの空燃比が「よりリーン側の空燃比」であるほど、硫黄は「より短い時間」にて貴金属から脱離する。しかしながら、燃焼ガス(排ガス)の空燃比がリーン空燃比であるとしても、その空燃比の大きさは「エミッション上問題とならない空燃比」であり且つ「機関に失火が生じない範囲の空燃比」である。
【0157】
従って、機関に供給される混合気の空燃比をできるだけ大きい空燃比に設定したとしても、燃焼ガスである排ガスに含まれる酸素の濃度は、燃料供給の停止時(フューエルカット運転中)に触媒に流入するガス(即ち、大気)に含まれる酸素の濃度に比較した場合、「硫黄を短時間にて貴金属から脱離させるのに十分な大きさ」にはなり難い。換言すると、硫黄を触媒の貴金属から脱離させるには「排ガスに酸素が含まれていること」が必要であることから、排ガスの空燃比がリーン空燃比となっている時間を「エミッションを悪化させない範囲において」長くした方が、触媒の硫黄被毒状態を解除するために触媒の温度を「第1温度TempLo以上であり且つ第2温度TempHi未満」に維持しなければならない時間を結果的に短くすることができる。
【0158】
そこで、第2制御装置は、更に、硫黄被毒解除要求が発生した場合、硫黄被毒解除要求が発生していない場合に比較して、排ガスの空燃比がリーン空燃比である時間を排ガスの空燃比がリッチ空燃比である時間よりも長くするように構成されている。
【0159】
これによれば、硫黄被毒解除要求が発生した場合、排ガスの空燃比がリーン空燃比である時間を「エミッションが極端に悪化しない範囲において」相対的に長くすることができる。従って、触媒の硫黄被毒状態を解除するために「触媒の温度を第1温度以上に維持しておく時間」を結果的に短くすることができるので、電気加熱手段に供給する電力の総量を低減することができる。
【0160】
(実際の作動)
第2制御装置のCPUは、図4乃至図6に示したルーチンを実行することにより、燃料噴射量の制御を行う。更に、第2制御装置のCPUは、図10及び図11に示したルーチンを実行することにより、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値を操作する。即ち、第2制御装置のCPUは、第1制御装置のCPUと同様に硫黄被毒解除要求を発生する。
【0161】
更に、第2制御装置のCPUは、図12にフローチャートにより示した低温脱離促進制御開始ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUは図12のステップ1200から処理を開始し、ステップ1210に進んで硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」であるか否かを判定する。
【0162】
硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「0」であると、CPUはステップ1210にて「No」と判定し、ステップ1295に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」であると、CPUはステップ1210にて「Yes」と判定してステップ1220に進み、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「0」であるか否かを判定する。
【0163】
低温脱離促進制御実行フラグXBの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定され、低温脱離促進制御が実行されているときに「1」に設定される(後述するステップ1250を参照。)。低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」であると(即ち、現時点において低温脱離促進制御が実行されていると)、CPUはステップ1220にて「No」と判定し、ステップ1295に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「0」であると(即ち、現時点において低温脱離促進制御が実行されていないと)、CPUはステップ1220にて「Yes」と判定してステップ1230に進み、触媒の温度(触媒床温)Tempccroが第1温度TempLoよりも低い(小さい)か否かを判定する。
【0164】
CPUがステップ1230の処理を行う時点において、触媒温度Tempccroが第1温度TempLoよりも高い場合、CPUはそのステップ1230にて「No」と判定し、ステップ1295に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、CPUがステップ1230の処理を行う時点において、触媒温度Tempccroが第1温度TempLoよりも低い場合、CPUはステップ1230にて「Yes」と判定してステップ1240に進み、電気加熱ヒータ44への通電を開始するとともに、実際の触媒温度が「第1温度TempLoに0以上のマージン温度(所定温度)αを加えた温度」に一致するように、電気加熱ヒータ44に供給する電力(実際には、電気加熱ヒータ44のヒータを流れる電流)を制御する。電気加熱ヒータ44が通電されているときの触媒温度は、電気加熱ヒータ44の抵抗値及び電流から推定することができる。このように、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」となったとき、低温脱離促進制御が実行される。その結果、上記「知見4」に記載したように、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比である期間、触媒の貴金属に吸着している硫黄(硫黄成分)が貴金属から脱離する。
【0165】
次に、CPUはステップ1250に進み、低温脱離促進制御実行フラグXBの値を「1」に設定する。その後、CPUはステップ1260に進み、下流側目標値Voxsrefを「理論空燃比相当電圧Vstに正の所定値ΔVを加えた値」に設定する。理論空燃比相当電圧Vstに正の所定値ΔVを加えた値は、「理論空燃比相当電圧Vstに対応する空燃比(即ち、理論空燃比)」よりもリッチ側の空燃比に対応する値であり、第2下流側目標値とも称呼される。その後、CPUはステップ1295に進み、本ルーチンを一旦終了する。なお、下流側目標値Voxsrefは、上述したイニシャルルーチンにおいて「理論空燃比相当電圧Vst(第1下流側目標値)」に設定されるようになっている。また、「理論空燃比相当電圧Vstに正の所定値ΔVを加えた値」は、上流側触媒43のウインドウの範囲内の空燃比に対応した値である。
【0166】
<低温脱離促進制御の停止(1)>
CPUは図13にフローチャートにより示した低温脱離促進制御停止(その1)のルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1300から処理を開始し、ステップ1310に進んで低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」であるか否かを判定する。
【0167】
このとき、低温脱離促進制御が実行されておらず、従って、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「0」であると、CPUはステップ1310にて「No」と判定してステップ1395に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、低温脱離促進制御が実行されていて、従って、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」であると、CPUはステップ1310にて「Yes」と判定し、ステップ1320に進んで低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」である継続時間が第4の所定時間T4以上であるか否かを判定する。
【0168】
このとき、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」である継続時間が第4の所定時間T4未満であると、CPUはステップ1320にて「No」と判定してステップ1395に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」である継続時間が第4の所定時間T4以上であると、CPUはステップ1320にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1330乃至ステップ1370の処理を順に行い、その後、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0169】
ステップ1330:CPUは電気加熱ヒータ44への通電を停止する。即ち、電気加熱ヒータ44のヒータ電力を「0」に設定することにより、電気加熱ヒータ44への電力の供給を停止する。この結果、低温脱離促進制御が停止される。
【0170】
ステップ1340:CPUは、下流側目標値Voxsrefを理論空燃比相当電圧Vstに設定する。
ステップ1350:CPUは、低温脱離促進制御実行フラグXBの値を「0」に設定する。
ステップ1360:CPUは、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値を「0」に設定する。
ステップ1370:CPUは、積算吸入空気量SGaの値を「0」に設定する(図10のルーチンを参照。)。
【0171】
以上、説明したように、低温脱離促進制御は、第4の所定時間T4だけ継続して実行されたときに停止される。換言すると、第4の所定時間T4は、低温脱離促進制御を第4の所定時間T4だけ継続することにより触媒の貴金属から硫黄成分が実質的に全て脱離し、硫黄被毒解除が完了するような時間に設定されている。但し、この場合、下流側目標値Voxsrefの値が「理論空燃比相当電圧Vst+所定値ΔV」に設定されることにより、「触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比である期間」の方が「触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比である期間」よりも長くなっている。
【0172】
即ち、低温脱離促進制御が実行されていない場合、下流側目標値Voxsrefが「イニシャルルーチン及び図13のステップ1340」にて理論空燃比相当電圧Vstに設定される。また、サブフィードバック量KSFBの積分項Ki・SDVoxsは十分な時間だけサブフィードバック制御が行われた場合に「ある値」に収束する。積分項Ki・SDVoxsが収束している場合、サブフィードバック量KSFBに含まれる比例項Kp・DVoxsが触媒流入ガスの空燃比を実質的に変更させる項となる。
【0173】
これにより、下流側目標値Voxsrefの出力値Voxs及び触媒流入ガスの空燃比は、図14の(A)及び(B)にそれぞれ示したように変化する。より具体的に述べると、「出力値Voxsが最大出力値maxの近傍となっている時間」と「出力値Voxsが最小出力値min近傍となっている時間」とは互いに略等しくなり、触媒流入ガスの空燃比が「理論空燃比よりも第1値X1だけ大きい値」に実質的に一致した状態の継続時間(リーン時間TL1)と、触媒流入ガスの空燃比が「理論空燃比よりも第2値X2だけ小さい値」に実質的に一致した状態の継続時間(リッチ時間TR1)と、が実質的に等しくなる。
【0174】
一方、低温脱離促進制御が実行されている場合、下流側目標値Voxsrefが「図12のステップ1260」にて「理論空燃比相当電圧Vstよりも所定値ΔVだけ大きい値」に設定される。
【0175】
これにより、下流側目標値Voxsrefの出力値Voxs及び触媒流入ガスの空燃比は、図14の(C)及び(D)にそれぞれ示したように変化する。より具体的に述べると、「出力値Voxsが最大出力値maxの近傍となっている時間」は、「出力値Voxsが最小出力値min近傍となっている時間」よりも長くなり、触媒流入ガスの空燃比が「理論空燃比よりも第3値X3だけ大きい値」に実質的に一致した状態の継続時間(リーン時間TL2)は、触媒流入ガスの空燃比が「理論空燃比よりも第4値X4だけ小さい値」に実質的に一致した状態の継続時間(リッチ時間TR2)よりも長くなる。このとき、第3値X3は第1値X1よりも小さく(X3<X1)且つ第4値X4は第2値X2よりも大きい(X4>X2)。
【0176】
従って、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比である期間が相対的に長くなるので、結果的に低温脱離促進制御を早期に終了することができる。
【0177】
<低温脱離促進制御の停止(2)>
CPUは図15にフローチャートにより示した低温脱離促進制御停止(その2)のルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。図15において、既に説明したステップと同じ処理を行うステップには、既に説明したステップと同じ符号が付されている。以下において、そのようなステップの詳細な説明は適宜省略される。
【0178】
所定のタイミングになると、CPUはステップ1500から処理を開始し、ステップ1310に進んで低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」であるか否かを判定する。
【0179】
このとき、低温脱離促進制御が実行されておらず、従って、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「0」であると、CPUはステップ1310にて「No」と判定してステップ1595に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、低温脱離促進制御が実行されていて、従って、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」であると、CPUはステップ1310にて「Yes」と判定し、ステップ1510に進んでフューエルカットフラグXFCの値が「1」であるかを判定する。即ち、CPUはステップ1510にて、現時点においてフューエルカット運転が実行されているか否かを判定する。
【0180】
このとき、フューエルカット運転が実行されておらず、従って、フューエルカットフラグXFCの値が「0」であると、CPUはステップ1510にて「No」と判定してステップ1595に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、フューエルカット運転が実行されていて、従って、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であると、CPUはステップ1510にて「Yes」と判定してステップ1520に進み、フューエルカットフラグXFCの値が「0」から「1」へと変化した時点以降において、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min(例えば、約0.1V)以下となっている状態が第5の所定時間T5だけ継続しているか否かを判定する。
【0181】
このとき、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となっている状態が第5の所定時間T5だけ継続していなければ、CPUはステップ1520にて「No」と判定してステップ1595に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となっている状態が第5の所定時間T5だけ継続していると、CPUはステップ1520にて「Yes」と判定し、ステップ1330乃至ステップ1370の処理を行う。これにより、電気加熱ヒータ44への通電が停止するために低温脱離促進制御が停止し、下流側目標値Voxsrefが理論空燃比相当電圧Vstに設定される。更に、低温脱離促進制御実行フラグXB、硫黄被毒解除要求フラグXSrmv、及び、積算吸入空気量SGaの各値が「0」に設定される。その後、CPUは、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0182】
このように、低温脱離促進制御は、低温脱離促進制御が実行されている場合にフューエルカット運転が実行され且つ下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となっている状態が第5の所定時間T5に到達したとき、触媒の硫黄被毒状態が解消されると考えられるので、停止される。なお、第5の所定時間T5は極めて短い時間であってもよい。換言すると、フューエルカット運転が実行された後に、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となったとき、低温脱離促進制御が停止されてもよい。更に、なお、フューエルカット運転状態が「第4の所定時間T4よりも極めて短い所定時間」だけ継続したとき、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min近傍になっていることを確認することなく、低温脱離促進制御を停止してもよい。
【0183】
以上、説明したように、第2制御装置は、硫黄被毒解除要求が発生した場合(硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」である場合)、触媒の温度が第1温度TempLo以上(且つ、第2温度TempHi未満)となるように電気加熱手段(電気加熱ヒータ44)に電力を供給する(低温脱離促進制御を実行する)とともに(図12のステップ1240を参照。)、その電気加熱ヒータ44への電力の供給中に燃料の供給が停止された場合にその電力の供給を停止することにより低温脱離促進制御を停止する(図15のステップ1310乃至ステップ1330を参照。)、電力制御手段を備える。
【0184】
即ち、第2制御装置の電力制御手段は、前記触媒の温度が、前記第1温度TempLoと、前記触媒に流入する排ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度であって且つ前記第1温度よりも高い温度である第2温度TempHiと、の間の温度(TempLo+α)となるように前記電力の供給を行う。
【0185】
更に、第2制御装置は、
前記硫黄被毒解除要求が発生していない場合(硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「0」である場合)、排ガスの空燃比を、理論空燃比よりも第1値X1だけ大きいリーンな空燃比と理論空燃比よりも第2値X2だけ小さいリッチな空燃比とに時間的に交互に変更させることにより排ガスの空燃比の平均が触媒43のウインドウの範囲内の所定の基準空燃比(例えば、理論空燃比)となるように機関10に供給される燃料の量を制御する燃料供給手段を備える(図14の(A)及び(B)、図13のステップ1340、図6のサブフィードバック量KSFB、図4のステップ420等を参照。)
【0186】
加えて、その燃料供給手段は、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合(硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」である場合)、排ガスの空燃比を、理論空燃比よりも第3値X3(第3値X3<第1値X1)だけ大きいリーンな空燃比と理論空燃比よりも第4値X4(第4値X4≧第2値X2)だけ小さいリッチな空燃比とに時間的に交互に変更させることにより「排ガスの空燃比の平均が触媒43のウインドウの範囲内の所定の空燃比」となるように機関10に供給される燃料の量を制御する(図14の(C)及び(D)、図12のステップ1260、図6のサブフィードバック量KSFB、図4のステップ420等を参照。)。
【0187】
これによれば、硫黄被毒解除要求が発生して触媒の温度を「第1温度TempLo以上で且つ第2温度TempHi未満」に維持する場合、排ガスの空燃比がリーン空燃比である時間を「エミッションが極端に悪化しない範囲において」相対的に長くすることができる。従って、触媒の硫黄被毒状態を解除するために「触媒の温度を第1温度TempLo以上で且つ第2温度TempHi未満に維持しておく時間」を結果的に短くすることができるので、電気加熱手段(電気加熱ヒータ44)に供給する電力の総量を低減することができる。
【0188】
なお、第2制御装置は、図6に示されたフローチャートに依ることなく、以下のようにサブフィードバック量KSFBを算出してもよい。
【0189】
・低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「0」である場合;
下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが「理論空燃比相当電圧Vstに設定された下流側目標値Voxsref」よりも大きいとき、サブフィードバック量KSFBは「負の一定値(−X1)」に設定される。値X1は正の値であり(X1>0)、第1値とも称呼される。これにより、目標空燃比abyfrは、理論空燃比stoichに一定値X1を加えた値(stoich+X1)になるので、排ガスの空燃比は値(stoich+X1)に略一致する。
下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが「理論空燃比相当電圧Vstに設定された下流側目標値Voxsref」よりも小さいとき、サブフィードバック量KSFBは「正の一定値X2」に設定される。値X2は第2値とも称呼される。第2値KB2は第1値KB1と等しくてもよい。これにより、目標空燃比abyfrは、理論空燃比stoichから一定値X2を減じた値(stoich−X2)になるので、排ガスの空燃比は値(stoich−X2)に略一致する。
【0190】
・低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」である場合;
下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが「理論空燃比相当電圧Vstに設定された下流側目標値Voxsref」よりも大きいとき、サブフィードバック量KSFBは「負の一定値(−X3)」に設定される。値X3は正の値であり(X3>0)、第3値とも称呼される。第3値X3は第1値X1よりも小さい。これにより、目標空燃比abyfrは、理論空燃比stoichに一定値X3を加えた値(stoich+X3)になるので、排ガスの空燃比は値(stoich+X3)に略一致する。
下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが「理論空燃比相当電圧Vstに設定された下流側目標値Voxsref」よりも小さいとき、サブフィードバック量KSFBは「正の一定値X4」に設定される。値X4は第4値とも称呼され、第2値X2以上である。これにより、目標空燃比abyfrは、理論空燃比stoichから一定値X4を減じた値(stoich−X4)になるので、排ガスの空燃比は値(stoich−X4)に略一致する。
【0191】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る制御装置(以下、単に「第3制御装置」と称呼する。)について説明する。第3制御装置は、ハイブリッド車両に搭載された機関10に適用される。
【0192】
ハイブリッド車両においては、その車両の走行状態が「定常走行時及び減速時等」である特定の状態(即ち、機関10が車両駆動力の一部又は全部を発生する必要がない運転状態)にある場合、機関10の運転が完全に停止される。このとき、機関10は車輪側から逆駆動されないので、機関10は回転しない。従って、このような運転状態においては、機関10から大気がポンピング(排出)されないので、大気が触媒に流入しない。よって、触媒に酸素が供給されないから、触媒の温度が第1温度TempLo以上であっても、触媒の硫黄被毒状態は殆ど解除されない。
【0193】
そこで、第3制御装置は、硫黄被毒解除要求が発生している場合であって且つ機関10の運転が完全に停止されるような状態であるとき、触媒の温度を第1温度TempLo以上(且つ第2温度TempHi未満)に制御する(低温脱離制御を実行する)とともに、車両に搭載されている電動モータにより機関10を強制的に回転させる制御(以下、「空気供給脱離制御」とも称呼する。)を実行する。これにより、触媒に空気(酸素)を強制的に供給することができるので、硫黄被毒状態を迅速に解除することができる。
【0194】
(ハイブリッド車両の概略構成)
図16に示したように、周知のハイブリッド車100は、機関10、フロントモータ(モータ・ジェネレータ)101、動力切替部102、動力伝達部103、インバータ104、バッテリ105、及び、リヤモータ(モータ・ジェネレータ)とディファレンシャルとを含むリヤトランスアクスル106を備えている。
【0195】
フロントモータ101は、回転トルクを発生するモータ及び回転駆動されることにより発電を行うジェネレータの両機能を備えている。
【0196】
動力切替部102は、例えば特開2003−291691号公報等に記載されているように、機関10の出力トルクを動力伝達部103に伝達する状態、フロントモータ101の出力トルクを動力伝達部103に伝達する状態、機関10によってフロントモータ101を駆動する状態、及び、フロントモータ101によって機関10を駆動する状態等の種々の状態を達成するようになっている。
【0197】
動力伝達部103は無段変速機及びディファレンシャルを含んでいる。動力伝達部103は動力切替部102から伝達されたトルクを、前輪の車軸を回転するトルクに変換するようになっている。
【0198】
インバータ104は、フロントモータ101を回転させるためにバッテリ105から供給される電力に基いてフロントモータ101のステータコイルの3相巻線に通電する3相交流電流を発生するようになっている。インバータ104はフロントモータ101が発電しているとき、フロントモータ101から付与される交流信号を直流電圧に変換し、バッテリ105を充電するようになっている。
【0199】
リヤトランスアクスル106はリヤモータが発生するトルクを、後輪の車軸を回転するトルクに変換するようになっている。
【0200】
(実際の作動)
第3制御装置のCPUは、図4乃至図6に示したルーチンを実行することにより、燃料噴射量の制御を行う。但し、図4のステップ410におけるフューエルカットフラグXFCを「1」に設定するフューエルカット条件は、車両100が「定常走行時及び減速時等」である特定の状態(即ち、機関10が車両駆動力の一部又は全部を発生する必要がない運転状態)にある場合にも成立する。
【0201】
更に、第3制御装置のCPUは、図10及び図11に示したルーチンを実行することにより、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値を操作する。即ち、第3制御装置のCPUは、第1制御装置のCPUと同様に硫黄被毒解除要求を発生する。
【0202】
加えて、第3制御装置のCPUは、図17にフローチャートにより示した空気供給脱離制御開始ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUは図17のステップ1700から処理を開始し、ステップ1710に進んで硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」であるか否かを判定する。
【0203】
硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「0」であると、CPUはステップ1710にて「No」と判定し、ステップ1795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」であると、CPUはステップ1710にて「Yes」と判定してステップ1720に進み、空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「0」であるか否かを判定する。
【0204】
空気供給脱離制御実行フラグXCの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定され、空気供給脱離制御が実行されているときに「1」に設定される(後述するステップ1790を参照。)。空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「1」であると(即ち、現時点において空気供給脱離制御が実行されていると)、CPUはステップ1720にて「No」と判定し、ステップ1795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0205】
これに対し、空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「0」であると(即ち、現時点において空気供給脱離制御が実行されていないと)、CPUはステップ1720にて「Yes」と判定してステップ1730に進み、触媒の温度(触媒床温)Tempccroが第1温度TempLoよりも小さいか否かを判定する。
【0206】
CPUがステップ1730の処理を行う時点において、触媒温度Tempccroが第1温度TempLoよりも高い場合、CPUはステップ1730にて「No」と判定し、ステップ1795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、CPUがステップ1730の処理を行う時点において、触媒温度Tempccroが第1温度TempLoよりも低い場合、CPUはステップ1730にて「Yes」と判定してステップ1740に進み、現時点において車両100がフロントモータ101及びリヤモータのみで運転を行っている状態(機関10が車両駆動力の一部又は全部を発生する必要がない運転状態であり、以下「モータ走行状態」と称呼する。)にあるか否かを判定する。
【0207】
CPUがステップ1740の処理を行う時点において、モータ走行状態でない場合、CPUはステップ1740にて「No」と判定し、ステップ1795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、CPUがステップ1740の処理を行う時点において、モータ走行状態である場合、CPUはステップ1740にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1750及びステップ1790の処理を順に行い、その後、ステップ1795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0208】
ステップ1750:CPUは、フューエルカットフラグXFCの値を「1」に設定する。これにより、機関10への燃料の供給(燃料噴射)が停止される。
ステップ1760:CPUは、点火プラグ(実際にはイグナイタ)への点火信号の送出を停止する。
【0209】
ステップ1770:CPUは、電気加熱ヒータ44への通電を開始するとともに、実際の触媒温度が「第1温度TempLoに0以上のマージン温度(所定温度)αを加えた温度」に一致するように、電気加熱ヒータ44に供給する電力(実際には、電気加熱ヒータ44のヒータを流れる電流)を制御する。
【0210】
ステップ1780:CPUは、フロントモータ101によって機関10を駆動する状態を達成するように、フロントモータ101及び動力切替部102等を制御することにより、機関10を強制的に回転させる。
ステップ1790:CPUは、空気供給脱離制御実行フラグXCの値を「1」に設定する。
【0211】
このように、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」であり且つモータ走行状態である場合、触媒の温度を第1温度TempLo以上且つ第2温度TempHi未満(第1温度TempLo+α)に維持するとともに機関10をモータにより強制的に回転駆動する「空気供給脱離制御」が実行される。その結果、上記「知見4」に記載したように、機関10から排出された多量の空気が触媒に流れ込むので、触媒の貴金属に吸着している硫黄(硫黄成分)が貴金属から短時間にて脱離する。
【0212】
<空気供給脱離制御の停止(1)>
CPUは図18にフローチャートにより示した空気供給脱離制御停止(その1)のルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1800から処理を開始し、ステップ1810に進んで空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「1」であるか否かを判定する。
【0213】
このとき、空気供給脱離制御が実行されておらず、従って、空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「0」であると、CPUはステップ1810にて「No」と判定してステップ1895に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、空気供給脱離制御が実行されていて、従って、空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「1」であると、CPUはステップ1810にて「Yes」と判定し、ステップ1820に進んで空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「1」である継続時間が第6の所定時間T6以上であるか否かを判定する。
【0214】
このとき、空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「1」である継続時間が第6の所定時間T6未満であると、CPUはステップ1820にて「No」と判定してステップ1895に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「1」である継続時間が第6の所定時間T6以上であると、CPUはステップ1820にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1830乃至ステップ1870の処理を順に行い、その後、ステップ1895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0215】
ステップ1830:CPUは電気加熱ヒータ44への通電を停止する。即ち、電気加熱ヒータ44のヒータ電力を「0」に設定することにより、電気加熱ヒータ44への電力の供給を停止する。
【0216】
ステップ1840:CPUは、フロントモータ101による機関10の強制回転を停止する。この結果、空気供給脱離制御が停止される。
ステップ1850:CPUは、空気供給脱離制御実行フラグXCの値を「0」に設定する。
ステップ1860:CPUは、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値を「0」に設定する。
ステップ1870:CPUは、積算吸入空気量SGaの値を「0」に設定する(図10のルーチンを参照。)。
【0217】
以上、説明したように、空気供給脱離制御は、第6の所定時間T6だけ継続して実行されたときに停止される。換言すると、第6の所定時間T6は、空気供給脱離制御を第6の所定時間T6だけ継続することにより触媒の貴金属から硫黄成分が実質的に全て脱離し、硫黄被毒解除が完了するような時間に設定されている。空気供給脱離制御においては、第1温度TempLo以上の温度となっている触媒に多量の酸素(大気)が供給されるので、第6の所定時間T6は極めて短い時間である。
【0218】
<空気供給脱離制御の停止(2)>
CPUは図19にフローチャートにより示した空気供給脱離制御停止(その2)のルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1900から処理を開始し、ステップ1910に進んで空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「1」であるか否かを判定する。
【0219】
このとき、空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「0」であると、CPUはステップ1910にて「No」と判定してステップ1995に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、空気供給脱離制御が実行されていて、従って、空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「1」であると、CPUはステップ1910にて「Yes」と判定してステップ1920に進み、現時点において車両100が「モータ走行状態でない」か否かを判定する。即ち、CPUは、ステップ1910及びステップ1920の処理により、空気供給脱離制御中にモータ走行状態ではない状態となったか否かを判定する。
【0220】
CPUがステップ1920の処理を実行する時点において、モータ走行状態である場合、CPUはそのステップ1920にて「No」と判定し、ステップ1995に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、CPUがステップ1920の処理を行う時点において、モータ走行状態でない場合、CPUはそのステップ1920にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1930及びステップ1950の処理を順に行い、その後、ステップ1995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0221】
ステップ1930:CPUは、電気加熱ヒータ44への通電を停止する。即ち、電気加熱ヒータ44のヒータ電力を「0」に設定することにより、電気加熱ヒータ44への電力の供給を停止する。
ステップ1940:CPUは、フロントモータ101による機関10の強制回転を停止する。この結果、空気供給脱離制御が停止される。
ステップ1950:CPUは、空気供給脱離制御実行フラグXCの値を「0」に設定する。
【0222】
このように、CPUは、空気供給脱離制御中に車両100の運転状態がモータ走行状態ではなくなると、空気供給脱離制御を直ちに終了する。但し、この場合、硫黄被毒状態が解消されていないので、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値は「0」に設定されず、積算吸入空気量SGaも「0」に設定されない。
【0223】
以上、説明したように、第3制御装置は、機関10が電動モータ(フロントモータ101及びリヤモータ)と共に車両駆動力を発生するように構成されたハイブリッド車両100に搭載されている場合に適用される。そして、第3制御装置は、硫黄被毒解除要求が発生している場合(硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」である場合)であって、且つ、機関10が前記車両駆動力の一部又は全部を発生する必要がない運転状態(モータ走行状態)にある場合おいて、触媒の温度を第1温度TempLo以上であり且つ第2温度TempHi未満に維持するとともに(図17のステップ1770)、前記燃料供給手段による前記燃料の供給を停止させるとともに(図17のステップ1750及び図4のステップ410での「No」との判定を参照。)、前記電動モータにより機関10を強制的に回転させることにより触媒43に機関10を通して空気(大気)を供給する空気供給制御手段(図17のステップ1780)を備える。
【0224】
この結果、機関10のみを動力源として備える通常の車両に機関10が搭載されている場合のフューエルカット運転時(燃料供給停止時)と同様、触媒の硫黄被毒状態を極めて短時間にて解除することができる。その結果、「触媒の温度を第1温度以上に維持しておく時間」を結果的に短くすることができるので、電気加熱手段(電気加熱ヒータ44)に供給する電力の総量を低減することができる。
【0225】
更に、第3制御手段の電力制御手段は、
前記空気供給制御手段により前記触媒に前記機関を通して前記空気が所定時間(第6の所定時間T6)供給された場合(即ち、触媒に空気が所定量以上供給された場合)、前記電気加熱手段への電力の供給を停止するように構成されている(図18のステップ1810乃至ステップ1830を参照。)。
【0226】
前記空気供給制御手段により機関10が回転させられ、触媒43に空気が所定時間供給された場合、硫黄被毒状態は短時間にて解除(消滅、解消)される。従って、第3制御装置によれば、機関10の強制回転駆動によって触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sが貴金属から除去された後の期間において、電気加熱手段(電気加熱ヒータ44)に無駄な電力が供給され続けることを回避することができる。この結果、「燃費の悪化及び/又はバッテリ残量の低下」を回避することができる。なお、第3制御装置は、ステップ1770において、電気加熱ヒータ44への通電を開始するとともに、実際の触媒温度が「第2温度TempHiに0以上のマージン温度(所定温度)αを加えた温度」に一致するように、電気加熱ヒータ44に供給する電力を制御してもよい。
【0227】
以上、説明したように、本発明に係る制御装置の各実施形態によれば、電力を効率的に使用しながら、触媒43の硫黄被毒状態を解消することができる。なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、各制御装置のCPUは、触媒温度Tempccroが第1温度TempLo未満である状態における「機関10の運転時間の総和」が閾値よりも大きくなった場合に、硫黄被毒解除要求を発生する(硫黄被毒解除要求フラグXSrmvを「1」に設定する)ように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0228】
10…内燃機関、30…吸気系統、33…燃料噴射弁、34…スロットル弁、40…排気系統、41…エキゾーストマニホールド、42…エキゾーストパイプ、43…上流側触媒(三元触媒、触媒)、44…電気加熱ヒータ、56…上流側空燃比センサ、57…下流側空燃比センサ、58…アクセル開度センサ、59…バッテリ残量センサ、70…電気制御装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気通路に触媒を備える内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関の排気通路に配設された触媒(三元触媒)が担持する貴金属に燃料に含まれる硫黄(S)成分が付着し、触媒の機能が低下することが知られている。硫黄成分の貴金属への付着により触媒の機能が低下した状態は「硫黄被毒状態」とも称呼される。硫黄被毒状態が発生すると触媒の浄化能力が低下するので、エミッションが悪化する場合がある。
【0003】
そこで、従来の装置の一つは、電気加熱手段に通電して触媒の温度を所定温度以上にまで上昇させ、以って、触媒の硫黄被毒状態を解除(触媒の貴金属に付着した硫黄成分を除去)するようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2785707号明細書
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、上記従来技術は、触媒が硫黄被毒状態にある場合に電気加熱手段に通電を行うにあたり、触媒の温度をどのような温度にするのか、或いは、どのような場合に通電を停止してよいのか、について詳細に検討していない。従って、電気加熱手段に供給する電力が無駄に消費される場合が生じ、そのために、燃費が悪化したり或いはバッテリ残量が過度に低下したりする問題がある。
【0006】
本発明は上記課題に対処するために為されたものであって、その目的の一つは、触媒の硫黄被毒状態を解除するために電気加熱手段に供給する電力の量をより適切に制御することによって、「燃費の悪化及び/又はバッテリ残量の低下」を回避し得る内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0007】
本発明は、次に述べる知見(推定)の少なくとも一つを利用している。なお、以下において、理論空燃比よりもリッチな空燃比(理論空燃比よりも小さい空燃比)を単に「リッチ空燃比」とも称呼し、理論空燃比よりもリーンな空燃比(理論空燃比よりも大きい空燃比)を単に「リーン空燃比」とも称呼する。更に、触媒に流入する排ガスを「触媒流入ガス」とも称呼し、触媒から流出する排ガスを「触媒流出ガス」とも称呼する。
【0008】
「知見1」
触媒の温度(触媒床温)が比較的低温の第1温度(例えば、500℃)以下であるとき、硫黄Sは硫黄酸化物SOx(例えば、SO4)となって触媒に吸着する。硫黄(硫黄酸化物)は、触媒の貴金属にも吸着されるが、面積の大きい「触媒の貴金属を担持している担体又は担体のコート材(以下、「担体」と総称する。)」に多く吸着される。
【0009】
「知見2」
触媒の温度が第1温度よりも若干上昇した場合(例えば、触媒の温度が600℃程度である場合)、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比であると、担体に吸着されているSOxは担体から脱離し、その一部が触媒の貴金属に吸着される。
【0010】
「知見3」
触媒の貴金属に付着したSOxは、第1温度よりも僅かに高い温度領域において、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比である場合、硫黄Sに変化して貴金属に蓄積される。
【0011】
「知見4」
触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sは、触媒の温度が第1温度(例えば、500℃)以上である場合、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比であるときに二酸化硫黄SO2へと変化して貴金属から脱離する。このとき、リーン空燃比が「よりリーン側の空燃比(より大きい空燃比)」であるほど、即ち、排ガス中に「より多くの酸素(酸化剤)」が含まれているほど、硫黄は「より短い時間」にて貴金属から脱離する。
【0012】
「知見5」
触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sは、触媒の温度が「第1温度よりも高い第2温度(例えば、700℃)」以上である場合、触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比であるときに硫化水素H2Sへと変化して貴金属から脱離する。このとき、リッチ空燃比が「よりリッチ側の空燃比(より小さい空燃比)」であるほど、即ち、排ガス中に「より多くの還元剤」が含まれているほど、硫黄は「より短い時間」にて貴金属から脱離する。なお、「知見4」にて述べたように、触媒の温度が第2温度以上であれば、触媒の温度は第1温度以上であるから、触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sは触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比であるときに二酸化硫黄SO2へと変化して貴金属から脱離する。即ち、触媒の温度が第2温度以上である場合、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比であるかリッチ空燃比であるかに関わらず、触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sは貴金属から脱離する。
【0013】
本発明による内燃機関の制御装置(以下、単に「本発明装置」とも称呼する。)は、内燃機関の排気通路に配設された触媒と、前記触媒を電気的に加熱する電気加熱手段と、前記機関に燃料を供給する燃料供給手段と、所定のフューエルカット条件が成立しているとき前記燃料の供給を停止するフューエルカット手段と、要求発生手段と、電力制御手段と、を備える。
【0014】
前記要求発生手段は、前記触媒の硫黄被毒状態を解除するべき状態となったときに硫黄被毒解除要求を発生するようになっている。即ち、前記要求発生手段は、機関の運転パラメータに基いて前記触媒の貴金属に硫黄が所定量以上蓄積したか否かを判定し、前記触媒の貴金属に硫黄が所定量以上蓄積したと判定したとき前記硫黄被毒解除要求を発生する。換言すると、前記要求発生手段は、前記触媒に蓄積される硫黄の量が大きいほど大きくなるパラメータを推定するとともに前記推定されたパラメータが所定の閾値以上となったときに硫黄被毒解除要求を発生するように構成されることができる。例えば、前記要求発生手段は、上記「知見1」に基き、触媒の温度が第1温度以下である状態における「機関の吸入空気量の積算値又は機関の運転時間の総和」を前記パラメータとして算出し、そのパラメータが閾値よりも大きくなった場合に前記触媒の硫黄被毒状態を解除するべき状態となったと判定し、前記硫黄被毒解除要求を発生するように構成され得る。
【0015】
前記電力制御手段は、前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記触媒の温度が第1温度以上となるように、前記電気加熱手段に電力を供給する。前記第1温度は、「前記触媒に流入する排ガスの空燃比(触媒流入ガスの空燃比)が理論空燃比よりもリーンな空燃比(リーン空燃比)であるときに前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度のうちの最小値」である。
【0016】
上記構成によれば、硫黄被毒解除要求が発生した場合、電気加熱手段により触媒の温度が第1温度以上にまで上昇させられる。従って、上記「知見4」に記載したように、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比であるとき、触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sは貴金属から脱離する。更に、触媒の温度が第2温度以上にまで上昇していれば、上記「知見5」に記載したように、触媒流入ガスの空燃比に関わらず、触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sは貴金属から脱離する。
【0017】
ところで、フューエルカット手段による燃料供給の停止状態(フューエルカット運転中)は、空燃比が非常に大きい排ガスが触媒に流入している状態であると言うことができる。換言すると、フューエルカット運転中においては、多量の酸素が触媒に供給される。従って、上記「知見4」に記載したように、電気加熱手段により触媒の温度が第1温度以上にまで上昇させられているときにフューエルカット手段によって前記燃料の供給が停止されると、触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sは極めて短時間にて貴金属から脱離し、硫黄被毒状態は解除される(消滅する)。
【0018】
そこで、前記電力制御手段は、前記電気加熱手段への前記電力の供給中に前記フューエルカット手段によって前記燃料の供給が停止された場合、前記電気加熱手段への電力の供給を停止する。
【0019】
これによれば、燃料の供給停止(フューエルカット)により触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sが貴金属から除去された後の期間において、電気加熱手段に無駄な電力が供給され続けることを回避することができる。この結果、「燃費の悪化及び/又はバッテリ残量の低下」を回避することができる。
【0020】
本発明装置の一態様において、
前記電力制御手段は、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記触媒の温度が、前記第2温度(前記触媒に流入する排ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度であって且つ前記第1温度よりも高い温度)以上となるように前記電気加熱手段に電力を供給するように構成される。
【0021】
これによれば、上記「知見5」に記載したように、触媒流入ガスの空燃比に関わらず、触媒の硫黄被毒状態を解除することができるので、触媒流入ガスの空燃比をエミッションを良好にするために適切な空燃比に制御しながら、且つ、短時間にて、触媒の硫黄被毒状態を解除することができる。更に、触媒の温度を第2温度以上に維持するためには、電気加熱手段に大きい電力を供給しなければならないので、フューエルカット手段により燃料供給が停止された場合に電気加熱手段への電力供給を停止する本発明装置は、無駄な電力の消費を一層効果的に回避することができる。
【0022】
ところで、上記「知見4」に記載したように、触媒の温度が第1温度以上であり且つ第2温度以下である場合、触媒流入ガスの空燃比が「よりリーン側の空燃比」であるほど、硫黄は「より短い時間」にて貴金属から脱離する。しかしながら、燃焼ガス(排ガス)の空燃比がリーン空燃比であるとしても、その空燃比の大きさは「エミッション上問題とならない空燃比」であり且つ「機関に失火が生じない範囲の空燃比」である。
【0023】
従って、機関に供給される混合気の空燃比をできるだけリーン側の空燃比(大きい空燃比)に設定したとしても、燃焼ガスである排ガスに含まれる酸素の濃度は、燃料供給の停止時に触媒流入ガスに含まれる酸素の濃度に比較した場合、「硫黄を極めて短時間にて貴金属から脱離させることが可能な大きさ」にはなり難い。従って、燃料供給が停止されていない場合において、「排ガスの空燃比がリッチ空燃比となっている時間」に比較して「排ガスの空燃比がリーン空燃比となっている時間」を「エミッションを悪化させない範囲において」長くした方が、触媒の硫黄被毒状態を解除するのに必要な時間(即ち、触媒の温度を第1温度以上に維持しなければならない時間)を結果的に短くすることができ、その結果、電気加熱手段に供給される電力を有効に使用することができる。
【0024】
そこで、本発明装置の他の態様において、
前記電力制御手段は、
前記触媒の温度が、前記第1温度と、前記触媒に流入する排ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度であって且つ前記第1温度よりも高い温度である第2温度と、の間の温度となるように前記電力の供給を行い、
前記燃料供給手段は、
前記硫黄被毒解除要求が発生していない場合、前記排ガスの空燃比を、理論空燃比よりも第1値だけ大きいリーンな空燃比と、理論空燃比よりも第2値だけ小さいリッチな空燃比と、に時間的に交互に変更させることにより、前記排ガスの空燃比の平均が触媒43のウインドウの範囲内の所定の空燃比(例えば、理論空燃比)となるように前記機関に供給される燃料の量を制御し、且つ、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記排ガスの空燃比を、理論空燃比よりも「前記第1値よりも小さい第3値」だけ大きいリーンな空燃比と、理論空燃比よりも「前記第2値以上である第4値」だけ小さいリッチな空燃比と、に時間的に交互に変更させることにより、前記排ガスの空燃比の平均が前記触媒のウインドウの範囲内の所定の空燃比となるように前記機関に供給される燃料の量を制御する、
ように構成される。
【0025】
これによれば、硫黄被毒解除要求が発生して触媒の温度を第1温度以上で且つ第2温度未満に維持する場合、排ガスの空燃比がリーン空燃比である時間を「エミッションが極端に悪化しない範囲において」相対的に長くすることができる。従って、触媒の硫黄被毒状態を解除するために「触媒の温度を第1温度以上で且つ第2温度未満に維持しておく時間」を結果的に短くすることができるので、電気加熱手段に供給する電力の総量を低減することができる。
【0026】
同様な理由から、本発明装置の他の態様は、
前記触媒の下流の排気通路に配設された下流側空燃比センサを備え、
前記電力制御手段は、
前記触媒の温度が、前記第1温度と、前記触媒に流入する排ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度であって且つ前記第1温度よりも高い温度である第2温度と、の間の温度となるように前記電力の供給を行い、
前記燃料供給手段は、
前記硫黄被毒解除要求が発生していない場合、「前記下流側空燃比センサの出力値」と「第1下流側目標値(例えば、理論空燃比に相当する値)」との偏差をゼロにするための比例積分制御に従って前記下流側空燃比センサの出力値が前記第1下流側目標値に一致するように前記機関に供給される燃料の量をフィードバック制御し、且つ、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、「前記下流側空燃比センサの出力値」と「前記第1下流側目標値に対応する空燃比よりもリッチ側の空燃比に対応する第2下流側目標値」との偏差をゼロにするための比例積分制御に従って前記下流側空燃比センサの出力値が前記第2下流側目標値に一致するように前記機関に供給される燃料の量をフィードバック制御する、
ように構成される。
【0027】
なお、一般には、下流側空燃比センサは起電力式の酸素濃度センサであり、リッチ空燃比に対する下流側空燃比センサの出力値はリーン空燃比に対する下流側空燃比センサの出力値よりも大きいので、前記第2下流側目標値は前記第1下流側目標値よりも大きい値に設定される。
【0028】
これによれば、硫黄被毒解除要求が発生した場合、下流側空燃比センサの出力値を第2下流側目標値に維持しながら、「排ガスの空燃比がリーン空燃比に維持されている時間」を「排ガスの空燃比がリッチ空燃比に維持されている時間」よりも長くすることができる。換言すると、排ガスの空燃比がリーン空燃比である時間を「エミッションが極端に悪化しない範囲において」相対的に長くすることができる。従って、触媒の硫黄被毒状態を解除するために「触媒の温度を第1温度以上で且つ第2温度以下に維持しておく時間」を結果的に短くすることができるので、電気加熱手段に供給する電力の総量を低減することができる。なお、本明細書において、比例積分制御(PI制御)は比例積分微分制御(PID制御)を含む概念として使用される。
【0029】
ところで、機関が所謂「ハイブリッド車両(機関が電動モータと共に車両駆動力を発生するように構成された車両)」に搭載された場合、例えば、その車両の走行状態が「定常走行状態及び減速状態等」である期間、機関の運転は停止される。このとき、一般に、機関は回転しない。従って、このような運転状態においては、機関はポンピング動作を行わないので、機関から大気が排出されない。従って、大気が触媒に流入しないので、触媒の温度が第1温度以上であっても、触媒の硫黄被毒状態は解除され難い。
【0030】
そこで、前記機関が前記ハイブリッド車両に搭載されている場合、本発明装置の一態様は、前記硫黄被毒解除要求が発生している場合であって前記機関が前記車両駆動力の一部又は全部を発生する必要がない運転状態において、前記燃料供給手段による前記燃料の供給を停止させるとともに前記電動モータにより前記機関を強制的に回転させることにより前記触媒に前記機関を通して空気を供給する空気供給制御手段を備える。
【0031】
これによれば、硫黄被毒解除要求が発生している場合、触媒の温度が第1温度以上に維持され、且つ、触媒には「モータにより強制回転駆動された機関」から大気が送りこまれる。その結果、機関のみを動力源として備える通常の車両に同機関が搭載されている場合のフューエルカット運転時(燃料供給停止時)と同様、触媒の硫黄被毒状態を極めて短時間にて解除することができる。その結果、「触媒の温度を第1温度以上に維持しておく時間」を結果的に短くすることができるので、電気加熱手段に供給する電力の総量を低減することができる。
【0032】
この場合、前記電力制御手段は、前記空気供給制御手段により前記触媒に前記機関を通して前記空気が所定時間供給された場合に前記電気加熱手段への電力の供給を停止するように構成されることが好適である。
【0033】
前記空気供給制御手段により前記触媒に空気が供給された場合、硫黄被毒状態は短時間にて解除(消滅、解消)される。従って、上記構成によれば、前記空気供給制御手段により前記触媒に空気が供給されることにより触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sが貴金属から除去された後の期間において、電気加熱手段に無駄な電力が供給され続けることを回避することができる。この結果、「燃費の悪化及び/又はバッテリ残量の低下」を回避することができる。
【0034】
本発明装置の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明装置の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明の各実施形態に係る制御装置が適用される内燃機関の概略図である。
【図2】図2は、排ガスの空燃比と図1に示した上流側空燃比センサの出力値との関係を示したグラフである。
【図3】図3は、排ガスの空燃比と図1に示した下流側空燃比センサの出力値との関係を示したグラフである。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態に係る制御装置(第1制御装置)のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図5】図5は、第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図6】図6は、第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図7】図7は、第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図8】図8は、第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図9】図9は、第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図10】図10は、第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図11】図11は、第1制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図12】図12は、本発明の第2実施形態に係る制御装置(第2制御装置)のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図13】図13は、第2制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図14】図14は、第2制御装置の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図15】図15は、第2制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図16】図16は、本発明の第3実施形態に係る内燃機関の制御装置(第3制御装置)が適用される機関を搭載したハイブリッド車両の概略図である。
【図17】図17は、第3制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図18】図18は、第3制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図19】図19は、第3制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の各実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、単に「制御装置」とも称呼する。)について図面を参照しながら説明する。この制御装置は、内燃機関に供給される混合気の空燃比(機関の空燃比)を制御する空燃比制御装置(燃料噴射量制御装置)の一部でもあり、触媒の温度を調整する触媒温度制御装置、或いは、触媒の温度を調整するための電力量を制御する電力制御装置でもある。また、制御装置は、結果的にエミッションを良好にすることを目的とする装置であるので、内燃機関の排気浄化装置でもある。
【0037】
<第1実施形態>
(構成)
図1は、第1実施形態に係る制御装置(以下、「第1制御装置」とも称呼する。)を、4サイクル・火花点火式・多気筒(直列4気筒)・内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。
【0038】
内燃機関10は、機関本体部20と、吸気系統30と、排気系統40と、を含む。
【0039】
機関本体部20は、シリンダブロック部及びシリンダヘッド部を含む。機関本体部20は、複数の気筒(燃焼室)21を備えている。各気筒は、図示しない「吸気ポート及び排気ポート」と連通している。吸気ポートと燃焼室21との連通部は図示しない吸気弁により開閉される。排気ポートと燃焼室21との連通部は図示しない排気弁により開閉される。各燃焼室21には図示しない点火プラグが配設されている。点火プラグは、図示しない「イグナイタ及びイグニッションコイル」と接続されている。
【0040】
吸気系統30は、インテークマニホールド31、吸気管32、複数の燃料噴射弁33、及び、スロットル弁34を備えている。
【0041】
インテークマニホールド31は、複数の枝部31aとサージタンク31bとを備えている。複数の枝部31aのそれぞれの一端は、複数の吸気ポートのそれぞれに接続されている。複数の枝部31aの他端はサージタンク31bに接続されている。
【0042】
吸気管32の一端はサージタンク31bに接続されている。吸気管32の他端には図示しないエアフィルタが配設されている。
【0043】
燃料噴射弁33は、一つの気筒(燃焼室)21に対して一つずつ配設されている。燃料噴射弁33は吸気ポートに設けられている。即ち、複数の気筒のそれぞれは、他の気筒とは独立して燃料供給を行う燃料噴射弁33を備えている。燃料噴射弁33は、噴射指示信号に応答し、正常である場合に「その噴射指示信号に含まれる指示燃料噴射量の燃料」を吸気ポート(従って、燃料噴射弁33に対応する気筒)内に噴射するようになっている。
【0044】
より具体的に述べると、燃料噴射弁33は、指示燃料噴射量に応じた時間だけ開弁する。燃料噴射弁33に供給されている燃料の圧力は、その燃料の圧力と吸気ポート内の圧力との差圧が一定になるように図示しないプレッシャレギュレータにより制御されている。従って、燃料噴射弁33は指示燃料噴射量と等量の燃料を噴射する。
【0045】
スロットル弁34は、吸気管32内に回動可能に配設されている。スロットル弁34は、吸気通路の開口断面積を可変とするようになっている。スロットル弁34は、図示しないスロットル弁アクチュエータにより吸気管32内で回転駆動されるようになっている。
【0046】
排気系統40は、エキゾーストマニホールド41、エキゾーストパイプ42、エキゾーストパイプ42に配設された上流側触媒43、電気加熱ヒータ44、及び、上流側触媒43よりも下流においてエキゾーストパイプ42に配設された「図示しない下流側触媒」を備えている。
【0047】
エキゾーストマニホールド41は、複数の枝部41aと集合部41bとを備えている。複数の枝部41aのそれぞれの一端は、複数の排気ポートのそれぞれに接続されている。複数の枝部41aのそれぞれの他端は集合部41bに集合している。この集合部41bは、複数(2以上であり、本例では4つ)の気筒から排出された排ガスが集合する部分であるから、排気集合部HKとも称呼される。
【0048】
エキゾーストパイプ42は集合部41bに接続されている。排気ポート、エキゾーストマニホールド41及びエキゾーストパイプ42は、排気通路を構成している。
【0049】
上流側触媒43は、セラミックの一種であるコージェライトからなり且つアルミナのコート層によりコーティングされた担持体を備え、その担持体に「白金、ロジウム及びパラジウム等」の貴金属(触媒物質)からなる活性成分を担持する三元触媒装置(排気浄化用の触媒)である。各触媒は、各触媒に流入するガスの空燃比が「三元触媒のウインドウ内の空燃比(例えば、理論空燃比)」であるとき、HC,CO,H2などの未燃成分を酸化するとともに窒素酸化物(NOx)を還元する機能を有する。この機能は触媒機能とも称呼される。更に、各触媒は、酸素を吸蔵(貯蔵)する酸素吸蔵機能を有する。各触媒は、酸素吸蔵機能により空燃比が理論空燃比から偏移したとしても未燃成分及び窒素酸化物を浄化することができる。つまり、酸素吸蔵機能により、ウインドウの幅が拡大する。酸素吸蔵機能は、担持体に担持されているセリア(CeO2)等の酸素吸蔵材によってもたらされる。
【0050】
電気加熱ヒータ44は、電気加熱手段を構成する。電気加熱ヒータは通電されることにより(電力が供給されることにより)発熱し、上流側触媒43の温度(上流側触媒43の触媒床温)を上昇させるようになっている。以下、上流側触媒43の温度を単に「触媒の温度」とも称呼する。電気加熱ヒータ44の発熱量は、電気加熱ヒータ44に供給される電力(実際には電流)により制御されるようになっている。電気制御装置70は、電気加熱ヒータ44に供給される電力を調整・制御することにより、触媒43の温度を調整するようになっている。
【0051】
図示しない下流側触媒は、上流側触媒43と同様の三元触媒装置である。なお、本明細書において、「触媒」は特に断りのない限り上流側触媒43を指す。
【0052】
このシステムは、熱線式エアフローメータ51、スロットルポジションセンサ52、水温センサ53、クランクポジションセンサ54、インテークカムポジションセンサ55、上流側空燃比センサ56、下流側空燃比センサ57、アクセル開度センサ58、及び、バッテリ残量センサ59を備えている。
【0053】
エアフローメータ51は、吸気管32内を流れる吸入空気の質量流量(吸入空気流量)Gaに応じた信号を出力するようになっている。即ち、吸入空気量Gaは、単位時間あたりに機関10に吸入される吸入空気量を表す。
【0054】
スロットルポジションセンサ52は、スロットル弁34の開度(スロットル弁開度)を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
【0055】
水温センサ53は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。冷却水温THWは、機関10の暖機状態(機関10の温度)を表すパラメータである。
【0056】
クランクポジションセンサ54は、クランク軸が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに同クランク軸が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、後述する電気制御装置70によって機関回転速度NEに変換される。
【0057】
インテークカムポジションセンサ55は、インテークカムシャフトが所定角度から90度、次いで90度、更に180度回転する毎に一つのパルスを出力するようになっている。後述する電気制御装置70は、クランクポジションセンサ54及びインテークカムポジションセンサ55からの信号に基づいて、基準気筒(例えば第1気筒)の圧縮上死点を基準とした絶対クランク角度CAを取得するようになっている。この絶対クランク角度CAは、基準気筒の圧縮上死点において「0°クランク角度」に設定され、クランク軸の回転角度に応じて720°クランク角度まで増大し、その時点にて再び0°クランク角度に設定される。
【0058】
上流側空燃比センサ56は、エキゾーストマニホールド41の集合部41b(排気集合部HK)と上流側触媒43との間の位置において「エキゾーストマニホールド41及びエキゾーストパイプ42の何れか」に配設されている。上流側空燃比センサ56は、単に「空燃比センサ」とも称呼される。
【0059】
上流側空燃比センサ56は、例えば、特開平11−72473号公報、特開2000−65782号公報及び特開2004−69547号公報等に開示された「拡散抵抗層を備える限界電流式広域空燃比センサ」である。
【0060】
上流側空燃比センサ56は、図2に示したように、上流側空燃比センサ56の配設位置を流れる排ガスの空燃比(上流側空燃比abyfs)に応じた出力値Vabyfsを「空燃比センサ出力」として出力する。この出力値Vabyfsは、上流側空燃比センサ56に到達している排ガスの空燃比が大きくなるほど(リーンとなるほど)増大する。出力値Vabyfsは、上流側空燃比センサ56に到達している排ガスの空燃比が理論空燃比であるとき、理論空燃比相当値Vstoichに一致する。
【0061】
後述する電気制御装置70は、図2に示された関係を「空燃比変換テーブルMapabyfs(Vabyfs)」としてROM内に格納していて、実際の出力値Vabyfsを空燃比変換テーブルMapabyfs(Vabyfs)に適用することにより上流側空燃比abyfs(検出空燃比abyfs)を取得するようになっている。
【0062】
再び、図1を参照すると、下流側空燃比センサ57は、エキゾーストパイプ42内に配設されている。下流側空燃比センサ57の配設位置は、上流側触媒43よりも下流側であり、且つ、下流側触媒よりも上流側(即ち、上流側触媒43と下流側触媒との間の排気通路)である。下流側空燃比センサ57は、周知の起電力式の酸素濃度センサ(安定化ジルコニア等の固体電解質を用いた濃淡電池型の酸素濃度センサ)である。下流側空燃比センサ57は、排気通路であって下流側空燃比センサ57が配設されている部位を通過するガスである被検出ガスの空燃比(下流側空燃比)に応じた出力値Voxsを発生するようになっている。換言すると、出力値Voxsは、上流側触媒43から流出し且つ下流側触媒に流入するガスの空燃比(下流側空燃比afdown)に応じた値である。
【0063】
この出力値Voxsは、図3に示したように、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチのとき最大出力値max(例えば、約0.9V〜1.0V)となる。出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンのとき最小出力値min(例えば、約0.1V〜0V)となる。更に、出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比であるとき最大出力値maxと最小出力値minの略中間の電圧Vst(中間電圧Vst、理論空燃比相当電圧Vst、例えば、約0.5V)となる。出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比からリーンな空燃比へと変化する際に最大出力値maxから最小出力値minへと急変する。同様に、出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比からリッチな空燃比へと変化する際に最小出力値minから最大出力値maxへと急変する。
【0064】
図1に示したアクセル開度センサ58は、運転者によって操作されるアクセルペダルAPの操作量Accp(アクセルペダル操作量、アクセルペダルAPの開度)を表す信号を出力するようになっている。アクセルペダル操作量Accpは、アクセルペダルAPの操作量が大きくなるとともに大きくなる。
【0065】
バッテリ残量センサ59は、図示しない車両に搭載されたバッテリの残量を検出するようになっている。このバッテリから電気加熱ヒータ44に電力が供給される。バッテリ残量センサ59は、バッテリの電解液濃度を検出するセンサであってもよく、バッテリ電圧を検出するセンサであってもよい。
【0066】
電気制御装置70は、「CPU、CPUが実行するプログラム、ルックアップテーブル(マップ)、関数及び定数等を予め記憶したROM、CPUが必要に応じてデータを一時的に格納するRAM、バックアップRAM、並びに、ADコンバータを含むインターフェース等」からなる周知のマイクロコンピュータである。
【0067】
バックアップRAMは、機関10を搭載した車両の図示しないイグニッション・キー・スイッチの位置(オフ位置、始動位置及びオン位置等の何れか)に関わらず、車両に搭載されたバッテリから電力の供給を受けるようになっている。バックアップRAMは、バッテリから電力の供給を受けている場合、CPUの指示に応じてデータを格納する(データが書き込まれる)とともに、そのデータを読み出し可能となるように保持(記憶)する。従って、バックアップRAMは、機関10の運転停止中においてもデータを保持することができる。
【0068】
バックアップRAMは、バッテリが車両から取り外される等によりバッテリからの電力供給が遮断されると、データを保持することができない。そこで、CPUは、バックアップRAMへの電力供給が再開されたとき、バックアップRAMに保持されるべきデータを初期化(デフォルト値に設定)するようになっている。なお、バックアップRAMは、EEPROM等の読み書き可能な不揮発性メモリであってもよい。
【0069】
電気制御装置70は、上述したセンサ等と接続され、CPUにそれらのセンサからの信号を供給するようになっている。更に、電気制御装置70は、CPUの指示に応じて、各気筒に対応して設けられた点火プラグ(実際にはイグナイタ)、各気筒に対応して設けられた燃料噴射弁33、電気加熱ヒータ44、及び、スロットル弁アクチュエータ等に駆動信号(指示信号)を送出するようになっている。
【0070】
なお、電気制御装置70は、取得されたアクセルペダルの操作量Accpが大きくなるほどスロットル弁開度TAが大きくなるように、スロットル弁アクチュエータに指示信号を送出するようになっている。即ち、電気制御装置70は、運転者により変更される機関10の加速操作量(アクセルペダル操作量Accp)に応じて「機関10の吸気通路に配設されたスロットル弁34」の開度を変更するスロットル弁駆動手段を備えている。
【0071】
(第1制御装置による制御の概要)
第1制御装置は、先ず、上記「知見1」及び「知見2」に基づいて、触媒の温度が第1温度以下であるときの機関10の吸入空気量の積算値を求め、その積算値が閾値以上であるか否かを判定することにより、触媒が硫黄被毒状態に陥っているか否かを判定する。そして、第1制御装置は、触媒が硫黄被毒状態にあると判定すると、硫黄被毒解除要求(要求信号)を発生する。
【0072】
第1制御装置は、硫黄被毒解除要求が発生すると、「知見5」に基いて電気加熱ヒータ44に通電し(電気加熱ヒータ44に電力を供給し)、触媒の温度を「第2温度(例えば700℃)」以上にまで上昇させる。これにより、触媒流入ガスの空燃比に関わらず、触媒の貴金属に吸着している硫黄(硫黄成分)が貴金属から脱離する。このような制御(触媒の温度を第2温度以上に維持することにより硫黄を触媒の貴金属から脱離させる制御)を、便宜上「高温脱離促進制御」とも称呼する。第1制御装置は、高温脱離促進制御を第1の所定時間T1だけ継続すると硫黄被毒状態が解除されたと判断し、電気加熱ヒータ44への通電を停止する。
【0073】
但し、第1制御装置は、高温脱離促進制御中にフューエルカット運転状態(燃料供給・燃料噴射が停止される状態)になった場合、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min近傍になっている状態が第2の所定時間T2継続したとき、電気加熱ヒータ44への通電を停止する(即ち、高温脱離促進制御を停止する。)。第2の所定時間T2は第1の所定時間T1に比べて極めて短い時間である。なお、第1制御装置は、フューエルカット運転状態が「第1の所定時間T1よりも極めて短い第3の所定時間T3」だけ継続したとき、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min近傍になっていることを確認することなく、高温脱離促進制御を停止してもよい。
【0074】
(実際の作動)
次に、第1制御装置の実際の作動について説明する。
【0075】
<燃料噴射制御>
第1制御装置のCPUは、図4に示した燃料噴射制御ルーチンを、任意の気筒のクランク角度が吸気上死点前の所定クランク角度に一致する毎に、その気筒に対して繰り返し実行するようになっている。前記所定クランク角度は、例えば、BTDC90°CA(吸気上死点前90°クランク角度)である。クランク角度が前記所定クランク角度に一致した気筒は「燃料噴射気筒」とも称呼される。CPUは、この燃料噴射制御ルーチンにより、指示燃料噴射量Fiの計算及び燃料噴射の指示を行う。
【0076】
任意の気筒のクランク角度が吸気上死点前の所定クランク角度と一致すると、CPUはステップ400から処理を開始し、ステップ410にてフューエルカットフラグXFCが「0」であるか否かを判定する。フューエルカットフラグXFCの値は、イニシャルルーチンにおいて「0」に設定される。更に、フューエルカットフラグXFCの値は、フューエルカット条件が成立したときに「1」に設定され、フューエルカットフラグXFCの値が「1」である場合にフューエルカット条件が不成立となったとき「0」に設定される。なお、イニシャルルーチンは、機関10が搭載された車両のイグニッション・キー・スイッチがオフからオンに変更されたときにCPUにより実行されるルーチンである。
【0077】
フューエルカット条件は、例えば、フューエルカットフラグXFCの値が「0」である場合(フューエルカット条件が不成立と判定されている場合)において、スロットル弁開度TAが「0」(スロットル弁34が全閉)であり、且つ、機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEth以上であるとき成立する。
【0078】
フューエルカット条件は、例えば、フューエルカットフラグXFCの値が「1」である場合(フューエルカット条件が成立していると判定されている場合)において、スロットル弁開度TAが「0」(スロットル弁34が全閉)でなくなるか、又は、機関回転速度NEがフューエルカット復帰回転速度NErth未満となると不成立となる。フューエルカット復帰回転速度NErthは、フューエルカット回転速度NEthよりも正の所定回転速度だけ小さい回転速度である。
【0079】
いま、フューエルカットフラグXFCの値が「0」であると仮定する。この場合、CPUは、ステップ410にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ420乃至ステップ460の処理を順に行い、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0080】
ステップ420:CPUは、理論空燃比stoichからサブフィードバック量KSFBを減じた値を目標空燃比abyfrに設定する。サブフィードバック量KSFBは、後述する図6に示したルーチンにより別途求められている。
【0081】
ステップ430:CPUは、「エアフローメータ51により計測された吸入空気量Ga、クランクポジションセンサ54の信号に基いて取得された機関回転速度NE、及び、ルックアップテーブルMapMc」に基いて「燃料噴射気筒の1回の吸気行程において、その燃料噴射気筒に吸入される空気量」である「筒内吸入空気量Mc(k)」を取得する。筒内吸入空気量Mc(k)は、各吸気行程に対応されながらRAM内に記憶される。筒内吸入空気量Mc(k)は、周知の空気量推定モデル(吸気通路における空気の挙動を模した物理法則に従って構築されたモデル)により算出されてもよい。
【0082】
ステップ440:CPUは、筒内吸入空気量Mc(k)を目標空燃比abyfrで除することにより基本燃料噴射量Fbaseを求める。従って、基本燃料噴射量Fbaseは、機関の空燃比(従って、上流側触媒43に流入する排ガスの空燃比)を目標空燃比abyfrに一致させるために計算上必要な燃料噴射量のフィードフォワード量である。このステップ440は、機関に供給される混合気の空燃比を目標空燃比abyfrに一致させるためのフィードフォワード制御手段(基本燃料噴射量算出手段)を構成している。
【0083】
ステップ450:CPUは、基本燃料噴射量Fbaseをメインフィードバック量DFiにより補正する。より具体的には、CPUは、基本燃料噴射量Fbaseにメインフィードバック量DFiを加えることにより、指示燃料噴射量(最終燃料噴射量)Fiを算出する。メインフィードバック量DFiは、機関の空燃比(従って、上流側触媒43に流入する排ガスの空燃比)を目標空燃比abyfrに一致させるための空燃比フィードバック量であり、空燃比センサ56の出力値Vabyfsに基いて求められる。メインフィードバック量DFiの算出方法については後述する。
【0084】
ステップ460:CPUは、「指示燃料噴射量Fiの燃料」を「燃料噴射気筒に対応して設けられている燃料噴射弁33」から噴射させるための噴射指示信号を、その燃料噴射弁33に送出する。
【0085】
この結果、機関の空燃比を目標空燃比abyfrに一致させるために計算上必要な量(必要と推定される量)の燃料が燃料噴射気筒の燃料噴射弁33から噴射させられる。即ち、ステップ420乃至ステップ460は、機関10に供給される混合気の空燃比が目標空燃比abyfrとなるように指示燃料噴射量Fiを制御する指示燃料噴射量制御手段を構成している。
【0086】
一方、CPUがステップ410の処理を実行する時点において、フューエルカットフラグXFCの値が「1」に設定されていると、CPUはそのステップ410にて「No」と判定し、ステップ495に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、ステップ460の処理による燃料噴射が実行されないので、燃料の供給(燃料噴射)が停止される運転、即ち、フューエルカット運転が実行される。
【0087】
<メインフィードバック量の算出>
CPUは図5にフローチャートにより示した「メインフィードバック量算出ルーチン」を所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ500から処理を開始し、ステップ505に進んで「メインフィードバック制御条件(上流側空燃比フィードバック制御条件)」が成立しているか否かを判定する。
【0088】
メインフィードバック制御条件は以下の総ての条件が成立したときに成立する。
(A1)空燃比センサ56が活性化している。
(A2)機関の負荷KLが閾値KLth以下である。
(A3)フューエルカット運転中でない(フューエルカットフラグXFCが「0」である。)。
【0089】
なお、負荷KLは、ここでは下記の(1)式により求められる負荷率である。この負荷KLに代え、アクセルペダル操作量Accpが用いられても良い。(1)式において、Mcは筒内吸入空気量であり、ρは空気密度(単位は(g/l))、Lは機関10の排気量(単位は(l))、「4」は機関10の気筒数である。
KL=(Mc/(ρ・L/4))・100% …(1)
【0090】
いま、メインフィードバック制御条件が成立しているものとして説明を続ける。この場合、CPUはステップ505にて「Yes」と判定して以下に述べるステップ510乃至ステップ540の処理を順に行い、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0091】
ステップ510:CPUは、図4のステップ420にて算出され且つRAMに格納されている「Nサイクル前の目標空燃比abyfr(k−N)」を読み込む。
【0092】
ステップ515:CPUは、下記(2)式に示したように、空燃比センサ56の出力値Vabyfsを図2に示したテーブルMapabyfsに適用することにより、検出空燃比abyfsを得る。
abyfs=Mapabyfs(Vabyfs) …(2)
【0093】
ステップ520:CPUは、下記(3)式に従って、「現時点よりもNサイクル前の時点において燃焼室21に実際に供給された燃料の量」である「筒内燃料供給量Fc(k−N)」を求める。即ち、CPUは、「現時点よりもNサイクル(即ち、N・720°クランク角度)前の時点における筒内吸入空気量Mc(k−N)」を「検出空燃比abyfs」により除すことにより、筒内燃料供給量Fc(k−N)を求める。
Fc(k−N)=Mc(k−N)/abyfs …(3)
【0094】
このように、筒内燃料供給量Fc(k−N)を求めるために、現時点からNサイクル前の筒内吸入空気量Mc(k−N)を検出空燃比abyfsで除すのは、「燃焼室21内での混合気の燃焼により生成された排ガス」が空燃比センサ56に到達するまでに「Nサイクルに相当する時間」を要しているからである。
【0095】
ステップ525:CPUは、下記(4)式に従って、「現時点よりもNサイクル前の時点において燃焼室21に供給されるべきであった燃料の量」である「目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)」を求める。即ち、CPUは、現時点からNサイクル前の筒内吸入空気量Mc(k−N)を現時点からNサイクル前の目標空燃比abyfr(k−N)で除すことにより、目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)を求める。
Fcr(k−N)=Mc(k−N)/abyfr(k−N) …(4)
【0096】
ステップ530:CPUは、下記(5)式に従って、筒内燃料供給量偏差DFcを取得する。即ち、CPUは、目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)から筒内燃料供給量Fc(k−N)を減じることにより、筒内燃料供給量偏差DFcを求める。この筒内燃料供給量偏差DFcは、Nストローク前の時点で筒内に供給された燃料の過不足分を表す量となる。
DFc=Fcr(k−N)−Fc(k−N) …(5)
【0097】
ステップ535:CPUは、下記(6)式に従って、メインフィードバック量DFiを求める。この(6)式において、Gpは予め設定された比例ゲイン、Giは予め設定された積分ゲインである。更に、(6)式の「値SDFc」は「筒内燃料供給量偏差DFcの積分値」である。つまり、CPUは、検出空燃比abyfsを目標空燃比abyfrに一致させるための比例積分制御により「メインフィードバック量DFi」を算出する。
DFi=Gp・DFc+Gi・SDFc …(6)
【0098】
ステップ540:CPUは、その時点における筒内燃料供給量偏差DFcの積分値SDFcに上記ステップ530にて求められた筒内燃料供給量偏差DFcを加えることにより、新たな筒内燃料供給量偏差の積分値SDFcを取得する。
【0099】
以上により、メインフィードバック量DFiが比例積分制御により算出され、このメインフィードバック量DFiが前述した図4のステップ450の処理により指示燃料噴射量Fiに反映される。
【0100】
一方、図5のステップ505の判定時において、メインフィードバック制御条件が不成立であると、CPUはそのステップ505にて「No」と判定してステップ545に進み、メインフィードバック量DFiの値を「0」に設定する。次いで、CPUは、ステップ550にて筒内燃料供給量偏差の積分値SDFcに「0」を格納する。その後、CPUは、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。このように、メインフィードバック制御条件が不成立であるとき、メインフィードバック量DFiは「0」に設定される。従って、基本燃料噴射量Fbaseのメインフィードバック量DFiによる補正は行われない。
【0101】
<サブフィードバック量KSFB及びサブFB学習値KSFBgの算出>
CPUは図6にフローチャートにより示した「サブフィードバック量KSFB及びサブFB学習値KSFBgの算出ルーチン」を所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ600から処理を開始してステップ605に進み、サブフィードバック制御条件が成立しているか否かを判定する。
【0102】
サブフィードバック制御条件は以下の総ての条件が成立したときに成立する。
(B1)メインフィードバック制御条件が成立している。
(B2)下流側空燃比センサ57が活性化している。
【0103】
いま、サブフィードバック制御条件が成立していると仮定して説明を続ける。この場合、CPUはステップ605にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ610乃至ステップ630の処理(サブフィードバック量算出処理)を実行し、その後、ステップ635に進む。
【0104】
ステップ610:CPUは、下記(7)式に従って、「下流側目標値Voxsref」と「下流側空燃比センサ57の出力値Voxs」との差である「出力偏差量DVoxs」を取得する。下流側目標値Voxsrefは理論空燃比相当電圧Vst(三元触媒43のウインドウ内の基準空燃比abyfr0に対応した値)に設定されている。即ち、CPUは、「下流側目標値Voxsref」から「現時点の下流側空燃比センサ57の出力値Voxs」を減じることにより「出力偏差量DVoxs」を求める。
DVoxs=Voxsref−Voxs …(7)
【0105】
ステップ615:CPUは、下記(8)式に従って、「その時点における出力偏差量の積分値SDVoxs(=SDVoxs(n−1))」に「上記ステップ610にて求めた出力偏差量DVoxsとゲインKとの積」を加えることにより、新たな出力偏差量の積分値SDVoxs(=SDVoxs(n))を求める。なお、ゲインKはここでは「1」に設定されている。積分値SDVoxsは「時間積分値SDVoxs又は積分処理値SDVoxs」とも称呼される。
SDVoxs(n)=SDVoxs(n−1)+K・DVoxs …(8)
【0106】
ステップ620:CPUは、「上記ステップ610にて算出した出力偏差量DVoxs」から「本ルーチンを前回実行した際に算出された出力偏差量である前回出力偏差量DVoxsold」を減じることにより、新たな出力偏差量の微分値DDVoxsを求める。
【0107】
ステップ625:CPUは、下記(9)式に従って、サブフィードバック量KSFBを求める。この(9)式において、Kpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Kiは予め設定された積分ゲイン(積分定数)、Kdは予め設定された微分ゲイン(微分定数)である。即ち、Kp・DVoxsは比例項、Ki・SDVoxsは積分項、Kd・DDVoxsは微分項である。積分項Ki・SDVoxsは、サブフィードバック量KSFBの定常成分でもある。
KSFB=Kp・DVoxs+Ki・SDVoxs+Kd・DDVoxs …(9)
【0108】
ステップ630:CPUは、「上記ステップ610にて算出した出力偏差量DVoxs」を「前回出力偏差量DVoxsold」として格納する。
【0109】
このように、CPUは、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsを下流側目標値Voxsrefに一致させるための比例・積分・微分(PID)制御により「サブフィードバック量KSFB」を算出する。このサブフィードバック量KSFBは、前述したように、目標空燃比abyfrを算出するために使用される(abyfr=stoich−KSFB)。
【0110】
即ち、出力値Voxsが下流側目標値Voxsrefよりも小さいとき(リーンであるとき)、サブフィードバック量KSFBは次第に大きくなる。サブフィードバック量KSFBが大きくなるほど目標空燃比abyfrは小さくなる(リッチ側の空燃比になる)ように修正される。その結果、機関10の真の平均空燃比は小さくなる(リッチ側の空燃比になる)ので、出力値Voxsが下流側目標値Voxsrefに一致するように増大する。
【0111】
逆に、出力値Voxsが下流側目標値Voxsrefよりも大きいとき(リッチであるとき)、サブフィードバック量KSFBは次第に小さくなる(負の値を含む。)。サブフィードバック量KSFBが小さくなるほど目標空燃比abyfrは大きくなる(リーン側の空燃比となる)ように修正される。その結果、機関10の真の平均空燃比は大きくなる(リーン側の空燃比になる)ので、出力値Voxsが下流側目標値Voxsrefに一致するように減少する。
【0112】
CPUは、ステップ635に進むと、前回のサブフィードバック量の学習値(サブFB学習値)KSFBgの更新時点から学習間隔時間Tthが経過しているか否かを判定する。このとき、前回のサブFB学習値KSFBgの更新時点から学習間隔時間Tthが経過していなければ、CPUはステップ635にて「No」と判定し、ステップ695に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0113】
これに対し、CPUがステップ635の処理を実行する時点において、前回のサブFB学習値KSFBgの更新時点から学習間隔時間Tthが経過していると、CPUはステップ635にて「Yes」と判定してステップ640に進み、その時点の積分処理値SDVoxsと積分ゲインKiとの積(Ki・SDVoxs)をサブFB学習値KSFBgとしてバックアップRAMに格納する。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0114】
このように、CPUは、サブフィードバック量KSFBが更新される期間よりも長い期間(学習間隔時間Tth)が経過した時点におけるサブフィードバック量KSFBの積分項Ki・SDVoxs(サブフィードバック量KSFBの定常成分)を、サブFB学習値KSFBgとして取り込む。
【0115】
一方、CPUがステップ605の処理を実行する時点においてサブフィードバック制御条件が成立していない場合、CPUはステップ605にて「No」と判定し、ステップ645に進んでサブFB学習値KSFBgをサブフィードバック量KSFBとして設定する。即ち、CPUは、サブフィードバック量KSFBの更新を停止する。次いで、CPUはステップ650に進み、サブFB学習値KSFBgを積分ゲインKiで除した値(サブFB学習値KSFBg/積分ゲインKi)を、時間積分値SDVoxsとしてバックアップRAMに格納する。その後、CPUはステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0116】
なお、第1制御装置は、サブフィードバック量を用いたサブフィードバック制御を実行しない態様であってもよい。この場合、図6のルーチンは省略される。更に、他のルーチンにおいて使用されるサブフィードバック量KSFBには「0」が代入される。
【0117】
<硫黄被毒状態判定解除制御>
CPUは図7にフローチャートにより示した高温脱離促進制御開始ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ700から処理を開始し、ステップ710に進んで硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」であるか否かを判定する。硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定され、CPUが「触媒が硫黄被毒状態にある」と判定したときに「1」に設定される(後述する図10を参照。)。即ち、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」であることは、硫黄被毒解除要求(要求信号)が発生していることを意味する。
【0118】
硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「0」であると、CPUはステップ710にて「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」であると、CPUはステップ710にて「Yes」と判定してステップ720に進み、高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「0」であるか否かを判定する。
【0119】
高温脱離促進制御実行フラグXAの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定され、高温脱離促進制御が実行されているときに「1」に設定される(後述するステップ750を参照。)。高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」であると(即ち、現時点において高温脱離促進制御が実行されていると)、CPUはステップ720にて「No」と判定し、ステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「0」であると(即ち、現時点において高温脱離促進制御が実行されていないと)、CPUはステップ720にて「Yes」と判定してステップ730に進み、触媒の温度(触媒床温)Tempccroが前記第2温度TempHiよりも小さいか否かを判定する。
【0120】
触媒温度Tempccroは、負荷KL及び機関回転速度NEに基づいて推定される。即ち、CPUはルックアップテーブルMapTex(KL,NE)に実際の「負荷KL及び機関回転速度NE」を適用することにより排ガス温度Texを推定する。その後、CPUは、下記の(10)式に従って触媒温度Tempccroを推定する。(10)式の値pは「0」より大きく「1」より小さい定数である。(10)式の左辺のTempccroが新たに更新された触媒温度Tempccroであり、(10)式の右辺のTempccropは更新前の触媒温度Tempccroである。
Tempccro=p・Tempccro+(1−p)・Tex ・・・(10)
【0121】
なお、上流側触媒43内に触媒温度センサを配設し、その触媒温度センサの出力値に基づいて触媒温度Tempccroを取得してもよい。
【0122】
CPUがステップ730の処理を行う時点において、触媒温度Tempccroが第2温度TempHiよりも高い場合、CPUはステップ795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、CPUがステップ730の処理を行う時点において、触媒温度Tempccroが第2温度TempHiよりも低い場合、CPUはステップ730にて「Yes」と判定してステップ740に進み、電気加熱ヒータ44への通電を開始するとともに、実際の触媒温度が「第2温度TempHiに0以上のマージン温度(所定温度)αを加えた温度」に一致するように、電気加熱ヒータ44に供給する電力(実際には、電気加熱ヒータ44のヒータを流れる電流)を制御する。電気加熱ヒータ44が通電されているときの触媒温度は、電気加熱ヒータ44の抵抗値及び電流から推定することができる。もちろん、触媒温度センサを備える場合、CPUは触媒温度センサの出力値に基づいて電気加熱ヒータ44が通電されているときの触媒温度を取得してもよい。
【0123】
次に、CPUはステップ750に進み、高温脱離促進制御実行フラグXAの値を「1」に設定する。その後、CPUはステップ795に進み、本ルーチンを一旦終了する。このように、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」となったとき、高温脱離促進制御が実行される。その結果、上記「知見5」に記載したように、触媒流入ガスの空燃比に関わらず、触媒の貴金属に吸着している硫黄(硫黄成分)が貴金属から脱離する。
【0124】
<高温脱離促進制御の停止(1)>
CPUは図8にフローチャートにより示した高温脱離促進制御停止(その1)のルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ800から処理を開始し、ステップ810に進んで高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」であるか否かを判定する。
【0125】
このとき、高温脱離促進制御が実行されておらず、従って、高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「0」であると、CPUはステップ810にて「No」と判定してステップ895に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、高温脱離促進制御が実行されていて、従って、高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」であると、CPUはステップ810にて「Yes」と判定し、ステップ820に進んで「高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」である継続時間」が「第1の所定時間T1」以上であるか否かを判定する。
【0126】
このとき、「高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」である継続時間」が第1の所定時間T1未満であると、CPUはステップ820にて「No」と判定してステップ895に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、「高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」である継続時間」が「第1の所定時間T1」以上であると、CPUはステップ820にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ830乃至ステップ860の処理を順に行い、その後、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0127】
ステップ830:CPUは電気加熱ヒータ44への通電を停止する。即ち、電気加熱ヒータ44のヒータ電流を「0」に設定することにより、電気加熱ヒータ44への電力の供給を停止する。この結果、高温脱離促進制御が停止される。
【0128】
ステップ840:CPUは、高温脱離促進制御実行フラグXAの値を「0」に設定する。
ステップ850:CPUは、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値を「0」に設定する。
ステップ860:CPUは、積算吸入空気量SGaの値を「0」に設定する。積算吸入空気量SGaは、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvを「1」に設定するか否かを判定する際に用いられるパラメータである(後述する図10のルーチンを参照。)。
【0129】
以上、説明したように、高温脱離促進制御は、第1の所定時間T1だけ継続して実行されたときに停止される。換言すると、第1の所定時間T1は、高温脱離促進制御を第1の所定時間T1だけ継続することにより触媒の貴金属から硫黄成分が実質的に全て脱離し、硫黄被毒解除が完了するような時間に設定されている。なお、触媒流入ガスの空燃比は、メインフィードバック制御及びサブフィードバック制御により、所定のリッチ空燃比及び所定のリーン空燃比に交互に設定されるようにフィードバック制御されている。
【0130】
<高温脱離促進制御の停止(2)>
CPUは図9にフローチャートにより示した高温脱離促進制御停止(その2)のルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。図9において、既に説明したステップと同じ処理を行うステップには、既に説明したステップと同じ符号が付されている。以下において、そのようなステップの詳細な説明は適宜省略される。
【0131】
所定のタイミングになると、CPUはステップ900から処理を開始し、ステップ810に進んで高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」であるか否かを判定する。
【0132】
このとき、高温脱離促進制御が実行されておらず、従って、高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「0」であると、CPUはステップ810にて「No」と判定してステップ995に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、高温脱離促進制御が実行されていて、従って、高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」であると、CPUはステップ810にて「Yes」と判定し、ステップ910に進んでフューエルカットフラグXFCの値が「1」であるかを判定する。即ち、CPUはステップ910にて、現時点においてフューエルカット運転が実行されているか否かを判定する。
【0133】
このとき、フューエルカット運転が実行されておらず、従って、フューエルカットフラグXFCの値が「0」であると、CPUはステップ910にて「No」と判定してステップ995に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、フューエルカット運転が実行されていて、従って、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であると、CPUはステップ910にて「Yes」と判定してステップ920に進み、フューエルカットフラグXFCの値が「0」から「1」へと変化した時点以降において、「下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min(例えば、約0.1V)以下となっている状態」が第2の所定時間T2だけ継続しているか否かを判定する。
【0134】
このとき、「下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となっている状態」が第2の所定時間T2だけ継続していなければ、CPUはステップ920にて「No」と判定してステップ995に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、「下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となっている状態」が第2の所定時間T2だけ継続していると、CPUはステップ920にて「Yes」と判定し、上述した「ステップ830乃至ステップ860の処理」を行う。これにより、電気加熱ヒータ44への通電が停止されることによって電気加熱ヒータ44への電力の供給が停止される(高温脱離促進制御が停止される)とともに、高温脱離促進制御実行フラグXA、硫黄被毒解除要求フラグXSrmv、及び、積算吸入空気量SGaの各値が「0」に設定される。その後、CPUは、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0135】
このように、高温脱離促進制御は、高温脱離促進制御が実行されている場合にフューエルカット運転が実行され且つ下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となっている状態が第2の所定時間T2に到達すると、その時点にて停止させられる。なお、第2の所定時間T2は極めて短い時間であってもよい。換言すると、フューエルカット運転が実行された後に、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となったとき、高温脱離促進制御が停止されてもよい。
【0136】
<硫黄被毒解除要求フラグの設定>
次に、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvを「1」に設定する際のCPUの作動について説明する。CPUは図10にフローチャートにより示した硫黄被毒解除要求フラグ設定ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUは図10のステップ1000から処理を開始し、以下に述べるステップ1010及びステップ1070の処理を順に行う。
【0137】
ステップ1010:CPUは、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「0」であるか否かを判定する。CPUは、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「0」である場合にはステップ1020に進み、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」である場合にはステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0138】
ステップ1020:CPUは、冷却水温THWが閾値冷却水温THWth以上であるか否かを判定する。CPUは、冷却水温THWが閾値冷却水温THWth以上である場合にはステップ1030に進み、冷却水温THWが閾値冷却水温THWth未満である場合にはステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。なお、ステップ1020は省略され得る。
【0139】
ステップ1030:CPUは、触媒温度Tempccroが「上述した第1温度TempLo」よりも小さいか否かを判定する。上記「知見1」に記載したように、触媒温度Tempccroが第1温度TempLoよりも低い場合、硫黄成分が触媒(特に、担体)に多く吸着される。CPUは、触媒温度Tempccroが第1温度TempLoよりも小さい場合にはステップ1040に進み、触媒温度Tempccroが第1温度TempLo以上である場合にはステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0140】
ステップ1040:CPUは、吸入空気量Gaの積算値である積算吸入空気量SGaを更新する。即ち、CPUは、その時点の積算吸入空気量SGaに吸入空気量Gaを加えた値を新たな積算吸入空気量SGaとして算出する。その後、CPUはステップ1050に進む。この結果、積算吸入空気量SGaは、硫黄成分が触媒に多く吸着される運転状態における吸入空気量Gaの積分値となる。従って、積算吸入空気量SGaは、触媒に蓄積された硫黄成分の量が大きくなるほど大きくなる値となる。積算吸入空気量SGaはバックアップRAMに格納される。
【0141】
ステップ1050:CPUは、積算吸入空気量SGaが積算吸入空気量閾値(硫黄被毒状態発生判定閾値)SGathよりも大きいか否かを判定する。CPUは、積算吸入空気量SGaが積算吸入空気量閾値SGathよりも大きい場合にはステップ1060に進み、積算吸入空気量SGaが積算吸入空気量閾値SGath以下である場合にはステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0142】
ステップ1060:CPUは、バッテリ残量センサ59の出力値に基いて、バッテリ残量が所定残量よりも大きいか否かを判定する。CPUは、バッテリ残量が所定残量よりも大きい場合にはステップ1070に進み、バッテリ残量が所定残量以下の場合にはステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。なお、ステップ1060は省略され得る。
【0143】
ステップ1070:CPUは、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値を「1」に設定する。その後、CPUはステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。このように、触媒に吸着される硫黄成分が大きいほど大きくなる積算吸入空気量SGaが積算吸入空気量閾値SGathよりも大きく、且つ、バッテリ残量が所定残量よりも大きい場合、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」に設定される。即ち、硫黄被毒解除要求が発生させられる。
【0144】
<硫黄被毒解除要求フラグの解除>
次に、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvを「0」に設定する(硫黄被毒解除要求フラグXSrmvを解除する)際のCPUの作動について説明する。CPUは図11にフローチャートにより示した硫黄被毒解除要求フラグ解除ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUは図11のステップ1100から処理を開始し、以下に述べるステップ1110及びステップ1150の処理を順に行う。
【0145】
ステップ1110:CPUは、触媒温度Tempccroが「上述した第1温度TempLo」以上であるか否かを判定する。触媒温度Tempccroは、電気加熱ヒータ44に通電しない場合であっても、例えば、機関10の負荷が比較的大きい状態にて運転され続けたとき第1温度TempLo以上になることがある。CPUは、触媒温度Tempccroが第1温度TempLo以上である場合にはステップ1120に進み、触媒温度Tempccroが第1温度TempLo未満である場合にはステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0146】
ステップ1120:CPUは、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であるか否(即ち、フューエルカット運転が実行されているか否か)かを判定する。CPUは、フューエルカットフラグXFCの値が「1」である場合にはステップ1130に進み、フューエルカットフラグXFCの値が「0」である場合にはステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0147】
ステップ1130:CPUは、フューエルカットフラグXFCの値が「0」から「1」へと変化した時点以降において、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min(例えば、約0.1V)以下となっている状態が第2の所定時間T2だけ継続しているか否かを判定する。このステップは、図9のステップ920と同じ処理を行うステップである。CPUは、ステップ1130の条件が成立している場合にはステップ1140に進み、ステップ1130の条件が成立していない場合にはステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0148】
ステップ1140:CPUは、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値を「0」に設定する。即ち、硫黄被毒解除要求を解除する。
ステップ1150:CPUは、積算吸入空気量SGaの値を「0」に設定する。
【0149】
このように、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値は、上述した「知見4」に基き、触媒温度Tempccroが第1温度TempLo以上であるときにフューエルカット運転が実行され且つ下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となっている状態が第2の所定時間T2に到達したとき、触媒の硫黄被毒状態が解消されると考えられるので、「0」に設定される。なお、第2の所定時間T2は極めて短い時間であってもよい。換言すると、フューエルカット運転が実行された後に、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となったとき、高温脱離促進制御が停止されてもよい。
【0150】
以上、説明したように、第1制御装置は、
触媒43と、
前記触媒43を電気的に加熱する電気加熱手段(電気加熱ヒータ44)と、
機関10に燃料を供給する燃料供給手段(燃料噴射弁33及び図4のステップ420乃至ステップ460等)と、
所定のフューエルカット条件が成立しているとき前記燃料の供給を停止するフューエルカット手段(図4のステップ410での「No」との判定を参照。)と、
前記触媒43の硫黄被毒状態を解除するべき状態となったときに硫黄被毒解除要求を発生する要求発生手段(図10のルーチンを参照。)と、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記触媒の温度が、「前記触媒に流入する排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比であるときに前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる所定の第1温度TempLo」以上となるように前記電気加熱手段(電気加熱ヒータ44)に電力を供給する(実際には、前記触媒の温度が、触媒流入ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる第2温度TempHi以上となるように電気加熱ヒータ44に電力を供給する高温脱離促進制御を実行する)とともに(図7のステップ710乃至ステップ740を参照。)、前記電力の供給中(高温脱離促進制御実行フラグXAの値が「1」であるとき)に前記フューエルカット手段によって前記燃料の供給が停止された場合(フューエルカットフラグXFCの値が「1」であるとき)、硫黄被毒状態が解消したと判断して硫黄被毒解除要求を消滅させる(硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値を「0」に戻す)とともに(図8のステップ810、ステップ820及びステップ850を参照。)、電気加熱手段(電気加熱ヒータ44)への電力の供給を停止する(図8のステップ810乃至ステップ830を参照。)、電力制御手段と、
を備えている。
【0151】
更に、前記電力制御手段は、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記触媒の温度が、第2温度TempHi以上となるように前記電気加熱手段(電気加熱ヒータ44)に電力を供給するように構成されている(図7のステップ740)。第2温度TempHiは、触媒43に流入する排ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度であって且つ第1温度TempLoよりも高い温度である。
【0152】
従って、上記「知見4及び知見5」に記載したように、硫黄被毒解除要求が発生したときに高温脱離促進制御が実行されるので、触媒43の貴金属に蓄積された硫黄Sは貴金属から脱離し、硫黄被毒状態は解除される(消滅する)。更に、高温脱離促進制御の実行中に「多量の酸素が触媒43に供給されるフューエルカット運転」が実行された場合、触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sは極めて短時間にて貴金属から脱離するので、その時点にて高温脱離促進制御が停止される。これにより、燃料の供給停止(フューエルカット)により硫黄被毒状態が解消された後の期間において、電気加熱ヒータ44に無駄な電力が供給され続けることを回避することができる。この結果、「燃費の悪化及び/又はバッテリ残量の低下」を回避することができる。
【0153】
なお、第1制御装置は、上述した「知見5」に基づいて、触媒温度を第2温度TempHi以上の温度に上昇させることにより、硫黄被毒状態を解除していた。これに対し、第1制御装置は、上述した「知見4」に基づいて、触媒温度を第1温度TempLo以上であって且つ第2温度TempHi未満の温度に維持することにより、硫黄被毒状態を解除してもよい。この場合、高温脱離促進制御実行フラグXAは、低温脱離促進制御実行フラグXBに置換される。更に、この場合、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比であるときにのみ硫黄成分が触媒の貴金属から脱離するので、図8のステップ820は、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」である継続時間が「第1の所定時間T1よりも長い所定時間」以上であるか否かを判定するステップに置換される。或いは、図8のステップ820は、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」であるときの「触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比である時間の合計」が所定時間以上であるか否かを判定するステップに置換される。
【0154】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、単に「第2制御装置」と称呼する。)について説明する。第2制御装置は、上述した「知見4」に基いて構成された装置である。
【0155】
即ち、第2制御装置は、硫黄被毒解除要求が発生した場合、電気加熱ヒータ44を用いて、触媒の温度を「第1温度TempLo以上であり且つ第2温度TempHi未満」の温度(第1温度TempLoよりも僅かに高い温度)に制御する。
【0156】
ところで、上記「知見4」に記載したように、触媒の温度が第1温度TempLo以上であり且つ第2温度TempHi未満である場合、触媒流入ガスの空燃比が「よりリーン側の空燃比」であるほど、硫黄は「より短い時間」にて貴金属から脱離する。しかしながら、燃焼ガス(排ガス)の空燃比がリーン空燃比であるとしても、その空燃比の大きさは「エミッション上問題とならない空燃比」であり且つ「機関に失火が生じない範囲の空燃比」である。
【0157】
従って、機関に供給される混合気の空燃比をできるだけ大きい空燃比に設定したとしても、燃焼ガスである排ガスに含まれる酸素の濃度は、燃料供給の停止時(フューエルカット運転中)に触媒に流入するガス(即ち、大気)に含まれる酸素の濃度に比較した場合、「硫黄を短時間にて貴金属から脱離させるのに十分な大きさ」にはなり難い。換言すると、硫黄を触媒の貴金属から脱離させるには「排ガスに酸素が含まれていること」が必要であることから、排ガスの空燃比がリーン空燃比となっている時間を「エミッションを悪化させない範囲において」長くした方が、触媒の硫黄被毒状態を解除するために触媒の温度を「第1温度TempLo以上であり且つ第2温度TempHi未満」に維持しなければならない時間を結果的に短くすることができる。
【0158】
そこで、第2制御装置は、更に、硫黄被毒解除要求が発生した場合、硫黄被毒解除要求が発生していない場合に比較して、排ガスの空燃比がリーン空燃比である時間を排ガスの空燃比がリッチ空燃比である時間よりも長くするように構成されている。
【0159】
これによれば、硫黄被毒解除要求が発生した場合、排ガスの空燃比がリーン空燃比である時間を「エミッションが極端に悪化しない範囲において」相対的に長くすることができる。従って、触媒の硫黄被毒状態を解除するために「触媒の温度を第1温度以上に維持しておく時間」を結果的に短くすることができるので、電気加熱手段に供給する電力の総量を低減することができる。
【0160】
(実際の作動)
第2制御装置のCPUは、図4乃至図6に示したルーチンを実行することにより、燃料噴射量の制御を行う。更に、第2制御装置のCPUは、図10及び図11に示したルーチンを実行することにより、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値を操作する。即ち、第2制御装置のCPUは、第1制御装置のCPUと同様に硫黄被毒解除要求を発生する。
【0161】
更に、第2制御装置のCPUは、図12にフローチャートにより示した低温脱離促進制御開始ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUは図12のステップ1200から処理を開始し、ステップ1210に進んで硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」であるか否かを判定する。
【0162】
硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「0」であると、CPUはステップ1210にて「No」と判定し、ステップ1295に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」であると、CPUはステップ1210にて「Yes」と判定してステップ1220に進み、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「0」であるか否かを判定する。
【0163】
低温脱離促進制御実行フラグXBの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定され、低温脱離促進制御が実行されているときに「1」に設定される(後述するステップ1250を参照。)。低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」であると(即ち、現時点において低温脱離促進制御が実行されていると)、CPUはステップ1220にて「No」と判定し、ステップ1295に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「0」であると(即ち、現時点において低温脱離促進制御が実行されていないと)、CPUはステップ1220にて「Yes」と判定してステップ1230に進み、触媒の温度(触媒床温)Tempccroが第1温度TempLoよりも低い(小さい)か否かを判定する。
【0164】
CPUがステップ1230の処理を行う時点において、触媒温度Tempccroが第1温度TempLoよりも高い場合、CPUはそのステップ1230にて「No」と判定し、ステップ1295に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、CPUがステップ1230の処理を行う時点において、触媒温度Tempccroが第1温度TempLoよりも低い場合、CPUはステップ1230にて「Yes」と判定してステップ1240に進み、電気加熱ヒータ44への通電を開始するとともに、実際の触媒温度が「第1温度TempLoに0以上のマージン温度(所定温度)αを加えた温度」に一致するように、電気加熱ヒータ44に供給する電力(実際には、電気加熱ヒータ44のヒータを流れる電流)を制御する。電気加熱ヒータ44が通電されているときの触媒温度は、電気加熱ヒータ44の抵抗値及び電流から推定することができる。このように、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」となったとき、低温脱離促進制御が実行される。その結果、上記「知見4」に記載したように、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比である期間、触媒の貴金属に吸着している硫黄(硫黄成分)が貴金属から脱離する。
【0165】
次に、CPUはステップ1250に進み、低温脱離促進制御実行フラグXBの値を「1」に設定する。その後、CPUはステップ1260に進み、下流側目標値Voxsrefを「理論空燃比相当電圧Vstに正の所定値ΔVを加えた値」に設定する。理論空燃比相当電圧Vstに正の所定値ΔVを加えた値は、「理論空燃比相当電圧Vstに対応する空燃比(即ち、理論空燃比)」よりもリッチ側の空燃比に対応する値であり、第2下流側目標値とも称呼される。その後、CPUはステップ1295に進み、本ルーチンを一旦終了する。なお、下流側目標値Voxsrefは、上述したイニシャルルーチンにおいて「理論空燃比相当電圧Vst(第1下流側目標値)」に設定されるようになっている。また、「理論空燃比相当電圧Vstに正の所定値ΔVを加えた値」は、上流側触媒43のウインドウの範囲内の空燃比に対応した値である。
【0166】
<低温脱離促進制御の停止(1)>
CPUは図13にフローチャートにより示した低温脱離促進制御停止(その1)のルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1300から処理を開始し、ステップ1310に進んで低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」であるか否かを判定する。
【0167】
このとき、低温脱離促進制御が実行されておらず、従って、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「0」であると、CPUはステップ1310にて「No」と判定してステップ1395に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、低温脱離促進制御が実行されていて、従って、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」であると、CPUはステップ1310にて「Yes」と判定し、ステップ1320に進んで低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」である継続時間が第4の所定時間T4以上であるか否かを判定する。
【0168】
このとき、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」である継続時間が第4の所定時間T4未満であると、CPUはステップ1320にて「No」と判定してステップ1395に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」である継続時間が第4の所定時間T4以上であると、CPUはステップ1320にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1330乃至ステップ1370の処理を順に行い、その後、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0169】
ステップ1330:CPUは電気加熱ヒータ44への通電を停止する。即ち、電気加熱ヒータ44のヒータ電力を「0」に設定することにより、電気加熱ヒータ44への電力の供給を停止する。この結果、低温脱離促進制御が停止される。
【0170】
ステップ1340:CPUは、下流側目標値Voxsrefを理論空燃比相当電圧Vstに設定する。
ステップ1350:CPUは、低温脱離促進制御実行フラグXBの値を「0」に設定する。
ステップ1360:CPUは、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値を「0」に設定する。
ステップ1370:CPUは、積算吸入空気量SGaの値を「0」に設定する(図10のルーチンを参照。)。
【0171】
以上、説明したように、低温脱離促進制御は、第4の所定時間T4だけ継続して実行されたときに停止される。換言すると、第4の所定時間T4は、低温脱離促進制御を第4の所定時間T4だけ継続することにより触媒の貴金属から硫黄成分が実質的に全て脱離し、硫黄被毒解除が完了するような時間に設定されている。但し、この場合、下流側目標値Voxsrefの値が「理論空燃比相当電圧Vst+所定値ΔV」に設定されることにより、「触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比である期間」の方が「触媒流入ガスの空燃比がリッチ空燃比である期間」よりも長くなっている。
【0172】
即ち、低温脱離促進制御が実行されていない場合、下流側目標値Voxsrefが「イニシャルルーチン及び図13のステップ1340」にて理論空燃比相当電圧Vstに設定される。また、サブフィードバック量KSFBの積分項Ki・SDVoxsは十分な時間だけサブフィードバック制御が行われた場合に「ある値」に収束する。積分項Ki・SDVoxsが収束している場合、サブフィードバック量KSFBに含まれる比例項Kp・DVoxsが触媒流入ガスの空燃比を実質的に変更させる項となる。
【0173】
これにより、下流側目標値Voxsrefの出力値Voxs及び触媒流入ガスの空燃比は、図14の(A)及び(B)にそれぞれ示したように変化する。より具体的に述べると、「出力値Voxsが最大出力値maxの近傍となっている時間」と「出力値Voxsが最小出力値min近傍となっている時間」とは互いに略等しくなり、触媒流入ガスの空燃比が「理論空燃比よりも第1値X1だけ大きい値」に実質的に一致した状態の継続時間(リーン時間TL1)と、触媒流入ガスの空燃比が「理論空燃比よりも第2値X2だけ小さい値」に実質的に一致した状態の継続時間(リッチ時間TR1)と、が実質的に等しくなる。
【0174】
一方、低温脱離促進制御が実行されている場合、下流側目標値Voxsrefが「図12のステップ1260」にて「理論空燃比相当電圧Vstよりも所定値ΔVだけ大きい値」に設定される。
【0175】
これにより、下流側目標値Voxsrefの出力値Voxs及び触媒流入ガスの空燃比は、図14の(C)及び(D)にそれぞれ示したように変化する。より具体的に述べると、「出力値Voxsが最大出力値maxの近傍となっている時間」は、「出力値Voxsが最小出力値min近傍となっている時間」よりも長くなり、触媒流入ガスの空燃比が「理論空燃比よりも第3値X3だけ大きい値」に実質的に一致した状態の継続時間(リーン時間TL2)は、触媒流入ガスの空燃比が「理論空燃比よりも第4値X4だけ小さい値」に実質的に一致した状態の継続時間(リッチ時間TR2)よりも長くなる。このとき、第3値X3は第1値X1よりも小さく(X3<X1)且つ第4値X4は第2値X2よりも大きい(X4>X2)。
【0176】
従って、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比である期間が相対的に長くなるので、結果的に低温脱離促進制御を早期に終了することができる。
【0177】
<低温脱離促進制御の停止(2)>
CPUは図15にフローチャートにより示した低温脱離促進制御停止(その2)のルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。図15において、既に説明したステップと同じ処理を行うステップには、既に説明したステップと同じ符号が付されている。以下において、そのようなステップの詳細な説明は適宜省略される。
【0178】
所定のタイミングになると、CPUはステップ1500から処理を開始し、ステップ1310に進んで低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」であるか否かを判定する。
【0179】
このとき、低温脱離促進制御が実行されておらず、従って、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「0」であると、CPUはステップ1310にて「No」と判定してステップ1595に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、低温脱離促進制御が実行されていて、従って、低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」であると、CPUはステップ1310にて「Yes」と判定し、ステップ1510に進んでフューエルカットフラグXFCの値が「1」であるかを判定する。即ち、CPUはステップ1510にて、現時点においてフューエルカット運転が実行されているか否かを判定する。
【0180】
このとき、フューエルカット運転が実行されておらず、従って、フューエルカットフラグXFCの値が「0」であると、CPUはステップ1510にて「No」と判定してステップ1595に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、フューエルカット運転が実行されていて、従って、フューエルカットフラグXFCの値が「1」であると、CPUはステップ1510にて「Yes」と判定してステップ1520に進み、フューエルカットフラグXFCの値が「0」から「1」へと変化した時点以降において、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min(例えば、約0.1V)以下となっている状態が第5の所定時間T5だけ継続しているか否かを判定する。
【0181】
このとき、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となっている状態が第5の所定時間T5だけ継続していなければ、CPUはステップ1520にて「No」と判定してステップ1595に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となっている状態が第5の所定時間T5だけ継続していると、CPUはステップ1520にて「Yes」と判定し、ステップ1330乃至ステップ1370の処理を行う。これにより、電気加熱ヒータ44への通電が停止するために低温脱離促進制御が停止し、下流側目標値Voxsrefが理論空燃比相当電圧Vstに設定される。更に、低温脱離促進制御実行フラグXB、硫黄被毒解除要求フラグXSrmv、及び、積算吸入空気量SGaの各値が「0」に設定される。その後、CPUは、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0182】
このように、低温脱離促進制御は、低温脱離促進制御が実行されている場合にフューエルカット運転が実行され且つ下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となっている状態が第5の所定時間T5に到達したとき、触媒の硫黄被毒状態が解消されると考えられるので、停止される。なお、第5の所定時間T5は極めて短い時間であってもよい。換言すると、フューエルカット運転が実行された後に、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min以下となったとき、低温脱離促進制御が停止されてもよい。更に、なお、フューエルカット運転状態が「第4の所定時間T4よりも極めて短い所定時間」だけ継続したとき、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが最小出力値min近傍になっていることを確認することなく、低温脱離促進制御を停止してもよい。
【0183】
以上、説明したように、第2制御装置は、硫黄被毒解除要求が発生した場合(硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」である場合)、触媒の温度が第1温度TempLo以上(且つ、第2温度TempHi未満)となるように電気加熱手段(電気加熱ヒータ44)に電力を供給する(低温脱離促進制御を実行する)とともに(図12のステップ1240を参照。)、その電気加熱ヒータ44への電力の供給中に燃料の供給が停止された場合にその電力の供給を停止することにより低温脱離促進制御を停止する(図15のステップ1310乃至ステップ1330を参照。)、電力制御手段を備える。
【0184】
即ち、第2制御装置の電力制御手段は、前記触媒の温度が、前記第1温度TempLoと、前記触媒に流入する排ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度であって且つ前記第1温度よりも高い温度である第2温度TempHiと、の間の温度(TempLo+α)となるように前記電力の供給を行う。
【0185】
更に、第2制御装置は、
前記硫黄被毒解除要求が発生していない場合(硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「0」である場合)、排ガスの空燃比を、理論空燃比よりも第1値X1だけ大きいリーンな空燃比と理論空燃比よりも第2値X2だけ小さいリッチな空燃比とに時間的に交互に変更させることにより排ガスの空燃比の平均が触媒43のウインドウの範囲内の所定の基準空燃比(例えば、理論空燃比)となるように機関10に供給される燃料の量を制御する燃料供給手段を備える(図14の(A)及び(B)、図13のステップ1340、図6のサブフィードバック量KSFB、図4のステップ420等を参照。)
【0186】
加えて、その燃料供給手段は、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合(硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」である場合)、排ガスの空燃比を、理論空燃比よりも第3値X3(第3値X3<第1値X1)だけ大きいリーンな空燃比と理論空燃比よりも第4値X4(第4値X4≧第2値X2)だけ小さいリッチな空燃比とに時間的に交互に変更させることにより「排ガスの空燃比の平均が触媒43のウインドウの範囲内の所定の空燃比」となるように機関10に供給される燃料の量を制御する(図14の(C)及び(D)、図12のステップ1260、図6のサブフィードバック量KSFB、図4のステップ420等を参照。)。
【0187】
これによれば、硫黄被毒解除要求が発生して触媒の温度を「第1温度TempLo以上で且つ第2温度TempHi未満」に維持する場合、排ガスの空燃比がリーン空燃比である時間を「エミッションが極端に悪化しない範囲において」相対的に長くすることができる。従って、触媒の硫黄被毒状態を解除するために「触媒の温度を第1温度TempLo以上で且つ第2温度TempHi未満に維持しておく時間」を結果的に短くすることができるので、電気加熱手段(電気加熱ヒータ44)に供給する電力の総量を低減することができる。
【0188】
なお、第2制御装置は、図6に示されたフローチャートに依ることなく、以下のようにサブフィードバック量KSFBを算出してもよい。
【0189】
・低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「0」である場合;
下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが「理論空燃比相当電圧Vstに設定された下流側目標値Voxsref」よりも大きいとき、サブフィードバック量KSFBは「負の一定値(−X1)」に設定される。値X1は正の値であり(X1>0)、第1値とも称呼される。これにより、目標空燃比abyfrは、理論空燃比stoichに一定値X1を加えた値(stoich+X1)になるので、排ガスの空燃比は値(stoich+X1)に略一致する。
下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが「理論空燃比相当電圧Vstに設定された下流側目標値Voxsref」よりも小さいとき、サブフィードバック量KSFBは「正の一定値X2」に設定される。値X2は第2値とも称呼される。第2値KB2は第1値KB1と等しくてもよい。これにより、目標空燃比abyfrは、理論空燃比stoichから一定値X2を減じた値(stoich−X2)になるので、排ガスの空燃比は値(stoich−X2)に略一致する。
【0190】
・低温脱離促進制御実行フラグXBの値が「1」である場合;
下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが「理論空燃比相当電圧Vstに設定された下流側目標値Voxsref」よりも大きいとき、サブフィードバック量KSFBは「負の一定値(−X3)」に設定される。値X3は正の値であり(X3>0)、第3値とも称呼される。第3値X3は第1値X1よりも小さい。これにより、目標空燃比abyfrは、理論空燃比stoichに一定値X3を加えた値(stoich+X3)になるので、排ガスの空燃比は値(stoich+X3)に略一致する。
下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが「理論空燃比相当電圧Vstに設定された下流側目標値Voxsref」よりも小さいとき、サブフィードバック量KSFBは「正の一定値X4」に設定される。値X4は第4値とも称呼され、第2値X2以上である。これにより、目標空燃比abyfrは、理論空燃比stoichから一定値X4を減じた値(stoich−X4)になるので、排ガスの空燃比は値(stoich−X4)に略一致する。
【0191】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る制御装置(以下、単に「第3制御装置」と称呼する。)について説明する。第3制御装置は、ハイブリッド車両に搭載された機関10に適用される。
【0192】
ハイブリッド車両においては、その車両の走行状態が「定常走行時及び減速時等」である特定の状態(即ち、機関10が車両駆動力の一部又は全部を発生する必要がない運転状態)にある場合、機関10の運転が完全に停止される。このとき、機関10は車輪側から逆駆動されないので、機関10は回転しない。従って、このような運転状態においては、機関10から大気がポンピング(排出)されないので、大気が触媒に流入しない。よって、触媒に酸素が供給されないから、触媒の温度が第1温度TempLo以上であっても、触媒の硫黄被毒状態は殆ど解除されない。
【0193】
そこで、第3制御装置は、硫黄被毒解除要求が発生している場合であって且つ機関10の運転が完全に停止されるような状態であるとき、触媒の温度を第1温度TempLo以上(且つ第2温度TempHi未満)に制御する(低温脱離制御を実行する)とともに、車両に搭載されている電動モータにより機関10を強制的に回転させる制御(以下、「空気供給脱離制御」とも称呼する。)を実行する。これにより、触媒に空気(酸素)を強制的に供給することができるので、硫黄被毒状態を迅速に解除することができる。
【0194】
(ハイブリッド車両の概略構成)
図16に示したように、周知のハイブリッド車100は、機関10、フロントモータ(モータ・ジェネレータ)101、動力切替部102、動力伝達部103、インバータ104、バッテリ105、及び、リヤモータ(モータ・ジェネレータ)とディファレンシャルとを含むリヤトランスアクスル106を備えている。
【0195】
フロントモータ101は、回転トルクを発生するモータ及び回転駆動されることにより発電を行うジェネレータの両機能を備えている。
【0196】
動力切替部102は、例えば特開2003−291691号公報等に記載されているように、機関10の出力トルクを動力伝達部103に伝達する状態、フロントモータ101の出力トルクを動力伝達部103に伝達する状態、機関10によってフロントモータ101を駆動する状態、及び、フロントモータ101によって機関10を駆動する状態等の種々の状態を達成するようになっている。
【0197】
動力伝達部103は無段変速機及びディファレンシャルを含んでいる。動力伝達部103は動力切替部102から伝達されたトルクを、前輪の車軸を回転するトルクに変換するようになっている。
【0198】
インバータ104は、フロントモータ101を回転させるためにバッテリ105から供給される電力に基いてフロントモータ101のステータコイルの3相巻線に通電する3相交流電流を発生するようになっている。インバータ104はフロントモータ101が発電しているとき、フロントモータ101から付与される交流信号を直流電圧に変換し、バッテリ105を充電するようになっている。
【0199】
リヤトランスアクスル106はリヤモータが発生するトルクを、後輪の車軸を回転するトルクに変換するようになっている。
【0200】
(実際の作動)
第3制御装置のCPUは、図4乃至図6に示したルーチンを実行することにより、燃料噴射量の制御を行う。但し、図4のステップ410におけるフューエルカットフラグXFCを「1」に設定するフューエルカット条件は、車両100が「定常走行時及び減速時等」である特定の状態(即ち、機関10が車両駆動力の一部又は全部を発生する必要がない運転状態)にある場合にも成立する。
【0201】
更に、第3制御装置のCPUは、図10及び図11に示したルーチンを実行することにより、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値を操作する。即ち、第3制御装置のCPUは、第1制御装置のCPUと同様に硫黄被毒解除要求を発生する。
【0202】
加えて、第3制御装置のCPUは、図17にフローチャートにより示した空気供給脱離制御開始ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUは図17のステップ1700から処理を開始し、ステップ1710に進んで硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」であるか否かを判定する。
【0203】
硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「0」であると、CPUはステップ1710にて「No」と判定し、ステップ1795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」であると、CPUはステップ1710にて「Yes」と判定してステップ1720に進み、空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「0」であるか否かを判定する。
【0204】
空気供給脱離制御実行フラグXCの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定され、空気供給脱離制御が実行されているときに「1」に設定される(後述するステップ1790を参照。)。空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「1」であると(即ち、現時点において空気供給脱離制御が実行されていると)、CPUはステップ1720にて「No」と判定し、ステップ1795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0205】
これに対し、空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「0」であると(即ち、現時点において空気供給脱離制御が実行されていないと)、CPUはステップ1720にて「Yes」と判定してステップ1730に進み、触媒の温度(触媒床温)Tempccroが第1温度TempLoよりも小さいか否かを判定する。
【0206】
CPUがステップ1730の処理を行う時点において、触媒温度Tempccroが第1温度TempLoよりも高い場合、CPUはステップ1730にて「No」と判定し、ステップ1795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、CPUがステップ1730の処理を行う時点において、触媒温度Tempccroが第1温度TempLoよりも低い場合、CPUはステップ1730にて「Yes」と判定してステップ1740に進み、現時点において車両100がフロントモータ101及びリヤモータのみで運転を行っている状態(機関10が車両駆動力の一部又は全部を発生する必要がない運転状態であり、以下「モータ走行状態」と称呼する。)にあるか否かを判定する。
【0207】
CPUがステップ1740の処理を行う時点において、モータ走行状態でない場合、CPUはステップ1740にて「No」と判定し、ステップ1795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、CPUがステップ1740の処理を行う時点において、モータ走行状態である場合、CPUはステップ1740にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1750及びステップ1790の処理を順に行い、その後、ステップ1795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0208】
ステップ1750:CPUは、フューエルカットフラグXFCの値を「1」に設定する。これにより、機関10への燃料の供給(燃料噴射)が停止される。
ステップ1760:CPUは、点火プラグ(実際にはイグナイタ)への点火信号の送出を停止する。
【0209】
ステップ1770:CPUは、電気加熱ヒータ44への通電を開始するとともに、実際の触媒温度が「第1温度TempLoに0以上のマージン温度(所定温度)αを加えた温度」に一致するように、電気加熱ヒータ44に供給する電力(実際には、電気加熱ヒータ44のヒータを流れる電流)を制御する。
【0210】
ステップ1780:CPUは、フロントモータ101によって機関10を駆動する状態を達成するように、フロントモータ101及び動力切替部102等を制御することにより、機関10を強制的に回転させる。
ステップ1790:CPUは、空気供給脱離制御実行フラグXCの値を「1」に設定する。
【0211】
このように、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」であり且つモータ走行状態である場合、触媒の温度を第1温度TempLo以上且つ第2温度TempHi未満(第1温度TempLo+α)に維持するとともに機関10をモータにより強制的に回転駆動する「空気供給脱離制御」が実行される。その結果、上記「知見4」に記載したように、機関10から排出された多量の空気が触媒に流れ込むので、触媒の貴金属に吸着している硫黄(硫黄成分)が貴金属から短時間にて脱離する。
【0212】
<空気供給脱離制御の停止(1)>
CPUは図18にフローチャートにより示した空気供給脱離制御停止(その1)のルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1800から処理を開始し、ステップ1810に進んで空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「1」であるか否かを判定する。
【0213】
このとき、空気供給脱離制御が実行されておらず、従って、空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「0」であると、CPUはステップ1810にて「No」と判定してステップ1895に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、空気供給脱離制御が実行されていて、従って、空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「1」であると、CPUはステップ1810にて「Yes」と判定し、ステップ1820に進んで空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「1」である継続時間が第6の所定時間T6以上であるか否かを判定する。
【0214】
このとき、空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「1」である継続時間が第6の所定時間T6未満であると、CPUはステップ1820にて「No」と判定してステップ1895に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「1」である継続時間が第6の所定時間T6以上であると、CPUはステップ1820にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1830乃至ステップ1870の処理を順に行い、その後、ステップ1895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0215】
ステップ1830:CPUは電気加熱ヒータ44への通電を停止する。即ち、電気加熱ヒータ44のヒータ電力を「0」に設定することにより、電気加熱ヒータ44への電力の供給を停止する。
【0216】
ステップ1840:CPUは、フロントモータ101による機関10の強制回転を停止する。この結果、空気供給脱離制御が停止される。
ステップ1850:CPUは、空気供給脱離制御実行フラグXCの値を「0」に設定する。
ステップ1860:CPUは、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値を「0」に設定する。
ステップ1870:CPUは、積算吸入空気量SGaの値を「0」に設定する(図10のルーチンを参照。)。
【0217】
以上、説明したように、空気供給脱離制御は、第6の所定時間T6だけ継続して実行されたときに停止される。換言すると、第6の所定時間T6は、空気供給脱離制御を第6の所定時間T6だけ継続することにより触媒の貴金属から硫黄成分が実質的に全て脱離し、硫黄被毒解除が完了するような時間に設定されている。空気供給脱離制御においては、第1温度TempLo以上の温度となっている触媒に多量の酸素(大気)が供給されるので、第6の所定時間T6は極めて短い時間である。
【0218】
<空気供給脱離制御の停止(2)>
CPUは図19にフローチャートにより示した空気供給脱離制御停止(その2)のルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1900から処理を開始し、ステップ1910に進んで空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「1」であるか否かを判定する。
【0219】
このとき、空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「0」であると、CPUはステップ1910にて「No」と判定してステップ1995に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、空気供給脱離制御が実行されていて、従って、空気供給脱離制御実行フラグXCの値が「1」であると、CPUはステップ1910にて「Yes」と判定してステップ1920に進み、現時点において車両100が「モータ走行状態でない」か否かを判定する。即ち、CPUは、ステップ1910及びステップ1920の処理により、空気供給脱離制御中にモータ走行状態ではない状態となったか否かを判定する。
【0220】
CPUがステップ1920の処理を実行する時点において、モータ走行状態である場合、CPUはそのステップ1920にて「No」と判定し、ステップ1995に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、CPUがステップ1920の処理を行う時点において、モータ走行状態でない場合、CPUはそのステップ1920にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1930及びステップ1950の処理を順に行い、その後、ステップ1995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0221】
ステップ1930:CPUは、電気加熱ヒータ44への通電を停止する。即ち、電気加熱ヒータ44のヒータ電力を「0」に設定することにより、電気加熱ヒータ44への電力の供給を停止する。
ステップ1940:CPUは、フロントモータ101による機関10の強制回転を停止する。この結果、空気供給脱離制御が停止される。
ステップ1950:CPUは、空気供給脱離制御実行フラグXCの値を「0」に設定する。
【0222】
このように、CPUは、空気供給脱離制御中に車両100の運転状態がモータ走行状態ではなくなると、空気供給脱離制御を直ちに終了する。但し、この場合、硫黄被毒状態が解消されていないので、硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値は「0」に設定されず、積算吸入空気量SGaも「0」に設定されない。
【0223】
以上、説明したように、第3制御装置は、機関10が電動モータ(フロントモータ101及びリヤモータ)と共に車両駆動力を発生するように構成されたハイブリッド車両100に搭載されている場合に適用される。そして、第3制御装置は、硫黄被毒解除要求が発生している場合(硫黄被毒解除要求フラグXSrmvの値が「1」である場合)であって、且つ、機関10が前記車両駆動力の一部又は全部を発生する必要がない運転状態(モータ走行状態)にある場合おいて、触媒の温度を第1温度TempLo以上であり且つ第2温度TempHi未満に維持するとともに(図17のステップ1770)、前記燃料供給手段による前記燃料の供給を停止させるとともに(図17のステップ1750及び図4のステップ410での「No」との判定を参照。)、前記電動モータにより機関10を強制的に回転させることにより触媒43に機関10を通して空気(大気)を供給する空気供給制御手段(図17のステップ1780)を備える。
【0224】
この結果、機関10のみを動力源として備える通常の車両に機関10が搭載されている場合のフューエルカット運転時(燃料供給停止時)と同様、触媒の硫黄被毒状態を極めて短時間にて解除することができる。その結果、「触媒の温度を第1温度以上に維持しておく時間」を結果的に短くすることができるので、電気加熱手段(電気加熱ヒータ44)に供給する電力の総量を低減することができる。
【0225】
更に、第3制御手段の電力制御手段は、
前記空気供給制御手段により前記触媒に前記機関を通して前記空気が所定時間(第6の所定時間T6)供給された場合(即ち、触媒に空気が所定量以上供給された場合)、前記電気加熱手段への電力の供給を停止するように構成されている(図18のステップ1810乃至ステップ1830を参照。)。
【0226】
前記空気供給制御手段により機関10が回転させられ、触媒43に空気が所定時間供給された場合、硫黄被毒状態は短時間にて解除(消滅、解消)される。従って、第3制御装置によれば、機関10の強制回転駆動によって触媒の貴金属に蓄積された硫黄Sが貴金属から除去された後の期間において、電気加熱手段(電気加熱ヒータ44)に無駄な電力が供給され続けることを回避することができる。この結果、「燃費の悪化及び/又はバッテリ残量の低下」を回避することができる。なお、第3制御装置は、ステップ1770において、電気加熱ヒータ44への通電を開始するとともに、実際の触媒温度が「第2温度TempHiに0以上のマージン温度(所定温度)αを加えた温度」に一致するように、電気加熱ヒータ44に供給する電力を制御してもよい。
【0227】
以上、説明したように、本発明に係る制御装置の各実施形態によれば、電力を効率的に使用しながら、触媒43の硫黄被毒状態を解消することができる。なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、各制御装置のCPUは、触媒温度Tempccroが第1温度TempLo未満である状態における「機関10の運転時間の総和」が閾値よりも大きくなった場合に、硫黄被毒解除要求を発生する(硫黄被毒解除要求フラグXSrmvを「1」に設定する)ように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0228】
10…内燃機関、30…吸気系統、33…燃料噴射弁、34…スロットル弁、40…排気系統、41…エキゾーストマニホールド、42…エキゾーストパイプ、43…上流側触媒(三元触媒、触媒)、44…電気加熱ヒータ、56…上流側空燃比センサ、57…下流側空燃比センサ、58…アクセル開度センサ、59…バッテリ残量センサ、70…電気制御装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配設された触媒と、
前記触媒を電気的に加熱する電気加熱手段と、
前記機関に燃料を供給する燃料供給手段と、
所定のフューエルカット条件が成立しているとき前記燃料の供給を停止するフューエルカット手段と、
前記触媒の硫黄被毒状態を解除するべき状態となったときに硫黄被毒解除要求を発生する要求発生手段と、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記触媒の温度が、前記触媒に流入する排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比であるときに前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる所定の第1温度以上となるように前記電気加熱手段に電力を供給するとともに、前記電力の供給中に前記フューエルカット手段によって前記燃料の供給が停止された場合に前記電気加熱手段への電力の供給を停止する電力制御手段と、
を備えた内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記電力制御手段は、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記触媒の温度が、前記触媒に流入する排ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度であって且つ前記第1温度よりも高い温度である第2温度以上となるように前記電気加熱手段に電力を供給するように構成された内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記電力制御手段は、
前記触媒の温度が、前記第1温度と、前記触媒に流入する排ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度であって且つ前記第1温度よりも高い温度である第2温度と、の間の温度となるように前記電力の供給を行い、
前記燃料供給手段は、
前記硫黄被毒解除要求が発生していない場合、前記排ガスの空燃比を、理論空燃比よりも第1値だけ大きいリーンな空燃比と理論空燃比よりも第2値だけ小さいリッチな空燃比とに時間的に交互に変更させることにより前記排ガスの空燃比の平均が前記触媒のウインドウの範囲内の所定の空燃比となるように前記機関に供給される燃料の量を制御し、且つ、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記排ガスの空燃比を、理論空燃比よりも第3値だけ大きいリーンな空燃比と理論空燃比よりも第4値だけ小さいリッチな空燃比とに時間的に交互に変更させることにより前記排ガスの空燃比の平均が前記触媒のウインドウの範囲内の所定の空燃比となるように前記機関に供給される燃料の量を制御し、
前記第3値は前記第1値よりも小さく、且つ、前記第4値は前記第2値以上である、
内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記触媒の下流の排気通路に配設された下流側空燃比センサを備え、
前記電力制御手段は、
前記触媒の温度が、前記第1温度と、前記触媒に流入する排ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度であって且つ前記第1温度よりも高い温度である第2温度と、の間の温度となるように前記電力の供給を行い、
前記燃料供給手段は、
前記硫黄被毒解除要求が発生していない場合、前記下流側空燃比センサの出力値と第1下流側目標値との偏差をゼロにするための比例積分制御に従って前記下流側空燃比センサの出力値が前記第1下流側目標値に一致するように前記機関に供給される燃料の量をフィードバック制御し、且つ、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記下流側空燃比センサの出力値と前記第1下流側目標値に対応する空燃比よりもリッチ側の空燃比に対応する第2下流側目標値との偏差をゼロにするための比例積分制御に従って前記下流側空燃比センサの出力値が前記第2下流側目標値に一致するように前記機関に供給される燃料の量をフィードバック制御する、
ように構成された内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記機関は電動モータと共に車両駆動力を発生するように構成されたハイブリッド車両に搭載され、
前記硫黄被毒解除要求が発生している場合であって前記機関が前記車両駆動力の一部又は全部を発生する必要がない運転状態において、前記燃料供給手段による前記燃料の供給を停止させるとともに前記電動モータにより前記機関を強制的に回転させることにより前記触媒に前記機関を通して空気を供給する空気供給制御手段を備えた内燃機関の制御装置。
【請求項6】
排気通路に配設された触媒を備えるとともに電動モータと共に車両駆動力を発生するように構成されたハイブリッド車両に搭載された内燃機関、の制御装置であって、
前記触媒を電気的に加熱する電気加熱手段と、
前記機関に燃料を供給する燃料供給手段と、
前記触媒の硫黄被毒状態を解除するべき状態となったときに硫黄被毒解除要求を発生する要求発生手段と、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記触媒の温度が、前記触媒に流入する排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比であるときに前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる所定の第1温度以上となるように前記電気加熱手段に電力を供給する電力制御手段と、
前記硫黄被毒解除要求が発生している場合であって前記機関が前記車両駆動力の一部又は全部を発生する必要がない運転状態において、前記燃料供給手段による前記燃料の供給を停止させるとともに前記電動モータにより前記機関を強制的に回転させることにより前記触媒に前記機関を通して空気を供給する空気供給制御手段と、
を備えた内燃機関の制御装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の内燃機関の制御装置において、
前記電力制御手段は、
前記空気供給制御手段により前記触媒に前記機関を通して前記空気が所定時間供給された場合に前記電気加熱手段への電力の供給を停止するように構成された内燃機関の制御装置。
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配設された触媒と、
前記触媒を電気的に加熱する電気加熱手段と、
前記機関に燃料を供給する燃料供給手段と、
所定のフューエルカット条件が成立しているとき前記燃料の供給を停止するフューエルカット手段と、
前記触媒の硫黄被毒状態を解除するべき状態となったときに硫黄被毒解除要求を発生する要求発生手段と、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記触媒の温度が、前記触媒に流入する排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比であるときに前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる所定の第1温度以上となるように前記電気加熱手段に電力を供給するとともに、前記電力の供給中に前記フューエルカット手段によって前記燃料の供給が停止された場合に前記電気加熱手段への電力の供給を停止する電力制御手段と、
を備えた内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記電力制御手段は、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記触媒の温度が、前記触媒に流入する排ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度であって且つ前記第1温度よりも高い温度である第2温度以上となるように前記電気加熱手段に電力を供給するように構成された内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記電力制御手段は、
前記触媒の温度が、前記第1温度と、前記触媒に流入する排ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度であって且つ前記第1温度よりも高い温度である第2温度と、の間の温度となるように前記電力の供給を行い、
前記燃料供給手段は、
前記硫黄被毒解除要求が発生していない場合、前記排ガスの空燃比を、理論空燃比よりも第1値だけ大きいリーンな空燃比と理論空燃比よりも第2値だけ小さいリッチな空燃比とに時間的に交互に変更させることにより前記排ガスの空燃比の平均が前記触媒のウインドウの範囲内の所定の空燃比となるように前記機関に供給される燃料の量を制御し、且つ、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記排ガスの空燃比を、理論空燃比よりも第3値だけ大きいリーンな空燃比と理論空燃比よりも第4値だけ小さいリッチな空燃比とに時間的に交互に変更させることにより前記排ガスの空燃比の平均が前記触媒のウインドウの範囲内の所定の空燃比となるように前記機関に供給される燃料の量を制御し、
前記第3値は前記第1値よりも小さく、且つ、前記第4値は前記第2値以上である、
内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記触媒の下流の排気通路に配設された下流側空燃比センサを備え、
前記電力制御手段は、
前記触媒の温度が、前記第1温度と、前記触媒に流入する排ガスの空燃比に関わらず前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる温度であって且つ前記第1温度よりも高い温度である第2温度と、の間の温度となるように前記電力の供給を行い、
前記燃料供給手段は、
前記硫黄被毒解除要求が発生していない場合、前記下流側空燃比センサの出力値と第1下流側目標値との偏差をゼロにするための比例積分制御に従って前記下流側空燃比センサの出力値が前記第1下流側目標値に一致するように前記機関に供給される燃料の量をフィードバック制御し、且つ、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記下流側空燃比センサの出力値と前記第1下流側目標値に対応する空燃比よりもリッチ側の空燃比に対応する第2下流側目標値との偏差をゼロにするための比例積分制御に従って前記下流側空燃比センサの出力値が前記第2下流側目標値に一致するように前記機関に供給される燃料の量をフィードバック制御する、
ように構成された内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記機関は電動モータと共に車両駆動力を発生するように構成されたハイブリッド車両に搭載され、
前記硫黄被毒解除要求が発生している場合であって前記機関が前記車両駆動力の一部又は全部を発生する必要がない運転状態において、前記燃料供給手段による前記燃料の供給を停止させるとともに前記電動モータにより前記機関を強制的に回転させることにより前記触媒に前記機関を通して空気を供給する空気供給制御手段を備えた内燃機関の制御装置。
【請求項6】
排気通路に配設された触媒を備えるとともに電動モータと共に車両駆動力を発生するように構成されたハイブリッド車両に搭載された内燃機関、の制御装置であって、
前記触媒を電気的に加熱する電気加熱手段と、
前記機関に燃料を供給する燃料供給手段と、
前記触媒の硫黄被毒状態を解除するべき状態となったときに硫黄被毒解除要求を発生する要求発生手段と、
前記硫黄被毒解除要求が発生した場合、前記触媒の温度が、前記触媒に流入する排ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比であるときに前記触媒に蓄積された硫黄を前記触媒から除去することができる所定の第1温度以上となるように前記電気加熱手段に電力を供給する電力制御手段と、
前記硫黄被毒解除要求が発生している場合であって前記機関が前記車両駆動力の一部又は全部を発生する必要がない運転状態において、前記燃料供給手段による前記燃料の供給を停止させるとともに前記電動モータにより前記機関を強制的に回転させることにより前記触媒に前記機関を通して空気を供給する空気供給制御手段と、
を備えた内燃機関の制御装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の内燃機関の制御装置において、
前記電力制御手段は、
前記空気供給制御手段により前記触媒に前記機関を通して前記空気が所定時間供給された場合に前記電気加熱手段への電力の供給を停止するように構成された内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−57576(P2012−57576A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203135(P2010−203135)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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