内燃機関の制御装置
【課題】EGRと新気との合流部からシリンダまでの経路が長くなること、コンプレッサーの上下を結ぶエアバイパス通路のエアバイパス弁を減速時に開くこと等の要因によって減速運転時に排気ガス量が一時的に増加して排気ガス量を目標値に安定して導入することができない現象があった。
【解決手段】タービンの下流部より分流して排気ガスをコンプレッサーの上流部へ還流する内燃機関において、過給状態にあって排気ガスが還流されている状態において、減速運転時にコンプレッサーをバイパスするエアバイパス弁を閉じた状態にすると共にタービンをバイパスするウェストゲート弁を開くようにしたものである。
【解決手段】タービンの下流部より分流して排気ガスをコンプレッサーの上流部へ還流する内燃機関において、過給状態にあって排気ガスが還流されている状態において、減速運転時にコンプレッサーをバイパスするエアバイパス弁を閉じた状態にすると共にタービンをバイパスするウェストゲート弁を開くようにしたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気側タービンの下流部より分流した排気ガスをクーラにて冷却した後に吸気側コンプレッサーの上流部へ還流させる内燃機関の制御装置に係り、特に内燃機関の過渡運転時に適正な排気ガスを還流できるように排気ガスの流量を制御する内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の内燃機関においては、小型化、低燃費、低排気ガスの観点から過給機を用いて内燃機関に供給される空気を加圧しており、このような過給機を用いた内燃機関としては特開2009−250209号公報(特許文献1)に記載されているようなものが知られている。
【0003】
特許文献1においては可変動弁機構と過給機とを備えた内燃機関において、排気側タービン(以下、タービンという。)の上流部より分流した排気ガスを吸気側コンプレッサー(以下、コンプレッサーという。)の上流側へ導入する第1排気ガス還流通路と、排気ガスをコンプレッサーの下流側に導入する第2排気ガス還流通路とを設け、運転状態に応じて設定される目標排気ガス還流量が得られるように、上流側排気ガス量と下流側排気ガス量とを制御弁によって調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−250209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般に過給機を備えた内燃機関においてはコンプレッサーの上流部へ排気ガスを還流させる構成では、排気ガスと新気との合流部からシリンダまでの経路が長いこと、コンプレッサーの上下を結ぶエアバイパス通路のエアバイパス弁を過渡時に開くこと等の要因によって減速運転時や加速運転時のような過渡時に排気ガス量が一時的に増加、或いは減少して排気ガス量を目標値に安定して導入することができない現象があった。したがって、この排気ガスの不適正な還流によって空燃比の変動による排気の悪化や、トルクの変動を生じるほか、最悪の場合は失火に至るといった課題があった。
【0006】
本発明の目的は内燃機関の過渡運転時にシリンダ内へ導入される排気ガスを目標値に精度良く制御可能な内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、タービンの下流部より分流して冷却された排気ガスをコンプレッサーの上流部へ還流する内燃機関において、内燃機関が過給状態にあって排気ガスが還流されている状態において、減速時或いは加速時にコンプレッサーをバイパスするエアバイパス弁を閉じた状態にするようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、過渡運転時の排気ガスの一時的な増加、或いは減少を抑制することができ、空燃比変動にともなう排気悪化やトルク変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明が適用される内燃機関の制御システムの全体的な構成を示す構成図である。
【図2】内燃機関のスロットル弁およびウェストゲート弁の定常目標開度マップを説明する特性図である。
【図3】排気ガス還流制御弁開度と排気ガス還流率との関係、および充填効率とスロットル弁開度との関係を説明する特性図である。
【図4】図2に示した特性図において、運転動作点Bから運転動作点Aへ加速した場合のスロットル弁、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、および排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図5】図2に示した特性図において、運転動作点Aから運転動作点Bへ減速した場合のスロットル弁、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、および排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図6】図2に示した特性図において、運転動作点Aから運転動作点Cへ急停止した場合のスロットル弁、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、および排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図7】吸気弁および排気弁に位相可変機構を備えた吸気弁と排気弁のバルブリフトパターンを説明する特性図である。
【図8】吸気弁にリフト可変機構を備えた吸気弁のバルブリフトパターンを説明する特性図である。
【図9】充填効率と吸気弁作動角との関係、及び排気ガス導入時の吸気弁作動角補正量を説明する特性図である。
【図10】内燃機関のリフト・位相可変機構、及びウェストゲート弁の定常目標開度マップを説明する特性図である。
【図11】図10の特性図において、リフト・位相可変機構、排気ガス還流制御弁、ウェストゲート弁、点火時期、及び燃料噴射の各制御指令値を演算する制御ブロックを説明する構成図である。
【図12】図10の特性図において、スロットル弁開度、排気ガス還流制御弁開度、エアフローセンサ検出流量、排気ガス還流制御弁の前後圧力状態、大気状態、リフト・位相可変機構位置に基づいて充填効率、排気ガス還流率、吸気圧力を演算する制御ブロックを説明する構成図である。
【図13】図10の特性図において、過給域で且つ冷却した排気ガスを導入している運転動作点Aから運転動作点B及び運転動作点Cに減速した場合の吸気弁作動角、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の各動作を説明するフローチャート図である。
【図14】図10の特性図において、運転動作点Aから運転動作点Bへ減速した場合の吸気弁作動角、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、及び排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図15】図10の特性図において、運転動作点Aから運転動作点Cへ急停止した場合の吸気弁作動角、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、および排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図16】図10の特性図において、過給域で且つ冷却した排気ガスを導入している運転動作点Bから運転動作点Aへ加速した場合の吸気弁作動角、ウェストゲート弁の各動作を説明するフローチャート図である。
【図17】図10の特性図において、運転動作点Bから運転動作点Aへ加速した場合の吸気弁作動角、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、及び排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図18】内燃機関のスロットル弁およびウェストゲート弁の定常目標開度マップを説明する特性図である。
【図19】充填効率とウェストゲート弁開度との関係およびEGR導入時のウェストゲート弁開度補正量を説明する特性図である。
【図20】図18の特性図において、スロットル弁、排気ガス還流制御弁、ウェストゲート弁、点火時期、および燃料噴射の各制御指令値を演算する制御ブロックを説明する構成図である。
【図21】図18の特性図において、過給域で且つ冷却した排気ガスを導入している運転動作点Aから運転動作点B、運転動作点C及び運転動作点Dに減速した場合の、スロットル弁、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁、吸排気弁可変機構の各動作を説明するフローチャート図である。
【図22】図18の特性図において、運転動作点Aから運転動作点Bへ減速した場合のスロットル弁、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、および排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図23】図18の特性図において、運転動作点Aから運転動作点Dへ急停止した場合のスロットル弁、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、および排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図24】図18の特性図において、運転動作点Aから運転動作点Cへ減速した場合のスロットル弁開度、排気ガス還流制御弁開度、吸排気弁位相、吸気圧力、充填効率、および排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図25】図18の特性図において、過給域で且つ冷却した排気ガスを導入している運転動作点Bから運転動作点Aに加速した場合のスロットル弁、ウェストゲート弁の各動作を説明するフローチャート図である。
【図26】図18の特性図において、運転動作点Bから運転動作点Aへ加速した場合のスロットル弁、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、および排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施例になる内燃機関の制御装置を図面に基づき詳細に説明するが、複数の実施例があるので共通する内燃機関のシステム構成をまず説明する。
【実施例1】
【0011】
図1において、参照番号1は制御対象とする内燃機関であり、内燃機関1には吸気流路1A及び排気流路1Bが連通している。
【0012】
吸気流路1Aには吸気温度センサを備えたエアフローセンサ2が組付けられている。吸気流路1Aと排気流路1Bにはターボ式の過給機3が備え付けられており、過給機3のコンプレッサーが吸気流路1Aに、タービンが排気流路1Bにそれぞれ接続されている。
【0013】
過給機3は、排気ガスの有するエネルギをタービン翼の回転運動に変換するためのタービンと、タービン翼に連結されたコンプレッサー翼の回転によって吸入空気を圧縮するためのコンプレッサーとで構成されている。過給機3のコンプレッサー側の下流には、断熱圧縮されて上昇した吸気温度を冷却するためのインタークーラ5が備えられている。
【0014】
インタークーラ5の下流には、冷却後の吸気温度を計測するための吸気温度センサ6が組付けられている。吸気温度センサ6の下流には、吸気流路1Aの流路断面積を絞りシリンダに流入する吸入空気量を制御するためのスロットルバルブ7が備えられている。
【0015】
スロットルバルブ7はアクセル踏み込み量とは独立にスロットル開度を制御することができる電子制御式スロットルバルブである。スロットルバルブ7の下流には吸気マニホールド8が連通している。尚、インタークーラをスロットルバルブ7の下流の吸気マニホールド8に一体化させて備える構成としてもよい。それによってコンプレッサー下流からシリンダまでの容積を小さくすることができ、加減速の応答性を向上させることができる。
【0016】
吸気マニホールド8には過給圧センサ9が組付けられている。吸気マニホールド8の下流には、吸気に偏流を生じさせることによって、シリンダ内流れの乱れを強化する流動強化弁10と、吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射弁11が配置されている。燃料噴射弁11はシリンダに直接燃料を噴射する方式としてもよい。
【0017】
内燃機関1は、吸気弁12及び排気弁バルブ14の開閉の位相を連続的に可変とする位相可変機構を吸気弁12および排気弁14にそれぞれ備えている。また、吸気弁12にはそのリフトを連続的に可変とするリフト可変機構も備えられている。吸気弁12及び排気弁バルブ14の可変機構には、バルブの開閉位相を検知するためのセンサ13及び15が、吸気弁12および排気弁14にそれぞれ組付けられている。
【0018】
シリンダヘッド部にはシリンダ内に電極部を露出させ、スパークによって可燃混合気を引火する点火プラグ16が組付けられている。さらにシリンダにはノックの発生を検知するノックセンサ17が組付けられている。
【0019】
クランク軸にはクランク角度センサ18が組付けられている。クランク角度センサ18から出力される信号にもとづき、内燃機関1の回転速度を検出することができる。排気流路1Bには空燃比センサ20が組付けられており、空燃比センサ20の検出結果に基づき燃料噴射弁11より供給される燃料噴射量が目標空燃比となるように、フィードバック制御が行われる。
【0020】
空燃比センサ20の下流には、排気浄化触媒21が設けられており、一酸化炭素、窒素酸化物および未燃炭化水素などの有害排出ガス成分が触媒反応によって浄化される。
【0021】
過給機3には、エアバイパスバルブ4およびウェストゲートバルブ19が備えられている。エアバイパスバルブ4はコンプレッサーの下流部からスロットルバルブ7の上流部の圧力が過剰に上昇するのを防ぐために備えられている。過給状態においてスロットルバルブ7を急激に閉止した場合に、エアバイパスバルブ4を開くことでコンプレッサー下流部の吸気(空気と排気ガスが混合したガス)をコンプレッサー上流部へ逆流させて過給圧を下げることができる。
【0022】
一方、ウェストゲートバルブ19は内燃機関1が過剰な過給レベルとなるのを防ぐために設けられている。過給圧センサ9により検知された過給圧が所定の値に達した場合に、ウェストゲートバルブ19を開くことで、タービンを迂回するように排気ガスがバイパスされて過給圧の上昇を抑制あるいは保持することができる。
【0023】
排気浄化触媒21の下流より排気ガスを分流し、コンプレッサーの上流部へと排気ガスを還流させる排気ガス還流通路(以下、EGR通路という。)22が連通している。EGR通路22には排気ガスを冷却するための排気ガスクーラ23が備えられている。
【0024】
排気ガスクーラ23の下流には排気ガス流量を制御するための排気ガス還流制御弁(以下、EGR弁という。)24が備えられている。EGR弁24の上流部の排気ガスの温度を検出するための温度センサ25およびEGR弁24の前後の差圧を検出するための差圧センサ26が組み付けられている。
【0025】
これらの各制御要素は制御ユニット(以下、ECUという。)27によって制御されるものである。ECU27には上述した各種センサと各種アクチュエータが接続されており、具体的にはスロットルバルブ7、燃料噴射弁11、位相/リフト可変機構13及び15、EGR弁24などのアクチュエータはECU27により制御されている。
【0026】
更に、上述した各種センサより入力された信号にもとづき、内燃機関1の運転状態を検知して運転状態に応じてECU27により決定されたタイミングで点火プラグ16が点火を行うことができる。
【0027】
図2は過給機を備える内燃機関において、スロットル弁7およびウェストゲート弁19の定常目標開度マップを説明する図である。吸入空気量の増加にしたがって、スロットル弁7の目標開度を増加させる様に設定されている。この例では、過給域よりやや低い負荷水準以上(図2(a)における破線内の領域)で、排気ガスクーラ23によって冷却した排気ガス(以下、Cooled−EGRという。)を導入する。
【0028】
ここで、太い破線の枠で囲まれた領域が排気ガスの還流される、いわゆるEGR領域である。(以下の図面においても同様にEGR領域を示す。)
従来、この領域では燃料のリッチ化によるノック低減や排気温度上昇の抑制を図ってきたが、同領域にてCooled−EGRを導入しノック低減や排気温度抑制を図りつつ、理論空燃比による燃焼を行うことで、低燃費運転を実現することができるようになるものである。
【0029】
図2(b)には、回転速度に対するウェストゲート弁19の開度の関係が示されており、インターセプト点以上の回転速度域でウェストゲート弁19による過給圧制御を行う。同一回転速度では目標過給圧が大きい程、ウェストゲート弁開度を大きくするように動作する。
【0030】
図3は、EGR弁24の開度と排気ガス還流率(以下、EGR率という。)との関係、充填効率とスロットル弁7の開度との関係および排気ガス導入時のスロットル弁7の開度補正量を説明する図である。図3(a)に示す様に、EGR弁24の同一前後差圧においては、EGR弁24の開度を大きくするほどEGR率が大きくなる傾向を示している。
【0031】
また、図3(b)に示す様に、充填効率が増加するほどスロットル弁7の開度を大きく設定する必要がある。この例ではスロットル弁7の上流に排気ガスが合流する構成となっており、排気ガスの導入に応じてスロットル弁7の開度を増加側に補正する必要がある。
【0032】
図4は従来の過給機を備えた内燃機関において、図2に示す運転動作点Bから運転動作点Aへ加速した場合のスロットル弁7、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート弁19の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。
【0033】
図4の(c)、(d)にあるように、エアバイパス弁4およびウェストゲート弁19を閉じた状態で、図4の(a)のようにスロットル弁7によって運転動作点Bに負荷調整を行うと、過給機3による吸入空気への圧縮仕事をスロットル弁7によって絞る結果、スロットル弁7の前後差圧が大きくなる。その状態から、目標EGR率を固定しつつスロットル弁7を急激に開くと、スロットル弁7の下流へ新気が一気に流入し、図4の(e)のようにスロットル弁7の前後差圧が減少し、図4の(f)のように充填効率も変動するする。
【0034】
このとき、図4の(g)のように一時的にEGR合流部のEGR率が著しく減少するスパイク現象を生じる。このようなEGR率のスパイクがシリンダに到達すると、空燃比制御精度の悪化やトルク制御精度の悪化を生じる問題があった。
【0035】
同様に、図5は従来の過給機付き内燃機関の制御システムにおいて、運転動作点Aから運転動作点Bへ減速した場合のスロットル弁、EGR弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。図5においては図4に示すような変化と逆の変化を生じるようになる。
【0036】
スロットル弁7を急閉止するとコンプレッサー下流部(スロットル弁上流部)の吸入空気が行き場を失うことで、過給圧が急激に上昇を始める。コンプレッサーが低流量かつ高過給圧の動作領域に突入すると、サージングと呼ばれる不安定現象を生じることが知られている。
【0037】
これを防止するために、従来の過給機付き内燃機関では、スロットル弁7の前後差圧を駆動源としてエアバイパス4弁を開くことで、コンプレッサー上流部へ圧縮ガスを逆流させている。
【0038】
しかしながら、上記エアバイパス弁4の開動作にともない、空気と排気ガスの混合ガスがEGR通路22と吸気流路1Aの接続部であるEGR合流部より上流部へ逆流し、その後にEGR合流部を通過してシリンダ側の順流方向へと流れる際に、新たなEGRを含んでシリンダ側へ流入する。
【0039】
したがって、図5の(g)にあるように一時的にEGR合流部のEGR率が著しく増加するスパイク現象を生じる。このようなEGR率のスパイクがシリンダに到達すると空燃比制御精度の悪化やトルク制御精度の悪化を生じる問題があった。
【0040】
図6は従来の過給機付き内燃機関の制御システムにおいて、運転動作点Aから運転動作点Cへ急停止した場合の、スロットル弁、EGR弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。
【0041】
図5と同様に、スロットル弁7を急閉止するとコンプレッサー下流部(スロットル弁上流部)の吸入空気が行き場を失うことで、過給圧が急激に上昇を始める。スロットル弁7の前後差圧が大きくなるとエアバイパス弁4が開き始め、コンプレッサー下流部より上流部へとEGRを含んだガスが逆流する。
【0042】
EGR弁24をスロットル弁7に同期させて急閉止した場合でも、EGR合流部の下流部からシリンダまでの空間に滞留したEGRがシリンダに到達するまでには一定の遅れが見られ、その間にスロットル弁7の下流部の圧力が低下することによって、シリンダ内は内部EGRの割合が増加する。滞留EGRと内部EGRとの重畳でシリンダ内には多量のEGRが導入される結果となり失火を生じる問題があった。
【0043】
以上が従来の過給機を備えた内燃機関の過渡運転時に生じていた排気ガスの一時的な増加、或いは減少を生じるメカニズムである。
【0044】
次に、本発明の実施例を説明する前に本発明の実施例に使用されるリフト/位相可変機構について説明しておく。
【0045】
図7は、吸気弁12及び排気弁14に位相可変機構を設けたときのバルブリフトパターンを説明する図である。
【0046】
吸気弁12の位相を進角側に変化させ、逆に排気バルブの位相を遅角側に変化させると吸気弁12と排気弁14のオーバーラップ期間が増加する。このような位相可変機構を備えた内燃機関では、部分負荷条件においてオーバーラップ期間が生じるように吸気弁12と排気弁14が制御され、排気管中の排気ガスを一旦、吸気管へ吹き返すことによって内部EGRを生じさせることができる。吸気弁12および排気弁14の位相をともに上死点よりも遅角側に設定し、排気弁閉じ時期のシリンダ容積を増加させることによって、シリンダ内の残留ガスを増大させことも可能である。この方法によれば、吸気弁と排気弁のオーバーラップ期間を増加させずに、内部EGRを生じさせることができる。
【0047】
内部EGRの増加にしたがって、部分負荷条件でのポンプ損失の低減ができ、燃焼ガス温度を低減できるために排気ガス中の窒素酸化物の低減を行うことができる。
【0048】
図8は吸気弁12にリフト可変機構を備えた吸気弁12のバルブリフトパターンを説明する図である。スロットル弁12によって充填効率を制御する内燃機関では、吸気弁12の上流圧をスロットル弁7によって絞ることで負圧を生じさせるため、ポンプ損失による燃費悪化が問題となる。
【0049】
吸気弁12の上流圧をスロットル弁7によって絞ることなく、図8にあるように吸気弁12のリフトによって吸気量を制御することができれば、上記ポンプ損失にともなう燃費悪化を抑制することができる。
【0050】
したがって、図8に示すようなリフト可変機構によって吸気弁12のバルブリフトを連続的に可変とするリフト可変機構と、位相を連続的に可変とする位相可変機構とを組み合わせて用いることによって、吸気弁開時期(IVO)を固定しつつ、吸気弁閉時期(IVC)を変化させることができる。このような可変機構を備えることで、スロットル弁7によらないで充填効率を制御することができる。
【0051】
このリフト可変機構では吸気弁12の作動角が増加するにしたがって最大リフトが増加する関係を有しており、要求トルクの小さいときにはリフト量を小さくすると同時に吸気弁閉時期(IVC)を進角させて吸気量を少なくすることができる。このとき、吸気弁閉時期(IVC)を進角させることによって、ピストン圧縮量をピストン膨張量と比較して相対的に小さくすることができるので、ポンプ損失の低減に加えてミラーサイクル効果による燃費向上効果も期待できる。
【0052】
図9は、充填効率と吸気弁12の作動角との関係、及び排気ガス導入時の吸気弁12の作動角補正量を説明する図である。同図に示す様に充填効率が増加するほど吸気弁作動角を大きく設定する必要がある。この例では、同一充填効率を実現するためには排気ガス導入に応じて吸気弁12の作動角を増加側に補正する必要がある。
【0053】
図10は過給機を備えた内燃機関において、図2に示すスロットル弁7の代わりに用いたリフト/位相可変機構、及びウェストゲート弁19の定常目標開度マップを説明する図である。
【0054】
図2と同様に、リフト/位相可変機構は充填効率が増加するにしたがって吸気弁12の作動角を増加させるように動作するが、この例では過給領域よりやや低い負荷水準以上(図10(a)における破線内の領域)で、排気ガスクーラ23によって冷却した排気ガスを導入する。したがって、破線内がEGR領域となるものである。
【0055】
従来ではこの領域では、燃料のリッチ化によるノック低減や排気温度抑制を図ってきたが、同領域にてCooled−EGRを導入しノック低減や排気温度抑制を図りつつ、理論空燃比による燃焼を行うことで、低燃費運転を実現することができる。
【0056】
図10(b)には、回転速度に対するウェストゲート弁19の開度の関係が示されており、インターセプト点以上の回転速度域でウェストゲート弁19による過給圧制御を行う。同一回転速度では目標過給圧が大きい程、ウェストゲート弁19の開度を大きくする。
【0057】
図11はECU27に搭載された制御装置の制御ブロックを示しており、リフト/位相可変機構、EGR弁24、ウェストゲート弁19、点火プラグ16、および燃料噴射弁11の各制御指令値を演算するブロックを示している。
【0058】
図11において、ステージ1では制御量の演算を主に行なうもので、ブロック1101では回転速度とアクセル開度(=踏み込み量)に基づき目標トルクを演算し、ブロック1102では回転速度と目標トルクに基づき目標充填効率を演算し、ブロック1103では回転速度と目標充填効率に基づき目標EGR率を演算し、ブロック1104では回転速度と目標充填効率と目標EGR率に基づき目標吸気管圧力を演算し、ブロック1105では回転速度と充填効率に基づき目標空燃比を演算する。
【0059】
次のステージ2では制御量に基づき具体的な物理量の演算を行うもので、ブロック1106では回転速度、目標充填効率、目標EGR率、及び目標吸気圧力と現在の吸気圧力との差に基づき目標吸気弁位相および作動角を演算し、ブロック1107では回転速度、目標充填効率、及び目標EGR率に基づき目標EGR弁開度を演算し、ブロック1108では回転速度、及び目標吸気圧力と現在の吸気圧力との差に基づき目標ウェストゲート弁開度をし、ブロック1109では回転速度と現在の充填効率と現在のEGR率にもとづき点火時期を演算し、ブロック1110では回転速度、現在の充填効率と目標空燃比にもとづき燃料噴射期間および噴射時期を演算する。
【0060】
図12はこれもECU27に搭載された制御装置の制御ブロックを示しており、スロットル弁開度、EGR弁開度、エアフローセンサ検出流量、EGR弁前後圧力状態、大気状態、吸気弁や排気弁の位置等の検出信号に基づいて、充填効率、EGR率、および吸気圧力等の制御に使用するパラメータを演算する制御ブロックを示している。
【0061】
図12において、ブロック1201では回転速度、可変バルブ位置、スロットル弁下流圧力、及びスロットル弁下流温度に基づきシリンダ流量を演算する。
【0062】
ブロック1202ではスロットル弁開度、スロットル弁上流圧力、スロットル弁下流圧力、及びスロットル弁上流温度に基づきスロットル弁流量を演算する。
【0063】
ブロック1203ではエアフローセンサ検出流量、スロットル弁流量、大気温度、大気圧力、コンプレッサー下流温度に基づきコンプレッサー下流圧力を演算する。
【0064】
ブロック1204ではエアフローセンサ検出流量、スロットル弁流量、及びコンプレッサー下流圧力に基づきコンプレッサー下流温度を演算する。
【0065】
ブロック1205ではスロットル弁流量、シリンダ流慮、コンプレッサー下流温度、及びスロットル弁下流温度に基づきスロットル弁下流圧力を演算する。
【0066】
ブロック1206ではスロットル弁流量、シリンダ流慮、及びコンプレッサー下流温度に基づきスロットル弁下流温度を演算する。ブロック1207ではEGR弁開度、EGR弁上流圧力、EGR上流温度、及びEGR弁下流圧力に基づきEGR流量を演算する。
【0067】
ブロック1208では回転速度及びシリンダ流量に基づき充填効率を演算し、ブロック1209ではEGR流量、スロットル弁流量、及びエアフローセンサ検出流量に基づきコンプレッサー下流EGR率を演算する。
【0068】
ブロック1210ではコンプレッサー下流EGR率、スロットル弁流量、及びシリンダ流量に基づきスロットル弁下流EGR率を演算する。
【0069】
そして、ブロック1205で演算された吸気圧力と、ブロック1208で演算された充填効率と、ブロック1,210で演算されたEGR率は図11に示した制御に反映させることができる。
【0070】
このようなECU27を含めた内燃機関の制御装置において、次に過渡運転時に一時的に排気ガス流量が増加、或いは減少するという課題を解決する本発明の実施例について説明する。
【0071】
図13は図10に示した例において、過給域で且つCooled−EGRを導入する運転動作点Aから運転動作点Bに向けて減速した場合の吸気弁作動角、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート弁19の動作を説明するフローチャート図である。
【0072】
図13に示すフローチャートは図11及び図12に示す制御ブロックによって実行されるものであり、所定の時間割り込みによって割り込み処理の実行命令が入ると図13に示すフローチャートが起動されるものである。
【0073】
この割り込みが入ると、ステップ1301で現在の運転状態がアクセルペダルの位置によって判断される。ステップ1301で例えばアクセルペダルの開度が小さく、内燃機関の回転数が高い場合は減速状態と判断され、減速状態でないと判断されるとこの割り込み処理を終了する。
【0074】
ステップ1301で減速状態と判断されると、ステップ1302に進んで現在の内燃機関の状態において過給機3が作動し、且つ排気ガスが還流されている領域かどうかの判断がなされる。つまり、目標動作点が過給領域で且つCooled−EGRが導入される領域内であるか否かが判断されるものである。
【0075】
過給領域で且つCooled−EGRが導入される領域内である場合には、ステップ1303に進んで吸気弁作動角が減少されて吸気量が絞られ、これによって減速動作が実行される。
【0076】
更に、これに続いてステップ1304に進んでウェストゲート弁19が開かれて、タービンを流れる排気ガスをバイパスさせてタービンの回転を減少させることでコンプレッサーの回転を減少させる。
【0077】
次いで、ステップ1305に進んでコンプレッサーをバイパスしているエアバイパス弁4を閉じてコンプレッサー下流の排気ガスを含んだ混合ガスの逆流を抑制する。
【0078】
これによって、減速時に見られる排気ガスが一時的に増加するスパイク現象を防止することができる。
【0079】
一方、ステップ1302で現在の内燃機関の状態において過給機3が作動し、且つ排気ガスが還流されない領域であると判断されると、ステップ1306に進んで吸気弁作動角が減少されて吸気量が絞られ、これによって減速動作が実行される。
【0080】
更に、この後ステップ1307に進んで、この運転領域ではそもそも排気ガスの還流を行なわない領域なのでEGR弁24を閉じて排気ガスの還流を停止する。
【0081】
次いでステップ1308に進んでウェストゲート弁19が開かれて、タービンを流れる排気ガスをバイパスさせてタービンの回転を減少させることでコンプレッサーの回転を減少させる。
【0082】
次いで、ステップ1309に進んでコンプレッサーをバイパスしているエアバイパス弁4を閉じてコンプレッサー下流の排気ガスを含んだ混合ガスの逆流を抑制する。
【0083】
図14は図13に示したフローチャートのステップ1303乃至ステップ1305の実行によって得られる効果を説明するための特性図であって、運転動作点Aから運転動作点Bへ減速した場合の吸気弁12の作動角、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート弁19の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明するものである。
【0084】
図14の(a)にあるようにステップ1303で吸気弁作動角を減少させて減速制御を行うと共に、これと実質的に同期して図14の(d)のようにステップ1304でウェストゲート弁19を開くと共に、図14の(c)のようにステップ1305でエアバイパス弁4を閉じている状態に維持しておく。ここで図14の(b)にあるようにEGR弁24は開かれて所定の制御状態に保持されている。
【0085】
したがって、図14の(e)にあるようにスロットル弁7の前後の吸気圧力もさほど大きく乖離せず、図14の(f)にあるように充填効率もなだらかに減少していき、結果として図14の(g)に示すようにEGR率も大きく変動しないように落ち着かせることができるようになる。
【0086】
このように、減速時にエアバイパス弁4を閉じた状態とすることでEGRのコンプレッサー上流部への逆流を防止でき、従来例として図5で説明した減速時における排気ガスの一時的な増加によるスパイク現象を適切に防止することができる。
【0087】
また、ウェストゲート弁19を開くことによって、タービン回転速度を抑えて吸気量の低流量条件下において過給圧の過剰な上昇時に生じるサージング減少を防止することができる。
【0088】
更に、図14の(c)の2点鎖線にあるように、少なくともウェストゲート弁19の開弁動作開始後の所定時間経過後に排気ガスの逆流によってEGR合流部の上流側へ達しない程度にエアバイパス弁4をわずかに開くことによって、サージング現象をより確実に防止することが可能である。
【0089】
更に、図14の(a)(e)(f)の破線にあるように、吸気圧力が目標吸気圧力に達していないと判定された場合には、吸気弁作動角の目標制御量を一時的に減少側に過渡補正することによって、減速応答性を向上させることができる、という効果もあわせ期待できるものである。
【0090】
図15は図13に示したフローチャートのステップ1306乃至ステップ1309の実行によって得られる効果を説明するための特性図であって、図10の例において、運転動作点Aから運転動作点Cへ急停止した場合の吸気弁12の作動角、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート19弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。
【0091】
急減速してからステップ1302に進んで現在の内燃機関の状態が過給領域で且つCooled−EGRが導入される領域内では無いと判断されると、ステップ1303に進んで吸気弁12の作動角が減少されて図15(a)のよう吸気量が絞られて減速動作が実行される。
【0092】
その後、運転動作点CはEGR領域ではないため図15(b)にあるようにEGR弁24は閉じられるようになり、更に図15(c)、(d)にあるようにエアバイパス弁4を閉じた状態に移行或いは維持し、ウェストゲート弁を開くようにする。
【0093】
この結果、スロットル弁7の前後吸気圧力は図15(e)はほぼ等しくなり、更に充填効率も図15(f)にあるようになだらかに落ち着き、EGR率は図15(g)にあるように一時的に増加することがない。
【0094】
このように、減速時にエアバイパス弁4を閉じた状態とすることで排気ガスのコンプレッサー上流部への逆流を防止できる。これによって、図5で説明したような減速時における排気ガスの一時的な増加によるスパイク現象を適切に防止することができる。
【0095】
更に、ウェストゲート弁19を開くことによって、タービン回転速度を抑え、低流量条件において過給圧の過剰な上昇時に生じるサージング減少を防止することができる。また、二点鎖線で示したように、少なくともウェストゲート弁の開弁動作開始以降に、排気ガスの逆流がEGR合流部の上流側へ達しない程度にエアバイパス弁をわずかに開くことによって、上記サージング現象をより確実に防止することが可能である。
【0096】
図16は図10に示した例において、過給領域で且つCooled−EGRを導入する運転動作点Bから運転動作点Aまで加速した場合の吸気弁作動角、ウェストゲート弁の各動作を説明するフローチャート図である。
【0097】
図16に示すフローチャートは図11及び図12に示す制御ブロックによって実行されるものであり、所定の時間割り込みによって割り込み処理の実行命令が入ると図15に示すフローチャートが起動されるものである。
【0098】
この割り込みが入ると、ステップ1601によってドライバのアクセルペダルの操作、例えば単位時間当りのアクセル操作量の変化によって加速条件と判断されると、ステップ1602に進んで現在の内燃機関の状態において過給機3が作動し、且つ排気ガスが還流されている領域かどうかの判断がなされる。つまり、目標動作点が過給領域で且つCooled−EGRが導入される領域内であるか否かが判断されるものである。
【0099】
ステップ1602で目標動作点が過給領域で且つCooled−EGRが導入される領域内である判断されると、ステップ1603に進んで吸気弁12の作動角が増加されて加速のための吸気量が増大され、その後にステップ1604に進んでウェストゲート弁19を制御する。このステップ1604ではウェストゲート弁19が開かれていた場合はウェストゲート弁19を閉じ、ウェストゲート弁19が閉じられていた場合は閉じた状態を維持するものである。
【0100】
また、この後にステップ1605に進んでエアバイパス弁4の制御を行なうが、この加速時にはコンプレーサーの過給を有効にするためエアバイパス弁4は閉じられた状態にされて過給がなされている。このステップ1605ではエアバイパス弁4が開かれていた場合はエアバイパス弁4を閉じ、エアバイパス弁4が閉じられていた場合は閉じた状態を維持するものである。これによって、加速時に見られるEGRの一時的に減少するスパイク現象を防止することができる。
【0101】
図17は図10の例において、運転動作点Bから運転動作点Aへ加速した場合の吸気弁12の作動角、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート弁19の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。
【0102】
加速状態になると、図17(a)のように吸気弁12の作動角を大きくしてシリンダに吸入される空気量を増大させて内燃機関で発生するトルクを増大させるようにする。
【0103】
このとき、図16(b)のようにEGR弁24はその運転状態に応じて所定の制御開度に制御されて排気ガスを吸気流路1Aに供給している。
【0104】
また、図17(c)(d)にあるように加速時においては過給を有効に行なうようにするため、エアバイパス弁4とウェストゲート弁19を夫々閉じた状態に維持してタービンの回転を高め、且つコンプレッサーの圧力を高めるようにしている。
【0105】
このように吸気弁12の作動角を増加させて加速制御を行うことによって、図17(e)にあるようにスロットル弁7の前後に生じる大きな圧力差を防止することができる。その結果図16(f)にあるように充填効率の変化もなだらかに移行し、スロットル弁7の下流部への新気の急激な流入を防止でき、図17(g)にあるように加速時における排気ガスの一時的な減少を少なくすることが可能となり、スパイク現象を適切に防止することができる。
【0106】
尚、ここで吸気圧力が目標吸気圧力に達していないと判定された場合には図17(a)、(e)、(f)にある破線に示すように、吸気弁12の作動角の目標制御量を一時的に増加側に過渡補正することによって、加速応答性を向上させることができる。
【実施例2】
【0107】
先に説明した実施例1は吸気量を制御するのに吸気弁12の作用角、いわゆるリフト量を変えて行なっていたのに対し、以下に述べる他の実施例ではスロットル弁7を用いて吸気量を制御する場合を示している。
【0108】
図18は過給機を備えた付き内燃機関において、スロットル弁7およびウェストゲート弁19の定常目標開度マップを説明する図である。
【0109】
図18(a)には、スロットル弁7の定常目標開度マップが示されており、非過給領域においては吸入空気量が増加するにしたがってスロットル弁7の開度を増加させ、一方、過給領域においてはスロットル弁7の開度を全開として過給圧による負荷制御を行うことでポンプ損失低減を図るようにしている。
【0110】
また、図18(b)には、ウェストゲート弁19の定常目標開度マップが示されており、ウェストゲート弁19は吸入空気量が所定値以下において開度を全開とし、過給機のなす無駄な圧縮仕事を抑制させ、一方、吸入空気量が所定値以上においては、充填効率が減少し、かつ回転速度が増加するにしたがって、ウェストゲート弁19の開度を増加する様に設定している。
【0111】
この様な制御とすることで、過給域、非過給域ともにポンプ損失を低減しつつ、タービン回転速度の低下を抑えて加速性悪化への跳ね返りを最小限に抑えることが可能である。本実施例では、過給域よりやや低い負荷水準以上(同図(a)における破線内の領域)で、排気ガスクーラ23によって冷却した排気ガスを導入する。
【0112】
従来、この領域では、燃料のリッチ化によるノック低減や排気温度抑制を図ってきたが、同領域にてCooled−EGRを導入しノック低減や排気温度抑制を図りつつ、理論空燃比による燃焼を行うことで、低燃費運転を実現することができる。
【0113】
図19は充填効率とウェストゲート弁19の開度との関係および排気ガス導入時のウェストゲート弁19の開度補正量を説明する図であり、同図に示す様に充填効率が所定値以下において充填効率の大小に関わらずウェストゲート弁開度を全開状態とし、充填効率が所定値以上において充填効率が増加するほどウェストゲート弁開度を小さく設定する必要がある。このため、本実施例では同一充填効率を実現するためには、排気ガスの導入量に応じてウェストゲート弁19の開度を減少側に補正する必要がある。
【0114】
図20は実施例1と同様にECU27によって実行される制御の制御ブロックを示しており、具体的にはスロットル弁7、EGR弁24、ウェストゲート弁19、点火プラグ16、及び燃料噴射弁11の各制御指令値を演算する制御ブロックである。
【0115】
ブロック2001では回転速度とアクセル開度(=踏み込み量)に基づき目標トルクを演算する。
【0116】
ブロック2002では回転速度と目標トルクにもとづき目標充填効率を演算し、ブロック2003では回転速度と目標充填効率に基づき目標EGR率を演算する。
【0117】
ブロック2004では回転速度と目標充填効率と目標EGR率にもとづき目標吸気管圧力を演算し、ブロック2005では回転速度と充填効率に基づき目標空燃比を演算する。
【0118】
ブロック2006では回転速度、目標充填効率、目標EGR率、目標吸気圧力と現在の吸気圧力との差に基づき、目標スロットル弁開度を演算する。
【0119】
ブロック2007では回転速度、目標充填効率、目標EGR率にもとづき目標EGR弁開度を演算する。
【0120】
ブロック2008では回転速度と目標充填効率にもとづいて目標吸排気弁の位相を演算する。
ブロック2009では回転速度と、目標吸気圧力と現在の吸気圧力との差に基づき、目標ウェストゲート弁開度を演算する。
ブロック2010では回転速度と現在の充填効率と現在のEGR率にもとづき点火時期を演算し、ブロック2011では回転速度、現在の充填効率、目標空燃比に基づき燃料噴射期間及び噴射時期を演算する。
【0121】
図21は図18の例において、過給領域で且つCooled−EGRを導入する運転動作点Aから運転動作点Bへ減速した場合のスロットル弁7、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート弁19、吸気弁12と排気弁14の制御動作を説明するフローチャート図である。
【0122】
図21において、ステップ2101において、実施例1と同様にドライバのアクセルペダルの操作によって減速条件と判断されるとステップ2102において、目標動作点が過給領域で、且つCooled−EGRを導入する領域内であるか否かが判断される。
【0123】
このステップ2102によって過給領域で、且つCooled−EGRを導入する領域内であると判断されるとステップ2103に進んでスロットル弁7が閉じられ、次いでステップ2104でウェストゲート弁19が開かれ、更にステップ2105でエアバイパス弁4が閉じられる。
【0124】
これによって、減速時に見られるEGRの一時的に増加するスパイク現象を防止することができる。
【0125】
図22は図18の例において、運転動作点Aから運転動作点Bへ減速した場合のステップ2103からステップ2105に示す制御によるスロットル弁7、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート弁19の開度と、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。
【0126】
図22(a)のようにスロットル弁7の開度を減少させて減速制御を行うと共に、図22(c)、(d)にあるようにエアバイパス弁4を閉じた状態とし、ウェストゲート弁19を開くようにする。ここで、この領域はEGRを行なう領域であるので図22(b)にあるようにEGR弁は開いた状態にある。
【0127】
したがって、図22の(e)にあるようにスロットル弁7の前後の吸気圧力もさほど大きく乖離せず、図22の(f)にあるように充填効率もなだらかに減少していき、結果として図22の(g)に示すようにEGR率も大きく変動しないように落ち着かせることができるようになる。
【0128】
このように、減速時にエアバイパス弁4を閉じた状態とすることでEGRのコンプレッサー上流部への逆流を防止でき、従来例として図5で説明した減速時における排気ガスの一時的な増加によるスパイク現象を適切に防止することができる。
【0129】
また、ウェストゲート弁19を開くことによって、タービン回転速度を抑えて吸気量の低流量条件下において過給圧の過剰な上昇時に生じるサージング減少を防止することができる。
【0130】
更に、図22の(c)の二点鎖線にあるように、少なくともウェストゲート弁19の開弁動作開始後の所定時間経過後に排気ガスの逆流によってEGR合流部の上流側へ達しない程度にエアバイパス弁4をわずかに開くことによって、サージング現象をより確実に防止することが可能である。
【0131】
更に、図22の(a)(e)(f)の破線にあるように、吸気圧力が目標吸気圧力に達していないと判定された場合には、吸気弁作動角の目標制御量を一時的に減少側に過渡補正することによって、減速応答性を向上させることができる、という効果もあわせ期待できるものである。
【0132】
図21に戻り、ステップ2102によって過給領域で且つCooled−EGRを導入する領域内でないと判断されると、ステップ2106に進んで目標とする動作点が吸気弁12と排気弁14を用いて位相可変機構によって内部EGRを導入する領域内であるか否かが判断される。
【0133】
ステップ2106で内部得EGRを行なう領域と判断されるとステップ2107に進んでスロットル弁7が閉じられ、またステップ2102でEGR領域でないと判断されているのでステップ2108でEGR弁24が閉じられるように制御される。
【0134】
これに続いて、ステップ2109でウェストゲート弁19が開かれ、次いでステップ2110でエアバイパス弁4が閉じられ、更にステップ2111で吸気弁12と排気弁14を位相可変機構によってオーバーラップ(O/L)期間の拡大操作を所定のサイクル数が経過するまで遅延させる。これによって、吸気マニホールド内に滞留したCooled−EGRと内部EGRとの重畳による多量のEGRの導入を防止することができる。
【0135】
図23は図18の例において、運転動作点Aから運転動作点Dへ減速した場合のステップ2107からステップ2111に示す制御によるスロットル弁7、EGR弁24の開度、吸排気弁の位相、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。尚、ウェストゲート弁19及びエアバイパス弁4の開度はここでは省略しているが、図22(c)(d)と同じような動作を行なうものである。
【0136】
実施例1でも説明したように、減速によってスロットル弁7を急閉止するとコンプレッサー下流部(スロットル弁上流部)の吸入空気が行き場を失うことで、過給圧が急激に上昇を始める。スロットル弁7の前後差圧が拡大すると、エアバイパス弁4が開き始め、コンプレッサー下流部より上流部へとEGRを含んだガスが逆流する。
【0137】
このため、図23(a)にあるようにスロットル弁7の急閉止に同期させてEGR弁24を図23(b)にあるように急閉止した場合でも、EGR合流部の下流部からシリンダまでの空間に滞留したEGRがシリンダに到達するまでには一定の遅れが見られる。ここで、吸気弁12と排気弁14のオーバーラップ期間をスロットル弁7の閉止動作に同期させて拡大すると、シリンダ内は内部EGRの割合が増加する。このため滞留EGRと内部EGRとの重畳でシリンダ内には多量のEGRが導入される結果、失火を生じる現象がある。
【0138】
これを対策するため、ステップ2111を追加して図23(c)にあるように吸気弁12と排気弁14のオーバーラップを拡大するタイミングをスロットル弁7の閉止タイミングから所定のサイクルを経過するまで期間遅らせることで、図23(f)のように多量のEGRによる失火を防止することができる。
【0139】
ここで図23(c)、(f)で破線は吸気弁12と排気弁14のオーバーラップを拡大するタイミングをスロットル弁7の閉止タイミングに同期させた場合を示し、実線はステップ2111にあるような吸気弁12と排気弁14のオーバーラップを拡大するタイミングをスロットル弁7の閉止タイミングから所定のサイクルを経過するまで期間遅らせた場合を示している。
【0140】
また、図21に戻ってステップ2106で目標動作点が内部EGRを導入する領域内に無いと判断されると、ステップ2112に進んでスロットル弁7が閉じられ、次いでステップ2113でEGR弁24が閉じられ、引き続きステップ2114でウェストゲート弁19が開かれ、最後にステップ2115でエアバイパス弁4が閉じられるように動作する。
【0141】
図24は図18の例において、運転動作点Aから運転動作点Cへ減速した場合のステップ2112からステップ2115に示す制御によるスロットル弁7、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート弁19の開度と、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。
【0142】
図24(a)に示すようにスロットル弁7を閉止して急停止を行う際に、図24(b)にあるようにEGR弁24を制御状態から閉じ、更に図24(c)にあるようにエアバイパス弁4を閉じた状態で、図24(d)にあるようにウェストゲート弁19を開くようにする。
【0143】
これによって、エアバイパス弁4を閉じた状態とすることで排気ガスのコンプレッサー上流部への逆流を防止でき、図24(g)にあるように図5で説明した減速時における排気ガスの一時的な増加によるスパイク現象を適切に防止することができる。
【0144】
更に、図24(c)の二点鎖線にあるように、少なくともウェストゲート弁19の開弁動作開始後の所定時間経過後に排気ガスの逆流によってEGR合流部の上流側へ達しない程度にエアバイパス弁4をわずかに開くことによって、サージング現象をより確実に防止することが可能である。
【0145】
図25は図18に示した例において、過給領域で且つCooled−EGRを導入している運転動作点Bから運転動作点Aまで加速した場合のスロットル弁、ウェストゲート弁の制御動作を説明するフローチャート図である。
【0146】
図25において、ステップ2501でドライバのアクセルペダルの操作によって加速条件と判断されると、ステップ2501に進んで過給領域で且つCooled−EGRを導入する運転状態かどうかが判断され、このステップ2502で過給領域で且つCooled−EGRを導入する運転状態であると判断されるとステップ2503に進んでスロットル弁7が開かれる。
【0147】
これに続いてステップ2504でウェストゲート弁19が閉じられ、更にステップ2505でエアバイパス弁4が閉じられるように動作する。
【0148】
これによって、加速時に見られる排気ガスの一時的な減少によるスパイク現象を防止することができる。
【0149】
図26は図18の例において、運転動作点Bから運転動作点Aへ加速した場合の、スロットル弁7、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート弁19の開度、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。
図26(a)にあるようにスロットル弁7を開くと、EGR弁24はEGR領域であるため図26(b)所定の制御開度に制御されている。このとき、加速性能を維持するため図26(c)図26(d)にあるようにエアバイパス弁4が閉じられ、またウェストゲート弁19も閉じられる。ここで図26(e)のあるようにスロットル弁7の前後の吸気圧力はほぼ同じような値となっている。このため充填効率も図26(f)にあるようになだらかに推移していくようになる。この結果、図26(g)にあるように加速時における排気ガスの一時的な減少を少なくすることが可能となり、スパイク現象を適切に防止することができる。
【0150】
尚、運転動作点Bではウェストゲート弁19を開くことによって、過給機の無駄仕事を排除することで、同動作点B上でウェストゲート弁19を閉じる従来制御と比較して、スロットル弁7の前後差圧を小さくすることができる。
【0151】
その結果、スロットル弁7の下流部への新気の急激な流入を抑制でき、図4で説明した加速時における排気ガスの一時的な減少によるスパイク現象を適切に防止することができる。また、吸気圧力が目標吸気圧力に達していないと判定された場合には、破線で示したようにウェストゲート弁19を一時的に閉止側に過渡補正することによって加速応答性を向上させることができる。
【0152】
以上に説明した実施例1及び実施例2における特徴的な作用効果について以下に列記する。
【0153】
(1)内燃機関が過給状態で、且つEGRが還流されている状態において、吸気量制御手段によって気筒へ流入するガス量を減じる減速時に、エアバイパス弁を閉じた状態で、ウェストゲート弁を開くことで、EGRのスパイクを防止することができ、空燃比変動にともなう排気悪化やトルク変動を抑制できるほか、過剰なEGRの導入による失火を防止することができる。また、ウェストゲート弁を開くことで、低流量かつ高過給圧時に見られるサージング現象を抑制することができる。
【0154】
(2)吸気量制御手段に吸気弁の位相および作動角を可変とする可変バルブを用いることで、スロットル弁前後に生じる差圧を抑制でき、加速時に見られるスロットル弁下流への新気の急激な流入にともなうEGRスパイクや、減速時に見られるエアバイパス弁からの逆流にともなうEGRスパイクを防止することができる。
【0155】
(3)内燃機関が過給状態で、且つEGRが還流されている状態において、気筒へ流入する吸気量を増加せしめるときには、スロットル弁を全開にした状態でウェストゲート弁を閉じることで、加速時に見られるスロットル弁下流への新気の急激な流入にともなうEGRスパイクを防止することができる。
【0156】
(4)内燃機関が過給状態で、且つEGRが還流されている状態において、気筒へ流入する吸気量を減じるときには、エアバイパス弁を閉じた状態で、ウェストゲート弁を開くことで、減速時に見られるエアバイパス弁からの逆流にともなうEGRスパイクを防止することができる。
【0157】
(5)吸気量制御手段によって気筒へ流入するガス量を減じるときには、少なくともウェストゲート弁を開くタイミング以降に、EGRの逆流がEGR合流部の上流側へ達しない程度に、エアバイパス弁をわずかに開くことで、EGRスパイクを抑制しつつ、低流量かつ高過給圧時に見られるサージング現象をより確実に防止することが可能である。
【0158】
(6)内燃機関が過給状態で、かつEGRが還流されている状態において、同一充填効率ではEGR率が増加する程ウェストゲート弁の開度を減少させる様に設定することで、EGRが還流されている状態においても、充填効率を精度良く制御しつつ過給域のポンプ損失を低減し、理論空燃比燃焼による低燃費運転を実現できる。
【0159】
(7)、内燃機関が過給状態で、且つEGRが還流されている状態から、非過給状態で、吸排気弁のオーバーラップ期間を拡大させて内部EGRを増量している状態へと、吸気量制御手段によって気筒へ流入するガス量を減じるときには、吸排気弁のオーバーラップ期間を拡大させるタイミングを、所定のサイクル数遅延することで、EGR合流部より下流に滞留しているEGRとオーバーラップ拡大による内部EGRとの重畳で、シリンダ内に大量のEGRが存在することによる失火を防止することができる。
【符号の説明】
【0160】
1…内燃機関、2…エアフローセンサおよび吸気温センサ、3…ターボ過給機、4…エアバイパス弁、5…インタークーラ、6…温度センサ、7…スロットルバルブ、8…吸気マニホールド、9…圧力センサ、10…流動強化弁、11…燃料噴射弁、12…吸気可変バルブ機構、13…吸気可変バルブ位置センサ、14…排気可変バルブ機構、15…排気可変バルブ位置センサ、16…点火プラグ、17…ノックセンサ、18…クランク角度センサ、19…ウェストゲート弁、20…空燃比センサ、21…排気浄化触媒、22…EGR管、23…EGRクーラ、24…EGR弁、25…温度センサ、26…差圧センサ、27…ECU(Electronic…Control…Unit)。
【技術分野】
【0001】
本発明は排気側タービンの下流部より分流した排気ガスをクーラにて冷却した後に吸気側コンプレッサーの上流部へ還流させる内燃機関の制御装置に係り、特に内燃機関の過渡運転時に適正な排気ガスを還流できるように排気ガスの流量を制御する内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の内燃機関においては、小型化、低燃費、低排気ガスの観点から過給機を用いて内燃機関に供給される空気を加圧しており、このような過給機を用いた内燃機関としては特開2009−250209号公報(特許文献1)に記載されているようなものが知られている。
【0003】
特許文献1においては可変動弁機構と過給機とを備えた内燃機関において、排気側タービン(以下、タービンという。)の上流部より分流した排気ガスを吸気側コンプレッサー(以下、コンプレッサーという。)の上流側へ導入する第1排気ガス還流通路と、排気ガスをコンプレッサーの下流側に導入する第2排気ガス還流通路とを設け、運転状態に応じて設定される目標排気ガス還流量が得られるように、上流側排気ガス量と下流側排気ガス量とを制御弁によって調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−250209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般に過給機を備えた内燃機関においてはコンプレッサーの上流部へ排気ガスを還流させる構成では、排気ガスと新気との合流部からシリンダまでの経路が長いこと、コンプレッサーの上下を結ぶエアバイパス通路のエアバイパス弁を過渡時に開くこと等の要因によって減速運転時や加速運転時のような過渡時に排気ガス量が一時的に増加、或いは減少して排気ガス量を目標値に安定して導入することができない現象があった。したがって、この排気ガスの不適正な還流によって空燃比の変動による排気の悪化や、トルクの変動を生じるほか、最悪の場合は失火に至るといった課題があった。
【0006】
本発明の目的は内燃機関の過渡運転時にシリンダ内へ導入される排気ガスを目標値に精度良く制御可能な内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、タービンの下流部より分流して冷却された排気ガスをコンプレッサーの上流部へ還流する内燃機関において、内燃機関が過給状態にあって排気ガスが還流されている状態において、減速時或いは加速時にコンプレッサーをバイパスするエアバイパス弁を閉じた状態にするようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、過渡運転時の排気ガスの一時的な増加、或いは減少を抑制することができ、空燃比変動にともなう排気悪化やトルク変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明が適用される内燃機関の制御システムの全体的な構成を示す構成図である。
【図2】内燃機関のスロットル弁およびウェストゲート弁の定常目標開度マップを説明する特性図である。
【図3】排気ガス還流制御弁開度と排気ガス還流率との関係、および充填効率とスロットル弁開度との関係を説明する特性図である。
【図4】図2に示した特性図において、運転動作点Bから運転動作点Aへ加速した場合のスロットル弁、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、および排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図5】図2に示した特性図において、運転動作点Aから運転動作点Bへ減速した場合のスロットル弁、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、および排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図6】図2に示した特性図において、運転動作点Aから運転動作点Cへ急停止した場合のスロットル弁、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、および排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図7】吸気弁および排気弁に位相可変機構を備えた吸気弁と排気弁のバルブリフトパターンを説明する特性図である。
【図8】吸気弁にリフト可変機構を備えた吸気弁のバルブリフトパターンを説明する特性図である。
【図9】充填効率と吸気弁作動角との関係、及び排気ガス導入時の吸気弁作動角補正量を説明する特性図である。
【図10】内燃機関のリフト・位相可変機構、及びウェストゲート弁の定常目標開度マップを説明する特性図である。
【図11】図10の特性図において、リフト・位相可変機構、排気ガス還流制御弁、ウェストゲート弁、点火時期、及び燃料噴射の各制御指令値を演算する制御ブロックを説明する構成図である。
【図12】図10の特性図において、スロットル弁開度、排気ガス還流制御弁開度、エアフローセンサ検出流量、排気ガス還流制御弁の前後圧力状態、大気状態、リフト・位相可変機構位置に基づいて充填効率、排気ガス還流率、吸気圧力を演算する制御ブロックを説明する構成図である。
【図13】図10の特性図において、過給域で且つ冷却した排気ガスを導入している運転動作点Aから運転動作点B及び運転動作点Cに減速した場合の吸気弁作動角、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の各動作を説明するフローチャート図である。
【図14】図10の特性図において、運転動作点Aから運転動作点Bへ減速した場合の吸気弁作動角、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、及び排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図15】図10の特性図において、運転動作点Aから運転動作点Cへ急停止した場合の吸気弁作動角、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、および排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図16】図10の特性図において、過給域で且つ冷却した排気ガスを導入している運転動作点Bから運転動作点Aへ加速した場合の吸気弁作動角、ウェストゲート弁の各動作を説明するフローチャート図である。
【図17】図10の特性図において、運転動作点Bから運転動作点Aへ加速した場合の吸気弁作動角、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、及び排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図18】内燃機関のスロットル弁およびウェストゲート弁の定常目標開度マップを説明する特性図である。
【図19】充填効率とウェストゲート弁開度との関係およびEGR導入時のウェストゲート弁開度補正量を説明する特性図である。
【図20】図18の特性図において、スロットル弁、排気ガス還流制御弁、ウェストゲート弁、点火時期、および燃料噴射の各制御指令値を演算する制御ブロックを説明する構成図である。
【図21】図18の特性図において、過給域で且つ冷却した排気ガスを導入している運転動作点Aから運転動作点B、運転動作点C及び運転動作点Dに減速した場合の、スロットル弁、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁、吸排気弁可変機構の各動作を説明するフローチャート図である。
【図22】図18の特性図において、運転動作点Aから運転動作点Bへ減速した場合のスロットル弁、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、および排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図23】図18の特性図において、運転動作点Aから運転動作点Dへ急停止した場合のスロットル弁、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、および排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図24】図18の特性図において、運転動作点Aから運転動作点Cへ減速した場合のスロットル弁開度、排気ガス還流制御弁開度、吸排気弁位相、吸気圧力、充填効率、および排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【図25】図18の特性図において、過給域で且つ冷却した排気ガスを導入している運転動作点Bから運転動作点Aに加速した場合のスロットル弁、ウェストゲート弁の各動作を説明するフローチャート図である。
【図26】図18の特性図において、運転動作点Bから運転動作点Aへ加速した場合のスロットル弁、排気ガス還流制御弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、および排気ガス還流率の時間的推移を説明する特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施例になる内燃機関の制御装置を図面に基づき詳細に説明するが、複数の実施例があるので共通する内燃機関のシステム構成をまず説明する。
【実施例1】
【0011】
図1において、参照番号1は制御対象とする内燃機関であり、内燃機関1には吸気流路1A及び排気流路1Bが連通している。
【0012】
吸気流路1Aには吸気温度センサを備えたエアフローセンサ2が組付けられている。吸気流路1Aと排気流路1Bにはターボ式の過給機3が備え付けられており、過給機3のコンプレッサーが吸気流路1Aに、タービンが排気流路1Bにそれぞれ接続されている。
【0013】
過給機3は、排気ガスの有するエネルギをタービン翼の回転運動に変換するためのタービンと、タービン翼に連結されたコンプレッサー翼の回転によって吸入空気を圧縮するためのコンプレッサーとで構成されている。過給機3のコンプレッサー側の下流には、断熱圧縮されて上昇した吸気温度を冷却するためのインタークーラ5が備えられている。
【0014】
インタークーラ5の下流には、冷却後の吸気温度を計測するための吸気温度センサ6が組付けられている。吸気温度センサ6の下流には、吸気流路1Aの流路断面積を絞りシリンダに流入する吸入空気量を制御するためのスロットルバルブ7が備えられている。
【0015】
スロットルバルブ7はアクセル踏み込み量とは独立にスロットル開度を制御することができる電子制御式スロットルバルブである。スロットルバルブ7の下流には吸気マニホールド8が連通している。尚、インタークーラをスロットルバルブ7の下流の吸気マニホールド8に一体化させて備える構成としてもよい。それによってコンプレッサー下流からシリンダまでの容積を小さくすることができ、加減速の応答性を向上させることができる。
【0016】
吸気マニホールド8には過給圧センサ9が組付けられている。吸気マニホールド8の下流には、吸気に偏流を生じさせることによって、シリンダ内流れの乱れを強化する流動強化弁10と、吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射弁11が配置されている。燃料噴射弁11はシリンダに直接燃料を噴射する方式としてもよい。
【0017】
内燃機関1は、吸気弁12及び排気弁バルブ14の開閉の位相を連続的に可変とする位相可変機構を吸気弁12および排気弁14にそれぞれ備えている。また、吸気弁12にはそのリフトを連続的に可変とするリフト可変機構も備えられている。吸気弁12及び排気弁バルブ14の可変機構には、バルブの開閉位相を検知するためのセンサ13及び15が、吸気弁12および排気弁14にそれぞれ組付けられている。
【0018】
シリンダヘッド部にはシリンダ内に電極部を露出させ、スパークによって可燃混合気を引火する点火プラグ16が組付けられている。さらにシリンダにはノックの発生を検知するノックセンサ17が組付けられている。
【0019】
クランク軸にはクランク角度センサ18が組付けられている。クランク角度センサ18から出力される信号にもとづき、内燃機関1の回転速度を検出することができる。排気流路1Bには空燃比センサ20が組付けられており、空燃比センサ20の検出結果に基づき燃料噴射弁11より供給される燃料噴射量が目標空燃比となるように、フィードバック制御が行われる。
【0020】
空燃比センサ20の下流には、排気浄化触媒21が設けられており、一酸化炭素、窒素酸化物および未燃炭化水素などの有害排出ガス成分が触媒反応によって浄化される。
【0021】
過給機3には、エアバイパスバルブ4およびウェストゲートバルブ19が備えられている。エアバイパスバルブ4はコンプレッサーの下流部からスロットルバルブ7の上流部の圧力が過剰に上昇するのを防ぐために備えられている。過給状態においてスロットルバルブ7を急激に閉止した場合に、エアバイパスバルブ4を開くことでコンプレッサー下流部の吸気(空気と排気ガスが混合したガス)をコンプレッサー上流部へ逆流させて過給圧を下げることができる。
【0022】
一方、ウェストゲートバルブ19は内燃機関1が過剰な過給レベルとなるのを防ぐために設けられている。過給圧センサ9により検知された過給圧が所定の値に達した場合に、ウェストゲートバルブ19を開くことで、タービンを迂回するように排気ガスがバイパスされて過給圧の上昇を抑制あるいは保持することができる。
【0023】
排気浄化触媒21の下流より排気ガスを分流し、コンプレッサーの上流部へと排気ガスを還流させる排気ガス還流通路(以下、EGR通路という。)22が連通している。EGR通路22には排気ガスを冷却するための排気ガスクーラ23が備えられている。
【0024】
排気ガスクーラ23の下流には排気ガス流量を制御するための排気ガス還流制御弁(以下、EGR弁という。)24が備えられている。EGR弁24の上流部の排気ガスの温度を検出するための温度センサ25およびEGR弁24の前後の差圧を検出するための差圧センサ26が組み付けられている。
【0025】
これらの各制御要素は制御ユニット(以下、ECUという。)27によって制御されるものである。ECU27には上述した各種センサと各種アクチュエータが接続されており、具体的にはスロットルバルブ7、燃料噴射弁11、位相/リフト可変機構13及び15、EGR弁24などのアクチュエータはECU27により制御されている。
【0026】
更に、上述した各種センサより入力された信号にもとづき、内燃機関1の運転状態を検知して運転状態に応じてECU27により決定されたタイミングで点火プラグ16が点火を行うことができる。
【0027】
図2は過給機を備える内燃機関において、スロットル弁7およびウェストゲート弁19の定常目標開度マップを説明する図である。吸入空気量の増加にしたがって、スロットル弁7の目標開度を増加させる様に設定されている。この例では、過給域よりやや低い負荷水準以上(図2(a)における破線内の領域)で、排気ガスクーラ23によって冷却した排気ガス(以下、Cooled−EGRという。)を導入する。
【0028】
ここで、太い破線の枠で囲まれた領域が排気ガスの還流される、いわゆるEGR領域である。(以下の図面においても同様にEGR領域を示す。)
従来、この領域では燃料のリッチ化によるノック低減や排気温度上昇の抑制を図ってきたが、同領域にてCooled−EGRを導入しノック低減や排気温度抑制を図りつつ、理論空燃比による燃焼を行うことで、低燃費運転を実現することができるようになるものである。
【0029】
図2(b)には、回転速度に対するウェストゲート弁19の開度の関係が示されており、インターセプト点以上の回転速度域でウェストゲート弁19による過給圧制御を行う。同一回転速度では目標過給圧が大きい程、ウェストゲート弁開度を大きくするように動作する。
【0030】
図3は、EGR弁24の開度と排気ガス還流率(以下、EGR率という。)との関係、充填効率とスロットル弁7の開度との関係および排気ガス導入時のスロットル弁7の開度補正量を説明する図である。図3(a)に示す様に、EGR弁24の同一前後差圧においては、EGR弁24の開度を大きくするほどEGR率が大きくなる傾向を示している。
【0031】
また、図3(b)に示す様に、充填効率が増加するほどスロットル弁7の開度を大きく設定する必要がある。この例ではスロットル弁7の上流に排気ガスが合流する構成となっており、排気ガスの導入に応じてスロットル弁7の開度を増加側に補正する必要がある。
【0032】
図4は従来の過給機を備えた内燃機関において、図2に示す運転動作点Bから運転動作点Aへ加速した場合のスロットル弁7、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート弁19の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。
【0033】
図4の(c)、(d)にあるように、エアバイパス弁4およびウェストゲート弁19を閉じた状態で、図4の(a)のようにスロットル弁7によって運転動作点Bに負荷調整を行うと、過給機3による吸入空気への圧縮仕事をスロットル弁7によって絞る結果、スロットル弁7の前後差圧が大きくなる。その状態から、目標EGR率を固定しつつスロットル弁7を急激に開くと、スロットル弁7の下流へ新気が一気に流入し、図4の(e)のようにスロットル弁7の前後差圧が減少し、図4の(f)のように充填効率も変動するする。
【0034】
このとき、図4の(g)のように一時的にEGR合流部のEGR率が著しく減少するスパイク現象を生じる。このようなEGR率のスパイクがシリンダに到達すると、空燃比制御精度の悪化やトルク制御精度の悪化を生じる問題があった。
【0035】
同様に、図5は従来の過給機付き内燃機関の制御システムにおいて、運転動作点Aから運転動作点Bへ減速した場合のスロットル弁、EGR弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。図5においては図4に示すような変化と逆の変化を生じるようになる。
【0036】
スロットル弁7を急閉止するとコンプレッサー下流部(スロットル弁上流部)の吸入空気が行き場を失うことで、過給圧が急激に上昇を始める。コンプレッサーが低流量かつ高過給圧の動作領域に突入すると、サージングと呼ばれる不安定現象を生じることが知られている。
【0037】
これを防止するために、従来の過給機付き内燃機関では、スロットル弁7の前後差圧を駆動源としてエアバイパス4弁を開くことで、コンプレッサー上流部へ圧縮ガスを逆流させている。
【0038】
しかしながら、上記エアバイパス弁4の開動作にともない、空気と排気ガスの混合ガスがEGR通路22と吸気流路1Aの接続部であるEGR合流部より上流部へ逆流し、その後にEGR合流部を通過してシリンダ側の順流方向へと流れる際に、新たなEGRを含んでシリンダ側へ流入する。
【0039】
したがって、図5の(g)にあるように一時的にEGR合流部のEGR率が著しく増加するスパイク現象を生じる。このようなEGR率のスパイクがシリンダに到達すると空燃比制御精度の悪化やトルク制御精度の悪化を生じる問題があった。
【0040】
図6は従来の過給機付き内燃機関の制御システムにおいて、運転動作点Aから運転動作点Cへ急停止した場合の、スロットル弁、EGR弁、エアバイパス弁、ウェストゲート弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。
【0041】
図5と同様に、スロットル弁7を急閉止するとコンプレッサー下流部(スロットル弁上流部)の吸入空気が行き場を失うことで、過給圧が急激に上昇を始める。スロットル弁7の前後差圧が大きくなるとエアバイパス弁4が開き始め、コンプレッサー下流部より上流部へとEGRを含んだガスが逆流する。
【0042】
EGR弁24をスロットル弁7に同期させて急閉止した場合でも、EGR合流部の下流部からシリンダまでの空間に滞留したEGRがシリンダに到達するまでには一定の遅れが見られ、その間にスロットル弁7の下流部の圧力が低下することによって、シリンダ内は内部EGRの割合が増加する。滞留EGRと内部EGRとの重畳でシリンダ内には多量のEGRが導入される結果となり失火を生じる問題があった。
【0043】
以上が従来の過給機を備えた内燃機関の過渡運転時に生じていた排気ガスの一時的な増加、或いは減少を生じるメカニズムである。
【0044】
次に、本発明の実施例を説明する前に本発明の実施例に使用されるリフト/位相可変機構について説明しておく。
【0045】
図7は、吸気弁12及び排気弁14に位相可変機構を設けたときのバルブリフトパターンを説明する図である。
【0046】
吸気弁12の位相を進角側に変化させ、逆に排気バルブの位相を遅角側に変化させると吸気弁12と排気弁14のオーバーラップ期間が増加する。このような位相可変機構を備えた内燃機関では、部分負荷条件においてオーバーラップ期間が生じるように吸気弁12と排気弁14が制御され、排気管中の排気ガスを一旦、吸気管へ吹き返すことによって内部EGRを生じさせることができる。吸気弁12および排気弁14の位相をともに上死点よりも遅角側に設定し、排気弁閉じ時期のシリンダ容積を増加させることによって、シリンダ内の残留ガスを増大させことも可能である。この方法によれば、吸気弁と排気弁のオーバーラップ期間を増加させずに、内部EGRを生じさせることができる。
【0047】
内部EGRの増加にしたがって、部分負荷条件でのポンプ損失の低減ができ、燃焼ガス温度を低減できるために排気ガス中の窒素酸化物の低減を行うことができる。
【0048】
図8は吸気弁12にリフト可変機構を備えた吸気弁12のバルブリフトパターンを説明する図である。スロットル弁12によって充填効率を制御する内燃機関では、吸気弁12の上流圧をスロットル弁7によって絞ることで負圧を生じさせるため、ポンプ損失による燃費悪化が問題となる。
【0049】
吸気弁12の上流圧をスロットル弁7によって絞ることなく、図8にあるように吸気弁12のリフトによって吸気量を制御することができれば、上記ポンプ損失にともなう燃費悪化を抑制することができる。
【0050】
したがって、図8に示すようなリフト可変機構によって吸気弁12のバルブリフトを連続的に可変とするリフト可変機構と、位相を連続的に可変とする位相可変機構とを組み合わせて用いることによって、吸気弁開時期(IVO)を固定しつつ、吸気弁閉時期(IVC)を変化させることができる。このような可変機構を備えることで、スロットル弁7によらないで充填効率を制御することができる。
【0051】
このリフト可変機構では吸気弁12の作動角が増加するにしたがって最大リフトが増加する関係を有しており、要求トルクの小さいときにはリフト量を小さくすると同時に吸気弁閉時期(IVC)を進角させて吸気量を少なくすることができる。このとき、吸気弁閉時期(IVC)を進角させることによって、ピストン圧縮量をピストン膨張量と比較して相対的に小さくすることができるので、ポンプ損失の低減に加えてミラーサイクル効果による燃費向上効果も期待できる。
【0052】
図9は、充填効率と吸気弁12の作動角との関係、及び排気ガス導入時の吸気弁12の作動角補正量を説明する図である。同図に示す様に充填効率が増加するほど吸気弁作動角を大きく設定する必要がある。この例では、同一充填効率を実現するためには排気ガス導入に応じて吸気弁12の作動角を増加側に補正する必要がある。
【0053】
図10は過給機を備えた内燃機関において、図2に示すスロットル弁7の代わりに用いたリフト/位相可変機構、及びウェストゲート弁19の定常目標開度マップを説明する図である。
【0054】
図2と同様に、リフト/位相可変機構は充填効率が増加するにしたがって吸気弁12の作動角を増加させるように動作するが、この例では過給領域よりやや低い負荷水準以上(図10(a)における破線内の領域)で、排気ガスクーラ23によって冷却した排気ガスを導入する。したがって、破線内がEGR領域となるものである。
【0055】
従来ではこの領域では、燃料のリッチ化によるノック低減や排気温度抑制を図ってきたが、同領域にてCooled−EGRを導入しノック低減や排気温度抑制を図りつつ、理論空燃比による燃焼を行うことで、低燃費運転を実現することができる。
【0056】
図10(b)には、回転速度に対するウェストゲート弁19の開度の関係が示されており、インターセプト点以上の回転速度域でウェストゲート弁19による過給圧制御を行う。同一回転速度では目標過給圧が大きい程、ウェストゲート弁19の開度を大きくする。
【0057】
図11はECU27に搭載された制御装置の制御ブロックを示しており、リフト/位相可変機構、EGR弁24、ウェストゲート弁19、点火プラグ16、および燃料噴射弁11の各制御指令値を演算するブロックを示している。
【0058】
図11において、ステージ1では制御量の演算を主に行なうもので、ブロック1101では回転速度とアクセル開度(=踏み込み量)に基づき目標トルクを演算し、ブロック1102では回転速度と目標トルクに基づき目標充填効率を演算し、ブロック1103では回転速度と目標充填効率に基づき目標EGR率を演算し、ブロック1104では回転速度と目標充填効率と目標EGR率に基づき目標吸気管圧力を演算し、ブロック1105では回転速度と充填効率に基づき目標空燃比を演算する。
【0059】
次のステージ2では制御量に基づき具体的な物理量の演算を行うもので、ブロック1106では回転速度、目標充填効率、目標EGR率、及び目標吸気圧力と現在の吸気圧力との差に基づき目標吸気弁位相および作動角を演算し、ブロック1107では回転速度、目標充填効率、及び目標EGR率に基づき目標EGR弁開度を演算し、ブロック1108では回転速度、及び目標吸気圧力と現在の吸気圧力との差に基づき目標ウェストゲート弁開度をし、ブロック1109では回転速度と現在の充填効率と現在のEGR率にもとづき点火時期を演算し、ブロック1110では回転速度、現在の充填効率と目標空燃比にもとづき燃料噴射期間および噴射時期を演算する。
【0060】
図12はこれもECU27に搭載された制御装置の制御ブロックを示しており、スロットル弁開度、EGR弁開度、エアフローセンサ検出流量、EGR弁前後圧力状態、大気状態、吸気弁や排気弁の位置等の検出信号に基づいて、充填効率、EGR率、および吸気圧力等の制御に使用するパラメータを演算する制御ブロックを示している。
【0061】
図12において、ブロック1201では回転速度、可変バルブ位置、スロットル弁下流圧力、及びスロットル弁下流温度に基づきシリンダ流量を演算する。
【0062】
ブロック1202ではスロットル弁開度、スロットル弁上流圧力、スロットル弁下流圧力、及びスロットル弁上流温度に基づきスロットル弁流量を演算する。
【0063】
ブロック1203ではエアフローセンサ検出流量、スロットル弁流量、大気温度、大気圧力、コンプレッサー下流温度に基づきコンプレッサー下流圧力を演算する。
【0064】
ブロック1204ではエアフローセンサ検出流量、スロットル弁流量、及びコンプレッサー下流圧力に基づきコンプレッサー下流温度を演算する。
【0065】
ブロック1205ではスロットル弁流量、シリンダ流慮、コンプレッサー下流温度、及びスロットル弁下流温度に基づきスロットル弁下流圧力を演算する。
【0066】
ブロック1206ではスロットル弁流量、シリンダ流慮、及びコンプレッサー下流温度に基づきスロットル弁下流温度を演算する。ブロック1207ではEGR弁開度、EGR弁上流圧力、EGR上流温度、及びEGR弁下流圧力に基づきEGR流量を演算する。
【0067】
ブロック1208では回転速度及びシリンダ流量に基づき充填効率を演算し、ブロック1209ではEGR流量、スロットル弁流量、及びエアフローセンサ検出流量に基づきコンプレッサー下流EGR率を演算する。
【0068】
ブロック1210ではコンプレッサー下流EGR率、スロットル弁流量、及びシリンダ流量に基づきスロットル弁下流EGR率を演算する。
【0069】
そして、ブロック1205で演算された吸気圧力と、ブロック1208で演算された充填効率と、ブロック1,210で演算されたEGR率は図11に示した制御に反映させることができる。
【0070】
このようなECU27を含めた内燃機関の制御装置において、次に過渡運転時に一時的に排気ガス流量が増加、或いは減少するという課題を解決する本発明の実施例について説明する。
【0071】
図13は図10に示した例において、過給域で且つCooled−EGRを導入する運転動作点Aから運転動作点Bに向けて減速した場合の吸気弁作動角、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート弁19の動作を説明するフローチャート図である。
【0072】
図13に示すフローチャートは図11及び図12に示す制御ブロックによって実行されるものであり、所定の時間割り込みによって割り込み処理の実行命令が入ると図13に示すフローチャートが起動されるものである。
【0073】
この割り込みが入ると、ステップ1301で現在の運転状態がアクセルペダルの位置によって判断される。ステップ1301で例えばアクセルペダルの開度が小さく、内燃機関の回転数が高い場合は減速状態と判断され、減速状態でないと判断されるとこの割り込み処理を終了する。
【0074】
ステップ1301で減速状態と判断されると、ステップ1302に進んで現在の内燃機関の状態において過給機3が作動し、且つ排気ガスが還流されている領域かどうかの判断がなされる。つまり、目標動作点が過給領域で且つCooled−EGRが導入される領域内であるか否かが判断されるものである。
【0075】
過給領域で且つCooled−EGRが導入される領域内である場合には、ステップ1303に進んで吸気弁作動角が減少されて吸気量が絞られ、これによって減速動作が実行される。
【0076】
更に、これに続いてステップ1304に進んでウェストゲート弁19が開かれて、タービンを流れる排気ガスをバイパスさせてタービンの回転を減少させることでコンプレッサーの回転を減少させる。
【0077】
次いで、ステップ1305に進んでコンプレッサーをバイパスしているエアバイパス弁4を閉じてコンプレッサー下流の排気ガスを含んだ混合ガスの逆流を抑制する。
【0078】
これによって、減速時に見られる排気ガスが一時的に増加するスパイク現象を防止することができる。
【0079】
一方、ステップ1302で現在の内燃機関の状態において過給機3が作動し、且つ排気ガスが還流されない領域であると判断されると、ステップ1306に進んで吸気弁作動角が減少されて吸気量が絞られ、これによって減速動作が実行される。
【0080】
更に、この後ステップ1307に進んで、この運転領域ではそもそも排気ガスの還流を行なわない領域なのでEGR弁24を閉じて排気ガスの還流を停止する。
【0081】
次いでステップ1308に進んでウェストゲート弁19が開かれて、タービンを流れる排気ガスをバイパスさせてタービンの回転を減少させることでコンプレッサーの回転を減少させる。
【0082】
次いで、ステップ1309に進んでコンプレッサーをバイパスしているエアバイパス弁4を閉じてコンプレッサー下流の排気ガスを含んだ混合ガスの逆流を抑制する。
【0083】
図14は図13に示したフローチャートのステップ1303乃至ステップ1305の実行によって得られる効果を説明するための特性図であって、運転動作点Aから運転動作点Bへ減速した場合の吸気弁12の作動角、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート弁19の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明するものである。
【0084】
図14の(a)にあるようにステップ1303で吸気弁作動角を減少させて減速制御を行うと共に、これと実質的に同期して図14の(d)のようにステップ1304でウェストゲート弁19を開くと共に、図14の(c)のようにステップ1305でエアバイパス弁4を閉じている状態に維持しておく。ここで図14の(b)にあるようにEGR弁24は開かれて所定の制御状態に保持されている。
【0085】
したがって、図14の(e)にあるようにスロットル弁7の前後の吸気圧力もさほど大きく乖離せず、図14の(f)にあるように充填効率もなだらかに減少していき、結果として図14の(g)に示すようにEGR率も大きく変動しないように落ち着かせることができるようになる。
【0086】
このように、減速時にエアバイパス弁4を閉じた状態とすることでEGRのコンプレッサー上流部への逆流を防止でき、従来例として図5で説明した減速時における排気ガスの一時的な増加によるスパイク現象を適切に防止することができる。
【0087】
また、ウェストゲート弁19を開くことによって、タービン回転速度を抑えて吸気量の低流量条件下において過給圧の過剰な上昇時に生じるサージング減少を防止することができる。
【0088】
更に、図14の(c)の2点鎖線にあるように、少なくともウェストゲート弁19の開弁動作開始後の所定時間経過後に排気ガスの逆流によってEGR合流部の上流側へ達しない程度にエアバイパス弁4をわずかに開くことによって、サージング現象をより確実に防止することが可能である。
【0089】
更に、図14の(a)(e)(f)の破線にあるように、吸気圧力が目標吸気圧力に達していないと判定された場合には、吸気弁作動角の目標制御量を一時的に減少側に過渡補正することによって、減速応答性を向上させることができる、という効果もあわせ期待できるものである。
【0090】
図15は図13に示したフローチャートのステップ1306乃至ステップ1309の実行によって得られる効果を説明するための特性図であって、図10の例において、運転動作点Aから運転動作点Cへ急停止した場合の吸気弁12の作動角、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート19弁の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。
【0091】
急減速してからステップ1302に進んで現在の内燃機関の状態が過給領域で且つCooled−EGRが導入される領域内では無いと判断されると、ステップ1303に進んで吸気弁12の作動角が減少されて図15(a)のよう吸気量が絞られて減速動作が実行される。
【0092】
その後、運転動作点CはEGR領域ではないため図15(b)にあるようにEGR弁24は閉じられるようになり、更に図15(c)、(d)にあるようにエアバイパス弁4を閉じた状態に移行或いは維持し、ウェストゲート弁を開くようにする。
【0093】
この結果、スロットル弁7の前後吸気圧力は図15(e)はほぼ等しくなり、更に充填効率も図15(f)にあるようになだらかに落ち着き、EGR率は図15(g)にあるように一時的に増加することがない。
【0094】
このように、減速時にエアバイパス弁4を閉じた状態とすることで排気ガスのコンプレッサー上流部への逆流を防止できる。これによって、図5で説明したような減速時における排気ガスの一時的な増加によるスパイク現象を適切に防止することができる。
【0095】
更に、ウェストゲート弁19を開くことによって、タービン回転速度を抑え、低流量条件において過給圧の過剰な上昇時に生じるサージング減少を防止することができる。また、二点鎖線で示したように、少なくともウェストゲート弁の開弁動作開始以降に、排気ガスの逆流がEGR合流部の上流側へ達しない程度にエアバイパス弁をわずかに開くことによって、上記サージング現象をより確実に防止することが可能である。
【0096】
図16は図10に示した例において、過給領域で且つCooled−EGRを導入する運転動作点Bから運転動作点Aまで加速した場合の吸気弁作動角、ウェストゲート弁の各動作を説明するフローチャート図である。
【0097】
図16に示すフローチャートは図11及び図12に示す制御ブロックによって実行されるものであり、所定の時間割り込みによって割り込み処理の実行命令が入ると図15に示すフローチャートが起動されるものである。
【0098】
この割り込みが入ると、ステップ1601によってドライバのアクセルペダルの操作、例えば単位時間当りのアクセル操作量の変化によって加速条件と判断されると、ステップ1602に進んで現在の内燃機関の状態において過給機3が作動し、且つ排気ガスが還流されている領域かどうかの判断がなされる。つまり、目標動作点が過給領域で且つCooled−EGRが導入される領域内であるか否かが判断されるものである。
【0099】
ステップ1602で目標動作点が過給領域で且つCooled−EGRが導入される領域内である判断されると、ステップ1603に進んで吸気弁12の作動角が増加されて加速のための吸気量が増大され、その後にステップ1604に進んでウェストゲート弁19を制御する。このステップ1604ではウェストゲート弁19が開かれていた場合はウェストゲート弁19を閉じ、ウェストゲート弁19が閉じられていた場合は閉じた状態を維持するものである。
【0100】
また、この後にステップ1605に進んでエアバイパス弁4の制御を行なうが、この加速時にはコンプレーサーの過給を有効にするためエアバイパス弁4は閉じられた状態にされて過給がなされている。このステップ1605ではエアバイパス弁4が開かれていた場合はエアバイパス弁4を閉じ、エアバイパス弁4が閉じられていた場合は閉じた状態を維持するものである。これによって、加速時に見られるEGRの一時的に減少するスパイク現象を防止することができる。
【0101】
図17は図10の例において、運転動作点Bから運転動作点Aへ加速した場合の吸気弁12の作動角、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート弁19の夫々の開度、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。
【0102】
加速状態になると、図17(a)のように吸気弁12の作動角を大きくしてシリンダに吸入される空気量を増大させて内燃機関で発生するトルクを増大させるようにする。
【0103】
このとき、図16(b)のようにEGR弁24はその運転状態に応じて所定の制御開度に制御されて排気ガスを吸気流路1Aに供給している。
【0104】
また、図17(c)(d)にあるように加速時においては過給を有効に行なうようにするため、エアバイパス弁4とウェストゲート弁19を夫々閉じた状態に維持してタービンの回転を高め、且つコンプレッサーの圧力を高めるようにしている。
【0105】
このように吸気弁12の作動角を増加させて加速制御を行うことによって、図17(e)にあるようにスロットル弁7の前後に生じる大きな圧力差を防止することができる。その結果図16(f)にあるように充填効率の変化もなだらかに移行し、スロットル弁7の下流部への新気の急激な流入を防止でき、図17(g)にあるように加速時における排気ガスの一時的な減少を少なくすることが可能となり、スパイク現象を適切に防止することができる。
【0106】
尚、ここで吸気圧力が目標吸気圧力に達していないと判定された場合には図17(a)、(e)、(f)にある破線に示すように、吸気弁12の作動角の目標制御量を一時的に増加側に過渡補正することによって、加速応答性を向上させることができる。
【実施例2】
【0107】
先に説明した実施例1は吸気量を制御するのに吸気弁12の作用角、いわゆるリフト量を変えて行なっていたのに対し、以下に述べる他の実施例ではスロットル弁7を用いて吸気量を制御する場合を示している。
【0108】
図18は過給機を備えた付き内燃機関において、スロットル弁7およびウェストゲート弁19の定常目標開度マップを説明する図である。
【0109】
図18(a)には、スロットル弁7の定常目標開度マップが示されており、非過給領域においては吸入空気量が増加するにしたがってスロットル弁7の開度を増加させ、一方、過給領域においてはスロットル弁7の開度を全開として過給圧による負荷制御を行うことでポンプ損失低減を図るようにしている。
【0110】
また、図18(b)には、ウェストゲート弁19の定常目標開度マップが示されており、ウェストゲート弁19は吸入空気量が所定値以下において開度を全開とし、過給機のなす無駄な圧縮仕事を抑制させ、一方、吸入空気量が所定値以上においては、充填効率が減少し、かつ回転速度が増加するにしたがって、ウェストゲート弁19の開度を増加する様に設定している。
【0111】
この様な制御とすることで、過給域、非過給域ともにポンプ損失を低減しつつ、タービン回転速度の低下を抑えて加速性悪化への跳ね返りを最小限に抑えることが可能である。本実施例では、過給域よりやや低い負荷水準以上(同図(a)における破線内の領域)で、排気ガスクーラ23によって冷却した排気ガスを導入する。
【0112】
従来、この領域では、燃料のリッチ化によるノック低減や排気温度抑制を図ってきたが、同領域にてCooled−EGRを導入しノック低減や排気温度抑制を図りつつ、理論空燃比による燃焼を行うことで、低燃費運転を実現することができる。
【0113】
図19は充填効率とウェストゲート弁19の開度との関係および排気ガス導入時のウェストゲート弁19の開度補正量を説明する図であり、同図に示す様に充填効率が所定値以下において充填効率の大小に関わらずウェストゲート弁開度を全開状態とし、充填効率が所定値以上において充填効率が増加するほどウェストゲート弁開度を小さく設定する必要がある。このため、本実施例では同一充填効率を実現するためには、排気ガスの導入量に応じてウェストゲート弁19の開度を減少側に補正する必要がある。
【0114】
図20は実施例1と同様にECU27によって実行される制御の制御ブロックを示しており、具体的にはスロットル弁7、EGR弁24、ウェストゲート弁19、点火プラグ16、及び燃料噴射弁11の各制御指令値を演算する制御ブロックである。
【0115】
ブロック2001では回転速度とアクセル開度(=踏み込み量)に基づき目標トルクを演算する。
【0116】
ブロック2002では回転速度と目標トルクにもとづき目標充填効率を演算し、ブロック2003では回転速度と目標充填効率に基づき目標EGR率を演算する。
【0117】
ブロック2004では回転速度と目標充填効率と目標EGR率にもとづき目標吸気管圧力を演算し、ブロック2005では回転速度と充填効率に基づき目標空燃比を演算する。
【0118】
ブロック2006では回転速度、目標充填効率、目標EGR率、目標吸気圧力と現在の吸気圧力との差に基づき、目標スロットル弁開度を演算する。
【0119】
ブロック2007では回転速度、目標充填効率、目標EGR率にもとづき目標EGR弁開度を演算する。
【0120】
ブロック2008では回転速度と目標充填効率にもとづいて目標吸排気弁の位相を演算する。
ブロック2009では回転速度と、目標吸気圧力と現在の吸気圧力との差に基づき、目標ウェストゲート弁開度を演算する。
ブロック2010では回転速度と現在の充填効率と現在のEGR率にもとづき点火時期を演算し、ブロック2011では回転速度、現在の充填効率、目標空燃比に基づき燃料噴射期間及び噴射時期を演算する。
【0121】
図21は図18の例において、過給領域で且つCooled−EGRを導入する運転動作点Aから運転動作点Bへ減速した場合のスロットル弁7、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート弁19、吸気弁12と排気弁14の制御動作を説明するフローチャート図である。
【0122】
図21において、ステップ2101において、実施例1と同様にドライバのアクセルペダルの操作によって減速条件と判断されるとステップ2102において、目標動作点が過給領域で、且つCooled−EGRを導入する領域内であるか否かが判断される。
【0123】
このステップ2102によって過給領域で、且つCooled−EGRを導入する領域内であると判断されるとステップ2103に進んでスロットル弁7が閉じられ、次いでステップ2104でウェストゲート弁19が開かれ、更にステップ2105でエアバイパス弁4が閉じられる。
【0124】
これによって、減速時に見られるEGRの一時的に増加するスパイク現象を防止することができる。
【0125】
図22は図18の例において、運転動作点Aから運転動作点Bへ減速した場合のステップ2103からステップ2105に示す制御によるスロットル弁7、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート弁19の開度と、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。
【0126】
図22(a)のようにスロットル弁7の開度を減少させて減速制御を行うと共に、図22(c)、(d)にあるようにエアバイパス弁4を閉じた状態とし、ウェストゲート弁19を開くようにする。ここで、この領域はEGRを行なう領域であるので図22(b)にあるようにEGR弁は開いた状態にある。
【0127】
したがって、図22の(e)にあるようにスロットル弁7の前後の吸気圧力もさほど大きく乖離せず、図22の(f)にあるように充填効率もなだらかに減少していき、結果として図22の(g)に示すようにEGR率も大きく変動しないように落ち着かせることができるようになる。
【0128】
このように、減速時にエアバイパス弁4を閉じた状態とすることでEGRのコンプレッサー上流部への逆流を防止でき、従来例として図5で説明した減速時における排気ガスの一時的な増加によるスパイク現象を適切に防止することができる。
【0129】
また、ウェストゲート弁19を開くことによって、タービン回転速度を抑えて吸気量の低流量条件下において過給圧の過剰な上昇時に生じるサージング減少を防止することができる。
【0130】
更に、図22の(c)の二点鎖線にあるように、少なくともウェストゲート弁19の開弁動作開始後の所定時間経過後に排気ガスの逆流によってEGR合流部の上流側へ達しない程度にエアバイパス弁4をわずかに開くことによって、サージング現象をより確実に防止することが可能である。
【0131】
更に、図22の(a)(e)(f)の破線にあるように、吸気圧力が目標吸気圧力に達していないと判定された場合には、吸気弁作動角の目標制御量を一時的に減少側に過渡補正することによって、減速応答性を向上させることができる、という効果もあわせ期待できるものである。
【0132】
図21に戻り、ステップ2102によって過給領域で且つCooled−EGRを導入する領域内でないと判断されると、ステップ2106に進んで目標とする動作点が吸気弁12と排気弁14を用いて位相可変機構によって内部EGRを導入する領域内であるか否かが判断される。
【0133】
ステップ2106で内部得EGRを行なう領域と判断されるとステップ2107に進んでスロットル弁7が閉じられ、またステップ2102でEGR領域でないと判断されているのでステップ2108でEGR弁24が閉じられるように制御される。
【0134】
これに続いて、ステップ2109でウェストゲート弁19が開かれ、次いでステップ2110でエアバイパス弁4が閉じられ、更にステップ2111で吸気弁12と排気弁14を位相可変機構によってオーバーラップ(O/L)期間の拡大操作を所定のサイクル数が経過するまで遅延させる。これによって、吸気マニホールド内に滞留したCooled−EGRと内部EGRとの重畳による多量のEGRの導入を防止することができる。
【0135】
図23は図18の例において、運転動作点Aから運転動作点Dへ減速した場合のステップ2107からステップ2111に示す制御によるスロットル弁7、EGR弁24の開度、吸排気弁の位相、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。尚、ウェストゲート弁19及びエアバイパス弁4の開度はここでは省略しているが、図22(c)(d)と同じような動作を行なうものである。
【0136】
実施例1でも説明したように、減速によってスロットル弁7を急閉止するとコンプレッサー下流部(スロットル弁上流部)の吸入空気が行き場を失うことで、過給圧が急激に上昇を始める。スロットル弁7の前後差圧が拡大すると、エアバイパス弁4が開き始め、コンプレッサー下流部より上流部へとEGRを含んだガスが逆流する。
【0137】
このため、図23(a)にあるようにスロットル弁7の急閉止に同期させてEGR弁24を図23(b)にあるように急閉止した場合でも、EGR合流部の下流部からシリンダまでの空間に滞留したEGRがシリンダに到達するまでには一定の遅れが見られる。ここで、吸気弁12と排気弁14のオーバーラップ期間をスロットル弁7の閉止動作に同期させて拡大すると、シリンダ内は内部EGRの割合が増加する。このため滞留EGRと内部EGRとの重畳でシリンダ内には多量のEGRが導入される結果、失火を生じる現象がある。
【0138】
これを対策するため、ステップ2111を追加して図23(c)にあるように吸気弁12と排気弁14のオーバーラップを拡大するタイミングをスロットル弁7の閉止タイミングから所定のサイクルを経過するまで期間遅らせることで、図23(f)のように多量のEGRによる失火を防止することができる。
【0139】
ここで図23(c)、(f)で破線は吸気弁12と排気弁14のオーバーラップを拡大するタイミングをスロットル弁7の閉止タイミングに同期させた場合を示し、実線はステップ2111にあるような吸気弁12と排気弁14のオーバーラップを拡大するタイミングをスロットル弁7の閉止タイミングから所定のサイクルを経過するまで期間遅らせた場合を示している。
【0140】
また、図21に戻ってステップ2106で目標動作点が内部EGRを導入する領域内に無いと判断されると、ステップ2112に進んでスロットル弁7が閉じられ、次いでステップ2113でEGR弁24が閉じられ、引き続きステップ2114でウェストゲート弁19が開かれ、最後にステップ2115でエアバイパス弁4が閉じられるように動作する。
【0141】
図24は図18の例において、運転動作点Aから運転動作点Cへ減速した場合のステップ2112からステップ2115に示す制御によるスロットル弁7、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート弁19の開度と、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。
【0142】
図24(a)に示すようにスロットル弁7を閉止して急停止を行う際に、図24(b)にあるようにEGR弁24を制御状態から閉じ、更に図24(c)にあるようにエアバイパス弁4を閉じた状態で、図24(d)にあるようにウェストゲート弁19を開くようにする。
【0143】
これによって、エアバイパス弁4を閉じた状態とすることで排気ガスのコンプレッサー上流部への逆流を防止でき、図24(g)にあるように図5で説明した減速時における排気ガスの一時的な増加によるスパイク現象を適切に防止することができる。
【0144】
更に、図24(c)の二点鎖線にあるように、少なくともウェストゲート弁19の開弁動作開始後の所定時間経過後に排気ガスの逆流によってEGR合流部の上流側へ達しない程度にエアバイパス弁4をわずかに開くことによって、サージング現象をより確実に防止することが可能である。
【0145】
図25は図18に示した例において、過給領域で且つCooled−EGRを導入している運転動作点Bから運転動作点Aまで加速した場合のスロットル弁、ウェストゲート弁の制御動作を説明するフローチャート図である。
【0146】
図25において、ステップ2501でドライバのアクセルペダルの操作によって加速条件と判断されると、ステップ2501に進んで過給領域で且つCooled−EGRを導入する運転状態かどうかが判断され、このステップ2502で過給領域で且つCooled−EGRを導入する運転状態であると判断されるとステップ2503に進んでスロットル弁7が開かれる。
【0147】
これに続いてステップ2504でウェストゲート弁19が閉じられ、更にステップ2505でエアバイパス弁4が閉じられるように動作する。
【0148】
これによって、加速時に見られる排気ガスの一時的な減少によるスパイク現象を防止することができる。
【0149】
図26は図18の例において、運転動作点Bから運転動作点Aへ加速した場合の、スロットル弁7、EGR弁24、エアバイパス弁4、ウェストゲート弁19の開度、吸気圧力、充填効率、およびEGR率の時間的推移を説明する図である。
図26(a)にあるようにスロットル弁7を開くと、EGR弁24はEGR領域であるため図26(b)所定の制御開度に制御されている。このとき、加速性能を維持するため図26(c)図26(d)にあるようにエアバイパス弁4が閉じられ、またウェストゲート弁19も閉じられる。ここで図26(e)のあるようにスロットル弁7の前後の吸気圧力はほぼ同じような値となっている。このため充填効率も図26(f)にあるようになだらかに推移していくようになる。この結果、図26(g)にあるように加速時における排気ガスの一時的な減少を少なくすることが可能となり、スパイク現象を適切に防止することができる。
【0150】
尚、運転動作点Bではウェストゲート弁19を開くことによって、過給機の無駄仕事を排除することで、同動作点B上でウェストゲート弁19を閉じる従来制御と比較して、スロットル弁7の前後差圧を小さくすることができる。
【0151】
その結果、スロットル弁7の下流部への新気の急激な流入を抑制でき、図4で説明した加速時における排気ガスの一時的な減少によるスパイク現象を適切に防止することができる。また、吸気圧力が目標吸気圧力に達していないと判定された場合には、破線で示したようにウェストゲート弁19を一時的に閉止側に過渡補正することによって加速応答性を向上させることができる。
【0152】
以上に説明した実施例1及び実施例2における特徴的な作用効果について以下に列記する。
【0153】
(1)内燃機関が過給状態で、且つEGRが還流されている状態において、吸気量制御手段によって気筒へ流入するガス量を減じる減速時に、エアバイパス弁を閉じた状態で、ウェストゲート弁を開くことで、EGRのスパイクを防止することができ、空燃比変動にともなう排気悪化やトルク変動を抑制できるほか、過剰なEGRの導入による失火を防止することができる。また、ウェストゲート弁を開くことで、低流量かつ高過給圧時に見られるサージング現象を抑制することができる。
【0154】
(2)吸気量制御手段に吸気弁の位相および作動角を可変とする可変バルブを用いることで、スロットル弁前後に生じる差圧を抑制でき、加速時に見られるスロットル弁下流への新気の急激な流入にともなうEGRスパイクや、減速時に見られるエアバイパス弁からの逆流にともなうEGRスパイクを防止することができる。
【0155】
(3)内燃機関が過給状態で、且つEGRが還流されている状態において、気筒へ流入する吸気量を増加せしめるときには、スロットル弁を全開にした状態でウェストゲート弁を閉じることで、加速時に見られるスロットル弁下流への新気の急激な流入にともなうEGRスパイクを防止することができる。
【0156】
(4)内燃機関が過給状態で、且つEGRが還流されている状態において、気筒へ流入する吸気量を減じるときには、エアバイパス弁を閉じた状態で、ウェストゲート弁を開くことで、減速時に見られるエアバイパス弁からの逆流にともなうEGRスパイクを防止することができる。
【0157】
(5)吸気量制御手段によって気筒へ流入するガス量を減じるときには、少なくともウェストゲート弁を開くタイミング以降に、EGRの逆流がEGR合流部の上流側へ達しない程度に、エアバイパス弁をわずかに開くことで、EGRスパイクを抑制しつつ、低流量かつ高過給圧時に見られるサージング現象をより確実に防止することが可能である。
【0158】
(6)内燃機関が過給状態で、かつEGRが還流されている状態において、同一充填効率ではEGR率が増加する程ウェストゲート弁の開度を減少させる様に設定することで、EGRが還流されている状態においても、充填効率を精度良く制御しつつ過給域のポンプ損失を低減し、理論空燃比燃焼による低燃費運転を実現できる。
【0159】
(7)、内燃機関が過給状態で、且つEGRが還流されている状態から、非過給状態で、吸排気弁のオーバーラップ期間を拡大させて内部EGRを増量している状態へと、吸気量制御手段によって気筒へ流入するガス量を減じるときには、吸排気弁のオーバーラップ期間を拡大させるタイミングを、所定のサイクル数遅延することで、EGR合流部より下流に滞留しているEGRとオーバーラップ拡大による内部EGRとの重畳で、シリンダ内に大量のEGRが存在することによる失火を防止することができる。
【符号の説明】
【0160】
1…内燃機関、2…エアフローセンサおよび吸気温センサ、3…ターボ過給機、4…エアバイパス弁、5…インタークーラ、6…温度センサ、7…スロットルバルブ、8…吸気マニホールド、9…圧力センサ、10…流動強化弁、11…燃料噴射弁、12…吸気可変バルブ機構、13…吸気可変バルブ位置センサ、14…排気可変バルブ機構、15…排気可変バルブ位置センサ、16…点火プラグ、17…ノックセンサ、18…クランク角度センサ、19…ウェストゲート弁、20…空燃比センサ、21…排気浄化触媒、22…EGR管、23…EGRクーラ、24…EGR弁、25…温度センサ、26…差圧センサ、27…ECU(Electronic…Control…Unit)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気流路に設けた排気側タービンと、前記排気側タービンの上流側と下流側を結ぶバイパス通路に設けられたウェストゲート弁と、吸気流路に設けられ前記排気側タービンによって駆動される吸気側コンプレッサーと、前記吸気側コンプレッサーの上流側と下流側を結ぶバイパス通路に設けられたエアバイパス弁と、前記排気流路から前記吸気側コンプレッサーより上流の前記吸気流路に排気ガスを還流する排気ガス還流通路と、前記排気ガス還流通路に設けられた排気ガス還流制御弁と、前記吸気流路を流れる吸気量を制御する吸気量制御手段を備えた内燃機関に使用され、少なくとも前記ウェストゲート弁、前記排気ガス還流制御弁及び前記吸気量制御手段の動作を制御する制御手段を備えた内燃機関の制御装置であって、
前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態が並存する運転状態において、前記吸気量制御手段によって吸気量が減少或いは増加される過渡運転時の場合には、前記制御手段は前記エアバイパス弁が閉じた状態で前記ウェストゲート弁に制御信号を送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気量制御手段によって吸気量が減少される減速運転時の場合には、前記制御手段は前記エアバイパス弁が閉じた状態で前記ウェストゲート弁を開くように前記ウェストゲート弁に制御信号を送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記エアバイパス弁の動作を制御する制御手段を備え、前記吸気量制御手段によって吸気量が減少される減速運転時の場合には、前記制御手段は前記エアバイパス弁を閉じて前記ウェストゲート弁を開くように前記エアバイパス弁と前記ウェストゲート弁に制御信号を送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態は並存する運転状態において、吸気量を減少させる場合では前記制御手段は前記エアバイパス弁が閉じた状態で前記ウェストゲート弁を開くように前記ウェストゲート弁に制御信号を送ると共に、前記排気ガス還流制御弁を閉じる制御信号か、或いは前記排気ガス還流制御弁を開く制御信号のどちらかを前記排気ガス還流制御弁に送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関の制御装置において、移行すべき運転状態が前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態が並存しない運転状態の場合は、前記制御手段は前記排気ガス還流制御弁を閉じる制御信号を前記排気ガス還流制御弁に送り、移行すべき運転状態が前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態が並存する運転状態の場合は、前記制御手段は前記排気ガス還流制御弁を開く制御信号を前記排気ガス還流制御弁に送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の制御装置において、移行すべき運転状態が前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態が並存しなく、しかも内部EGRが必要な場合は、前記制御手段は前記排気ガス還流制御弁を閉じる制御信号を前記排気ガス還流制御弁に送ると共に、前記吸気弁と排気弁のバルブオーバラップを拡大すると共に、この拡大時期を所定時間にわたり遅らせる制御信号を前記吸気弁または排気弁の位相可変機構に送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載の内燃機関の制御装置において、移行すべき運転状態が前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態が並存しなく、しかも内部EGRが必要な場合は、前記制御手段は前記排気ガス還流制御弁を閉じる制御信号を前記排気ガス還流制御弁に送ると共に、前記排気弁の閉じ時期のシリンダ容積を拡大すると共に、この拡大時期を所定時間にわたり遅らせる制御信号を前記排気弁の位相可変機構に送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項8】
請求項6に記載の内燃機関の制御装置において、移行すべき運転状態が前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態が並存しなく、しかも内部EGRが不要な場合は、前記制御手段は前記排気ガス還流制御弁を閉じる制御信号を前記排気ガス還流制御弁に送ると共に、前記エアバイパス弁を閉じて前記ウェストゲート弁を開くように前記エアバイパス弁と前記ウェストゲート弁に制御信号を送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気量制御手段は吸気弁の位相及び作動角を可変とするリフト・位相可変機構、或いは前記吸気流路に設けたスロットル弁であることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項10】
請求項3に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態は並存する運転状態において、吸気量を減少させる場合では前記制御手段は前記エアバイパス弁を閉じて前記ウェストゲート弁を開くように前記エアバイパス弁と前記ウェストゲート弁に制御信号を送ると共に、前記ウェストゲート弁を開いた後に前記エアバイパス弁を所定量だけ開く制御信号が前記ウェストゲート弁を開いた時期より後に送られることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項11】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態が並存する運転状態において、吸気量を増加させる加速運転時の場合には前記制御手段は前記エアバイパス弁が閉じた状態で前記ウェストゲート弁を閉じるように前記ウェストゲート弁に制御信号を送ると共に、前記排気ガス還流制御弁を開いた状態にする制御信号を前記排気ガス還流制御弁に送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の内燃機関の制御装置において、
吸気量を増加させる場合では前記制御手段は前記スロットル弁を全開にする制御信号を前記スロットル弁に送り、その状態でエアバイパス弁が閉じた状態で前記ウェストゲート弁を閉じるように前記ウェストゲート弁に制御信号を送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項13】
請求項11に記載の内燃機関の制御装置において、
吸気量を増加させるために前記制御手段は前記リフト・位相可変機構によって吸気量が増加する制御信号を前記リフト・位相可変機構に送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項14】
請求項11に記載の内燃機関の制御装置において、
前記制御手段は同一充填効率で前記EGR率が増加するにつれて前記ウェストゲート弁の開度を減少させる制御信号を前記ウェストゲート弁に送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項1】
排気流路に設けた排気側タービンと、前記排気側タービンの上流側と下流側を結ぶバイパス通路に設けられたウェストゲート弁と、吸気流路に設けられ前記排気側タービンによって駆動される吸気側コンプレッサーと、前記吸気側コンプレッサーの上流側と下流側を結ぶバイパス通路に設けられたエアバイパス弁と、前記排気流路から前記吸気側コンプレッサーより上流の前記吸気流路に排気ガスを還流する排気ガス還流通路と、前記排気ガス還流通路に設けられた排気ガス還流制御弁と、前記吸気流路を流れる吸気量を制御する吸気量制御手段を備えた内燃機関に使用され、少なくとも前記ウェストゲート弁、前記排気ガス還流制御弁及び前記吸気量制御手段の動作を制御する制御手段を備えた内燃機関の制御装置であって、
前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態が並存する運転状態において、前記吸気量制御手段によって吸気量が減少或いは増加される過渡運転時の場合には、前記制御手段は前記エアバイパス弁が閉じた状態で前記ウェストゲート弁に制御信号を送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気量制御手段によって吸気量が減少される減速運転時の場合には、前記制御手段は前記エアバイパス弁が閉じた状態で前記ウェストゲート弁を開くように前記ウェストゲート弁に制御信号を送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記エアバイパス弁の動作を制御する制御手段を備え、前記吸気量制御手段によって吸気量が減少される減速運転時の場合には、前記制御手段は前記エアバイパス弁を閉じて前記ウェストゲート弁を開くように前記エアバイパス弁と前記ウェストゲート弁に制御信号を送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態は並存する運転状態において、吸気量を減少させる場合では前記制御手段は前記エアバイパス弁が閉じた状態で前記ウェストゲート弁を開くように前記ウェストゲート弁に制御信号を送ると共に、前記排気ガス還流制御弁を閉じる制御信号か、或いは前記排気ガス還流制御弁を開く制御信号のどちらかを前記排気ガス還流制御弁に送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関の制御装置において、移行すべき運転状態が前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態が並存しない運転状態の場合は、前記制御手段は前記排気ガス還流制御弁を閉じる制御信号を前記排気ガス還流制御弁に送り、移行すべき運転状態が前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態が並存する運転状態の場合は、前記制御手段は前記排気ガス還流制御弁を開く制御信号を前記排気ガス還流制御弁に送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の制御装置において、移行すべき運転状態が前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態が並存しなく、しかも内部EGRが必要な場合は、前記制御手段は前記排気ガス還流制御弁を閉じる制御信号を前記排気ガス還流制御弁に送ると共に、前記吸気弁と排気弁のバルブオーバラップを拡大すると共に、この拡大時期を所定時間にわたり遅らせる制御信号を前記吸気弁または排気弁の位相可変機構に送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載の内燃機関の制御装置において、移行すべき運転状態が前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態が並存しなく、しかも内部EGRが必要な場合は、前記制御手段は前記排気ガス還流制御弁を閉じる制御信号を前記排気ガス還流制御弁に送ると共に、前記排気弁の閉じ時期のシリンダ容積を拡大すると共に、この拡大時期を所定時間にわたり遅らせる制御信号を前記排気弁の位相可変機構に送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項8】
請求項6に記載の内燃機関の制御装置において、移行すべき運転状態が前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態が並存しなく、しかも内部EGRが不要な場合は、前記制御手段は前記排気ガス還流制御弁を閉じる制御信号を前記排気ガス還流制御弁に送ると共に、前記エアバイパス弁を閉じて前記ウェストゲート弁を開くように前記エアバイパス弁と前記ウェストゲート弁に制御信号を送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気量制御手段は吸気弁の位相及び作動角を可変とするリフト・位相可変機構、或いは前記吸気流路に設けたスロットル弁であることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項10】
請求項3に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態は並存する運転状態において、吸気量を減少させる場合では前記制御手段は前記エアバイパス弁を閉じて前記ウェストゲート弁を開くように前記エアバイパス弁と前記ウェストゲート弁に制御信号を送ると共に、前記ウェストゲート弁を開いた後に前記エアバイパス弁を所定量だけ開く制御信号が前記ウェストゲート弁を開いた時期より後に送られることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項11】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気側コンプレッサーによって過給されている状態と前記排気ガス還流通路から排気ガスが還流されている状態が並存する運転状態において、吸気量を増加させる加速運転時の場合には前記制御手段は前記エアバイパス弁が閉じた状態で前記ウェストゲート弁を閉じるように前記ウェストゲート弁に制御信号を送ると共に、前記排気ガス還流制御弁を開いた状態にする制御信号を前記排気ガス還流制御弁に送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の内燃機関の制御装置において、
吸気量を増加させる場合では前記制御手段は前記スロットル弁を全開にする制御信号を前記スロットル弁に送り、その状態でエアバイパス弁が閉じた状態で前記ウェストゲート弁を閉じるように前記ウェストゲート弁に制御信号を送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項13】
請求項11に記載の内燃機関の制御装置において、
吸気量を増加させるために前記制御手段は前記リフト・位相可変機構によって吸気量が増加する制御信号を前記リフト・位相可変機構に送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項14】
請求項11に記載の内燃機関の制御装置において、
前記制御手段は同一充填効率で前記EGR率が増加するにつれて前記ウェストゲート弁の開度を減少させる制御信号を前記ウェストゲート弁に送ることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2013−113104(P2013−113104A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257036(P2011−257036)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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