説明

内燃機関の制御装置

【課題】デュアル噴射タイプのエンジンにおいてエンジン停止時に高圧燃料供給系内の燃圧を低減できる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】車両の内燃機関の吸気ポートに低圧燃料を噴射する低圧側燃料供給機構と、内燃機関の気筒に高圧燃料を噴射する高圧側燃料供給機構と、を備えた内燃機関の燃料供給装置を制御する内燃機関の制御装置であって、車両の停止直後に(ステップS3;YES)、高圧側燃料供給機構により内燃機関に高圧燃料を供給して内燃機関をアイドル運転させ(ステップS5)、高圧燃料の燃圧を低下させてから高圧側燃料供給機構による燃料供給を停止した後、低圧側燃料供給機構により内燃機関に低圧燃料を供給して内燃機関をアイドル運転させる(ステップS6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の内燃機関(以下、エンジンという)において、火花点火式でシリンダ内に燃料を直接噴射するいわゆる筒内噴射タイプのものが普及してきている。この筒内噴射タイプのエンジンでは、シリンダ内に燃料を供給する燃料供給装置が設けられている。
【0003】
燃料供給装置では、高圧燃料をデリバリーパイプ内に蓄圧および貯留して、この高圧燃料を各シリンダに設けられたインジェクタから均等な圧力で各シリンダ内に直接噴射するようにしている。燃料は、フィードポンプおよび高圧ポンプの二段圧縮により高圧に加圧される。また、高圧ポンプへの吸入量が、吸入調量弁により制御されている。この吸入調量弁により、デリバリーパイプ内の燃料圧力が、エンジンの運転状態に応じた目標燃料圧力に追従するよう制御されている。
【0004】
ところで、筒内噴射タイプのエンジンでは、高圧ポンプからインジェクタまでの高圧燃料供給系における燃圧が高いので、エンジンが停止した後、高圧燃料供給系の燃料が例えばインジェクタからシリンダ内に漏れ出てシリンダ内で蒸発する可能性がある。燃料がシリンダ内で蒸発すると、シリンダ内に過濃混合気が充満して燃料リッチになり、エンジンを再始動しようとしたときの始動性が低下することがある。
【0005】
これを解決するために、筒内噴射タイプのエンジンにおいて、エンジン停止直前にアイドル運転する時間を延長する制御を行い、高圧燃料供給系内の燃料を消費するようにしたエンジンが開発されている(例えば、特許文献1参照)。このエンジンによれば、高圧燃料供給系内の燃料が消費されることにより、エンジンの再始動時での高圧燃料供給系内の燃圧を目標燃圧より低い燃圧にまで低減させてエンジンの再始動性の低下を抑制できる。
【0006】
一方、従来、筒内噴射を可能とするとともに、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射をも可能とするいわゆるデュアル噴射タイプのエンジンが普及している。この種のデュアル噴射タイプのエンジンでは、走行条件などに応じて筒内噴射とポート噴射との比率を切り替えるようになっている。また、エンジン停止時には、ポート噴射のみによるアイドル運転をするようになっている。
【0007】
この種のデュアル噴射タイプのエンジンにおいても、上述した筒内噴射タイプのエンジンと同様に、高圧ポンプから直噴用インジェクタまでの高圧燃料供給系における燃圧が高いので、エンジンが停止した後に高圧燃料供給系から高圧の燃料が漏れる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−293354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の筒内噴射タイプのエンジンにあっては、ポート噴射を考慮したものではなかった。また、デュアル噴射タイプのエンジンでは、エンジン停止時にはポート噴射のみによるアイドル運転をする。このため、従来の筒内噴射タイプのエンジンのエンジン停止直前にアイドル運転の時間を延長する制御をデュアル噴射タイプのエンジンに適用しても、デュアル噴射タイプのエンジンではポート噴射のみによるアイドル運転の時間が延長するにすぎない。
【0010】
これにより、デュアル噴射タイプのエンジンでエンジン停止直前にアイドル運転する時間を延長しても、筒内噴射用の高圧燃料供給系内の燃圧は低下せず、デュアル噴射タイプのエンジンが停止した後に高圧燃料供給系に高圧燃料がそのまま残存してしまう。よって、次にエンジンを始動してから最初に高圧燃料供給系により燃料をシリンダに直接噴射したときに、目標燃圧より高い圧力の燃料がシリンダ内に噴射されて燃料リッチによりエンジンの振動や失火が発生してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、デュアル噴射タイプのエンジンにおいてエンジン停止時に高圧燃料供給系内の燃圧を低減できる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る内燃機関の制御装置は、上記目的達成のため、(1)車両の内燃機関の吸気ポートに低圧燃料を噴射する低圧側燃料供給機構と、前記内燃機関の気筒に高圧燃料を噴射する高圧側燃料供給機構と、を備えた内燃機関の燃料供給装置を制御する内燃機関の制御装置であって、前記車両の停止直後に、前記高圧側燃料供給機構により前記内燃機関に前記高圧燃料を供給して前記内燃機関をアイドル運転させ、前記高圧燃料の燃圧を低下させてから前記高圧側燃料供給機構による燃料供給を停止した後、前記低圧側燃料供給機構により前記内燃機関に前記低圧燃料を供給して前記内燃機関をアイドル運転させる。
【0013】
この構成により、車両が停止した直後に、高圧側燃料供給機構によりエンジンに高圧燃料を供給してエンジンをアイドル運転させる。これにより、高圧側燃料供給機構における高圧燃料の燃圧が低下する。そして、高圧側燃料供給機構を停止し、高圧側燃料供給機構における燃料の燃圧が高くならないようにする。続いて、低圧側燃料供給機構によりエンジンに低圧燃料を供給してエンジンをアイドル運転させる。その後、必要に応じてエンジンを停止させる。
【0014】
これにより、デュアル噴射タイプのエンジンが停止した後に、高圧燃料供給系に高圧燃料が残存してしまうことが防止される。このため、次にエンジンを始動してから最初に高圧燃料供給系で燃料をシリンダに直接噴射したときに、目標燃圧より高圧の燃料がシリンダ内に噴射されて燃料リッチによりエンジンに振動や失火が発生してしまうことが抑制される。
【0015】
上記(1)に記載の内燃機関の制御装置においては、(2)前記車両は、前記内燃機関と、電動機と、前記内燃機関のクランクシャフトの回転に対する前記内燃機関の吸気バルブまたは排気バルブの開閉時期を変化させることができる可変バルブタイミング機構と、を備えるとともに、前記内燃機関および前記電動機の少なくとも一方を駆動源として走行可能なハイブリッド車であり、前記車両の停止直後に、前記可変バルブタイミング機構により前記吸気バルブまたは前記排気バルブの開閉時期を初期状態に戻すまでの間、前記高圧側燃料供給機構により前記内燃機関に前記高圧燃料を供給して前記内燃機関をアイドル運転させ前記高圧燃料の燃圧を低下させることが好ましい。
【0016】
この構成により、ハイブリッド車を停止させた後、可変バルブタイミング機構により吸気バルブまたは排気バルブの開閉時期を初期状態に戻すまでの間に限り、高圧側燃料供給機構によりエンジンに高圧燃料を供給している。このため、高圧側燃料供給機構から低圧燃料供給機関に切り替えるタイミングを、可変バルブタイミング機構の吸気バルブまたは排気バルブの開閉時期を初期状態に戻す作業に依存するようにできる。これにより、高圧燃料供給系の実際の燃圧を測定する必要が無く、制御を簡易化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、デュアル噴射タイプのエンジンにおいてエンジン停止時に高圧燃料供給系内の燃圧を低減できる内燃機関の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置を搭載したエンジンを示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る吸気装置およびエンジン本体を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置の動作を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置を搭載したハイブリッド車を示す概略図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置を搭載したハイブリッド車の可変バルブタイミング機構の全体を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置を搭載したハイブリッド車の可変バルブタイミング機構の主要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施の形態は、本発明をガソリン車の内燃機関の燃料供給装置に適用したものである。本実施の形態の内燃機関の制御装置は、筒内噴射とポート噴射とを併用するデュアル噴射タイプの内燃機関、例えば直列4気筒のガソリンエンジンに搭載されている。本実施の形態の内燃機関の制御装置においては、制御装置をガソリン車に適用しているが、これに限られるものではなく、ハイブリッド車やディーゼルエンジン車に適用してもよい。
【0020】
まず、構成について説明する。
【0021】
図1および図2に示すように、内燃機関としてのエンジン1は、エンジン本体2と、吸気装置3と、排気装置4と、燃料供給装置5と、冷却装置6と、内燃機関の制御装置としてのECU(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)7とを備えている。
【0022】
エンジン本体2は、シリンダブロック10と、シリンダヘッド20とを備えている。シリンダブロック10およびシリンダヘッド20は、4つの気筒としてのシリンダ11を備えている。シリンダ11は、鉛直方向を長手方向にして設けられている。
【0023】
シリンダブロック10は、ピストン12と、コネクティングロッド13と、クランクシャフト14と、クランク角センサ15とを備えている。ピストン12は、シリンダ11内で往復動可能に設けられている。ピストン12は、コネクティングロッド13に回転可能に連結されている。コネクティングロッド13は、クランクシャフト14に回転可能に連結されている。クランク角センサ15は、クランクシャフト14の回転数を検出してECU7に入力するようになっている。
【0024】
また、エンジン本体2では、シリンダブロック10とシリンダヘッド20とピストン12とによって、燃焼室16が形成されている。エンジン本体2は、燃焼室16において燃料と空気との混合気を所望のタイミングで燃焼させることによりピストン12を往復動させ、コネクティングロッド13を介してクランクシャフト14を回転させるようになっている。
【0025】
シリンダヘッド20は、吸気ポート21と、吸気バルブ22と、図示しない吸気カムシャフトと、排気ポート23と、排気バルブ24と、図示しない排気カムシャフトと、点火プラグ25とを備えている。吸気ポート21は、吸気装置3の吸気通路と燃焼室16とを連通する。吸気バルブ22は、昇降により吸気ポート21と燃焼室16との間を開閉し、吸気装置3の吸気通路から燃焼室16への吸入空気Aの導入を制御するようになっている。吸気カムシャフトは、吸気バルブ22を昇降させる。
【0026】
排気ポート23は、燃焼室16と排気装置4の排気通路とを連通する。排気バルブ24は、昇降により燃焼室16と排気ポート23との間を開閉し、燃焼室16から排気装置4の排気通路への排出ガスGの排出を制御するようになっている。排気カムシャフトは、排気バルブ24を昇降させる。
【0027】
吸気バルブ22は、開弁時に燃焼室16を吸気通路に連通させ、排気バルブ24は、開弁時に燃焼室16を排気通路に連通させるようになっている。そして、吸気バルブ22の開弁により燃焼室16が吸気通路に連通した状態でピストン12が下降するとき、燃焼室16は、吸気通路を通して吸入空気Aを吸入することができる。また、排気バルブ24の開弁により燃焼室16が排気通路に連通した状態でピストン12が上昇するとき、燃焼室16は、排気通路を通して排出ガスGを排出することができる。
【0028】
点火プラグ25は、燃焼室16内に火花点火可能に露出して設けられている。点火プラグ25は、ECU7によって、点火時期を制御されるようになっている。
【0029】
吸気装置3は、吸気口管30と、エアクリーナ31と、吸気管32と、エアロフローメータ33と、スロットルバルブ34と、サージタンク35と、吸気マニホールド36とを備えている。エアクリーナ31は、吸気装置3の上流部で、内蔵するフィルタにより吸入空気Aから粉塵などを除去して清浄化するようになっている。エアロフローメータ33は、吸入空気Aの吸入流量を検出するようになっている。
【0030】
スロットルバルブ34は、エアクリーナ31とサージタンク35との間に設けられるとともに、電子制御式で各シリンダ11に供給される吸入空気Aの吸入流量を調節するようになっている。吸気マニホールド36は、吸気管32と各シリンダ11とを接続している。
【0031】
吸入空気Aは、吸気口管30から、エアクリーナ31→スロットルバルブ34→サージタンク35→吸気マニホールド36という順で流通されて、各シリンダ11に流入されるようになっている。また、吸気マニホールド36と各シリンダ11との接続により、エンジン本体2と吸気装置3とが接続されている。
【0032】
排気装置4は、排気マニホールド40と、排出ガス管41と、図示しない排気後処理器とを備えている。
【0033】
排気マニホールド40は、各シリンダ11から排出された排出ガスGを流通させる。この排気マニホールド40と各シリンダ11との接続により、エンジン本体2と排気装置4とが接続されている。排出ガス管41は、排気マニホールド40と排気後処理器とを接続している。
【0034】
燃料供給装置5は、低圧側燃料供給機構50と、高圧側燃料供給機構80とを備えている。燃料供給装置5は、燃料をエンジン本体2に圧送および供給するようになっている。
【0035】
低圧側燃料供給機構50は、燃料圧送部51と、低圧側燃料配管52と、低圧側デリバリーパイプ53と、低圧側インジェクタ54とを備えている。
【0036】
燃料圧送部51は、燃料タンク511と、フィードポンプユニット512と、サクションフィルタ513と、燃料フィルタ514と、燃圧制御弁515と、これらを連結する燃料管516とを備えている。
【0037】
燃料タンク511は、エンジン本体2で消費される燃料、例えばガソリンを貯留する。フィードポンプユニット512は、図示しないフィードポンプを内蔵し、ECU7から発信されるオン/オフ指令信号に基づいて、駆動および停止されるようになっている。
【0038】
フィードポンプユニット512は、燃料タンク511内から燃料を汲み上げ、汲み上げた燃料を、例えば1[MPa]未満の一定可変範囲内の圧力に加圧して吐出できるようになっている。さらに、フィードポンプユニット512は、ECU7の制御により、単位時間当りの吐出量[m/sec]や吐出圧[MPa]を変化できるようになっている。
【0039】
すなわち、フィードポンプユニット512は、ECU7によりオン/オフ駆動および回転数制御されることで、その単位時間当りの吐出量や吐出圧を可変制御することができるようになっている。フィードポンプユニット512は、低圧側燃料供給機構50および高圧側燃料供給機構80の供給配管を通した燃料の供給流量および供給圧力のうち少なくとも一方を増加させることができる可変燃料ポンプあるいは可変燃圧ポンプとなっている。
【0040】
サクションフィルタ513は、フィードポンプユニット512の吸入口に設けられ、異物の吸入を阻止するようになっている。燃料フィルタ514は、フィードポンプユニット512の吐出口に設けられ、吐出燃料中の異物を除去するようになっている。
【0041】
燃圧制御弁515は、フィードポンプユニット512から吐出される燃料の圧力を開弁方向に受圧する図示しないダイヤフラムと、このダイヤフラムを閉弁方向に付勢する図示しない圧縮コイルばねとを内蔵する。燃圧制御弁515は、ダイヤフラムが受圧する燃料の圧力が設定圧を超えると開弁し、ダイヤフラムが受圧する燃料の圧力が設定圧に満たない間は閉弁状態を維持するようになっている。これにより、燃圧制御弁515は、低圧側燃料配管52内に吐出される燃料の圧力を、予め設定された低圧側の供給圧、例えば400[kPa]などに調圧するようになっている。
【0042】
低圧側燃料配管52は、燃料圧送部51から低圧側デリバリーパイプ53までを連結する管からなる。ただし、低圧側燃料配管52は、燃料通路を形成する任意の部材であって、燃料パイプに限定されるものではなく、燃料通路が貫通形成される1つの部材や、互いの間に燃料通路が形成される複数の部材であってもよい。
【0043】
低圧側デリバリーパイプ53は、シリンダ11の直列配置方向の一端側で、低圧側燃料配管52に接続されている。低圧側デリバリーパイプ53には、シリンダ11の直列配置方向にシリンダ11と同じ間隔を隔てて、低圧側インジェクタ54が連結されている。低圧側デリバリーパイプ53は、燃料圧送部51からの燃料を各低圧側インジェクタ54に同等の圧力で分配するようになっている。また、低圧側デリバリーパイプ53には、内部の燃料圧力を検出する低圧側燃料圧力センサ53aが装着されている。
【0044】
低圧側インジェクタ54は、噴孔部54aを各シリンダ11に対応する吸気ポート21内に露出してポート噴射用インジェクタとして設けられている。低圧側インジェクタ54は、ECU7からの噴射指令信号により駆動される図示しない電磁弁部と、電磁弁部への通電時に噴孔部54aから吸気ポート21内に燃料を噴射するよう開弁動作する図示しないノズル部とを備えた燃料噴射弁からなる。複数の低圧側インジェクタ54のうちいずれかが開弁動作するとき、低圧側デリバリーパイプ53内の加圧された燃料が、低圧側インジェクタ54の噴孔部54aから吸気ポート21内に噴射されるようになっている。
【0045】
高圧側燃料供給機構80は、高圧ポンプ部81と、高圧側燃料配管82と、高圧側デリバリーパイプ83と、高圧側インジェクタ84とを備えている。
【0046】
高圧ポンプ部81は、上流側管90と、下流側管91と、パルセーションダンパ92と、高圧ポンプ本体93と、電磁スピル弁94とを備えている。高圧ポンプ部81は、シリンダヘッド20の上側に取り付けられるとともに、低圧側燃料配管52と高圧側燃料配管82との間に接続されている。上流側管90は、低圧側燃料配管52の分岐管52aに接続されている。下流側管91は、高圧側燃料配管82に接続されている。
【0047】
パルセーションダンパ92は、上流側管90に設けられるとともに、燃料圧力を受圧する弾性の図示しないダイヤフラムと、図示しない圧縮コイルばねとを有している。パルセーションダンパ92は、ダイヤフラムの弾性変形により内部容積を変化させ、上流側管90内の燃料の圧力脈動を抑制するようになっている。
【0048】
高圧ポンプ本体93は、ポンプハウジング931と、プランジャ932と、カムシャフト933と、フォロアリフタ934と、戻りばね935とを備えている。
【0049】
ポンプハウジング931は、内部に形成された円柱状の加圧室931aを備えている。プランジャ932は、円柱状で、ポンプハウジング931内で摺動可能に設けられるとともに、摺動により加圧室931aの容積を変化させるようになっている。カムシャフト933は、エンジン本体2の排気カムシャフトの一端に設けられているとともに、端部にカム933aを有している。
【0050】
フォロアリフタ934は、プランジャ932に一体化されているとともに、カム933aに押圧されることによりプランジャ932を摺動させるようになっている。戻りばね935は、ポンプハウジング931とフォロアリフタ934との間に設けられた圧縮コイルばねからなるとともに、フォロアリフタ934をカム933aに付勢している。
【0051】
高圧ポンプ本体93では、加圧室931aが、プランジャ932の往復移動によって容積を変化させることにより、フィードポンプユニット512からの燃料の吸入と加圧および吐出作業とを行うようになっている。
【0052】
高圧ポンプ本体93は、低圧側燃料配管52から加圧室931aに導入された燃料を、例えば400[kPa]程度から、例えば4[MPa]〜13[MPa]程度に加圧して、高圧側燃料配管82に吐出するようになっている。
【0053】
電磁スピル弁94は、弁体941と、電磁駆動コイル942と、押圧ばね943とを備えている。
【0054】
弁体941は、ポンプハウジング931に対して摺動可能に設けられていて、上流側管90と加圧室931aとの間を開弁および閉弁可能にしている。電磁駆動コイル942は、ECU7により通電を制御されて弁体941を電磁駆動する。押圧ばね943は、圧縮コイルばねからなるとともに、弁体941を常時開弁方向に付勢している。
【0055】
弁体941は、電磁駆動コイル942が非励磁状態となる非駆動時には、フィードポンプユニット512から給送される燃料を加圧室931a内に導入するよう開弁動作するようになっている。また、弁体941は、電磁駆動コイル942が励磁状態となる駆動時には、高圧ポンプ本体93の加圧および吐出動作を可能にするよう閉弁動作するようになっている。
【0056】
電磁スピル弁94は、ECU7からの入力信号に応じ閉弁するときには、高圧の逆流を阻止する逆止弁機能を有するようになっている。また、電磁スピル弁94は、ECU7からの入力信号に応じ開弁するときには、プランジャ932の変位に応じ加圧室931a内への燃料の吸入または加圧室931a内の燃料の低圧側燃料配管52への漏出を許容するようになっている。
【0057】
電磁スピル弁94は、電磁駆動コイル942が励磁されるときに弁体941により加圧室931aを閉塞する。そして、電磁スピル弁94は、プランジャ932の往復移動による加圧室931aの容積変化により、加圧室931a内への燃料の吸入と、加圧室931a内での燃料の加圧と、加圧室931aからの燃料の吐出とを行うようになっている。
【0058】
高圧側燃料配管82は、高圧ポンプ部81から高圧側デリバリーパイプ83までを連結する管からなるとともに、途中にチェック弁82aを備えている。高圧側燃料配管82は、燃料通路を形成する任意の部材であって、燃料パイプに限定されるものではなく、燃料通路が貫通形成される1つの部材や、互いの間に燃料通路が形成される複数の部材であってもよい。
【0059】
チェック弁82aは、高圧ポンプ部81の近傍に設けられている。チェック弁82aは、高圧ポンプ部81側の燃料圧力が高圧側インジェクタ84側の燃料圧力に対し、例えば100[kPa]程度の有意の差圧を持って大きくなると開弁する一方、高圧ポンプ部81側の圧力が高圧側インジェクタ84側の圧力に略等しいか小さくなると閉弁するようになっている。
【0060】
高圧側デリバリーパイプ83は、シリンダ11の直列配置方向の一端側で、高圧側燃料配管82に接続されている。高圧側デリバリーパイプ83には、シリンダ11の直列配置方向にシリンダ11と同じ間隔を隔てて、高圧側インジェクタ84が連結されている。これにより、高圧側デリバリーパイプ83は、高圧ポンプ部81からの燃料を各高圧側インジェクタ84に同等の圧力で分配するようになっている。また、高圧側デリバリーパイプ83には、内部の燃料圧力を検出する高圧側燃料圧力センサ83aが装着されている。
【0061】
高圧側インジェクタ84は、噴孔部84aを各シリンダ11の燃焼室16内に露出して筒内噴射用インジェクタとして設けられている。高圧側インジェクタ84は、ECU7からの噴射指令信号により駆動される図示しない電磁弁部と、電磁弁部への通電時に噴孔部84aから燃焼室16内に燃料を噴射するよう開弁動作する図示しないノズル部とを備えた燃料噴射弁からなる。複数の高圧側インジェクタ84のうちいずれかが開弁動作するとき、高圧側デリバリーパイプ83内の加圧された燃料がその高圧側インジェクタ84の噴孔部84aから燃焼室16内に噴射されるようになっている。
【0062】
冷却装置6は、ウォータジャケット61と、図示しないウォータポンプと、図示しないラジエータとを備えている。冷却水Wは、ウォータポンプ→ウォータジャケット61→ラジエータ→ウォータポンプの順で循環するようになっている。
【0063】
ウォータジャケット61は、シリンダブロック10に形成されたシリンダブロックウォータジャケット61aと、シリンダヘッド20に形成されたシリンダヘッドウォータジャケット61bと、冷却水温度センサ61cとを備えている。シリンダブロックウォータジャケット61aおよびシリンダヘッドウォータジャケット61bは、互いに連結されて各シリンダ11の周囲に設けられている。ウォータジャケット61は、内部に冷却水Wを流通させることによりエンジン本体2を冷却するようになっている。
【0064】
ECU7は、CPU(Central Processing Unit)7aと、固定されたデータの記憶を行うROM(Read Only Memory)7bと、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)7cと、書き替え可能な不揮発性のメモリからなる図示しないバックアップメモリと、A/D変替器やバッファなどを有する図示しない入力インターフェース回路と、駆動回路などを有する図示しない出力インターフェース回路とを備えている。ECU7には車両のイグニッションスイッチのオン/オフ信号が取り込まれるとともに、図示しないバッテリからの電源供給がなされるようになっている。
【0065】
ECU7には、上述したエアロフローメータ33と、クランク角センサ15と、低圧側燃料圧力センサ53aと、高圧側燃料圧力センサ83aと、冷却水温度センサ61cと、アクセルペダル71の踏み込み角度を検出するアクセルセンサ72と、車両の速度を検出する車速センサ73と、燃料の温度を検出する図示しない燃料温度センサと、吸気の温度を検出する図示しない吸気温度センサとが接続されている。
【0066】
ECU7は、ROM7b内に予め格納された制御プログラムに従い、アクセルセンサ72により検出されるアクセル開度や、エアロフローメータ33により検出される吸入空気量や、クランク角センサ15により検出されるエンジン回転数などに基づいて燃焼毎に必要な基本噴射量を算出するようになっている。また、ECU7は、基本噴射量や予めバックアップメモリに格納されている設定値情報などに基づいて、エンジン1の運転状態に応じた各種補正や空燃比フィードバック補正などを施した燃料噴射量を算出するようになっている。さらに、ECU7は、算出した燃料噴射量に基づいて、低圧側インジェクタ54および高圧側インジェクタ84への噴射指令信号や電磁スピル弁94を駆動するための弁駆動指示信号などを適時に出力するようになっている。
【0067】
ECU7は、電磁スピル弁94による加圧室931aから低圧側燃料配管52への燃料の漏出量を調節する。ECU7は、少なくともこの調整により、高圧ポンプ本体93から高圧側デリバリーパイプ83に供給される燃料の圧力をエンジン1の運転状態および高圧側インジェクタ84の噴射特性に応じて最適な燃圧に制御できるようになっている。
【0068】
例えば、ECU7は、一定の信号周期内において電磁スピル弁94の電磁駆動コイル942を励磁状態にするオン時間とその励磁状態を解くオフ時間とを設定することができる。そして、ECU7は、信号周期内におけるオン時間の比(0%〜100%;以下、デューティ比という)を変化させることにより、電磁スピル弁94による加圧室931aからの燃料の漏出量を調節することができる。
【0069】
また、ECU7は、エンジン1の始動時に、低圧側インジェクタ54による燃料噴射を最初に実施させるようになっている。そして、ECU7は、高圧側燃料圧力センサ83aにより検出される高圧側デリバリーパイプ83内の燃料圧力が予め設定された圧力値を超えたとき、高圧側インジェクタ84による燃料噴射に必要な燃料圧力レベルに達し得る状態になったと判断するようになっている。この判断に基づき、ECU7は、高圧側インジェクタ84への噴射指令信号の出力を開始するようになっている。
【0070】
さらに、ECU7は、例えば高圧側インジェクタ84からの筒内噴射を基本としながら、エンジン1の始動暖機時や低回転高負荷時などのように筒内噴射では混合気形成が不十分となる特定の運転状態下では、ポート噴射を併用するようになっている。または、ECU7は、例えば高圧側インジェクタ84からの筒内噴射を基本としながら、ポート噴射が有効な高回転高負荷時などに低圧側インジェクタ54からのポート噴射を実行するようになっている。あるいは、ECU7は、エンジン1が筒内噴射を伴わないポート噴射のみによる運転(以下、PFI運転という)を実行するようになっている。
【0071】
また、ECU7は、例えば車両の高速走行中にアクセル71がオフ状態になったときに、電磁スピル弁94の電磁駆動コイル942への通電を止め、高圧ポンプ部81を加圧動作のできない燃料カットの状態にするようになっている。
【0072】
また、ECU7は、車両の停止直後に、高圧側燃料供給機構80によりエンジン1に高圧燃料を供給してエンジン1をアイドル運転させ、高圧側燃料供給機構80における高圧燃料の燃圧を低下させるようになっている。ECU7は、高圧側燃料供給機構80によるアイドル運転時での目標燃圧を予め設定して記憶するようになっている。そして、ECU7は、高圧側燃料供給機構80による燃料供給を停止した後、低圧側燃料供給機構50によりエンジン1に低圧燃料を供給してエンジン1をアイドル運転させるようになっている。
【0073】
次に、作用について説明する。
【0074】
図3に示すフローチャートは、ECU7のCPU7aによって、RAM7cを作業領域として実行される内燃機関の燃料供給処理のプログラムであり、この内燃機関の燃料供給処理のプログラムはECU7のROM7bに記憶されている。
【0075】
上述のように構成された本実施の形態の燃料供給装置5では、この内燃機関の燃料供給処理は、ECU7によって予め決められた時間間隔(例えば、10ms)ごとに実行されるようになっている。
【0076】
ECU7は、アクセルペダル71の踏み込みが解除されたか否か、すなわちアクセルオフか否かを判断する(ステップS1)。この判断は、アクセルセンサ72により検出されたアクセル開度が0であるか否かに基づいてECU7により実行される。ECU7が、アクセルペダル71の踏み込みが解除されておらずアクセルオフでないと判断したときは(ステップS1;NO)、処理をメインルーチンに戻す。
【0077】
ECU7が、アクセルペダル71の踏み込みが解除されているアクセルオフと判断したときは(ステップS1;YES)、ECU7は燃料供給装置5からエンジン1への燃料供給量を低減あるいは0にして、エンジン1の回転数を低下させてアイドル運転を行う制御をする(ステップS2)。
【0078】
そして、ECU7は、車両が停止しているか否かを検出する(ステップS3)。この判断は、車速センサ73により検出された車速が0であるか否かに基づいてECU7により実行される。ECU7が、車両が停止していないと判断したときは(ステップS3;NO)、処理をメインルーチンに戻す。
【0079】
ECU7が、車両が停止していると判断したときは(ステップS3;YES)、ECU7は、高圧側燃料供給系での実燃圧が予め設定した目標燃圧より高いか否かを判断する(ステップS4)。この判断は、高圧側燃料圧力センサ83aにより検出された高圧側の実燃圧と目標燃圧との比較結果に基づいてECU7により実行される。
【0080】
ECU7が、高圧側燃料供給系での実燃圧が目標燃圧より高いと判断したときは(ステップS4;YES)、ECU7は高圧側燃料供給機構80を作動させ、エンジン1が筒内噴射のみによりアイドル運転するように制御する(ステップS5)。すなわち、高圧側燃料供給系での実燃圧が目標燃圧より高い場合は、そのままエンジン1を停止すると高圧側燃料供給系に高圧の燃料が残存してしまうため、筒内噴射によるアイドル運転を行うことで高圧側燃料供給系内の燃圧を下げるようにする。
【0081】
一方、ECU7が、高圧側燃料供給系での実燃圧が目標燃圧以下であると判断したときは(ステップS4;NO)、ECU7は低圧側燃料供給機構50を作動させ、エンジン1がポート噴射のみによるPFI運転でアイドル運転するように制御する(ステップS6)。
【0082】
上述した車両で走行中に、運転者がアクセルペダル71を解放した際のエンジン1の動作を、図4に示すタイムチャートに沿って説明する。
【0083】
図4に示すように、車両の走行中、エンジン1への燃料供給の筒内噴射とポート噴射との比率は、いずれも例えば50%であるようにしている。そして、Tにおいて運転者がアクセルペダルを解放する。これにより、ECU7が燃料供給装置5からエンジン1への燃料供給量を低減する。このため、エンジン1の回転数が低下し、車速が減速する。
【0084】
そして、Tにおいて車速が0になるとともに、高圧側燃料供給系での実燃圧が目標燃圧Pより大きい場合は、ECU7は高圧側燃料供給機構80を作動させ、エンジン1が筒内噴射のみによりアイドル運転するように制御する。エンジン1が筒内噴射によるアイドル運転を行うことにより、高圧側燃料供給系内の燃圧が低下する。
【0085】
において高圧側燃料供給系での実燃圧が目標燃圧P以下になると、ECU7は低圧側燃料供給機構50を作動させ、エンジン1がポート噴射のみによるPFI運転でアイドル運転するように制御する。これにより、高圧側燃料供給系での実燃圧が、目標燃圧P程度に維持されるようになる。
【0086】
その後、エンジン1が停止された場合は、高圧側燃料供給系での実燃圧が、目標燃圧P程度に抑えられる。あるいは、エンジン1が停止されずに運転者がアクセルペダル71を踏み込んだ場合は、燃料供給量が増加してエンジン1の回転数が上昇する。
【0087】
以上のように、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置によれば、車両が停止した直後に、高圧側燃料供給機構80によりエンジン1に高圧燃料を供給してエンジン1をアイドル運転させ高圧燃料供給系における高圧燃料の燃圧を低下させる。このため、デュアル噴射タイプのエンジン1が停止した後に、高圧燃料供給系に高圧燃料が残存してしまうことが防止される。よって、次にエンジン1を始動してから最初に高圧燃料供給系で燃料をシリンダ11に直接噴射したときに、目標燃圧より高圧の燃料がシリンダ11内に噴射されて燃料リッチによりエンジン1に振動や失火が発生してしまうことが抑制される。
【0088】
また、停車中に高圧燃料供給系で燃料が過剰に高圧になることが抑制されるので、高圧燃料供給系でのリリーフ機構を省略することができるようになる。このため、例えば高圧側デリバリーパイプ83から燃料タンク511までのリリーフ機構用の配管を設ける必要が無いので、リリーフ機構を設ける場合に比べてコスト削減を図ることができる。
【0089】
上述した本実施の形態の内燃機関の制御装置においては、高圧側燃料供給系での実燃圧と目標燃圧Pとの比較結果に基づいて、筒内噴射とポート噴射との吹き分けを判断するようにしている。しかしながら、本発明に係る内燃機関の制御装置においては、これに限られず、例えば、燃料温度、吸気温度、冷却水温度などの温度に基づいて、吹き分けを判断するようにしてもよい。あるいは、燃料温度、吸気温度、冷却水温度などの温度と、高圧側燃料供給系での実燃圧および目標燃圧Pの比較結果とを併用したものに基づいて、吹き分けを判断するようにしてもよい。
【0090】
また、上述した本実施の形態の内燃機関の制御装置においては、制御装置をガソリン車に適用している。しかしながら、本発明に係る内燃機関の制御装置においては、これに限られず、ハイブリッド車やディーゼルエンジン車に適用してもよい。
【0091】
ここで、本発明に係る内燃機関の制御装置をハイブリッド車100に適用した場合について説明する。図5に示すように、ハイブリッド車100は、エンジン1と、エンジン1に接続された動力分配統合機構101と、動力分配統合機構101に接続された電動機としてのモータMG1およびモータMG2と、車両全体を制御するECU7とを備える。このハイブリッド車100は、エンジン1およびモータMG2との少なくとも一方を駆動源として走行可能となっている。
【0092】
エンジン1は、上述したエンジン1と同様の構成であるので、符号を同じくして詳細な説明は省略する。図6および図7に示すように、エンジン1は、吸気バルブ22の開閉タイミングを連続的に変更可能な可変バルブタイミング機構110を備える。可変バルブタイミング機構110は、VVTコントローラ111と、オイルコントロールバルブ112とを備えている。
【0093】
VVTコントローラ111は、ベーン式で、ハウジング部113と、ベーン部114とを備えている。ハウジング部113は、クランクシャフト14にタイミングチェーン115を介して接続されたタイミングギヤ116に固定されている。ベーン部114は、吸気バルブ22を開閉するインテークカムシャフト117に固定されている。オイルコントロールバルブ112は、VVTコントローラ111の進角室および遅角室に油圧を作用させる。
【0094】
そして、可変バルブタイミング機構110は、オイルコントロールバルブ112を介してVVTコントローラ111の進角室および遅角室に作用させる油圧を調節する。これにより、ハウジング部113に対してベーン部114を相対的に回転させ、吸気バルブ22の開閉タイミングにおけるインテークカムシャフト117の角度を連続的に変更するようになっている。
【0095】
図5に示すように、動力分配統合機構101には、デファレンシャルギヤ120が接続されている。デファレンシャルギヤ120には、駆動輪121が接続されている。動力分配統合機構101の出力は、デファレンシャルギヤ120を介して、駆動輪121に伝達される。モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができるとともに電動機として駆動できる周知の同期発電電動機からなる。モータMG1およびモータMG2は、それぞれインバータ130に接続されている。各インバータ130は、バッテリ131に接続されている。ECU7は、エンジンECU140と、モータECU141と、バッテリECU142とに接続されている。
【0096】
上述したハイブリッド車100においては、エンジン1の停止指令が発生するとともに車両が停車したとき、ECU7がエンジンECU140を介して可変バルブタイミング機構110を作動させ、吸気バルブ22の開閉時期を初期状態に戻す。すなわち、ベーン部114を回転させて、エンジン1の再始動に最適な最遅角位置に位置させる。このベーン部114を回転させる作業を行うために、ECU7は、所定の待機時間、例えば500msecの間はエンジン1を停止せずにアイドル運転を行い、その待機時間の経過後にエンジン1を停止するようにしている。
【0097】
ここで、このベーン部114を戻し回転させる作業を行うための待機時間の間に、ECU7は高圧側燃料供給機構80を作動させ、エンジン1が筒内噴射のみによりアイドル運転するように制御する。これにより、高圧側燃料供給系の実燃圧と目標燃圧とを比較することなく筒内噴射とポート噴射との吹き分けの判断を行うことができるので、制御を容易にすることができる。
【0098】
また、上述したハイブリッド車100においては、可変バルブタイミング機構110は吸気バルブ22の開閉タイミングを変更するものとしている。しかしながら、本発明に係る内燃機関の制御装置においては、これに限られず、可変バルブタイミング機構110は排気バルブ24の開閉タイミングを変更するものとしてもよい。この場合、エンジン1の停止時に排気バルブ24の開閉時期を初期状態に戻すには、ベーン部114を回転させて、エンジン1の再始動に最適な最進角位置に位置させる。
【0099】
以上のように、本発明に係る内燃機関の制御装置は、デュアル噴射タイプのエンジンにおいてエンジン停止時に高圧燃料供給系内の燃圧を低減できるという効果を奏するものであり、内燃機関の制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0100】
1 エンジン(内燃機関)
2 エンジン本体
5 燃料供給装置
7 ECU(内燃機関の制御装置)
11 シリンダ(気筒)
14 クランクシャフト
21 吸気ポート
22 吸気バルブ
24 排気バルブ
50 低圧側燃料供給機構
51 燃料圧送部
53 低圧側デリバリーパイプ
54 低圧側インジェクタ
80 高圧側燃料供給機構
81 高圧ポンプ部
83 高圧側デリバリーパイプ
84 高圧側インジェクタ
100 ハイブリッド車(車両)
110 可変バルブタイミング機構
MG1 モータ(電動機)
MG2 モータ(電動機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内燃機関の吸気ポートに低圧燃料を噴射する低圧側燃料供給機構と、前記内燃機関の気筒に高圧燃料を噴射する高圧側燃料供給機構と、を備えた内燃機関の燃料供給装置を制御する内燃機関の制御装置であって、
前記車両の停止直後に、前記高圧側燃料供給機構により前記内燃機関に前記高圧燃料を供給して前記内燃機関をアイドル運転させ、前記高圧燃料の燃圧を低下させてから前記高圧側燃料供給機構による燃料供給を停止した後、前記低圧側燃料供給機構により前記内燃機関に前記低圧燃料を供給して前記内燃機関をアイドル運転させることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記車両は、前記内燃機関と、電動機と、前記内燃機関のクランクシャフトの回転に対する前記内燃機関の吸気バルブまたは排気バルブの開閉時期を変化させることができる可変バルブタイミング機構と、を備えるとともに、前記内燃機関および前記電動機の少なくとも一方を駆動源として走行可能なハイブリッド車であり、
前記車両の停止直後に、前記可変バルブタイミング機構により前記吸気バルブまたは前記排気バルブの開閉時期を初期状態に戻すまでの間、前記高圧側燃料供給機構により前記内燃機関に前記高圧燃料を供給して前記内燃機関をアイドル運転させ前記高圧燃料の燃圧を低下させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113145(P2013−113145A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257911(P2011−257911)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】