説明

内燃機関の制御装置

【課題】この発明は内燃機関の制御装置に関し、プレイグ発生の抑制要求とNOx還元要求とを同時に処理可能な内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】図3に示すように、本実施形態のリッチスパイクは、プレイグ検出直後のエンジンサイクルの燃料噴射タイミング(時刻t)において開始される。時刻tにおけるNOxカウンタは閾値を下回っているので、NOx触媒28用のリッチスパイクを開始するタイミング(図2の時刻t)ではない。しかしながら、リッチスパイクを実行すればNOx触媒28からNOxを放出できるので、NOxカウンタを減少できる。従って、本実施形態のリッチスパイクによれば、プレイグの連続発生の抑制と、NOx触媒28の吸蔵能力の回復とを同時に図ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関し、より詳細には、プレイグの発生を抑制する内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料および空気の混合気を点火プラグの火花により着火、燃焼させる内燃機関においては、混合気の自己着火による異常燃焼(プレイグ)が発生する場合がある。プレイグ発生の抑制技術として、例えば特許文献1には、プレイグ発生が予測または検出された場合に、筒内空燃比をストイキよりもリッチ側に変更する内燃機関の制御装置が開示されている。この制御装置において、筒内空燃比のリッチ側への変更は、筒内噴射燃料の増量により行われる。噴射燃料量を増量すれば、気化潜熱による筒内冷却効果を高めることができるので、プレイグの発生を遅らせることができる。
【0003】
また、排気空燃比が所定リーン域にある場合にNOxを吸蔵し、所定リッチ域にある場合にNOxを還元するNOx触媒を排気系に設け、排気空燃比を制御することで排気に含まれるNOxを浄化する内燃機関が知られている。例えば特許文献2には、リーンバーンエンジンの排気系にNOx触媒を設け、排気空燃比を一時的にストイキよりもリッチ側に制御するリッチスパイクを実行する内燃機関の制御装置が開示されている。この制御装置によれば、リーン運転中にNOx触媒に吸蔵させたNOxをリッチスパイク実行中に放出して還元することができる。この制御装置において、リッチスパイクは、NOx触媒のNOx吸蔵量が一定量となった時点で開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−84617号公報
【特許文献2】特開2009−68341号公報
【特許文献3】特開2007−32543号公報
【特許文献4】特開平7−103015号公報
【特許文献5】特開平11−93757号公報
【特許文献6】特開2004−232555号公報
【特許文献7】特開2006−132506号公報
【特許文献8】特開2002−195025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1および2の制御装置は、その目的が異なるものの、あるタイミングで空燃比をリッチ側へ変更する点で共通する。そのため仮に、ある内燃機関において、プレイグ発生の抑制要求とNOx還元要求とが同時に出された場合、何れかを優先する必要性に迫られることになる。特に昨今の過給エンジンに対しては、更なる燃費向上を目的として、高圧縮比化、リッチ運転回避や、低回転域での高過給化が求められているところである。そのため、プレイグ発生条件を満たし易く、上述した2つの要求が同時に出される可能性が高いと言える。よって、上記要求を同時に処理可能な制御手法を確立しておく必要がある。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。即ち、プレイグ発生の抑制要求とNOx還元要求とを同時に処理可能な内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の制御装置であって、
内燃機関の排気通路に設けられ、排気空燃比が所定リーン域にある場合にNOxを吸蔵し、排気空燃比が所定空燃比域にある場合にNOxを還元浄化するNOx触媒と、
プレイグの発生を検出するプレイグ検出手段と、
プレイグの発生が検出された場合に、空燃比を一時的にストイキよりもリッチ側に制御するリッチスパイクを実行するリッチスパイク実行手段と、
プレイグの発生が検出された際における前記NOx触媒のNOx吸蔵量に基づいて、前記リッチスパイク実行中の目標空燃比を算出する目標空燃比算出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、
内燃機関の運転状態に基づいて、プレイグの連続発生許容回数を設定する許容回数設定手段を更に備え、
前記目標空燃比算出手段は、前記連続発生許容回数に対応する機関サイクル以内に前記NOx吸蔵量の全てが還元浄化されるように前記リッチスパイク実行中の目標空燃比を算出することを特徴とする。
【0009】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記内燃機関は複数気筒を備え、
プレイグ検出に係るプレイグ検出気筒に対して連続的にプレイグの発生が検出された場合、前記リッチスパイクの実行中に前記プレイグ検出気筒の目標空燃比をストイキよりもリーン側に変更する目標空燃比変更手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第4の発明は、第1乃至第3何れか1つの発明において、
前記内燃機関は複数気筒を備え、
前記目標空燃比算出手段は、プレイグ検出に係るプレイグ検出気筒の目標空燃比の方が、プレイグ非検出気筒の目標空燃比よりもリッチ側となるように前記リッチスパイク実行中の目標空燃比を算出することを特徴とする。
【0011】
また、第5の発明は、第1乃至第4何れか1つの発明において、
前記内燃機関は複数気筒を備え、
前記目標空燃比算出手段は、前記リッチスパイク実行中の目標空燃比の平均が予め設定した所定リッチ域に収まるようにプレイグ非検出気筒の目標空燃比を補正することを特徴とする。
【0012】
また、第6の発明は、第1乃至第5何れか1つの発明において、
前記内燃機関は複数気筒を備え、
前記リッチスパイク実行手段は、前記リッチスパイク実行中に前記複数気筒に吸入される空気量を所定量まで減少させる空気量制御手段を更に備え、
前記リッチスパイク実行手段は、プレイグ検出に係るプレイグ検出気筒の空燃比制御をプレイグ非発生気筒の空燃比制御に先駆けて開始し、前記プレイグ非発生気筒に吸入される空気量が前記所定量まで減少したタイミングで前記プレイグ非発生気筒の空燃比制御を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、プレイグが検出された際におけるNOx触媒のNOx吸蔵量に基づいて、リッチスパイク実行中の目標空燃比を算出できる。そのため、リッチスパイクの実行中に、プレイグの連続的な発生を抑制しつつ、NOx触媒の吸蔵能力の回復を図ることができる。即ち、プレイグ発生の抑制要求とNOx還元要求とを同時に処理可能な内燃機関の制御装置を提供できる。
【0014】
プレイグが連続発生すると内燃機関の筒内部品の破損可能性が高まるが、この破損可能性はプレイグ発生時の筒内部品温度や運転条件によって変動する。第2の発明によれば、許容回数設定手段によって、上記破損可能性の変動パラメータとしての連続発生許容回数を内燃機関の運転状態に基づいて設定し、リッチ化度合い算出手段によって、この連続発生許容回数に対応する機関サイクル以内にNOx吸蔵量の全てが還元浄化されるように目標空燃比を算出できる。従って、上記破損可能性が高まる前にプレイグの発生を抑制しながらNOx触媒の吸蔵能力を全回復させることが可能となる。
【0015】
第3の発明によれば、プレイグが連続的に検出された場合、リッチスパイクの実行中にプレイグ発生気筒の空燃比をストイキよりもリーン側に変更できる。そのため、プレイグ発生気筒への燃料供給量を少なくして、燃焼時の筒内圧の上昇を最小限に留めることが可能となる。よって、内燃機関の筒内部品の破損を回避することが可能となる。
【0016】
第4の発明によれば、プレイグ非検出気筒の目標空燃比よりもプレイグ検出気筒の目標空燃比の方がリッチ側となるようにリッチスパイク実行中の目標空燃比を算出できる。そのため、プレイグ発生気筒への燃料供給量を多くして、筒内冷却効果を高めることが可能となる。よって、プレイグ発生気筒での連続的なプレイグ発生を良好に抑制できる。
【0017】
第5の発明によれば、リッチスパイク実行中の目標空燃比の平均が予め設定した所定リッチ域に収まるようにプレイグ非検出気筒の目標空燃比を補正するので、リッチスパイク実行中のエミッションの悪化を抑制可能となる。
【0018】
第6の発明によれば、プレイグ検出気筒の空燃比制御をプレイグ非発生気筒の空燃比制御に先駆けて開始することができる。そのため、プレイグ検出気筒での連続的なプレイグ発生を早期に抑制可能となる。また、第6の発明によれば、プレイグ非発生気筒に吸入される空気量が所定量まで減少したタイミングでプレイグ非発生気筒の空燃比制御を実行するので、プレイグ非発生気筒における燃焼安定性の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の各実施形態のシステム構成を説明するための図である。
【図2】NOx触媒28用のリッチスパイクを説明するためのタイミングチャートである。
【図3】実施の形態1のリッチスパイクを説明するためのタイミングチャートである。
【図4】実施の形態1において、ECU50により実行されるリッチスパイクのルーチンを示すフローチャートである。
【図5】実施の形態2におけるリッチスパイクAFの一例を示した図である。
【図6】実施の形態3におけるリッチスパイクAFの一例を示した図である。
【図7】実施の形態4のリッチスパイクを説明するためのタイミングチャートである。
【図8】実施の形態5におけるリッチスパイクAFの一例を示した図である。
【図9】エンジン回転数および負荷と、プレイグ許容回数との関係を示した図である。
【図10】実施の形態6のリッチスパイクを説明するためのタイミングチャートである。
【図11】比較用のリッチスパイクを説明するためのタイミングチャートである。
【図12】実施の形態6において、ECU50により実行されるリッチスパイクのルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
[システム構成の説明]
先ず、図1乃至図4を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。図1に示すように、本実施形態のシステムは、内燃機関としてのエンジン10を備えている。なお、図1に示すエンジン10は直列4気筒型エンジン(#1〜#4は気筒番号を表す。)であるが、本実施形態に適用可能なエンジンの気筒数および気筒配置はこれに限定されるものではない。
【0021】
エンジン10の気筒12には、気筒12内に燃料を直接噴射するインジェクタ14が配置されている。インジェクタ14は、図示しない吸気ポートに燃料を噴射するポートインジェクタであってもよい。インジェクタ14と同様に、気筒12には、その内部圧力を検出する筒内圧センサ16が設置されている。インジェクタ14は、これらに共通のコモンレール18に接続されている。コモンレール18は、図示しない燃料タンクと接続されている。
【0022】
また、本実施形態のシステムは、ターボ過給機20を備えている。ターボ過給機20は、タービン20aとコンプレッサ20bとを有している。タービン20aは、排気通路22の途中に配置されている。コンプレッサ20bは、吸気通路24の途中に配置されている。ターボ過給機20の作動時には、排気圧を受けて回転するタービン20aによりコンプレッサ20bが駆動され、コンプレッサ20bにより吸入空気が圧縮、過給される。
【0023】
タービン20aよりも下流側の排気通路22には、前処理触媒26およびNOx触媒28がこの順に配置されている。前処理触媒26は、これに流入する排気空燃比がストイキ付近の狭い範囲にある場合に、排気に含まれるHC、CO、NOxの3成分を効率的に浄化する三元触媒である。NOx触媒28は所謂吸蔵還元型のNOx触媒であり、これに流入する排気空燃比が所定リーン域にある場合にNOxを吸蔵し、所定リッチ域にある場合にNOxを放出するという吸放出作用を有する。また、タービン20aと前処理触媒26の間の排気通路22には、空燃比センサ30が設置されている。空燃比センサ30は比較的広範囲に亘る空燃比を検出し、空燃比に応じた信号を発するように構成されている。
【0024】
コンプレッサ20bよりも下流側の吸気通路24には、コンプレッサ20bにより過給された吸入空気を冷却するインタークーラ32が設けられている。インタークーラ32よりも下流側の吸気通路24には、電子制御式のスロットルバルブ34が設けられている。スロットルバルブ34の近傍には、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ36が設置されている。また、コンプレッサ20bよりも上流側の吸気通路24には、吸入空気量Qを検出するエアフローセンサ38が設置されている。
【0025】
また、本実施形態のシステムは、ECU(Electronic Control Unit)50を更に備えている。ECU50の入力側には、上述した筒内圧センサ16、空燃比センサ30やスロットル開度センサ36、エアフローセンサ38の他、エンジン回転数(回転速度)を検出するクランク角センサ40などが接続されている。一方、ECU50の出力側には、インジェクタ14、スロットルバルブ34等の各種のアクチュエータが接続されている。ECU50は、上述した各種センサによりエンジンの運転情報を検出し、その検出結果に基づいて各アクチュエータを駆動することにより運転制御を行う。
【0026】
[NOx触媒28用のリッチスパイク]
ところで、燃費低減の観点から、目標空燃比をストイキよりもリーン側に設定するリーンバーン運転を行う場合がある。リーンバーン運転中、排気に含まれるNOxは前処理触媒26を通り抜けてNOx触媒28に流入し、NOx触媒28の吸蔵許容量が満杯となるまで吸蔵される。NOx触媒28の吸蔵許容量が満杯となると、排気に含まれるNOxがNOx触媒28をも通り抜けて大気中に排出されてしまう。そのため、NOx触媒28の吸蔵許容量が一定量に到達したタイミングでリッチスパイクが実行される。リッチスパイクは、目標空燃比を一時的にストイキよりもリッチ側に設定する制御である。リッチスパイクを実行することで、還元成分(HC、CO、H)を含む排気をNOx触媒28に導入し、NOx触媒28からNOxを放出させて還元浄化する。
【0027】
図2は、NOx触媒28用のリッチスパイクを説明するためのタイミングチャートである。図2に示すように、リーンバーン運転(例えば目標空燃比=25)中、エンジン10から排出されたNOxはNOx触媒28に吸蔵され続ける。そのため、NOx触媒28の吸蔵量、即ちNOxカウンタは時間の経過と共に上昇する。リッチスパイク(例えば目標空燃比=12)は、NOxカウンタが閾値に到達したタイミング(時刻t)で開始される。リッチスパイクを実行すれば、NOx触媒28のNOxが還元浄化されるので、NOxカウンタは減少する。また、図2に示すように、リッチスパイク終了後は再びリーンバーン運転される。そのため、終了タイミング(時刻t)以降のNOxカウンタは、時間の経過と共に上昇する。
【0028】
[実施の形態1のリッチスパイク]
上述したように、昨今の過給エンジンに対しては、更なる燃費向上を目的として、高圧縮比化、リッチ運転回避や、低回転域での高過給化が求められているところである。そのため、今後の技術動向を考慮すると、気筒12は、プレイグ発生条件を満たし易い筒内環境に晒される可能性があると言える。そこで、本実施形態においては、上述したNOx触媒28用のリッチスパイクとは異なる開始タイミングで、リッチスパイクを実行することとしている。即ち、本実施形態においては、プレイグが検出された際に、上述したNOx触媒28用のリッチスパイクを実行することとしている。
【0029】
本実施形態のリッチスパイクは、プレイグが検出された際に、インジェクタ14からの燃料噴射量を増量して目標空燃比を一時的にストイキよりもリッチ側に設定する制御である。図3は、本実施形態のリッチスパイクを説明するためのタイミングチャートである。図3に示すように、本実施形態のリッチスパイクは、プレイグ検出直後のエンジンサイクルの燃料噴射タイミング(時刻t)において開始される。この開始タイミングでリッチスパイク(例えば目標空燃比=12)を実行すれば、噴射燃料の気化潜熱による筒内冷却効果を高めることができる。そのため、次サイクルにおけるプレイグ発生を抑制できる。
【0030】
図3に示すように、時刻tにおけるNOxカウンタは閾値を下回っているので、本来の開始タイミング(図2の時刻t)ではない。しかしながら、リッチスパイクを実行すればNOx触媒28からNOxを放出できるので、NOxカウンタを減少できる。従って、本実施形態のリッチスパイクによれば、プレイグの連続発生の抑制と、NOx触媒28の吸蔵能力の回復とを同時に図ることが可能となる。なお、リッチスパイク終了後は再びリーンバーン運転される。そのため、終了タイミング(時刻t)以降のNOxカウンタは、プレイグが再検出されない限り、時間の経過と共に上昇する。
【0031】
本実施形態のリッチスパイクにおいては、プレイグ検出タイミング(図3の時刻t)におけるNOxカウンタに基づいて、リッチスパイク実行中の目標空燃比(以下「リッチスパイクAF」ともいう。)が算出される。プレイグ検出タイミングにおけるNOxカウンタは、エンジン10の運転状態により推定される。
【0032】
プレイグ検出タイミングにおけるNOxカウンタの推定手法について説明する。NOxカウンタは、NOx触媒28に単位時間当たりに吸蔵されるNOx吸蔵量(以下「単位時間当たりのNOx吸蔵量」と称す。)を、前回リッチスパイクの終了タイミングから今回プレイグ検出タイミングまでの期間に亘って積算することにより求められる。ここで、単位時間当たりのNOx吸蔵量は、エンジン10から単位時間当たりに排出されるNOx排出量(以下「単位時間当たりのNOx排出量」と称す。)と排気流量(吸入空気量)とによって定まる。
【0033】
単位時間当たりのNOx排出量は、噴射燃料量、エンジン回転数、吸入空気量といった運転状態に応じて定まるものであり、実際のエンジン10を用いた実験等によって求めることができる。本実施形態において、単位時間当たりのNOx排出量は、噴射燃料量、エンジン回転数、吸入空気量をパラメータとした数値マップの形でECU50内部に記憶されているものとする。
【0034】
また、上述したように、単位時間当たりのNOx吸蔵量は、単位時間当たりのNOx排出量と排気流量とによって定まる。そのため、単位時間当たりのNOx排出量が求められれば、単位時間当たりのNOx吸蔵量を求めることができる。つまり、単位時間当たりのNOx吸蔵量は、実際のNOx触媒28を用いた実験等によって求めることができる。本実施形態において、単位時間当たりのNOx吸蔵量は、単位時間当たりのNOx排出量と吸入空気量とをパラメータとした数値マップの形でECU50内部に記憶されているものとする。
【0035】
リッチスパイクAFは、次式(1)によって算出される。
リッチスパイクAF=ストイキ(14.7)−{吸入空気量Q×リッチスパイク実行回数/(NOxカウンタ+触媒OSC量)} ・・・(1)
上記式(1)において、NOxカウンタは上記推定手法により求めた値である。また、吸入空気量Qは、エアフローセンサ38で検出した値である。また、リッチスパイク実行回数は設定値である。
【0036】
また、上記式(1)において、触媒OSC量とは、プレイグ検出タイミングにおいて、前処理触媒26やNOx触媒28に吸蔵されている酸素量を考慮した補正値である。触媒OSC量を設けた理由は次のとおりである。即ち、前処理触媒26やNOx触媒28が酸素吸蔵能を有する場合、リーンバーン運転中に酸素を吸蔵し、リッチスパイク中に放出する。そうすると、リッチスパイク中の排気中の還元成分が放出酸素によって消費され、その結果、NOx触媒28から放出されたNOxの一部が未還元状態で大気中に排出されてしまうためである。
【0037】
触媒OSC量は、前処理触媒26やNOx触媒28に単位時間当たりに吸蔵される酸素吸蔵量(以下「単位時間当たりの酸素吸蔵量」と称す。)を、前回リッチスパイクの終了タイミングから今回プレイグ検出タイミングまでの期間に亘って積算することにより求められる。ここで、単位時間当たりの酸素吸蔵量は、リーンバーン運転中の排気空燃比と排気流量(吸入空気量)とによって定まる。本実施形態において、単位時間当たりの酸素排出量は、上述した単位時間当たりのNOx吸蔵量同様に実験等により求められ、排気空燃比と吸入空気量とをパラメータとした数値マップの形でECU50内部に記憶されているものとする。
【0038】
[実施の形態1における具体的処理]
次に、図4を参照しながら、上述した機能を実現するための具体的な処理について説明する。図4は、本実施形態において、ECU50により実行されるリッチスパイクのルーチンを示すフローチャートである。なお、図4に示すルーチンは、定期的に繰り返して実行されるものとする。
【0039】
図4に示すルーチンにおいて、先ず、ECU50は、プレイグの発生が検出されたか否かを判定する(ステップ110)。プレイグの発生の検出は、筒内圧センサ16のセンサ出力と予め設定したモデル値と比較することで行われるが、他の公知の手法によって推定等することも可能である。本ステップにおいて、プレイグの発生が検出された場合、ECU50はNOxカウンタおよび触媒OSC量を読み込む(ステップ120)。具体的に、ECU50は、のNOx吸蔵量の積算値および触媒OSC量の積算値を読み込む。なお、NOxカウンタ、触媒OSC量の推定手法については既述のとおりである。一方、ステップ110において、プレイグの発生が検出されなかった場合、ECU50は本ルーチンを終了する。
【0040】
ステップ120に続いて、ECU50は、リッチスパイクAFを算出する(ステップ130)。具体的に、ECU50は先ず、エアフローセンサ38の検出値(吸入空気量Q)を取得し、次いで、ステップ120で読み込んだNOx吸蔵量の積算値および触媒OSC量の積算値と、吸入空気量Qと、リッチスパイク実行回数とを上記式(1)に適用して、リッチスパイクAFを算出する。
【0041】
ステップ130に続いて、ECU50は、ステップ130で算出したリッチスパイクAFが所定の空燃比域にあるか否かを判定する(ステップ140〜170)。具体的に、先ずECU50は、ステップ130で算出したリッチスパイクAFが下限AFよりも大きいか否かを判定する(ステップ140)。本ステップで用いる下限AFは、エンジン10のエミッション要求等に応じて別途設定されるリッチ空燃比の最小値であり、予めECU50内に記憶されているものとする。本ステップにおいて、リッチスパイクAFが下限AFよりも小さい場合、ECU50は、リッチスパイクAFを下限AFに設定し(ステップ150)、ステップ180に進む。
【0042】
一方、リッチスパイクAFが下限AFよりも大きい場合、ECU50は、上限AFよりも小さいか否かを判定する(ステップ160)。本ステップで用いる上限AFは、プレイグの連続発生を抑制するのに必要なリッチ空燃比の最大値であり、予めECU50内に記憶されているものとする。本ステップにおいて、リッチスパイクAFが上限AFよりも大きい場合、ECU50は、リッチスパイクAFを上限AFに設定し(ステップ170)、ステップ180に進む。
【0043】
ステップ180において、ECU50は、ステップ130〜170で算出しまたは設定したリッチスパイクAFとなるように、リッチスパイクを実行する(ステップ180)。
【0044】
以上、図4に示したルーチンによれば、プレイグの発生が検出された場合にリッチスパイクAFを算出しリッチスパイクを実行できる。従って、プレイグの連続発生の抑制と、NOx触媒28の吸蔵能力の回復とを同時に図ることができる。また、図4に示したルーチンによれば、算出したリッチスパイクAFが所定の空燃比域にあるかを確認した上でリッチスパイクを実行できる。従って、リッチスパイクの実行中、過度にエミッションが悪化し、或いは、プレイグの連続発生の抑制が不十分となるといった不具合を回避しつつ、NOx触媒28の吸蔵能力の回復を図ることができる。
【0045】
なお、上記実施の形態1においては、ECU50が図4のステップ110の処理を実行することにより上記第1の発明における「プレイグ検出手段」が、同図のステップ120,130の処理を実行することにより上記第1の発明における「目標空燃比算出手段」が、同図のステップ180の処理を実行することにより上記第1の発明における「リッチスパイク実行手段」が、それぞれ実現されている。
【0046】
実施の形態2.
次に、図5を参照しながら本発明の実施の形態2について説明する。本実施形態においては、プレイグが実際に発生した気筒(以下「プレイグ発生気筒」と称す。)と、他気筒(以下、「プレイグ非発生気筒」と称す。)との間で、リッチスパイクAFを異ならしめることをその特徴とする。そのため、リッチスパイクAFの算出手法を含むリッチスパイクの説明や、システム構成の説明については省略する。
【0047】
[実施の形態2のリッチスパイク]
リッチスパイクAFは一般に、よりリッチ側の値に設定するほど高いプレイグ抑制効果を得ることができる。何故なら、インジェクタ14からの燃料噴射量を増量して筒内冷却効果を高めれば、プレイグの発生を一層遅らせることや、火炎伝播速度の一層の抑制が可能となるからである。その一方で、リッチスパイクAFは、気筒12内において発生させる還元成分の発生量バランスを取るための最適範囲(具体的には、空燃比11.5〜12.5)が存在する。そこで、本実施形態においては、上記式(1)による算出後に、プレイグ発生気筒に対しては燃料噴射量を増量し、プレイグ非発生気筒に対しては上記最適範囲となるように、リッチスパイクAFを変更することとしている。
【0048】
図5は、本実施形態におけるリッチスパイクAFの一例を示した図である。例えばプレイグ発生気筒が#1であり、プレイグ非発生気筒が#2〜#4であるとする。また上記式(1)により算出されたリッチスパイクAFは12であり、上記最適範囲内であるとする。図5に示すように、本実施形態では、リッチスパイクAFの算出後、#1のリッチスパイクAFを12から10へと変更する。これにより、#2〜#4においては還元成分の発生量バランスを優先し、#1においては筒内冷却効果を優先できる。また、#1のリッチスパイクAFを10に変更したのは、この変更に伴うエミッションの悪化を最小限に留めるためである。
【0049】
以上、本実施形態のリッチスパイクによれば、気筒12内において発生させる還元成分の発生量バランスを取りつつ、プレイグ抑制効果を最大限発揮させることが可能となる。また、プレイグ発生気筒のリッチスパイクAFの変更に伴うエミッション悪化を最小限に留めることも可能となる。
【0050】
ところで、上記実施の形態2においては#1のリッチスパイクAFを12から10へと変更したが、変更後のリッチスパイクAFは必ずしも10である必要はない。即ち、トータル空燃比(#1〜#4のリッチスパイクAFの平均をいう。以下同じ。)が極端にリッチ化しないような空燃比(具体的には、上記下限AFを下回らないような空燃比)であれば、本実施形態の変形として適用が可能である。
【0051】
実施の形態3.
次に、図6を参照しながら、本発明の実施の形態3について説明する。本実施形態においては、上記実施の形態2同様、上記式(1)による算出後、プレイグ発生気筒やプレイグ非発生気筒のリッチスパイクAFを変更することをその特徴とする。そのため、リッチスパイクAFの算出手法を含むリッチスパイクの説明や、システム構成の説明については省略する。
【0052】
[実施の形態3のリッチスパイク]
図6は、本実施形態におけるリッチスパイクAFの一例を示した図である。上記実施形態2と同様に、プレイグ検出タイミングにおいて設定されたリッチスパイクAFが12であり、リッチスパイクAFの設定後、プレイグ発生気筒である#1のリッチスパイクAFを12から10へと変更したとする。図6に示すように、本実施形態では、プレイグ非発生気筒である#2〜#4のリッチスパイクAFを12から12.7に変更する。これにより、トータル空燃比を12にできる。即ち、プレイグ発生気筒のリッチスパイクAFのリッチ化に伴うエミッションの悪化を、プレイグ非発生気筒のリッチスパイクAFのリーン化によって打ち消すことができる。よって、本実施形態のリッチスパイクによれば、リッチスパイクの際のエミッションの悪化を略ゼロにすることが可能となる。
【0053】
ところで、上記実施の形態3においては#1のリッチスパイクAFを12から10に、#2〜#4のリッチスパイクAFを12から12.7に、それぞれ変更したが、これらの変更の組み合わせは、上記実施の形態3の例に限られない。即ち、プレイグ発生気筒のリッチスパイクAFの変更に伴うエミッションの悪化を、プレイグ非発生気筒のリッチスパイクAFの変更によって打ち消して、トータル空燃比を所定リッチ域(具体的には11.5〜14.0)とすることが可能な空燃比の組み合わせであれば、本実施形態の変形として適用が可能である。
【0054】
実施の形態4.
次に、図7を参照しながら、本発明の実施の形態4について説明する。本実施形態においては、上記式(1)による算出後、プレイグ発生気筒とプレイグ非発生気筒とでリッチスパイクAFの変更タイミングを異ならしめることをその特徴とする。そのため、リッチスパイクAFの算出手法を含むリッチスパイクの説明や、システム構成の説明については省略する。
【0055】
[実施の形態4のリッチスパイク]
図7は、本実施形態のリッチスパイクを説明するためのタイミングチャートである。図7に示すように、プレイグ発生気筒においては検出直後のサイクルの燃料噴射タイミング(時刻t)において、プレイグ非発生気筒においてはそれよりも遅いタイミング(時刻t)において、それぞれリッチスパイクAFが変更される。この理由は、次の2つである。第1の理由は、プレイグ発生気筒においては次サイクルでの発生を防止する必要があるが、プレイグ非発生気筒においてはその必要がないためである。第2の理由は、スロットルバルブ34等のアクチュエータの応答遅れを加味する必要があるためである。
【0056】
上記第2の理由に関し、NOx触媒28用のリッチスパイクは一般に、リッチ化時におけるトルク増大の防止を目的として、空気量の減少制御と点火時期の遅角制御とを実施している。本実施形態のリッチスパイクにおいても例外ではなく、上記2つの制御を実施する。故に、プレイグ非発生気筒については、スロットルバルブ34等のアクチュエータが動作して実際に筒内空気量が減少し始めるタイミング(時刻t)で、プレイグ非発生気筒のリッチスパイクAFを変更し、点火時期の遅角制御を行っている。これにより、プレイグ非発生気筒における燃焼安定性の悪化を抑制し、更には、燃費の低減をも図ることができる。
【0057】
以上、本実施形態のリッチスパイクによれば、リッチスパイク時のトルク増大を防止しつつ、燃費や燃焼安定性の悪化を抑制可能となる。
【0058】
なお、上述した実施の形態4においては、EUC50が空気量の減少制御を実施することにより上記第6の発明の「空気量制御手段」が実現されている。
【0059】
実施の形態5.
次に、図8を参照しながら、本発明の実施の形態5について説明する。本実施形態においては、リッチスパイクを実行したにも関わらずプレイグが連続発生してしまった場合、その連続発生に係る気筒(以下「プレイグ連続発生気筒」と称す。)のリッチスパイクAFを変更することをその特徴とする。そのため、リッチスパイクAFの算出手法を含むリッチスパイクの説明や、システム構成の説明については省略する。
【0060】
[実施の形態5のリッチスパイク]
プレイグが連続発生した場合、過渡の温度上昇や過大な筒内圧に起因した筒内部品の破損可能性が高まる。この部品破損防止の最終手段としては、燃料噴射そのものを停止することが有効である。しかしながら、リッチスパイク中にフューエルカットを実施すると、プレイグ連続発生気筒から排出されたガス中の酸素がプレイグ非発生気筒から排出された既燃ガスと反応し、前処理触媒26の床温が過度に上昇してしまう可能性がある。そこで、本実施形態においては、プレイグが連続発生した場合、プレイグ連続発生気筒のリッチスパイクAFをストイキよりもリーン側に変更することとしている。
【0061】
図8は、本実施形態におけるリッチスパイクAFの一例を示した図である。例えばプレイグ連続発生気筒が#1であり、プレイグ非発生気筒が#2〜#4であるとする。また、プレイグ発生当初のリッチスパイクAFは、全気筒ともに12に設定されているものとする。図8に示すように、本実施形態では、#1のリッチスパイクAFを12から20へと変更する。リッチスパイクAFを20とすれば、#1の吸入酸素を一定量燃焼できるので、排出酸素量を低減できる。排出酸素量を低減できれば、上述した前処理触媒26の床温の過度な上昇を抑制できる。また、フューエルカット程の効果を得られるものではないが、プレイグ連続発生時の#1の筒内圧の上昇を最小限に留めることも可能となる。従って、本実施形態のリッチスパイクによれば、前処理触媒26の床温の過度な上昇を抑制しながら、筒内部品の破損の防止を図ることが可能となる。
【0062】
また、図8に示すように、本実施形態では、#1のリッチスパイクAFを変更する際、#2〜#4のリッチスパイクAFを12から10に変更する。これにより、トータル空燃比を12.5にできるので、上記実施の形態3同様の効果を得ることもできる。
【0063】
ところで、上記実施の形態5においては#1のリッチスパイクAFを12から20へと変更したが、変更後のリッチスパイクAFは必ずしも20である必要はない。即ち、プレイグ連続発生気筒からの排出酸素量を減らすことができ、尚且つ、プレイグ連続発生気筒の筒内圧の上昇を最小限に留めることが可能なリーン側の空燃比であれば、本実施形態の変形として適用が可能である。
【0064】
なお、上記実施の形態5においては、#1のリッチスパイクAFを12から20へと変更することにより上記第3の発明における「目標空燃比変更手段」が実現されている。
【0065】
実施の形態6.
次に、図9乃至図12を参照しながら、本発明の実施の形態6について説明する。本実施形態においては、上記式(1)のリッチスパイク実行回数の代わりに、プレイグ許容回数を用いることをその特徴とする。そのため、システム構成の説明については省略する。
【0066】
[実施の形態6のリッチスパイク]
上記実施の形態5で述べたように、プレイグが連続発生すると筒内部品の破損可能性が高まる。しかし、この破損可能性は、プレイグ発生時の筒内部品温度や運転条件によって変動するものである。つまり、相当数の連続発生が許容される場合もある。そこで、本実施形態においては、破損可能性の変動パラメータとしてのプレイグ許容回数を設定し、このプレイグ許容回数に対応したエンジンサイクルに亘ってリッチスパイクを実行することとしている。
【0067】
プレイグ許容回数は、エンジン10の運転状態に関連付けて設定される。図9は、エンジン回転数および負荷と、プレイグ許容回数との関係を示した図である。本実施形態において、プレイグ許容回数は、予め実験等により求められ、エンジン回転数および負荷をパラメータとした数値マップの形でECU50内部に記憶されているものとする。
【0068】
また、本実施形態においては、プレイグ検出タイミングにおけるプレイグ許容回数とNOxカウンタとに基づいて、リッチスパイクAFを算出している。また、本実施形態においては、NOxカウンタがゼロになるようにリッチスパイクAFを算出している。本実施形態において、リッチスパイクAFは、次式(2)によって算出される。
リッチスパイクAF=ストイキ(14.7)−{吸入空気量Q×プレイグ許容回数/(NOxカウンタ+触媒OSC量)} ・・・(2)
上記式(2)において、NOxカウンタ、触媒OSC量および吸入空気量Qは、上記式(1)の際に説明したとおりである。
【0069】
図10は、本実施形態のリッチスパイクを説明するためのタイミングチャートである。図10に示すように、本実施形態においては、プレイグ検出直後のエンジンサイクルの燃料噴射タイミング(時刻t)においてリッチスパイク(例えば全気筒のリッチスパイクAF=12)を開始し、プレイグ許容回数に対応したエンジンサイクルの経過に伴い終了する(時刻t)。そのため、リッチスパイクの実行中はプレイグが連続発生するものの、時刻t以降においてはその発生を抑制できる。また、リッチスパイクの実行中、NOxカウンタはゼロまで減少する。よって、NOx触媒28の吸蔵能力の完全回復を図ることができる。従って、本実施形態のリッチスパイクによれば、リッチスパイク実行後におけるプレイグ発生の抑制と、NOx触媒28の吸蔵能力の完全回復とを同時に図ることができる。
【0070】
また、図10に示すように、本実施形態においては、リッチスパイク終了後、プレイグ連続発生気筒においてはフューエルカットを実行し、プレイグ非発生気筒においては目標空燃比=25に変更される。リッチスパイク終了後、プレイグ連続発生気筒においてフューエルカットを実行するのは、筒内部品の破損を確実に防止するためである。
【0071】
また、リッチスパイク終了後、プレイグ非発生気筒において目標空燃比=25に設定する理由について、図11を参照しながら説明する。図11は、比較用のリッチスパイクを説明するためのタイミングチャートである。図11に示すように、比較用のリッチスパイクは、リッチスパイク終了後、プレイグ非発生気筒において目標空燃比=12に維持される。そうすると、上記実施の形態5で述べたように、フューエルカット中にプレイグ連続発生気筒から排出されたガス中の酸素と、プレイグ非発生気筒から排出された既燃ガスとが反応し、前処理触媒26の床温が過度に上昇するという不具合が生じてしまう。
【0072】
この点、リッチスパイク終了後、プレイグ非発生気筒において目標空燃比=25に設定すれば、前処理触媒26の床温の過度な上昇を抑制できる。従って、本実施形態のリッチスパイクによれば、リッチスパイク終了後において、前処理触媒26の床温が過度に上昇することをも良好に抑制できる。
【0073】
[実施の形態6における具体的処理]
次に、図12を参照しながら、上述した機能を実現するための具体的な処理について説明する。図12は、本実施形態において、ECU50により実行されるリッチスパイクのルーチンを示すフローチャートである。なお、図12に示すルーチンは、定期的に繰り返して実行されるものとする。
【0074】
図12に示すルーチンにおいて、先ず、ECU50は、プレイグ検出の有無を判定する(ステップ210)。本ステップの処理は、図4のステップ110の処理と同一である。続いて、ECU50は、回転数および負荷を読み込む(ステップ220)。具体的に、ECU50は、スロットル開度センサ36およびクランク角センサ40の出力を取得する。続いて、ECU50は、プレイグ許容回数を算出する(ステップ230)。具体的に、ECU50は、ステップ220で読み込んだ回転数および負荷を図9のマップに適用してプレイグ許容回数を算出する。続いて、ECU50はNOxカウンタおよび触媒OSC量を読み込む(ステップ240)。本ステップは図4のステップ120の処理と同一である。
【0075】
ステップ240に続いて、ECU50は、リッチスパイクAFを算出する(ステップ250)。具体的に、ECU50は先ず、エアフローセンサ38の検出値(吸入空気量Q)を取得し、次いで、ステップ230で算出したプレイグ許容回数と、ステップ240で読み込んだNOx吸蔵量の積算値および触媒OSC量の積算値と、吸入空気量Qとを上記式(2)に適用して、リッチスパイクAFを算出する。ステップ250に続いて、ECU50は、ステップ130で算出したリッチスパイクAFが所定の空燃比域にあるか否かを判定し、プレイグ許容回数に対応したエンジンサイクルに亘ってリッチスパイクを実行する(ステップ260〜300)。これらの処理は、図4のステップ140〜180の処理と同一である。
【0076】
ステップ300に続いて、ECU50は、プレイグ連続発生気筒に対してフューエルカットを実施し(ステップ310)、プレイグ非発生気筒の目標空燃比を25に変更する(ステップ320)。
【0077】
以上、図12に示したルーチンによれば、プレイグの発生が検出された場合、プレイグ許容回数に対応したエンジンサイクルに亘ってリッチスパイクを実行できる。また、リッチスパイクの終了後、プレイグ連続発生気筒に対してフューエルカットを実施できる。従って、リッチスパイクの終了後、プレイグ連続発生気筒でプレイグが再発することを良好に抑制できる。また、リッチスパイクの実行に際しては、NOx吸蔵量の積算値および触媒OSC量がゼロとなるようにリッチスパイクAFが算出される。従って、リッチスパイクの終了後には、NOx触媒28の吸蔵能力を完全回復させることができる。
また、図12に示したルーチンによれば、リッチスパイクの終了後、プレイグ非発生気筒の目標空燃比を25に変更するので、前処理触媒26の床温が過度に上昇することをも良好に抑制できる。
【0078】
ところで、上記実施の形態6においては、プレイグ許容回数に対応したエンジンサイクルに亘ってリッチスパイクを実行したが、プレイグ許容回数よりも短い回数に対応したエンジンサイクルに亘ってリッチスパイクを実行してもよい。
また、上記実施の形態6においてはリッチスパイクの終了後、プレイグ連続発生気筒に対してフューエルカットを実施したが、フューエルカットを実施せずに、上記実施の形態1同様にリーンバーン運転を再開してもよい。
また、上記実施の形態6においてはリッチスパイクの終了後、プレイグ非発生気筒の目標空燃比を25に変更したが、変更後の目標空燃比は必ずしも25である必要はない。即ち、プレイグ非発生気筒の目標空燃比のそれぞれが少なくともリーン側となるような空燃比であればよい。このような目標空燃比とすれば、プレイグ非発生気筒から排出された既燃ガスと、プレイグ連続発生気筒から排出されたガス中の酸素とが反応して前処理触媒26の床温が極度に上昇することを抑制できるので、本実施形態の変形として適用が可能である。
【0079】
なお、上記実施の形態6においては、ECU50が図12のステップ220,230の処理を実行することにより上記第2の発明における「許容回数設定手段」が実現されている。
【符号の説明】
【0080】
10 エンジン
12 気筒
14 インジェクタ
16 筒内圧センサ
22 排気通路
26 前処理触媒
28 NOx触媒
36 スロットル開度センサ
38 エアフローセンサ
40 クランク角センサ
50 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられ、排気空燃比が所定リーン域にある場合にNOxを吸蔵し、排気空燃比が所定空燃比域にある場合にNOxを還元浄化するNOx触媒と、
プレイグの発生を検出するプレイグ検出手段と、
プレイグの発生が検出された場合に、空燃比を一時的にストイキよりもリッチ側に制御するリッチスパイクを実行するリッチスパイク実行手段と、
プレイグの発生が検出された際における前記NOx触媒のNOx吸蔵量に基づいて、前記リッチスパイク実行中の目標空燃比を算出する目標空燃比算出手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
内燃機関の運転状態に基づいて、プレイグの連続発生許容回数を設定する許容回数設定手段を更に備え、
前記目標空燃比算出手段は、前記連続発生許容回数に対応する機関サイクル以内に前記NOx吸蔵量の全てが還元浄化されるように前記リッチスパイク実行中の目標空燃比を算出することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記内燃機関は複数気筒を備え、
プレイグ検出に係るプレイグ検出気筒に対して連続的にプレイグの発生が検出された場合、前記リッチスパイクの実行中に前記プレイグ検出気筒の目標空燃比をストイキよりもリーン側に変更する目標空燃比変更手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関は複数気筒を備え、
前記目標空燃比算出手段は、プレイグ検出に係るプレイグ検出気筒の目標空燃比の方が、プレイグ非検出気筒の目標空燃比よりもリッチ側となるように前記リッチスパイク実行中の目標空燃比を算出することを特徴とする請求項1乃至3何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関は複数気筒を備え、
前記目標空燃比算出手段は、前記リッチスパイク実行中の目標空燃比の平均が予め設定した所定リッチ域に収まるようにプレイグ非検出気筒の目標空燃比を補正することを特徴とする請求項1乃至4何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記内燃機関は複数気筒を備え、
前記リッチスパイク実行手段は、前記リッチスパイク実行中に前記複数気筒に吸入される空気量を所定量まで減少させる空気量制御手段を更に備え、
前記リッチスパイク実行手段は、プレイグ検出に係るプレイグ検出気筒の空燃比制御をプレイグ非発生気筒の空燃比制御に先駆けて開始し、前記プレイグ非発生気筒に吸入される空気量が前記所定量まで減少したタイミングで前記プレイグ非発生気筒の空燃比制御を実行することを特徴とする請求項1乃至5何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−113211(P2013−113211A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260090(P2011−260090)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】