説明

内燃機関の始動装置

【課題】 複数内燃機関を搭載した車両において、排気エミッションの悪化を抑制しつつ補助エンジンを始動することができる始動装置を提供する。
【解決手段】 始動装置1は、内燃機関であるメインエンジン10と、メインエンジン10より小排気量のサブエンジン20と、メインエンジン10の排気ガスとサブエンジン20の排気ガスとを集合させる集合部180を有する排気管170と、集合部180の下流に配置される排気浄化触媒40とを備える内燃機関の始動装置であって、触媒温度に基づいて排気浄化触媒40が活性状態であるか否かを判定するとともに、メインエンジン10の運転状態に基づいて排気浄化触媒40内の雰囲気がリーンであるか否かを判断するエンジンECU50と、排気浄化触媒40が活性状態であると判定され、かつ排気浄化触媒40内の雰囲気がリーンであると判断されたときに、サブエンジン20を始動するスタータモータ21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の始動装置に関し、特に、主エンジンとは別に補助エンジンを備えている複数内燃機関の始動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2基のエンジンを搭載し、走行状況に応じてエンジンの一方または双方を使用して走行するようにした車両が特許文献1に記載されている。この車両によれば、主エンジンの排気は、排気マニホールドを通じてターボチャージャーのタービンに供給される。タービンから排出された排気は、排気管を通じて排気浄化触媒に供給されて浄化される。浄化された排気は、排気浄化触媒の下流に設けられた排気管からサイレンサを介して外部に放出される。一方、補助エンジンの排気は、排気マニホールドを通じて排気浄化触媒の下流に設けられた排気管に供給され、主エンジンの排気と集合された後、外部に排出される。
【特許文献1】特開平6−93855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記車両では、補助エンジンから排出された排気ガスは排気浄化触媒の下流で主エンジンの排気ガスと集合されて外部に排出されるため、補助エンジンから排出された排気ガス中の有害ガス成分が浄化されずに外部に排出される。
【0004】
補助エンジンの排気ガスをも浄化するには補助エンジンの排気ガスを排気浄化触媒の上流で主エンジンの排気ガスと集合させる手法が考えられる。
【0005】
ここで、通常、エンジン始動時には、燃料の壁面付着量が増大することによる空燃比のリーン化を抑制するため、空燃比がリッチに制御される。その結果、エンジン始動時には、排気ガス中の一酸化炭素COや炭化水素HCの濃度が高くなる。補助エンジンの排気ガスと主エンジンの排気ガスを排気浄化触媒の上流側で集合し、補助エンジンの排気ガスを主エンジンの排気浄化触媒で浄化する構成とした場合、主エンジンの運転状態や排気浄化触媒の状態(活性状態や酸素吸蔵状態)によっては、補助エンジン始動時に一酸化炭素COや炭化水素HCの排出量が増大し排気エミッションが悪化するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、複数内燃機関を搭載した車両において、排気エミッションの悪化を抑制しつつ補助エンジンを始動することができる始動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る内燃機関の始動装置は、内燃機関である主エンジンと、主エンジンより小排気量の補助エンジンと、主エンジンの排気ガスと補助エンジンの排気ガスとを集合させる集合部を有する排気通路と、排気通路上の集合部の下流に配置される排気浄化触媒とを備える内燃機関の始動装置において、排気浄化触媒が活性状態であり、かつ排気浄化触媒内の雰囲気がリーンであるときに、補助エンジンを始動する始動手段を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る内燃機関の始動装置によれば、排気浄化触媒が活性状態であり、かつ排気浄化触媒内の雰囲気がリーンであるときに、補助エンジンが始動される。そのため、排気浄化触媒内に存在する酸素によって酸化反応が進行するので、始動時に補助エンジンから排出され、集合部を通して排気浄化触媒に流入した排気ガス中の一酸化炭素COや炭化水素HCを充分に浄化することができる。その結果、排気エミッションの悪化を抑制しつつ補助エンジンを始動することが可能となる。
【0009】
本発明に係る内燃機関の始動装置は、排気浄化触媒が活性状態であるか否かを判定する活性判定手段と、排気浄化触媒内の雰囲気がリーンであるか否かを判断する判断手段とを備え、始動手段が、活性判定手段により排気浄化触媒が活性状態であると判定され、かつ判断手段により排気浄化触媒内の雰囲気がリーンであると判断されたときに、補助エンジンを始動することが好ましい。
【0010】
この場合、活性判定手段により排気浄化触媒が活性状態であると判定され、かつ判断手段により排気浄化触媒内の雰囲気がリーンであると判断されたときに補助エンジンが始動される。そのため、排気浄化触媒内で酸化反応を確実に進行させることができるので、始動時に補助エンジンから排出され、集合部を通して排気浄化触媒に流入した排気ガス中の一酸化炭素COや炭化水素HCを確実に浄化することができる。
【0011】
上記判断手段は、主エンジンが、燃料カット運転中である場合、リーン運転中である場合またはエンジン停止後所定時間経過していない場合、のいずれかの場合に排気浄化触媒内の雰囲気がリーンであると判断することが好ましい。
【0012】
主エンジンが燃料カット運転中のときには、主エンジンに吸入された空気がそのまま排気浄化触媒に排出される。また、主エンジンがリーン運転中のときには、排気ガス中の酸素濃度が高くなる。また、主エンジン停止時には、燃料供給が停止された後エンジンが惰性で回転されることによって、空気が吸入・排出される。したがって、主エンジンがこれらの運転状態にあるときには、排気浄化触媒内に充分な量の酸素が存在していると判断することができる。
【0013】
本発明に係る内燃機関の始動装置は、判断手段により排気浄化触媒内の雰囲気がリーンであると判断されなかった場合に、空気を導入して排気浄化触媒内の雰囲気をリーンにするリーン化手段をさらに備え、始動手段が、活性判定手段により排気浄化触媒が活性状態であると判定され、かつリーン化手段により排気浄化触媒内の雰囲気がリーンにされたときに、補助エンジンを始動することが好ましい。
【0014】
このようにすれば、排気浄化触媒内がリーン雰囲気ではない場合であっても、リーン化手段により排気浄化触媒内に空気を導入することによって、排気浄化触媒内の雰囲気を能動的にリーン化することができる。そのため、主エンジンの運転状態や排気浄化触媒の状態に拘わらず、エミッションの悪化を抑制しつつ補助エンジンを始動することが可能となる。
【0015】
また、上記主エンジンは車両を駆動し、補助エンジンは車両用補機を駆動することが好ましい。
【0016】
本発明に係る内燃機関の始動装置は、排気浄化触媒を活性状態にする排気浄化触媒活性手段を備え、始動手段が、排気浄化触媒活性手段により排気浄化触媒が活性状態にされた後に、補助エンジンを始動することが好ましい。
【0017】
このようにすれば、排気浄化触媒が活性状態ではない場合であっても、排気浄化触媒活性手段により排気浄化触媒を活性状態にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、排気浄化触媒が活性状態であり、かつ排気浄化触媒内の雰囲気がリーンであるときに、補助エンジンを始動する構成としたので、複数内燃機関を搭載した車両において、排気エミッションの悪化を抑制しつつ補助エンジンを始動することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。
【0020】
まず、図1を用いて、本実施形態に係る始動装置1を備えた内燃機関の全体構成について説明する。
【0021】
メインエンジン(主エンジン)10およびサブエンジン(補助エンジン)20は、ともにガソリンを燃料とする内燃機関である。メインエンジン10は主として車両を駆動するためのエンジンである。サブエンジン20は、メインエンジン10より排気量が小さいエンジンであって、主として車両用補機(以下単に「補機」という)30を駆動する。例えば、メインエンジン10は、排気量が3000cc程度の多気筒エンジンであり、サブエンジン20は、排気量が100〜150cc程度の単気筒エンジンである。また、サブエンジン20としては、ロングストローク化や膨張比を大きくすること等により熱効率を向上させたエンジンが好適に用いられる。
【0022】
メインエンジン10には、インテークマニホールド140を介して吸気管120が接続されている。この吸気管120には、上流側からエアクリーナ100、エアフローメータ110、電子制御式スロットルバルブ130が配設されている。また、インテークマニホールド140には、燃料を噴射するインジェクタ150が取付けられている。一方、メインエンジン10には、エキゾーストマニホールド160を介して排気管170が接続されている。排気管170には、排気浄化触媒40が配設されている。排気浄化触媒40には、排気浄化触媒40の温度を検出する触媒温度センサ41が取付けられている。
【0023】
排気浄化触媒40は三元触媒であり、排気ガス中の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の酸化と、窒素酸化物(NOx)の還元を同時に行い、排気ガス中の有害ガス成分を二酸化炭素(CO)、水蒸気(HO)及び窒素(N)に清浄化するものである。
【0024】
ここで、排気浄化触媒40の酸素吸蔵作用について説明する。排気浄化触媒40は、コージェライトを主成分とするハニカム構造を有している。このハニカム構造体の表面にはアルミナ(Al2O3)やジルコニア(ZrO2)等のコート材からなる担体層が形成され、この担体層には白金−ロジウム(Pt−Rh)系の貴金属触媒物質が担持されている。
【0025】
この排気浄化触媒40は、流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比のときに未燃成分(HC,CO)を酸化し、同時に窒素酸化物(NOx)を還元する機能を有する。また、排気浄化触媒40は、上記セリア等の成分を担持することにより、流入する排気ガス中の酸素分子を吸蔵(吸着、貯蔵)及び放出する性質(酸素吸蔵機能)を有していて、この酸素吸蔵機能により、空燃比が理論空燃比からある程度ずれても、HC,CO及びNOxを浄化することができる。すなわち、排気浄化触媒40は排気空燃比がリーンとなって流入する排気ガスに過剰の酸素及び窒素酸化物NOxが多量に含まれると、過剰な酸素を吸蔵すると共に窒素酸化物NOxから酸素を奪って(NOxを還元して)酸素を吸蔵し、これによりNOxを浄化する。また、排気浄化触媒40は、排気空燃比がリッチになって流入する排気ガスに炭化水素HCや一酸化炭素CO等の未燃成分が多量に含まれると、内部に吸蔵している酸素分子をこれらの未燃成分に与えて同未燃成分を酸化し、これによりCO,HCを浄化する。
【0026】
したがって、排気浄化触媒40が酸素を吸蔵し得る限界まで酸素を吸蔵していると、排気空燃比がリーンとなったときに酸素を吸蔵することができないので、酸素吸蔵機能を利用したNOx浄化に寄与できなくなる。一方、排気浄化触媒40が酸素を放出しきっていて酸素を全く吸蔵していなければ排気空燃比がリッチとなったときに酸素を放出することができないので、酸素吸蔵機能を利用したHC,CO浄化に寄与できなくなる。
【0027】
排気管170には、メインエンジン10から排出された排気ガス中の酸素濃度に応じた信号を出力する空燃比センサ42が取付けられている。
【0028】
エアクリーナ100から吸入された空気は、電子制御式スロットルバルブ130により絞られ、インテークマニホールド140内を通り、メインエンジン10に形成された各シリンダに吸入される。シリンダ内では、吸入空気とインジェクタ150から供給された燃料との混合気が燃焼し、燃焼後の排気ガスはエキゾーストマニホールド160へ排出される。
【0029】
メインエンジン10にはトランスミッション18が接続されている。混合気が燃焼することにより発生した駆動力は、トランスミッション18へ伝達される。トランスミッション18に伝達された駆動力は、さらにディファレンシャル及びドライブシャフト等を介して駆動輪に伝達され、車両が駆動される。
【0030】
サブエンジン20には、吸気管220と排気管260が接続されている。吸気管220には、上流側からエアクリーナ200、エアフローメータ210、電子制御式スロットルバルブ230、インジェクタ250が配設されている。また、サブエンジン20には、サブエンジン20をクランキングするスタータモータ21が取付けられている。このスタータモータ21の出力軸には、ピニオンギヤが取付けられている。一方、サブエンジン20のフライホイールの外周には、ピニオンギヤと噛み合うリングギヤが形成されている。ピニオンギヤがリングギヤと噛み合わされるとともに、スタータモータ21が駆動されることによって、サブエンジン20のクランクシャフト23が回転され、サブエンジン20が始動される。
【0031】
エアクリーナ200から吸入された吸入空気は、電子制御式スロットルバルブ230により絞られてサブエンジン20に形成されたシリンダに吸入される。シリンダ内では、吸入空気とインジェクタ250から供給された燃料との混合気が燃焼し、燃焼後の排気ガスは排気管260へ排出される。排気管260は、排気浄化触媒40の上流に設けられている集合部180においてメインエンジン10の排気管170と集合されている。これにより、排気管260に排出されたサブエンジン20の排気ガスは、メインエンジン10の排気ガスと集合され、排気浄化触媒40により浄化される。
【0032】
サブエンジン20と集合部180との間には、サブエンジン20から排出された排気ガス中の酸素濃度に応じた信号を出力する空燃比センサ43が取付けられている。
【0033】
メインエンジン10のクランクシャフト12には、電磁的にその解放及び係合を行うことができる電磁クラッチ13を介してメインクランクプーリー14が接続されている。電磁クラッチ13は駆動力断続手段として機能する。電磁クラッチ13が係合された場合、メインエンジン10から出力された駆動力は、電磁クラッチ13を介してメインクランクプーリー14に伝達される。
【0034】
一方、サブエンジン20のクランクシャフト23には、サブクランクプーリー24が接続されている。サブエンジン20から出力された駆動力は、サブクランクプーリー24に伝達される。本実施形態において、サブクランクプーリー24には、大径プーリー24aと大径プーリー24aより直径の小さい小径プーリー24bとを備えたダブルプーリーを用いた。
【0035】
小径プーリー24bとメインクランクプーリー14にはベルトB1が掛けられており、ベルトB1により小径プーリー24bとメインクランクプーリー14との間、すなわちサブエンジン20とメインエンジン10との間で駆動力の伝達が行われる。
【0036】
補機30にはプーリー32が取付けられている。プーリー32にはベルトB2が掛けられており、大径プーリー24aが回転されることによりプーリー32が回転され、補機30が駆動される。なお、ベルトB2により駆動される補機30としては、オルタネータ(発電機)、ウォーターポンプ、パワーステアリングポンプ、エアコンコンプレッサ等があるが、図1においては簡単のため一の補機のみを示し、他の補機類の図示を省略した。
【0037】
メインエンジン10およびサブエンジン20の運転は、電子制御装置(以下「エンジンECU」という)50によって制御される。エンジンECU50は、演算を行うマイクロプロセッサ、このマイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAMおよびバッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM等によって構成されている。
【0038】
エンジンECU50には、上述した電磁クラッチ13、エアフローメータ110,210、電子制御式スロットルバルブ130,230、インジェクタ150,250の他、スタータモータ21に対する電力供給を断続するスタータリレー51やクランクポジションセンサなどの各種センサが接続されている。
【0039】
また、エンジンECU50は、電磁クラッチ13の解放並びに係合を行うドライバ、スタータリレー51の駆動回路、インジェクタ150,250を駆動するインジェクタドライバ、点火信号を出力する出力回路、および電子制御式スロットルバルブ130,230を開閉する電動モータを駆動するモータドライバ等を備えている。
【0040】
エンジンECU50は、後述する所定の条件が成立したときに、スタータモータ21を駆動してサブエンジン20を始動する。すなわち、スタータモータ21およびエンジンECU50は、始動手段として機能する。また、エンジンECU50は、各種センサからの出力値に基づいて、燃料噴射量や点火時期などの最適値を算出し、算出した値に基づいて、メインエンジン10およびサブエンジン20の運転を総合的に制御する。
【0041】
排気浄化触媒40は、触媒温度が所定の活性化温度(例えば300℃)以上にならないと触媒作用が発揮されない。エンジンECU50は、触媒温度センサ41により検出された触媒温度に基づいて、排気浄化触媒40が活性状態であるか否かを判断する。すなわち、触媒温度センサ41およびエンジンECU50は活性判定手段として機能する。また、エンジンECU50は、メインエンジン10の運転状態に基づいて、排気浄化触媒40内の雰囲気がリーンであるか否かを判断する。すなわち、エンジンECU50は、判断手段としても機能する。
【0042】
次に、図2を用いて、始動装置1の動作について説明する。図2は、始動装置1によるサブエンジン始動制御の処理手順(第1の制御形態)を示すフローチャートである。この処理は、エンジンECU50によって行われるものであり、車両の電源がオンされてからオフされるまでの間、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0043】
ステップS100では、サブエンジン20の始動要求が発生したか否かについての判断が行われる。ここで、サブエンジン20の始動要求が発生していない場合には、本処理から一旦抜ける。一方、サブエンジン20の始動要求が発生している場合には、ステップS102に処理が移行する。なお、例えば、サブエンジン20による補機駆動要求があったとき等に、サブエンジン20の始動要求が発生する。
【0044】
ステップS102では、排気浄化触媒40の触媒温度が所定の活性温度(例えば300℃)以上であるか否かについて、すなわち排気浄化触媒40が活性状態であるか否かについての判断が行われる。ここで、触媒温度が活性温度より低い場合、すなわち排気浄化触媒40が不活性状態である場合には、サブエンジン20を始動することなく、本処理から一旦抜ける。一方、触媒温度が活性温度以上の場合、すなわち排気浄化触媒40が活性状態である場合には、ステップS104に処理が移行する。
【0045】
ステップS104では、メインエンジン10が燃料カット運転中であるか否かについての判断が行われる。ここで、メインエンジン10が燃料カット運転中である場合には、ステップS116に処理が移行する。一方、メインエンジン10が燃料カット運転中でない場合には、ステップS106に処理が移行する。
【0046】
ステップS106では、メインエンジン10がリーン運転中であるか否かについての判断が行われる。ここで、メインエンジン10がリーン運転中である場合には、ステップS116に処理が移行する。一方、メインエンジン10がリーン運転中でない場合には、ステップS108に処理が移行する。
【0047】
ステップS108では、メインエンジン10が停止した後所定時間(例えば5分)経過したか否かについての判断が行われる。ここで、メインエンジン10停止後所定時間経過していない場合には、ステップS116に処理が移行する。一方、メインエンジン10が停止した後、所定時間経過しているときには、ステップS110に処理が移行する。
【0048】
ステップS110では、電磁クラッチ13に電力が供給され、電磁クラッチ13が係合される。電磁クラッチ13が係合されることにより、メインエンジン10から出力された駆動力が、電磁クラッチ13およびベルトB1を介してサブエンジン20に伝達される。その結果、伝達されたメインエンジン10の駆動力によってサブエンジン20が駆動される。
【0049】
続くステップS112では、電子制御式スロットルバルブ230が全開状態になるまで開弁される。このとき、サブエンジン20への燃料供給は停止されている(ステップ114)。スロットルバルブ230が全開にされると共に燃料供給がカットされた状態で、サブエンジン20が駆動されることにより、サブエンジン20は、排気浄化触媒40に空気を圧送する空気ポンプとして動作する。このように、電磁クラッチ13、ベルトB1および電子制御式スロットルバルブ230は、リーン化手段として機能する。
【0050】
ステップS104でメインエンジン10が燃料カット運転中であると判断された場合、ステップS106でメインエンジン10がリーン運転中であると判断された場合、ステップS108でメインエンジン10停止後所定時間経過していないと判断された場合、およびステップS110〜S114においてサブエンジン20によって排気浄化触媒40に空気が圧送された場合、のいずれかの場合には、ステップS116において、サブエンジン20が停止中であるか否かについての判断が行われる。ここで、サブエンジン20が稼動中である場合には、本処理から一旦抜ける。一方、サブエンジン20が停止中である場合には、ステップS118に処理が移行する。
【0051】
ステップS118では、スタータモータ21のピニオンギヤとサブエンジン20のリングギヤとが噛み合わされるとともに、スタータリレー51がオンされてスタータモータ21が駆動されることにより、サブエンジン20がクランキングされる。そして、クランキングに合わせて、燃料供給と点火とが開始され、サブエンジン20が始動される。
【0052】
本実施形態によれば、排気浄化触媒40が活性状態であり、かつメインエンジン10が燃料カット運転中である場合に、サブエンジン20が始動される。メインエンジン10が燃料カット運転中のときには、主エンジンに吸入された空気がそのまま排気浄化触媒に排出されるので、排気ガス中の酸素濃度が非常に高い。また、排気浄化触媒40の酸素吸蔵量も多い。このように、燃料カット運転中は、排気浄化触媒40内がリーン雰囲気に保持されるので、始動時にサブエンジン20から排出された排気ガス中の一酸化炭素COや炭化水素HCを充分に浄化することができる。その結果、排気エミッションの悪化を抑制しつつ補助エンジンを始動することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態によれば、排気浄化触媒40が活性状態であり、かつメインエンジン10がリーン運転中である場合に、サブエンジン20が始動される。メインエンジン10がリーン運転中のときには、排気ガス中の酸素濃度が高く、また、排気浄化触媒40の酸素吸蔵量も多い。このように、リーン運転中は、排気浄化触媒40内がリーン雰囲気に保持されるので、始動時にサブエンジン20から排出された排気ガス中の一酸化炭素COや炭化水素HCを充分に浄化することができる。その結果、排気エミッションの悪化を抑制しつつサブエンジン20を始動することが可能となる。
【0054】
さらに、本実施形態によれば、排気浄化触媒40が活性状態であり、かつメインエンジン10が停止後所定時間経過していない場合に、サブエンジン20が始動される。メインエンジン10が停止する時には、燃料供給が停止された後エンジンが惰性で回転されることによって、空気が吸入・排出される。そのため、排気浄化触媒40には充分な量の酸素が吸蔵される。このように、エンジン停止後は、排気浄化触媒40内がリーン雰囲気に保持されるので、始動時にサブエンジン20から排出された排気ガス中の一酸化炭素COや炭化水素HCを充分に浄化することができる。その結果、排気エミッションの悪化を抑制しつつサブエンジン20を始動することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態では、メインエンジン10の運転状態から排気浄化触媒40内がリーン雰囲気ではないと推定される場合には、スロットルバルブ230が全開にされると共に燃料供給がカットされた状態で、サブエンジン20が駆動される。サブエンジン20により排気浄化触媒40に空気が圧送されることにより、排気浄化触媒40内がリーン雰囲気にされる。そのため、メインエンジン10の運転状態や排気浄化触媒40の酸素吸蔵状態などに拘わらず、エミッションの悪化を抑制しつつサブエンジン20を始動することが可能となる。
【0056】
上記制御形態では、排気浄化触媒40が活性状態であり、かつ排気浄化触媒40内がリーン雰囲気であると判断されたときに、サブエンジン20を始動した。一方、排気浄化触媒40を能動的に活性化すると共に、排気浄化触媒40内の雰囲気を能動的にリーン化した後、サブエンジン20を始動することもできる。図3は、この制御形態(第2の制御形態)のフローチャートである。次に、図3を用いて、サブエンジン始動制御の第2の制御形態を説明する。
【0057】
ステップS200では、サブエンジン20の始動要求が発生したか否かについての判断が行われる。ここで、サブエンジン20の始動要求が発生していない場合には、本処理から一旦抜ける。一方、サブエンジン20の始動要求が発生している場合には、ステップS202に処理が移行する。
【0058】
ステップS202では、メインエンジン10がストイキ又はリッチ運転中であるか否かについての判断が行われる。ここで、メインエンジン10がストイキ又はリッチ運転中である場合には、ステップS204に処理が移行する。一方、メインエンジン10がストイキ又はリッチ運転中でない場合、すなわちメインエンジン10がリーン運転中である場合には、本処理から一旦抜ける。
【0059】
ステップS204では、電磁クラッチ13に電力が供給され、電磁クラッチ13が係合される。電磁クラッチ13が係合されることにより、メインエンジン10から出力された駆動力が、電磁クラッチ13およびベルトB1を介してサブエンジン20に伝達される。その結果、伝達されたメインエンジン10の駆動力によってサブエンジン20が駆動される。
【0060】
続くステップS206では、電子制御式スロットルバルブ230が全開状態になるまで開弁される。このとき、サブエンジン20への燃料供給は停止されている(ステップS208)。スロットルバルブ230が全開にされると共に燃料供給がカットされた状態で、サブエンジン20が駆動されることにより、サブエンジン20は、排気浄化触媒40に空気を圧送する空気ポンプとして動作する。
【0061】
メインエンジン10がストイキまたはリッチ運転され、サブエンジン20が空気ポンプとして動作することにより、排気浄化触媒40に炭化水素HCや一酸化炭素CO等の未燃成分と酸素とが供給される。その結果、排気浄化触媒40内において、未燃成分と酸素との酸化反応が促進され、反応熱によって排気浄化触媒40が昇温されることにより、排気浄化触媒40が活性化される。また、サブエンジン20から排気浄化触媒40に空気が供給されるので、排気浄化触媒40内の雰囲気がリーン化される。このように、電磁クラッチ13、ベルトB1および電子制御式スロットルバルブ230は、排気浄化触媒活性手段として機能する。
【0062】
次に、ステップS210では、所定時間経過したか否かについての判断が行われる。ここで、所定時間経過していない場合には、ステップS208に処理が移行し、所定時間経過するまで燃料カット運転が継続して実行される。一方、所定時間経過しているときには、ステップS212に処理が移行する。なお、この所定時間は、排気浄化触媒40が活性化され、かつ排気浄化触媒40内の雰囲気がリーン化される時間を考慮して設定される。
【0063】
上記ステップにおいて、排気浄化触媒40が活性化され、かつ排気浄化触媒40内の雰囲気がリーン化された後、ステップS212では、スタータモータ21が駆動されてサブエンジン20がクランキングされる。そして、クランキングに合わせて、燃料供給と点火とが開始され、サブエンジン20が始動される。
【0064】
本制御形態によれば、排気浄化触媒40が活性化されるとともに、排気浄化触媒40内の雰囲気がリーン化され、その後、サブエンジンが始動される。そのため、排気エミッションの悪化を抑制しつつサブエンジン20を始動することが可能となる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、電磁クラッチ13、ベルトB1および電子制御式スロットルバルブ230を用いてサブエンジン20を空気ポンプとして動作させることにより排気浄化触媒40に空気を供給したが、エアインジェクション方式やエアサクション方式の二次空気導入装置を用いてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、排気浄化触媒40の触媒温度を触媒温度センサ41により直接的に検出したが、メインエンジン10の運転状態(例えば、吸入空気量、燃料供給量、点火時期、エンジン回転数等)に基づいて触媒温度を推定することもできる。
【0067】
さらに、上記実施形態では、サブエンジン20をスタータモータ21で始動したが、メインエンジン10が稼動されているときにサブエンジン20を始動する場合には、電磁クラッチ13を係合し、メインエンジン10の駆動力によりサブエンジン20を始動してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施形態に係る始動装置を備えた内燃機関の全体構成を示す図である。
【図2】実施形態に係る始動装置による補助エンジン始動制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】実施形態に係る始動装置による補助エンジン始動制御の他の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1…始動装置、10…メインエンジン、13…電磁クラッチ、20…サブエンジン、30…補機、40…排気浄化触媒、41…触媒温度センサ、42,43…空燃比センサ、50…エンジンECU、130,230…電子制御式スロットルバルブ、160…エキゾーストマニホールド、170,260…エキゾーストパイプ、180…集合部、B1,B2…ベルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関である主エンジンと、前記主エンジンより小排気量の補助エンジンと、前記主エンジンの排気ガスと前記補助エンジンの排気ガスとを集合させる集合部を有する排気通路と、前記排気通路上の前記集合部の下流に配置される排気浄化触媒と、を備える内燃機関の始動装置において、
前記排気浄化触媒が活性状態であり、かつ前記排気浄化触媒内の雰囲気がリーンであるときに、前記補助エンジンを始動する始動手段を備えることを特徴とする内燃機関の始動装置。
【請求項2】
前記排気浄化触媒が活性状態であるか否かを判定する活性判定手段と、
前記排気浄化触媒内の雰囲気がリーンであるか否かを判断する判断手段と、を備え、
前記始動手段は、前記活性判定手段により前記排気浄化触媒が活性状態であると判定され、かつ前記判断手段により前記排気浄化触媒内の雰囲気がリーンであると判断されたときに、前記補助エンジンを始動することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の始動装置。
【請求項3】
前記判断手段は、前記主エンジンが、燃料カット運転中である場合、リーン運転中である場合またはエンジン停止後所定時間経過していない場合、のいずれかの場合に前記排気浄化触媒内の雰囲気がリーンであると判断することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の始動装置。
【請求項4】
前記判断手段により前記排気浄化触媒内の雰囲気がリーンであると判断されなかった場合に、空気を導入して前記排気浄化触媒内の雰囲気をリーンにするリーン化手段をさらに備え、
前記始動手段は、前記活性判定手段により前記排気浄化触媒が活性状態であると判定され、かつ前記リーン化手段により前記排気浄化触媒内の雰囲気がリーンにされたときに、前記補助エンジンを始動することを特徴とする請求項2又は3に記載の内燃機関の始動装置。
【請求項5】
前記主エンジンは、車両を駆動し、前記補助エンジンは、車両用補機を駆動することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の始動装置。
【請求項6】
前記排気浄化触媒を活性状態にする排気浄化触媒活性手段を備え、
前記始動手段は、前記排気浄化触媒活性手段により前記排気浄化触媒が活性状態にされた後に、前記補助エンジンを始動することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の始動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−77649(P2006−77649A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261460(P2004−261460)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】