説明

内燃機関の排気浄化システム

【課題】排気浄化装置の上流部分におけるPM堆積量と下流部分におけるPM堆積量とのそれぞれをより高い精度で推定することを目的とする。
【解決手段】本発明では、排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおける単位時間当たりのPMの付着量である単位PM付着量を内燃機関の温度に基づいてそれぞれ算出する。そして、各単位PM付着量に基づいて排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおけるPM堆積量をそれぞれ算出する。このときに、内燃機関の温度が低いほど、排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおける単位PM付着量を多く算出し、且つ、内燃機関の温度を同一とした場合、排気浄化装置の上流部分における単位PM付着量cinfrをその下流部分における単位PM付着量cinrrよりも多く算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気通路に、酸化触媒や吸蔵還元型NOx触媒等の排気浄化触媒や、排気中の粒子状物質(Particulate Matter:以下、PMと称する)を捕集するパティキュレート
フィルタを排気浄化装置として設ける技術が知られている。また、排気浄化装置として電気加熱式触媒を採用する技術も知られている。
【0003】
特許文献1には、フィルタの前後差圧に基づいてフィルタにおけるPM堆積量を推定する技術が開示されている。また、特許文献1には、フィルタへ流入する排気のNOxの作用によって、フィルタに堆積したPMが燃焼した量に相当する燃焼相当値を算出し、該燃焼相当値が閾値を超えた場合に、フィルタの前後差圧に基づくPM堆積量の推定精度が劣化したと判定することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、内燃機関の運転状態から、PMの急速燃焼の可能性があると判断した時に、スロットル弁の開度を通常時より開き側とする制御を行うとともに、EGR弁の開度を通常時より閉じ側とする制御を行うことで、フィルタに流入する排気の流量を増加させて該フィルタの温度を低下させる技術が開示されている。さらに、特許文献2には、フィルタ温度、またはフィルタの上流側と下流側との温度差に基づいて、フィルタに流入する排気の流量を増加させる制御を行った結果、PMの急速燃焼の可能性がなくなった、或いは急速燃焼が停止したと判断する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−190120号公報
【特許文献2】特開2007−211788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化装置には排気中のPMが堆積する。該PMは酸化させることで除去することができる。該排気浄化装置に堆積したPMを好適に除去するためには、排気浄化装置におけるPM堆積量を推定する必要がある。しかしながら、PMは、排気浄化装置の全体に均一に付着するわけではない。そのため、排気浄化装置におけるPM堆積量が、その上流部分と下流部分とで異なる場合がある。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、排気浄化装置の上流部分におけるPM堆積量と下流部分におけるPM堆積量とのそれぞれをより高い精度で推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおける単位時間当たりのPMの付着量である単位PM付着量を内燃機関の温度に基づいてそれぞれ算出する。そして、各単位PM付着量に基づいて排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおけるPM堆積量をそれぞれ算出する。このときに、内燃機関の温度が低いほど、排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおける単位PM付着量を多く算出し、且つ、内燃機関の温度を同一とした場合、排気浄化装置の上流部分における単位PM付着量をその下流部分における単位PM付着量
よりも多く算出する。
【0009】
より詳しくは、本発明に係る内燃機関の排気浄化システムは、
内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化装置と、
前記排気浄化装置に排気中の粒子状物質が付着し堆積する条件が成立した場合に、前記排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおける単位時間当たりの粒子状物質の付着量である単位PM付着量を内燃機関の温度に基づいてそれぞれ算出し、各単位PM付着量に基づいて前記排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおける粒子状物質の堆積量であるPM堆積量をそれぞれ算出するPM堆積量推定手段と、を備え、
前記PM堆積量推定手段が、内燃機関の温度が低いほど、前記排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおける単位PM付着量を多く算出し、且つ、内燃機関の温度を同一とした場合、前記排気浄化装置の上流部分における単位PM付着量をその下流部分における単位PM付着量よりも多く算出する。
【0010】
ここで、排気浄化装置に排気中のPMが付着し堆積する条件とは、例えば、内燃機関の始動時のように、排気の温度がPMの酸化が可能な温度よりも低いことである。このような条件が成立している場合、内燃機関の温度が低いほど、排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおける単位PM付着量が多くなる。また、排気浄化装置の上流部分は下流部分よりもPMが付着し易い。そのため、内燃機関の温度が同一であれば、排気浄化装置の上流部分における単位PM付着量はその下流部分における単位PM付着量よりも多くなる。
【0011】
そこで、本発明においては、上記を考慮して、排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおける単位PM付着量を算出する。そして、排気浄化装置の上流部分における単位PM付着量に基づいて該上流部分におけるPM堆積量を算出し、排気浄化装置の下流部分における単位PM付着量に基づいて該下流部分におけるPM堆積量を算出する。これにより、排気浄化装置の上流部分におけるPM堆積量と下流部分におけるPM堆積量とのそれぞれをより高い精度で推定することができる。
【0012】
本発明において、PM堆積量推定手段は、排気浄化装置に堆積したPMが酸化される条件が成立した場合、排気浄化装置に流入する排気の温度に基づいて排気浄化装置の上流部分における単位時間当たりのPMの酸化量である単位PM酸化量を算出し、排気浄化装置から流出する排気の温度に基づいて排気浄化装置の下流部分における単位PM酸化量を算出し、各単位PM酸化量に基づいて排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおけるPM堆積量をそれぞれ算出してもよい。
【0013】
ここで、排気浄化装置に堆積した粒子状物質が酸化される条件とは、例えば、所謂フューエルカット制御の実行中のように、排気の酸素濃度がPMの酸化が可能な濃度であることである。このような条件が成立している場合、排気浄化装置に堆積したPMが酸化されることで、PM堆積量が減少する。このとき、排気浄化装置の上流部分における単位PM酸化量は、排気浄化装置に流入する排気の温度に応じて変化し、排気浄化装置の下流部分における単位PM酸化量は、排気浄化装置から流出する排気の温度に応じて変化する。
【0014】
そこで、上記の場合、排気浄化装置に流入する排気の温度に基づいて排気浄化装置の上流部分における単位PM酸化量を算出し、排気浄化装置から流出する排気の温度に基づいて排気浄化装置の下流部分における単位PM酸化量を算出する。そして、排気浄化装置の上流部分における単位PM酸化量に基づいて排気浄化装置の上流部分におけるPM堆積量を算出し、排気浄化装置の下流部分における単位PM酸化量に基づいて排気浄化装置の下流部分におけるPM堆積量を算出する。これにより、酸化されるPMの量を考慮して、排気浄化装置の上流部分におけるPM堆積量と下流部分におけるPM堆積量とのそれぞれをより高い精度で推定することができる。
【0015】
本発明において、排気浄化装置は、発熱体、ケース、絶縁支持部材、及び内管と、を有する電気加熱式触媒であってもよい。発熱体は、通電により発熱し、発熱することで触媒を加熱する。ケースは、発熱体を収容する。絶縁支持部材は、発熱体とケースとの間に設けられ、発熱体を支持すると共に電気を絶縁する。内管は、発熱体とケースとの間に位置するように絶縁支持部材に挟み込まれた電気絶縁性を有する管状の部材であって、上流部分と下流部分とに分割されており、且つ、その上流部分の上流側の端部が絶縁支持部材の上流側の端面から排気中に突出しており、その下流部分の下流側の端部が絶縁支持部材の下流側の端面から排気中に突出している。
【0016】
この場合、排気浄化装置の上流部分とは、内管の上流部分の上流側の端部であって排気中に突出している上流側突出部のことであってもよい。また、排気浄化装置の下流部分とは、内管の下流部分の下流側の端部であって排気中に突出している下流側突出部のことであってもよい。そして、PM堆積量推定手段は、電気加熱式触媒の内管の上流側突出部と下流側突出部とにおけるPM堆積量をそれぞれ算出するものであってもよい。
【0017】
電気加熱式触媒の内管は上流部分と下流部分とに分割されている。また、内管の各突出部は電気加熱式触媒の上流側又は下流側の排気中に突出している。そのため、該内管の上流側突出部と下流側突出部との温度差及び周囲雰囲気の酸素濃度差は、触媒担体自体或いはパティキュレートフィルタ自体の上流部分と下流部分との温度差及び周囲雰囲気の酸素濃度差よりも大きくなり易い。そのため、該内管の上流側突出部と下流側突出部とではPM堆積量の差が大きくなり易い。しかしながら、このような場合であっても、本発明によれば、電気加熱式触媒の内管の上流側突出部におけるPM堆積量と下流側突出部とにおけるPM堆積量とのそれぞれをより高い精度で推定することができる。
【0018】
排気浄化装置が上記のような電気加熱式触媒である場合、本発明に係る内燃機関の排気浄化システムは、フューエルカット制御実行手段、スロットル弁、及びPM酸化促進手段をさらに備えてもよい。フューエルカット制御実行手段は、内燃機関の運転状態が減速運転となった時にフューエルカット制御を実行する。スロットル弁は、内燃機関の吸入空気量を制御する。PM酸化促進手段は、フューエルカット制御実行手段によってフューエルカット制御が実行されている時に、電気加熱式触媒の内管の各突出部に堆積したPMの酸化を促進させる。
【0019】
この場合、PM酸化促進手段は、フューエルカット制御が実行されている時に、PM堆積量推定手段によって算出される電気加熱式触媒の内管の上流側突出部におけるPM堆積量が第1所定堆積量以上であり且つ電気加熱式触媒に流入する排気の温度が所定温度以上である場合は、フューエルカット制御の実行開始時から所定期間が経過するまではスロットル弁の開度を第1所定開度に制御し、該所定期間の経過後はスロットル弁の開度を第1所定開度よりも小さい第2所定開度に制御することで、該フューエルカット制御の実行中における電気加熱式触媒の内管の上流側突出部に堆積したPMの酸化を促進させてもよい。
【0020】
また、PM酸化促進手段は、フューエルカット制御が実行されている時に、PM堆積量推定手段によって算出される電気加熱式触媒の内管の上流側突出部におけるPM堆積量が第1所定堆積量より少ないとき又は電気加熱式触媒に流入する排気の温度が所定温度より低いときであって、PM堆積量推定手段によって算出される電気加熱式触媒の内管の下流側突出部におけるPM堆積量が第2所定堆積量以上であり且つ電気加熱式触媒から流出する排気の温度が所定温度以上である場合において、電気加熱式触媒から流出する排気の空燃比が所定空燃比より低いときはスロットル弁の開度を第1所定開度に制御し、該排気の空燃比が該所定空燃比以上のときはスロットル弁の開度を第2所定開度に制御することで
、該フューエルカット制御の実行中における電気加熱式触媒の内管の下流側突出部に堆積したPMの酸化を促進させてもよい。
【0021】
フューエルカット制御の実行中は電気加熱式触媒の周囲の酸素濃度が高くなる。そのため、PMの酸化が促進され易い。そして、フューエルカット制御の実行中においてスロットル弁の開度を上記のように制御することで、電気加熱式触媒の内管の上流側突出部或いは下流側突出部に堆積したPMの酸化を促進させることができる。
【0022】
尚、上記における第1所定堆積量、第2所定堆積量、所定温度、第1所定開度、第2所定開度、及び所定空燃比は、実験等に基づいて予め定められた値である。ここで、フューエルカット制御の実行中は、電気加熱式触媒の内管の上流側突出部は、該内管の下流側突出部に比べて温度が低下し易い。そこで、該内管の上流側突出部におけるPMの酸化をより促進させるために、第1所定堆積量を第2所定堆積量よりも小さい値に設定してもよい。また、所定温度はPMの酸化が可能な温度である。また、所定空燃比は、排気の酸素濃度がPMの酸化が可能な酸素濃度となる空燃比である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、排気浄化装置の上流部分におけるPM堆積量と下流部分におけるPM堆積量とのそれぞれをより高い精度で推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例に係る内燃機関の吸排気系の概略構成を示す図である。
【図2】実施例に係るEHCの概略構成を示す図である。
【図3】実施例に係る、内燃機関の始動時において上流側PM堆積量と下流側PM堆積量とを算出する際のフローを示すフローチャートである。
【図4】内燃機関の冷却水の温度thwstと、上流側単位PM付着量cinfr及び下流側単位PM付着量cinrrとの関係を示すグラフである。
【図5】実施例に係る、フューエルカット制御の実行中において上流側PM堆積量と下流側PM堆積量とを算出する際のフローを示すフローチャートである。
【図6】実施例に係るPM酸化促進制御のフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0026】
<実施例>
[内燃機関の吸排気系の概略構成]
ここでは、本発明を車両駆動用のガソリンエンジンの排気浄化システムに適用した場合を例に挙げて説明する。ただし、本発明に係る内燃機関はガソリンエンジンに限られるものではなく、例えば、ディーゼルエンジンであってもよい。また、本発明に係る内燃機関は、電動モータと組み合わされたハイブリットシステムにおけるエンジンであってもよい。
【0027】
図1は、本実施例に係る内燃機関の吸排気系の概略構成を示す図である。内燃機関1は車両駆動用のガソリンエンジンである。内燃機関1には、吸気通路2および排気通路3が接続されている。
【0028】
吸気通路2にはエアフローメータ4及びスロットル弁5が設けられている。エアフローメータ4は内燃機関1の吸入空気量を検出する。スロットル弁5は、吸気通路2の流路断
面積を変更することで、該吸気通路2を流通する吸気の流量を制御する。
【0029】
排気通路3には、電気加熱式触媒(EHC)6が設けられている。EHC6の構成については後述する。EHC6より上流側の排気通路3には、EHC6に流入する排気(以下、流入排気と称する場合もある)の温度を検出する上流側排気温度センサ13が設けられている。EHC6より下流側には、EHC6から流出する排気(以下、流出排気と称する場合もある)の温度を検出する下流側排気温度センサ14及び該流出排気の空燃比を検出する空燃比センサ15が設けられている。
【0030】
また、内燃機関1には、該内燃機関1を制御するための電子制御ユニット(ECU)10が併設されている。ECU10には、エアフローメータ4、上流側排気温度センサ13、下流側排気温度センサ14、及び空燃比センサ15が電気的に接続されている。さらに、ECU10には、水温センサ16、クランク角センサ11及びアクセル開度センサ12が電気的に接続されている。
【0031】
水温センサ16は、内燃機関1の冷却水の温度を検出する。本実施例では、該水温センサ16によって検出される冷却水の温度を内燃機関1の温度として採用する。ただし、内燃機関1の潤滑油の温度等を内燃機関1の温度として採用してもよい。クランク角センサ11は、内燃機関1のクランク角を検出する。アクセル開度センサ12は、内燃機関1が搭載された車両のアクセル開度を検出する。
【0032】
そして、各センサの出力信号がECU10に入力される。ECU10は、クランク角センサ11の出力信号に基づいて内燃機関1の機関回転速度を導出する。また、ECU10は、アクセル開度センサ12の出力信号に基づいて内燃機関1の機関負荷を導出する。
【0033】
また、ECU10には、スロットル弁5及び内燃機関1の燃料噴射弁が電気的に接続されている。ECU10によって、これらの装置が制御される。例えば、ECU10は、内燃機関1の運転状態が減速運転となると、内燃機関1の燃料噴射弁からの燃料噴射を停止する、所謂フューエルカット制御を実行する。
【0034】
[EHCの概略構成]
図2は、EHC6の概略構成を示す図である。図2は、EHC6をその中心軸に沿って切断した断面図である。
【0035】
本実施例に係るEHC6は、触媒担体63、ケース64、マット65、内管66、及び電極67を備えている。触媒担体63は、円柱状に形成されており、その中心軸が排気通路3の中心軸Aと同軸となるように設置されている。触媒担体63には排気浄化触媒61が担持されている。排気浄化触媒61としては、酸化触媒、三元触媒、吸蔵還元型NOx触媒、及び選択還元型NOx触媒等を例示することができる。
【0036】
触媒担体63は、通電されると電気抵抗となって発熱する材料によって形成されている。触媒担体63の材料としては、SiCを例示することができる。触媒担体63は、排気の流れる方向(すなわち、中心軸Aの方向)に伸び且つ排気の流れる方向と垂直な断面がハニカム状をなす複数の通路を有している。この通路を排気が流通する。尚、中心軸Aと直交する方向の触媒担体63の断面形状は楕円形等であっても良い。中心軸Aは、排気通路3、触媒担体63、内管66、及びケース64で共通の中心軸である。
【0037】
触媒担体63はケース64に収容されている。ケース64内には電極室69が形成されている。触媒担体63には、該電極室69を通して左右方向から一対の電極67が接続されている。電極67にはバッテリ(図示せず)から電気が供給される。電極67に電気が
供給されると、触媒担体63に通電される。通電によって触媒担体63が発熱すると、触媒担体63に担持された排気浄化触媒61が加熱され、その活性化が促進される。
【0038】
ケース64は、金属によって形成されている。ケース64を形成する材料としては、ステンレス鋼材を例示することができる。ケース64は、中心軸Aと平行な曲面を含んで構成される収容部64aと、該収容部64aよりも上流側及び下流側で該収容部64aと排気通路3とを接続するテーパ部64b,64cと、を有している。収容部64aの通路断面積は排気通路3の通路断面積よりも大きくなっており、その内側に、触媒担体63、マット65、及び内管66が収容されている。テーパ部64b,64cは、収容部64aから離れるに従って通路断面積が縮小するテーパ形状をしている。
【0039】
ケース64の収容部64aの内壁面と触媒担体63の外周面との間にはマット65が挟み込まれている。つまり、ケース64内において、触媒担体63がマット65によって支持されている。また、マット65には内管66が挟み込まれている。内管66は、中心軸Aを中心とした管状の部材である。マット65が、内管66を挟み込むことで、該内管66によってケース64側と触媒担体63側とに分割されている。
【0040】
マット65は、電気絶縁材によって形成されている。マット65を形成する材料としては、アルミナを主成分とするセラミックファイバーを例示することができる。マット65は、触媒担体63の外周面及び内管66の外周面に巻きつけられている。また、マット65は、上流部分65aと下流部分65bとに分割されており、該上流部分65aと下流部分65bとの間には空間が形成されている。マット65が、触媒担体63とケース64との間に挟み込まれていることで、触媒担体63に通電したときに、ケース64へ電気が流れることが抑制される。
【0041】
内管66は、その本体がステンレス鋼材によって形成されており、さらに本体の表面全体がセラミック又はガラス等によって形成された電気絶縁層で覆われている。尚、内管66の本体をアルミナ等の電気絶縁材によって形成してもよい。
【0042】
また、図1に示すように、内管66は、上流部分と下流部分とに分割されている。そして、内管66の上流部分はマット65の上流部分65aに挟み込まれており、内管66の下流部分はマット65の下流部分65bに挟み込まれている。また、内管66の上流部分の上流側端部はマット65の上流部分65aの上流側端面から排気中に突出しており、内管66の下流部分の下流側端部はマット65の下流部分65bの下流側端面から排気中に突出している。以下、内管66の上流部分におけるマット65の上流部分65aの上流側端面から突出している部分66aを上流側突出部66aと称し、内管66の下流部分におけるマット65の下流部分65bの下流側端面から突出している部分66bを下流側突出部66bと称する。
【0043】
ケース64には、電極67を通すために、貫通孔64dが開けられている。そして、ケース64内における、マット65の上流部分65aと下流部分65bとの間の空間によって、電極室69が形成されている。つまり、本実施例においては、マット65の上流部分65aと下流部分65bとの間における触媒担体63の外周面全周にわたって電極室69が形成される。ケース64に開けられている貫通孔64dには、電極67を支持する電極支持部材8が設けられている。この電極支持部材8は電気絶縁材によって形成されており、ケース64と電極67との間に隙間なく設けられている。
【0044】
EHC6において、上記のように、内管66が上流側突出部66a及び下流側突出部66bを有する構成とすることで、ケース64の内壁面を流れてマット65に到達した凝縮水が、該マット65の上流部分65aの上流側端面又は下流部分65bの下流側端面を伝
って触媒担体63にまで至ることが抑制される。従って、マット65の端面において、触媒担体63とケース64との間が凝縮水によって短絡することが抑制される。
【0045】
[PM堆積量の推定]
しかしながら、内管66を上記のような構成とすると、内管66の突出部66a,66bに排気中のPMが付着する。その結果、内管66の突出部66a,66bにPMが堆積すると、触媒担体63とケース64との間が該PMによって短絡する虞がある。
【0046】
このようなPMによる触媒担体63とケース64との間の短絡を抑制するためには、内管66の突出部66a,66bに堆積したPMを除去する必要がある。そして、該PMの除去を好適に行うためには、内管66の突出部66a,66bにおけるPM堆積量を推定する必要がある。ただし、内管66の上流側突出部66aと下流側突出部66bとに均一にPMが付着するわけではない。そのため、内管66の上流側突出部66aと下流側突出部66bとにおけるPM堆積量が異なる場合がある。そこで、本実施例においては、内管66の上流側突出部66aと下流側突出部66bとにおけるPM堆積量を別々に推定する。
【0047】
ここで、内燃機関1の始動時は、機関温度が低いため、内燃機関1からPMが排出され易い。また、排気温度も低いためPMが酸化され難い。そのため、内管66の各突出部66a,66bに付着したPMが堆積することとなる。図3は、このような内燃機関1の始動時において、内管66の上流側突出部66aと下流側突出部66bとにおけるPM堆積量を算出する際のフローを示すフローチャートである。本フローは、ECU10に記憶されており、ECU10によって繰り返し実行される。
【0048】
本フローでは、先ずステップS101において、内燃機関1の始動時であるか否かが判別される。ここでは、内燃機関1が始動されてから所定時間が経過するまでの期間を、内燃機関1の始動時とする。また、内燃機関1が始動されてから冷却水の温度が所定温度に達するまでの期間を、内燃機関1の始動時としてもよい。
【0049】
ステップS101において内燃機関1の始動時ではないと判断された場合、本フローの実行は一旦終了される。一方、ステップS101において内燃機関1の始動時であると判定された場合、次にステップS102において、内燃機関1の運転状態、即ち内燃機関1の機関負荷Qeと機関回転速度Neが算出される。次に、ステップS103において、水温センサ16によって検出される内燃機関1の冷却水の温度thwstが読み込まれる。
【0050】
次に、ステップS104において、内燃機関1の運転状態及び冷却水の温度thwstに基づいて、内管66の上流側突出部66aにおける単位時間当たりのPM付着量(以下、上流側単位PM付着量と称する)cinfrと内管66の下流側突出部66bにおける単位時間当たりのPM付着量(以下、下流側単位PM付着量と称する)cinrrとがそれぞれ算出される。
【0051】
ここで、内燃機関1の冷却水の温度thwstと、上流側単位PM付着量cinfr及び下流側単位PM付着量cinrrとの関係について、図4に示すグラフに基づいて説明する。図4において、横軸は内燃機関1の冷却水の温度thwstを表しており、縦軸は単位PM付着量cinを表している。また、図4において、実線は上流側単位PM付着量cinfrを示しており、破線は下流側単位PM付着量cinrrを示している。
【0052】
内燃機関1の冷却水の温度thwstの温度が低いほど、即ち内燃機関1の温度が低いほど、内燃機関1の運転状態を同一とした場合に排気に含まれるPMの量は多くなる。その結果、図4に示すように、内燃機関1の冷却水の温度thwstの温度が低いほど、各
単位PM付着量cinfr,cinrrはいずれも多くなる。
【0053】
また、EHC6の触媒担体63に流入した排気中のPMの一部は、該触媒担体63にトラップされる。そのため、EHC6から流出する排気中のPM量は、EHC6に流入する排気中のPM量に比べて少ない。従って、図4に示すように、内燃機関1の冷却水の温度thwstを同一とした場合、下流側単位PM付着量cinrrは上流側単位PM付着量cinfrよりも少なくなる。
【0054】
図4に示すような、内燃機関1の冷却水の温度thwstと、上流側単位PM付着量cinfr及び下流側単位PM付着量cinrrとの関係は、実験等に基づいて予め求められており、マップ又は関数としてECU10に記憶されている。ステップS104においては、該マップ又は関数を用いて、上流側単位PM付着量cinfr及び下流側単位PM付着量cinrrがそれぞれ算出される。
【0055】
次に、ステップS105において、内管66の上流側突出部66aにおけるPM堆積量(以下、上流側PM堆積量と称する)TCinfrが、上流側単位PM付着量cinfrに基づいて算出される。また、内管66の下流側突出部66bにおけるPM堆積量(以下、下流側PM堆積量と称する)TCinrrが、下流側単位PM付着量cinrrに基づいて算出される。具体的には、内燃機関1が始動された時点から、上流側単位PM付着量cinfrが積算されることで上流側PM堆積量TCinfrが算出され、下流側単位PM付着量cinrrを積算されることで下流側PM堆積量TCinrrが算出される。
【0056】
上記フローによれば、内燃機関1の始動時における上流側PM堆積量TCinfrと下流側PM堆積量TCinrrとのそれぞれを高精度で推定することができる。尚、本フローにおける上流側PM堆積量及び下流側PM堆積量の推定方法は、内燃機関1の始動時に以外にも、内燃機関1の温度が低下することで排気の温度も低下し、内管66の各突出部66a,66bに付着したPMが堆積することとなる条件が成立した場合に適用することができる。
【0057】
また、ECU10によってフューエルカット制御が実行されている時は、EHC6に供給される排気の酸素濃度が高くなるため、該排気の温度が十分に高ければ、内管66の各突出部66,66bに堆積したPMが酸化される。図5は、このようなフューエルカット制御の実行中において、内管66の上流側突出部66aと下流側突出部66bとにおけるPM堆積量を算出する際のフローを示すフローチャートである。本フローは、ECU10に記憶されており、ECU10によって繰り返し実行される。
【0058】
本フローでは、先ずステップS201において、フューエルカット制御の実行中であるか否かが判別される。ステップS101においてフューエルカット制御の実行中ではないと判定された場合、本フローの実行は一旦終了される。一方、ステップS201においてフューエルカット制御の実行中であると判定された場合、次にステップS202において、上流側排気温度センサ13によって検出される流入排気の温度tcatin及び下流側排気温度センサ14によって検出される流出排気の温度tcatoutが読み込まれる。流入排気の温度tcatinは、即ち内管66の上流側突出部66aの周囲雰囲気の温度であり、流出排気の温度tcatoutは、即ち内管66の下流側突出部66bの周囲雰囲気の温度である。
【0059】
次に、ステップS203において、流入排気の温度tcatinが所定温度tcat0以上であるか否かが判別される。ここで、所定温度tcat0とは、PMの酸化が可能な温度であって、実験等に基づいて予め定められた温度である。ステップS203において流入排気の温度tcatinが所定温度tcat0以上であると判定された場合、次にス
テップS204において、流入排気の温度tcatinに基づいて、内管66の上流側突出部66aにおける単位時間当たりのPMの酸化量(以下、上流側単位PM酸化量と称する)coutfrが算出される。ここでは、流入排気の温度tcatinが高いほど、上流側単位PM酸化量coutfrは多く算出される。流入排気の温度tcatinと上流側単位PM酸化量coutfrとの関係は、実験等に基づいて予め求められており、マップ又は関数としてECU10に記憶されている。ステップS204においては、該マップ又は関数を用いて、上流側単位PM酸化量coutfrが算出される。
【0060】
一方、ステップS203において流入排気の温度tcatinが所定温度tcat0より低いと判定された場合、次にステップS207において、流出排気の空燃比(即ち内管66の下流側突出部66bの周囲雰囲気の空燃比である)Rafrrが所定空燃比Raf0以上である否かが判別される。ここで、所定空燃比Raf0とは、排気の酸素濃度がPMの酸化が可能な濃度となる空燃比であって、実験等に基づいて予め定められた空燃比である。
【0061】
ステップS207において流出排気の空燃比Rafrrが所定空燃比Raf0以上であると判定された場合、次に、流出排気の温度tcatoutが所定温度tcat0以上であるか否かが判別される。ここで、フューエルカット制御が実行されると、内燃機関1から排出される排気の温度が低下する。その結果、流入排気の温度が低下する。しかし、流入排気の温度が低下しても、触媒担体63に担持された排気浄化触媒61における酸化反応によって生じる熱によって、EHC6を通過する排気が加熱される。そのため、流入排気の温度tcatinが所定温度tcat0より低い場合であっても、流出排気の温度tcatoutが所定温度tcat0以上の場合がある。
【0062】
そして、ステップS208において流出排気の温度tcatoutが所定温度tcat0以上と判定された場合、次にステップS209において、流出排気の温度tcatoutに基づいて、内管66の下流側突出部66bにおける単位時間当たりのPMの酸化量(以下、下流側単位PM酸化量と称する)coutrrが算出される。ここでは、流出排気の温度tcatoutが高いほど、下流側単位PM酸化量coutrrは多く算出される。流出排気の温度tcatoutと下流側単位PM酸化量coutrrとの関係は、実験等に基づいて予め求められており、マップ又は関数としてECU10に記憶されている。ステップS209においては、該マップ又は関数を用いて、下流側単位PM酸化量coutrrが算出される。
【0063】
ステップS204において上流側単位PM酸化量coutfrが算出されると、次に、ステップS205において上流側PM堆積量TCinfrが上流側単位PM酸化量coutfrに基づいて算出される。具体的には、フューエルカット制御の実行開始時の上流側PM堆積量から、該フューエルカット制御の実行開始時からの上流側単位PM酸化量coutfrの積算値を減算することで、現時点の上流側PM堆積量TCinfrが算出される。
【0064】
次に、ステップS206において、流出排気の空燃比Rafrrが所定空燃比Raf0より低いか否かが判別される。ステップS206において流出排気の空燃比Rafrrが所定空燃比Raf0より低いと判定された場合、現状では内管66の下流側突出部66bに堆積したPMは酸化されないと判断できる。この場合、本フローの実行が一旦終了される。一方、ステップS206において流出排気の空燃比Rafrrが所定空燃比Rafより低くない、即ち所定空燃比Raf0以上であると判定された場合、次にステップS208の処理が実行される。
【0065】
また、ステップS209において下流側単位PM酸化量coutrrが算出されると、
次に、ステップS210において下流側PM堆積量TCinrrが下流側単位PM酸化量coutrrに基づいて算出される。具体的には、フューエルカット制御の実行開始時の下流側PM堆積量から、該フューエルカット制御の実行開始時からの下流側単位PM酸化量coutrrの積算値を減算することで、現時点の下流側PM堆積量TCinrrが算出される。
【0066】
上記フローによれば、フューエルカット制御の実行中における上流側PM堆積量TCinfrと下流側PM堆積量TCinrrとのそれぞれを高精度で推定することができる。尚、本フローにおける上流側PM堆積量及び下流側PM堆積量の推定方法は、フューエルカット制御の実行時に以外にも、排気の酸素濃度が上昇することで、内管66の各突出部66a,66bに堆積したPMが酸化されることとなる条件が成立した場合に適用することができる。
【0067】
また、上記のような内燃機関の始動時或いはフューエルカット制御の実行中における上流側PM堆積量及び下流側PM堆積量の推定方法は、EHCの内管の上流側突出部及び下流側突出部におけるPM堆積量の推定以外にも適用することができる。つまり、通常の排気浄化触媒やパティキュレートフィルタ等の排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおけるPM堆積量は、内燃機関の始動時或いはフューエルカット制御の実行中において、排気の温度或いは空燃比に対して、EHCの内管の上流側突出部及び下流側突出部におけるPM堆積量と同様に推移する。従って、通常の排気浄化触媒やパティキュレートフィルタ等の排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおけるPM堆積量を別々に推定する場合にも上記のような推定方法を適用することができる。
【0068】
[PM酸化促進制御]
本実施例では、上記のような方法によって推定されたEHC6の内管66の各突出部66a、66bにおけるPM堆積量がある程度の量に達した場合、PMの酸化を促進させるためのPM酸化促進制御を実行する。本実施例に係るPM酸化促進制御は、フューエルカット制御の実行中においてスロットル弁5の開度を調整することで実現される。上述したように、フューエルカット制御が実行されている時は、EHC6に供給される排気の酸素濃度が高くなるため、PMが酸化され易い。この時に、スロットル弁5の開度を調整することによって排気の流量を制御することで、上流側突出部66aに堆積したPM又は下流側突出部66bに堆積したPMそれぞれの酸化を促進させることができる。
【0069】
以下、本実施例に係るPM酸化促進制御のフローについて図6に示すフローチャートに基づいて説明する。本フローは、ECU10に予め記憶されており、ECU10によって繰り返し実行される。
【0070】
本フローでは、先ずステップS301において、フューエルカット制御の実行中であるか否かが判別される。ステップS301においてフューエルカット制御の実行中ではないと判定された場合、本フローの実行は一旦終了される。一方、ステップS301においてフューエルカット制御の実行中であると判定された場合、次にステップS302において、上流側排気温度センサ13によって検出される流入排気の温度tcatin及び下流側排気温度センサ14によって検出される流出排気の温度tcatoutが読み込まれる。
【0071】
次に、ステップS303において、上記のような方法によって推定された上流側PM堆積量TCinfr及び下流側PM堆積量TCinrrが読み込まれる。次に、ステップS304において、上流側PM堆積量TCinfrが第1所定堆積量TCin1以上であるか否かが判別される。ここで、第1所定堆積量TCin1は、内管66の上流側突出部66aに堆積したPMの酸化の促進を実行する閾値であって、実験等に基づいて予め定められた値である。
【0072】
ステップS304において上流側PM堆積量TCinfrが第1所定堆積量TCin1以上であると判定された場合、次にステップS305において、流入排気の温度tcatinが所定温度tcat0以上であるか否かが判別される。上述したように、所定温度tcat0は、PMの酸化が可能な温度であって、実験等に基づいて予め定められた温度である。
【0073】
ステップS305において流入排気の温度tcatinが所定温度tcat0以上であると判定された場合、次にステップS306において、フューエルカット制御の実行開始から所定時間Δt0が経過したか否かが判別される。ステップS306においてフューエルカット制御の実行開始から所定時間Δt0が経過していないと判定された場合、次にステップS311において、スロットル弁5の開度Dthが第1所定開度Dth1に制御される。一方、ステップS306においてフューエルカット制御の実行開始から所定時間Δt0が経過したと判定された場合、次にステップS307において、スロットル弁5の開度Dthが第1所定開度よりも小さい第2所定開度Dth2に制御される。
【0074】
ここで、第1所定開度Dth1は、フューエルカット制御の実行が開始された時点のスロットル弁5の開度であってもよい。また、第1所定開度Dth1及び第2所定開度Dth2が、フューエルカット制御の実行時のスロットル弁5の開度として、それぞれ実験等に基づいて予め定められていてもよい。
【0075】
スロットル弁5の開度Dthを第1所定開度Dth1に制御した場合、スロットル弁5の開度Dthを第2所定開度Dth2に制御した場合に比べて、排気の流量が多くなる。その結果、EHC6に供給される酸素量が多くなるため、PMの酸化が促進されることとなる。しかしながら、フューエルカット制御の実行中は排気の温度が低い。そのため、排気による持ち去り熱量が多くなるため、EHC6の温度、特にその上流部分の温度が低下し易い。その結果、内管66の上流側突出部66aの温度が過剰に低下すると、該上流側突出部66aに堆積したPMの酸化が促進され難くなる。
【0076】
そこで、本フローでは、フューエルカット制御の実行開始から所定時間Δt0が経過すると、スロットル弁5の開度Dthが第1所定開度Dth1から第2所定開度Dth2に低減される。スロットル弁5の開度が低減されると、排気の流量が減少する。さらに、内燃機関1から排出される排気の温度(即ち、流入排気の温度)の温度の低下速度を抑制できる。従って、内管66の上流側突出部66aの温度の過剰な低下を抑制することができる。その結果、該上流側突出部66aに堆積したPMの酸化をさらに促進することができる。
【0077】
尚、所定時間Δt0は、実験等に基づいて予め定められた時間である。該所定時間Δt0を、スロットル弁5の開度Dthが第1所定開度Dth1である状態がそれ以上継続すると、内管66の上流側突出部66aの温度が過剰に低下する可能性があると判断できる閾値としてもよい。
【0078】
一方、ステップS304において上流側PM堆積量TCinfrが第1所定堆積量TCin1より少ないと判定された場合、又は、ステップS305において流入排気の温度tcatinが所定温度tcat0より低いと判定された場合、次にステップS308の処理が実行される。ステップS308においては、下流側PM堆積量TCinrrが第2所定堆積量TCin2以上であるか否かが判別される。ここで、第2所定堆積量TCin2は、内管66の下流側突出部66bに堆積したPMの酸化の促進を実行する閾値であって、実験等に基づいて予め定められた値である。
【0079】
第1所定堆積量TCin1と第2所定堆積量TCin2とは同一の値であってもよい。しかしながら、上述したように、フューエルカット制御の実行中はEHC6の上流部分はその下流部分に比べて温度が低下し易い。そのため、内管66の上流側突出部66aに堆積したPMは、その下流側突出部66bに堆積したPMに比べて酸化が促進され難い。そこで、第1所定堆積量TCin1を第2所定堆積量TCin2よりも小さい値に設定してもよい。これによれば、上流側突出部66aに堆積したPMの酸化をより促進させることができる。
【0080】
ステップS308において下流側PM堆積量TCinrrが第2所定堆積量TCin2以上であると判定された場合、次にステップS309において、流出排気の温度tcatoutが所定温度tcat0以上であるか否かが判別される。ステップS308において下流側PM堆積量TCinrrが第2所定堆積量TCin2より少ないと判定された場合、又は、ステップS309において流出排気の温度tcatoutが所定温度tcat0より低いと判定された場合、次にステップS311において、スロットル弁5の開度Dthが第1所定開度Dth1に制御される。
【0081】
ステップS309において流出排気の温度tcatoutが所定温度tcat0以上であると判定された場合、次に、ステップS310において、流出排気の空燃比Rafrrが所定空燃比Raf0以上である否かが判別される。上述したように、所定空燃比Raf0は、排気の酸素濃度がPMの酸化が可能な濃度となる空燃比であって、実験等に基づいて予め定められた空燃比である。
【0082】
ステップS309において流出排気の空燃比Rafrrが所定空燃比Raf0より低いと判定された場合、次にステップS311において、スロットル弁5の開度Dthが第1所定開度Dth1に制御される。この場合、スロットル弁5の開度Dthを第2所定開度Dth2に制御した場合に比べて、EHC6を通過する排気の流量が多くなる。そのため、内管66の下流側突出部66bにより多くの酸素を供給することができる。その結果、流出排気の空燃比Rafrrが低い状態であっても、下流側突出部66bに堆積したPMの酸化を促進することができる。
【0083】
一方、ステップS309において流出排気の空燃比Rafrrが所定空燃比Raf0以上であると判定された場合、下流側突出部66bに堆積したPMを酸化するための酸素は十分に供給されていると判断できる。そのため、この場合は、次にステップS307において、スロットル弁5の開度Dthが第2所定開度Dth2に制御される。この場合、スロットル弁5の開度Dthを第1所定開度Dth1に制御した場合に比べて、EHC6を通過する排気の流量が少なくなる。そのため、排気による持ち去り熱量が減少するため、下流側突出部66bの温度の低下を抑制することができる。その結果、下流側突出部66bに堆積したPMの酸化を促進することができる。
【0084】
本フローによれば、上流側突出部66aに堆積したPMの酸化を優先させる条件が成立したときには該上流側突出部66aに堆積したPMの酸化を優先して促進させることができ、また、下流側突出部66bに堆積したPMの酸化を優先させる条件が成立したときには該下流側突出部66bに堆積したPMの酸化を優先して促進させることができる。
【0085】
また、各突出部66a,66bに堆積したPMを酸化させる場合に、その周囲雰囲気の温度や酸素濃度が好適に制御されることとなるため、該PMの酸化をより促進させることができる。
【符号の説明】
【0086】
1・・・内燃機関
2・・・吸気通路
3・・・排気通路
4・・・エアフローメータ
5・・・スロットル弁
6・・・電気加熱式触媒(EHC)
61・・排気浄化触媒
63・・触媒担体
64・・ケース
65・・マット
66・・内管
66a・・上流側突出部
66b・・下流側突出部
10・・ECU
11・・クランク角センサ
12・・アクセル開度センサ
13・・上流側排気温度センサ
14・・下流側排気温度センサ
15・・空燃比センサ
16・・水温センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化装置と、
前記排気浄化装置に排気中の粒子状物質が付着し堆積する条件が成立した場合に、前記排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおける単位時間当たりの粒子状物質の付着量である単位PM付着量を内燃機関の温度に基づいてそれぞれ算出し、各単位PM付着量に基づいて前記排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおける粒子状物質の堆積量であるPM堆積量をそれぞれ算出するPM堆積量推定手段と、を備え、
前記PM堆積量推定手段が、内燃機関の温度が低いほど、前記排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおける単位PM付着量を多く算出し、且つ、内燃機関の温度を同一とした場合、前記排気浄化装置の上流部分における単位PM付着量をその下流部分における単位PM付着量よりも多く算出する内燃機関の排気浄化システム。
【請求項2】
前記PM堆積量推定手段が、前記排気浄化装置に堆積した粒子状物質が酸化される条件が成立した場合に、前記排気浄化装置に流入する排気の温度に基づいて前記排気浄化装置の上流部分における単位時間当たりの粒子状物質の酸化量である単位PM酸化量を算出し、前記排気浄化装置から流出する排気の温度に基づいて前記排気浄化装置の下流部分における単位PM酸化量を算出し、各単位PM酸化量に基づいて前記排気浄化装置の上流部分と下流部分とにおけるPM堆積量をそれぞれ算出する請求項1に記載の内燃機関の排気浄化システム。
【請求項3】
前記排気浄化装置が、
通電により発熱し、発熱することで触媒を加熱する発熱体と、
前記発熱体を収容するケースと、
前記発熱体と前記ケースとの間に設けられ、前記発熱体を支持すると共に電気を絶縁する絶縁支持部材と、
前記発熱体とケースとの間に位置するように前記絶縁支持部材に挟み込まれた電気絶縁性を有する管状の部材であって、上流部分と下流部分とに分割されており、且つ、その上流部分の上流側の端部が前記絶縁支持部材の上流側の端面から排気中に突出しており、その下流部分の下流側の端部が前記絶縁支持部材の下流側の端面から排気中に突出している内管と、を有する電気加熱式触媒であって、
前記排気浄化装置の上流部分とは、前記内管の上流部分の上流側の端部であって排気中に突出している上流側突出部のことであり、
前記排気浄化装置の下流部分とは、前記内管の下流部分の下流側の端部であって排気中に突出している下流側突出部のことであり、
前記PM堆積量推定手段が、前記電気加熱式触媒の前記内管の上流側突出部と下流側突出部とにおけるPM堆積量をそれぞれ算出するものである請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化システム。
【請求項4】
内燃機関の運転状態が減速運転となった時にフューエルカット制御を実行するフューエルカット制御実行手段と、
内燃機関の吸入空気量を制御するスロットル弁と、
前記フューエルカット制御実行手段によってフューエルカット制御が実行されている時に、前記電気加熱式触媒の前記内管の各突出部に堆積した粒子状物質の酸化を促進させるPM酸化促進手段と、をさらに備え、
前記PM酸化促進手段が、フューエルカット制御が実行されている時に、前記PM堆積量推定手段によって算出される前記電気加熱式触媒の前記内管の上流側突出部におけるPM堆積量が第1所定堆積量以上であり且つ前記電気加熱式触媒に流入する排気の温度が所定温度以上である場合は、フューエルカット制御の実行開始時から所定期間が経過するまでは前記スロットル弁の開度を第1所定開度に制御し、該所定期間の経過後は前記スロッ
トル弁の開度を前記第1所定開度よりも小さい第2所定開度に制御することで、該フューエルカット制御の実行中における前記電気加熱式触媒の前記内管の上流側突出部に堆積したPMの酸化を促進させ、さらに、フューエルカット制御が実行されている時に、前記PM堆積量推定手段によって算出される前記電気加熱式触媒の前記内管の上流側突出部におけるPM堆積量が前記第1所定堆積量より少ないとき又は前記電気加熱式触媒に流入する排気の温度が前記所定温度より低いときであって、前記PM堆積量推定手段によって算出される前記電気加熱式触媒の前記内管の下流側突出部におけるPM堆積量が第2所定堆積量以上であり且つ前記電気加熱式触媒から流出する排気の温度が前記所定温度以上である場合において、前記電気加熱式触媒から流出する排気の空燃比が所定空燃比より低いときは前記スロットル弁の開度を前記第1所定開度に制御し、該排気の空燃比が該所定空燃比以上のときは前記スロットル弁の開度を前記第2所定開度に制御することで、該フューエルカット制御の実行中における前記電気加熱式触媒の前記内管の下流側突出部に堆積したPMの酸化を促進させる請求項3に記載の内燃機関の排気浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−2331(P2013−2331A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133076(P2011−133076)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】