説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】硫化水素を確実に処理することが可能な内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】上記の内燃機関の排気浄化装置は、第1の触媒と第2の触媒とを備える。第1の触媒は、硫黄酸化物を吸蔵するとともに還元する触媒である。第2の触媒は、排気通路上における第1の触媒の下流側に設けられ酸化機能を有する触媒である。さらに、内燃機関の排気浄化装置は、調整手段と制御手段とを備える。調整手段は、第2の触媒を通過する排気ガスの空燃比及び第2の触媒の触媒温度を調整可能な手段である。制御手段は、調整手段を用いて、第2の触媒を通過する排気ガスを内燃機関のリーン燃焼時のリーン空燃比よりも低いリーン空燃比にするとともに第2の触媒の触媒温度を第1の所定温度まで昇温するリーン制御を行う。これにより、第1の触媒において生成された硫化水素を、第2の触媒において硫黄酸化物へと確実に酸化して放出させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化を行う内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気通路上に硫黄酸化物(SOx)を吸蔵する触媒を用いた排気浄化装置が提案されている。このような排気浄化装置では、排気ガスの空燃比がリーンの時にはSOxを吸蔵する一方、触媒の温度が硫黄分離脱離温度(例えば600℃以上)に昇温され、かつ、排気ガスの空燃比が理論空燃比(ストイキ)またはリッチになったときに吸蔵したSOxを離脱させる作用を有する。
【0003】
ところが、上述の作用を利用することにより吸蔵したSOxを離脱させる硫黄再生制御が行われると、触媒に吸蔵されていたSOxの一部が離脱されると共に還元され、硫化水素(HS)となる場合がある。この硫化水素は、臭気を有するため、そのまま外部へ放出するのは好ましくない。
【0004】
このような問題に対し、以下の特許文献1には、硫黄酸化物を吸蔵する触媒の下流側の排気通路に酸化機能を有する触媒を配置し、硫黄再生制御が行われる時に、酸化機能を有する触媒を通過する排気ガスの空燃比が僅かにリーンとなるように制御する技術が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−92431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、硫黄再生制御が行われる際、硫黄酸化物を吸蔵する触媒を通過する排気ガスの空燃比をリッチにしたり、硫黄酸化物を吸蔵する触媒の触媒温度を高くしたりすると、硫化水素の放出速度が速くなるため、硫黄酸化物を吸蔵する触媒の下流側の排気通路に配置された酸化機能を有する触媒では、硫化水素を酸化しきれなくなる恐れがある。また、硫黄酸化物を吸蔵する触媒の触媒温度を高くした場合には、硫化水素だけでなく、白煙も発生してしまう可能性がある。そのため、特許文献1に記載の技術では、硫化水素や白煙の発生を考慮した硫黄再生制御を行う必要があり、結果として、硫黄再生制御を完了するのに時間がかかってしまう。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、硫黄酸化物を吸蔵する触媒より放出される硫化水素の放出速度が速くなった場合であっても、下流側の排気通路に配置された酸化機能を有する触媒で硫化水素を確実に酸化することが可能な内燃機関の排気浄化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの観点では、排気通路上に設けられ硫黄酸化物を吸蔵するとともに還元する第1の触媒と、前記排気通路上における前記第1の触媒の下流側に設けられ酸化機能を有する第2の触媒と、を備えた内燃機関の排気浄化装置は、前記第2の触媒を通過する排気ガスの空燃比及び前記第2の触媒の触媒温度を調整可能な調整手段と、前記第1の触媒に吸蔵された硫黄を還元する硫黄再生制御の実施の前後において、前記調整手段を用いて、前記第2の触媒を通過する排気ガスを内燃機関のリーン燃焼時のリーン空燃比よりも低いリーン空燃比にするとともに前記第2の触媒の触媒温度を第1の所定温度まで昇温するリーン制御を行う制御手段を備える。
【0009】
上記の内燃機関の排気浄化装置は、第1の触媒と第2の触媒とを備える。第1の触媒は、排気通路上に設けられ、硫黄酸化物を吸蔵するとともに還元する触媒である。第2の触媒は、排気通路上における第1の触媒の下流側に設けられ、酸化機能を有する触媒である。さらに、内燃機関の排気浄化装置は、調整手段と制御手段とを備える。調整手段は、第2の触媒を通過する排気ガスの空燃比及び第2の触媒の触媒温度を調整可能な、例えば還元剤添加弁などの手段である。制御手段は、例えばECU(Electric Control Unit)であり、調整手段を用いて、第2の触媒を通過する排気ガスを内燃機関のリーン燃焼時のリーン空燃比よりも低いリーン空燃比にするとともに第2の触媒の触媒温度を第1の所定温度まで昇温するリーン制御を行う。硫黄再生制御の実施前において前記リーン制御を行うことにより、第2の触媒への酸素吸着量を増加させることができる。これにより、硫化水素を酸化させるのに必要な酸素を硫黄再生制御の実施前に予め増加させることができる。また、硫黄再生制御の実施後において前記リーン制御を行うことにより、硫黄再生制御の実施時やリーン制御移行直後において第1の触媒で生成された硫化水素を第2の触媒で確実に酸化させることができる。本発明によれば、第1の触媒より放出される硫化水素の放出速度が速くなった場合であっても、当該硫化水素を、第2の触媒において硫黄酸化物へと確実に酸化して放出させることができる。
【0010】
上記の内燃機関の排気浄化装置の好適な実施例は、前記第1の所定温度は、前記第2の触媒の活性温度よりも高い温度である。
【0011】
上記の内燃機関の排気浄化装置の好適な実施例は、前記第1の所定温度は、前記硫黄再生制御の実施時における前記第1の触媒を通過する排気ガスの空燃比または排気ガスの温度に応じて設定される。
【0012】
上記の内燃機関の排気浄化装置の好適な実施例は、前記調整手段は、前記第1の触媒と前記第2の触媒との間に設けられた還元剤を前記排気通路に添加する還元剤添加弁である。
【0013】
上記の内燃機関の排気浄化装置の他の一態様は、前記制御手段は、前記リーン制御をパルス状に行う場合において、硫黄酸化物が前記第2の触媒に所定量吸蔵された、または、前記硫黄再生制御が繰り返し実行されたときの総実行時間が所定時間以上になったと判定した場合には、前記リーン制御のパルス間隔を短くする。このようにすることで、第2の触媒に吸蔵された硫黄酸化物を脱離して放出することが可能となり、硫黄被毒状態を解消することができる。
【0014】
上記の内燃機関の排気浄化装置の他の一態様は、前記制御手段は、前記リーン制御をパルス状に行う場合において、硫黄酸化物が前記第2の触媒に所定量吸蔵された、または、前記硫黄再生制御が繰り返し実行されたときの総実行時間が所定時間以上になったと判定した場合には、前記リーン制御のパルス間隔を短くする。このようにすることで、第2の触媒に吸蔵された硫黄酸化物を脱離させることができる。
【0015】
上記の内燃機関の排気浄化装置の他の一態様は、前記制御手段は、前記硫黄再生制御の実施後の前記リーン制御が行われる期間において、前記硫黄再生制御の実施終了直後の一定期間における前記リーン制御によるリッチ深さを、前記実施終了直後の一定期間以外の期間における前記リーン制御によるリッチ深さと比較して、浅くする。このようにすることで、硫黄再生制御の実施後のリーン制御開始直後において、リッチ深さが深すぎる状態となるのを防ぐことができる。
【0016】
上記の内燃機関の排気浄化装置の他の一態様は、前記制御手段は、前記硫黄再生制御の実施前の前記リーン制御が行われる期間において、前記硫黄再生制御の実施開始直前の一定期間における前記リーン制御によるリッチ深さを、前記実施開始直前の一定期間以外の期間における前記リーン制御によるリッチ深さと比較して、浅くする。このようにすることで、硫黄再生制御の実施開始直後において、リッチ深さが深すぎる状態となるのを防ぐことができる。
【0017】
上記の内燃機関の排気浄化装置の他の一態様は、前記リーン制御をパルス状に行う場合において、前記第2の触媒の触媒温度が第2の所定温度以上になっていると判定した場合には、前記リーン制御のパルス間隔を長くする。このようにすることで、第2の触媒が劣化してしまうのを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0019】
[装置構成]
まず、本発明の各実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置について図1を用いて説明する。図1は、本発明の各実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置が適用された車両100の概略構成を示す。
【0020】
車両100は、主に、吸気通路3と、エンジン(内燃機関)10と、排気通路4と、上流触媒21と、下流触媒22と、ECU(Electric Control Unit)50と、を備える。
【0021】
吸気通路3は、エンジン10に供給するための吸気ガス(例えば空気)を通過させる。エンジン10は、吸気通路3より吸気ガスが供給されると共に、燃料噴射弁(不図示)によって噴射された燃料が供給される。供給された吸気ガスと燃料との混合気は、エンジン10の燃焼室内において燃焼される。エンジン10内の燃焼によった発生した排気ガスは、排気通路4に排出される。
【0022】
排気通路4は、エンジン10内の燃焼によって発生した排気ガスを通過させる。排気通路4上には、上流側から下流側に順に、還元剤添加弁31、上流触媒21、空燃比センサ(A/Fセンサ)41、還元剤添加弁32、下流触媒22、排気温度センサ42、が設けられている。
【0023】
上流触媒21は、例えば、NOx吸蔵還元触媒などの、硫黄酸化物(SOx)を吸蔵するとともに還元することが可能に構成された触媒である。還元剤添加弁31は、上流触媒21の上流側の排気通路4中に還元剤を噴射することにより、排気ガスに還元剤を添加する。言い換えると、還元剤添加弁31は、上流触媒21に還元剤を供給するための手段である。還元剤としては、例えば、軽油などの燃料や尿素などが挙げられる。還元剤添加弁31は、ECU50からの制御信号によって制御される。なお、上流触媒21としては、硫黄酸化物を吸蔵する触媒であればよく、NOx吸蔵還元触媒には限られない。
【0024】
下流触媒22は、いわゆる酸化機能を有する酸化触媒である。還元剤添加弁32は、下流触媒22の上流側の排気通路4中に還元剤を噴射することにより、排気ガスに還元剤を添加する。言い換えると、還元剤添加弁32は、下流触媒22に還元剤を供給するための手段である。還元剤としては、例えば、軽油などの燃料や尿素などが挙げられる。還元剤添加弁32は、ECU50からの制御信号によって制御される。
【0025】
A/Fセンサ41は、上流触媒21と下流触媒22との間の排気通路4に設けられており、上流触媒21を通過した直後の排気ガスの空燃比を検出して、検出された空燃比に対応する検出信号をECU50に送信する。
【0026】
排気温度センサ42は、下流触媒22の下流側の排気通路4に設けられており、下流触媒22を通過した排気ガスの排気温度を検出して、検出された排気温度に対応する検出信号をECU50に送信する。
【0027】
ECU50は、図示しないCPU、ROM、RAM、及びA/D変換器などを含んで構成される。ECU50は、車両内の各種センサから供給される出力に基づいて、車両内の制御を行う。本発明に係る内燃機関の排気浄化装置では、ECU50は、A/Fセンサ41、排気温度センサ42から送信された検出信号に基づいて、排気ガスの状態を求め、求められた排気ガスの状態に基づいて、還元剤添加弁31、32を制御することにより排気通路4中に還元剤を噴射する。例えば、第1実施形態では、ECU50は、上流触媒21に吸蔵された硫黄を還元する硫黄再生制御の実施の前後において、還元剤添加弁32より還元剤を排気ガスに添加することとする。従って、上流触媒21が本発明における第1の触媒として機能し、下流触媒22が本発明における第2の触媒として機能する。また、還元剤添加弁32が本発明における調整手段として機能し、ECU50が本発明における制御手段として機能する。なお、調整手段としては、還元剤添加弁32に限られるものではなく、この代わりに、又は、加えて、例えばバーナーなどの加熱手段を備えることとしてもよい。
【0028】
[第1実施形態]
次に、第1実施形態に係る内燃機関の排気浄化方法について説明する。まず、硫黄再生制御について説明する。例えば、上流触媒21がNOx吸蔵還元触媒であるとした場合、上流触媒21は、排気ガスの空燃比がリーンの時には窒素酸化物(NOx)を吸蔵する。また、上流触媒21は、排気ガスの空燃比が小さくなり、かつ、排気ガス中に未燃炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)等の還元剤が存在していれば吸蔵したNOxを還元浄化する。ここで、排気ガス中に硫黄酸化物(SOx)が存在すると、上流触媒21はNOxの吸蔵作用を行うのと全く同じメカニズムで排気ガス中のSOxの吸蔵を行うため、NOxの代わりにSOxが吸蔵されたいわゆる硫黄被毒状態(S被毒状態)となる。上流触媒21は、排気ガスの温度が硫黄脱離温度(例えば600℃以上)に昇温され、かつ、排気ガスの空燃比がストイキまたはリッチ(以下、単に「リッチ」と称する)になった時に、吸蔵したSOxを脱離させるSOx脱離作用を有する。
【0029】
従って、一般的な内燃機関の排気浄化方法では、SOx吸蔵作用を有する触媒において、例えば還元剤添加弁31より還元剤を排気ガスに添加することにより上記のSOx脱離作用を引き起こさせ、常温で気体であるSOの形で外部へ放出する硫黄再生制御(以下、「S再生制御」とも呼ぶことがある)が行われる。本発明の内燃機関の排気浄化装置においても、上流触媒21はS再生制御が実施されることによりS被毒状態から回復する。しかしながら、このとき、上流触媒21より脱離したSOxの一部は還元されて、硫化水素(HS)となる可能性がある。
【0030】
そこで、第1実施形態に係る内燃機関の排気浄化方法では、ECU50は、上流触媒21に吸蔵された硫黄を還元するS再生制御の実施の前後におけるリーン制御として、還元剤添加弁32より還元剤を排気ガスに添加することにより、下流触媒22を通過する排気ガスを所定のリーン空燃比にするともに、下流触媒22の触媒温度を所定温度まで昇温することとする。以下、図2を用いて具体的に述べる。
【0031】
図2は、第1実施形態に係る、下流触媒22を通過する排気ガスの空燃比について時間に対する変化を示すグラフである。図2のグラフにおいて、破線で示すグラフは、S再生制御の実施の前後において還元剤添加弁32より還元剤を排気ガスに添加しないリーン制御を行う場合のグラフであり、実線で示すグラフは、S再生制御の実施の前後において還元剤添加弁32より還元剤を排気ガスに添加するリーン制御を行う場合のグラフである。
【0032】
図2の破線で示すように、S再生制御の実施の前後において還元剤添加弁32より還元剤を排気ガスに添加しないリーン制御を行う場合には、下流触媒22を通過する排気ガスの空燃比は、上流触媒21を通過する排気ガスの空燃比と同様、S再生制御が実施される期間の前後においてはリーンとなり、S再生制御が実施される期間(S再生制御期間)においてはリッチとなる。このS再生制御期間において、上流触媒21に吸蔵されたSOxは脱離される。このとき、脱離したSOxの一部が還元されて、硫化水素(HS)となる恐れがある。そして、上流触媒21を通過する排気ガスの空燃比をリッチにしたり、上流触媒21の触媒温度を高くしたりすると、硫化水素(HS)の放出速度が速くなるため、下流触媒22では、硫化水素(HS)を酸化しきれなくなる恐れがある。
【0033】
一方、S再生制御の実施の前後において還元剤添加弁32より還元剤を排気ガスに添加するリーン制御を行う場合には、即ち、第1実施形態に係る排気浄化方法では、下流触媒22を通過する排気ガスは、S再生制御の実施の前後において内燃機関のリーン燃焼時のリーン空燃比(リーン1)よりも低いリーン空燃比(リーン2)に制御される。具体的には、還元剤添加弁32より還元剤を排気ガスに添加することにより、下流触媒22を通過する排気ガスの空燃比は、図2の実線で示すように、エンジン10のリーン燃焼によりリーンとなったときの空燃比(リーン1)よりも低い、リッチ側に少し寄った空燃比(リーン2)にされる。詳しくは、このリーン2は、HSをSOに効率良く酸化するのに最適な空燃比に設定される。また、還元剤添加弁32より還元剤を排気ガスに添加することにより、下流触媒22の触媒温度は所定温度まで昇温される。下流触媒22の触媒温度が昇温されると、下流触媒22における酸素吸着量が増加して、HSと酸素(O)との反応が活性化する。
【0034】
S再生制御の実施前において、還元剤添加弁32より還元剤を排気ガスに添加するリーン制御を行うことにより、下流触媒22への酸素吸着量を増加させることができる。これにより、HSを酸化させるのに必要な酸素をS再生制御の実施前に予め増加させることができる。また、S再生制御の実施後において、還元剤添加弁32より還元剤を排気ガスに添加するリーン制御を行うことにより、S再生制御の実施時やリーン制御移行直後において上流触媒21で生成されたHSを下流触媒22で確実に酸化させることができる。
【0035】
つまり、第1実施形態に係る排気浄化方法では、S再生制御の実施の前後におけるリーン制御として、下流触媒22を通過する排気ガスを内燃機関のリーン燃焼時のリーン空燃比(リーン1)よりも低いリーン空燃比(リーン2)にするとともに、下流触媒22の触媒温度を所定温度まで昇温する。これにより、上流触媒21より放出されるHSの放出速度が速くなった場合であっても、当該HSを下流触媒22においてSOへと確実に酸化して放出させることができる。従って、この所定温度が本発明における第1の所定温度に相当する。
【0036】
また、ここでいう所定温度(第1の所定温度)としては、下流触媒22の活性温度よりも高い温度となるのが好適である。図3は、下流触媒22における触媒温度と酸化性能との関係を示すグラフである。ここでいう活性温度は、図3に示すように、下流触媒22の触媒温度がこの当該活性温度を超えると、酸素吸着量が急激に増加し、HSからSOへ酸化する割合が急激に増加するような温度である。従って、下流触媒22の触媒温度を活性温度よりも高い温度に設定することで、HSからSOへ酸化する割合を増加させることができる。
【0037】
また、上述の所定温度(第1の所定温度)は、S再生制御の実施時における上流触媒21を通過する排気ガスの空燃比または排気ガスの温度に応じて設定されるとしても良い。上流触媒21を通過する排気ガスの空燃比に応じて設定する例としては、S再生制御の実施時における上流触媒21を通過する排気ガスのリッチ深さが深くなるほど、当該所定温度(第1の所定温度)を高く設定することが考えられる。これは、上流触媒21を通過する排気ガスのリッチ深さが深くなるほど、上流触媒21においてHSが多く発生すると考えられるからである。また、上流触媒21を通過する排気ガスの温度に応じて設定する例としては、S再生制御の実施時における上流触媒21を通過する排気ガスの温度が高くなるほど、当該所定温度(第1の所定温度)を高く設定することが考えられる。これは、上流触媒21を通過する排気ガスの温度は、上流触媒21の温度に影響を与えると考えられるからである。
【0038】
以上に述べたことから分かるように、第1実施形態に係る内燃機関の排気浄化方法では、ECU50は、S再生制御の実施の前後において、還元剤添加弁32より還元剤を排気ガスに添加することにより、下流触媒22を通過する排気ガスを内燃機関のリーン燃焼時のリーン空燃比よりも低いリーン空燃比にする制御を行うとともに、下流触媒22の触媒温度を所定温度まで昇温する。このようにすることで、上流触媒21より放出されるHSの放出速度が速くなった場合であっても、当該HSを、下流触媒22においてSOへと確実に酸化して放出させることができる。
【0039】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る内燃機関の排気浄化方法について図4を説明する。図4は、第2実施形態に係る、下流触媒22を通過する排気ガスの空燃比について時間に対する変化を示すグラフである。上述の第1実施形態に係る内燃機関の排気浄化方法では、S再生制御の実施後において、還元剤添加弁32より還元剤を排気ガスに添加するリーン制御を行うことにより、S再生制御の実施時やリーン制御移行直後において上流触媒21で生成されたHSを下流触媒22で酸化させるとしていた。
【0040】
しかしながら、上流触媒21より放出されたSOやHSは、下流触媒22よりSOとして放出されずに、下流触媒22にSOxとして吸蔵され、下流触媒22がS被毒状態となる可能性がある。この場合には、下流触媒22に吸蔵されたSOxを脱離してSOとして放出する必要がある。
【0041】
そこで、第2実施形態に係る内燃機関の排気浄化方法では、ECU50は、S再生制御の実施後におけるリーン制御が行われる期間(リーン制御期間)において、上流触媒21から放出されたSOxが下流触媒22に所定量吸蔵されたと判定した場合には、下流触媒22を通過する排気ガスの空燃比を一時的にリッチにすることとする。具体的には、まず、ECU50は、S再生制御の実施後におけるリーン制御期間において、排気温度センサ42からの検出信号に基づいて、下流触媒22に吸蔵されたSOxが所定量以上になっているか否かについて判定する。この判定方法としては、例えば、ECU50は、排気温度センサ42からの検出信号に基づいて、下流触媒22の触媒温度を求め、求められた触媒温度が所定温度以下になっているか否かについて判定する。ここで、所定温度は、触媒温度が当該所定温度以下になると、下流触媒22に吸蔵されたSOx量が所定量以上になっていると判定することができる温度に設定される。従って、ECU50は、求められた触媒温度が所定温度以下になっていると判定した場合には、下流触媒22に吸蔵されたSOx量が所定量以上になっていると判定することができる。所定量、所定温度は予め実験などにより求められ、ROMなどに記録されている。
【0042】
ECU50は、下流触媒22に吸蔵されたSOx量が所定量以上になっていると判定した場合には、還元剤添加弁32より還元剤を排気ガスに添加して、図4に示すように、下流触媒22を通過する排気ガスの空燃比を一時的にリッチにすることとする。このようにすることで、下流触媒22に吸蔵されたSOxを脱離してSOとして放出することが可能となり、下流触媒22のS被毒状態を解消することができる。
【0043】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る内燃機関の排気浄化方法について図5を用いて説明する。図5は、第3実施形態に係る、下流触媒22を通過する排気ガスの空燃比について時間に対する変化を示すグラフである。
【0044】
S再生制御の実施の前後において、還元剤添加弁32より還元剤を排気ガスに添加することによりリーン制御が行われる場合、実際には、ECU50は、リーン制御をパルス状に行うことが考えられる。即ち、ECU50は、還元剤添加弁32より噴射される還元剤の量を時間に対してパルス状に変化するように制御することが考えられる。具体的には、図5に示すように、S再生制御の実施の前後におけるリーン制御期間において、下流触媒22を通過する排気ガスの空燃比は、エンジン10の燃焼によりリーン1からリーン2へとパルス状に制御されることとなる。
【0045】
ここで、S再生制御が繰り返し実施され、上流触媒21に吸蔵されたSOxの大半が放出された状態となったときには、下流触媒22では、大量のSOが通過する又はHSよりSOxが生成されることとなるため、SOxが吸蔵される可能性がある。
【0046】
そこで、第3実施形態に係る内燃機関の排気浄化方法では、ECU50は、上流触媒21から放出されたHSが所定量以上となっている、または、S再生制御が繰り返し実行されたときの総実行時間が所定時間以上となっている、と判定した場合には、図5に示すように、当該判定前よりもリーン制御のパルス間隔を短くすることとする。上流触媒21から放出されたHSの量は、A/Fセンサ41からの検出信号に基づいて求めることができる。また、総実行時間は、最初のS再生制御の実行開始時からの時間を、タイマー等を用いて計測することにより求めることができる。ここで、所定量、所定時間は予め実験などにより求められ、ROMなどに記録されている。このようにすることで、下流触媒22に吸蔵されたSOxを脱離させることができる。
【0047】
(変形例)
なお、ここで、第3実施形態の変形例について述べる。リーン制御のパルス間隔を制御する他の例として、ECU50は、下流触媒22の触媒温度が所定温度以上となっていると判定した場合には、当該判定前よりもリーン制御のパルス間隔を長くすることとしてもよい。この所定温度は、下流触媒22の触媒温度が当該所定温度以上になると劣化してしまう可能性がある温度に設定される。従って、この所定温度は、本発明における第2の所定温度に相当する。このようにすることで、還元剤の添加による下流触媒22の触媒温度の上昇を抑えることができ、下流触媒22が劣化してしまうのを抑えることができる。
【0048】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る内燃機関の排気浄化方法について図6を用いて説明する。図6は、第4実施形態に係る、下流触媒22を通過する排気ガスの空燃比について時間に対する変化を示すグラフである。
【0049】
S再生制御の実施終了直後においては、上流触媒21の上流側の還元剤添加弁31より排気ガスに添加された還元剤のうち、一部はS再生制御で使われずに下流触媒22を通過する可能性がある。そのため、このとき、上流触媒21と下流触媒22との間の還元剤添加弁32より排気ガスに還元剤を常に同じ量で添加すると、リッチ深さが深すぎる状態となり、リーン制御において反応しなかった分の還元剤が下流触媒22より外部へ放出される恐れがある。
【0050】
そこで、第4実施形態に係る内燃機関の排気浄化方法では、ECU50は、S再生制御の実施後のリーン制御が行われる期間において、図6に示すように、S再生制御の実施終了直後(リーン制御実施開始直後)の一定期間T1aにおけるリーン制御のリッチ深さを、当該一定期間T1a以外の期間T2aにおけるリーン制御によるリッチ深さと比較して浅くすることとする。具体的には、S再生制御の実施終了直後の一定期間T1aにおける還元剤添加弁32より排気ガスに添加される還元剤の量を、当該一定期間T1a以外の期間T2aにおける還元剤添加弁32より排気ガスに添加される還元剤の量と比較して、少なくすることとする。このようにすることで、リーン制御実施開始直後において、リッチ深さが深すぎる状態となるのを防ぐことができる。
【0051】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る内燃機関の排気浄化方法について図7を用いて説明する。図7は、第5実施形態に係る、下流触媒22を通過する排気ガスの空燃比について時間に対する変化を示すグラフである。
【0052】
S再生制御が実施前のリーン制御において、還元剤添加弁32より排気ガスに還元剤を常に同じ量で添加すると、S再生制御の実施開始直後において、リッチ深さが深すぎる状態となり、S再生制御において反応しなかった分の還元剤が下流触媒22より外部へ放出される恐れがある。
【0053】
そこで、第5実施形態に係る内燃機関の排気浄化方法では、ECU50は、S再生制御の実施前におけるリーン制御において、図7に示すように、S再生制御の実施開始直前(リーン制御実施終了直前)の一定期間T1bにおけるリーン制御のリッチ深さを、当該一定期間T1b以外の期間T2bにおけるリーン制御によるリッチ深さと比較して浅くすることとする。具体的には、S再生制御の実施開始直前の一定期間T1bにおける還元剤添加弁32より排気ガスに添加される還元剤の量を、当該一定期間T1b以外の期間T2bにおける還元剤添加弁32より排気ガスに添加される還元剤の量と比較して、少なくすることとする。このようにすることで、S再生制御の実施開始直後において、リッチ深さが深すぎる状態となるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】各実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置が適用された車両の構成を示す概略図である。
【図2】第1実施形態に係る下流触媒における空燃比について変化を示すグラフである。
【図3】下流触媒における触媒温度と酸化性能との関係を示すグラフである。
【図4】第2実施形態に係る下流触媒における空燃比について変化を示すグラフである。
【図5】第3実施形態に係る下流触媒における空燃比について変化を示すグラフである。
【図6】第4実施形態に係る下流触媒における空燃比について変化を示すグラフである。
【図7】第5実施形態に係る下流触媒における空燃比について変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0055】
3 吸気通路
4 排気通路
10 内燃機関
21 上流触媒
22 下流触媒
32 還元剤添加弁
50 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路上に設けられ硫黄酸化物を吸蔵するとともに還元する第1の触媒と、前記排気通路上における前記第1の触媒の下流側に設けられ酸化機能を有する第2の触媒と、を備えた内燃機関の排気浄化装置であって、
前記第2の触媒を通過する排気ガスの空燃比及び前記第2の触媒の触媒温度を調整可能な調整手段と、
前記第1の触媒に吸蔵された硫黄を還元する硫黄再生制御の実施の前後において、前記調整手段を用いて、前記第2の触媒を通過する排気ガスを内燃機関のリーン燃焼時のリーン空燃比よりも低いリーン空燃比にするとともに前記第2の触媒の触媒温度を第1の所定温度まで昇温するリーン制御を行う制御手段を備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記第1の所定温度は、前記第2の触媒の活性温度よりも高い温度である請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記第1の所定温度は、前記硫黄再生制御の実施時における前記第1の触媒を通過する排気ガスの空燃比または排気ガスの温度に応じて設定される請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記調整手段は、前記第1の触媒と前記第2の触媒との間に設けられた還元剤を前記排気通路に添加する還元剤添加弁である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記硫黄再生制御の実施後の前記リーン制御が行われる期間において、硫黄酸化物が前記第2の触媒に所定量吸蔵されたと判定した場合には、前記調整手段を用いて、前記第2の触媒を通過する排気ガスの空燃比を一時的にリッチにする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記リーン制御をパルス状に行う場合において、硫黄酸化物が前記第2の触媒に所定量吸蔵された、または、前記硫黄再生制御が繰り返し実行されたときの総実行時間が所定時間以上になったと判定した場合には、前記リーン制御のパルス間隔を短くする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記硫黄再生制御の実施後の前記リーン制御が行われる期間において、前記硫黄再生制御の実施終了直後の一定期間における前記リーン制御によるリッチ深さを、前記実施終了直後の一定期間以外の期間における前記リーン制御によるリッチ深さと比較して、浅くする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記硫黄再生制御の実施前の前記リーン制御が行われる期間において、前記硫黄再生制御の実施開始直前の一定期間における前記リーン制御によるリッチ深さを、前記実施開始直前の一定期間以外の期間における前記リーン制御によるリッチ深さと比較して、浅くする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記リーン制御をパルス状に行う場合において、前記第2の触媒の触媒温度が第2の所定温度以上になっていると判定した場合には、前記リーン制御のパルス間隔を長くする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−197640(P2009−197640A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38719(P2008−38719)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】