内燃機関の水ポンプ取付構造
【課題】水ポンプを内燃機関の機関本体に良好な組付け性の下で強固に取り付けることができる内燃機関の水ポンプ取付構造を供する。
【解決手段】水ポンプハウジング(30)の上側延出部位(31)の延出端に第1上側締結部(31U1)が形成され、第1上側締結部(31)とポンプ駆動軸(42)との間に第2上側締結部(31U2)が形成され、下側延出部位(33)の延出端に第1下側締結部(33L1)が形成され、第1下側締結部(33L1)とポンプ駆動軸(42)との間に第2下側締結部(33L2)が形成され、水ポンプハウジング(30)は、機関本体(2)の側壁(3f)に取付面(31Us,33Ls)が当接され、第1上側締結部(31U1)、第2上側締結部(31U2)、第1下側締結部(33L1)、第2下側締結部(33L2)がボルト(35)により締結されて、水ポンプ(20)が機関本体(2)に取り付けられる内燃機関の水ポンプ取付構造。
【解決手段】水ポンプハウジング(30)の上側延出部位(31)の延出端に第1上側締結部(31U1)が形成され、第1上側締結部(31)とポンプ駆動軸(42)との間に第2上側締結部(31U2)が形成され、下側延出部位(33)の延出端に第1下側締結部(33L1)が形成され、第1下側締結部(33L1)とポンプ駆動軸(42)との間に第2下側締結部(33L2)が形成され、水ポンプハウジング(30)は、機関本体(2)の側壁(3f)に取付面(31Us,33Ls)が当接され、第1上側締結部(31U1)、第2上側締結部(31U2)、第1下側締結部(33L1)、第2下側締結部(33L2)がボルト(35)により締結されて、水ポンプ(20)が機関本体(2)に取り付けられる内燃機関の水ポンプ取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷式内燃機関の機関本体への水ポンプの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータを伴いポンプ駆動軸を軸支する水ポンプカバーがインペラを収容する水ポンプハウジングに合体されて水ポンプが構成され、この水ポンプが内燃機関の機関本体に着脱自在に取り付けられる構成は、種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−012134号公報
【0004】
特許文献1には、水ポンプにパワーステアリングポンプが一体に設けられ、共通のポンプ駆動軸で駆動するようになっており、インペラを収容する水ポンプハウジングとパワーステアリングポンプハウジングとが共通のポンプカバーを挟んで合体され、パワーステアリングポンプハウジングから突出したポンプ駆動軸の端部に共通のアクチュエータであるプーリが形成されている構成が開示されている。
【0005】
水ポンプの水ポンプハウジングは、インペラが収容されるポンプ室から延出する冷却水吐出通路を形成する吐出接続管が水ポンプハウジングの上部で内燃機関の機関本体側に突出しており、水ポンプハウジングの下部には取付ブラケットが形成されている。
【0006】
そして、水ポンプハウジングは、機関本体の側壁の取付面に形成されたウォータジャケットに連通する開口に上部の吐出接続管を挿入し、機関本体の側壁の取付面に下部の取付ブラケットが締付ボルトにより締結されて支持される。
別途、パワーステアリングポンプハウジングは、上下の取付ブラケットが機関本体の側壁の取付面に締付ボルトにより締結されて支持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、水ポンプハウジングは、上部の吐出接続管が機関本体の側壁取付面の開口に挿入され、下部の取付ブラケットが機関本体の側壁取付面にボルトにより1点で締結されるのみであるので、下部が局部的に締結されて、水ポンプハウジング全体が強固に固定されていない。
【0008】
水ポンプハウジングの上部が機関本体の側壁に締結されないことから、上部の吐出接続管が側壁取付面の開口に液密に挿入されるべきところのシール性を保つことが難しい。
また、水ポンプハウジングは、ポンプカバー側にプーリやパワーステアリングポンプなどの重量物が取り付けられるので、水ポンプハウジングは下部の取付ブラケットを機関本体の側壁に締結する締付ボルトを中心に回動する位置ずれが生じ易く、組付け性を悪くする。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、水ポンプを内燃機関の機関本体に良好な組付け性の下で強固に取り付けることができる内燃機関の水ポンプ取付構造を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、
アクチュエータ(40)を伴いポンプ駆動軸(42)を軸支する水ポンプカバー(41)が、インペラ(43)を収容するポンプ室(22)を形成する水ポンプハウジング(30)に合せ面(30a)で一体に合体されて構成される水ポンプ(20)が、内燃機関の機関本体(2)に着脱自在に取り付けられる水ポンプ取付構造において、
前記水ポンプハウジング(30)は、前記水ポンプカバー(41)との合せ面(30a)に対して前記水ポンプカバー(41)とは反対側に延出する上側延出部位(31)と下側延出部位(33)が中間ポンプ室部位(32)より上下に形成され、
前記上側延出部位(31)と前記下側延出部位(33)に前記水ポンプカバー(41)との合せ面(30a)に垂直な機関本体(2)の側壁(3f)に取り付けられる取付面(31Us,33Ls)が形成され、
前記上側延出部位(31)の延出端に第1上側締結部(31U1)が形成されるとともに、前記第1上側締結部(31)と前記ポンプ駆動軸(42)との間に第2上側締結部(31U2)が形成され、
前記下側延出部位(33)の延出端に第1下側締結部(33L1)が形成されるとともに、前記第1下側締結部(33L1)と前記ポンプ駆動軸(42)との間に第2下側締結部(33L2)が形成され、
前記水ポンプハウジング(30)は、機関本体(2)の側壁(3f)に前記取付面(31Us,33Ls)が当接され、前記第1上側締結部(31U1)、前記第2上側締結部(31U2)、前記第1下側締結部(33L1)、前記第2下側締結部(33L2)がボルト(35)により締結されて、前記水ポンプ(20)が機関本体(2)の側壁(3f)に取り付けられることを特徴とする内燃機関の水ポンプ取付構造である。
【0011】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の内燃機関の水ポンプ取付構造において、
前記上側延出部位(31)には、前記水ポンプハウジング(30)のポンプ室(22)から延出し前記第1上側締結部(31U1)に向けて延びる下流側冷却水通路(23)が、前記第1上側締結部(31U1)の手前で取付面(31Us)に開口して機関本体(2)側の冷却水取入口(3Wa)に冷却水を連通する冷却水連通部(24)に至るまで形成され、
前記冷却水連通部(24)の周囲に前記第1上側締結部(31U1)と前記第2上側締結部(31U2)とともに第3上側締結部(31U3)が前記下流側冷却水通路(23)を挟んで前記第2上側締結部(31U2)と互いに上下位置に形成され、
前記第3上側締結部(31U3)も前記第1上側締結部(31U1)と前記第2上側締結部(31U2)とともにボルトにより機関本体(2)の側壁(3f)に締結されることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、
請求項1または請求項2記載の内燃機関の水ポンプ取付構造において、
前記下側延出部位(33)は、機関本体(2)に形成されるオイル通路(Ph)の油路開口(3p1,3p2)を間にして両側に前記第1下側締結部(33L1)と前記第2下側締結部(33L2)が位置するように形成され、前記下側延出部位(33)の取付面(33Ls)が前記油路開口(3p1,3p2)を閉塞することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の内燃機関の水ポンプ取付構造によれば、水ポンプハウジング(30)は、水ポンプカバー(41)側がアクチュエータ(40)により重量が嵩み重くなっても、中間ポンプ室部位(32)の高さのポンプ駆動軸(42)より上の上側延出部位(31)が延出端の第1上側締結部(31U1)および同第1上側締結部(31U1)とポンプ駆動軸(42)との間の第2上側締結部(31U2)でボルト(35)によって機関本体(2)の側壁(3f)に締結され、ポンプ駆動軸(42)より下の下側延出部位(33)が延出端の第1下側締結部(33L1)および同第1下側締結部(33L1)とポンプ駆動軸(42)との間の第2下側締結部(33L2)でボルト(35)によって機関本体(2)の側壁(3f)に締結されるので、水ポンプカバー(41)側がアクチュエータ(40)により重量が嵩み重くなっても、第1上側締結部(31U1)に加わるポンプ駆動軸(42)の方向に向かう力(Fu)はその力の方向に略位置する第2上側締結部(31U2)が効率的に分担して支え、同時に第1下側締結部(33L1)にポンプ駆動軸(42)の方向から加わる力(Fl)はその力の方向に略位置する第2下側締結部(33L2)が効率的に分担して支えることができ、1部の締結部に力が集中することなく分散し、水ポンプハウジング(30)は全体的に水ポンプカバー(41)側の重量を効率良く支える取付構造をなして機関本体(2)に強固に固定される。
【0014】
アクチュエータ(40)が相当重い場合でも、アクチュエータ(40))のある水ポンプカバー(41)側の重量を水ポンプハウジング(30)は上下複数の締結部により偏ることなく効率良く支えるように機関本体(2)に取り付けられるので、水ポンプハウジング(30)は位置ずれが生じ難く、良好な組付け性を確保することができる。
【0015】
水ポンプハウジング(30)の上側延出部位(31)は第1,第2上側締結部(31U1,31U2)で機関本体(2)に締結され、下側延出部位(33)は第1,第2下側締結部(33L1,33L2)で機関本体(2)に締結されるので、上側延出部位(31)と下側延出部位(33)は概ね互いに独立に各々が強固に締結されことになり、取付面(31Us)に形成される冷却水の吐出通路(下流側冷却水通路)の接続部のシール性は良好に維持される。
【0016】
請求項2記載の内燃機関の水ポンプ取付構造によれば、上側延出部位(31)には、水ポンプハウジング(30)のポンプ室(22)から延出し第1上側締結部(31U1)に向けて延びる下流側冷却水通路(23)が、第1上側締結部(31U1)の手前で取付面(31Us)に開口して機関本体(2)側の冷却水取入口(3Wa)に冷却水を連通する冷却水連通部に至るまで形成され、冷却水連通部(24)の周囲に第1上側締結部(31U1)と第2上側締結部(31U2)とともに第3上側締結部(31U3)が下流側冷却水通路(23)を挟んで前記第2上側締結部(31U2)と互いに上下位置に形成されるので、上側延出部位(31)の取付面(31Us)における冷却水通路端部の冷却水連通部(24)の周囲を第1,第2,第3上側締結部(31U1,31U2,31U3)の3か所で上側延出部位(31)を機関本体(2)に強固に締結することができ、冷却水通路の接続部である冷却水連通部(24)の開口のシールを容易に確保することができる。
さらに、第3上側締結部(31U3)は、ポンプ駆動軸(42)と第1上側締結部(31U1)との間にあって、第1上側締結部(31U1)に加わるポンプ駆動軸の方向に向かう力(Fu)を第2上側締結部(31U2)とともに効率的に分担して支えることができる。
【0017】
請求項3記載の内燃機関の水ポンプ取付構造によれば、下側延出部位(33)の取付面(33Ls)が機関本体(2)に形成されるオイル通路(Ph)の油路開口(3p1,3p2)を閉塞するので、オイル通路の油路開口をシールプラグ等の閉塞専用の部品を必要とせず部品点数を削減でき、組付け作業性の向上を図ることができる。
また、下側延出部位(33)は、オイル通路(Ph)の油路開口(3p1,3p2)を間にして両側の第1下側締結部(33L1)と第2下側締結部(33L2)が機関本体(2)に締結されるので、油路開口(3p1,3p2)を良好なシール性をもって閉塞することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係る内燃機関の全体斜視図である。
【図2】同前面図である。
【図3】同内燃機関の冷却系統の模式図である。
【図4】シリンダブロックに水ポンプを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】シリンダブロックの前面図である。
【図6】シリンダブロックに水ポンプを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図7】水ポンプハウジングの裏面図である。
【図8】シリンダブロックに水ポンプハウジングを取り付けた状態の右側面図である。
【図9】図7および図8のIX-IX線で切断した断面図である。
【図10】水ポンプカバー組み込まれた電動モータの左側面図である。
【図11】シリンダブロックに水ポンプを取り付けた状態を示す前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図11に基づいて説明する。
本実施の形態に係る内燃機関1は、図1および図2に示すように、直列4気筒の4ストローク水冷式内燃機関であり、クランク軸8を左右方向に指向させて車両に横置きに搭載される。
本明細書中では、車両を基準に前後左右を決めることとする。
【0020】
内燃機関1の機関本体2は、シリンダが左右方向に配列されたシリンダブロック3の下にクランク軸8挟むように軸支してロアケース5が接合し、シリンダブロック3の上にシリンダヘッド4が重ねられ、その上にシリンダヘッドカバー6が被せられ、ロアケース5の下にはオイルパン7が接合されて構成されている。
【0021】
シリンダブロック3とロアケース5の合せ面から右方に突出するクランク軸8の端部には、軸方向の重量バランスを考慮したフライホイール9が嵌着されている。
そして、シリンダブロック3の前側面3fの右側寄りに電動の水ポンプ20が取り付けられ、その下方に電動コンプレッサ15がロアケース5に取り付けられる。
【0022】
水ポンプ20の駆動により冷却水が循環する冷却系統の主要な循環経路を、図3の冷却系統の模式図に基づいて簡単に説明する。
水ポンプ20から吐出した冷却水は、まずシリンダブロック3内に流入してシリンダブロック3内のウォータジャケットを循環し、次いで上側のシリンダヘッド4内に流入してシリンダヘッド4内のウォータジャケットを循環して、シリンダブロック3およびシリンダヘッド4との間で熱交換し、ウォータアウトレット4eから流出する。
【0023】
また、シリンダヘッド4からは、シリンダヘッド4に取り付けられたサーモスタット10に直接流入するバイパス通路10iが形成されている。
ウォータアウトレット4eからは、冷却水をラジエータ18に循環させるラジエータ流入通路18iが配管され、ラジエータ18からはサーモスタット10に還流させるラジエータ流出通路18eが配管されている。
【0024】
また、ウォータアウトレット4eからは、冷却水を別途空調用のヒータコア19に供給するヒータ流入通路19iが配管され、ヒータコア19からはサーモスタット10に還流させるヒータ流出通路19eが配管されている。
そして、サーモスタット10からは、冷却水を水ポンプ20に還流する水ポンプ吸入通路20iが配管されている。
【0025】
冷却系統の主要な循環経路は、以上のように構成されている。
冷間時には、サーモスタット10がラジエータ流出通路18eを閉じバイパス通路10iを開くことで、冷却水は、ラジエータ18を循環することなくシリンダブロック3およびシリンダヘッド4を流れ、暖機を促進する。
熱間時には、サーモスタット10がラジエータ流出通路18eを開きバイパス通路10iを閉じることで、ラジエータ18を循環して熱を奪われた冷却水がシリンダブロック3およびシリンダヘッド4を流れて両者を冷却することができる。
【0026】
なお、ヒータコア19に流入する冷却水は、ヒータコア19からサーモスタット10を経て水ポンプ20に還流するが、サーモスタット10の駆動に関係なく、またサーモスタット10のワックスに殆ど影響を与えずに、水ポンプ20に吸入されて、常時循環している。
【0027】
以下、水ポンプ20のシリンダブロック3への取付構造について説明する。
気筒列方向(左右方向)に長尺のシリンダブロック3は、下半部のクランクケースに相当する部分が前後に膨出して幅広に形成されている(図1参照)。
このシリンダブロック3の前側面3fの右側寄りに、図5に示すように電動の水ポンプ20が取り付けられる。
【0028】
図4に示すように、シリンダブロック3の前側面3fには、右側寄りの上部に冷却水取入口3Waが開口し、その開口の周囲がシリンダブロック3のシリンダヘッド4との合せ面3sに沿って前方に若干延出して鉛直平面をなす取付面3Usを開口端面とする上側取付部3Uが形成されている。
【0029】
冷却水取入口3Waの周囲の上側取付部3Uには、冷却水取入口3Waの左斜め上方に合せ面3sに沿って第1上側取付ボス部3U1が形成され、冷却水取入口3Waの右斜め下方に第2上側取付ボス部3U2が形成され、冷却水取入口3Waの右斜め上方に合せ面3sに沿って第3上側取付ボス部3U3が形成されており、第1,第2,第3上側取付ボス部3U1,3U2,3U3にはそれぞれ取付孔3Uhが穿設されている。
【0030】
また、シリンダブロック3の前側面3fには、右側面3rの近傍で中央より若干下方に油路開口3p1,3p2が左右方向に並んで開口しており、その開口の周囲が前方に若干延出して鉛直平面をなす取付面3Lsを開口端面とする下側取付部3Lが形成されている。
下側取付部3Lは、シリンダブロック3の右側面3rから左方に長尺に形成され、上側取付部3Uの下方で若干右寄りに位置し、上側取付部3Uより幾らか前方に張り出している。
なお、シリンダブロック3には潤滑系統のオイル通路が形成されており、油路開口3p1,3p2は左右方向に指向したオイル通路Phに連通しており、油路開口3p1は鉛直方向に指向したオイル通路Pvに連通している(図4参照)。
【0031】
油路開口3p1,3p2の周囲の下側取付部3Lには、左側の油路開口3p1の左斜め下方に第1下側取付ボス部3L1が形成され、右側の油路開口3p2の上方若干右寄りに第2下側取付ボス部3L2が形成されており、第1,第2下側取付ボス部3L1,3L2にはそれぞれ取付孔3Lhが穿設されている。
第1,第2下側取付ボス部3L1,3L2は、油路開口3p1,3p2を間に挟んだ両側に設けられている。
【0032】
一方、シリンダブロック3の前側面3fに取り付けられる水ポンプ20は、水ポンプハウジング30と駆動源である電動モータ40とからなり、電動モータ40側に水ポンプカバー41が組み込まれている。
水ポンプハウジング30の右側面の合せ面30aに水ポンプカバー41が被せられるように電動モータ40が一体に取り付けられた状態で、水ポンプハウジング30の合せ面30aに垂直な取付面31Us,33Lsがシリンダブロック3の前側面3fに当接して水ポンプハウジング30が取り付けられる。
【0033】
水ポンプハウジング30は、水ポンプカバー41との合せ面30aに対して水ポンプカバー41とは反対側に延出する上側延出部位31と下側延出部位33が中間ポンプ室部位32より上下に形成されている(図6,図7参照)。
したがって、水ポンプハウジング30は、前面視(図6)で左側面が中間ポンプ室部位32で括れた形状をしている。
【0034】
水ポンプハウジング30の中間ポンプ室部位32には、ポンプ室22が合せ面30aに開口して形成され(図8参照)、ポンプ室22から合せ面30aと反対側(左側)に上流側冷却水通路21が左側面に抜けて穿孔されている。
【0035】
そして、水ポンプハウジング30の合せ面30aに沿ってポンプ室22から上方に溝路として延出して下流側冷却水通路23が形成されている(図8参照)。
下流側冷却水通路23は、合せ面30aの上端手前で屈曲して上側延出部位31の延出方向(左方)に穿孔して延び、上側延出部位31の延出端部の上側締結基部31Uに形成された冷却水連通部24に至っている(図6ないし図9参照)。
【0036】
図8を参照して、水ポンプハウジング30の合せ面30aには、ポンプ室22と下流側冷却水通路23の溝路が開口しており、合せ面30aの周囲に5つのカバー締結部30abが締付孔30ahを備えて形成されている。
【0037】
この水ポンプハウジング30の合せ面30aに、水ポンプカバー41が電動モータ40と一体となって取り付けられる。
水ポンプカバー41は、図10に示すように、水ポンプハウジング30の合せ面30aに対向する略同じ形状の合せ面41aが形成され、中央に大きくポンプ室22の一部が形成され、ポンプ室22から上方に下流側冷却水通路23の一部が延出している。
そして、合せ面41aの周囲に水ポンプハウジング30の5つのカバー締結部30abに対応する取付部41abが取付孔41ahを備えて形成されている。
なお、水ポンプカバー41の合せ面41aにはシール部材が嵌合する溝が形成されている。
【0038】
水ポンプカバー41のポンプ室22の底壁の中央を貫通して電動モータ40の駆動軸であるポンプ駆動軸42が突出しており、ポンプ駆動軸42の突出した端部にインペラ43が嵌着されている。
【0039】
水ポンプハウジング30の合せ面30aと電動モータ40に組み込まれた水ポンプカバー41の合せ面41aとを当接して取付ボルト45を取付孔41ahに貫通して締付孔30ahに螺着することで、水ポンプハウジング30に水ポンプカバー41が合体して電動モータ40が取り付けられる。
水ポンプハウジング30と水ポンプカバー41の合体で、ポンプ室22と下流側冷却水通路23が構成され、電動モータ40側から突出したポンプ駆動軸42の端部に嵌着されたインペラ43はポンプ室22内に位置する。
したがって、電動モータ40が駆動してポンプ駆動軸42がインペラ43とともに回転すると、上流側冷却水通路21に流入した冷却水がポンプ室22に吸入され、下流側冷却水通路23に吐出される。
【0040】
このようにして水ポンプハウジング30に電動モータ40が水ポンプカバー41とともに取り付けられて構成された水ポンプ20は、水ポンプハウジング30がシリンダブロック3の前側面3fに形成された上側取付部3Uの取付面3Usと下側取付部3Lの取付面3Lsに取り付けられる。
【0041】
水ポンプハウジング30における上側延出部位31の延出端部に形成される上側締結基部31Uは、シリンダブロック3の上側取付部3Uの取付面3Usに対向する面に冷却水連通部24が開口する取付面31Usが形成されている(図7参照)。
なお、取付面31Usには、冷却水連通部24の開口周囲にシール部材34(図9参照)が嵌合される溝31vが形成されている。
【0042】
そして、上側延出部位31の延出端部の上側締結基部31Uには、上側延出部位31の合せ面30aから最も離れた延出端に第1上側締結部31U1が形成され、同第1上側締結部31U1と前記ポンプ駆動軸42との間に第2上側締結部31U2が形成されるとともに、第1上側締結部31U1の右方ポンプ駆動軸42側で第2上側締結部31U2の上方に第3上側締結部31U3が形成されている(図11参照)。
【0043】
上側締結基部31Uに形成される第1上側締結部31U1,第2上側締結部31U2,第3上側締結部31U3は、冷却水連通部24の開口端面である取付面31Usの周囲に形成されていて、それぞれの取付孔31Uhが取付面31Usに穿孔して形成されている(図7参照)。
図7に示すように、ポンプ室22から延出し第1上側締結部31U1の冷却水連通部24に向けて延びる下流側冷却水通路23を挟んで下方に第2上側締結部31U2、上方に第3上側締結部31U3が位置している。
【0044】
図4と図7を参照して、水ポンプハウジング30の上側締結基部31Uの取付面31Usはシリンダブロック3の前側面3fに形成された上側取付部3Uの取付面3Usに対向し、水ポンプハウジング30の冷却水連通部24の開口はシリンダブロック3の冷却水取入口3Waと対向し、水ポンプハウジング30の取付面31Usの周囲の第1上側締結部31U1,第2上側締結部31U2,第3上側締結部31U3はシリンダブロック3の取付面3Usの周囲の第1上側取付ボス部3U1,第2上側取付ボス部3U2,第3上側取付ボス部3U3に対応する。
【0045】
一方、水ポンプハウジング30における下側延出部位33の延出端部の下側締結基部33Lは、シリンダブロック3の前側面3fの下側取付部3Lに対応し、下側取付部3Lの取付面3Lsと同じ形状の取付面33Lsが取付面3Lsに対向して形成されている。
この下側延出部位33の延出端部の下側締結基部33Lには、下側延出部位33の合せ面30aから最も離れた延出端に第1下側締結部33L1が形成され、同第1下側締結部33L1と前記ポンプ駆動軸42との間に第2下側締結部33L2が形成されている(図11参照)。
【0046】
下側締結基部33Lに形成される第1下側締結部33L1と第2下側締結部33L2は、それぞれの取付孔33Lhが取付面33Lsに穿孔して形成されている(図7参照)。
図4と図7を参照して、水ポンプハウジング30の下側締結基部33Lの取付面33Lsはシリンダブロック3の前側面3fに形成された下側取付部3Lの取付面3Lsに対向し、水ポンプハウジング30の取付面33Lsの左右の第1下側締結部33L1と第2下側締結部33L2はシリンダブロック3の取付面3Lsの第1下側取付ボス部3L1と第2下側取付ボス部3L2に対応する。
【0047】
したがって、水ポンプ20をシリンダブロック3の前側面3fに取り付ける場合、シリンダブロック3の前側面3fに形成された上側取付部3Uの取付面3Usと下側取付部3Lの取付面3Lsに、水ポンプハウジング30における上側延出部位31の上側締結基部31Uの取付面31Usと下側延出部位33の下側締結基部33Lの取付面33Lsをそれぞれ当接し、取付ボルト35を水ポンプハウジング30の上側締結基部31Uの3つの第1上側締結部31U1,第2上側締結部31U2,第3上側締結部31U3の各取付孔31Uhおよび下側締結基部33Lの2つの第1下側締結部33L1,第2下側締結部33L2の各取付孔33Lhに貫通し、シリンダブロック3の上側取付部3Uの3つの第1,第2,第3上側取付ボス部3U1,3U2,3U3の各取付孔3Uhおよび下側取付部3Lの2つの第1,第2下側取付ボス部3L1,3L2の各取付孔3Lhに螺着して締結する。
【0048】
図11は、シリンダブロック3の前側面3fに水ポンプハウジング30が取り付けられて水ポンプ20が支持された状態を示す。
シリンダブロック3の上側取付部3Uの取付面3Usに水ポンプハウジング30の上側締結基部31Uの取付面31Usが接合することで、水ポンプハウジング30側の冷却水連通部24がシリンダブロック3側の冷却水取入口3Waと開口周囲をシール部材34でシールされて連通する。
また、シリンダブロック3の下側取付部3Lの取付面3Lsに水ポンプハウジング30の下側締結基部33Lの取付面33Lsが接合することで、シリンダブロック3の油路開口3p1,3p2は閉塞される。
【0049】
水ポンプハウジング30の中間ポンプ室部位32の左側面に抜ける上流側冷却水通路21には、サーモスタット10から還流する冷却水が流れる水ポンプ吸入通路20iが接続されるので、電動モータ40により水ポンプ20が駆動すると、サーモスタット10から上流側冷却水通路21に還流した冷却水が、ポンプ室22に吸入され、下流側冷却水通路23に吐出されて、冷却水連通部24からシリンダブロック3側の冷却水取入口3Waに流入してシリンダブロック3さらにシリンダヘッド4のウォータジャケットを循環する。
【0050】
図11を参照して、水ポンプハウジング30は、上側延出部位31の上側締結基部31Uが3つの第1上側締結部31U1,第2上側締結部31U2,第3上側締結部31U3でシリンダブロック3の前側面3fに締結され、下側延出部位33の下側締結基部33Lが2つの第1下側締結部33L1,第2下側締結部33L2でシリンダブロック3の前側面3fに締結される。
こうしてシリンダブロック3の前側面3fに取り付けられた水ポンプハウジング30は、右側面の合せ面30aに合体された電動モータ40を片持ち支持する。
【0051】
電動モータ40は、コイルや磁石等をポンプ駆動軸42の周囲に備えた重量物であり、その重心は概ねポンプ駆動軸42にある。
この重量物である電動モータ40を右側に片持ち支持する水ポンプハウジング30における上側延出部位31の延出端の第1上側締結部31U1に作用する力Fuと下側延出部位33の延出端の第1下側締結部33L1に作用する力Flを想定すると、図11にそれぞれ矢印で示すように、第1上側締結部31U1に作用する力Fuは第1上側締結部31U1からポンプ駆動軸42に向かう力であり、第1下側締結部33L1に作用する力Flはポンプ駆動軸42から第1下側締結部33L1に向かう力である。
【0052】
上側延出部位31の第2上側締結部31U2は、第1上側締結部31U1とポンプ駆動軸42との間に形成され、第1上側締結部31U1に作用する力Fuの方向に概ね位置しており、第1上側締結部31U1に作用する力Fuはその力の方向に略位置する第2上側締結部31U2が効率的に分担して支えることができる。
【0053】
本実施の形態では、ポンプ室22から延出し第1上側締結部31U1に向けて延びる下流側冷却水通路23を挟んで第2上側締結部31U2と反対側上方に第3上側締結部31U3が形成されており、第3上側締結部31U3も第1上側締結部31U1とポンプ駆動軸42との間に概ね位置して第1上側締結部31U1に作用する力Fuを第2上側締結部31U2とともに上下で支える位置にあるので、第1上側締結部31U1に作用する力Fuを第2上側締結部31U2とともに効率的に分担して支えることができる。
【0054】
また同時に、下側延出部位33の第2下側締結部33L2は、第1下側締結部33L1とポンプ駆動軸42との間に形成され、第1下側締結部33L1に作用する力Flの方向に位置しており、第1下側締結部33L1に作用する力Flはその力の方向に略位置する第2下側締結部33L2が効率的に分担して支えることができる。
【0055】
以上のように、水ポンプハウジング30は、全体的に水ポンプカバー41側右側の電動モータ40の重量を1部の締結部に力が集中することなく、3つの上側締結部31U1,31U2,31U3と2つの下側締結部33L1,33L2が効率良く分担して支える取付構造をなしてシリンダブロック3に強固に固定される。
【0056】
電動モータ40が相当重い場合でも、電動モータ40のある水ポンプカバー41側の重量を、水ポンプハウジング30は上下複数の締結部31U1,31U2,31U3,33L1,33L2により偏ることなく効率良く支えるように機関本体に取り付けられるので、水ポンプハウジング30は位置ずれが生じ難く、良好な組付け性を確保することができる。
【0057】
水ポンプハウジング30の電動モータ40に最も近い位置にある第2下側締結部33L2は、第2下側締結部33L2より右側の重量物である電動モータ40の重量と、第2下側締結部33L2より左側の水ポンプハウジング30の上側延出部位31および下側延出部位33の大部分の重量とをバランス良く支持する位置にある。
【0058】
そこで、水ポンプ20の水ポンプハウジング30をシリンダブロック3の前側面3fに取り付ける際に、まず最初に、電動モータ40に最も近い位置にある第2下側締結部33L2を、取付ボルト35でシリンダブロック3の第2下側取付ボス部3L2に締結することで、水ポンプ20をバランス良く仮止めすることができ、組付け作業を効率良く実行することができる。
【0059】
水ポンプハウジング30は、上側延出部位31が3つの第1上側締結部31U1,第2上側締結部31U2,第3上側締結部31U3でシリンダブロック3に締結され、下側延出部位33が2つの第1下側締結部33L1,第2下側締結部33L2でシリンダブロック3に締結されるので、上側延出部位31の上側締結基部31Uと下側延出部位33の上側締結基部33Lは互いに略独立に各々が強固に締結される。
【0060】
そのため、上側締結基部33Lの取付面33Lsとシリンダブロック3の取付面3Usとが、冷却水連通部24の開口の周囲の3つの第1上側締結部31U1,第2上側締結部31U2,第3上側締結部31U3で強い締結力により接合し、冷却水通路の接続部のシール性が良好に維持される。
【0061】
また、水ポンプハウジング30の下側延出部位33は、その下側締結基部33Lの取付面33Lsがオイル通路Phに連通する油路開口3p1,3p2を閉塞するので、シールプラグ等の閉塞専用の部品を必要とせず部品点数を削減でき、組付け作業性の向上を図ることができる。
さらに、下側延出部位33は、オイル通路Phの油路開口3p1,3p2を間にして両側の第1下側締結部33L1と第2下側締結部33L2がシリンダブロック3に締結されるので、オイル通路Phの油路開口3p1,3p2を良好なシール性をもって閉塞することができる。
【0062】
本実施の形態では、水ポンプハウジング30の下側延出部位33の下側締結基部33Lがオイル通路Phに連通する油路開口3p1,3p2を閉塞したが、下側締結基部33Lの油路開口3p1,3p2に対向する部分を穿孔して油路開口3p1,3p2間の連通を遮断することで、油路開口3p1からオイルを取り出し、オイルクーラ等の部品に供給し、油路開口3p2に戻すオイル循環経路を容易に構成することが可能である。
【0063】
本実施の形態では、水ポンプ20のポンプ駆動軸42を駆動するアクチュエータが電動モータ40であったが、回動する無端状ベルトが巻掛けられて回転されるプーリをアクチュエータとしてポンプ駆動軸が駆動される水ポンプにも本発明は適用されるものである。
【符号の説明】
【0064】
1…内燃機関、2…機関本体、
3…シリンダブロック、3f…前側面、3r…右側面、3Wa…冷却水取入口、3U…上側取付部、3Us…取付面、3U1…第1上側取付ボス部、3U2…第2上側取付ボス部、3U3…第3上側取付ボス部、3L…下側取付部、3Ls…取付面、3L1…第1下側取付ボス部、3L2…第2下側取付ボス部、3p1,3p2…油路開口、Ph,Pv…オイル通路、
4…シリンダヘッド、5…ロアケース、6…シリンダヘッドカバー、7…オイルパン、8…クランク軸、9…フライホイール、
10…サーモスタット、15…コンプレッサ、18…ラジエータ、19…ヒータコア、
20…水ポンプ、21…上流側冷却水通路、22…ポンプ室、23…下流側冷却水通路、24…冷却水連通部、
30…水ポンプハウジング、30a…合せ面、
31…上側延出部位、31U…上側締結基部、31Us…取付面、31U1…第1上側締結部、31U2…第2上側締結部、31U3…第3上側締結部、
32…中間ポンプ室部位、
33…下側延出部位、33L…下側締結基部、33Ls…取付面、33L1…第1下側締結部、33L2…第2下側締結部、34…シール部材、35…取付ボルト、
40…電動モータ、41…水ポンプカバー、42…ポンプ駆動軸、43…インペラ、45…取付ボルト。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷式内燃機関の機関本体への水ポンプの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータを伴いポンプ駆動軸を軸支する水ポンプカバーがインペラを収容する水ポンプハウジングに合体されて水ポンプが構成され、この水ポンプが内燃機関の機関本体に着脱自在に取り付けられる構成は、種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−012134号公報
【0004】
特許文献1には、水ポンプにパワーステアリングポンプが一体に設けられ、共通のポンプ駆動軸で駆動するようになっており、インペラを収容する水ポンプハウジングとパワーステアリングポンプハウジングとが共通のポンプカバーを挟んで合体され、パワーステアリングポンプハウジングから突出したポンプ駆動軸の端部に共通のアクチュエータであるプーリが形成されている構成が開示されている。
【0005】
水ポンプの水ポンプハウジングは、インペラが収容されるポンプ室から延出する冷却水吐出通路を形成する吐出接続管が水ポンプハウジングの上部で内燃機関の機関本体側に突出しており、水ポンプハウジングの下部には取付ブラケットが形成されている。
【0006】
そして、水ポンプハウジングは、機関本体の側壁の取付面に形成されたウォータジャケットに連通する開口に上部の吐出接続管を挿入し、機関本体の側壁の取付面に下部の取付ブラケットが締付ボルトにより締結されて支持される。
別途、パワーステアリングポンプハウジングは、上下の取付ブラケットが機関本体の側壁の取付面に締付ボルトにより締結されて支持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、水ポンプハウジングは、上部の吐出接続管が機関本体の側壁取付面の開口に挿入され、下部の取付ブラケットが機関本体の側壁取付面にボルトにより1点で締結されるのみであるので、下部が局部的に締結されて、水ポンプハウジング全体が強固に固定されていない。
【0008】
水ポンプハウジングの上部が機関本体の側壁に締結されないことから、上部の吐出接続管が側壁取付面の開口に液密に挿入されるべきところのシール性を保つことが難しい。
また、水ポンプハウジングは、ポンプカバー側にプーリやパワーステアリングポンプなどの重量物が取り付けられるので、水ポンプハウジングは下部の取付ブラケットを機関本体の側壁に締結する締付ボルトを中心に回動する位置ずれが生じ易く、組付け性を悪くする。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、水ポンプを内燃機関の機関本体に良好な組付け性の下で強固に取り付けることができる内燃機関の水ポンプ取付構造を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、
アクチュエータ(40)を伴いポンプ駆動軸(42)を軸支する水ポンプカバー(41)が、インペラ(43)を収容するポンプ室(22)を形成する水ポンプハウジング(30)に合せ面(30a)で一体に合体されて構成される水ポンプ(20)が、内燃機関の機関本体(2)に着脱自在に取り付けられる水ポンプ取付構造において、
前記水ポンプハウジング(30)は、前記水ポンプカバー(41)との合せ面(30a)に対して前記水ポンプカバー(41)とは反対側に延出する上側延出部位(31)と下側延出部位(33)が中間ポンプ室部位(32)より上下に形成され、
前記上側延出部位(31)と前記下側延出部位(33)に前記水ポンプカバー(41)との合せ面(30a)に垂直な機関本体(2)の側壁(3f)に取り付けられる取付面(31Us,33Ls)が形成され、
前記上側延出部位(31)の延出端に第1上側締結部(31U1)が形成されるとともに、前記第1上側締結部(31)と前記ポンプ駆動軸(42)との間に第2上側締結部(31U2)が形成され、
前記下側延出部位(33)の延出端に第1下側締結部(33L1)が形成されるとともに、前記第1下側締結部(33L1)と前記ポンプ駆動軸(42)との間に第2下側締結部(33L2)が形成され、
前記水ポンプハウジング(30)は、機関本体(2)の側壁(3f)に前記取付面(31Us,33Ls)が当接され、前記第1上側締結部(31U1)、前記第2上側締結部(31U2)、前記第1下側締結部(33L1)、前記第2下側締結部(33L2)がボルト(35)により締結されて、前記水ポンプ(20)が機関本体(2)の側壁(3f)に取り付けられることを特徴とする内燃機関の水ポンプ取付構造である。
【0011】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の内燃機関の水ポンプ取付構造において、
前記上側延出部位(31)には、前記水ポンプハウジング(30)のポンプ室(22)から延出し前記第1上側締結部(31U1)に向けて延びる下流側冷却水通路(23)が、前記第1上側締結部(31U1)の手前で取付面(31Us)に開口して機関本体(2)側の冷却水取入口(3Wa)に冷却水を連通する冷却水連通部(24)に至るまで形成され、
前記冷却水連通部(24)の周囲に前記第1上側締結部(31U1)と前記第2上側締結部(31U2)とともに第3上側締結部(31U3)が前記下流側冷却水通路(23)を挟んで前記第2上側締結部(31U2)と互いに上下位置に形成され、
前記第3上側締結部(31U3)も前記第1上側締結部(31U1)と前記第2上側締結部(31U2)とともにボルトにより機関本体(2)の側壁(3f)に締結されることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、
請求項1または請求項2記載の内燃機関の水ポンプ取付構造において、
前記下側延出部位(33)は、機関本体(2)に形成されるオイル通路(Ph)の油路開口(3p1,3p2)を間にして両側に前記第1下側締結部(33L1)と前記第2下側締結部(33L2)が位置するように形成され、前記下側延出部位(33)の取付面(33Ls)が前記油路開口(3p1,3p2)を閉塞することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の内燃機関の水ポンプ取付構造によれば、水ポンプハウジング(30)は、水ポンプカバー(41)側がアクチュエータ(40)により重量が嵩み重くなっても、中間ポンプ室部位(32)の高さのポンプ駆動軸(42)より上の上側延出部位(31)が延出端の第1上側締結部(31U1)および同第1上側締結部(31U1)とポンプ駆動軸(42)との間の第2上側締結部(31U2)でボルト(35)によって機関本体(2)の側壁(3f)に締結され、ポンプ駆動軸(42)より下の下側延出部位(33)が延出端の第1下側締結部(33L1)および同第1下側締結部(33L1)とポンプ駆動軸(42)との間の第2下側締結部(33L2)でボルト(35)によって機関本体(2)の側壁(3f)に締結されるので、水ポンプカバー(41)側がアクチュエータ(40)により重量が嵩み重くなっても、第1上側締結部(31U1)に加わるポンプ駆動軸(42)の方向に向かう力(Fu)はその力の方向に略位置する第2上側締結部(31U2)が効率的に分担して支え、同時に第1下側締結部(33L1)にポンプ駆動軸(42)の方向から加わる力(Fl)はその力の方向に略位置する第2下側締結部(33L2)が効率的に分担して支えることができ、1部の締結部に力が集中することなく分散し、水ポンプハウジング(30)は全体的に水ポンプカバー(41)側の重量を効率良く支える取付構造をなして機関本体(2)に強固に固定される。
【0014】
アクチュエータ(40)が相当重い場合でも、アクチュエータ(40))のある水ポンプカバー(41)側の重量を水ポンプハウジング(30)は上下複数の締結部により偏ることなく効率良く支えるように機関本体(2)に取り付けられるので、水ポンプハウジング(30)は位置ずれが生じ難く、良好な組付け性を確保することができる。
【0015】
水ポンプハウジング(30)の上側延出部位(31)は第1,第2上側締結部(31U1,31U2)で機関本体(2)に締結され、下側延出部位(33)は第1,第2下側締結部(33L1,33L2)で機関本体(2)に締結されるので、上側延出部位(31)と下側延出部位(33)は概ね互いに独立に各々が強固に締結されことになり、取付面(31Us)に形成される冷却水の吐出通路(下流側冷却水通路)の接続部のシール性は良好に維持される。
【0016】
請求項2記載の内燃機関の水ポンプ取付構造によれば、上側延出部位(31)には、水ポンプハウジング(30)のポンプ室(22)から延出し第1上側締結部(31U1)に向けて延びる下流側冷却水通路(23)が、第1上側締結部(31U1)の手前で取付面(31Us)に開口して機関本体(2)側の冷却水取入口(3Wa)に冷却水を連通する冷却水連通部に至るまで形成され、冷却水連通部(24)の周囲に第1上側締結部(31U1)と第2上側締結部(31U2)とともに第3上側締結部(31U3)が下流側冷却水通路(23)を挟んで前記第2上側締結部(31U2)と互いに上下位置に形成されるので、上側延出部位(31)の取付面(31Us)における冷却水通路端部の冷却水連通部(24)の周囲を第1,第2,第3上側締結部(31U1,31U2,31U3)の3か所で上側延出部位(31)を機関本体(2)に強固に締結することができ、冷却水通路の接続部である冷却水連通部(24)の開口のシールを容易に確保することができる。
さらに、第3上側締結部(31U3)は、ポンプ駆動軸(42)と第1上側締結部(31U1)との間にあって、第1上側締結部(31U1)に加わるポンプ駆動軸の方向に向かう力(Fu)を第2上側締結部(31U2)とともに効率的に分担して支えることができる。
【0017】
請求項3記載の内燃機関の水ポンプ取付構造によれば、下側延出部位(33)の取付面(33Ls)が機関本体(2)に形成されるオイル通路(Ph)の油路開口(3p1,3p2)を閉塞するので、オイル通路の油路開口をシールプラグ等の閉塞専用の部品を必要とせず部品点数を削減でき、組付け作業性の向上を図ることができる。
また、下側延出部位(33)は、オイル通路(Ph)の油路開口(3p1,3p2)を間にして両側の第1下側締結部(33L1)と第2下側締結部(33L2)が機関本体(2)に締結されるので、油路開口(3p1,3p2)を良好なシール性をもって閉塞することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係る内燃機関の全体斜視図である。
【図2】同前面図である。
【図3】同内燃機関の冷却系統の模式図である。
【図4】シリンダブロックに水ポンプを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】シリンダブロックの前面図である。
【図6】シリンダブロックに水ポンプを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図7】水ポンプハウジングの裏面図である。
【図8】シリンダブロックに水ポンプハウジングを取り付けた状態の右側面図である。
【図9】図7および図8のIX-IX線で切断した断面図である。
【図10】水ポンプカバー組み込まれた電動モータの左側面図である。
【図11】シリンダブロックに水ポンプを取り付けた状態を示す前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図11に基づいて説明する。
本実施の形態に係る内燃機関1は、図1および図2に示すように、直列4気筒の4ストローク水冷式内燃機関であり、クランク軸8を左右方向に指向させて車両に横置きに搭載される。
本明細書中では、車両を基準に前後左右を決めることとする。
【0020】
内燃機関1の機関本体2は、シリンダが左右方向に配列されたシリンダブロック3の下にクランク軸8挟むように軸支してロアケース5が接合し、シリンダブロック3の上にシリンダヘッド4が重ねられ、その上にシリンダヘッドカバー6が被せられ、ロアケース5の下にはオイルパン7が接合されて構成されている。
【0021】
シリンダブロック3とロアケース5の合せ面から右方に突出するクランク軸8の端部には、軸方向の重量バランスを考慮したフライホイール9が嵌着されている。
そして、シリンダブロック3の前側面3fの右側寄りに電動の水ポンプ20が取り付けられ、その下方に電動コンプレッサ15がロアケース5に取り付けられる。
【0022】
水ポンプ20の駆動により冷却水が循環する冷却系統の主要な循環経路を、図3の冷却系統の模式図に基づいて簡単に説明する。
水ポンプ20から吐出した冷却水は、まずシリンダブロック3内に流入してシリンダブロック3内のウォータジャケットを循環し、次いで上側のシリンダヘッド4内に流入してシリンダヘッド4内のウォータジャケットを循環して、シリンダブロック3およびシリンダヘッド4との間で熱交換し、ウォータアウトレット4eから流出する。
【0023】
また、シリンダヘッド4からは、シリンダヘッド4に取り付けられたサーモスタット10に直接流入するバイパス通路10iが形成されている。
ウォータアウトレット4eからは、冷却水をラジエータ18に循環させるラジエータ流入通路18iが配管され、ラジエータ18からはサーモスタット10に還流させるラジエータ流出通路18eが配管されている。
【0024】
また、ウォータアウトレット4eからは、冷却水を別途空調用のヒータコア19に供給するヒータ流入通路19iが配管され、ヒータコア19からはサーモスタット10に還流させるヒータ流出通路19eが配管されている。
そして、サーモスタット10からは、冷却水を水ポンプ20に還流する水ポンプ吸入通路20iが配管されている。
【0025】
冷却系統の主要な循環経路は、以上のように構成されている。
冷間時には、サーモスタット10がラジエータ流出通路18eを閉じバイパス通路10iを開くことで、冷却水は、ラジエータ18を循環することなくシリンダブロック3およびシリンダヘッド4を流れ、暖機を促進する。
熱間時には、サーモスタット10がラジエータ流出通路18eを開きバイパス通路10iを閉じることで、ラジエータ18を循環して熱を奪われた冷却水がシリンダブロック3およびシリンダヘッド4を流れて両者を冷却することができる。
【0026】
なお、ヒータコア19に流入する冷却水は、ヒータコア19からサーモスタット10を経て水ポンプ20に還流するが、サーモスタット10の駆動に関係なく、またサーモスタット10のワックスに殆ど影響を与えずに、水ポンプ20に吸入されて、常時循環している。
【0027】
以下、水ポンプ20のシリンダブロック3への取付構造について説明する。
気筒列方向(左右方向)に長尺のシリンダブロック3は、下半部のクランクケースに相当する部分が前後に膨出して幅広に形成されている(図1参照)。
このシリンダブロック3の前側面3fの右側寄りに、図5に示すように電動の水ポンプ20が取り付けられる。
【0028】
図4に示すように、シリンダブロック3の前側面3fには、右側寄りの上部に冷却水取入口3Waが開口し、その開口の周囲がシリンダブロック3のシリンダヘッド4との合せ面3sに沿って前方に若干延出して鉛直平面をなす取付面3Usを開口端面とする上側取付部3Uが形成されている。
【0029】
冷却水取入口3Waの周囲の上側取付部3Uには、冷却水取入口3Waの左斜め上方に合せ面3sに沿って第1上側取付ボス部3U1が形成され、冷却水取入口3Waの右斜め下方に第2上側取付ボス部3U2が形成され、冷却水取入口3Waの右斜め上方に合せ面3sに沿って第3上側取付ボス部3U3が形成されており、第1,第2,第3上側取付ボス部3U1,3U2,3U3にはそれぞれ取付孔3Uhが穿設されている。
【0030】
また、シリンダブロック3の前側面3fには、右側面3rの近傍で中央より若干下方に油路開口3p1,3p2が左右方向に並んで開口しており、その開口の周囲が前方に若干延出して鉛直平面をなす取付面3Lsを開口端面とする下側取付部3Lが形成されている。
下側取付部3Lは、シリンダブロック3の右側面3rから左方に長尺に形成され、上側取付部3Uの下方で若干右寄りに位置し、上側取付部3Uより幾らか前方に張り出している。
なお、シリンダブロック3には潤滑系統のオイル通路が形成されており、油路開口3p1,3p2は左右方向に指向したオイル通路Phに連通しており、油路開口3p1は鉛直方向に指向したオイル通路Pvに連通している(図4参照)。
【0031】
油路開口3p1,3p2の周囲の下側取付部3Lには、左側の油路開口3p1の左斜め下方に第1下側取付ボス部3L1が形成され、右側の油路開口3p2の上方若干右寄りに第2下側取付ボス部3L2が形成されており、第1,第2下側取付ボス部3L1,3L2にはそれぞれ取付孔3Lhが穿設されている。
第1,第2下側取付ボス部3L1,3L2は、油路開口3p1,3p2を間に挟んだ両側に設けられている。
【0032】
一方、シリンダブロック3の前側面3fに取り付けられる水ポンプ20は、水ポンプハウジング30と駆動源である電動モータ40とからなり、電動モータ40側に水ポンプカバー41が組み込まれている。
水ポンプハウジング30の右側面の合せ面30aに水ポンプカバー41が被せられるように電動モータ40が一体に取り付けられた状態で、水ポンプハウジング30の合せ面30aに垂直な取付面31Us,33Lsがシリンダブロック3の前側面3fに当接して水ポンプハウジング30が取り付けられる。
【0033】
水ポンプハウジング30は、水ポンプカバー41との合せ面30aに対して水ポンプカバー41とは反対側に延出する上側延出部位31と下側延出部位33が中間ポンプ室部位32より上下に形成されている(図6,図7参照)。
したがって、水ポンプハウジング30は、前面視(図6)で左側面が中間ポンプ室部位32で括れた形状をしている。
【0034】
水ポンプハウジング30の中間ポンプ室部位32には、ポンプ室22が合せ面30aに開口して形成され(図8参照)、ポンプ室22から合せ面30aと反対側(左側)に上流側冷却水通路21が左側面に抜けて穿孔されている。
【0035】
そして、水ポンプハウジング30の合せ面30aに沿ってポンプ室22から上方に溝路として延出して下流側冷却水通路23が形成されている(図8参照)。
下流側冷却水通路23は、合せ面30aの上端手前で屈曲して上側延出部位31の延出方向(左方)に穿孔して延び、上側延出部位31の延出端部の上側締結基部31Uに形成された冷却水連通部24に至っている(図6ないし図9参照)。
【0036】
図8を参照して、水ポンプハウジング30の合せ面30aには、ポンプ室22と下流側冷却水通路23の溝路が開口しており、合せ面30aの周囲に5つのカバー締結部30abが締付孔30ahを備えて形成されている。
【0037】
この水ポンプハウジング30の合せ面30aに、水ポンプカバー41が電動モータ40と一体となって取り付けられる。
水ポンプカバー41は、図10に示すように、水ポンプハウジング30の合せ面30aに対向する略同じ形状の合せ面41aが形成され、中央に大きくポンプ室22の一部が形成され、ポンプ室22から上方に下流側冷却水通路23の一部が延出している。
そして、合せ面41aの周囲に水ポンプハウジング30の5つのカバー締結部30abに対応する取付部41abが取付孔41ahを備えて形成されている。
なお、水ポンプカバー41の合せ面41aにはシール部材が嵌合する溝が形成されている。
【0038】
水ポンプカバー41のポンプ室22の底壁の中央を貫通して電動モータ40の駆動軸であるポンプ駆動軸42が突出しており、ポンプ駆動軸42の突出した端部にインペラ43が嵌着されている。
【0039】
水ポンプハウジング30の合せ面30aと電動モータ40に組み込まれた水ポンプカバー41の合せ面41aとを当接して取付ボルト45を取付孔41ahに貫通して締付孔30ahに螺着することで、水ポンプハウジング30に水ポンプカバー41が合体して電動モータ40が取り付けられる。
水ポンプハウジング30と水ポンプカバー41の合体で、ポンプ室22と下流側冷却水通路23が構成され、電動モータ40側から突出したポンプ駆動軸42の端部に嵌着されたインペラ43はポンプ室22内に位置する。
したがって、電動モータ40が駆動してポンプ駆動軸42がインペラ43とともに回転すると、上流側冷却水通路21に流入した冷却水がポンプ室22に吸入され、下流側冷却水通路23に吐出される。
【0040】
このようにして水ポンプハウジング30に電動モータ40が水ポンプカバー41とともに取り付けられて構成された水ポンプ20は、水ポンプハウジング30がシリンダブロック3の前側面3fに形成された上側取付部3Uの取付面3Usと下側取付部3Lの取付面3Lsに取り付けられる。
【0041】
水ポンプハウジング30における上側延出部位31の延出端部に形成される上側締結基部31Uは、シリンダブロック3の上側取付部3Uの取付面3Usに対向する面に冷却水連通部24が開口する取付面31Usが形成されている(図7参照)。
なお、取付面31Usには、冷却水連通部24の開口周囲にシール部材34(図9参照)が嵌合される溝31vが形成されている。
【0042】
そして、上側延出部位31の延出端部の上側締結基部31Uには、上側延出部位31の合せ面30aから最も離れた延出端に第1上側締結部31U1が形成され、同第1上側締結部31U1と前記ポンプ駆動軸42との間に第2上側締結部31U2が形成されるとともに、第1上側締結部31U1の右方ポンプ駆動軸42側で第2上側締結部31U2の上方に第3上側締結部31U3が形成されている(図11参照)。
【0043】
上側締結基部31Uに形成される第1上側締結部31U1,第2上側締結部31U2,第3上側締結部31U3は、冷却水連通部24の開口端面である取付面31Usの周囲に形成されていて、それぞれの取付孔31Uhが取付面31Usに穿孔して形成されている(図7参照)。
図7に示すように、ポンプ室22から延出し第1上側締結部31U1の冷却水連通部24に向けて延びる下流側冷却水通路23を挟んで下方に第2上側締結部31U2、上方に第3上側締結部31U3が位置している。
【0044】
図4と図7を参照して、水ポンプハウジング30の上側締結基部31Uの取付面31Usはシリンダブロック3の前側面3fに形成された上側取付部3Uの取付面3Usに対向し、水ポンプハウジング30の冷却水連通部24の開口はシリンダブロック3の冷却水取入口3Waと対向し、水ポンプハウジング30の取付面31Usの周囲の第1上側締結部31U1,第2上側締結部31U2,第3上側締結部31U3はシリンダブロック3の取付面3Usの周囲の第1上側取付ボス部3U1,第2上側取付ボス部3U2,第3上側取付ボス部3U3に対応する。
【0045】
一方、水ポンプハウジング30における下側延出部位33の延出端部の下側締結基部33Lは、シリンダブロック3の前側面3fの下側取付部3Lに対応し、下側取付部3Lの取付面3Lsと同じ形状の取付面33Lsが取付面3Lsに対向して形成されている。
この下側延出部位33の延出端部の下側締結基部33Lには、下側延出部位33の合せ面30aから最も離れた延出端に第1下側締結部33L1が形成され、同第1下側締結部33L1と前記ポンプ駆動軸42との間に第2下側締結部33L2が形成されている(図11参照)。
【0046】
下側締結基部33Lに形成される第1下側締結部33L1と第2下側締結部33L2は、それぞれの取付孔33Lhが取付面33Lsに穿孔して形成されている(図7参照)。
図4と図7を参照して、水ポンプハウジング30の下側締結基部33Lの取付面33Lsはシリンダブロック3の前側面3fに形成された下側取付部3Lの取付面3Lsに対向し、水ポンプハウジング30の取付面33Lsの左右の第1下側締結部33L1と第2下側締結部33L2はシリンダブロック3の取付面3Lsの第1下側取付ボス部3L1と第2下側取付ボス部3L2に対応する。
【0047】
したがって、水ポンプ20をシリンダブロック3の前側面3fに取り付ける場合、シリンダブロック3の前側面3fに形成された上側取付部3Uの取付面3Usと下側取付部3Lの取付面3Lsに、水ポンプハウジング30における上側延出部位31の上側締結基部31Uの取付面31Usと下側延出部位33の下側締結基部33Lの取付面33Lsをそれぞれ当接し、取付ボルト35を水ポンプハウジング30の上側締結基部31Uの3つの第1上側締結部31U1,第2上側締結部31U2,第3上側締結部31U3の各取付孔31Uhおよび下側締結基部33Lの2つの第1下側締結部33L1,第2下側締結部33L2の各取付孔33Lhに貫通し、シリンダブロック3の上側取付部3Uの3つの第1,第2,第3上側取付ボス部3U1,3U2,3U3の各取付孔3Uhおよび下側取付部3Lの2つの第1,第2下側取付ボス部3L1,3L2の各取付孔3Lhに螺着して締結する。
【0048】
図11は、シリンダブロック3の前側面3fに水ポンプハウジング30が取り付けられて水ポンプ20が支持された状態を示す。
シリンダブロック3の上側取付部3Uの取付面3Usに水ポンプハウジング30の上側締結基部31Uの取付面31Usが接合することで、水ポンプハウジング30側の冷却水連通部24がシリンダブロック3側の冷却水取入口3Waと開口周囲をシール部材34でシールされて連通する。
また、シリンダブロック3の下側取付部3Lの取付面3Lsに水ポンプハウジング30の下側締結基部33Lの取付面33Lsが接合することで、シリンダブロック3の油路開口3p1,3p2は閉塞される。
【0049】
水ポンプハウジング30の中間ポンプ室部位32の左側面に抜ける上流側冷却水通路21には、サーモスタット10から還流する冷却水が流れる水ポンプ吸入通路20iが接続されるので、電動モータ40により水ポンプ20が駆動すると、サーモスタット10から上流側冷却水通路21に還流した冷却水が、ポンプ室22に吸入され、下流側冷却水通路23に吐出されて、冷却水連通部24からシリンダブロック3側の冷却水取入口3Waに流入してシリンダブロック3さらにシリンダヘッド4のウォータジャケットを循環する。
【0050】
図11を参照して、水ポンプハウジング30は、上側延出部位31の上側締結基部31Uが3つの第1上側締結部31U1,第2上側締結部31U2,第3上側締結部31U3でシリンダブロック3の前側面3fに締結され、下側延出部位33の下側締結基部33Lが2つの第1下側締結部33L1,第2下側締結部33L2でシリンダブロック3の前側面3fに締結される。
こうしてシリンダブロック3の前側面3fに取り付けられた水ポンプハウジング30は、右側面の合せ面30aに合体された電動モータ40を片持ち支持する。
【0051】
電動モータ40は、コイルや磁石等をポンプ駆動軸42の周囲に備えた重量物であり、その重心は概ねポンプ駆動軸42にある。
この重量物である電動モータ40を右側に片持ち支持する水ポンプハウジング30における上側延出部位31の延出端の第1上側締結部31U1に作用する力Fuと下側延出部位33の延出端の第1下側締結部33L1に作用する力Flを想定すると、図11にそれぞれ矢印で示すように、第1上側締結部31U1に作用する力Fuは第1上側締結部31U1からポンプ駆動軸42に向かう力であり、第1下側締結部33L1に作用する力Flはポンプ駆動軸42から第1下側締結部33L1に向かう力である。
【0052】
上側延出部位31の第2上側締結部31U2は、第1上側締結部31U1とポンプ駆動軸42との間に形成され、第1上側締結部31U1に作用する力Fuの方向に概ね位置しており、第1上側締結部31U1に作用する力Fuはその力の方向に略位置する第2上側締結部31U2が効率的に分担して支えることができる。
【0053】
本実施の形態では、ポンプ室22から延出し第1上側締結部31U1に向けて延びる下流側冷却水通路23を挟んで第2上側締結部31U2と反対側上方に第3上側締結部31U3が形成されており、第3上側締結部31U3も第1上側締結部31U1とポンプ駆動軸42との間に概ね位置して第1上側締結部31U1に作用する力Fuを第2上側締結部31U2とともに上下で支える位置にあるので、第1上側締結部31U1に作用する力Fuを第2上側締結部31U2とともに効率的に分担して支えることができる。
【0054】
また同時に、下側延出部位33の第2下側締結部33L2は、第1下側締結部33L1とポンプ駆動軸42との間に形成され、第1下側締結部33L1に作用する力Flの方向に位置しており、第1下側締結部33L1に作用する力Flはその力の方向に略位置する第2下側締結部33L2が効率的に分担して支えることができる。
【0055】
以上のように、水ポンプハウジング30は、全体的に水ポンプカバー41側右側の電動モータ40の重量を1部の締結部に力が集中することなく、3つの上側締結部31U1,31U2,31U3と2つの下側締結部33L1,33L2が効率良く分担して支える取付構造をなしてシリンダブロック3に強固に固定される。
【0056】
電動モータ40が相当重い場合でも、電動モータ40のある水ポンプカバー41側の重量を、水ポンプハウジング30は上下複数の締結部31U1,31U2,31U3,33L1,33L2により偏ることなく効率良く支えるように機関本体に取り付けられるので、水ポンプハウジング30は位置ずれが生じ難く、良好な組付け性を確保することができる。
【0057】
水ポンプハウジング30の電動モータ40に最も近い位置にある第2下側締結部33L2は、第2下側締結部33L2より右側の重量物である電動モータ40の重量と、第2下側締結部33L2より左側の水ポンプハウジング30の上側延出部位31および下側延出部位33の大部分の重量とをバランス良く支持する位置にある。
【0058】
そこで、水ポンプ20の水ポンプハウジング30をシリンダブロック3の前側面3fに取り付ける際に、まず最初に、電動モータ40に最も近い位置にある第2下側締結部33L2を、取付ボルト35でシリンダブロック3の第2下側取付ボス部3L2に締結することで、水ポンプ20をバランス良く仮止めすることができ、組付け作業を効率良く実行することができる。
【0059】
水ポンプハウジング30は、上側延出部位31が3つの第1上側締結部31U1,第2上側締結部31U2,第3上側締結部31U3でシリンダブロック3に締結され、下側延出部位33が2つの第1下側締結部33L1,第2下側締結部33L2でシリンダブロック3に締結されるので、上側延出部位31の上側締結基部31Uと下側延出部位33の上側締結基部33Lは互いに略独立に各々が強固に締結される。
【0060】
そのため、上側締結基部33Lの取付面33Lsとシリンダブロック3の取付面3Usとが、冷却水連通部24の開口の周囲の3つの第1上側締結部31U1,第2上側締結部31U2,第3上側締結部31U3で強い締結力により接合し、冷却水通路の接続部のシール性が良好に維持される。
【0061】
また、水ポンプハウジング30の下側延出部位33は、その下側締結基部33Lの取付面33Lsがオイル通路Phに連通する油路開口3p1,3p2を閉塞するので、シールプラグ等の閉塞専用の部品を必要とせず部品点数を削減でき、組付け作業性の向上を図ることができる。
さらに、下側延出部位33は、オイル通路Phの油路開口3p1,3p2を間にして両側の第1下側締結部33L1と第2下側締結部33L2がシリンダブロック3に締結されるので、オイル通路Phの油路開口3p1,3p2を良好なシール性をもって閉塞することができる。
【0062】
本実施の形態では、水ポンプハウジング30の下側延出部位33の下側締結基部33Lがオイル通路Phに連通する油路開口3p1,3p2を閉塞したが、下側締結基部33Lの油路開口3p1,3p2に対向する部分を穿孔して油路開口3p1,3p2間の連通を遮断することで、油路開口3p1からオイルを取り出し、オイルクーラ等の部品に供給し、油路開口3p2に戻すオイル循環経路を容易に構成することが可能である。
【0063】
本実施の形態では、水ポンプ20のポンプ駆動軸42を駆動するアクチュエータが電動モータ40であったが、回動する無端状ベルトが巻掛けられて回転されるプーリをアクチュエータとしてポンプ駆動軸が駆動される水ポンプにも本発明は適用されるものである。
【符号の説明】
【0064】
1…内燃機関、2…機関本体、
3…シリンダブロック、3f…前側面、3r…右側面、3Wa…冷却水取入口、3U…上側取付部、3Us…取付面、3U1…第1上側取付ボス部、3U2…第2上側取付ボス部、3U3…第3上側取付ボス部、3L…下側取付部、3Ls…取付面、3L1…第1下側取付ボス部、3L2…第2下側取付ボス部、3p1,3p2…油路開口、Ph,Pv…オイル通路、
4…シリンダヘッド、5…ロアケース、6…シリンダヘッドカバー、7…オイルパン、8…クランク軸、9…フライホイール、
10…サーモスタット、15…コンプレッサ、18…ラジエータ、19…ヒータコア、
20…水ポンプ、21…上流側冷却水通路、22…ポンプ室、23…下流側冷却水通路、24…冷却水連通部、
30…水ポンプハウジング、30a…合せ面、
31…上側延出部位、31U…上側締結基部、31Us…取付面、31U1…第1上側締結部、31U2…第2上側締結部、31U3…第3上側締結部、
32…中間ポンプ室部位、
33…下側延出部位、33L…下側締結基部、33Ls…取付面、33L1…第1下側締結部、33L2…第2下側締結部、34…シール部材、35…取付ボルト、
40…電動モータ、41…水ポンプカバー、42…ポンプ駆動軸、43…インペラ、45…取付ボルト。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ(40)を伴いポンプ駆動軸(42)を軸支する水ポンプカバー(41)が、インペラ(43)を収容するポンプ室(22)を形成する水ポンプハウジング(30)に合せ面(30a)で一体に合体されて構成される水ポンプ(20)が、内燃機関の機関本体(2)に着脱自在に取り付けられる水ポンプ取付構造において、
前記水ポンプハウジング(30)は、前記水ポンプカバー(41)との合せ面(30a)に対して前記水ポンプカバー(41)とは反対側に延出する上側延出部位(31)と下側延出部位(33)が中間ポンプ室部位(32)より上下に形成され、
前記上側延出部位(31)と前記下側延出部位(33)に前記水ポンプカバー(41)との合せ面(30a)に垂直な機関本体(2)の側壁(3f)に取り付けられる取付面(31Us,33Ls)が形成され、
前記上側延出部位(31)の延出端に第1上側締結部(31U1)が形成されるとともに、前記第1上側締結部(31)と前記ポンプ駆動軸(42)との間に第2上側締結部(31U2)が形成され、
前記下側延出部位(33)の延出端に第1下側締結部(33L1)が形成されるとともに、前記第1下側締結部(33L1)と前記ポンプ駆動軸(42)との間に第2下側締結部(33L2)が形成され、
前記水ポンプハウジング(30)は、機関本体(2)の側壁(3f)に前記取付面(31Us,33Ls)が当接され、前記第1上側締結部(31U1)、前記第2上側締結部(31U2)、前記第1下側締結部(33L1)、前記第2下側締結部(33L2)がボルト(35)により締結されて、前記水ポンプ(20)が機関本体(2)の側壁(3f)に取り付けられることを特徴とする内燃機関の水ポンプ取付構造。
【請求項2】
前記上側延出部位(31)には、前記水ポンプハウジング(30)のポンプ室(22)から延出し前記第1上側締結部(31U1)に向けて延びる下流側冷却水通路(23)が、前記第1上側締結部(31U1)の手前で取付面(31Us)に開口して機関本体(2)側の冷却水取入口(3Wa)に冷却水を連通する冷却水連通部(24)に至るまで形成され、
前記冷却水連通部(24)の周囲に前記第1上側締結部(31U1)と前記第2上側締結部(31U2)とともに第3上側締結部(31U3)が前記下流側冷却水通路(23)を挟んで前記第2上側締結部(31U2)と互いに上下位置に形成され、
前記第3上側締結部(31U3)も前記第1上側締結部(31U1)と前記第2上側締結部(31U2)とともにボルトにより機関本体(2)の側壁(3f)に締結されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の水ポンプ取付構造。
【請求項3】
前記下側延出部位(33)は、機関本体(2)に形成されるオイル通路(Ph)の油路開口(3p1,3p2)を間にして両側に前記第1下側締結部(33L1)と前記第2下側締結部(33L2)が位置するように形成され、前記下側延出部位(33)の取付面(33Ls)が前記油路開口(3p1,3p2)を閉塞することを特徴とする請求項1または請求項2記載の内燃機関の水ポンプ取付構造。
【請求項1】
アクチュエータ(40)を伴いポンプ駆動軸(42)を軸支する水ポンプカバー(41)が、インペラ(43)を収容するポンプ室(22)を形成する水ポンプハウジング(30)に合せ面(30a)で一体に合体されて構成される水ポンプ(20)が、内燃機関の機関本体(2)に着脱自在に取り付けられる水ポンプ取付構造において、
前記水ポンプハウジング(30)は、前記水ポンプカバー(41)との合せ面(30a)に対して前記水ポンプカバー(41)とは反対側に延出する上側延出部位(31)と下側延出部位(33)が中間ポンプ室部位(32)より上下に形成され、
前記上側延出部位(31)と前記下側延出部位(33)に前記水ポンプカバー(41)との合せ面(30a)に垂直な機関本体(2)の側壁(3f)に取り付けられる取付面(31Us,33Ls)が形成され、
前記上側延出部位(31)の延出端に第1上側締結部(31U1)が形成されるとともに、前記第1上側締結部(31)と前記ポンプ駆動軸(42)との間に第2上側締結部(31U2)が形成され、
前記下側延出部位(33)の延出端に第1下側締結部(33L1)が形成されるとともに、前記第1下側締結部(33L1)と前記ポンプ駆動軸(42)との間に第2下側締結部(33L2)が形成され、
前記水ポンプハウジング(30)は、機関本体(2)の側壁(3f)に前記取付面(31Us,33Ls)が当接され、前記第1上側締結部(31U1)、前記第2上側締結部(31U2)、前記第1下側締結部(33L1)、前記第2下側締結部(33L2)がボルト(35)により締結されて、前記水ポンプ(20)が機関本体(2)の側壁(3f)に取り付けられることを特徴とする内燃機関の水ポンプ取付構造。
【請求項2】
前記上側延出部位(31)には、前記水ポンプハウジング(30)のポンプ室(22)から延出し前記第1上側締結部(31U1)に向けて延びる下流側冷却水通路(23)が、前記第1上側締結部(31U1)の手前で取付面(31Us)に開口して機関本体(2)側の冷却水取入口(3Wa)に冷却水を連通する冷却水連通部(24)に至るまで形成され、
前記冷却水連通部(24)の周囲に前記第1上側締結部(31U1)と前記第2上側締結部(31U2)とともに第3上側締結部(31U3)が前記下流側冷却水通路(23)を挟んで前記第2上側締結部(31U2)と互いに上下位置に形成され、
前記第3上側締結部(31U3)も前記第1上側締結部(31U1)と前記第2上側締結部(31U2)とともにボルトにより機関本体(2)の側壁(3f)に締結されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の水ポンプ取付構造。
【請求項3】
前記下側延出部位(33)は、機関本体(2)に形成されるオイル通路(Ph)の油路開口(3p1,3p2)を間にして両側に前記第1下側締結部(33L1)と前記第2下側締結部(33L2)が位置するように形成され、前記下側延出部位(33)の取付面(33Ls)が前記油路開口(3p1,3p2)を閉塞することを特徴とする請求項1または請求項2記載の内燃機関の水ポンプ取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−108386(P2013−108386A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252710(P2011−252710)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
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