説明

内燃機関の潤滑油のための遠心分離機

本発明は、第1ケース部を形成する基台(2)ならびに前記基台(2)に連結可能な第2ケース部を形成するカバー(3)からなるケース(10)と、前記ケース(10)内に配置されたロータ(4)とを有する、特に、内燃機関の潤滑油用の遠心分離機(1)に関する。本発明による遠心分離機(1)は、モジュラーシステムを構成するモジュールから組み上げられるユニットとして提供され、前記モジュラーシステムには、モジュールとして種々の基台(2,2.1〜2.n)、種々のカバー(3,3.1〜3.n)、種々のロータ(4,4.1〜4.n)の全て又はいずれかが含まれており、これらのモジュールの種々の組み合わせにより種々の遠心分離機(1)が組み上げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1ケース部を形成する基台と前記基台に連結可能な第2ケース部を形成するカバーとからなるケースと、前記ケース内に配置されたロータとを備えた、特に内燃機関の潤滑油のための遠心分離機に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したタイプの遠心分離機はずっと以前から使用されてきていると共に広く普及しているため一般に公知であり、内燃機関の潤滑油用に使用される点でも知られている。この種の使用に際して、遠心分離機は、適用された内燃機関の潤滑油中に含まれている微細な異物粒子を潤滑油から分離するために使用される。この場合、遠心分離機はその内燃機関の潤滑油循環システムの二次流れ系に配置され、潤滑油循環システムの一次流れ系にはフィルタユニット交換式の潤滑油フィルタが配置されるのが通例である。その際、内燃機関とくに船舶または機関車で使用されるかまたは大型の定置式パワーユニットに使用されるような大型機関では、それぞれ別々に潤滑油循環系から取り外すことのできる2台の潤滑油フィルタを並列配置することが知られている。こうすることにより、潤滑油循環系を全体として停止させることなしに、そのつど潤滑油循環系から取り外すことのできるオイルフィルタをメンテナンスすることができ、特には、オイルフィルタの内部にあるフィルタユニットを交換することができる。こうして、その内燃機関の連続的運転は保証されることができる。このことから、遠心分離機を二重に配置することは公知ではないし、またこれは不必要である。なぜなら、潤滑油循環系になんら支障をもたらすことなく必要に応じて、つまり、たとえば遠心分離機のメンテナンスのために、遠心分離機が一時的に遮断可能な二次流れ系に配置されているからである。
【0003】
多くの内燃機関、特に、上述したような船舶または機関車用の大型機関、または大型の定置式内燃機関では、潤滑油循環量が多量なために、遠心分離機に非常に大きなロータが使用され、それは、実際のところ、適用された内燃機関の大きさ次第では、容積6〜7リットルまでに達することになる。この種のロータはその大きさからして金属からしか製造することができないが、それによってロータは相対的に重くなる。さらに、ロータの大きさと、内部にある潤滑油および分離沈着された異物の加わったロータの重量とによって、ロータの支持にはコストを要する仕組みが必要である。この場合、ロータはその大きさと、相応した質量とによって、高い潤滑油処理量が求められるにもかかわらず、その駆動に相対的に低い回転数しか達成できず、これによって異物分離効率が低下する。さらに、異なった大きさの内燃機関に合わせて多数多様な遠心分離機が製造、在庫されなければならず、これによって遠心分離機の製造、在庫、販売および交換部品の在庫に手間とコストがかかり、結果としてコスト的な負担を強いる点も短所となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述した短所が回避され、種々異なる要件に対して自在な適用性が実現されると共により安価かつより容易な製造、より容易な在庫管理ならびに交換部品の供給、そしてより経済的かつより効率的な稼動が達成される、上述したタイプの遠心分離機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題の解決は、本発明によれば、冒頭に述べタイプの遠心分離機において、この遠心分離機がモジュラーシステムを構成するモジュールから組み上げられるユニットとして提供され、前記モジュラーシステムには、モジュールとして種々の基台、種々のカバー、種々のロータの全て又はいずれかが含まれており、これらのモジュールの種々の組み合わせにより種々の遠心分離機が組み上げられることによって達成される。
【0006】
本発明によるモジュラーシステム式遠心分離機により、より容易かつとりわけ経済的に、種々の異なる遠心分離機を製造することが可能であり、その際、前記モジュラーシステムの異なる種々の部品を自在に組み合わせて種々の遠心分離機に組み上げることができる。これにより、交換部品の保持ならびに供給も容易化され、したがって、より経済的に行うことができる。各ロータは好ましくは適切な段階に分けられた種々の容積を有しており、種々の大きさの内燃機関に合わせて遠心分離機の性能を適宜適合させることができる。この場合、比較的少ない種類の、大きさの相異するロータを用いて、実用上十分多様な範囲におよぶサイズならびに性能を有する遠心分離機を提供することができる。
【0007】
本発明の第1の実施態様において、前記モジュラーシステムには、前記カバーと連結される周壁の高さが異なっている種々の基台と、共通の高さを有するカバーまたは異なる高さを有するカバーと、異なる高さのロータとが含まれている。これによって、特に、コスト高な構造部品であった基台の製造が経済的なものとなるが、それは1つの共通の基台を種々の大きさの遠心分離機用に使用できるからである。これによって前記基台は多量生産することができ、その結果、1個当たりの製造コストが低下する。
【0008】
本発明のさらに別の実施態様において、前記モジュラーシステムには、前記カバーと連結される周壁の高さが異なっている種々の基台と、共通の高さを有するカバーまたは異なる高さを有するカバーと、異なる高さのロータとが含まれている。この実施態様においては、さらに、種々の大きさの遠心分離機の製造のために種々の高さの周壁を用いることができる。この場合、前記基台は好ましくは前記周壁を別としてその他のすべての点では不変のままであり、これにより、種々の基台が製造されなければならないにしても、それらの基台は周壁の高さの点でのみ相違しているにすぎない。従って、前記基台を成形製造するにあたって、1つの鋳型の大部分を各基台の製造に利用することができ、種々の高さの周壁についてはたとえば交換可能な鋳型部品を前記鋳型に組み付けることが解決できるわけであり、基台の経済的な製造が可能である。
【0009】
さらに、本発明によれば、前記モジュラーシステムには、連結可能な前記ロータの数が異なる種々の基台が含まれているような構成も可能である。本発明のこの実施態様において、基台は2台、3台またはそれ以上の数のロータを装備することができ、その際、それらのロータはモジュラーシステムから選び出すことができる。この場合、これらのロータは互いに同一仕様であっても互いに異なっていてもよく、これにより、遠心分離機を種々の仕様に良好に適合させることができる。
【0010】
さらに別の実施態様として、前記基台に対して、前記ロータの数に相当する、同じ高さ又は異なる高さを有するカバーを各ロータ単位で連結可能とすることを提案することができる。この態様において、各ロータには専用の1つのカバーが備えられている。この場合、各カバーは当該ロータに高さの点で適合されているのが好ましく、さらにこの場合にも、互いに同一仕様のロータと同一仕様のカバーまたはそれに代えて種々の高さのロータとそれに適合する種々の高さのカバーを前記共通の基台に連結することも可能である。
【0011】
さらに別な実施形態の1つとして、前記基台に対して、前記ロータの数と高さと空間配置に適合するすべてのロータに共通のカバーが連結可能であることが提案されている。この実施態様においては、すべてのロータに共通の単一のカバーが必要とされるだけであり、これにより、当該遠心分離機の製造および組み立てならびに保守は容易になり、重量節減も達成することができる
本発明のさらに別な実施形態の1つでは、前記モジュラーシステムには、多様な基台、つまり、適用される装置、特に内燃機関と連結可能なマスタ基台としての第1基台と、前記第1基台と連結可能なスレーブ基台としての少なくとも1つの第2基台とが含まれている。本発明のこの実施態様により、必要に応じて1台または複数台のロータを有し、各々のロータに専用の1つのカバーが備えられた遠心分離機を製造することが可能となる。最小タイプとして、前記遠心分離機は1台の当該ロータと1つのカバーとを備えたマスタ基台から構成することができる。必要に応じ、より高い遠心分離機性能が求められる場合には、前記マスタ基台に、またもそれぞれ1台のロータと1つのカバーとを備えた1つまたは複数のスレーブ基台を連結することができる。この場合、すでに上述したように、2つまたはそれ以上の基台を使用するにあたって、ロータないしカバーは互いに同一仕様であるかまたは互いに異なるものであってもよい。
【0012】
本発明の別な実施態様では、前記モジュラーシステムには、一方で適用される装置、特に内燃機関に連結可能であるとともに他方で同一仕様の別な基台とシリアルに連結される1つの基台が含まれる。この場合有利なことに単一仕様の基台が必要とされるだけであり、しかもこの仕様の基台は同一仕様の基台との直列配置が可能である。これにより、1つの基台と1つのロータと1つのカバーとを有した1つの遠心分離機から出発して、2つまたはそれ以上の基台とそれと同数のロータとカバーとを有した遠心分離機をモジュール式に合成して、当該遠心分離機をそれぞれの所望の仕様に適合させることができる。当該遠心分離機が複数の基台を含んでいる場合には、言うまでもなくこの場合にも互いに同一仕様のロータおよびカバーまたは互いに異なる仕様のロータおよびカバーを選択することができる。
【0013】
ある種の内燃機関、とりわけ特に大型の内燃機関は比較的少数でしか製造されないことが多く、結果として、そのために必要とされる遠心分離機の数も相応して僅かでしかない。特にこうしたケースのために、本発明において、前記基台は、適用される装置、特に内燃機関に合わせて個別に製造される構造部品であり、前記構造部品を種々のカバーまたは種々のロータあるいはその両方と種々に組み合わせることで種々の遠心分離機が組み上げられる。この場合、基台はたとえば、相対的に僅かな個数でも経済的に製造可能な砂型鋳造品であってよい。この個別に製造された基台にはモジュラーシステムから選択されたロータおよびカバーを連結することができるため、当該ロータおよびカバーのためにコスト高となる個別製作を行う必要はない。
【0014】
特に、本発明による遠心分離機の容易な組み立てを可能にするため、好ましくは、前記基台は、適用される装置、特に内燃機関との連結または他の基台との連結あるいはその両方との連結の際に機械的連結と流体連通連結とを同時に実現する1つまたは複数のフランジ継手を有するとよい。これによって遠心分離機の容易かつ問題のない組み立てが保証され、しかも、取り付けに手間とコストを要し、しかも障害を生じやすい外部配管は不要となる。
【0015】
最後に、本発明による遠心分離機において、さらに好ましくは、この遠心分離機はフリージェット遠心分離機であり、前記ロータは少なくとも1つの反動ノズルを有するとよい。この場合、前記基台、前記カバーおよび、前記ロータをそれぞれ担持する軸は前記ロータを駆動するための駆動部品とはまったく無関係であり、そのため、前記それぞれの部品は構造的に単純で、安価に製造できるという利点が得られる。
【0016】
前記モジュラーシステム内部において個々のロータは相対的に小さくてよいことから、前記ロータの大部分または全てがプラスチック製とすることができる。これによって、安価な製造が可能になると共に、前記ロータが軽量になるという利点が得られ、その結果、稼動中の前記ロータの回転数が向上して、異物分離に非常に有利な効果が達成される。
【0017】
さらには、複数台の小形ロータはその駆動に、前記複数台の小形ロータの容積の和に等しい容積を有する1台の大形ロータよりも少量の流体を要するにすぎず、これが効率の向上に貢献する。
【0018】
実用上、たとえば、前記モジュラーシステムの前記多様なロータの容積は0.8リットル、1.0リットル、1.2リットルおよび1.8リットルとすることができる。こうして、最小のロータのみを使用する場合の最少量としての0.8リットルから複数台の大形のロータまたは最大のロータを使用する場合の数リットルまでに及ぶ範囲の遠心分離機容量をカバーすることができ、その際、最小で0.2リットルまでの容量差による細かな仕様分けを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一連の実施形態を説明する。
【0020】
図1は、それぞれ下側ケース部分を構成するそれぞれ同一仕様の基台2を有することを特徴とする3つの異なった遠心分離機1を並べて示したものである。いずれの基台2も、遠心分離機1で浄化さるべき液体、たとえばこの遠心分離機が適用される内燃機関の潤滑油が供給される供給路21ならびに、浄化済み液体が遠心分離機1から導出される導出路22を含んでいる。さらに、それぞれの基台2は上方に向かって延びる周壁23を含んでいる。この周壁23には、図1に示した3つの遠心分離機のいずれにあっても、カバー3.1,3.2,3.3が連結されており、ここでは、シールリングを介在させて着脱式に螺合連結されている。カバー3.1〜3.3は、その下部にそれぞれ周壁23に螺合するための同一仕様の末端継手を設けているが、高さの点では、図1に具体的に示されているように、上方に向かってそれぞれ異なった高さとなっている。
【0021】
基台2とこれに対応するカバー3.1,3.2または3.3によって作り出されるそれぞれのケース10の内部空間11内には、それぞれの基台2に挿し込み固定された1本の軸24.1,24.2ないし24.3が配置されている。カバー3.1〜3.3の高さの違いに応じて、軸24.1〜24.3もカバー高さに対応するように異なった軸方向長さを有している。
【0022】
さらに、それぞれの遠心分離機1の内部空間11内には、それぞれ1台のロータ4.1〜4.3が配置されている。図1の左に示した遠心分離機1のロータ4.1は、カバー3.1の高さと軸24.1の長さに合った高さを有しており、この高さは他に比べて低いものとなっている。図1に示した次の第2の遠心分離機1のロータ4.2は左の遠心分離機1のそれより大きな高さを有し、図1の右に示した遠心分離機1のロータ4.3は最も大きい高さを有している。
【0023】
図1に示した例は、同一仕様の基台2を用いて、容積の異なる、結果的には性能の異なるそれぞれ1つのロータ4.1〜4.3を備えた複数の、ここでは3つの異なったサイズの遠心分離機1を組み上げることができることを具体的に示している。この場合、相対的に複雑でコスト高な構造部品としての基台はそれぞれ図1に示した3つの遠心分離機1のすべてにおいて同一仕様であり、それゆえ、基台2は多数の個数で製造することができ、1個当たりの製造コストを低くすることができる。軸24.1〜24.3、カバー3.1〜3.3およびロータ4.1〜4.3は互いに異なっているが、これらの構造部品は基台2に比較してそれぞれ構造的により単純であり、したがってまた相対的に低いコストで、しかもそれぞれ異なったサイズ、ここでは種々異なった高さのものを製造可能である。こうして、サイズと性能が異なる種々の遠心分離機1のモジュール式の製造を可能にする第1の選択式でかつ低コストのモジュラーシステムが実現される。
【0024】
図2は図1に示した3つの遠心分離機1を縦方向に並べて配置して示したものであり、これによって、高さの相違とそれ以外の一致点とが明らかになる。図2の下側には、縦断面の形で、3つの遠心分離機1のすべてに共通の基台2が示されている。基台2内には、供給路21と導出路22とが設けられている。この共通の基台2には、周壁23および基台2の下側本体と共に遠心分離機1のケース10を形成する、高さの異なる3つのカバー3.1〜3.3を連結することができる。高さの異なるカバー3.1〜3.3によってケース10に異なった高さの内部空間11が形成されることとなり、これによって、同所に適宜異なった長さの軸24.1〜24.3と、適宜異なった高さのロータ4.1〜4.3とを収容することができる。
【0025】
図3は、縦断面の形で、図1と図2と比較して基台2が変更させられた遠心分離機1の1つの実施形態を示している。ここでは、基台2の改変は周壁23がより高く形成されているという点にあり、その他の点では基台2は図1と図2に示した実施形態の基台2と同一仕様である。周壁23の高さがより高く形成されていることにより、遠心分離機1のケース10には相応して高くなった内部空間11が作り出され、その際、異なった高さのカバー3.1〜3.3を基台2に連結することにより、ケース10の内部空間11の高さをさらに変化させることができる。図3に示した実施形態では、図1と図2に示したうち最も小さい高さのカバー3.1が周壁23と連結されている。ただし、これによっても、他方で周壁23の高さがより大きく形成されているために、図1と図2に示したうちの最も長い軸24.3と最も高いロータ4.3とを収容することができる高さを有したケース10の内部空間11が作り出される。図3に示した基台2が、図1と図2に示した、より高いカバー3.2または3.3と組み合わされればケース10の内部空間11はより高くなるため、その場合には、図1と図2に示したうち最も長いつまり最も高い当該構造部品よりもさらに長い軸とさらに高いロータとが使用される。
【0026】
図4は、縦断面の形で、1つの共通の基台2上に配置された2台のロータを有する遠心分離機1の1つの実施形態を示している。そのため、基台2は基台2の中央部で合体する2つの周壁23を備えている。双方の周壁23のそれぞれには同心的に1本の軸24が基台2に対して挿し込み固定されている。各軸24にはロータ4が回転可能に軸支されており、この場合、双方のロータ4は同一仕様である。各周壁23には、この場合、専用のカバー3が螺合されており、それぞれのカバー3も同一仕様である。これにより、遠心分離機1内に2つの内部空間が形成され、2つのロータ4の1つが各内部空間11に配置されている。浄化さるべき液体の供給のため、基台には2本の供給路21が設けられており、浄化済み液体の導出には、基台2内を走る2本の導出路22が利用される。供給側では、対応する内燃機関と連通する先ず1本の共通の供給路が設けられ、この供給路から図に示されている2本の供給路21に分岐するのが好適である。同様に、2本の導出路22は、当該内燃機関と連通する1本の共通の導出路に合流されるのが好適である。図4に示した実施形態とは異なり、同図に示した基台2に、異なった長さの軸24、異なった高さのカバー3および異なった高さのロータ4を組み合わせることができることは言うまでもない。
【0027】
図5は、1つの共通の基台2に3台の異なったロータ4.1,4.2および4.3が取り付けられた遠心分離機1の1つの実施形態を示している。基台2は、それぞれのロータ4.1〜4.3のために、この基台に挿し込み固定された異なった長さの軸24.1,24.2および24.3を有しており、これら軸長さはそれぞれ、ロータ4.1〜4.3の異なった高さに対応いている。
【0028】
基台2はその上側面に各々の軸24.1〜24.3と同心の、それぞれ1つの周壁23を有しており、これらの周壁は隣接するロータ4.1と4.2の間ならびに4.2と4.3の間でそれぞれ部分的に合体している。各々の周壁23には上方から、軸長さならびに対応ロータ4.1〜4.3の高さに適合したカバー3.1,3.2ないし3.3が螺合されており、カバーはケース10を上方に向かって密閉して、各々のロータ4.1〜4.3を収容するケース10の内部空間11を作り出している。
【0029】
この実施形態の場合、浄化さるべき液体を3台のロータ4.1〜4.3に供給するには、それぞれ図面の面に対して垂直に延びる3本の供給路21が使用される。この場合にも、供給側では、対応する内燃機関と連通する先ず1本の共通の供給路が設けられ、この供給路から図で示された3本の供給路21が分岐するのが好適である。浄化済み液体の導出には、対応内燃機関と連通する図示されている1本の共通の流路として合流している導出路22が使用される。図5に示した基台2には、変形例として、2本または3本の同長の軸、2つまたは3つの同じ高さのカバーおよび2つまたは3つの同じのロータを装備することも可能であることは言うまでもない。
【0030】
図6は、幾何学的に1つの正三角形に内接して配置されたここでは図示されていない3つのロータを有した遠心分離機1の平面図を示したものである。この場合、個々のロータの回転軸は互いに平行かつ図面の面に対して垂直に延びている。この平面図において3つのカバー3が示されており、これらのカバーはそれぞれ図示されていない周壁と共に遠心分離機1のケース10を形成している。これらの3つのカバー3は、図6において、それぞれ同一の直径を有しているが、図面の面に対して垂直をなして延びるカバー3の高さはそれぞれ同一もしくは互いに相違していてよい。したがって、図6に示した遠心分離機1においては、3つの同じ高さのロータまたは、そのうち2台または3台とも高さの異なるロータを使用することが可能である。基台2は、図6において下側を向いた面に、この遠心分離機1を適用する装置たとえば内燃機関に連結するためのフランジ継手20を有している。この場合、このフランジ継手20は好適には機械的な連結と同時に流体連通連結も実現するように構成されていることから、連結のための作業が必要とされるだけであって、外部配管は不要である。
【0031】
図7は、縦断面の形で、互いに同一仕様の2つのロータ4を有した遠心分離機1を示している。それぞれのロータ4は1つの共通の基台2に、それぞれ1本の軸24を介して回転可能に軸支されており、この場合、軸24は同じく互いに同一仕様でありかつ基台2にしっかりと取り付けられている。複数のロータを有する上述した実施形態の遠心分離機1とは異なり、この実施形態では、半径方向外側に単一の周壁23しか設けられていない。この単一の周壁23は単一のカバー3と連携して基台2と共に、2つのロータ4を覆う、一体的な内部空間11を作り出すケース10を形成している。この場合、浄化さるべき液体の供給は、基台2内を延びる2本の供給路21によって行われ、その際、これら2本の供給路は好適には対応内燃機関と連通する1本の共通流路からの分岐によって作り出されている。その際、浄化済みの液体の導出用に、図示されている1本の共通の導出路22が基台2内に設けられている。
【0032】
図8は2つのロータを有した遠心分離機1を示しているが、この実施形態の特徴は2つの異なった基台2.1および2.2が使用されていることである。第1の基台2.1は第1の軸24と、この軸24に回転可能に軸支された第1のロータ4とを担持している。さらに、第1の基台2.1は周壁23を含んでおり、この周壁に第1のねじ込みカバー3が上方から密に螺挿されて、ケース10を形成すると共に内部空間11を外側に対して密封している。第2の基台2.2も同じく周壁23を含んでおり、この周壁に第1のカバー3と同一仕様の第2のカバー3が上方から密に螺挿されている。内部空間11内には第1の軸24と同一仕様の軸24が配置されており、この軸24は第1のロータ4と同一仕様の第2のロータ4を回転可能に担持している。
【0033】
第1の基台2.1は、図中不図示の装置たとえば当該内燃機関と機械的ならびに流体連通式に連結されたマスタ・基台を形成している。第1の基台2.1は図8において右を向いた側にフランジ継手20を有しており、該フランジ継手にスレーブ・基台としての第2の基台2.2が専用の相補係合フランジ継手20を介してフランジ連結されて、両者の間に機械的ならびに流体連通式の連結が形成されている。したがって、第2の基台2.2も第1の基台2.1を介して間接的ではあるが当該装置たとえば当該内燃機関と連結されている。
【0034】
それぞれの基台2.1,2.2内には浄化さるべき液体を供給するための供給路21と、浄化済みの液体を導出するための導出路22が延びており、図中において、導出路22は図示断面の後方に位置しているので、破線で示されているだけである。フランジ継手20によって形成されるフランジ継ぎ部で、双方の供給路21と双方の導出路22は終端されて互いにそれぞれ流体連通連結されているため、第1の基台2.1から第2の基台2.2への浄化さるべき液体の導通ならびに第2の基台2.2から第1の基台2.1への浄化済み液体の導通が達成される。流路21および22と当該装置たとえば当該内燃機関との連結は図8において不可視の方法で、もっぱら第1の基台2.1の領域で、好適にはさらに別のフランジ継ぎを介して行われる。
【0035】
図8に示した2台のロータ4を有した遠心分離機1に代えて、1台のみのロータ4を有した遠心分離機1が必要とされる場合には、第2の基台2.2を、軸24、カバー3およびロータ4と共に取り去ることができる。第1の基台2.1のフランジ継手20の箇所の流体連通路は適切なストッパで密閉され、その後、軸24とカバー3を備えた第1の基台2.1は、1台のみのロータ4を有した、独立して機能し得る遠心分離機1を組み上げることができる。
【0036】
図9はさらに別の実施形態の遠心分離機1を示しており、ここでは、マスタ基台を形成する第1の基台2.1はそれぞれスレーブ基台を形成する2つの第2の基台2.2,2.3と連結されている。この連結は、ここでも、それぞれフランジ継手20を介して行われている。適用される装置たとえば内燃機関と遠心分離機1との間の機械的な流体連通連結は、図9において、2つのスレーブ基台2.2,2,3がその親として連結されたマスタ基台2.1によってつくり出される。必要に応じて、マスタ基台2.1は単独でも、あるいは単一のスレーブ基台2.2または2.3のみを有した形でも使用することができ、その際、切り離された一方もしくは双方のフランジ継手20の箇所の液体供給・導出用の流路21,22は適切に密閉される。すでに図8で図示説明した実施形態と同様に、図9に示した遠心分離機1の場合にも各々の基台2.1〜2.3は各々の周壁23を有しており、各々の周壁に上方からそれぞれ1つのカバー3が密に螺合挿入されている。これにより、それぞれ1本の軸24と該軸に回転可能に軸支された1台のロータ4とが配置された3つの内部空間11が形成される。この場合、図9において、軸24、カバー3およびロータ4は互いに同一仕様である。ここでも、基台2.1〜2.3を不変のままとして、長さの異なる2本または3本の軸24ならびに相応して高さの異なる2台または3台のロータ4とカバー3とを使用し得ることは言うまでもない。
【0037】
図10は、最後の実施形態として、複数の、ここでは3つの互いに同一仕様の基台2が直列配置で連結されていることを特徴とする遠心分離機1を示している。この実施形態では、それぞれ2つの隣接基台2の間の所要の機械的流体連通連結はそれぞれフランジ継手20を介して実現されている。ここでは、基台2は互いに同一仕様であることから、特に経済的な製造が可能であり、しかもその際、それぞれ必要な数の基台2を直列配置で連結することが可能である。この場合、各々の基台2はそれぞれ1つの周壁23を有しており、この周壁にまたも上方からカバー3が密に螺挿されて、遠心分離機1の稼動にあたって密閉されたケース10を形成している。この場合、ケース10は互いに分離された3つの内部空間11を含んでおり、各々の内部空間11にはそれぞれ1本の軸24と該軸に回転可能に軸支された1台のロータ4とが配置されている。ここで、軸24、カバー3およびロータ4は互いに同一仕様である。ただしこの場合にも、異なった長さの軸24と、相応して異なった高さのカバー3およびロータ4を使用し得ることはいうまでもない。
【0038】
図示されていない、この遠心分離機の適用装置たとえば当該内燃機関との連結は、図10において、左に位置する基台2の左側接続フランジ20によって実現される。直列配置で連結された3つの基台2の右端において、右を向いた接続フランジ20からの液体の流出は同所に取付けられた密閉ストッパによって阻止されている。必要に応じ、右側フランジ継手20の密閉ストッパを取り外し、こうしてさらに1つまたは複数の基台2を連結して、より大きな性能の遠心分離機1を形成することができる。
【0039】
直列配置で連結された基台2の内部には、浄化さるべき液体ないし浄化済み液体用の、それぞれ互いに一直線に整列されて連結された供給路21と、図示された断面の後方に位置しているので破線で示された導出路22とが延びている。さらに、基台2の内部には、必要に応じ、たとえば左側の基台2のごく下方に実線で、右側に連結されたさらに2つの基台2のまたもごく下方に破線でそれぞれ示したように、さらに別の所要の流路を設けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】互いに同一仕様の基台を有する3つの異なった遠心分離機の縦断面をならべて示す図。
【図2】図1に示した3つの遠心分離機の同じく縦断面を前後に直列に配置して示す図
【図3】さらに別の実施形態の遠心分離機の縦断面図
【図4】2台のロータを備えたさらに別の遠心分離機の縦断面図
【図5】3台のロータを備えた遠心分離機の1つの実施形態の縦断面図
【図6】3台のロータを備えた遠心分離機の平面図
【図7】2台のロータを備えた遠心分離機の縦断面図
【図8】2台のロータを備えたさらに別の遠心分離機の縦断面図
【図9】3台のロータを備えた遠心分離機の縦断面図
【図10】同じく3台のロータを備えた最後の遠心分離機の縦断面図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケース部を形成する基台(2)と前記基台(2)に連結可能な第2ケース部を形成するカバー(3)とからなるケース(10)と、前記ケース(10)内に配置されたロータ(4)とを備えた、特に内燃機関の潤滑油用の遠心分離機(1)であって、
この遠心分離機(1)はモジュラーシステムを構成するモジュールから組み上げられるユニットとして提供され、前記モジュラーシステムには、モジュールとして種々の基台(2,2.1〜2.n)、種々のカバー(3,3.1〜3.n)、種々のロータ(4,4.1〜4.n)の全て又はいずれかが含まれており、これらのモジュールの種々の組み合わせにより種々の遠心分離機(1)が組み上げられることを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
前記モジュラーシステムには、1つの共通の基台(2)と、種々の高さのカバー(3.1〜3.n)と、種々の高さのロータ(4.1〜4.n)とが含まれていることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項3】
前記モジュラーシステムには、前記カバー(3,3.1〜3.n)と連結される周壁(23)の高さが異なっている種々の基台(2.1〜2.n)と、共通の高さを有するカバー(3)または異なる高さを有するカバー(3.1〜3.n)と、異なる高さのロータ(4.1〜4.n)とが含まれていることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項4】
前記モジュラーシステムには、連結可能な前記ロータ(4)の数が異なる種々の基台(2)が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項5】
前記基台(2)に対して、前記ロータ(4)の数に相当する、同じ高さ又は異なる高さを有するカバー(3,3.1〜3.n)が各ロータ単位で連結可能であることを特徴とする請求項4に記載の遠心分離機。
【請求項6】
前記基台(2)に対して、前記ロータ(4)の数と高さと空間配置に適合するすべてのロータ(4)に共通のカバー(3)が連結可能であることを特徴とする請求項4に記載の遠心分離機。
【請求項7】
前記モジュラーシステムには、多様な基台(2.1〜2.n)、つまり、適用される装置、特に内燃機関と連結可能なマスタ基台としての第1基台(2.1)と、前記第1基台(2.1)と連結可能なスレーブ基台としての少なくとも1つの第2基台(2.2〜2.n)とが含まれることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項8】
前記モジュラーシステムには、一方で適用される装置、特に内燃機関に連結可能であるとともに他方で同一仕様の別な基台(2)とシリアルに連結される1つの基台(2)が含まれることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項9】
前記基台(2)は、適用される装置、特に内燃機関に合わせて個別に製造される構造部品であり、前記構造部品を種々のカバー(3.1〜3.n)または種々のロータ(4.1〜4.n)あるいはその両方と種々に組み合わせることで種々の遠心分離機(1)が組み上げられることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項10】
前記基台(2,2.1〜2.n)は、適用される装置、特に内燃機関との連結または他の基台(2,21.〜2.n)との連結あるいはその両方との連結の際に機械的連結と流体連通連結とを同時に実現する1つまたは複数のフランジ継手(20)を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の遠心分離機。
【請求項11】
この遠心分離機(1)はフリージェット遠心分離機であり、前記ロータ(4,4.1〜4.n)は少なくとも1つの反動ノズルを有することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の遠心分離機。
【請求項12】
前記ロータ(4,4.1〜4.n)の大部分または全てがプラスチック製であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の遠心分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−544457(P2009−544457A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529492(P2008−529492)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008257
【国際公開番号】WO2007/028498
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(500522301)ヘングスト・ゲー・エム・ベー・ハー・ウント・コー・カー・ゲー (7)
【氏名又は名称原語表記】HENGST
【住所又は居所原語表記】NIENKAMP 55ー85, Dー48147 MUENSTER, BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
【Fターム(参考)】