説明

内燃機関の点火装置

【課題】点火コイルの大型化抑制を図りつつ、電極消耗の抑制を図ったプラス放電を可能にする。
【解決手段】一次コイルL1および二次コイルL2を有する点火コイル20と、蓄電した電力を一次コイルL1へ放電することにより、二次電圧の絶対値を昇圧させて容量放電させる容量放電用回路と、一次コイルL1への通電を遮断することにより、二次電圧の絶対値を昇圧させて誘導放電させる誘導放電用回路とを備える。そして、点火プラグ40の中心電極41を正極としたプラス放電を、容量放電により実施し、そのプラス放電の途中で、誘導放電によるマイナス放電に切り替えるよう、一次コイルL1への通電状態をECU10(制御手段)が制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火コイルと、点火コイルの一次コイルへの通電状態を制御する手段とを備えた、内燃機関の点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、点火プラグの中心電極を負極、接地電極を正極とし、中心電極の側を起点に接地電極へ向けて火花を伸展させる放電はマイナス放電と呼ばれている。一方、中心電極を正極とし、負極である接地電極へ向けて火花を伸展させる放電はプラス放電と呼ばれている。したがって、放電時に陽イオンが電極に衝突(スパッタリング)して生じる電極の消耗は、マイナス放電時には負極である中心電極で生じ、プラス放電時には負極である接地電極で生じる。但し、接地電極は中心電極に比べて燃焼中心に近い位置にあり高温になっているため、前記消耗の度合いが大きい。そのため、消耗の少ないマイナス放電を実施する点火装置が一般的に普及している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−120374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対し本発明者らは、放電初期にはプラス放電を実施し、そのプラス放電の途中でマイナス放電に切り替える手法を検討した。この手法によれば、電極消耗の多いプラス放電の期間を短くできるので、電極消耗を抑制しつつプラス放電を実施できる。この手法を実現させるべく、本発明者らは図4に示す点火装置を検討した。
【0005】
すなわち、プラス放電用の一次コイルL1Aとマイナス放電用の一次コイルL1Bを、同一のコア部材21xに対して別々に設ける。また、両一次コイルL1A,L1Bの各々に対して、通電を制御する半導体スイッチSWA,SWBを設ける。そして、半導体スイッチSWAへの通電を遮断してプラス放電を実施している途中で、半導体スイッチSWBへの通電を遮断してマイナス放電に切り替えるよう、ECU10xは両スイッチSWA,SWBを制御する。なお、図4の例では、一次コイルL1Aにより生じた磁束を集中させるコア部材21xと、一次コイルL1Bによる磁束を集中させるコア部材21xとを共有させて、点火コイル20xの小型化を図っている。
【0006】
図5は、図4の装置の作動を説明するタイムチャートであり、t1〜t5の期間に一次コイルL1Bへ通電して、マイナス放電用の磁気エネルギをコイルL1Bへ蓄えさせる((b)(d)参照)。また、t2〜t3の期間に一次コイルL1Aへ通電して、プラス放電用の磁気エネルギをコイルL1Aへ蓄えさせる((a)(c)参照)。そして、t3時点で一次コイルL1Aへの通電を遮断してプラス放電を開始させ、その後、t5時点で一次コイルL1Bへの通電を遮断してマイナス放電を開始させる。これにより、t3〜t5のTa期間にプラス放電が為され、t5〜t6のTb期間にマイナス放電が為される。つまり、t5時点でプラス放電からマイナス放電に切り替わる。
【0007】
しかしながら、図4の検討装置では、マイナス放電用の一次電流I1(−)により生じるコア部材21xでの磁束の向きと、プラス放電用の一次電流I1(+)により生じるコア部材21xでの磁束の向きとが反対になる。そのため、両一次コイルL1A,L1Bのいずれにも通電しているt2〜t3の期間において、互いの磁束が打ち消し合うことになるので電力ロスが大きい。しかも、プラス放電用の一次コイルL1Aとマイナス放電用の一次コイルL1Bを各々備えることを要するので、点火コイルの大型化を招く。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、点火コイルの大型化抑制を図りつつ、電極消耗の抑制を図ったプラス放電を可能にした、内燃機関の点火装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0010】
請求項1記載の発明では、一次コイルおよび二次コイルを有する点火コイルと、蓄電した電力を前記一次コイルへ放電することにより、前記二次コイルに生じる二次電圧の絶対値を昇圧させて点火プラグで容量放電させる容量放電用回路と、前記一次コイルへの通電を遮断することにより、前記二次コイルに生じる二次電圧の絶対値を昇圧させて前記点火プラグで誘導放電させる誘導放電用回路と、前記点火プラグの中心電極を正極としたプラス放電を実施し、当該プラス放電の途中で、前記中心電極を負極としたマイナス放電に切り替えるよう、前記一次コイルへの通電状態を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記プラス放電を前記容量放電により実施し、前記マイナス放電を前記誘導放電により実施するよう、前記容量放電用回路および前記誘導放電用回路の作動を制御することを特徴とする。
【0011】
上記発明によれば、プラス放電を容量放電により実施し、マイナス放電を誘導放電により実施するので、図1中の符号I1(+),I1(−)に例示するように、プラス放電用の一次電流I1(+)が一次コイルを流れる向きと、マイナス放電用の一次電流I1(−)が一次コイルを流れる向きを同じにできる。その結果、I1(+)による磁束とI1(−)による磁束の向きが同じになる。よって、互いの磁束が打ち消し合うことによる電力ロスを回避でき、ひいては点火コイルの大型化を抑制できる。
【0012】
しかも、上述の如く両電流I1(+),I1(−)の流れる向きを同じにできることに起因して、マイナス放電用の一次コイルとプラス放電用の一次コイルとを共用させることができる。つまり、図4の検討装置の如く、プラス放電用の一次コイルL1Aとマイナス放電用の一次コイルL1Bを各々備えることを不要にできるので、点火コイルの大型化を抑制できる。
【0013】
以上により、上記発明によれば、プラス放電の途中でマイナス放電に切り替えて電極消耗の多いプラス放電の期間を短くすることを、点火コイルの大型化抑制を図りつつ実現可能となる。
【0014】
ところで、放電開始に必要な二次電圧の絶対値は、放電維持に必要な二次電圧の絶対値よりも高い。また、容量放電は一般的に、誘導放電に比べて二次電圧の発生期間が短いものの、誘導放電に比べて二次電圧の絶対値を高くできる。これらを鑑みた上記発明では、放電開始にかかるプラス放電を容量放電で実施し、放電維持にかかるマイナス放電を誘導放電で実施するので、放電開始および放電維持に必要な二次電圧を高効率で生じさせることができる。
【0015】
請求項2記載の発明では、前記制御手段は、前記誘導放電用回路による前記一次コイルへの通電を開始し、その後、前記容量放電用回路による前記一次コイルへの通電を実施し、その後、前記誘導放電用回路による前記一次コイルへの通電の遮断を実施するように制御することを特徴とする。
【0016】
上記発明によれば、容量放電用回路による一次コイルへの通電を開始して容量放電を開始させる前から、誘導放電用回路による一次コイルへの通電を開始するので、容量放電開始以降に誘導放電用回路による通電を開始する場合に比べて、マイナス放電用の磁気エネルギを一次コイルへ蓄えさせる期間を十分に長く確保できる。
【0017】
請求項3記載の発明では、前記点火コイルは、前記一次コイルの通電により生じた磁束を集中させるコア部材を有しており、前記誘導放電用回路による前記一次コイルへの通電開始から前記容量放電用回路による前記一次コイルへの通電開始直前までに、前記コア部材に生じる磁束が飽和量に達することのないよう、前記コア部材が選定されていることを特徴とする。
【0018】
ここで、コア部材の材質や形状、大きさに応じて、コア部材で集中させることのできる磁束量(飽和磁束量)は決まってくる。そのため、飽和磁束密度の低い材質や小さいコア部材を上記発明に採用すると、以下の問題が懸念されるようになる。すなわち、マイナス放電用の一次電流I1(−)を流し始めてからプラス放電用の一次電流I1(+)を流し始めるまでの期間に、コア部材での磁束が飽和してしまうと、その後I1(+)を一次コイルに流してもコア部材での磁束量が増大しなくなる。すると、プラス放電を実施できなくなることが懸念される。
【0019】
この懸念に対し、上記発明では、I1(−)の通電開始からI1(+)の通電開始直前までに、コア部材に生じる磁束が飽和量に達することのないよう、コア部材を選定しているので、上記懸念を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態にかかる点火装置を示す回路図。
【図2】プラス放電とマイナス放電の違いを説明する図。
【図3】図1の点火装置の作動を示すタイムチャート。
【図4】本発明者らが検討した点火装置であって、本発明との比較対象となる装置を示す回路図。
【図5】図4の点火装置の作動を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本実施形態における点火装置が適用された、内燃機関の点火システムを示す概略回路図であり、電子制御装置(ECU10)に設けられたマイクロコンピュータ(制御手段)は、エンジン回転速度やアクセル操作量などのエンジンの運転状態を表す運転状態情報を取得し、その運転状態情報に基づいて最適な点火時期を算出する。そして、その点火時期に応じてプラス放電用の点火信号IGt(+)およびマイナス放電用の点火信号IGt(−)を生成し、後述する半導体スイッチSW(+),SW(−)へ出力する。
【0023】
ここで、図2を用いてプラス放電およびマイナス放電について説明する。図2(a)は、点火プラグ40の中心電極41および接地電極42を示す図である。図示されるように、接地電極42の表面が平らであるのに比べて中心電極41には針状の突起が形成されている。そのため、この突起部分にて電界集中が生じるため、両電極41,42間に生じる放電は、中心電極41の突起部分を起点として接地電極42へ伸展する。
【0024】
但し、図2(b)に示すプラス放電時と図2(c)に示すマイナス放電時とで、二次電流I2の向きが異なる。すなわち、プラス放電時には中心電極41がプラス極、接地電極42がマイナス極として機能し、中心電極41の側から接地側へと二次電流I2が流れる。一方、プラス放電時には中心電極41がマイナス極、接地電極42がプラス極として機能し、接地側から中心電極41の側へと二次電流I2が流れる。
【0025】
図1の説明に戻り、内燃機関の気筒ごとに設けられる点火コイル20は、磁気回路を形成するコア部材21、一次コイルL1および二次コイルL2等を備えて構成される。詳細には、コア部材21の外周面に、図示しない絶縁シートを介して両コイルL1,L2が重ねて巻き回されている。
【0026】
コア部材21は、一次コイルL1に一次電流I1が流れることにより生じた磁束を集中させるよう機能するものであるが、このようにコア部材21で集中させることのできる磁束量(飽和磁束量)は、コア部材21の材質や形状、大きさに応じて決まってくる。したがって、点火コイル20の小型化を図りつつ飽和磁束量を大きくして所望の二次電圧V2を発生させるには、飽和磁束密度の高い材質を採用すればよいがコスト高となる。
【0027】
一方、飽和磁束密度の低い材質を採用すれば、マイナス放電用の一次電流I1(−)を流し始めてからプラス放電用の一次電流I1(+)を流し始めるまでの期間に、コア部材21に生じる磁束が飽和量に達してしまう。すると、その後I1(+)を一次コイルL1に流してもコア部材21での磁束量が増大しなくなり、プラス放電を実施できなくなることが懸念される。
【0028】
そこで本実施形態では、I1(−)の通電開始からI1(+)の通電開始直前までに、コア部材21に生じる磁束が飽和量に達することのないよう、最低限の飽和磁束密度を有するコア部材21を選定しているので、コスト高を抑制しつつ上記懸念を解消できる。
【0029】
一次コイルL1への供給電力は、以下に説明する容量放電用回路および誘導放電用回路の2系統から可能である。
【0030】
容量放電用回路は、先述した半導体スイッチSW(+)、DC−DCコンバータ50(昇圧手段)、コンデンサ51(蓄電手段)およびダイオード52により構成される。バッテリ30の出力電圧はDC−DCコンバータ50により昇圧され、その昇圧された電力は、半導体スイッチSW(+)をオフ作動させている期間中にコンデンサ51に蓄電される。そして、半導体スイッチSW(+)をオン作動させると、コンデンサ51に蓄電された高圧電力が一次コイルL1へ放電され、この放電に起因して、二次コイルL2での二次電圧V2の絶対値が昇圧され、点火プラグ40にて容量放電が生じる。この容量放電は、先述したプラス放電の実施に適用される。
【0031】
誘導放電用回路は、先述した半導体スイッチSW(−)およびダイオード53により構成され、バッテリ30から供給される電力の一次コイルL1への通電と遮断を制御する。つまり、半導体スイッチSW(−)をオン作動させて一次コイルL1への通電を開始させると、マイナス放電用の磁気エネルギが一次コイルL1へ蓄えられることとなる。その後、半導体スイッチSW(−)をオフ作動させて通電を遮断すると、二次コイルL2に生じる二次電圧V2の絶対値が昇圧して、点火プラグ40にて誘導放電が生じる。この誘導放電は、先述したマイナス放電の実施に適用される。
【0032】
図1中の矢印I1(+),I1(−)は、容量放電用回路によるプラス放電用の一次電流I1(+)が一次コイルL1を流れる向きと、誘導放電用回路によるマイナス放電用の一次電流I1(−)が一次コイルを流れる向きを示す。これらの一次電流I1(+),I1(−)が一次コイルL1を流れる向きは同一であり、この向きが逆転することはダイオード52,53により制限される。
【0033】
ECU10は、半導体スイッチSW(+),SW(−)を制御することで、容量放電(プラス放電)により点火プラグ40での放電を開始させ、そのプラス放電の途中で、誘導放電(マイナス放電)に切り替えるよう、点火プラグ40での放電状態を制御する。
【0034】
図3は、このような放電状態の制御を実施すべく、プラス放電用の点火信号IGt(+)およびマイナス放電用の点火信号IGt(−)を出力した際のタイムチャートである。
【0035】
先ず、点火信号IGt(−)がオフからオンに切り替わったt1時点で、半導体スイッチSW(−)がオン作動して、バッテリ30から一次コイルL1へマイナス放電用の一次電流I1(−)が流れ始める(図3(a)(c)参照)。つまり、t1時点で誘導放電(マイナス放電)のための磁気エネルギ蓄積が開始される。
【0036】
次に、点火信号IGt(+)がオフからオンに切り替わったt2時点で、半導体スイッチSW(+)がオン作動する。これにより、コンデンサ51に蓄えられていた電力エネルギが放電され、一次コイルL1へプラス放電用の一次電流I1(+)が流れ始める(図3(b)(d)参照)。その結果、中心電極41の電位が接地電極42の電位に比べて急激に高くなるよう、二次電圧V2が変化する(図3(f)参照)。その結果、中心電極41から接地電極42へ二次電流I2が流れる向きに放電(プラス放電)することとなる。つまり、t2時点で容量放電(プラス放電)が開始される。
【0037】
なお、一次コイルL1に実際に流れる一次電流I1(実一次電流I1)は、図3(e)に示すようにI1(−)にI1(+)を加算した値となる。実一次電流I1は、容量放電(プラス放電)の開始に伴いt3時点でピーク値となる。そして、その所定時間後のt4時点で、点火信号IGt(−)をオンからオフに切り替えて、半導体スイッチSW(−)をオフ作動させ、マイナス放電用の一次電流I1(−)の通電が遮断される。
【0038】
これにより、一次コイルL1に蓄えられていた磁気エネルギが開放され、中心電極41の電位が接地電極42の電位に比べて急激に低くなるよう、二次電圧V2が変化する(図3(f)参照)。その結果、接地電極42から中心電極41へ二次電流I2が流れる向きに放電(マイナス放電)することとなる。
【0039】
なお、一次電流I1(−)の通電を遮断させるt4時点で、点火信号IGt(+)をオンからオフに切り替えて、半導体スイッチSW(+)をオフ作動させるので、誘導放電(マイナス放電)の開始と同時に容量放電(プラス放電)が終了する。つまり、t4時点で、容量放電(プラス放電)の継続中に誘導放電(マイナス放電)に切り替わる。
【0040】
その後、電極41,42間の放電電圧V2はt5時点でゼロ(正確にはバッテリ電圧(12V))になる。要するに、符号Taに示す期間にてプラス放電が実施され、そのプラス放電の途中で(t4時点で)マイナス放電に切り替わり、符号Tbに示す期間にてマイナス放電が実施される。
【0041】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0042】
(1)放電初期にはプラス放電を実施し、そのプラス放電の途中でマイナス放電に切り替えるので、電極消耗の多いプラス放電の期間を短くできる。よって、電極消耗を抑制しつつプラス放電を実施できる。
【0043】
(2)プラス放電を容量放電により実施し、マイナス放電を誘導放電により実施するので、プラス放電用の一次電流I1(+)が一次コイルL1を流れる向きと、マイナス放電用の一次電流I1(−)が一次コイルL1を流れる向きを同じにできる。その結果、I1(+)による磁束とI1(−)による磁束が互いに打ち消し合うことによる電力ロスを回避でき、ひいては点火コイル20の大型化を抑制できる。
【0044】
(3)上述の如く両電流I1(+),I1(−)の流れる向きを同じにできることに起因して、マイナス放電用の一次コイルとプラス放電用の一次コイルとを共用させることができるので、点火コイル20の大型化を抑制できる。
【0045】
(4)I1(−)の通電開始からI1(+)の通電開始直前までに、コア部材21に生じる磁束が飽和量に達することのないよう、最低限の飽和磁束密度を有するコア部材21を選定しているので、コスト高を抑制しつつ上記懸念を解消できる。
【0046】
(5)ところで、両電極41,42での絶縁破壊(放電開始)に必要な二次電圧V2の絶対値は、絶縁破壊後の放電維持に必要な二次電圧V2の絶対値よりも高い。また、容量放電は一般的に、誘導放電に比べて二次電圧V2の発生期間が短いものの、誘導放電に比べて二次電圧V2の絶対値を高くできる。これらを鑑みた本実施形態では、放電開始にかかるプラス放電を容量放電で実施し、放電維持にかかるマイナス放電を誘導放電で実施するので、放電開始および放電維持に必要な二次電圧V2を高効率で生じさせることができる。
【0047】
(他の実施形態)
上記実施形態では、プラス放電用の半導体スイッチSW(+)と、マイナス放電用の半導体スイッチSW(−)とを、t4時点で同時にオフ作動させている。これに対し、マイナス放電用の半導体スイッチSW(−)をオフ作動させて誘導放電を開始させた後に、プラス放電用の半導体スイッチSW(+)をオフ作動させてもよいし、SW(−)をオフ作動させる前にSW(+)をオフ作動させてもよい。いずれにしても、コンデンサ51からの放電がピークとなったt3時点以降にSW(+)をオフ作動させればよい。
【符号の説明】
【0048】
10…ECU(制御手段)、20…点火コイル、21…コア部材、40…点火プラグ、41…中心電極、L2…二次コイル、L1…一次コイル、50…DC−DCコンバータ(容量放電用回路)、51…コンデンサ(容量放電用回路)、52…ダイオード(容量放電用回路)、SW(+)…半導体スイッチ(容量放電用回路)、53…ダイオード(誘導放電用回路)、SW(−)…半導体スイッチ(誘導放電用回路)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイルおよび二次コイルを有する点火コイルと、
蓄電した電力を前記一次コイルへ放電することにより、前記二次コイルに生じる二次電圧の絶対値を昇圧させて点火プラグで容量放電させる容量放電用回路と、
前記一次コイルへの通電を遮断することにより、前記二次コイルに生じる二次電圧の絶対値を昇圧させて前記点火プラグで誘導放電させる誘導放電用回路と、
前記点火プラグの中心電極を正極としたプラス放電を実施し、当該プラス放電の途中で、前記中心電極を負極としたマイナス放電に切り替えるよう、前記一次コイルへの通電状態を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記プラス放電を前記容量放電により実施し、前記マイナス放電を前記誘導放電により実施するよう、前記容量放電用回路および前記誘導放電用回路の作動を制御することを特徴とする内燃機関の点火装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記誘導放電用回路による前記一次コイルへの通電を開始し、その後、前記容量放電用回路による前記一次コイルへの通電を実施し、その後、前記誘導放電用回路による前記一次コイルへの通電の遮断を実施するように制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の点火装置。
【請求項3】
前記点火コイルは、前記一次コイルの通電により生じた磁束を集中させるコア部材を有しており、
前記誘導放電用回路による前記一次コイルへの通電開始から前記容量放電用回路による前記一次コイルへの通電開始直前までに、前記コア部材に生じる磁束が飽和量に達することのないよう、前記コア部材が選定されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の点火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−96382(P2013−96382A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242759(P2011−242759)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】