説明

内燃機関の燃料供給装置及びその制御弁

【課題】本発明は、燃料供給装置の低圧領域と、この低圧領域から燃料を燃料供給装置の高圧領域に搬送するためのポンプ装置とを備え、ポンプ装置とシリンダに付設された燃料噴射器との間の高圧領域に蓄圧系(コモンレール)が設けられ、この蓄圧系が高圧燃料配管を介してポンプ装置に接続され、この蓄圧系が他の高圧燃料配管を介して燃料噴射器に接続され、蓄圧系を燃料噴射器に接続する高圧燃料配管に制御弁を介して制御可能な切換弁が付設されている、内燃機関特に重油燃料の船舶用ディーゼルエンジンの燃料供給装置、即ち、コモンレール式燃料噴射装置に関する。
【解決手段】本発明に基づいて、制御弁(11)の弁体に対する弁座(17)がインサート(16)で形成され、このインサート(16)が、制御弁(11)の保持体(15)で受けられ、制御弁(11)の保持体(15)より大きな硬さを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の前文に記載の内燃機関の燃料供給装置、即ち、コモンレール式燃料噴射装置に関する。また本発明は、かかる燃料供給装置の制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2にそれぞれ、内燃機関が、即ち、重油燃料の船舶用多気筒ディーゼルエンジンが開示されている。それらの各シリンダに、コモンレール式燃料噴射装置の燃料噴射器(インジェクタ)が付設されている。各シリンダにそれぞれの燃料噴射器を介して燃料が噴射される。従来におけるコモンレール式燃料噴射装置は、燃料をコモンレール式燃料噴射装置の低圧領域からその高圧領域に搬送するために、複数の高圧ポンプを含むポンプ装置を有している。その場合、ポンプ装置と複数の燃料噴射器との間の高圧領域に、常時高圧状態にある蓄圧系が設けられている。コモンレールとも呼ばれるこの蓄圧系は、特許文献2および特許文献1において、複数の蓄圧室を有し、同様に常時高圧状態にある複数の高圧燃料配管を介してポンプ装置に接続されている。さらに、蓄圧系は、噴射サイクルに応じて一時的に高圧状態にある複数の高圧燃料配管を介して複数の燃料噴射器に接続され、その一時的に高圧状態にある複数の高圧燃料配管に、制御弁で制御される複数の切換弁が組み込まれている。一般に3ポート2位置切換弁として形成された切換弁は、一般に2ポート2位置切換弁として形成された制御弁によって制御され、これによって、どのシリンダに燃料が注入されるかが決定される。
【0003】
それに応じて、内燃機関のシリンダへの燃料噴射器の噴射特性は、それぞれの燃料噴射器と協働する切換弁並びに制御弁によって決定される。その場合、切換弁に通常は入口絞りが、制御弁に通常は出口絞りが一体化され、切換弁のプランジャにおける圧力状態を調整するために、それらの絞りを通して燃料が流れる。制御弁の出口絞りを通して流れる燃料流は、弁座と協働する制御弁の弁体によって決定される。
【0004】
コモンレール式燃料噴射装置の運転中、特に150℃までの燃料温度におけるHFO(重油=heavy fuel oil)運転中、切換弁並びに制御弁は、それらを摩耗させ損傷させる大きな負荷を受ける。特に、制御弁の弁座および出口絞りは、キャビテーションやエロージョンによる激しい摩耗および切換過程による機械的負荷を受ける。従って、コモンレール式燃料噴射装置の制御弁は特に摩耗を受け易い。
【特許文献1】独国特許出願公開第102004060003号明細書
【特許文献2】独国特許出願公告第10157135号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上述の問題に鑑み、新たな燃料供給装置、即ち、新たなコモンレール式燃料噴射装置、内燃機関および新たな制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は請求項1に記載の内燃機関の燃料供給装置によって解決される。
【0007】
本発明により、制御弁の弁体に対する弁座が、制御弁の保持体で受けられたインサートで形成され、このインサートは制御弁の保持体より大きな硬さを有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、コモンレール式燃料噴射装置の制御弁の特に摩耗し易い弁座が、比較的小さな硬さの保持体で受けられる比較的大きな硬さのインサートで形成されていることを提案する。比較的小さな硬さの保持体は、弁座を形成するインサートを制御弁に結合するために用いられる。保持体が比較的小さな硬さを有するので、組立時に保持体が破損される恐れはない。保持体で受けられ制御弁の弁座を形成するインサートは、組立時には負荷を受けない。制御弁のインサートは運転中だけ負荷を受けるが、このインサートは比較的大きな硬さを有するので、非常に摩耗し難い。従って、本発明による燃料噴射装置の制御弁は、ごく僅かな摩耗しか受けず、これにより、経費的に有利である。
【0009】
本発明の別の実施態様において、インサートは、弁座のほかに、それぞれの制御弁の出口絞りも有する。
【0010】
本発明による制御弁は請求項10に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の別の実施態様は従属請求項および以下の説明から理解できる。以下図を参照して本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
本発明は、内燃機関特に船舶用重油燃料ディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射装置に関する。
【0013】
図1は、本発明によるコモンレール式燃料噴射装置における切換弁10と制御弁11の領域を概略断面図で示している。その制御弁11は切換弁10を制御するために用いられる。制御弁11を介して切換弁10の切換位置が制御され、切換弁10の切換位置に応じて、コモンレール式燃料噴射装置の蓄圧系から切換弁10と協働する燃料噴射器への燃料流が、連通されるか遮断される。切換弁並びに制御弁の原理的な相互作用は、既に特許文献2並びに特許文献1で知られ、従ってそれらの開示内容も参照されたい。
【0014】
切換弁10は、いわゆる3ポート2位置切換弁として形成され、図1において切換弁10のうち、弁ケーシング12並びにプランジャ13が示されている。プランジャ13には燃料に対する入口絞り(図示せず)が一体化されている。
【0015】
制御弁11は、いわゆる2ポート2位置切換弁として形成され、図1において制御弁11のうち、弁ケーシング14、保持体15およびこの保持体15で受けられたインサート(入れ子)16が示されている。保持体15およびインサート16は、結合体ないしは複合体を形成している。制御弁11のインサート16は、制御弁11の弁体(図示せず)に対する弁座17並びに出口絞り18を形成している。弁座17並びに出口絞り18はディフューザ19を介して互いに接続されている。インサート16において弁座17とは反対の側に、出口絞り18に対する入口孔20が設けられている。
【0016】
保持体15は、比較的小さな硬さの材料、好適には金属材料で形成されている。図示された実施例において制御弁11の弁座17並びに出口絞り18を形成しているインサート16は、保持体15を形成する材料より大きな硬さを有する材料で形成されている。好適には、インサート16はセラミックス材料あるいは硬質合金材料で作られている。制御弁11のインサート16はその保持体15に圧入、圧力ばめあるいは焼結されている。
【0017】
図示された実施例において、インサート16に対する保持体15並びに制御弁11の弁ケーシング14は、別個の構成品として形成されている。これと異なって、保持体15並びに制御弁11の弁ケーシング14を共通の構成品ないしは一体型の構成品として形成することも考えられる。
【0018】
それに応じて、本発明では、コモンレール式燃料噴射装置の制御弁の特に摩耗し易い構成要素、つまり、制御弁の弁座並びに出口絞りが比較的大きな硬さの材料で作られたインサートで形成されている。各制御弁におけるこのインサートは、比較的小さな硬さの材料で作られた保持体で受けられている。比較的小さな硬さの保持体を介して、比較的大きな硬さのインサートが組立時に破損する危険なしに制御弁に結合できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】内燃機関の本発明に基づくコモンレール式燃料噴射装置における制御弁と切換弁の領域の概略断面図。
【符号の説明】
【0020】
10 切換弁
11 制御弁
12 弁ケーシング
13 プランジャ
14 弁ケーシング
15 保持体
16 インサート
17 弁座
18 出口絞り
19 ディフューザ
20 入口孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給装置の低圧領域と、該低圧領域から燃料を燃料供給装置の高圧領域に搬送するために少なくとも1台の高圧ポンプを含むポンプ装置とを備え、ポンプ装置と複数のシリンダに付設された複数の燃料噴射器との間の高圧領域に、少なくとも1個の蓄圧室を有する蓄圧系が設けられ、該蓄圧系が少なくとも1本の高圧燃料配管を介してポンプ装置に接続され、該蓄圧系が他の高圧燃料配管を介して複数の燃料噴射器に接続され、蓄圧系を複数の燃料噴射器に接続する複数の高圧燃料配管に、制御弁を介して制御可能な複数の切換弁が付設されている、内燃機関特に重油燃料の船舶用ディーゼルエンジンの燃料供給装置において、
制御弁(11)の弁体に対する弁座(17)がインサート(16)で形成され、該インサート(16)が制御弁(11)の保持体(15)で受けられ、制御弁(11)の保持体(15)より大きな硬さを有していることを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【請求項2】
インサート(16)が、弁座(17)のほかに、それぞれの制御弁(11)の出口絞り(18)を形成していることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
制御弁(11)のインサート(16)がセラミックス材料あるいは硬質合金材料で作られ、制御弁(11)の保持体(15)が金属材料で作られていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
制御弁(11)のインサート(16)が、制御弁(11)の保持体(15)に圧入されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料供給装置。
【請求項5】
制御弁(11)のインサート(16)が、制御弁(11)の保持体(15)に焼結あるいは圧力ばめされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料供給装置。
【請求項6】
制御弁(11)の保持体(15)および制御弁(11)の弁ケーシング(14)が、別個の構成品として形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の燃料供給装置。
【請求項7】
制御弁(11)の保持体(15)および制御弁(11)の弁ケーシング(14)が、共通の構成品として形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の燃料供給装置。
【請求項8】
制御弁(11)が2ポート2位置切換弁として形成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の燃料供給装置。
【請求項9】
切換弁(10)が3ポート2位置切換弁として形成されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の燃料供給装置。
【請求項10】
燃料供給装置の前記切換弁を制御するための制御弁において、
制御弁(11)の弁体に対する弁座(17)がインサート(16)で形成され、該インサート(16)が、制御弁(11)の保持体(15)で受けられ、制御弁(11)の保持体(15)より大きな硬さを有していることを特徴とする燃料供給装置の制御弁。
【請求項11】
請求項2ないし8のいずれか1つに記載の特徴を有することを特徴とする請求項10に記載の制御弁。

【図1】
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【公開番号】特開2008−95681(P2008−95681A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257253(P2007−257253)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(390041520)エムアーエヌ ディーゼル エスエー (59)
【Fターム(参考)】