説明

内燃機関の燃料供給装置

【課題】燃料供給装置の低圧領域と、該領域から燃料を燃料供給装置の高圧領域に搬送すべく少なくとも1台の高圧ポンプを含むポンプ装置とを備え、ポンプ装置とシリンダに付設された燃料噴射器の間の高圧領域に、少なくとも1個の蓄圧室を有し、常時高圧状態にある蓄圧系が設けられ、該蓄圧系が、同様に常時高圧状態にある少なくとも1本の高圧燃料配管を経てポンプ装置に接続され、蓄圧系が、燃料噴射サイクルに応じて折々高圧状態にある高圧燃料配管を経て燃料噴射器に接続された内燃機関の燃料供給装置に関し、常時高圧状態にある高圧燃料配管に破損が生じた際、内燃機関の非常運転を維持可能とする。
【解決手段】本発明に基づき、ポンプ装置を蓄圧系に接続する常時高圧状態にある少なくとも1本或いは各高圧燃料配管(10)に、特に各々の高圧燃料配管(10)の破損時に所定の非常圧力に耐える壁厚を有する外被(15)が付設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の内燃機関の燃料供給装置、即ちコモンレール式燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、内燃機関、即ち船舶用重油燃料多気筒ディーゼルエンジンが開示されている。それらの各シリンダに、コモンレール式燃料噴射装置の燃料噴射器(インジェクタ)が付設されている。内燃機関の各シリンダに各々の燃料噴射器を経て燃料が噴射される。特許文献1のコモンレール式燃料噴射装置は、燃料をコモンレール式燃料噴射装置の低圧領域からその高圧領域に搬送すべく、複数の高圧ポンプを含むポンプ装置を備えている。ポンプ装置と燃料噴射器の間の高圧領域には、常時高圧状態にある蓄圧系が設けられている。常時高圧状態にあるコモンレールとも呼ばれるこの蓄圧系は、特許文献1において、複数の蓄圧室(レール)を有し、同様に常時高圧状態にある高圧燃料配管を介してポンプ装置に接続されている。更に蓄圧系は、燃料噴射サイクルに関係して折々高圧状態にある高圧燃料配管を介して、燃料噴射器に接続されている。
【0003】
かかるコモンレール式燃料噴射装置の高圧領域の構成体は、運転中において2000×105Pa迄の高い作動圧力を受ける。このため、特にコモンレール式燃料噴射装置の常時高圧状態にある構成体の密封について、厳しい要件が課せられている。
【0004】
これは、船舶用ディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射装置の構成体が、高い作動圧力の他に、例えば大きな振動負荷並びに大きな熱的負荷等の他の負荷を受けるので、船舶用ディーゼルエンジンに一層当てはまる。これは、特にポンプ装置をコモンレール式燃料噴射装置の蓄圧系に接続し、常時高圧状態にある高圧燃料配管の領域に、配管破損を生じさせ、大きな漏れを生じさせる。また、配管端における密封箇所は、振動および温度作用のために故障し、このために、大きな漏れを引き起こす。
【0005】
コモンレール式燃料噴射装置の、常時高圧状態にある構成体での大きな漏れの発生は、燃料供給装置の高圧領域の圧力を、燃料噴射器を開くために必要な開放圧力以下に低下させ、このため内燃機関のシリンダへの燃料の噴射が不可能となる。これは内燃機関を即座に停止させてしまい、このため、例えばかかる燃料供給装置付きの唯一の内燃機関しか有していない船舶の場合、操船不能となってしまう。
【0006】
コモンレール式燃料噴射装置の高圧領域での大きな漏れの問題を考慮して、特許文献2により既に、高圧ポンプを2本の高圧燃料配管を介して蓄圧系に接続することが公知である。その場合、高圧燃料配管の両端に止め弁が付設され、該止め弁は、配管破損時に高圧燃料配管を遮断し、かくして、燃料供給装置の高圧領域における圧力低下を阻止する。しかし、高圧ポンプとコモンレール式燃料噴射装置の蓄圧系との間における冗長的予備配管の存在によって、燃料供給装置の構造的経費が高くなる。
【0007】
更に、これに伴い、燃料供給装置が必要とする構造空間も増大する。
【特許文献1】独国特許出願公告第10157135号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公告第1143140号明細書
【特許文献3】独国特許第3739937号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上述の問題に鑑み、内燃機関の新たな燃料供給装置、即ち新たなコモンレール式燃料噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に記載の内燃機関の燃料供給装置によって解決される。
【0010】
本発明に基づき、ポンプ装置を蓄圧系に接続し、常時高圧状態にある少なくとも1本或いは各高圧燃料配管に、特に各高圧燃料配管の破損時に所定の非常圧力に耐える壁厚を有する外被が付設される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、コモンレール式燃料噴射装置のポンプ装置を蓄圧系に接続する常時高圧状態にある少なくとも1本或いは各高圧燃料配管に外被を付設することを提案する。外被は、所定の非常圧力に耐える壁厚を有している。この所定の非常圧力は、燃料噴射器を開放するために必要な開放圧力より大きく、従って、常時高圧状態にある高圧燃料配管に破損が生じた際、内燃機関の非常運転を維持できる。
【0012】
高圧燃料配管の外被は特許文献3で原理的に知られているが、本発明は内燃機関の非常運転を保証すべく、外被を非常圧力に耐えるように形成することを新たに提案する。
【0013】
本発明の有利な実施態様では、外被の壁厚を、この外被が少なくとも400×105Pa、特に800×105Paの所定の非常圧力に耐えるように設計する。
【0014】
本発明の他の有利な実施態様では、コモンレール式燃料噴射装置の各々外装された構成体の外壁と外被の内壁との間隔は、0.1〜0.2mmである。
【0015】
本発明の他の有利な実施態様では、燃料供給装置のポンプ装置を、燃料供給装置の常時高圧状態にあり、外装された構成体に漏れが生じた際、高圧領域の作動圧力が所定の非常運転圧力に低下するように制御する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の有利な実施態様を、従属請求項および以下の説明から明らかにする。以下図を参照して本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
【実施例1】
【0017】
本発明は、内燃機関、特に船舶用重油燃料ディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射装置に関する。コモンレール式燃料噴射装置は、低圧領域と高圧領域を有している。
【0018】
コモンレール式燃料噴射装置の高圧領域は、少なくとも1台の高圧ポンプを有するポンプ装置と、少なくとも1個の蓄圧室(レール)を有する蓄圧系(コモンレール)とを備える。ポンプ装置は、少なくとも1本の高圧燃料配管を経て蓄圧系に接続されている。蓄圧系と、該蓄圧系をポンプ装置に接続する1本又は各高圧燃料配管とには、常時2000×105Pa迄の高い作動圧力がかかっている。蓄圧系から燃料噴射器を経て各シリンダに各々燃料が噴射される。その際、各燃料噴射器は蓄圧系に、内燃機関の燃料噴射サイクルに関係して折々高圧がかかる少なくとも1本の高圧燃料配管を経て接続されている。
【0019】
コモンレール式燃料噴射装置の高圧領域に大きな漏れが生じた際に作動圧力が燃料噴射器を開くため、従って内燃機関のシリンダに燃料を噴射するために必要な開放圧力以下に低下することを防止すべく、本発明は、コモンレール式燃料噴射装置の高圧領域のポンプ装置をその蓄圧系に接続し、常時高圧状態にある少なくとも1本又は各高圧燃料配管に、燃料噴射器の開放圧力より大きな所定の非常圧力に耐える壁厚を有する外被を付設することを提案する。これにより、常時高圧状態にある高圧燃料配管が破損した際、作動圧力が燃料噴射器の開放圧力以下に低下するのを防ぎ、コモンレール式燃料噴射装置を備えた内燃機関の非常運転を保証できる。
【0020】
本発明の有利な実施態様では、常時高圧状態にある蓄圧系にも、所定の非常圧力に耐える壁厚を有する外被を付設する。
【0021】
コモンレール式燃料噴射装置の常時高圧状態にある全ての構成体に、非常圧力に耐える壁厚を持つ外被を設けるとよい。該非常圧力は少なくとも400×105Pa、特に少なくとも800×105Paである。
【0022】
図1は、コモンレール式燃料噴射装置の、常時高圧状態にある高圧燃料配管10の一端の領域を部分的に示す。図1に示す高圧燃料配管10の一端は、接続部材11と圧力部材12を経て、コモンレール式燃料噴射装置の蓄圧系13に接続されている。高圧燃料配管10は圧力管14と外被15とを有し、本発明では外被15を、該外被15が圧力管14の破損時、従って圧力管14の大きな漏れ時に所定の非常圧力に耐える壁厚を有するように構成している。このため場合によっては、外被15は高い強度の材料で作られている。
【0023】
外被15は、外被15の内壁と高圧燃料配管10の圧力管14の外壁との間に、0.1〜0.2mmの間隔が存在するように形成されている。それに応じて、外被15の内径は高圧燃料配管10の圧力管14の外径よりほんの僅か大きくされている。
【0024】
外被15の内壁と圧力管14の外壁とにより規定された流路は、未破損圧力管14における燃料供給装置の通常運転中、僅かな漏れ流を、燃料タンクに、従って燃料供給装置の低圧領域に戻すために用いられる。そのために図1において、蓄圧系13への漏れ戻し管路16が設けられている。
【0025】
圧力管14の破損時、従って大きな漏れ時に非常運転圧力を維持すべく、漏れ戻し管路16に、絞りとして形成された止め装置17が設けられ、この止め装置17は、大きな漏れ時に滞留を生じさせ、かくして非常運転圧力を提供する。従って、止め装置17は高圧燃料配管10を燃料供給装置の低圧領域から分離する。
【0026】
本発明の好ましい実施態様では、コモンレール式燃料噴射装置の高圧領域のポンプ装置は、高圧領域の常時高圧状態にある構成体が破損して大きな漏れを生じた際、高圧領域の作動圧力が所定の非常運転圧力に低下するように制御される。このため、ポンプ装置の搬送出力が低下する。そのような大きな漏れの検出は、圧力測定、漏れ戻し管路における流れ測定或いはポンプ装置の搬送出力の検出により行われる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】内燃機関の本発明に基づく燃料供給装置の部分断面図。
【符号の説明】
【0028】
10 高圧燃料配管、11 接続部材、12 圧力部材、13 蓄圧系、14 圧力管、15 外被、16 漏れ戻し管路、17 止め装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給装置の低圧領域と、該低圧領域から燃料を燃料供給装置の高圧領域に搬送するために少なくとも1台の高圧ポンプを含むポンプ装置とを備え、ポンプ装置とシリンダに付設された燃料噴射器との間の高圧領域に、少なくとも1個の蓄圧室を有する常時高圧状態にある蓄圧系が設けられ、該蓄圧系が、同様に常時高圧状態にある少なくとも1本の高圧燃料配管を介してポンプ装置に接続され、蓄圧系が、燃料噴射サイクルに関係して折々高圧状態にある高圧燃料配管を介して燃料噴射器に接続されている内燃機関用の燃料供給装置において、
ポンプ装置を蓄圧系に接続する常時高圧状態にある少なくとも1本或いは各高圧燃料配管(10)に、特に各々の高圧燃料配管(10)の破損時に所定の非常圧力に耐える壁厚を有する外被(15)が付設されたことを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【請求項2】
常時高圧状態にある蓄圧系にも、所定の非常圧力に耐える壁厚を有する外被が付設されたことを特徴とする請求項1記載の燃料供給装置。
【請求項3】
燃料供給装置の常時高圧状態にある全ての構成体に外被が付設されたことを特徴とする請求項1又は2記載の燃料供給装置。
【請求項4】
所定の非常圧力が燃料噴射器の開放圧力より大きいことを特徴とする請求項1から3の1つに記載の燃料供給装置。
【請求項5】
少なくとも400×105Paの非常圧力に耐えるように外被(15)の壁厚が寸法づけられたことを特徴とする請求項1から4の1つに記載の燃料供給装置。
【請求項6】
少なくとも800×105Paの非常圧力に耐えるように外被(15)の壁厚が寸法づけられたことを特徴とする請求項5記載の燃料供給装置。
【請求項7】
燃料供給装置の各々外装された構成体の外壁と外被の内壁との間隔が、0.1〜0.2mmであることを特徴とする請求項1から6の1つに記載の燃料供給装置。
【請求項8】
燃料供給装置のポンプ装置が、燃料供給装置の常時高圧状態にある外装された構成体に漏れが生じた際、高圧領域の作動圧力が所定の非常運転圧力に低下するように制御されることを特徴とする請求項1から7の1つに記載の燃料供給装置。
【請求項9】
外被によって非常運転圧力を維持できる燃料供給装置の領域が、燃料供給装置の低圧領域から少なくとも1個の止め装置により分離されたことを特徴とする請求項1から8の1つに記載の燃料供給装置。
【請求項10】
1個或いは各止め装置が絞りとして形成されたことを特徴とする請求項9記載の燃料供給装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−101618(P2008−101618A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267458(P2007−267458)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(390041520)エムアーエヌ ディーゼル エスエー (59)
【Fターム(参考)】