説明

内燃機関の燃料噴射制御装置

【課題】この発明は、シリンダ内に流入する吸気の流れが強い場合であっても、シリンダ内壁への燃料付着を抑制することのできる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】2つの吸気ポートから流入する吸気により、シリンダ内に強吸気流領域と、前記強吸気流領域よりも吸気流の弱い弱吸気流領域とが形成される内燃機関の燃料噴射制御装置であって、前記2つの吸気ポートそれぞれに設けられ、前記強吸気流領域に向かう方向(以下、強吸気流方向という。)と前記弱吸気流領域に向かう方向(以下、弱吸気流方向という。)とに燃料を吹き分けて噴射可能なインジェクタを備える。運転状態が高負荷である場合に、前記インジェクタによる前記弱吸気流方向への噴射量を、前記強吸気流方向への噴射量よりも多くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に係り、特に、車両に搭載される内燃機関の燃料噴射制御を実行するのに好適な内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されるように、シリンダに接続する少なくとも2つの吸気ポートと、各吸気ポートそれぞれに設けられ、吸気の流れ方向に燃料を噴射するインジェクタとを備えた内燃機関が知られている。また、本公報には、各インジェクタの燃料噴射タイミングについて、吸気行程前と吸気行程中とを組み合わせることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−194148号公報
【特許文献2】特開2007−9807号公報
【特許文献3】特開2010−65622号公報
【特許文献4】特開2010−53758号公報
【特許文献5】特開平6−58183号公報
【特許文献6】特開2003−13826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の内燃機関では、高負荷域などシリンダ内に流入する吸気の流れが強い場合には、インジェクタから噴射された多くの燃料が、シリンダ内に流入する吸気の流れに乗って、吸気ポートに対向するシリンダ内壁にまで到達することとなる。シリンダ内壁に到達し付着した燃料は、オイル希釈や冷却ポテンシャル低減の原因となる。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、シリンダ内に流入する吸気の流れが強い場合であっても、シリンダ内壁への燃料付着を抑制することのできる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、シリンダ内に接続する少なくとも2つの吸気ポートを有し、前記2つの吸気ポートから流入する吸気により、シリンダ内に強吸気流領域と、前記強吸気流領域よりも吸気流の弱い弱吸気流領域とが形成される内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記2つの吸気ポートそれぞれに設けられ、前記強吸気流領域に向かう方向(以下、強吸気流方向という。)と前記弱吸気流領域に向かう方向(以下、弱吸気流方向という。)とに燃料を吹き分けて噴射可能なインジェクタと、
運転状態が高負荷である場合に、前記インジェクタによる前記弱吸気流方向への噴射量を、前記強吸気流方向への噴射量よりも多くする吹き分け制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記吹き分け制御手段は、
運転状態が高負荷である場合に、前記インジェクタによる前記弱吸気流方向への噴射量を、前記強吸気流方向への噴射量よりも多くし、
前記運転状態が低負荷である場合に、前記インジェクタによる前記弱吸気流方向への噴射量を、前記強吸気流方向への噴射量よりも少なくすること、を特徴とする。
【0008】
また、第3の発明は、第1及び第2の発明において、
前記強吸気流領域は、前記2つの吸気ポートからシリンダ内に流入する吸気により、シリンダ中心部を縦に旋回するタンブル流が形成される領域であり、
前記強吸気流方向は、前記タンブル流が形成されるシリンダ中心方向であり、
前記弱吸気流方向は、前記タンブル流が形成される領域の側方に位置するシリンダ壁方向であること、を特徴とする。
【0009】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、
前記吹き分け制御手段は、
前記強吸気流方向に対する前記弱吸気流方向の噴射量比と負荷との関係を予め記憶する関係記憶手段と、
前記関係から、負荷に応じた前記噴射量比を算出する噴射量比算出手段と、
前記噴射量比算出手段により算出された噴射量比に基づいて、前記インジェクタによる前記強吸気流方向と前記弱吸気流方向とへの吹き分け量を設定する吹き分け量設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第5の発明は、第4の発明において、
前記関係記憶手段は、運転モードに対応する複数の前記関係を予め記憶し、
前記吹き分け制御手段は、前記関係記憶手段に記憶された複数の前記関係から、燃焼モードに対応する前記関係を取得する関係取得手段を更に備え、
前記噴射量比算出手段は、前記関係取得手段により取得された前記関係から、負荷に応じた前記噴射量比を算出すること、を特徴とする。
【0011】
また、第6の発明は、第4又は第5の発明において、
前記関係記憶手段は、運転モードがストイキである場合に対応して、高負荷であるほど前記強吸気流方向に対する前記弱吸気流方向の噴射量比を大きく、低負荷であるほど前記強吸気流方向に対する前記弱吸気流方向の噴射量比を小さく定めた関係を予め記憶すること、を特徴とする。
【0012】
また、第7の発明は、第1乃至第6の発明のいずれかにおいて、
前記吹き分け制御手段は、
吸気バルブの開き始めから閉じ終わりまでの開弁期間よりも噴射時間が短い場合に、前記開弁期間のうち前記吸気バルブの開閉時近傍を優先して噴射時期に設定する噴射時期設定手段を更に備えること、を特徴とする。
【0013】
また、第8の発明は、上記の目的を達成するため、シリンダ内に接続する第1及び第2吸気ポートと、前記第1吸気ポートからシリンダ内に流入する吸気の流量を前記第2吸気ポートから流入する吸気の流量よりも高めて、シリンダ内にスワール流を形成可能な気流制御弁と、を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記第1及び第2吸気ポートそれぞれに対応して設けられ、シリンダ内に流入する吸気の流れ方向と、前記吸気の流れの側方に位置するシリンダ壁方向とに燃料を吹き分けて噴射可能な第1及び第2インジェクタと、
前記スワール流が形成される場合に、前記第1インジェクタによる前記第1吸気ポートからシリンダ内に流入する吸気の流れ方向への噴射量を、前記第2インジェクタによる前記第2吸気ポートからシリンダ内に流入する吸気の流れ方向への噴射量よりも少なくする吹き分け制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、第9の発明は、上記の目的を達成するため、シリンダ内に接続する少なくとも2つの吸気ポートと、前記2つの吸気ポートそれぞれに設けられ、前記2つの吸気ポートをシリンダ内に対して開閉する吸気バルブとを有し、前記吸気バルブの開弁時に傘部とシリンダ上方との間に生じる隙間(以下、シリンダ上方の隙間という。)からシリンダ内に流入する吸気により、タンブル流が形成される内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記2つの吸気ポートそれぞれに設けられ、前記シリンダ上方の隙間と、前記吸気バルブの開弁時に傘部とシリンダ下方との間に生じる隙間(以下、シリンダ下方の隙間という。)とに燃料を吹き分けて噴射可能なインジェクタと、
運転状態が高負荷である場合に、前記インジェクタによる前記シリンダ下方の隙間への噴射量を、前記シリンダ上方の隙間への噴射量よりも多くする吹き分け制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、第10の発明は、第9の発明において、
前記吹き分け制御手段は、
運転状態が高負荷である場合に、前記インジェクタによる前記シリンダ下方の隙間への噴射量を、前記シリンダ上方の隙間への噴射量よりも多くし、
前記運転状態が低負荷である場合に、前記インジェクタによる前記シリンダ下方の隙間への噴射量を、前記シリンダ上方の隙間への噴射量よりも少なくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、運転状態が高負荷である場合に、インジェクタによる弱吸気流方向への噴射量を、強吸気流方向への噴射量よりも多く吹き分けることができる。強吸気流方向への噴射量を低減することで、強吸気流に乗って、シリンダ内壁に到達する燃料を低減することができる。このため、本発明によれば、シリンダ内に流入する吸気の流れが強い場合であっても、シリンダ内壁への燃料付着を抑制することができる。そして、オイル希釈や冷却ポテンシャル低減を抑制することができる。
【0017】
第2の発明によれば、運転状態が高負荷である場合には、インジェクタによる弱吸気流方向への噴射量を強吸気流方向への噴射量よりも多く吹き分け、運転状態が低負荷である場合には、インジェクタによる弱吸気流方向への噴射量を強吸気流方向への噴射量よりも少なく吹き分けることができる。このため、本発明によれば、高負荷域におけるシリンダ内壁への燃料付着の抑制と、低負荷域における噴射燃料の均質性向上とを両立させることができる。
【0018】
第3の発明によれば、インジェクタによるタンブル流が形成されるシリンダ中心方向と、タンブル流が形成される領域の側方に位置するシリンダ壁方向とへの吹き分け量を制御することができる。このため、本発明によれば、タンブル流が形成される内燃機関において、好適に燃料を吹き分けることができる。
【0019】
第4の発明によれば、予め記憶した関係から負荷に応じた噴射量比を算出し、この噴射量比に基づいて、インジェクタによる強吸気流方向と弱吸気流方向とへの吹き分け量を設定することができる。このため、本発明によれば、負荷の程度に応じた噴射量比を、簡易な処理で精度高く算出し、全負荷域に渡って好適に燃料を吹き分けることができる。
【0020】
第5の発明によれば、運転モードに対応する関係を取得し、負荷に応じた噴射量比を算出することができる。このため、本発明によれば、運転モードに応じて最適な関係を選択して、全負荷域に渡って好適に燃料を吹き分けることができる。
【0021】
第6の発明によれば、運転モードがストイキである場合に、全負荷域に渡って好適に燃料を吹き分けることができる。
【0022】
第7の発明によれば、吸気バルブの開弁期間よりも噴射時間が短い場合に、開弁期間のうち吸気バルブの開閉時近傍を優先して噴射時期に設定することができる。吸気バルブの開閉時近傍は、開弁期間の中期に比して吸気の流速が遅い。このため、本発明によれば、吸気の流れに乗って吸気ポートに対向するシリンダ内壁にまで到達する噴射燃料を一層抑制することができる。
【0023】
第8の発明によれば、スワール流が形成される場合に、第1インジェクタによる第1吸気ポートからシリンダ内に流入する吸気の流れ方向への噴射量を、第2インジェクタによる第2吸気ポートからシリンダ内に流入する吸気の流れ方向への噴射量よりも少なくすることができる。吸気の流量が多い第1吸気ポートからシリンダ内に流入する吸気の流れ方向への噴射量を低減することで、強い吸気の流れに乗って、シリンダ内壁に到達する燃料を低減することができる。このため、本発明によれば、スワール流が形成される場合であっても、シリンダ内壁への燃料付着を抑制することができる。そして、オイル希釈や冷却ポテンシャル低減を抑制することができる。
【0024】
第9の発明によれば、運転状態が高負荷である場合に、インジェクタによるシリンダ下方の隙間への噴射量を、シリンダ上方の隙間への噴射量よりも多く吹き分けることができる。シリンダ上方の隙間への噴射量を低減することで、シリンダ上方の隙間からシリンダ内に流入する強い吸気の流れに乗って、シリンダ内壁に到達する燃料を低減することができる。このため、本発明によれば、シリンダ内に流入する吸気の流れが強い場合であっても、シリンダ内壁への燃料付着を抑制することができる。そして、オイル希釈や冷却ポテンシャル低減を抑制することができる。
【0025】
第10の発明によれば、運転状態が高負荷である場合には、インジェクタによるシリンダ下方の隙間への噴射量をシリンダ上方の隙間への噴射量よりも多く吹き分け、運転状態が低負荷である場合には、インジェクタによるシリンダ下方の隙間への噴射量をシリンダ上方の隙間への噴射量よりも少なく吹き分けることができる。このため、本発明によれば、高負荷域におけるシリンダ内壁への燃料付着の抑制と、低負荷域における噴射燃料の均質性向上とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1に係るシステム構成を説明するための概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るシステムを、図1の矢印a方向から見た内燃機関10の概略図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るシステムにおいて用いられるインジェクタ30が噴射する燃料噴霧を表す図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るシステムにおいて用いられるインジェクタ30a、30bの燃料吹き分け方向について説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態1において、運転状態が低負荷である場合の吹き分け制御について説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態1において、ECU50が実行する吹き分け制御ルーチンのフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2において、シリンダ14の中心方向に対するシリンダ14の側壁方向の噴射量比と負荷との関係を示す関係マップである。
【図8】本発明の実施の形態2において、運転モード毎に噴射量比と負荷との関係を定めた複数の関係マップである。
【図9】本発明の実施の形態2において、ECU50が実行する吹き分け制御ルーチンのフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態3において、吸気バルブ24の開き始めから閉じ終わりまでの開弁期間におけるクランク角CAと吸気の流速との関係を示す関係図である。
【図11】本発明の実施の形態3において、吸気バルブ24の開閉時近傍を優先して割り当てた噴射時期を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態3において、噴射時間が吸気バルブ24の開弁期間よりも短い場合における、シリンダ14の中心方向に対するシリンダ14の側壁方向の噴射量比と負荷との関係を示す関係マップである。
【図13】本発明の実施の形態3において、ECU50が実行する制御ルーチンのフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態4に係るシステム構成及び動作を説明するための概略図である。
【図15】本発明の実施の形態4において、ECU50が実行する制御ルーチンのフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態5に係るシステム構成及び動作を説明するための概略図である。
【図17】本発明の実施の形態5において、運転状態が低負荷である場合の吹き分け制御について説明するための図である。
【図18】本発明の実施の形態5において、ECU50が実行する吹き分け制御ルーチンのフローチャートである。
【図19】一般的なインジェクタ60が噴射する燃料噴霧を表す図である。
【図20】一般的なインジェクタ60を用いた比較対象のシステム構成を説明するための概略構成図である。
【図21】比較対象のシステムを、図20の矢印a方向から見た内燃機関10の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0028】
実施の形態1.
[実施の形態1のシステム構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係るシステム構成を説明するための概略構成図である。図1に示すシステムは内燃機関10を備えている。ここでは、内燃機関10は、4サイクルエンジンであるものとする。図1には、内燃機関10の縦断面が表されている。
【0029】
内燃機関10は、シリンダブロック12を備えている。シリンダブロック12には、シリンダ14が形成されている。本発明において、内燃機関10のシリンダ数は特に限定されるものではない。シリンダ14の内部には、ピストン16が摺動可能に配置されている。
【0030】
シリンダブロック12の上部には、シリンダヘッド18が組み付けられている。シリンダブロック12に形成されたシリンダ14の内壁面と、ピストン16の冠面と、シリンダヘッド18の下面の凹部とで囲まれた空間によって、内燃機関10の燃焼室20が形成されている。
【0031】
図2は、図1の矢印a方向から見た内燃機関10の概略図である。シリンダヘッド18には、燃焼室20に連通する2つ吸気ポート22a、22bが形成されている。吸気ポート22a、22bの下流端には、吸気ポート22a、22bを燃焼室20に対して開閉するための吸気バルブ24a、24bがそれぞれ設けられている。
【0032】
本実施形態のシステムでは、吸気ポート22a、22bから流入する吸気により、シリンダ14内に強吸気流領域と、強吸気流領域よりも吸気流の弱い弱吸気流領域とが形成される。具体的には、強吸気流領域は、吸気ポート22a、22bからシリンダ14の中心方向に流入する吸気により、シリンダ14の中心部を縦に旋回するタンブル流70が形成される領域である。弱吸気流領域は、タンブル流70が形成される領域の側方に位置する領域である。
【0033】
吸気ポート22a、22bには、燃焼室20に向けて燃料を噴射するためのインジェクタ30a、30bがそれぞれ取り付けられている。このように、本実施形態の内燃機関10は、デュアルポート噴射弁エンジンを構成している。インジェクタ30a、30bは、それぞれ噴射燃料のポート付着を避けるために、開弁した吸気バルブ24a、24bの隙間を狙って燃料を噴射するように取り付けられている。そのため、インジェクタ30a、30bは、吸気バルブ24a、24bの近傍に取り付けられている。
【0034】
以下の説明において、吸気ポート22a、22bを特に区別しない場合には、単に吸気ポート22という。吸気バルブ24a、24bを特に区別しない場合には、単に吸気バルブ24という。インジェクタ30a、30bを特に区別しない場合には、単にインジェクタ30という。
【0035】
シリンダヘッド18には、燃焼室20に連通する2つの排気ポート26a、26bが形成されている。排気ポート26a、26bの下流端には、排気ポート26a、26bを燃焼室20に対して開閉するための排気バルブ28a、28bがそれぞれ設けられている。
【0036】
本実施形態のシステムは、ECU(Electronic Control Unit)50を備えている。ECU50の入力部には、クランク角CAを検出するためのクランク角センサ52等の各種センサが接続されている。また、ECU50の出力部には、インジェクタ30a、30bの他、図示しない点火プラグ等の各種アクチュエータが接続されている。ECU50は、各種センサの出力に基づき、所定のプログラムに従って各種アクチュエータを作動させることにより、内燃機関10の運転状態を制御する。なお、目標空燃比は理論空燃比(ストイキ)に設定されているものとする。
【0037】
[実施の形態1における特徴的構成]
次に、本実施形態のシステムにおける特徴的構成について説明する。本実施形態のシステムにおける特徴的構成は、主にインジェクタ30とその制御にある。そこで、まず、本システムのインジェクタ30の比較対象として、一般的なインジェクタを用いたシステム構成とその課題について図19〜図21を用いて説明する。
【0038】
(比較対象のシステム)
図19は、一般的なインジェクタ60が噴射する燃料噴霧を表す図である。図19(B)は、インジェクタ60を、図19(A)の矢印b方向から見た図である。インジェクタ60の噴孔は、矢印b方向から見て、放射状に燃料噴霧を生じさせるように設けられている。そのため、燃料噴霧は円錐状に形成される(図19(A)、図19(B))。
【0039】
図20は、一般的なインジェクタ60を用いた比較対象のシステム構成を説明するための概略構成図である。図21は、図20の矢印a方向から見た内燃機関10の概略図である。図20及び図21に示すシステム構成は、インジェクタ30a、30bに換えて、インジェクタ60a、60bが用いられている点を除いて、図1及び図2に示す構成と同様である。以下、図20及び図21において、図1及び図2に示す構成と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
図20及び図21に示す比較対象のシステムでは、本実施形態のシステムと同様に、シリンダ14内にタンブル流70が形成される。また、インジェクタ60a、60bは、それぞれ噴射燃料のポート付着を避けるために、開弁した吸気バルブ24a、24bの隙間を狙って、吸気の流れ方向に燃料を噴射するように取り付けられている(図20の領域72)。
【0041】
図21に示すように、インジェクタ60a、60bの噴射方向は、タンブル流70が形成されるシリンダ14の中心方向である。そのため、高負荷域などシリンダ14内に流入する吸気の流れが強い場合には、吸気バルブ24a、24bの隙間を通過した噴射燃料が吸気の流れに乗って、吸気ポート22a、22bに対向するシリンダ14の内壁にまで到達することとなる(図20及び図21の領域74)。シリンダ14の内壁に到達し付着した燃料は、オイル希釈や冷却ポテンシャル低減の原因となる。
【0042】
(本実施形態のシステム)
そこで、本実施形態のシステムにおいては、シリンダ14内に流入する吸気の流れが強い場合であっても、シリンダ14の内壁への燃料付着を抑制することができるように、インジェクタ30の噴射方向とその噴射制御とを、次のように構成することとした。
【0043】
本実施形態のシステムの特徴的構成について、図3〜図6を用いて説明する。図3は、本実施形態のシステムにおいて用いられるインジェクタ30が噴射する燃料噴霧を表す図である。図3(B)は、インジェクタ30を、図3(A)の矢印b方向から見た図である。インジェクタ30の噴孔は、図3(B)に示すように、2つの群に分けて設けられ、図の上方と下方とに分けて燃料が噴射される。そのため、燃料は噴霧Aと噴霧Bとに吹き分けられる(図3(A)、図3(B))。噴霧Aと噴霧Bは、扁平な扇状の噴霧(ファン噴霧)である。
【0044】
図4は、インジェクタ30a、30bの燃料吹き分け方向について説明するための図である。上述した図2に示すタンブル流70は、吸気ポート22aからシリンダ14内に流入する吸気の流れ76aと、吸気ポート22bからシリンダ14内に流入する吸気の流れ76bとにより形成される。
【0045】
インジェクタ30aは、タンブル流70の流れ方向であるシリンダ14の中心方向への噴霧B1と、タンブル流70が形成される領域の側方に位置するシリンダ壁方向(以下、シリンダ14の側壁方向という。)への噴霧A1とに燃料を吹き分けるように取り付けられている。噴霧A1及び噴霧B1は、開弁した吸気バルブ24aと吸気ポート22aの下流端との隙間を通過するように噴射される。
【0046】
同様に、インジェクタ30bは、タンブル流70の流れ方向であるシリンダ14の中心方向への噴霧B2と、シリンダ14の側壁方向への噴霧A2とに燃料を吹き分けるように取り付けられている。噴霧A2及び噴霧B2は、開弁した吸気バルブ24aと吸気ポート22bの下流端との隙間を通過するように噴射される。
【0047】
また、本実施形態のシステムでは、ECU50は、運転状態に応じてインジェクタ30a、30bそれぞれの噴射量を決定する。そして、ECU50は、この噴射量を満たす範囲で、運転状態に応じてインジェクタ30a、30bによるシリンダ14の中心方向、シリンダ14の側壁方向への吹き分け量を次のように制御する。
【0048】
まず、運転状態が高負荷である場合の吹き分け制御について図4を用いて説明する。本実施形態のシステムの吹き分け制御では、運転状態が高負荷である場合には、インジェクタ30aによるシリンダ14の側壁方向への噴霧A1の噴射量を、シリンダ14の中心方向への噴霧B1の噴射量よりも多くする。加えて、インジェクタ30bによるシリンダ14の側壁方向への噴霧A2の噴射量を、シリンダ中心方向への噴霧B2の噴射量よりも多くする。
【0049】
本実施形態のシステムにおいて、運転状態が高負荷である場合は、シリンダ14内に流入する吸気の流れ76a、76bが強く、吸気流動が強い。タンブル流70が形成される強吸気流領域に向かうシリンダ14の中心方向への噴射量を少なくすることで、吸気バルブ24の隙間を通過した噴射燃料が、タンブル流70に乗って、吸気ポート22に対向するシリンダ14の内壁にまで到達することを抑制することができる。そのため、シリンダ14の内壁への燃料付着を抑制することができる。その結果、オイル希釈や冷却ポテンシャル低減を抑制することができる。
【0050】
次に、運転状態が低負荷である場合の吹き分け制御について図5を用いて説明する。図5は、運転状態が低負荷である場合の吹き分け制御について説明するための図である。本実施形態のシステムの吹き分け制御では、運転状態が低負荷である場合には、インジェクタ30aによるシリンダ14の側壁方向への噴霧A1の噴射量を、シリンダ14の中央方向への噴霧B1の噴射量よりも少なくする。加えて、インジェクタ30bによるシリンダ14の側壁方向への噴霧A2の噴射量を、シリンダ14の中心方向への噴霧B2の噴射量よりも少なくする。
【0051】
本実施形態のシステムにおいて、運転状態が低負荷である場合は、シリンダ14内に流入する吸気の流れ76a、76bが弱く、吸気流動が弱い。そのため、タンブル流が形成される強吸気流領域に向かうシリンダ14の中心方向への噴射量を多くすることで、吸気バルブ24の隙間を通過した噴射燃料をタンブル流70に乗せて、均質性を向上させることができる。
【0052】
(制御ルーチン)
図6は、上述の動作を実現するために、ECU50が実行する吹き分け制御ルーチンのフローチャートである。図6に示すルーチンでは、まず、ステップS100において、ECU50は、運転状態が高負荷であるか否かを判定する。具体的には、ECU50は、負荷が所定の閾値以上であるか否かを判定する。負荷は、吸入空気量やエンジン回転数NE等から推定することができる。
【0053】
負荷が上記閾値以上であると判定される場合には、次に、ECU50は、シリンダ14の側壁方向(弱吸気流方向)への噴射量を、シリンダ14の中心方向(強吸気流方向)への噴射量よりも多く設定する(ステップS110)。具体的には、まず、ECU50は、運転モード(例えば、ストイキ)と負荷とに応じてインジェクタ30a、30bそれぞれの噴射量を決定する。続いて、ECU50は、インジェクタ30a、30bそれぞれについて、各噴射量を満たす範囲で、吹き分け量を決定する。ここで、シリンダ14の側壁方向への吹き分け量が、シリンダ14の中心方向への吹き分け量よりも多くなるように設定される。
【0054】
一方、ステップS100において、負荷が上記閾値未満であると判定される場合には、次に、ECU50は、シリンダ14の側壁方向(弱吸気流方向)への噴射量を、シリンダ14の中心方向(強吸気流方向)への噴射量よりも少なく設定する(ステップS120)。具体的には、ステップS110と同様に、インジェクタ30a、30bそれぞれの噴射量が決定され、各噴射量を満たす範囲で吹き分け量が決定される。このとき、シリンダ14の側壁方向への吹き分け量が、シリンダ14の中心方向への吹き分け量よりも少なくなるように設定される。
【0055】
以上説明したように、図6に示すルーチンによれば、吸気流動の大きい高負荷である場合に、シリンダ14の中心方向への吹き分け量が低減される。そのため、強いタンブル流70に乗って、吸気ポート22に対向するシリンダ14の内壁に到達する燃料を低減することができる。これにより、シリンダ14の内壁への燃料付着を抑制することができる。また、図6に示すルーチンによれば、吸気流動の小さい低負荷である場合に、シリンダ14の中心方向への吹き分け量が増大される。そのため、噴射燃料をタンブル流70に乗せて均質性を向上させることができる。このため、本実施形態のシステムによれば、高負荷域におけるオイル希釈や冷却ポテンシャル低減の抑制と、低負荷域における噴射燃料の均質性向上とを両立させることができる。
【0056】
尚、上述した実施の形態1においては、吸気ポート22a、22bが前記第1の発明における「2つの吸気ポート」に、インジェクタ30a、30bが前記第1の発明における「インジェクタ」に、タンブル流70が前記第3の発明における「タンブル流」に、タンブル流70が形成される領域が前記第1又は第3の発明における「強吸気流領域」に、タンブル流70が形成される領域の側方に位置する領域が前記第1の発明における「弱吸気流領域」に、シリンダ14の中心方向が前記第1又は第3の発明における「強吸気流方向」に、シリンダ14の側壁方向が前記第1又は第3の発明における「弱吸気流方向」に、それぞれ相当している。
【0057】
また、ここでは、ECU50が、上記ステップS110の処理を実行することにより前記第1の発明における「吹き分け制御手段」が、上記ステップS110及びS120の処理を実行することにより前記第2の発明における「吹き分け制御手段」が、それぞれ実現されている。
【0058】
実施の形態2.
[実施の形態2のシステム構成]
次に、図7〜図9を参照して本発明の実施の形態2について説明する。本実施形態のシステムは、図1及び図2に示す構成において、ECU50に後述する図9のルーチンを実施させることで実現することができる。
【0059】
[実施の形態2における特徴的制御]
上述した実施の形態1では、運転状態が高負荷であるか低負荷であるかに基づいて、インジェクタ30によるシリンダ14の中心方向と側壁方向とへの吹き分け量を制御している。このとき、負荷の程度によってより詳細に吹き分け量を決定することができれば、より適切にオイル付着等を防止しつつ、均質性を確保することができる。
【0060】
図7は、シリンダ14の中心方向に対するシリンダ14の側壁方向の噴射量比と負荷との関係を示す関係マップである。ストイキ運転では、負荷が増大するほど噴射量が増大し、吸気流動も強くなる。そこで、図7に示すように、高負荷であるほど、インジェクタ30によるシリンダ14の中心方向への噴霧B(噴霧B1及び噴霧B2(図4))に対する、シリンダ14の側壁方向への噴霧A(噴霧A1及び噴霧B2(図4))の噴射量比を高く定める。図7に示す関係から、負荷に応じた噴射量比を算出することで、精度高くに吹き分け量を決定することができる。
【0061】
ところで、上述のストイキ運転以外の運転モードが選択される場合もある。例えば、エアリーン運転では、スロットル全開(WOT)状態で高負荷であっても、必要とされる噴射量はストイキ運転の場合よりも少ない。噴射量が少ないため、シリンダ14の内壁への燃料付着の問題は小さい。そのため、高負荷であっても、インジェクタ30によるシリンダ14の中心方向への噴霧Bに対するシリンダ14の側壁方向への噴霧Aの噴射量比は、ストイキ運転の場合よりも小さく定めることが望ましい。
【0062】
そこで、本実施形態では、図8に示すように、運転モード毎に噴射量比と負荷との関係を定めた複数の関係マップを用意し、運転モードに対応する関係マップを選択して、その関係マップから負荷に応じた最適な噴射量比を算出することとした。
【0063】
(制御ルーチン)
図9は、上述の機能を実現するために、ECU50が実行する吹き分け制御ルーチンのフローチャートである。図9に示すルーチンでは、まず、ステップS200において、ECU50は、運転モードに応じた関係マップを選択する。具体的には、ECU50には、図8に示すように、シリンダ14の中心方向への噴霧Bに対するシリンダ14の側壁方向への噴霧Aの噴射量比と負荷との関係を、運転モード(ストイキ、エアリーン、EGRリーン等)毎に定めた複数の関係マップが記憶されている。例えば、ストイキ運転モードに対応する関係は、高負荷であるほど噴射量比が大きく、低負荷であるほど噴射量比が小さく定められている(図7)。
【0064】
次に、ステップS210において、ECU50は負荷を算出する。負荷は、吸入空気量やエンジン回転数NE等から推定することができる。
【0065】
続いて、ECU50は、ステップS200で選択した関係マップから、ステップS210で算出した負荷に応じた噴射量比を算出する(ステップS220)。
【0066】
そして、ECU50は、ステップS220で算出した噴射量比に基づいて、シリンダ14の側壁方向(弱吸気流方向)とシリンダ14の中心方向(強吸気流方向)とへの吹き分け量を設定する(ステップS230)。
【0067】
以上説明したように、図9に示すルーチンによれば、運転モードに対応する関係マップを用いて、シリンダ14の側壁方向と中心方向とへの吹き分け量を設定することができる。例えば、ストイキ運転モードである場合には、高負荷であるほど噴射量比を大きく、低負荷であるほど噴射量比を小さく定めた関係マップが選択される。そのため、全負荷域に渡って、負荷の程度に応じた噴射量比を、簡易な処理で精度高く算出することができる。
【0068】
尚、上述した実施の形態2においては、ECU50が前記第4乃至第6の発明における「関係記憶手段」に相当している。また、ここでは、ECU50が、上記ステップS200の処理を実行することにより前記第5の発明における「関係取得手段」が、上記ステップS220の処理を実行することにより前記第4又は第5の発明における「噴射量比算出手段」が、上記ステップS230の処理を実行することにより前記第4の発明における「吹き分け量設定手段」が、それぞれ実現されている。
【0069】
実施の形態3.
[実施の形態3のシステム構成]
次に、図10〜図13を参照して本発明の実施の形態3について説明する。本実施形態のシステムは図1及び図2に示す構成において、ECU50に後述する図13のルーチンを実施させることで実現することができる。
【0070】
[実施の形態3における特徴的制御]
上述した実施の形態2では、インジェクタ30によるシリンダ14の中心方向への燃料の吹き分け量を負荷に応じて設定している。このとき、インジェクタ30は、開弁した吸気バルブ24の隙間を狙ってシリンダ14の中心方向に噴射している。
【0071】
ところで、吸気バルブ24の動作過程において、シリンダ14内に流入する吸気の流速は一定ではない。図10は、吸気バルブ24の開き始めから閉じ終わりまでの開弁期間における、クランク角CAと吸気の流速との関係を示す関係図である。図10に示すように、シリンダ14内に流入する吸気の流速には、開弁期間中に過渡とピークが存在する。吸気の流速は、吸気行程の初期から中期にかけて上昇し、中期において最大となり、後期にかけて低下する。
【0072】
吸気の流速が遅い時期を燃料の噴射時期とすれば、吸気流動が小さいため、吸気の流れに乗って吸気ポート22に対向するシリンダ14の内壁にまで到達する噴射燃料を抑制することができる。そこで、本実施形態のシステムでは、低回転条件時など、噴射時間が吸気バルブ24の開弁期間よりも短い場合には、図11に示すように、吸気バルブ24の開閉時近傍を優先して噴射時期に割り当てることとした。
【0073】
さらに、吸気バルブ24の開閉時近傍を優先して噴射時期に割り当てる制御をする場合には、吸気流動が通常時よりも小さいため、通常時とは異なる関係マップを用いることとする。図12は、噴射時間が吸気バルブ24の開弁期間よりも短い場合における、シリンダ14の中心方向に対するシリンダ14の側壁方向の噴射量比と負荷との関係を示す関係マップである。本実施形態のシステムでは、低回転条件時など噴射時間が吸気バルブ24の開弁期間よりも短い場合に、実線78に示す関係マップを用いることとする。
【0074】
(制御ルーチン)
図13は、上述の機能を実現するために、ECU50が実行する制御ルーチンのフローチャートである。図13に示すルーチンでは、まず、ステップS300において、ECU50は、インジェクタ30による噴射時間が、吸気バルブ24の開弁期間よりも短いか否かを判定する。例えば、低回転条件時において、噴射時間が吸気バルブ24の開弁期間よりも短くなる。なお、噴射時間は、ストイキ運転において負荷等から算出することができる。吸気バルブ24の開弁期間は、エンジン回転数NE等から算出することができる。
【0075】
噴射時間が吸気バルブ24の開弁期間よりも短い場合には、次に、ECU50は、関係マップを選択する(ステップS310)。具体的には、ECU50には、上述した図12に示すように、通常時と、噴射時間が吸気バルブ24の開弁期間よりも短い時(実線78)それぞれについて、噴射量比と負荷との関係を定めた関係マップが記憶されている。噴射時間が吸気バルブ24の開弁期間よりも短い場合には、実線78に示す関係マップが選択される。
【0076】
続いて、ECU50は、図11に示すように、吸気バルブ24の開閉時近傍を優先して噴射時期に割り当てる(ステップS320)。
【0077】
以上説明したように、図13に示すルーチンによれば、噴射時間が吸気バルブ24の開弁期間よりも短い場合に、吸気の流速が遅い吸気バルブ24の開閉時近傍において、燃料を噴射させることができる。このため、本実施形態のシステムによれば、タンブル流70に乗って、吸気ポート22に対向するシリンダ14の内壁に到達する燃料を、一層低減させることができる。
【0078】
尚、上述した実施の形態3においては、ECU50が、上記ステップS300〜ステップS320の処理を実行することにより前記第7の発明における「噴射時期設定手段」が実現されている。
【0079】
実施の形態4.
[実施の形態4のシステム構成]
次に、図14〜図15を参照して本発明の実施の形態4について説明する。本実施形態のシステムは図1及び図14に示す構成において、ECU50に後述する図15のルーチンを実施させることで実現することができる。
【0080】
図14は、本発明の実施の形態4に係るシステム構成及び動作を説明するための概略図である。本実施形態のシステムは、気流制御弁54を備える点を除き、図1に示す構成と同様である。気流制御弁54は、図示省略する吸気通路(吸気ポート22a、22bを含む)に設けられている。気流制御弁54は、吸気行程時に燃焼室20の中に混合気の渦巻流(スワール流)を発生させるために吸気通路内の吸気の流れを制御することのできるスワールコントロールバルブである。ECU50の出力部には、気流制御弁54が接続されている。
【0081】
[実施の形態4における特徴的制御]
上述したシステム構成において、ECU50は、スワール流の発生要求に応じて気流制御弁54を制御する。この制御により、吸気ポート22aからは強い吸気の流れ80aが、吸気ポート22bからは吸気の流れ80aよりも弱い吸気の流れ80bがシリンダ14内に流入する。この吸気の流れ80a、80bの流量の差によって、スワール流82が形成される(図14)。
【0082】
図14に示すように、強い吸気の流れ80a及び弱い吸気の流れ80bは、吸気ポート22からシリンダ14の中心方向に流れ込む。インジェクタ30は、上述の実施の形態で説明した通り、シリンダ14の中心方向とシリンダ14の側壁方向とに燃料を吹き分けるように取り付けられている。そのため、シリンダ14の中心方向に噴射する燃料は、吸気の流れ80a、80bに乗ることとなる。スワール流82が形成される場合には、吸気の流れ80aが強いため、多くの噴射燃料がこの流れに乗れると、吸気ポート22に対向するシリンダ14の内壁にまで到達することとなる。シリンダ14の内壁に到達し付着した燃料は、オイル希釈や冷却ポテンシャル低減の原因となる。
【0083】
そこで、本実施形態のシステムでは、スワール流82が形成される場合には、インジェクタ30aから強い吸気の流れ80aの方向(シリンダ14の中心方向)に噴射される噴射量を、インジェクタ30bから弱い吸気の流れ80bの方向(シリンダ14の中心方向)に噴射される噴射量よりも少なくすることとした。
【0084】
(制御ルーチン)
図15は、上述の機能を実現するために、ECU50が実行する制御ルーチンのフローチャートである。図15に示すルーチンでは、まず、ステップS400において、ECU50は、スワール流の発生要求があるか否かを判定する。ECU50には、スワール流を発生させる運転条件が予め記憶されている。当該運転条件を満たす場合には、他のルーチンにおいてスワール流の発生要求がなされる。スワール流の発生要求がないと判定される場合には、その後、本ルーチンの処理は終了される。
【0085】
一方、スワール流の発生要求があると判定される場合には、次に、ECU50は、スワール流を形成するように気流制御弁54を制御する(ステップS410)。具体的には、吸気ポート22aからシリンダ14内に流入する吸気の流れ80aの流量を、吸気ポート22bから流入する吸気の流れ80bの流量よりも高めて、シリンダ14内にスワール流82を形成する。
【0086】
続いて、ECU50は、インジェクタ30a、30bの吹き分け量を設定する(ステップS420)。具体的には、ECU50は、インジェクタ30aから吸気の流れ80aの方向(シリンダ14の中心方向)に噴射される噴射量を、インジェクタ30bから吸気の流れ80bの方向(シリンダ14の中心方向)に噴射される噴射量よりも少なく設定する。
【0087】
以上説明したように、図15に示すルーチンによれば、インジェクタ30aから吸気の流れ80aの方向に噴射される噴射量が低減される。そのため、強い吸気の流れ80aに乗って、吸気ポート22aに対向するシリンダ14の内壁に到達する燃料を低減することができる。このため、本実施形態のシステムによれば、スワール流が形成される場合であっても、オイル希釈や冷却ポテンシャル低減の抑制を図ることができる。
【0088】
尚、上述した実施の形態4においては、吸気ポート22aが前記第8の発明における「第1吸気ポート」に、吸気ポート22bが前記第8の発明における「第2吸気ポート」に、インジェクタ30aが前記第8の発明における「第1インジェクタ」に、インジェクタ30bが前記第8の発明における「第2インジェクタ」に、スワール流82が前記第8の発明における「スワール流」に、吸気の流れ80aが前記第8の発明における「第1吸気ポートから流入するシリンダ内に流入する吸気の流れ」に、吸気の流れ80bが前記第8の発明における「第2吸気ポートからシリンダ内に流入する吸気の流れ」に、それぞれ相当している。
【0089】
また、ここでは、ECU50が、上記ステップS400〜ステップS420の処理を実行することにより前記第8の発明における「吹き分け制御手段」が実現されている。
【0090】
実施の形態5.
[実施の形態5のシステム構成]
次に、図16〜図18を参照して本発明の実施の形態5について説明する。本実施形態のシステムは図2及び図16に示す構成において、ECU50に後述する図18のルーチンを実施させることで実現することができる。
【0091】
図16は、本発明の実施の形態5に係るシステム構成及び動作を説明するための概略図である。本実施形態のシステムは、インジェクタ30による燃料の吹き分け方向が異なる点を除き、図1及び図2に示す構成と同様である。
【0092】
本実施形態のシステムにおいて、インジェクタ30は、噴射燃料のポート付着を避けるために、開弁した吸気バルブ24の隙間を狙って燃料を噴射するように取り付けられている。インジェクタ30の吹き分け方向の一方は、開弁した吸気バルブ24の傘部とシリンダ14上方(燃焼室20上方)との隙間(以下、単にシリンダ14上方の隙間という。)である。また、他方は、開弁した吸気バルブ24の傘部とシリンダ14下方(ピストン16方向)との隙間(以下、単にシリンダ14下方の隙間という。)である。
【0093】
上述したシステム構成において、タンブル流70は、吸気バルブ24の開弁時に傘部とシリンダ14上方との間に生じる隙間からシリンダ14内に流入する吸気の流れにより形成され、吸気ポート22に対向するシリンダ14の内壁に沿って下降した後に、ピストン16の冠部へと進む順タンブル流である。この吸気の流れは、インジェクタ30によるシリンダ14上方の隙間への噴射方向と同じである。そのため、高負荷域などシリンダ14内に流入する吸気の流れが強い場合には、シリンダ14上方の隙間を通過した多くの噴射燃料が吸気の流れに乗って、吸気ポート22に対向するシリンダ14の内壁にまで到達することとなる。シリンダ14の内壁に到達し付着した燃料は、オイル希釈や冷却ポテンシャル低下の原因となる。
【0094】
[実施の形態5における特徴的制御]
そこで、本実施形態のシステムにおいては、シリンダ14内に流入する吸気の流れが強い場合であっても、シリンダ14の内壁への燃料付着を抑制するため、燃料の吹き分け量を次のように制御することとした。
【0095】
まず、運転状態が高負荷である場合の吹き分け制御について図16を用いて説明する。本実施形態のシステムの吹き分け制御では、運転状態が高負荷である場合には、インジェクタ30によるシリンダ14下方の隙間への噴霧Cの噴射量を、シリンダ14上方の隙間への噴霧Dの噴射量よりも多くする。
【0096】
タンブル流70を形成する強い吸気の流れ方向への噴射量を少なくすることで、シリンダ14上方の隙間を通過した噴射燃料が、タンブル流70に乗って、吸気ポート22に対向するシリンダ14の内壁にまで到達することを抑制することができる。そのため、シリンダ14の内壁への燃料付着を抑制することができる。その結果、オイル希釈や冷却ポテンシャル低減を抑制することができる。
【0097】
次に、運転状態が低負荷である場合の吹き分け制御について図17を用いて説明する。図17は、運転状態が低負荷である場合の吹き分け制御について説明するための図である。本実施形態のシステムの吹き分け制御では、運転状態が低負荷である場合には、インジェクタ30によるシリンダ14下方の隙間への噴霧Cの噴射量を、シリンダ14上方の隙間への噴霧Dの噴射量よりも少なくする。
【0098】
運転状態が低負荷である場合は、シリンダ14内に流入する吸気の流れが弱く、吸気流動が弱い。そのため、タンブル流70を形成する吸気の流れ方向への噴射量を多くすることで、シリンダ14上方の隙間への噴射燃料をタンブル流70に乗せて、均質性を向上させることができる。
【0099】
(制御ルーチン)
図18は、上述の動作を実現するために、ECU50が実行する吹き分け制御ルーチンのフローチャートである。図18に示すルーチンでは、まず、ステップS500において、ECU50は、運転状態が高負荷域であるか否かを判定する。具体的には、ECU50は、負荷が所定の閾値以上であるか否かを判定する。負荷は、吸入空気量やエンジン回転数NEから推定することができる。
【0100】
負荷が上記閾値よりも高いと判定される場合には、次に、ECU50は、シリンダ14下方の隙間への噴射量を、シリンダ14上方の隙間への噴射量よりも多く設定する(ステップS510)。具体的には、まず、ECU50は、運転モード(例えば、ストイキ)と負荷とに応じてインジェクタ30a、30bそれぞれの噴射量を決定する。続いて、ECU50は、インジェクタ30a、30bそれぞれについて、各噴射量を満たす範囲で、吹き分け量を決定する。ここで、シリンダ14下方の隙間への吹き分け量が、シリンダ14上方の隙間への吹き分け量よりも多くなるように設定される。
【0101】
一方、ステップS500において、負荷が上記閾値未満であると判定される場合には、次に、ECU50は、シリンダ14下方の隙間への噴射量を、シリンダ14上方の隙間への噴射量よりも少なく設定する(ステップS520)。具体的には、ステップS510と同様に、インジェクタ30a、30bそれぞれの噴射量が決定され、各噴射量を満たす範囲で吹き分け量が決定される。このとき、シリンダ14下方の隙間への吹き分け量が、シリンダ14上方の隙間への吹き分け量よりも少なくなるように設定される。
【0102】
以上説明したように、図18に示すルーチンによれば、吸気流動の大きい高負荷である場合に、シリンダ14上方の隙間への吹き分け量が低減される。そのため、強いタンブル流70に乗って、吸気ポート22に対向するシリンダ14の内壁に到達する燃料を低減し、シリンダ14の内壁への燃料付着を抑制することができる。また、図18に示すルーチンによれば、吸気流動の小さい低負荷である場合に、シリンダ14上方の隙間への吹き分け量が増大される。そのため、噴射燃料をタンブル流70に乗せて均質性を向上させることができる。このため、本実施形態のシステムによれば、高負荷域におけるオイル希釈や冷却ポテンシャル低減の抑制と、低負荷域における噴射燃料の均質性向上とを両立させることができる。
【0103】
ところで、上述した実施の形態5のシステムにおいては、吹き分け量を、負荷が閾値よりも高負荷であるか低負荷であるかによって、択一的に設定することとしているが、この吹き分け量の設定方法はこれに限定されるものではない。例えば、実施の形態2で述べたように、関係マップを用いて、負荷の程度に応じて吹き分け量を設定することとしても良い。
【0104】
また、上述した実施の形態5のシステムにおいては、燃料噴射タイミングを、吸気バルブ24の開弁期間において行うこととしているが、さらに詳細に燃料噴射タイミングを設定することとしてもよい。例えば、実施の形態3で述べたように、吸気バルブ24の開閉時近傍を優先して噴射タイミングに割り当てることとしてもよい。
【0105】
尚、上述した実施の形態5においては、吸気ポート22a、22bが前記第9の発明における「2つの吸気ポート」に、インジェクタ30a、30bが前記第9の発明における「インジェクタ」に、タンブル流70が前記第9の発明における「タンブル流」に、シリンダ14上方の隙間が前記第9の発明における「シリンダ上方の隙間」に、シリンダ14下方の隙間が前記第9の発明における「シリンダ下方の隙間」に、それぞれ相当している。
【0106】
また、ここでは、ECU50が、上記ステップS510の処理を実行することにより前記第9の発明における「吹き分け制御手段」が、上記ステップS510及びS520の処理を実行することにより前記第10の発明における「吹き分け制御手段」が、それぞれ実現されている。
【符号の説明】
【0107】
10 内燃機関
14 シリンダ
20 燃焼室
22a、22b 吸気ポート
24a、24b 吸気バルブ
30a、30b インジェクタ
50 ECU
54 気流制御弁
70 タンブル流
82 スワール流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内に接続する少なくとも2つの吸気ポートを有し、前記2つの吸気ポートから流入する吸気により、シリンダ内に強吸気流領域と、前記強吸気流領域よりも吸気流の弱い弱吸気流領域とが形成される内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記2つの吸気ポートそれぞれに設けられ、前記強吸気流領域に向かう方向(以下、強吸気流方向という。)と前記弱吸気流領域に向かう方向(以下、弱吸気流方向という。)とに燃料を吹き分けて噴射可能なインジェクタと、
運転状態が高負荷である場合に、前記インジェクタによる前記弱吸気流方向への噴射量を、前記強吸気流方向への噴射量よりも多くする吹き分け制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項2】
前記吹き分け制御手段は、
運転状態が高負荷である場合に、前記インジェクタによる前記弱吸気流方向への噴射量を、前記強吸気流方向への噴射量よりも多くし、
前記運転状態が低負荷である場合に、前記インジェクタによる前記弱吸気流方向への噴射量を、前記強吸気流方向への噴射量よりも少なくすること、
を特徴とする請求項1記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項3】
前記強吸気流領域は、前記2つの吸気ポートからシリンダ内に流入する吸気により、シリンダ中心部を縦に旋回するタンブル流が形成される領域であり、
前記強吸気流方向は、前記タンブル流が形成されるシリンダ中心方向であり、
前記弱吸気流方向は、前記タンブル流が形成される領域の側方に位置するシリンダ壁方向であること、
を特徴とする請求項1及び2記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項4】
前記吹き分け制御手段は、
前記強吸気流方向に対する前記弱吸気流方向の噴射量比と負荷との関係を予め記憶する関係記憶手段と、
前記関係から、負荷に応じた前記噴射量比を算出する噴射量比算出手段と、
前記噴射量比算出手段により算出された噴射量比に基づいて、前記インジェクタによる前記強吸気流方向と前記弱吸気流方向とへの吹き分け量を設定する吹き分け量設定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項5】
前記関係記憶手段は、運転モードに対応する複数の前記関係を予め記憶し、
前記吹き分け制御手段は、前記関係記憶手段に記憶された複数の前記関係から、燃焼モードに対応する前記関係を取得する関係取得手段を更に備え、
前記噴射量比算出手段は、前記関係取得手段により取得された前記関係から、負荷に応じた前記噴射量比を算出すること、
を特徴とする請求項4記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項6】
前記関係記憶手段は、運転モードがストイキである場合に対応して、高負荷であるほど前記強吸気流方向に対する前記弱吸気流方向の噴射量比を大きく、低負荷であるほど前記強吸気流方向に対する前記弱吸気流方向の噴射量比を小さく定めた関係を予め記憶すること、
を特徴とする請求項4又は5記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項7】
前記吹き分け制御手段は、
吸気バルブの開き始めから閉じ終わりまでの開弁期間よりも噴射時間が短い場合に、前記開弁期間のうち前記吸気バルブの開閉時近傍を優先して噴射時期に設定する噴射時期設定手段を更に備えること、
を特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項8】
シリンダ内に接続する第1及び第2吸気ポートと、前記第1吸気ポートからシリンダ内に流入する吸気の流量を前記第2吸気ポートから流入する吸気の流量よりも高めて、シリンダ内にスワール流を形成可能な気流制御弁と、を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記第1及び第2吸気ポートそれぞれに対応して設けられ、シリンダ内に流入する吸気の流れ方向と、前記吸気の流れの側方に位置するシリンダ壁方向とに燃料を吹き分けて噴射可能な第1及び第2インジェクタと、
前記スワール流が形成される場合に、前記第1インジェクタによる前記第1吸気ポートからシリンダ内に流入する吸気の流れ方向への噴射量を、前記第2インジェクタによる前記第2吸気ポートからシリンダ内に流入する吸気の流れ方向への噴射量よりも少なくする吹き分け制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項9】
シリンダ内に接続する少なくとも2つの吸気ポートと、前記2つの吸気ポートそれぞれに設けられ、前記2つの吸気ポートをシリンダ内に対して開閉する吸気バルブとを有し、前記吸気バルブの開弁時に傘部とシリンダ上方との間に生じる隙間(以下、シリンダ上方の隙間という。)からシリンダ内に流入する吸気により、タンブル流が形成される内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記2つの吸気ポートそれぞれに設けられ、前記シリンダ上方の隙間と、前記吸気バルブの開弁時に傘部とシリンダ下方との間に生じる隙間(以下、シリンダ下方の隙間という。)とに燃料を吹き分けて噴射可能なインジェクタと、
運転状態が高負荷である場合に、前記インジェクタによる前記シリンダ下方の隙間への噴射量を、前記シリンダ上方の隙間への噴射量よりも多くする吹き分け制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項10】
前記吹き分け制御手段は、
運転状態が高負荷である場合に、前記インジェクタによる前記シリンダ下方の隙間への噴射量を、前記シリンダ上方の隙間への噴射量よりも多くし、
前記運転状態が低負荷である場合に、前記インジェクタによる前記シリンダ下方の隙間への噴射量を、前記シリンダ上方の隙間への噴射量よりも少なくすること、
を特徴とする請求項9記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−67679(P2012−67679A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213112(P2010−213112)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】