説明

内燃機関の給気冷却装置

【課題】 給気の冷却効率の向上と、ノッキング防止による機関熱効率の向上と、冷却装置も小形コンパクト化と、組付けの容易化を図ることである。
【解決手段】 冷却水が流通する冷却用コア5,6を2つ用いて給気を二段構えで冷却する内燃機関の給気冷却装置において、両冷却用コア5,6を一体的に結合すると共に、給気マニホールド2に内蔵する。給気上流側の第1段目冷却用コア5の冷却水温度を高くし、給気下流側の第2段目冷却用コア6の冷却水温度を低く設定する。好ましくは、給気マニホールド2を上流側ケース26と下流側ケース27の2分割構造とし、各ケース26,27にはそれぞれ接続用フランジ部35,36を形成し、各冷却用コア5,6の取付部40,40を接続用フランジ部35,36間に挟持して、共締めする。これにより給気マニホールド2を組み立てると同時に両冷却用コア5,6を結合固定する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、ガス機関等の内燃機関の給気冷却装置に関し、特に、給気冷却装置を2段式とし、上流側の第1段目は高温水で給気を冷却し、下流側の第2段目は低温水で冷却する給気冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種2段式の給気冷却装置としては、たとえば特開平8−291715号公報があり、図5に示すように、給気管80の途中に第1段目の冷却機構としてインタークーラー81を設け、第2段目の冷却機構として、上記インタークーラー81とは分離した状態で、給気マニホールド83の各給気出口84にそれぞれ吹き返し給気冷却用クーラー85を備えている。インタークーラー81には高温(たとえば80°〜100°C)の冷却水を流通させ、吹き返し給気冷却用クーラー85には低温(たとえば30°C〜35°C)の冷却水を流通させるようにしてある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】図5の従来例では、高温と低温の2段冷却とすることにより、冷却効率を向上させることができると共に、燃焼室からの吹き返しガスの冷却並びに高温の冷却水を利用することによる熱回収量の増大化を図ることができる。しかしながら、第1段目の冷却を行なうインタークーラー81と、第2段目の冷却を行なう各吹き返し給気冷却用クーラー85を、互いに離れた位置に個々に配置しており、しかも各吹き返し給気冷却用クーラー85同士も、各気筒毎にそれぞれ分離した状態で備えているので、部品点数及び組付工数が増加すると共に、冷却装置全体が大形化する。
【0004】
【発明の目的】本願発明の目的は、(1)給気マニホールド及び給気冷却装置の小形コンパクト化、(2)ノッキングの防止による機関効率の向上と、熱回収増大による総合効率の向上、(3)冷却装置の組付け及びメンテナンスの容易化を図ることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本願請求項1記載の発明は、冷却水が流通する2つの冷却用コアを互いに接近させて結合すると共に、給気マニホールド内の給気流を2段構えで冷却するように給気マニホールドに内蔵し、給気上流側の第1段目冷却用コアに流す冷却水の温度よりも、給気下流側の第2段目冷却用コアに流す冷却水の温度を低く設定していることを特徴とする内燃機関の給気冷却装置である。
【0006】請求項2記載の発明は、請求項1記載の内燃機関の給気冷却装置において、給気マニホールドを上流側ケースと下流側ケースの2分割構造とし、各ケースにはそれぞれ接続用フランジ部を設け、各冷却用コアには取付部を形成し、両ケースの接続用フランジ部間に両コアの取付部を挟持して、両接続用フランジ部を締結することにより、給気マニホールドを組み立てると同時に両冷却用コアを結合固定していることを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】図1は本願発明を適用した6気筒ガス機関の冷却水系統配管略図であり、シリンダヘッド1の給気ポート側の端面に給気マニホールド2を取り付けており、給気マニホールド2の給気入口8は過給機7のコンプレッサ部に接続し、給気マニホールド2のシリンダヘッド側の端面には、各気筒用にそれぞれ給気出口56が形成されている。給気マニホールド2内には、給気上流側の第1段目冷却用コア5と、これと一体的に結合された下流側の第2段目冷却用コア6を内蔵している。
【0008】このガス機関は2つの冷却水系統を備えており、1つはシリンダブロック3及びシリンダヘッド1を冷却するための高温冷却水系統であり、熱交換器10及び冷却水ポンプ11を備え、冷却水ポンプ11の吐出口に接続された冷却水供給管12はシリンダブロック3の冷却水入口14に接続し、熱交換器10の戻り口は戻り管16を介してシリンダヘッド1の冷却水出口15に接続している。高温冷却水系統の冷却水温度は、冷却水入口14において、たとえば80°C〜100°C程度となるように設定されている。
【0009】第1段目冷却用コア5は上記高温冷却水系統の冷却水を利用しており、第1段目冷却用コア5の冷却水入口部20は、冷却水供給枝管21を介して前記冷却水供給管12に接続し、第1段目冷却用コア5の冷却水出口部23は、冷却水戻り枝管24を介して前記冷却水戻り管16に接続している。したがって、第1段目冷却用コア5の冷却水入口部20の温度は、シリンダブロック冷却水入口14と略同様に、80°C〜100°C程度となっている。
【0010】低温冷却水系統は図面中に破線で示しており、第2段目冷却用コア6に冷却水を供給するために用い、前記高温冷却水系統とは別に熱交換器28及び冷却水ポンプ29を備えている。冷却水ポンプ29の吐出口に接続された冷却水供給管31は、第2段目冷却用コア6の冷却水入口部32に接続し、第2段目冷却用コア6の冷却水出口部34は冷却水戻り管33を介して熱交換器28の戻り口に接続している。低温冷却水系統の冷却水温度は、上記高温冷却水系統よりも低く設定されており、たとえば冷却水入口部32において、30°C〜35°C程度となるように設定されている。
【0011】図2は図1のII-II断面詳細図であり、給気マニホールド2は上下2分割構造となっており、上側の上流側ケース26と下側の下流側ケース27を備え、上流側ケース26の下面(合わせ面)及び下流側ケース27の上面(合わせ面)には、それぞれ外向きの接続用フランジ部35,36が一体的に設けられている。
【0012】給気マニホールド2内に内蔵される第1,第2段目冷却用コア5,6は同一構造物を上下対称に配置したものであり、第1段目冷却用コア5は上流側ケース26内に位置し、第2段目冷却用コア6は下流側ケース27内に位置し、それぞれ外向きの板状取付部40,40を備えている。各取付部40,40の合わせ面側にはそれぞれシール40a、40aが張り付けられている。両取付部40,40は断熱性及び気密性を有するシート部材(間座)43を介して互いに接合されると共に、上下の接続用フランジ部35,36間に挟持され、フランジ部結合用のボルト46及びナット47により接続用フランジ部35,36と共締めされている。すなわち、上記ボルト46及びナット47により、ケース26,27同士を結合すると同時に、両冷却用コア5、6を一体的に結合し、かつ、給気マニホールド2内に固定しているのである。
【0013】図2のIV-IV断面図である図4において、第1段目冷却用コア5と第2段目冷却用コア6は前述のように同一構造物であり、上下逆向きの姿勢で配置されているので、第1段目冷却用コア5の構造を詳細に説明し、第2段目冷却用コア6については、同じ部分に同じ符号を付し、重複説明は省略する。ただし、第1段目冷却用コア5の冷却水入口部20と第2段目冷却用コア6の冷却水入口部32は、互いに反対側に配置され、それに伴って第1段目冷却用コア5の冷却水出口部23と第2段目冷却用コア6の冷却水出口部34も、互いに反対側に配置されている。
【0014】上側の第1段目冷却用コア5は、長さ方向両端部に配置された1対のハウジング部51と、両ハウジング部51を連通連結する多数の冷却水管52から構成されており、各ハウジング部51には、それぞれ入口用と出口用の口金53,54が形成されている。各口金53,54は、上流側ケース26の長さ方向の端壁に形成された下端開口状のU字溝66,66を通って外部に突出しており、外部からOリングを介して入口用及び出口用の継手管67,68がそれぞれ嵌着され、前記冷却水入口部20及び冷却水出口部23を構成している。継手管67,68は取付板67a、68aを一体に有し、前記U字溝66,66をシールするように、ボルト等により上流側ケース26の端壁に着脱自在に固定されている。
【0015】上流側ケース26の上壁26cは、長さ方向の一方側が高くなるように傾斜状に形成されており、高く形成された一方側の端壁26aに、第1段目冷却用コア5よりも上方に位置する給気入口8が形成されている。下流側ケース27には、シリンダヘッド側の端面に前記各気筒用の給気出口56が開口している。各給気出口56は、図3に示すようにそれぞれ連結管57を介してシリンダヘッド1の各給気ポート59に接続している。
【0016】また、図3において、上流側ケース26の接続用フランジ部35は、給気マニホールド2の全周を囲むように形成されており、冷却水入口部20と冷却水出口部23とは、コア幅方向に互いにずれた位置に配置されている。図4の下流側ケース27の接続用フランジ部36も、前記上流側ケース26の接続用フランジ部35と同じ形状となっており、給気マニホールド2の全周を囲むように形成されている。
【0017】
【作用】図1において、高温冷却水系統の冷却水ポンプ11から吐出される冷却水は、冷却水供給管12からシリンダブロック3の冷却水入口14に供給されると共に、一部が分岐して、冷却水供給枝管21を介して第1段目冷却用コア5の冷却水入口部20に供給される。シリンダブロック3に供給された冷却水は、周知のように冷却水ジャケット等を通ってシリンダライナ等を冷却すると共に、シリンダヘッド1内を冷却し、シリンダヘッド1の上端冷却水出口15から冷却水戻り管16を介して熱交換器10に戻される。一方、第1段目冷却用コア5に供給された冷却水は、第1段目の冷却として、給気マニホールド2内の給気を冷却し、冷却水出口部23から冷却水戻り枝管24を介して冷却水戻り管16に合流し、熱交換器10へ戻される。第1段目冷却用コア5の冷却水入口部20において、冷却水温度がたとえば80°程度に設定されていると、冷却水出口部23では82°C程度まで上昇する。また、給気の温度は、第1段目冷却用コア5により、160°C程度から100°C程度まで下げられる。
【0018】低温用冷却水系統の冷却水ポンプ29から吐出される冷却水は、冷却水供給管31から第2段目冷却用コア6の冷却水入口部32に供給され、上記第1段目冷却用コア5による冷却に続いて、第2段目として給気をさらに冷却し、冷却水出口部34から冷却水戻り枝管33を介して熱交換器28へ戻される。第2段目冷却用コア6の冷却水入口部32において、冷却水温度がたとえば35°程度に設定されていると、冷却水出口部34では37°C程度まで上昇する。給気の温度は、第2段目冷却用コア6により、100°C程度から50°C程度まで下げられる。
【0019】図2において、給気入口8から給気マニホールド2の上流側ケース26内に供給される給気は、第1段目冷却用コア5の冷却水管52の間を通過することにより、前述のように160°Cから100°C程度まで冷却され、続いて第2段目冷却用コア6の冷却水管52の間を通過することにより、100°Cから50°C程度まで冷却される。そして、着火順序に従って、順次対応する給気出口56から給気ポート59へと供給される。
【0020】
【発明の他の実施の形態】(1)図1に示す給気冷却装置は、第1段目冷却用コア5の冷却水入口部20及び冷却水出口部23と、第2段目冷却用6の冷却水入口部32及び冷却水出口部34を逆に配置しているが、冷却水入口部20,32同士及び冷却水出口部23,34同士を同一側に配置する構造とすることも可能である。
【0021】(2)冷却用コア5,6の構造は、図4等では冷却水が一端から入って他端に抜ける方式(通り抜け方式)を採用し、一層のコンパクト化を図っているが、たとえば冷却水管52としてU字管を採用し、入口端と出口端が同じ側に位置する往復方式を採用することも可能である。
【0022】(3)ディーゼル機関又はガソリン機関にも本願発明を適用することも可能である。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように本願発明によると、(1)冷却水を流通させる冷却用コア5,6を2つ用いて給気を二段構えで冷却する内燃機関の給気冷却装置において、両冷却用コア5,6を一体的に結合すると共に、給気マニホールド2に内蔵しているので、冷却効率を向上させながらも、給気冷却装置を小形コンパクト化し、かつ、組立及びメンテナンスを容易にすることができる。
【0024】(2)給気上流側の第1段目冷却用コア5の冷却水温度を高くし、給気下流側の第2段目冷却用コア6の冷却水温度を低く設定しているので、たとえば第1段目冷却用コア5の高温水として、シリンダブロック3及びシリンダヘッド1の冷却水を利用することにより、シリンダヘッド1等の冷却水を高温に保つことができ、熱回収量が増大し、総合効率が向上する。一方、給気ポートに近い第2段目冷却用コア6の冷却水温度を低くしているので、燃焼室からの吹き返しガスを効果的に冷却し、ノッキングの発生を確実に防止し、機関効率を向上させることができる。
【0025】(3)請求項2記載の発明のように、給気マニホールド2を上流側ケース26と下流側ケース27の2分割構造とし、各ケース26,27にはそれぞれ接続用フランジ部35,36を設け、各冷却用コア5,6には取付部40,40を形成し、両接続用フランジ部35,36間に冷却用コア5,6の取付部40、,40を挟持して、両接続用フランジ部35,36を締結することにより、給気マニホールド2を組み立てると同時に両冷却用コア5,6を結合固定しているので、冷却装置の組付け及びメンテナンスが一層容易になると共に、コンパクトにもなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明を適用したガス機関の冷却水系統配管略図である。
【図2】 図1のII-II断面拡大図である。
【図3】 図2のIII-III断面図である。
【図4】 図2のIV-IV断面図である。
【図5】 従来例の断面図である。
【符号の説明】
1 シリンダヘッド
2 給気マニホールド
3 シリンダブロック
5 第1段目冷却用コア
6 第2段目冷却用コア
7 過給機
26 上流側ケース
27 下流側ケース
35,36 接続用フランジ部
40 取付部
43 間座

【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷却水が流通する2つの冷却用コアを互いに接近させて結合すると共に、給気マニホールド内の給気流を2段構えで冷却するように給気マニホールドに内蔵し、給気上流側の第1段目冷却用コアに流す冷却水の温度よりも、給気下流側の第2段目冷却用コアに流す冷却水の温度を低く設定していることを特徴とする内燃機関の給気冷却装置。
【請求項2】 請求項1記載の内燃機関の給気冷却装置において、給気マニホールドを上流側ケースと下流側ケースの2分割構造とし、各ケースにはそれぞれ接続用フランジ部を設け、各冷却用コアには取付部を形成し、両ケースの接続用フランジ部間に両コアの取付部を挟持して、両接続用フランジ部を締結することにより、給気マニホールドを組み立てると同時に両冷却用コアを結合固定していることを特徴とする内燃機関の給気冷却装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図5】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate