説明

内燃機関の運転制御方法及び装置

【課題】SCR方式及びEGR方式を併用した内燃機関において、排気中のNO量を基準値以下に保持しながら、内燃機関のオーバーヒートを防止可能にする。
【解決手段】ラジエータ40とエンジンブロック12間を循環する冷却水循環路42a、42bと、冷却水循環路42bから分岐し、EGR路44に設けられたEGRクーラ46と接続した分岐冷却水循環路48とを備えている。コントローラ60で、冷却水温tが閾値T以下のとき通常運転制御モードに移行し、冷却水温tが閾値Tを超え、かつSCR触媒36が活性温度のとき、EGR量を低減すると共に、尿素水添加量を増加させる第1運転制御モードに移行し、冷却水温tが閾値Tを超え、かつSCR触媒36が活性温度でないとき、エンジン出力を低減する第2運転制御モードに移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NO浄化装置と排気再循環路を備えた内燃機関において、排気中のNO量を基準値以下に保持しつつ、オーバーヒートを防止可能にした内燃機関の運転制御方法及び運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック、バス等のディーゼル機関を装備した大型車両では、排ガス浄化装置として、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を浄化するために、尿素を還元剤として用いたSCR(Selectve Catalytic Reduction)触媒を使用する選択的触媒還元(SCR)方式が実用化されている。SCR触媒を用いた排ガス浄化装置は、排ガスを排出する排気管の途中に、酸素共存下でも選択的に排ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元剤と反応させる性質を備えたSCR触媒を設け、排ガス中のNOxを選択的にSCR触媒によって清浄化するものである。
【0003】
この浄化方法は、SCR触媒上流側の排気路中に尿素水を噴射し、尿素水中の尿素を加水分解し、還元剤であるアンモニアを生成する。生成したアンモニアをSCR触媒に供給し、SCR触媒に吸着したNOxを還元して窒素と水に分解し、外部へ排出させることで、NOxの排出濃度を基準値以下に低減させるようにしている。
【0004】
排気中のNO量を低減する別な手段として、燃焼後の排気の一部を給気路に導入し、再度給気させる排気再循環(EGR)方式がある。これによって、給気の酸素濃度を低減し、燃焼温度を低下させることで、NO発生量を低減している。今後さらに強化される排ガス規制や、他国ですでに施行されている厳しい排ガス規制に対応するためには、SCR方式及びEGR方式を同時実施する必要がある。
特許文献1〜3には、SCR方式とEGR方式とを同時併用した内燃機関が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−122447号公開公報
【特許文献2】特開2003−314254号公開公報
【特許文献3】特開2009−270549号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
再循環路を流れる排気を冷却水で冷却する冷却器を備えたEGR方式では、冷却水の保有熱をラジエータで放熱している。想定を超える酷暑の中で、車両の高負荷運転を継続し、オーバーヒートしてしまった場合、車両を同じ速度で運行させることが困難になり、内燃機関の出力を制限する必要がある。特に大型車両の場合、速度を落すと、周囲の交通の流れを妨害するおそれがあり、また、オーバーヒートを解消するため、一時停車する場合にも、大型車両は、停車場所の確保も容易ではない。
【0007】
冷却水がラジエータとシリンダブロック及び排気再循環路に設けられた冷却器との間を循環する冷却方式では、冷却水が再循環路を流れる排気から奪う熱量を低減することで、冷却水の温度上昇を防止し、内燃機関のオーバーヒートを防止できる。しかし、この操作を行なうと、EGR方式によって低水準に保持されていたNO量が増加するという問題がある。特許文献1〜3には、かかる問題を解決する解決策は開示されていない。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、SCR方式及びEGR方式を併用した内燃機関において、排気中のNO量を基準値以下に保持しながら、内燃機関のオーバーヒートを防止可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、本発明の内燃機関の運転制御方法は、冷却水をラジエータとエンジンブロック及び排気再循環路に設けられた冷却器との間に循環させ、エンジンブロック及び再循環排気を冷却する冷却工程と、エンジンブロックに流入する冷却水の温度を検出する検出工程と、冷却水の温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度であるとき、再循環排気量を内燃機関のオーバーヒート限界値以下に低減し、かつ還元剤添加量を増加する第1運転工程と、冷却水の温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度でないとき、内燃機関の出力を低減する第2運転工程と、からなるものである。
【0010】
本発明方法では、冷却水温が閾値を超えないとき、通常運転を行なう。即ち、排ガス中NO量を基準値以下に維持しつつ、燃料及び還元剤の消費量が最小限となる運転を行なう。(燃料+尿素水)消費量を最小限とすることで、運行経費を節減する。冷却水温が閾値を超えたとき、排気温度が脱硝触媒の活性温度であれば、排気の再循環量を内燃機関のオーバーヒート限界値以下に抑制することで、内燃機関のオーバーヒートを防止すると共に、還元剤添加量を増加して、前記排気再循環量を抑制したことによるNOx浄化能力の低下を補うように脱硝触媒のNO浄化作用の増大によって、排気中NO量を基準値以下に保持する。
【0011】
冷却水温が閾値を超えたとき、排気温度が脱硝触媒の活性温度に達していなければ、内燃機関の出力を低減し、オーバーヒートを防止する。
【0012】
本発明方法の概略を図4により説明する。図4において、冷却水温tが閾値T以下である通常運転時、再循環排気量(EGR量)は、排気中NO量を低減可能なA量に設定される。EGR量は冷却水が再循環排気から持ち去る熱量と一義的に対応する。即ち、EGR量が増加すれば、持ち去り熱量も増加し、EGR量が減少すれば、持ち去り熱量も減少する。EGR量Aに対応して、排気中NO量が基準値以下となるように、SCR触媒を用いた排気ガス浄化装置の尿素水添加量をC量に調節する。
【0013】
冷却水温tが閾値Tを超えたとき、EGR量をB量に低減し、冷却水が再循環排気から持ち去る熱量を減少させて、内燃機関のオーバーヒートを防止する。EGR量をB量に低減すると、排気中NO量が増加するので、尿素水添加量をD量に増加し、排気中NO量を基準値以下に抑えるようにする。
かかる操作を行なうことによって、排気中NO量を基準値以下に保持しながら、内燃機関のオーバーヒートを防止する。
【0014】
前記本発明方法の実施に直接使用可能な本発明の内燃機関の運転制御装置は、ラジエータとエンジンブロック及び排気再循環路に設けられた冷却器との間に冷却水を循環させる冷却水経路と、エンジンブロックに流入する冷却水の温度を検出する温度センサと、冷却水の温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度であるとき、再循環排気量を内燃機関のオーバーヒート限界値以下に低減し、かつ還元剤添加量を増加すると共に、冷却水の温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度でないとき、内燃機関の出力を低減するコントローラと、を備えている。
【0015】
本発明装置では、内燃機関入口側の冷却水温を検出し、冷却水温が閾値を超えたとき、排気温度が脱硝触媒の活性温度であれば、排気の再循環量を低減することで、内燃機関のオーバーヒートを防止する。同時に、脱硝触媒のNO浄化作用によって、排気路から排出されるNO量を基準値以下にする。
【0016】
また、該冷却水温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度でないとき、内燃機関の出力を低減する。このように、排気の再循環量を抑制することで、冷却水が再循環排気から持ち去る熱量を低減し、内燃機関のオーバーヒートを防止する。また、内燃機関の出力を低減することで、内燃機関のオーバーヒートを防止する。
【0017】
本発明装置において、前記コントローラが、冷却水温が閾値以下であるとき、排気中NO量を基準値以下にしながら、燃料及び還元剤の消費量を最小限にする通常運転制御手段と、冷却水の温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度であるとき、再循環排気量を内燃機関のオーバーヒート限界値以下に低減し、かつ還元剤添加量を増加する第1運転制御手段と、冷却水の温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度でないとき、機関の出力を低減する第2運転制御手段と、を備えているとよい。
【0018】
冷却水温が閾値を超えていない通常運転時、通常運転制御手段に基づいて運転することにより、燃料及び還元剤の消費量を最小限に抑え、これによって、運行経費を最小限に抑えることができる。また、冷却水温が閾値を超えたとき、第1運転制御手段又は第2運転制御手段によって内燃機関を運転する。これによって、排気中NO量を基準値以下に保持しながら、内燃機関のオーバーヒートを防止できる。
【発明の効果】
【0019】
方法発明によれば、内燃機関の排気に還元剤を添加し、該還元剤と脱硝触媒とで排気中NOを浄化するNO浄化工程と、排気の一部を給気路に還流させる排気再循環工程とを行なう内燃機関の運転制御方法において、冷却水をラジエータとエンジンブロック及び排気再循環路に設けられた冷却器との間に循環させ、エンジンブロック及び再循環排気を冷却する冷却工程と、エンジンブロックに流入する冷却水の温度を検出する検出工程と、冷却水の温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度であるとき、再循環排気量を内燃機関のオーバーヒート限界値以下に低減し、かつ還元剤添加量を増加する第1運転工程と、冷却水の温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度でないとき、内燃機関の出力を低減する第2運転工程と、からなるので、排気中NO量を基準値以下に保持しつつ、内燃機関のオーバーヒートを防止できる。そのため、いかなる環境においても、内燃機関の出力を確保し、車両の運行を速やかに継続できる。
【0020】
装置発明によれば、内燃機関の排気路に脱硝触媒と該脱硝触媒の上流側排気路に還元剤を添加する還元剤添加装置とからなるNO浄化装置と、排気の一部を給気路に還流させる排気再循環路とを備えた内燃機関の運転制御装置において、ラジエータとエンジンブロック及び排気再循環路に設けられた冷却器との間に冷却水を循環させる冷却水経路と、エンジンブロックに流入する冷却水の温度を検出する温度センサと、冷却水の温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度であるとき、再循環排気量を内燃機関のオーバーヒート限界値以下に低減し、かつ還元剤添加量を増加すると共に、冷却水の温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度でないとき、内燃機関の出力を低減するコントローラと、を備えているので、前述の方法発明と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の系統図である。
【図2】前記実施形態の運転制御を示すフローチャートである。
【図3】前記実施形態の運転制御マップを示す線図である。
【図4】本発明の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0023】
本発明方法及び装置の一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。まず、図1により本実施形態のディーゼル機関10の構成を説明する。図1において、複数のシリンダ26が内蔵されたエンジンブロック12に給気マニホールド14及び排気マニホールド16が接続されている。給気マニホールド14には給気管18が接続され、排気マニホールド16には排気管20が接続されている。
【0024】
給気管18及び排気管20に跨って過給機22が設けられている。過給機22は、給気管18に設けられたコンプレッサ22aと、排気管20に設けられた排気タービン22bと、からなり、コンプレッサ22aと排気タービン22bは軸で一体に結合されている。排気eによって排気タービン22bが回転することで、コンプレッサ22aが回転し、給気aを給気管18に送り込む。
【0025】
コンプレッサ22aの下流側給気管18にインタークーラ24が設けられ、給気管18は、運転効率を向上させるため、インタークーラ24で冷却され、高密度にされる。インタークーラ24で冷却された給気aは、給気マニホールド14を経て複数のシリンダ26に供給される。シリンダ26で燃料(例えば軽油)と給気aとが混合し、これらが圧縮されて燃焼する。排気eは排気マニホールド16を経て排気管20に排気される。
【0026】
排気タービン22bの下流側排ガス路20には、前段酸化触媒28とDPFフィルタ30とを組み合わせた排ガス浄化装置32が設けられている。この排ガス浄化装置32は、DPFフィルタ30で排気中の粒子状物質を捕捉し、前段酸化触媒28で排気中NOをNOの多い状態にし、NOの強力な酸化作用で捕捉した粒子状物質を燃焼させるものである。
【0027】
排ガス浄化装置32の下流側には、尿素水噴射ノズル34が設けられ、尿素水噴射ノズル34の下流側にSCR触媒36が設けられている。尿素水供給管35に設けられたポンプ(図示省略)によって、尿素水噴射ノズル34から尿素水nを噴射する。排気eの熱で尿素水中の尿素を加水分解し、還元剤であるアンモニアを生成する。生成したアンモニアをSCR触媒36に供給し、SCR触媒に吸着したNOxを還元して窒素と水に分解し、外部へ排出させる。SCR触媒36の下流側に設けられた後段酸化触媒38は、残存したアンモニア、一酸化炭素、及び炭化水素等を除去する。
【0028】
ラジエータ40とエンジンブロック12との間を接続する冷却水循環路42a及び42bが設けられている。また、排気マニホールド16から分岐し、給気マニホールド14に接続された排気再循環路(EGR路)44が設けられている。EGR路44には、EGRクーラ46が介設されている。EGRクーラ46には、冷却水循環路42bから分岐し、EGRクーラ46に接続され、再び冷却水循環路42bに合流する分岐冷却水循環路48が接続されている。EGR路44を流れる排気e(EGRガス)は、EGRクーラ46で冷却水と熱交換し冷却される。EGR路44には流量調整弁50が設けられている。
【0029】
エンジンブロック12の入口側(ディーゼル機関10のオーバーヒート状態を把握するのに適した位置)で、冷却水循環路42aに温度センサ52が設けられ、エンジンブロック入口側冷却水温tを検出している。また、排ガス浄化装置32の入口側排気管20に温度センサ54が設けられ、SCR触媒36の入口側排気管20に温度センサ56が設けられている。これら温度センサの検出信号は、ディーゼル機関10の運転を制御するECU(エンジン・コントロール・ユニット)60に送られる。
【0030】
ECU60では、これらの検出値に基づいて流量調整弁50の開度を制御し、EGRクーラ46を流れる冷却水量を調整する。また、ECU60は、尿素水供給管35に設けられた流量調整弁58の開度を制御し、尿素水添加量を調整する。ECU60は、記憶部62、通常運転制御手段64、第1運転制御手段66及び第2運転制御手段68を内蔵している。記憶部62は、通常運転制御マップ、第1運転制御マップ及び第2運転制御マップを内蔵している。通常運転制御手段64は、通常運転制御マップに基づいて通常運転制御モードを実行し、第1運転制御手段66は第1運転制御マップに基づいて第1運転制御モードを実行し、第2運転制御手段68は第2運転制御マップに基づいて第2運転制御モードを実行する。
【0031】
かかる構成において、ディーゼル機関10の運転制御を図2により説明する。図2において、ディーゼル機関10の運転を開始し(S10)、冷却水温tが閾値Tを超えていないとき(S12)、通常運転制御手段64によって、通常運転制御モードに移行する(S14)。図3は運転制御マップを示す。図3中の曲線Eは、排気中NO量と(軽油+尿素水)消費量との関係を示す線図である。走行コストは(軽油+尿素水)消費量と比例する。NO浄化量と該NO浄化量に対応する尿素水消費量とは、NOと尿素水とが化学反応するときの化学反応式で一義的に決まる。
【0032】
図3中の曲線Fは、排気中NO量とラジエータ40の放熱量との関係を示す。ラジエータ放熱量は、エンジンブロック12での冷却水の吸熱量及びEGRクーラ46での冷却水の吸熱量の和と同等の熱量に等しい。エンジン出口排気中NO量を低減するため、再循環排気量(EGRガス量)を増加させると、EGRクーラ46での冷却水の吸熱量が増加し、そのため、ラジエータ放熱量が増加する。
【0033】
排気管20から外部へ排出されるNO量を基準値以下とするために、EGRガス量の増減と尿素水添加量の増減という2つのパラメータを調整したときの(軽油+尿素水)合計コストは、曲線Eに示すように、あるエンジン出口NO量a0のときに最小となる。前述のように、尿素水消費量とは、NOと尿素水とが化学反応するときの化学反応式で一義的に決まり、それに加えて、エンジン出口NO量と燃費との関係から、エンジン出口NOX量は、(軽油+尿素水)合計コストによって決定される。通常運転時は、(軽油+尿素水)合計コストが最小となるように設定される。即ち、この時排気管20の排ガス浄化装置32に入る排ガス中NO量(エンジン出口NOx量)をa0とする。
【0034】
第1運転制御モードにおいては、EGRガス量を低減するため、エンジン出口NO量がa0からa1に増加する。一方、EGRクーラ46からの持ち去り熱量がRからRに減少する。これによって、ディーゼル機関10のオーバーヒートを回避する。この時、EGRガス量低減に伴い増加するエンジン出口NO量をSCR触媒36で浄化すべく尿素水添加量を増量する。そもそもエンジン出口NO量がa0のとき、(軽油+尿素水)合計コストが最小であったが、第1運転制御モードに移行し、EGRガス量を低減すれば、軽油消費量が減るが、尿素水消費量が増えるため、(軽油+尿素水)合計コストはb0からb1へと悪化する。
【0035】
図2において、冷却水温tが閾値Tを超えたとき(S12)、排気eがSCR触媒36の活性温度であるなら(S16)、第1運転制御手段66によって、第1運転制御モードに移行する(S18)。図中、TはSCR触媒36の活性温度の下限値であり、Tは、SCR触媒36の活性温度の上限値である。この第1運転制御モードを実行するための第1運転制御マップは、ディーゼル機関10のオーバーヒートを防ぐため、EGR量を低減し、かつ尿素水添加量を増加させるようにする。EGRガス量を低減させることで、冷却水の持ち去り熱量を低減し、これによって、ディーゼル機関10のオーバーヒートを防止する。EGRガス量の低減分を尿素水添加量を増加させることで補い、時排気管20の出口排気中NO量を基準値以下に保持した運転を行なうことができる。
【0036】
図2において、冷却水温tが閾値Tを超えたとき(S12)、排気eがSCR触媒36の活性温度でないなら(S16)、第2運転制御モードに移行する(S20)。この第2運転制御モードは、ディーゼル機関10の出力を低減させるようにしたものである。これによって、ディーゼル機関10の出力を低減し、ディーゼル機関10のオーバーヒートを防止した運転を行なうことができる。
【0037】
本実施形態によれば、冷却水温t及びSCR触媒36に進入する排気eの温度に応じて、通常運転制御モード、第1運転制御モード又は第2運転制御モードに移行し、EGR量、尿素水添加量又はエンジン出力を調整するようにしているので、ディーゼル機関10のオーバーヒートを防止し、かつ排気管20の出口NO量を基準値以下に保持した運転を行なうことができる。従って、ディーゼル機関10を装備したバス、トラック等の大型車両のエンジン出力を確保し、運行を支障なく継続できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、内燃機関のオーバーヒートを防止し、かつ排気中NO量を基準値以下に保持した運転を行なうことができる。そのため、いかなる環境であっても、内燃機関の出力を確保し、車両の運行を継続できる。
【符号の説明】
【0039】
10 ディーゼル機関
12 エンジンブロック
14 給気マニホールド
16 排気マニホールド
18 給気管
20 排気管
22 過給機
22a コンプレッサ
22b 排気タービン
24 インタークーラ
26 シリンダ
28 前段酸化触媒
30 DPFフィルタ
32 排ガス浄化装置
34 尿素水噴射ノズル
36 SCR触媒(脱硝触媒)
38 後段酸化触媒
40 ラジエータ
42a、42b 冷却水循環路
44 EGR路
46 EGRクーラ(冷却器)
48 分岐冷却水循環路
50,58 流量調整弁
52,54,56 温度センサ
60 ECU
62 記憶部
64 通常運転制御手段
66 第1運転制御手段
68 第2運転制御手段
活性温度下限値
活性温度上限値
a 給気
e 排気
n 尿素水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気に還元剤を添加し、該還元剤と脱硝触媒とで排気中NOを浄化するNO浄化工程と、排気の一部を給気路に還流させる排気再循環工程とを行なう内燃機関の運転制御方法において、
冷却水をラジエータとエンジンブロック及び排気再循環路に設けられた冷却器との間に循環させ、エンジンブロック及び再循環排気を冷却する冷却工程と、
エンジンブロックに流入する冷却水の温度を検出する検出工程と、
該冷却水の温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度であるとき、再循環排気量を内燃機関のオーバーヒート限界値以下に低減し、かつ還元剤添加量を増加する第1運転工程と、
該冷却水の温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度でないとき、内燃機関の出力を低減する第2運転工程と、からなることを特徴とする内燃機関の運転制御方法。
【請求項2】
内燃機関の排気路に脱硝触媒と該脱硝触媒の上流側排気路に還元剤を添加する還元剤添加装置とからなるNO浄化装置と、排気の一部を給気路に還流させる排気再循環路とを備えた内燃機関の運転制御装置において、
ラジエータとエンジンブロック及び排気再循環路に設けられた冷却器との間に冷却水を循環させる冷却水経路と、
エンジンブロックに流入する冷却水の温度を検出する温度センサと、
冷却水の温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度であるとき、再循環排気量を内燃機関のオーバーヒート限界値以下に低減し、かつ還元剤添加量を増加すると共に、冷却水の温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度でないとき、内燃機関の出力を低減するコントローラと、を備えていることを特徴とする内燃機関の運転制御装置。
【請求項3】
前記コントローラが、冷却水温が閾値以下であるとき、排気中NO量を基準値以下にしながら、燃料及び還元剤の消費量を最小限にする通常運転制御手段と、冷却水の温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度であるとき、再循環排気量を内燃機関のオーバーヒート限界値以下に低減し、かつ還元剤添加量を増加する第1運転制御手段と、冷却水の温度が閾値より高温であり、かつ排気温度が脱硝触媒の活性温度でないとき、内燃機関の出力を低減する第2運転制御手段と、を備えていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の運転制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−233414(P2012−233414A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100611(P2011−100611)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】