説明

内燃機関の過給補助システム、内燃機関、及び内燃機関の過給補助方法

【課題】過給補助終了の際に、ターボチャージャの状況に応じて、過給補助システムの流路切替装置の過給補助通路から空気吸入通路への切り替え動作の切替速度を最大切替速度よりも遅くして、過給補助終了の際に発生するエンジンのトルクの落ち込みを防止することができる内燃機関の過給補助システム、内燃機関、及び内燃機関の過給補助方法を提供する。
【解決手段】内燃機関の過渡運転時に、流路切替装置20により、空気吸入通路12aから過給補助通路19に切替えて、該過給補助通路19から予め圧縮された空気を吸気通路12に供給する過給補助を行う過給補助の終了時に前記流路切替装置20が前記空気吸入通路12a側に切替える際の第2切替速度を、最大切替速度よりも遅くすることができるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の過渡運転時に発生するターボラグによる空気量の不足を補うために予め畜圧した圧縮空気を吸気通路に導入する内燃機関の過給補助システム、内燃機関、及び内燃機関の過給補助方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される内燃機関(エンジン)には、図13に示すような過給システム10Xが用いられているが、この過給システム10Xは、エンジン本体11の吸気マニホールド11aに接続された吸気通路12と、排気マニホールド11bに接続された排気通路13を有して構成され。更に、エアクリーナー14の下流側でかつインタークーラー16の上流側の吸気通路12にターボチャージャ(ターボ式過給器)15のコンプレッサ15aが設けられ、排気通路13にターボチャージャ15のタービン15bが設けられている。
【0003】
このターボチャージャ15は筒内に導入される空気量を多くすることができる。従って、このターボチャージャ15を用いたエンジンでは、より多くの空気を筒内に導入できるため、トルクの向上、排気ガスの低減を図ることができる。
【0004】
しかしながら、このターボチャージャによる過給では、要求される空気量を筒内にターボチャージャが導入できるようになるまでの間に時間差が生じ、いわゆるターボラグが発生するという短所がある。このターボラグは、特に過渡運転時に起きる。
【0005】
過渡運転時では、図14に示すように、エンジン回転速度の増加にともない、必要となる空気量も増加するが、このターボラグが発生すると、必要となる空気量Aを確保できなくなる。このとき、推移するエンジン回転速度および負荷(アクセル開度)に応じて必要となる燃料量に対して必要な空気量Aが増加するが、この空気量Aに対して実際に供給される空気量Bが斜線部分だけ少なくなってしまう。その結果、空気量Bが少ないことにより燃焼可能な燃料量が減少して内燃機関の出力が低下し、また、EGRをかけられないことによりNOxが増加して排気性能が悪化する。
【0006】
このターボラグによる出力、排気性能の悪化に対する対策として、エンジン回転速度および負荷(アクセル開度)が急激に変化する時に、この変化と同時に、スーパーチャージャ又はコンプレッサ等を用いて、予め圧縮空気タンクに蓄圧した圧縮空気を吸気通路に導入して過渡運転時の空気量の不足を補う過給補助システムがある。
【0007】
この過給補助システムとしては、例えば、エンジンブレーキ使用時または制動ブレーキ使用時の少なくとも一方においては、クラッチ機構を接続にして車軸に設けたコンプレッサを稼働して補助空気タンクに空気を貯蔵し、車両の発進時においては、補助空気タンクから貯蔵された空気を吸入通路に導入して過給補助を行い、車両を制動する際の制動エネルギーを利用して加圧された空気を補助空気貯蔵タンクに貯蔵することができ、また、車両の発進時において、この貯蔵した高圧の空気を用いることで、ターボチャージャのような時間遅れが発生することなく、発進トルクを大きくできて、車両の発進を迅速に行うことができる内燃機関を搭載した車両及びその制御方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
この内燃機関の過給補助システムには、図1に示すようなシステムがあり、この内燃機関の過給補助システム10では、コンプレッサ17で圧縮された空気を圧縮空気タンク18で蓄圧し、この予め蓄圧した圧縮空気を過給補助通路19から流路切替装置20を経由して吸気通路12に導入して過渡運転時の空気量の不足を補う。この過給補助システム10では、過給補助通路19が、吸気通路12に流路切替装置(切替えバルブ)20を介して接続される。
【0009】
この流路切替装置20の動作に関しては、過給補助の開始時に、圧縮空気がエアクリーナー14側へ逆流しないこと、エンジンの気筒内への空気供給が途絶えない(エンジンが窒息しない)ことが求められる。そのため、過給補助の開始時における空気吸入通路12aと過給補助通路19との間の切替動作にかかる時間を著しく短くすることが要求される。
【0010】
図15にエンジン回転速度とそのときのエンジンが1回転する時間との関係を示す。4ストロークエンジンでは、吸気→圧縮→膨張→排気→吸気→・・・と4つの行程を2回転で行っている。つまり、各行程は半回転で行われる。そのため、4気筒のエンジンが1回転する際には、2気筒が吸気を行うことになる。
【0011】
従って、圧縮空気のエアクリーナー14側への逆流を防止するためには、流路切替装置20の内部で、圧縮空気タンク18と吸気マニホールド11aの間と、エアクリーナー14と吸気マニホールド11aの間との2つの通路を完全に遮断する必要がある。一方で、これらの通路を完全に遮断した場合は、内燃機関の吸気通路12の配管内と吸気マニホールド11a内とに残存する空気しか各気筒へ導入できないため、この遮断時間をできるだけ短くする必要がある。エンジンが1回転する時間は図15に示すように、1000rpm〜300rpmでは、60ms〜30msであるため、気筒数にかかわらず、mescオーダーでの流路を切り替えることが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−94589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このmsecオーダーでの流路の切替えのために、図2及び図3に示すようなシャッター方式の流路切替装置20を用いることを考えた。この図2及び図3の流路切替装置20は、空気吸入通路12aに接続される第1流路21と、過給補助通路19に接続される第2流路22と、エンジン本体11側の吸気通路12に接続される第3流路23を有するケース24と、このケース24内をX1−X2方向にスライドして、第1流路21と第3流路23との間と、第2流路22と第3流路23との間を遮断したり、連通したりするシャッター部材25を備えて構成する。
【0014】
このシャッター部材25には、連通用貫通穴25aを設け、空気シリンダ30のロッド31により、シャッター部材25をX1−X2方向に移動して、X1方向に移動した場合は、図2に示すように第1流路21と第3流路23の間を連通し、第2流路22と第3流路23の間を遮蔽する。一方、X2方向に移動した場合は、図3に示すように第1流路21と第3流路23の間を遮蔽し、第2流路22と第3流路23の間を連通する。
【0015】
そして、過給補助システム10の流路切替装置20のシャッター部材25を移動させる空気シリンダ30は、図16に示すように構成する。この空気シリンダ30では、第1空気室32aと第2空気室32bの間に、ロッド31に固定されている受圧部材33を配置する。また、第1空気室32aに連通する第1連通路34aと圧縮空気タンク40を連通する第1空気供給通路41aとの間に第1空気供給弁35aを配置し、第2空気室32bに連通する第2連通路34bと圧縮空気タンク40を連通する第2空気供給通路41bとの間に第2エア供給弁35bを配置する。更に、第1連通路34aを大気に開放する第1大気開放弁36aを配置し、第2連通路34bを大気に開放する第大気開放弁36bを配置する。
【0016】
この空気シリンダ30は、図17〜図20の操作により、流路切替装置20の流路を切り替える。図17は、第1流路21と第3流路23の連通時の待機状態を示す。この状態では、第1大気開放弁36aのみを開弁する。図18は、過給補助の開始に際して、第2流路22と第3流路23を連通させる途中の状態を示す。この状態では、第1空気供給弁35aと第1大気開放弁36aを開弁し、他を閉弁して、シャッター部材25を高速でX2方向に移動させる。
【0017】
図19は、流路切替装置20のシャッター部材25の高速動作完了の後の、即ち、第2流路22と第3流路23が連通した後の待機状態を示す。この状態では、次の開始前の状態に復帰できるように、第2大気開放弁36bのみを開弁して空気シリンダ30内の圧縮空気を大気に開放させる。図20は、第1流路21と第3流路23を連通させる途中の状態を示す。この状態では、過給補助の終了に際して、第1空気供給弁35aと第2大気開放弁36bを開弁し、他の弁を閉弁し、流路切替装置20のシャッター部材25を高速でX1方向に移動させる。
【0018】
そして、第1流路21と第3流路23を連通させた後では、図17の待機状態に戻る。この図17〜図20の一連の空気シリンダ30のバルブ操作により、迅速にシャッター部材25をX1方向またはX2方向に移動して、流路切替装置20の流路を切り替えることができる。
【0019】
この過給補助システムを適用した場合の結果を図21に示す。エンジンの運転条件(アクセル開度、エンジンの回転速度)は図22に示すように全て同一としている。過給補助により、図21のC(過給補助無し)、D(タイミング遅めの過給補助有り)、E(タイミング早めの過給補助有り)で示すように、過渡運転時のターボラグが改善でき、空気量が増加し、ターボチャージャの圧力比の増加割合が急峻になり、トルクが改善される。
【0020】
しかしながら、条件によっては、例えば、過給補助を行うタイミングが変わると、過給補助終了後のトルクの落ち込みが見られる。これは、過給補助終了後にコンプレッサ入口圧が急落することに起因すると考えられる。この入口圧の急落は、エンジンに導入された圧縮空気は、各気筒内に導入される空気とそこまでの配管通路内に残留する空気に分かれるが、この配管通路内に残留した空気が過給補助を終了した際の流路切替装置の切替時に大気に開放されることにより発生する。
【0021】
このことから、過給補助を終了させるときの流路切替装置20の切替速度は内燃機関の運転条件及び過給補助システム10の配管の形状・容積により異ならせる必要がある。従って、過給補助システム10を用いる場合には、運転条件に寄らず、過給補助終了後の流路切替装置20の流路切替速度を任意に調整できる機構が必要となる。
【0022】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、過給補助終了の際に、ターボチャージャの状況に応じて、過給補助システムの流路切替装置の過給補助通路から空気吸入通路への切り替え動作の切替速度を最大切替速度よりも遅くして、過給補助終了の際に発生するエンジンのトルクの落ち込みを防止することができる内燃機関の過給補助システム、内燃機関、及び内燃機関の過給補助方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記のような目的を達成するための本発明の内燃機関の過給補助システムは、内燃機関の過渡運転時に、流路切替装置により、空気吸入通路から過給補助通路に切替えて、該過給補助通路から予め圧縮された空気を吸気通路に供給する過給補助を行う内燃機関の過給補助システムにおいて、過給補助終了時に前記流路切替装置が前記過給補助通路から前記空気吸入通路に切替える際の第2切替速度を、最大切替速度よりも遅くすることができるように構成する。
【0024】
この構成によれば、過給補助終了の際に、過給補助システムの流路切替装置の動作の第2切替速度を最大速度よりも遅くして、過給補助終了の際の過給補助からターボチャージャによる過給へ切り替わるときに発生する空気量不足を防止してエンジンのトルクの落ち込みを防止することができる。
【0025】
上記の内燃機関の過給補助システムにおいて、前記第2切替速度を、前記流路切替装置より下流側に配置されたターボチャージャのコンプレッサの圧力比が予め設定した設定圧力比に達していないときは遅くし、前記圧力比が前記設定圧力比に達したときは最大切替速度にするように構成する。
【0026】
この構成によれば、過給補助終了時に、ターボチャージャのコンプレッサの圧力比(出口圧力/入口圧力)に応じて、過給補助システムの流路切替装置が通常状態への復帰する際の第2切替速度を変化させて、エンジンのトルクの落ち込みを防止しながら、空気吸入通路側に切り替えることができる。なお、ターボチャージャのコンプレッサの圧力比がさらに上昇し、ターボチャージャが完全に作動するようになれば、トルクの落ち込みなどは起こらなくなる。圧力比はターボチャージャの作動を表す指標として使用できることから、コンプレッサの入口圧力、出口圧力の比率や差圧を利用しターボチャージャの作動状況をとらえ、トルクの落ち込みを防止する。
【0027】
上記の内燃機関の過給補助システムにおいて、前記流路切替装置を、前記空気吸入通路に接続される第1流路と、前記過給補助通路に接続される第2流路と、エンジン本体側の前記吸気通路に接続される第3流路を有するケースと、該ケース内をスライドして、前記第1流路と前記第3流路との間と、前記第2流路と前記第3流路との間を遮断又は連通するシャッター部材を備えて構成すると共に、該シャッター部材を圧縮空気で駆動される空気シリンダによってスライドさせるように構成し、前記空気シリンダに圧縮空気を導入するための第1空気供給通路に流量調整弁を設けて、過給補助終了時に導入する圧縮空気量を前記流量調整弁により減少することにより、前記第2切替速度を前記最大切替速度よりも遅くするように構成すると、流路を著しく高速で切り替えることができると共に、第2切替速度を比較的容易に変更できる。
【0028】
上記の内燃機関の過給補助システムにおいて、前記流量調整弁の圧縮空気の流路面積を、前記コンプレッサの入口圧力で駆動する入口圧ピストンと前記コンプレッサの出口圧力で駆動する出口圧ピストンとにより変更可能に構成し、過給補助終了の際に、前記流路切替装置より下流側に配置されたターボチャージャのコンプレッサの圧力比が予め設定した設定圧力比に達していないときは前記流路面積を小さくして前記第2切替速度を遅くし、前記圧力比が前記設定圧力比に達したときは前記流路面積を最大にして前記第2切替速度を最大切替速度にするように構成すると、比較的簡単な構成で、コンプレッサの圧力比に応じて、第2切替速度を変更できる。
【0029】
そして、上記のような目的を達成するための内燃機関は、上記の内燃機関の過給補助システムを備えて構成される。この構成によれば、過給補助終了の際に、流路切替装置の動作を遅くして、過給補助終了の際に発生するエンジンのトルクの落ち込みを防止することができる。
【0030】
また、上記のような目的を達成するための内燃機関の過給方法は、内燃機関の過渡運転時に、流路切替装置により、空気吸入通路から過給補助通路に切替えて、該過給補助通路から予め圧縮された空気を吸気通路に供給する過給補助を行う内燃機関の過給補助方法において、過給補助終了時に前記流路切替装置が前記過給補助通路から前記空気吸入通路に切替える際の第2切替速度を、前記流路切替装置より下流側に配置されたターボチャージャのコンプレッサの圧力比が予め設定した設定圧力比に達していないときは、最大切替速度よりも遅くし、前記圧力比が前記設定圧力比に達したときは最大切替速度にすることを特徴とする方法である。
【0031】
この方法によれば、過給補助終了の際に、過給補助システムの流路切替装置の動作の第2切替速度を最大速度よりも遅くして、過給補助終了の際の過給補助からターボチャージャによる過給へ切り替わるときに発生する空気量不足を防止してエンジンのトルクの落ち込みを防止することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る内燃機関の過給補助システム、内燃機関、及び内燃機関の過給補助方法によれば、過給補助終了の際に、ターボチャージャの状況に応じて、過給補助システムの流路切替装置の過給補助通路から空気吸入通路への切り替え動作の切替速度を最大切替速度よりも遅くして、過給補助終了の際に発生するエンジンのトルクの落ち込みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態の内燃機関の過給補助システムの構成を示す図である。
【図2】流路切替装置の構成を示す図で、第1流路と第3流路が連通している状態を示す図である。
【図3】流路切替装置の構成を示す図で、第2流路と第3流路が連通している状態を示す図である。
【図4】流路切替装置の流路切替を行う空気シリンダの構成を示す図である。
【図5】流路切替装置で第1流路と第3流路が連通している待機状態における空気シリンダの各弁の開閉状態を示す図である。
【図6】流路切替装置で第1流路と第3流路を遮断し、第2流路と第3流路を連通させる途中における空気シリンダの各弁の開閉状態を示す図である。
【図7】流路切替装置で第2流路と第3流路が連通している待機状態における空気シリンダの各弁の開閉状態を示す図である。
【図8】流路切替装置で第2流路と第3流路を遮断し、第1流路と第3流路を連通させる途中における空気シリンダの各弁の開閉状態を示す図である。
【図9】空気シリンダの流量調整弁の構成を示す図で、閉弁した状態を示す図である。
【図10】空気シリンダの流量調整弁が半開した状態を示す図である。
【図11】空気シリンダの流量調整弁が全開した状態を示す図である。
【図12】空気シリンダの流量調整弁の各状態を重ねて示した図である。
【図13】従来技術の内燃機関の過給システムの構成を示す図である。
【図14】過渡運転時のエンジン回転速度と燃料噴射量と空気量の関係を示す図である。
【図15】エンジン回転速度と1回転に要する時間との関係を示す図である。
【図16】改良前技術の流路切替装置の流路切替を行う空気シリンダの構成を示す図である。
【図17】改良前技術の流路切替装置で第1流路と第3流路が連通している待機状態における空気シリンダの各弁の開閉状態を示す図である。
【図18】改良前技術の流路切替装置で第1流路と第3流路を遮断し、第2流路と第3流路を連通させる途中における空気シリンダの各弁の開閉状態を示す図である。
【図19】改良前技術の流路切替装置で第2流路と第3流路が連通している待機状態における空気シリンダの各弁の開閉状態を示す図である。
【図20】改良前技術の流路切替装置で第2流路と第3流路を遮断し、第1流路と第3流路を連通させる途中における空気シリンダの各弁の開閉状態を示す図である。
【図21】過給補助無しの場合と過給補助ありの場合の燃料噴射量、トルク、コンプレッサ入口圧、コンプレッサ出口圧、圧力比を示す図である。
【図22】図21のときのエンジン回転数とアクセル開度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る実施の形態の内燃機関の過給補助システム、内燃機関、及び内燃機関の過給補助方法について、図面を参照しながら説明する。
【0035】
図1に示すように、本発明の実施の形態の内燃機関の過給補助システム10を備えた内燃機関(エンジン)は、エンジン本体11の吸気マニホールド11aに接続された吸気通路12と、排気マニホールド11bに接続された排気通路13を有して構成され。更に、エアクリーナー14の下流側でかつインタークーラー16の上流側の吸気通路12にターボチャージャ(ターボ式過給器)15のコンプレッサ15aが設けられ、排気通路13にターボチャージャ15のタービン15bが設けられている。
【0036】
この内燃機関の過給補助システム10では、過渡運転時に、ターボラグによる空気量不足に対応して圧縮空気を吸気通路12に供給するために、圧縮空気を生成するコンプレッサ17とこの圧縮空気を蓄圧する圧縮空気タンク18を設けた過給補助通路19が、吸気通路12に流路切替装置(切替えバルブ)20を介して接続される。この流路切替装置20により、内燃機関の過渡運転時に、空気吸入通路12aから過給補助通路19に切替えて、この過給補助通路19から圧縮空気を吸気通路12に供給する過給補助を行う。
【0037】
この流路切替装置20としては、msecオーダーの極めて短時間で流路を切り替える必要があるために、図2及び図3に示すようなシャッター方式の切替バルブを用いる。この流路切替装置20は、空気吸入通路12aに接続される第1流路21と、過給補助通路19に接続される第2流路22と、エンジン本体11側の吸気通路12に接続される第3流路23を有するケース24と、このケース24内をX1−X2方向にスライドして、第1流路21と第3流路23との間と、第2流路22と第3流路23との間を遮断又は連通するシャッター部材25を備えて構成する。
【0038】
このシャッター部材25には、連通用貫通穴25aが設けられており、このシャッター部材25は空気シリンダ(エアシリンダ)30のロッド31の伸縮により、X1−X2方向に移動する。つまり、このシャッター部材25を圧縮空気で駆動される空気シリンダ30によってスライドさせるように構成する。図2に示すようにX1方向に移動した場合は、第1流路21と第3流路23の間が連通し、第2流路22と第3流路23の間が遮蔽される。一方、図3に示すようにX2方向に移動した場合は、第1流路21と第3流路23の間が遮蔽され、第2流路22と第3流路23の間が連通する。この構成の流路切替装置20を用いることにより、流路を著しく高速で切り替えることができる。
【0039】
そして、過給補助システム10の流路切替装置20のシャッター部材25を移動させる空気シリンダ30は、図4に示すように構成される。つまり、空気シリンダ30は、第1空気室32aと第2空気室32bの間に、ロッド31に固定されている受圧部材33が配置されている。また、第1空気室32aに連通する第1連通路34aと圧縮空気タンク40を連通する第1空気供給通路41aとの間に第1空気供給弁35aが配置され、第2空気室32bに連通する第2連通路34bと圧縮空気タンク40を連通する第2空気供給通路41bとの間に第2空気供給弁35bが配置されている。更に、第1連通路34aを大気に開放する第1大気開放弁36aが配置され、第2連通路34bを大気に開放する第2大気開放弁36bが配置されている。これらの第1空気供給弁35a、第2空気供給弁35b、第1大気開放弁36a、及び第2大気開放弁36bは、電磁弁で形成され、開閉制御される。
【0040】
更に、本発明においては、過給補助終了時に空気シリンダ30に圧縮空気を導入するための第1空気供給通路41aに流量調整弁42を設けて、この流量調整弁42により過給補助終了時に空気シリンダ30の第1空気供給通路41aに導入する圧縮空気量を減少できるように構成する。
【0041】
図9に示すように、この流量調整弁42は、入口側流路42aと出口側流路42bとの間に弁座42cと弁体42dを設け、この入口側流路42aと出口側流路42bとの間の流路面積を変更する弁体42dを、コンプレッサ15aの入口圧力Pinとコンプレッサ15aの出口圧力Poutで作動するように構成する。つまり、入口圧力Pinで作動する入口圧ピストン43のロッド43aと出口圧力Poutで作動する出口圧ピストン44のロッド44aを、弁体42dを回転させるロッド42eに接続して構成する。
【0042】
また、弁体42dの回転中心とロッド43aとの距離Laと弁体42dの回転中心とロッド44aとの距離Lbとを、コンプレッサ15aの圧力比(=出口圧力Pout/入口圧力Pin)が予め設定した設定圧力比に達すると弁体42dが全開になるように設定する。つまり、流量調整弁42の圧縮空気の流路面積を、コンプレッサ15aの入口圧力Pinで駆動する入口圧ピストン43とコンプレッサ15bの出口圧力Poutで駆動する出口圧ピストン44とにより変更可能に構成する。
【0043】
この流量調整弁42は、過給補助終了の際に、ターボチャージャ15が完全に動作するまでにならず、圧力比が設定圧力比に達していないときは、図10に示すように、弁体42dを少し開いて、図8に示すように、第1空気室32aに供給する圧縮空気タンク40からの圧縮空気量を減少して、シッター部材25の動きを遅くして、吸気通路12に圧縮空気タンク18からの圧縮空気を流し続けて過給補助を続ける。その後、ターボチャージャ15が完全に動作するようになって、圧力比が設定圧力比に達したときは、図11に示すように、弁体42dを完全に開いて、高速でシャッター部材25を移動させる。
【0044】
この弁体42dの各移動の状態を図12に示す。つまり、過給補助終了の際に、コンプレッサ15aの圧力比が設定圧力比に達していないときは、流量調整弁42の流路面積を小さくし、圧力比が設定圧力比に達したときは、流量調整弁42の流路面積を最大にする。この構成により、比較的簡単な構成で、コンプレッサ15aの圧力比に応じて、流量調整弁42の流路面積を変更できる。
【0045】
次に、この空気シリンダ30による、シャッター部材25の移動と第1流路21と第2流路22との切り替えに関して説明する。流路切替装置20の流路を切り替えは図5〜図8に示すような空気シリンダ30の弁操作により行われる。
【0046】
図5は、第1流路21と第3流路23の間が連通し、空気吸入通路12aからの空気を吸気通路12に供給しているときの待機状態である第1ステップ状態を示す。この待機状態では、第1空気供給弁35a、第2空気供給弁35b、第2大気開放弁36bを閉弁し、第1大気開放弁36aのみを開弁している。これにより、第1空気室32aの圧縮空気を大気に開放し、第1空気室32aの圧力を大気圧にして、切替時のロッド31の切り替得動作を円滑して、過給補助開始時に流路切替装置20が空気吸入通路12a側の第1流路21から過給補助通路19側の第2流路22に切り替える際の第1切替速度を高める。
【0047】
図6は、過給補助の開始に際して、第1流路21と第3流路23の間を遮断し、第2流路22と第3流路23との間を連通させるためのシャッター部材25の移動時の空気シリンダ30の第2ステップ状態を示す。この第2ステップ状態では、第2空気供給弁35b、第2大気開放弁36bを閉弁し、第1空気供給弁35a、第1大気開放弁36aを開弁して、圧縮空気タンク40の圧縮空気を第2空気室32bに供給して流路切替装置20のシャッター部材25を高速の第1切替速度でX2方向に移動させる。
【0048】
図7は、第1流路21と第3流路23の間を遮断し、第2流路22と第3流路23との間を連通させた後で、過給補助通路19から圧縮空気を吸気通路12に供給している状態における空気シリンダ30の第3ステップ状態を示す。この第3ステップ状態は、流路切替装置20のシャッター部材25の高速移動完了の後であるが、次の開始前の状態への切り替えに迅速に対応できるように、第1空気供給弁35a、第2空気供給弁35b、第1大気開放弁36aを閉弁し、第2大気開放弁36bを開弁して、空気シリンダ30内の第2空気室32bの圧縮空気を大気に開放し、第2空気室32bの圧力を大気圧にしている。
【0049】
図8は、過給補助の終了に際して、第2流路22と第3流路23の間を遮断し、第1流路21と第3流路23との間を連通させるためのシャッター部材25の移動時の空気シリンダ30の第4ステップ状態を示す。この第4ステップ状態では、第2空気供給弁35b、第1大気開放弁36aを閉弁し、第1空気供給弁35a、第2大気開放弁36bを開弁して、圧縮空気タンク40の圧縮空気を第1空気室32aに供給して流路切替装置20のシャッター部材25を高速の第2切替速度でX1方向に移動させる。
【0050】
本発明では、この第4ステップ状態において、流量調整弁42を、過給補助終了の際に、コンプレッサ15aの圧力比が設定圧力比に達していないときは、図10に示すように流路面積を小さくし、第1空気室32aに供給する圧縮空気の流量を小さくして、第2切替速度を遅くし、圧力比が設定圧力比に達したときは、図11に示すように流路面積を最大し、第1空気室32aに供給する圧縮空気の流量を最大にして、第2切替速度を最大にする。つまり、コンプレッサ15aの圧力比に応じて、第2切替速度を変更する。
【0051】
そして、図8の第4ステップ状態により、シャッター部材25がX1方向への移動を完了すると、図5の第1ステップ状態に戻り、第1流路21と第3流路23の間が連通し、空気吸入通路12aからの空気を吸気通路12に供給しているときの空気シリンダ30の待機状態となる。この図5〜図8の一連の空気シリンダ30のバルブ操作を繰り返すことで、過給補助を繰り返し行うことができる。
【0052】
この図5〜図8の一連の空気シリンダ30のバルブ操作により、迅速にシャッター部材25をX1−X2方向に移動して、流路切替装置20の流路を切り替えることができると共に、過給補助終了時に流路切替装置20が過給補助通路19から空気吸入通路12aに切替える際の第2切替速度を、最大切替速度よりも遅くすることができる。
【0053】
これにより、過給補助終了の際に、過給補助システム10の流路切替装置20の切替動作の第2切替速度を最大速度よりも遅くして、過給補助終了の際の過給補助からターボチャージャ15による過給へ切り替わるときに発生する空気量不足を防止してエンジンのトルクの落ち込みを防止することができる。
【0054】
また、第2切替速度を、流路切替装置20より下流側に配置されたターボチャージャ15のコンプレッサ15aの圧力比が予め設定した設定圧力比に達していないときは遅くし、圧力比が設定圧力比に達したときは最大切替速度にすることができるので、過給補助終了時に、ターボチャージャ15のコンプレッサ15aの圧力比(出口圧力/入口圧力)に応じて、過給補助システム10の流路切替装置20が通常状態への復帰する際の第2切替速度を変化させて、エンジンのトルクの落ち込みを防止しながら、空気吸入通路12a側に切り替えることができる。
【0055】
そして、本発明に係る実施の形態の内燃機関は、上記の内燃機関の過給補助システム10を備えて構成される。この構成によれば、過給補助終了の際に、流路切替装置20の動作を遅くして、過給補助終了の際に発生するエンジンのトルクの落ち込みを防止することができる。
【0056】
また、本発明に係る実施の形態の内燃機関の過給補助方法は、内燃機関の過渡運転時に、流路切替装置20により、空気吸入通路12aから過給補助通路19に切替えて、この過給補助通路19から予め圧縮された空気を吸気通路12に供給する過給補助を行う内燃機関の過給補助方法であり、過給補助終了時に流路切替装置20が過給補助通路19から空気吸入通路12aに切替える際の第2切替速度を、流路切替装置20より下流側に配置されたターボチャージャ15のコンプレッサ15aの圧力比が予め設定した設定圧力比に達していないときは、最大切替速度よりも遅くし、圧力比が設定圧力比に達したときは最大切替速度にすることを特徴とする方法である。この方法は、上記の構成の内燃機関の過給補助システム10、及び上記の構成の内燃機関で実施できる。
【0057】
この実施の形態の内燃機関の過給補助方法によれば、過給補助終了の際に、過給補助システム10の流路切替装置20の切替動作の第2切替速度を最大速度よりも遅くして、過給補助終了の際の過給補助からターボチャージャ15による過給へ切り替わるときに発生する空気量不足を防止してエンジンのトルクの落ち込みを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の内燃機関の過給補助システム、内燃機関、及び内燃機関の過給補助方法によれば、過給補助終了の際に、ターボチャージャの状況に応じて、過給補助システムの流路切替装置の過給補助通路から空気吸入通路への切り替え動作の切替速度を最大切替速度よりも遅くして、過給補助終了の際に発生するエンジンのトルクの落ち込みを防止することができるので、数多くの車両に搭載する内燃機関等に利用できる。
【符号の説明】
【0059】
10 内燃機関の過給補助システム
11 エンジン本体
12 吸気通路
15 ターボチャージャ(ターボ式過給器)
15a コンプレッサ
17 コンプレッサ(圧縮空気用)
18 圧縮空気タンク
19 過給補助通路
20 流路切替装置(切替えバルブ)
21 第1流路
22 第2流路
23 第3流路
24 ケース
25 シャッター部材
30 空気シリンダ(エアシリンダ)
35a 第1空気供給弁
35b 第2空気供給弁
36a 第1大気開放弁
36b 第2大気開放弁
40 圧縮空気タンク
41a 第1空気供給通路
41b 第2空気供給通路
42 流量調整弁
43 入口圧ピストン
44 出口圧ピストン
Pin コンプレッサの入口圧力
Pout コンプレッサの出口圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の過渡運転時に、流路切替装置により、空気吸入通路から過給補助通路に切替えて、該過給補助通路から予め圧縮された空気を吸気通路に供給する過給補助を行う内燃機関の過給補助システムにおいて、
過給補助終了時に前記流路切替装置が前記過給補助通路から前記空気吸入通路に切替える際の第2切替速度を、最大切替速度よりも遅くすることができるように構成したことを特徴とする内燃機関の過給補助システム。
【請求項2】
前記第2切替速度を、前記流路切替装置より下流側に配置されたターボチャージャのコンプレッサの圧力比が予め設定した設定圧力比に達していないときは遅くし、前記圧力比が前記設定圧力比に達したときは最大切替速度にすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の過給補助システム。
【請求項3】
前記流路切替装置を、前記空気吸入通路に接続される第1流路と、前記過給補助通路に接続される第2流路と、エンジン本体側の前記吸気通路に接続される第3流路を有するケースと、該ケース内をスライドして、前記第1流路と前記第3流路との間と、前記第2流路と前記第3流路との間を遮断又は連通するシャッター部材を備えて構成すると共に、該シャッター部材を圧縮空気で駆動される空気シリンダによってスライドさせるように構成し、
前記空気シリンダに圧縮空気を導入するための第1空気供給通路に流量調整弁を設けて、過給補助終了時に導入する圧縮空気量を前記流量調整弁により減少することにより、前記第2切替速度を前記最大切替速度よりも遅くすることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の過給補助システム。
【請求項4】
前記流量調整弁の圧縮空気の流路面積を、前記コンプレッサの入口圧力で駆動する入口圧ピストンと前記コンプレッサの出口圧力で駆動する出口圧ピストンとにより変更可能に構成し、過給補助終了の際に、前記流路切替装置より下流側に配置されたターボチャージャのコンプレッサの圧力比が予め設定した設定圧力比に達していないときは前記流路面積を小さくして前記第2切替速度を遅くし、前記圧力比が前記設定圧力比に達したときは前記流路面積を最大にして前記第2切替速度を最大切替速度にすることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の過給補助システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の過給補助システムを備えたことを特徴とする内燃機関。
【請求項6】
内燃機関の過渡運転時に、流路切替装置により、空気吸入通路から過給補助通路に切替えて、該過給補助通路から予め圧縮された空気を吸気通路に供給する過給補助を行う内燃機関の過給補助方法において、
過給補助終了時に前記流路切替装置が前記過給補助通路から前記空気吸入通路に切替える際の第2切替速度を、前記流路切替装置より下流側に配置されたターボチャージャのコンプレッサの圧力比が予め設定した設定圧力比に達していないときは、最大切替速度よりも遅くし、前記圧力比が前記設定圧力比に達したときは最大切替速度にすることを特徴とする内燃機関の過給補助方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−68090(P2013−68090A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205177(P2011−205177)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】