説明

内燃機関冷却制御装置

【課題】休止した気筒を再作動させたときに休止可能気筒と連続作動気筒の両方の壁体温度を短時間で燃焼効率がよく燃費が良好な温度に到達させ、内燃機関全体の燃焼効率の低下と燃費の悪化を防ぐ内燃機関冷却制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関冷却制御装置1は、複数の気筒20を有しており且つその全部又は一部の気筒20が直列に配置されている内燃機関と、直列に配置されている気筒20の一部であって、内燃機関の作動中に燃焼を休止することができる休止可能気筒20bと、内燃機関に冷却水を循環させるポンプ12と、休止可能気筒20bに冷却水を流通させる複数の流路11と冷却水の流通を調節するよう複数の流路11のそれぞれに対応している複数の調節部16と、複数の調節部16における冷却水の流通の調整を夫々独立して制御する調節制御部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の気筒を有し且つその一部の気筒が作動休止可能に構成されている内燃機関への冷却水の流通及び遮断を制御する内燃機関冷却制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガソリンや軽油等を燃料とする内燃機関では、運転温度を所定範囲内に維持するために各気筒に冷却水を流通させて気筒を冷却するように構成されている。近年、燃費を向上させるために、車両走行中に一部の気筒の作動を休止させることが行われている。気筒の作動が休止しているときは、吸気弁及び排気弁を閉じ状態に保ち、気筒内で燃焼が起こらないようにしている。
【0003】
特許文献1には、気筒休止機能付きの6気筒V型内燃機関が開示されている。通常は6気筒すべてが作動しているが、燃費を重視する低負荷運転時等には一部の気筒の作動を休止させる。作動を休止できる気筒(以下、休止可能気筒とも言う)は休止している間は気筒内で熱を発しないので気筒の壁体温度が低下する。一方、休止せずに連続して作動している気筒(以下、連続作動気筒とも言う)の壁体温度は高いままである。
【0004】
特許文献1に開示されているV型内燃機関では、後側バンクの3気筒全体が休止可能気筒になっており、後側バンクの3筒全体を一斉に作動及び休止させる。後側バンクの3気筒全体が休止しているときは、後側バンク内を流通する冷却水も遮断される。後側バンク内を流通する冷却水の流路は1つしかないので、冷却水は、後側バンクの3気筒全体に一斉に流通し、また一斉に遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−8036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
休止可能気筒を休止させた後に再作動させたときは、休止可能気筒の壁体温度を連続作動気筒の壁体温度と同等まで短時間に上昇させる必要がある。連続作動気筒の壁体温度は燃焼効率がよく燃費が良好な温度に制御されているからである。しかし、後側バンク全体が休止可能気筒なので、再作動後の休止可能気筒の壁体温度を早期に上昇させるためには、連続作動気筒で発生する熱を何らかの方法で休止可能気筒に伝達する必要がある。
【0007】
そこで、休止可能気筒を再作動させる前に連続作動気筒を流通している高温の冷却水を休止可能気筒に流通させて休止可能気筒を暖めることが特許文献1に開示されている。しかし冷却水は休止可能気筒全体を流通するので、休止可能気筒を流通することにより高温の冷却水の温度が低下する。それが連続作動気筒にも流通して、連続作動気筒の壁体温度を低下させてしまう。その結果、休止可能気筒と連続作動気筒の両方の壁体温度を燃焼効率がよく燃費が良好な温度に到達させるまでには長時間を要し、内燃機関全体の燃焼効率が低下し燃費が悪化するという問題があった。
【0008】
上記問題に鑑み、本発明は、直列に配置された休止可能気筒を休止後に再作動させる際に、休止可能気筒と連続作動気筒の両方の壁体温度を短時間で燃焼効率がよく燃費が良好な温度に到達させ、内燃機関全体の燃焼効率の低下と燃費の悪化を防ぐ内燃機関冷却制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係る内燃機関冷却制御装置の特徴構成は、複数の気筒を有しており且つその全部又は一部の気筒が直列に配置されている内燃機関と、前記直列に配置されている気筒の一部であって、前記内燃機関の作動中に燃焼を休止することができる休止可能気筒と、前記内燃機関に冷却水を循環させるポンプと、前記休止可能気筒に前記冷却水を流通させる複数の流路と前記冷却水の流通を調節するよう前記複数の流路のそれぞれに対応している複数の調節部と、前記複数の調節部における前記冷却水の流通の調整を夫々独立して制御する調節制御部と、を備えている点にある。
【0010】
このような特徴構成とすれば、直列に配置されている気筒のうち、一部の気筒だけが休止可能気筒なので、休止可能気筒が休止中であっても、連続作動気筒から生じる熱が休止可能気筒へ伝播し休止可能気筒の壁体温度の低下が抑制される。また休止可能気筒が休止後に再作動しても、連続作動気筒から生じる熱が休止可能気筒に伝播し休止可能気筒の壁体温度を短時間で上昇させる。さらには、調節制御部よって、複数の調節部における冷却水の流通の調整を独立して制御できるので、休止可能気筒を流通する冷却水の温度を低下させすぎず、連続作動気筒の壁体温度低下も抑制できる。その結果、休止可能気筒と連続作動気筒の両方の壁体温度を短時間で燃焼効率がよく燃費が良好な温度に到達させることができ、内燃機関全体の燃焼効率の低下と燃費の悪化を防ぐことができる。
【0011】
また、本発明に係る内燃機関冷却制御装置においては、前記複数の流路は前記休止可能気筒のそれぞれの気筒に対応して設けられていると好適である。このような構成にすれば、より精緻に冷却水の流通の調整を制御できるので、休止可能気筒と連続作動気筒の両方の壁体温度を短時間で燃焼効率がよく燃費が良好な温度に到達させることができ、内燃機関全体の燃焼効率の低下と燃費の悪化を防ぐことができる。
【0012】
また、本発明に係る内燃機関冷却制御装置においては、前記直列に配置されている気筒の両端に配置された気筒以外の気筒であると好適である。このような構成にすれば、休止可能気筒が内燃機関周囲の空気と接する面積が減少するので、休止可能気筒が休止しているときの壁体温度の低下を防止できる。
【0013】
また、本発明に係る内燃機関冷却制御装置においては、前記調節制御部は、前記休止可能気筒が休止する前の内燃機関の作動状態に基づいて前記調節部に前記冷却水の流通を遮断させる制御を行うと好適である。例えば、内燃機関が高出力を連続して発生した直後に休止可能気筒の休止と冷却水の遮断を同時に行うと、休止可能気筒が高温のままなので、冷却水の局所沸騰を招くおそれがある。このような構成にすれば、高温の状態のまま休止可能気筒を休止させても冷却水を引き続き流通させることができるので、冷却水の局所沸騰を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態である内燃機関冷却制御装置を適用した内燃機関の1つの気筒の模式図
【図2】本実施形態の内燃機関冷却制御装置の構成を表す模式図
【図3】本実施形態の内燃機関冷却制御装置の制御系を示す機能ブロック図
【図4】休止可能気筒が休止したときに冷却水の流通を停止させるまでの流れを示すフローチャート
【図5】休止可能気筒が再作動したときに冷却水の流通を再開させるまでの流れを示すフローチャート
【図6】他の実施形態の内燃機関冷却制御装置の構成を表す模式図
【図7】他の実施形態の内燃機関冷却制御装置の構成を表す模式図
【図8】他の実施形態の内燃機関冷却制御装置の構成を表す模式図
【図9】他の実施形態の内燃機関冷却制御装置の構成を表す模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、多気筒内燃機関を構成する1つの休止可能気筒20bを示す模式図である。この休止可能気筒20bには、本発明による内燃機関冷却制御装置1が適用されている。以下連続作動気筒20aと休止可能気筒20bを区別しないときは気筒20と称する。
【0016】
車両に搭載された多気筒内燃機関は、シリンダブロック31及びシリンダヘッド32等からなる内燃機関ハウジングを備えている。休止可能気筒20bにはピストン29が設けられ、各ピストン29はクランクシャフト30に連動している。シリンダブロック31及びシリンダヘッド32の壁体内部には、各燃焼室に吸気弁23を介して空気を取り込むために吸気通路21と各燃焼室から排気弁24を介して排気ガスを排出するために排気通路22が形成されている。
【0017】
吸気通路21には、所定量の燃料を吸気通路21に噴射する燃料噴射弁27が配置されている。さらに、吸気通路21には、燃焼室に取り込まれる空気を清浄化するエアクリーナ25及び吸気通路21を流れる空気量を調節するためのスロットルバルブ26が設けられている。エアクリーナ25の領域には、吸気温(すなわち外気温)を検出する吸気温センサ42が設けられている。またエアクリーナ25とスロットルバルブ26との間には燃焼室に取り込まれる空気の量を計測するエアフローセンサ41が設けられている。
【0018】
各燃焼室では、点火プラグ28が作動することにより、燃料と空気との可燃混合気が燃焼する。この燃焼で発生する圧力によりピストン29が上下動してクランクシャフト30が回転する。このクランクシャフト30の回転トルクによって車両駆動系と補機類(エアコンのコンプレッサ、オルタネータ、トルクコンバータ、パワーステアリングの油圧ポンプ等)が作動する。クランクシャフト30の近傍には、クランクシャフト30の回転角を検出するためのクランク角センサ43が取り付けられている。
【0019】
各燃焼室で生じた燃焼後の排気ガスは、排気通路22を通じて外部へ排出される。燃焼室で発生した燃焼エネルギの一部は熱として壁体に残留する。壁体に残留する残留熱による壁体高熱化を防止するために、本実施形態に係る内燃機関冷却制御装置1では、冷却水循環用流路(以下単に流路とも称する)11が設けられており、その内部には冷却水が流通されている。流路11の一部は壁体にも形成されている。なお、壁体に形成されている流路11をウォータジャケットとも称する。
【0020】
図2は本実施形態の直列6気筒の内燃機関を含む内燃機関冷却制御装置1の構成を表す模式図である。本発明に係るポンプの一例である電動ポンプ12は、流路11上の流量制御弁14と気筒20との間に配置されている。この電動ポンプ12は不図示の電気モータを駆動源しており、クランクシャフト30の回転とは無関係に駆動可能である。電動ポンプ12は、ラジエータ13に接続されている流路11を流れる冷却水を吸引してウォータジャケットの流入口に供給する。冷却水は、ウォータジャケット内部を流通する際に壁体から熱を吸収してその水温を上昇させることにより、壁体温度を低下させる。水温が上昇した冷却水はラジエータ13を流通する際に熱を放出してその水温を下げる。
【0021】
流路11には、ラジエータ13を経由せずにウォータジャケットの流出口と電動ポンプ12の吸引側とを直接接続するバイパス流路が設けられている。このバイパス流路途中にヒータコア15が設けられている。ラジエータ13からの流路11とバイパス流路とが交わる箇所には、流量制御弁14が設けられている。この流量制御弁14により、壁体を冷却するための冷却水温度を制御することができる。この流量制御弁14により、ラジエータ13からの冷却水の流量とバイパス流路からの冷却水の流量を制御することができる。
【0022】
流路11には、ウォータジャケットの流出口を通過した後の冷却水の温度を検出する第1冷却水温度センサ44と、ラジエータ13を通過した後の冷却水の温度を検出するための第2冷却水温度センサ45が設けられている。流量制御弁14と第2冷却水温度センサ45を一体化してサーモスタットとして構成してもよい。
【0023】
流路11は、気筒20のウォータジャケットの流入口の上流側で分岐して分岐流路11a、11bを形成している。分岐流路11aを流通する冷却水は連続作動気筒20aのそれぞれのウォータジャケット内部を流通する。分岐流路11bを流通する冷却水は休止可能気筒20bのそれぞれのウォータジャケット内部を流通する。分岐流路11aと11bは、ウォータジャケットの下流側で再び合流して流路11を形成する。
【0024】
休止可能気筒20bのウォータジャケットの上流側にある分岐流路11bには、冷却水のウォータジャケットへの流通及び遮断が電気的に又は機械的に切換可能な冷却水開閉弁16が設けられている。冷却水開閉弁16は、本発明に係る調節部の一例である。休止可能気筒20bが作動を休止しているときには、冷却水開閉弁16を閉じ、休止可能気筒20bに冷却水が流通するのを遮断することができる。
【0025】
本実施形態では、冷却水開閉弁16は休止可能気筒20bのウォータジャケットの上流側に設けたが、これはウォータジャケットに流入する前の低温の冷却水を開閉する方が、冷却水開閉弁16の耐熱性の観点でより好ましいからである。ただし、休止可能気筒20bのウォータジャケットの下流側に冷却水開閉弁16を設けてもよい。
【0026】
図3は、この内燃機関冷却制御装置1で採用されている制御系の中核要素としての制御ユニット2の機能ブロック図である。この制御ユニット2はECUと称されるもので、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROMに記憶されたプログラムを実行することで、内燃機関制御に関する種々の機能を作り出す。上述したエアフローセンサ41、吸気温センサ42、クランク角センサ43、第1冷却水温度センサ44、第2冷却水温度センサ45、その他スロットルバルブ26の開度を検出するスロットル開度センサ46、車両の走行速度を検出する車速センサ47などの各種センサの検出信号が制御ユニット2に入力される。また制御ユニット2は制御信号を出力し、電動ポンプ12、流量制御弁14、冷却水開閉弁16、連続作動気筒20a、休止可能気筒20b、燃料噴射弁27、点火プラグ28などの動作を制御する。
【0027】
この制御ユニット2において作り出される機能のうち特に本発明に関係するものとして、気筒作動制御部51、壁体温度推定部52、冷却水開閉弁制御部53が挙げられる。気筒作動制御部51は、内燃機関が作動しているときに、クランク角センサ43、スロットル開度センサ46、車速センサ47等の検出信号に基づいて、休止可能気筒20bを休止させたり再作動させたりするよう制御する。例えば、渋滞中に低速度で発進、停止を繰り返しているときのように内燃機関に対する負荷トルクが小さいときや、一定速度での走行を一定時間以上継続しているときのように負荷トルクの変動が小さいときには、休止可能気筒20bを休止させるように制御する。なお、4つの休止可能気筒20bは、それぞれ独立して休止及び再作動させることができる。
【0028】
壁体温度推定部52は、休止可能気筒20bが休止しているときに、エアフローセンサ41、吸気温センサ42、クランク角センサ43、スロットル開度センサ46、車速センサ47等の検出信号に基づいて壁体温度を推定する。全ての気筒が作動しているときは、第1冷却水温度センサ44、第2冷却水温度センサ45からの検出信号に基づいて壁体温度を推定する。しかし、休止可能気筒20bが休止して冷却水が休止可能気筒20bのウォータジャケット内部を流通していないときには、第1冷却水温度センサ44、第2冷却水温度センサ45からの検出信号では休止可能気筒20bの壁体温度が推定できない。そこで、上述したセンサからの検出信号に基づいて壁体温度推定部52で壁体温度を推定する。
【0029】
本発明に係る調節制御部の一例である冷却水開閉弁制御部53は、気筒作動制御部51から出力された休止可能気筒20bの作動に関する情報、壁体温度推定部52から出力された推定壁体温度に関する情報、その他内燃機関の出力についての情報等に基づいて冷却水開閉弁16の開閉を制御する。内燃機関の出力は、エアフローセンサ41、吸気温センサ42、クランク角センサ43、スロットル開度センサ46、車速センサ47等の検出信号に基づいて算出される。冷却水開閉弁制御部53は、4つの冷却水開閉弁16をそれぞれ独立して開閉制御できる。冷却水開閉弁制御部53は、気筒作動制御部51による休止可能気筒20bの制御と独立している。
【0030】
内燃機関の全ての気筒が作動して高出力を連続して発生するときには冷却水の温度が高くなる。このような状態で休止可能気筒20bが作動を休止したときに、作動休止と同時に冷却水開閉弁制御部53が冷却水開閉弁16の閉じ制御をしてしまうと、冷却水が休止可能気筒20bを流通しなくなるので、冷却水が局所沸騰してしまうおそれがある。そこで、休止可能気筒20bが作動を休止したときには、冷却水開閉弁制御部53は、冷却水が局所沸騰するおそれがなくなるまで冷却水開閉弁16に対して開き制御をして休止可能気筒20bに冷却水を流通させるように制御する。図4に、休止可能気筒20bが作動を休止してから冷却水開閉弁16が閉じ制御により冷却水の流通を停止させるまでのフローを示す。
【0031】
休止可能気筒20bが作動を休止する(S11)。次に、第1冷却水温度センサ44の検出温度thwが予め定められた冷却水の水温T1より高いか否かを判断する(S12)。第1冷却水温度センサ44の検出温度thwが予め定められた冷却水の水温T1より高ければ(Yes)、冷却水停止遅延時間t1の間冷却水を流通させ(S14)、その後冷却水開閉弁制御部53は冷却水開閉弁16の閉じ制御を行い冷却水の流通を停止させる(S15)。
【0032】
S12において、第1冷却水温度センサ44の検出温度thwが予め定められた冷却水の水温T1以下(No)であれば、次のステップとして、過去の所定時間範囲内での内燃機関の平均出力Pe_aveが内燃機関の予め定められた出力Pe1より高いか否かを判断する(S13)。過去の所定時間範囲内での内燃機関の平均出力Pe_aveが内燃機関の予め定められた出力Pe1より高ければ(Yes)、冷却水停止遅延時間t1の間冷却水を流通させ(S14)、その後冷却水開閉弁制御部53は冷却水開閉弁16の閉じ制御を行い冷却水の流通を停止させる(S15)。過去の所定時間範囲内での内燃機関の平均出力Pe_aveが内燃機関の予め定められた出力Pe1以下(No)であれば、冷却水開閉弁制御部53は直ちに冷却水開閉弁16の閉じ制御を行い冷却水の流通を停止させる(S15)。
【0033】
このように、休止可能気筒20bが作動を休止したときに、所定の条件を充足するまで冷却水開閉弁制御部53は冷却水開閉弁16の開き制御を行って休止可能気筒20bに冷却水を流通させることにより、冷却水が局所沸騰するおそれがなくなる。図4においては冷却水の水温と内燃機関の出力の両方の条件を判断して冷却水開閉弁16の閉じ制御を行ったが、いずれか一方の条件だけを判断して冷却水開閉弁16の閉じ制御を行ってもよい。
【0034】
次に休止可能気筒20bが休止から再作動を開始したときの冷却水開閉弁16の制御について述べる。休止可能気筒20bが休止しているときは燃焼が起こらないので、休止可能気筒20bの壁体温度は連続作動気筒20aの壁体温度と比べて低い。また、休止可能気筒20bのウォータジャケットにはラジエータ13やヒータコア15を経由した後の温度の低い冷却水が流通する。そのため、休止可能気筒20bの再作動と冷却水開閉弁制御部53による冷却水開閉弁16の開き制御を同時に行うと、休止可能気筒20bで燃焼が起こっても壁体温度の上昇は緩やかになる。その結果、休止可能気筒20bと連続作動気筒20aの両方の壁体温度を燃料効率がよく燃費が良好な温度に到達させるまでには長時間を要し、内燃機関全体の燃焼効率が低下し燃費が悪化する。
【0035】
そこで、冷却水開閉弁制御部53は休止可能気筒20bが再作動を開始してすぐには冷却水開閉弁16の開き制御を行わずに、所定の条件を充足したときに初めて開き制御を行って冷却水を流通させるようにする。図5(a)、(b)のそれぞれに、休止可能気筒20bが再作動を開始してから冷却水開閉弁16が開き制御により冷却水の流通を再開させるまでのフローを示す。
【0036】
図5(a)において、休止可能気筒20bが再度作動を開始する(S21)。次に、冷却水流通遅延時間t2が経過したかどうかを判断する(S22)。冷却水流通遅延時間t2が経過した後に、冷却水開閉弁制御部53は冷却水開閉弁16の開き制御を行い冷却水の流通を再開させる(S23)。
【0037】
図5(b)において、休止可能気筒20bが再度作動を開始する(S31)。次に、壁体温度推定部52で推定された休止可能気筒20bの推定壁体温度tcbが予め定められた壁体温度Te1より高いかどうかを判断する(S32)。推定壁体温度tcbが予め定められた壁体温度Te1より高くなったら、冷却水開閉弁制御部53は冷却水開閉弁16の開き制御を行い冷却水の流通を再開させる(S33)。
【0038】
このように、休止可能気筒20bが再作動を開始した当初は、冷却水開閉弁制御部53は冷却水開閉弁16の閉じ制御を行って休止可能気筒20bへの冷却水の流通を停止させ続け、所定の条件を充足して初めて冷却水開閉弁16の開き制御を行って冷却水の流通を再開させることにより、休止可能気筒20bの壁体温度の上昇が早くなり、休止可能気筒と連続作動気筒の両方の壁体温度を短時間で燃焼効率がよく燃費が良好な温度に到達させることができる。
【0039】
複数の休止可能気筒20bを再作動させるときは、その再作動は同時である必要はなく、それぞれ独立して再作動させることができる。また、冷却水開閉弁16の開き制御について上述した要件も、休止可能気筒20bそれぞれに対して独立して設定することができる。
【0040】
[他の実施形態]
第1実施形態では気筒ごとに分岐流路11bを形成したが、分岐流路11bが複数であれば複数の休止可能気筒20bを1つの分岐流路11bで接続してもよい。図6に、2つの休止可能気筒20bを直列に接続した分岐流路11bを2つ設けた内燃機関冷却制御装置1の模式図を示す。
【0041】
第1実施形態においては、直列に配置された気筒20のうち両端を連続作動気筒20aとし、それ以外を休止可能気筒20bとしたが、連続作動気筒20aと休止可能気筒20bの配置はこれに限られず、任意の配置を採用することができる。図7に、連続作動気筒20aと休止可能気筒20bを交互に配置した内燃機関冷却制御装置1の模式図を示す。
【0042】
第1実施形態において、冷却水開閉弁16は、休止可能気筒20bのウォータジャケットへ冷却水を流通させ及び遮断する開閉弁であったが、流路を切り換える切換弁を用いる構成にしてもよい。図8に、冷却水切換弁17を用いた内燃機関冷却制御装置1の模式図を示す。冷却水切換弁17は、本発明に係る調節部の一例である。この場合、ウォータジャケットの上流側で分岐流路11bからさらに分岐する新たな分岐流路11cを形成し、分岐流路11bと分岐流路11cとの分岐点に冷却水切換弁17を設ける。分岐流路11cはウォータジャケットの内部を流通せずにウォータジャケットの下流側で流路11と合流するように形成されている。休止可能気筒20bが作動しているときは、冷却水切換弁17は分岐流路11bに冷却水を流通させるように設定されている。休止可能気筒20bが休止し休止可能気筒20bへの冷却水の流通を遮断するときには、冷却水切換弁17の流路を切り換え、冷却水が分岐流路11cを流通するようにする。
【0043】
第1実施形態では直列6気筒の内燃機関の一部の気筒を休止可能気筒20bにしたが、内燃機関の形式はこれに限られるものではない。例えば、6気筒以外の直列多気筒内燃機関やV型多気筒内燃機関の一部の気筒、さらにはV型多気筒内燃機関の片バンク全体の気筒を休止可能気筒20bにしてもよい。図9に、V型8気筒内燃機関に内燃機関冷却制御装置1を適用した模式図を示す。
【0044】
上述した各実施形態は可能な限り組み合わせて実施してもよい。
【0045】
本発明は、複数の気筒を有し且つその一部の気筒が作動休止可能に構成されている内燃機関への冷却水の流通及び遮断を制御する内燃機関冷却制御装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1:内燃機関冷却制御装置
11:流路
11a、11b、11c:分岐流路
12:電動ポンプ
16:冷却水開閉弁
17:冷却水切換弁
20:気筒
20a:連続作動気筒
20b:休止可能気筒
44:第1冷却水温度センサ
45:第2冷却水温度センサ
51:気筒作動制御部
52:壁体温度推定部
53:冷却水開閉弁制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を有しており且つその全部又は一部の気筒が直列に配置されている内燃機関と、
前記直列に配置されている気筒の一部であって、前記内燃機関の作動中に燃焼を休止することができる休止可能気筒と、
前記内燃機関に冷却水を循環させるポンプと、
前記休止可能気筒に前記冷却水を流通させる複数の流路と
前記冷却水の流通を調節するよう前記複数の流路のそれぞれに対応している複数の調節部と、
前記複数の調節部における前記冷却水の流通の調整を夫々独立して制御する調節制御部と、
を備えた内燃機関冷却制御装置。
【請求項2】
前記複数の流路は前記休止可能気筒のそれぞれの気筒に対応して設けられている請求項1に記載の内燃機関冷却制御装置。
【請求項3】
前記休止可能気筒は、前記直列に配置されている気筒の両端に配置された気筒以外の気筒である請求項1に記載の内燃機関冷却制御装置。
【請求項4】
前記調節制御部は、前記休止可能気筒が休止する前の内燃機関の作動状態に基づいて前記調節部に前記冷却水の流通を遮断させる制御を行う請求項1に記載の内燃機関冷却制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−87759(P2013−87759A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232062(P2011−232062)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】