説明

内燃機関及び燃料電池用水素供給装置

【課題】石油に代わる燃料としての水素を自動車の燃料とする開発がされているが、燃料タンクに多量の水素を積載するには万一の事故の際の危険性が非常に高い。この為、水を電気分解して発生させた水素を燃料とする考案もされているが、電力を使い電極に電位をかけて行う電気分解は、使用した電力に比べ発生させた水素を燃料として得られるエネルギーの効率が低かった。このような事情を踏まえ、従来の電気分解よりも効率よく水から水素を発生させることができ、且つ太陽光があれば電力を必要とせずに水素を発生させることが可能で、自動車などの乗り物にも装備することが出来る水素供給装置を提供する。
【解決手段】水中の光触媒に光りを当てることにより、水を水素と酸素に分解する光触媒作用を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒作用を利用して、内燃機関及び燃料電池に水素を供給する水素供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
将来のクリーンエネルギーである水素を燃料とする水素エンジン自動車、燃料電池自動車等が開発されているが、燃料の水素を貯蔵する水素タンクを搭載するにあたって、高圧で多量の水素貯蔵にたいしての危険性、及び水素補給施設の設置の金額的な問題もあり、現状では普及するに至っていいない。
【0003】
そこで、自動車に水素発生装置を搭載して、水などから水素を生産してエンジンの燃料とする考案がされている。例えば文献1では、水を電気分解してできた水素、酸素をエンジンに送る。文献2では、電気分解して生じた水素ガスを従来の燃料と共に使い従来の燃料の燃費を改善する考案がされている。
【特許文献1】特開H10−1684号公報
【特許文献2】特開2009−511747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記の水分解方法は、電極に電位をかけて行う従来からの電気分解と同じで両極の金属を変えても水素製造方法としては従来の電気分解と変わりはなく、電気分解に使った電力よりも水素を燃料として得られるエネルギーや電力の効率が低いという問題は解決されていない。
【0005】
本発明は、内燃機関及び燃料電池に水素を製造して供給する水素供給装置において、電極に電位を与えて水を電気分解する従来の方法ではない方法で水素を供給する装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明では光触媒を用いて光により水を水素と酸素に分解する現象を利用する。つまり、水中の光触媒に光を当てることによって水を瞬時に酸素と水素に分解する強い酸化力を利用する。尚、光触媒の反応を高める助触媒も使用する。また、太陽光を利用することで電力を使わずに水素を発生させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明による水素供給装置は、電気分解に比べ水素発生効率を高めることができる。また、太陽光があれば内燃機関を稼働せずに水素を供給できる。また、大型の水素タンクを搭載することなく水素を供給できる為、安全性が向上する乗り物を提供できる。さらに、水素スタンドなどの水素補給施設も従来の石油系燃料も代替燃料も不要になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
光触媒の特徴として大きく分けて二つの触媒の構成方法がある。第1は電極とする方法で、例えば内燃機関、又は内燃機関を搭載した乗り物などに装備されている水タンクなどの水貯蔵容器内の水中に光触媒である酸化チタンの電極と助触媒の白金を施した電極を浸す方法。第2は水タンク内に光触媒、又は光触媒と助触媒を敷設、配置又は塗装することも出来る。
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものとする。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の水素供給装置の第1実施例を示す断面模式図である。水タンク1内に酸化チタン電極2と白金電極3を配置し両電極を抵抗8でつないだ閉回路とする。両電極は仕切り板6によって2室に分けてある。これにより水素と酸素を別にして取り出せる。但し、仕切り板6の下方は水タンク1の底部に接しないように隙間をとる。これは水の注入口を一つにする為と2室の水面を同一にする為である。なお、水タンク1には図示していない注入口も設けておく。
【0011】
酸化チタン電極2は光を受ける電極面を水面9に対し平行に設け、浮力装置5により水面9より少し下の水中でキセノンランプ4の光を受けられるように配置し水面の変化に伴って上下移動できる構造となっている。これにより、キセノンランプ4からの光を水の増減に関係なく、常に一定の照度と一定の受光面積で受けることが可能になる。
【0012】
キセノンランプ4は、酸化チタン電極2の上部の水タンク1外側に配置し、水タンク1に取り付けたアクリル板7を通して酸化チタン電極2へ光を照射する。なお、アクリル板7の両面には酸化チタンを塗布する。これにより光が当たっている間、光触媒の作用によりアクリル板7の表面の汚れを防ぐことができる。
【0013】
酸化チタン電極2はキセノンランプ4の光を受け酸素を発生し、白金電極3からは水素を発生する。水素は内燃機関の燃料として燃焼室へ送られる。酸素は内燃機関の空気吸入装置へ送ることでより酸素密度を高めることができる。なお、キセノンランプ4の電源は任意でよいが、微弱な電力ですむため図示しない内燃機関の発電機による電力で充分賄うことができる。また、両電極の枚数や表面積は水タンク1の容量や水素の供給量により任意にして良い。
【実施例2】
【0014】
図2は、本発明の第2実施例を示す断面模式図である。酸化チタン電極2に照射する光をキセノンランプ4だけでなく太陽光も加えたことを特徴とする。また、酸化チタン電極2まで太陽光を導き照射する為にグラスファイバー10を装備することも特徴とする。
【0015】
グラスファイバー10は酸化チタン電極2側の水タンク1上部から水中まで通して酸化チタン電極2上部に配設する。これにより太陽光の照度の減少を抑えることができる。グラスファバー10の外側先端には太陽光をより多く集めるための集光装置11を備え、太陽光を酸化チタン電極2に照射する先端には光をより拡散するための光拡散装置12を備えている。水タンク1下部にはキセノンランプ4を備えアクリル板7を通してチタン電極2に光を照射する事が出来る。なお、集光装置11及び光拡散装置12の表面にも酸化チタンを施してある。これにより表面の汚れを防ぎ太陽光の照度を落とさずに酸化チタン電極2に照射することができる。
【0016】
酸化チタン電極2と白金電極3は水タンク1底部に配設し、酸化チタン電極2には傾斜を与えておく。これにより、酸化チタン電極2下側から発生する酸素も滞らず傾斜に沿って上方へ流れて行くことが出来る。なお、酸化チタン電極2は水タンク1下の部分に装備されたキセノンランプ4の光も受けられるように両面に酸化チタンを施してある。これにより、太陽光があれば内燃機関が稼働していなくても水素を生産し水素タンクなどに貯めることができる。また、内燃機関が稼働すれば図示しない内燃機関の発電機からの電力によりキセノンランプ4からも照射できるので水素供給効率が向上する。
【実施例3】
【0017】
図3は、本発明の第3実施例を示す断面模式図である。本実施例では、水タンク1の内部に酸化チタン層13を敷設し、発生させた酸素と水素を混合させて供給することを特徴とする。また、キセノンランプ4の電力源に太陽電池15も使用することを特徴とする。
【0018】
水タンク1内に敷設した酸化チタン層13は表面に間隔を開けて白金層14を付着させている。水タンク1上部にはキセノンランプ4を配置し透明なアクリル板7を通して酸化チタン層13に光を照射し、酸素と水素を発生させ混合気体として燃焼室へ供給する。
【0019】
キセノンランプ4の電力源は、内燃機関の稼働による発電機17からの電力と太陽電池15の電力を併用出来る。これにより内燃機関が稼働していない状態でも太陽電池15が機能を発揮出来る状態の時は、太陽電池15から蓄電池16を介してキセノンランプ4へ電力を送ることが可能になり、水素と酸素の混合気体を貯蔵タンクなどに蓄えることができる。また、蓄電池16に電力を蓄えることもできる。
【実施例4】
【0020】
図4は、本発明の第4実施例であり、燃料供給装置からピストンエンジン26の燃焼室までの水素供給の過程を示した説明図である。
【0021】
第1実施例又は第2実施例の水タンク1を酸化チタン電極側タンク19と白金電極側タンク18の二つに分けたことを特徴とする。両タンク内の電極は抵抗8でつないだ閉回路を構成しており、図示していない酸化チタン電極へ照射する光は太陽電池15と発電機17の電力を併用して蓄電池16に送り、蓄電池16からの電力によりキセノンランプ4を点灯させ、酸化チタン電極側タンク19から酸素、白金電極側タンク18から水素を発生させる。
【0022】
白金電極側タンク18からの水素は水素電送管20を通り圧縮装置21により加圧されて水素タンク22へ送られる。水素タンク22はピストンエンジン26が稼働しない時でも太陽電池15又は蓄電池16の電力によりキセノンランプ4を点灯させ水素を蓄えることができる。また、圧縮装置21により大気圧以上の圧力で蓄える事ができる。なお、この時の圧縮装置21を駆動させる電力も蓄電池16の電力を使用する。
【0023】
水素タンク22に蓄えられた水素はマニホールド24によりピストンエンジン26の気筒数に分けて水素ガスインジェクション25より燃焼室へ噴射される。尚、酸化チタン電極側タンク19から発生した酸素の使い方は、酸素電送管23を通して内燃機関の吸気筒、又は空気取り入れ口に接続し吸入空気の酸素濃度を高めることもできるし、水素と混合させて燃焼効率を調節するなど任意にしてよい。
【0024】
本実施例では水タンクを二つにわけたが、これにより両タンクの設置場所が自由になり、特に白金電極側タンク18と水素タンク22を、より安全な任意の場所に装備することが可能になる。尚この際、大元の水タンクを装備して両タンクへ水を供給することもできる。また、太陽電池15は自動車ではボンネット、屋根、トランクなど、船舶では甲板、航空機では機体の上部、又は翼など日当たりの良い任意の場所に設置してよい。また、内燃機関を動力とする発電機に装備した場合は発電機と離して任意の日当たりの良い場所に設置することができる。
【0025】
以上、本発明の基本的な実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。第1及び第2実施例の水タンク1を第4実施例の如く分離してもよいし、第2実施例では太陽光をグラスファイバー10により酸化チタン電極2へ照射したが、キセノンランプ4の光をグラスファイバー10を通して酸化チタンに照射することも出来る。また、光の当て方も水タンク1の上下方向だけでなく横方向や容器を凹ませて照射しても良い。また、実施例ではキセノンランプ4の光を水タンク1内に照射する部分には透明なアクリル板7を使用したが、この他に水タンク1自体、又は水タンク1から燃焼室への過程にある管、又は容器自体を透明な材質にすることも任意にできる。さらに、水タンク1及び前記管、又は容器の光を取り込む部分にもアクリル板7同様に酸化チタンを施して汚れを防ぐことも自由に出来る。また、光源としてはキセノンランプ4に限らず紫外線又は可視光など種々の光に反応する光触媒の種類によって他のランプや蛍光灯など他の照明器具を用いる事も自由であり、形状や光量、照度も任意でよい。
【0026】
また、実施例では光触媒として酸化チタン、助触媒として白金で説明したがこれらに限らず光触媒反応ができる従来からの任意の光触媒と助触媒を用いる事が出来る。また、電極とする場合や容器内又は管内に配設、敷設する場合に導電性、または半導体性を持つ物質に塗布、または接着、接合するなど自由にできる。また、光触媒、助触媒の割合及び大きさも任意にしてよく、水タンク内一面に配設したり、水タンクから燃焼室までの容器、または配管内に自由に設けることができる。形状も表面に凹凸をつけて表面積を増やすなど任意にすることができる。
【0027】
また、本実施例では光分解を水で説明したが、水に限らず水を含んでいれる水溶液ならば自由に適用してよい。例えば、第4実施例の二つのタンクのそれぞれに酸性とアルカリ性の水溶液を入れることもできる。
【0028】
また、第4実施例ではピストンエンジンに装備した例を説明したが、本発明の水素供給装置はこれに限らず内燃機関であってピストンエンジン、またはロータリーエンジンを動力にする自動車を始めとする車両及び船舶から、ターボファンエンジンやターボジェットエンジン、ターボプロップエンジン、ターボシャフトエンジンなどのガスタービンエンジンを搭載する航空機などの乗り物に広く装備できる。また、内燃機関を動力とする発電機にも装備できる。
【0029】
さらに、酸素の使い道も第4実施例に限らず、発生させた酸素の使い道として最適なのが燃料電池である。未来の動力源として開発されている燃料電池及び燃料電池自動車に装備することで、燃料電池に必要な水素に加え酸素も供給可能になる最適な装置として提供できる。
【0030】
また、水素供給装置を装備出来ない小型のエンジンなどには、実施例1から4に説明した各装置の他に外部電力を取り込む装置と装置を統括制御する制御装置を具備した水素供給装置として、単独で水素タンクへ水素を補給することもできる。なお、電源は外部電力と太陽電池の電力を併用することも出来る。また、交換可能な水素タンク、若しくは水素ボンベにも、この水素供給装置により水素を充填することもできる。この交換可能な水素タンク、若しくは水素ボンベは、小型のエンジンや農業用の小型耕耘機などに簡単に取り付けて使用出来る持ち運び自由なカセット水素タンク、またはカセット水素ボンベとする事も出来る。また、光源として太陽電池の電力、又はグラスファイバーによる太陽光を利用すれば、外部からの電力に依存することなく水素を供給出来る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の水素供給装置の第1実施例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の水素供給装置の第2実施例を示す断面模式図である。
【図3】本発明の水素供給装置の第3実施例を示す断面模式図である。
【図4】本発明の水素供給装置の第4実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 水タンク
2 酸化チタン電極
3 白金電極
4 キセノンランプ
5 浮力装置
6 仕切り板
7 アクリル板
8 抵抗
9 水面
10 グラスファイバー
11 集光装置
12 光拡散装置
13 酸化チタン層
14 白金層
15 太陽電池
16 蓄電池
17 発電機
18 白金電極側タンク
19 酸化チタン電極側タンク
20 水素電送管
21 圧縮装置
22 水素タンク
23 酸素伝送管
24 マニホールド
25 水素ガスインジェクション
26 ピストンエンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内、又は管内の水溶液中に設けた光触媒に光りを当てて水素と酸素を発生させ、その水素、又は水素と酸素を燃料として内燃機関及び燃料電池に供給することを特徴とする内燃機関及び燃料電池用水素供給装置。
【請求項2】
光触媒と助触媒を組み合わせたことを特徴とする請求項1記載の内燃機関及び燃料電池用水素供給装置。
【請求項3】
容器内の光触媒の面を水面と平行にして水面下に配置し、前記光触媒を水の増減に合わせて移動させる装置を設けたことを特徴とする請求項1,2記載の内燃機関及び燃料電池用水素供給装置。
【請求項4】
光源からの光、または太陽光をグラスファイバーを通して光触媒に照射することを特徴とする請求項1,2,3記載の内燃機関及び燃料電池用水素供給装置。
【請求項5】
グラスファイバーの片端、又は両端に集光装置と光拡散装置のいずれか一方、又は双方を設け、かつ両装置の表面に酸化チタンを施したことを特徴とする請求項4記載の内燃機関及び燃料電池用水素供給装置。
【請求項6】
光源になる照明灯の電力として、太陽電池と発電機の電力のいずれか一方、又は双方を用いたことを特徴とする請求項1,2,3記載の内燃機関及び燃料電池用水素供給装置。
【請求項7】
発生させた水素、又は水素と酸素の混合気体を少なくとも1気圧以上の圧力で容器に保存することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6記載の内燃機関及び燃料電池用水素供給装置。
【請求項8】
容器外の光源から容器内に光りを照射する部分、又は容器及び管自体に透明な材質を用い、かつ前容器内に光りを照射する部分、又は前容器及び管に酸化チタンを施した事たを特徴とする請求項1,2,3,4,5記載の内燃機関及び燃料電池用水素供給装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか1項、又は何れか2項以上に記載の装置と外部からの電力を取り入れる装置と各装置を制御する制御装置と蓄電装置と発生させた水素、酸素を容器へ充填、又は外部へ供給する装置を具備したことを特徴とする内燃機関及び燃料電池用水素供給装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−105534(P2011−105534A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260542(P2009−260542)
【出願日】平成21年11月15日(2009.11.15)
【出願人】(591217481)
【Fターム(参考)】