説明

内燃機関用オイルリング

【課題】オイル消費量を確実に削減できる内燃機関用オイルリングの提供を目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため、断面略I字型のオイルリング本体2とコイルエキスパンダ3とから成る2ピース構成のオイルリングであり、当該オイルリング本体2は、シリンダライナ内周壁と摺動する第1レール21、第2レール22、及びシリンダライナの内周壁より掻き落としたオイルをピストン裏面へ流下させるための複数のオイル戻し孔を備えるウェブ23とからなり、更に、当該オイルリング本体2は、その内周面に沿って、コイルエキスパンダ収容凹部2bを備え、当該コイルエキスパンダ収容凹部2bにコイルエキスパンダ3を配置した状態のオイルリング本体の軸方向断面において、オイルリング本体2とコイルエキスパンダ3との間に形成される隙間面積が、オイルリング本体の断面積の1%〜50%であることを特徴とする内燃機関用オイルリング1を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、オイルリング本体とコイルエキスパンダとから成る2ピース構成の内燃機関用オイルリングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関においては、燃費を向上させるために、シリンダボア内面とピストンリングにおける摩擦の低減が重要となっている。特に、内燃機関のピストンリングにおいては、摩擦力の低減のために、圧力リング及びオイルリングに品質の向上が求められており、また摩擦力の低減と共にオイル消費の低減も求められている。
【0003】
内燃機関用オイルリングは、シリンダライナ内壁面に適切な油膜を形成すると共に、シリンダライナ内壁面の余分なオイルを掻き取り、オイルパンに戻す機能を備え、オイルのコントロール機能を担うものである。内燃機関用オイルリングでは、これらの機能を高めるため、オイルリング本体の軸方向高さを薄くする薄幅化技術が追求されている。
【0004】
このオイルリングの薄幅化技術は、シリンダライナの内壁面への追従性を向上させ、オイル消費量を削減することが出来るが、同時に張力が低下し、オイル掻き性能が低下するという欠点がある。そこで、オイル掻き性能を低下させず、むしろ向上させるためには、オイルリングのシリンダライナ内壁面と摺動するレールの軸方向高さを小さくし、接触面積を小さくすることで、単位面積あたりの接触圧力を低下させないようにする必要がある。その結果、現在では、内燃機関用オイルリングのオイルリング本体の軸方向高さは、0.8mm〜2.0mmの範囲とすることが一般化してきている。
【0005】
そして、このような薄幅化技術に対応した内燃機関用オイルリングとしては、オイルリング本体とコイルエキスパンダとから成る2ピース構成のものがある。ここで、コイルエキスパンダは、オイルリング本体を径方向外方に押圧付勢することにより、燃焼室内の機密性またはオイルの掻き落とし機能を向上させるものである。
【0006】
しかし、このような内燃機関用オイルリングにおいては、オイルリング本体の内周が円弧形状をしているために、コイルエキスパンダはオイル本体と密着し、オイルリング本体に形成されているオイル戻し孔を大部分塞いでしまう場合や、オイル戻し孔の形状及び占有面積が不適切である場合に、オイルリング外周にて掻き落としたオイルをすばやくオイルリングの背面側に逃がすことができない。その結果、オイル掻き落とし機能が低下するため、オイル消費量の増大を招いてしまう。
【0007】
そこで、この問題を解決するために、例えば特許文献1に記載されたようなオイルリングが提案されている。このオイルリングにおいて、コイルエキスパンダは軸方向断面で視て上下の各レールと実質上二点のみで接触しており、これら接触点以外の部分において、コイルエキスパンダはオイルリング本体との間に隙間を形成している。したがって、オイルリングは、この隙間があることによって、オイル戻し孔がコイルエキスパンダで塞がれることがないので、掻き落とされたオイルをすばやくオイルリング背面に逃がすことができ、オイル消費量を低減することが可能となる。また、オイルリング本体の内周面とコイルエキスパンダとの接触点が2点であるため、種々の大きさ(径)のコイルエキスパンダを適用することが可能となっている。
【0008】
また、特許文献2には、少なくとも一方から他方にオイルを流通させる貫通油孔を備えた各種内燃機関のピストンに装着されるオイルリングとして使用される、オイルリング用線材であって、当該貫通油孔は、当該オイルの流通方向に対し当該貫通油孔の相対する側壁の少なくとも一方が実質的に傾斜したテーパー部を有しているオイルリング用線材が開示されている。更に、前記側壁は直線部分を含み、当該直線部分が交差する角度は0°より大きく15°以下にし、掻き落とされたオイルをすばやくオイルリング背面に逃がすことで、よりオイル消費量を低減させることが提案されている。
【0009】
【特許文献1】特開昭61−45172号公報
【特許文献2】特開2006−194272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載されたオイルリングにおいて、オイルリング本体とコイルエキスパンダとの間に形成されている隙間を設ける技術が開示されているものの、どの程度の隙間が必要であるのかが明確ではなく、当業者が実施しようとしても、かなりの困難が伴う。
【0011】
例えば、特許文献1に記載されたオイルリングにおいて、オイルリング本体とコイルエキスパンダとの間に形成されている隙間が、ほんの極小の隙間の場合には、オイル消費量を低減できるとは必ずしも言えないのが当然である。しかも、このときの隙間の設け方は、本来であれば、内燃機関の種類、使用するオイルの種類等によって、厳密には異なるものと考えられる。
【0012】
特許文献2に記載されたオイルリング用線材においては、フランジ部とコイルスプリングとの間に形成される隙間に関しては言及されていない。また、当該オイルリング用線材に設けられている貫通油孔に関しては、テーパー部の角度についての開示はあっても貫通油孔の具体的な大きさ(開口幅及び開口高さ)に関しては設定されていない。すなわち、特許文献2のオイルリング用線材をオイルリングとして用いた場合には、例えば当該貫通油孔の開口部の面積が小さい場合には、スラッジにより孔が閉塞する可能性が増大し、オイル消費量の低減を図るのに必ずしも十分であるとは言い難い。
【0013】
以上のことから、従来より、内燃機関の駆動時のオイル消費量を確実に低減でき、オイルリングの薄幅化による張力の低下に対応可能な内燃機関用オイルリングの提供が求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決するため、以下のような内燃機関用オイルリングを採用した。
【0015】
本件発明の内燃機関用オイルリングは、断面略I字型のオイルリング本体と当該オイルリング本体内周側に配置されるコイルエキスパンダとからなり、当該オイルリング本体は、シリンダライナ内周壁と摺動する第1レールと、第2レールと、当該第1レール及び第2レールがシリンダライナの内周壁より掻き落としたオイルをピストン裏面へ流下させるための複数のオイル戻し孔を備えるウェブとで構成され、更に、当該オイルリング本体は、その内周面に沿って、当該コイルエキスパンダを安定配置するためのコイルエキスパンダ収容凹部を備え、当該コイルエキスパンダ収容凹部にコイルエキスパンダを配置した状態のオイルリング本体の軸方向断面において、オイルリング本体とコイルエキスパンダとの間に形成される隙間面積が、オイルリング本体の断面積の1%〜50%であることを特徴としている。
【0016】
そして、本件発明の内燃機関用オイルリングは、前記オイルリング本体の外周面には、掻き落としたオイルを一時的に滞留受容するための外周溝を備え、軸方向断面における当該外周溝の溝幅が0.3mm〜1.6mmであることが好ましい。
【0017】
また、本件発明の内燃機関用オイルリングは、前記オイルリング本体を構成するウェブの径方向断面厚さは、0.3mm〜0.7mmであることが好ましい。
【0018】
また、本件発明の内燃機関用オイルリングは、前記オイルリング本体を構成するウェブに設けるオイル戻し孔は、開口幅が1.0mm〜5.0mm、開口高さが0.3mm〜0.8mmであることが好ましい。
【0019】
また、本件発明の内燃機関用オイルリングは、前記オイルリング本体を構成するウェブに設けるオイル戻し孔は、開口幅が1.0mm〜5.0mm、オイルリング本体の外周側の開口高さが0.3mm〜1.5mm、オイルリング内周側の開口高さが0.17mm〜0.80mmであることが好ましい。
【0020】
また、本件発明の内燃機関用オイルリングは、前記オイルリング本体を構成するウェブに設けるオイル戻し孔は、オイルリング本体の内周側の開口高さをXとし、オイルリング本体の外周側の開口高さをYとした場合、X/Y=0.55〜0.99であることが好ましい。
【0021】
また、本件発明の内燃機関用オイルリングは、前記オイルリング本体の軸方向高さが1.0mm〜2.5mmであることが好ましい。
【0022】
また、本件発明の内燃機関用オイルリングは、前記オイルリング本体のシリンダボア径に対する張力比が0.1N/mm〜0.5N/mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本件発明の内燃機関用オイルリングでは、オイルリング本体とコイルエキスパンダとの間に形成される隙間面積を、オイルリング本体の断面積の1%〜50%に設定したものである。この隙間面積を、上述のような適正な範囲とすることにより、主に自動車に使用されるガソリン用内燃機関、ディーゼル用内燃機関のオイル消費量を確実に削減できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本件発明の実施の形態を図にしたがって説明する。図1は、本件発明の一実施の形態を示す内燃機関用オイルリング1の軸方向断面図である。この内燃機関用オイルリング1は、ピストン10のオイルリング溝11に装着されている。また、この内燃機関用オイルリング1は、2ピース構成のオイルリングであり、オイルリング本体2と、コイルエキスパンダ3とから構成されている。
【0025】
オイルリング本体2は、図2に示すように略円形で、且つ、断面略I字状に形成されており、合口部2aを備えている。そして、このオイルリング本体2は、第1レール21と、第2レール22と、ウェブ23とが一体化して構成されている。
【0026】
第1レール21及び第2レール22は、略円形に形成されている。図1に示すように、この第1レール21及び第2レール22の各々は、オイルリング本体2の上側部分及び下側部分を構成している。そして、第1レール21及び第2レール22の上面が、ピストン10の往復動作の際に、ピストン10のオイルリング溝11に当接する。また、第1レール21及び第2レール22の各々の外周摺動面211,221は、シリンダライナ50の内周壁51と油膜を介して接触し、ピストン軸方向に摺動する。
【0027】
また、ウェブ23は、図2に示すように略円形であって、双方の第1及び第2レール21,22よりも薄肉状に形成されている。そして、このウェブ23は、図1に示すように、第1レール21と第2レール22とを連結してオイルリング本体2の中間部分を構成している。また、図2や図3から明らかなように、このウェブ23は、半径方向に貫通形成されたオイル戻し孔231を備え、且つ、そのオイル戻し孔231が周方向に複数配置して形成されている。
【0028】
そして、図1に示すように、オイルリング本体2の内周面には、双方の第1及び第2レール21,22及びウェブ23により、コイルエキスパンダ収容凹部2bが周方向に形成されている。また、オイルリング本体2の外周面には、双方の第1及び第2レール21,22及びウェブ23により、凹字状の外周溝2cが周方向に形成されている。
【0029】
一方、前記コイルエキスパンダ3は、図4に、その一部を示したように、スプリングのように螺旋状の形態のコイルを用いて、これを円弧状としたものである。そして、このコイルエキスパンダ3は、オイルリング本体2の内周側においてコイルエキスパンダ収容凹部2b内に安定して配置されている。そして、コイルエキスパンダ3は、軸方向断面で視てオイルリング本体の双方の第1及び第2レール21,22と二点で接触しており、この状態でオイルリング本体をシリンダライナ50の内周壁51に押し付けている。そして、図1に示すように、コイルエキスパンダ3とオイルリング本体2との間には、隙間1Sが形成されている。なお、ここで言うコイルエキスパンダは、断面が丸形状の線材、断面が矩形状の線材等の従来から使用されてきた線材を用いて製造することができる。しかし、オイルリングの薄幅化が進む現状を考えれば、コイルエキスパンダ自体の太さを細くし且つ要求張力を満たすことの容易性を考慮すると、断面が矩形状の線材を用いることが好ましい。
【0030】
かかる構成において、図1を参照しつつ、内燃機関用オイルリング1の機能を説明する。ここで、ピストン10が往復動する際に、オイルリング本体2の双方の第1及び第2レール21,22の外周摺動面211,221が、シリンダライナ50の内周壁51に付着している余分なオイルを掻き落とす。掻き落とされたオイルは、オイルリング本体2の外周溝2c内に一時的に滞留受容された後、オイル戻し孔231を通ってコイルエキスパンダ収容凹部2bに流れる。コイルエキスパンダ収容凹部2bに流されてきたオイルは、オイルリング溝11内に設けられているオイルドレイン穴24を通ってピストン10の裏面に流下し、オイルパンに戻される。
【0031】
そして、この内燃機関用オイルリング1では、オイルリング本体2とコイルエキスパンダ3との間に隙間1Sが形成されていることにより、オイル戻し孔231がコイルエキスパンダ3で塞がれることがない。そのため、内燃機関用オイルリング1の掻き落としたオイルは、すばやくオイルリングの背面側に設けられたオイルドレイン穴24に逃がすことができるので、オイル消費量を低減することが可能となる。
【0032】
なお、オイルリング本体とコイルエキスパンダとの間に形成される隙間面積とは、図1に示すように、オイルリング本体2にコイルエキスパンダ3を組み付けた際に、オイルリング本体2の内周側とコイルエキスパンダ3の最外径との間にできる軸方向における隙間1Sの断面積をいう。この内燃機関用オイルリング1では、軸方向断面において、隙間1Sの断面積を、オイルリング本体2の断面積の1%〜50%に設定している。なお、ここで言う、オイルリング本体2の軸方向断面においてオイルリング本体2の断面積に対する隙間1Sの断面積の割合は、後に述べる「空隙率」と同義である。ここで、隙間1Sの断面積がオイルリング本体2の断面積の1%未満の場合には、オイル戻し孔231がコイルエキスパンダ3によって大部分塞がれてしまう。このため、掻き落としたオイルがオイル戻し孔231を通って、オイルリング溝の背面側に設けられたオイルドレイン穴24に逃げにくくなり、オイル消費量が増大してしまう。また、隙間1Sの断面積がオイルリング本体2の断面積の50%を超える場合には、内燃機関用オイルリング全体の剛性が弱くなり、オイル掻き機能が低下するおそれがある。よって、本実施の形態の内燃機関用オイルリング1においては、オイル消費量を確実に低減することができる。
【0033】
また、この内燃機関用オイルリング1では、軸方向断面における外周溝2cの溝幅Aを0.3mm〜1.6mmに設定している。ここで、溝幅Aが0.3mm未満の場合には、外周摺動面211,221においてシリンダライナ50の内周壁51に対する接触面積が大きくなり、面圧が低下してしまい、オイル消費量が増大する。また、溝幅Aが1.6mmを超える場合には、外周摺動面211,221においてシリンダライナ50の内周壁51に対する接触面積が小さくなるので、第1及び第2レール21,22の強度が低下し、折損するおそれがある。
【0034】
また、この内燃機関用オイルリング1では、ウェブ23の径方向断面厚さBを0.3mm〜0.7mmに設定している。ここで、ウェブ23の径方向断面厚さBが0.3mmより小さい場合には、双方の第1及び第2レール21,22の強度が弱まり、オイルリング本体2の耐久性が低下するおそれがある。また、ウェブ23の径方向断面厚さBが0.7mmより大きい場合には、オイルリング本体2とコイルエキスパンダ3との隙間1Sが小さくなるので、オイル戻し孔231を通過したオイルが内燃機関用オイルリングの内周側にスムーズに排出することができないおそれがある。
【0035】
また、この内燃機関用オイルリング1では、オイル戻し孔231について、開口幅C(図3参照)を1.0mm〜5.0mm、開口高さD(図1及び図3参照)を0.3mm〜0.8mmに設定している。ここで、開口幅Cが1.0mmより小さく、開口高さDが0.3mmより小さい場合には、掻き落としたオイルを速やかにオイルリングの背面側に設けられたオイルドレイン穴24へ排出することができないおそれがある。また、開口幅Cが5.0mmより大きく、開口高さDが0.8mmより大きい場合には、双方の第1及び第2レール21,22の強度が弱まり、オイルリング本体2の強度が低下するおそれがある。なお、オイル戻し孔231の形状は、図3で明瞭に理解できるような、長方形形状の両端部の開口高さDに相当する辺を一定の曲率半径Rを備える弧状辺として形成したものに限定されない。例えば、オイルリングとしての要求特性を満たす限りにおいて長方形、円形状、楕円形状、開口高さDに相当する辺を曲線形状としたもの等の種々の形状を適宜選択して使用することができる。
【0036】
また、この内燃機関用オイルリング1は、オイル戻し孔231について、オイルリング本体の外周側の開口高さ(図5に示すY)を0.3mm〜1.5mm、オイルリング本体の内周側の開口高さ(図5に示すX)を0.17mm〜0.80mm、開口幅C(図3参照)を1.0mm〜5.0mmに設定している。ここで、開口高さXが0.17mmより小さく、且つ、開口高さYが0.3mmより小さく、開口幅Cが1.0mmより小さい場合には、掻き落としたオイルを速やかにオイルリングの背面側に設けられたオイルドレイン孔24へ排出することができないおそれがある。また、開口高さXが0.80mmより大きく、且つ、開口高さYが1.5mmより大きく、開口幅Cが5.0mmより大きい場合には、双方の第1及び第2レール21,22の強度が弱まり、オイルリング本体2の強度が低下するおそれがある。
【0037】
この場合に、この内燃機関用オイルリング1は、オイル戻し孔231について、オイルリング本体の内周側の開口高さをXとし、オイルリング本体の外周側の開口高さをYとした場合(図5参照)、X/Y=0.55〜0.99となるように設定される。ここで、X/Yが0.55より小さい場合には、オイル戻し孔231に設けられるテーパー角度が大きくなり、オイルをオイルリング外周側から内周側へ流通させるときに当該内周側オイル戻し孔231の開口面積が小さくなることでオイル流通性の悪下を招き、且つ、オイルリング本体2の強度が低下するおそれがある。一方、X/Yが0.99より大きい場合には、オイル戻し孔231の開口高さが、オイルリング本体の外周側と内周側とが同一、または、外周側が内周側より低くなるため、効率の良いオイル流通性が確保できなくなる。
【0038】
また、この内燃機関用オイルリング1では、オイルリング本体の軸方向高さh1を1.0mm〜2.5mmに設定している。ここで、オイルリング本体の軸方向高さh1が1.0mmよりも小さい場合には、外周摺動面211,221においてシリンダライナ50の内周壁51に対する接触面積が小さくなると共に、強度の問題からオイル戻し孔の開口面積を広く取ることが出来なくなり、オイル消費量が増大するおそれがある。また、内燃機関用オイルリング1のオイルリング本体の軸方向高さh1が2.5mmよりも大きい場合には、高い張力を必要とするようになり、オイル消費量が増大するおそれがある。
【0039】
また、この内燃機関用オイルリング1では、シリンダボア径(図示せず)に対する張力比([オイルリングの張力(N)]/[シリンダボア径(mm)]で算出される値)を、0.1N/mm〜0.5N/mmに設定している。ここで、シリンダボア径に対する張力比が0.1N/mmよりも小さい場合には、外周摺動面211,221においてシリンダライナ50の内周壁51に対する押圧力が十分でない。したがって、外周摺動面211,221は余分なオイルを十分に掻き落とすことができず、オイル消費量が増大するおそれがある。また、シリンダボア径に対する張力比が0.5N/mmよりも大きい場合には、外周摺動面211,221においてシリンダライナ50の内周壁51に対する押圧力が大きすぎてしまうので、摩擦力が高くなり、燃費が低下するおそれがある。
【0040】
このように、本実施の形態の内燃機関用オイルリング1においては、外周溝2cの溝幅A、ウェブ23の径方向断面厚さB、オイル戻し孔231の開口幅C及び開口高さD、オイルリング本体の軸方向高さh1、シリンダボア径(図示せず)に対する張力比をそれぞれ適切な範囲に設定することにより、オイル消費量をさらに低減できるとともに、耐久性の低下及び燃費の低下を抑えることができる。
【0041】
以下、実施例および比較例を示して本件発明を具体的に説明する。なお、本件発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0042】
実施例1では、排気量が2000cc、シリンダボア径が86mmの4気筒ガソリンエンジンの実機試験を行い、オイル消費量の確認を行った。なお、エンジンの運転条件は、全負荷(WOT)で回転数5000rpmで10時間行った。そして、ピストンリングの組み合わせは、1stリング、2ndリング、オイルリングとした。このときの1stリングは、10Cr鋼からなる軸方向高さ(h1)1.2mm、径方向厚さ(a1)2.9mmのものにガス窒化処理を施したものを用いた。2ndリングは、FC材からなる軸方向高さ(h1)1.2mm、径方向厚さ(a1)3.4mmのものを用いた。
【0043】
なお、念のために1stリングを構成する10Cr鋼及び2ndリングを構成するFC材に関して述べておく。ここで言う10Cr鋼は、炭素0.50質量%、ケイ素0.21質量%、マンガン0.30質量%、クロム10.1質量%、リン0.02質量%、硫黄0.01質量%、残部鉄及び不可避不純物の組成を備え、且つ、ガス窒化処理を施したものである。そして、ここで言うFC材とは、炭素3.41質量%、ケイ素2.05質量%、マンガン0.65質量%、リン0.30質量%、硫黄0.08質量%、クロム0.10質量%、銅0.10質量%、残部鉄及び不可避不純物の組成を備えるFC250材相当のものである。
【0044】
そして、オイルリングは、上述の実施の形態で述べた2ピース構成の内燃機関用オイルリングを使用した。そして、ここで用いたコイルエキスパンダは、断面が丸形状の線材を用いて製造したものである。具体的には、下記に示す仕様のものである。また、以下に示す空隙率とは、オイルリング本体2の軸方向断面においてオイルリング本体2の断面積に対する隙間1Sの断面積の割合である。なお、本件実施例、他の実施例及び比較例で使用したオイルリングの備えるオイル戻し孔は、図3に拡大して示したオイル戻し孔231の形状と同様であり、このときの長方形形状の両端部の開口高さDに相当する辺を曲率半径Rを0.2mmの弧状辺として形成している。
【0045】
軸方向高さh1 :2.0mm
径方向厚さa1 :2.75mm
外周溝の溝幅A :1.34mm
ウェブの径方向断面厚さB :0.45mm
オイル戻し孔の開口幅C :1.4mm
オイル戻し孔の開口高さD :0.5mm
シリンダボア径に対する張力比 :0.23N/mm
【0046】
ここで言うオイルリングを構成するオイルリング本体は、炭素0.70質量%、ケイ素0.25質量%、マンガン0.30質量%、クロム8.05質量%、リン0.01質量%、硫黄0.01質量%、残部鉄及び不可避不純物の組成の所謂8Cr鋼を用い、且つ、ガス窒化処理を施した素材を用いた。そして、コイルエキスパンダは、炭素0.55質量%、ケイ素1.41質量%、マンガン0.65質量%、クロム0.68質量%、銅0.06質量%、リン0.01質量%、硫黄0.01質量%、残部鉄及び不可避不純物の組成を備えるSWOSC−V材相当の素材を用いた。
【0047】
そして、この実施例1では、前記空隙率を1%、10%、30%、50%とした4条件を用いて、オイル消費量の確認を行った。以下、これらを実施例1−A〜実施例1−Dとして表示する。そして、その結果を比較例1と対比可能なように、表1に纏めて示す。
【実施例2】
【0048】
実施例2では、実施例1と同じエンジンを用いて、実施例1と同じ運転条件でエンジンを駆動させてオイル消費量の確認を行った。そして、ピストンリングの組み合わせは、1stリング、2ndリング、オイルリングとした。1stリング及び2ndリングは実施例1と同じものである。そして、オイルリングは、実施例1と同様に実施の形態で説明した2ピース構成の内燃機関用オイルリングを使用した。具体的には、下記に示す仕様のものである。
【0049】
軸方向高さh1 :2.0mm
径方向厚さa1 :2.75mm
外周溝の溝幅A :1.34mm
ウェブの径方向断面厚さB :0.45mm
オイル戻し孔の開口幅C :1.4mm
オイル戻し孔の開口高さD :0.40mm
シリンダボア径に対する張力比 :0.23N/mm
【0050】
そして、この実施例2では、前記空隙率を1%、10%、30%、50%とした4条件を用いて、オイル消費量の確認を行った。以下、これらを実施例2−A〜実施例2−Dとして表示する。そして、その結果を比較例2と対比可能なように、表2に纏めて示す。
【実施例3】
【0051】
実施例3では、実施例1と同じエンジンを用いて、実施例1と同じ運転条件でエンジンを駆動させてオイル消費量の確認を行った。そして、ピストンリングの組み合わせは、1stリング、2ndリング、オイルリングとした。1stリング及び2ndリングは実施例1と同じものである。そして、オイルリングは、実施例1と同様に実施の形態で説明した2ピース構成の内燃機関用オイルリングを使用した。具体的には、下記に示す仕様のものである。
【0052】
軸方向高さh1 :1.5mm
径方向厚さa1 :2.1mm
外周溝の溝幅A :1.01mm
ウェブの径方向断面厚さB :0.4mm
オイル戻し孔の開口幅C :1.4mm
オイル戻し孔の開口高さD :0.35mm
シリンダボア径に対する張力比 :0.23N/mm
【0053】
そして、この実施例3では、前記空隙率を1%、10%、30%、50%とした4条件を用いて、オイル消費量の確認を行った。以下、これらを実施例3−A〜実施例3−Dとして表示する。そして、その結果を比較例3と対比可能なように、表3に纏めて示す。
【実施例4】
【0054】
実施例4では、実施例1と同じエンジンを用いて、実施例1と同じ運転条件でエンジンを駆動させてオイル消費量の確認を行った。そして、ピストンリングの組み合わせは、1stリング、2ndリング、オイルリングとした。1stリング及び2ndリングは実施例1と同じものである。そして、オイルリングは、実施例1と同様に実施の形態で説明した2ピース構成の内燃機関用オイルリングを使用した。具体的には、下記に示す仕様のものである。
【0055】
軸方向高さh1 :1.2mm
径方向厚さa1 :1.75mm
外周溝の溝幅A :0.71mm
ウェブの径方向断面厚さB :0.4mm
オイル戻し孔の開口幅C :1.2mm
オイル戻し孔の開口高さD :0.30mm
シリンダボア径に対する張力比 :0.15N/mm
【0056】
そして、この実施例4では、前記空隙率を1%、10%、30%、50%とした4条件を用いて、オイル消費量の確認を行った。以下、これらを実施例4−A〜実施例4−Dとして表示する。そして、その結果を比較例4と対比可能なように、表4に纏めて示す。
【実施例5】
【0057】
実施例5では、実施例1と同じエンジンを用いて高速運転試験を実施し、オイル消費量の確認を行った。なお、エンジンの運転条件は、全負荷(WOT)で回転数6000rpmで10時間行った。そして、ピストンリングの組合せは、1stリング、2ndリング、オイルリングとした。1stリング及び2ndリングは実施例1と同じものである。
【0058】
そして、オイルリングは、実施の形態で説明した2ピース構成の内燃機関用オイルリングを使用した。そして、ここで用いたコイルエキスパンダは、断面が丸形状の線材を用いて製造したものである。具体的には、下記に示す仕様のものである。なお、このときのオイルリングは、前記オイル戻し孔の開口高さは、当該オイルリング本体における外周面側の高さYに対する内周面側の高さXの比率X/Y=0.9のテーパー形状であるものを用いた。使用したオイルリングは、具体的には下記に示す仕様のものである。
【0059】
軸方向高さh1 :1.5mm
径方向厚さa1 :2.0mm
外周溝の溝幅A :1.0mm
ウェブの径方向断面厚さB :0.5mm
オイル戻し孔の開口幅C :1.0mm
オイル戻し孔の開口高さX :0.45mm
オイル戻し孔の開口高さY :0.5mm
X/Y :0.9
シリンダボア径に対する張力比 :0.15N/mm
【0060】
そして、この実施例5では、前記空隙率を15%とした条件を用いて、オイル消費量の確認を行った。図6には、上述した仕様のオイルリングを用いて高速運転試験を実施し、オイル消費量の確認を行った結果を比較例と対比可能なように示した。図6に示すように、実施例5のオイル消費量比は、比較例5のオイル消費量比を基準として、この数値を1とした場合の比率として示したときに0.6となった。
【実施例6】
【0061】
実施例6では、実施例1と同じエンジンを用いて長時間耐久試験を実施し、オイル消費量の確認を行った。なお、エンジンの運転条件は、回転数4000rpmでトータル500時間とした。そして、ピストンリングの組合せは、1stリング、2ndリング、オイルリングとした。1stリング、2ndリングは実施例1と同じものを使用し、オイルリングは実施例5と同じものを使用した。本試験で使用するオイルは、劣化オイルを使用し、スラッジによるオイル戻し孔の閉塞の発生も考慮に入れた試験を行った。
【0062】
図7には、この長時間耐久試験の結果を比較例と対比可能なように示した。このときの実施例6のオイル消費量比は、実施例6のオイルリングを用いて1時間以内のオイル消費量(g/h)を基準として、この数値を1とした場合の比率として示した。試験開始から250時間、500時間経過後のオイル消費量を確認した結果、実施例1の場合、500時間を経過しても結果が悪くなるどころか若干良い傾向に推移していることが分かる。
【比較例】
【0063】
[比較例1]
比較例1は、実施例1との対比用に用いる。比較例1では、実施例1と同じエンジンを用いて、実施例1と同じ駆動条件でエンジンを駆動させてオイル消費量の確認を行った。そして、ピストンリングは、1stリング、2ndリング、オイルリングを組み合わせたものを使用した。1stリング及び2ndリングは実施例1と同じものである。そして、オイルリングは、実施例1のオイルリングにおいて空隙率を0%、0.5%、55%の3条件に変えたものを使用したが、空隙率を55%としたオイルリングについては、試験途中で折損したため、オイル消費の確認はできなかった。したがって、空隙率0%を比較例1−a、空隙率0.5%を比較例1−bとして表示する。そして、その結果を実施例1と対比可能なように、表1に纏めて示す。
【0064】
[比較例2]
比較例2は、実施例2との対比用に用いる。この比較例2では、実施例1と同じエンジンを用いて、実施例1と同じ駆動条件でエンジンを駆動させてオイル消費量の確認を行った。そして、オイルリングは、実施例2のオイルリングにおいて空隙率を0%、0.5%、55%の3条件に変えたものを使用したが、空隙率を55%としたオイルリングについては、試験途中で折損したため、オイル消費の確認はできなかった。したがって、空隙率0%を比較例2−a、空隙率0.5%を比較例2−bとして表示する。そして、その結果を実施例2と対比可能なように、表2に纏めて示す。
【0065】
[比較例3]
比較例3は、実施例3との対比用に用いる。この比較例3では、実施例1と同じエンジンを用いて、実施例1と同じ駆動条件でエンジンを駆動させてオイル消費量の確認を行った。そして、オイルリングは、実施例3のオイルリングにおいて空隙率を0%、0.5%、55%の3条件に変えたものを使用したが、空隙率を55%としたオイルリングについては、試験途中で折損したため、オイル消費の確認はできなかった。したがって、空隙率0%を比較例3−a、空隙率0.5%を比較例3−bとして表示する。そして、その結果を実施例3と対比可能なように、表3に纏めて示す。
【0066】
[比較例4]
比較例4は、実施例4との対比用に用いる。この比較例4では、実施例1と同じエンジンを用いて、実施例1と同じ駆動条件でエンジンを駆動させてオイル消費量の確認を行った。そして、オイルリングは、実施例4のオイルリングにおいて空隙率を0%、0.5%、55%の3条件に変えたものを使用したが、空隙率を55%としたオイルリングについては、試験途中で折損したため、オイル消費の確認はできなかった。したがって、空隙率0%を比較例4−a、空隙率0.5%を比較例4−bとして表示する。そして、その結果を実施例4と対比可能なように、表4に纏めて示す。
【0067】
[比較例5]
比較例5は、実施例5との対比用に用いる。この比較例5では、実施例1と同じエンジンを用いて、実施例5と同じ駆動条件でエンジンを駆動させてオイル消費量の確認を行った。そして、オイルリングは、前記オイル戻し孔の開口高さは、当該オイルリングにおける外周面側の高さYに対する内周面側の高さXの比率X/Y=1の非テーパー形状であり、且つ、前記空隙率が実施例5と同様に15%の条件のものを使用した。使用したオイルリングは、具体的には下記に示す仕様のものである。そして、その結果を実施例5と対比可能なように、図6に纏めて示す。
【0068】
軸方向高さh1 :1.5mm
径方向厚さa1 :2.0mm
外周溝の溝幅A :1.0mm
ウェブの径方向断面厚さB :0.5mm
オイル戻し孔の開口幅C :1.0mm
オイル戻し孔の開口高さX :0.45mm
オイル戻し孔の開口高さY :0.45mm
X/Y :1
シリンダボア径に対する張力比 :0.15N/mm
【0069】
[比較例6]
比較例6は、実施例6との対比用に用いる。この比較例6では、実施例1と同じエンジンを用いて、実施例6と同じ駆動条件でエンジンを駆動させてオイル消費量の確認を行った。そして、オイルリングは、前記オイル戻し孔の開口高さは、当該オイルリングにおける外周面側Yの高さに対する内周面側の高さXの比率X/Y=1の非テーパー形状であるものを使用した。使用したオイルリングは、比較例5と同じものを使用した。そして、その結果を実施例6と対比可能なように、図7に纏めて示す。
【0070】
図7のオイル消費量比は、比較例6のオイルリングを用いた場合に得られる、比較例6のオイルリングを用いて1時間以内のオイル消費量(g/h)を基準として、この数値を1とした場合の比率として示した。試験開始から250時間、500時間経過後のオイル消費量を確認した結果、比較例6の場合、250時間を経過したあたりからオイル消費量の増加が顕著になる傾向が現れた。
【0071】
[実施例と比較例との対比]
実施例1と比較例1との対比: 以下の表1には、実施例1(実施例1−A〜実施例1−D)及び比較例1(比較例1−a及び比較例1−b)のオイル消費量の結果を示している。この表1のオイル消費量比は、比較例1のオイルリングを用いたときのオイル消費量(g/h)の数値を1.00とした場合の比率である。
【0072】
【表1】

【0073】
この表1から明かなように、実施例1のオイルリングの方が、オイル消費量比の値が小さい。即ち、オイルリング本体2の断面積に対する隙間1Sの断面積の割合である空隙率を1%〜50%にした方が、比較例1と比べて、オイル消費量を確実に削減できている。また、表1には示していないが、当該空隙率が55%の比較例試料は、試験途中でオイルリングが折損したためにその後の試験は中止となった。これは、当該空隙率が50%を超えて内燃機関用オイルリング全体の剛性が弱くなったためと考えられる。
【0074】
実施例2と比較例2との対比: 以下の表2に、実施例2(実施例2−A〜実施例2−D)及び比較例2(比較例2−a及び比較例2−b)のオイル消費量の結果を示している。この表2のオイル消費量比は、比較例1(比較例1−a)のオイルリングを用いたときのオイル消費量(g/h)を基準として、この数値を1とした場合の比率である。
【0075】
【表2】

【0076】
この表2から分かるように、実施例2のオイルリングの方が、比較例2に比べて、オイル消費量比の値が小さいことが明らかである。また、実施例2のオイルリングは、実施例1のオイルリングと比べたときには、オイル戻し孔の開口高さDが小さくなっているが、オイルリング本体2の断面積に対する隙間1Sの断面積の割合である空隙率を1%〜50%にすることによって、オイル消費量を確実に低減することができる。また、表2には示していないが、当該空隙率が55%の比較例試料は、試験途中でオイルリングが折損したためにその後の試験は中止となった。これは、当該空隙率が50%を超えて内燃機関用オイルリング全体の剛性が弱くなったためと考えられる。
【0077】
実施例3と比較例3との対比: 以下の表3に、実施例3(実施例3−A〜実施例3−D)及び比較例3(比較例3−a及び比較例3−b)のオイル消費量の結果を示している。この表3のオイル消費量比は、比較例1(比較例1−a)のオイルリングを用いたときのオイル消費量(g/h)を基準として、この数値を1とした場合の比率である。
【0078】
【表3】

【0079】
この表3からわかるように、実施例3のオイルリングの方が、比較例3と比べて、オイル消費量比の値が小さいことが明らかである。そして、実施例3のオイルリングを実施例2のオイルリングと比べると、オイルリング本体の軸方向高さh1、外周溝の溝幅A、オイル戻し孔の開口高さDのそれぞれの値が小さくても、オイルリング本体2の断面積に対する隙間1Sの断面積の割合である空隙率を1%〜50%にすることによって、オイル消費量を確実に低減することができている。また、表3には示していないが、当該空隙率が55%の比較例試料は、試験途中でオイルリングが折損したためにその後の試験は中止となった。これは、当該空隙率が50%を超えて内燃機関用オイルリング全体の剛性が弱くなったためと考えられる。なお、この表3では、比較例3もオイル消費量比が1.00以下の値になっているが、比較例3と対比すべき実施例3では、より一層オイル消費量比の改善が出来ていることを明記しておく。即ち、同一の内燃機関及び運転条件であれば、本件発明に係る技術的思想を採用したオイルリングを採用することが有利であることを裏付けている。
【0080】
実施例4と比較例4との対比: 以下の表4に、実施例4(実施例4−A〜実施例4−D)及び比較例4(比較例4−a及び比較例4−b)のオイル消費量の結果を示している。この表4のオイル消費量比は、比較例1(比較例1−a)の内燃機関用オイルリングを用いたときのオイル消費量(g/h)を基準として、この数値を1とした場合の比率である。
【0081】
【表4】

【0082】
この表4から分かるように、実施例4のオイルリングの方が、比較例4と比べて、オイル消費量比の値が小さいことが明らかである。また、実施例4のオイルリングと、実施例3のオイルリングとを比べると、オイルリング本体の軸方向高さh1、外周溝の溝幅A、オイル戻し孔の開口高さDのそれぞれの値が小さくても、オイルリング本体2の断面積に対する隙間1Sの断面積の割合である空隙率を1%〜50%にすることによって、オイル消費量を確実に低減できることが分かる。また、表4には示していないが、当該空隙率が55%の比較例試料は、試験途中でオイルリングが折損したためにその後の試験は中止となった。これは、当該空隙率が50%を超えて内燃機関用オイルリング全体の剛性が弱くなったためと考えられる。なお、この表4では、比較例4もオイル消費量比が1.00以下の値になっているが、比較例4と対比すべき実施例4では、より一層オイル消費量比の改善が出来ていることを明記しておく。即ち、同一の内燃機関及び運転条件であれば、本件発明に係る技術的思想を採用したオイルリングを採用することが有利であることを裏付けている。
【0083】
実施例5と比較例5との対比: 図6は、高速運転試験を行った際の実施例5及び比較例5のオイル消費量の結果を示している。図6のオイル消費量比は、比較例5のオイルリングを用いたときのオイル消費量(g/h)を基準として、この数値を1とした場合の比率である。図6に示すように、実施例5のオイル消費量比は、比較例5のオイル消費量比を1とした場合の比率で0.6となった。
【0084】
この図6から分かるように、実施例5のオイルリングの方が比較例5と比べて、オイル消費量比の値が小さい。この結果より、オイルリングに設けられるオイル戻し孔の開口高さは、当該オイルリング本体の外周面側の高さYに対する内周面側の高さXの比率X/Y=0.9のテーパー形状を有する方が、非テーパー形状のものよりオイル消費量を削減する効果が得られることが分かる。
【0085】
実施例6と比較例6との対比: 図7は、長時間耐久試験を行った際の実施例6及び比較例6のオイル消費量比の時間経過毎の推移を示している。図7に示すように、実施例6と比較例6とのオイル消費量比は、時間が経過するに従って双方の差が大きくなっているのが分かる。
【0086】
この図7から分かるように、実施例6のオイルリングの方が比較例6に比べて、オイル消費量比の値が小さい。図7で特に注目すべきは、実施例6のオイルリングを用いた場合には時間が経過しても試験開始当初よりもむしろオイル消費量が僅かに減少しているのに対し、比較例6のオイルリングを用いた場合には時間の経過とともにオイル消費量の増加が顕著になっている点である。この要因として、比較例6のオイルリングは、オイルリング本体の外周側に設けられているオイル戻し孔の面積が実施例6より小さいので、劣化オイルを使用したことによって当該オイルに含まれるスラッジがオイル戻し孔の周りに堆積し、孔を塞いでしまうことが考えられる。実施例6のオイルリングを使用した場合に試験時間の経過後の方が試験開始当初よりもオイル消費量が減少したのは、オイルリングのシリンダライナに対するなじみ性が向上したことが要因として考えられる。
【0087】
以上の実施例5と比較例5及び実施例6と比較例6の結果より、オイルリング本体に設けるオイル戻し孔は、当該オイルリング本体における外周面側の高さと内周面側の高さが同じものとそうでないものとでは少なからずオイル消費量に影響を及ぼすことが分かった。そこで、次に、オイル戻し孔のオイルリング本体の外周面側の高さに対する内周面側の高さの比率を変えた場合に、この変化がどうオイル消費量に影響を及ぼすのかについてみていく。
【0088】
図8は、実施例1と同じエンジンを用いて、実施例5と同じ駆動条件でエンジンを駆動させて高速運転試験を行った際の、オイル戻し孔のオイルリング本体の外周面側の高さに対する内周面側の高さの各設定した比率毎のオイル消費量の変化を示している。図8において、オイル消費量比は、当該オイル戻し孔の外周面側の高さと内周面側の高さが同じ(非テーパー形状)オイルリングを用いたときのオイル消費量(g/h)を基準として、この数値を1とした場合の比率として示した。また、図8は、オイルリングに設けられるオイル戻し孔の開口高さの当該オイルリング本体の外周面側高さYに対する内周面側の高さXの比率X/Yの値が1.1、1.0、0.9、0.6、0.5の場合に得られるオイル消費量比の値のデータから近似曲線を作成して示したものである。図8に示すように、オイルリング本体の外周面側高さYに対する内周面側の高さXの比率X/Yの値が0.55〜0.99の範囲内にあるときに、オイル戻し孔が非テーパー形状(オイル消費量比=1)のものよりオイル消費量の削減効果が得られていることが分かる。
【0089】
以上の結果より、同一の内燃機関及び運転条件であれば、本件発明に係る技術的思想を採用したオイルリングを採用する方が、オイル消費量の削減に関して有効であることが裏付けられた。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本件発明に係る内燃機関用オイルリングは、あらゆる内燃機関に適用可能なものであり、このオイルリングを用いることで、オイル消費量を確実に削減することが出来る。従って、自動車用内燃機関に用いるとオイル消費量の削減に繋がるため、オイル供給頻度の低減、オイルの効率的消費が可能になり、資源の有効利用、環境負荷を低減化するという観点から好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本件発明の一実施の形態を示す内燃機関用オイルリングの軸方向断面図である。
【図2】同実施の形態を示すオイルリング本体の斜視図である。
【図3】同実施の形態を示すオイルリング本体の要部拡大図である。
【図4】同実施の形態を示す内燃機関用オイルリングの要部斜視図である。
【図5】同実施の形態を示すオイルリング本体の軸方向断面図である。
【図6】高速運転試験(6000rpm×10hr)における、実施例と比較例のオイル消費量比を示すグラフである。
【図7】長時間耐久試験(4000rpm×500hr)における実施例と比較例のオイル消費量比を示すグラフである。
【図8】オイルリング本体に設けるオイル戻し孔のオイルリング本体の外周側の高さに対する内周側の高さの比率とオイル消費量比との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0092】
1 内燃機関用オイルリング
1S 隙間
2 オイルリング本体
2a 合口部
2b コイルエキスパンダ収容凹部
2c 外周溝
3 コイルエキスパンダ
10 ピストン
21 第1レール
22 第2レール
23 ウェブ
24 オイルドレイン穴
50 シリンダライナ
51 内周壁
231 オイル戻し孔
A オイルリング本体の外周溝の溝幅
B ウェブの径方向断面厚さ
C オイル戻し孔の開口幅
D オイル戻し孔の開口高さ
a1 オイルリング本体の径方向厚さ
h1 オイルリング本体の軸方向高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略I字型のオイルリング本体と当該オイルリング本体内周側に配置されるコイルエキスパンダとからなり、
当該オイルリング本体は、シリンダライナ内周壁と摺動する第1レールと、第2レールと、当該第1レール及び第2レールがシリンダライナの内周壁より掻き落としたオイルをピストン裏面へ流下させるための複数のオイル戻し孔を備えるウェブとで構成され、
更に、当該オイルリング本体は、その内周面に沿って、当該コイルエキスパンダを安定配置するためのコイルエキスパンダ収容凹部を備え、
当該コイルエキスパンダ収容凹部にコイルエキスパンダを配置した状態のオイルリング本体の軸方向断面において、オイルリング本体とコイルエキスパンダとの間に形成される隙間面積が、オイルリング本体の断面積の1%〜50%であることを特徴とする内燃機関用オイルリング。
【請求項2】
前記オイルリング本体の外周面には、掻き落としたオイルを一時的に滞留受容するための外周溝を備え、軸方向断面における当該外周溝の溝幅が0.3mm〜1.6mmである請求項1に記載の内燃機関用オイルリング。
【請求項3】
前記オイルリング本体を構成するウェブの径方向断面厚さは、0.3mm〜0.7mmである請求項1又は請求項2に記載の内燃機関用オイルリング。
【請求項4】
前記オイルリング本体を構成するウェブに設けるオイル戻し孔は、開口幅が1.0mm〜5.0mm、開口高さが0.3mm〜0.8mmである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の内燃機関用オイルリング。
【請求項5】
前記オイルリング本体を構成するウェブに設けるオイル戻し孔は、開口幅が1.0mm〜5.0mm、オイルリング本体の外周側の開口高さが0.3mm〜1.5mm、オイルリング本体の内周側の開口高さが0.17mm〜0.80mmである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の内燃機関用オイルリング。
【請求項6】
前記オイルリング本体を構成するウェブに設けるオイル戻し孔は、オイルリング本体の内周側の開口高さをXとし、オイルリング本体の外周側の開口高さをYとした場合、X/Y=0.55〜0.99である請求項5に記載の内燃機関用オイルリング。
【請求項7】
前記オイルリング本体の軸方向高さが1.0mm〜2.5mmである請求項1〜請求項6のいずれかに記載の内燃機関用オイルリング。
【請求項8】
前記オイルリング本体のシリンダボア径に対する張力比が0.1N/mm〜0.5N/mmである請求項1〜請求項7のいずれかに記載の内燃機関用オイルリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−291991(P2008−291991A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93437(P2008−93437)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(390022806)日本ピストンリング株式会社 (137)
【Fターム(参考)】