説明

内燃機関用制御装置

【課題】磁石発電機が出力する点火装置駆動用の出力から余剰電力を取り出して、点火装置以外の負荷とマイクロプロセッサとに電力を供給することができるようにする。
【解決手段】内燃機関の回転に伴って、第1の半波の電圧とこの第1の半波の電圧と極性が異なる第2の半波の電圧と第1の半波の電圧と同極性の第3の半波の電圧とを順次発生する発電コイル10aを有する磁石発電機が搭載された内燃機関に設けられて負荷3をマイクロプロセッサ4Aを用いて制御する内燃機関用制御装置4において、上記第1及び第3の半波の電圧で充電されるとともに、内燃機関が排気行程にあるときに発生する第2の半波の電圧でも充電される電源用蓄電素子C1を設けて、この電源用蓄電素子に蓄積されたエネルギで点火装置以外の負荷3及びマイクロプロセッサ4Aに与える電源電圧を発生する電源回路4Bを構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に付属する制御対象をマイクロプロセッサを用いて制御する内燃機関用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両、船舶、耕作機械、発動発電機等の機器に搭載された内燃機関には、内燃機関に付属する機器などの特定の制御対象をマイクロプロセッサを用いて制御する制御装置が設けられることが多い。この種の制御装置では、マイクロプロセッサを動作させるために電源を必要とする。また制御対象が電源を有していない場合には、該制御対象にも電源を供給する必要がある。更にセンサ類を動作させるために電力を必要とする場合もある。
【0003】
内燃機関に取り付けられている発電機が、フライホイールの内周に永久磁石により多数の磁極を構成したロータと、フライホイールの内側でロータの磁極に対向する磁極部を有する多極の電機子鉄心に複数の発電コイルを巻装した構成を有するステータとを備えた内磁石型の磁石発電機であって、内燃機関用点火装置に電力を供給する点火装置駆動用の発電コイルの他に、出力に余裕がある負荷駆動用の発電コイルを有している場合には、該磁石発電機の出力で、マイクロプロセッサや制御対象とする負荷に十分な電力を供給することができる。しかしながら、コストの低減や機関の小形軽量化を図るために、機関に取り付ける発電機として、点火装置駆動用の発電コイルのみが設けられる場合や、他の発電コイルが設けられていても、該他の発電コイルが大きな負荷を有していて、その出力に余裕がない場合には、マイクロプロセッサや制御対象とする負荷に十分な電力を供給することが困難になることがあった。
【0004】
特に、内燃機関に搭載される磁石発電機として、特許文献1に示されているように、内燃機関のクランク軸に取り付けられるフライホイールの外周に一つの永久磁石を取り付けて三極の磁極を構成したロータと、内燃機関用点火装置に点火エネルギを供給するための電圧を発生する発電コイルをロータの磁極に対向する磁極部を有する鉄心に巻装してなるステータとを備えた点火装置専用の磁石発電機(本明細書では、この種の磁石発電機を外磁石型磁石発電機と呼ぶ。)が用いられる場合には、マイクロプロセッサなどに電力を供給する電源の確保が問題になる。
【0005】
外磁石型磁石発電機は、一方の極性の第1の半波の電圧と該第1の半波の電圧に続いて発生する他方の極性の第2の半波の電圧と該第2の半波の電圧に続いて発生する一方の極性の第3の半波の電圧とを有する波形の交流電圧を、クランク軸の1回転当たり1回だけ発生する。外磁石型磁石発電機が発生する第1ないし第3の半波の電圧の内、最も波高値が高い電圧は、ロータの構造上、第2の半波の電圧であるため、この第2の半波の電圧が、内燃機関用点火装置を駆動するために用いられる。
【0006】
外磁石型磁石発電機の発電コイルは、内燃機関用点火装置を構成する点火コイルの一次コイルとして設けられる場合と、点火コイルとは別個の発電コイルとして設けられる場合とがある。外磁石型磁石発電機の発電コイルが点火コイルの一次コイルとして設けられる場合には、点火コイルと共に点火回路を構成する構成要素と、点火回路を制御する点火制御装置の構成要素とを備えた点火ユニットがステータに設けられた点火コイルに一体化された状態で設けられることが多い。
【0007】
上記のように、内燃機関に取り付けられる発電機が外磁石型磁石発電機である場合には、点火装置駆動用の発電コイルしか設けられていないため、磁石発電機から点火装置以外の負荷に電力を供給することは行われていなかった。外磁石型磁石発電機が第2の半波の電圧(点火装置を駆動する電圧)の前後に出力する同極性の第1の半波の電圧と第3の半波の電圧とを点火装置以外の負荷を駆動するための電圧として利用することが考えられるが、ロータの構造上、第1の半波の電圧及び第3の半波の電圧の波高値を高くすることはできないため、これらの電圧だけでマイクロプロセッサと制御対象とする負荷とに十分な電力を供給することは困難である。また点火装置を動作させるために用いる第2の半波の電圧を、マイクロプロセッサや制御対象とする負荷に電力を供給するために利用することが考えられるが、このような構成をとった場合には、点火装置を駆動するためのエネルギが不足するため、点火性能が低下するのを避けられない。
【0008】
そのため、内燃機関の点火装置以外の特定の機器を制御対象として、マイクロプロセッサを用いて制御する必要がある場合には、特許文献2に示されているように、十分な容量を有するバッテリを別途電源として用意するか、または内燃機関に取り付ける発電機として、点火装置駆動用の発電コイルの他に、出力に余裕がある発電コイルを備えた大型で高価な内磁石型の磁石発電機を用いる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−11224号公報
【特許文献2】特開平11−82176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、内燃機関に搭載される磁石発電機が、点火装置駆動用の発電コイルのみを有している場合や、点火装置駆動用の発電コイルの他に発電コイルを有していても、その発電コイルの出力に余裕がない場合には、内燃機関に搭載された磁石発電機の出力だけで、マイクロプロセッサ及び点火装置以外の負荷に十分な電力を供給することが困難になることがあった。
【0011】
本発明の目的は、内燃機関に搭載される磁石発電機が、点火装置駆動用の発電コイルのみを有する場合や、点火装置駆動用の発電コイルの他に発電コイルを有していても、その発電コイルの出力に余裕がない場合に、点火装置の点火性能に何等影響を及ぼすことなく、制御対象を制御するマイクロプロセッサ及び点火装置以外の負荷に十分な電力を供給することを可能にする内燃機関用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、内燃機関の回転に伴って交流電圧を誘起する点火装置駆動用の発電コイルを有して、該発電コイルに誘起する半波の電圧が内燃機関を点火する点火装置に点火エネルギを与えるために用いられる磁石発電機を搭載した内燃機関に設けられて、特定の制御対象をマイクロプロセッサを用いて制御する内燃機関用制御装置に係わるものである。
【0013】
本発明に係わる内燃機関用制御装置は、電源用蓄電素子を有して、該電源用蓄電素子に蓄積したエネルギでマイクロプロセッサに与える電源電圧と点火装置以外の負荷に与える電源電圧とを発生する電源回路と、マイクロプロセッサから充電許可信号が与えられたときに点火装置に点火エネルギを与えるために用いられる前記発電コイルの半波の誘起電圧で電源用蓄電素子を充電する蓄電素子充電部と、内燃機関の行程を判別する行程判別部とを備えている。上記マイクロプロセッサは、行程判別部により内燃機関の行程が排気行程にあると判別されたときに充電許可信号を発生するようにプログラムされている。上記点火装置以外の負荷は、マイクロプロセッサの制御対象であってもよく、制御対象以外の負荷であってもよい。
【0014】
内燃機関が排気行程にあるときに内燃機関用点火装置が発生する点火火花は、内燃機関の燃料を燃焼させるためには用いられない捨て火であるため、点火装置駆動用の発電コイルが誘起する各半波の電圧のうち、内燃機関が排気行程にあるときに点火装置に点火エネルギを与える半波の電圧を、特定の制御対象を制御するマイクロプロセッサ及び点火装置以外の負荷に電力を供給するための電圧として利用しても、内燃機関の点火性能には何等影響がない。点火装置に点火エネルギを与える半波の電圧は大きな波高値を有しているため、この電圧で電源用蓄電素子を充電すると、電源用蓄電素子に大きなエネルギを蓄積することができ、内燃機関用点火装置の点火性能に何等影響を及ぼすことなく、点火装置駆動用の発電コイルの出力で、マイクロプロセッサと点火装置以外の負荷とに電力を供給することができる。
【0015】
上記のように、本発明においては、点火動作に何等影響を及ぼすことなく、内燃機関に搭載された磁石発電機に設けられた点火装置駆動用の発電コイルの出力から多くの余剰エネルギを取り出し、この余剰エネルギを有効に利用して、制御対象を制御するマイクロプロセッサと点火装置以外の負荷とに電力を供給するので、点火装置駆動用の発電コイルの出力が無駄に消費されるのを防いで、電力の有効利用を図ることができる。
【0016】
本発明は、内燃機関に搭載される磁石発電機が、内燃機関の回転に伴って一方の極性の第1の半波の電圧と該第1の半波の電圧に続いて発生する他方の極性の第2の半波の電圧と該第2の半波の電圧に続いて発生する前記一方の極性の第3の半波の電圧とを有する波形の交流電圧を誘起する発電コイルを有して、この発電コイルに誘起する第2の半波の電圧が内燃機関を点火する点火装置に点火エネルギを与えるために用いられる場合に特に有用である。
【0017】
上記のような磁石発電機が内燃機関に搭載される場合、本発明に係わる内燃機関用制御装置は、電源用蓄電素子を有してこの電源用蓄電素子に蓄積したエネルギで上記マイクロプロセッサに与える電源電圧と上記点火装置以外の負荷に与える電源電圧とを発生する電源回路と、磁石発電機の発電コイルに誘起する第1の半波の電圧及び第3の半波の電圧で電源用蓄電素子を充電する第1の充電回路と、マイクロプロセッサから充電許可信号が与えられたときに発電コイルに誘起する第2の半波の電圧で電源用蓄電素子を充電する第2の充電回路とを有する蓄電素子充電部と、内燃機関の行程を判別する行程判別部とを備えた構成とする。この場合もマイクロプロセッサは、行程判別部により内燃機関の行程が排気行程にあると判別されたときに充電許可信号を発生するようにプログラムされる。
【0018】
上記のような磁石発電機が用いられる場合、発電コイルに誘起する第2の半波の電圧は大きな波高値を有しているため、この第2の半波の電圧で電源用蓄電素子を充電すると、電源用蓄電素子に大きなエネルギを蓄積することができる。また上記のように構成すると、磁石発電機の発電コイルに誘起する第1の半波の電圧と第2の半波の電圧によっても電源用蓄電素子が充電されるため、該電源用蓄電素子に十分に大きな電気エネルギを蓄積することができ、内燃機関用点火装置の点火性能に何等影響を及ぼすことなく、特定の制御対象を制御するマイクロプロセッサと点火装置以外の負荷とに電力を供給することができる。
【0019】
本発明の好ましい態様では、制御対象としての負荷への駆動電流の供給を制御する負荷駆動用スイッチ回路と、電源用蓄電素子の両端の電圧がマイクロプロセッサを動作状態に維持するために必要な電圧の下限値以上に設定された設定値まで低下したときに制御対象への駆動電流の供給を禁止するようにスイッチ回路を制御するスイッチ回路制御部とが更に設けられる。
【0020】
本発明の他の好ましい態様では、負荷への駆動電流の供給を制御する負荷駆動用スイッチ回路と、行程判別部により内燃機関の行程が排気行程にあると判別されている状態で第1の半波の電圧が発生したことが検出された後に負荷への駆動電流の供給を許可し、電源用蓄電素子の両端の電圧がマイクロプロセッサを動作状態に維持するために必要な電圧の下限値以上に設定された設定値まで低下したときに負荷への駆動電流の供給を禁止するようにスイッチ回路を制御するスイッチ回路制御手段とが更に設けられる。
【0021】
上記のように構成しておくと、電源用蓄電素子に蓄積されているエネルギが不足する状態で負荷が駆動されて、電源回路の電源電圧がマイクロプロセッサの動作を停止させる電圧値まで低下するのを防ぐことができるため、マイクロプロセッサが動作を停止して制御が失われた状態になるのを防ぐことができる。
【0022】
本発明の好ましい態様では、内燃機関の吸気管内圧力を検出する圧力センサが設けられ、行程判別部は、圧力センサの出力信号から内燃機関の行程が排気行程にあることを判別するように構成される。
【0023】
一般に圧力センサを動作させるためには、該圧力センサに電源電圧を与える必要がある。そのため、本発明の他の好ましい態様では、マイクロプロセッサから電源供給指令が与えられたときに圧力センサを動作させるために必要な電源電圧を前記電源回路から圧力センサに与えるセンサ電源供給回路と、第1の半波の電圧と第3の半波の電圧とをマイクロプロセッサが認識し得る波形の信号に変換してマイクロプロセッサに与える波形処理回路とが設けられる。この場合、マイクロプロセッサは、電源用蓄電素子の両端の電圧を監視し、波形処理回路から入力される信号から内燃機関の回転速度を検出して、電源用蓄電素子の両端の電圧が設定値を超え、かつ内燃機関の回転速度が設定値を超えているときに上記電源供給指令を発生するようにプログラムされる。
【0024】
上記のように構成すると、内燃機関の始動時に、マイクロプロセッサの電源が確立する前に圧力センサに電力が供給されてマイクロプロセッサの起動が遅れるのを防ぐことができる。
【0025】
上記電源用蓄電素子は、電解コンデンサのようなキャパシタであってもよく、小形のバッテリであってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明においては、内燃機関が排気行程にあるときに、点火装置駆動用の発電コイルが点火装置に点火エネルギを与えるために発生する半波の電圧で充電される電源用蓄電素子を設けて、この電源用蓄電素子に蓄積されたエネルギで、マイクロプロセッサに与える電源電圧と点火装置以外の負荷に与える電源電圧とを発生させるように電源回路を構成したので、点火動作に何等影響を及ぼすことなく、内燃機関に搭載される発電機に設けられている点火装置駆動用の発電コイルから余剰電力を有効に取り出して、マイクロプロセッサと、点火装置以外の負荷とに電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係わる制御装置の一実施形態の全体的な構成を示した構成図である。
【図2】本発明に係わる制御装置の更に具体的な構成例を示した回路図である。
【図3】図2に示された制御装置において、マイクロプロセッサにより構成される機能ブロックの構成例を示したブロック図である。
【図4】図2の実施形態において、外磁石型磁石発電機が点火エネルギを得るために発生する半波の電圧での電源用蓄電素子の充電を行わず、負荷の駆動も行わなかったとした場合の、制御装置の各部の動作を示すタイミングチャートで、(A)は内燃機関の行程の変化を示すタイミングチャート、(B)は発電機が各半波の波形を出力するタイミングを示すタイミングチャート、(C)は蓄電素子の両端の電圧の変化を示すタイミングチャート、(D)はマイクロプロセッサが出力する充電許可信号の発生及び消滅のタイミングを示すタイミングチャート、(E)はマイクロプロセッサに入力されるクランク角検出信号の発生及び消滅のタイミングを示すタイミングチャート、(F)は圧力センサの出力信号の変化を示すタイミングチャートである。
【図5】図2の実施形態において、外磁石型磁石発電機が点火エネルギを得るために発生する半波の電圧による電源用蓄電素子の充電を行うが、負荷は駆動しなかったとした場合の制御装置の各部の動作を示すタイミングチャートで、(A)は内燃機関の行程の変化を示すタイミングチャート、(B)は発電機が各半波の電圧を出力するタイミングを示すタイミングチャート、(C)は蓄電素子の両端の電圧の変化を示すタイミングチャート、(D)はマイクロプロセッサが出力する充電許可信号の発生及び消滅のタイミングを示すタイミングチャート、(E)はマイクロプロセッサに入力されるクランク角検出信号の発生及び消滅のタイミングを示すタイミングチャート、(F)は圧力センサの出力信号の変化を示すタイミングチャートである。
【図6】図2の実施形態において、外磁石型磁石発電機が点火エネルギを得るために発生する半波の電圧で電源用蓄電素子を充電し、負荷を適正なタイミングで駆動したときの制御装置の各部の動作を示すタイミングチャートで、(A)は内燃機関の行程の変化を示すタイミングチャート、(B)は発電機が各半波の電圧を発生するタイミングを示すタイミングチャート、(C)は負荷電流の変化を示すタイミングチャート、(D)は蓄電素子の両端の電圧の変化を示すタイミングチャート、(E)はマイクロプロセッサが出力する充電許可信号の発生及び消滅のタイミングを示すタイミングチャート、(F)はマイクロプロセッサに入力されるクランク角検出信号の変化を示すタイミングチャート、(G)は圧力センサの出力信号の変化を示すタイミングチャートである。
【図7】図2の実施形態において、負荷を駆動するタイミングが適正でなかったとした場合に起こり得る制御装置の各部の状態を示すタイミングチャートで、(A)は内燃機関の行程の変化を示すタイミングチャート、(B)は発電機が各半波の電圧を発生するタイミングを示すタイミングチャート、(C)は負荷電流の変化を示すタイミングチャート、(D)は蓄電素子の両端の電圧の変化を示すタイミングチャート、(E)はマイクロプロセッサが出力する充電許可信号の発生及び消滅のタイミングを示すタイミングチャート、(F)はマイクロプロセッサに入力されるクランク角検出信号の変化を示すタイミングチャート、(G)は圧力センサの出力信号の変化を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照すると、本発明の一実施形態の全体的な構成が概略的に示されている。図1において、1は内燃機関により駆動される外磁石型磁石発電機、2は内燃機関の気筒に取り付けられた点火プラグ、3は制御対象である負荷、4は本発明に係わる内燃機関用制御装置(以下単に制御装置という。)、5は内燃機関を停止させる際にオン状態にされるストップスイッチである。また20は内燃機関の吸気管内圧力を検出する圧力センサで、吸気管内圧力を示す圧力検出信号Siを出力する。磁石発電機1が出力する交流電圧V1及び圧力センサ20が出力する圧力検出信号Siが、制御装置4に入力されている。
【0029】
外磁石型磁石発電機1は、ロータ101とステータ102とからなっている。ロータ101は、内燃機関のクランク軸6に取り付けられたフライホイール103と、フライホイール103の外周に設けられた凹部103aの底部に固定されてフライホイールの径方向に着磁された円弧状の永久磁石103bとからなっている。ロータ101には、永久磁石103bの外周側の磁極(図示の例ではN極)と、凹部102aの両側に導出された2つの磁極(図示の例ではS極)とにより、3極の界磁が構成されている。
【0030】
ステータ102は、ロータの磁極に対向する磁極部を両端に有するほぼU字形の鉄心105と、鉄心105に一次コイル及び二次コイルを巻回することにより形成された点火コイル(図1には図示せず。)と、点火コイルとともに点火回路を構成する部品と、点火回路を制御する点火制御部とを備えていて、点火コイルと点火回路を構成する部品と、点火制御部を構成する部品とを絶縁樹脂からなるモールド部106によりモールドして一体化した構造を有している。点火コイルの二次コイルの非接地側の端子に一端が接続された高圧コード107がモールド部106から外部に導出され、内燃機関の点火時期に点火コイルの二次コイルに誘起する点火用の高電圧が、高圧コード107を通して、内燃機関の気筒に取り付けられた点火プラグ2に印加される。本実施形態では、外磁石型磁石発電機1のステータ102が内燃機関の1気筒分の点火装置を構成している。
【0031】
外磁石型磁石発電機1のステータに設けられた点火コイルの一次コイルは、該磁石発電機1の発電コイルを構成していて、内燃機関の回転に同期して交流電圧V1を誘起する。モールド部106内に設けられた点火回路は、一次コイルに誘起する交流電圧を点火用の電源電圧として点火コイルに一次電流を流し、内燃機関の点火時期にこの一次電流に急激な変化を生じさせることにより、点火コイルの二次コイルに点火用の高電圧を誘起させる。モールド部106内に設けられた点火制御部は、点火コイルの一次コイルに誘起する電圧から内燃機関のクランク角情報と回転速度情報とを得て点火動作を行わせる時期(点火コイルの一次電流を変化させる時期)を制御する。
【0032】
本実施形態では、外磁石型磁石発電機1の点火コイルの一次コイルから、制御装置4のマイクロプロセッサと負荷3とを駆動するために必要な電力を取り出す目的と、内燃機関の回転情報を制御装置4に与える目的とで、点火コイルの一次コイルの両端の電圧が制御装置4に与えられている。本実施形態では、外磁石型磁石発電機1のステータに設けられた点火コイルの一次コイル(発電コイル)の一端が鉄心105に接続されて接地され、該一次コイルの他端がモールド部106から導出されたリード線108を通して制御装置4に接続されている。
【0033】
制御装置4が制御対象とする負荷3は、内燃機関に付属する電気負荷のうち、点火装置以外の適宜の負荷である。制御装置4が制御対象とする負荷は任意であるが、本実施形態では、内燃機関に燃料を供給する電子式キャブレター(気化器)への空気の流入を制御するために該キャブレターに設けられた電磁バルブを駆動するソレノイドを、制御対象とする負荷3としている。
【0034】
ストップスイッチ5は、内燃機関を停止する際に一時的にオン状態にされるスイッチで、その一端は接地され、他端はステータ102のモールド部106内に設けられた点火コイルの一次コイルの非接地側の端子に接続されている。ストップスイッチ5をオン状態にして点火コイルの一次コイルを短絡することにより点火装置の動作を停止させて、内燃機関を停止させる。
【0035】
図2を参照すると、外磁石型磁石発電機1のステータ102に設けられた点火装置の構成例と、制御装置4の構成例とが示されている。図2において、10は外磁石型磁石発電機1のステータに設けられた点火コイルで、鉄心105に巻回された一次コイル10aと二次コイル10bとを有している。一次コイル10aの一端は鉄心105に接続されて接地され、一次コイル10aの他端は、コレクタが接地されたNPNトランジスタTR1のエミッタに、抵抗値が小さい抵抗器R1を通して接続されている。トランジスタTR1のエミッタ、ベース及びコレクタは点火制御部11に接続されている。この例では、点火コイル10とトランジスタTR1と抵抗器R1とにより点火回路が構成され、この点火回路と点火制御部11とにより、内燃機関用点火装置が構成されている。点火コイル10の二次コイル10bの一端は、鉄心105に接続されて接地され、二次コイル10bの他端は、高圧コード107を通して、点火の対象とする気筒に取り付けられた点火プラグ2の非接地側の端子に接続されている。
【0036】
点火コイルの一次コイル10aは、点火コイルの一次コイルであると同時に外磁石型磁石発電機1の発電コイルでもある。この発電コイルは、例えば図4(B)に模式的に示したように、内燃機関のクランク軸の回転に伴って、一方の極性(図示の例では正極性)の第1の半波の電圧V11と、この第1の半波の電圧に続いて発生する他方の極性(図示の例では負極性)の第2の半波の電圧V12と、第2の半波の電圧に続いて発生する一方の極性の第3の半波の電圧V13とを有する非対称な波形の交流電圧V1を出力する。ロータの磁極の構成上、第2の半波の電圧V12のピーク値は大きな値を示すが、第1の半波の電圧V11及び第3の半波の電圧V13のピーク値は低い値を示す。なお図3に示された各図において横軸のtは、経過時間を示している。後記する図5ないし図7においても同様である。
【0037】
点火制御部11は、一次コイル10aが第2の半波の電圧V12を誘起したときにトランジスタTR1をオン状態にして、一次コイル10aからトランジスタTR1のコレクタ及びエミッタと抵抗器R1とを通して一次電流を流し、内燃機関の点火時期が検出されたときに、トランジスタTR1をオフ状態にして一次電流を遮断する。この電流の遮断により点火コイルの一次コイル10aに高い電圧を誘起させ、この電圧を点火コイルの一次、二次間の昇圧比により昇圧して、二次コイル10bに点火用の高電圧を誘起させる。この高電圧は高圧コード107を通して点火プラグ2に印加されるため、点火プラグ2で火花放電が生じて内燃機関が点火される。
【0038】
制御装置4は、非接地側の電源入力端子401及び接地側電源入力端子402と、圧力センサ20のプラス側電源端子20a,出力端子20b及びアース端子20cがそれぞれ接続されるセンサ接続端子4a,4b及び4cと、負荷3が接続されるプラス側出力端子403及びマイナス側出力端子404とを有している。制御装置4の非接地側の電源入力端子401は、リード線108を通して一次コイル(発電コイル)10aの非接地側端子に接続され、接地側電源入力端子402は、ストップスイッチ5のアース側端子と共に接地されている。これにより、一次コイル10aに誘起する交流電圧V1が制御装置4に入力されている。
【0039】
制御装置4は、マイクロプロセッサ4Aと、電源用蓄電素子C1に蓄積されたエネルギでマイクロプロセッサ4A及び負荷3等に電力を供給する電源電圧を発生する電源回路4Bと、一次コイル10aの誘起電圧で電源回路4Bに設けられた電源用蓄電素子C1を充電する蓄電素子充電部4Cと、一次コイル10aに誘起する第1の半波の電圧V11と第3の半波の電圧V13とを、マイクロプロセッサが認識し得る波形の信号に変換して内燃機関のクランク角の情報を含むクランク角信号としてマイクロプロセッサ4Aに与える波形処理回路4Dと、負荷3に供給する駆動電流をオンオフする負荷駆動用スイッチ回路4Eと、負荷3に供給する駆動電流をオンオフ制御するように、負荷駆動用スイッチ回路4Eを構成するスイッチ素子に駆動信号(スイッチ素子をオン状態にするための信号)を与えるスイッチ駆動回路4Fと、内燃機関の吸気管内の圧力(吸気負圧)を検出する圧力センサ20に電源電圧を与えるセンサ電源供給回路4Gと、圧力センサ20の出力端子20bとマイクロプロセッサ4Aの入力ポートとの間に設けられたノイズ除去用のローパスフィルタ4Hとを備えている。
【0040】
マイクロプロセッサ4Aは、CPU、RAMやROM等の記憶装置及び入出力回路等の構成要素を集積回路によりまとめてチップ化した演算処理装置で、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、各種の機能を果たす機能ブロックを構成する。マイクロプロセッサ4Aには、電源回路4Bから一定の電圧Vc2が電源電圧として与えられるとともに、電源回路の電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1と、波形処理回路4Dの出力と、圧力センサ20の出力とが制御情報として入力されている。
【0041】
電源回路4Bは、一端が接地されて一次コイル10aの誘起電圧で蓄電素子充電部4Cを通して充電される電源用蓄電素子C1と、電源用蓄電素子C1の両端の電圧でレギュレータREGを通して一定電圧まで充電される出力コンデンサC2とを備えていて、電源用蓄電素子C1に蓄積したエネルギで、制御装置の各部と圧力センサ20と負荷3とに与える電源電圧を発生する。図示のレギュレータREGは、電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1を、マイクロプロセッサ4A等の電源電圧として適した一定(例えば5V)の電圧Vc2に変換するレギュレータで、出力コンデンサC2の両端の電圧Vc2を一定の設定値に保つように制御する。出力コンデンサC2の両端の電圧Vc2を設定値に保つ制御をレギュレータREGに行わせるためには、電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1が、電圧Vc2の設定値以上になっている必要がある。図示の例では、電源回路4Bの電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1がスイッチ駆動回路4Fと負荷3とに電源電圧として与えられている。また出力コンデンサC2の両端に得られる一定の電圧Vc2がマイクロプロセッサ4Aの電源端子に与えられると共に、センサ電源供給回路4Gを通して圧力センサ20の電源端子4aに与えられている。
【0042】
蓄電素子充電部4Cは、アノードが非接地側の電源入力端子401を通して一次コイル10aの非接地側の端子に接続されるとともに、カソードが電源用蓄電素子C1の非接地側の端子に接続された第1のダイオードD1と、アノードが接地側の電源入力端子402に接続されたサイリスタTh1と、一端がサイリスタTh1のカソードに接続されたコンデンサC3と、コンデンサC3の他端にアノードが接続され、カソードが非接地側の電源入力端子401に接続された第2のダイオードD2と、コンデンサC3の一端にアノードが接続され、カソードが電源用蓄電素子C1の非接地側端子に接続された第3のダイオードD3と、コンデンサC3の他端と電源用蓄電素子C1の接地側端子との間に接続された抵抗器R2と、マイクロプロセッサ4Aから充電許可信号Saが与えられたときにサイリスタTh1のゲートにトリガ信号を与えるトリガ回路TCとを備えた回路からなっている。
【0043】
この蓄電素子充電部4Cにおいては、電源入力端子401−ダイオードD1−蓄電素子C1−アース回路−電源入力端子402の回路により第1の充電回路が構成され、外磁石型磁石発電機1の発電コイル(一次コイル)10aに第1の半波の電圧V11が誘起したとき及び第3の半波の電圧V13が誘起したときに、上記第1の充電回路を通して電源用蓄電素子C1が図示の極性に充電される。
【0044】
蓄電素子充電部4Cにおいてはまた、マイクロプロセッサ4Aからトリガ回路TCに充電許可信号が与えられることにより、サイリスタTh1のゲートにトリガ信号が与えられてサイリスタTh1がオン状態になったときに、外磁石型磁石発電機1の発電コイル10aが出力する第2の半波の電圧V12でコンデンサC3が図示の極性に充電される。またコンデンサC3の両端の電圧が電源用蓄電素子C1の両端の電圧よりも高くなったときにコンデンサC3に蓄積された電荷がダイオードD3を通して電源用蓄電素子C1に移行し、これにより電源用蓄電素子C1が図示の極性に充電される。本実施形態では、電源入力端子402−サイリスタTh1−コンデンサC3−ダイオードD2−電源入力端子401の回路と、コンデンサC3−ダイオードD3−電源用蓄電素子C1−抵抗器R2−コンデンサC3の閉回路とにより、マイクロプロセッサ4Aから充電許可信号が与えられたときに発電コイル10aに誘起する第2の半波の電圧で電源用蓄電素子C1を充電する第2の充電回路が構成されている。
【0045】
波形処理回路4Dは、外磁石型磁石発電機1が出力する第1の半波の電圧V11と第3の半波の電圧V13とを波形整形してマイクロプロセッサが認識し得る波形の信号に変換する回路である。本実施形態では、波形処理回路4Dが、第1の半波の電圧V11及び第3の半波の電圧V13をそれぞれ図4(E)に示すような矩形波状の第1のクランク角信号Scr1及び第2のクランク角信号Scr2に変換する。
【0046】
第1のクランク角信号Scr1は、第1の半波の電圧V11がしきい値に達したときにHレベル(高レベル)からLレベル(低レベル)に立ち下がり、第1の半波の電圧V11がしきい値未満になったときにLレベルからHレベルに立ち上がる信号であり、第2のクランク角信号Scr2は、第3の半波の電圧V13がしきい値に達したときにHレベルからLレベルに立ち下がり、第1の半波の電圧V11がしきい値未満になったときにLレベルからHレベルに立ち上がる信号である。これら第1及び第2のクランク角信号を、内燃機関のクランク角が設定クランク角位置に一致したことを検出する信号として用いる。
【0047】
上記設定クランク角位置は、外磁石型磁石発電機1のステータが配置される位置により決まる。本実施形態では、図4(B)に示したように、点火装置が点火の対象とする気筒の点火位置(点火が行われるクランク角位置)の最大進角位置よりも位相が進んだクランク角位置で第1のクランク角信号Scr1が発生し、点火の対象とする気筒内のピストンが上死点に達したときのクランク角位置(上死点位置という。)TDCよりも僅かに位相が遅れたクランク角位置で第2のクランク角信号Scr2が発生するように、外磁石型磁石発電機1のステータの位置が設定されている。第1のクランク角信号Scr1が発生する位置(第1の半波の電圧V11がしきい値以上になる位置)は、内燃機関の点火位置の計測を開始する位置として用いられる。内燃機関用点火装置の点火制御部11は、第1の半波の電圧V11がしきい値以上になる位置で、内燃機関の回転速度等の制御条件に対して演算した点火位置の計測を開始して、その計測が完了したときに(図4Bに示されたタイミングt1
で)トランジスタTR1をオフ状態にして点火動作を行わせる。
【0048】
波形処理回路4Dは、例えば、第1の半波の電圧V11及び第3の半波の電圧V13によりベース電流が与えられて、第1の半波の電圧V11及び第3の半波の電圧V13がそれぞれしきい値レベル以上になっている期間オン状態になり、第1の半波の電圧V11及び第3の半波の電圧V13がしきい値未満になったときにオフ状態になるトランジスタを備えて、該トランジスタのコレクタエミッタ間にクランク角信号を得る回路により構成することができる。
【0049】
負荷駆動用スイッチ回路4Eは、負荷3に供給する駆動電流をオンオフするスイッチ回路である。図示の負荷駆動用スイッチ回路4Eは、電源回路4Bの電源用蓄電素子C1の非接地側の端子にソースが接続され、ドレインが負荷3の一端に接続されたPチャンネル型の上段のMOSFET41と、負荷3の他端にドレインが接続され、ソースがシャント抵抗器R3を通して接地されたNチャンネル型の下段のMOSFET42と、負荷3の一端と接地間にアノードを接地側に向けて接続されたフライホイールダイオードD4と、MOSFET42のドレインにカソードが接続されたツェナーダイオードZDと、ツェナーダイオードZDのアノードとMOSFET42のゲートとの間にアノードをツェナーダイオードZD側に向けて接続されたダイオードD5とを備えた回路からなっている。図示の負荷駆動用スイッチ回路において、上段のMOSFET41は、負荷3に供給する駆動電流を制御するために用いられる。また下段のMOSFET42は、負荷3を駆動するか、負荷3の駆動を停止するかを決めるスイッチとして用いられる。MOSFET42は、負荷3を駆動する期間オン状態に保たれ、負荷3の駆動を停止する期間オフ状態に保たれる。
【0050】
スイッチ駆動回路4Fは、負荷駆動用スイッチ回路4Eを構成するMOSFETに駆動信号を与える回路で、マイクロプロセッサ4Aから負荷駆動指令が与えられたときに、下段のMOSFET42をオン状態に保つように該MOSFET42のゲートに駆動信号を与えるとともに、抵抗器R3の両端の電圧から検出される負荷電流の平均値を設定値に保つべく、上段のMOSFET41をオンオフさせるための駆動信号を該MOSFET41のゲートに与える。
【0051】
センサ電源供給回路4Gは、圧力センサ20に電源電圧を与える回路で、マイクロプロセッサ4Aから電源供給指令が与えられたときに、電源回路4Bの出力コンデンサC2の両端の電圧Vc2を圧力センサ20の電源端子4a,4c間に供給する。センサ電源供給回路4Gは、マイクロプロセッサ4Aから電源供給指令が与えられている間オン状態になるスイッチ回路により構成することができる。
【0052】
図3は、本実施形態においてマイクロプロセッサ4Aが構成する機能ブロックを、ハードウェア回路により構成される部分とともに示したものである。マイクロプロセッサ4Aは、所定のプログラムを実行することにより、電圧監視部A1と、クランク角/回転速度検出部A2と、行程判別部A3と、充電許可信号発生部A4と、電源供給指令発生部A5と、スイッチ回路制御部A6とを構成する。以下各部について説明する。
【0053】
電圧監視部A1は、電源回路4Bの電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1を設定された電圧値と比較することにより、電圧Vc1が、マイクロプロセッサ4Aの動作を停止させることなく、圧力センサ20を駆動するために必要な電圧値以上であるか否かを判定すると共に、電圧Vc1がマイクロプロセッサを動作状態に維持するために必要な電圧の下限値以上に設定された設定値以上であるか否かを判定するように構成されている。電圧Vc1の下限値は、電源回路の出力電圧Vc2を、マイクロプロセッサの電源電圧として適した一定値に保つことができる電圧値よりも僅かに高く設定される。
【0054】
クランク角/回転速度検出部A2は、波形処理回路4Dを通して入力される信号から内燃機関のクランク角が特定のクランク角に一致したことを検出すると共に、第1の半波の電圧と第3の半波の電圧との間隔から内燃機関の回転速度を検出するように構成されている。クランク角/回転速度検出部A2は、例えば、波形処理回路4Dから第1のクランク角信号Scr1が入力されたときにフリーランタイマの計測値を読み取る過程と、第2のクランク角信号Scr2が入力されたときにフリーランタイマの計測値を読み取る過程と、第2のクランク角信号Scr2が入力されたときに読み取ったタイマの計測値と第1のクランク角信号Scr2が入力されたときに読み取ったタイマの計測値との差から機関の回転速度を演算する過程とを含む処理を第1のクランク角信号Scr1及び第2のクランク角信号Scr2が発生する毎にマイクロプロセッサに実行させることにより構成することができる。
【0055】
行程判別部A3は、圧力センサ20が検出した吸気管内圧力から内燃機関の行程が排気行程にあることを判別する。圧力センサ20は、例えば図4(F)に示すように、吸気管内圧力を示す圧力検出信号Siを出力する。圧力検出信号Siは、吸気管内圧力が低い場合ほど(吸気負圧の絶対値が高い場合ほど)小さい値を示し、吸気管内圧力が高い場合ほど大きい値を示す。内燃機関の吸気管内圧力は、吸気行程で最小値を示した後、徐々に上昇して排気行程の上死点TDCでほぼ大気圧に達し、その後吸気行程で最小値に向けて急速に下降していく。従って、圧力検出信号Siは、図4(F)に見られるように、吸気行程で最小値Siminを示した後徐々に上昇して排気行程の上死点TDCで最大値Simaxを示し、吸気行程で最小値Siminに向けて急速に下降していく。この圧力検出信号の変化のパターンを利用して内燃機関の行程が排気行程にあることを判別することができる。
【0056】
例えば、圧力検出信号Siをしきい値Sitと比較して、圧力検出信号Siのレベルがしきい値Sit以上になってから、最大値Simaxに達するまでの期間、内燃機関の行程が排気行程にあると判定することができる。または、圧力検出信号Siが最小値Siminを示した後に、外磁石型磁石発電機1が第1の半波の電圧V11及び第3の半波の電圧V13を発生したことを検出した後、再度第1の半波の電圧V11が発生したことを検出したとき(圧力検出信号Siが最小値Siminを示した後、外磁石型磁石発電機が正極性の電圧を3つ発生したことを検出したとき)に内燃機関の行程が排気行程にあると判定することができる。吸気負圧の変化パターンを利用して内燃機関の行程を判別する種々の方法は既に公知であるので、その詳細な説明は省略する。
【0057】
充電許可信号発生部A4は、行程判別部A3により内燃機関の行程が排気行程にあると判定されたときに充電許可信号Saを発生するように構成される。充電許可信号発生部A4は例えば、行程判別部A3により内燃機関の行程が排気行程にあると判定されているか否かを確認する過程と、この過程で内燃機関の行程が排気行程にあることが確認されたときにマイクロプロセッサの出力ポートから充電許可信号を出力させる過程と、内燃機関の排気行程が終了したこと(または排気行程から吸気行程に移行したこと)が確認されたときに充電許可信号を消滅させる過程とを含む処理をマイクロプロセッサに一定の時間間隔で実行させることにより実現することができる。充電許可信号発生部A4が発生する充電許可信号Saは、蓄電素子充電部4Cに与えられる。
【0058】
電源供給指令発生部A5は、電圧監視部A1が監視している電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1が設定値を超え、かつクランク角/回転速度検出部A2により検出された回転速度が設定値を超えているときに電源供給指令を発生するように構成される。電源供給指令発生部A5は、電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1が設定値を超えているか否かを判定する過程と、回転速度が設定値を超えているか否かを判定する過程と、電圧Vc1が設定値を超えていると判定され、かつ回転速度が設定値を超えていると判定されているときにマイクロプロセッサ4Aの出力ポートから電源供給指令信号を発生させる過程と、電圧Vc1が設定値以下になったと判定されるか、又は回転速度が設定値以下になったと判定されたときに電源供給指令を消滅させる過程とを含む処理を一定の時間間隔でマイクロプロセッサに実行させることにより実現することができる。
【0059】
上記のように、電源供給指令が与えられたときに圧力センサ20に電源電圧を与えるセンサ電源供給回路4Gを設けて、電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1を監視し、波形処理回路4Dから入力される信号から内燃機関の回転速度を検出して、電源用蓄電素子の両端の電圧Vc1が設定値を超え、かつ内燃機関の回転速度が設定値を超えているときにマイクロプロセッサ4Aからセンサ電源供給回路4Gに電源供給指令を与えるようにしておくと、内燃機関の始動時に、マイクロプロセッサの電源が確立する前に圧力センサ20に電力が供給されてマイクロプロセッサの起動が遅れるのを防ぐことができる。
【0060】
スイッチ回路制御部A6は、行程判別部A3により内燃機関の行程が排気行程にあると判別されている状態で第1の半波の電圧V11が発生したことが検出された後に負荷3への駆動電流の供給を許可し、電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1がマイクロプロセッサ4Aを動作状態に維持するために必要な電圧の下限値以上に設定された設定値まで低下したときに負荷3への駆動電流の供給を禁止するように、スイッチ駆動回路4Fから負荷駆動用スイッチ回路4Eへの駆動信号の供給を制御して、マイクロプロセッサ4Aを動作状態に維持することができる範囲で負荷3に電力を供給するように、スイッチ回路4Eを制御する。
【0061】
マイクロプロセッサ4Aは、更に、負荷3(本実施形態では、電子キャブレターの電磁バルブを駆動するソレノイド)を制御するための制御ブロックを構成するが、本発明において、制御装置4が制御する負荷3及びその制御内容は任意である。
【0062】
本実施形態の内燃機関用制御装置4においては、発電コイル10aに第1の半波の電圧V11及び第3の半波の電圧V13が誘起したときに蓄電素子充電部4Cを通して電源用蓄電素子C1が充電される。またマイクロプロセッサ4Aが内燃機関の排気行程で充電許可信号を発生している状態で発電コイル10aに第2の半波の電圧V12が誘起したときに、発電コイル10aに誘起する波高値が高い第2の半波の電圧V12により、蓄電素子充電部4Cを通して電源用蓄電素子C1が充電される。内燃機関が排気行程にあるときに内燃機関用点火装置が発生する点火火花は、内燃機関の燃料を燃焼させるためには用いられないため、内燃機関が排気行程にあるときに磁石発電機1の発電コイル10aに誘起する第2の半波の電圧V12で電源用蓄電素子C1を充電して、この蓄電素子に蓄積されたエネルギで、制御対象とする負荷3及びマイクロプロセッサ4Aに電力を供給するようにしても、内燃機関の点火性能には何等影響がない。
【0063】
このように、本実施形態においては、点火装置を駆動するための発電コイル10aから点火動作に何等影響を及ぼすことなく多くの余剰エネルギを取り出して、制御対象とする負荷3と、負荷3を制御するマイクロプロセッサとに電力を供給することができるので、内燃機関に搭載される発電機として点火装置駆動用の発電コイルのみを備えた磁石発電機が用いられる場合や、点火装置駆動用の発電コイルの他に更に発電コイルが設けられている場合でもその出力に余裕がない場合等に、他の電源を用いることなく、しかも点火動作に影響を及ぼすことなく、点火装置以外の負荷3及びマイクロプロセッサ4Aを支障なく動作させることができる。
【0064】
図4は、図2に示された制御装置において、発電コイル10aに誘起する第1の半波の電圧V11及び第3の半波の電圧V13では電源用蓄電素子C1を充電するが、第2の半波の電圧V12では電源用蓄電素子C1を充電しなかったとした場合(充電許可信号Saを発生させなかったとした場合)、及び負荷3の駆動も行わなかったとした場合の、制御装置4の各部の動作を示すタイミングチャートを示している。図4において、(A)は内燃機関の行程の変化を示すタイミングチャートであり、(B)ないし(F)はそれぞれ発電機1の出力電圧V1、電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1、マイクロプロセッサ4Aが出力する充電許可信号Sa、マイクロプロセッサに入力されるクランク角検出信号Scr及び圧力センサ20の出力信号Siを示すタイミングチャートである。
【0065】
図2に示された制御装置において、充電許可信号Saを発生させず、第2の半波の電圧V12で電源用蓄電素子C1を充電しなかった場合には、図4(B)に示すように外磁石型磁石発電機1の発電コイル10が、圧縮行程の後半で第1の半波の電圧V11を発生したとき、爆発行程の初期に第3の半波の電圧V13を発生したとき、排気行程の後半で第1の半波の電圧V11を発生したとき及び吸気行程の初期に第3の半波の電圧V13を発生したときにそれぞれ電源用蓄電素子C1が充電される。この場合、電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1は図4(C)に示すように変化する。このように、第2の半波の電圧V12で電源用蓄電素子C1を充電しなかった場合には、電源用蓄電素子C1が、低い値を有する第1の半波の電圧V11及び第3の半波の電圧V13のピーク値までしか充電されないため、電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1を十分に高くなることはできない。図4に示した例では、負荷3を駆動しないため、電圧Vc1が大きく低下することはなく、電源回路4Bからマイクロプロセッサ4Aへの電源電圧の供給は支障なく行われている。
【0066】
これに対し、図5(D)に示したように、排気行程の終期に充電許可信号Saを発生させて、発電機が第2の半波の電圧V12を発生したときに蓄電素子充電部4CのサイリスタTh1をオン状態にすることにより、発電コイル10aからサイリスタTh1を通してコンデンサC3を充電した後、このコンデンサC3の電荷を電源用蓄電素子C1に移行させて、電源用蓄電素子C1を第2の半波の電圧V12でも充電するようにした場合には、図5(C)に示すように電源用蓄電素子C1が高い電圧まで充電される。磁石発電機1が第2の半波の電圧V12を発生したときに蓄電素子充電部4CのサイリスタTh1をオン状態にして発電コイル10aから蓄電素子充電部4Cに電流を吸収した場合には、トランジスタTR1を通して十分に大きい一次電流を流すことができないため、点火動作は行われず、排気行程で無駄な発火が行われることはない。
【0067】
図6は、第1の半波の電圧V11及び第3の半波の電圧V13で電源用蓄電素子C1を充電すると共に、排気行程の終期に充電許可信号Saを発生させて、発電機が排気行程で出力する第2の半波の電圧V12でも電源用蓄電素子C1の充電を行っている状態で、負荷3を駆動した場合の各部の電圧波形と負荷電流の波形とを示している。前述のように、本実施形態における負荷3は、電子式キャブレターへの空気の供給を制御する電磁バルブのソレノイドである。
【0068】
図6に示した例では、排気行程で第1の半波の電圧V11がしきい値以上になって第1のクランク角信号Scr1が発生するタイミングtaの直後のタイミング(第2の半波の電圧V12による電源用蓄電素子C1の充電が開始される直前のタイミング)tbを負荷駆動開始タイミングとして、この負荷駆動開始タイミングでマイクロプロセッサ4Aからスイッチ駆動回路4Fに負荷駆動指令を与えている。そのため、タイミングtbで負荷駆動用スイッチ回路4EのMOSFETがオン状態にされ、これにより電源回路4Bの蓄電素子C1の両端の電圧Vc1がスイッチ回路4Eを通して負荷3に印加されて、図6(C)に示すように負荷電流ILが流れている。図示の例では、電子式キャブレターの電磁バルブを開く際に、バルブを開く動作を完了させるために必要な開弁時間の間MOSFET41及び42の双方をオン状態に保持して負荷電流を始動時の最大電流IL1まで急速に上昇させた後、上段のMOSFET41をオンオフさせて負荷電流を最大値に保っている。またバルブを開く動作が完了した後に上段のMOSFET41をオンオフする基準を減少させて負荷電流ILを保持電流値IL2まで減少させ、バルブを開いた状態に保つ保持期間の間負荷電流を一定の保持電流IL2に保っている。図示の例では、圧縮行程の初期の段階で負荷3の駆動を終了させている。
【0069】
負荷3を駆動している際にマイクロプロセッサ4Aの電源が失われると、マイクロプロセッサの動作が停止して制御が失われるため、ソレノイドのような大きな負荷3を駆動する場合には、電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1が、マイクロプロセッサ4Aの電源電圧であるコンデンサC2の両端の電圧Vc2をマイクロプロセッサ4Aの電源電圧として適した電圧(例えば5V)に保つために必要な電圧の下限値Vminを下回ることがないように、負荷3の駆動を停止するタイミングを設定して、負荷3を駆動する期間を制限する。
【0070】
負荷3を駆動するために大きな電流を流すことが必要な場合には、上記のように、負荷3を駆動する期間を制限することにより、マイクロプロセッサ4Aの電源電圧が失われてマイクロプロセッサの動作が停止するのを防ぐことができる。
【0071】
本実施形態で制御の対象としている電子式キャブレターの電磁バルブは、吸気行程の間開かれた状態に保持されればよいため、上記のようにバルブを駆動するソレノイド(負荷3)を駆動する期間を制限しても支障を来さない。
【0072】
図6に示すように負荷3を駆動する期間を制限するには、行程判別部A3により内燃機関の行程が排気行程にあると判別されている状態で第1の半波の電圧V11が発生したことが検出された後に負荷3への駆動電流の供給を許可し、電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1がマイクロプロセッサを動作状態に維持するために必要な電圧の下限値Vmin以上に設定された設定値まで低下したときに負荷3への駆動電流の供給を禁止するように負荷駆動用スイッチ回路4Eを制御するスイッチ回路制御部を、マイクロプロセッサ4Aにより構成するようにしておけばよい。このスイッチ回路制御部は例えば、内燃機関の行程が排気行程であるか否かを判定する過程と、電源用蓄電素子C1の両端の電圧が設定値以上であるか否かを判定する過程と、内燃機関の行程が排気行程であると判定されている状態で第1のクランク角信号Scr1が入力されたときに負荷駆動指令を発生する過程と、電源用蓄電素子C1の両端の電圧が設定値未満であると判定されたときに負荷駆動指令を消滅させる過程とを含む処理を、マイクロプロセッサに一定の時間間隔で実行させることにより構成することができる。
【0073】
図7(A)ないし(G)は、駆動のために多くの電力を必要とする負荷3(この例ではソレノイド)を好ましくないタイミングで駆動した場合に生じ得る各部の電圧波形と負荷電流の波形とを示している。
【0074】
図7に示した例では、爆発行程で発生した第3の半波の電圧V13により電源用蓄電素子C1の充電が行われた後の時刻tb′を負荷駆動開始タイミングとして、負荷3の駆動を開始している。この場合は、排気行程で第2の半波の電圧V12が発生する時刻よりも前の時刻tcで、電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1が、コンデンサC2の両端の電圧Vc2をマイクロプロセッサ4Aの電源電圧として適した一定電圧(例えば5V)に保つために必要な最低電圧値Vminを下回ったため、マイクロプロセッサ4Aの電源が失われてマイクロプロセッサが動作を停止し、負荷3の駆動が停止している。この例では、時刻tc以後マイクロプロセッサが動作を停止したままであるため、その後の排気行程でサイリスタTh1に充電許可信号Saが与えられることがなく、発電コイル10aが第2の半波の電圧V12を発生しても蓄電素子C1の充電は行われない。そのため、排気行程の点火時期t1′で点火動作が行われている。また時刻tcでマイクロプロセッサの動作が停止したことにより圧力センサ20に電源電圧が供給されなくなったため、圧力センサ20の出力信号Siが消滅している。時刻tdで第1の半波の電圧V11が最低電圧値Vmin以上になると、蓄電素子C1の両端の電圧がマイクロプロセッサ(MPU)4Aを動作させるために必要な電圧値に達し、マイクロプロセッサ4Aが再起動するが、このとき回転速度の検出が行われておらず、センサ電源供給回路4Gを構成するスイッチ回路はオフ状態にあるため、圧力センサ20には電源電圧が与えられない。そのため、圧力センサ20は出力信号Siの出力を停止したままである。図2に示した実施形態において、前述のように、電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1が、コンデンサC2の両端の電圧Vc2をマイクロプロセッサ4Aの電源電圧として適した電圧に保つために必要な電圧の下限値Vminを下回ることがないように、負荷3を駆動する期間を制限するようにしておけば、上記のような問題が生じるのを回避することができる。
【0075】
負荷3を駆動するために大きな駆動電流を必要としない場合には、負荷3を駆動する期間を特に制限する必要はないが、負荷3を駆動する期間を制限する必要がない場合でも、マイクロプロセッサの動作が停止して制御が失われる事態が生じるのを防ぐためには、電源用蓄電素子C1の両端の電圧Vc1がマイクロプロセッサを動作状態に維持するために必要な電圧の下限値Vmin以上に設定された設定値まで低下したときに負荷3への駆動電流の供給を禁止するように負荷駆動用スイッチ回路4Eを制御するスイッチ回路制御部A6を設けておくのが好ましい。
【0076】
上記の実施形態では、電子式キャブレターの電磁バルブを制御する場合を例にとったが、本発明に係わる制御装置4が制御する負荷3は電子キャブレターに設けられるソレノイドに限られるものではなく、内燃機関のアイドリング速度を調整するために設けられるISCバルブを駆動するソレノイドなど、他の負荷を制御する場合にも本発明を適用することができる。また本発明は、電源回路4Bの出力で制御装置4が制御の対象とする負荷3を駆動する場合に限られるものではなく、電源回路4Bの出力を制御の対象とする負荷以外の負荷に供給する場合にも本発明を適用することができる。例えば、電源用蓄電素子C1の両端の電圧で、小形のバッテリ等の他の蓄電素子を充電するようにしてもよい。
【0077】
上記の実施形態では、内燃機関の吸気管内圧力を検出する圧力センサの出力から内燃機関の行程を判別するようにしたが、内燃機関の行程を判別する方法は吸気管内圧力による場合に限定されない。例えば、内燃機関のカム軸の回転角(カム角)を検出するカム角センサを設けて、カム角センサの出力から検出されるカム角から内燃機関の行程を判別するようにしてもよい。また内燃機関が圧縮行程にあるときの気筒内の圧力と、内燃機関が排気行程にあるときの気筒内の圧力とが相違することにより、圧縮行程と排気行程とで点火コイル10の一次コイルの両端の電圧波形が相違すること(気筒内の圧力が高い圧縮行程では、気筒内の圧力が低い排気行程よりも、点火プラグで放電が開始されるまでに要する時間が長くなること)を利用して、圧縮行程と、排気行程とを判別するようにしてもよい。
【0078】
上記の実施形態では、点火装置として電流遮断型の点火回路を備えたものを用いる場合を例にとったが、コンデンサ放電式の点火回路を用いる場合にも本発明を適用することができる。
【0079】
上記の実施形態では、磁石発電機のステータに点火コイルが巻回されて、該点火コイルの一次コイルが発電コイルを構成する場合を例にとったが、磁石発電機のステータには発電コイルのみを設けて、点火コイル及び該点火コイルと共に点火回路を構成する部分を磁石発電機の外部に設ける場合にも本発明を適用することができる。
【0080】
上記の実施形態では、点火回路及び点火回路を制御する点火制御部を内燃機関に取り付けられる磁石発電機のステータに設けているが、本発明に係わる制御装置4内に点火コイルと共に点火回路を構成する部品と、点火時期を制御する点火制御部とを設けるようにすることもできる。本発明に係わる制御装置内に点火制御部を設ける場合、或いは、制御装置の外部に点火制御部が設けられる場合でも、その点火制御部を外部からコントロールすることが可能である場合には、排気行程で第2の半波の電圧V12が発生したときに発電機の出力の一部が点火回路で失われるのを防ぐために、発電コイルから点火回路に電流が流れるのを阻止する手段(上記の実施形態では、トランジスタTR1がオン状態になるのを阻止する手段)を設けておくのが好ましい。このよに構成しておくと、排気行程で発電コイルから得られるエネルギのすべてを制御装置内の電源回路4Bの電源用蓄電素子に蓄積することが可能になり、電源回路4Bの容量を増大させることができる。
【0081】
上記の実施形態では、発電コイル10aに誘起する第1の半波の電圧V11及び第3の半波の電圧V13を正極性とし、第2の半波の電圧V12を負極性としたが、第1の半波の電圧V11及び第3の半波の電圧V13を負極性とし、第2の半波の電圧V12を正極性としてもよい。
【0082】
上記の実施形態では、内燃機関に搭載する発電機として外磁石型の磁石発電機を用いる場合を例にとったが、内磁石型の発電コイルが用いる場合でも、点火装置駆動用の発電コイルから余剰電力を取り出して点火装置以外の他の負荷に電力を供給する電源回路を構成する必要がある場合に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 外磁石型磁石発電機
2 点火プラグ
3 負荷
4 内燃機関用制御装置
4A マイクロプロセッサ
4B 電源回路
4C 蓄電素子充電部
4D 波形処理回路
4E 負荷駆動用スイッチ回路
4F スイッチ駆動回路
5 ストップスイッチ
6 クランク軸
A1 電圧監視部
A2 クランク角/回転速度検出部
A3 行程判別部
A4 充電許可信号発生部
A5 電源供給指令発生部
A6 スイッチ回路制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の回転に伴って交流電圧を誘起する点火装置駆動用の発電コイルを有して、前記発電コイルに誘起する半波の電圧が前記内燃機関を点火する点火装置に点火エネルギを与えるために用いられる磁石発電機を搭載した内燃機関に設けられて、特定の制御対象をマイクロプロセッサを用いて制御する内燃機関用制御装置であって、
電源用蓄電素子を有して、該電源用蓄電素子に蓄積したエネルギで前記マイクロプロセッサに与える電源電圧と前記点火装置以外の負荷に与える電源電圧とを発生する電源回路と、前記マイクロプロセッサから充電許可信号が与えられたときに前記点火装置に点火エネルギを与えるために用いられる前記発電コイルの半波の誘起電圧で前記電源用蓄電素子を充電する蓄電素子充電部と、前記内燃機関の行程を判別する行程判別部とを具備し、
前記マイクロプロセッサは、前記行程判別部により前記内燃機関の行程が排気行程にあると判別されたときに前記充電許可信号を発生するようにプログラムされている内燃機関用制御装置。
【請求項2】
内燃機関の回転に伴って一方の極性の第1の半波の電圧と該第1の半波の電圧に続いて発生する他方の極性の第2の半波の電圧と該第2の半波の電圧に続いて発生する前記一方の極性の第3の半波の電圧とを有する波形の交流電圧を誘起する発電コイルを有して、前記発電コイルに誘起する前記第2の半波の電圧が前記内燃機関を点火する点火装置に点火エネルギを与えるために用いられる磁石発電機を搭載した内燃機関に設けられて、特定の制御対象をマイクロプロセッサを用いて制御する内燃機関用制御装置であって、
電源用蓄電素子を有して、該電源用蓄電素子に蓄積したエネルギで前記マイクロプロセッサに与える電源電圧と前記点火装置以外の負荷に与える電源電圧とを発生する電源回路と、前記発電コイルに誘起する前記第1の半波の電圧及び第3の半波の電圧で前記電源用蓄電素子を充電する第1の充電回路と、前記マイクロプロセッサから充電許可信号が与えられたときに前記発電コイルに誘起する前記第2の半波の電圧で前記電源用蓄電素子を充電する第2の充電回路とを有する蓄電素子充電部と、前記内燃機関の行程を判別する行程判別部とを具備し、
前記マイクロプロセッサは、前記行程判別部により前記内燃機関の行程が排気行程にあると判別されたときに前記充電許可信号を発生するようにプログラムされている内燃機関用制御装置。
【請求項3】
前記負荷への駆動電流の供給を制御する負荷駆動用スイッチ回路と、前記電源用蓄電素子の両端の電圧が前記マイクロプロセッサを動作状態に維持するために必要な電圧の下限値以上に設定された設定値まで低下したときに前記負荷への駆動電流の供給を禁止するように前記負荷駆動用スイッチ回路を制御するスイッチ回路制御部とが更に設けられている請求項2に記載の内燃機関用制御装置。
【請求項4】
前記負荷への駆動電流の供給を制御する負荷駆動用スイッチ回路と、前記行程判別部により前記内燃機関の行程が排気行程にあると判別されている状態で前記第1の半波の電圧が発生したことが検出された後に前記負荷への駆動電流の供給を許可し、前記電源用蓄電素子の両端の電圧が前記マイクロプロセッサを動作状態に維持するために必要な電圧の下限値以上に設定された設定値まで低下したときに前記負荷への駆動電流の供給を禁止するように前記負荷駆動用スイッチ回路を制御するスイッチ回路制御部とが更に設けられている請求項2に記載の内燃機関用制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関の吸気管内圧力を検出する圧力センサが設けられ、
前記行程判別部は、前記圧力センサの出力信号から前記内燃機関の行程が排気行程にあることを判別するように構成されている請求項2,3又は4に記載の内燃機関用制御装置。
【請求項6】
前記マイクロプロセッサから電源供給指令が与えられたときに前記圧力センサを動作させるために必要な電源電圧を前記電源回路から前記圧力センサに与えるセンサ電源供給回路と、前記第1の半波の電圧と第3の半波の電圧とを前記マイクロプロセッサが認識し得る波形の信号に変換して前記マイクロプロセッサに与える波形処理回路とが設けられ、
前記マイクロプロセッサは、前記電源用蓄電素子の両端の電圧を監視し、前記波形処理回路から入力される信号から前記内燃機関の回転速度を検出して、前記電源用蓄電素子の両端の電圧が設定値を超え、かつ前記回転速度が設定値を超えているときに前記電源供給指令を発生するようにプログラムされている請求項5に記載の内燃機関用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−60913(P2013−60913A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200543(P2011−200543)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】