説明

内燃機関用気体流量制御弁

【課題】デポジットに起因してスロットル弁の作動が阻害される虞れが低い気体流量制御弁を提供する。
【解決手段】内燃機関の燃焼室へ気体を導く気体通路12Aを郭定するハウジングとしての吸気管12と、気体通路に配置され枢軸16により一体的に枢支されたバタフライ弁体20と、枢軸を回転させることによりバタフライ弁体を枢動させるアクチュエータとを有し、気体通路を通過する気体の流量を制御する内燃機関用気体流量制御弁に於いて、枢軸16は吸気管12に設けられた長孔22を貫通して延在することにより、枢軸16及び吸気管12は気体通路の延在方向に相対変位可能であり、気体通路の延在方向に枢軸16及び吸気管12の相対位置を変更するためのヨーク部材、往復動アクチュエータ等を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に係り、更に詳細には吸気弁装置の如き内燃機関用気体流量制御弁に係る。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の内燃機関に於いては、吸気管内に流れ燃焼室へ供給される吸気が有機物を含み、有機物がスロットル弁の位置に於いて吸気管の内面にデポジットとして付着し堆積することがある。デポジットの量が多くなるとスロットル弁の作動が阻害される。そのため吸気管の内面にデポジットが付着しても、スロットル弁の作動が阻害されないようにする装置が既に提案されている。
【0003】
例えば下記の特許文献1には、スロットル弁のバタフライ弁体をスロットル弁の閉弁位置を中心に往復枢動させ、これにより吸気管の内面に付着しているデポジットをバタフライ弁体によって掻き取って除去するよう構成された気体流量制御弁が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−314377号公報
【発明の概要】
【0005】
〔発明が解決しようとする課題〕
上記公開公報に記載されている如き従来の気体流量制御弁に於いては、バタフライ弁体は一定の枢軸線の周りにしか枢動できず、バタフライ弁体の外周縁の運動軌跡も一定である。そのため吸気管の内面に付着しているデポジットをバタフライ弁体によって掻き取ることができる範囲も一定であるため、デポジットを確実に除去することができず、デポジットに起因してスロットル弁の作動が阻害される虞れを効果的に排除することができない。
【0006】
本発明は、従来の内燃機関用気体流量制御弁に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、デポジットに起因してスロットル弁の作動が阻害される虞れが低い気体流量制御弁を提供することである。
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
【0007】
上述の主要な課題は、本発明によれば、内燃機関の燃焼室へ気体を導く気体通路を郭定するハウジングと、前記気体通路に配置され枢軸により一体的に枢支されたバタフライ弁体と、前記枢軸を回転させることにより前記バタフライ弁体を枢動させるアクチュエータとを有し、前記気体通路を通過する気体の流量を制御する内燃機関用気体流量制御弁に於いて、前記枢軸及び前記ハウジングは前記気体通路の延在方向に相対変位可能であり、前記気体通路の延在方向に前記枢軸及び前記ハウジングの相対位置を変更する相対位置変更手段を有することを特徴とする内燃機関用気体流量制御弁(請求項1の構成)によって達成される。
【0008】
上記請求項1の構成によれば、枢軸及びハウジングは気体通路の延在方向に相対変位可能であり、枢軸及びハウジングの相対位置を相対位置変更手段によって気体通路の延在方向に変更することができる。従って気体通路の表面にデポジットが付着し気体流量制御弁の作動が阻害される虞れがある場合には、枢軸及びハウジングの相対位置を気体通路の延在方向に変更し、バタフライ弁体の枢動位置を気体通路の延在方向に変更することができる。よって気体通路の表面に付着したデポジットの影響が低い位置に於いてバタフライ弁体を枢動させることができるので、気体流量制御弁を正常に作動させることができる。
【0009】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、前記枢軸は前記アクチュエータと共に前記ハウジングに対し相対変位可能であるよう構成される(請求項2の構成)。
【0010】
この構成によれば、枢軸はアクチュエータと共にハウジングに対し相対的に変位することができる。よって気体通路の表面にデポジットが付着し気体流量制御弁の作動が阻害される虞れがある場合には、デポジットの影響を受け難い位置へアクチュエータと共に枢軸をハウジングに対し相対的に変位させることができる。
【0011】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、前記ハウジングは前記気体通路の一部を郭定する可動部と、該可動部を前記気体通路の延在方向に相対変位可能に支持する静止主要部とを有し、前記枢軸及び前記バタフライ弁体は前記可動部に配置されており、前記可動部は前記静止主要部、前記枢軸及び前記バタフライ弁体に対し相対変位可能であるよう構成される(請求項3の構成)。
【0012】
この構成によれば、枢軸及びバタフライ弁体は可動部に配置されており、可動部は静止主要部、枢軸及びバタフライ弁体に対し相対変位可能である。よって可動部を静止主要部に対し相対的に変位させることにより、枢軸及びバタフライ弁体を変位させることなく枢軸及びバタフライ弁体を可動部に対し相対的に変位させることができる。
【0013】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、前記可動部が郭定する気体通路の断面積は前記気体通路の延在方向に沿って漸次変化しており、前記可動部は前記枢軸及び前記バタフライ弁体が気体通路の断面積の大きい側へ相対的に変位するよう前記静止主要部に対し相対的に変位されるよう構成される(請求項4の構成)。
【0014】
この構成によれば、可動部は枢軸及びバタフライ弁体が気体通路の断面積の大きい側へ相対的に変位するよう静止主要部に対し相対的に変位される。よって可動部が静止主要部に対し相対的に変位されると、枢軸及びバタフライ弁体がデポジットの影響を受け難い位置へ移動されると共に、バタフライ弁体と可動部との間の間隙が大きくなる。従って可動部が郭定する気体通路の断面積が一定である場合に比して、相対移動の距離が短くてもデポジットの影響を効果的に低減することができる。
【0015】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、前記枢軸の前記アクチュエータとは反対側の端部は軸受により回転可能に支持されており、前記軸受は前記枢軸及び前記アクチュエータと共に前記ハウジングに対し相対変位可能であるよう構成される(請求項5の構成)。
【0016】
この構成によれば、枢軸を両端にてハウジングに対し相対的に変位させることができるので、枢軸が一端のみにてハウジングに対し相対的に変位される場合に比して、枢軸をアクチュエータと共に良好にハウジングに対し相対的に変位させることができる。
〔課題解決手段の好ましい態様〕
【0017】
本発明の一つの好ましい態様によれば、ハウジングは気体通路の延在方向に延在する長孔を有し、枢軸は長孔を貫通して延在し、枢軸は長孔内にて気体通路の延在方向に移動されるよう構成される。
【0018】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、枢軸はアクチュエータと共に気体通路を流れる気体の下流側へハウジングに対し相対的に変位されるよう構成される。
【0019】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、長孔内に於ける枢軸の位置に関係なく長孔はスライドカバーによって覆われるよう構成される。
【0020】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、スライドカバーは枢軸と共に気体通路の延在方向に移動可能であるよう構成される。
【0021】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、ハウジングは気体通路の延在方向に延在する長孔を有し、可動部は長孔を貫通して延在する軸を有し、軸は長孔内にて気体通路の延在方向に移動されるよう構成される。
【0022】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、軸はアクチュエータと共に気体通路を流れる気体の下流側へハウジングに対し相対的に変位されるよう構成される。
【0023】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、長孔内に於ける軸の位置に関係なく長孔はスライドカバーによって覆われるよう構成される。
【0024】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、スライドカバーは軸と共に気体通路の延在方向に移動可能であるよう構成される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】内燃機関の吸気弁装置として構成された本発明による内燃機関用気体流量制御弁の第一の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示された本発明による内燃機関用気体流量制御弁の第一の実施形態を示す横断面図である。
【図3】図1に示された本発明による内燃機関用気体流量制御弁の第一の実施形態を示す平断面図である。
【図4】内燃機関の吸気弁装置として構成された本発明による内燃機関用気体流量制御弁の第二の実施形態を示す縦断面図である。
【図5】第二の実施形態の修正例として構成された本発明による内燃機関用気体流量制御弁の第三の実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。
[第一の実施形態]
【0027】
図1乃至図3はそれぞれ内燃機関の吸気弁装置として構成された本発明による内燃機関用気体流量制御弁の第一の実施形態を示す縦断面図、横断面図、平断面図である。
【0028】
これらの図に於いて、10は気体流量制御弁としてのスロットル弁を示し、12は内部に吸気通路12Aを郭定するハウジングとしての吸気管を示している。吸気通路12Aは図1で見て左方より右方向へ吸気ガスを導くことにより図には示されていない内燃機関の燃焼室へ吸気ガスを供給する。スロットル弁10は吸気管12内に配置されており、吸気管12の軸線14に垂直に延在する枢軸16と、枢軸16と一体をなし枢軸16と共に枢軸線18の周りに枢動するバタフライ弁体20とを有している。
【0029】
枢軸16は吸気管12に設けられ軸線14に沿って延在する長孔22及び24を貫通して延在し、長孔22及び24内を軸線14に沿って変位し得るようになっている。また枢軸16は吸気管12の外部に於いて軸受スリーブ26及び28により枢軸線18の周りに回転可能に支持されている。軸受スリーブ26及び28は横断面U形をなし吸気管12の下半分を覆うように延在するヨーク部材30により互いに一体的に接続されている。
【0030】
軸受スリーブ26及び28の内端にはそれぞれ吸気管12の外面に密に当接するスライドカバー32及び34が一体に形成されており、スライドカバー32及び34は長孔22及び24の長さよりも大きい軸線14に沿う方向の長さを有している。従って枢軸16が軸線14に沿って長孔22及び24内を移動しても長孔22及び24がそれぞれスライドカバー32及び34によって覆われ、吸気通路12Aと吸気管12の外部との連通が遮断された状態に維持される。尚枢軸16は通常時には吸気ガスの流れで見て長孔22及び24の最も上流側の端部の通常位置に位置決めされる。
【0031】
枢軸16は一端にてカップリング36により回転アクチュエータ38の回転軸40に接続されており、回転アクチュエータ38は予め設定された角度範囲に亘り回転軸40を回動させるようになっている。回転アクチュエータ38はヨーク部材30により支持されている。回転アクチュエータ38の回転軸40の回転角度、即ちバタフライ弁体20によるスロットル弁10の開度は、図には示されていない内燃機関用の電子制御装置により制御される。尚枢軸16又は回転軸40の回転角度は枢軸16の他端に設けられたエンコーダにより検出され、検出された回転角度を示す信号は電子制御装置へ出力されるようになっている。
【0032】
ヨーク部材30、回転アクチュエータ38等は図には示されていないケーシング内に配置され、ケーシングにより軸線14に沿って移動可能に支持されている。ケーシング内には往復動アクチュエータ42が配置されており、往復動アクチュエータ42は必要に応じてヨーク部材30を軸線14に沿って移動させ位置決めするようになっている。往復動アクチュエータ42も内燃機関用の電子制御装置により制御される。
【0033】
第一の実施形態に於いては、電子制御装置は内燃機関の始動時のアイドル運転中に予め設定された回転角度範囲に亘り枢軸16及び回転軸40を数回往復枢動させる指令を回転アクチュエータ38へ出力する。そしてその際にエンコーダにより検出される枢軸16又は回転軸40の回転角度が指令に応じて変化するか否かを判定する。枢軸16又は回転軸40の回転角度が指令に応じて変化するときには、たとえ吸気管12の内面にデポジットが付着していてもスロットル弁10の作動に支障はないので、電子制御装置は往復動アクチュエータ42を作動させない。
【0034】
これに対し枢軸16又は回転軸40の回転角度が指令に応じて変化しないときには、電子制御装置は吸気管12の内面にバタフライ弁体20の開閉運動を阻害するデポジット44が付着していると判定する。そして電子制御装置は往復動アクチュエータ42を作動させることにより、ヨーク部材30を軸線14に沿って予め設定された距離だけ吸気ガスの流れで見て下流側へ移動させ、異常時位置に位置決めする。
【0035】
従って第一の実施形態によれば、吸気管12の内面にデポジット44が付着し、バタフライ弁体20の枢動が阻害される状況になると、枢軸16及びバタフライ弁体20も図1に於いて実線にて示された通常位置より仮想線にて示された異常時位置へ移動される。よってバタフライ弁体20はデポジット44が付着していない位置又はデポジット44の付着量が少ない位置に於いて枢動することができるようになるので、デポジットが付着している状況に於いてもスロットル弁10を通常時と同様に作動させることができる。
【0036】
一般に、デポジット44の量はバタフライ弁体20の下流側に於けるよりも上流側に於いて多くなる。従ってデポジット44の付着に起因してバタフライ弁体20の枢動が阻害される状況に於いては、バタフライ弁体20を吸気ガスの流れで見て上流側へ移動させるよりも下流側へ移動させることが好ましい。
【0037】
第一の実施形態によれば、吸気管12の内面にデポジット44が付着していると判定されると、枢軸16及びバタフライ弁体20が吸気ガスの流れで見て下流側へ移動される。従って枢軸16及びバタフライ弁体20が上流側へ移動される場合に比してバタフライ弁体20をデポジット44の影響を受け難い位置へ移動することができ、これによりスロットル弁10を確実に正常に作動させることができる。
[第二の実施形態]
【0038】
図4は内燃機関の吸気弁装置として構成された本発明による内燃機関用気体流量制御弁の第二の実施形態を示す縦断面図である。尚図4に於いて、図1乃至図3に示された部材に対応する部材には図1乃至図3に於いて付された符号と同一の符号が付されている。このことは後述の第三の実施形態についても同様である。
【0039】
この第二の実施形態に於いては、吸気管12は内径が大きい領域12Bを有し、該領域は軸線14に沿って延在している。内径が大きい領域12Bには可動部としての円筒体50が配置されており、円筒体50は軸線14に沿って静止主要部としての吸気管12に対し相対的に変位可能に内径が大きい領域12Bに嵌合している。バタフライ弁体20は円筒体50内に配置されており、枢軸16は円筒体50に設けられ軸線14に沿って延在する長孔52及び内径が大きい領域12Bに設けられた孔54を貫通して延在している。図4には示されていないが、枢軸16の両端部は内径が大きい領域12Bの外面に固定された軸受スリーブにより枢軸線18の周りに回転可能に支持されている。また図4には示されていないが、枢軸16の一端は回転アクチュエータの回転軸に接続されており、回転アクチュエータは予め設定された角度範囲に亘り回転軸を回動させるようになっている。
【0040】
円筒体50の外面には軸線14及び枢軸16に垂直に延在する一対の軸56が固定されている。一対の軸56は内径が大きい領域12Bに設けられ軸線14に沿って延在する長孔58を貫通して延在し、長孔58内を軸線14に沿って変位し得るようになっている。図4には示されていないが、一対の軸56は吸気管12のうち回転アクチュエータの側とは反対側の横半分を覆うように延在するヨーク部材により互いに一体的に接続されている。
【0041】
ヨーク部材の先端には吸気管12の外面に密に当接するスライドカバー32が一体に形成されており、スライドカバー32は長孔58の長さよりも大きい軸線14に沿う方向の長さを有している。従って一対の軸56が軸線14に沿って長孔58内を移動しても長孔58がスライドカバー32によって覆われ、給気通路12Aと吸気管12の外部との連通が遮断された状態に維持される。尚一対の軸56は通常時には吸気ガスの流れで見て長孔58の最も上流側の端部の通常位置に位置決めされ、これにより円筒体50も内径が大きい領域12Bの上流側の端部に当接する通常位置に位置決めされる。
【0042】
第一の実施形態の場合と同様にヨーク部材、回転アクチュエータ等は図には示されていないケーシング内に配置されている。ヨーク部材はケーシングにより軸線14に沿って移動可能に支持されているが、回転アクチュエータは移動しない。ケーシング内には往復動アクチュエータが配置されており、往復動アクチュエータは必要に応じてヨーク部材を軸線14に沿って移動させ位置決めするようになっている。往復動アクチュエータは内燃機関用の電子制御装置により制御される。
【0043】
第二の実施形態に於いても、電子制御装置は内燃機関の始動時のアイドル運転中に予め設定された回転角度範囲に亘り枢軸16及び回転アクチュエータの回転軸を数回往復枢動させる指令を回転アクチュエータへ出力する。そしてその際にエンコーダにより検出される枢軸16又は回転軸の回転角度が指令に応じて変化するか否かを判定する。枢軸16又は回転軸の回転角度が指令に応じて変化するときには、たとえ円筒体50の内面にデポジットが付着していてもスロットル弁10の作動に支障はないので、電子制御装置は往復動アクチュエータを作動させない。
【0044】
これに対し枢軸16又は回転軸の回転角度が指令に応じて変化しないときには、電子制御装置は円筒体50の内面にバタフライ弁体20の開閉運動を阻害するデポジット44が付着していると判定する。そして電子制御装置は往復動アクチュエータを作動させることにより、ヨーク部材を軸線14に沿って予め設定された距離だけ吸気ガスの流れで見て下流側へ移動させ、異常時位置に位置決めする。
【0045】
従って第二の実施形態によれば、円筒体50の内面にデポジット44が付着し、バタフライ弁体20の枢動が阻害される状況になると、枢軸16及びバタフライ弁体20は移動することなく円筒体50が図4に於いて実線にて示された通常位置より仮想線にて示された異常時位置へ移動される。よってバタフライ弁体20はデポジット44が付着していない位置又はデポジット44の付着量が少ない位置に於いて枢動することができるようになるので、円筒体50の内面にデポジットが付着してもスロットル弁10を通常時と同様に作動させることができる。
[第三の実施形態]
【0046】
図5は第二の実施形態の修正例として構成された本発明による内燃機関用気体流量制御弁の第三の実施形態を示す縦断面図である。
【0047】
この第三の実施例に於いては、内径が大きい領域12Bの上流側及び下流側の吸気管12の内径は同一ではなく、内径が大きい領域12Bの上流側の吸気管12Cの内径は内径が大きい領域12Bの下流側の吸気管12Dの内径よりも大きい。円筒体50の内径も一定ではなく、円筒体50の上流側端部及び下流側端部はそれぞれ吸気管12C及び12Dの内径と同一の内径を有している。また上円筒体50の内径は上流側端部から下流側端部までテーパ状に変化している。この第三の実施形態の他の点は上述の第二の実施形態と同一である。
【0048】
この第三の実施形態によれば、上述の第二の実施形態の場合と同一の作用効果を得ることができるので、円筒体50の内面にデポジットが付着してもスロットル弁10を通常時と同様に作動させることができる。
【0049】
特に第三の実施形態によれば、円筒体50の内面にデポジット44が付着し、バタフライ弁体20の枢動が阻害される状況になると、枢軸16及びバタフライ弁体20は移動することなく円筒体50が図5に於いて実線にて示された通常位置より仮想線にて示された異常時位置へ移動される。よってバタフライ弁体20は円筒体50の内径が大きい側へ相対的に移動するので、第二の実施形態の場合よりも円筒体50の下流側への移動量が少なくてもスロットル弁10を通常時と同様に作動させることができるようにすることができる。
【0050】
一般に、吸気管12の内に円筒体50の如き円筒体が配置され、その上流側端部に段差が形成されているときには、段差にもデポジットが付着することがある。従ってデポジット44の付着に起因してバタフライ弁体20の枢動が阻害される状況に於いては、円筒体を吸気ガスの流れで見て上流側へ移動させるよりも下流側へ移動させることが好ましい。
【0051】
上述の第二及び第三の実施形態によれば、円筒体50は通常時には内径が大きい領域12Bの最も上流側に位置するよう位置決めされ、円筒体50はその内面にデポジット44が付着していると判定されると下流側へ移動される。従って円筒体50が通常時には内径が大きい領域12Bの最も下流側に位置決めされ、円筒体50の内面にデポジット44が付着していると判定されると上流側へ移動される場合に比して、円筒体50を確実に吸気管12に対し相対的に変位させることができる。
【0052】
また上述の第二及び第三の実施形態によれば、デポジット44に起因してバタフライ弁体20の枢動が阻害される状況に於いて、スロットル弁10が通常時と同様に作動することができるようにするために移動させる対象物は円筒体50及びヨーク部材30である。従って枢軸16、バタフライ弁体20、回転アクチュエータ38の移動が必要な第一の実施形態の場合に比して、往復動アクチュエータを小型で出力が小さいものにすることができる。
【0053】
以上に於いては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0054】
例えば上述の第一の実施形態に於いては、吸気管12の内面にデポジット44が付着し、バタフライ弁体20の枢動が阻害される状況になると、枢軸16及びバタフライ弁体20は吸気管12に対し吸気ガスの下流側へ相対的に移動される。しかし枢軸16及びバタフライ弁体20は吸気管12に対し吸気ガスの上流側へ相対的に移動されるよう修正されてもよい。
【0055】
また上述の第二及び第三の実施形態に於いては、円筒体50の内面にデポジット44が付着し、バタフライ弁体20の枢動が阻害される状況になると、円筒体50は吸気管12に対し吸気ガスの下流側へ相対的に移動される。しかし円筒体50は吸気管12に対し吸気ガスの上流側へ相対的に移動されるよう修正されてもよい。特に第三の実施形態に於いて円筒体50が吸気管12に対し吸気ガスの上流側へ相対的に移動される場合には、円筒体50の内面のテーパは図5とは逆の方向であることが好ましい。
【0056】
また上述の第三の実施形態に於いては、円筒体50の内面のテーパは円筒体の全長に亘り与えられているが、円筒体50の内面の少なくとも一部が一定の内径であってもよい。また内径が大きい領域12Bの上流側の吸気管12Cの内径は内径が大きい領域12Bの下流側の吸気管12Dの内径よりも大きい。しかし吸気管12C及び12Dの内径は同一であってもよい。
【0057】
また上述の各実施形態に於いては、気体流量制御弁は内燃機関の吸気弁装置として構成されている。しかし本発明の気体流量制御弁はEGR制御弁の如く吸気弁装置以外の制御弁として構成されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…スロットル弁、12…吸気管、16…枢軸、20…バタフライ弁体、30…ヨーク部材、38…回転アクチュエータ、42…往復動アクチュエータ、44…デポジット、50…円筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室へ気体を導く気体通路を郭定するハウジングと、前記気体通路に配置され枢軸により一体的に枢支されたバタフライ弁体と、前記枢軸を回転させることにより前記バタフライ弁体を枢動させるアクチュエータとを有し、前記気体通路を通過する気体の流量を制御する内燃機関用気体流量制御弁に於いて、前記枢軸及び前記ハウジングは前記気体通路の延在方向に相対変位可能であり、前記気体通路の延在方向に前記枢軸及び前記ハウジングの相対位置を変更する相対位置変更手段を有することを特徴とする内燃機関用気体流量制御弁。
【請求項2】
前記枢軸は前記アクチュエータと共に前記ハウジングに対し相対変位可能であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用気体流量制御弁。
【請求項3】
前記ハウジングは前記気体通路の一部を郭定する可動部と、該可動部を前記気体通路の延在方向に相対変位可能に支持する静止主要部とを有し、前記枢軸及び前記バタフライ弁体は前記可動部に配置されており、前記可動部は前記静止主要部、前記枢軸及び前記バタフライ弁体に対し相対変位可能であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用気体流量制御弁。
【請求項4】
前記可動部が郭定する気体通路の断面積は前記気体通路の延在方向に沿って漸次変化しており、前記可動部は前記枢軸及び前記バタフライ弁体が気体通路の断面積の大きい側へ相対的に変位するよう前記静止主要部に対し相対的に変位されることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関用気体流量制御弁。
【請求項5】
前記枢軸の前記アクチュエータとは反対側の端部は軸受により回転可能に支持されており、前記軸受は前記枢軸及び前記アクチュエータと共に前記ハウジングに対し相対変位可能であることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関用気体流量制御弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−96364(P2013−96364A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242298(P2011−242298)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】