説明

内燃機関用潤滑油組成物

【課題】低温流動性に優れ、かつ蒸発性が小さい上、酸化安定性の良好な内燃機関用潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】メタロセン触媒を用いて、炭素数2〜20のα−オレフィンをオリゴマー化して得られた炭素数16〜40のα−オレフィンオリゴマー、その水素添加物並びにメタロセン触媒を用いて得られたα−オレフィン二量体から誘導される炭素数16〜40のα−オレフィンオリゴマー及びその水素添加物の中から選ばれる少なくとも1種を含む基油を用いてなる内燃機関用潤滑油組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関用潤滑油組成物、さらに詳しくは、低温流動性に優れ、かつ蒸発性が小さい上、酸化安定性の良好な内燃機関用潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーを節約するために、自動車の燃費を向上することは、極めて重要な課題の一つである。このことは、地球温暖化対策として、CO2の削減を遂行する観点からも人類にとって重要である。
エンジン油(内燃機関用潤滑油)における省燃費対策としては、エンジン油による摩擦損失を低減するために、その粘度を低くすること(低粘度化)が有効であることは知られている。しかし、エンジン油の粘度を低くすると、エンジン油が有すべき耐摩耗性が低下すると共に、主に蒸発損失によるオイル消費が増大するという問題があるため、基油の低粘度化の実現が困難な状況にある。
【0003】
基油の低粘度化による耐摩耗性の低下に対しては、油性剤、極圧剤など耐荷重添加剤を配合する方法が想定でき、いわゆる摩擦調整剤として有機モリブデン化合物を配合するなどの提案が多くなされている(例えば、特許文献1、2参照)。
これに対し、蒸発損失によりオイル消費が増大することに対しては、低粘度で粘度指数が極めて高い合成油を使用する方法が知られている。しかし、これまでの合成油は高価であると共に、合成油を使用するのみでは必ずしも充分な性能が得られるものではない。また、鉱油系基油を使用する場合には、有効な解決策が見出されていない。そのため、広く利用できる低粘度基油を用いた省燃費型エンジン油が実現されない状況にある。
【0004】
また、エンジン油は、低温のエンジン始動時には低粘度であり、高温のエンジン稼動時には充分な粘度を有する必要がある。つまり低温と高温における粘度の変化が小さいことが要求される。その目的達成のためマルチグレードエンジン油が存在する。マルチグレードエンジン油のSAE(米国自動車技術協会)J300の粘度分類では、低温側の分類は、0W,5W,10W,15W,20W,25Wがあり、高温側の分類は20,30,40,50,60がある。特に低粘度基油を用いた省燃費型エンジン油としては5W以下、特に0Wグレードのエンジン油が対象であり、0W−20又はそれ以下の粘度グレードで、オイル消費を改善することが期待されている。
ところで、マルチグレードエンジン油には、温度による粘度変化を小さくするため、粘度指数向上剤が配合されるが、それがエンジン内で過酷なせん断を受け、マルチグレード油の役割を果たせなくなると同時に、オイル消費も増大することが多い。したがって、マルチグレードエンジン油では、せん断安定性、高温せん断安定性が良好であることも不可欠である。
また、エンジン油には、前記の要求特性と共に、長寿命化の点から、酸化安定性に優れることが要求される。
【0005】
【特許文献1】特開平6−313183号公報
【特許文献2】特開平5−163497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下で、低温流動性に優れ、かつ蒸発性が小さい上、酸化安定性の良好な内燃機関用潤滑油組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有する内燃機関用潤滑油組成物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、基油として、メタロセン触媒を用いて得られた特定の範囲の炭素数を有するα−オレフィンオリゴマー、その水素添加物、並びにメタロセン触媒を用いて得られたα−オレフィン二量体から誘導される特定の範囲の炭素数を有するα−オレフィンオリゴマー、その水素添加物の中から選ばれる少なくとも1種を含むものを用いることにより、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)(A)メタロセン触媒を用いて、炭素数2〜20のα−オレフィンをオリゴマー化して得られた炭素数16〜40のα−オレフィンオリゴマー、
(B)前記(A)α−オレフィンオリゴマーの水素添加物、
(C)メタロセン触媒を用いて、炭素数2〜20のα−オレフィンを二量化して得られたビニリデン結合を有するα−オレフィン二量体を、酸触媒を用いてさらに二量化してなる炭素数16〜40のα−オレフィンオリゴマー、
(D)前記(C)α−オレフィンオリゴマーの水素添加物、
(E)メタロセン触媒を用いて、炭素数2〜20のα−オレフィンを二量化して得られたビニリデン結合を有するα−オレフィン二量体に、酸触媒を用いて炭素数6〜8のα−オレフィンを付加してなる炭素数16〜40のα−オレフィンオリゴマー、及び
(F)前記(E)α−オレフィンオリゴマーの水素添加物、
の中から選ばれる少なくとも1種を含む基油を用いてなる内燃機関用潤滑油組成物、
(2)(A)成分のα−オレフィンオリゴマーが、一般式(I)
【0009】
【化1】

【0010】
[式中、p、q及びrは、それぞれ独立に0〜18の整数、nは0〜8の整数を示し、nが2以上の場合、qは繰り返し単位毎同一でも異なっていてもよく、p+n×(2+q)+rの値は12〜36である。]
で表される構造を有する上記(1)項に記載の内燃機関用潤滑油組成物、
(3)(B)成分のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物が、一般式(II)
【0011】
【化2】

【0012】
[式中、a、b及びcは、それぞれ独立に0〜18の整数、mは0〜8の整数を示し、mが2以上の場合、aは繰り返し単位毎同一でも異なっていてもよく、a+m×(2+b)+cの値は12〜36である。]
で表される構造を有する上記(1)又は(2)項に記載の内燃機関用潤滑油組成物、
(4)基油が、(A)〜(F)成分の中から選ばれる少なくとも1種を10〜100質量%含む上記(1)〜(3)項のいずれかに記載の内燃機関用潤滑油組成物、及び
(5)極圧剤、油性剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤及び消泡剤の中から選ばれる少なくとも1種を含む上記(1)〜(4)項のいずれかに記載の内燃機関用潤滑油組成物、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低温流動性に優れ、かつ蒸発性が小さい上、酸化安定性の良好な内燃機関用潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物においては、基油として、以下に示す(A)〜(F)のα−オレフィンオリゴマーやその水素添加物の中から選ばれる少なくとも1種を、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは20〜100質量%、さらに好ましくは25〜100質量%の割合で含むものが用いられる。基油中に、前記のα−オレフィンオリゴマーやその水素添加物が10質量%以上含まれていれば、低温流動性が良好であって、低蒸発性及び酸化安定性が向上した潤滑油組成物を得ることができる。
[(A)α−オレフィンオリゴマー]
当該基油に用いられる(A)成分のα−オレフィンオリゴマーは、メタロセン触媒を用いて、炭素数2〜20のα−オレフィンをオリゴマー化して得られた炭素数16〜40のα−オレフィンオリゴマーである。このα−オレフィンオリゴマーの炭素数が16〜40の範囲にあれば、低温流動性、低蒸発性、酸化安定性の良好な基油が得られ、それを用いた潤滑油組成物は、本発明の目的が達せられる。前記α−オレフィンオリゴマーの好ましい炭素数は20〜34の範囲である。
【0015】
前記原料の炭素数2〜20のα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−イコセンを挙げることができる。これらのα−オレフィンは直鎖状であっても、分岐を有するものであってもよい。また、本発明においては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、α−オレフィンのオリゴマー化に用いられるメタロセン触媒としては、従来公知の触媒、例えば(a)周期律表第4族元素を含有するメタロセン錯体と、(b)(b−1)前記(a)成分のメタロセン錯体又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成し得る化合物及び/又は(b−2)アルミノキサンと、所望により用いられる(c)有機アルミニウム化合物との組み合わせを挙げることができる。
【0016】
前記(a)成分の周期律表第4族元素を含有するメタロセン錯体としては、チタン、ジルコニウム又はハフニウム、好ましくはジルコニウムを含有する共役炭素5員環を有する錯体を用いることができる。ここで、共役炭素5員環を有する錯体としては、置換又は無置換のシクロペンタジエニル配位子を有する錯体を、一般的に挙げることができる。
前記(a)触媒成分のメタロセン錯体としては、従来公知の化合物、例えばビス(n−オクタデシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス[(t−ブチルジメチルシリル)シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、ビス(ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチリデンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、エチリデンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドおよびビス[3,3−(2−メチル−ベンズインデニル)]ジメチルシランジイルジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
これらのメタロセン錯体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
前記(b−1)化合物である、メタロセン錯体又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成し得る化合物としては、例えばジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートなどのボレート化合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(b−2)化合物であるアルミノキサンとしては、例えばメチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサンなどの鎖状アルミノキサンや環状アルミノキサンを挙げることができる。これらのアルミノキサンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、(b)触媒成分として前記(b−1)化合物を1種以上用いてもよいし、(b−2)化合物を1種以上用いてもよく、また、(b−1)化合物1種以上と(b−2)化合物1種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
(a)触媒成分と(b)触媒成分との使用割合は、(b)触媒成分として(b−1)化合物を用いた場合には、モル比で好ましくは10:1〜1:100、より好ましくは2:1〜1:10の範囲が望ましく、上記範囲を逸脱する場合は、単位質量ポリマーあたりの触媒コストが高くなり、実用的でない。また(b−2)化合物を用いた場合には、モル比で好ましくは1:1〜1:1000000、より好ましくは1:10〜1:10000の範囲が望ましい。この範囲を逸脱する場合は単位質量ポリマーあたりの触媒コストが高くなり、実用的でない。
また、所望により用いられる(c)触媒成分の有機アルミニウム化合物としては、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。
これらの有機アルミニウム化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0019】
前記(a)触媒成分と(c)触媒成分との使用割合は、モル比で好ましくは1:1〜1:10000、より好ましくは1:5〜1:2000、さらに好ましくは1:10ないし1:1000の範囲が望ましい。該(c)触媒成分を用いることにより、遷移金属当たりの重合活性を向上させることができるが、あまり多いと有機アルミニウム化合物が無駄になるとともに、重合体中に多量に残存し、好ましくない。
(a)触媒成分と(b)触媒成分を用いて触媒を調製する場合、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で接触操作を行うことが好ましい。
また、(a)触媒成分、(b)触媒成分および(c)有機アルミニウム化合物を用いて触媒を調製する場合、(b)触媒成分と(c)有機アルミニウム化合物を事前に接触させてもよいが、α−オレフィンの存在下、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を接触することによっても充分高活性な触媒が得られる。
上記触媒成分は、予め、触媒調製槽において調製したものを使用してもよいし、オリゴマー化工程において調製したものを反応に使用してもよい。
α−オレフィンのオリゴマー化は、バッチ式、連続式のいずれであってもよい。オリゴマー化において溶媒は必ずしも必要とせず、オリゴマー化は、懸濁液、液体モノマー或いは不活性溶媒中で実施できる。溶媒中でのオリゴマー化の場合には、液体有機炭化水素、例えばベンゼン、エチルベンゼン、トルエンなどが使用される。オリゴマー化は液体モノマーが過剰に存在する反応混合物中で実施することが好ましい。
オリゴマー化の条件は、温度が15〜100℃程度であり、圧力は大気圧〜0.2MPa程度である。また、α−オレフィンに対する触媒の使用割合は、α−オレフィン/(A)成分のメタロセン錯体モル比が、通常1000〜106、好ましくは2000〜105であり、反応時間は、通常10分〜48時間程度である。
【0020】
オリゴマー反応の後処理としては、まず、反応系に水やアルコール類を加える公知の失活処理を行い、オリゴマー化反応を停止したのち、アルカリ水溶液やアルコールアルカリ溶液を用いて触媒の脱灰処理を行う。次いで、中和洗浄、蒸留操作などを行い、未反応のα−オレフィン、オリゴマー化反応で副生したオレフィン異性体をストリッピングにより除去し、さらに所望の重合度を有するα−オレフィンオリゴマーを単離する。
このようにして、メタロセン触媒によって製造されたα−オレフィンオリゴマーは、二重結合を有するが、特に末端ビニリデン結合の含有量が高い。
このαオレフィンオリゴマーは、通常一般式(I)
【0021】
【化3】

【0022】
で表される、末端にビニリデン結合をもつ構造を有している。
前記一般式(I)において、p、q及びrは、それぞれ独立に0〜18の整数、nは0〜8の整数を示し、nが2以上の場合、qは繰り返し単位毎同一でも異なっていてもよく、p+n×(2+q)+rの値は12〜36である。
【0023】
[(B)α−オレフィンオリゴマーの水素添加物]
当該基油に用いられる(B)成分のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物は、前記(A)成分のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物であって、前記のようにして単離された所望の重合度を有するα−オレフィンオリゴマーを、公知の方法によって水素添加することにより製造してもよいし、あるいは前記のオリゴマー化反応後、脱灰処理、中和処理、洗浄処理を行ったのち、蒸留によるα−オレフィンオリゴマーの単離操作を行わずに、水素添加を行い、その後蒸留により所望の重合度のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物を単離することによって製造してもよい。
【0024】
α−オレフィンオリゴマーの水素添加反応は、公知の水添触媒、例えばNi、Co系触媒や、Pd、Ptなどの貴金属触媒、具体的には珪藻土坦持Ni触媒、コバルトトリスアセチルアセトナート/有機アルミニウム触媒、活性炭担持パラジウム触媒、アルミナ担持白金触媒などの触媒を用いて行われる。
水素添加反応の条件としては、Ni系触媒であれば、通常150〜200℃、Pd、Ptなどの貴金属触媒であれば、通常50〜150℃、コバルトトリスアセチルアセトナート/有機アルミニウムなどの均一系触媒であれば、通常20〜100℃の温度範囲とし、水素圧は、常圧〜20MPa程度である。
各触媒における反応温度が前記範囲にあれば、適度の反応速度を有すると共に、同一重合度を有するオリゴマーにおける異性体の生成を抑制することができる。
このα−オレフィンオリゴマーの水素添加物は、通常一般式(II)
【0025】
【化4】

【0026】
で表される構造を有している。
前記一般式(II)において、a、b、c及びmは、それぞれ前記一般式(I)におけるp、q、r及びnと同じである。
このα−オレフィンオリゴマーの水素添加物は、前記(A)成分の末端にビニリデン結合を有するα−オレフィンオリゴマーよりも、酸化安定性などの面から好適である。
【0027】
[(C)α−オレフィンオリゴマー]
当該基油に用いられる(C)成分のα−オレフィンオリゴマーは、メタロセン触媒を用いて、ある。前記α−オレフィンオリゴマーの好ましい炭素数は20〜34の範囲である。また、本発明においては、このα−オレフィン1種を単独で用いてもよく、2種以上を炭素数2〜20のα−オレフィンを二量化して得られたビリニデン結合を有するα−オレフィン二量体を、酸触媒を用いてさらに二量化してなる炭素数16〜40のα−オレフィンオリゴマーである。
前記原料の炭素数2〜20のα−オレフィンについては、前記(A)成分において説明したとおりで組み合わせて用いてもよい。
このα−オレフィンの二量化に用いられるメタロセン触媒、二量化反応条件、後処理などについては、前述の(A)成分のα−オレフィンオリゴマーにおいて、説明したとおりである。
【0028】
本発明においては、メタロセン触媒を用いて得られた前記α−オレフィン二量体(以下ビニリデンオレフィンと称することがある。)を、酸触媒を用いてさらに二量化する。この場合、同一のビニリデンオレフィン同士を反応させてもよいし、異なるビニリデンオレフィンを反応させてもよい。
この二量化反応における酸触媒としては、ルイス酸触媒や固体酸触媒などを用いることができるが、後処理操作の簡便さなどの点から、固体酸触媒が好適である。
前記固体酸触媒としては、酸性ゼオライト、酸性ゼオライトモレキュラシーブ、酸処理した粘土鉱物、酸処理した多孔質乾燥剤またはイオン交換樹脂等が挙げれる。すなわち、固体酸触媒は、HY等の酸性ゼオライト、約0.5〜2nmの孔径を有する酸性ゼオライトモレキュラシーブ、シリカアルミナ、シリカマグネシア、モンモリロナイトあるいはハロイサイトなどの粘土鉱物に硫酸などの酸により処理したもの、シリカゲルやアルミナゲルなどの多孔質乾燥剤に塩酸、硫酸、燐酸、有機酸、BF3などを付着させたもの、又は、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体のスルホン化物などをはじめとするイオン交換樹脂系の固体酸触媒などである。
【0029】
固体酸触媒の添加量は、ビニリデンオレフィンの仕込み量100質量部に対し、通常0.05〜20質量部である。固体酸触媒の添加量が、20質量部より多くなると、不経済であるだけでなく、副反応が進み、反応液の粘度が上昇したり、収率が低下する可能性がある。0.05質量部より少ない場合は、反応効率が低くなり、反応時間が長くなる。
より好ましい添加量は固体酸触媒の酸性度の影響を受けるのであるが、例えば、モンモリロナイト系の粘土鉱物の硫酸処理の場合は、ビニリデンオレフィンの仕込み量100質量部に対し、3〜15質量部であり、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体のスルホン化物系のイオン交換樹脂では1〜5質量部が好ましい。反応条件に応じ、これらの固体酸触媒の2種類以上を併用してもかまわない。
反応は、通常50〜150℃の温度で行うが、70〜120℃で行うと活性や選択率を向上させることができるので好ましい。反応圧力については、大気圧から1MPa程度の範囲で行うが、圧力の反応に与える影響は少ない。
【0030】
このビニリデンオレフィンの二量化反応によって、一般式(III)又は一般式(IV)
【0031】
【化5】

【0032】
[式中、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜18の直鎖状又は分岐を有するアルキル基を示し、R1〜R4の合計炭素数が8〜32である。]
で表される炭素数16〜40のビニリデンオレフィン二量体である、(C)成分のα−オレフィンオリゴマーが生成する。
二量化反応液には、前記のビニリデンオレフィン二量体以外に、未反応のビニリデンオレフィンや、ビニリデンオレフィン三量体などが含まれている。したがって、二量化反応液から、固体酸触媒をろ去したのち、必要に応じ蒸留処理して、前記一般式(III)又は(IV)で表されるビニリデンオレフィン二量体を単離してもよい。
【0033】
[(D)α−オレフィンオリゴマーの水素添加物]
当該基油に用いられる(D)成分のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物は、前記のようにして得られた固体酸触媒除去後のビニリデンオレフィン二量体を含む反応液、あるいは該反応液の蒸留処理により単離されたビニリデンオレフィン二量体を水素添加することにより、得ることができる。反応液を水素添加した場合には、必要に応じ、蒸留処理して、ビニリデンオレフィン二量体の水素添加物を単離してもよい。
この水素添加反応の触媒、反応条件などについては、前記(B)成分のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物において、説明したとおりである。
このようにして、一般式(V)
【0034】
【化6】

【0035】
[式中、R1〜R4は前記と同じである。]
で表される炭素数16〜40のビニリデンオレフィン二量体の水素添加物である、(D)成分のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物が得られる。
この(D)成分のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物は、前記(C)成分のα−オレフィンオリゴマーよりも酸化安定性などの面から好適である。
【0036】
[(E)α−オレフィンオリゴマー]
当該基油に用いられる(E)成分のα−オレフィンオリゴマーは、メタロセン触媒を用いて、炭素数2〜20のα−オレフィンを二量化して得られたビニリデン結合を有するα−オレフィン二量体を、酸触媒を用いてさらに二量化してなる炭素数16〜40のα−オレフィンオリゴマーである。
前記原料の炭素数2〜20のα−オレフィンについては、前記(A)成分において説明したとおりである。前記α−オレフィンオリゴマーの好ましい炭素数は20〜34の範囲である。また、本発明においては、このα−オレフィン1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このα−オレフィンの二量化に用いられるメタロセン触媒、二量化反応条件、後処理などについては、前述の(A)成分のα−オレフィンオリゴマーにおいて、説明したとおりである。
【0037】
本発明においては、メタロセン触媒を用いて得られた前記α−オレフィン二量体(ビニリデンオレフィン)に、酸触媒を用いて、炭素数6〜8のα−オレフィンを付加させる。
この反応に用いる酸触媒、その使用量、反応条件などについては、前述の(C)成分のα−オレフィンオリゴマーにおけるビニリデンオレフィンの二量化反応の場合と同様である。炭素数6〜8のα−オレフィンとしては、1−ヘキセン、1−ヘプテン及び1−オクテンが挙げられる。これらのα−オレフィンは直鎖状であっても分岐を有するものであってもよい。また、本発明においては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この反応によって、一般式(VI)
【0038】
【化7】

【0039】
[式中、R5は炭素数4〜6のアルキル基、R6及びR7は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を示し、R5〜R7の合計炭素数が10〜34である。]
で表される、(E)成分である炭素数16〜40のα−オレフィンオリゴマーが生成する。
前記一般式(VI)において、R5で示される炭素数4〜6のアルキル基は直鎖状であっても分岐を有するものであってもよく、R6、R7の内の炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖状であっても分岐を有するものであってもよい。
反応終了後、反応液から、固体酸触媒をろ去したのち、必要に応じ蒸留処理して、前記一般式(VI)で表されるα−オレフィンオリゴマーを単離してもよい。
【0040】
[(F)α−オレフィンオリゴマーの水素添加物]
当該基油に用いられる(F)成分のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物は、前記のようにして得られた固体酸触媒除去後の一般式(VI)のα−オレフィンオリゴマーを含む反応液、あるいは該反応液の蒸留処理により単離された前記α−オレフィンオリゴマーを水素添加することにより、得ることができる。反応液を水素添加した場合には、必要に応じ、蒸留処理して、α−オレフィンオリゴマーの水素添加物を単離してもよい。
この水素添加反応の触媒、反応条件などについては、前記(B)成分のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物において、説明したとおりである。
このようにして、一般式(VII)
【0041】
【化8】

【0042】
[式中、R5〜R7は前記と同じである。]
で表される、(F)成分である炭素数16〜40のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物が得られる。この(F)成分のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物は、前記(E)成分のα−オレフィンオリゴマーよりも酸化安定性などの面から、好適である。
【0043】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物に用いられる基油には、前述の(A)〜(F)成分のα−オレフィンオリゴマーやその水素添加物以外に、その他の基油を、90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下の割合で含むことができる。
その他の基油としては、エンジン油に通常使用される鉱油基油及び/又は合成油基油を用いることができる。
鉱油基油としては、例えば原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいは鉱油系ワックスやフィッシャ−トロプシュプロセス等により製造されるワックス(ガストゥリキッドワックス)を異性化することによって製造される基油等が挙げられる。
【0044】
これらの鉱油基油は、粘度指数が90以上であることが好ましく、100以上、さらには110以上であることがより好ましい。粘度指数が90以上であれば、組成物の低温粘度を低く、かつ高温粘度を高くするという本発明の目的達成を容易にする効果がある。
また、鉱油系基油の芳香族分(%CA)は3以下が好ましく、2以下、さらには1以下であることが好ましい、また、硫黄分は、100質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましい。%CAが3以下であり、硫黄分が100質量ppm以下であれば、組成物の酸化安定性を良好に保つことができる。
【0045】
一方、合成油基油としては、従来法(BF3触媒、チーグラ型触媒など)により得られたα−オレフィンオリゴマーやその水素添加物、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジェステル、トリメチロールプロパンカプリレート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート等のポリオールエステル、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等の芳香族系合成油、ポリアルキレングリコール又はこれらの混合物等が例示できる。
本発明では、その他基油として、鉱油基油、合成油基油又はこれらの中から選ばれる2種以上の任意混合物等が使用できる。例えば、1種以上の鉱油基油、1種以上の合成油基油、1種以上の鉱油基油と1種以上の合成油基油との混合油等を挙げることができる。
【0046】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、従来内燃機関用潤滑油に慣用されている各種添加剤、例えば極圧剤、油性剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤及び消泡剤などの中から選ばれる少なくとも1種を適宣含有させることができる。
前記極圧剤としては、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステルなどのリン酸エステル類、これらのリン酸エステル類のアミン塩及び硫黄系極圧剤などが好ましく挙げられる。
【0047】
リン酸エステルとしては、例えばトリアリールホスフェート、トリアルキルホスフェート、トリアルキルアリールホスフェート、トリアリールアルキルホスフ
ルキルホスフェート、トリアルケニルホスフェートなどがあり、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ベンジルジフェニルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、エチルジブチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、エチルフェニルジフェニルホスフェート、ジ(エチルフェニル)フェニルホスフェート、プロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジ(プロピルフェニル)フェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、トリプロピルフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジ(ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリブチルフェニルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリデシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリミリスチルホスフェート、トリパルミチルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリオレイルホスフェートなどを挙げることができる。
【0048】
酸性リン酸エステルとしては、例えば、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェートなどを挙げることができる。
亜リン酸エステルとしては、例えば、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリオレイルホスファイトなどを挙げることができる。
酸性亜リン酸エステルとしては、例えば、ジブチルハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、
ジステアリルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイトなどを挙げることができる。以上のリン酸エステル類の中で、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェートが好適である。
【0049】
これらのリン酸エステル類とアミン塩を形成するアミン類としては、モノ置換アミンの例として、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベンジルアミンなどを挙げることができ、ジ置換アミンの例として、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン、ジベンジルアミン、ステアリル・モノエタノールアミン、デシル・モノエタノールアミン、ヘキシル・モノプロパノールアミン、ベンジル・モノエタノールアミン、フェニル・モノエタノールアミン、トリル・モノプロパノールアミンなどを挙げることができ、トリ置換アミンの例として、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリステアリルアミン、トリオレイルアミン、トリベンジルアミン、ジオレイル・モノエタノールアミン、ジラウリル・モノプロパノールアミン、ジオクチル・モノエタノールアミン、ジヘキシル・モノプロパノールアミン、ジブチル・モノプロパノールアミン、オレイル・ジエタノールアミン、ステアリル・ジプロパノールアミン、ラウリル・ジエタノールアミン、オクチル・ジプロパノールアミン、ブチル・ジエタノールアミン、ベンジル・ジエタノールアミン、フェニル・ジエタノールアミン、トリル・ジプロパノールアミン、キシリル・ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミンなどを挙げることができる。
【0050】
硫黄系極圧剤としては、分子内に硫黄原子を有し、潤滑剤基油に溶解又は均一に分散して、極圧剤や優れた摩擦特性を発揮しうるものであればよい。このようなものとしては、例えば、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリサルファイド、チアジアゾール化合物、チオリン酸エステル(チオフォスファイト、チオフォスフェート)、アルキルチオカルバモイル化合物、チオカーバメート化合物、チオテルペン化合物、ジアルキルチオジプロピオネート化合物などを挙げることができる。ここで、硫化油脂は硫黄や硫黄含有化合物と油脂(ラード油、鯨油、植物油、魚油等)を反応させて得られるものであり、その硫黄含有量は特に制限はないが、一般に5〜30質量%のものが好適である。その具体例としては、硫化ラード、硫化なたね油、硫化ひまし油、硫化大豆油、硫化米ぬか油などを挙げることができる。硫化脂肪酸の例としては、硫化オレイン酸などを、硫化エステルの例としては、硫化オレイン酸メチルや硫化米ぬか脂肪酸オクチルなどを挙げることができる。
前記ジヒドロカルビルポリサルファイドとしては、例えば、ジベンジルポリサルファイド、各種ジノニルポリサルファイド、各種ジドデシルポリサルファイド、各種ジブチルポリサルファイド、各種ジオクチルポリサルファイド、ジフェニルポリサルファイド、ジシクロヘキシルポリサルファイドなどを好ましく挙げることができる。
【0051】
チアジアゾール化合物としては、例えば、2,5−ビス(n−ヘキシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(n−オクチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、3,5−ビス(n−ヘキシルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、3,6−ビス(n−オクチルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、3,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、3,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、4,5−ビス(n−オクチルジチオ)−1,2,3−チアジアゾール、4,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1,2,3−チアジアゾール、4,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルジチオ)−1,2,3−チアジアゾールなどを好ましく挙げることができる。
チオリン酸エステルとしては、アルキルトリチオフォスファイト、アリール又はアルキルアリールチオフォスフェート、ジアルキルジチオリン酸亜鉛などが挙げられる。特にラウリルトリチオフォスファイト、トリフェニルチオフォスフェート、ジラウリルジチオリン酸亜鉛が好ましい。
【0052】
アルキルチオカルバモイル化合物としては、例えば、ビス(ジメチルチオカルバモイル)モノスルフィド、ビス(ジブチルチオカルバモイル)モノスルフィド、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフィド、ビス(ジブチルチオカルバモイル)ジスルフィド、ビス(ジアミルチオカルバモイル)ジスルフィド、ビス(ジオクチルチオカルバモイル)ジスルフィドなどを好ましく挙げることができる。
さらに、チオカーバメート化合物としては、例えば、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛を、チオテルペン化合物としては、例えば、五硫化リンとピネンの反応物を、ジアルキルチオジプロピオネート化合物としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどを挙げることが
できる。これらの中で、極圧性、摩擦特性、熱的酸化安定性などの点から、チアジアゾール化合物、ベンジルサルファイドが好適である。
これらの極圧剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その配合量は、効果及び経済性のバランスなどの点から、潤滑油組成物全量基準で、通常0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%の範囲で選定される。
【0053】
油性剤の例としては、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシ脂肪酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアルコール、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族飽和および不飽和モノアミン、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸アミド等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の範囲で選定される。
【0054】
酸化防止剤の例としては、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン系、4,4’−ジブチルジフェニルアミン、4,4’−ジペンチルジフェニルアミン、4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4,4’−ジノニルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン系、テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン系、α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、ブチルフェニル−α−ナフチルアミン、ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘプチルフェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン系を挙げることができ、中でもジアルキルジフェニルアミン系ものが好ましい。
【0055】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールなどのモノフェノール系、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)などのジフェノール系を挙げることができる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えばフェノチアジン、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリルチオプロピオネート)、ビス(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル))プロピオネート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−メチルアミノ)フェノールなどが挙げられる。
これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.01〜10質量%、好ましくは0.03〜5質量%の範囲で選定される。
【0056】
防錆剤としては、例えば、ドデセニルコハク酸ハーフエステル、オクタデセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸アミドなどのアルキル又はアルケニルコハク酸誘導体、ソルビタンモノオレエート、グリセリンモノオレエート、ペンタエリスリトールモノオレエートなどの多価アルコール部分エステル、ロジンアミン、N−オレイルザルコシンなどのアミン類、ジアルキルホスファイトアミン塩等が使用可能である。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら防錆剤の好ましい配合量は、潤滑油組成物全量基準で0.01〜5質量%の範囲であり、0.05〜2質量%の範囲が特に好ましい。
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、没食子酸エステル系の化合物等が使用可能である。
これら金属不活性化剤の好ましい配合量は、潤滑油組成物全量基準で0.01〜0.4質量%であり、0.01〜0.2質量%の範囲が特に好ましい。
【0057】
清浄分散剤としては、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリチレート、アルカリ土類金属ホスホネート等の金属系洗浄剤、並びにアルケニルコハク酸イミド、ベンジルアミン、アルキルポリアミン、アルケニルコハク酸エステル等の無灰系分散剤が挙げられる。これらの洗浄分散剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その配合量は、潤滑油組成物全量基準で、通常の0.1〜30質量%程度であり、好ましくは0.5〜10質量%である。
【0058】
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−ジエン水素化共重合体など)などが、流動点降下剤としては、例えば、ポリメタクリレートなどが挙げられる。
前記粘度指数向上剤の配合量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.5〜30質量%、好ましくは1〜20質量%である。
消泡剤の例としては、液状シリコーンが適しており、メチルシリコーン、フルオロシリコーン、ポリアクリレートが使用可能である。
これら消泡剤の好ましい配合量は、潤滑油組成物全量基準で0.0005〜0.01質量%である。
【0059】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、低温流動性に優れ、かつ蒸発性が小さい上、良好な酸化安定性を有している。その40℃における動粘度は、通常10〜
200mm2/s程度、好ましくは15〜100mm2/sであり、100℃における動粘度は、通常3〜20mm2/s程度、好ましくは5〜15mm2/sである。また、粘度指数は、通常120以上、好ましくは140以上、より好ましくは150以上である。
【実施例】
【0060】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた潤滑油組成物の性状及び性能は、以下に示す方法に従って求めた。
(1)動粘度
JIS K2283に準拠し、40℃、100℃における動粘度を測定する。
(2)粘度指数
JIS K2283に準拠して測定する。
(3)酸価
JIS K2501に準拠して測定する。
(4)塩基価
JIS K2501(塩酸法)に準拠して測定する。
(5)CCS粘度
JIS K2010に準拠し、−35℃における粘度を測定する。
(6)NOACK蒸発試験
石油学会規格PI−5S−41−93に準拠し、250℃、1時間にて測定する。
(7)ISOT酸化安定度試験
JIS K2514に記載されている内燃機関用潤滑油酸化安定度試験に準拠し、175℃、72時間の条件で測定する。
【0061】
製造例1 炭素数30のα−オレフィンオリゴマー水素添加物の製造
(a)デセンのオリゴマー化
内容積5リットルの三つ口フラスコに、不活性ガス気流下、デセンモノマー(出光興産(株)製:リニアレン10)4リットル(21.4モル)を仕込み、更に、トルエンに溶解したビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド(錯体質量1168mg:4ミリモル)と同じくトルエンに溶解したメチルアルモキサン(Al換算:40ミリモル)を添加した。これらの混合物を40℃に保ち、20時間攪拌を行った後、メタノール20mlを添加してオリゴマー化反応を停止させた。次いで、反応混合物をオートクレーブから取出し、これに5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液4リットルを添加し、室温で強制攪拌を4時間した後、分液操作を行なった。上層の有機層を取出し、未反応のデセンおよび副反応生成物のデセン異性体をストリッピングして除去した。
(b)デセンオリゴマーの水素化
内容積5リットルのオートクレーブに、窒素気流下、(a)で製造したデセンオリゴマー3リットルを入れ、トルエンに溶解させたコバルトトリスアセチルアセトナート(触媒重量3.0g)とトルエンで希釈したトリイソブチルアルミニウム(30ミリモル)を添加した。添加後、水素で系内を2回置換してから、昇温し、反応温度80℃で、水素圧を0.9MPaに保持した。水素化は発熱を伴いながら直ちに進行し、反応開始後4時間の時点で降温し、反応を停止した。その後、脱圧し、内容物を取出してから、反応生成物を単蒸留し、留出温度240〜270℃、圧力530Paの留分(目的の化合物)を分離した。
【0062】
実施例1〜4及び比較例1
第1表に示す基油及び添加剤を用い、第1表に示す割合で混合して、内燃機関用潤滑油組成物を調製し、その性状及び性能を求めた。結果を第1表に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
[注]
1)従来法による1−デセンのオリゴマーであるα−オレフィンオリゴマー(BP Chemicals社製、商品名「DURASYN−166」)、40℃動粘度30mm2/s
2)従来法による1−デセンのオリゴマーであるα−オレフィンオリゴマー(BP Chemicals社製、商品名「DURASYN−164」)、40℃動粘度17mm2/s
3)製造例1で得られたメタロセン触媒による1−デセン三量体の水素添加物、40℃動粘度14mm2/s
4)アジピン酸ジトリデシル
5)重量平均分子量21万のエチレン−プロピレン共重合体
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、低温流動性に優れ、かつ蒸発性が小さい上、酸化安定性が良好で、省燃費型エンジンオイルであると共に、そのオイル消費量を低減できる。したがって、省資源、省燃費であって、地球温暖化対策に資する内燃機関用潤滑油組成物としても有効に利用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)メタロセン触媒を用いて、炭素数2〜20のα−オレフィンをオリゴマー化して得られた炭素数16〜40のα−オレフィンオリゴマー、
(B)前記(A)α−オレフィンオリゴマーの水素添加物、
(C)メタロセン触媒を用いて、炭素数2〜20のα−オレフィンを二量化して得られたビニリデン結合を有するα−オレフィン二量体を、酸触媒を用いてさらに二量化してなる炭素数16〜40のα−オレフィンオリゴマー、
(D)前記(C)α−オレフィンオリゴマーの水素添加物、
(E)メタロセン触媒を用いて、炭素数2〜20のα−オレフィンを二量化して得られたビニリデン結合を有するα−オレフィン二量体に、酸触媒を用いて炭素数6〜8のα−オレフィンを付加してなる炭素数16〜40のα−オレフィンオリゴマー、及び
(F)前記(E)α−オレフィンオリゴマーの水素添加物、
の中から選ばれる少なくとも1種を含む基油を用いてなる内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項2】
(A)成分のα−オレフィンオリゴマーが、一般式(I)
【化1】

[式中、p、q及びrは、それぞれ独立に0〜18の整数、nは0〜8の整数を示し、nが2以上の場合、qは繰り返し単位毎同一でも異なっていてもよく、p+n×(2+q)+rの値は12〜36である。]
で表される構造を有する請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項3】
(B)成分のα−オレフィンオリゴマーの水素添加物が、一般式(II)
【化2】

[式中、a、b及びcは、それぞれ独立に0〜18の整数、mは0〜8の整数を示し、mが2以上の場合、aは繰り返し単位毎同一でも異なっていてもよく、a+m×(2+b)+cの値は12〜36である。]
で表される構造を有する請求項1又は2に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項4】
基油が、(A)〜(F)成分の中から選ばれる少なくとも1種を10〜100質量%含む請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項5】
極圧剤、油性剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤及び消泡剤の中から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関用潤滑油組成物。

【公開番号】特開2007−137952(P2007−137952A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330828(P2005−330828)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】