説明

内燃機関用点火コイル及びその製造方法

【課題】斜向巻部の表面と一次スプールの内周面との間の隙間に充填された熱硬化性樹脂に亀裂が発生しにくくすることができる内燃機関用点火コイルを提供すること。
【解決手段】内燃機関用点火コイル1は、一次コイル2と、一次コイル2の内周側に同軸状に重ねて配置された二次コイル3と、二次コイル3及び一次コイル2を収容するケース5と、ケース5内の隙間を充填する熱硬化性樹脂7とを有している。一次コイル2は、樹脂製の一次スプール21の外周に巻回されている。二次コイル3は、樹脂製の二次スプール31の外周に巻回され、外周に略平行に巻回された一般巻部32と、一般巻部32から高電圧側に向かうに連れて縮径して巻回された斜向巻部33とを有している。一次スプール21の内周面210において斜向巻部33に対向する部位には、低電圧側に向けて拡径する高電圧側テーパ面211が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパークプラグからスパークを発生させるための内燃機関用点火コイル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関用点火コイルにおいては、ケース内に配置した一次コイル、二次コイル、コア等の構成部品の絶縁及び固着を行うために、ケース内に形成された隙間にエポキシ樹脂等の液状の熱硬化性樹脂を充填し、熱硬化させている。この際、隙間内の真空引きを行い、熱硬化性樹脂の中に気泡が残存しないように脱泡を行っている。
例えば、特許文献1の点火コイルの製造方法においては、中心コア、一次コイル及び二次コイルをケース内に配置して形成された隙間に、有機化クレイを含有する絶縁材料を注入することが開示されている。これにより、絶縁体における絶縁破壊を抑制している。
また、例えば、特許文献2の内燃機関用点火コイルにおいては、低電圧側に向かうほど拡径するテーパ形状のケース内に配置した一次ボビン、一次コイル、二次ボビン、二次コイル、鉄心等を、熱硬化性合成樹脂によって絶縁・固着することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−5521号公報
【特許文献2】特開平3−222404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一次コイルの内周側に二次コイルを配置し、二次コイルの高電圧側の部位に、高電圧側に向かうに連れて縮径するように電線を巻回した斜向巻部を形成した場合には、次の問題が生ずるおそれがある。
すなわち、この場合には、斜向巻部の表面と一次スプールの内周面との間には、低電圧側に向かうに連れて狭くなる隙間が形成される。そのため、ケース内の隙間に熱硬化性樹脂を充填する際に、気泡が十分に抜け切らず、気泡が硬化した熱硬化性樹脂内に残存してしまうおそれがある。熱硬化性樹脂内に気泡が残存すると、エンジンの加熱・冷却サイクルによって点火コイルが加熱・冷却される際に、点火コイルの各構成部品の線膨張係数の違いによって生じる熱応力の差により、気泡の部分において熱硬化性樹脂の亀裂(クラック)が発生しやすくなってしまう。また、気泡の部分において、二次コイルにて作り出す高電圧電流の漏れ(リーク)が発生しやすくなってしまう。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、斜向巻部の表面と一次スプールの内周面との間の隙間に充填された熱硬化性樹脂に亀裂が発生しにくくすることができる内燃機関用点火コイルを提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、一次コイルと、該一次コイルの内周側に同軸状に重ねて配置された二次コイルと、該二次コイル及び上記一次コイルを収容するケースと、該ケース内の隙間を充填する熱硬化性樹脂とを有する内燃機関用点火コイルにおいて、
上記一次コイルは、樹脂製の一次スプールの外周に巻回されており、
上記二次コイルは、樹脂製の二次スプールの外周に巻回され、該外周に巻回された一般巻部と、該一般巻部から高電圧側に向かうに連れて縮径して巻回された斜向巻部とを有しており、
上記一次スプールの内周面において上記斜向巻部に対向する部位には、低電圧側に向けて拡径する高電圧側テーパ面が形成されていることを特徴とする内燃機関用点火コイルにある(請求項1)。
【0007】
本発明の他の態様は、上記内燃機関用点火コイルを製造する方法において、
上記一次コイル及び上記二次コイルを上記ケース内に組み付ける組付工程と、
上記ケース内に形成された隙間に、脱泡を行いながら液状の熱硬化性樹脂を充填する充填工程と、
上記熱硬化性樹脂を加熱して硬化させる加熱硬化工程と、を含むことを特徴とする内燃機関用点火コイルの製造方法にある(請求項6)。
【発明の効果】
【0008】
上記内燃機関用点火コイルにおいては、一次スプールの内周面において二次コイルの斜向巻部に対向する部位に、高電圧側テーパ面を形成している。
これにより、斜向巻部の表面と高電圧側テーパ面との間に形成される隙間が、低電圧側に向けてできるだけ狭くならないようにすることができる。そのため、一次コイル及び二次コイル等を配置した後にケース内に形成される隙間に、熱硬化性樹脂を充填する際には、斜向巻部の表面と高電圧側テーパ面との間の隙間から、脱泡をしやすくすることができる。
そして、熱硬化性樹脂を硬化させて点火コイルを形成した後、点火コイルを加熱・冷却サイクル下において使用する際には、点火コイルの各構成部品の線膨張係数の違いによって生じる熱応力を受けるときでも、斜向巻部の表面と一次スプールの内周面との間の隙間に充填された熱硬化性樹脂に亀裂(クラック)が発生しにくくすることができる。また、二次コイルにて作り出す高電圧の電流の漏れ(リーク)の発生も抑制することができる。
【0009】
上記内燃機関用点火コイルを製造する方法においては、上記配置工程、充填工程、加熱硬化工程を行うことにより、熱硬化性樹脂に亀裂が発生しにくい点火コイルを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例にかかる、内燃機関用点火コイルを示す断面説明図。
【図2】実施例にかかる、二次コイルとこれに対向する一次スプールとの周辺を拡大して示す断面説明図。
【図3】実施例にかかる、二次コイルとこれに対向する他の一次スプールとの周辺を拡大して示す断面説明図。
【図4】実施例にかかる、二次コイルとこれに対向する他の一次スプールとの周辺を拡大して示す断面説明図。
【図5】実施例にかかる、他の二次スプールに巻回した二次コイルとこれに対向する一次スプールとの周辺を拡大して示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述した内燃機関用点火コイルにおける好ましい実施の形態につき説明する。
上記内燃機関用点火コイルにおいては、上記高電圧側テーパ面は、上記斜向巻部の表面と略平行になる傾斜角度で形成されていてもよい(請求項2)。
この場合には、斜向巻部の表面と高電圧側テーパ面とが略平行になり、ケース内の隙間に熱硬化性樹脂を充填する際に、脱泡をより効果的に行うことができる。
また、高電圧側テーパ面は、斜向巻部の表面が一次スプールの軸方向に対して傾斜する角度よりも急な傾斜角度で形成することもできる。この場合には、脱泡をより促進することができる。
【0012】
また、上記一般巻部の表面と上記一次スプールの内周面との間に形成された隙間の幅は、上記斜向巻部の表面と上記高電圧側テーパ面との間に形成された最小隙間の幅以上になっていてもよい(請求項3)。
この場合には、ケース内の隙間に熱硬化性樹脂を充填する際に、斜向巻部の表面と高電圧側テーパ面との間を上方へ通過する気泡を、一般巻部の表面と一次スプールの内周面との間も円滑に通過させることができる。そのため、熱硬化性樹脂を充填する際の脱泡をより効果的に行うことができる。
【0013】
また、上記一次スプールの内周面において上記一般巻部に対向する部位には、低電圧側に向けて拡径する低電圧側テーパ面が形成されていてもよい(請求項4)。
この場合には、一般巻部の表面と低電圧側テーパ面との間の隙間を、低電圧側に向かうに連れて広くすることができる。そして、ケース内の隙間に熱硬化性樹脂を充填する際に、斜向巻部の表面と高電圧側テーパ面との間を上方へ通過する気泡を、一般巻部の表面と低電圧側テーパ面との間も円滑に通過させることができる。そのため、熱硬化性樹脂を充填する際の脱泡をさらに効果的に行うことができる。
【0014】
また、上記二次スプールにおいて上記二次コイルが巻回された外周面は、低電圧側に向けて縮径するテーパ面状に形成されていてもよい(請求項5)。
この場合には、二次コイルの表面と一次スプールの内周面との間を、低電圧側に向かうに連れてより効果的に広げることができる。そのため、熱硬化性樹脂を充填する際の脱泡をさらに一層効果的に行うことができる。
【実施例】
【0015】
以下に、内燃機関用点火コイルの実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の内燃機関用点火コイル1は、図1、図2に示すごとく、一次コイル2と、一次コイル2の内周側に同軸状に重ねて配置された二次コイル3と、二次コイル3及び一次コイル2を収容するケース5と、ケース5内の隙間を充填する熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)7とを有している。一次コイル2は、樹脂製の一次スプール21の外周に巻回されている。二次コイル3は、樹脂製の二次スプール31の外周に巻回され、外周に略平行に巻回された一般巻部32と、一般巻部32から高電圧側(下端側)に向かうに連れて縮径して巻回された斜向巻部33とを有している。一次スプール21の内周面210において斜向巻部33に対向する部位には、低電圧側(上端側)に向けて拡径する高電圧側テーパ面211が形成されている。
【0016】
以下に、本例の内燃機関用点火コイル1につき、図1〜図5を参照して詳説する。
図1に示すごとく、点火コイル1は、同心状に内外周に重ねて配置された一次コイル2及び二次コイル3と、一次コイル2及び二次コイル3の内周側に配置された軟磁性の中心コア41と、一次コイル2及び二次コイル3の外周側に配置された軟磁性の外周コア42とを有している。
ケース5は、内燃機関(エンジン)のプラグホール内に配置されるケース円筒部52と、プラグホールに対する上方に配置されるケース頭部51とを組み付けて形成されている。本例の一次コイル2、二次コイル3、中心コア41及び外周コア42は、ケース円筒部52に配置されている。なお、一次コイル2、二次コイル3、中心コア41及び外周コア42は、ケース頭部51に配置することもできる。
【0017】
一次コイル2は、樹脂製の一次スプール21の外周に巻回されており、二次コイル3は、樹脂製の二次スプール31の外周に巻回されている。本例においては、中心コア41の外周に二次コイル3が配置され、二次コイル3の外周に一次コイル2が配置されている。ケース円筒部52は、一次コイル2の外周に配置され、外周コア42は、ケース円筒部52の外周に配置されている。ケース円筒部52の下方には、タワー部522が形成されている。タワー部522には、ゴム製のプラグキャップ61が取り付けられており、スパークプラグ(図示略)は、プラグキャップ61内に装着し、スプリング62及び高圧端子63を介して二次コイル3の高電圧側端部と導通される。
【0018】
また、図1に示すごとく、ケース頭部51には、点火コイル1を外部のECU(電子制御ユニット)等と電気接続するためのコネクタ部513と、点火コイル1を取り付けるための取付フランジ部515とが、側方に突出して形成されている。ケース頭部51内には、コネクタ部513に設けられた導通ピン514に繋がり、一次コイル2への通電及びその遮断を行うスイッチング回路等を備えたイグナイタ516が配置されている。
ケース頭部51は、上側に、熱硬化性樹脂7を注入するための開口穴512を有し、下側に、開口穴512に連通する配置穴511を有している。また、ケース頭部51の下端部には、取付部517が突出して形成されている。取付部517には、点火コイル1を挿入配置するプラグホールへの水の浸入防止を行うシールラバー518が取り付けられている。
【0019】
図2は、二次コイル3の斜向巻部33とこれに対向する一次スプール21の高電圧側テーパ面211との周辺を拡大して示す断面図である。
同図に示すごとく、一次コイル2は、一次スプール21の外周において、1本の一次電線を複数段(本例では2段)に重なるように巻回して形成されている。本例では、一次コイル2は、一次スプール21の外周に巻き付けたテープ215の外周に巻回されている。
二次コイル3は、二次スプール31の外周において、1本の二次電線を低電圧側の端部から巻き始め、二次スプール31の軸方向Lに対して傾斜する状態で内周側と外周側とに蛇行しながら巻回して一般巻部32を形成し、高電圧側に向かうに連れて外径が小さくなるように内周側と外周側とに蛇行しながら巻回して斜向巻部33を形成してなる。
【0020】
同図に示すごとく、一次スプール21における高電圧側テーパ面211は、斜向巻部33の表面と略平行になる傾斜角度θ1で形成されている。高電圧側テーパ面211は、斜向巻部33の表面と一次スプール21の内周面210との間に形成される隙間S1が、斜向巻部33の表面と略平行になるように形成されている。これにより、隙間S1が上端側(低電圧側)に向けて狭くなって気泡の抜け性が悪くなったり、熱硬化性樹脂7を充填する際の下側部分の容積が大きくなって気泡だまりができやすくなることを避けることができる。そのため、ケース5内の隙間に熱硬化性樹脂7を充填する際に、脱泡をより効果的に行うことができる。
高電圧側テーパ面211は、一次スプール21の軸方向Lに対して、0.1〜15°の範囲内の傾斜角度θ1で形成することができる。
【0021】
また、一般巻部32の表面と一次スプール21の内周面210との間に形成された隙間S2の幅は、斜向巻部33の表面と高電圧側テーパ面211との間に形成された最小隙間S1’の幅以上になっていて、気泡が抜けやすくなっている。最小隙間S1’は、二次コイル3の表面と一次スプール21の内周面210との間の間隔とする。図2においては、便宜上、斜向巻部33の表面を近似して示す二点鎖線と、高電圧側テーパ面211との間の隙間を最小隙間S1’として示す。
本例の一次スプール21の内周面210であって、高電圧側テーパ面211よりも上端側(低電圧側)に形成された一般部212は、一般巻部32の表面と略平行に(一次スプール21の軸方向Lと平行に)形成されている。
これにより、ケース5内の隙間に熱硬化性樹脂7を充填する際に、斜向巻部33の表面と高電圧側テーパ面211との間を上方へ通過する気泡を、一般巻部32の表面と一次スプール21の内周面210との間も円滑に通過させることができる。
【0022】
また、図3に示すごとく、高電圧側テーパ面211は、斜向巻部33の表面が一次スプール21の軸方向Lに対して傾斜する角度αよりも急な傾斜角度θ1で形成することもできる。この場合には、脱泡をより促進することができる。
斜向巻部33の表面は、高電圧側に向かって二次コイル2の巻回の段数が減少する状態によって形成される。本例では、斜向巻部33の傾斜を二点鎖線によって近似して示した。斜向巻部の傾斜角度αは、斜向巻部33を構成する二次コイル3の表面を近似する二点鎖線によって表される。
【0023】
また、一次スプール21及び二次スプール31は、次のようなテーパ形状に形成することもできる。
図4に示すごとく、一次スプール21の内周面210において一般巻部32に対向する部位には、低電圧側に向けて拡径する低電圧側テーパ面213を形成することができる。低電圧側テーパ面213は、高電圧側テーパ面211の傾斜角度θ1よりも小さな傾斜角度θ2で形成することができる。低電圧側テーパ面213は、一次スプール21の軸方向Lの低電圧側の途中まで形成することができ、一次スプール21の低電圧側の全長にわたって形成することもできる。
この場合には、一般巻部32の表面と低電圧側テーパ面213との間の隙間S2を、低電圧側に向かうに連れて広くすることができる。そのため、ケース5内の隙間に熱硬化性樹脂7を充填する際に、斜向巻部33の表面と高電圧側テーパ面211との間を上方へ通過する気泡を、一般巻部32の表面と低電圧側テーパ面213との間も円滑に通過させることができる。
【0024】
また、図5に示すごとく、二次スプール31において二次コイル3が巻回された外周面310は、低電圧側に向けて縮径するテーパ面状に形成することができる。この外周面310は、二次スプール31の軸方向Lの低電圧側の途中まで形成することができ、二次スプール31の低電圧側の全長にわたって形成することもできる。同図においては、二次スプール31の下端部の厚みT1よりも、下端部よりも上端側に位置する部分の厚みT2の方が薄くなっていることを示す。
この場合には、二次コイル3の表面と一次スプール21の内周面210との間を、低電圧側に向かうに連れてより効果的に広げることができる。そのため、斜向巻部33の表面と高電圧側テーパ面211との間を上方へ通過する気泡を、一般巻部32の表面と一次スプール21の内周面210との間も円滑に通過させることができる。
【0025】
本例の点火コイル1は、次のようにして製造する。
まず、組付工程として、一次コイル2、二次コイル3、中心コア41等をケース円筒部52内に収容する。また、イグナイタ516をケース頭部51内に収容する。また、外周コア42は、ケース円筒部52の外周に配置し、ケース円筒部52の外周端部521をケース頭部51の配置穴511に挿入する。こうして、点火コイル1を組み付ける。
【0026】
次いで、充填工程として、ケース5内に形成された隙間に、熱硬化前の液状の熱硬化性樹脂7を充填する。このとき、ケース5内に形成された隙間の真空引きを行い、隙間内の脱泡を行う。
ケース5内に熱硬化性樹脂7を充填する際には、ケース5内に残された気泡が上昇する。このとき、斜向巻部33の表面と高電圧側テーパ面211との間の隙間S1を通過(上昇)する気泡は、この隙間S1が上方に向かうに連れて絞られていないことより、この隙間S1を円滑に上昇することができる。
また、一般巻部32の表面と一次スプール21の内周面210との間に形成された隙間S2の幅は、斜向巻部33の表面と高電圧側テーパ面211との間に形成された最小隙間S1’の幅以上になっている。これにより、上記隙間S1を上昇する気泡を、一般巻部32の表面と一次スプール21の内周面210との間の隙間S2も円滑に通過させることができる。
このように、熱硬化性樹脂7を充填する際の脱泡を円滑に行うことができる。
【0027】
次いで、加熱硬化工程として、熱硬化性樹脂7を充填した点火コイル1を加熱することによって、熱硬化性樹脂7を加熱して硬化させる。熱硬化性樹脂7を硬化させて、点火コイル1を製造することができる。
こうして製造した点火コイル1によれば、点火コイル1を加熱・冷却サイクル下において使用する際に、点火コイル1の各構成部品の線膨張係数の違いによって生じる熱応力を受けるときでも、斜向巻部33の表面と一次スプール21の内周面210(高電圧側テーパ面211)との間の隙間S1に充填された熱硬化性樹脂7に亀裂(クラック)が発生しにくくすることができる。また、二次コイル3にて作り出す高電圧の電流の漏れ(リーク)の発生も抑制することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 内燃機関用点火コイル
2 一次コイル
21 一次スプール
210 内周面
211 高電圧側テーパ面
212 一般部
213 低電圧側テーパ面
3 二次コイル
31 二次スプール
310 外周面
32 一般巻部
33 斜向巻部
41 中心コア
42 外周コア
5 ケース
51 ケース頭部
52 ケース円筒部
7 熱硬化性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイルと、該一次コイルの内周側に同軸状に重ねて配置された二次コイルと、該二次コイル及び上記一次コイルを収容するケースと、該ケース内の隙間を充填する熱硬化性樹脂とを有する内燃機関用点火コイルにおいて、
上記一次コイルは、樹脂製の一次スプールの外周に巻回されており、
上記二次コイルは、樹脂製の二次スプールの外周に巻回され、該外周に巻回された一般巻部と、該一般巻部から高電圧側に向かうに連れて縮径して巻回された斜向巻部とを有しており、
上記一次スプールの内周面において上記斜向巻部に対向する部位には、低電圧側に向けて拡径する高電圧側テーパ面が形成されていることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関用点火コイルにおいて、上記高電圧側テーパ面は、上記斜向巻部の表面と略平行になる傾斜角度で形成されていることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内燃機関用点火コイルにおいて、上記一般巻部の表面と上記一次スプールの内周面との間に形成された隙間の幅は、上記斜向巻部の表面と上記高電圧側テーパ面との間に形成された最小隙間の幅以上になっていることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の内燃機関用点火コイルにおいて、上記一次スプールの内周面において上記一般巻部に対向する部位には、低電圧側に向けて拡径する低電圧側テーパ面が形成されていることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関用点火コイルにおいて、上記二次スプールにおいて上記二次コイルが巻回された外周面は、低電圧側に向けて縮径するテーパ面状に形成されていることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関用点火コイルを製造する方法において、
上記一次コイル及び上記二次コイルを上記ケース内に組み付ける組付工程と、
上記ケース内に形成された隙間に、脱泡を行いながら液状の熱硬化性樹脂を充填する充填工程と、
上記熱硬化性樹脂を加熱して硬化させる加熱硬化工程と、を含むことを特徴とする内燃機関用点火コイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−51314(P2013−51314A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188599(P2011−188599)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)