説明

内燃機関自動停止再始動制御装置

【課題】内燃機関の基準信号の誤認識を防止し、内燃機関の良好な再始動性を確保することできる内燃機関自動停止再始動制御装置を提供する。
【解決手段】
この発明による内燃機関自動停止再始動制御装置は、内燃機関の自動停止後に於ける惰性回転中に、内燃機関を始動させる始動装置のソレノイドを駆動してピニオンギアを軸方向へ移動させてリングギアへの押し付けを開始し、押し付けの開始後、所定期間を経過するまではクランク角度信号による基準信号の検出を禁止して内燃機関の基準信号の誤認識を防止し、内燃機関の良好な再始動性を確保するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動停止条件が成立するとエンジン(以下、内燃機関と称する)を自動停止させ、その後、再始動条件が成立すると内燃機関を再始動させる内燃機関自動停止再始動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車の燃費の改善や環境負荷の低減等を目的として、運転者の操作により内燃機関を停止するための所定の条件(例えば、車両が所定車速以下で、ブレーキペダルの踏み込み操作)が満たされると、自動で燃料をカットして内燃機関を自動的に停止させ、その後、運転者の操作により内燃機関を再始動するための所定の条件(例えば、ブレーキペダルの解除操作、アクセルペダルの踏み込み操作等)が満たされると、燃料噴射を再開して内燃機関を自動的に再始動させるようにした、内燃機関自動停止再始動制御装置が開発されている。
【0003】
ここで、内燃機関はクランク角度に応じて燃料噴射や点火制御を実施する。内燃機関自動停止再始動装置は、内燃機関のクランク角度を検出するクランク角度センサにより、内燃機関回転に伴い所定クランク角度毎にクランク角度信号パルスを発生すると共に、特定のクランク角度で気筒判別信号パルスを発生するように構成することで、クランク角度を認識している。一般的には、回転センサのシグナルロータの外周部の歯が欠けた欠け歯部分を形成して、この欠け歯で発生する不等間隔パルスを基準信号として気筒識別を行っている。
【0004】
また、このような内燃機関自働停止再始動制御装置として、アイドルストップ後の内燃機関惰性回転中に内燃機関の再始動要求に備え、内燃機関回転数が所定回転数以下となるとスタータモータを回さずにピニオンギアとリングギアとの連結を開始し、モータ回転数(ここではピニオンギア回転数と同義。以下同様)と内燃機関回転数が同期した時点でピニオンギアとリングギアとの連結を完了する。その後に再始動要求があればスタータモータに通電を行ってステータモータにより内燃機関を駆動して内燃機関の再始動を完了させるようにした装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−510099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のような、従来の内燃機関自動停止再始動制御装置を用いた場合、アイドルストップによる内燃機関惰性回転中に内燃機関回転数が所定回転数以下となると、ピニオンギアをリングギアに押し付けてそれらの連結を開始するが、このとき内燃機関回転数が急激に低下し、クランク角度信号パルスの周期が伸びることにより、本来のクランク角度とは異なるクランク角度として認識される場合がある。このような場合、内燃機関の各気筒の行程も誤って認識することとなり、この状態で再始動を行った場合、噴射した燃料が最初に燃焼するタイミングが遅れ、始動が遅くなるという課題があった。
【0007】
この発明は、前述のような従来の装置に於ける課題を解決するためになされたものであり、内燃機関の基準信号の誤認識を防止し、内燃機関の良好な再始動性を確保することできる内燃機関自動停止再始動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による内燃機関自動停止再始動制御装置は、内燃機関のクランク角度に対応したクランク角度信号を出力するクランク角度検出ユニットと、前記クランク角度信号が所定位置にあるときにクランク角度信号内に基準信号を出力する基準信号出力ユニットと、基準信号を検出する基準信号検出ユニットと、前記クランク角度信号内の基準信号に基づいて前記複数の気筒のピストン位置を特定するピストン位置特定ユニットと、内燃機関自動停止再始動ユニットと、通電されることにより回転するスタータモータと、前記スタータモータの回転軸に設けられたピニオンギアと、前記ピニオンギアを前記回転軸の軸方向へ押し出して内燃機関のクランク軸に設けられたリングギアと噛み合わせるためのプランジャと、通電されることにより前記プランジャを回転軸方向へ移動させるソレノイドとを備えた内燃機関制御装置であって、
前記内燃機関の自動停止後に於ける惰性回転中に、前記内燃機関を始動させる始動装置のソレノイドを駆動して前記ピニオンギアを前記軸方向へ移動させて、前記リングギアの前記リングギアへの押し付けを開始し、前記押し付けの開始後、所定期間を経過するまでは前記クランク角度信号による前記基準信号の検出を禁止して前記内燃機関の制御を実行するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明による内燃機関自動停止再始動制御装置によれば、内燃機関の自動停止後に於ける惰性回転中に、内燃機関を始動させる始動装置のソレノイドを駆動してピニオンギアを軸方向へ移動させてリングギアへの押し付けを開始し、前記押し付けの開始後、所定期間を経過するまでは前記クランク角度信号による前記基準信号の検出を禁止して前記内燃機関の制御を実行するようにしたので、内燃機関の再始動前、再始動時の基準信号の誤認識を防止した上で、内燃機関の良好な再始動性を確保することできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置の全体の構成を示す説明図である。
【図2】この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置に於けるクランク角度センサのシグナルロータの構成を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置に於けるクランク角度センサの出力波形と基準信号の関係を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置の制御ブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置の動作を示すフローチャートである。
【0011】
【図7】この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置の動作を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置の動作を示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置における内燃機関再始動時の燃料噴射を説明する説明図である。
【図11】この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置の再始動後の内燃機関の動作を示すタイミングチャートである。
【図12】従来の内燃機関自動停止再始動制御装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置について図を参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動装置の全体の構成を示すブロック図である。図1に於いて、この発明の実施の形態1に係る内燃機関自動停止再始動制御装置は、内燃機関10と、始動装置20と、内燃機関制御装置(ECU:Electric Control Unit)50を備えている。内燃機関10には、内燃機関
10へ燃料を供給する燃料噴射装置11が備えられている。
【0013】
始動装置20は、通電されることにより回転するスタータモータ23と、スタータモータ23の回転軸に設けられたピニオンギア24と、ピニオンギア24を回転軸の軸方向へ押し出して内燃機関のクランク軸に設けられたリングギア12と噛み合わせるためのプランジャ22と、通電されることによりプランジャ22を回転軸の軸方向へ移動させるソレノイド21とが設けられている。
【0014】
内燃機関制御装置50は、燃料噴射装置11を制御すると共に、自動停止条件あるいは再始動条件を判定して、車載バッテリ等の電源(図示せず)とスタータモータ23を接続してスタータモータ23へ通電し、更に、電源とソレノイド21を接続してソレノイド21へ通電する。
【0015】
内燃機関制御装置50には、内燃機関のクランク角度を検出するクランク角度センサ1と、始動装置20のピニオンギア24の回転数を計測するピニオンギア回転数センサ2と、車両の速度を検出して車速信号を出力する車速センサ3と、アクセル開度を検出してアクセル開度信号を出力するアクセル開度センサ4と、ペダルの動作状態を示すブレーキ信号を出力するブレーキペダル5が接続されている。
【0016】
クランク角度センサ1は、内燃機関10のクランクシャフト(図示せず)と共に回転するシグナルロータ13の外周部に間隙を介して対向するように設けられている。シグナルロータ13は、周方向に所定の間隔を介して設けられた複数の磁性体により形成された歯を外周部に備えている。クランク角度センサ1は、シグナルロータ13の歯が対向間隙を通過することによる磁気変化を電気信号に変換し、クランク軸の回転角度(以下、クランク角度と称する)に対応したクランク角度信号を発生して内燃機関制御装置50に入力する。
【0017】
ここで、クランク角度センサ1と、シグナルロータ13は、この発明に於けるクランク角度検出ユニットと、基準信号出力ユニットとを構成し、内燃機関制御装置(ECU)は、基準信号を検出する基準信号検出ユニットと、クランク角度信号内の基準信号に基づいて複数の気筒のピストン位置を特定するピストン位置特定ユニットと、内燃機関自動停止再始動ユニットとを構成している。
【0018】
シグナルロータ13の構成について更に詳しく説明する。図2は、この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置に於けるクランク角度センサのシグナルロータの構成を示す説明図である。図2に於いて、シグナルロータ13は、その外周部に、32個の磁性体からなる歯(実線により示している)を備えている。これらの32個の歯は、シグナルロータの軸心を中心として10度間隔でシグナルロータ13の外周部を等分した36箇所の位置のうち、32箇所に設けられている。そして、シグナルロータ13の外周部の前記36箇所の位置のうち、残りの4箇所は、歯の存在しない欠け歯(破線により示している)となっている。
【0019】
今、図2に於ける最下方の上死点対応位置の左側の歯をA05(上死点後5[deg]を表す)とし、この歯A05を含めて時計回りに9個目の欠け歯をA85とする。そして、この欠け歯A85の次の歯をB85(上死点前85[deg]を表す)とし、この歯B85を含めて時計回りで9個目の歯をB05とする。更に、この歯B05の次の歯をA05とし、この歯A05を含めて時計回りで8個目と9個目が欠け歯であり、その9個目の欠け歯をA85とする。そして、この欠け歯A85の次の歯をB85とし、この歯B85を含めて時計回りで9個目の歯をB05とする。
【0020】
ここで、図2の右方の欠け歯A85と、その2つ手前の歯とその次の欠け歯と、欠け歯A85の次の歯とにより、その信号入力周期を比較することで基準信号が形成される。
【0021】
前述の基準信号は、図2に示すように、シグナルロータ13の軸心の周りに180[deg]隔てた位置に設定されている。この基準信号は、クランク角度信号から気筒のピストンの位置を夫々特定するために設定されている。
【0022】
図3は、この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置に於けるクランク角度センサの出力波形と基準信号の関係を示す説明図であり、(a)は内燃機関回転数、(b)はクランク角度センサ出力、(c)は基準信号を示し、夫々の横軸は同一の時系列で表わされている。図3の(a)に示すクランク角度センサ出力の信号の波形は、前述の図2に示すクランク角度センサのシグナルロータ13が内燃機関回転に同期して反時計方向に回転することによりクランク角度センサ1から出力される信号の波形であり、図2に於けるシグナルロータ13の最下方の右側の歯B05を基点として順次、歯A05、・・A85、B85、・・B05、A05、・・A85、B85、・・B05、に対応して発生するクランク角度信号の波形を、シグナルロータ13の歯若しくは欠け歯と同一符号で示している。
【0023】
図3の(c)に示すように、クランクシャフトが2回転する間(720[deg]間)に、先ず基準信号がクランク角度75[deg]、85[deg]、95[deg]、105[deg]に対応して発生し、次に基準信号がクランク角度255[deg]、265[deg]、275[deg]、285[deg]に対応して発生し、次に基準信号がクランク角度435[deg]、445[deg]、455[deg]、465[deg]に対応して発生し、次に基準信号がクランク角度615[deg]、625[deg]、635[deg]、645[deg]に対応して発生する。
【0024】
内燃機関制御装置50は、図3の(b)に示すクランク角度センサ出力信号の周期に基づいて内燃機関回転数Nrを演算すると共に、ピニオンギア回転数センサ2から出力される信号の周期に基づいてピニオンギア回転数Nstを演算する。
【0025】
内燃機関制御装置(ECU)50は、各種のI/F回路(図示せず)と、マイクロコンピュータ(図示せず)とから構成されている。又、マイクロコンピュータは、各種のセンサの検出信号等のアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器(図示せず)と、内燃機関自動停止再始動制御プログラム等の各種の制御プログラムを実行するCPU(図示せず)と、内燃機関自動停止再始動制御プログラム、各種の制御プログラムや制御定数、各種のテーブル等を記憶するROM(図示せず)と、各種の制御プログラムを実行した際の変数等を記憶するRAM(図示せず)等から構成されている。
【0026】
図4は、この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置の制御ブロック図であり、内燃機関制御装置50で実行される各処理ルーチンの構成を表している。図
4に於いて、内燃機関制御装置50は、内燃機関自動停止ルーチン101と、事前噛合い制御ルーチン102と、内燃機関再始動制御ルーチン103と、クランク角度算出ルーチン104とを備える。クランク角度算出ルーチン104は、クランク角度算出部分105と、基準信号検出部分106と、疑似基準信号生成部分107と、クランク角度記憶部分108とを備える。
【0027】
先ず、内燃機関自動停止ルーチン101は、車速センサ3、アクセル開度センサ4、ブレーキペダル5等の情報を用いて内燃機関の自動停止の有無を判定し、内燃機関が自動停止したと判定すれば、燃料噴射装置11を停止する。次に、事前噛合い制御ルーチン102は、クランク角度センサ1から入力されるクランク角度センサ出力信号の入力周期等から求めた内燃機関回転数を用いて、内燃機関回転数が所定回転数以下となると、ソレノイド21を制御し、ピニオンギア24をリングギア12に噛合わせる。
【0028】
次に、内燃機関再始動制御ルーチン103は、アクセル開度センサ4、ブレーキペダル5等の情報を用いて内燃機関の再始動条件が成立の有無を判定し、内燃機関の再始動条件が成立したと判定すると、始動装置20のソレノイド21とスタータモータ23を制御し、後述するように、クランク角度算出ルーチン104で求めたクランク角度に応じて燃料噴射装置11等を制御することで内燃機関を再始動する。
【0029】
次に、クランク角度算出ルーチン104に於けるクランク角算出部分105は、クランク角度センサ1の出力値と出力周期を元に検出した基準信号、及び、ソレノイド21の駆動情報から、クランク角度を算出する。クランク基準信号検出部分106は、クランク角度センサ1の出力信号の周期から基準信号を検出する。擬似基準信号生成部分107は、クランク角度に応じて擬似基準信号を発生させる。クランク角度記憶部分108は、ソレノイド21の駆動信号に応じて、クランク角度を記憶する。
【0030】
ソレノイド21の駆動後、所定期間である場合に於いては、クランク角度算出部分105は、クランク角度記憶部分108で記憶したクランク角度とクランク角度センサ1の出力を用いてクランク角度を演算し、その演算したクランク角度が基準信号の発生角度に相当する角度である場合に擬似基準信号生成部分107から基準信号を発生させる。一方、ソレノイド21の駆動後、所定期間以外の期間である場合に於いては、クランク角度算出部分105は、クランク角度センサ1の出力と基準信号検出部106にて検出した基準信号を用いてクランク角度を算出する。
【0031】
図5乃至図9は、この発明の実施の形態1に係る内燃機関自動停止再始動制御装置の動作を示すフローチャートであり、図5は内燃機関自動停止ルーチン、図6は事前噛合い制御ルーチン、図7は内燃機関再始動制御ルーチン、図8はクランク角度算出ルーチン、図9は基準位置検出禁止判定ルーチン、を夫々示している。図5乃至図9のステップS101〜S108、ステップS201〜S202、ステップS301〜S309、ステップS401〜S411、及びステップS501〜S508の処理は、内燃機関制御装置50内のROMに格納されている内燃機関自動停止再始動制御プログラムによってプログラム実行される。又、図5、図6、図7に示すルーチンは、例えば、10[msec]の一定周期毎に実行され、図8、図9に示すルーチンは、例えば、クランク角度センサ1からの出力信号が入力される毎に実行される。
【0032】
内燃機関制御装置50は、車両のイグニッションスイッチがオンされると、電源が供給されて動作を開始し、内燃機関制御装置50内のマイクロコンピュータのCPUが、ROM内に格納されている内燃機関自動停止再始動制御プログラムを実行する。
【0033】
先ず、図5に示す内燃機関自動停止ルーチンに於いて、ステップS101では、内燃機
関制御装置50のマイクロコンピュータ(以下、単に、内燃機関制御装置50、と称する)は、内燃機関の自動停止条件が成立しているか否かを判定する。この自動停止条件は、例えば、車速が10[km/h]以下で、かつ運転者がブレーキペダル5を踏んでいる動作状態等である。この車速は、車速センサ4から出力された車速信号に基づくものであり、又、ブレーキペダル5が踏まれている動作状態は、ブレーキペダル5から出力されたブレーキ信号のON状態であることに基づくものである。例えば、車速が10[km/h]以下で、かつ運転者がブレーキペダル5を踏んでいる動作状態であれば、内燃機関自動停止要求フラグF1が「1」にセットされているので、ステップS101に於ける内燃機関の自動停止条件が成立しているか否かの判定は、内燃機関自動停止要求フラグF1が「1」にセットされているか否かで判定する。
【0034】
ステップS101での判定の結果、内燃機関の自動停止条件が成立していると判定した場合(YES)はステップ102へ進み、自動停止条件が成立していない場合(NO)には、ステップ108へ進む。
【0035】
ステップ102に進むと、内燃機関制御装置50は、燃料噴射装置11を制御して、内燃機関10への燃料供給を停止させる。
【0036】
次に、ステップ103に於いて、内燃機関制御装置50は、自動停止中フラグF2を「1」にセットする。
【0037】
次に、ステップ104に於いて、内燃機関制御装置50は、再始動条件が成立しているか否かを判定する。この再始動条件は、例えば、運転者がブレーキペダルを解放している動作状態で、かつ運転者がアクセルペダルを踏んでいる動作状態等である。このブレーキペダル6が解放されている動作状態は、ブレーキペダル5から出力されたブレーキ信号のOFF状態に基づくものであり、又、アクセルペダルが踏まれている動作状態は、アクセル開度センサ6から出力されたアクセル開度信号に基づくものである。ブレーキペダル5から出力されたブレーキ信号がOFF状態で、且つ、アクセルが踏み込まれた状態であれば、内燃機関自動停止要求フラグF1が「0」にクリアされるので、再始動条件の成立の有無は、内燃機関自動停止要求フラグF1が「0」であるか否かにより判定する。損判定の結果、内燃機関自動停止要求フラグF1が「0」であれば(YES)、再始動条件が成立していると判定して次のステップ105へ進み、再始動条件が成立していない場合(NO)には、ステップ107へ進む。
【0038】
次に、ステップ105に進むと、内燃機関制御装置50は、内燃機関10が回転中か否かを判定する。内燃機関10が回転中の場合(YES)には、次のステップ106へ進み、内燃機関10が回転していない、つまり内燃機関10が完全に停止している場合(NO)には、図5の内燃機関自動停止ルーチンの処理を終了する。
【0039】
ステップS105からステップ106に進むと、内燃機関制御装置50は、再始動制御ルーチンを実行するが、この再始動ルーチンの実行の詳細については後述する。
【0040】
前述のステップS104での判定の結果、内燃機関自動停止要求フラグF1が「0」でなく再始動条件が成立していないと判定した場合(NO)は、ステップS107に進む。このとき内燃機関は自動停止中であるが、ステップS107に於いて、内燃機関制御装置50は、再始動に備えてピニオンギア24をリングギア12に事前に噛み合わせるために、事前噛合い制御ルーチンを実行し、図5の内燃機関自動停止ルーチンの処理を終了する。ステップS107に於ける事前噛合い制御ルーチンの実行の詳細については後述する。
【0041】
又、前述のステップS101での判定の結果、自動停止条件が成立していないと判定し
て(NO)、ステップS108に進むと、内燃機関制御装置50は、自動停止中フラグF2が「1」であるか否かを判定する。自動停止中フラグF2が「1」である場合(YES)には、内燃機関10が自動停止中であると判断し、再始動条件の成立を判定すべくステップ104へ進む。一方、自動停止中フラグF1が「0」である場合(NO)には、内燃機関10が自動停止中ではないと判断し、図5の内燃機関自動停止ルーチンの処理を終了する。
【0042】
次に、ステップS107に於ける事前噛み合い制御ルーチンについて説明する。即ち図6に於いて、ステップ201では、内燃機関制御装置50は、内燃機関回転数Nrが回転数閾値Ndiffth未満か否かを判定する。内燃機関回転数Nrが回転数閾値Ndiffth未満の場合(YES)には、次のステップS202へ進み、内燃機関回転数Nrが回転数閾値Ndiffth以上の場合(NO)には図6の事前噛合い制御ルーチンの実行を終了する。
【0043】
前述の回転数閾値Ndiffthは、ピニオンギア24とリングギア22が噛み合い可能な値で、例えば、100[rpm]である。なお、通常、ピニオンギア24はリングギア12に比して歯数が少なく、混乱を避けるため、内燃機関回転数Nr及びピニオンギア回転数Nstは、ピニオンギア24とリングギア12の歯数比を考慮して、リングギア12における回転数に換算した値を用いる。
【0044】
ステップ202に進むと、内燃機関制御装置50は、ソレノイド21への通電をONとする。又、ソレノイド21の通電時間T1の計測を開始し、図6の事前噛合い制御ルーチンの実行を終了する。
【0045】
次に前述のステップS106に於いて実行される再始動ルーチンの実行の詳細について説明する。即ち図7に於いて、ステップ301では、内燃機関制御装置50は、燃料噴射装置11を制御して、内燃機関20へ始動用燃料を噴射させる。
【0046】
ここで、内燃機関10の再始動時の燃料噴射について説明する。図10は、この発明の実施の形態1に係る内燃機関自動停止再始動装置における内燃機関再始動時の燃料噴射を説明する説明図である。図10は内燃機関10が4気筒の場合を示し、図中の矢印は点火タイミングを表している。自動停止中は点火が中断され、再始動開始後所定のタイミング(ここでは、圧縮行程気筒のクランク角BTDC5°毎)で点火が再開される。また、図10に於ける網掛け部は燃料噴射タイミングを表している。自動停止中は燃料噴射が中断されているが、図10の時刻t1で再始動開始されると、ほぼその時刻t1と同時に、所定の複数気筒、例えば、吸気行程にある♯1気筒と排気行程にある♯3気筒とで燃料噴射が再開され、それ以後は所定のタイミング(燃焼行程気筒のクランク角BTDC5°)毎に燃料噴射が再開される。時刻t1での再始動開始後、その時刻t1とほぼ同時に噴射された燃料は、時刻t2で再開された点火により燃焼を開始する。
【0047】
図7のステップS301に於いて前述のようにして燃料噴射の再開を行ない、次に、ステップ302に於いて、内燃機関制御装置50は、内燃機関回転数に基づいて、内燃機関10が始動したか否かを判定する。内燃機関10が始動していない場合、即ち、内燃機関回転数が所定値未満の場合(YES)には、次のステップ303へ進む。一方、内燃機関10が始動した場合、即ち、内燃機関回転数が所定値以上の場合(NO)には、内燃機関10が燃焼により始動したと判断し、ステップ307へ進む。ここで、内燃機関の始動を判定する所定値は、たとえば500[rpm]である。
【0048】
ステップ303に進むと、内燃機関制御装置50は、内燃機関回転数Nrが回転数閾値Ndiffth未満か否かを判定する。内燃機関回転数Nrが回転数閾値Ndiffth
未満の場合(YES)には、次のステップS304へ進み、内燃機関回転数Nrが回転数閾値Ndiffth以上の場合(NO)には、ステップ309へ進む。
【0049】
ステップ304に進むと、内燃機関制御装置50は、ソレノイド21の通電をONにさせる。又、同時に、ソレノイド21の通電時間T1の計測を開始する。
【0050】
次に、ステップ305に於いて、内燃機関制御装置50は、ソレノイド21の通電時間T1が所定時間Tpeを越えているか否かを判定する。ソレノイド21の通電時間T1が所定時間Tpeを越えている、即ち、ピニオンギア24がリングギア12に押し付けられ噛み合ったと判断される場合(YES)、ステップ306へ進む。ソレノイド21の通電時間T1が所定時間Tpe未満、即ち、ピニオンギア24がリングギア12にまだ噛み合っていない判断される場合(NO)は、図7の内燃機関再始動制御ルーチンを終了する。ここで、所定値Tpeは、例えば、50[m秒]である。
【0051】
前述のステップS302で内燃機関始動完了と判定され(NO)、ステップ307に進むと、内燃機関制御装置50は、再始動が完了したため自動停止中フラグF2を「0」にリセットする。
【0052】
次に、ステップ308に於いて、内燃機関制御装置50は、始動装置20のスタータモータ23の通電をOFFにさせる。
【0053】
次に、ステップ309に於いて、内燃機関制御装置50は、始動装置12のソレノイド21の通電をOFFにさせる。又、ソレノイド21の通電時間T1の計測を終了し、リセットする。この場合、ソレノイド21とプランジャ22の間には吸引力が発生しないので、プランジャ22はスタータモータ23の回転軸の軸方向に移動せず、ピニオンギア24をその軸方向へ押し出すことは行われずに、ピニオンギア24とリングギア12が噛み合わない状態となる。
【0054】
次に、クランク角度算出ルーチンの実行について説明する。即ち、図8に於いて、ステップ401では、内燃機関制御装置50は、ソレノイドの通電がONか否かを判定する。ソレノイドの通電がONの場合、ステップ402へ進む。ソレノイドの通電がOFFの場合、ステップ408へ進む。
【0055】
ステップ402に進むと、内燃機関制御装置50は、後述する図9で示す基準信号検出禁止判定ルーチンを用いて、クランク角度センサの出力周期による基準信号の検出を禁止するか否かを判定する。
【0056】
次に、ステップ403に於いて、内燃機関制御装置50は、基準信号検出が禁止されているか否かを判定する。ここで、基準信号の検出が禁止される場合とは、ソレノイド21の通電によりピニオンギア24がリングギア12に押し付けられ、内燃機関回転数が減速されると考えられる場合であり、基準信号検出禁止フラグF3は「1」にセットされる。一方、ソレノイド21の通電によるピニオンギア24のリングギア12への押し付け開始後、これ以上内燃機関回転数が減速されないと考えられる場合は、基準信号の検出は禁止されないように構成されており、基準信号検出禁止フラグF3は「0」となる。ステップS403での基準信号検出禁止の有無の判定は、基準信号検出禁止フラグF3が「1」であるか否かにより行うことができる。ステップS407での判定の結果、基準信号検出禁止であれば(YES)、ステップ404へ進み、基準信号検出禁止でなければ(NO)、ステップ408へ進む。尚、基準信号検出禁止判定ルーチンの詳細については後述する。
【0057】
ステップ404に進むと、内燃機関制御装置50は、前回更新したクランク角度Ac_
memが欠け歯前の所定クランク角度か否か、即ち、クランク角度が基準信号発生位置に対応する角度であるか否かを判定する。その判定の結果、前回更新したクランク角度Ac_memが欠け歯前の所定クランク角度である場合(YES)は、ステップ405へ進み、前回更新したクランク角度Ac_memが欠け歯前の所定クランク角度でない場合(NO)は、ステップ406へ進む。ここで、所定のクランク角度とは、図3に示す720degクランク角度のうち、75[deg]、255[deg]、435[deg]、615[deg]である。
【0058】
ステップS404にて前回更新したクランク角度Ac_memが欠け歯前の所定クランク角度であると判定され(YES)、ステップ405に進むと、前回クランク角度Ac_memが欠け歯前であるため、前回クランク角度Ac_memに20[deg]加算して新たなクランク角度Acとしてクランク角度Acの更新を行う。又、基準信号を発生させ、クランク角度センサ等の異常の検出や他の制御に用いる。
【0059】
一方、ステップS404にて前回更新したクランク角度Ac_memが欠け歯前の所定クランク角度ではないと判定され(NO)、ステップ406に進むと、前回クランク角度Ac_memが欠け歯前でないため、前回クランク角度Ac_memに10[deg]加
算して新たなクランク角度Acとしてクランク角度Acの更新を行う。
【0060】
次に、ステップ407に於いて、内燃機関制御装置50は、ステップS405、又はステップS406で更新したクランク角度Acを前回クランク角度Ac_memとして記憶し、図8のクランク角度算出ルーチンを終了する。
【0061】
一方、ステップS401にてソレノイド21の通電が「ON」でないと判定され(NO)、ステップ408に進むと、内燃機関制御装置50は、クランク角度センサ1の出力から、基準信号を検出(判定)し、ステップ409へ進む。基準信号の検出方法は、例えば、クランク角度センサ1の出力周期を記録し、前回の周期と今回の周期の比率が所定値を超えている場合に、基準信号を検出したものとする。
【0062】
次に、ステップ409に於いて、内燃機関制御装置50は、基準信号の有無を判定し、基準信号ありの場合(YES)は、ステップ410へ進み、基準信号なしの場合(NO)は、ステップ411へ進む。
【0063】
ステップ410に進むと、クランク角度Acに基準信号が出力されるクランク角度を代入し、ステップ407へ進む。ここで、代入されるクランク角度は、例えば、前回クランク角度Ac_memに最も近い現在の基準信号のクランク角度(Ac_memが65[deg]であれば105[deg]等)である。
【0064】
一方、ステップS409にて基準信号なしと判定され(NO)てステップ411に進んだ場合は、前回クランク角度Ac_memに10[deg]加算して新たなクランク角度Acとし、ステップ407へ進む。
【0065】
次に、前述の基準信号検出禁止判定ルーチンについて、図9に基づいて説明する。図9では、「基準位置検出禁止判定ルーチン」と記載しているが、前述の「基準信号検出禁止判定ルーチン」と同意である。図9に於いて、ステップ501に於いて、内燃機関制御装置50は、ソレノイド21への通電がOFFからONに移行しているか否かを判定する。ソレノイド21への通電がOFFからONに移行していると判定した場合(YES)は、ステップ502へ進み、ソレノイド21への通電がOFFからONに移行していない、つまりOFFのままであると判定した場合(NO)は、ステップ503へ進む。
【0066】
ステップ502に進むと、内燃機関制御装置50は、ソレノイド通電ON後クランク角度Ac_sonを「0」[deg]に初期化する。
【0067】
次に、ステップ503に於いて、内燃機関制御装置50は、前回更新したクランク角度Ac_memが欠け歯前の所定クランク角度、即ち基準信号位置であるか否かを判定する。その判定の結果、前回更新したクランク角度Ac_memが欠け歯前の所定クランク角度である場合(YES)は、ステップ504へ進み、前回更新したクランク角度Ac_memが欠け歯前の所定クランク角度でない場合(NO)は、ステップ505へ進む。
【0068】
ステップ504に進むと、ソレノイド通電ON後クランク角度Ac_sonを更新する。即ち、前回クランク角度Ac_memが欠け歯前であるため、20[deg]加算して新たなソレノイド通電ON後クランク角度Ac_sonとし、ステップ506へ進む。
【0069】
一方、ステップ505に進むと、ソレノイド通電ON後クランク角度Ac_sonを更新する。即ち、前回クランク角度Ac_memが欠け歯前でないため、10[deg]加算して新たなソレノイド通電ON後クランク角度Ac_sonとし、ステップ506へ進む。
【0070】
次に、ステップ506に於いて、内燃機関制御装置50は、ソレノイド通電ON後クランク角度Ac_sonが所定値未満か否か判定する。ソレノイド通電ON後クランク角度Ac_sonが所定値未満の場合(YES)は、ステップ507へ進む。ソレノイド通電ON後クランク角度Ac_sonが所定値以上の場合(NO)は、ステップ508へ進む。ここで、所定値は例えば、180[deg]とする。
【0071】
ステップ507に進むと、内燃機関制御装置50は、ソレノイド通電ON後クランク角度Ac_sonが所定値未満であるため、基準信号検出禁止フラグF3に「1」をセットし、図9の判定ルーチンを終了する。
【0072】
一方、ステップ508に進んだ場合は、内燃機関制御装置50は、ソレノイド通電ON後クランク角度Ac_sonが所定値以上であるため、基準信号検出禁止フラグF3を「0」にリセットし、図9の判定ルーチンを終了する。
【0073】
次に、タイミングチャートに基づいて、この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置の動作を説明する。図11は、この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動装置の再始動後の内燃機関の動作を示すタイミングチャートである。図11に示すタイミングチャートは、車両走行状態から内燃機関自動停止を実施し、内燃機関回転中にピニオンギア24とリングギア12を噛みわせ、スタータモータ23のクランキングにより内燃機関再始動を行った場合の動作を示す。
【0074】
図11において、(a)は内燃機関回転数Nr(実線)、スタータモータ回転数、即ち、ピニオンギア回転数Nst(点線)の時間的推移を示す。(b)は内燃機関制御装置の認識する180[deg]毎のクランク角度(実線)、実際の180[deg]毎のクランク角度(点線)の時間的推移を示す。(c)はクランク角度センサの出力の時間的推移を表す。(d)は内燃機関の制御に使用する基準信号の時間的推移を示し、基準信号ありのとき「1」がセットされ、基準信号なしのとき「0」にクリアされる。
【0075】
更に、(e)は内燃機関制御装置(ECU)50が認識している角気筒の行程を表し、網掛け部が燃料噴射を、矢印が点火を表す。(f)は自動停止要求フラグF1の状態を示し、自動停止条件が成立した場合は「1」にセットされ、再始動条件が成立した場合には「0」にリセットされる。(g)は自動停止中フラグF2の状態を示し、内燃機関10が
自動停止中である場合は「1」にセットされ、内燃機関10が始動完了した場合には「0」にリセットされる。
【0076】
又、(h)はスタータモータ23の通電状態の時間的推移を示す。(i)はソレノイド21の通電状態の時間的推移を示す。(j)はソレノイド通電開始からのクランク角度変化量の時間的推移を示す。(k)は基準信号の検出禁止フラグF3の時間的推移を示し、クランク角度センサの出力に基づく基準信号の検出が禁止のとき「1」にセットされ、クランク角度センサの出力に基づく基準信号の検出が許可のとき「0」にリセットされる。
【0077】
図11に於いて、最初に、自動停止条件が成立し、自動停止要求フラグF1に「1」がセットされており、燃料噴射停止、自動停止中フラグF2が「1」にセットされている(図4のステップ101−103に相当する)とする。その後、時刻t1にて内燃機関回転数が所定回転数未満となると、内燃機関の再始動に備えてソレノイドの通電をONし(図6のステップ201−202に相当する)、ピニオンギア24の押し出しを開始する。
【0078】
その後、時刻t1〜t2の間にピニオンギア24がリングギア12に押し付けられることで、(a)に実線で示す内燃機関回転数Nrが減速し、破線で示すモータ回転数、即ちピニオンギア回転数Nstが増速され、ピニオンギア24とリングギア12の回転数が同期した時刻t2にてピニオンギア24とリングギア12の噛み合いが完了する。このとき、時刻t1〜t2の間に内燃機関回転数Nrが(a)に示すように急激に減速するため、(c)に示すように、クランク角度センサ出力の出力周期が長くなる。しかしながら、図9にて説明したように、ピニオンギア24の通電ON後所定期間、例えばクランク角度で180[deg]間は、クランク角度センサ1の出力周期による(d)の基準信号の検出を停止するため(図9)、(k)に示すように基準信号検出禁止フラグF3が「1」となっており、基準信号を誤検出することがなくなる。
【0079】
次に、時刻t3に於いて、ドライバの操作により再始動条件が成立することにより、(f)の自動停止要求フラグF1が「0」となり、燃料噴射及び点火が再開される。時刻t3では、再始動を早めるため、(e)に示すように、吸気行程である#1気筒と、排気行程である#3気筒に非同期で燃料噴射を行う。又、内燃機関10がまだ始動完了しておらず、かつ、(i)に示すようにソレノイド駆動指示つまりソレノイド通電開始から十分時間が経過しており、ピニオンギア24とリングギア12が噛み合い済みのため、(h)に示すスタータモータ駆動指示が出されてスタータモータ41が通電され回転を開始する(図7のステップ305−306に相当する)。
【0080】
次に、時刻t4において、(k)に示すように基準信号検出禁止フラグF3が「1」にセットされており、クランク角度センサ1の出力の周期による基準信号の検出が禁止されているので、クランク角度センサ1の出力と記憶している前回クランク角度とからクランク角度を求め、その求めたクランク角度が基準信号を出力するクランク角度となるため、(d)に示すように基準信号を出力し、必要であれば他の制御で使用する(図8のステップ404−405に相当する)。
【0081】
次に、ソレノイド21の通電ONした瞬間のクランク角度を基準(0[deg])として、その基準からクランク角度を積算した結果が180[deg]を超えると、ピニオンギア24とリングギア12を介してスタータモータ23により駆動されて回転している内燃機関の回転数が増大し、時刻t5に於いて内燃機関回転数が基準信号を誤検出する範囲から明らかに外れたため、基準信号禁止フラグF3を「0」にクリアする(図9のステップ506,508)。それ以降は、クランク角度センサ1の出力周期から基準信号を検出する。
【0082】
次に、時刻t6に於いて、再始動時に噴射した燃料が点火され、時刻t7において燃焼により内燃機関回転数Nrが内燃機関始動完了判定回転数以上となり、内燃機関再始動が完了し、(g)の自動停止要求フラグF1は「0」にリセットされ、(h)のスタータモータ駆動指示、及び(i)のソレノイド駆動指示が解除される。このように、基準信号の誤検出を防止することにより正しいクランク角度となるため始動遅れが発生することはない。
【0083】
ここで、前述の従来の装置の動作を、この発明の実施の形態1による内燃機関自動停止再始動制御装置と比較して説明する。図12は、従来の内燃機関自動停止再始動制御装置の動作を示すタイミングチャートであり、(a)〜(d)は図11の(a)〜(d)に対応している。図12の(e)は各気筒毎の実行程、(f)は各気筒毎のECU制御用行程、(g)は自動停止要求フラグF1、(h)は自動停止中フラグF2、(i)はスタータモータ駆動指示、(j)はソレノイド駆動指示を示している。
【0084】
図12に示すように、前述のような従来の内燃機関自動停止再始動制御装置を用いた場合、アイドルストップによる内燃機関惰性回転中に、内燃機関回転数が所定回転数以下となるとピニオンギアをリングギアに押し付け、連結を開始する(図12の時刻t1)。このとき、ソレノイドを駆動しピニオンギアを押し付けることにより内燃機関回転数が急激に低下し、クランク角度信号パルスの周期が伸びる(長くなる)ことにより、欠け歯で発生する不等間隔パルスと誤認識する場合がある。このため、誤認識した不等間隔パルス(基準信号)により求めたクランク角度は、本来のクランク角度とはことなる誤ったクランク角度として認識される場合がある(図12の時刻t2)。
【0085】
このような場合、各気筒の行程も誤ったものとなる(図12の時刻2(e)、(f))。この状態で再始動を行った場合、誤ったクランク角度のまま始動のための燃料制御や点火制御が行われ、例えば、再始動を早めるために再始動と同時に非同期で吸気行程と排気行程に燃料噴射を行う場合、噴射気筒が実際とは異なる気筒に噴射される(図12の時刻t3(f)網掛け部)。その後、欠け歯を検出し、正しいクランク角度となったとしても(図12の時刻t4)、本来、点火により燃焼が発生可能であった#1気筒での燃焼が起きない(図12の時刻t6)。その結果、噴射した燃料が最初に燃焼するタイミングが遅れ(図12の時刻8)、始動が遅くなるという問題があった。
【0086】
前述したように、この発明の実施の形態1に係る内燃機関自動停止再始動制御装置によれば、ソレノイドを駆動した時のクランク角度から所定の角度を経過するまでの期間の間、クランク角度センサ出力による基準信号の検出を禁止することにより、基準信号の誤検出を防止し、図12に示すような従来の装置の問題点は解消され、良好な再始動を実施することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 クランク角度センサ 2 ピニオンギア回転数センサ
3 車速センサ 4 アクセル開度センサ
5 ブレーキペダル 10 内燃機関
11 燃料噴射装置 12 リングギア
13 シグナルロータ 20 始動装置
21 ソレノイド 22 プランジャ
23 スタータモータ 24 ピニオンギア
50 内燃機関制御装置 F1 自動停止中フラグ
F2 内燃機関回転数制御フラグ F3 基準信号検出禁止フラグ
T1 ソレノイド通電時間カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランク角度に対応したクランク角度信号を出力するクランク角度検出ユニットと、
前記クランク角度信号が所定位置にあるときにクランク角度信号内に基準信号を出力する基準信号出力ユニットと、
基準信号を検出する基準信号検出ユニットと、
前記クランク角度信号内の基準信号に基づいて前記複数の気筒のピストン位置を特定するピストン位置特定ユニットと、
内燃機関自動停止再始動ユニットと、
通電されることにより回転するスタータモータと、
前記スタータモータの回転軸に設けられたピニオンギアと、
前記ピニオンギアを前記回転軸の軸方向へ押し出して内燃機関のクランク軸に設けられたリングギアと噛み合わせるためのプランジャと、
通電されることにより前記プランジャを回転軸方向へ移動させるソレノイドと、
を備えた内燃機関自動停止再始動装置であって、
前記内燃機関の自動停止後に於ける惰性回転中に、前記内燃機関を始動させる始動装置のソレノイドを駆動して前記ピニオンギアを前記軸方向へ移動させて前記リングギアへの押し付けを開始し、前記押し付けの開始後、所定期間を経過するまでは前記クランク角度信号による前記基準信号の検出を禁止して前記内燃機関の制御を実行するようにした、
ことを特徴とする内燃機関自動停止再始動制御装置。
【請求項2】
前記所定期間は、前記押し付けを開始した時のクランク角度から所定のクランク角度を経過するまでの期間である、
ことを特徴とする請求項1記載の内燃機関自動停止再始動制御装置。
【請求項3】
前記クランク角度信号による前記基準信号の検出を禁止している前記所定期間中は、前記クランク角度検出ユニットの出力と記憶している前回クランク角度とから現在のクランク角度を求め、その求めたクランク角度が前記基準信号を出力するクランク角度となるとき、前記基準信号を発生させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関自動停止再始動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−255417(P2012−255417A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130075(P2011−130075)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】