説明

内燃機関電気ハイブリッド車両用制御方法及び装置

【課題】エンジンが、車両の速度が如何なる場合であっても、所定の理想運転ラインに沿って運転されるハイブリッド車両用制御装置を提供する。
【解決手段】モータ/ジェネレータ24、又はジェネレータ/モータがエンジン10の出力軸12に連結されており、モータ/ジェネレータ24、又はジェネレータ/モータの正及び負のトルクが変化して、車両のあらゆる性能のための速度の関数としてのエンジン10の出力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、1998年4月21日付をもって出願された同時出願No.09/063,993の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、一般には、車両用パワートレイン及びトランスミッションに関し、特に、機械的又は電気的連続可変トランスミッション又は通常のオートマチックトランスミッションを有する駆動トレインに連結された内燃機関の運転特性を制御するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
エンジン及び「連続可変トランスミッション」の概念は、1900年代に発明された非常に古い概念であるが、エンジンの理論効率、性能及び運転性を自動的に得ることは決してできなかった。このことは、図1に示した従来のパワートレイン及びトランスミッションを参照すれば明らかである。ここにおいて、内燃機関10は、デカップリング/スターティングクラッチ、即ち、トルクコンバータ14を駆動する出力軸12を有しており、このトルクコンバータは、連続可変トランスミッション(CVT)又はオートマチックトランスミッション(AT)の入力軸16に連結されており、この連続可変トランスミッション(CVT)又はオートマチックトランスミッション(AT)は、最終駆動ホイール22(例えば、アクスル及びタイヤ)に連結されたドライブシャフト又はデファレンシャル20を駆動する出力を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構造の欠陥は、エンジン/CVTシステムを表す動的方程式に起因して生ずる:
【0005】
【数1】

【0006】
上記式において、αDSはドライブシャフトに影響を及ぼす車両の速度、RはSE/SDS、IEはエンジンの慣性、IDSはドライブシャフトにおける車両の慣性、SEはエンジン速度、SDSはドライブシャフトの速度、TEはエンジントルク、Tlossはトルクロス、そして、TRLはドライブシャフトでの道路負荷トルクである。
第1項の
【0007】
【数2】

【0008】
及び第2項のTERは、一般に、相互に対立しているため、車の速度、並びに、エンジンのトルク及び速度を同時に制御することは困難である。その結果、ガソリン又はディーゼルエンジンのための最高効率及び最小排気を、性能における犠牲を伴うことなく実現することはできない。このことは、更に図2及び図3を参照すれば明らかである。図2及び図3は、エンジン速度及びトルクの関数としてのエンジンの運転特性を示している。ここにおいて、WOTは、スロットルを大きく開放した状態で、最大トルクラインを示しており、IOLは、理想トルク/速度運転ラインであって、最高効率及び/又は低排気(最小制動比燃料消費、即ち、BSFC)を示しており、そして、POLは、エンジン/トランスミッション特性に起因する実際の運転ラインである。図3において、点Aは、点Bよりも効率が低いが、適切な車両挙動(過渡性能)を得るためには、点Aを使用しなければならないことに留意すべきである。
【0009】
本発明の目的は、車両の加速、減速、又は、制動と、車両におけるエンジンのトルク及び速度との同時制御を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、電動モータ/ジェネレータのトルクを制御して、エンジン、トランスミッション及び電動モータ/ジェネレータを有する車両の加速、減速及び制動を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、車両におけるエンジンを、常に、スロットルを大きく開放した状態で(WOT)、又は、理想トルク/速度運転ライン(IOL)に沿って運転して、エンジン速度によって出力を変化させることを可能にすることにある。
【0012】
本発明の他の目的は、エンジンの運転範囲を限定することによって、エンジンの排気を減少させることにある。
【0013】
本発明の他の目的は、エンジンの首尾一貫した高負荷運転を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、内燃機関及び電動モータを用いたハイブリッド電気車両の加速及び減速に関する高性能化を実現することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、バッテリーサイクリングを減少し、そして、ハイブリッド電気車両におけるバッテリー寿命を向上することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、車両が、運転負荷に依存するバッテリーの充電に耐えることを可能ならしめることにある。本発明の他の目的は、ハイブリッド電気車両の効率を改善することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、ハイブリッド電気車両における内燃機関の運転効率を可変出力レベルで最大にし、かくして、好ましい燃料消費をもたらすことにある。
【0018】
本発明の他の目的は、ここに参考として組み入れた本発明者によるアメリカ特許No.5,842,534に記載された充電消耗ハイブリッド電気車両の範囲を最大にすることにある。
【0019】
本発明の更なる目的及び利益は、明細書の以下に記載する部分から明らかであり、この明細書において、詳細な説明は、本発明の好ましい実施形態を、これらに限定することなく、十分に開示するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に従って、エンジンと連続可変又はオートマチックトランスミッションとの間に、電動モータ又はモータ/ジェネレータ、バッテリー及びこれらと組み合わせて使用される制御器を組み入れることによって、上述した欠陥を克服することができる。ここにおいて、用語「バッテリー」が使用されている場合には、この用語は、超蓄電池、電気化学的蓄電池等のすべてのエネルギー貯蔵装置を含むものとする。
【0021】
好ましい実施形態においては、モータ/ジェネレータは、動的方程式にいおける
【0022】
【数3】

【0023】
の負の効果に逆らうように制御される。従って、エンジンが「スロットルを大きく開放した状態」(WOT)で、又は、最高効率及び低排気のための「理想トルク/速度運転ライン」(IOL)に沿って、又は、予め定められた他の運転ラインに沿って運転されることを許容するために、モータ/ジェネレータが使用されている。このように、電気的なモータ/ジェネレータに接続されたバッテリーエネルギー貯蔵システムからエネルギーが出入りする間、エンジンを連続して運転することが可能である。バッテリーが、車両の長距離走行を可能ならしめるに十分に大型の場合には、バッテリーの内部抵抗が低いために、バッテリーから出入りするエネルギーの効率は高い。この概念は、ここに参考として組み入れた本発明者によるアメリカ特許No.5,842,534に記載された充電消耗ハイブリッド電気車両に特に望ましく、ここにおいては、大型のバッテリーパックが、固定パワープラントから充電される。エンジンは、首尾一貫して高負荷で運転されるため、ガソリン又はディーゼルエンジンの排気を効果的に制御することができる。本発明は、ガソリン又はディーゼルエンジンが、スロットルを閉じた状態で、高速で運転されないこと、または、抵抗率低負荷状態で運転されないことを確保するものである。必要な出力が、理想運転ライン上のエンジン最小出力よりも低い場合には、エンジンは自動的に遮断及び停止し(必要に応じて、アイドリング状態にされ)、そして、車両は電気車両として運転される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】連続可変又はマルチスピードオートマチックトランスミッションを適用したパワートレインを有する先行技術の車両の作用に関するブロック図。
【図2】スロットルを大きく開放した状態での最大トルクと、図1に示したエンジンの与えられた出力についての最高効率及び最小排気をもたらす理想運転ラインとを示す典型的な内燃機関のトルクスピード効率マップを示すグラフ。
【図3】理想運転ライン(IOL)と対比して、図1に示した従来の車両に要求された実際運転ライン(POL)を示すグラフ。
【図4】駆動トレインに連続可変トランスミッションを有するパラレル式ハイブリッド構造における、本発明による制御装置の作用に関するブロック図。
【図5】駆動トレインに連続可変又はオートマチックトランスミッションを有するシリーズ式ハイブリッド構造における、図4に示した制御装置の他の実施形態の作用に関するブロック図。
【図6】ジェネレータ/モータ及びコントローラ、並びに、モータ/ジェネレータ及びコントローラが電気連続可変トランスミッションとして使用された、図4に示された制御装置の作用に関するブロック図。
【図7】デュアル出力パラレル式ハイブリッドシステムとして作用する本発明の他の実施形態の作用に関するブロック図。
【図8】本発明の制御方法を示すフロー図。
【図9】エンジン及びトランスミッション速度の関数としてのエンジン及び電動モータ/ジェネレータトルク、並びに、図4に示した装置の、加速運転境界及び典型的な加速/減速サイクルを示すグラフ。
【図10】時間の関数としての、図9に示された加速/減速サイクルを示すグラフ。
【図11】時間の関数としての、図9に示された加速/減速サイクルを達成するために必要なアクセルペダルの変化を示すグラフ。
【図12】時間の関数としての、図9に示された運転特性を有する車両の速度を示すグラフ。
【図13】図8に示した制御システムに関する制動制御特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図示する目的のための図面を特に参照すれば、本発明は、図4から図13に概略的に示された装置及び方法において具現化されている。この装置及びこれと関連ある制御方法を、これらの詳細な事項について、ここに開示された基本的概念から逸脱することなく、変更してもよいことが理解されるであろう。
【0026】
先ず、図4を参照して、本発明によれば、電動モータ24は、連続可変トランスミッション18の入力軸16に連結され、もって、電動モータは、エンジン10と連続可変と18との間の駆動トレインと並列に出力を導入する。電動モータ24はバッテリー26によって駆動され、このバッテリーは、典型的な場合として、電気車両に使用される、積層された複数のバッテリー、超蓄電池等から構成される。電動モータ24の作動は、モータコントローラ28によって制御される。このモータコントローラは、マイクロプロセッサ又は他のコンピュータを利用したプログラマブルシステムコントローラ30によって制御される従来の電子アーマチュアコントローラ等である。
【0027】
電動モータ24の大きさは様々であってもよく、一方、電動モータ24はモータのみであってもよいが、この電動モータ24は、バッテリー26を充電するためにも使用可能なモータ/ジェネレータであることが好ましい。従って、明細書及び請求項において言及された用語「モータ」又は「モータコントローラ」は、モータ及びモータコントローラ、又は、モータ/ジェネレータ及びモータ/ジェネレータコントローラをそれぞれ含むことが意図されている。ここで言及した「モータ/ジェネレータ」及び「モータ/ジェネレータコントローラ」は、本発明の好ましい実施形態を説明するために使用されている。電動モータ24は、例えば、ハイブリッド電気車両に使用されている従来のDC又はAC又はスイッチリラクタンス又は他のトルク制御型高出力トラクションモータ/ジェネレータである。
【0028】
CVTの代わりに、オートマチックトランスミッションを使用できることが理解されるであろう。従って、明細書及び請求項において言及された「トランスミッション」は、連続可変トランスミッション及びオートマチックトランスミッションの何れをも含むことが意図されている。ここで言及した「連続可変トランスミッション」は、本発明の好ましい実施形態を説明するために使用されている。機械的CVT又はオートマチックトランスミッション18を完全に除去し、そして、これを、図5及び図6を参照して以下に説明するように、ジェネレータ(又は、ジェネレータ/モータ)及びジェネレータコントローラ(又は、ジェネレータ/モータコントローラ)と組み合わされたモータ(又は、モータ/ジェネレータ)及びモータコントローラ(又は、モータ/ジェネレータコントローラ)によって置き換えることが可能であることも明らかであろう。
【0029】
図4に示した実施形態においては、システムコントローラ30は、複数の制御及びフィードバック信号を処理する。図に示されているように、1次入力制御信号は車両のアクセルペダル32及びブレーキペダル34から出される。他の制御信号を、例えば、パーキング、運転、性能等のために使用してもよいことが理解されるであろう。これらの信号に基づいて、システムコントローラ30は、エンジントルクTEを制御するためのスロットル制御信号38をエンジン10に送り、エンジン連結オン/オフ信号38をクラッチ14に送り、モータトルクTMを制御するためのトルク制御信号42をモータコントローラ28に送り、連続可変トランスミッション18の速度比Rの変化率
【0030】
【数4】

【0031】
を制御するための速度比変化率制御信号44を送る。ここで、Rは、SE/SDSであり、SEは、エンジン速度であり、そして、SDSは、ドライブシャフト速度である。SDS=SCAR×Cの関係に留意すべきである。ここにおいて、SCARは、車両の速度であり、そして、Cは、車両の最終駆動部のギヤ比及びタイヤ半径に依存する定数である。同時に、システムコントローラ30は、速度信号40を介してエンジン速度SEを読み取り、信号46を介して変化率Rを読み取り、そして、信号48を介して車両の速度SCARを読み取る。システムコントローラ30は、「オン/オフ」信号をエンジン10に送ってもよいが、別のスタータモータは必要ではなく、即ち、電動モータ24は、クラッチ14を介してエンジンの出力軸12に連結されているので、この電動モータをエンジン10を始動するために使用することができることに留意すべきである。クラッチ14が開放されているときは、エンジン10を「オフ」又はアイドリング状態に切り換えてもよい。
【0032】
図5及び図6に示すように、本発明を、図示されたシリーズ式ハイブリッド車両構造にまで拡大して適用することが可能である。この構造においては、バッテリー26のための充電能力をもたらすと共に、減速中におけるエンジン10の制動効果をもたらすためにジェネレータ50が使用されている。従来の電子アーマチュアコントローラ等であるジェネレータコントローラ52によって、ジェネレータ50の作動を制御することが好ましい。ジェネレータコントローラ52は、トルク制御ライン54を介してシステムコントローラ30から受信した信号に応じて、ジェネレータトルクTGを制御する。この構造においては、TG=TEであることに留意すべきである。
【0033】
作動によりエンジン10を駆動して、所望の速度に迅速に到達し、もって、エンジン全体の高速応答性をもたらすように、ジェネレータ50は、ジェネレータ/モータ型からなることが好ましい。従って、明細書及び請求項において言及された用語「ジェネレータ」又は「ジェネレータコントローラ」は、ジェネレータ及びジェネレータコントローラ、並びに、ジェネレータ/モータ及びジェネレータ/モータコントローラの何れをもそれぞれ含むことが意図されている。ここで言及した「ジェネレータ/モータ」及び「ジェネレータ/モータコントローラ」は、本発明の好ましい実施形態を説明するために使用されている。ジェネレータ50は、例えば、ハイブリッド電気車両に使用されている従来のDC又はAC又はスイッチリラクタンス又は他のトルク制御型高出力トラクションジェネレータ/モータである。
【0034】
エンジン10を始動しそして停止するための任意のスタータ制御ライン56が含まれていることにも留意すべきである。ジェネレータ50がジェネレータ/モータ型である場合において、ジェネレータ50のモータ部が十分な高出力を有しているときは、スタータモータを設ける必要性を除外することが可能である。
【0035】
図5及び図6のこれらの実施形態においては、エンジン10は、高トルクではあるが、安定したクルーズ速度をもたらすのに必要な出力で運転される。エンジントルク及び出力を、電動モータ/バッテリーパワーに比して小さくてもよい。ジェネレータコントローラ52及びモータコントローラ28をそれぞれ介したジェネレータ50及びモータ(又は、モータ/ジェネレータ)24は、共同して電子CVTとして作用するのであるから、機械的CVT又はオートマチックトランスミッション18を図5に示すように使用したり、または、図6に示すように除去することも可能である。図5及び図6の実施形態においては、運転者が指令した出力に基づいて、バッテリー26にエネルギーを一時的に供給し、又は、バッテリー26からエネルギーを取り出すことによって、エンジン出力を制御するためにジェネレータ50が使用されている。
【0036】
上述した構造におけるエンジンの運転は、エンジンが常にある一定速度で運転される従来のシリーズ式ハイブリッド車両とは著しく異なることに留意すべきである。エンジンが一定速度で運転されると、効果的な出力は、一定レベルにおいてのみ生ずる。従って、バッテリーは過剰出力を吸収し、又は、付加的な出力を提供して、車両を走行させる必要がある。この結果として、ディープバッテリーサイクル及びこれに付随する非効率的な問題が生ずる。しかしながら、本発明においては、エンジンはそれ以上に使用され、そして、バッテリーはシャローサイクル型である。本発明によれば、バッテリーによってサイクル化される電力量は著しく減少されるため、バッテリー充電1回当たりの範囲が増加する。従って、バッテリーの寿命が向上する。
【0037】
図7に示すように、本発明を、図示されたデュアルパワーパラレル式パワートレインに適用することも可能である。この実施形態は、電動モータ(又は、モータ/ジェネレータ)24から電気的に、車両60の両前輪58から生ずるトルクと、クラッチ12及びCVT18を介してエンジン10から機械的に、後輪から生ずるトルクとをもたらす。CVTとして示されたブロック18は、従来の連続可変又はオートマチックトランスミッションであってもよいことに留意すべきである。CVT18は、エンジン10のみに連結されており、即ち、道路とタイヤとが、道路64を介して、前輪及び後輪を共同して、シャフトとして効果的に作用する道路64に接続している。車両の後部を電動モータにより、前部をCVTによって、駆動輪を逆転させてもよいことが理解されるであろう。この場合には、電動モータが、CVTを介してエンジンを制御し、その出力は道路を介して制御される。従って、この構造は、パラレル式ハイブリッド構造に効果的であり、そして、図4及び図5に示した実施形態におけるハイブリッドを使用して制御される。また、電動モータ24が車両の全ての力を制御し、もって、図4に示されたエンジン及び車両制御概念が実現されるものであってもよい。電動モータ24からの調整トルクをもって、エンジンをIOL上で運転することが可能である。このシステムによる利点は、高燃料効率及び高性能で使用可能な高出力電動モータに対して、エンジン−CVTシステムが小さいということである。
【0038】
図4、図8及び図9に示すように、システムコントローラ30は、従来のハードウェア及び/又はソフトウェアを用いて、本発明の制御及び感知作用を実現する。図8において、ACは、アクセルペダル位置であり、運転者によって指令された出力又はトルク(PC又は+TC)を示しており、BCは、運転者によって指令された負のトルク(−TC)を示すブレーキペダル位置であり、TMは、電動モータのトルクであり、PEPは、エラー、即ち、運転者によって指令された出力と、出力制御モードのためのIOLに沿った出力との差(PC−PIOL)であり、TEPは、エラー、即ち、運転者によって指令されたトルクと、トルク制御モードのためのIOLに沿ったトルクとの差(TC−(PIOL/SE))であり、PIOLEは、エンジンの理想運転ラインに沿った出力であり、PIOLMは、電動モータの理想運転ラインに沿った出力であり、IRLは、制動に関する理想再生欄であり、TEBは、エラー、即ち、運転者によって指令された制動と、制動制御モードのためのIRLに沿った制動との間の差(BC−TIRL)であり、TIRLは、制動に関する理想再生ラインに沿ったトルクであり、K1は、所望の応答時間及び回路の安定性に関するゲイン調整値であり、K2は、図9における所望の応答特性を実現するために、
【0039】
【数5】

【0040】
に応じて設定されたゲイン調整値であり、Tは、フィルタの時定数であり、Sは、当業者によって容易にプログラムされる変数PEP又はTEのラプラス変換値であり、Rは、エンジン速度とドライブシャフト速度との比であり、
【0041】
【数6】

【0042】
は、比Rの変化率であり、Cは、車両速度をドライブシャフト速度に変換する変換定数であり、SEは、エンジン速度であり、SDSは、ドライブシャフト速度であり、SCARは、車両速度であり、そして、KBは、スケーリングのためのゲイン値である。アクセルペダルが押し込まれると、スイッチSW1及びSW2は、加速位置に置かれる。スイッチSW3及びSW4は、車両が電動モード又はハイブリッドモードの何れかに置かれるかに従って設定される。同様に、ブレーキペダルが押し込まれると、スイッチSW1及びSW2は制動位置に置かれる。これらのスイッチの各々は、通常、システムコントローラ30におけるソフトウェアスイッチであってもよい。エンジンの試験を行って、各速度での最高効率及び排気を決定することにより、エンジンのIOLEが求められる。電動モータ/ジェネレータ及びバッテリーシステムの試験を行って、各速度でのバッテリーへの最高エネルギーを得ることにより、IOLM及びIRLが求められる。バッテリーが、アメリカ特許No.5,842,534に記載されているように、所定の状態に消耗するまで、車両が高速自動車道路の速度よりも低い速度で通常運転されるところの電動運転モードに車両が置かれているときに、IOLMが使用されることに留意すべきである。
【0043】
ハイブリッド電動車両のための幾つかの可能な制御アルゴリズムがある。ここにおける制御の目的は、内燃機関が「オン」に切り換えられるまで、電気エネルギーを用いて車両を運転し、そして、IOLに沿ったエンジンの運転の維持が要求される場合に、内燃機関を電気エネルギーで自動的に補いながら、車両を可能な限り内燃機関で運転することにある。重要なことであるが、エンジンをハイブリッドモードで常にIOL上に保つために、エンジン出力が減少される場合に、エネルギーをバッテリーに一時的に戻すことができる。この種の運転により、排ガスを著しく減少させ、エンジン効率を向上させることが可能である。
【0044】
エンジンが「オン」状態に置かれるべき時期を決定する幾つかの方法があることが理解されるであろう。本発明の目的のために、図8の制御方法は、本発明者の出願に係るアメリカ特許No.5,842,534に示された充電消耗に関してハイブリッド電気車両に導入された手段のみならず、殆どの従来の充電耐久性に関してハイブリッド電気車両に導入された手段と共に作用する。エンジン速度が如何なる場合であっても、IOL上に位置する一定の出力のみが存在する。IOLはエンジンに依存し、そして、試験データから経験的に決定される。好ましい実施形態においては、IOLは、最高エンジン効率及び最小排気をもたらす、速度当たりのエンジン出力を表す線である。しかしながら、IOLは、特定のエンジン速度における所望のエンジン運転状態を表すものであることが理解されるであろう。出力は、エンジンの速度及び負荷の関数として変化するので、本発明は、図4におけるようなモータ24、又は、図5及び図6におけるジェネレータ50及び/又はモータ24を使用して、エンジンが「オン」の状態のときに、その速度及び出力が、常にIOL上に置かれるようにこれらを変化させている。
【0045】
作動時に、システムコントローラ30は、アクセルペダルからの加速指令ACを読み取り、そして、図8に示したスイッチSW1及びSW2が加速位置に置かれる。システムが図9に示された出力制御領域又はトルク制御領域で作動するか否かにによって異なるので、SW3及びSW4によって決定された電気車両モードにおいて、出力又は正のトルク(PC又は+TC)が運転者によって指令されている場合には、システムは加速モードに置かれ、そして、所望のモータトルクTMが、114において、下式に従って決定される:
【0046】
【数7】

【0047】
車両がハイブリッドモードに置かれている場合には、TMは、126において、下式に従って決定される:
【0048】
【数8】

【0049】
上述したようにして決定されたモータトルク信号は、図4におけるモータコントローラ28に送られて、エンジン10の速度及び出力を変化させ、そして、自動車を運転させる。その結果、電動モータのトルクに変化が生じ、これにより、エンジン速度、車両速度、及び、CVT18での比Rに影響を与える、102における車両動力への影響が起こる。図8の102において、車両の速度SCAR及び比Rが得られれば、104において、変換定数Cを車両速度SCARに適用して、(CVT18の出力である)図4のドライブシャフト20の速度SDSを得、そして、次いで、図8の106において、ドライブシャフト速度SDSと比Rとの積を求めて、エンジン速度SEを得ることによって、(共通のシャフト上にある、モータ速度SMと同一である場合もある)エンジン速度SEを求めることができる。108、116及び128においてエンジン速度SEが得られれば、ハイブリッドモード、制動モード及び電動モードのそれぞれのIOL入力値を含むルックアップテーブルにアクセスして、与えられた速度のための理想エンジン出力又はトルク出力レベルを決定する。次いで、ハイブリッドモードの場合には110で、制動モードの場合には118で、又は、電動モードの場合には130で、対応するルックアップテーブルの出力を、(出力制御モードに置かれている場合には)出力PCと、(トルク制御モードに置かれている場合には)アクセルペダル位置ACから感知したものとして、アクセルペダルを用いて運転者により指令された正のトルク+TCと比較して、出力エラーPEP又はトルクエラーTEPを求める。PEP又はTEPを求めることができる1つの方法は、例えば、アクセルペダル位置(PC又はTC)に応じて出力信号を発生するポテンショメータを用い、そして、ルックアップテーブルから適切にスケールされたPIOL又はTIOLを減算することである。信号取得及び処理分野において従来から行われているように、トランスデューサ、デジタル・アナログコンバータ及び/又はアナログ・デジタルコンバータを使用することも可能である。対応するエラー信号は、次いで、112において信号のフィルタ処理を行った後に、比Rの変化率
【0050】
【数9】

【0051】
に影響を与えるように用いられる。従って、図4のCVT18は、
【0052】
【数10】

【0053】
の調整値に応じて応答する。
【0054】
制御システムの重要な点は、比R又は変化率
【0055】
【数11】

【0056】
を制御することである。これは、指令された出力PC又はトルクTCと、IOL出力又はトルクとの間のエラー信号にフィルタ処理を施すことによって行われる。下記式:
【0057】
【数12】

【0058】
による信号フィルタ処理は、電気工学の分野において周知である。このフィルタは、この問題について配置可能な手段の代表例に過ぎず、そして、実際問題としては、フィルタは、線形素子及び非線形素子の双方を含んでいてもよいことが理解される。このフィルタを使用する目的は、設計者が変化率
【0059】
【数13】

【0060】
を制御することを可能にするためである。Rを急激に変化させることは好ましくない。従って、所望のシステム応答性をもたらすために、フィルタが必要である。値K1及びTは、(ここでは一次として示された)フィルタの形のままで、発見的に求められる。他の代表例に係るフィルタでもよく、そして、所望の応答性に準拠してこのフィルタを選択してもよいことは当業者であれば認識できる。本発明の範囲は、この特別なフィルタの使用に限定されるものではない。
【0061】
制動中においては、トルクの指令は、エンジン出力よりもむしろ車輪において行われる。ここで、システムコントローラ30は、ブレーキペダルからの制動指令BCを読み取る。運転者が負のトルク−TCを指令すると、システムは、減速(再生)モードに置かれ、そして、スイッチは制動位置に切り替わる。ここで、CVT及びモータ/ジェネレータの制御が逆になって、ドライブシャフトにおいて負のトルクを生ぜしめ、従って、車両の制動が行われる。緊急、非常停止及びパーキングに使用される機械的なバックアップブレーキ(図示せず)を使用できることも理解されるであろう。制動回路の動作は、電動モータ/ジェネレータによってエネルギーをバッテリーに再生するために与えられた出力の最大効果をもたらす理想再生ラインIRLが使用されることを除き、加速回路の動作と類似している。
【0062】
制動のために、所望のモータトルクTMが、100において、下式:
【0063】
【数14】

【0064】
に従って求められ、そして、信号は、モータ/ジェネレータコントローラ28に送られて、エンジン10の速度及び出力を変化させる。その結果として、電動モータ/ジェネレータ及びエンジンのトルクが変化し、これは、再び、102において車両動力に影響を及ぼして、車を減速し、これにより、モータ及び/又はエンジン速度、車両減速及びCVT18における比Rが影響を受ける。しかしながら、ここで、IRLを表す入力値を含む、実験的に求められたテーブルでもあるルックアップテーブルにアクセスするために、エンジン速度SEは116において使用される。次いで、118において、ルックアップテーブルの出力値が、ブレーキペダルによって運転者が指令した、ブレーキペダル位置BCから読み取られた負のトルク−TCと比較されて、制動トルクエラーTEBが求められる。次いで、制動トルクエラー信号TEBは、ゲインボックス120を介して、KBの値によってスケールされ、そして、112においてフィルタ処理された後に、比Rの変化率
【0065】
【数15】

【0066】
に影響を与えるために使用される。制動トルク制御におけるフィルタ処理は、必要に応じて異なっていてもよく、そして、ゲインボックス120は付加的なフィルタを含んでいてもよいことが理解されるであろう。
【0067】
従って、図8及び図9は、図4に示された構造の制御を、そして、原則的には、図5から図7に表された構造、又は他のハイブリッド電気運転システムの制御を表している。図4に示された機械的CVTは、その電気的な均等物によって容易に置き換えられるため、図6に示された構造は、図8及び図9に示された制御機構と共に直接的に使用可能であることに留意すべきである。しかしながら、機械的CVTとその電気的均等物の両者が使用されるのであるから、ここに説明した事項に従って、図8及び図9に示された制御機構を、図5に示された構造に使用するために若干変更する必要があることが、当業者であれば理解されるであろう。図5においては、CVTの代わりに、IOLに沿ってエンジンを制御するためにジェネレータ/モータが使用されている。エネルギーは、バッテリーから出入りし、ジェネレータの電気エネルギーの殆ど僅か又はその殆どすべてが、直接的に移動して、モータ・ジェネレータを駆動する。CVT又は個別自動車用トランスミッションは、図8に示した構造と類似して構成された付加的なコントローラを必要とする。電動モータ24は、CVT18の入力側よりもむしろ出力側に連結されているので、図7に示された構造に使用するために、ここにおける説明に従って、図8に示した制御機構の均等物を若干変更する必要があることも、当業者であれば理解するであろう。しかしながら、図9に示した作動特性は、同一のまま残されている。電動モータとエンジンとの間の連結は、前輪及び後輪勘の道路64を介して行われる。CVTコントローラをすべての運転条件に実用可能にするために適用される他の保護及び制限制御ループがあり、そして、図8のフロー図は、本発明の基本的概念を示す好ましい実施形態を表していることを、当業者であれば理解するであろう。
【0068】
車両がAにおいて安定した状態に置かれ、そして、運転によって、加速指令(+ΔAC)が突然適用された場合には、これにより、即座にトルクが生じて、点Aにおける安定状態での巡行から、線L1に沿って、点Bにおける出力に移動する。次いで、車両が加速し、そして、CVTトランスミッションの入力速度及びトルクが、線L2に沿って、点Cにおける新たな安定状態での巡行点に移動するので、点Bにおける出力は、一定に維持される。運転者がアクセルペダルの踏み込みをやめ(−ΔAC)、もって、アクセルペダルがその最初の位置に戻ると、点Cにおいて、車両の加速が急激に変化し、出力が線L3に沿って点Dに至り、そして、次いで、車両は低出力ラインL4に沿って、減速して、点Aにおいて安定状態での巡行速度に戻る。エンジンを点Aにおける所望の出力レベルに強制的に低下させるための負のトルクによって、電動モータトルクTMは、エンジントルクTEをオーバーライドすることに留意すべきである。IOLに沿ってエンジントルクをオーバーライドするために、幾つかの方法を使用することができる。1つの方法は、エンジンと直接的に対向する電動モータを用い、極を逆にし、そして、バッテリーからのエネルギーを引き込むことである。2番目の好ましい方法は、ジェネレータモードにおいて、モータ/ジェネレータを使用し、かくして、必要なトルクを吸収し、そして、バッテリーにエネルギーを戻すことである。これは、アクセルペダルによる加速/減速サイクルを構成する。
【0069】
特に、図9に示されるように、アクセルペダルが0とA0、例えば、A0.5に押し込まれ、車の速度がゼロである場合には、コントロールシステムは、図に示されたトルク制御領域内で作動している。図8の制御システムにより、車は、このアクセルペダル位置に比例した割合で加速される。この加速状態は一定のまま残され、そして、CVT(又は、トランスミッション)入力速度STが、A0.5、Bにおいて、0、0からA1、S0のトルク/出力制御移動境界線に到達するまで、出力は直線的に増加する。アクセルペダル位置が変化しない状態に維持されている場合には、車両は加速し続け、そして、CVT入力速度STは、境界を超えて増加するので、このシステムの出力は、一定に維持され、そして、速度が増加するに従って、トルクは直線的に減少する。これは、STの速度増加に反比例してトルクが減少することを意味する。転がり摩擦、空力抵抗及び内部摩擦のロスに打ち勝つために必要なトルクが、指令された出力と等しくなる点にまで、車両の速度が増加するまで、上述したトルクの減少は継続する。この点において、車両は、加速を中止し、そして、一定の速度での運転を継続する。
【0070】
CVTの性質、並びに、モータ及びエンジンの特性に起因して、運転領域をトルク制御領域と出力制御領域に分割している図9における任意境界を使用することが好ましいことに留意すべきである。この境界は、トルク速度に関する原点と、点A1、S0との間の線として示されている。電気運転をハイブリッド運転から分離している他の領域が、点SE最小における垂直な線として図9に示されている。しかしながら、この境界は、任意であり、そして、点A1、S0から、S0での速度に関する軸に至る曲線、一連の段階、又は、垂直線からなっていてもよい。エンジンが連結状態又は連結解除状態の双方の場合において、トルク制御から出力制御への変換は、車両の運転者に対してシームレスであるべきである。このシームレス変換をもたらすために、高出力電動モータが使用されている。
【0071】
アクセルペダルが、速度が零(0)の場合において最大限に押し込まれると、モータのトルクは、A0において最大に至る。そして、車が加速すると、モータトルクは、SEMINまで最大の状態に維持される。この点において、エンジン制御システムが使用可能な場合には、クラッチ14を閉じることにより(図4参照)、エンジンは、「オン」状態になる。次いで、トルクは、A1、SEMINにジャンプし、そして、車両が加速するときに、(エンジンの速度SE及びモータの速度SMの両方、即ち、ST=SE=SMである)CVT入力速度STがS0に到達するまで、モータ及びエンジンのトルクは、最大ラインに沿った値のまま維持される。運転の点は、TE+TMMAX=A1のトルクレベル、及び、S0の速度である点A1、S0である。この点は、電動モータに対して許容される最大出力である。速度が更に増加すると、モータの最大出力は、エンジンの増加する出力に対して付加される。これらの出力は付加的なものであるが、車両が加速し続けると、トルクは、点A2、SEMAXに向かって減少する。電動モータの最大速度SMMAXと、ガソリンエンジンの最大速度SEMAXとは同一であることが好ましい。従って、SEMAX=SMMAX=SrMAXであり、さもなければ、STMAX=(SEMAX又はSMMAX)の何れかの小さい方である。車両が加速し続け、そして、CVTの比Rが変化すると、この点A2、SEMAXが維持される。負荷及び摩擦抵抗が、点A2、SEMAXでのトルクと等しくなり、又は、ScarMAXに達するまで、車両の速度は上昇し続ける。次いで、車両は加速を中止する。これは、車両の最高速度であることに留意すべきである。
【0072】
この点に関して、アクセルペダルがA3に低下すると、IOL上で単独で運転されるエンジンによって供給されるレベルまでトルクが減少する。この電動モータトルクは零になる。
【0073】
アクセルペダルが、ICエンジンのIOLよりも低い出力を表す点A4、SEMAXまで更に低下するとエンジン速度SE、電動モータ速度SM及びトランスミッション入力値STは、一定の出力ラインに沿って、ガソリンエンジンが、車両を運転するためのすべての出力を供給している点A4'に低下する。この場合において、図8のブロック126における項PC/SEは、負であるので、点A3から点A4に進むためには、電動モータ/ジェネレータトルクTMは負になる。
【0074】
図8の制御ダイアグラムに関連して、図9に示した典型的な運転を説明する。車両を運転するためのすべての出力をエンジンが供給しており、そして、電動モータ/ジェネレータが出力を供給していない場合には、車両は、一定の速度で走行し続ける。PEP=0そしてPC=PIOLであるところの安定状態での運転条件における図9の点Aへの到達は、ACAにおけるアクセルペダル位置によって実現されることに留意すべきである。出力増大に関する運転者の希望を意味する、ACBとして指定された第2位置に運転者がペダルを突然押し付けると、トルクが電動モータ及びバッテリによって供給された状態で、トルクは線Lに沿って即座に点Bまで増加する。PEPは、PIOLよりも大きいので、このようになる。次いで、TMは、車両が電動モードに置かれている場合には、ブロック114において、また、車両がハイブリッドモードに置かれている場合には、ブロック126において演算される。この場合には、
【0075】
【数16】

【0076】
であることが理解されるであろう。次いで、PC/SEは、電動モードにおいて必要なすべてのトルクを供給し、そして、ハイブリッドモードの場合には、PC/SE−TIOLE又はTC−TIOLEが必要なすべてのトルクを供給する。このモータトルク信号は、ブロック102に送られる。次いで、運転者が希望する出力が即座に実現される。この点において、アクセルペダルがその間一定に保持されると、電動モータのトルクが、図9における線L2に沿った定出力の線に沿って減少して、車両が加速するときに、出力を一定に保持する。この線L2は、図8に特定されたフィードバックループの作用を表しており、これは、ブロック102、104、106、108及び110(又は、128及び130)、及び114又は126を含む。定出力線L2に沿って点Cに到達するまで、この線L2に沿って減少するモータトルクで、車両は加速し続ける。PEPが反復的に零に減少し、そして、PC=PIOLの場合に、この点に到達する。このプロセス中においては、エンジンは常にIOLに沿って運転されることが理解されるであろう。
【0077】
アクセルペダルの位置が再び変化するまで、車はその速度を維持する。アクセルペダルの踏み込み量が減少して、元の位置に至ると、ネットトルクが点Dまで減少し、そして、速度が、定出力線L4に沿って点Aまで戻る。これを実現するために、電動モータ/ジェネレータは、負のトルクを供給して、線L3に沿って点Dに到達させなければならない。これは即座に生ずる。アクセルペダルの位置がACAに戻ると、車両は再び巡行を開始するので、ネットトルク及び出力が線L4に沿って進めば、電動モータ/ジェネレータトルクは零に次第に近づく。この好ましい態様においては、エンジンがIOLに沿って運転されている間、減速操作によって、エネルギーは上述したバッテリーシステムに戻され、そして、加速操作によって、エネルギーはバッテリーシステムから引き出される。
【0078】
従って、エンジンのスロットルを開放することによって、IOLに沿って与えられた出力のために最高の効果をもたらすように設定されることが理解されるであろう。エンジンが、IOLに沿って運転され、そして、車両に対する正しい瞬間的な反応を提供するために電動モータが使用されている。大型電動モータ及び小型エンジンを使用することが好ましいが、本発明においては、大型エンジンと、低い応答性を有する小型電動モータを使用してもよいことに留意すべきである。動力及びモータ性能が許容されると直ちに、CVTは、正しい速度及び出力設定をもたらす。次いで、バッテリーの性能を用いて、エネルギーを一時的に提供し、又は、吸収して、性能における悪影響を伴うことなく、CVTが比を変化させることを可能にする。この好ましい実施形態においては、このことは、エンジンと電動モータとを同一軸上に位置することによって実現されることが更に理解されるであろう。
【0079】
本発明により、共通軸ハイブリッド電気出力トレインにおいて、電動モータの利点が、これまでには知られていない方法でもたらされることが上述から理解されるであろう。車両の加速中及び減速中の双方において、ガソリン又はディーゼルエンジンを補いそして制御するために電動モータを使用し、これにより、ほぼ固定減速設定状態で、又は、加速状態で、エンジンの速度帯域全体中において、エンジンを最適効率で運転することが可能になる。これは、図1に示した従来の連続可変トランスミッションシステムにおいては不可能である。
【0080】
図11及び図12に示すように、アクセルペダルを制御することによって、瞬時のトルク補正がもたらされると共に、上述した実施例における出力サイクルにおける安定した状態での出力制御がもたらされる。好ましい実施形態においては、t0からt1への遷移時間中の出力は、バッテリーパックから供給される。t1からt2への遷移時間中に吸収される出力は、バッテリーパックに戻される。バッテリーパックは、その内部抵抗を低く維持するのに十分な大きさを有するべきであり、これにより、アクセルペダルの調整によって、バッテリーパックに出入りする総エネルギー量の最小比率を使用して、バッテリー充電の範囲が広げられる。必要な場合には、メインバッテリーパックを、固定パワープラントによってオフボード状態で充電することが可能である。必要な出力により、電気よりも、ガソリン又はディーゼル機関をより効果的に使用できる場合があるので、この概念は、車が高速走行する際に特に重要である。ハイブリッドモードでの市内走行に関しては、範囲を広げるためにこの概念を使用することもできる。
【0081】
図8における制動指令BCによる車両の制動について説明する。ブレーキペダルが通常の停止のために踏み込まれると、スイッチSW1、SW2は、制動位置に置かれる。運転者が希望する制動レベルは、与えられた車両速度、トランスミッション入力速度Sr又はモータ速度SMにおいて、ブロック118で、理想再生ライン(IRL)と比較される。
【0082】
IRLは、各速度におけるエネルギー貯蔵量の最大効率のためにモータ/ジェネレータ及びバッテリーシステムをテストすることによって求められた線である。このテストの実施後、理想線を選択して、すべての最高効率点を結び、これによりIRLを得ることができる。
【0083】
(図8の34における)制動指令BCは、車のドライブシャフト又は車輪における所望のトルクを表している。ブロック122において、トルク指令は、比Rによって除算されて、CVT入力124において均等トルクが得られる。この入力値は、即座に、モータ速度SMでのIRLに沿ったトルクと比較される。エラーは、
【0084】
【数17】

【0085】
をゲインブロック120及びフィルタ112を介して指令するために使用される。トランスミッションの比Rは変化して、ブロック102、104、106、112、116、118及び120のフィードバック制御システムを介してIRLを探索する。加速又は制動モードの何れの場合においても、比がその物理的限界値Rmin又はRmaxに到達したときに、この制御システムが無効になることが理解される。
【0086】
ブロック122の出力での所望のトルクは、ブロック100に送られて、車のドライブシャフトでの、従って、その車輪での所望の制動トルクを実現するために必要なモータトルクが演算される。この操作の開始時には、
【0087】
【数18】

【0088】
は零であるため、モータでのトルクは最初は、TC/Rである。
【0089】
車両速度の関数としての制動トルクが図13に示されている。この図は、ドライブシャフトのためのトルク指令TCを示している。許容された安全な電気再生制動トルクの最大値は、100%に設定されている。より大きなトルクが必要な場合には、ブレーキペダルは、車を零の速度に保持するための緊急停止、非常停止及びパーキングに使用される基準油圧機械ブレーキを指令する。
【0090】
従って、本発明は、車両の加速と、車両のエンジントルク及び速度との同時制御をもたらし、そして、エンジンを常に最高スロットルで、又は、最高効率(理想速度/トルク)運転ラインに沿って運転することを可能にし、かくして、エンジンの排気を減少させ、そして、最高効率及び最低排気をもたらし、または、他の所望の運転特性に従ってエンジンを運転することが可能になることが理解されるであろう。電気自動車モードで運転される場合において、加速、制動及び巡行中における電動走行用モータをその最適効率で運転することも可能になる。更に、ここに説明した本発明は、「マイルドハイブリッド」のみならず、本発明者の先の出願に係るアメリカ特許No.5,842,534に記載された充電消耗ハイブリッドにも適用することができる。上述した説明は、様々な特徴を含んでいるが、これらの特徴は、単に本発明の好ましい実施形態の幾つかの説明のためのものであって、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。従って、本発明の範囲は、ここに含まれた請求項及びその法律的な均等物によって決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の出力側に連結された電動モータを備える内燃機関の出力側における出力を制御するための装置であって、
内燃機関の速度が変化するときに、前記内燃機関のための理想運転ラインに実質的に沿って、前記内燃機関の出力を維持するための制御手段を備えており、前記理想運転ラインは、内燃機関の出力を内燃機関の速度の関数として特定しており、そして、前記電動モータのトルク出力を変化させることによって、前記内燃機関の出力が前記理想運転ラインに実質的に沿って維持され、これによって、前記内燃機関の出力を変化させ、そして、
前記制御手段は、前記内燃機関によって駆動される連続可変トランスミッションの速度比の変化率を制御することによって、前記内燃機関の出力を変化させるために設けられており、前記連続可変トランスミッションは変化可能な速度比を有している
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
内燃機関の出力側における出力を制御するための装置であって、前記装置が、前記トランスミッションに連結されており、前記電動モータが、前記内燃機関と前記トランスミッションとの間に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電動モータは、ジェネレータ/モータからなることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ジェネレータ/モータの正及び負の出力トルクを変化させて、機関出力を変化させることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
内燃機関の出力側における出力を制御するための装置であって、
前記トランスミッションは、前記内燃機関によって駆動され、前記トランスミッションは、車両の第1端部において第1ホイールを駆動する出力を有しており、
前記電動モータは、前記車両の第2端部において第2ホイールを駆動し、そして、路面を介して、前記トランスミッションに接続されており、そして、
前記電動モータのトルク出力を変化させ、そして、前記トランスミッションの比の変化率を変化させることによって、前記内燃機関の出力が前記理想運転ラインに実質的に沿って維持され、これによって、前記内燃機関の出力を変化させる
ことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
第2の電動モータが、システムコントローラ、及び、前記連続可変トランスミッションに接続されており、そして、
前記制御手段は、前記第2の電動モータのトルク出力を変化させるように構成されている
ことを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の電動モータは、モータ/ジェネレータからなることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
内燃機関の出力側における出力を制御するための装置であって、
ドライブシャフトが、前記連続可変トランスミッションに接続されており、
前記電動モータが、前記ドライブシャフトに機械的に接続されており、
前記制御手段が、前記電動モータに電気的に接続されており、
第2のモータ/ジェネレータが、前記内燃機関に接続されており、
第2のモータ/ジェネレータコントローラが、前記第2のモータ/ジェネレータに接続されており、そして、
バッテリーが、前記制御手段、及び、前記第2のモータ/ジェネレータコントローラに電気的に接続されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
内燃機関の出力側における出力を制御するための装置であって、
前記連続可変トランスミッションは、前記車両の第1端部において第1ホイールを駆動する出力を有しており、
前記電動モータは、前記車両の第2端部において第2ホイールを駆動し、そして、
前記電動モータは、路面を介して、前記トランスミッションに接続されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記理想運転ラインは、前記内燃機関、及び、前記電動モータの経験的な試験によって決定されることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記内燃機関に機械的に接続された機関コントローラを更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
内燃機関の出力側に連結された電動モータと、前記電動モータの出力側に連結された連続可変トランスミッションとを有する内燃機関の出力を制御するための方法であって、
前記内燃機関、電動モータ及びトランスミッションに連結されたシステムコントローラを設け、
内燃機関の出力の状態、電動モータのトルク、及び、トランスミッションの比を検出し、
内燃機関の速度が変化するときに、内燃機関の出力を内燃機関の速度の関数として特定している、前記内燃機関のための理想運転ラインに実質的に沿って、前記内燃機関の出力を維持するように、前記内燃機関の出力を変化させることによって、前記電動モータのトルクの出力を変化させ、そして、
前記トランスミッションの速度比の変化率を制御し、これによって、前記内燃機関の出力を更に変化させる
ことを含む方法。
【請求項13】
アクセルペダルであって、前記アクセルペダルの位置からの出力又はトルクに関する信号を、前記システムコントローラに送るところのアクセルペダルを設け、
前記アクセルペダルの位置からのアクセル信号を受信し、そして、
前記電動モータのトルクの出力を変化させ、これによって、前記アクセル信号に応じて、前記内燃機関の出力を変化させる
ことを更に含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ブレーキ信号を、前記システムコントローラに送るブレーキペダルを設け、
前記ブレーキペダルの位置からのブレーキ信号を受信し、
前記電動モータのトルクの出力を変化させ、これによって、前記ブレーキ信号に応じて、前記内燃機関の出力を変化させる
ことを更に含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記トランスミッションに対する総出力及び総トルクが、前記モータによってもたらされるところの制御領域を設けることを更に含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記電動モータは、モータ/ジェネレータであり、そして、
前記モータ/ジェネレータを備えた前記内燃機関に正又は負のトルクを与える
ことを特徴とする、請求項12から15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
第2のジェネレータ/モータと、前記モータ/ジェネレータに電気的に接続されたバッテリーとを設け、そして、
前記システムコントローラで、前記第2のジェネレータ/モータのトルクを制御する
ことを含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記モータ/ジェネレータを前記トランスミッションに機械的に接続し、そして、
前記第2のジェネレータ/モータを前記内燃機関に機械的に接続する
ことを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記内燃機関及び前記トランスミッションで第1のホイールを駆動し、
前記電動モータで第2のホイールを駆動し、そして、
前記第1のホイールを前記第2のホイールに路面によって連結する
ことを含むことを特徴とする、請求項12から16のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−292464(P2009−292464A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124427(P2009−124427)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【分割の表示】特願2000−578900(P2000−578900)の分割
【原出願日】平成11年4月19日(1999.4.19)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】