説明

内燃機関駆動発電装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関により発電機を駆動して負荷に電力を供給する内燃機関駆動発電装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】内燃機関駆動発電装置は、内燃機関と、該内燃機関により駆動される発電機と、発電機の負荷に応じて内燃機関の回転速度を制御する制御装置とにより構成される。この種の発電装置において、発電機を定格回転させた状態で負荷として電動機や白熱灯を接続した場合には、負荷の起動時に定常運転時の数倍以上の起動電流が流れるため、発電機が過負荷状態になり、負荷によっては発電機が破損するおそれがある。
【0003】このため、実開昭61−7292号に示されているように、電動機等の負荷を投入する場合に一旦内燃機関の回転速度を低下させて発電機の負荷電流を抑制し、負荷が定常運転状態に入って負荷電流が安定した後に機関の回転速度を定格回転速度に復帰させるようにした内燃機関駆動発電装置が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の内燃機関駆動発電装置では、内燃機関の回転速度の切換えを手動により行っていたため、操作が複雑で使いにくいという問題があった。また、内燃機関の回転速度を種々の負荷に応じてきめ細かく調整することができなかったため、最適な制御を行うことができなかった。
【0005】本発明の目的は、負荷がいかなる場合でも、発電機を過負荷状態にすることなく運転を行わせることができるようにした内燃機関駆動発電装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、内燃機関と、該内燃機関により駆動される発電機と、発電機の負荷に応じて内燃機関の回転速度を制御する制御装置とを備えた内燃機関駆動発電装置に係わるものである。
【0007】本発明においては、上記制御装置が、与えられた駆動電流に応じて内燃機関の燃料供給量調節部を操作するアクチュエータと、内燃機関の回転速度を検出して速度検出信号を出力する速度検出器と、発電機の負荷電流を検出する負荷検出器と、負荷検出器の出力を入力として負荷電流が発電機の定格出力電流以下のときには発電機の定格回転速度に相応した速度設定信号を出力し、負荷電流が発電機の定格出力電流を超えているときには該負荷電流を定格出力電流以下に制限するために必要な前記内燃機関の回転速度に相応した速度設定信号を出力する速度設定器と、速度検出信号と速度設定信号との差に相応した偏差信号を出力する偏差検出器と、偏差信号を入力として速度検出信号と速度設定信号との差を零にするために必要なアクチュエータの操作量を示す操作信号を出力する操作量演算器と、操作信号に応じて前記アクチュエータに駆動電流を与えるアクチュエータ駆動回路とにより構成される。
【0008】
【作用】上記のように構成すると、発電機の負荷電流が定格出力電流以下のときには、速度設定信号が発電機の定格回転速度に相応した大きさとなるため、アクチュエータは内燃機関の回転速度を発電機の定格回転速度に保つように燃料供給量調節部を操作する。負荷の投入により発電機の負荷電流が発電機の定格出力電流を超えた場合には、速度設定信号が、発電機の負荷電流を定格出力電流以下に制限するために必要な回転速度に相応した大きさとなる。このときアクチュエータは内燃機関への燃料の供給量を減少させるように燃料供給量調節部を操作し、機関の回転速度を速度設定信号により与えられる設定速度まで低下させる。従って、発電機の負荷電流が定格電流以下に減少し、発電機の過負荷状態が生じるのが防止される。負荷の動作状態が安定して負荷電流が定格出力電流以下になると、速度設定信号が上述したように定格回転速度に相応した大きさになるため、発電機の回転速度は定格回転速度に復帰する。
【0009】
【実施例】図1は、本発明の一実施例を示すブロック図であって、同図において、1は交流発電機、2は発電機1を駆動する内燃機関、3は発電機1の出力巻線に接続された負荷、4は発電機の負荷に応じて内燃機関2の回転速度を制御する制御装置である。制御装置4において、41は与えられた駆動電流に応じて内燃機関2の図示しない燃料供給量調節部を操作するアクチュエータで、電磁石または電動機を駆動源としている。本実施例ではアクチュエータの電源としてバッテリー42が用いられ、該バッテリー42からアクチュエータ41に供給される駆動電流をトランジスタ等からなるアクチュエータ駆動回路43によりオンオフ制御するようにしている。また44は記内燃機関2の回転を検知する回転センサで、内燃機関2の回転速度に比例した周波数の速度検出用信号を発生する。回転センサ44の出力信号は速度検出器45に入力される。速度検出器45は周波数−電圧変換回路からなり、回転センサ44の出力信号の周波数、すなわち内燃機関2の回転速度に比例した電圧からなる速度検出信号Vn を出力する。さらに46は発電機1の負荷電流を検出する負荷検出器で、変流器等により構成され、発電機1の負荷電流iに相応した負荷電流検出信号Vi を出力する。この負荷電流検出信号Vi は速度設定器47に入力される。
【0010】48は偏差検出器で、この偏差検出器は、速度検出器45から得られる速度検出信号Vn と速度設定器47から得られる速度設定信号Vnoを入力として、速度検出信号Vn と速度設定信号Vnoとの偏差を求め、内燃機関の実回転速度と設定速度との偏差を示す速度偏差信号Vd (=Vn −Vno)を出力する。
【0011】操作量演算器49は速度偏差信号Vd を零にするために必要なアクチュエータ41の操作量を演算し、これに相当する操作信号Vb をアクチュエータ駆動回路43に与える。アクチュエータ駆動回路43は、演算された操作量だけアクチュエータ41を動作させるように駆動電流をアクチュエータ41に入力する。
【0012】速度設定器47は、負荷電流が発電機1の定格出力電流以下のときには発電機1の定格回転速度に相応した速度設定信号を出力し、負荷電流が発電機1の定格出力電流を超えているときには該負荷電流を定格出力電流以下に制限するために必要な内燃機関の回転速度に相応した速度設定信号Vnoを出力する。この速度設定器の構成例を図2に示した。
【0013】図2において、DF は全波整流器で、この全波整流器は変流器からなる負荷検出器46で検出された負荷電流検出信号Vi を整流する。この整流出力は演算増幅器OP1 に入力され、該演算増幅器OP1 と、ダイオードD1 と抵抗R1 と、コンデンサC1 とからなる平滑回路で平滑されて負荷検出信号VL に変換される。負荷検出信号VL と負荷電流iとの関係は図4(A)に示すように比例関係にあり、定格負荷電流io 時に定格負荷信号VLoを出力する。
【0014】また演算増幅器OP2 ,OP3 と、抵抗R2 〜R8 と、コンデンサC2 とにより、偏差演算器と偏差を積分する積分器とが構成されている。演算増幅器OP2の反転入力端子には抵抗R5を通して負荷検出信号VL が入力され、非反転入力端子には、電源電圧を抵抗R9 とR10とで分圧して得た定格負荷信号VLoが抵抗R2 を通して入力されている。演算増幅器OP2 の出力Vnoは抵抗R8 を通して演算増幅器OP3 の非反転入力端子に入力されている。
【0015】また演算増幅器OP4 、ダイオードD2 ,抵抗R11,R12により積分器のクランプ回路を構成しており、演算増幅器OP4 の非反転入力端には電源電圧を抵抗R11とR12とにより分圧して得た定格回転速度信号Vnsが入力されている。演算増幅器OP4の出力端子はダイオードD2 を通して演算増幅器47gの非反転入力端子に接続されている。
【0016】図2において、各演算増幅器の増幅率を1と設定した場合、演算増幅器OP2の出力は(VLo−VL )+Vnoで表わされ、演算増幅器OP3 の出力である積分器出力はVL =VLoで安定する。このとき積分器の出力が前述した速度設定信号Vnoである。VL <VLoのとき積分器の出力は定格回転速度信号VnsでクランプされてVno=Vnsとなり、一定に保たれる。このとき発電機の回転速度は定格回転速度N0 となる。また、VL >VLoのときには、VL =VLoとなるまで発電機特性に従って回転速度を低減させるような速度設定信号Vnoを出力する。これらの関係を図4(B),(C)に示した。
【0017】以上のように構成された制御装置4は、発電機1の負荷電流を検出してこれに応じた回転速度を設定し、これと実際の内燃機関の回転速度との偏差を零にするようにアクチュエータを操作して発電機が過負荷状態になるのを防止する。
【0018】図3は発電機が磁石発電機である場合の負荷電流iに対する出力電圧Vの特性を、回転速度をパラメータとしたものである。同図において、回転速度No ,N1 ,N2 はNo >N1 >V2 の関係にある。ここでNo は定格回転速度であり、またRLo,RL1,RL2は抵抗負荷による負荷直線である。例えば定格回転速度No で発電機が運転されているときに、負荷インピーダンスRLoが投入されると発電機の動作点はa点となりる。同様に負荷RL2が投入された時には動作点がdとなり、i>i0 で過負荷運転となる。本実施例では、負荷RLo以上の負荷に対しては定格回転速度で運転し、RLo以下の負荷に対しては過負荷運転とならないようにi=io となる回転速度で運転する。
【0019】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、発電機の負荷電流を検出してこれに相応した発電機の回転速度を設定し、この速度設定信号と実際の内燃機関の回転速度による検出信号との偏差が零となるようにアクチュエータを制御するため、負荷の状態の如何にかかわらず発電機が過負荷状態になることを確実に防止できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内燃機関駆動発電装置の一実施例を示したブロック構成図である。
【図2】本発明に用いる速度設定器の具体的回路図である。
【図3】本発明の速度設定器の動作説明図である。
【図4】本発明の実施例における信号波形を示したもので、(A)は負荷検出信号と負荷電流との関係を示す線図、(B)は負荷電流と速度設定信号との関係を示す線図、(C)は速度設定信号と回転速度との関係を示す線図である。
【符号の説明】
1…発電機、2…内燃機関、3…負荷、4…制御装置、41…アクチュエータ、43…アクチュエータ駆動回路、45…速度検出器、46…負荷検出器、47…速度設定器、48…偏差検出器、49…操作量演算器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 内燃機関と、該内燃機関により駆動される発電機と、前記発電機の負荷に応じて内燃機関の回転速度を制御する制御装置とを備えた内燃機関駆動発電装置において、前記制御装置は、与えられた駆動電流に応じて前記内燃機関の燃料供給量調節部を操作するアクチュエータと、前記内燃機関の回転速度を検出して速度検出信号を出力する速度検出器と、前記発電機の負荷電流を検出する負荷検出器と、前記負荷検出器の出力を入力として前記負荷電流が発電機の定格出力電流以下のときには発電機の定格回転速度に相応した速度設定信号を出力し、負荷電流が発電機の定格出力電流を超えているときには該負荷電流を定格出力電流以下に制限するために必要な前記内燃機関の回転速度に相応した速度設定信号を出力する速度設定器と、前記速度検出信号と速度設定信号との差に相応した偏差信号を出力する偏差検出器と、前記偏差信号を入力として前記速度検出信号と速度設定信号との差を零にするために必要な前記アクチュエータの操作量を示す操作信号を出力する操作量演算器と、前記操作信号に応じて前記アクチュエータに駆動電流を与えるアクチュエータ駆動回路とを具備したことを特徴とする内燃機関駆動発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】第2921147号
【登録日】平成11年(1999)4月30日
【発行日】平成11年(1999)7月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−59044
【出願日】平成3年(1991)3月22日
【公開番号】特開平4−295148
【公開日】平成4年(1992)10月20日
【審査請求日】平成8年(1996)3月12日
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【参考文献】
【文献】特開 昭60−79128(JP,A)
【文献】特開 昭53−132607(JP,A)