説明

内燃機関

【課題】本発明は、内燃機関のクランクケースからクランクケース換気ガスを排出するための装置を備えた内燃機関、特に重油燃料大形ディーゼルエンジンに関し、クランクケース換気ガスからの油分離率を高めることを課題とする。
【解決手段】本発明に基づき、クランクケース換気ガスを排出する装置がU字状管(18)を有し、該U字状管(18)の最低点(21)の下流に注水装置(22)が付設され、排出すべきクランクケース換気ガス内に注水装置(22)により水が導入され、発生する油水混合物を排出すべく、U字状管(18)の最低点(21)に弁(24)が付設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前文に記載の内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の重油燃料大形ディーゼルエンジンの場合、クランクケース換気ガスは一般に処理されずに大気に放出される。同じことは、かかる大形ディーゼルエンジンの排気駆動過給機の封じ空気に対しても当てはまる。
【0003】
例えば乗用車や商用車用の比較的小形な内燃機関では、既に、クランクケース換気ガスを大気に放出する前に油分離器に導入し、クランクケース換気ガスから油やオイルミストを分離することが公知である。しかしそれで得られる油分離率は限られている。
【0004】
特許文献1で、商用車用の、排気駆動過給機を備えた比較的小形の内燃機関が公知である。該内燃機関は、クランクケースからクランクケース換気ガスを排出する装置を有し、そのガスポンプとして形成された装置は、クランクケース換気ガスを圧縮するために使われ、圧縮済みクランクケース換気ガスは内燃機関に戻される。
【特許文献1】独国特許出願公開第102004031281号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上述の問題に鑑み、高い油分離率を持つ新たな内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載の内燃機関によって解決される。
【0007】
本発明に従い、クランクケース内の換気ガスを排出する装置がU字状管を有し、該U字状管の最低点の下流に注水装置が付設され、排出すべきクランクケース換気ガス内に前記注水装置により水が導入され、発生する油水混合物を排出すべく、U字状管の最低点に弁が付設される。
【0008】
本発明に基づく内燃機関では、排出すべきクランクケース換気ガスを案内するU字状管の中に、即ちU字状管の最低点の下流で水が導入される。
【発明の効果】
【0009】
クランクケース換気ガスへ水を導入し、該水の部分的気化に基づき、クランクケース換気ガスを冷却し得る。クランクケース換気ガスの冷却によって、クランクケース換気ガス内に含まれるガス状油の一部が凝縮する。更に、クランクケース換気ガス内に入れた水滴が、クランクケース換気ガス内に含まれる油滴に付着し、凝集或いは集合によって大きな液滴を形成する。従って、クランクケース換気ガス内に入れた水によって、一方でクランクケース換気ガスのガス状成分を液相に転換し、他方で液滴を増大させ得る。これらの両作用は、クランクケース換気ガスからの良好な油分離を生じさせる。
【0010】
U字状管に配管を介して排気駆動過給機の封じ空気を導入し、該封じ空気の配管を、U字状管の最低点部位の下流でU字状管に開口させるとよい。
【0011】
本発明の好適な実施態様では、油水混合物がクランクケースに逆流するのを防ぐべく、U字状管の最低点と内燃機関のクランクケースとの間に逆止め弁を接続する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の有利な実施態様を、従属請求項および以下の説明から明らかにする。以下、図を参照して本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0013】
図1〜3を参照し、単段排気駆動式過給内燃機関を例に本発明を詳細に説明する。なお本発明は、単段排気駆動式過給内燃機関に限定されない。本発明は、多段排気駆動式過給内燃機関、コンプレッサ式過給内燃機関、他の形式で過給される内燃機関や非過給式内燃機関にも採用できる。ここで内燃機関とは、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、HCCI(Homogeneous-Charge Compression-Ignition combustion、HCCI燃焼=予混合圧縮自己着火燃焼)エンジン或いは他の内燃機関である。しかし本発明は、船舶用ディーゼルエンジン等の重油を燃料とする大形ディーゼルエンジンに特に適している。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の第1実施例を概略的に示す。内燃機関10から出る排気ガス流11は、排気駆動過給機13のタービン12に導かれ、ここで膨張する。排気駆動過給機13のタービン12は排気駆動過給機13の圧縮機14を駆動し、該圧縮機14で、内燃機関10に供給すべき燃焼空気流15が圧縮される。排気駆動過給機13の圧縮機14で圧縮された燃焼空気流15は、圧縮済み燃焼空気流を冷却する過給空気冷却器(インタークーラ)16に導かれ、このため過給空気冷却器16の下流に、過給空気流17とも呼ばれる圧縮済みかつ冷却済みの燃焼空気流が生ずる。
【0015】
本発明の内燃機関は、クランクケースからクランクケース換気ガスを排出する装置を有し、該換気ガス排出装置は、U字状管18を有する。U字状管18は、2本の垂直管部材19、20と、該垂直管部材19、20をそれらの最低点21で互いに接続し、ほぼ水平に延びる水平管部材から成っている。
【0016】
U字状管18、即ち一方の垂直管部材20に、ノズルとして形成した注水装置22が付属している。この装置22によって、排出すべきクランクケース換気ガス内に水が注入、即ち噴射される。注水装置22は、好適には、水をできるだけ細かく噴霧してクランクケース換気ガス内に噴霧すべく、平形ノズルとして形成する。なお、U字状管18のクランクケース換気ガスを案内する垂直管部材20に水を注入すべく、他のノズル並びに複数のノズルの配置構造も利用できる。注水装置22を介してクランクケース換気ガスに噴射すべき水の量と圧力は、弁23にて調整する。
【0017】
クランクケース換気ガスに水を注入し、該水をクランクケース換気ガスの冷却に用いるので、その中のガス状油成分は液相に転換する。また、クランクケース換気ガス内に含まれる油滴は、水滴が凝集或いは集合によってクランクケース換気ガス内の油滴に付着するので、増大する。
【0018】
発生する油水混合物をU字状管18から排出しビルジ25に導入すべく、U字状管18の最低点21に弁24を付設している。弁24は自動開閉形弁であり、所定の充填レベルに到達した際、生じた油水混合物をU字状管18から排出すべく、U字状管18の充填レベルにより制御して開閉される。ビルジ25に集まる油水混合物は、脱油器を介して廃棄する。
【0019】
U字状管18の、少なくとも注水装置が付設された垂直管部材20は、該部材20が排出すべきクランクケース換気ガスの小さな流速を形成すべく大きな流れ断面積と大きな管長を有するように寸法づけられる。この場合、別個の油分離器を要せずに重力の利用だけでクランクケース換気ガスからの油の良好な分離が保証される。場合によっては、垂直管部材20の上流側端に液滴分離メッシュが付設される。
【0020】
図1では、発生した油水混合物の、内燃機関のクランクケースへの逆流防止のため、U字状管18の最低点21の上流、従って垂直管部材19に、逆止め弁26を組み込んでいる。
【0021】
注水装置22を介してクランクケース換気ガスに注入ないし噴射する水は、清水、海水或いは使用済みの水、所謂廃水である。
【実施例2】
【0022】
図2は、図1の内燃機関の有利な変形例を示す。重複説明を避けるべく、同じ構成体には同一符号を付している。図2の実施例では、クランクケース換気ガスからと同様に排気駆動過給機13の封じ空気から油を分離するため、U字状管18に配管27を介して排気駆動過給機13の封じ空気を導入する。図2において、封じ空気の配管27は最低点21の上流、即ち逆止め弁26の上流でU字状管18に開口している。
【実施例3】
【0023】
油分離率を更に向上し又は最良にすべく、図3では、U字状管18に補助油分離器28を付設している。該油分離器28は拡散分離器、慣性分離器、遠心分離器、電気分離器或いはこれら分離器の組合せである。油分離器28で分離した油は、廃棄するために配管29を介してビルジ25に導く。
【0024】
油分離器28から出たガス30は、大気に放出するか、内燃機関に戻す。その場合、ガス30を図示しない圧縮機で圧縮し、続いて内燃機関に戻し、その際、過給空気冷却器16の下流で圧縮済みかつ冷却済みの燃焼空気流に入れるか、過給空気冷却器16の上流で圧縮済み冷却済み燃焼空気流に入れるか、排気駆動過給機13の圧縮機14の上流で未圧縮燃焼空気流15に入れる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に基づく内燃機関の第1実施例の概略構成図。
【図2】本発明に基づく内燃機関の第2実施例の概略構成図。
【図3】本発明に基づく内燃機関の第3実施例の概略構成図。
【符号の説明】
【0026】
10 内燃機関、11 排気ガス流、12 タービン、13 排気駆動過給機、14 圧縮機、15 燃焼空気流、16 過給空気冷却器、17 過給空気流、18 U字状管、19、20 垂直管部材、21 最低点、22 注水装置、23、24 弁、25 ビルジ、26 逆止め弁、27、29 配管、28 油分離器、30 ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランクケースからクランクケース換気ガスを排出するための装置を備えた内燃機関において、
クランクケース換気ガスを排出するための装置がU字状管(18)を有し、該U字状管(18)の最低点(21)の下流に注水装置(22)が付設され、排出すべきクランクケース換気ガス内に前記注水装置(22)により水が導入され、発生する油水混合物を排出するために、U字状管(18)の最低点(21)に弁(24)が付設されたことを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
U字状管(18)がその最低点(21)の下流において、排出すべきクランクケース換気ガスの小さな流速を形成すべく大きな流れ断面積を有することを特徴とする請求項1記載の内燃機関。
【請求項3】
U字状管(18)がその最低点(21)の下流において垂直に延び、該垂直管部分が大きな管長を有することを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関。
【請求項4】
油水混合物がクランクケースに逆流するのを防止すべく、U字状管(18)の最低点(21)と内燃機関のクランクケースとの間に逆止め弁(26)が接続されたことを特徴とする請求項1から3の1つに記載の内燃機関。
【請求項5】
注水装置(22)の下流で、U字状管(18)に油分離器(28)が付設されたことを特徴とする請求項1から4の1つに記載の内燃機関。
【請求項6】
U字状管(18)に配管(27)を介して排気駆動過給機(13)の封じ空気が導入され、該封じ空気の配管(27)が、U字状管(18)の最低点(21)の上流でU字状管(18)に開口することを特徴とする請求項1から5の1つに記載の内燃機関。
【請求項7】
封じ空気の配管(27)が、逆止め弁(26)の上流でU字状管(18)に開口することを特徴とする請求項6記載の内燃機関。
【請求項8】
タービン(12)と圧縮機(14)を有する排気駆動過給機(13)を備え、排気駆動過給機(13)のタービン(12)が内燃機関から出る排気ガス流を膨張させ、排気駆動過給機(13)の圧縮機(14)が前記タービン(12)で駆動され、燃焼空気流を圧縮し、排気駆動過給機(13)の圧縮機(14)と内燃機関の間に過給空気冷却器(16)が接続され、脱油済みクランクケース換気ガスが、圧縮機により圧縮され、続いて内燃機関に向けて戻されることを特徴とする請求項1から7の1つに記載の内燃機関。
【請求項9】
過給空気冷却器(16)の下流で、クランクケース換気ガスが圧縮済みかつ冷却済みの燃焼空気流に導入されることを特徴とする請求項8記載の内燃機関。
【請求項10】
過給空気冷却器(16)の上流で、クランクケース換気ガスが圧縮済みかつ冷却済みの燃焼空気流に導入されることを特徴とする請求項8記載の内燃機関。
【請求項11】
排気駆動過給機(13)の圧縮機(14)の上流で、クランクケース換気ガスが未圧縮燃焼空気流に導入されることを特徴とする請求項8記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−128235(P2008−128235A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290390(P2007−290390)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(390041520)エムアーエヌ ディーゼル エスエー (59)
【Fターム(参考)】