内燃機関

【課題】シリンダライナを、ネジ手段によってシリンダヘッドに締結しても、シリンダライナの内径方向への分力を無くすことができ、又、当該シリンダライナの真円度を維持し、ピストンとシリンダライナとのフリクションも防止する燃費効率の優れた内燃機関を提供する。
【解決手段】シリンダブロック(1)に組み付けされるシリンダライナ101(2)を、ネジ手段300(4)によってシリンダヘッド200(3)に締結してなる内燃機関100において、前記ネジ手段4を角ネジにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダライナを、ネジ手段によってシリンダヘッドに締結してなる内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のシリンダブロックには、ピストンを往復運動可能に収容するシリンダが形成されている。
【0003】
そして、このシリンダのボア部(シリンダボア)には、その内壁とピストンとの摩擦に耐えるべく、耐摩耗性に優れた材料からなる筒状のシリンダライナが、ネジ手段によってシリンダヘッドに締結してなる。
【0004】
具体的には、前記ネジ手段は、シリンダライナの上部外周に雄ネジが刻設されており、この雄ネジを前記シリンダヘッドの内周部に刻設された雌ネジに螺着することによって、前記シリンダライナを、前記シリンダヘッドに締結してなる。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
なお、前記シリンダライナの構造としては、ドライライナとウェットライナとの2種類の構造が知られている。
【0006】
又、前記ネジ手段である前記雌ネジと雄ネジとは、三角ネジ、又は、四角ネジと三角ネジを組み合わせた鋸歯ネジで構成されている。
【特許文献1】特開平10−47055号公報
【特許文献2】特開2002−276458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、図4は、従来の内燃機関の要部を概略した拡大断面図である。
【0008】
なお、図4では、前記ネジ手段300が三角ネジである場合を例示して説明するが、前記鋸歯ネジであっても同様である。
【0009】
すなわち、この内燃機関100では、シリンダライナ101をシリンダヘッド200にネジ手段300で締結する際、或いは、内燃機関100の運転時等に、シリンダライナ101の軸方向には、力Pが加わる。
【0010】
ところが、この軸方向の力P(以下、「軸力P」と呼ぶ。)を出そうとすると、ネジ手段300である三角ネジには、前記軸力Pに比例して、前記三角ネジの傾斜部301からシリンダライナ101の内径方向に分力Paが生じることになる。
【0011】
そのため、このシリンダライナ101の内径方向への分力Paが、シリンダライナ101の内径を縮小する方向に作用し、当該シリンダライナ101の真円度を低下させることになる。
【0012】
具体的には、円形のシリンダライナ101は、その真円度が低下すると、一般に楕円状に変形される場合が多い。
【0013】
又、シリンダライナ101の真円度が低下すると、オイル消費量が増大し易くなる。
【0014】
更に、オイル消費量が増大すると、シリンダライナ101の内周面に接して往復動するピストン(不図示)のリング張力を強くせざるを得なくなり、その結果、前記ピストンと、シリンダライナ101とのフリクションが増大する。
【0015】
そのため、前記フリクションの増大により、内燃機関100の燃焼によって発生したエネルギーからの動力として取り出される割合が、低下し、ひいては燃焼効率の低下を招くという問題があった。
【0016】
本発明は、かかる課題を解決することを目的とし、シリンダライナの内径方向への分力を無くして、当該シリンダライナの真円度を維持し、ピストンとシリンダライナとのフリクションを防止する燃費効率の優れた内燃機関を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の内燃機関は、シリンダライナを、ネジ手段によってシリンダヘッドに締結してなるもので、前記ネジ手段が、角ネジであることを特徴とする。
【0018】
ここで、角ネジとは、雄ネジのネジ山、及び、雌ネジのネジ溝が、正方形を含む断面矩形に形成されたネジを意味する。
【0019】
そのため、前記角ネジにおける前記ネジ山及びネジ溝の締結面には、当該角ネジの軸方向にのみ軸力Pが生じ、前記シリンダヘッドの内径方向への分力を無くすことができる。
【0020】
又、本発明の内燃機関は、前記角ネジの締結面に対向する面に、外方に向けて狭めた傾斜部が形成されたことを特徴とする。
【0021】
ここで、締結面とは、前記雄ネジ及び雌ネジを締め付けたときに前記軸力が作用する面を意味し、又、その対向する面とは、前記軸力が作用しない面を意味する。
【0022】
本発明では、前記角ネジの締結面と対向する面に、外方に向けて狭めた傾斜部が形成されることで、前記締結面に生じる軸力Pを維持しながら、前記角ネジの加工性を高めると共に、当該角ネジの締め付け作業を容易にできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の内燃機関によれば、シリンダライナを、ネジ手段によってシリンダヘッドに締結しても、前記シリンダライナの内径方向への分力を無くすことができる。
【0024】
そのため、前記シリンダライナの真円度を維持でき、ピストンとシリンダライナとのフリクションも防止して、内燃機関の燃費効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態を概略して示した部分断面図であり、図2は、図1の要部を示した拡大断面図である。
【0027】
本実施形態の内燃機関Aは、シリンダブロック(クランクケース)1に組み付けたシリンダライナ2と、シリンダヘッド3とをネジ手段4によって締結してなり、当該ネジ手段4が角ネジである点に特徴がある。以下、詳説する。
【0028】
シリンダブロック1は、従来同様、軽量なアルミ合金等によって、一体又は分割鋳造されている。
【0029】
シリンダライナ2は、アルミ合金製等により筒状に形成され、当該シリンダライナ2の外周適所には、ネジ手段4を構成する雄ネジ41が、周方向に形成されている。
【0030】
シリンダライナ2は、シリンダブロック1と一体又は別体に形成可能であるが、シリンダブロック1がアルミ合金鋳物や球状黒鉛鋳鉄の場合には、シリンダライナ2内面の対摩耗性を向上するために、シリンダライナ2を別体で形成するのが望ましい。
【0031】
又、シリンダライナ2内には、ピストン5が摺動自在に嵌装されており、当該ピストン5は、コンロッド6を介してクランク軸7に連結されている。
【0032】
シリンダライナ2の上端には、リングガスケット21が載置され、当該リングガスケット21を介して、シリンダヘッド3が連結されている。
【0033】
このシリンダヘッド3は、軽量なアルミ合金等によって一体形成され、このシリンダヘッド3の下面には、シリンダライナ2の対応する位置に、複数の円筒状の受部31が形成されている。
【0034】
又、受部31の内周面には、シリンダライナ2の雄ネジ41を螺着可能なネジ手段4を構成する雌ネジ42が、周方向に形成されている。
【0035】
更に、シリンダヘッド3には、ウォーターポンプ(不図示)からの冷却水を流通するための冷却水通路32が開設されている。
【0036】
具体的には、前記冷却水は、並列された各シリンダライナ2の第1番気筒側から冷却水通路32を通じて流通され、シリンダライナ2を冷却するようにしている。
【0037】
なお、本実施形態では、前記冷却水によって直接的にシリンダライナ2の冷却を行うウェットライナ構造を例示しているが、これに限定されるものではなく、前記冷却水によって間接的にシリンダライナ2の冷却を行うドライライナ構造でも構わない。
【0038】
そして、シリンダライナ2の外側には、シリンダブロック1とシリンダヘッド3を架設するようにして、棒状のヘッドボルト8により固定されている。
【0039】
以上のように構成された本実施形態の内燃機関Aは、例えば、以下の要領で組み付けされる。
【0040】
先ず、シリンダヘッド3の受部31に向けて、シリンダライナ2の上端側を差し込むと共に、シリンダライナ2を回転して、当該シリンダライナ2の雄ネジ41を、シリンダヘッド3の雌ネジ42に仮締めする。
【0041】
次いで、所定のトルクによって、シリンダライナ2を締め付けて、シリンダヘッド3にシリンダライナ2を締結する。
【0042】
このとき、ネジ手段4の締結面43、すなわち、図2中では、雄ネジ41の下面と、雌ネジ42の下面には、前記トルクに比例して軸力Pが上方向に生じる。
【0043】
ところが、本実施形態のネジ手段4は、角ネジであるため、この軸力Pは全てシリンダライナ2の軸方向(上方向)にのみ生じることとなり、従来のように、シリンダライナ2の内径方向には、分力が生じることが無い。
【0044】
そのため、シリンダライナ2をシリンダヘッド3に締め付ける際に、その締め付けによって、シリンダライナ2の内径を縮小する方向に作用することがなく、シリンダライナ2の真円度を保持できる。
【0045】
又、シリンダライナ2の真円度を保持できるので、オイル消費量を抑制することができる。
【0046】
更に、オイル消費量が抑制されるので、シリンダライナ2の内周面に接して往復動するピストン5のリング張力も維持でき、ピストン5と、シリンダライナ2とのフリクションが増大することを防止できる。
【0047】
そのため、内燃機関Aの燃焼によって発生したエネルギーからの動力として取り出される割合が良く、すなわち、燃費効率を高めることができる。
【0048】
そして、シリンダヘッド3に締結されたシリンダライナ2の下端側を、シリンダブロック1に圧入して組み付けるのである。
【0049】
このように、本実施形態の内燃機関Aによれば、シリンダライナ2を、ネジ手段4によってシリンダヘッド3に締結しても、シリンダライナ2の内径方向への分力を無くすことができる。
【0050】
そのため、シリンダライナ2の真円度を維持することができ、ピストン5とシリンダライナ2とのフリクションも防止して、内燃機関Aの燃費効率を高めることができるのである。
【0051】
図3は、本発明の他の実施形態を概略して示した要部の拡大断面図である。
【0052】
なお、図1、2と共通する部位には、同一の符号を付して、重複する説明を省略し、以下では、本実施形態の特徴についてのみ説明する。
【0053】
本実施形態の内燃機関Aでは、角ネジの締結面43と対向する面に、外方に向けて狭めた傾斜部41a、42aが形成されたことを特徴とする。
【0054】
具体的には、雄ネジ41の締結面43と対向する面に、外方に向けて狭めた傾斜部41aを形成すると共に、この雄ネジ41の傾斜部41aに合わせて、雌ネジ42の対応する面に傾斜部42aを形成してなる。
【0055】
そのため、本実施形態の内燃機関Aによれば、前記角ネジの締結面43と対向する面に、外方に向けて狭めた傾斜部41a、42aが形成されることで、締結面43に生じる軸力Pを維持しながら、前記角ネジの加工性を高めることができ、更に、当該角ネジの締め付け作業を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態を示した部分断面図である。
【図2】図1の要部を概略した拡大断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示した要部の拡大断面図である。
【図4】従来の内燃機関の要部を概略した拡大断面図である。
【符号の説明】
【0057】
A 内燃機関
P 軸力
Pa 分力
1 シリンダブロック
2 シリンダライナ
3 シリンダヘッド
4 ネジ手段
41a、42a 傾斜部
43 締結面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックに組み付けされるシリンダライナを、ネジ手段によってシリンダヘッドに締結してなる内燃機関において、前記ネジ手段が、角ネジであることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関において、
角ネジの締結面と対向する面に、外方に向けて狭めた傾斜部が形成されたことを特徴とする内燃機関。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2010−127081(P2010−127081A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
機械工学;照明;加熱;武器;爆破 | 燃焼機関;熱ガスまたは燃焼生成物を利用する機関設備 | 燃焼機関のシリンダ,ピストンまたはケーシング;燃焼機関の密封装置の構成 | シリンダ;シリンダヘッド | 冷却手段があるもの | 液体冷却 | 湿式シリンダライナ
機械工学;照明;加熱;武器;爆破 | 燃焼機関;熱ガスまたは燃焼生成物を利用する機関設備 | 燃焼機関のシリンダ,ピストンまたはケーシング;燃焼機関の密封装置の構成 | シリンダ;シリンダヘッド | 冷却手段があるもの | 空気冷却 | 冷却フィンの形または構成;フィン付きシリンダ | ライナおよびシリンダ冷却部が別体となったものまたは異種の材料から成るもの
【出願番号】特願2008−299334(P2008−299334)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社
【Fターム(参考)】
内燃機関のシリンダブロック、ケーシング | エンジン内の場所 | シリンダヘッド | シリンダヘッドロアデッキ部、下壁部
内燃機関のシリンダブロック、ケーシング | エンジン内の場所 | シリンダブロック | 乾式シリンダライナ
内燃機関のシリンダブロック、ケーシング | エンジン内の場所 | シリンダブロック | 湿式シリンダライナ
内燃機関のシリンダブロック、ケーシング | エンジン内の場所 | シリンダブロック | シリンダ部とクランクケース部とが別体
内燃機関のシリンダブロック、ケーシング | エンジン内の場所 | クランクケース | シリンダ軸に対して斜めに分割されるもの | クランク軸と平行な面で分割されるもの
内燃機関のシリンダブロック、ケーシング | 冷却のための構成 | 液冷 | 冷却液室、ジャケット部 | 冷却液室を隔壁によって分割したもの
内燃機関のシリンダブロック、ケーシング | 製造方法 | 固着
内燃機関のシリンダブロック、ケーシング | 製造方法 | 分解、組立て、クリーニングのための装置
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