説明

内燃機関

【課題】EGRガスの制御レスポンスを向上させて、吸気ポートに所望のタイミングでEGRガスが導入されることによる燃費の向上に有効に寄与し得る内燃機関を提供する。
【解決手段】本実施形態に係るエンジン100は、ニードル弁64が前記EGR通路における吸気ポート側の開口部近傍に位置する吸入空気用開口61aで前記EGRガスの導入を許容する開放姿勢及び前記EGRガスの導入を禁止し得る閉塞姿勢をとり得ることを特徴とする。これにより、EGRガスの制御レスポンスを向上させることができる結果、吸気ポートに所望のタイミングでEGRガスが導入されることによる燃費の向上に有効に寄与し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスの一部を吸気系に還流させる排気ガス再循環装置を備える内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排気ガスの一部を、吸気系に還流させる排気ガス再循環(EGR)装置を備える内燃機関では、環流させる排気ガス(EGRガス)の経路すなわちEGR通路上にEGRガス量を調整し得るEGR量制御弁を設け、このEGR量制御弁の開閉制御により、EGR流量を制御し得るものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
しかしながら、上述したEGR装置を備えたものにおいては、EGR通路が長く設定されたものにおいて、特にEGR量制御弁とEGR通路における吸気系への接続箇所との間の距離が長いものにおいては、EGR量制御弁の開閉制御のタイミングと実際に吸気系へ導入されるEGR量の増減するタイミングや増減幅にずれが生じていた。これが所要のタイミングで所要のEGR量を得られないことにつながり、EGR制御によるさらなる燃費向上への妨げとなっていた。
【0004】
加えて上記特許文献に記載したようなものでは複数の気筒に正確にEGRガスを分配させるべく、分配させたEGR通路における吸気系への接続箇所の開口径を小さく設定していた。しかし斯かる接続箇所にはEGRガスに含まれるデポジットと呼ばれる微細な固形物が堆積し易く、堆積したデポジットはEGRガスの吸気系導入への妨げとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−101586号公報
【特許文献2】特開2010−255485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような上述した点のうちEGRガスの制御に着目したものであり、吸気系に導入されるEGRガスの制御を正確に行い得る内燃機関を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち本発明に係る内燃機関は、吸気ポートにEGRガスを供給するEGR通路と、このEGR通路の途中において前記EGRガスの流量を制御し得るEGR量制御弁と、前記EGR通路における前記吸気ポート側の開口部近傍で前記EGRガスの導入を許容する開放姿勢及び前記EGRガスの導入を禁止し得る閉塞姿勢をとり得る開閉弁とを具備することを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、吸気ポート側の開口部近傍で開閉弁が開閉動作を行うことにより、EGRガスの導入するタイミングを開閉弁の開閉動作するタイミングに正確に反映させる、つまりEGRガスの制御レスポンスを向上させることができる。その結果、吸気ポートに所望のタイミングでEGRガスが導入されることによる燃費の向上に有効に寄与し得る。しかも本発明では開閉弁を流量制御弁と別に構成することにより、開閉弁自体の構造を簡素化できるため、EGRガスの制御レスポンス向上に対する設計上の制約が少なく、容易に本発明を適用し得る。
【0010】
また一般に、上述した吸気ポート側の開口部近傍におけるEGRガスが導入される箇所ではEGRガスに微量に含まれている例えば粉状の固形物であるデポジットが集積し易いことが知られている。そこで開閉弁は、前記開口部近傍における前記EGRガスの導入方向に沿って進退動作可能に配置されるとともに、前記EGRガスを導入すべく前記開口部近傍に形成された開閉端に嵌合し得る形状をなす閉塞端を有したものであることが望ましい。これにより、閉塞姿勢では開閉端には閉塞端が嵌合しているためにデポジットの付着・集積が回避されるとともに、開放姿勢にて開閉端に集積しているデポジットは閉塞姿勢へと動作する開閉弁によって除去される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、EGRガスの導入するタイミングを開閉弁の開閉動作するタイミングに正確に反映させる、つまりEGRガスの制御レスポンスを向上させて、吸気ポートに所望のタイミングでEGRガスが導入されることによる燃費の向上に有効に寄与し得る内燃機関を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の概略構成を示す構成説明図。
【図2】図1におけるI−I線に係る模式的な断面図。
【図3】図2に係る作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1に1気筒の構成を概略的に示した例えば3気筒の内燃機関たるエンジン100は、例えば自動車に搭載されるものである。このエンジン100は、吸気系1、シリンダ2及び排気系5を備えている。吸気系1には、図示しないアクセルペダルに応じて開閉するスロットル弁11が設けてあり、そのスロットル弁11の下流には、サージタンク13を一体に有する吸気マニホルド12が取り付けてある。シリンダ2上部に形成される燃焼室23の天井部には、点火プラグ8が取り付けてある。又、吸気マニホルド12と吸気ポート21との間には、後述する排気ガス再循環装置(以下、EGR装置と称する)6を構成するEGRスペーサ61が取り付けてある。さらに、吸気マニホルド12の吸気ポート側端部には、燃料噴射弁3が取り付けてある。この燃料噴射弁3は、後述する電子制御装置4により制御される。これに対して、排気系5には、O2センサ51及び三元触媒52が取り付けてあり、排気系5を構成する排気マニホルド53から排気ガスの一部を還流するように、EGR装置6が接続される。
【0015】
EGR装置6は、排気ガス還流管路(以下、EGR管路と称する)62と、そのEGR管路62に設けられてEGR管路62を通過する排気ガスの流量を制御する本発明のEGR量制御弁たる排気ガス還流制御弁(以下、EGR弁と称する)63と、シリンダヘッドの吸気ポート21と吸気マニホルド12との間に介在し、且つEGR管路62の終端部に接続しているEGRスペーサ61と、EGRスペーサ61から吸気ポートへ環流するEGRガスの開閉を制御するニードル弁64とを備えて構成される。言うまでもなく、EGR管路62の始端部は、排気系5に設けられる三元触媒52の上流又は下流において排気系5に連通するように排気マニホルド53に接続される。ここでEGR装置6は、EGR弁63及び後述する開閉弁たるニードル弁64が開かれると、排気ガスがEGR管路62及びEGRスペーサ61を経由して、スロットル弁11よりも下流側つまり吸気ポート21直前の位置に還流させるものであるが、EGR弁63及びニードル弁64については後に詳述する。そしてEGR量制御弁たるEGR弁63の開度の制御並びにニードル弁64の制御は、電子制御装置4により行われる。
【0016】
EGRスペーサ61は、特に図2及び図3に示すように、各気筒に対応する気筒と同数の吸入空気用開口61aと、そのそれぞれの吸入空気用開口61aに連通する枝分かれしたEGRガス分配通路61bと、このEGR分配通路へEGRガスを導入するEGRガス導入路61dと、EGR分配通路61bから吸入空気用開口61aに至る箇所でニードル弁64によって開閉される例えば傾斜面により形成される開口である開閉端61cと、ニードル弁64が挿入される箇所において当該ニードル弁64を支持するためのニードル支持部61eとを備える。すなわち各EGRガス分配通路61bは、上流側でEGRガス導入路61dにより一つに合流して単一のEGR管路62に連通し、EGR管路62を通じて還流されるEGRガスをそれぞれの吸入空気用開口61aに分配する。
【0017】
そしてニードル弁64は、図2及び図3に示すように各気筒の数すなわち吸入空気用開口61aの数に応じた例えば3本のニードル本体64aと、このニードル本体64a同士を連結するシャフト64bとを有している。そして電子制御装置4によってシャフト64bの動作が制御されることにより、ニードル本体64aの先端に設けられた閉塞端64cが開閉端61cを閉塞する閉塞姿勢(CL)と、閉塞端64cと開閉端61cとを離間させて開口である開閉端61cを開放する開放姿勢(OP)とを取り得るものである。本実施形態では閉塞端64cの形状を、開閉端61cに隙間無く嵌合し得るテーパ形状としている。
【0018】
電子制御装置4は、マイクロコンピュータ41と、メモリ42と、入力インターフェース43と、出力インターフェース44とを備えて構成されている。マイクロコンピュータ41は、メモリ42に格納された、以下に説明する種々のプログラムを実行して、エンジン100の運転を制御するものである。マイクロコンピュータ41には、エンジン100の運転制御に必要な情報が入力インターフェース43を介して入力されるとともに、マイクロコンピュータ41は、燃料噴射弁3、EGR弁63及びニードル弁64などに対して制御信号を、出力インターフェース44を介して出力する。
【0019】
具体的には、入力インターフェース43には、サージタンク13内の圧力を検出するための吸気圧センサ71から出力される吸気圧信号a、エンジン回転数を検出するための回転数センサ72から出力される回転数信号b、車速を検出するための車速センサ73から出力される車速信号c、カムポジションセンサ74から出力され、各気筒における例えば圧縮上死点などの行程をそれぞれ検出することで燃焼している気筒を判別する気筒判別信号d、アクセルペダルの踏込量を検知する踏込量センサ75から出力されるアクセルペダル信号e、シリンダ2の外壁に取り付けられるノックセンサ76からノッキングが発生した際に出力されるノッキング信号f、O2センサ51から出力される電圧信号hなどが入力される。
【0020】
出力インターフェース44からは、点火プラグ8に対して点火信号m、燃料噴射弁3に対して燃料噴射信号n、EGR弁63に対して開度信号o、そしてニードル弁64に対しては開閉信号pなどが出力される。
【0021】
このような構成において、電子制御装置4は、吸気圧センサ71から出力される吸気圧信号aと回転数センサ72から出力される回転数信号bとを主な情報として基本噴射量を決定し、空燃比フィードバック補正係数や各種環境条件に応じて設定される補正係数を乗じて最終的な燃料噴射量を算出し、燃料噴射量に対応する燃料噴射時間だけ燃料噴射弁3に通電して、燃料噴射弁3を開いて燃料を吸気系1に噴射させる。
【0022】
また、エンジン100の運転領域に応じた目標EGR率を達成すべくEGR弁63の開度を制御して排気ガス再循環制御(以下、EGR制御と称する)を実施するEGR制御プログラムが電子制御装置4に格納してある。
【0023】
しかして本実施形態に係るエンジン100は、ニードル弁64がEGR通路における吸気ポート21側の開口部近傍に位置する吸入空気用開口61aで前記EGRガスの導入を許容する開放姿勢(OP)及び前記EGRガスの導入を禁止し得る閉塞姿勢(CL)をとり得ることを特徴とするものである。以下、当該ニードル弁64の動作並びに制御について説明する。
【0024】
本実施形態では図2及び図3に示すように、開閉信号pによってシャフト64bの動作が制御されることによりEGRスペーサ61の開閉端61cが開閉される。具体的には、EGRガスを導入する際には予め、ニードル弁64を開放姿勢(OP)とする動作に先んじて、EGR弁63が少しの開度であっても開かれていることが前提である。これにより、実際にEGRガスが導入されるニードル弁64を開放姿勢(OP)とするタイミングではEGR分配通路61bの内圧に応じた勢いで吸気ポート21側つまり燃焼室23へ向けてEGRガスが導入される。その結果、速やかなEGRガスの導入と所望のEGR率の実現とが両立される。また勿論、ニードル弁64を開放姿勢(OP)とするにあたりEGR弁63を予め開弁する開弁量や、EGR弁63を開弁する時間からニードル弁64を開放姿勢(OP)とする時間までの時間差は、所要のEGR率を実現すべく、種々の開弁量または時間差を設定することが可能である。
【0025】
他方、速やかなEGRガス導入の停止すなわちEGRカットに関しては、所要のタイミングでニードル弁64を閉塞姿勢(CL)へと作動させればよい。これにより所望のタイミングにて速やかにEGRガスの導入は遮断される。これに伴うEGR弁63の閉弁はニードル弁64によるEGRガスの遮断に何ら影響を与えることはない。
【0026】
特に本実施形態では開閉端61cはニードル弁64による速やかな開閉並びにEGRガスの正確な分配に寄与すべく他の部位よりも径が小さく形成されているのでこの開閉端61cにはEGRガスに含まれるデポジットdpすなわち微細な固形物が付着し易いものとなっている。しかしながら本実施形態では同図に示すように開閉弁たるニードル弁64がEGRガスの導入方向に沿って進退動作可能に配置されるとともに、ニードル本体64aが開閉端61cに嵌合し得る形状をなす閉塞端64cを有している。具体的に説明すると、開閉端61cが傾斜面からなる形状としている一方で、ニードル本体64aの先端に形成された閉塞端64cがこの開閉端61cに隙間無く嵌合し得るテーパ面により形成されている。これにより、同図に示すように開放姿勢(OP)から閉塞姿勢(CL)への動作の際に開放姿勢(OP)で開閉端61cに付着したデポジットdpは速やかに吸入空気用開口61a側へ除去される。
【0027】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る内燃機関たるエンジン100は、吸気ポート21側の開口部近傍にある開閉端61cで開閉弁たるニードル弁64が開閉動作を行うことにより、EGRガスの導入するタイミングをニードル弁64の開閉動作するタイミングに正確に反映させる、つまりEGRガスの制御レスポンスを向上させることができる。その結果、吸気ポート21に特に所望のタイミングでEGRガスが導入されることによる燃費の向上に有効に寄与し得るものとなっている。
【0028】
また本実施形態ではニードル弁64の動作方向をEGRガスが導入される方向に双方向としニードル本体64aの先端を開閉端61cに嵌合し得る閉塞端64cとしているので、閉塞姿勢(CL)では開閉端61cには閉塞端64cが嵌合しているためにデポジットdpの付着・集積が回避されている。一方開放姿勢(OP)にて開閉端61cに集積したデポジットdpは閉塞姿勢(CL)へと動作する開閉弁であるニードル弁64の閉塞端64cによって除去されるものとなっている。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0030】
例えば、上記実施形態では開閉弁たるニードル弁を吸気ポートと燃焼室との間に介在するスペーサに取り付けた態様を開示したが勿論、開閉弁がEGR通路における吸気ポート側の開口部近傍に位置付けられるのであれば、吸気ポートと一体である箇所に開閉弁を設けたり、燃焼室側に一体となる箇所に取り付けたりしたものであってもよい。また気筒の数や外部EGR通路の具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0031】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は排気ガスの一部を吸気系に還流させる排気ガス再循環装置を備える内燃機関として利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
100…内燃機関(エンジン)
21…吸気ポート
61c…開閉端
62…EGR通路
63…EGR量制御弁(EGR弁)
64…開閉弁(ニードル弁)
64c…閉塞端
OP…開放姿勢
CL…閉塞姿勢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ポートにEGRガスを供給するEGR通路と、
このEGR通路の途中において前記EGRガスの流量を制御し得るEGR量制御弁と、
前記EGR通路における前記吸気ポート側の開口部近傍で前記EGRガスの導入を許容する開放姿勢及び前記EGRガスの導入を禁止し得る閉塞姿勢をとり得る開閉弁とを具備することを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記開閉弁が、前記開口部近傍における前記EGRガスの導入方向に沿って進退動作可能に配置されるとともに、前記EGRガスを導入すべく前記開口部近傍に形成された開閉端に嵌合し得る形状をなす閉塞端を有している請求項1記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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